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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】スピンドルユニット
(51)【国際特許分類】
   D03D 49/16 20060101AFI20221130BHJP
   D03D 49/00 20060101ALI20221130BHJP
   D02H 1/00 20060101ALI20221130BHJP
   F16D 63/00 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
D03D49/16
D03D49/00
D02H1/00
F16D63/00 P
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019071109
(22)【出願日】2019-04-03
(65)【公開番号】P2020169410
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000185248
【氏名又は名称】小倉クラッチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】三ツ橋 隆史
(72)【発明者】
【氏名】松本 益幸
(72)【発明者】
【氏名】周東 信行
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/019910(WO,A1)
【文献】英国特許出願公開第2427621(GB,A)
【文献】特開2005-90663(JP,A)
【文献】特開平10-310955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D29/00-51/46
D02H 1/00-13/38
F16D49/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定フレームへの取付構造が一端部に設けられた支持軸と、
回転時に抵抗が付与される制動軸を軸心部に有し、前記支持軸の他端部に前記支持軸と同一軸線上に位置するように結合された電磁空隙式ブレーキと、
糸が巻かれたボビンの軸心部内に着脱可能に挿入される円筒状に形成され、中空部内に前記支持軸および前記電磁空隙式ブレーキが挿入された状態で前記支持軸に回転自在に支持されたスピンドル部材と、
前記スピンドル部材と前記制動軸とを連動するように連結する連結機構とを備えたことを特徴とするスピンドルユニット。
【請求項2】
請求項1記載のスピンドルユニットにおいて、
前記電磁空隙式ブレーキは、電磁パウダーブレーキであることを特徴とするスピンドルユニット。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のスピンドルユニットにおいて、
前記連結機構は、
前記制動軸を横切る連結ピンと、
前記スピンドル部材の前記電磁空隙式ブレーキを覆う先端部に設けられ、前記先端部を閉塞する蓋部材と、
前記連結ピンが係合するように前記蓋部材に形成された穴とによって構成されていることを特徴とするスピンドルユニット。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか一つに記載のスピンドルユニットにおいて、
さらに、前記スピンドル部材の外周部に装着された弾性材製のリング部材を備え、
前記リング部材は、前記スピンドル部材に対して移動する前記ボビンに摩擦抵抗を付与するものであることを特徴とするスピンドルユニット。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一つに記載のスピンドルユニットにおいて、
前記支持軸は、前記スピンドル部材を回転自在に支持する円筒体を有し、
前記電磁空隙式ブレーキのリード線は、前記円筒体の内部を通して配線されていることを特徴とするスピンドルユニット。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか一つに記載のスピンドルユニットにおいて、
さらに、前記支持軸の一端部と、前記支持軸の前記一端部に近接する前記スピンドル部材の開口部との間に位置する円環状の蓋体を備えていることを特徴とするスピンドルユニット。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか一つに記載のスピンドルユニットにおいて、
さらに、前記スピンドル部材の外周部であって、前記ブレーキとは反対側の端部に、前記スピンドル部材の径方向の外側に向けて突出する突き当て部材を有していることを特徴とするスピンドルユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機に供給される糸が巻かれたボビンを支持する糸供給用のスピンドルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、織機に炭素繊維等の特殊糸を供給するクリールは、糸が巻かれたボビンを回転可能に支持するスピンドルユニットを備えている。このスピンドルユニットは、例えば特許文献1に記載されているように、架台に回転自在に支持された回転軸を含むスピンドル部と、このスピンドル部を制動する制動部とから構成されている。
制動部は、架台に支持され、回転軸の基端部に歯車を介して接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-310955
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているスピンドルユニットでは、スピンドル部と制動部とが並べて設けられているために、装置全体が大型化するという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、小型化されたスピンドルユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明に係るスピンドルユニットは、固定フレームへの取付構造が一端部に設けられた支持軸と、回転時に抵抗が付与される制動軸を軸心部に有し、前記支持軸の他端部に前記支持軸と同一軸線上に位置するように結合された電磁空隙式ブレーキと、糸が巻かれたボビンの軸心部内に着脱可能に挿入される円筒状に形成され、中空部内に前記支持軸および前記電磁空隙式ブレーキが挿入された状態で前記支持軸に回転自在に支持されたスピンドル部材と、前記スピンドル部材と前記制動軸とを連動するように連結する連結機構とを備えたものである。
【0007】
本発明は、前記スピンドルユニットにおいて、前記電磁空隙式ブレーキは、電磁パウダーブレーキであってもよい。
【0008】
本発明は、前記スピンドルユニットにおいて、前記連結機構は、前記制動軸を横切る連結ピンと、前記スピンドル部材の前記電磁空隙式ブレーキを覆う先端部に設けられ、前記先端部を閉塞する蓋部材と、前記連結ピンが係合するように前記蓋部材に形成された穴とによって構成されていてもよい。
【0009】
本発明は、前記スピンドルユニットにおいて、さらに、前記スピンドル部材の外周部に装着された弾性材製のリング部材を備え、前記リング部材は、前記スピンドル部材に対して移動する前記ボビンに摩擦抵抗を付与するものであってもよい。
【0010】
本発明は、前記スピンドルユニットにおいて、前記支持軸は、前記スピンドル部材を回転自在に支持する円筒体を有し、前記電磁空隙式ブレーキのリード線は、前記円筒体の内部を通して配線されていてもよい。
【0011】
本発明は、前記スピンドルユニットにおいて、さらに、前記支持軸の一端部と、前記支持軸の一端部に近接する前記スピンドル部材の開口部との間に位置する円環状の蓋体を備えていてもよい。
【0012】
本発明は、前記スピンドルユニットにおいて、さらに、前記スピンドル部材の外周部であって前記ブレーキとは反対側の端部に、前記スピンドル部材の径方向の外側に向けて突出する突き当て部材を有していてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、ブレーキがスピンドル部材の中に収容されている。このため、本発明によれば、小型化されたスピンドルユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るスピンドルユニットの断面図である。
図2】スピンドルユニットの前方から見た正面図である。
図3】スピンドルユニットの前端部を拡大して示す断面図である。
図4】ブレーキハウジングの断面図である。
図5】ブレーキハウジングの後方から見た背面図である。
図6】スピンドル部材の後端部と支持軸との接続部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るスピンドルユニットの一実施の形態を図1図6を参照して詳細に説明する。
図1に示すスピンドルユニット1は、炭素繊維からなる特殊糸2(以下、単に糸2という)を引き出すクリール(図示せず)に使用される糸供給用のスピンドルユニットである。糸2はボビン3に巻かれて保持されている。
【0016】
ボビン3は、円筒状に形成されている。ボビン3の中空部には、スピンドルユニット1の後述するスピンドル部材4が着脱可能に挿入されている。スピンドル部材4は、図1において右側の端部からボビン3の中に挿入される。以下において、このスピンドルユニット1の構成を説明するうえで方向を示すにあたっては、便宜上、図1において右側を前側とし、左側を後側として説明する。
【0017】
スピンドルユニット1は、図1中に最も左側に描かれているクリールの固定フレーム5に取付けられ、固定フレーム5から前方に向けて片持ち梁状に突出している。スピンドルユニット1は、固定フレーム5に固定された支持軸11と、支持軸11の前端部に結合された電磁空隙式ブレーキ12(以下、単にブレーキ12という)と、これらの支持軸11およびブレーキ12が挿入可能な中空部13を有するスピンドル部材4などを備えている。
【0018】
支持軸11は、前後方向に延びる円筒体14と、円筒体14の後端部(支持軸11の一端部)内に設けられた取付フランジ15などを備えている。取付フランジ15は、円板状に形成され、円筒体14の径方向に延びる固定用ボルト16によって円筒体14に固定されている。取付フランジ15の軸心部には、固定フレーム5の貫通孔5aに嵌合する筒部15aと、雌ねじ15bとが形成されている。これらの筒部15aと雌ねじ15bとを有する取付フランジ15が本発明でいう、支持軸の一端部に設けられた固定フレームへの取付構造に相当する。
【0019】
スピンドルユニット1の固定フレーム5への固定は、固定フレーム5の後方から図示していない固定用ボルトを雌ねじ15bにねじ込むことによって行われる。
円筒体14の外周部であって、前端部と後端部とには、後述するスピンドル部材4を回転自在に支持する軸受17,18が設けられている。
円筒体14の前端部であって前側の軸受17より前側には、外径が相対的に小さい小径部14aが形成されている。
【0020】
ブレーキ12は、支持軸11と同一軸線上に位置付けられて支持軸11(円筒体14)の前端部に結合されている。ブレーキ12の支持軸11への結合は、ブレーキ12の最も外側でハウジングを構成する円筒状の筒体21を使用して行われている。筒体21は、円筒体14の小径部14aの外周面に前方から嵌合し、筒体21を径方向に貫通して小径部14aに螺着された複数の固定用ねじ22によって小径部14aに固定されている。この実施の形態においては、2本の固定用ねじ22が用いられている。これらの固定用ねじ22は、筒体21の周方向の2箇所に設けられた貫通孔23(図4および図5参照)に通されている。筒体21の外径は、円筒体14の二つの軸受17,18どうしの間に位置する最大径部14bの外径と同等である。
【0021】
この実施の形態によるブレーキ12は、電磁パウダーブレーキによって構成されている。なお、ブレーキ12は、図示してはいないが、電磁空隙式ブレーキの一つである電磁ヒステリシスブレーキによって構成することもできる。電磁ヒステリシスブレーキは、例えば特許第6392757号に記載されているように電磁石式のものや、永久磁石式のものなどを用いることができる。永久磁石式の電磁ヒステリシスブレーキは、制動軸と一体に回転する磁性材からなるヒステリシス部材と、ヒステリシス部材を磁束が通過するように配置された複数の永久磁石などを備えている。永久磁石式の電磁ヒステリシスブレーキにおいては、永久磁石の位置をモータによって変えることにより制動力の大きさが制御される。
【0022】
この実施の形態によるブレーキ12(電磁パウダーブレーキ)は、図3に示すように、筒体21(ハウジング)を含む円筒状のフィールドコア31と、フィールドコア31の前後方向の両端部にそれぞれスペーサー32,33と軸受34,35とを介して回転自在に支持された制動軸36とを備えている。
フィールドコア31は、筒体21の内周部であって前後方向の中央部に固着された環状の電磁コイル37と、電磁コイル37を前後方向の両側から挟む前側コア38および後側コア39と、電磁コイル37の内周側で前側コア38と後側コア39とに挟まれた断磁リング40などを備えている。前側コア38と、後側コア39と、断磁リング40は、それぞれ円環状に形成されている。
断磁リング40は、前側コア38と後側コア39との間を磁束が通過することを規制する。前側コア38と後側コア39との間に生じる空間には絶縁樹脂41が充填されている。
【0023】
電磁コイル37のリード線42は、電磁コイル37から筒体21の長穴43を通してフィールドコア31の後方に引き出され、フィールドコア31の後端と支持軸11の円筒体14との間を通されて円筒体14の内部に導かれている。そして、リード線42は、円筒体14の内部を通されて円筒体14の後端部まで延び、後述するスピンドル部材4より後方で円筒体14の径方向に貫通して円筒体14の外に導出されている。
【0024】
スペーサー32,33は、制動軸36と協働してフィールドコア31との間にパウダー収容空間Sを形成している。これらの一対のスペーサー32,33は、制動軸36との間をシールするシール部材44,45をそれぞれ備えている。シール部材44,45は、ブレーキ12内の一対の軸受34,35どうしの間に位置している。
制動軸36は、支持軸11と同一軸線上に位置付けられ、ブレーキ12内の一対の軸受34,35を貫通している。制動軸36の、一対の軸受34,35の間となる部分にはロータ46が一体に回転するように固着されている。ロータ46は、一対のスペーサー32,33の間を通って径方向の外側に延びる円板状に形成されている。ロータ46の外周面は、前側コア38および後側コア39の内周面と、断磁リング40の内周面とに所定の隙間をおいて対向している。
【0025】
パウダー収容空間Sにはパウダー47が封入されている。パウダー47は、電磁コイル37が通電されることによって、図3に示すように、フィールドコア31の内周面と、ロータ46の外周面とに磁気によって吸着される。図3は、電磁コイル37が通電されてパウダー47がフィールドコア31とロータ46との間に集められている状態を示している。このようにパウダー47が集められることによって、ロータ46が制動軸36とともに回転する際に抵抗が付与される。
制動軸36の前端部は、フィールドコア31より前方に突出しており、後述する連結機構51を介してスピンドル部材4に連結されている。
【0026】
スピンドル部材4は、ボビン3の軸心部内に着脱可能に挿入される円筒状に形成されており、図1に示すように、上述した支持軸11の二つの軸受17,18に支持されたスピンドルベース52と、スピンドルベース52の前端部に結合された前側チューブ53とによって構成されている。前側チューブ53は、ブレーキ12を径方向の外側から覆う位置に設けられている。前側チューブ53が請求項3記載の発明でいう「電磁空隙式ブレーキを覆う先端部」に相当する。
【0027】
スピンドルベース52と前側チューブ53とは、外径が互いに等しい円筒によって形成されている。スピンドルベース52と前側チューブ53との結合は、スピンドルベース52の小径部52aの外周面に前側チューブ53を嵌合し、前側チューブ53を径方向に貫通する固定用ねじ54を小径部52aに螺着させて行われている。
スピンドルベース52の外周部であって後端部には、図6に示すように、Oリング55と突き当て部材56とが設けられている。
【0028】
Oリング55は、請求項4記載の発明でいう「リング部材」に相当するもので、スピンドルベース52の環状凹部57内に嵌め込まれて装着されている。Oリング55は、ゴムやエラストマーなどの弾性材によって形成されており、スピンドル部材4に対して移動するボビン3に摩擦抵抗を付与する。このOリング55がボビン3とスピンドルベース52との間に介在することにより、糸2が引かれたときにボビン3とスピンドル部材4とが一体に回転するようになる。
【0029】
環状凹部57は、スピンドル部材4の軸線方向に所定の長さを有しており、Oリング55が環状凹部57の中でスピンドル部材4の軸線方向に移動できるように形成されている。スピンドル部材4にボビン3を装着する以前は、図6に示すように、Oリング55が環状凹部57の前端側に位置している。スピンドル部材4にボビン3が装着された状態においては、図1に示すように、Oリング55がボビン3によって押されて環状凹部57の後端側に移動する。この状態でボビン3がスピンドル部材4に対して前方や周方向に移動する際には、Oリング55との摩擦による抵抗が付与されることになる。
【0030】
突き当て部材56は、スピンドルベース52の外周部であって後端部(ブレーキ12とは反対側の端部)に嵌合するリングによって形成されており、スピンドルベース52の径方向の外側に向けて突出している。スピンドルベース52における突き当て部材56の後方に隣り合う位置には、スナップリング58が係合している。突き当て部材56の後方への移動は、スナップリング58によって阻止される。
また、スピンドルベース52の後端の開口部と支持軸11の後端部との間には蓋体59が設けられている。蓋体59は、ゴムやエラストマーなどによって円環状に形成されており、スピンドルベース52の内周面に固着されている。
【0031】
前側チューブ53の前端部は、図3に示すように、連結機構51を介して制動軸36の前端部に連結されている。
連結機構51は、制動軸36を横切る連結ピン61と、前側チューブ53の前端部に設けられて前側チューブ53の前端部を閉塞する蓋部材62と、連結ピン61が係合するように蓋部材62に形成された穴63とによって構成されている。この実施の形態による穴63は、図2に示すように、制動軸36と連結ピン61とが嵌合する開口形状で蓋部材62を貫通するように形成されている。
【0032】
制動軸36には、軸心を通って制動軸36と直交するように延びる貫通孔64が形成されている。連結ピン61は、制動軸36の貫通孔64に例えば圧入されて制動軸36に固定されている。
連結ピン61が蓋部材62の穴63に係合することによって、スピンドル部材4と制動軸36とが連結機構51を介して連動するように連結される。
【0033】
このように構成されたスピンドルユニット1にボビン3を装着するためには、先ず、ボビン3の中空部にスピンドル部材4の前端を挿入する。そして、スピンドル部材4に対してボビン3を後方に押す。このとき、ボビン3は、後端が突き当て部材56に当接することによって後方への移動が規制されて止まる。このようにボビン3がスピンドル部材4に装着される過程でOリング55がスピンドルベース52とボビン3の内周面とによって挟まれて弾性変形し、その状態で環状凹部57内の後端部に移動する。
【0034】
このようにボビン3がスピンドルユニット1に装着された状態でボビン3から糸2が織機によって引き出されることによりボビン3とスピンドル部材4とが一体に回転する。スピンドル部材4の回転は、連結機構51を介して制動軸36に伝達される。このとき、ブレーキ12の電磁コイル37が通電されていると、制動軸36にブレーキトルクが作用してスピンドル部材4が回転する際に抵抗が付与され、織機によって引かれる糸2に張力が付与される。張力の大きさは、電磁コイル37に供給する電力を変えることによって制御することができる。
【0035】
この実施の形態によるスピンドルユニット1においては、ブレーキ12がスピンドル部材4の中に収容されている。このため、この実施の形態によれば、スピンドル部材とブレーキとが並ぶ場合と較べると小型化されたスピンドルユニットを提供することができる。
【0036】
この実施の形態による電磁空隙式ブレーキ12は、電磁パウダーブレーキである。このため、軸線方向に磁性材製の部材と磁石とが並ぶ他の形式の電磁空隙式ブレーキを使用する場合と較べると、軸線方向に小型化されたスピンドルユニットが得られる。
【0037】
この実施の形態による連結機構51は、制動軸36を横切る連結ピン61と、スピンドル部材4の前側チューブ53(ブレーキ12を覆う先端部に)設けられ、前側チューブ53を閉塞する蓋部材62と、連結ピン61が係合するように蓋部材62に形成された穴63とによって構成されている。このため、スピンドル部材4の内部に糸くず等の異物が入ることを蓋部材62で防ぐことができる。このため、動作の信頼性が高いスピンドルユニットを提供することができる。
【0038】
この実施の形態によるスピンドルユニット1は、スピンドル部材4の外周部に装着されたOリング55(弾性材製のリング部材)を備えている。Oリング55は、スピンドル部材4に対して移動するボビン3に摩擦抵抗を付与するものである。
このため、ボビン3とスピンドル部材4とが常に一体に回転し、張力の大きさを精度よく制御することができる。
【0039】
この実施の形態による支持軸11は、スピンドル部材4を回転自在に支持する円筒体14を有している。ブレーキ12のリード線42は、円筒体14の内部を通して配線されている。このため、電磁コイル37のリード線42に干渉されることなく、スピンドル部材4を円筒体14によって回転自在に支持することができる。したがって、この実施の形態によれば、径方向に小型化されたスピンドルユニットを提供することができる。
【0040】
この実施の形態によるスピンドルユニット1は、支持軸11の後端部と、支持軸11の後端部に近接するスピンドル部材4の開口部との間に位置する円環状の蓋体59を備えている。このため、スピンドル部材4の後端部内に糸くず等の異物が入ることを蓋体59によって防ぐことができる。このため、動作の信頼性がより一層高いスピンドルユニットを提供することができる。
【0041】
この実施の形態によるスピンドルユニット1は、スピンドル部材4の外周部であって後端部(ブレーキ12とは反対側の端部)に、スピンドル部材4の径方向の外側に向けて突出する突き当て部材56を有している。このため、ボビン3をスピンドルユニット1の正しい位置に簡単に装着することができる。したがって、ボビン3の回転がスピンドル部材4に正しく伝達されるようになり、糸2に張力を付与する動作の信頼性がより一層高くなる。
【符号の説明】
【0042】
1…スピンドルユニット、3…ボビン、4…スピンドル部材、5…固定フレーム、11…支持軸、14…円筒体、15…取付フランジ(取付構造)、12…電磁空隙式ブレーキ、36…制動軸、42…リード線、51…連結機構、55…Oリング(リング部材)、56…突き当て部材、59…蓋体、61…連結ピン、62…蓋部材、63…穴。
図1
図2
図3
図4
図5
図6