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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】シーソースイッチ
(51)【国際特許分類】
   H01H 23/16 20060101AFI20221130BHJP
   H01H 23/30 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
H01H23/16 Z
H01H23/30
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019197186
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2021072190
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000222934
【氏名又は名称】東洋電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 真
(72)【発明者】
【氏名】大塚 直人
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-294322(JP,A)
【文献】特開昭61-128424(JP,A)
【文献】実開昭55-178928(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 23/16
H01H 23/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作入力されると揺動するノブと、
前記ノブを支持するケースと、
前記ケース内において前記ノブの中央部に対して両端部側にそれぞれ設けられた一対のスイッチと、
前記ノブの両端部を非操作位置に向かって付勢する付勢部と、
前記ケース内において前記一対のスイッチのそれぞれに対応する位置に設けられ、前記スイッチをON/OFFする一対の操作入力部と、
前記一対の操作入力部に対して前記ノブの中央部側にそれぞれ設けられる一対の支点部と、を備え、
前記支点部は、窓孔と、前記窓孔に係合可能な係合爪とを有し、
前記窓孔は、前記ノブおよび前記ケースの何れか一方に形成されるとともに、前記係合爪は、他方に形成され、
前記窓孔と前記係合爪との係合と、前記ノブおよび前記ケースにおける前記窓孔および前記係合爪が設けられた部位の対向部位において、前記ノブの略中央部に形成された係合部と、によって前記ケースに前記ノブが揺動可能に組み付けられ、
前記一対の支点部において、前記一対の操作入力部のうち操作入力により前記スイッチをON/OFFした前記操作入力部とは反対側の前記支点部が前記ノブの揺動軸となるシーソースイッチ。
【請求項2】
作入力がされたときに、前記係合爪において前記付勢部による付勢方向とは反対側の第1部位と、前記窓孔において前記第1部位に対向する第2部位とが当接して前記揺動軸となる請求項1に記載のシーソースイッチ。
【請求項3】
前記窓孔は、前記ノブの揺動方向に長く形成されている請求項2に記載のシーソースイッチ。
【請求項4】
前記ノブおよび前記ケースの少なくとも何れか一方に、前記ノブの両端部が同時に操作入力されたときまたは前記ノブの中央部が操作入力されたときの前記ノブの操作方向への平行移動を規制する誤操作防止部を設けた請求項1~の何れかに記載のシーソースイッチ。
【請求項5】
前記誤操作防止部は、前記ノブおよび前記ケースの少なくも何れか一方に突設されたストッパを有し、
前記ストッパと前記ノブまたは前記ケースとの間には、前記ノブの揺動を許容し且つ前記ノブの操作方向への所定量以上の平行移動を阻止するクリアランスが形成されている請求項に記載のシーソースイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノブの両端部を交互に押圧操作して該ノブを揺動させることによって一対のスイッチを選択的ON/OFFさせるシーソースイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
シーソースイッチは、特定方向の両端部が選択的に押圧操作されると支点部を中心として揺動するノブと、該ノブを揺動可能に支持するケースと、該ケース内の前記ノブの両端部に対応する位置にそれぞれ設けられた一対のスイッチと、前記ノブの両端部を反押圧操作方向に付勢する付勢手段を含んで構成されている。このようなシーソースイッチにおいては、ノブの両端部の何れか一方が押圧操作されて該ノブが支点部を中心として揺動すると、一対のスイッチの一方がONされる。従って、ノブの両端部を交互に押圧操作すると、一対のスイッチが交互にON/OFFされる。
【0003】
ところで、上述のようにシーソースイッチのノブの両端部の一方を押圧操作したために該ノブが支点部を中心として揺動すると、ノブの反押圧操作側の端部が基準面から突出するために当該シーソースイッチの見栄えが悪くなるという問題がある。
【0004】
そこで、特許文献1には、ノブ(ボタン)とケース(支持部材)の何れか一方のノブの両端部に対応する位置にピンをそれぞれ設け、これらのピンに対応する位置に長孔を設け、ノブをケースに対して長孔係合させたシーソースイッチが提案されている。このようなシーソースイッチによれば、ノブの両端部の何れか一方を押圧操作すると、反対側(反押圧操作側)のピンを支点としてノブが揺動するため、ノブの反押圧操作側の端部が基準面から大きく突出することがなく、当該シーソースイッチの美観が損なわれることがない。
【0005】
また、特許文献2には、ノブ(押しボタン)の両端部から張り出した部分に支点部をそれぞれ設け、これらの支点部をパネル部材(エスカッション)の裏面に当接させるとともに、両支点部の内側に、一対のスイッチにそれぞれ作用する作用部(押圧突条)を設けたシーソースイッチが提案されている。このようなシーソースイッチによれば、ノブを揺動させるために該ノブの両端部の一方を押圧操作すると、該ノブの他端部に設けられた支点部を中心として当該ノブがパネル部材の内方に向かって揺動するため、ノブの他端部(反押圧操作側の端部)がパネル部材から大きく突出することがなく、当該シーソースイッチの見栄えが損なわれることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-040614号公報
【文献】実開昭62-152329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1において提案されたシーソースイッチにおいては、ノブを揺動させると、該ノブの作用部が支点部(ピン)の内側の部分でスイッチ(操作子)を押圧してしまうため、ノブの両端部の一方を押圧操作して、該ノブを他端側(反押圧操作側)のピンを支点として揺動させると、該ノブの他端部の作用部が支点部(ピン)の内側の部分でスイッチに当接してこのスイッチ(操作子)を押圧するため、その押圧により、ノブは、反押圧操作側のスイッチ(操作子)から反力を受けることになり、この反力のためにノブの操作荷重を所定の設計値に設定することが難しくなるという問題が発生する。
【0008】
また、特許文献2において提案されたシーソースイッチにおいては、ノブの両端部の外側に支点部が設けられているため、該支点部と周辺部材との間に所定のクリアランスを確保する必要があり、このために当該シーソースイッチが大型化するという問題がある。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、見栄えの悪化や大型化を招くことなく、余分な反力の影響を受けることなく操作荷重を設計値に容易に設定することができるシーソースイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係るシーソースイッチは、操作入力されると揺動するノブと、前記ノブを支持するケースと、前記ケース内において前記ノブの中央部に対して両端部側にそれぞれ設けられた一対のスイッチと、前記ノブの両端部を非操作位置に向かって付勢する付勢部と、前記ケース内において前記一対のスイッチのそれぞれに対応する位置に設けられ、前記スイッチをON/OFFする一対の操作入力部と、前記一対の操作入力部に対して前記ノブの中央部側にそれぞれ設けられる一対の支点部と、を備え、前記支点部は、窓孔と、前記窓孔に係合可能な係合爪とを有し、前記窓孔は、前記ノブおよび前記ケースの何れか一方に形成されるとともに、前記係合爪は、他方に形成され、前記窓孔と前記係合爪との係合と、前記ノブおよび前記ケースにおける前記窓孔および前記係合爪が設けられた部位の対向部位において、前記ノブの略中央部に形成された係合部と、によって前記ケースに前記ノブが揺動可能に組み付けられ、前記一対の支点部において、前記一対の操作入力部のうち操作入力により前記スイッチをON/OFFした前記操作入力部とは反対側の前記支点部が前記ノブの揺動軸となるよう構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ノブの一端部を例えば、押圧操作して一方の操作入力部に操作力を入力すると、該ノブは、反操作入力側の支点部を揺動軸として揺動するため、ノブの反操作入力側の変位量(基準面からの突出量)が小さく抑えられて当該シーソースイッチの見栄えの悪化が防がれる。また、ノブの両端部の外側に操作入力部や支点部が突出しないため、当該シーソースイッチの大型化が防がれる。さらに、一対の操作入力部が一対の支点部の外側に配置されているため、ノブが反操作入力側の支点部を揺動軸として揺動すると、ノブの反操作入力側の端部は、スイッチ側から遠ざかるためにスイッチ側からの反力を受けることがない。このため、余分な反力の影響を受けることなくノブの操作荷重を設計値に容易に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るシーソースイッチの正面図である。
図2】本発明に係るシーソースイッチの下面図(図1の矢視2方向の図)である。
図3】本発明に係るシーソースイッチの平面図(図1の矢視3方向の図)である。
図4図1の4-4線断面図である。
図5】本発明に係るシーソースイッチの一部を破断して示す分解斜視図である。
図6】本発明に係るシーソースイッチの作用を説明するための断面図であって、(a),(b)はそれぞれノブの一端を押圧操作した状態を示す図、(c)はノブの中央を押圧操作したときの状態を示す図である。
図7】シーソースイッチのノブを押圧操作したときの支点と作用点およびスイッチ(操作子)からノブに作用する反力との関係を模式的に示す図であり、(a)は本発明に係るシーソースイッチについての図、(b)は従来のシーソースイッチについての図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
[シーソースイッチの構成]
図1は本発明に係るシーソースイッチの正面図、図2は同シーソースイッチの下面図(図2の矢視2方向の図)、図3は同シーソースイッチの平面図(図1の矢視3方向の図)、図4図1の4-4線断面図、図5は同シーソースイッチの一部を破断して示す分解斜視図である。なお、以下の説明においては、図1に矢印にて示すように、横方向を「左右」、縦方向を「上下」とし、図2に矢印にて示すように、正面側を「後」、奥側を「前」とする。
【0015】
図示のシーソースイッチ1は、例えば車両の不図示のステアリングハンドルのスポーク部に設けられるものであって、運転者は、ステアリングハンドルを握った状態でこのシーソースイッチ1を操作することができる。このシーソースイッチ1は、左右方向(特定方向)に細長い矩形ボックス状のノブ2と、該ノブ2を揺動可能に支持する左右方向に細長い矩形ボックス状のケース3を備えている。ここで、本実施の形態では、ノブ2とケース3は、ABSなどの樹脂によってそれぞれ成形されており、ノブ2は、正面側(後側)に配置され、その奥側(前側)にケース3が配置されている。
【0016】
上記ノブ2の上面の左右方向中央には、図3に示すように、プレート状のブラケット2Aが前方(ケース3側)に向かって水平に突設されており、このブラケット2Aの先端部には、前後方向に長い長孔2aが形成されている。そして、ケース3の上面の左右方向中央には、円柱状の係合突起3aが上方に向かって一体に突設されており、この係合突起3aは、ノブ2の上面に突設されたブラケット2Aの長孔2aに係合している。ここで、長孔2aと係合突起3aとは、ノブ2とケース3との係合部9を構成している。
【0017】
また、ノブ2の下面の左右方向中央部に近い左右2箇所には、図2図4および図5に示すように、ノブ2の揺動方向に長い矩形の窓孔(係合孔)2bがそれぞれ形成されている。そして、ケース3の下面の左右2箇所(ノブ2の2つの窓孔2bに対応する箇所)には係合爪3bが一体に突設されており、これらの係合爪3bは、ノブ2の面に形成された2つの窓孔2bに係合している。したがって、ノブ2は、その上面に突設されたブラケット2Aの長孔2aにケース3の上面に突設された係合突起3aが係合するとともに、下面に形成された2つの窓孔2bにケース3の下面に突設された2つの係合爪3bがそれぞれ係合することによって、ケース3に揺動可能に組み付けられる。また、互いに係合するノブ2の2つの窓孔2bとケース3の2つの係合爪3bとは、後述のようにノブ2が揺動する際の支点となる支点部10を構成しており、ノブ2の揺動方向が変化するたびに2つの支点部10が交互にノブ2の揺動軸となる。このように、本実施の形態では、ノブ2の揺動軸である支点部10を、ノブ2のケース3への組み付けに用いられる窓孔2bと係合爪3bとで構成している。
【0018】
ここで、左右の各支点部10は、図2に示すように、窓孔2bと、この窓孔2bに係合可能な係合爪3bとで構成されているが、ノブ2に左右両端部の何れか一方が押圧操作されたときに、係合爪3bにおいてラバーコンタクト6による付勢方向とは反対側の第1部位3b1と、窓孔2bにおいて前記第1部位3b1に対向する第2部位2b1とが当接してノブ2の揺動中心である揺動軸が形成される。
【0019】
上述のようにノブ2がケース3に組み付けられると、図4に示すように、これらのノブ2とケース3との間には空間Sが形成されるが、ケース3の空間Sに臨む後面には平板状の回路基板4が設けられている。そして、この回路基板4の左右両端部(ノブ2の左右両端部に対応する2箇所)には、押圧操作によってON/OFFするスイッチ(本実施の形態では、マイクロスイッチ)5が実装されている。
【0020】
また、図4に示すように、ノブ2とケース3によって形成された空間S内には、回路基板4と2つのスイッチ5を覆うラバーコンタクト6が設けられており、このラバーコンタクト6の左右のスイッチ5を覆う両端部には、後方(図4の上方)に向かって突出する凸部6Aが一体に形成されている。
【0021】
ここで、当該シーソースイッチ1が非作動状態(初期位置)にあるとき(ノブ2を押圧操作していないとき)には、図4に示すように、ラバーコンタクト6の2つのスイッチ5を覆う凸部6Aは、左右のスイッチ5に接触しておらず、両者の間には所定の隙間が形成されている。そして、ラバーコンタクト6の左右の凸部6Aとノブ2の左右両端部との間には、操作子7がそれぞれ介設されている。ここで、左右の操作子7は、左右のスイッチ5に押圧操作力を伝達して各スイッチ5をON/OFFするための操作入力部を構成している。したがって、ラバーコンタクト6は、その左右の凸部6Aが左右の操作子7を介してノブ2の左右両端部を反操作入力方向(図4の上方)に付勢する付勢部を構成している。なお、本実施の形態では、ノブ2の両端部を非操作位置に向かって付勢する付勢部として、スイッチ5とは別体のラバーコンタクト6を用いたが、付勢部としては、スイッチ5に内蔵された不図示のバネなどの弾性部材、またはスイッチ5とは別体に設けられる弾性部材などを用いることができる。
【0022】
また、図4に示すように、ケース3側(本実施の形態では、ラバーコンタクト6)の左右方向中心部には、当該シーソースイッチ1の誤操作を防ぐための誤操作防止部を構成するロッド状のストッパ8がノブ2に向かって垂直に立設されている。このストッパ8は、ノブ2の両端部が同時に押圧操作されたときまたは該ノブ2の両端部間の左右方向中央部が押圧操作されたときの当該ノブ2の押圧方向への平行移動を規制するものである。ここで、ストッパ8とノブ2との間には、ノブ2の揺動を許容し且つノブ2の押圧方向(図4の下方)への所定量以上の平行移動を阻止するクリアランスδが形成されている。
【0023】
ところで、本実施の形態に係るシーソースイッチ1においては、図4に示すように、左右のスイッチ5をON/OFFする操作入力部である操作子7をノブ2の左右方向両端部に対応する位置にそれぞれ設け、該操作子7の左右方向内側の2箇所に、ノブ2の押圧操作による揺動によって交互に揺動軸(支点)となる支点部10を設けている。ここで、支点部10の揺動軸は、前述のようにノブ2の面の左右2箇所に形成された窓孔2bの第2部位2b1とケース3の面の左右2箇所に突設された係合爪3bの第1部位3b1とで構成されている。なお、本実施の形態では、ノブ2の左右両端部に対応する位置に操作入力部である操作子7をそれぞれ設け、ノブ2の両端部の何れか一方に加えられる押圧操作力を、操作子7を介して左右の各スイッチ5にそれぞれ伝達することによって、これらのスイッチ5をON/OFFするようにしたが、各スイッチ5の押し込み部5aをノブ2の直下まで延長して、該押し込み部5aを操作入力部として構成するようにしてもよい。
【0024】
シーソースイッチ1が非作動状態(初期位置)にある図4に示す状態においては、ノブ2は、付勢部であるラバーコンタクト6の左右の凸部6Aによって左右の操作子7を介して反押圧操作方向(図4の上方)に付勢されているため、支点部を構成するノブ2の左右の窓孔2bとケース3の左右の係合爪3bとが接触している。なお、この状態においては、左右のスイッチ5は、共にOFF状態にある。
【0025】
[シーソースイッチの作用]
次に、以上のように構成されたシーソースイッチ1の作用を図6および図7に基づいて以下に説明する。
【0026】
図6は本発明に係るシーソースイッチの作用を説明するための模式図であって、(a),(b)はそれぞれノブの一端を押圧操作した状態を示す図、(c)はノブの中央を押圧操作したときの状態を示す図、図7はシーソースイッチのノブを押圧操作したときの支点と作用点及びスイッチ(操作子)からノブに作用する反力との関係を模式的に示す図であり、(a)は本発明に係るシーソースイッチについての図、(b)は従来のシーソースイッチについての図である。
【0027】
シーソースイッチ1が非作動状態(初期位置)にある図4に示す状態から、ノブ2の左端部を押圧操作すると、図6(a)に示すように、ノブ2は、反押圧操作側(図6(a)の右側)の支点部10の点aを支点として揺動する。なお、このノブ2の揺動は、ストッパ8によって阻害されることがない。
【0028】
すると、押圧操作側(左側)のスイッチ5が操作子7とラバーコンタクト6の凸部6Aを介して押圧されてONし、反押圧操作側(右側)のスイッチ5はOFF状態を維持する。
【0029】
ここで、ノブ2の揺動を図7(a)に模式的に示すが、ノブ2の左端部が押圧操作されたために該ノブ2が鎖線位置から支点aを中心として実線位置まで揺動して一方(左側)のスイッチ5がONすると、ノブ2の左端部は、図示のx1だけ変位し、右端部(反押圧操作側端部)は、図示のx2だけ変位する。このときのノブ2の揺動角をθ、ノブ2の左端部の支点aからの距離をA、ノブ2の右端部の支点aからの距離をBとすると、ノブ2の左端部の変位x1と右端部の変位x2はそれぞれ次式によって求められる。
【0030】
x1=A・sinθ …(1)
x2=B・sinθ …(2)
ここで、A>Bであるため、変位x1とx2との間には次の大小関係が成立する。
【0031】
x1>x2 …(3)
このようにノブ2の反押圧操作側の端部(右端部)の変位x2が小さく抑えられるため、この端部(右端部)の突出量が小さく抑えられ、当該シーソースイッチ1の見栄えの悪化が防がれる。
【0032】
また、本実施の形態に係るシーソースイッチ1においては、左右方向において支点部10(点a)の外側にノブ2の左右の操作入力部である操作子7を配置したため、ノブ2の押圧操作側の端部(左端部)においては操作子7を介してスイッチ5に押圧力Fの全てが作用するのに対して、ノブ2の反押圧操作側の端部(右端部)は操作子7から離れる方向に変位して操作子7を押圧することがない。このため、ノブ2の右端部が操作子7から反力を受けることがなく、前述のようにノブ2の左端部に作用する押圧力Fの全てが一方(左側)のスイッチ5に作用することとなる。したがって、余分な反力の影響を受けることなくノブ2の操作荷重を設計値に容易に設定することができることとなる。
【0033】
これに対して、従来のシーソースイッチにおいては、支点と作用点およびスイッチ(操作子)からノブに作用する反力との関係が図7(b)に模式的に示すようになる。
【0034】
すなわち、ノブ102の例えば左端部が押圧操作されると、該ノブ102左側の操作子107に押圧力F1が作用して該操作子107が押し下げられ、このとき、ノブ102は、操作子107から図示の反力R1を受ける。ここで、従来のシーソースイッチにおいては、操作子107が支点a’の内側に配置されているため、ノブ102が図の鎖線位置から右側の支点a’を中心として実線位置まで図示の角度θだけ揺動すると、ノブ102の図7(b)の右端部が操作子107に当接して該操作子107を押圧力F2で押圧するため、ノブ102が右側の操作子107から図示の反力R2を受けてしまう。このように、従来のシーソースイッチは、ノブ102が左右の操作子107からそれぞれ反力R1,R2を受けるため、ノブ102の操作荷重を設計値に設定することが難しくなって、操作荷重の設定に多大な労力を要してしまう。
【0035】
ところで、本実施の形態に係るシーソースイッチ1においては、ノブ2の左右方向長さの範囲内に支点部(ノブ2の窓孔2bとケース3の係合爪3b)10や操作子7、スイッチ5などの部品の全てが配置されるため、当該シーソースイッチ1の大型化が防がれる。
【0036】
なお、ノブ2の右端部が押圧操作されたときの状態を図6(b)に示すが、このとき、ノブ2は、反押圧操作側(左側)の支点aを中心として揺動して操作子7とラバーコンタクト6の凸部6Aを介して右側のスイッチ5を押圧し、このスイッチ5をONさせる。このとき、反対側(左側)のスイッチ5はOFF状態を維持する。また、ストッパ8は、ノブ2の揺動を阻害することがない。
【0037】
ノブ2の右端部が押圧操作されたときにおいても、ノブ2は、反押圧操作側(図6(b)の左側)の支点aを中心として回動し、このときのノブ2の反押圧操作側の端部(左端部)の変位量が小さく抑えられるため、当該シーソースイッチ1の美観が損なわれることがない。また、前述と同様の理由によってノブ2の左端部が操作子7から反力を受けることがなく、ノブ2の右端部に作用する押圧力Fの全てが右側のスイッチ5に作用することとなる。したがって、余分な反力の影響を受けることなくノブ2の操作荷重を設計値に容易に設定することができる。
【0038】
次に、図6(c)にノブ2の左右方向中央部が押圧操作されたときの状態を示すが、このときはノブ2がその中央部に作用する押圧力Fによって前方(図6(c)の下方)に向かって平行移動する。ここで、このノブ2の平行移動量は、該ノブ2がストッパ8の先端に当接することによって所定量(ノブ2とストッパ8とのクリアランスδ)に規制される。ここで、ノブ2とストッパ8とのクリアランスδは、左右のスイッチ5がONしない値に設定されている。このため、ノブ2の左右方向中央部が押圧操作されたときには、左右のスイッチ5が同時にONする誤作動の発生が確実に防がれる。
【0039】
なお、図示しないが、ノブ2の左右両端部が同時に押圧されたときにおいても、ノブ2の所定量(ノブ2とストッパ8とのクリアランスδ)以上の平行移動がストッパ8によって阻止されるため、左右のスイッチ5が同時にONされる誤作動の発生が確実に防がれる。
【0040】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、シーソースイッチ1の見栄えの悪化や大型化を招くことなく、余分な反力の影響を受けることなくノブ2の操作荷重を設計値に容易に設定することができるという効果が得られる。
【0041】
なお、以上の実施の形態では、支点部10を構成する窓孔2bをノブ2に形成し、係合爪3bをケース3に突設したが、これとは逆に、長孔をケース3に形成し、係合爪をノブ2に突設してもよい。
【0042】
また、以上の実施の形態では、ストッパ8をケース3側に設けたが、ノブ2側にストッパ8を設けてもよい。
【0043】
なお、図示した実施の形態においては、ノブ2の操作形態が押圧操作であったが、ノブ2にレバー状部材を突設させ、該レバー状部材を傾倒させることでノブ2を揺動させる操作形態であってもよい。
【0044】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、車両のステアリングホイールのスポーク部に配置されるシーソースイッチのみならず、他のあらゆるシーソースイッチに対して適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 シーソースイッチ
2 ノブ
2a ノブの長孔
2b ノブの窓孔
2b1 窓孔の第2部位
3 ケース
3a ケースの係合突起
3b ケースの係合爪
3b1 係合爪の第1部位
4 回路基板
5 スイッチ
5a 押し込み部
6 ラバーコンタクト(付勢部)
6A ラバーコンタクトの凸部
7 操作子(操作入力部)
8 ストッパ(誤操作防止部)
9 係合部
10 支点部
A,B ノブの左右端部の支点からの距離
a 支点
F 押圧力
S 空間
x1,x2 ノブの左右端部の変位量
δ ノブとストッパとのクリアランス
θ ノブの揺動角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7