(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】センターピラー
(51)【国際特許分類】
B62D 25/04 20060101AFI20221130BHJP
【FI】
B62D25/04 B
(21)【出願番号】P 2019048204
(22)【出願日】2019-03-15
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100100103
【氏名又は名称】太田 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100173163
【氏名又は名称】石塚 信洋
(74)【代理人】
【識別番号】100134522
【氏名又は名称】太田 朝子
(74)【代理人】
【識別番号】100135024
【氏名又は名称】本山 敢
(72)【発明者】
【氏名】野口 正晴
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-070084(JP,A)
【文献】国際公開第2019/046229(WO,A1)
【文献】実開昭58-028489(JP,U)
【文献】国際公開第2015/049949(WO,A1)
【文献】特開2001-130446(JP,A)
【文献】独国実用新案第202016107206(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側部に車幅方向に並んで設けられ、前記車幅方向と交差する方向に延在する車外側の第1部材及び車室側の第2部材を備える
センターピラーであって、
前記第1部材と前記第2部材との間には、前記第1部材に入力される衝突エネルギーを吸収するエネルギー吸収部材が前記第1部材及び前記第2部材に挟まれて設けられており、
前記エネルギー吸収部材は、
それぞれ前記第1部材と前記第2部材との間に亘って延在する複数の筒状部を有し、
前記複数の筒状部は、隣り合う前記筒状部同士が互いに少なくとも部分的に接しており、
前記複数の筒状部において、
前記第1部材上で前記衝突エネルギーが入力されることが予測される衝突予測位置
から車高方向へ離れた位置にある前記筒状部の中心軸は、前記第1部材側から前記第2部材側に向うにつれて前記
衝突予測位置を通り前記車幅方向に延びる軸線からの距離が大きくなるように傾いて形成さ
れる、
センターピラー。
【請求項2】
前記筒状部の前記中心軸の前記車幅方向に
延びる軸線に対する傾きは、前記筒状部
が前記衝突予測位置
から前記
車高方向
に離れるほど大きい、
請求項1に記載の
センターピラー。
【請求項3】
前記筒状部は、前記第1部材側から前記第2部材側へ向かって拡径する形状を有する、
請求項2に記載の
センターピラー。
【請求項4】
前記筒状部は、前記第1部材側から前記第2部材側へ向かって拡径する多角錐台形状を有する、
請求項3に記載の
センターピラー。
【請求項5】
前記複数の筒状部は、横断面において隣り合う前記筒状部同士が隙間なく互いに接している、
請求項4に記載の
センターピラー。
【請求項6】
前記複数の前記筒状部のうち、前記中心軸の延長線上に前記衝突予測位置が存在する
前記筒状部の前記中心軸は前記
車幅方向に沿って形成される、
請求項1~5のいずれか1項に記載の
センターピラー。
【請求項7】
前記衝突予測位置は、
前記車両の側面に他車両が衝突した場合に、前記他車両のバンパーが接触すると予測される前記第1部材上の位置である、
請求項
1~6のいずれか1項に記載の
センターピラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センターピラーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の側面衝突時に衝突エネルギーを吸収するエネルギー吸収部材が設けられた車両側部構造が知られている。例えば、特許文献1には、ハニカム構造を有する部材がエネルギー吸収部材として設けられたリアピラーが開示されている。このような車両側部構造では、車両の側面衝突時にエネルギー吸収部材が圧壊することにより衝突エネルギーが適切に吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなエネルギー吸収部材として、複数の筒状部が並べられて形成されたものがある。このようなエネルギー吸収部材では、筒状部が圧壊することにより衝突エネルギーが適切に吸収される。しかし、このようなエネルギー吸収部材において、車両の側面衝突時に筒状部が圧壊しにくいことがあった。このような場合、車両の側面衝突時にエネルギー吸収部材で衝突エネルギーが適切に吸収されないことにより、車両側部構造全体が車室側に向かって比較的大きく変形するおそれがある。特に、車両側部構造がセンターピラーである場合、車両の側面衝突時に車室側から衝突荷重を支持する構造体が存在しないため、車両側部構造全体が車室側に向かって比較的大きく変形するおそれが高い。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、衝突エネルギーをより適切に吸収することが可能な、新規かつ改良されたセンターピラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、車両の側部に車幅方向に並んで設けられ、前記車幅方向と交差する方向に延在する車外側の第1部材及び車室側の第2部材を備えるセンターピラーであって、前記第1部材と前記第2部材との間には、前記第1部材に入力される衝突エネルギーを吸収するエネルギー吸収部材が前記第1部材及び前記第2部材に挟まれて設けられており、前記エネルギー吸収部材は、それぞれ前記第1部材と前記第2部材との間に亘って延在する複数の筒状部を有し、前記複数の筒状部は、隣り合う前記筒状部同士が互いに少なくとも部分的に接しており、前記複数の筒状部において、前記第1部材上で前記衝突エネルギーが入力されることが予測される衝突予測位置から車高方向へ離れた位置にある前記筒状部の中心軸は、前記第1部材側から前記第2部材側に向うにつれて前記衝突予測位置を通り前記車幅方向に延びる軸線からの距離が大きくなるように傾いて形成される、センターピラーが提供される。
【0007】
前記筒状部の前記中心軸の前記車幅方向に対する傾きは、前記筒状部と前記衝突予測位置との間の前記延在方向の距離が長いほど大きくてもよい。
【0008】
前記筒状部は、前記第1部材側から前記第2部材側へ向かって拡径する形状を有してもよい。
【0009】
前記筒状部は、前記第1部材側から前記第2部材側へ向かって拡径する多角錐台形状を有してもよい。
【0010】
前記複数の筒状部は、横断面において隣り合う前記筒状部同士が隙間なく互いに接していてもよい。
【0011】
前記複数の前記筒状部のうち、前記中心軸の延長線上に前記衝突予測位置が存在する前記中心軸は前記延在方向に傾かずに形成されてもよい。
【0013】
前記衝突予測位置は、前記車両の側面に他車両が衝突した場合に、前記他車両のバンパーが接触すると予測される前記第1部材上の位置であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明によれば、衝突エネルギーをより適切に吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係るセンターピラーを備えた車両の左側部の概略構成を示す模式図である。
【
図2】同実施形態に係るセンターピラーの概略構成を示す断面図である。
【
図3】複数の筒状部の概略構造を示す断面図である。
【
図4】車両の側面衝突時にセンターピラーの内部で力が伝達される様子を模式的に示す図である
【
図5】第1の変形例に係るセンターピラーの概略構成を示す断面図である。
【
図6】第2の変形例に係るセンターピラーの概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
また、以下では、センターピラーが本発明に係る車両側部構造に相当し、アウタパネルが本発明に係る第1部材に相当し、インナパネルが本発明に係る第2部材に相当し、車高方向の上側が本発明に係る第1部材及び第2部材の延在方向の一側に相当し、車高方向の下側が本発明に係る第1部材及び第2部材の延在方向の他側に相当する例について説明する。
【0018】
<1.センターピラーの構成>
まず、
図1~
図3を参照しながら、本発明の実施形態に係るセンターピラーの構成について説明する。
図1は、本実施形態に係るセンターピラーを備えた車両の左側部の概略構成を示す模式図である。なお、
図1に示すように、本明細書において、車長方向をX軸方向とも言い、車幅方向をY軸方向とも言い、車高方向をZ軸方向とも言う。
【0019】
図1に示されるように、車両1は、ルーフピラー5と、リアピラー4と、フロントピラー2と、センターピラー3と、サイドシル6とを備える。
【0020】
ルーフピラー5は、車両1の側部の上方に設けられ、X軸方向に沿って延在する。サイドシル6は、車両1の側部の下方に設けられ、X軸方向に沿って延在する。
【0021】
フロントピラー2は、車両1の側部の前方側に設けられ、Z軸方向に対し車両1の後方側に傾いて延在する。リアピラー4は、車両1の側部の後方側に設けられ、Z軸方向に対し車両1の前方側に傾いて延在する。センターピラー3は、車両1の側部においてフロントピラー2及びリアピラー4の間に設けられ、略Z軸方向に延在する。センターピラー3の下端は、サイドシル6のX軸方向の略中央部に接続され、センターピラー3の上端は、ルーフピラー5のX軸方向の略中央部に接続される。
【0022】
図2は、本実施形態に係るセンターピラー3の概略構成を示す断面図である。具体的には、
図2は、センターピラー3の車長方向に交差する面を示す図である。
図2に示されるように、センターピラー3は、車幅方向に並んで設けられ車高方向に延在する車外側のアウタパネル20及び車室側のインナパネル30を備える。
【0023】
アウタパネル20及びインナパネル30は、例えば炭素繊維等の強化繊維に熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含浸させた繊維強化樹脂を用いて形成される複数層の複合材料からなる構造体である。なお、アウタパネル20及びインナパネル30の素材は上記の例に特に限定されない。例えば、アウタパネル20及びインナパネル30は、鉄鋼製であってもよい。
【0024】
アウタパネル20とインナパネル30との間には、アウタパネル20に入力される衝突エネルギーを吸収するエネルギー吸収部材40がアウタパネル20及びインナパネル30に挟まれて設けられる。エネルギー吸収部材40の車外側は、例えば接着剤によりアウタパネル20の車室側と接合される。エネルギー吸収部材40の車室側は、例えば接着剤によりインナパネル30の車外側と接合される。
【0025】
エネルギー吸収部材40は、アウタパネル20とインナパネル30との間に亘って延在する複数の筒状部42を有し、複数の筒状部42は、隣り合う筒状部同士が互いに少なくとも部分的に接している。筒状部42は、例えばアルミニウム等の金属材料により形成されている。なお、筒状部42の素材は上記の例に特に限定されない。例えば、筒状部42は、鉄鋼製であってもよく、繊維強化樹脂製であってもよい。
【0026】
図3は、複数の筒状部42の概略構造を示す断面図である。具体的には、
図3は、センターピラー3の車幅方向に交差する面を示す図である。
図3に示されるように、複数の筒状部42は、横断面において隣り合う筒状部同士が隙間なく互いに接している。具体的には、複数の筒状部42の横断面は、ハニカム構造となっている。より具体的には、それぞれの筒状部42の横断面は、正六角形となっている。なお、上記のようなハニカム構造は、例えば、いわゆる展張方式によって形成することができる。
【0027】
ここで、
図2に示されるように、基本的に筒状部42は、アウタパネル20側からインナパネル30側へ向かって拡径する形状を有する。つまり、筒状部42は、六角錐台形状を有する。ただし、アウタパネル20上で衝突エネルギーが入力されることが予測される衝突予測位置P1の車高方向の位置と同じ車高方向の位置に形成されている筒状部42は、アウタパネル20側からインナパネル30側へ向かって断面形状が一定であってもよい。例えば、衝突予測位置P1の車高方向の位置と同じ車高方向の位置に形成されている筒状部42は、六角柱形状を有してもよい。衝突予測位置P1は、具体的には、車両1の側面衝突時に衝突荷重が入力されることが予測されるアウタパネル20上での位置である。例えば、衝突予測位置P1は、車両1の側面衝突時に他車両のバンパーが接触すると予測されるアウタパネル20上での位置であってよい。ここで、アウタパネル20上で衝突エネルギーが入力されることが予測される衝突予測位置P1の車高方向の位置と同じ車高方向の位置に形成されている筒状部42の中心軸Cは、車幅方向を向いて形成される。
【0028】
それにより、複数の筒状部42において、衝突予測位置P1に対して上側の筒状部42の中心軸Cは、アウタパネル20側からインナパネル30側に向うにつれて上側に傾いて形成され、衝突予測位置P1に対して下側の筒状部42の中心軸Cは、アウタパネル20側からインナパネル30側に向うにつれて下側に傾いて形成される。例えば、衝突予測位置P1に対して上側の筒状部42aの中心軸Ca及び筒状部42bの中心軸Cbは、アウタパネル20側からインナパネル30側に向うにつれて上側に傾いて形成され、衝突予測位置P1に対して下側の筒状部42dの中心軸Cd及び筒状部42eの中心軸Ceは、アウタパネル20側からインナパネル30側に向うにつれて下側に傾いて形成される。また、衝突予測位置P1が筒状部42cの中心軸Ccの延長線上に存在する場合は中心軸Ccが傾かずに形成されてもよい。
【0029】
また、筒状部42がアウタパネル20側からインナパネル30側へ向かって拡径する形状を有することにより、筒状部42の中心軸Cの車幅方向に対する傾きは、筒状部42と衝突予測位置P1との間の車高方向の距離が長いほど大きく形成される。例えば、衝突予測位置P1との車高方向の距離が長い筒状部42aの中心軸Caの車幅方向に対する傾きは、衝突予測位置P1との車高方向の距離が短い筒状部42bの中心軸Cbの車幅方向に対する傾きより大きく形成され、衝突予測位置P1との車高方向の距離が長い筒状部42eの中心軸Ceの車幅方向に対する傾きは、衝突予測位置P1との車高方向の距離が短い筒状部42dの中心軸Cdの車幅方向に対する傾きより大きく形成される。
【0030】
<2.センターピラーの作用>
続いて、本実施形態に係るセンターピラー3の作用について説明する。
【0031】
図4は、車両1の側面衝突時にセンターピラー3の内部で力が伝達される様子を模式的に示す図である。
図4における白抜き矢印が、車両1の側面衝突時にセンターピラー3の内部で伝達される力の様子を示している。衝突予測位置P1に物体が衝突した場合、
図4に示されるように、衝突予測位置P1に衝突荷重F1が入力される。このとき、衝突予測位置P1に対して上側には、アウタパネル20側からインナパネル30側に向うにつれて上側に傾いてアウタパネル20側からインナパネル30側へ力が伝達され、衝突予測位置P1に対して下側には、アウタパネル20側からインナパネル30側に向うにつれて下側に傾いてアウタパネル20側からインナパネル30側へ力が伝達される。なお、このような車両1の側面衝突時にセンターピラー3の内部で伝達される力の方向は、例えば、実際の車両を用いた衝突試験又はシミュレーションにより確認することができる。
【0032】
ここで、筒状部42の中心軸Cが全て車幅方向を向いて形成されている場合、筒状部42の中心軸Cの向きと、車両1の側面衝突時にセンターピラー3の内部で伝達される力の向きとがずれる。一方、上述したように、本実施形態に係るセンターピラー3では、複数の筒状部42において、衝突予測位置P1に対して上側の筒状部42の中心軸Cは、アウタパネル20側からインナパネル30側に向うにつれて上側に傾いて形成され、衝突予測位置P1に対して下側の筒状部42の中心軸Cは、アウタパネル20側からインナパネル30側に向うにつれて下側に傾いて形成されている。よって、筒状部42の中心軸Cの向きを、車両1の側面衝突時にセンターピラー3の内部で伝達される力の向きに近づけることができる。したがって、筒状部42の中心軸Cが全て車幅方向を向いて形成されている場合と比較して、車両1の側面衝突時に筒状部42を圧壊しやすくすることができる。
【0033】
また、車両1の側面衝突時にセンターピラー3の内部で伝達される力の向きの車幅方向に対する傾きは、衝突予測位置P1から車高方向に距離が離れるほど大きくなる。ここで、上述したように、本実施形態に係るセンターピラー3では、筒状部42の中心軸Cの車幅方向に対する傾きは、筒状部42と衝突予測位置P1との間の車高方向の距離が長いほど大きく形成されている。よって、筒状部42の中心軸Cの向きを、車両1の側面衝突時にセンターピラー3の内部で伝達される力の向きにより近づけることができる。したがって、車両1の側面衝突時に筒状部42をより圧壊しやすくすることができる。
【0034】
また、本実施形態に係るセンターピラー3では、筒状部42は、アウタパネル20側からインナパネル30側へ向かって拡径する形状を有する。それにより、複数の筒状部42を互いに接した状態としつつ、筒状部42の中心軸Cの向きを、車両1の側面衝突時にセンターピラー3の内部で伝達される力の向きに近づけることができる。したがって、車両1の側面衝突時に筒状部42が曲げ変形しにくくなり、筒状部42をより圧壊しやすくすることができる。
【0035】
なお、上記では、筒状部42が六角錐台形状を有する例について説明したが、筒状部42の有する形状は、このような例に特に限定されない。例えば、筒状部42は、三角錐台形状、四角錐台形状、又は八角錐台形状等の多角錐台形状を有してもよく、円錐台形状を有してもよい。ただし、複数の筒状部42を互いに面で接した状態とする観点では、筒状部42は、アウタパネル20側からインナパネル30側へ向かって拡径する多角錐台形状を有することが好ましい。
【0036】
また、本実施形態に係るセンターピラー3では、複数の筒状部42は、横断面において隣り合う筒状部同士が隙間なく互いに接している。それにより、複数の筒状部42が互いに接する面積をより大きくすることができる。なお、複数の筒状部42が互いに接する面積をより大きくする観点では、それぞれの筒状部42の横断面は正六角形である例に限定されず、例えば、正三角形、正四角形、又は正八角形等の正多角形であってもよく、各辺の長さが同一でない多角形であってもよい。
【0037】
<3.センターピラーの効果>
続いて、本実施形態に係るセンターピラー3の効果について説明する。
【0038】
本実施形態に係るセンターピラー3は、アウタパネル20及びインナパネル30に挟まれて設けられるエネルギー吸収部材40を備える。また、エネルギー吸収部材40は、アウタパネル20とインナパネル30との間に亘って延在する複数の筒状部42を有し、複数の筒状部42において、アウタパネル20上で衝突エネルギーが入力されることが予測される衝突予測位置P1に対して上側の筒状部42の中心軸Cは、アウタパネル20側からインナパネル30側に向うにつれて上側に傾いて形成され、衝突予測位置P1に対して下側の筒状部42の中心軸Cは、アウタパネル20側からインナパネル30側に向うにつれて下側に傾いて形成される。それにより、筒状部42の中心軸Cの向きを、車両1の側面衝突時にセンターピラー3の内部で伝達される力の向きに近づけることができる。したがって、例えば筒状部42の中心軸Cが全て車幅方向を向いて形成されている場合と比較して、車両1の側面衝突時に筒状部42を圧壊しやすくすることができる。また、複数の筒状部42は、隣り合う筒状部同士が互いに少なくとも部分的に接している。それにより、車両1の側面衝突時に筒状部42が曲げ変形しにくくなり、筒状部42を圧壊しやすくすることができる。ゆえに、衝突エネルギーをより適切に吸収することができる。
【0039】
好ましくは、筒状部42の中心軸Cの車幅方向に対する傾きは、筒状部42と衝突予測位置P1との間の車高方向の距離が長いほど大きい。それにより、筒状部42の中心軸Cの向きを、車両1の側面衝突時にセンターピラー3の内部で伝達される力の向きにより近づけることができる。したがって、車両1の側面衝突時に筒状部42をより圧壊しやすくすることができる。
【0040】
好ましくは、筒状部42は、アウタパネル20側からインナパネル30側へ向かって拡径する形状を有する。それにより、複数の筒状部42を互いに接した状態としつつ、筒状部42の中心軸Cの向きを、車両1の側面衝突時にセンターピラー3の内部で伝達される力の向きに近づけることができる。したがって、車両1の側面衝突時に筒状部42がより曲げ変形しにくくなり、筒状部42が圧壊する確実性を向上させることができる。
【0041】
好ましくは、筒状部42は、アウタパネル20側からインナパネル30側へ向かって拡径する多角錐台形状を有する。それにより、複数の筒状部42を互いに面で接した状態とすることができる。したがって、車両1の側面衝突時に筒状部42がより一層曲げ変形しにくくなり、筒状部42が圧壊する確実性をより向上させることができる。
【0042】
好ましくは、複数の筒状部42は、横断面において隣り合う筒状部同士が隙間なく互いに接している。それにより、複数の筒状部42が互いに接する面積をより大きくすることができる。
【0043】
好ましくは、センターピラー3が本発明に係る車両側部構造に相当する。車両1の側面衝突時に車室側から衝突荷重を支持する構造体が設けられないセンターピラー3では、筒状部42が他の車両側部構造(例えば、ルーフピラー、リアピラー又はサイドシル)より圧壊しにくい。したがって、センターピラー3に本発明に係る車両側部構造を適用することにより、衝突エネルギーをより適切に吸収する効果を有効に活用することができる。
【0044】
<4.センターピラーの変形例>
以上、本実施形態にかかるセンターピラーの構成、作用及び効果について説明したが、本実施形態にかかるセンターピラーは種々の変形が可能である。
【0045】
例えば、上記の実施形態では、筒状部の中心軸の車幅方向に対する傾きは、筒状部と衝突予測位置との間の車高方向の距離が長いほど大きく形成される例について説明したが、筒状部52の中心軸Dの車幅方向に対する傾きは、筒状部52と衝突予測位置P1との間の車高方向の距離が長いほど大きく形成されなくてもよい。以下、このような第1の変形例に係るセンターピラー83について説明する。
【0046】
図5は、第1の変形例に係るセンターピラー83の概略構成を示す断面図である。具体的には、
図5は、センターピラー83の車長方向に交差する面を示す図である。
図5に示されるエネルギー吸収部材50、複数の筒状部52及び中心軸Dは、上記実施形態に係るセンターピラー3のエネルギー吸収部材40、複数の筒状部42及び中心軸Cとそれぞれ対応する。
【0047】
図5に示されるように、第1の変形例では、衝突予測位置P1の車高方向の位置と同じ車高方向の位置に形成されている筒状部52は、アウタパネル20側からインナパネル30側へ向かって拡径する形状を有する。一方、衝突予測位置P1に対して上側及び下側の筒状部52は、アウタパネル20側からインナパネル30側へ向かって一定の断面形状を有する。ここで、衝突予測位置P1の車高方向の位置と同じ車高方向の位置に形成されている筒状部52の中心軸Dは、車幅方向を向いて形成される。それにより、筒状部52の中心軸Dの車幅方向に対する傾きは、筒状部52と衝突予測位置P1との間の車高方向の距離が長いほど大きく形成されない。このような場合であっても、複数の筒状部52において、衝突予測位置P1に対して上側の筒状部52の中心軸Dは、アウタパネル20側からインナパネル30側に向うにつれて上側に傾いて形成され、衝突予測位置P1に対して下側の筒状部52の中心軸Dは、アウタパネル20側からインナパネル30側に向うにつれて下側に傾いて形成される。よって、筒状部52の中心軸Dの向きを、車両1の側面衝突時にセンターピラー83の内部で伝達される力の向きに近づけることができる。したがって、例えば筒状部52の中心軸Dが全て車幅方向を向いて形成されている場合と比較して、車両1の側面衝突時に筒状部52を圧壊しやすくすることができる。ゆえに、衝突エネルギーをより適切に吸収することができる。
【0048】
また、例えば、車両1の側面衝突時に衝突荷重が入力されることが予測される衝突予測位置P2は、車高方向の所定の長さに亘っていてもよい。以下、このような場合に好適な第2の変形例に係るセンターピラー93について説明する。
【0049】
図6は、第2の変形例に係るセンターピラー93の概略構成を示す断面図である。具体的には、
図6は、センターピラー93の車長方向に交差する面を示す図である。
図6に示されるエネルギー吸収部材60、複数の筒状部62及び中心軸Eは、上記実施形態に係るセンターピラー3のエネルギー吸収部材40、複数の筒状部42及び中心軸Cとそれぞれ対応する。
【0050】
図6に示されるように、第2の変形例では、衝突予測位置P2と対応する車高方向の位置に中心軸Eが車幅方向を向く筒状部62が車高方向に複数並んで形成されている。なお、上記の実施形態と同様に、複数の筒状部62において、衝突予測位置P2に対して上側の筒状部62の中心軸Eは、アウタパネル20側からインナパネル30側に向うにつれて上側に傾いて形成され、衝突予測位置P2に対して下側の筒状部62の中心軸Eは、アウタパネル20側からインナパネル30側に向うにつれて下側に傾いて形成されている。よって、筒状部62の中心軸Eの向きを、車両1の側面衝突時にセンターピラー93の内部で伝達される力の向きに近づけることができる。このように、車両1の側面衝突時に衝突荷重が入力されることが予測される衝突予測位置P2が車高方向の所定の長さに亘っている場合であっても、車両1の側面衝突時に筒状部62を圧壊しやすくすることができる。ゆえに、衝突エネルギーをより適切に吸収することができる。
【0051】
<5.むすび>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0052】
例えば、上記実施形態では、センターピラーが本発明に係る車両側部構造に相当する例について説明したが、本発明に係る車両側部構造はかかる例に特に限定されない。例えば、本発明に係る車両側部構造は、ルーフピラー、リアピラー又はサイドシルであってもよい。なお、本発明に係る車両側部構造がルーフピラー又はサイドシルである場合、車長方向が本発明に係る第1部材及び第2部材の延在方向に相当する。
【符号の説明】
【0053】
1 車両
2 フロントピラー
3,83,93 センターピラー
4 リアピラー
5 ルーフピラー
6 サイドシル
20 アウタパネル
30 インナパネル
40,50,60 エネルギー吸収部材
42,52,62 筒状部
C,D,E 中心軸
F1 衝突荷重
P1,P2 衝突予測位置