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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】蓄電池制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20221130BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20221130BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20221130BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20221130BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20221130BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20221130BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H02J3/00 130
H02J3/14
H02J7/00 H
H02J7/34 A
H02J13/00 311T
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019063467
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020167758
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114476
【弁理士】
【氏名又は名称】政木 良文
(72)【発明者】
【氏名】山下 尚也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 匡孝
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/143239(WO,A1)
【文献】特開2017-046537(JP,A)
【文献】特開2016-063548(JP,A)
【文献】国際公開第2015/004849(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 - 5/00
H02J 13/00
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H01M 10/42 - 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デマンドカットの実行対象となる需要家における各デマンドカット期間(以下、DC期間)の開始時点からの系統電力の積算受電量が、前記各DC期間内において所定の目標値を超過しないように、前記需要家の蓄電池システムに蓄電されている電力の放電を制御する蓄電池制御システムであって、
前記DC期間の長さを均等に細分化した第1単位時間毎の前記各DC期間の開始時点からの経過時間のそれぞれにおける前記積算受電量に対して、前記蓄電池システムを放電させるか否かを判定する基準となる第1基準受電量と、前記蓄電池システムの充電を許可するか否かを判定する基準となる第2基準受電量を記録したデータ記憶部と、
前記蓄電池システムとの間で、データの送受信を行うデータ通信部と、
前記データ通信部を介して所定の受信タイミングで受信した前記開始時点から前記経過時間までの前記積算受電量を示す受電量データに基づいて、前記第1単位時間毎に、前記積算受電量と、前記第1基準受電量と前記第2基準受電量の少なくとも何れか一方との大小関係を判定し、前記積算受電量が前記第1基準受電量以上または超過であると判定した場合に、前記データ通信部を介して前記蓄電池システムに向けて放電指令データを送信し、前記積算受電量が前記第2基準受電量未満と判定した場合に、前記データ通信部を介して前記蓄電池システムに向けて充電許可データを送信する蓄電池制御部と、を備えてなり、
前記各DC期間内において、前記第1基準受電量と前記第2基準受電量が、前記経過時間が前記第1単位時間毎に増加するのに伴い、それぞれの下限値から上限値まで単調に増加するように設定されており、前記第2基準受電量が、前記DC期間の開始時点と終了時点を除き、前記第1単位時間毎の前記経過時間のそれぞれにおいて、前記第1基準受電量未満となるように、且つ、前記DC期間の開始時点と終了時点のそれぞれにおいて、前記第1基準受電量以下となるように、設定されていることを特徴とする蓄電池制御システム。
【請求項2】
前記経過時間の前記DC期間の開始時点から終了時点までの増加に対して、前記目標値の0%から100%まで線形に増加する前記積算受電量を目標積算受電量と定義した場合、前記目標積算受電量から前記第1基準受電量を差し引いた差分が、前記各DC期間の開始時点から所定時間経過するまでの第1初期期間、単調に増加し、前記第1初期期間の終了時点において正値の最大値となり、前記第1初期期間の終了時点から、前記第1基準受電量が前記上限値に到達するまで、単調に減少するように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の蓄電池制御システム。
【請求項3】
前記第1初期期間の長さが、前記DC期間の長さの10%以上30%以下に設定され、
前記第1初期期間の終了時点において、前記目標積算受電量から前記第1基準受電量を差し引いた差分が、前記目標値の10%以下に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の蓄電池制御システム。
【請求項4】
前記第1初期期間において、前記第2基準受電量が、前記目標値の0%に設定されていることを特徴とする請求項2または3に記載の蓄電池制御システム。
【請求項5】
前記各DC期間の開始時点から所定時間経過するまでの第2初期期間において、前記第2基準受電量が、前記目標値の0%に設定されていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の蓄電池制御システム。
【請求項6】
前記データ通信部は、前記所定の受信タイミングで、前記受電量データとともに、前記蓄電池システムの残蓄電容量を含む蓄電池データを受信し、
前記蓄電池制御部は、前記積算受電量が前記第1基準受電量以上または超過であると判定する場合であっても、前記残蓄電容量が所定の下限設定値未満または以下である場合には、前記放電指令データを送信しないことを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の蓄電池制御システム。
【請求項7】
前記データ通信部は、前記所定の受信タイミングで、前記受電量データとともに、前記蓄電池システムの残蓄電容量を含む蓄電池データを受信し、
前記蓄電池制御部は、前記積算受電量が前記第2基準受電量未満と判定する場合であっても、前記残蓄電容量が所定の上限設定値以上または超過である場合には、前記充電許可データを送信しないことを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の蓄電池制御システム。
【請求項8】
前記蓄電池制御部は、前記第1単位時間毎に、前記積算受電量と、前記第1基準受電量と前記第2基準受電量の少なくとも何れか一方との大小関係を判定した後、前記放電指令データと前記充電許可データの何れも送信しない場合に、待機指令データを送信することを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載の蓄電池制御システム。
【請求項9】
前記DC期間の終了時点より直前の所定時間内の第1終了準備期間において、前記第1基準受電量が前記上限値を維持することを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載の蓄電池制御システム。
【請求項10】
前記第1終了準備期間の長さが、前記第1単位時間以上、前記DC期間の長さの10%と第1単位時間の3倍の何れか大きい方の値以下に設定されていることを特徴とする請求項9に記載の蓄電池制御システム。
【請求項11】
前記第1基準受電量の前記下限値が、前記目標値の0%以上5%以下に設定され、前記第1基準受電量の前記上限値が、前記目標値の95%以上99%以下に設定されていることを特徴とする請求項1~10の何れか1項に記載の蓄電池制御システム。
【請求項12】
コンピュータを、請求項1~11の何れか1項に記載の蓄電池制御システムの前記蓄電池制御部として機能させるためのプログラム。
【請求項13】
コンピュータを、請求項1~11の何れか1項に記載の蓄電池制御システムの前記蓄電池制御部として機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デマンドカット(DC:Demand Cut)の実行対象となる需要家におけるDC期間の開始時点からの系統電力の積算受電量が、各DC期間内において所定の目標値を超過しないように、需要家の蓄電池システムに蓄電されている電力の放電を制御する蓄電池制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
商用電力系統の需給逼迫を抑制するために、電力の需要家が要請に応じて商用電力系統から供給される電力(以下、「系統電力」という)を削減するデマンドレスポンスの活用が検討されている。特に、近年では、需要家に対する系統電力の削減要請の自動化、更には、需要家における系統電力の削減制御の自動化を実現するADR(Automated Demand Response)の活用が注目されており、この手法は需要家の受電電力量を抑えるデマンドカットの実行にも活用可能である。
【0003】
該ADRでは、1または複数の需要家の制御端末に対して系統電力の削減要請を行うDRサーバにおいて、目標の削減電力量を達成するために、該需要家の使用する複数の機器の何れに対して、どの時間帯においてどれだけの電力量を削減するかのDR計画を策定することが行われている(例えば、下記の特許文献1~3等参照)。一方、需要家におけるデマンドレスポンスの対象となる機器としては、電力消費機器、電力貯蔵機器、及び、電力供給機器に大別され、電力消費機器としては、空調機器、照明機器、コンピュータ機器等が想定され、電力貯蔵機器としては、蓄電池等が想定され、電力供給機器としては、太陽光発電装置、ガスエンジン式または燃料電池式のコジェネレーションシステム(熱電併給システム)等が想定される。例えば、下記の特許文献4には、デマンドレスポンスの要請に対して蓄電池からの放電電力を利用する実施態様が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-9565号公報
【文献】特開2016-103974号公報
【文献】特開2017-70131号公報
【文献】特開2018-68076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、デマンドレスポンスの対象機器として蓄電池システムを利用する場合において、例えば、上記特許文献4では、デマンドレスポンスの要請に対してDR期間を通して必要な放電電力量を算出して蓄電池の放電を制御する旨が開示されているが、蓄電池の残蓄電容量には限りがあるため、デマンドカット時にこれを有効に活用するには、蓄電池の放電制御を、DC期間を細分化したより短い時間単位できめ細かに行う必要がある。
【0006】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、蓄電池の残蓄電容量を有効に活用してデマンドカットに対応可能な蓄電池制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る蓄電池制御システムは、DC期間のそれぞれにおいて、デマンドカットの実行対象となる需要家における各DC期間の開始時点からの系統電力の積算受電量が、前記各DC期間内において所定の目標値を超過しないように、前記需要家の蓄電池システムに蓄電されている電力の放電を制御する蓄電池制御システムであって、
前記DC期間の長さを均等に細分化した第1単位時間毎の前記各DC期間の開始時点からの経過時間のそれぞれにおける前記積算受電量に対して、前記蓄電池システムを放電させるか否かを判定する基準となる第1基準受電量と、前記蓄電池システムの充電を許可するか否かを判定する基準となる第2基準受電量を記録したデータ記憶部と、
前記蓄電池システムとの間で、データの送受信を行うデータ通信部と、
前記データ通信部を介して所定の受信タイミングで受信した前記開始時点から前記経過時間までの前記積算受電量を示す受電量データに基づいて、前記第1単位時間毎に、前記積算受電量と、前記第1基準受電量と前記第2基準受電量の少なくとも何れか一方との大小関係を判定し、前記積算受電量が前記第1基準受電量以上または超過であると判定した場合に、前記データ通信部を介して前記蓄電池システムに向けて放電指令データを送信し、前記積算受電量が前記第2基準受電量未満と判定した場合に、前記データ通信部を介して前記蓄電池システムに向けて充電許可データを送信する蓄電池制御部と、を備えてなり、
前記各DC期間内において、前記第1基準受電量と前記第2基準受電量が、前記経過時間が前記第1単位時間毎に増加するのに伴い、それぞれの下限値から上限値まで途中で減少することなく単調に増加するように設定されており、前記第2基準受電量が、前記DC期間の開始時点と終了時点を除き、前記第1単位時間毎の前記経過時間のそれぞれにおいて、前記第1基準受電量未満となるように、且つ、前記DC期間の開始時点と終了時点のそれぞれにおいて、前記第1基準受電量以下となるように、設定されていることを第1の特徴とする。
【0008】
上記第1の特徴の蓄電池制御システムによれば、各DC期間の第1単位時間毎の各経過時間において、積算受電量が各経過時間において設定された第1基準受電量を超えて増加すると、需要家の電力負荷に供給される系統電力の当該増加分が、次の経過時間までの間、蓄電池システムからの放電電力で賄われるため、積算受電量が第1基準受電量を超えて大幅に増加するのが抑制され、更に、当該制御が第1単位時間毎にきめ細かに実行されるため、結果として、積算受電量は、各DC期間の開始時点から終了時点まで、第1基準受電量の推移に沿って、第1基準受電量から大幅に乖離することなく増加することになり、各DC期間内において所定の目標値を超過しないように制御される。この結果、1つのDC期間を通して見れば、蓄電池システムから放電される電力量は、開始時点からの積算受電量の推移に応じて小刻みに増加するために、不必要に大量の放電が回避され、蓄電池の残蓄電容量を有効に活用することができる。
【0009】
更に、上記第1の特徴の蓄電池制御システムによれば、各経過時間において、第1基準受電量未満となる第2基準受電量を設定して、積算受電量が第2基準受電量未満の場合にのみ蓄電池システムの充電が可能となるため、積算受電量が第1基準受電量未満であっても、第2基準受電量以上の場合に、つまり、積算受電量が第1基準受電量を僅かに下回っている場合に、蓄電池システムが充電されて、積算受電量が不必要に増加するのを抑制することができる。
【0010】
更に、上記第1の特徴の蓄電池制御システムは、前記経過時間の前記DC期間の開始時点から終了時点までの増加に対して、前記目標値の0%から100%まで線形に増加する前記積算受電量を目標積算受電量と定義した場合、前記目標積算受電量から前記第1基準受電量を差し引いた差分が、前記各DC期間の開始時点から所定時間経過するまでの第1初期期間、単調に増加し、前記第1初期期間の終了時点において正値の最大値となり、前記第1初期期間の終了時点から、前記第1基準受電量が前記上限値に到達するまで、単調に減少するように設定されていることを第2の特徴とする。
【0011】
更に、上記第2の特徴の蓄電池制御システムによれば、第1基準受電量は、DC期間の前半から中盤に掛けて、目標積算受電量より小さくなるように設定され、各経過時間における第1基準受電量を結ぶ線分(軌跡)は、目標積算受電量の直線状の軌跡と比較して、下側に凸状となる。この結果、積算受電量の増加が、DC期間の前半から中盤において抑制され、目標値までの余裕がより多く確保されるため、積算受電量がDC期間の中盤から後半に掛けて急激に増加した場合においても、蓄電池システムからの放電電力によって、積算受電量が目標値を超過する可能性を容易に回避することができる。
【0012】
更に、上記第2の特徴の蓄電池制御システムにおいて、前記第1初期期間の長さが、前記DC期間の長さの10%以上30%以下に設定され、前記第1初期期間の終了時点において、前記目標積算受電量から前記第1基準受電量を差し引いた差分が、前記目標値の10%以下に設定されていることが好ましい。
【0013】
更に、上記第2の特徴の蓄電池制御システムにおいて、前記第1初期期間において、前記第2基準受電量が、前記目標値の0%に設定されていることが好ましい。或いは、上記第1または第2の特徴の蓄電池制御システムにおいて、前記各DC期間の開始時点から所定時間経過するまでの第2初期期間において、前記第2基準受電量が、前記目標値の0%に設定されていることが好ましい。これらにより、第1または第2初期期間内では、積算受電量が必ず第2基準受電量以上となり、充電許可データが送信されないので、蓄電池システムの充電が阻止される。仮に、各DC期間初期の第2初期期間内において、蓄電池システムの充電が開始されると、積算受電量が初期段階で不必要に増加し、DC期間の中盤から後半に掛けて急激に増加した場合に目標値を超過する可能性が生じる恐れがあるが、上記好適な態様により、当該可能性が未然に防止される。
【0014】
更に、第1初期期間と第2初期期間が同じ長さの場合、第1初期期間後の第1基準受電量と第2初期期間後の第2基準受電量間の差分を適切に維持して、各経過時間での第1基準受電量と第2初期期間後の第2基準受電量を設定することが容易となる。
【0015】
更に、上記第1または第2の特徴の蓄電池制御システムにおいて、前記データ通信部は、前記所定の受信タイミングで、前記受電量データとともに、前記蓄電池システムの残蓄電容量を含む蓄電池データを受信し、前記蓄電池制御部は、前記積算受電量が前記第1基準受電量以上または超過であると判定する場合であっても、前記残蓄電容量が所定の下限設定値未満または以下である場合には、前記放電指令データを送信しないことが好ましい。これにより、蓄電池システムの残蓄電容量が極めて少ない場合において、蓄電池システムに対する不要な放電指令を回避できる。
【0016】
更に、上記第1または第2の特徴の蓄電池制御システムにおいて、前記データ通信部は、前記所定の受信タイミングで、前記受電量データとともに、前記蓄電池システムの残蓄電容量を含む蓄電池データを受信し、前記蓄電池制御部は、前記積算受電量が前記第2基準受電量未満と判定する場合であっても、前記残蓄電容量が所定の上限設定値以上または超過である場合には、前記充電許可データを送信しないことが好ましい。これにより、例えば、蓄電池システムの残蓄電容量が満充電状態に近い場合において、蓄電池システムに対する不要な充電指令を回避できる。
【0017】
更に、上記第1または第2の特徴の蓄電池制御システムにおいて、前記蓄電池制御部は、前記第1単位時間毎に、前記積算受電量と、前記第1基準受電量と前記第2基準受電量の少なくとも何れか一方との大小関係を判定した後、前記放電指令データと前記充電許可データの何れも送信しない場合に、待機指令データを送信することが好ましい。
【0018】
更に、上記第1または第2の特徴の蓄電池制御システムにおいて、前記DC期間の終了時点より直前の所定時間内の第1終了準備期間において、前記第1基準受電量が前記上限値を維持することが好ましい。更に、前記第1終了準備期間の長さは、前記第1単位時間以上、前記DC期間の長さの10%と第1単位時間の3倍の何れか大きい方の値以下に設定されていることが好ましい。これにより、DC期間の終了直前において、積算受電量が目標値を超過する可能性が極めて低いにも拘わらず、蓄電池システムが不必要に放電するのを回避できる。
【0019】
更に、上記第1または第2の特徴の蓄電池制御システムにおいて、前記第1基準受電量の前記下限値が、前記目標値の0%以上5%以下に設定され、前記第1基準受電量の前記上限値が、前記目標値の95%以上99%以下に設定されていることが好ましい。
【0020】
更に、上記目的を達成するために、本発明に係るプログラムは、コンピュータを、上記第1または第2の特徴の蓄電池制御システムの前記蓄電池制御部として機能させることを特徴とする。上記特徴のプログラムにより、上記第1または第2の特徴の蓄電池制御システムの蓄電池制御部をコンピュータ上で機能させることができる。
【0021】
更に、上記目的を達成するために、本発明に係るコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、コンピュータを、上記第1または第2の特徴の蓄電池制御システムの前記蓄電池制御部として機能させるためのプログラムを記録していることを特徴とする。上記特徴のコンピュータ読み取り可能な記録媒体により、当該記録媒体に記録されたプログラムを用いて、上記第1または第2の特徴の蓄電池制御システムの蓄電池制御部をコンピュータ上で機能させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る蓄電池制御システムによれば、各DC期間において、蓄電池の残蓄電容量を有効に活用しつつ、系統電力からの積算受電量が目標値を超過しないように効果的に制御される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】蓄電池制御システムの一構成例を模式的に示すブロック図。
図2】第1基準受電量及び第2基準受電量とDC期間の開始時点からの経過時間との関係の一例を模式的に示す図。
図3】目標積算受電量から第1基準受電量を差し引いた差分とDC期間の開始時点からの経過時間との関係を模式的に示す図。
図4】第1基準受電量及び第2基準受電量とDC期間の開始時点からの経過時間との関係の他の一例を模式的に示す図。
図5】蓄電池制御部が行う処理手順の一例の概略を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る蓄電池制御システム(以下、適宜「本システム」と略称する)の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0025】
[本システムの構成例]
本システム1は、1または複数のDC期間のそれぞれにおいて、デマンドカットの実行対象となる需要家における各DC期間の開始時点からの系統電力(商用電力系統からから需要家に供給される電力)の積算受電量が、各DC期間内において所定の目標値を超過しないように、需要家の蓄電池システムに蓄電されている電力の充放電を制御するものである。より具体的には、本システム1は、需要家の蓄電池システム2から、(系統電力)の受電情報及び蓄電池情報を受信し、蓄電池システム2に対して後述する各種指令データを送信することで、蓄電池システム2の充放電を制御する。ここで、デマンドカットの契約において、各DC期間の開始時点からの系統電力の積算受電量PAは、各DC期間に対して一律或いは各別に予め設定された目標値PTを超えない(PA≦PT)ように要請されているものとする。目標値PT(Wh)は、DC期間の長さをTD(分)、目標契約電力をPK(W)とすると、PT=PK×TD/60で与えられる。尚、DC期間の長さTDは、標準で30分に設定されるため、本実施形態においても30分とする。
【0026】
図1に示すように、本システム1は、データ記憶部11と、データ通信部12と、蓄電池制御部13を備えて構成され、一実施態様として、汎用コンピュータ(例えば、パーソナル・コンピュータ等)上に、データ記憶部11、データ通信部12、蓄電池制御部13における各処理を実行するアプリケーション・ソフトウェア(コンピュータ・プログラム)をインストールして構成される。
【0027】
データ記憶部11は、例えば、本システム1を構成するコンピュータに内蔵または外付けされるHDD(ハードディスクドライブ)及びSSD(ソリッドステートディスク)等の大容量のデータを不揮発的に記録可能な記録装置等を備え、外部からの制御により、データの書き込み、読み出し、検索等が可能に構成されている。データ記憶部11は、蓄電池制御部12が行う演算処理に必要なデータを記録している。具体的には、データ記憶部11は、各DC期間の開始時点からの第1単位時間毎の経過時間のそれぞれにおける、後述する第1基準受電量と第2基準受電量を記録している。
【0028】
第1単位時間は、DC期間の長さTDを均等に細分化して得られる単位時間である。本実施形態では、TD=30(分)として、それを30等分する場合を想定し、第1単位時間は1分とする。従って、各DC期間の開始時点からの第1単位時間毎の経過回数を序数iとすると、経過回数i番目の経過時間T(i)は、T(i)=i(分)となる。但し、i=1~30である。DC期間の開始時点は、1つ前のDC期間の終了時点(i=30)であり、便宜的に、経過回数0番目(i=0)として扱う。
【0029】
尚、第1単位時間は、1分に限定されるものではなく、DC期間の長さTDを、例えば、10~60等分した値であってもよい。但し、第1単位時間が長いと、1回の第1単位時間が経過する間に、積算受電量PAが急激に増加する可能性が高くなるので、2~3分を上限としてなるべく短く設定するのが好ましい。尚、第1単位時間が短くなり過ぎると(例えば、数秒以下)、積算受電量PAの制御においてハンチング現象が起こる可能性があるので、好ましくない。
【0030】
第1基準受電量は、各経過時間T(i)における積算受電量PA(i)に対して、蓄電池システム2を放電させるか否かを判定する基準値であり、以下の説明おいて、適宜、PR1(i)と表示する。更に、第2基準受電量は、各経過時間T(i)における積算受電量PA(i)に対して、蓄電池システム2の充電を許可するか否かを判定する基準値であり、以下の説明おいて、適宜、PR2(i)と表示する。
【0031】
データ通信部12は、本システム1を構成するコンピュータのI/Oポートと、蓄電池システム2に設けられたI/Oポート間のデータ送受信において、所定の通信プロトコルに基づいて該データ送受信を行う通信装置を備えて構成される。本実施形態では、本システム1と蓄電池システム2の間を接続するデータ通信路3として、有線LANを想定し、通信プロトコルとして、シリアル通信プロトコルのModbus/TCPの使用を想定する。尚、データ通信回線は有線LANに限定されるものではなく、また、通信プロトコルもModbus/TCPに限定されるものではない。
【0032】
蓄電池制御部13は、本システム1を構成するコンピュータの演算処理装置(例えば、CPU(Central Processing Unit)等)上で、上記アプリケーション・ソフトウェアが実行されることで、後述する各処理(放電要否判定処理、充電可否判定処理、制御指令処理、等)を実行するように構成されている。尚、当該アプリケーション・ソフトウェアは、一例として、データ記憶部11に格納されている。
【0033】
蓄電池システム2は、例えば、リチウムイオン電池等の充電及び放電を行う蓄電池21とパワーコンディショナ等のコントローラ22を備えて構成される。蓄電池システム2は、コントローラ22が、本システム1からの制御指令に従って、蓄電池21に対する充放電制御を実行可能に構成されている。また、本実施形態では、蓄電池システム2は、データ通信部12と同様の通信装置23を備え、所定の通信プロトコルに基づいて、データ通信部12との間でデータ送受信可能に構成されている。更に、本実施形態では、蓄電池システム2のコントローラ22が、需要家に供給される系統電力の電力値(W)を計測する電力メータ4と通信を行い、電力メータ4で計測された電力値に係る受電量データD1と後述する蓄電池データD2を含む需要家データD0を本システム1に向けて、通信装置23を介して、第1単位時間(本実施形態では、一例として、1分)を更に均等に細分化して得られる第2単位時間(本実施形態では、一例として、1秒)毎に繰り返し送信可能に構成されている。
【0034】
[第1基準受電量及び第2基準受電量の設定]
次に、データ記憶部11に保存されている第1基準受電量PR1(i)及び第2基準受電量PR2(i)が、各経過時間T(i)に対してどのように設定されているかについて、図2図4を参照して説明する。
【0035】
図2及び図4は、第1基準受電量PR1(i)及び第2基準受電量PR2(i)と経過時間T(i)との関係を模式的に示すグラフである。図3は、後述する目標積算受電量PAT(i)から第1基準受電量PR1(i)を差し引いた差分ΔP1(i)と経過時間T(i)との関係を模式的に示すグラフである。
【0036】
図2及び図4において、第1基準受電量PR1(i)は太い破線で、第2基準受電量PR2(i)は太い実線で、夫々示されており、更に、目標積算受電量PAT(i)が細い一点鎖線で示されている。目標積算受電量PAT(i)は、経過時間T(i)のDC期間の開始時点(i=0)から終了時点(i=30)までの増加に対して、目標値PTの0%から100%まで線形に単調増加する積算受電量として定義される。目標積算受電量PAT(i)は、経過時間T(i)の増加とともに理想的に増加した場合の積算受電量PA(i)の模範例を表しており、第1基準受電量PR1(i)の特徴を説明する際の比較対象と使用される。
【0037】
第1基準受電量PR1(i)は、経過時間T(i)が第1単位時間毎に増加するのに伴い、下限値PR1Lから上限値PR1Uまで、途中で減少することなく単調に増加する(広義の単調増加)ように設定されている。つまり、2つの経過回数i1とi2(i2>i1)に対して、PR1(i2)≧PR1(i1)が成立する。一例として、下限値PR1Lは、目標値PTの0%以上5%以下が好ましく、1%以上3%以下がより好ましく、本実施形態では、2%に設定されている。また、一例として、上限値PR1Uは、目標値PTの95%以上99%以下が好ましく、97%以上99%以下がより好ましく、本実施形態では、98%に設定されている。
【0038】
更に、図3に示すように、目標積算受電量PAT(i)から第1基準受電量PR1(i)を差し引いた差分ΔP1(i)(=PAT(i)-PR1(i))が、各DC期間の開始時点(i=0)から所定時間経過するまでの第1初期期間、単調に増加し、第1初期期間の終了時点において正値の最大値となり、第1初期期間の終了時点から、第1基準受電量PR1(i)が上限値PR1Uに到達するまで、単調に減少するように設定されている。尚、差分ΔP1(i)の第1初期期間での単調増加、及び、第1初期期間後における単調減少は必ずしも線形(第1単位時間毎の変化量が一定)である必要はない。
【0039】
一例として、第1初期期間の長さTS1は、DC期間の長さTDの10%以上30%以下が好ましく、15%以上25%以下がより好ましく、本実施形態では、DC期間の長さTDの6分の1(約16.7%)に設定されている。また、第1初期期間の終了時点における目標積算受電量PAT(i)から第1基準受電量PR1(i)を差し引いた差分ΔP1(i)は、目標値PTの10%以下が好ましく、4%以上9%以下がより好ましく、本実施形態では、目標値PTの15分の1(約6.7%)に設定されている。
【0040】
図2図4に示すように、第1基準受電量PR1(i)は、DC期間の前半から中盤に掛けて、目標積算受電量PAT(i)より小さくなるように設定され、各経過時間T(i)における第1基準受電量PR1(i)を結ぶ線分は、目標積算受電量PAT(i)の1本の直線(一点鎖線)と比較して、下側に凸状の折れ線となる。
【0041】
第1基準受電量PR1(i)を、上述のように、DC期間の前半から中盤に掛けて下側に凸状の折れ線となるように設定することにより、後述する放電要否判定処理(図5のステップ#11)において、積算受電量PA(i)の増加に対して、PA(i)>PR1(i)と判定され易くなり、ステップ#15(制御指令処理)において、蓄電池システム2に対して放電を指示する制御指令データDC(放電指令データに相当)が送信され易くなる。この結果、積算受電量PA(i)の増加が、DC期間の前半から中盤において抑制され、目標値までの余裕がより多く確保されるため、積算受電量PA(i)がDC期間の中盤から後半に掛けて急激に増加した場合においても、蓄電池システム2からの放電電力によって、積算受電量PA(i)が目標値PTを超過する可能性を容易に回避することができる。
【0042】
本実施形態では、図2に示すように、第1基準受電量PR1(i)は、DC期間の終了時点(i=30)直前の所定時間前に上限値PR1Uに到達し、その後、DC期間の終了時点(i=30)までの第1終了準備期間内において、上限値PR1Uを維持するように設定されている。第1終了準備期間の長さTE1は、第1終了準備期間を設ける場合は、第1単位時間以上、DC期間の長さTDの10%と第1単位時間の3倍の何れか大きい方の値以下が好ましく、本実施形態では、第1単位時間(1分、DC期間の長さTDの30分の1(約3.3%))に設定されている。
【0043】
上述したように、第1基準受電量PR1(i)の設定において、第1終了準備期間を設け、上限値PR1Uを目標値PT未満としてマージンを設けることにより、DC期間の終了直前において、積算受電量PA(i)が目標値PTに漸近して超過しようとした場合において、後述する放電要否判定処理(図5のステップ#11)において、PA(i)>PR1(i)と判定され易くなり、ステップ#15(制御指令処理)において、蓄電池システム2に対して放電を指示する制御指令データDC(放電指令データに相当)が送信され易くなる。この結果、DC期間の終了直前において、積算受電量PA(i)を目標値PT以下に抑制することができる。
【0044】
尚、図4に示すように、第1終了準備期間は必ず設定する必要はなく、第1基準受電量PR1(i)は、第1初期期間の終了時点からDC期間の終了時点(i=30)まで、目標積算受電量PAT(i)を超えることなく単調に増加し、DC期間の終了時点(i=30)で、上限値PR1Uに到達するように設定されてもよい。
【0045】
第2基準受電量PR2(i)は、図2及び図4に示すように、経過時間T(i)が第1単位時間毎に増加するのに伴い、下限値PR2Lから上限値PR2Uまで、途中で減少することなく単調に増加する(広義の単調増加)ように設定されている。つまり、2つの経過回数i1とi2(i2>i1)に対して、PR2(i2)≧PR2(i1)が成立する。更に、第2基準受電量PR2(i)は、DC期間の開始時点(i=0)と終了時点(i=30)を除き(つまり、i=1~29)、第1単位時間毎の経過時間T(i)のそれぞれにおいて、第1基準受電量PR1(i)未満となるように、且つ、DC期間の開始時点(i=0)と終了時点(i=30)のそれぞれにおいて、第1基準受電量PR1(i)以下となるように、設定されている。
【0046】
従って、第2基準受電量PR2(i)の下限値PR2Lは、第1基準受電量PR1(i)の下限値PR1L以下であり、本実施形態では、目標値PTの0%に設定されている。また、第2基準受電量PR2(i)の上限値PR2Uは、第1基準受電量PR1(i)の上限値PR1U以下であり、本実施形態では、第1基準受電量PR1(i)の上限値PR1Uと同じ値に設定されている。
【0047】
更に、本実施形態では、第2基準受電量PR2(i)は、DC期間の開始時点(i=0)から所定時間経過するまでの第2初期期間において、下限値PR2Lである目標値PTの0%に設定されている。一例として、第2初期期間の長さTS2は、DC期間の長さTDの10%以上30%以下が好ましく、15%以上25%以下がより好ましく、本実施形態では、第1初期期間の長さTS1と同じに、つまり、DC期間の長さTDの6分の1(約16.7%)に設定されている。
【0048】
DC期間の開始時点(i=0)と終了時点(i=30)を除く第1基準受電量PR1(i)と第2基準受電量PR2(i)の差分ΔPR(i)(=PR1(i)-PR2(i))は、目標値PTの3%以上が好ましく、第2初期期間を設定した場合は、第2初期期間の終了時点で最大となり、第2初期期間を経過後、単調に減少するように設定されているのが好ましい。
【0049】
DC期間の開始直後の第2初期期間では、積算受電量PA(i)に対して、後述する放電要否判定処理(図5のステップ#11)において、PA(i)≦PR1(i)と判定された場合、後述する充電可否判定処理(図5のステップ#13)において、PA(i)≧PR2(i)と確実に判定されるため、ステップ#15(制御指令処理)において、蓄電池システム2に対して充電を許可する制御指令データDC(充電指令データに相当)が送信されることを確実に防止できる。この結果、DC期間の開始直後の第2初期期間において、蓄電池システム2の充電に起因する積算受電量PA(i)の不必要な増加、それに伴う、蓄電池システム2の不必要な放電を未然に防止できる。
【0050】
ところで、第1基準受電量PR1(i)及び第2基準受電量PR2(i)の設定の基準となる目標値PTは、上述したように、目標契約電力PKに基づいて、各DC期間の開始前に予め算出され、データ記憶部11に格納されている。目標値PTの算出及びデータ記憶部11への格納は、蓄電池制御部13が、外部から入力された目標契約電力PKに基づいて自動的に行ってもよく、また、オペレータが手動で行ってもよい。また、目標契約電力PKは、一例として、インターネット等のデータ通信網を介して、OpenADR等の規格に基づいて、外部のDRサーバ(例えば、DRAS(Demand Response Automation Server))から受信するようにするのも好ましい実施態様である。この場合、本システム1は、例えば、インターネット等の所定のデータ通信網を介して、外部のDRサーバとデータを送受信する通信装置等を備える。
【0051】
[蓄電池制御部の処理内容]
次に、蓄電池制御部13が行う、需要家データ受信処理、積算受電量算出処理、放電要否判定処理、充電可否判定処理、及び、制御指令処理について、図5を参照して説明する。
【0052】
図5は、各DC期間の開始時点から第1単位時間毎に繰り返される経過回数(i-1)番目の経過時間T(i-1)での処理直後から経過回数i番目の経過時間T(i)での処理が完了するまでの大まかな処理内容を模式的に示すフローチャートである(i=1~30)。よって、本実施形態では、各DC期間の開始時点(i=0)での処理は、1つ前のDC期間の終了時点(i=30)での処理として実行され、各DC期間の処理は、開始時点(i=0)からの経過時間T(i)(i=1~30)で実行される。
【0053】
先ず、蓄電池システム2は、ステップ#20において、受電量データD1と蓄電池データD2からなる需要家データD0を本システム1に向けて送信する処理(ステップ#201)を、経過時間T(i-1)での処理直後から、上述した第2単位時間(本実施形態では、一例として、1秒)毎に繰り返す(本実施形態では、当該繰り返しは、1つの第1単位時間(1分)内で60回行われる)。ステップ#20内の一点鎖線の矢印は、当該繰り返しループを模式的に示している。受電量データD1は、第2単位時間毎の系統電力の電力値(W)を含み、蓄電池データD2は、現在の蓄電池システム2の制御モード(充電、放電、待機)、最大充放電電力(W)、残蓄電容量(Wh)、通信異常を示す通信異常警報データ、及び、蓄電池21の異常を示す蓄電池異常警報データを含む。
【0054】
本システム1は、ステップ#10(需要家データ受信処理、積算受電量算出処理)において、蓄電池システム2から第2単位時間毎に繰り返し送信されてくる需要家データD0を、第2単位時間毎に繰り返し受信し、受信した需要家データD0に含まれる各データを、例えば、本システム1を構成するコンピュータ内に設けられた所定の記憶領域(レジスタ等)に一時的に上書きして保存する(ステップ#101)。引き続き、需要家データD0を受信する毎に、蓄電池データD2に含まれる通信異常警報データが異常を示していないかを判定し(ステップ#102)、異常を示していない場合(ステップ#102のNO判定)は、蓄電池データD2に含まれる蓄電池異常警報データが異常を示していないかを判定し(ステップ#103)、異常を示していない場合(ステップ#103のNO判定)は、受電量データD1に含まれる系統電力の電力値に第2単位時間の長さ(1秒)を乗じて、当該第2単位時間内に受電した電力量P2を計算し、1回前(1秒前)の処理で計算した積算受電量PA2に加算して、積算受電量PA2を更新する(ステップ#104)。第2単位時間毎に更新される積算受電量PA2は、例えば、上述の所定の記憶領域(レジスタ等)に一時的に保存される。尚、各DC期間の終了時点(i=30)での後述する放電要否判定処理(ステップ#11)と充電可否判定処理(ステップ#13)が終了すると、積算受電量PA2は0にリセットされる。従って、積算受電量PA2は、各DC期間の開始時点(i=0)からの第2単位時間毎の積算受電量を表している。
【0055】
蓄電池制御部13は、ステップ#102とステップ#103の2つの異常判定で、通信異常警報データまたは蓄電池異常警報データが異常を示した場合(ステップ#102、ステップ#103のYES判定)、ステップ#10(需要家データ受信処理、積算受電量算DC期間記ステップ#101からステップ#104までの一連の処理を、第2単位時間毎に繰り返す(本実施形態では、当該繰り返しは、1つの第1単位時間(1分)内で60回行われる)。ステップ#10内の一点鎖線の矢印は、当該繰り返しループを模式的に示している。1つの第1単位時間内での最終の繰り返し処理が終了すると、ステップ#104で一時的に保存された積算受電量PA2を、経過回数i番目の第1単位時間内で計算された積算受電量PA(i)として、積算受電量PA2と区別して、上述の記憶領域(レジスタ等)またはデータ記憶部11に保存する(ステップ#105)。
【0056】
ところで、ステップ#104で計算される積算受電量PA2は、系統電力の電力値を第2単位時間毎にサンプリングした離散的な値を用いて算出されているため、所謂量子化誤差を含んだ値となっている。従って、上述したように、第1基準受電量PR1(i)は、DC期間の前半から中盤に掛けて、目標積算受電量PAT(i)より小さくなるように設定することで、当該量子化誤差の影響を軽減することができる。また、第2単位時間の長さは、上記一例の1秒に限定されるものではなく、上記ステップ#10及び#20での、データの送受信、判定及び計算処理が繰り返し実行可能な限度、及び、当該量子化誤差の影響を許容可能な範囲で、変更可能である。但し、当該量子化誤差の影響を軽減するために、第2単位時間の長さは、なるべく短く設定するのが好ましく、上記一例の1秒程度が実用上好ましい。
【0057】
次に、ステップ#11(放電要否判定処理)において、蓄電池制御部13は、データ記憶部11に保存されている第1基準受電量PR1(i)を読み出し、ステップ#10で算出した積算受電量PA(i)と比較する。ここで、PA(i)>PR1(i)の場合(YES分岐)、ステップ#12(第1残蓄電容量確認処理)で、ステップ#10で一時的に保存された蓄電池データD2に含まれる残蓄電容量PB(i)が、蓄電池21の蓄電容量の下限設定値PBL以上(PB(i)≧PBL)か否かを判定し、PB(i)≧PBLの場合(YES分岐)、ステップ#15(制御指令処理)内のステップ#15a(放電指令処理)に移行する。ステップ#11の判定でPA(i)≦PR1(i)の場合(NO分岐)、ステップ#13(充電可否判定処理)に移行する。また、ステップ#12の判定でPB(i)<PBLの場合(NO分岐)、ステップ#15(制御指令処理)内のステップ#15b(待機指令処理)に移行する。尚、本実施形態では、蓄電容量の下限設定値PBLは、一例として、蓄電容量の定格値の0%(定格下限値)に設定している。これは、蓄電池21の残蓄電容量PB(i)が少しでもあれば、放電して積算受電量PA(i)の増加抑制に利用するためである。従って、本実施形態では、ステップ#12の判定でPB(i)<PBLと判定されることは基本的に稀である。このため、本システム1の運用上、蓄電池21の残蓄電容量は、或る程度確保されていることが前提となっている。
【0058】
次に、ステップ#11(NO分岐)からステップ#13に移行した場合、蓄電池制御部13は、データ記憶部11に保存されている第2基準受電量PR2(i)を読み出し、ステップ#10で算出した積算受電量PA(i)と比較する。ここで、PA(i)<PR2(i)の場合(NO分岐)、ステップ#14(第2残蓄電容量確認処理)で、ステップ#10で一時的に保存された蓄電池データD2に含まれる残蓄電容量PB(i)が、蓄電池21の蓄電容量の上限設定値PBU以下(PB(i)≦PBU)か否かを判定し、PB(i)≦PBUの場合(YES分岐)、ステップ#15(制御指令処理)内のステップ#15c(充電指令処理)に移行する。ステップ#13の判定でPA(i)≧PR2(i)の場合(YES分岐)、または、ステップ#14の判定でPB(i)>PBUの場合(NO分岐)、ステップ#15(制御指令処理)内のステップ#15b(待機指令処理)に移行する。尚、本実施形態では、蓄電容量の上限設定値PBUは、一例として、蓄電容量の定格値の100%(定格上限値)に設定している。
【0059】
尚、本実施形態では、蓄電容量の下限設定値PBL及び上限設定値PBUは、予め、データ記憶部11に保存されている。
【0060】
次に、ステップ#15(制御指令処理)に移行すると、ステップ#15a(放電指令処理)、ステップ#15b(待機指令処理)、及び、ステップ#15c(充電指令処理)の何れか1つの指令処理において、蓄電池システム2の充放電に係る制御指令データDCを作成し、データ通信部12を介して、蓄電池システム2に送信する。
【0061】
ステップ#15a(放電指令処理)では、制御モードの「放電」と、ステップ#104で一時的に保存された蓄電池データD2の最大充放電電力を放電電力指示値MD1として含む制御指令データDC(放電指令データに相当)を作成し、データ通信部12を介して、蓄電池システム2に送信する。制御モードの「放電」は、蓄電池システム2に対して、放電電力指示値MD1で指定された放電電力での放電を指示する内容である。
【0062】
ステップ#15c(充電指令処理)では、制御モードの「充電」と、ステップ#104で一時的に保存された蓄電池データD2の最大充放電電力を充電電力指示値MD2として含む制御指令データDC(充電許可データに相当)を作成し、データ通信部12を介して、蓄電池システム2に送信する。制御モードの「充電」は、蓄電池システム2に対して、充電電力指示値MD2で指定された充電電力での充電を許可する内容である。
【0063】
ステップ#15b(待機指令処理)では、制御モードの「待機」を含む制御指令データDC(待機指令データに相当)を作成し、データ通信部12を介して、蓄電池システム2に送信する。尚、制御指令データDCに含まれる充放電電力指示値MDの電力指示値は0である。制御モードの「待機」は、蓄電池システム2に対して、充電と放電の何れも行わない待機を指示する内容である。
【0064】
次に、ステップ#15において、蓄電池制御部13が上記要領で、制御指令データDCを作成し、データ通信部12を介して、蓄電池システム2に送信すると、蓄電池システム2は、ステップ#21において、その制御指令データDCを受信して、制御指令データDCの内容に基づいて、内蔵の蓄電池に対して、放電、充電、または、待機の何れかの制御を行う。当該制御は、蓄電池制御部13から次の制御指令データDCを受信するまで継続される。蓄電池システム2側での制御は、既存の蓄電池システムにおいて行われる周知の制御であり、本発明の本旨ではないので詳細な説明は省略する。
【0065】
尚、上記説明では、最大充放電電力は、蓄電池データD2の一部としてステップ#10(需要家データ受信処理、積算受電量算出処理)において、第2単位時間毎に繰り返し受信する場合を想定したが、蓄電池データD2に含めず、蓄電容量の下限設定値PBL及び上限設定値PBUと同様に、予め、データ記憶部11に保存するようにしてもよい。
【0066】
[別実施態様]
次に、上記実施形態の別実施態様について説明する。
【0067】
〈1〉上記実施形態では、上記ステップ#20で、蓄電池システム2が、受電量データD1として、電力メータ4が計測する第2単位時間毎の系統電力の電力値(W)を本システム1に送信し、上記ステップ#10で、本システム1の蓄電池制御部13が、当該第2単位時間毎の系統電力の電力値に基づいて、積算受電量PA(i)を計算する場合を想定した。
【0068】
しかし、系統電力の電力値(W)を計測する電力メータ4に代えて、所定の積算基準時からの積算電力量を計測する電力量メータを使用してもよい。この場合、蓄電池システム2は、必ずしも、当該電力量メータの計測する積算電力量の受電量データD1を第2単位時間毎に、本システム1に送信する必要はなく、各DC期間内に第1単位時間毎に繰り返される処理の開始時点(経過回数i番目の経過時間T(i)の到来時点)で送信すればよく、更には、本システム1は、当該積算電力量を、蓄電池システム2を経由せず、当該電力量メータから直接受信するようにしてもよい。
【0069】
本システム1が、蓄電池システム2または当該電力量メータから受電量データD1として当該積算電力量を受信する場合は、上述のステップ#104及び#105に代えて、本システム1の蓄電池制御部13は、経過時間T(i)で受信した積算電力量から、1つ前のDC期間の終了時点(i=30)で受信した積算電力量を差し引くだけで、各経過時間T(i)におけるDC期間の開始時点(i=0)からの積算受電量PA(i)を簡単に計算することができる。
【0070】
〈2〉上記実施形態では、第1基準受電量PR1(i)の設定の好適な実施態様として、図2図4に示すように、目標積算受電量PAT(i)から第1基準受電量PR1(i)を差し引いた差分ΔP1(i)(=PAT(i)-PR1(i))が、各DC期間の開始時点(i=0)から所定時間経過するまでの第1初期期間、単調に増加し、第1初期期間の終了時点において正値の最大値となり、第1初期期間の終了時点から、第1基準受電量PR1(i)が上限値PR1Uに到達するまで、単調に減少するように設定される場合を想定したが、第1基準受電量PR1(i)の設定は、図2図4に示す実施例に限定されるものではない。
【0071】
例えば、差分ΔP1(i)は、各DC期間を通して大きく負値となることなく(例えば、当該負値の絶対値が目標値の1~2%程度以下)、経過時間T(i)の増加に伴い増減を繰り返しても構わない。
【0072】
〈3〉上記実施形態では、DC期間の開始時点(i=0)から所定時間経過するまでの第2初期期間において、第2基準受電量PR2(i)が目標値PTの0%に設定されているため、蓄電池システム2に対して充電は許可されない。
【0073】
しかし、第2初期期間において、第2基準受電量PR2(i)は必ずしも標値PTの0%に設定される必要はなく、例えば、第2初期期間の終了時点での第1基準受電量PR1(i)が高めに設定されている場合は、同様に、第2初期期間の終了時点での第2基準受電量PR2(i)も、目標値PTの0%から少し高めに設定し、第2初期期間の開始時点から終了時点までの間、第2基準受電量PR2(i)が単調に増加するように設定してもよい。斯かる設定でも、第2初期期間内で、積算受電量PA(i)も或る程度増加すると予想されるため、第2初期期間において、第2基準受電量PR2(i)を目標値PTの0%に設定した場合と同様の効果は或る程度期待できる。
【0074】
〈4〉上記実施形態では、図5に例示した蓄電池制御部13が行う制御指令処理(ステップ#15)において、放電指令処理(ステップ#15a)と充電指令処理(ステップ#15c)と待機指令処理(ステップ#15b)の内の何れか1つの指令処理を行う場合を想定したが、放電指令処理(ステップ#15a)と充電指令処理(ステップ#15c)を行わない場合は、待機指令処理(ステップ#15b)を行わずに、制御指令データDCを蓄電池システム2に送信しないようにしてもよい。この場合、一例として、蓄電池システム2側では、制御指令データDCを受信した場合には、制御指令データDCに含まれる放電または充電指令に基づく処理を、第1単位時間(1分)だけ行い、その後、制御指令データDCを受信しない場合は、放電も充電も行わず待機すればよい。
【0075】
〈5〉上記実施形態では、図5に例示した蓄電池制御部13が行う各処理の処理手順及び内容は、一例であって、図5に示す処理手順及び内容に限定されるものではない。例えば、図5のフローチャートでは、ステップ#11(放電要否判定処理)を、ステップ#13(充電可否判定処理)の前に行ったが、ステップ#13をステップ#11より先に行ってもよい。また、ステップ#11とステップ#13を先に行い、その結果に基づいて、ステップ#12(第1残蓄電容量確認処理)とステップ#14(第2残蓄電容量確認処理)の何れかを実行するようにしてもよい。
【0076】
更に、ステップ#10(需要家データ受信処理、積算受電量算出処理)においても、ステップ#102とステップ#103の2つの異常判定の順番は入れ替えても構わない。更に、当該2つの異常判定を行わず、通信異常警報データまたは蓄電池異常警報データに代えて、蓄電池システム2から本システム1に対して制御の停止を要請する警報データを受信して、当該警報データに基づいてステップ#10(需要家データ受信処理、積算受電量算出処理)及び後続の各処理を中止するようにしてもよい。
【0077】
更に、上記実施形態では、ステップ#11(放電要否判定処理)において、PA(i)=PR1(i)の場合、NO分岐となって、ステップ#13(充電可否判定処理)に移行したが、YES分岐として、ステップ#12(第1残蓄電容量確認処理)に移行するようにしてもよい。
【0078】
更に、上記実施形態では、ステップ#12(第1残蓄電容量確認処理)において、PB(i)=PBLの場合、YES分岐となって、ステップ#15a(放電指令処理)に移行したが、NO分岐として、ステップ#15b(待機指令処理)に移行するようにしてもよい。
【0079】
更に、上記実施形態では、ステップ#13(充電可否判定処理)において、PA(i)=PR2(i)の場合、YES分岐となって、ステップ#15b(待機指令処理)に移行したが、NO分岐として、ステップ#14(第2残蓄電容量確認処理)に移行するようにしてもよい。
【0080】
更に、上記実施形態では、ステップ#14(第2残蓄電容量確認処理)において、PB(i)=PBUの場合、YES分岐となって、ステップ#15c(充電指令処理)に移行したが、NO分岐として、ステップ#15b(待機指令処理)に移行するようにしてもよい。
【0081】
更に、本システム1において、ステップ#12(第1残蓄電容量確認処理)及びステップ#14(第2残蓄電容量確認処理)を行わず、同様の処理を、放電指令データまたは充電許可データとして制御指令データDCを受信した蓄電池システム2側で行うようにしてもよい。つまり、蓄電池システム2が、残蓄電容量PB(i)が下限設定値PBL未満または以下の場合は、放電指令データに拘わらず放電を行わず、残蓄電容量PB(i)が上限設定値PBU以上または超過の場合は充電許可データに拘わらず充電を行わないようにしてもよい。
【0082】
〈6〉上記実施形態では、ステップ#15a(放電指令処理)において、最大充放電電力を放電電力指示値MD1として含む制御指令データDC(放電指令データに相当)を作成し、ステップ#15c(充電指令処理)において、最大充放電電力を充電電力指示値MD2として含む制御指令データDC(充電許可データに相当)を作成する場合を想定したが、制御指令データDCに、放電電力指示値MD1及び充電電力指示値MD2は必ずしも含まれていなくてもよい。但し、この場合、蓄電池システム2側において、放電または充電の制御指令データDCを受信した場合は、放電または充電の電力指示値を最大充放電電力等に自ら設定して、放電または充電処理が実行可能に構成されているものとする。
【0083】
〈7〉上記実施形態では、本発明システム1と蓄電池システム2は、互いに別システムとして構成されている場合を想定したが、本発明システム1の一部または全部が、蓄電池システム2の一部として構成されていてもよく、また、蓄電池システム2の蓄電池21を除くコントローラ22及び通信装置23の一部または全部が、本発明システム1の一部として構成されていてもよい。一例として、本発明システム1の蓄電池制御部13と蓄電池システム2のコントローラ22が同じコンピュータ上に構成されていてもよく、その場合、上述のデータ通信路3は、当該コンピュータ内のデータバスとして構成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、デマンドレスポンスの実行対象となる需要家における各DC期間の開始時点からの系統電力の積算受電量が、各DC期間内において所定の目標値を超過しないように、需要家の蓄電池システムに蓄電されている電力の放電を制御する用途に利用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 : 蓄電池制御システム
11 : データ記憶部
12 : データ通信部
13 : 蓄電池制御部
2 : 蓄電池システム
21 : 蓄電池
22 : コントローラ
23 : 通信装置
3 : データ通信路
4 : 電力メータ
図1
図2
図3
図4
図5