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特許7185599円筒形高圧カットアウトの誤挿入防止カバーおよび高圧配電線路用接地装置
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  • 特許-円筒形高圧カットアウトの誤挿入防止カバーおよび高圧配電線路用接地装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】円筒形高圧カットアウトの誤挿入防止カバーおよび高圧配電線路用接地装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 85/02 20060101AFI20221130BHJP
   H01H 85/20 20060101ALI20221130BHJP
   H02G 1/02 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
H01H85/02 S
H01H85/20 A
H02G1/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019128026
(22)【出願日】2019-07-10
(65)【公開番号】P2021015668
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】降矢 智章
(72)【発明者】
【氏名】山口 崇明
(72)【発明者】
【氏名】古川 真也
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-152035(JP,A)
【文献】特開2010-259144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 85/02
H01H 85/20
H02G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にヒューズ筒を収納可能な収納部を備えた高圧カットアウトの本体端部に装着され、前記ヒューズ筒を挿入するための開口部を開閉可能な誤挿入防止カバーであって、
高圧カットアウトの下端部に固定するための固定手段を有するカバー本体と、
前記カバー本体に設けられ、前記開口部を開閉する可動プレートと、
前記可動プレートを閉塞方向へ付勢する付勢手段と、
を備えていることを特徴とする高圧カットアウトの誤挿入防止カバー。
【請求項2】
前記可動プレートの内側に設けられ接地用工具の通過を許容する一方、ヒューズ筒挿入用工具の通過を妨げる筒状通過規制部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の高圧カットアウトの誤挿入防止カバー。
【請求項3】
前記可動プレートは、前記カバー本体の底壁に設けられたガイド溝に沿ってスライド可能に構成され、
前記可動プレートには前記接地用工具が通過可能な開口部が形成され、
前記可動プレートが前記付勢手段の付勢力によって移動した状態では、前記可動プレートの前記開口部は前記筒状通過規制部材と一致せず、
前記付勢手段の付勢力に抗して前記可動プレートを移動させた状態では、前記可動プレートの前記開口部は前記筒状通過規制部材と一致するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の高圧カットアウトの誤挿入防止カバー。
【請求項4】
前記固定手段は、前記高圧カットアウトの二次側端子の取付け穴に対応して設けられた締め付けネジを備え、
前記締め付けネジの先端が前記二次側端子の取付け穴に進入することで、前記カバー本体を高圧カットアウトの下端部に結合するように構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の高圧カットアウトの誤挿入防止カバー。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の高圧カットアウトの誤挿入防止カバーと、
内部にヒューズ筒を収納可能な収納部を備え、収納部の上部に設けられた一次側端子が高圧線に接続された高圧カットアウトと、を備え、
前記高圧カットアウトは、ヒューズ筒および二次側端子を有しておらず、下端部に前記誤挿入防止カバーが装着され、
先端に前記一次側端子に電気的に接続可能な電極部を有し他端から前記電極部に電気的に接続された接地用コードが延設されてなる接地用工具が、前記可動プレートが開かれた状態で前記開口部より前記高圧カットアウト内に挿入されることにより、前記高圧線を接地点に接続可能に構成されていることを特徴とする高圧配電線路用接地装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧配電線路に接続されている接地用の高圧カットアウトへの誤挿入防止カバーおよび高圧配電線路を接地する際に使用する高圧配電線路用接地装置に関し、特に円筒形の高圧カットアウトに適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道用の電力設備においては、三相交流電圧を供給する高圧線を軌道沿線に敷設し、変圧器で降圧して信号機や照明灯等へ電源を供給するようにした送電系が設けられている。このような送電系においては、信号機や照明灯として単相交流電圧で動作する機器が使用されるため、駅間に設置されて灯力高圧線に接続される変圧器は、単相変圧器がほとんどである。ただし、駅構内には三相変圧器が配設され、灯力高圧線に接続されている。また、高圧線に接続される各変圧器の一次側には、変圧器を保護するために高圧カットアウトがR相、S相等の給電線ごとに設けられている。
【0003】
ところで、高圧配電線路におけるメンテナンス作業では、変電所等で高圧線への給電を停止するとともに高圧線を接地する必要があり、変圧器に接続されている高圧カットアウトを利用して高圧線の接地をとる技術が知られている。
従来、駅間において三相交流の高圧線の作業を実施する場合には、図8(A)に示すように、隣接する二つの変圧器11A,11Bの一方(11A)で給電相であるR相とS相に、水密分岐コネクタ12A,12Bを介して接続されている高圧カットアウト10A,10Bを利用して接地をとるとともに、他方の変圧器11BでS相とT相に接続されている高圧カットアウト10A’,10B’を利用して接地をとるか、図8(B)に示すように、駅構内に設けられている三相変圧器11Cにおいて、R相とS相とT相に接続されている高圧カットアウト10A,10B,10Cを利用して接地をとることが行われていた。また、各相の高圧線にアレスタ(避雷器)LAが接続されることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-259144号公報
【文献】特開2009-152035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、高圧カットアウトを利用した従来の接地技術では、駅中間に作業区間がある場合、作業区間からわざわざ隣接の変圧器設置個所または駅構内の三相変圧器設置個所まで出向いて接地作業を行い、駅間作業終了後には、再び隣接の変圧器設置個所または駅構内へ移動して接地を解除する必要があり、非常に効率の悪い作業形態を余儀なくされていた。
なお、高圧カットアウトを利用した接地技術としては、例えば特許文献1に開示されている高圧カットアウト用工具を使用した接地方法がある。この高圧カットアウト用工具は、高圧カットアウト内のヒューズ筒を引き抜いた後に、工具の先端電極部を挿入して内部の端子電極に接触させることができるように工夫したものである。ただし、特許文献1には、三相交流の高圧線の単相負荷区間で作業を実施する場合における上述したような課題および課題の解決手段については記載されていない。
【0006】
本発明者らは、例えばR相とS相に高圧カットアウト10A,10Bが接続されている変圧器において、図8(C)に示すように、残りのT相にも高圧カットアウト10Cを接続して、作業開始時に接地をとるために利用できるようにすることを考えた。なお、高圧カットアウト10Cは、ヒューズ筒を内蔵しておらず、高圧線の作業を実施する際に、特許文献1に記載されているような接地用工具が差し込まれることで、高圧線(T相)が接地される。しかし、上記のような接地用の高圧カットアウト10Cを設けておくと、その事実を知らない者が、軌道沿線設備の点検の際に、高圧カットアウトにヒューズ筒が挿入されていないことに気が付いて、誤ってヒューズ筒を挿入してしまうおそれがあるという課題があることが分かった。
【0007】
また、本発明に関連する技術として、特許文献2に記載されている高圧カットアウトの開口部を閉塞するカバー蓋に関する発明がある。しかし、この特許文献2の高圧カットアウトのカバー蓋は、高圧カットアウトの下部に内蔵する形態のものであるため、高圧カットアウトを改造する必要があり、コストアップを招く。また、特許文献2のカバー蓋は、開口部を閉塞することはできるものの、ヒューズ筒の挿入は許容する構成であるため、誤ってヒューズ筒が挿入されるおそれがあるという課題を有している。
【0008】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたもので、接地用に設けた高圧カットアウトに誤ってヒューズ筒が挿入されるのを防止することができる誤挿入防止カバーを提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、高圧カットアウトを改造する必要がなく、どのような形態の高圧カットアウトでも取り付けることができる安価な誤挿入防止カバーを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、三相交流の高圧線の単相負荷区間で作業を実施する場合に、わざわざ駅構内の三相変圧器設置個所や隣接する変圧器設置個所へ出向いて接地作業を行うことなく、作業対象の変圧器の設置個所にて三相すべての給電線の接地をとることができる高圧配電線路用接地装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明は、
内部にヒューズ筒を収納可能な収納部を備えた高圧カットアウトの本体端部に装着され、前記ヒューズ筒を挿入するための開口部を開閉可能な誤挿入防止カバーであって、
高圧カットアウトの下端部に固定するための固定手段を有するカバー本体と、
前記カバー本体に設けられ、前記開口部を開閉する可動プレートと、
前記可動プレートを閉塞方向へ付勢する付勢手段と、
を備えているように構成した。
【0010】
上記のような構成によれば、高圧カットアウトのヒューズ筒を挿入するための開口部を付勢手段によって付勢された可動プレートで閉塞することができるため、内部にヒューズ筒が挿入されていない状態を見ることができなくなり、誤ってヒューズ筒が挿入されるのを防止することができる。また、カバー本体が高圧カットアウトの下端部に固定するための固定手段を備えているため、高圧カットアウトを改造する必要がなく、どのような形態の高圧カットアウトでも取り付けることが可能であり、大幅なコストアップを回避することができる。
【0011】
ここで、望ましくは、前記可動プレートの内側に設けられ接地用工具の通過を許容する一方、ヒューズ筒挿入用工具の通過を妨げる筒状通過規制部材を備えているように構成する。
このような構成によれば、筒状通過規制部材によってヒューズ筒挿入用工具の通過を妨げることができるため、誤ってヒューズ筒が挿入されるのを確実に防止することができる。
【0012】
また、望ましくは、前記可動プレートは、前記カバー本体の底壁に設けられたガイド溝に沿ってスライド可能に構成され、
前記可動プレートには前記接地用工具が通過可能な開口部が形成され、
前記可動プレートが前記付勢手段の付勢力によって移動した状態では、前記可動プレートの前記開口部は前記筒状通過規制部材と一致せず、
前記付勢手段の付勢力に抗して前記可動プレートを移動させた状態では、前記可動プレートの前記開口部は前記筒状通過規制部材と一致するように構成する。
【0013】
上記のような構成によれば、接地用工具が挿入されていない状態では、可動プレートが付勢手段(引っ張りバネ)の付勢力(復元力)によって移動して、可動プレートの開口部と筒状通過規制部材とがずれた状態になって、外側から高圧カットアウトの内部を見ることができなくなるため、ヒューズ筒が挿入されていない状態を外部から見ることができず、誤ってヒューズ筒が挿入されるのをより確実に防止することができる。
【0014】
さらに、望ましくは、前記固定手段は、前記高圧カットアウトの二次側端子の取付け穴に対応して設けられた締め付けネジを備え、
前記締め付けネジの先端が前記二次側端子の取付け穴に進入することで、前記カバー本体を高圧カットアウトの下端部に結合するように構成する。
このような構成によれば、固定手段は、高圧カットアウトの二次側端子の取付け穴を利用してカバー本体を高圧カットアウトの下端部に固定する締め付けネジを備えるため、確実にカバー本体を固定することができるとともに、装置の小型化を図ることができる。
【0015】
また、本出願の他の発明に係る高圧配電線路用接地装置は、
上記のような構成を有する高圧カットアウトの誤挿入防止カバーと、
内部にヒューズ筒を収納可能な収納部を備え、収納部の上部に設けられた一次側端子が高圧線に接続された高圧カットアウトと、を備え、
前記高圧カットアウトは、ヒューズ筒および二次側端子を有しておらず、下端部に前記誤挿入防止カバーが装着され、
先端に前記一次側端子に電気的に接続可能な電極部を有し他端から前記電極部に電気的に接続された接地用コードが延設されてなる接地用工具が、前記可動プレートが開かれた状態で前記開口部より前記高圧カットアウト内に挿入されることにより、前記高圧線を接地点に接続可能に構成したものである。
【0016】
かかる構成によれば、三相交流の高圧線の単相負荷区間で作業を実施する場合に、わざわざ駅構内の三相変圧器設置個所や隣接する変圧器設置個所へ出向いて接地作業を行うことなく、高圧カットアウトのヒューズ筒挿入用の開口部より接地用工具を挿入するだけで、作業対象の変圧器の設置個所にて三相すべての給電線の接地をとることができ、高圧線に対する作業に要する時間を大幅に短縮することができる。また、高圧カットアウトのヒューズ筒を挿入するための開口部を開閉可能な誤挿入防止カバーを備えるため、誤ってヒューズ筒が挿入されるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の誤挿入防止カバーによれば、接地用に設けた高圧カットアウトに誤ってヒューズ筒が挿入されるのを防止することができる。また、高圧カットアウトを改造する必要がなく、どのような形態の高圧カットアウトでも取り付けることが可能であり、大幅なコストアップを回避することができる。
さらに、本発明の高圧配電線路用接地装置によれば、三相交流の高圧線の単相負荷区間で作業を実施する場合に、わざわざ駅構内の三相変圧器設置個所や隣接する変圧器設置個所へ出向いて接地作業を行うことなく、作業対象の変圧器の設置個所にて相すべての給電線の接地をとることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係るカットアウトの誤挿入防止カバーの一実施形態を示すもので、(A)は誤挿入防止カバーの構造を示す斜視図、(B)は規制部材および可動プレートを外した状態のカバー本体を示す斜視図である。
図2】(A)は可動プレートを外した状態のカバー本体を斜め下方から見た状態示す斜視図、(B)は誤挿入防止カバーを斜め下方から見た状態を示す斜視図である。
図3】実施形態に係る誤挿入防止カバーの内部構造を示す正面断面図である。
図4】接地用工具とヒューズ筒挿入用工具の一例を示す図である。
図5】(A)は本実施形態の誤挿入防止カバーが装着される高圧カットアウトの一例を示す側面図、(B)はその底面図である。
図6】高圧カットアウトの下部に誤挿入防止カバーが装着された高圧配電線路用接地装置に、接地用工具が挿入されている状態を示す正面図である。
図7】本発明に係る高圧配電線路用接地装置の他の実施形態を示す概略構成図である。
図8】(A)は駅間において三相交流の高圧線の作業を実施する場合における接地方法を示す図、(B)は駅構内の三相変圧器側で接地をとる場合の接地方法を示す図、(C)は駅間の1つの単相変圧器で接地をとる場合の接地方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係るカットアウトの誤挿入防止カバーの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1図3は本発明に係るカットアウトの誤挿入防止カバーの一実施形態を示す図、図4は高圧カットアウトに挿入される接地用工具と高圧カットアウトにヒューズ筒を挿入するための挿入用工具の構成を示す斜視図、図5は高圧カットアウトの一例を示す図、図6は誤挿入防止カバーを高圧カットアウトに取り付けた状態を示す図である。
【0020】
先ず、図1図3を用いて本実施形態の誤挿入防止カバー20の構成について詳細に説明する。図1(A)は誤挿入防止カバー20を斜め上方から見た様子を示す斜視図、図2(B)は誤挿入防止カバー20を下方から見た様子を示す斜視図、図3は断面図である。
本実施形態の誤挿入防止カバー20は、図1(A)に示すように、矩形枠状をなすカバー本体21と、該カバー本体21の下部に横方向へスライド可能に設けられた可動プレート22と、カバー本体21の対向する側壁部に形成されているネジ穴に螺合された一対の合成樹脂製の締め付けネジ23A,23Bと、該締め付けネジ23A,23Bとカバー本体21の側壁部との間に介在された合成樹脂製のワッシャー24A,24Bと、カバー本体21の底部中央に装着された円筒状の規制部材25とを備えている。
【0021】
上記可動プレート22と規制部材25は絶縁性のある合成樹脂で形成されている。可動プレート22の先端部(図1では左端)には上向きに突出したストッパ片22aが形成されているとともに、可動プレート22の後端部(図1では右端)には把手部22bが固着されている。そして、この把手部22bの側面には係止ピン26Aが植設されている。
なお、図1には示されていないが、把手部22bの反対側の側面にも同様に係止ピン26Bが植設されている。
【0022】
また、締め付けネジ23A,23Bの頭部には、作業者が手で回すことができるようにするため、平行カット面23a,23bが形成されている。
カバー本体21も、合成樹脂のような絶縁材で形成されており、底壁には、図1(B)に示すように、当該カバー本体21の側壁と高圧カットアウトの外壁との隙間から内部に進入した雨水を排出するための排水孔21dが設けられている。
【0023】
さらに、図2(A)に示すように、カバー本体21の底壁下面には凹部21aが形成され、該凹部21aの両側には互いに平行をなす一対のガイド溝21bが形成されており、図2(B)に示すように、一対のガイド溝21bに上記可動プレート22の両側端が係合されることで、可動プレート22が凹部21a内においてガイド溝21bに沿ってスライド可能に収納されている。そして、可動プレート22の中央には円形の開口部22cが形成されている。
また、上記カバー本体21の底壁の凹部21aの両側には一対の係止ピン27A,27Bが植設されているとともに、該係止ピン27A,27Bと前記把手部22bの側面の係止ピン26A,26Bとの間には引っ張りバネ28A,28Bが張架され、可動プレート22は把手部22bがカバー本体21の側面に接触する方向へ付勢されている。
【0024】
これにより、把手部22bを掴んで可動プレート22を引っ張りバネ28A,28Bのバネ力に抗してスライドさせると、ストッパ片22aがカバー本体21の側面に当接することで移動が阻止されるように構成されている。
さらに、本実施形態の誤挿入防止カバー20は、図3に示すように、カバー本体21の底壁に開口部21cが形成され、該開口部21cに上記円筒状の規制部材25の下端部が接合され、例えば4本のビス29によって固定されている。
【0025】
図4には、接地用工具31とヒューズ筒挿入用工具32の構成例が示されている。
接地用工具31は、先端に高圧カットアウト10の上部の一次側端子に接触可能な電極部31Aと絶縁胴部31Bを有し、下部には図6に示すように絶縁性の把手部31Cが設けられ、該把手部31Bから接地用のコード31Dが引き出されており、コード31Dの端部は絶縁胴部31Bを通過して上記電極部31Aに電気的に接続されている。
一方、挿入用工具32は、先端に、ヒューズ筒が係合可能な凹部32Bが設けられている。凹部32Bの反対側の端部には操作棒が接続される。かかる挿入用工具32は、ヒューズ筒の挿入に使用されている公知のものと同一の構成を有しているので、詳しい説明は省略する。
【0026】
図4に示す接地用工具31とヒューズ筒挿入用工具32とを比較すると分かるように、接地用工具31の先端側と挿入用工具32の先端側はほぼ同一径であるが、ヒューズ筒挿入用工具32は凹部32Bの反対側の端部近傍に操作棒の端部と結合するためのネジ32Aが設けられており、その分だけ径が大きくなっている。
誤挿入防止カバー20の規制部材25は、ヒューズ筒挿入用工具32の上記ネジ部の径よりも若干小さな径となるように内径が設計されており、これにより規制部材25は接地用工具31の先端が高圧カットアウトの奥部まで挿入されるのを許容するが、ヒューズ筒挿入用工具32は高圧カットアウトの奥部まで挿入されるのを阻止し、ヒューズ筒の誤挿入を防止できるように構成されている。
【0027】
また、図5に示すように、高圧カットアウト10の下端部には、一対の金属製の二次側端子を取付けるための取付け穴10aが対向するようにして2箇所に設けられており、本実施形態の誤挿入防止カバー20は、締め付けネジ23A,23Bの先端が上記2箇所の取付け穴10aに進入可能に構成されている。
これにより、誤挿入防止カバー20を高圧カットアウト10の下端部に強固に固定することができるとともに、高圧カットアウト10の比較的低い位置に誤挿入防止カバー20を固定することができるため、誤挿入防止カバー20を小型化することができるようになっている。なお、締め付けネジ23A,23Bは、二次側端子取付け穴10aを利用するものに限定されず、高圧カットアウト10の他の部位を利用して固定するものであっても良い。
【0028】
さらに、誤挿入防止カバー20を高圧カットアウト10に取り付けた後、可動プレート22を引っ張りバネ28A,28Bのバネ力に抗してスライドさせると、可動プレート22の開口部22cが規制部材25の開口と合致して、図6に示すように、接地用コード31Dが接続されている接地用工具31の先端電極部31Aを挿入することができ、それによって高圧線を接地させることができる。
また、高圧線の作業終了後に接地用工具31を引き抜くと、引っ張りバネ28A,28Bのバネ力によって可動プレート22がスライドされて、可動プレート22が規制部材25の下端開口を閉塞する状態になるため、ヒューズ筒が挿入されていないことを外から見ることができなくなり、ひいてはヒューズ筒の誤挿入を防止することができる。
【0029】
なお、上記実施形態の誤挿入防止カバーが適用される高圧カットアウトは、例えば特許文献2に開示されているように、カットアウト本体の上部にヒューズ筒を収納する収納部を備え、収納部の上端にヒューズ筒が接触する電極が形成され、この電極に接続された一次側端子がカットアウト本体の上端部に設けられている。また、ヒューズ筒の収納部の下端には二次側の電極が形成され、カットアウト本体の下部にはこの二次側の電極に電気的に接続され側方へ突出する二次側端子が設けられている。ただし、本実施形態で使用する高圧カットアウトは、二次側端子が外された状態で変圧器の近傍に配設される。
【0030】
次に、本発明に係る高圧カットアウトの誤挿入防止カバーを備えた高圧配電線路用接地装置の他の実施形態について、図7を用いて説明する。
本実施形態の高圧配電線路用接地装置は、図7に示すように、二次側端子10bが少なくとも1つ取り付けられているとともにヒューズ筒が装着されていない高圧カットアウト10の一次側端子10cを、単相変圧器に接続されていない高圧線(例えばT相)に接続するとともに、高圧カットアウト10の二次側端子10bに接地用コード13を接続しておくようにしたものである。
【0031】
この実施形態の高圧配電線路用接地装置においては、高圧線の作業を行う前に、ヒューズ筒が装着されていない高圧カットアウト10に、接地用工具31’を挿入する。接地用工具31’は、図7に示されているように、図6に示す接地用工具31とは異なり、接地用コード31Aが接続されていない工具である。
なお、本実施形態においても、高圧カットアウト10の下端の開口部(ヒューズ筒挿入口)を閉塞可能な誤挿入防止カバー20が装着されているのが望ましい。誤挿入防止カバー20を装着しておくことで、高圧線の作業終了後に誤ってヒューズ筒が挿入されるのを防止することができる。また、作業中は図6と同様に、挿入されている接地用工具31’の下端が誤挿入防止カバー20から下方へ突出した状態になるため、接地用工具の抜き忘れを防止することができる。
【0032】
なお、本実施形態においては、高圧カットアウト10の二次側端子取付け穴には二次側端子が取り付けられているため、前記実施形態の誤挿入防止カバー20の一対の締め付けネジ23A,23Bは、二次側端子取付け穴以外の部位を利用して締め付けを行うように構成される。締め付けネジ23A,23Bの代わりに、電柱用取付けバンドと同様な構成を有する取付け金具を用いて誤挿入防止カバー20を高圧カットアウトに取り付けるように構成しても良い。
【0033】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、一対の締め付けネジ23A,23Bによって誤挿入防止カバー20を高圧カットアウト10に取り付けているが、締め付けネジの代わりに、電柱用取付けバンドと同様な構成を有する取付け金具を用いて誤挿入防止カバーを高圧カットアウトに取り付けるように構成しても良い。また、上記実施形態では、横方向へスライドして高圧カットアウトの開口部を開閉する可動プレート22を設けているが、上下方向へ回動して高圧カットアウトの開口部を開閉する開閉蓋を設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0034】
10 高圧カットアウト
11 変圧器
13 接地用コード
20 誤挿入防止カバー
21 カバー本体
22 可動プレート
22a ストッパ片
22b 把手部
23A,23B 締め付けネジ
24 ワッシャー
25 規制部材
28A,28B 引っ張りバネ
31 接地用工具
31A 電極部
31D 接地用コード
32 ヒューズ筒挿入用工具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8