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特許7185557インクジェットプリンタおよびインク供給方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタおよびインク供給方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20221130BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
B41J2/175 501
B41J2/175 503
B41J2/175 119
B41J2/165 211
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019028296
(22)【出願日】2019-02-20
(65)【公開番号】P2020131560
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】澤田 哲平
(72)【発明者】
【氏名】中西 毅
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 優
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-066812(JP,A)
【文献】特開2017-013453(JP,A)
【文献】特開2018-089932(JP,A)
【文献】特開2015-071281(JP,A)
【文献】特開2005-088568(JP,A)
【文献】特開2017-222086(JP,A)
【文献】特開2018-069533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体にインクを吐出する複数のノズルと、複数の前記ノズルが形成されたノズル面とを有するインクヘッドと、
インクを密封して貯留する第1インクカートリッジに着脱可能に接続される第1上流側端部を有する第1上流側流路と、インクを密封して貯留する第2インクカートリッジに着脱可能に接続される第2上流側端部を有する第2上流側流路と、前記インクヘッドに接続された下流側端部を有しかつ前記第1上流側流路および前記第2上流側流路に接続された下流側流路と、を有するインク経路と、
前記第1上流側流路に配置され、前記第1上流側流路を開放または閉鎖する第1バルブと、
前記第2上流側流路に配置され、前記第2上流側流路を開放または閉鎖する第2バルブと、
前記下流側流路に配置され、前記第1インクカートリッジまたは前記第2インクカートリッジから前記インクヘッドに向けてインクを供給するインク供給装置と、
インクが一時的に貯留される貯留室を有し、前記インク供給装置と前記インクヘッドとの間に位置するように前記下流側流路に配置されたダンパーと、
前記貯留室内の圧力を検出する検出装置と、
前記第1バルブ、前記第2バルブおよび前記インク供給装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記インク供給装置を駆動させた後、前記検出装置によって検出された前記貯留室内の圧力が所定の圧力以下であるかを判定する判定部と、
前記判定部によって前記貯留室内の圧力が前記所定の圧力以下と判定されたときに前記第1バルブおよび前記第2バルブを閉鎖し、前記第1バルブおよび前記第2バルブを閉鎖してから第1の時間が経過した後に、前記判定部によって前記貯留室内の圧力が前記所定の圧力以下と判定されたときに閉鎖されていた前記第1バルブまたは前記第2バルブを開放するバルブ開閉動作を実行するバルブ制御部と、を備えている、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記バルブ制御部は、前記インクヘッドからインクが吐出されているときに、前記バルブ開閉動作を実行する、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記判定部は、前記第1バルブおよび前記第2バルブを閉鎖してから前記第1の時間より長い第2の時間が経過するまでの間、前記インク供給装置を駆動させた後、前記検出装置によって検出された前記貯留室内の圧力が前記所定の圧力以下であるかを判定しない、請求項1または2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記インクヘッドに着脱可能に形成され、前記インクヘッドに取り付けられたときに前記ノズル面を覆いかつ前記ノズル面との間に密閉空間を形成するキャップと、
前記制御装置に制御され、前記密閉空間内の流体を吸引する吸引ポンプと、をさらに備え、
前記制御装置は、
前記インクヘッドの前記ノズルからインクを吐出させて画像を形成する印刷動作を行う印刷制御部と、
前記密閉空間内の流体を吸引ポンプによって吸引して前記ノズルからインクを吐出させるクリーニング動作を行うクリーニング部と、を備え、
前記判定部は、前記印刷動作が行われているときには前記インク供給装置を第1の回数だけ駆動させた後、前記検出装置によって検出された前記貯留室内の圧力が前記所定の圧力以下であるかを判定し、かつ、前記クリーニング動作が行われているときには前記インク供給装置を前記第1の回数より多い第2の回数だけ駆動させた後、前記検出装置によって検出された前記貯留室内の圧力が所定の圧力以下であるかを判定する、請求項1から3のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記第1インクカートリッジおよび前記第2インクカートリッジは、インクの量に応じて変形可能なインクパウチである、請求項1から4のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記ダンパーは、
開口が形成された中空のケース本体と、
前記ケース本体の前記開口を覆うように前記ケース本体に取り付けられ、前記ケース本体と共に前記貯留室を区画し、前記貯留室の内側および外側に撓み変形可能な感圧膜と、を備え、
前記検出装置は、前記感圧膜が前記貯留室の内側に撓むときに前記貯留室に近づく方向に移動し、かつ、前記感圧膜が前記貯留室の外側に撓むときに前記貯留室から離れる方向に移動するレバーと、所定の光を発する発光部と、前記発光部から発せられた光を受光する受光部とを備え、
前記発光部と前記受光部との間に検出領域が設けられ、
前記判定部は、前記レバーが前記検出領域を遮ったとき、前記貯留室内の圧力が前記所定の圧力以下であることを判定する、請求項1から5のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記インク供給装置は、内部にインクが流通しかつ弾性変形可能なチューブと、前記チューブの一部を押圧可能な押圧体と、を備え、
前記押圧体は、前記チューブの一部を押圧しながら移動することによって、前記チューブ内のインクを移動させると共に前記チューブを開放および閉鎖するように構成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
記録媒体にインクを吐出する複数のノズルと、複数の前記ノズルが形成されたノズル面とを有するインクヘッドと、
インクを密封して貯留する第1インクカートリッジに着脱可能に接続される第1上流側端部を有する第1上流側流路と、インクを密封して貯留する第2インクカートリッジに着脱可能に接続される第2上流側端部を有する第2上流側流路と、前記インクヘッドに接続された下流側端部を有しかつ前記第1上流側流路および前記第2上流側流路に接続された下流側流路と、を有するインク経路と、
前記第1上流側流路に配置され、前記第1上流側流路を開放または閉鎖する第1バルブと、
前記第2上流側流路に配置され、前記第2上流側流路を開放または閉鎖する第2バルブと、
前記下流側流路に配置され、前記第1インクカートリッジまたは前記第2インクカートリッジから前記インクヘッドに向けてインクを供給するインク供給装置と、
インクが一時的に貯留される貯留室を有し、前記インク供給装置と前記インクヘッドとの間に位置するように前記下流側流路に配置されたダンパーと、
前記貯留室内の圧力を検出する検出装置と、を備えたインクジェットプリンタにおいて、前記第1インクカートリッジおよび前記第2インクカートリッジから前記インクヘッドにインクを供給するインク供給方法であって、
前記インク供給装置を駆動させた後、前記検出装置によって検出された前記貯留室内の圧力が所定の圧力以下であるかを判定すること、
前記貯留室内の圧力が前記所定の圧力以下と判定されたときに前記第1バルブおよび前記第2バルブを閉鎖すること、
前記第1バルブおよび前記第2バルブを閉鎖してから第1の時間が経過した後に、前記貯留室内の圧力が前記所定の圧力以下と判定されたときに閉鎖されていた前記第1バルブまたは前記第2バルブを開放すること、を含む、インク供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタおよびインク供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、第1のインクヘッドと第1のインクヘッドにインクを供給する第1のインクカートリッジとを接続する第1のインク経路と、第2のインクヘッドと第2のインクヘッドにインクを供給する第2のインクカートリッジとを接続する第2のインク経路とを備えたインクジェットプリンタが開示されている。
【0003】
ここで、特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、第1のインクカートリッジまたは第2のインクカートリッジ内のインクを使い果たしても、第1のインクヘッドおよび第2のインクヘッドによって印刷が可能なように、第1のインク経路と第2のインク経路とがブリッジ流路によって接続されている。即ち、第1のインクヘッドおよび第2のインクヘッドには、第1のインクカートリッジおよび第2のインクカートリッジからインクが供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-89932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インクカートリッジに貯留されるインクは印刷が進行すると減少し、やがて無くなる。このため、印刷を継続するためには当然にインクカートリッジ内にインクを補充する必要がある。例えば、インクカートリッジ内のインクが使い果たされると、ユーザは、インクが貯留された新たなインクカートリッジに交換する。
【0006】
ここで、1つのインクヘッドに対して少なくとも2つのインクカートリッジからインクが供給される構成を備えたインクジェットプリンタにおいて、できるだけ連続的に印刷を行うために、一方のインクカートリッジ内のインクが無くなったときに、他方のインクカートリッジからインクが供給されるように構成されているものが知られている。本願発明者は、インクを密封して貯留するインクカートリッジを用いるときに、一方のインクカートリッジ内のインクが無くなったときに、他方のインクカートリッジからインクの供給を開始しようとすると、他方のインクカートリッジ内のインクが一方のインクカートリッジ内に逆流してしまうということを発見した。ユーザは、一方のインクカートリッジ内のインクが無くなったときには、一方のインクカートリッジを新しいインクカートリッジに交換するが、このとき、一方のインクカートリッジ内には逆流したインクが存在していることがある。このため、一方のインクカートリッジを交換してしまうと使用されないインクが存在することになる。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、一のインクカートリッジから他のインクカートリッジへ切り替えるときに、一のインクカートリッジへのインクの逆流を抑制することができるインクジェットプリンタおよびインク供給方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るインクジェットプリンタは、記録媒体にインクを吐出する複数のノズルと、複数の前記ノズルが形成されたノズル面とを有するインクヘッドと、インクを密封して貯留する第1インクカートリッジに着脱可能に接続される第1上流側端部を有する第1上流側流路と、インクを密封して貯留する第2インクカートリッジに着脱可能に接続される第2上流側端部を有する第2上流側流路と、前記インクヘッドに接続された下流側端部を有しかつ前記第1上流側流路および前記第2上流側流路に接続された下流側流路と、を有するインク経路と、前記第1上流側流路に配置され、前記第1上流側流路を開放または閉鎖する第1バルブと、前記第2上流側流路に配置され、前記第2上流側流路を開放または閉鎖する第2バルブと、前記下流側流路に配置され、前記第1インクカートリッジまたは前記第2インクカートリッジから前記インクヘッドに向けてインクを供給するインク供給装置と、インクが一時的に貯留される貯留室を有し、前記インク供給装置と前記インクヘッドとの間に位置するように前記下流側流路に配置されたダンパーと、前記貯留室内の圧力を検出する検出装置と、前記第1バルブ、前記第2バルブおよび前記インク供給装置を制御する制御装置と、を備えている。前記制御装置は、前記インク供給装置を駆動させた後、前記検出装置によって検出された前記貯留室内の圧力が所定の圧力以下であるかを判定する判定部と、前記判定部によって前記貯留室内の圧力が前記所定の圧力以下と判定されたときに前記第1バルブおよび前記第2バルブを閉鎖し、前記第1バルブおよび前記第2バルブを閉鎖してから第1の時間が経過した後に、前記判定部によって前記貯留室内の圧力が前記所定の圧力以下と判定されたときに閉鎖されていた前記第1バルブまたは前記第2バルブを開放するバルブ開閉動作を実行するバルブ制御部と、を備えている。
【0009】
本発明のインクジェットプリンタによると、判定部は、インク供給装置を駆動させた後、検出装置によって検出された貯留室内の圧力が所定の圧力以下であるかを判定する。ここで、貯留室内にインクが供給されると、貯留室内の圧力が所定の圧力より大きくなる。一方、インク供給装置を駆動させても貯留室内にインクが供給されないと、貯留室内の圧力が所定の圧力以下のままである。このように、判定部によって貯留室内の圧力が所定の圧力以下と判定されたときには、インクヘッドにインクを供給していた第1インクカートリッジまたは第2インクカートリッジ内のインクが無くなっている。ここで、第1インクカートリッジおよび第2インクカートリッジはインクを密封して貯留するように構成されているため、第1インクカートリッジおよび第2インクカートリッジ内のインクが無くなったときには、第1インクカートリッジおよび第2インクカートリッジ内の負圧が非常に高くなっている。そこで、バルブ制御部は、判定部によって貯留室内の圧力が所定の圧力以下と判定されたとき(即ち第1インクカートリッジまたは第2インクカートリッジ内のインクが無くなったとき)に第1バルブおよび第2バルブを閉鎖する。これにより、インクが無くなった第1インクカートリッジまたは第2インクカートリッジは、下流側流路と連通しなくなる。そして、バルブ制御部は、第1バルブおよび第2バルブを閉鎖してから第1の時間が経過した後に、判定部によって貯留室内の圧力が所定の圧力以下と判定されたときに閉鎖されていた1バルブまたは第2バルブを開放する。このように、例えば、第1インクカートリッジ内のインクが無くなったときに第1バルブおよび第2バルブを閉鎖して、その後に、インクが残っている第2インクカートリッジからインクを供給するために第2バルブを開放するため、第2インクカートリッジから第1インクカートリッジにインクが逆流することが抑制される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、一のインクカートリッジから他のインクカートリッジへ切り替えるときに、一のインクカートリッジへのインクの逆流を抑制することができるインクジェットプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係るプリンタの斜視図である。
図2】一実施形態に係るプリンタの主要部の正面図である。
図3】一実施形態に係るインク供給システムを示す模式図である。
図4】一実施形態に係るキャリッジの底面図である。
図5】一実施形態に係る第1供給ポンプの構成を示す縦断面図である。
図6】一実施形態に係る第1ダンパーおよび第1検出装置の平面断面図であり、第1貯留室内の圧力が所定の圧力以下である状態を示す図である。
図7】一実施形態に係る第1ダンパーおよび第1検出装置の平面断面図であり、第1貯留室内の圧力が所定の圧力より大きい状態を示す図である。
図8】一実施形態に係るキャッピング装置の周辺の構成を示す図であり、インクヘッドからキャップが取り外された状態を示す正面図である。
図9】一実施形態に係るキャッピング装置の周辺の構成を示す図であり、インクヘッドにキャップが取り付けられた状態を示す正面図である。
図10】一実施形態に係るプリンタの制御系のブロック図である。
図11】一実施形態に係るインクカートリッジの切り替えの手順を示すフローチャートである。
図12】一施形態に係るインクカートリッジの切り替えの手順を示すフローチャートの変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係るインクジェットプリンタ10(以下、プリンタ10とする。)について説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0013】
以下の説明では、左、右、上、下とは、プリンタ10の正面にいるユーザから見た左、右、上、下をそれぞれ意味することとする。また、プリンタ10から上記ユーザに近づく方を前方、遠ざかる方を後方とする。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。図面中の符号Yは主走査方向を表す。本実施形態では、主走査方向Yは、左右方向である。図面中の符号Xは副走査方向を表す。副走査方向Xは主走査方向Yと交差する方向(例えば、平面視で垂直に交差する方向)である。本実施形態では、副走査方向Xは前後方向である。ただし、上記方向は便宜的に定めたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。
【0014】
図1に示すように、プリンタ10は、記録媒体12に印刷を行う。記録媒体12は、例えば、長尺に形成され、ロール状に巻かれて用いられる。なお、記録媒体12は、ロール状に巻かれたものが所定の長さに切断されたシート状のものであってもよい。記録媒体12は、例えば、記録紙である。ただし、記録媒体12は、記録紙に限定されない。例えば、記録媒体12には、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステルなどの樹脂材料から形成されたシート、台紙と台紙上に積層されかつ接着剤が塗布された剥離紙とからなるシール材等が含まれる。
【0015】
図1に示すように、プリンタ10は、ベース部材40と、本体ケース50と、右脚部16Rと、左脚部16Lと、インクヘッドユニット20(図2参照)と、制御装置30(図2参照)とを備えている。ベース部材40は、主走査方向Yに延びる。ベース部材40は、プラテン15を備えている。プラテン15は、主走査方向Yに延びる。右脚部16Rおよび左脚部16Lは、ベース部材40の下部に取り付けられている。右脚部16Rおよび左脚部16Lは、ベース部材40を支持する。
【0016】
図2に示すように、インクヘッドユニット20は、ベース部材40に設けられている。インクヘッドユニット20は、本体ケース50の内方に配置されている。インクヘッドユニット20は、プラテン15より上方に配置されている。インクヘッドユニット20は、キャリッジ22、後述する第1インクヘッド20A、第2インクヘッド20B、第1ダンパー80Aおよび第2ダンパー80Bを備えている。
【0017】
図2に示すように、プリンタ10は、ベース部材40に設けられたガイドレール13を備えている。ガイドレール13は、主走査方向Yに延びている。ガイドレール13には、インクヘッドユニット20のキャリッジ22が係合している。キャリッジ22は、キャリッジ移動機構8によって、ガイドレール13に沿って主走査方向Yに往復移動する。キャリッジ移動機構8は、ガイドレール13の左端側に配置された左側のプーリ19aと、ガイドレール13の右端側に配置されたプーリ19bとを有している。プーリ19bには、キャリッジモータ8aが連結されている。なお、キャリッジモータ8aはプーリ19aに連結されていてもよい。プーリ19bは、キャリッジモータ8aによって駆動される。プーリ19aおよびプーリ19bには、それぞれ無端状のベルト16が巻き掛けられている。キャリッジ22はベルト16に固定されている。プーリ19aおよびプーリ19bが回転してベルト16が走行すると、キャリッジ22が主走査方向Yに移動する。このように、キャリッジ22はガイドレール13に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。
【0018】
図2に示すように、プラテン15は、ベース部材40の中央部に設けられている。プラテン15は、本体ケース50の左前カバー54Lと右前カバー54Rとの間に配置されている。プラテン15には、記録媒体12が載置される。プラテン15は、主走査方向Yに延びる。プラテン15には、複数のグリットローラ17が設けられている。グリットローラ17は、ベース部材40に設けられた図示しないピンチローラと対向する位置に配置されている。グリットローラ17はフィードモータ17aに連結されている。グリットローラ17はフィードモータ17aによって回転駆動される。記録媒体12がグリットローラ17とピンチローラとの間に挟まれた状態でグリットローラ17が回転すると、記録媒体12は副走査方向X(図1参照)に搬送される。
【0019】
図2に示すように、本体ケース50には、複数のインクカートリッジ25が収容される。インクカートリッジ25はインクを密封して貯留する容器である。インクカートリッジ25は、例えば、内部に貯留されたインクの量に応じて変形可能なインクパウチである。インクパウチは、可撓性を有する材料から形成されている。可撓性を有する材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂材料や、アルミ箔を積層加工したラミネートフィルム等が挙げられる。本実施形態では、インクカートリッジ25として4個の第1インクカートリッジ25A、25C、25E、25Gと4個の第2インクカートリッジ25B、25D、25F、25Hが本体ケース50に収容される。第1インクカートリッジ25A、25C、25E、25Gは、後述するインク経路60(図3参照)の第1上流側端部62A(図3参照)に着脱自在に接続されている。第2インクカートリッジ25B、25D、25F、25Hは、インク経路60の第2上流側端部62B(図3参照)に着脱自在に接続されている。インクカートリッジ25には、例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク、および、ブラックインクなどのプロセスカラーインクや、ホワイトインク、メタリックインク、および、クリアインクなどの特色インクのうち何れかのインクが貯留されている。本実施形態では、例えば、第1インクカートリッジ25Aおよび第2インクカートリッジ25Bにはシアンインクが貯留され、第1インクカートリッジ25Cおよび第2インクカートリッジ25Dにはマゼンタインクが貯留され、第1インクカートリッジ25Eおよび第2インクカートリッジ25Fにはイエローインクが貯留され、第1インクカートリッジ25Gおよび第2インクカートリッジ25Hにはブラックインクが貯留されている。
【0020】
図2に示すように、プリンタ10は、同色のインクが貯留された第1インクカートリッジ25Aおよび第2インクカートリッジ25B、第1インクカートリッジ25Cおよび第2インクカートリッジ25D、第1インクカートリッジ25Eおよび第2インクカートリッジ25F、第1インクカートリッジ25Gおよび第2インクカートリッジ25Hごとにインク供給システム55を備えている。インク供給システム55は、インクカートリッジ25に加えて、第1インクヘッド20A、第2インクヘッド20B、インク経路60、第1バルブ64A、第2バルブ64B、第1供給ポンプ68A、第2供給ポンプ68B、第1ダンパー80A、第2ダンパー80B、第1検出装置90A(図3参照)、第2検出装置90B(図3参照)を備えている。第1インクヘッド20Aおよび第2インクヘッド20Bは、インクヘッドの一例である。第1供給ポンプ68Aおよび第2供給ポンプ68Bは、インク供給装置の一例である。第1ダンパー80Aおよび第2ダンパー80Bは、ダンパーの一例である。第1検出装置90Aおよび第2検出装置90Bは、検出装置の一例である。第1インクヘッド20A、第2インクヘッド20Bおよび第1ダンパー80A、第2ダンパー80Bはキャリッジ22に搭載され、主走査方向Yに往復移動する。一方、インクカートリッジ25は、キャリッジ22に搭載されておらず、主走査方向Yに往復移動しない。そのため、キャリッジ22が主走査方向Yに移動してもインク経路60が破損しないように、インク経路60の大部分(少なくとも全長の半分以上)は、主走査方向Yに延びた状態で配置されている。本実施形態では、合計4つインク経路60が設けられている。インク経路60は、ケーブル類保護案内装置46で覆われている。
【0021】
以下では、一例として、シアンインクを貯留する第1インクカートリッジ25Aおよび第2インクカートリッジ25Bを含むインク供給システム55について説明する。なお、マゼンタインクを貯留する第1インクカートリッジ25Cおよび第2インクカートリッジ25Dを含むインク供給システム55、イエローインクを貯留する第1インクカートリッジ25Eおよび第2インクカートリッジ25Fを含むインク供給システム55およびブラックインクを貯留する第1インクカートリッジ25Gおよび第2インクカートリッジ25Hを含むインク供給システムは、貯留されるインクが異なることを除き、シアンインクを貯留する第1インクカートリッジ25Aおよび第2インクカートリッジ25Bを含むインク供給システム55と同様の構成であるため、重複する説明を省略する。図3は、第1インクカートリッジ25Aおよび第2インクカートリッジ25Bから第1インクヘッド20Aおよび第2インクヘッド20Bへシアンインク(以下、単にインクとする。)を供給するインク供給システム55を示す模式図である。
【0022】
図4に示すように、第1インクヘッド20Aおよび第2インクヘッド20Bは、副走査方向X(前後方向)の長さが主走査方向Y(左右方向)の長さよりも長い形状に形成されている。第1インクヘッド20Aおよび第2インクヘッド20Bは、同じ形状かつ同じ大きさに形成されている。第1インクヘッド20Aおよび第2インクヘッド20Bは、副走査方向Xに並ぶ複数のノズル23と、ノズル23が形成されたノズル面24とを備えている。ノズル23内は、負圧(大気圧より低い圧力)に設定されている。なお、ノズル23は微小であるため、図4では複数のノズル23を直線で表している。第1インクヘッド20Aおよび第2インクヘッド20Bは、ノズル面24が外部に露出されるようにキャリッジ22に収容されている。第2インクヘッド20Bは、第1インクヘッド20Aの側方に配置されている。ここでは、第2インクヘッド20Bは、第1インクヘッド20Aの右方に配置されている。
【0023】
図3に示すように、第1インクカートリッジ25Aおよび第2インクカートリッジ25Bと第1インクヘッド20Aおよび第2インクヘッド20Bとは、インク経路60を介して連通している。インク経路60は、上流側流路61と下流側流路65とを有する。上流側流路61は、第1上流側端部62Aを有する第1上流側流路61Aと、第2上流側端部62Bを有する第2上流側流路61Bとを有する。第1上流側端部62Aは、第1インクカートリッジ25Aのインク取り出し口に着脱可能に接続されている。第2上流側端部62Bは、第2インクカートリッジ25Bのインク取り出し口に着脱可能に接続されている。下流側流路65は、第1下流側端部63Aを有する第1下流側流路65Aと、第2下流側端部63Bを有する第2下流側流路65Bと、第1下流側流路65Aと第2下流側流路65Bとを連結する連結流路66と、を有する。第1下流側端部63Aおよび第2下流側端部63Bは、下流側端部の一例である。第1下流側端部63Aは、第1インクヘッド20Aに接続されている。第2下流側端部63Bは、第2インクヘッド20Bに接続されている。下流側流路65は、第1上流側流路61Aおよび第2上流側流路61Bに接続されている。より詳細には、下流側流路65の第1下流側流路65Aは、第1三方弁67Aを介して第1上流側流路61Aに接続されている。下流側流路65の第2下流側流路65Bは、第2三方弁67Bを介して第2上流側流路61Bに接続されている。第1下流側流路65Aは、第1三方弁67Aを介して連結流路66と接続されている。第2下流側流路65Bは、第2三方弁67Bを介して連結流路66と接続されている。インク経路60は、第1インクカートリッジ25Aおよび第2インクカートリッジ25Bから第1インクヘッド20Aおよび第2インクヘッド20Bにインクを導く流路を形成している。インク経路60は、柔軟性や可撓性を有し、弾性変形可能なように構成されている。インク経路60の構成は特に限定されないが、本実施形態では樹脂製の変形容易なチューブである。ただし、チューブ以外の材料で構成されていてもよい。インク経路60の一部がチューブによって構成されていてもよい。
【0024】
図3に示すように、第1上流側流路61Aは、チューブ58AAおよびチューブ58ABを有している。チューブ58AAは、第1インクカートリッジ25Aと第1バルブ64Aとを連通する。チューブ58ABは、第1バルブ64Aと第1三方弁67Aとを連通する。第1上流側端部62Aは、チューブ58AAに設けられている。第2上流側流路61Bは、チューブ58BAおよびチューブ58BBを有している。チューブ58BAは、第2インクカートリッジ25Bと第3バルブ64Bとを連通する。チューブ58BBは、第2バルブ64Bと第2三方弁67Bとを連通する。第2上流側端部62Bは、チューブ58BAに設けられている。
【0025】
図3に示すように、第1下流側流路65Aは、チューブ59AA、チューブ59ABおよびチューブ59ACを有している。チューブ59AAは、第1三方弁67Aと第1供給ポンプ68Aとを連通する。チューブ59ABは、第1供給ポンプ68Aと第1ダンパー80Aとを連通する。チューブ59ACは、第1ダンパー80Aと第1インクヘッド20Aとを連通する。第1下流側端部63Aは、チューブ59ACに設けられている。第2下流側流路65Bは、チューブ59BA、チューブ59BBおよびチューブ59BCを有している。チューブ59BAは、第2三方弁67Bと第2供給ポンプ68Bとを連通する。チューブ59BBは、第2供給ポンプ68Bと第2ダンパー80Bとを連通する。チューブ59BCは、第2ダンパー80Bと第2インクヘッド20Bとを連通する。第2下流側端部63Bは、チューブ59BCに設けられている。連結流路66は、第1三方弁67Aと第2三方弁67Bとを連通する。連結流路66は、例えば、チューブから構成されている。このような経路によって、第1インクカートリッジ25Aおよび第2インクカートリッジ25Bから第1インクヘッド20Aおよび第2インクヘッド20Bにインクが供給される。
【0026】
図3に示すように、第1バルブ64Aは、第1上流側流路61Aに配置されている。第1バルブ64Aは、第1インクカートリッジ25Aと第1三方弁67Aとの間に配置されている。第1バルブ64Aは、本体ケース50内に配置されている。第1バルブ64Aは、第1上流側流路61Aを開放または閉鎖可能に構成されている。なお、第1バルブ64Aが第1上流側流路61Aを開放または閉鎖するとは、第1バルブ64Aが第1上流側流路61Aを完全に開放または閉鎖する場合と、第1上流側流路61Aを部分的に開放または閉鎖する場合とを含む。第1バルブ64Aが第1上流側流路61Aを開放することで、第1インクカートリッジ25Aに貯留されたインクを第1インクヘッド20Aおよび第2インクヘッド20Bに供給することができる。一方、第1バルブ64Aが第1上流側流路61Aを閉鎖することで、第1インクカートリッジ25Aに貯留されたインクを第1インクヘッド20Aおよび第2インクヘッド20Bに供給することができなくなる。第1バルブ64Aは、制御装置30(図2参照)に制御される。
【0027】
図3に示すように、第2バルブ64Bは、第2上流側流路61Bに配置されている。第2バルブ64Bは、第2インクカートリッジ25Bと第2三方弁67Bとの間に配置されている。第2バルブ64Bは、本体ケース50内に配置されている。第2バルブ64Bは、第2上流側流路61Bを開放または閉鎖可能に構成されている。なお、第2バルブ64Bが第2上流側流路61Bを開放または閉鎖するとは、第2バルブ64Bが第2上流側流路61Bを完全に開放または閉鎖する場合と、第2上流側流路61Bを部分的に開放または閉鎖する場合とを含む。第2バルブ64Bが第2上流側流路61Bを開放することで、第2インクカートリッジ25Bに貯留されたインクを第1インクヘッド20Aおよび第2インクヘッド20Bに供給することができる。一方、第2バルブ64Bが第2上流側流路61Bを閉鎖することで、第2インクカートリッジ25Bに貯留されたインクを第1インクヘッド20Aおよび第2インクヘッド20Bに供給することができなくなる。第2バルブ64Bは、制御装置30(図2参照)に制御される。
【0028】
図3に示すように、第1供給ポンプ68Aは、第1下流側流路65Aに配置されている。第1供給ポンプ68Aは、第1三方弁67Aと第1ダンパー80Aとの間に配置されている。第1供給ポンプ68Aは、第1インクカートリッジ25Aまたは第2インクカートリッジ25Bから第1インクヘッド20Aに向けてインクを供給する。即ち、第1バルブ64Aが開放されかつ第2バルブ64Bが閉鎖されているときには、第1供給ポンプ68Aは、第1インクカートリッジ25Aから第1インクヘッド20Aに向けてインクを供給し、第1バルブ64Aが閉鎖されかつ第2バルブ64Bが開放されているときには、第1供給ポンプ68Aは、第2インクカートリッジ25Bから連結流路66を介して第1インクヘッド20Aに向けてインクを供給する。第1供給ポンプ68Aは、第1検出装置90Aにおいて、第1貯留室81A内の圧力が所定の圧力以下であると検出されたときに駆動される。第1供給ポンプ68Aによって第1貯留室81Aにインクが所定の量だけ供給されると、第1貯留室81A内の圧力が所定の圧力より大きくなる。
【0029】
図3に示すように、第2供給ポンプ68Bは、第2下流側流路65Bに配置されている。第2供給ポンプ68Bは、第2三方弁67Bと第2ダンパー80Bとの間に配置されている。第2供給ポンプ68Bは、第1インクカートリッジ25Aまたは第2インクカートリッジ25Bから第2インクヘッド20Bに向けてインクを供給する。即ち、第1バルブ64Aが開放されかつ第2バルブ64Bが閉鎖されているときには、第2供給ポンプ68Bは、第1インクカートリッジ25Aから連結流路66を介して第2インクヘッド20Bに向けてインクを供給し、第1バルブ64Aが閉鎖されかつ第2バルブ64Bが開放されているときには、第2供給ポンプ68Bは、第2インクカートリッジ25Bから第2インクヘッド20Bに向けてインクを供給する。第2供給ポンプ68Bは、第2検出装置90Bによって第2貯留室81B内の圧力が所定の圧力以下であることが検出されたときに駆動される。第2供給ポンプ68Bによって第2貯留室81Bにインクが所定の量だけ供給されると、第2貯留室81B内の圧力が所定の圧力より大きくなる。
【0030】
図5は、第1供給ポンプ68Aの構成を示す縦断面図である。なお、第2供給ポンプ68Bは第1供給ポンプ68Aと同じ構成であるため、第2供給ポンプ68Bの詳細な説明は省略する。図5に示すように、第1供給ポンプ68Aは、チューブポンプである。チューブポンプは、円弧状に形成された壁を有するケース71と、ケース71内に配置されたチューブ72と、チューブ72の一部を押圧可能な押圧体73と、押圧体73を支持しかつ押圧体73をケース71内で移動させるための回転円板74と、回転円板74を回転駆動させるためのモータ75とを備えている。チューブ72は、内部にインクが流通しかつ弾性変形可能に形成されている。チューブ72の一端72Aは、チューブ59AA(図3参照)に接続されている。チューブ72の他端72Bは、チューブ59AB(図3参照)に接続されている。押圧体73は、回転円板74が回転したときにチューブ72に沿って移動するよう、回転円板74上に固定されている。押圧体73は、チューブ72の一部を押圧しながら移動することによって、チューブ72内のインクを移動させると共にチューブ72を開放および閉鎖するように構成されている。モータ75は制御装置30によって制御される。
【0031】
図3に示すように、第1ダンパー80Aは、第1下流側流路65Aに配置されている。第1ダンパー80Aは、第1供給ポンプ68Aと第1インクヘッド20Aとの間に配置されている。第1ダンパー80Aは、インクが一時的に貯留される第1貯留室81Aを有している。第1貯留室81Aには、第1インクカートリッジ25Aおよび第2インクカートリッジ25Bから供給されたインクが一時的に貯留される。第1ダンパー80Aは、第1インクヘッド20Aと連通している。第1ダンパー80Aは、例えば第1インクヘッド20Aの上部に設けられる。第2ダンパー80Bは、第2下流側流路65Bに配置されている。第2ダンパー80Bは、第2供給ポンプ68Bと第2インクヘッド20Bとの間に配置されている。第2ダンパー80Bは、インクが一時的に貯留される第2貯留室81Bを有している。第2貯留室81Bには、第1インクカートリッジ25Aおよび第2インクカートリッジ25Bから供給されたインクが一時的に貯留される。第2ダンパー80Bは、第2インクヘッド20Bと連通している。第2ダンパー80Bは、例えば第2インクヘッド20Bの上部に設けられる。第1貯留室81Aおよび第2貯留室81Bは、貯留室の一例である。
【0032】
図3に示すように、第1検出装置90Aは、第1ダンパー80Aの側方に配置されている。第1検出装置90Aは、第1ダンパー80Aの第1貯留室81A内の圧力(言い換えると、第1貯留室81Aに流入するインクの量。)を検出する。第2検出装置90Bは、第2ダンパー80Bの側方に配置されている。第2検出装置90Bは、第2ダンパー80Bの第2貯留室81B内の圧力(言い換えると、第2貯留室81Bに流入するインクの量。)を検出する。第1貯留室81A内の圧力に基づいて第1供給ポンプ68Aが制御され、第2貯留室81B内の圧力に基づいて第2供給ポンプ68Bが制御される。
【0033】
図6は、第1ダンパー80Aおよび第1検出装置90Aの構成を示す断面図である。なお、第2ダンパー80Bは第1ダンパー80Aと同様の構成であり、第2検出装置90Bは第1検出装置90Aと同様の構成であるため、第2ダンパー80Bおよび第2検出装置90Bの詳細な説明は省略する。第1ダンパー80Aは、インクの圧力変動を緩和して、第1インクヘッド20Aからのインクの吐出動作を安定させるものである。本実施形態では、図6に示すように、第1ダンパー80Aは、ケース本体82と、感圧膜83とを備えている。
【0034】
図6に示すように、ケース本体82は一面(図6の右側の面)に開口82Aが形成された中空構造である。ケース本体82は、典型的には樹脂材料から形成されている。感圧膜83は開口82Aを覆うようにケース本体82の外壁面に取り付けられている。第1貯留室81Aは、ケース本体82と感圧膜83とに囲まれた空間である。感圧膜83は、例えば可撓性を有する樹脂製のフィルムによって構成されている。図6および図7に示すように、感圧膜83は、第1貯留室81A内のインクの貯留量や、第1貯留室81A内の圧力に応じて、撓み変形可能なように構成されている。感圧膜83は、第1貯留室81Aの内側および外側に撓み変形可能である。感圧膜83は、第1貯留室81Aの内側および外側にそれぞれ撓むことができる程度の張力で、ケース本体82に取り付けられている。
【0035】
図6に示すように、第1貯留室81Aには、バネ85が設けられている。バネ85は、圧縮された状態で第1貯留室81Aに配置されており、感圧膜83に向かって弾性力を付与する。ここでは、バネ85は、感圧膜83の第1貯留室81A側の面に接触している。なお、バネ85の種類は特に限定されない。本実施形態では、バネ85はコイルバネである。感圧膜83には、押圧体86が設けられている。押圧体86は、バネ85に支持されている。押圧体86は、感圧膜83の撓み変形に追従して第1貯留室81Aの内側および外側に移動可能である。
【0036】
図6に示すように、第1検出装置90Aは、レバー84を備えている。レバー84は、押圧体86と接触可能にケース本体82に設けられている。本実施形態では、ケース本体82には、支持バネ87が設けられおり、レバー84は、支持バネ87に支持されている。レバー84の形状は特に限定されない。ここでは、レバー84は、略U字状に形成されている。詳しくは、レバー84は、押圧体86の右方において、前後方向に延びた接触部84Aと、接触部84Aの後端から左方に延びた支持部84Bと、接触部84Aの前端から左方に延びた被検出部84Cとを有している。接触部84Aには、押圧体86が接触可能である。支持部84Bは、支持バネ87に支持されている。被検出部84Cは、後述する検出部95によって検出される部位である。図6に示すように、レバー84は、感圧膜83が第1貯留室81Aの内側に撓むとき(即ち第1貯留室81A内のインクが減少して圧力が低下するとき)に第1貯留室81Aに近づく方向に移動する。図7に示すように、レバー84は、感圧膜83が第1貯留室81Aの外側に撓むとき(即ち第1貯留室81A内のインクが増加して圧力が増大するとき)に第1貯留室81Aから離れる方向に移動する。
【0037】
図6に示すように、第1検出装置90Aは、検出部95を備えている。検出部95は、例えば、赤外線などの光を発する発光素子を有する発光部91と、発光部91から発せられた光を感知する受光素子を有する受光部92とを備えている。発光部91と受光部92は、互いに対向するように配置されている。発光部91と受光部92との間に検出領域93が設けられている。検出部95は、レバー84の位置変化に基づいて、第1貯留室81A内の圧力が所定の圧力以下であるかを検出することができる。図7に示すように、第1貯留室81Aの圧力が大きくなるにしたがって、感圧膜83が第1貯留室81Aの外側に撓む。このとき、押圧体86によって、レバー84が第1貯留室81Aの外側に押されることで、レバー84は、支持バネ87を軸に回転する。そして、第1貯留室81Aの圧力が所定の圧力より大きくなったとき、レバー84の被検出部84Cが第1検出装置90Aの検出領域93から外れた位置に移動する。検出部95は、発光部91と受光部92との間(即ち検出領域93)に、レバー84の被検出部84Cが位置していないとき、第1貯留室81Aの圧力が所定の圧力よりも大きいことを検出する。
【0038】
図1に示すように、本体ケース50のうち右前カバー54Rの後方には、操作パネル18が設けられている。操作パネル18は、プリンタの状態を表示する表示部(図示せず)と、ユーザによって操作される入力キー(図示せず)が設けられている。操作パネル18は、プリンタ10の各種の動作を制御する制御装置30(図2参照)に接続されている。
【0039】
図2に示すように、プリンタ10は、キャッピング装置41を備えている。キャッピング装置41は、本体ケース50内に設けられている。キャッピング装置41は、プラテン15より右方に配置されている。図8に示すように、キャッピング装置41は、8個のキャップ42と、キャップ移動機構43と、吸引ポンプ44とを備えている。キャップ42およびキャップ移動機構43は、ガイドレール13(図2参照)の右端部に位置するホームポジションHPに配置されている。ここで、ホームポジションHPとは、印刷待機時、すなわち、印刷が行われていないときに、キャリッジ22、第1インクヘッド20Aおよび第2インクヘッド20Bが待機する位置である。ただし、ホームポジションHPの位置は特に限定されず、ガイドレール13の左端部であってもよい。なお、図8および図9に示す例では、第1ダンパー80Aおよび第2ダンパー80Bの図示を省略している。
【0040】
キャップ42は、第1インクヘッド20Aおよび第2インクヘッド20Bのノズル23(図4参照)に付着したインクが硬化してノズル23が目詰まりすることを抑制する部材である。キャップ42は、主走査方向Yに並んでいる。図9に示すように、キャップ42は、印刷待機時において、第1インクヘッド20Aおよび第2インクヘッド20Bにそれぞれ装着され、ノズル面24を覆う。即ち、キャリッジ22がホームポジションHPに移動すると、キャップ42は、第1インクヘッド20Aおよび第2インクヘッド20Bにそれぞれ装着される。
【0041】
キャップ移動機構43は、キャップ42を支持している。キャップ移動機構43は、キャップ42を第1インクヘッド20Aおよび第2インクヘッド20Bに対してそれぞれ着脱可能なように移動させる機構である。本実施形態では、キャップ移動機構43は、キャップ42を上下方向に移動させるものである。キャップ移動機構43の構成は特に限定されないが、例えば、駆動モータ43Aを備えている。駆動モータ43Aを駆動させることによって、キャップ移動機構43は、キャップ42を上下方向に移動させる。キャップ移動機構43は、キャップ42を上方に移動させることによって、キャップ42を、キャップ位置CP(図9参照)に移動させる。ここで、キャップ位置CPとは、キャップ42が第1インクヘッド20Aおよび第2インクヘッド20Bのノズル面24を覆う位置である。これにより、キャップ42は、第1インクヘッド20Aおよび第2インクヘッド20Bにそれぞれ装着される。キャップ42が第1インクヘッド20Aおよび第2インクヘッド20Bにそれぞれ取り付けられたときに、キャップ42とノズル面24との間に密閉空間48(図9参照)がそれぞれ形成される。キャップ移動機構43は、印刷を開始するときに、キャップ42を下方に移動させることによって、キャップ42をキャップ位置CP(図9参照)から離隔位置DP(図8参照)に移動させる。ここで、離隔位置DPとは、キャップ42がノズル面24から離隔した位置である。これにより、キャップ42は、それぞれ、第1インクヘッド20Aおよび第2インクヘッド20Bから取り外される。
【0042】
図9に示すように、吸引ポンプ44は、第1インクヘッド20Aおよび第2インクヘッド20Bにキャップ42がそれぞれ装着されている状態において、密閉空間48内の流体(例えばインク)を吸引してノズル23(図4参照)からインクを吐出させるクリーニング動作を行う。吸引ポンプ44を駆動することにより、密閉空間48内は、大気圧より低い圧力となる。この結果、第1インクヘッド20Aおよび第2インクヘッド20Bのノズル23からインクが強制的に排出される。吸引ポンプ44の吸引口は、可撓性を有するチューブ45を介してキャップ42に接続されている。吸引ポンプ44の排出口は、廃液タンク49に接続されている。吸引ポンプ44に吸引された密閉空間48内の流体は、廃液タンク49に貯留される。上記クリーニング動作は、ノズル23の吐出不良を解消させる作業であり、第1インクヘッド20Aおよび第2インクヘッド20Bのノズル23の詰まりを予防するための作業である。吸引ポンプ44は、制御装置30(図2参照)に制御される。
【0043】
図10に示すように、プリンタ10の全体の動作は、制御装置30によって制御されている。制御装置30の構成は特に限定されない。制御装置30は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータなどの外部機器から印刷データなどを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置と、を備えている。図2に示すように、制御装置30は、本体ケース50の内部に設けられている。ただし、制御装置30は本体ケース50の内部に設けられていなくてもよい。例えば、制御装置30は、プリンタ10の外部に設置されたコンピュータなどであってもよい。この場合、制御装置30は、有線または無線を介してプリンタ10と通信可能に接続されている。
【0044】
図10に示すように、制御装置30は、第1インクヘッド20A、第2インクヘッド20B、キャリッジモータ8a、フィードモータ17a、第1バルブ64A、第2バルブ64B、第1供給ポンプ68A、第2供給ポンプ68B、第1検出装置90A、第2検出装置90B、駆動モータ43A、吸引ポンプ44および操作パネル18と通信可能に接続している。制御装置30は、第1インクヘッド20A、第2インクヘッド20B、キャリッジモータ8a、フィードモータ17a、第1バルブ64A、第2バルブ64B、第1供給ポンプ68A、第2供給ポンプ68B、駆動モータ43Aおよび吸引ポンプ44を制御する。
【0045】
図10に示すように、制御装置30は、記憶部31と、第1判定部32と、第2判定部33と、第3判定部34と、バルブ制御部35と、クリーニング部36と、印刷制御部37と、判断部38とを備えている。制御装置30の各部の機能は、プログラムによって実現されている。このプログラムは、例えばCDやDVDなどの記録媒体から読み込まれる。なお、このプログラムは、インターネットを通じてダウンロードされるものであってもよい。また、制御装置30の各部の機能は、プロセッサおよび/または回路などによって実現可能なものであってもよい。なお、これら各部の具体的な機能については後述する。
【0046】
記憶部31は、記録媒体12に印刷される所定の画像の画像データを記憶する。画像データは、例えば、ラスター形式のデータである。画像データは、例えば、プリンタ10とは別体に設けられたコンピュータにインストールされたソフトウェアを用いて作成される。記憶部31は、インクカートリッジ25の交換履歴を記憶する。記憶部31は、インクカートリッジ25内のインクが無くなったことを記憶する。記憶部31は、インクカートリッジ25内のインクが無くなり、新たなインクカートリッジ25に交換されたとき、インクカートリッジ25が交換されたことを記憶する。即ち、記憶部31は、第1インクカートリッジ25Aおよび第2インクカートリッジ25Bにインクが貯留されているか(存在しているか)を記憶している。
【0047】
図11は、インクカートリッジ25の切り替えの手順を示すフローチャートである。即ち、第1インクカートリッジ25Aまたは第2インクカートリッジ25Bのインクが無くなったときにこれらを切り替える手順を示すフローチャートである。ここでは、第1バルブ64Aおよび第2バルブ64Bのいずれか一方が開放されかつ他方が閉鎖されており、第1インクカートリッジ25Aまたは第2インクカートリッジ25Bのいずれかからインクが供給される。
【0048】
まず、ステップS10において、印刷制御部37は、記憶部31に記憶された画像データに基づいて、記録媒体12への所定の画像の印刷を開始する。印刷制御部37は、画像データに基づいて、第1インクヘッド20Aおよび第2インクヘッド20Bから記録媒体12に向けてインクを吐出させて画像を形成する印刷動作を行う。印刷制御部37は、キャリッジモータ8aを駆動させてキャリッジ22を主走査方向Yに移動させる。印刷制御部37は、フィードモータ17aを駆動させて記録媒体12を副走査方向Xに移動させる。
【0049】
ステップS20において、第1判定部32は、第1供給ポンプ68Aを第1の回数(例えば2~3回)だけ駆動させて第1インクヘッド20Aに向けてインクを供給した後、第1検出装置90Aによって検出された第1貯留室81A内の圧力が所定の圧力以下であるかを判定する。第1判定部32は、第1検出装置90Aのレバー84が検出領域93を遮ったとき、第1貯留室81A内の圧力が所定の圧力以下であることを判定する。第2判定部33は、第2供給ポンプ68Bを第1の回数だけ駆動させて第2インクヘッド20Bに向けてインクを供給した後、第2検出装置90Bによって検出された第2貯留室81B内の圧力が所定の圧力以下であるかを判定する。第2判定部33は、第2検出装置90Bのレバー84が検出領域93を遮ったとき、第2貯留室81B内の圧力が所定の圧力以下であることを判定する。第1貯留室81A内の圧力が所定の圧力以下または第2貯留室81B内の圧力が所定の圧力以下と判定された場合、ステップS30に進む。一方、第1貯留室81A内の圧力が所定の圧力以下と判定されず、かつ第2貯留室81B内の圧力が所定の圧力以下と判定されない場合、印刷が終了するまでステップS20を繰り返す。第1判定部32および第2判定部33は、判定部の一例である。
【0050】
ここで、第1インクカートリッジ25Aまたは第2インクカートリッジ25Bからインクが供給されるとき、インク供給中の第1インクカートリッジ25Aまたは第2インクカートリッジ25B内にインクが存在する場合には、第1供給ポンプ68Aを第1の回数だけ駆動させることで第1インクヘッド20Aに向けてインクが供給されるため第1貯留室81A内の圧力が所定の圧力より大きくなり、かつ、第2供給ポンプ68Bを第1の回数だけ駆動させることで第2インクヘッド20Bに向けてインクが供給されるため第2貯留室81B内の圧力が所定の圧力より大きくなる。しかしながら、インク供給中の第1インクカートリッジ25Aまたは第2インクカートリッジ25B内のインクが無くなると、第1供給ポンプ68Aを第1の回数だけ駆動させても第1インクヘッド20Aに向けてインクが供給されず第1貯留室81A内の圧力が所定の圧力以下のままであり、かつ、第2供給ポンプ68Bを第1の回数だけ駆動させても第2インクヘッド20Bに向けてインクが供給されず第2貯留室81B内の圧力が所定の圧力以下のままである。このように、ステップS20では、第1判定部32および第2判定部33は、第1貯留室81A内の圧力および第2貯留室81B内の圧力に基づいて、供給中の第1インクカートリッジ25Aまたは第2インクカートリッジ25B内のインクが無くなったか否かを判定している。
【0051】
ステップS30において、バルブ制御部35は、第1バルブ64Aおよび第2バルブ64Bを第1の時間(例えば、0.1秒~1秒程度)だけ閉鎖する。即ち、バルブ制御部35は、第1判定部32によって第1貯留室81A内の圧力が所定の圧力以下と判定されたとき、または、第2判定部33によって第2貯留室81B内の圧力が所定の圧力以下と判定されたとき、第1バルブ64Aおよび第2バルブ64Bを第1の時間だけ閉鎖する。
【0052】
ステップS40において、第1判定部32および第2判定部33は、第1バルブ64Aおよび第2バルブ64Bが閉鎖されたときに、第1貯留室81A内および第2貯留室81B内の圧力が所定の圧力以下であるかの判定(即ちエンド検出)を一時停止する。
【0053】
ステップS50において、第3判定部34は、ステップS20において第1貯留室81Aまたは第2貯留室81B内の圧力が所定の圧力以下と判定されたときに開放されていたバルブが第1バルブ64Aであるかを判定する。第3判定部34によって第1バルブ64Aが開放されていたと判定されるとき、即ち、第1バルブ64Aが開放されかつ第2バルブ64Bが閉鎖されていたとき、第3判定部34は、第1インクカートリッジ25A内のインクが無くなったと判定する。このとき、ステップS60に進む。一方、第3判定部34によって第1バルブ64Aが開放されていなかったと判定されるとき、即ち、第1バルブ64Aが閉鎖されかつ第2バルブ64Bが開放されていたとき、第3判定部34は、第2インクカートリッジ25B内のインクが無くなったと判定する。このとき、ステップS110に進む。このように、ステップS50では、第1判定部32によって第1貯留室81A内の圧力が所定の圧力以下と判定された場合、または、第2判定部33によって第2貯留室81B内の圧力が所定の圧力以下と判定された場合において、第3判定部34は、第1バルブ64Aおよび第2バルブ64Bの開閉状態に基づいて、第1インクカートリッジ25Aまたは第2インクカートリッジ25B内のインクが無くなったことを判定する。
【0054】
ステップS60において、判断部38は、記憶部31に記憶された第1インクカートリッジ25Aおよび第2インクカートリッジ25Bの交換履歴に基づいて、第2インクカートリッジ25Bにインクが貯留されているか(存在しているか)を判断する。第2インクカートリッジ25Bにインクが貯留されている場合には、ステップS70に進む。一方、第2インクカートリッジ25Bにインクが貯留されていない場合には、ステップS100に進む。
【0055】
ステップS70において、バルブ制御部35は、第1バルブ64Aおよび第2バルブ64Bを閉鎖してから第1の時間が経過した後に、ステップS20において第1貯留室81Aまたは第2貯留室81B内の圧力が所定の圧力以下と判定されたときに閉鎖されていた第2バルブ64Bを開放する。これにより、第2インクカートリッジ25Bから第1インクヘッド20Aおよび第2インクヘッド20Bにインクが供給される。
【0056】
ステップS80において、判断部38は、第1バルブ64Aおよび第2バルブ64Bを閉鎖してから第1の時間より長い第2の時間(例えば3秒~5秒程度)が経過したかを判断する。第2の時間が経過していたときには、ステップS90に進む。一方、第2の時間が経過していないときには、経過するまで判断部38による判断が行われる。
【0057】
ステップS90において、第1判定部32および第2判定部33は、第2の時間が経過したときに、第1貯留室81A内および第2貯留室81B内の圧力が所定の圧力以下であるかの判定(即ちエンド検出)を再開する。即ち、第1判定部32および第2判定部33は、第1バルブ64Aおよび第2バルブ64Bを閉鎖してから第2の時間が経過するまでの間、第1供給ポンプ68Aおよび第2供給ポンプ68Bを駆動させた後、第1検出装置90Aおよび第2検出装置90Bによって検出された第1貯留室81Aまたは第2貯留室81B内の圧力が所定の圧力以下であるかを判定しない(即ちエンド検出をしない)。
【0058】
ステップS100において、印刷制御部37は、判断部38によって第1インクカートリッジ25Aおよび第2インクカートリッジ25Bにインクが貯留されていないと判断されたため、印刷を停止する。
【0059】
ステップS110において、判断部38は、記憶部31に記憶された第1インクカートリッジ25Aおよび第2インクカートリッジ25Bの交換履歴に基づいて、第1インクカートリッジ25Aにインクが貯留されているか(存在しているか)を判断する。第1インクカートリッジ25Aにインクが貯留されている場合には、ステップS120に進む。一方、第1インクカートリッジ25Aにインクが貯留されていない場合には、ステップS100に進む。
【0060】
ステップS120において、バルブ制御部35は、第1バルブ64Aおよび第2バルブ64Bを閉鎖してから第1の時間が経過した後に、ステップS20において第1貯留室81Aまたは第2貯留室81B内の圧力が所定の圧力以下と判定されたときに閉鎖されていた第1バルブ64Aを開放する。これにより、第1インクカートリッジ25Aから第1インクヘッド20Aおよび第2インクヘッド20Bにインクが供給される。
【0061】
ステップS130において、判断部38は、第1バルブ64Aおよび第2バルブ64Bを閉鎖してから第1の時間より長い第2の時間が経過したかを判断する。第2の時間が経過していたときには、ステップS140に進む。一方、第2の時間が経過していないときには、経過するまで判断部38による判断が行われる。
【0062】
ステップS140において、第1判定部32および第2判定部33は、第2の時間が経過したときに、第1貯留室81A内および第2貯留室81B内の圧力が所定の圧力以下であるかの判定(即ちエンド検出)を再開する。なお、上述のフローチャートでは、ステップS100を除き、第1供給ポンプ68Aおよび第2供給ポンプ68Bは駆動され、かつ、印刷は継続して行われている。即ち、インクヘッド20Aおよびインクヘッド20Bからインクが吐出されている。
【0063】
上述したフローチャートでは、印刷時のインクカートリッジ25の切り替えの手順を説明したが、これに限定されない。図12は、クリーニング時のインクカートリッジ25の切り替えの手順を示すフローチャートである。図12に示すように、クリーニング時においても印刷時と同様の手順でインクカートリッジ25の切り替えが行われる。なお、ステップS10に代えてクリーニング部36が密閉空間48内の流体を吸引ポンプ44によって吸引してノズル23からインクを吐出させるクリーニング動作を開始するステップS11を備えること、ステップS20に代えて第1判定部32は、第1供給ポンプ68Aを第1の回数より多い第2の回数(例えば5~8回)だけ駆動させて第1インクヘッド20Aに向けてインクを供給した後、第1検出装置90Aによって検出された第1貯留室81A内の圧力が所定の圧力以下であるかを判定し、第2判定部33は、第2供給ポンプ68Bを第2の回数だけ駆動させて第2インクヘッド20Bに向けてインクを供給した後、第2検出装置90Bによって検出された第2貯留室81B内の圧力が所定の圧力以下であるかを判定するステップS21を備えること、ステップS50に代えて第3判定部34は、ステップS21において第1貯留室81Aまたは第2貯留室81B内の圧力が所定の圧力以下と判定されたときに開放されていたバルブが第1バルブ64Aであるかを判定するステップS51を備えること、ステップS100に代えてクリーニング部36は、判断部38によって第1インクカートリッジ25Aおよび第2インクカートリッジ25Bにインクが貯留されていないと判断されたため、クリーニングを停止するステップS101を備えることを除き、図12に示す各工程は、図11に示す各工程と同じであるため、同じ符号を付しており重複した説明を省略する。
【0064】
以上のように、本実施形態のプリンタ10によると、第1判定部32は、第1供給ポンプ68Aを駆動させた後、第1検出装置90Aによって検出された第1貯留室81A内の圧力が所定の圧力以下であるかを判定する。ここで、第1貯留室81A内にインクが供給されると、第1貯留室81A内の圧力が所定の圧力より大きくなる。一方、第1供給ポンプ68Aを駆動させても第1貯留室81A内にインクが供給されないと、第1貯留室81A内の圧力が所定の圧力以下のままである。このように、第1判定部32によって第1貯留室81A内の圧力が所定の圧力以下と判定されたときには、第1インクヘッド20Aにインクを供給していた第1インクカートリッジ25Aまたは第2インクカートリッジ25B内のインクが無くなっている。ここで、第1インクカートリッジ25Aおよび第2インクカートリッジ25Bはインクを密封して貯留するように構成されているため、第1インクカートリッジ25Aおよび第2インクカートリッジ25B内のインクが無くなったときには、第1インクカートリッジ25Aおよび第2インクカートリッジ25B内の負圧が非常に高くなっている。そこで、バルブ制御部35は、第1判定部32によって第1貯留室81A内の圧力が所定の圧力以下と判定されたとき(即ち第1インクカートリッジ25Aまたは第2インクカートリッジ25B内のインクが無くなったとき)に第1バルブ64Aおよび第2バルブ64Bを閉鎖する。これにより、インクが無くなった第1インクカートリッジ25Aまたは第2インクカートリッジ25Bは、下流側流路65と連通しなくなる。そして、バルブ制御部35は、第1バルブ64Aおよび第2バルブ64Bを閉鎖してから第1の時間が経過した後に、第1判定部32によって第1貯留室81A内の圧力が所定の圧力以下と判定されたときに閉鎖されていた1バルブ64Aまたは第2バルブ64Bを開放する。このように、例えば、第1インクカートリッジ25A内のインクが無くなったときに第1バルブ64Aおよび第2バルブ64Bを閉鎖して、その後に、インクが残っている第2インクカートリッジ25Bからインクを供給するために第2バルブ64Bを開放するため、第2インクカートリッジ25Bから第1インクカートリッジ25Aにインクが逆流することが抑制される。
【0065】
本実施形態のプリンタ10のよると、バルブ制御部は、インクヘッドからインクが吐出されているときに、バルブ開閉動作を実行する。これにより、例えば、印刷を停止すること無く印刷を継続して行うことができる。
【0066】
本実施形態のプリンタ10のよると、第1判定部32および第2判定部33は、第1バルブ64Aおよび第2バルブ64Bを閉鎖してから第1の時間より長い第2の時間が経過するまでの間、第1供給ポンプ68Aおよび第2供給ポンプ68Bを駆動させた後、第1検出装置90Aによって検出された第1貯留室81A内の圧力または第2検出装置90Bによって検出された第2貯留室81B内の圧力が所定の圧力以下であるかを判定しない。第1判定部32および第2判定部33によって第1貯留室81Aまたは第2貯留室81B内の圧力が所定の圧力以下と判定されたときに閉鎖されていた1バルブ64Aまたは第2バルブ64Bを、第1バルブ64Aおよび第2バルブ64Bを閉鎖してから第1の時間経過後に開放したときには、下流側流路65には比較的高い負圧が残っている。このため、第1の時間経過後には、第1判定部32および第2判定部33は誤って第1貯留室81Aまたは第2貯留室81B内の圧力が所定の圧力以下であることを判定する虞がある。そこで、第2の時間(例えば下流側流路65の負圧が解除される時間)が経過するまでは、第1判定部32および第2判定部33によって第1貯留室81Aおよび第2貯留室81B内の圧力が所定の圧力以下であることを判定させないことで、誤検出を抑制することができる。
【0067】
本実施形態のプリンタ10のよると、第1判定部32は、印刷動作が行われているときには第1供給ポンプ68Aを第1の回数だけ駆動させた後、第1検出装置90Aによって検出された第1貯留室81A内の圧力が所定の圧力以下であるかを判定する。また、第1判定部32は、クリーニング動作が行われているときには第1供給ポンプ68Aを第1の回数より多い第2の回数だけ駆動させた後、第1検出装置90Aによって検出された第1貯留室81A内の圧力が所定の圧力以下であるかを判定する。クリーニング動作時に第1インクヘッド20Aのノズル23から吐出されるインク量は、印刷動作時に第1インクヘッド20Aのノズル23から吐出されるインク量より多い。このため、第1判定部32は、クリーニング動作が行われているときには第1供給ポンプ68Aを第1の回数だけ駆動させた後に、第1検出装置90Aによって検出された第1貯留室81A内の圧力が所定の圧力以下であるかを判定しまうと、第1インクカートリッジ25Aまたは第2インクカートリッジ25B内にインクが残っているにもかかわらず、第1供給ポンプ68Aによるインクの供給が不十分なために、第1貯留室81A内の圧力が所定の圧力以下であると誤って判定する虞がある。しかしながら、本実施形態では、第1判定部32は、クリーニング動作が行われているときには第1供給ポンプ68Aを第2の回数だけ駆動させた後に、第1検出装置90Aによって検出された第1貯留室81A内の圧力が所定の圧力以下であるかを判定するため、上述のような問題が発生することを抑制することができる。
【0068】
本実施形態のプリンタ10のよると、第1インクカートリッジ25Aおよび第2インクカートリッジ25Bは、インクの量に応じて変形可能なインクパウチである。インクパウチは、インクの量に応じて変形可能であるため、インクパウチ内のインクをより確実に第1インクヘッド20Aおよび第2インクヘッド20Bに供給することができる。
【0069】
本実施形態のプリンタ10のよると、第1判定部32は、第1検出装置90Aのレバー84が検出領域93を遮ったとき、第1貯留室81A内の圧力が所定の圧力以下であることを判定し、第2判定部33は、第2検出装置90Aのレバー84が検出領域93を遮ったとき、第2貯留室81B内の圧力が所定の圧力以下であることを判定する。このように、第1貯留室81Aおよび第2貯留室81B内の圧力の変化をレバー84の移動に変換させることで、第1貯留室81Aおよび第2貯留室81Bの圧力を容易に測定することができる。
【0070】
本実施形態のプリンタ10のよると、第1供給ポンプ68Aおよび第2供給ポンプ68Bは、内部にインクが流通しかつ弾性変形可能なチューブ72と、チューブ72の一部を押圧可能な押圧体73と、を備えているいわゆるチューブポンプである。押圧体73を所定量移動させても、第1貯留室81A内の圧力や第2貯留室81B内の圧力が所定の圧力以下にならない場合には、第1インクカートリッジ25Aまたは第2インクカートリッジ25B内のインクが無くなったと判定することができる。
【0071】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0072】
上述した実施形態では、インク供給システム55は、第1インクカートリッジ25Aおよび第2インクカートリッジ25Bから第1インクヘッド20Aおよび第2インクヘッド20Bにインクを供給していたが、これに限定されない。インク供給システム55は、第1インクカートリッジ25Aおよび第2インクカートリッジ25Bから第1インクヘッド20Aのみにインクを供給するような構成であってもよいし、第1インクカートリッジ25Aおよび第2インクカートリッジ25Bから第2インクヘッド20Bのみにインクを供給するような構成であってもよい。即ち、インク供給システム55は、少なくとも2つのインクカートリッジ25と、少なくとも1つの第1インクヘッド20Aまたは第2インクヘッド20Bを備えていればよい。
【0073】
上述した実施形態では、第1供給ポンプ68Aおよび第2供給ポンプ68Bは、チューブポンプであるがこれに限定されない。第1供給ポンプ68Aおよび第2供給ポンプ68Bは、加圧ポンプであってもよい。
【0074】
上述した実施形態では、第1検出装置90Aおよび第2検出装置90Bは、レバー84、発光部91および受光部92を備えていたが、これに限定されない。第1検出装置90Aおよび第2検出装置90Bは、第1貯留室81Aおよび第2貯留室81B内の圧力を検出できるセンサであればその構造は特に限定されない。
【符号の説明】
【0075】
10 プリンタ
20A 第1インクヘッド、20B 第2インクヘッド
25A 第1インクカートリッジ、25B 第2インクカートリッジ
30 制御装置
32 第1判定部
33 第2判定部
34 第3判定部
68A 第1供給ポンプ、68B 第2供給ポンプ
80A 第1ダンパー、80B 第2ダンパー
81A 第1貯留室、81B 第2貯留室
90A 第1検出装置、90B 第2検出装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12