IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トッパン・フォームズ株式会社の特許一覧 ▶ 川崎車両株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-亀裂検知用ラベル 図1
  • 特許-亀裂検知用ラベル 図2
  • 特許-亀裂検知用ラベル 図3
  • 特許-亀裂検知用ラベル 図4
  • 特許-亀裂検知用ラベル 図5
  • 特許-亀裂検知用ラベル 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】亀裂検知用ラベル
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20221130BHJP
   G09F 3/00 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
G06K19/077 152
G09F3/00 Q
G09F3/00 M
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019037321
(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公開番号】P2020140605
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000110217
【氏名又は名称】トッパン・フォームズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】521475989
【氏名又は名称】川崎車両株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】都成 大輔
(72)【発明者】
【氏名】宮本 格
(72)【発明者】
【氏名】松保 諒
(72)【発明者】
【氏名】菰田 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】西村 武宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 與志
【審査官】後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-271362(JP,A)
【文献】特開2006-134249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/077
G09F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着体の亀裂の検知箇所を跨いで供給される導電性材料を用いて前記被着体の亀裂を検知する亀裂検知用ラベルであって、
ベース基材と、
前記ベース基材の一方の面に積層された接着層と、
前記ベース基材の他方の面に形成された亀裂検知用配線と、
前記亀裂検知用配線に接続され、該亀裂検知用配線の導通状態を検出する検出手段と、
前記ベース基材の他方の面に前記亀裂検知用配線を覆って積層されたマスク層とを有し、
前記亀裂検知用配線は、一方の端部が前記検知手段に接続され、他方の端部が開放された第1及び第2の配線部を具備し、
前記ベース基材及び前記マスク層は、前記第1及び第2の配線部の前記他方の端部間に、当該端部間を電気的に接続するための前記導電性材料が供給される孔部を具備し、
前記マスク層は、少なくとも前記孔部の周辺部が前記ベース基材から剥離可能に積層され、前記孔部が、前記第1及び第2の配線部の前記他方の端部上まで延びている、亀裂検知用ラベル。
【請求項2】
請求項1に記載の亀裂検知用ラベルにおいて、
前記ベース基材と前記マスク層との間に、前記マスク層と剥離可能に貼着された保護層を有する、亀裂検知用ラベル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の亀裂検知用ラベルにおいて、
前記孔部は、前記他方の端部間を結ぶ方向に交差する方向に往復する線状に形成されている、亀裂検知用ラベル。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の亀裂検知用ラベルにおいて、
前記検出手段に接続された通信用アンテナを有し、
前記検出手段は、前記検出結果を前記通信用アンテナを介して非接触送信する、亀裂検知用ラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被着体の亀裂を検知する亀裂検知用ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、構造物にて亀裂が生じた場合、その後、時間の経過に伴って亀裂が大きくなる可能性があり、放置しておくことは好ましくない。特に、鉄道等の車両においては、多少の亀裂でも走行中の振動によってその亀裂が大きくなって大事故に発展する可能性が高い。そのため、従来より、外観検査やカラーチェックによる目視検査を熟練作業者が定期的に行うことで、車両に亀裂が入ってないかを検査している。ところが、このような検査では、作業者の熟練度や人手不足等の人的要因による点検ミスが発生する虞がある。
【0003】
そこで、一対のフィルム間に検出線が配置されてなる線状検出具を用い、この検出線の導通状態を検出することで被検出物の亀裂の有無を検出する技術が、例えば、特許文献1に開示されている。この技術においては、線状検出具が被検出物に貼着された状態で亀裂が生じると、フィルムが破断することで検出線が断線し、この検出線の導通状態を検出することで、被検出物の亀裂の有無を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3940740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したように、一対のフィルム間に検出線が配置されてなる線状検出具を用い、この検出線の導通状態を検出することで被検出物の亀裂の有無を検出するものにおいては、フィルムの材質や厚さによっては、多少の亀裂ではフィルムが破断しにくく、その場合、検出線が断線しないため、亀裂を早期に検知することができないという問題点がある。特に、上述したように車両に貼着されるラベル等においては、屋外にて厳しい環境下で使用されることが想定されるため、フィルム等の基材としてある程度しっかりしたものを使用する必要があり、その場合、さらにフィルムが破断しにくくなり、亀裂を早期に検知することができなくなってしまう。
【0006】
また、亀裂が生じた場合にラベルを破断しやすくするために、フィルム等の基材にミシン目等を形成しておくことが考えられるが、その場合、被検出物に貼着する際、貼着箇所によっては、亀裂を検知したい領域とミシン目等との位置合わせが困難となる虞もある。
【0007】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、簡易な作業で、亀裂を早期に検知することができる亀裂検知用ラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、
被着体の亀裂の検知箇所を跨いで供給される導電性材料を用いて前記被着体の亀裂を検知する亀裂検知用ラベルであって、
ベース基材と、
前記ベース基材の一方の面に積層された接着層と、
前記ベース基材の他方の面に形成された亀裂検知用配線と、
前記亀裂検知用配線に接続され、該亀裂検知用配線の導通状態を検出する検出手段と、
前記ベース基材の他方の面に前記亀裂検知用配線を覆って積層されたマスク層とを有し、
前記亀裂検知用配線は、一方の端部が前記検知手段に接続され、他方の端部が開放された第1及び第2の配線部を具備し、
前記ベース基材及び前記マスク層は、前記第1及び第2の配線部の前記他方の端部間に、当該端部間を電気的に接続するための前記導電性材料が供給される孔部を具備し、
前記マスク層は、少なくとも前記孔部の周辺部が前記ベース基材から剥離可能に積層され、前記孔部が、前記第1及び第2の配線部の前記他方の端部上まで延びている。
【0009】
上記のように構成された本発明においては、亀裂検知用配線を構成する第1の配線部と第2の配線部とが導電性材料によって電気的に接続されているが、導電性材料が、ベース基材及びマスク層の孔部に供給されていることで、被着体に亀裂が入った場合に破断しやすく、亀裂が早期に検知されることになる。また、亀裂検知用ラベルが被着体に貼着された状態にて、マスク層の孔部を含むように導電性材料を被着体に供給するだけでよいため、精細な位置合わせ等が必要ない。さらに、マスク層の孔部を含むように導電性材料が供給された後に、マスク層の少なくとも孔部の周辺部がベース基材から剥離されると、供給された導電性材料のうち、マスク層の孔部以外の領域に供給された導電性材料がマスク層とともに除去されることとなり、亀裂検知用配線を構成する第1の配線部と第2の配線部とを電気的に接続するための導電性材料が孔部以外の領域に存在しないこととなり、それにより、亀裂が生じた場合においても導電性材料によって不用意な領域にて導通状態が保持されることがなくなる。
【0010】
また、ベース基材とマスク層との間に、マスク層と剥離可能に貼着された保護層を有する構成とすれば、被着体に亀裂検知用ラベルが貼着された状態において亀裂検知用配線を保護することができる。
【0011】
また、孔部が、第1及び第2の配線部の他方の端部間を結ぶ方向に交差する方向に往復する線状に形成されていれば、亀裂を検知可能な領域を増やすことができる。
【0012】
また、検出手段に接続された通信用アンテナを有し、検出手段が、検出結果を通信用アンテナを介して非接触送信する構成とすれば、被着体の亀裂を検知するための亀裂検知用配線の導通状態旨を、外部装置に非接触状態で送信することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ベース基材及びマスク層の孔部に供給された導電性材料によって、亀裂を検知するための亀裂検知用配線が導通状態となる構成であるため、被着体に亀裂が入った場合に導電性材料が破断して亀裂検知用配線が非導通状態となりやすく、亀裂を早期に検知することができる。また、亀裂検知用ラベルが被着体に貼着された状態にて、マスク層の孔部を含むように導電性材料を被着体に供給するだけでよいため、精細な位置合わせ等が必要なく、簡易な作業で亀裂を検知することができる。さらに、マスク層の孔部を含むように導電性材料が供給された後に、マスク層の少なくとも孔部の周辺部がベース基材から剥離することで、供給された導電性材料のうち、マスク層の孔部以外の領域に供給された導電性材料がマスク層とともに除去されることとなり、それにより、亀裂が生じた場合においても導電性材料によって不用意な領域にて導通状態が保持されることを回避できる。
【0014】
また、ベース基材とマスク層との間に、マスク層と剥離可能に貼着された保護層を有するものにおいては、被着体に亀裂検知用ラベルが貼着された状態において亀裂検知用配線を保護することができる。
【0015】
また、孔部が、第1及び第2の配線部の他方の端部間を結ぶ方向に交差する方向に往復する線状に形成されているものにおいては、亀裂を検知可能な領域を増やすことができる。
【0016】
また、検出手段に接続された通信用アンテナを有し、検出手段が、検出結果を通信用アンテナを介して非接触送信するものにおいては、被着体の亀裂を検知するための亀裂検知用配線の導通状態を、外部装置に非接触状態で送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の亀裂検知用ラベルの実施の一形態を示す図であり、(a)は表面図、(b)は(a)に示したA-A’断面図、(c)はフィルム基板上の構成を示す図である。
図2図1に示した亀裂検知用ラベルが、亀裂を検知する被着体に貼着された状態を示す上面図である。
図3図1に示した亀裂検知用ラベルが、亀裂を検知する被着体に貼着された状態を示す上面図である。
図4図1に示した亀裂検知用ラベルが図3に示したように被検知体に貼着された状態において被検知部に亀裂が生じた状態を示す上面図である。
図5図1に示した亀裂検知用ラベルを用いて被検知体に生じた亀裂を検知するためのシステムの一例を示す図である。
図6図5に示したシステムにおいて図1に示した亀裂検知用ラベルを用いて被検知体に生じた亀裂を検知する方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の亀裂検知用ラベルの実施の一形態を示す図であり、(a)は表面図、(b)は(a)に示したA-A’断面図、(c)はフィルム基板110上の構成を示す図である。
【0020】
本形態は図1に示すように、フィルム基板110の一方の面に粘着層130が積層されるとともに、フィルム基板110の他方の面に保護シート120及びマスクシート140が積層されて構成された亀裂検知用ラベル101である。
【0021】
フィルム基板110は、本願発明におけるベース基材となるものであって、例えば、PETフィルムから構成されている。フィルム基板110の保護シート120との積層面には、2つの通信用のアンテナ112及び亀裂検知用配線113が形成されているとともに、ICチップ111が搭載されている。
【0022】
2つのアンテナ112はそれぞれ、互いに空隙を隔てて直列に配置されるように、例えば、銅箔等によって形成されている。
【0023】
亀裂検知用配線113は、第1の配線部113aと第2の配線部113bとを具備し、例えば銅箔等によって形成されている。
【0024】
ICチップ111は、本願発明における検出手段となるものであって、2つのアンテナ端子(不図示)と、2つの亀裂検知用端子(不図示)とが設けられており、これらアンテナ端子及び亀裂検知用端子が設けられた面が搭載面となって、フィルム基板110の保護シート120との積層面に搭載されている。ICチップ111のアンテナ端子はそれぞれ、アンテナ112の一端に接続されており、ICチップ111の亀裂検知用端子は、亀裂検知用配線113を構成する2つの配線部113a,113bのそれぞれの一方の端部に接続されている。配線部113a,113bのそれぞれは、ICチップ111と接続された端部とは反対側に端部が接合部14a,14bとなって開放されている。ICチップ111は、アンテナ112を介した非接触通信によって得た電力による電流を亀裂検知用配線113に流すことで亀裂検知用配線113の抵抗値を検出し、その抵抗値に基づいて亀裂検知用配線113の導通状態を検出し、その検出結果をデジタル情報に変換してアンテナ112を介して非接触送信する。ICチップ111としては、例えば、NXP社のUCODE G2iM+が挙げられる。
【0025】
保護シート120は、本願発明における保護層となるものであって、その外形がフィルム基板110と同一のものとなっており、粘着剤(不図示)によってフィルム基板110に貼着されている。
【0026】
マスクシート140は、本願発明におけるマスク層となるものであって、その外形がフィルム基板110と同一のものとなっており、保護シート120に剥離可能に貼着されている。なお、マスクシート140は、後述するように保護シート120から剥離する際に剥離しやすくするために、その外形がフィルム基板110や保護シート120よりも大きなものであってもよい。
【0027】
このように構成されたフィルム基板110、保護シート120及びマスクシート140には、亀裂検知用配線113を構成する2つの配線部113a,113bの接合部114a,114bを結ぶようにメアンダ状の孔部115が設けられている。そして、この孔部115は、保護シート120及びマスクシート140においては、接合部114a,114b上まで延びている。これにより、亀裂検知用配線113の接合部114a,114bが孔部115を介して表出している。
【0028】
粘着層130は、本願発明における接着層となるものであって、フィルム基板110の保護シート120との積層面とは反対側の面の全面に、粘着剤を塗布することで積層されている。
【0029】
以下に、上記のように構成された亀裂検知用ラベル101の利用方法及びその際の作用について説明する。
【0030】
図2及び図3は、図1に示した亀裂検知用ラベル101が、亀裂を検知する被着体に貼着された状態を示す上面図である。
【0031】
図1に示した亀裂検知用ラベル101を用いて被着体の亀裂を検知する場合は、図2に示すように、まず、被着体となる被検知体2のうち、亀裂の検知箇所となる被検知部2aに孔部115が対向するように粘着層130によって亀裂検知用ラベル101を被検知体2に貼着する。なお、被検知体2としては、絶縁体からなるものであってもよいし、導電体からなるものであってもよい。ただ、被検知体2が導電体からなるものである場合は、後述するように被検知部2aに亀裂が生じても、亀裂以外の領域を介して接合部14a,14bが電気的に接続された状態となることがあるため、被検知体2としては、絶縁体からなるものや、導電体からなるものでも表層が絶縁性を有するものであることが好ましい。
【0032】
亀裂検知用ラベル101が粘着層130によって被検知体2に貼着された状態においては、フィルム基板110に形成された亀裂検知用配線113のうち、ICチップ111に接続された端部とは反対側の端部が接合部114a,114bとなって孔部115を介して表出したものとなっている。
【0033】
次に、図3(a)に示すように、孔部115に対向する領域に導電性インク3を塗布することで導電性材料を供給する。これにより、導電性インク3による導電性材料が、被検知体2の被検知部2aを跨いで供給されることになる。なお、導電性材料の供給は、導電性インク3を塗布することに限らず、導電性材料からなる液体をスプレーすることによってもよい。
【0034】
すると、塗布された導電性インク3が孔部115内に入り込んでいき、孔部115を介して表出していた接合部114a,114bに接触することで、接合部114a,114bが、導電性インク3を介して電気的に接続され、それにより、亀裂検知用配線113が導通状態となる。その際、接合部114a,114bが、孔部115を介して表出しており、導電性インク3が接合部114a,114bと面接触で電気的に接続されるため、フィルム基板110の孔部115の端面にて導電性インク3が配線部113a,113bと接触して電気的に接続される場合と比べて、配線部113a,113bの導電性インク3を介した電気的な接続が確実なものとなる。
【0035】
次に、保護シート120からマスクシート140を剥離すると、図3(b)に示すように、マスクシート140上に塗布された導電性インク3のうち、孔部115に入り込んだ以外の導電性インク3がマスクシート140とともに除去され、導電性インク3が孔部115のみに存在することになる。この際、孔部112a,121bには、フィルム基板110、保護シート120及びマスクシート140が存在しないため、接合部114a,114bは、フィルム基板110、保護シート120及びマスクシート140に対向しない領域に供給された導電性インク3を介して電気的に接続された状態となる。
【0036】
図4は、図1に示した亀裂検知用ラベル101が図3に示したように被検知体2に貼着された状態において被検知部2aに亀裂が生じた状態を示す上面図である。
【0037】
図1に示した亀裂検知用ラベル101が図3に示したように被検知体2に貼着された状態において、図4に示すように、外部から加わる振動等によって被検知体2の被検知部2aに亀裂102bが生じた場合、亀裂検知用シート101が被検知部2aを跨って貼着されているものの、亀裂検知用シート101の孔部115が被検知部2aに対向しているため、亀裂検知用シート101を構成するフィルム基板110や保護シート120が亀裂102bによって破断しにくいものであっても、孔部115に入り込んだ導電性インク3が破断して断線部103aが生じることになる。これにより、導電性インク3を介して電気的に接続されていた接合部114a,114bが、電気的に接続されていない状態となり、亀裂検知用配線113が非導通状態となる。
【0038】
このように、亀裂検知用ラベル101が貼着された被検知体2の被検知部2aにて亀裂が生じていない場合は、亀裂検知用ラベル101の亀裂検知用配線113が導通状態となっており、被検知体2の被検知部2aにて亀裂が生じた場合は、亀裂検知用ラベル101の亀裂検知用配線113が非導通状態となるため、亀裂検知用配線113の導通状態を検出することで、被検知体2の被検知部2aにて亀裂が生じているかどうかを検知することができる。その際、亀裂検知用ラベル101が、亀裂検知用配線113を構成する2つの配線部113a,113bの接合部114a,114bを結ぶように孔部115を有し、亀裂検知用配線113の接合部114a,114bが、孔部115に入り込んだ導電性インク3を介して電気的に接続されているため、孔部115が亀裂を検知する被検知部2aに対向するように亀裂検知用ラベル101を被検知体2に貼着すれば、被検知部2aに亀裂2bが生じた場合、亀裂検知用シート101を構成するフィルム基板110や保護シート120が亀裂102bによって破断しにくいものであっても、導電性インク3が破断しやすく、被検知部2aにおける亀裂が早期に検知されることになる。また、亀裂検知用ラベル101が被検知体2に貼着された状態にて、導電性インク3が孔部115に入り込むように導電性インク3を被検知体2に塗布するだけでよいため、精細な位置合わせ等が必要ない。また、亀裂検知用シート101に、亀裂検知用配線113を構成する2つの配線部113a,113bの接合部114a,114bを結ぶように孔部115が設けられており、この孔部115が、保護シート120及びマスクシート140においては、接合部114a,114b上まで延びているため、この孔部115に入り込んだ導電性インク3によって接合部114a,114b間が電気的に接続されることとなり、それにより、被検知体2上の孔部115を含む適当な領域に導電性インク3を塗布しても、配線部113a,113bの接合部114a,114bどうしが導電性インク3によって確実に接続されるとともに、孔部115の形状によって所望の箇所の亀裂を検知することができる。特に、本形態においては、被検知体2に導電性インク3が塗布された後、保護シート120からマスクシート140を剥離すると、マスクシート140上に塗布された導電性インク3のうち、孔部115に入り込んだ以外の導電性インク3がマスクシート140とともに除去され、導電性インク3が孔部115のみに存在することになるため、被検知体2に亀裂が生じた場合においても導電性インク3によって不用意な領域にて導通状態が保持されることを回避できる。
【0039】
以下に、上述した作用を利用して被検知体2に生じた亀裂2bを検知する具体的な方法について説明する。
【0040】
図5は、図1に示した亀裂検知用ラベル101を用いて被検知体2に生じた亀裂2bを検知するためのシステムの一例を示す図である。
【0041】
図1に示した亀裂検知用ラベル101を用いて被検知体2に生じた亀裂2bを検知するためのシステムとしては、図5に示すように、亀裂検知用ラベル101に対して非接触通信が可能な読取手段となるリーダライタ5と、リーダライタ5と有線または無線を介して接続された処理手段となる管理用パソコン6とを有するシステムが考えられる。なお、読取手段のみならず処理手段が内蔵されたハンディターミナルをリーダライタとして用いることも考えられ、その場合、管理用パソコンが不要となる。
【0042】
図6は、図5に示したシステムにおいて図1に示した亀裂検知用ラベル101を用いて被検知体2に生じた亀裂102bを検知する方法を説明するためのフローチャートである。
【0043】
図1に示した亀裂検知用ラベル101においては、リーダライタ5が亀裂検知用ラベル101に近接され、リーダライタ5にて亀裂検知用ラベル1が検出されると(ステップ1)、まず、リーダライタ5から、亀裂検知用ラベル1に電力が供給されるとともに、亀裂検知用配線113の導通状態の検出及びその検出結果の送信をする旨の命令が亀裂検知用ラベル101に対して送信される(ステップ2)。
【0044】
リーダライタ5から供給された電力が亀裂検知用ラベル101にて得られるとともに、リーダライタ5から送信された命令が亀裂検知用ラベル101のアンテナ112を介してICチップ111にて受信されると(ステップ3)、リーダライタ5から供給された電力によって亀裂検知用配線113に電流が供給される。
【0045】
ICチップ111においては、供給された電流を用いて亀裂検知用配線113の抵抗値が検出されることで、亀裂検知用配線113の導通状態が検出されることになる(ステップ4)。ここで、亀裂検知用ラベル101が図2に示したように被検知体2に貼着され、被検知体2に亀裂が生じていない場合は、亀裂検知用配線113を構成する2つの配線部113a,113bのICチップ111に接続されていない側の端部がそれぞれ接合部114a,114bにて導電性インク3を介して互いに電気的に接続されることで亀裂検知用配線113が導通状態となっているため、ICチップ111においては、亀裂検知用配線13と導電性インク3とからなる抵抗値が検出されることになる。
【0046】
ICチップ111においては、検出された抵抗値が、亀裂検知用配線113と導電性インク3とからなる抵抗値である場合は、亀裂検知用配線113が導通状態にあると判断され、その判断結果が亀裂検知用配線113の導通状態の検出結果としてデジタル情報に変換されてアンテナ112を介してリーダライタ5に非接触送信される(ステップ5)。なお、亀裂検知用配線113が非導通状態となっている場合にICチップ111にて検出される抵抗値が、後述するようにほぼ無限大となることから、ICチップ111において、亀裂検知用配線113が導通状態にあると判断するための抵抗値として、亀裂検知用配線113と導電性インク3とからなる抵抗値ではなく、一定の閾値以下のものを用いてもよい。
【0047】
一方、亀裂検知用ラベル101が非検知体2に貼着され、図4に示したように被検知体2にて亀裂2bが生じている場合は、導電性インク3が破断することで、亀裂検知用配線113を構成する2つの配線部113a,113bの接合部114a,114bが電気的に接続されていない状態となり、亀裂検知用配線113が非導通状態となっている。その状態においては、リーダライタ5から供給された電力によって亀裂検知用配線113に電流が供給されても、亀裂検知用配線113が非導通状態となっていることから亀裂検知用配線113には電流が流れず、それにより、ICチップ111において検出される抵抗値は、ほぼ無限大となる。
【0048】
ICチップ111においては、検出された抵抗値がほぼ無限大である場合は、亀裂検知用配線113が非導通状態になっている判断され、その判断結果が亀裂検知用配線113の導通状態の検出結果としてデジタル情報に変換されてアンテナ112を介してリーダライタ5に非接触送信される。なお、亀裂検知用配線113が非導通状態である場合にICチップ111にて検出される抵抗値がほぼ無限大となることから、ICチップ111において、亀裂検知用配線113が非導通状態であると判断するための抵抗値としてほぼ無限大ではなく、亀裂検知用配線113と導電性インク3とからなる抵抗値よりも大きな一定の閾値以上のものを用いてもよい。
【0049】
このように、リーダライタ5においては、亀裂検知用ラベル101にて検出された亀裂検知用配線113の導通状態を、アンテナ112を介して非接触送信させることになる。
【0050】
上記のようにして亀裂検知用ラベル101からリーダライタ5に非接触送信された検出結果がリーダライタ5にて受信されると(ステップ6)、リーダライタ5にて受信された検出結果は管理用パソコン6に転送される(ステップ7)。
【0051】
リーダライタ5から転送されてきた検出結果が管理用パソコン6にて受信されると(ステップ8)、管理用パソコン6において、亀裂検知用ラベル101からリーダライタ5に非接触送信され、管理用パソコン6に転送されてきた検出結果に基づいて、被検知体2に亀裂2bが生じているかが判断されることになる(ステップ9)。具体的には、リーダライタ5から管理用パソコン6に転送されてきた検出結果において、亀裂検知用配線113が導通状態である場合は被検知体2に亀裂102bが生じていないと判断され、亀裂検知用配線113が非導通状態である場合は被検知体2に亀裂102bが生じていると判断されることになる。
【0052】
このように、本形態においては、ICチップ111において検知された亀裂検知用配線113の導通状態を、リーダライタ5に非接触送信することができる。その際、上述したように、被検知体2に亀裂が生じた場合に、亀裂検知用ラベル101に設けられた孔部115に入り込んだ導電性インク3が破断することで、被検知部2aにおける亀裂が早期に検知されることになるため、被検知部2aにおける亀裂を早期に検知する構成とするためにフィルム基材110や保護シート120を軟弱な材料から構成する必要がなく、それにより、被検知体2に亀裂が生じた場合にアンテナ112が破断してしまう可能性を低減できる。
【0053】
なお、本形態においては、フィルム基板110のアンテナ112及び亀裂用配線113が形成されるとともにICチップ111が搭載された面のうち、孔部115及び接合部114a,114bに対向しない領域に、アンテナ112、亀裂用配線113及びICチップ111を覆って保護シート120が積層されているが、フィルム基板110のアンテナ112及び亀裂用配線113が形成されるとともにICチップ111が搭載された面のうち、孔部115及び接合部114a,114bに対向しない領域に、保護シート120が積層されずにマスクシート140が積層されて剥離可能に貼着された構成としてもよい。ただし、本形態のようにフィルム基板110とマスクシート140との間に保護シート120が積層された構成とすれば、被検知体2に亀裂検知用ラベル101が貼着された状態においてアンテナ112、亀裂用配線113及びICチップ111を保護することができる。
【0054】
また、本形態においては、保護シート120の全面に積層されたマスクシート140が、導電性インク3が塗布された後に全て剥離される構成を例に挙げて説明したが、マスクシート140にミシン目等の切り離し線を形成しておき、マスクシート140の少なくとも孔部115の周辺部が保護シート120から剥離される構成としてもよい。
【0055】
また、本形態においては、孔部115がメアンダ状に形成されているものを例に挙げて説明したが、孔部は、亀裂検知用配線113を構成する2つの配線部113a,113bの接合部114a,114bを結ぶように形成されていればよい。ただし、孔部115が、2つの配線部113a,113bの接合部114a,114b間を結ぶ方向に交差する方向に往復する線状のものであれば、亀裂を検知可能な領域を増やすことができる。
【0056】
また、本形態においては、ICチップ111において検知された亀裂検知用配線113の導通状態を、アンテナ112を介して非接触送信する構成を例に挙げて説明したが、ICチップ111において検知された亀裂検知用配線113の導通状態に基づいて警報を出力する警報手段を設け、亀裂検知用配線113が非導通状態である場合に警報手段にて警報を発する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0057】
2 被検知体
2a 被検知部
2b 亀裂
3 導電性インク
3a 断線部
5 リーダライタ
6 管理用パソコン
101 亀裂検知用ラベル
110 フィルム基板
111 ICチップ
112 アンテナ
113 亀裂検知用配線
113a,113b 配線部
114a,114b 接合部
120 保護シート
115 孔部
130 粘着層
140 マスクシート
図1
図2
図3
図4
図5
図6