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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】杭支持構造物の補強方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/12 20060101AFI20221130BHJP
   E02B 3/06 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
E02D27/12 Z
E02B3/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019025424
(22)【出願日】2019-02-15
(65)【公開番号】P2020133162
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(74)【代理人】
【識別番号】100089886
【氏名又は名称】田中 雅雄
(72)【発明者】
【氏名】宇野 州彦
(72)【発明者】
【氏名】池野 勝哉
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-297815(JP,A)
【文献】特開昭61-216914(JP,A)
【文献】特開平10-183755(JP,A)
【文献】特開2013-007250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00 -24/00
E02B 3/04 - 3/14
E02D 27/00 -27/52
E02D 29/00
E02D 29/045-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭頭部が上部工に接合されている杭支持構造物の鋼管杭に腐食が発生したときの杭支持構造物の補強方法において、
前記上部工より下の位置で前記鋼管の腐食部分の外周に杭固定体を固定するとともに、前記上部工の梁部側面に複数の定着用部材を固定し、複数の補強部材の一端を前記杭固定体に定着させるとともに、前記複数の補強部材の他端をそれぞれ前記各定着用部材に定着させ、前記杭固定体の内側に充填材を打設し、前記杭固定体と前記鋼管杭とを一体化させ、前記鋼管杭の腐食部分を補強することを特徴とする杭支持構造物の補強方法。
【請求項2】
杭頭部が上部工に接合されている杭支持構造物の鋼管杭に腐食が発生したときの杭支持構造物の補強方法において、
前記鋼管杭の座屈部分より下側の外周に杭固定体を固定するとともに、
前記上部工の梁部側面に複数の定着用部材を固定し、複数の補強部材の一端を前記杭固定体に定着させるとともに、前記複数の補強部材の他端をそれぞれ前記各定着用部材に定着させることを特徴とする杭支持構造物の補強方法。
【請求項3】
前記補強部材は、引張荷重及び圧縮荷重を負担し得る棒状補強部材である請求項1又は2に記載の杭支持構造物の補強方法。
【請求項4】
前記補強部材は、引張荷重を負担し得る棒状補強部材又は線状補強部材である請求項1又は2に記載の杭支持構造物の補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩害等によって劣化した桟橋等の杭支持構造物を補強する杭支持構造物の補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、桟橋は、水底に立設された複数の鋼管杭の杭頭部がコンクリート梁(上部工)に剛結合され、当該鋼管杭とコンクリート梁とによってラーメン構造を成している。
【0003】
このコンクリート梁に連結される鋼管杭の杭頭部は、スプラッシュゾーンと呼ばれる飛沫帯になっており、常に水面上において飛沫に晒され、繰り返し押し寄せる波浪の飛沫によって塩化物イオン等の塩害因子が杭頭部及びその付近のコンクリート部分に付着する。
【0004】
この付着した塩害因子は、鋼管杭の杭頭部付近の腐食を生じさせるとともに、上部工を構成するコンクリート内に浸入し、鉄筋や支柱等の鋼製部材を腐食させ、上部工体を劣化させる被害、即ち、塩害の原因となっていた。
【0005】
そこで、従来、このような飛沫帯にある杭頭部には、モルタル被膜あるいは重防食(エポキシ樹脂,ウレタン樹脂)と呼ばれる防食処理を施し、塩害の進行を防止している(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
しかしながら、このような防食被膜は、長年の経年劣化や付着した海洋生物の落下に伴って損傷するため、その効果は恒久的に継続せず、鋼管杭の杭頭部及びその付近のコンクリート部分に腐食が生じていた。
【0007】
そこで、このような杭頭付近の腐食に対しては,被りコンクリートの劣化部をはつり取り、その部分をモルタル等の補修材で補修するとともに、既存鉄筋の断面が大きく減少している場合には、あらたに鉄筋を添えて補強していた。
【0008】
また、鋼管杭に関しては、劣化した被膜や錆をそぎ落とし、耐力上必要な肉厚に満たない場合には鋼板や鉄筋コンクリートを巻きたてるなどの補強を行った上で新たに被膜防食を設けていた(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2000-157929号公報
【文献】特開2000-336813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
飛沫帯における腐食劣化は、鋼管杭及びその付近のコンクリート部分とで同時に進行している場合が多く、また、設計における杭頭部の剛結条件は、鋼管杭とコンクリート梁の両者が相互に関係していることから、鋼管杭の杭頭部とその付近のコンクリート部分とを一体的に補強することが望ましい。
【0011】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、鋼管杭頭部又はその付近のコンクリート部分の腐食が発生した部分毎に補修しているに過ぎなかった。
【0012】
また、この種の補強作業は、水面際で行われるため、海上での作業を極力簡素化することが望ましい。
【0013】
さらには、鋼管杭に鉄筋コンクリートを巻きたてる方法では、鉄筋を既設の上部工に貫通させて鋼管杭と上部工との一体化を図る必要があるが、鋼管杭の上部工に埋設された部分に鍔状に突設された鍔プレートが鉄筋に干渉するため施工性が著しく低下するという問題があった。
【0014】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、海上での作業を簡素化し、施工性に優れた杭支持構造物の補強方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、杭頭部が上部工に接合されている杭支持構造物の鋼管杭に腐食が発生したときの杭支持構造物の補強方法において、前記上部工より下の位置で前記鋼管の腐食部分の外周に杭固定体を固定するとともに、前記上部工の梁部側面に複数の定着用部材を固定し、複数の補強部材の一端を前記杭固定体に定着させるとともに、前記複数の補強部材の他端をそれぞれ前記各定着用部材に定着させ、前記杭固定体の内側に充填材を打設し、前記杭固定体と前記鋼管杭とを一体化させ、前記鋼管杭の腐食部分を補強することにある。
【0016】
また、請求項2に記載の発明の特徴は、杭頭部が上部工に接合されている杭支持構造物の鋼管杭に腐食が発生したときの杭支持構造物の補強方法において、前記鋼管杭の座屈部分より下側の外周に杭固定体を固定するとともに、前記上部工の梁部側面に複数の定着用部材を固定し、複数の補強部材の一端を前記杭固定体に定着させるとともに、前記複数の補強部材の他端をそれぞれ前記各定着用部材に定着させることにある。
【0017】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記補強部材は、引張荷重及び圧縮荷重を負担し得る棒状補強部材であることにある。
【0018】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記補強部材は、引張荷重を負担し得る棒状補強部材又は線状補強部材であることにある。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る杭支持構造物の補強方法は、請求項1に記載の構成を具備することによって、海上での作業を簡素化し、効率よく杭支持構造物を補強することができる。また、鋼管杭に突設された鍔状プレートとの干渉を回避し、施工性に優れる。さらに、腐食により薄肉化した鋼管杭の補強とともに、杭固定体を鋼管杭に堅固に固定することができる。
【0020】
また、本発明において、請求項2に記載の構成を具備することによって、海上での作業を簡素化し、効率よく杭支持構造物を補強することができる。また、鋼管杭に突設された鍔状プレートとの干渉を回避し、施工性に優れる。
【0021】
また、本発明において、請求項3又は4に記載の構成を具備することによって、補強対象箇所の状況に合わせて補強部材を適宜選択し、効率よく杭支持構造物を補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る杭支持構造物の補強方法によって補強された杭支持構造物の一例を示す正面図である。
図2】同上の補強前の状態を示す部分拡大正面図である。
図3】本発明に係る杭支持構造物の補強方法における杭固定体の取り付け作業の状態を示す底面図である。
図4】同上の杭固定体を取り付けた状態を示す部分拡大正面図である。
図5】同上の定着用部材を取り付けた状態を示す部分拡大正面図である。
図6】同上の補強部材を取り付けた状態を示す部分拡大正面図である。
図7】同上の底面図である。
図8】同上の斜視図である。
図9】同上の補強部材の定着部の状態を示す拡大正面図である。
図10】本発明に係る杭支持構造物の補強方法の効果を確認するための試験に使用する装置を示す正面図である。
図11】同上の載荷試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明に係る杭支持構造物の補強方法の実施態様を図1図11に示した実施例に基づいて説明する。図1は、本発明によって補強された杭支持構造物の一例を示し、図中符号1は桟橋等の杭支持構造物、符号2は水面である。
【0024】
杭支持構造物1は、図1図2に示すように、水底地盤3に打設された複数の鋼管杭4,4…と、鋼管杭4,4…に支持された鉄筋9,9…コンクリート造の梁部5とを備え、梁部5上に床版部6が形成され、梁部5と床版部6とで桟橋の上部工7を成している。尚、水底地盤3は、図1のような水平な地盤に限定されず、傾斜した地盤であってもよい。
【0025】
鋼管杭4,4…は、梁部5に埋設される杭頭部の外周に突設された鍔状プレート8,8を備え、鍔状プレート8,8に鉄筋9,9…の端部が固定され、鉄筋9,9…を介してコンクリート製の梁部5と一体化されている。
【0026】
この杭支持構造物1を補強するには、先ず、上部工7の腐食したコンクリート部分を斫り取って除去し、鉄筋9,9…の状態を確認する。
【0027】
次に、鉄筋9,9…の状態に応じて、当該鉄筋9,9…を研磨或いは補強用の鉄筋(図示せず)を継ぎ足した上で防錆処理を施す。
【0028】
そして、コンクリートを斫り取った部分に補修用のコンクリート又はモルタル等の補修材を打設し、上部工7の下面部や側面部を補修する。
【0029】
次に、図3図4に示すように、上部工7下面より一定の距離をおいた位置に杭固定体10を鋼管杭4,4…に取り付ける。
【0030】
杭固定体10は、半割筒状に形成された半割体10a,10aによって構成され、半割体10a,10aの両側縁に形成された締結用のフランジ11,11を重ね合わせボルト締めすることにより、鋼管杭4,4…の外周に巻き付けられるようになっている。尚、符号12はボルトである。
【0031】
各半割体10a,10aには、それぞれ外周面に一対の定着体13,13が対称配置に溶接等によって固定されており、杭固定体10を鋼管杭4所定の位置に固定することによって後述する定着用部材14と対応する位置に各定着体13,13が配置されるようになっている。
【0032】
定着体13,13は、中央に挿通孔15を有する板状の定着板13aと、定着板13aの両側縁より垂直に突出した補強板13b,13bとをもってコ字状に形成され、コ字状の開口側がそれぞれ所定の角度で外側に向くように各半割体10a,10aの外周面に固定されている。尚、定着体13の形状は、本実施例のようにコ字状に限定されず、定着が可能な形状であればよい。
【0033】
また、半割体10aの内側及び鋼管杭4の外側には、必要に応じてシアキー等の突起(図示せず)が溶接等によって固定されていてもよい。
【0034】
この杭固定体10は、鋼管杭4,4…の状態によって取り付け位置が異なり、例えば、鋼管杭4,4…の一部に座屈が生じている場合には、上部工7下面より一定の距離をおき、当該座屈部分の下側に固定される。尚、本実施例では、杭固定体10を水面2よりも高い位置に設置した例を示しているが、水面2より下に設置してもよく、また、干潮により水面2が杭固定体10に対し上下することもありうる。
【0035】
また、鋼管杭4を構成する鋼材の肉厚が腐食によって減少している場合には、杭固定体10と鋼管杭4との間にセメントやモルタル等の充填材16が充填され、充填材16を介して鋼管杭4と杭固定体10とを一体化させることにより、腐食部分を補強するようになっている。
【0036】
尚、この場合には、半割体10aの内側にシアキー等の突起を設けておくことが望ましく、必要に応じて鋼管杭4側にシアキー等の突起を設けておいてもよい。
【0037】
次に、図5に示すように、上部工7の梁部5側面に杭頭部に対して対称配置に複数(本実施例では、梁部5の表裏にそれぞれ一対)の定着用部材14,14を固定する。
【0038】
定着用部材14は、鋼板等からなる板状に形成され、上部工7の梁部5側面にボルト17,17…によって強固に固定されるようになっている。
【0039】
各定着用部材14には、表面に定着体13が溶接等によって固定されている。
【0040】
定着体13は、杭固定体に固定された定着体13と同様に構成され、中央に挿通孔15を有する板状の定着板13aと、定着板13aの両側縁より垂直に突出した補強板とをもってコ字状に形成され、定着板13aが杭固定体10に固定された定着体13,13の定着板13aの互いに対向するように所定の角度で固定されている。尚、定着体13の形状は、本実施例のようにコ字状に限定されず、定着が可能な形状であればよい。
【0041】
次に、図6図8に示すように、補強部材18の両端をそれぞれ杭固定体10の定着体13,13及び定着用部材14の定着体13に挿通させ、補強部材18の一端を杭固定体10に定着させるとともに、複数の補強部材18の他端をそれぞれ各定着用部材14に定着させる。
【0042】
補強部材18には、鋼棒等の引張荷重及び圧縮荷重を負担し得る棒状の棒状補強部材又はPCケーブルや炭素繊維ケーブル、ワイヤーなどからなる引張荷重を負担し得る線状又は綱状の線状補強部材を補強箇所の状況や想定される外力と梁部5や鋼管杭4の強度との関係等を勘案して適宜選択して使用する。
【0043】
例えば、梁部5と鋼管杭4の耐力、梁部5内の配筋状況を検討し、梁部5や鋼管杭4の強度が高く、想定される外力に対して補強部材18を介して引張荷重及び圧縮荷重が作用しても負担し得る状態にある場合には、引張荷重及び圧縮荷重を負担し得る棒状補強部材を選択することができ、梁部5や鋼管杭4の負担を引張荷重のみとした方が梁部5や鋼管杭4にとって良い場合には、引張荷重を負担し得る状態の補強部材18を選択する。
【0044】
この補強部材18は、両端に雄ねじ部18aを備え、棒状補強部材によって引張荷重及び圧縮荷重を負担する場合、図9(a)に示すように、雄ねじ部18aを定着体13の定着板13aの挿通孔15に挿通させ、定着板13aの両側よりナット19,19を締め付けることによって定着し、棒状補強部材又は線状補強部材によって引張荷重を負担する場合には、図9(b)に示すように、補強部材18の先端側よりナット19を締め付けて定着板13aに定着する。その際、補強部材18には、ナット19の締め付け具合によって、所望の張力を付与することができる。尚、図中符号20は、保護用キャップである。
【0045】
この杭支持構造物1は、上部工7に外力が作用すると、補強部材18に引張荷重又は圧縮荷重が作用し、各補強部材18が荷重に対抗するようになる。例えば、線状補強部材を使用した場合には、図6中矢印の方向に外力が作用すると、図6中矢印示したように一方の補強部材18に引張荷重が作用し、これに対抗するようになっている。
【0046】
次に、この補強された杭支持構造物の補強効果に関する載荷試験について説明する。尚、上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明する。
【0047】
図10は、試験装置の概略を示し、上部工7の鉄筋9,9…が腐食している試験体を、上部工7を下側にして鋼管杭4を上向きにした状態で配置し、上部工7を地面に台座21,21を介して固定した状態で、油圧シリンダからなる載荷装置22によって鋼管杭4の上端に荷重を載荷させ、本発明に係る補強方法で補強した場合と補強しなかった場合について比較した。
【0048】
載荷は、正負(紙面上の左右)繰り返し載荷とし、載荷荷重は漸増荷重とした。繰り返し載荷は、鋼管杭が降伏に至る変位δyを基本とし、+δy→-δy→+2δy→-2δy→+3δy→-3δy→+4δy→-4δyの順で載荷をそれぞれ3サイクル繰り返した。
【0049】
その結果を図11に示す。横軸は載荷変位で、縦軸はその変位における荷重である。縦軸の荷重が大きいほど、その模型の耐力が大きいことを示しており、補強を行った試験体の方が荷重が大きく、耐力が大きいことがわかる。
【0050】
このように構成された杭支持構造物1の補強方法は、杭固定体10、定着用部材14及び補強部材18をそれぞれ取り付けることによって補強するため、各部材10,14,18の運搬が容易であり、設置作業に重機等を使用せずとも作業を行うことができ、海上での作業を簡素化でき、効率よく杭支持構造物1を補強することができる。
【0051】
また、各部材10,14,18の取り付け作業には、熟練工による特別な技術を用いることなく行うことができる。
【0052】
さらに、この補強方法は、定着用部材14を上部工7内に埋設された杭頭部に突設された鍔状プレート8,8より上に位置する上部工7梁部5の側面に固定するので、作業員が正面を向いて作業することができ、且つ、鍔状プレート8,8と干渉することがなく、施工性に優れている。また、上部工7の梁部5側面は、梁部5の底面に比べて劣化進行が遅く、長期的に補強効果が継続される。
【0053】
さらにまた、本補強方法では、補強部材18に鋼棒等の引張荷重及び圧縮荷重を負担し得る棒状の棒状補強部材又はPCケーブルや炭素繊維ケーブル、ワイヤーなどからなる引張荷重を負担し得る線状又は綱状の線状補強部材を適宜選択して使用することによって、想定される外力と上部工梁部5及び鋼管杭4の強度との関係、例えば、梁部5と鋼管杭4の耐力、梁部5内の鉄筋の配筋状況、或いは、補強箇所の状況、例えば、上部工7の位置に対する杭の位置等を勘案して的確な補強を行うことができる。
【0054】
尚、上述の実施例では、定着用部材14を上部工7の梁部5側面に固定した例ついて説明したが、定着用部材14を梁部5底面の杭頭部に対して対称な位置に固定してもよく、梁部5の側面に固定した定着用部材14と梁部5の底面に固定した定着用部材14とを併用してもよい。
【0055】
また、上述の実施例では、定着用部材14を上部工7の杭頭部に対して対称な位置に設置する例について説明したが、各定着用部材14の固定位置は、これに限定されず、例えば、複数の定着用部材14,14が杭頭部を中心にして水平方向で互いに所定の角度を成す配置としてもよく、また、各定着用部材14と杭頭部との距離を違えるようにしてもよい。
【0056】
さらに、上述の実施例では、杭固定体10を互いに独立した一対の半割体10a,10aをボルト12によって接合する例について説明したが、杭固定体10の態様はこれに限定されず、例えば、両半割体10a,10aの一方の側縁が蝶番によって回動可能に連結され、鋼管杭4に巻き付けた後、他方の側縁部をボルト12によって接合するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 杭支持構造物
2 水面
3 水底地盤
4 鋼管杭
5 梁部
6 床版部
7 上部工
8 鍔状プレート
9 鉄筋
10 杭固定体
11 フランジ
12 ボルト
13 定着体
14 定着用部材
15 挿通孔
16 充填材
17 ボルト
18 補強部材
19 ナット
20 保護用キャップ
21 台座
22 載荷装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11