(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】名刺管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/10 20120101AFI20221130BHJP
【FI】
G06Q10/10 320
(21)【出願番号】P 2019016719
(22)【出願日】2019-02-01
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】591281666
【氏名又は名称】株式会社大塚商会
(74)【代理人】
【識別番号】100088214
【氏名又は名称】生田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100205084
【氏名又は名称】吉浦 洋一
(72)【発明者】
【氏名】大塚 裕司
(72)【発明者】
【氏名】地主 隆宏
【審査官】山崎 誠也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-122680(JP,A)
【文献】特開2002-328940(JP,A)
【文献】特開2011-215702(JP,A)
【文献】特許第5401658(JP,B1)
【文献】特開2000-261492(JP,A)
【文献】特開2013-137592(JP,A)
【文献】青柳美帆子,名刺サービスEightが狙う「ビジネスSNSの空白」,[online],2018年10月22日,[令和4年8月26日検索], インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20181022154329/https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1704/13/news091.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
名刺データを管理する名刺管理システムであって,
前記名刺管理システムは,
解析対象とするテキストデータと、名刺に関する情報が変更される種類の意図を示す意図ラベルとのデータセットを学習データとして学習しており,
解析対象とするテキストデータの入力を受け付けるテキストデータ入力受付処理部と,
前記入力を受け付けたテキストデータに基づいて,名刺データに変更があったかのテキスト解析処理をテキストデータ解析コンピュータに行わせる解析依頼処理部と
を有し、
前記テキストデータ解析コンピュータにおける解析の結果,名刺データに変更があったことを判定した場合には
前記意図ラベルを判定結果として受け付けることを特徴とし、
更に、
名刺データに変更があったことを判定した場合には前記判定結果における意図ラベルに応じた変更項目および/または処理を通知する通知処理
部を有する
ことを特徴とする名刺管理システム。
【請求項2】
前記解析依頼処理部は,
前記テキストデータ解析コンピュータにおいて,名刺データに変更があったことを判定した場合には,変更があった人物名を特定させ,
前記通知処理部は,
前記特定された人物名を通知する,
ことを特徴とする請求項1に記載の名刺管理システム。
【請求項3】
名刺データを管理する名刺管理システムであって,
前記名刺管理システムは,
解析対象とするテキストデータと、名刺に関する情報が変更される種類の意図を示す意図ラベルとのデータセットを学習データとして学習しており,
解析対象とするテキストデータの入力を受け付けるテキストデータ入力受付処理部と,
前記入力を受け付けたテキストデータに基づいて,名刺データに変更があったかのテキスト解析処理を行う解析処理部と
を有し、
前記
解析処理部における解析の結果,名刺データに変更があったことを判定した場合には
前記意図ラベルを判定結果として受け付けることを特徴とし、
更に、
名刺データに変更があったことを判定した場合には前記判定結果における意図ラベルに応じた変更項目および/または処理を通知する通知処理
部を有することを特徴とする名刺管理システム。
【請求項4】
前記解析処理部は,
前記テキスト解析処理の結果,名刺データに変更があったことを判定した場合には,変更があった人物名を特定し,
前記通知処理部は,
前記特定した人物名を通知する,
ことを特徴とする請求項3に記載の名刺管理システム。
【請求項5】
前記名刺管理システムは,
名刺に関する情報が変更される種類の意図を示す意図ラベルと,その意図ラベルに対して,名刺データに変更があった場合の処理とを対応づけて記憶しており,
前記テキスト解析処理によって名刺データに変更があったことを解析した場合,前記意図ラベルを判定結果として受け付け,
前記通知処理部は,
前記判定結果における意図ラベルに応じた変更項目および/または処理を通知する,
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の名刺管理システム。
【請求項6】
前記名刺管理システムは,
前記判定結果における意図ラベルに応じた変更箇所および/または処理のみを,前記名刺データの変更入力として受け付ける名刺データ変更処理部,
を有することを特徴とする請求項5に記載の名刺管理システム。
【請求項7】
前記テキストデータとして,
メールデータ,営業日報データ,電話による会話の音声のテキスト化データのいずれか一以上を含む,
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の名刺管理システム。
【請求項8】
コンピュータを,
解析対象とするテキストデータの入力を受け付けるテキストデータ入力受付 処理部,
前記入力を受け付けたテキストデータに基づいて,名刺データに変更があったかのテキスト解析処理をテキストデータ解析コンピュータに行わせる解析依頼処理部,
前記テキストデータ解析コンピュータにおける解析の結果,名刺データに変更があったことを判定した場合には通知を行う通知処理部,
として機能させることを特徴とする名刺管理プログラム
であって、
前記テキストデータ解析コンピュータは、解析対象とするテキストデータと、名刺に関する情報が変更される種類の意図を示す意図ラベルとのデータセットを学習データとして学習している
ことを特徴とする名刺管理プログラム。
【請求項9】
コンピュータを,
解析対象とするテキストデータの入力を受け付けるテキストデータ入力受付処理部,
前記入力を受け付けたテキストデータに基づいて,名刺データに変更があったかのテキスト解析処理を行う解析処理部,
前記解析の結果,名刺データに変更があったことを判定した場合には通知を行う通知処理部,
として機能させることを特徴とする名刺管理プログラム
であって、
前記解析処理部は、解析対象とするテキストデータと、名刺に関する情報が変更される種類の意図を示す意図ラベルとのデータセットを学習データとして学習している
ことを特徴とする名刺管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,名刺データを管理する名刺管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
企業やその従業員は,名刺を中心に取引先の担当者の管理を行っている。すなわち,取引先の担当者から名刺を受領し,名刺に記載されている情報を所定のデータベースに入力することで,取引先の担当者の氏名,所属先企業,部署,住所,電話番号,FAX番号,電子メールアドレス,ウェブサイトのURLなどをデータ化して管理している。
【0003】
しかし,さまざまな事情から取引先の担当者の役職,住所,電話番号,電子メールアドレスなどの情報が変更されることがある。そこで変更後の情報を適宜,更新することが求められる。このような従来の名刺管理システムの一例を特許文献1に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示すように,従来の名刺管理システムでは,すでに登録されている者の情報を変更する場合,異動の連絡を受けた者や異動に気づいた者が,その都度,手入力で対応していた。
【0006】
しかし,異動の連絡を受けた者がすぐにデータベースに変更後の情報を入力してデータ化するとは限らないし,異動に気づくかどうかも不明である。
【0007】
すなわち,名刺に関する情報は,取引先の担当者の情報に変更があるか否かを常に監視し,メンテナンスをする運用管理が重要であるところ,そのような監視は手作業に頼っているのが現状であり,負担となっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者は上記課題に鑑み,名刺管理システムを発明した。
【0009】
第1の発明は,名刺データを管理する名刺管理システムであって,前記名刺管理システムは,解析対象とするテキストデータの入力を受け付けるテキストデータ入力受付処理部と,前記入力を受け付けたテキストデータに基づいて,名刺データに変更があったかのテキスト解析処理をテキストデータ解析コンピュータに行わせる解析依頼処理部と,前記テキストデータ解析コンピュータにおける解析の結果,名刺データに変更があったことを判定した場合には通知を行う通知処理部と,を有する名刺管理システムである。
【0010】
第3の発明は,名刺データを管理する名刺管理システムであって,前記名刺管理システムは,解析対象とするテキストデータの入力を受け付けるテキストデータ入力受付処理部と,前記入力を受け付けたテキストデータに基づいて,名刺データに変更があったかのテキスト解析処理を行う解析処理部と,前記解析の結果,名刺データに変更があったことを判定した場合には通知を行う通知処理部と,を有する名刺管理システムである。
【0011】
これらの発明のように構成することで,取引先の担当者の情報に変更があるか否かを自動的に監視することができ,名刺データの運用管理の負担軽減を図ることができる。
【0012】
上述の発明において,前記解析依頼処理部は,前記テキストデータ解析コンピュータにおいて,名刺データに変更があったことを判定した場合には,変更があった人物名を特定させ,前記通知処理部は,前記特定された人物名を通知する,名刺管理システムのように構成することができる。
【0013】
上述の発明において,前記解析処理部は,前記テキスト解析処理の結果,名刺データに変更があったことを判定した場合には,変更があった人物名を特定し,前記通知処理部は,前記特定した人物名を通知する,名刺管理システムのように構成することができる。
【0014】
名刺データに変更がある場合には,どの人物の変更であるかも特定できることが好ましい。そこで,本発明のように構成することができる。
【0015】
上述の発明において,前記名刺管理システムは,名刺に関する情報が変更される種類の意図を示す意図ラベルと,その意図ラベルに対して,名刺データに変更があった場合の処理とを対応づけて記憶しており,前記テキスト解析処理によって名刺データに変更があったことを解析した場合,前記意図ラベルを判定結果として受け付け,前記通知処理部は,前記判定結果における意図ラベルに応じた変更項目および/または処理を通知する,名刺管理システムのように構成することができる。
【0016】
名刺データのうち,どの項目を変更すればよいのか,どの処理を行えばよいのかを通知することで,名刺データの変更を行う担当者の作業負担を軽減することができる。
【0017】
上述の発明において,前記名刺管理システムは,前記判定結果における意図ラベルに応じた変更箇所および/または処理のみを,前記名刺データの変更入力として受け付ける名刺データ変更処理部,を有する名刺管理システムのように構成することができる。
【0018】
名刺データは企業にとって重要な情報である。しかし悪意ある者や過失などによって,データ内容が変更されてしまう可能性がある。そこで,名刺データの変更箇所やそれに対する処理のみを入力可能とすることで,悪意ある者による操作や過失による誤操作を防止することができる。
【0019】
上述の発明におけるテキストデータとしては,メールデータ,営業日報データ,電話による会話の音声のテキスト化データのいずれか一以上を含むように構成することができる。
【0020】
解析対象とするテキストデータとしては,取引先の担当者の名刺情報の変更が分かるような情報であればどのようなものであってもよいが,たとえば本発明に記載のようなテキストデータを用いることが好ましい。
【0021】
第1の発明の名刺管理システムは,本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで実現することができる。すなわち,コンピュータを,解析対象とするテキストデータの入力を受け付けるテキストデータ入力受付処理部,前記入力を受け付けたテキストデータに基づいて,名刺データに変更があったかのテキスト解析処理をテキストデータ解析コンピュータに行わせる解析依頼処理部,前記テキストデータ解析コンピュータにおける解析の結果,名刺データに変更があったことを判定した場合には通知を行う通知処理部,として機能させる名刺管理プログラムのように構成することができる。
【0022】
第3の発明の名刺管理システムは,本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで実現することができる。すなわち,コンピュータを,解析対象とするテキストデータの入力を受け付けるテキストデータ入力受付処理部,前記入力を受け付けたテキストデータに基づいて,名刺データに変更があったかのテキスト解析処理を行う解析処理部,前記解析の結果,名刺データに変更があったことを判定した場合には通知を行う通知処理部,として機能させる名刺管理プログラムのように構成することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の名刺管理システムを用いることによって,名刺に関する情報に変更があるか否かの自動的に監視し,また変更がある場合にはその変更箇所を推定して変更させることで,最新の状態で名刺管理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の名刺管理システムの全体の構成の一例を模式的に示すブロック図である。
【
図2】本発明の名刺管理システムで用いるコンピュータのハードウェア構成の一例を模式的に示すブロック図である。
【
図3】本発明の名刺管理システムにおける学習フェーズの処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の名刺管理システムにおける管理フェーズの処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
【
図5】意図ラベルと,名刺データの変更箇所の項目の通知との対応づけの一例を模式的に示す図である。
【
図6】意図ラベルと自然言語の対応づけの概念を模式的に示す図である。
【
図7】学習データとしての営業日報データのデータセットの一例を示す。
【
図8】精度判定処理部の処理の概念の一例を模式的に示す図である。
【
図9】テキストデータ解析コンピュータにて学習処理を実行し,入力したテストデータに対する判定結果の一例を示す図である。
【
図10】運用フェーズの全体の概念の一例を模式的に示す図である。
【
図11】テキストデータに含まれる人物名を特定する処理を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の名刺管理システム1の全体のシステム構成の一例を
図1に,名刺管理システム1で用いるコンピュータのハードウェア構成の一例を
図2に示す。
【0026】
名刺管理システム1は,学習システム2と管理システム3とテキストデータ解析コンピュータ4とを用いる。これらの各コンピュータは,プログラムの演算処理を実行するCPUなどの演算装置70と,データを記憶するRAMやハードディスクなどの記憶装置71と,ディスプレイなどの表示装置72と,データの入力を行う入力装置73と,演算装置70の処理結果や記憶装置71に記憶するデータの通信をする通信装置74とを有している。なお,コンピュータがタッチパネルディスプレイを備えている場合には表示装置72と入力装置73とが一体的に構成されていてもよい。タッチパネルディスプレイは,たとえばタブレット型コンピュータやスマートフォンなどの可搬型通信端末などで利用されることが多いが,それに限定するものではない。
【0027】
タッチパネルディスプレイは,そのディスプレイ上で,直接,所定の入力デバイス(タッチパネル用のペンなど)や指などによって入力を行える点で,表示装置72と入力装置73の機能が一体化した装置である。
【0028】
名刺管理システム1は一台のコンピュータによって実現されていてもよいが,その機能が複数のコンピュータによって実現されていてもよい。この場合のコンピュータとして,たとえばクラウドサーバであってもよい。
図1の名刺管理システム1では,学習システム2と管理システム3とテキストデータ解析コンピュータ4とが別々のコンピュータの場合を示しているが,同一のコンピュータにそれぞれの機能が一体的に構築されていてもよい。本発明の各手段は,その機能が論理的に区別されているのみであって,物理上あるいは事実上は同一の領域を為していても良い。
【0029】
テキストデータ解析コンピュータ4は,公知のテキストデータ解析処理(自然言語解析処理)を実行するコンピュータシステムである。たとえば,あらかじめ学習しているテキストデータとそれに対応づけられたラベルとに基づいて,入力されたテキストデータがどのラベルに対応するかを解析するコンピュータシステムを用いることができる。この際に,入力された一つのテキストデータに対して,一つのラベルのみを結果として返してもよいし,各ラベルの確信度(精度)を結果として返してもよい。テキストデータ解析コンピュータ4におけるテキストデータ解析の手法には限定はなく,さまざまな手法が適用できる。テキストデータ解析コンピュータ4として,複数の企業が提供するテキストデータ解析用のコンピュータシステム,とくにテキストデータ解析用のAIコンピュータシステムを用いることもできる。すなわち,テキストデータをニューラルネットワークの入力データとして,そのテキストデータに対応するラベル(後述の意図ラベル)を推定するテキストデータ解析用のAIコンピュータシステムであってもよい。テキストデータ解析用のAIコンピュータシステムの一例としては,IBM社が提供する「IBM Watson Assistant」,マイクロソフト社が提供する「Microsoft Azure Language Understanding」(LUIS)などがある。なお,上記は一例であり,どのようなテキストデータ解析用のコンピュータシステムであっても用いることができる。
【0030】
学習システム2は,テキストデータ解析コンピュータ4における自然言語解析処理を学習させるコンピュータシステムであって,学習処理部20と精度判定処理部21とを有する。
【0031】
学習処理部20は,テキストデータ解析コンピュータ4における自然言語解析処理を学習させるための処理を実行する。
【0032】
自然言語解析処理の学習処理は,以下のように実行することができる。
【0033】
まず学習処理部20は,名刺に関する情報(名刺情報)が変更される種類の意図を示すラベル(意図ラベル)の設定を受け付けるとともに,その意図ラベルに対して,名刺情報がデータ化された名刺データに変更があった場合にどのような処理を実行するかを通知する項目の設定を行い,その入力を受け付ける。
図5に意図ラベルと,名刺データの変更箇所の項目の通知との対応づけを示す。
図5では意図ラベルとして「役職変更」,「異動」,「退職」,「休職」を設定した場合であるが,これらに限定しない。そして意図ラベルが「役職変更」の場合には,後述する名刺データ記憶部31における名刺データのレコードのうち,「役職」と「部署」のカラム(項目)を変更することを,意図ラベルが「異動」の場合には,後述する名刺データ記憶部31における名刺データのレコードのうち,「住所」と「電話番号」と「部署」のカラム(項目)を変更することを,意図ラベルが「退職」の場合には,後述する名刺データ記憶部31における名刺データのレコードを削除することを,意図ラベルが「休職」の場合には,後述する名刺データ記憶部31における名刺データのレコードを休止することを,それぞれ通知することを示している。
【0034】
そして学習処理部20は,各意図ラベルに対して,複数個,少なくとも10個以上の自然言語を対応づけて登録を受け付ける(たとえば「役職変更」のラベルでは,「昇格」,「昇進」などの自然言語)。
図6に意図ラベルと自然言語の対応づけの概念を模式的に示す。また,テキストデータとそれに対応する正解となる意図ラベル(正解データ)とのデータセットを,学習データとしてテキストデータ解析コンピュータ4に読み込ませ,テキストデータ解析コンピュータ4に学習をさせる。学習データとしては,メールデータ,営業日報データ,電話による会話の音声テキスト化データなどが一例としてあるが,それらに限定されない。
図7に学習データとしての営業日報データのデータセットの一例を示す。
【0035】
精度判定処理部21は,学習処理部20で学習されたモデルに対して,テストデータをテキストデータ解析コンピュータ4に入力し,その確信度(精度)を出力させることで,学習の精度を判定する。ここで入力するテストデータは,正解が分かっているデータ(正解として出力されるべき意図ラベル(正解データ)が分かっているデータ)を入力する。この処理の概念を
図8に示す。テストデータに対する正解データは分かっているので,入力したテストデータに対する正解データである意図ラベルと,出力結果のうちもっとも確信度が高い意図ラベルとを比較し,それが合致しているかを判定する。
【0036】
図9に,テキストデータ解析コンピュータ4として用いた「IBM Watson Assistant」にて学習処理を実行し,テストデータを入力した結果の一例を示す。
図9(a)はテストデータ「藤本様が転勤される」を入力し,意図ラベル「異動」を確信度82%として出力結果を得た場合であり,
図9(b)はテストデータ「野本様が退職された」を入力し,意図ラベル「退職」を確信度81%として出力結果を得た場合であり,
図9(c)はテストデータ「佐藤様が課長に昇進された」を入力し,意図ラベル「役職変更」を確信度79%として出力結果を得た場合であり,
図9(d)はテストデータ「山田様が都合に休職中とのこと」を入力し,意図ラベル「休職」を確信度78%として出力結果を得た場合である。
【0037】
そして精度判定処理部21は,各意図ラベルについて,入力したテストデータに対する正解データの意図ラベルと合致し,かつ,その確信度があらかじめ定めた閾値(たとえば75%)以上である場合,学習が行えたことを判定する。仮に,入力したテストデータに対する正解データの意図ラベルと合致しない,または合致していてもその確信度があらかじめ定めた閾値に達しない場合には,学習が未了であることを判定する。判定結果は,所定の通知をしてもよい。
【0038】
管理システム3は,名刺データの管理を行うコンピュータシステムであって,名刺データ入力受付処理部30と名刺データ記憶部31とテキストデータ入力受付処理部32と解析依頼処理部33と通知処理部34と名刺データ変更処理部35とを有する。
【0039】
名刺データ入力受付処理部30は,名刺交換がされた場合など,名刺情報の入力を新規に受け付ける。名刺情報としては,氏名,会社名(組織名),役職,郵便番号,住所,電話番号,FAX番号,電子メールアドレス,ウェブサイトのURLなどの項目がある。名刺情報に基づいて入力を受け付けてデータ化された名刺データは,後述する名刺データ記憶部31に記憶される。名刺データの入力受付は,取引先の担当者の名刺に記載された情報をみた者がそれぞれの項目のデータを手入力することでデータ化して受け付けてもよいし,名刺を撮影した画像情報に対してOCR認識処理が実行され,その認識結果のテキストデータを受け付けてもよい。
【0040】
名刺データ記憶部31は,名刺情報がデータ化された名刺データを記憶する。
【0041】
テキストデータ入力受付処理部32は,名刺データの変更があったか否かを解析する対象とするテキストデータの入力を受け付ける。たとえばメールデータ,営業日報データ,電話による会話の音声テキスト化データなどが該当するが,これ以外のテキストデータであってもよい。
【0042】
解析依頼処理部33は,テキストデータ入力受付処理部32で入力を受け付けたテキストデータを,テキストデータ解析コンピュータ4に送り,自然言語解析処理を行わせ,その判定結果を受け付ける。ここで受け付ける判定結果としては,意図ラベルであってもよいし,意図ラベルとその確信度であってもよい。また変更がなかったことを判定した場合にはそれを受け付ける。
【0043】
通知処理部34は,解析依頼処理部33において受け付けた判定結果に基づいて,その意図ラベルに対応づけられた名刺データの変更箇所の項目とそれに対する処理の通知を,あらかじめ定められた担当者に対して送る。この際に,変更があった人物名を特定する情報も解析依頼処理部33から受け付けているので,それも合わせて送る。
【0044】
名刺データ変更処理部35は,通知処理部34からの通知を受けた担当者が,名刺データ記憶部31に記憶する名刺データのうち,対応する人物名の変更する箇所の項目の入力を受け付けて,名刺データ記憶部31の変更を行う。この際に,名刺データ記憶部31では,悪意ある変更や変更ミスを防止するため,変更箇所の項目および/または処理以外の変更を受け付けないようにしてもよい。
【0045】
つぎに本発明の名刺管理システム1を用いた処理プロセスの一例を
図3および
図4のフローチャートを用いて説明する。
【0046】
まずテキストデータ解析コンピュータ4の学習フェーズの処理プロセスの一例を
図3のフローチャートを用いて説明する。
【0047】
テキストデータ解析コンピュータ4の自然言語解析処理を学習させる前処理として,学習を行わせる操作担当者は,意図ラベルの設定を行うとともに,その意図ラベルに対して,名刺データに変更があった場合にどのような処理を実行するかの設定を行い,その入力をテキストデータで受け付ける(S100)。ここで受け付けた意図ラベルに対する名刺データに変更があった場合の処理については,管理システム3に記憶させる。
【0048】
意図ラベルの設定を行った後,操作担当者は,テキストデータ解析コンピュータ4の自然言語解析処理の学習処理を実行させる。すなわち,各意図ラベルに対して,少なくとも10個以上の自然言語を対応づけて学習処理部20で入力を受け付け,それらの意図ラベルをテキストデータ解析コンピュータ4に登録させる。また,学習処理部20は,意図ラベルごとに対応するデータセットを学習データとしてテキストデータ解析コンピュータ4に読み込ませることで,学習を実行させる(S110)。
【0049】
一定数のテキストデータをテキストデータ解析コンピュータ4に読み込ませて学習させた後,操作担当者は,テストデータを入力し,それを精度判定処理部21で受け付ける。精度判定処理部21は,受け付けたテストデータをテキストデータ解析コンピュータ4に送り,自然言語解析処理を実行させ,回答データとしての意図ラベルとそれに対する確信度とをテキストデータ解析コンピュータ4から受け付ける。各意図ラベルについて,テストデータにおける正解データとしての意図ラベルと,回答データとしての意図ラベルとが合致しており,かつ確信度が所定の閾値以上である場合には,学習が終了したと判定し,その通知を行う。
【0050】
また,各意図ラベルについて,テストデータにおける正解データとしての意図ラベルと,回答データとしての意図ラベルとが合致していない,または確信度が所定の閾値未満である場合には,学習が未了であると判定し,その通知を行う。
【0051】
以上のように,学習が終了したと判定されるまで学習を繰り返す。
【0052】
つぎに名刺データ記憶部31に記憶した名刺データの管理を行う管理フェーズの処理プロセスの一例を
図4のフローチャートを用いて説明する。また,
図10に管理フェーズの全体の概念の一例を模式的に示す。
【0053】
なお,管理の対象となる名刺データは,あらかじめ名刺交換の際に名刺に基づいて名刺データ入力受付処理部30で入力を受け付けており,名刺データ記憶部31に記憶されている。
【0054】
取引先担当者との間,社内従業員同士でのメールデータや電話による会話の音声テキスト化データ,従業員が入力した営業日報データのテキストデータなどの名刺データに変更があったかの解析対象とするテキストデータの入力を,テキストデータ入力受付処理部32で受け付ける(S200)。たとえばメールサーバからメールデータを取得し,メールの本文のテキストデータの入力を受けたり,電話による会話がテキスト化され,そのテキストデータの入力を受け付けたり,営業日報を記憶する営業日報サーバから取引先とのやりとりを示すテキストデータを取得し,そのテキストデータの入力を受け付ける。
【0055】
そして解析依頼処理部33は,テキストデータ入力受付処理部32で受け付けたテキストデータをテキストデータ解析コンピュータ4に送り,自然言語解析処理を実行し,名刺データに変更があるかの判定をさせる(S210)。たとえばテキストデータ解析コンピュータ4において,テキストデータに対する自然言語解析処理を実行させ,名刺データに変更があったか否か,変更があった場合にはどの意図ラベルかの判定結果を受け付ける。この場合,テキストデータ解析コンピュータ4では意図ラベルごとの確信度が出力されるので,そのうち,もっとも高い確信度であって,その確信度が所定の閾値を越えている場合には,当該意図ラベルに対応する変更があったことを判定する。もっとも高い確信度が所定の閾値未満である場合には,変更がなかったことを判定する。
【0056】
またテキストデータ解析コンピュータ4は,名刺データに変更があったことを判定すると,誰の名刺データに変更があったかを解析する。すなわち,管理システム3から受け付けたテキストデータに含まれるテキストデータに基づいて,変更があった人物名を特定する。たとえばテキストデータ解析コンピュータ4として,IBM社の「IBM Watson Natural Language Understanding(NLU)」を用いた場合,当該テキストデータを解析させて,そのテキストデータに含まれる人物名を特定する。これを模式的に示すのが
図11である。
【0057】
解析依頼処理部33において,変更があった意図ラベルと,人物名の判定結果をテキストデータ解析コンピュータ4から受け付けると(S220),通知処理部34は,意図ラベルに基づいて,意図ラベルとそれに対応する名刺データの変更箇所に対してどのような処理を実行するかの対応づけを参照して,変更箇所とそれに対する処理とを特定し,それらの情報と人物名とを,あらかじめ定められた担当者に通知をする(S230)。この場合の通知の一例を
図12に示す。
【0058】
この通知をみた担当者は,それに基づいて,名刺データの変更を行う(S240)。すなわち,通知処理部34からの通知を受けた担当者が所定の操作を行うことで変更のあった情報の入力を行い,その入力を名刺データ変更処理部35を受け付けて,名刺データ記憶部31に記憶する。名刺データ変更処理部35は,悪意ある変更や変更ミスを防止するため,変更があったと通知を受けた人物名の変更箇所の項目や対応する処理操作以外の入力ができないように設定するとよい。
【0059】
一方,解析依頼処理部33において,変更がなかった判定結果を受け付けた場合には(S220),特に処理は行わない。
【0060】
以上のような処理を実行することで,名刺情報に変更があった場合には,それが担当者に自動的に通知されるので,名刺情報がデータ化された名刺データを最新の状態で管理することができる。
【0061】
なお,解析依頼処理部33がテキストデータ解析コンピュータ4にテキストデータの解析の依頼を行うのではなく,管理システム3がテキストデータ解析コンピュータ4と同様の処理機能を実現してもよい。この場合,解析依頼処理部33の代わりに,テキストデータの解析処理を実行する解析処理部(図示せず)を備えることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の名刺管理システム1を用いることによって,名刺に関する情報に変更があるか否かの自動的に監視し,また変更がある場合にはその変更箇所を推定して変更させることで,最新の状態で名刺管理を行うことができる。
【符号の説明】
【0063】
1:名刺管理システム
2:学習システム
3:管理システム
4:テキストデータ解析コンピュータ
20:学習処理部
21:精度判定処理部
30:名刺データ入力受付処理部
31:名刺データ記憶部
32:テキストデータ入力受付処理部
33:解析依頼処理部
34:通知処理部
35:名刺データ変更処理部
70:演算装置
71:記憶装置
72:表示装置
73:入力装置
74:通信装置