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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】有機半導体素子の分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20221130BHJP
   G01N 24/08 20060101ALI20221130BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20221130BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20221130BHJP
   G01N 30/06 20060101ALI20221130BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20221130BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20221130BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
G01N27/62 V
G01N27/62 X
G01N24/08 510P
G01N30/88 C
G01N30/72 C
G01N30/06 Z
H05B33/10
H05B33/14 B
G01N21/64
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019510495
(86)(22)【出願日】2018-03-26
(86)【国際出願番号】 IB2018052022
(87)【国際公開番号】W WO2018185599
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2017074690
(32)【優先日】2017-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】川上 祥子
(72)【発明者】
【氏名】小松 のぞみ
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 哲史
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-324233(JP,A)
【文献】特開2016-086171(JP,A)
【文献】特開2013-242302(JP,A)
【文献】特開2014-078699(JP,A)
【文献】特開2015-165491(JP,A)
【文献】特開2012-215554(JP,A)
【文献】特開2013-024570(JP,A)
【文献】国際公開第2013/122225(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/62-27/70
G01N 30/00-30/96
G01N 21/00-21/958
G01N 24/00-24/14
H01L 51/50-51/56
C09K 11/06-11/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間に一つまたは複数の層を含む有機半導体層を有する有機半導体素子の分析方法であって、
前記有機半導体素子の一方の電極を剥離する工程と、
露出した前記有機半導体層の層構造および/または混合状態を、第1の質量分析法により分析する工程と、
前記有機半導体層の各層に含まれる有機化合物のうち、いずれか一または複数を溶剤により溶出させ、
溶液を作製する工程と、
液体クロマトグラフィーを用いて、前記溶液に含まれる有機化合物を単離し、当該単離した有機化合物を第2の質量分析法により分析する工程と、
前記第1の質量分析法により検出した質量電荷比と、前記第2の質量分析法により検出した質量電荷比とを対比する工程と、
前記単離した有機化合物の物性を測定する工程と、を有する有機半導体素子の分析方法。
【請求項2】
請求項1に記載の有機半導体素子の分析方法において、
前記物性はNMRスペクトル、吸収スペクトル、発光スペクトル、発光寿命の少なくともいずれか一である有機半導体素子の分析方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の有機半導体素子の分析方法において、
前記第2の質量分析法では、少なくとも第1の有機化合物が検出され、
前記第1の有機化合物の質量電荷比から組成式を推定する工程と、
前記第1の有機化合物のNMR測定により、前記第1の有機化合物の第1のNMRスペクトルを取得する工程と、
前記組成式と前記NMRスペクトルと、を用いて第2の有機化合物を推定する工程と、
前記第2の有機化合物を合成する工程と、
前記NMR測定により、前記第2の有機化合物の第2のNMRスペクトルを取得する工程と、
前記第1のNMRスペクトルと、前記第2のNMRスペクトルと、を対比する工程を有する、有機半導体素子の分析方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の有機半導体素子の分析方法において、
前記溶液のH-NMRを測定する工程と、
少なくとも二つの有機化合物を単離する工程と、
前記少なくとも二つの有機化合物の各H-NMRを測定する工程と、
前記溶液のH-NMRと前記少なくとも二つの有機化合物の各H-NMRとを対比することにより、前記少なくとも二つの有機化合物のモル比を算出する工程を含む、有機半導体素子の分析方法。
【請求項5】
一対の電極間に一つまたは複数の層を含む有機半導体層を有する有機半導体素子の分析方法であって、
前記有機半導体素子の一方の電極を剥離する工程と、
露出した前記有機半導体層の層構造および/または混合状態を、第1の質量分析法により分析する工程と、
前記第1の質量分析法から複数の有機化合物を含む第1の層を特定する工程と、
前記有機半導体層の各層に含まれる有機化合物のうち、いずれか一または複数を溶剤により溶出させ、
溶液を作製する工程と、
液体クロマトグラフィーを用いて、前記溶液に含まれる有機化合物を単離し、単離した有機化合物を第2の質量分析法により分析する工程と、
前記第1の質量分析法により検出した質量電荷比と、前記第2の質量分析法により検出した質量電荷比とを対比する工程と、
前記有機半導体層の前記第1の層に含まれる第1の有機化合物と第2の有機化合物とを単離した化合物の中から決定する工程と、前記第1の有機化合物の第1の発光スペクトルを測定する工程と、
前記第2の有機化合物の第2の発光スペクトルを測定する工程と、
前記第1の有機化合物及び前記第2の有機化合物の混合物の第3の発光スペクトルを測定する工程と、を有する、有機半導体素子の分析方法。
【請求項6】
一対の電極間に一つまたは複数の層を含む有機半導体層を有する有機半導体素子の分析方法であって、
前記有機半導体素子の一方の電極を剥離する工程と、
露出した前記有機半導体層の層構造および/または混合状態を、第1の質量分析法により分析し複数の有機化合物を含む第1の層を特定する工程と、
前記有機半導体層の各層に含まれる有機化合物のうち、いずれか一または複数を溶剤により溶出させ、
溶液を作製する工程と、
液体クロマトグラフィーを用いて、前記溶液に含まれる有機化合物を単離し、単離した有機化合物を第2の質量分析法により分析する工程と、
前記第1の質量分析法により検出した質量電荷比と、前記第2の質量分析法により検出した質量電荷比とを対比し、前記有機半導体層の前記第1の層に含まれる第1の有機化合物と第2の有機化合物とを推定する工程と、
前記第1の有機化合物の発光寿命を測定する工程と、
前記第1の有機化合物の吸収スペクトルを測定する工程と、
前記第2の有機化合物の発光スペクトルを測定する工程と、を有する、有機半導体素子の分析方法。
【請求項7】
一対の電極間に一つまたは複数の層を含む有機半導体層を有する有機半導体素子の分析方法であって、
前記有機半導体素子の一方の電極を剥離する工程と、
露出した前記有機半導体層の層構造および/または混合状態を、第1の質量分析法により分析し複数の有機化合物を含む第1の層を特定する工程と、
前記有機半導体層の各層に含まれる有機化合物のうち、いずれか一または複数を溶剤により溶出させ、
溶液を作製する工程と、
液体クロマトグラフィーを用いて、前記溶液に含まれる有機化合物を単離し、単離した有機化合物を第2の質量分析法により分析する工程と、
前記第1の質量分析法により検出した質量電荷比と、前記第2の質量分析法により検出した質量電荷比とを対比し、前記有機半導体層の前記第1の層に含まれる第1の有機化合物、第2の有機化合物及び第3の有機化合物を推定する工程と、
前記第1の有機化合物の発光寿命を測定する工程と
前記第2の有機化合物の吸収スペクトルを測定する工程と、
前記第2の有機化合物の第1の発光スペクトルを測定する工程と、
前記第3の有機化合物の第2の発光スペクトルを測定する工程と、
前記第2の有機化合物及び前記第3の有機化合物の混合物の第3の発光スペクトルを測定する工程と、を有する、有機半導体素子の分析方法。
【請求項8】
一対の電極間に一つまたは複数の層を含む有機半導体層を有する有機半導体素子の分析方法であって、
前記有機半導体層はIrを有する第1の有機化合物を有し、
前記有機半導体素子の一方の電極を剥離する工程と、
露出した前記有機半導体層の層構造および/または混合状態を、第1の質量分析法により分析し複数の有機化合物を含む第1の層を特定する工程と、
前記有機半導体層の各層に含まれる有機化合物のいずれか一または複数を溶剤により溶出させ、溶液を作製する工程と、
液体クロマトグラフィーを用いて、前記溶液に含まれる有機化合物を単離し、単離した有機化合物を第2の質量分析法により分析する工程と、
前記第1の質量分析法により検出した質量電荷比と、前記第2の質量分析法により検出した質量電荷比とを対比し、前記有機半導体層の前記第1の層に含まれるに含まれる第1の有機化合物と第2の有機化合物とを推定する工程と、
前記第1の有機化合物の吸収スペクトルを測定する工程と、
前記第2の有機化合物の発光スペクトルを測定する工程と、を有する、有機半導体素子の分析方法。
【請求項9】
一対の電極間に一つまたは複数の層を含む有機半導体層を有する有機半導体素子の分析方法であって、
前記有機半導体層はIrを有する第1の有機化合物を有し、
前記有機半導体素子の一方の電極を剥離する工程と、
露出した前記有機半導体層の層構造および/または混合状態を、第1の質量分析法により分析し複数の有機化合物を含む第1の層を特定する工程と、
前記有機半導体層の各層に含まれる有機化合物のいずれか一または複数を溶剤により溶出させ、溶液を作製する工程と、
液体クロマトグラフィーを用いて、前記溶液に含まれる有機化合物を単離し、単離した有機化合物を第2の質量分析法により分析する工程と、
前記第1の質量分析法により検出した質量電荷比と、前記第2の質量分析法により検出した質量電荷比とを対比し、前記有機半導体層の前記第1の層に含まれる第1の有機化合物、第2の有機化合物及び第3の有機化合物を推定する工程と、
前記第1の有機化合物の吸収スペクトルを測定する工程と、
前記第2の有機化合物の第1の発光スペクトルを測定する工程と、
前記第3の有機化合物の第2の発光スペクトルを測定する工程と、
前記第2の有機化合物及び前記第3の有機化合物の混合物の第3の発光スペクトルを測定する工程と、
を有する、有機半導体素子の分析方法。
【請求項10】
請求項1または2に記載の有機半導体素子の分析方法において、
前記有機半導体層が単一の有機化合物からなる、有機半導体素子の分析方法。
【請求項11】
請求項1または2に記載の有機半導体素子の分析方法において、
前記有機半導体層が正孔輸送材料を含む第1の層と、発光物質を含む第2の層と、電子輸送材料を含む第3の層を有し、
極側から第1の層、第2の層、第3の層の順で積層され、第1の層と第2の層は接しており、
第2の層と第3の層は接している、有機半導体素子の分析方法。
【請求項12】
請求項11に記載の有機半導体素子の分析方法において、
前記発光物質として燐光発光化合物を含む有機半導体素子の分析方法。
【請求項13】
請求項11に記載の有機半導体素子の分析方法において、
前記第2の層に燐光発光物質と、第1の化合物と第2の化合物を含み、第1の化合物と第2の化合物は励起錯体を形成する有機半導体素子の分析方法。
【請求項14】
請求項11に記載の有機半導体素子の分析方法において、
前記第2の層が熱活性型遅延蛍光を示す材料を有する有機半導体素子の分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、有機半導体素子の新規な分析方法に関する。特に、質量分析法及び液体クロマトグラフィーを用いた、有機半導体素子の分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機化合物を用いたエレクトロルミネッセンス(EL:Electroluminescence)を利用する発光素子(有機EL素子)や有機太陽電池などの有機半導体素子の実用化が進んでいる。これら有機半導体素子の基本的な構成は、一対の電極間に発光材料を含む有機半導体層を挟んだものである。
【0003】
このような有機半導体素子は軽量、フレキシブルで意匠性が高い。塗布プロセスが可能等、様々な利点があるため、研究開発が盛んに進められている。特に、発光素子は自発光型であるため、ディスプレイの画素として用いると、視認性が高く、バックライトが不要である等の利点があり、フラットパネルディスプレイ素子として好適である。
【0004】
このような有機半導体素子には主として有機化合物を薄膜化した、有機半導体層が形成され、有機化合物及び層構造が有機半導体素子に大きな影響を与えることから、有機化合物及び層構造の選択が重要である。
【0005】
有機半導体層を形成する手法としては、有機化合物を真空下で加熱することで成膜する真空蒸着法や、有機化合物を溶媒に溶解し基板に塗布する湿式法などが挙げられる。しかし、いずれの方法も有機化合物に熱等のストレスを与える方法である。そのため、有機半導体層作製に用いた有機化合物が成膜時に分解等をおこし、有機半導体素子において所望の特性を得られていない場合や、分解物が不純物として素子特性に悪影響を与えている場合がある。特許文献1には不純物が発光素子特性に悪影響を及ぼすことが開示されている。
【0006】
上述の素子特性への悪影響は成膜時に生じているため、有機半導体素子中の有機化合物を分析する必要がある。しかし、該有機化合物を分析することは困難であった。また、所望の層構造を作製できているかを有機半導体素子から分析することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-86171号公報
【文献】特許5903448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の一態様では、有機半導体素子中の有機化合物を分析する方法を提供することを課題とする。または、本発明の一態様では、有機半導体素子中の有機化合物の分子構造を分析する方法を提供することを課題とする。または、本発明の一態様では、有機半導体素子中の有機化合物の光学特性を分析する方法を提供することを課題とする。または、本発明の一態様では、有機半導体素子中の層構造を分析する方法を提供することを課題とする。または、本発明の一態様では、有機半導体素子中の発光機構を分析する方法を提供することを課題とする。または、本発明の一態様では、新規な有機半導体素子の分析方法を提供することを課題とする。
【0009】
なお、上記の課題の記載は、他の課題の存在を妨げない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの課題の全てを解決する必要はない。上記以外の課題は、明細書等の記載から自ずと明らかであり、明細書等の記載から上記以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、一対の電極間に一つまたは複数の層を含む有機半導体層を有する有機半導体素子の分析方法であって、有機半導体素子の一方の電極を剥離する工程と、露出した有機半導体層の層構造および/または混合状態を、第1の質量分析法により分析する工程と、有機半導体層の各層に含まれる有機化合物のうち、いずれか一または複数を溶剤により溶出させ、溶液を作製する工程と、液体クロマトグラフィーを用いて、溶液に含まれる有機化合物を単離し、単離した有機化合物を第2の質量分析法により分析する工程と、第1の質量分析法により検出した質量電荷比(m/z)と、第2の質量分析により検出した質量電荷比とを対比する工程と、単離した有機化合物の物性を測定する工程と、を有する有機半導体素子の分析方法である。
【0011】
上記構成において、単離した有機化合物の物性測定はNMRスペクトル、吸収スペクトル、発光スペクトル、発光寿命の少なくともいずれか一の物性測定を行うと好ましい。
【0012】
また、上記構成において、第2の質量分析法では、少なくとも第1の有機化合物が検出され、第1の有機化合物の質量電荷比から組成式を推定する工程と、第1の有機化合物のNMR測定により、第1の有機化合物の第1のNMRスペクトルを取得する工程と、組成式とNMRスペクトルと、を用いて第2の有機化合物を推定する工程と、第2の有機化合物を合成する工程と、NMR測定により、前記第2の有機化合物の第2のNMRスペクトルを取得する工程と、第1のNMRスペクトルと、前記第2のNMRスペクトルと、を対比する工程を有する。このような構成にすることによって、有機半導体素子に含まれる有機化合物の構造を同定することができる。
【0013】
また、上記構成において溶液のH-NMRを測定する工程と、少なくとも二つの有機化合物を単離する工程と、少なくとも二つの有機化合物の各H-NMRを測定する工程と、溶液のH-NMRと少なくとも二つの有機化合物の各H-NMRとを対比することにより、少なくとも二つの有機化合物のモル比を算出する工程と、を更に含むと好ましい。このような構成にすることによって、有機半導体素子に含まれる少なくとも二つの有機化合物の混合比を算出することができる。
【0014】
また、本発明の他の一態様は、一対の電極間に一つまたは複数の層を含む有機半導体層を有する有機半導体素子の分析方法であって、有機半導体素子の一方の電極を剥離する工程と、露出した有機半導体層の層構造および/または混合状態を、を第1の質量分析法により分析する工程と、第1の質量分析法から複数の有機化合物を含む第1の層を特定する工程と、有機半導体層の各層に含まれる有機化合物のうち、いずれか一または複数を溶剤により溶出させ、溶液を作製する工程と、液体クロマトグラフィーを用いて、溶液に含まれる有機化合物を単離し、単離した有機化合物を第2の質量分析法により分析する工程と、第1の質量分析法により検出した質量電荷比と、第2の質量分析により検出した質量電荷比とを対比する工程と、有機半導体層の第1の層に含まれる第1の有機化合物と第2の有機化合物とを単離した化合物の中から決定する工程と、第1の有機化合物の第1の発光スペクトルを測定する工程と、第2の有機化合物の第2の発光スペクトルを測定する工程と、第1の有機化合物及び第2の有機化合物の混合物の第3の発光スペクトルを測定する工程と、を有する、有機半導体素子の分析方法である。
【0015】
また、本発明の他の一態様は、一対の電極間に一つまたは複数の層を含む有機半導体層を有する有機半導体素子の分析方法であって、有機半導体素子の一方の電極を剥離する工程と、露出した有機半導体層の層構造および/または混合状態を、第1の質量分析法により分析し複数の有機化合物を含む第1の層を特定する工程と、有機半導体層の各層に含まれる有機化合物のうち、いずれか一または複数を溶剤により溶出させ、溶液を作製する工程と、液体クロマトグラフィーを用いて、溶液に含まれる有機化合物を単離し、単離した有機化合物を第2の質量分析法により分析する工程と、第1の質量分析法により検出した質量電荷比と、第2の質量分析により検出した質量電荷比とを対比し、有機半導体層の第1の層に含まれる第1の有機化合物、第2の有機化合物及び第3の有機化合物を推定する工程と、第1の有機化合物の発光寿命を測定する工程と、第1の有機化合物の吸収スペクトルを測定する工程と、第2の有機化合物の第1の発光スペクトルを測定する工程と、第3の有機化合物の第2の発光スペクトルを測定する工程と、第2の有機化合物及び第3の有機化合物の混合物の第3の発光スペクトルを測定する工程と、を有する、有機半導体素子の分析方法である。
【0016】
また、本発明の他の一態様は、一対の電極間に一つまたは複数の層を含む有機半導体層を有する有機半導体素子の分析方法であって、有機半導体層はIrを有する第1の有機化合物を有し、有機半導体素子の一方の電極を剥離する工程と、露出した有機半導体層の層構造および/または混合状態を、第1の質量分析法により分析し複数の有機化合物を含む第1の層を特定する工程と、有機半導体層の各層に含まれる有機化合物のうち、いずれか一または複数を溶剤により溶出させ、溶液を作製する工程と、液体クロマトグラフィーを用いて、溶液に含まれる有機化合物を単離し、単離した有機化合物を第2の質量分析法により分析する工程と、第1の質量分析法により検出した質量電荷比と、第2の質量分析により検出した質量電荷比とを対比し、有機半導体層の第1の層に含まれるに含まれる第1の有機化合物と第2の有機化合物とを推定する工程と、第1の有機化合物の吸収スペクトルを測定する工程と、第2の有機化合物の発光スペクトルを測定する工程と、を有する、有機半導体素子の分析方法である。
【0017】
また、本発明の他の一態様は、一対の電極間に一つまたは複数の層を含む有機半導体層を有する有機半導体素子の分析方法であって、有機半導体層はIrを有する第1の有機化合物を有し、有機半導体素子の一方の電極を剥離する工程と、露出した有機半導体層の層構造および/または混合状態を、第1の質量分析法により分析し複数の有機化合物を含む第1の層を特定する工程と、有機半導体層の各層に含まれる有機化合物のうち、いずれか一または複数を溶剤により溶出させ、溶液を作製する工程と、液体クロマトグラフィーを用いて、溶液に含まれる有機化合物を単離し、単離した有機化合物を第2の質量分析法により分析する工程と、第1の質量分析法により検出した質量電荷比と、第2の質量分析により検出した質量電荷比とを対比し、有機半導体層の第1の層に含まれる第1の有機化合物、第2の有機化合物及び第3の有機化合物を推定する工程と、第1の有機化合物の吸収スペクトルを測定する工程と、第2の有機化合物の第1の発光スペクトルを測定する工程と、第3の有機化合物の第2の発光スペクトルを測定する工程と、第2の有機化合物及び第3の有機化合物の混合物の第3の発光スペクトルを測定する工程と、を有する有機半導体素子の分析方法である。
【0018】
また、上記構成において、有機半導体素子はEL素子若しくは光電変換素子であると好ましい。
【0019】
また、上記構成において、前記有機半導体層が単一の有機化合物からなると好ましい。
【0020】
また、上記構成において、有機半導体層が正孔輸送材料を含む第1の層と、発光物質を含む第2の層と、電子輸送材料を含む第3の層を有し、陽極側から第1の層、第2の層、第3の層の順で積層され、第1の層と第2の層は接しており、第2の層と第3の層は接していると好ましい。
【0021】
また、上記構成において、発光物質として燐光発光化合物を含んでいると好ましい。
【0022】
また、上記構成において、第2の層に燐光発光物質と、第1の化合物と第2の化合物を含み、第1の化合物と第2の化合物は励起錯体を形成すると好ましい。
【0023】
また、上記構成において、第2の層が熱活性型遅延蛍光を示す材料を有すると好ましい。
【0024】
また、上記構成において、第1の質量分析がGCIB(Gas Cluster Ion
Beam)-TOF-SIMS(Time-of-flight secondary
ion mass spectrometer)分析、斜め切削後のTOF-SIMS、または斜め切削後のMALDI(Matrix Assisted Desorption Ionization)-TOF-MSのいずれか一であると好ましい。このような構成にすることで発光素子の層構造を詳細に分析することができる。
【0025】
また、上記構成において、前記第2の質量分析がLC(Liquid Chromatography)-MS分析であると好ましい。このような構成にすることで、効率良く分析を行うことができる。
【0026】
また、上記構成において、第2の質量分析において、検出される質量電荷比を小数点第3位以下まで測定すると好ましい。このような構成にすることで、有機半導体素子に含まれる有機化合物の組成式を求めることができる。
【0027】
また、上記構成において、前記有機半導体層の膜厚が100nm以上1μm以下であると好ましい。このような構成にすることで、効率良く分析を行うことができる。
【0028】
また、上記構成において、前記有機半導体素子を、100cm以下の面積に加工する工程を有すると好ましい。このような構成にすることで、効率良く分析を行うことができる。
【0029】
また、上記構成において、前記有機半導体素子の面積が4mm以上100cm以下であると好ましい。このような構成にすることで、効率良く分析を行うことができる。
【0030】
また、上記構成において、前記有機半導体層の単位面積当たりの重量が1μg/cm以上100μg/cm以下であると好ましい。このような構成にすることで、効率良く分析を行うことができる。
【0031】
また、上記構成において、前記有機半導体層の重量が0.04μg以上1mg以下であると好ましい。このような構成にすることで、効率良く分析を行うことができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の一態様により、有機半導体素子中の有機化合物を分析する方法を提供することができる。または、本発明の一態様により、有機半導体素子中の有機化合物の分子構造を分析する方法を提供することができる。または、本発明の一態様により、有機半導体素子中の有機化合物の光学特性を分析する方法を提供することができる。または、本発明の一態様により、有機半導体素子中の層構造を分析する方法を提供することができる。または、本発明の一態様により、有機半導体素子中の発光機構を分析する方法を提供することができる。または、本発明の一態様により、新規な有機半導体素子の分析方法を提供することができる。
【0033】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の一態様の分析方法が適用できる、有機半導体素子の断面模式図。
図2】本発明の一態様の分析方法が適用できる、発光素子の断面模式図及び発光層の概略図。
図3】本発明の一態様の分析手法を説明する、フローチャート。
図4】本発明の一態様の分析手法を説明する、フローチャート。
図5】本発明の一態様の分析手法を説明する、フローチャート。
図6】本発明の一態様の分析手法を説明する、フローチャート。
図7】本発明の一態様の分析手法を説明する、フローチャート。
図8】本発明の一態様の分析方法が適用できる、発光素子の断面模式図及びエネルギー準位の相関を説明する図。
図9】本発明の一態様の分析方法が適用できる、発光素子の断面模式図。
図10】本発明の一態様の分析方法が適用できる、発光素子の断面模式図。
図11】本発明の一態様の分析方法が適用できる、アクティブマトリクス型発光装置の概念図。
図12】本発明の一態様の分析方法が適用できる、アクティブマトリクス型発光装置の概念図。
図13】本発明の一態様の分析方法が適用できる、アクティブマトリクス型発光装置の概念図。
図14】本発明の一態様の分析方法が適用できる、電子機器の概略図。
図15】本発明の一態様の分析方法が適用できる、電子機器の概略図。
図16】本発明の一態様の分析方法が適用できる、照明装置を表す図。
図17】本発明の一態様の分析方法が適用できる、照明装置を表す図。
図18】実施例に係る、発光素子の素子構造を説明する図。
図19】実施例に係る、LCのクロマトグラムを説明する図。
図20】実施例に係る、有機化合物のNMRスペクトルを説明する図。
図21】実施例に係る、LCのクロマトグラムを説明する図。
図22】実施例に係る、LCのクロマトグラムを説明する図。
図23】実施例に係る、有機化合物のNMRスペクトルを説明する図。
図24】実施例に係る、有機化合物のNMRスペクトルを説明する図。
図25】実施例に係る、有機化合物のNMRスペクトルを説明する図。
図26】実施例に係る、有機化合物の吸収スペクトルを説明する図。
図27】実施例に係る、有機化合物の発光スペクトルを説明する図。
図28】実施例に係る、有機化合物の吸収スペクトルと発光スペクトルの関係を説明する図。
図29】実施例に係る、有機化合物の吸収スペクトルと発光スペクトルの関係を説明する図。
図30】実施例に係る、有機化合物の発光寿命特性を説明する図。
図31】実施例に係る、有機化合物の燐光スペクトルを説明する図。
図32】実施例に係る、有機化合物の吸収スペクトルを説明する図。
図33】実施例に係る、有機化合物及び混合膜の発光スペクトルを説明する図。
図34】実施例に係る、有機化合物の吸収スペクトルと混合膜の発光スペクトルの関係を説明する図。
図35】本発明の一態様の分析方法が適用できる、発光素子の断面模式図。
図36】本発明の一態様の分析手法を説明する、フローチャート。
図37】実施例に係る、LCのクロマトグラムを説明する図。
図38】実施例に係る、有機化合物のNMRスペクトルを説明する図。
図39】実施例に係る、有機化合物のNMRスペクトルを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることが可能である。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されない。
【0036】
なお、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0037】
また、本明細書等において、第1、第2等として付される序数詞は便宜上用いており、工程順又は積層順を示さない場合がある。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」又は「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。また、本明細書等に記載されている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は一致しない場合がある。
【0038】
また、本明細書等において、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる場合がある。
【0039】
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0040】
なお、本明細書等において、室温とは、0℃以上40℃以下の範囲の温度をいう。
【0041】
また、本明細書中のToF-SIMSやLC-MSの測定結果における測定値(質量電荷比;m/z)を表す場合に用いられる「付近」という記載は、水素イオンの存在の有無や同位体の存在による測定値の変化を許容することを示している。
【0042】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の分析方法について、図1に示す、有機半導体素子を用いて以下説明する。
【0043】
<有機半導体素子の構成例1>
有機半導体素子50は、一対の電極(電極101及び電極102)と有機半導体層20を有する。有機半導体層20は機能層を複数有していても良い。
【0044】
有機半導体層20を作製する場合、有機化合物に加熱処理や溶媒への溶解等の負荷をかけることで有機化合物からなる薄膜を成膜する。このとき、成膜時の負荷によって、有機化合物に分解等の変化が生じている場合がある。そのため、EL層成膜前の有機化合物の状態と成膜後の有機化合物の状態は異なっている場合がある。有機半導体層20は有機半導体素子50の特性を大きく左右するため、所望の素子構造で作製できていることが重要である。
【0045】
有機半導体層20の層構造や有機化合物を分析することは、成膜前後での有機化合物の状態や、分解物や不純物の有無、また、有機化合物の構造、EL層が有する各層の機能等、様々な情報が得られるため、有用である。しかし、図1に有機半導体層の膜厚は、数nm乃至数um程度と非常に薄く、また各層は有機物から構成されているため、顕微鏡等での分析は難しく、所望の膜厚や層構造を有する有機半導体層が作製できているか否か、どのような層構造を有しているかを分析することは非常に困難であった。
【0046】
ここで、本発明者らは、電極101または電極102のどちらか一方を剥離する工程と、露出した有機半導体層20の積層構造および各層に含まれる有機化合物の質量電荷比を第1の質量分析法により分析する工程と、有機半導体層20の各層に含まれる有機化合物の少なくとも一つまたは複数を溶剤に溶出させ、溶液を作製する工程と、液体クロマトグラフィーにより該溶液に含まれる有機化合物を単離し、第2の質量分析法により単離した有機化合物の質量電荷比をそれぞれ検出する工程と、第1の質量分析により検出した質量電荷比と、第2の質量分析により検出した質量電荷比を対比し、単離した有機化合物が有機半導体層のどの層に含まれるかを分析する工程と、単離した有機化合物の物性を測定する工程と、を行うことで、有機半導体素子の層構造及び各層に含まれる有機化合物を分析できることを見出した。
【0047】
上記第1の質量分析法にはTOF-SIMS法を好適に用いることができる。特にGCIB-TOF-SIMS分析を用いるとさらに好ましい。GCIB-TOF-SIMS分析はイオンスパッタリングを利用し、表面をエッチングしながらMS分析が可能である。すなわち、有機半導体層の深さ方向におけるMS分析が可能であるため、GCIB-TOF-SIMS分析は積層構造の分析に好適に用いることができる。また、有機半導体層の各層に含まれる有機化合物の質量電荷比を得ることができ、各層に含まれる有機化合物の混合状態を分析することができる。
【0048】
また、上記第1の質量分析法には有機半導体層を後述する図2(B)に示すように、有機半導体層が積層されている方向からみて斜め方向に切削した後、TOF-SIMS分析、もしくはMALDI-TOF-MS分析法を用いることができる。有機半導体層を斜めに切削することで、有機半導体層に含まれる各層それぞれを最表面に露出させることができるため、有機半導体層の層構造の分析を行うことができる。
【0049】
また、上記有機半導体層の総膜厚は100nm以上1μm以下であると好ましい。該構成とすることで、TOF-SIMS及びMALDI-TOF-MS分析を簡便に行うことができる。また、本発明の一態様に係る分析方法はサンプル量が微量であっても分析することができる。
【0050】
また、上記有機半導体素子の面積は4mm以上100cm以下であると好ましい。該構成とすることで、嫌気下でのサンプル作製が容易となり、嫌気下でサンプル作製を行うと、より正確な分析結果を得ることが可能となり好ましい。また、TOF-SIMS及びMALDI-TOF-MS分析や上述の溶液の作製を簡便に行うことができる。また上述の理由により、有機半導体素子の面積が100cmを超える場合、該有機半導体素子を4mm以上100cm以下に加工してから分析を行うと好ましい。
【0051】
また、上記有機半導体層の単位面積当たりの重量が1μg/cm以上100μg/cm 以下であり、半導体素体層の重量が0.04μg以上1mg以下であると好ましい。該構成とすることで、高感度にTOF-SIMS及びMALDI-TOF-MS分析を行うことができる。
【0052】
上述のように、本発明の一態様に係る分析方法はサンプル量が微量であっても分析することができる。例えば、スマートフォンサイズパネル1枚から分析が可能である。また、テストピースサイズのサンプルからも分析が可能である。
【0053】
<有機半導体素子の構成例2>
有機半導体素子の分析例として図2に示す、発光素子150を用いて以下説明する。
【0054】
発光素子150は、一対の基板(基板200及び基板210)、一対の電極(電極101及び電極102)を有し、該一対の電極間に設けられたEL層100を有する。EL層100は、少なくとも発光層130を有する。
【0055】
また、図2(A)に示すEL層100は、発光層130の他に、正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送層118、及び電子注入層119等の機能層を有する。
【0056】
なお、本実施の形態においては、一対の電極のうち、電極101を陽極として、電極102を陰極として説明するが、発光素子150の構成としては、その限りではない。つまり、電極101を陰極とし、電極102を陽極とし、当該電極間の各層の積層を、逆の順番にしてもよい。すなわち、陽極側から、正孔注入層111と、正孔輸送層112と、発光層130と、電子輸送層118と、電子注入層119と、が積層する順番とすればよい。
【0057】
なお、EL層100の構成は、図2(A)に示す構成に限定されず、少なくとも発光層130を有し、正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送層118、及び電子注入層119はそれぞれ有していても、有していなくても良い。また、EL層100は、正孔または電子の注入障壁を低減する、正孔または電子の輸送性を向上する、正孔または電子の輸送性を阻害する、または電極による消光現象を抑制する、励起子拡散を抑制する、ことができる等の機能を有する機能層を有する構成としてもよい。なお、機能層はそれぞれ単層であっても、複数の層が積層された構成であってもよい。
【0058】
また、図2(C)に示すように、発光層130は、有機化合物132(ホスト材料)と、発光性材料131(ゲスト材料)と、を有していてもよい。
【0059】
<有機半導体素子の分析例1>
上述の発光素子150を作製した場合、各層が所望の膜厚や層構造になっているかを分析する、本発明の一態様の係る分析方法を以下に示す。図3は、本発明の一態様の精製方法の主な処理を説明するフローチャートである。
【0060】
分析対象である発光素子150の一方の基板である基板210を剥離する(図3(S1)参照)。基板210を剥離することにより、一方の電極102及びEL層100を露出させる。基板210を剥離する方法に特に制限はなく、レーザーや刃物により封止材にきっかけを入れ、物理的な力によって基板を剥離することができる。
【0061】
次に、第1の質量分析を行うために、一方の電極を剥離する。(図3(S2)参照)。基板210を剥離する方法に特に制限はなく、例えば、粘着性のテープを用いて引き剥がすことができる。該粘着性のテープには塵埃の発生が少ないテープが好ましく、ポリイミド製のテープを好適に用いることができる。
【0062】
ここで、第1の質量分析としてGCIB-TOF-SIMS分析を行うとき、EL層100に対してはGCIBが好適に用いられるが、GCIBは無機物である電極102をスパッタリングするには不適当であり、電極102をスパッタリングするにはGCIBとは異なるスパッタイオン銃を用いる必要がある。電極102を剥離してからTOF-SIMS分析を行うことで簡便に測定を行うことができる。なお、GCIBにはアルゴンガスが好適に用いられる。
【0063】
また、図2(B)に示すように基板210及び電極102を剥離し、露出させたEL層100を斜めに切削することで、EL層に含まれる各層を最表面に露出させることができる。そのため、斜め切削後にTOF-SIMS分析もしくはMALDI-TOF-MS分析を行うことで、EL層の層構造を分析することができる。
【0064】
次に、第1の質量分析を行う(図3(S3)参照)。ここでは第1の質量分析としてGCIB-TOF-SIMS分析を行った場合について説明する。GCIB-TOF-SIMS分析はEL層の深さ方向に対する、有機化合物の質量電荷比を測定することができる。例えば、図2に示す発光素子150を電子注入層119側からGCIB-TOF-SIMS分析を行った場合、まず電子注入層119に含まれる有機化合物が検出され、続いて電子輸送層118、発光層130、正孔輸送層112、正孔注入層111、各層に含まれる有機化合物の質量電荷比が積層順に検出される(図3(D1)参照)。換言すると、得られる質量電荷比の順番を分析することで、EL層100の積層構造を分析することができる。そのためGCIB-TOF-SIMS分析を行うことで、EL層100の積層構造や各層に含まれる有機化合物及び有機化合物の混合状態を分析することができる。なお、GCIB-TOF-SIMS分析は後述する斜め切削をしなくても、一方の電極を剥離すれば測定が行えるため好ましい。
【0065】
また、斜め切削後に図2(B)中、例えば、矢印が示す方向に走査しながらTOF-SIMS分析もしくはMALDI-TOF-MS分析を行うと、まず正孔注入層111含まれる有機化合物が検出され、続いて正孔輸送層112、発光層130、電子輸送層118、電子注入層119、各層に含まれる有機化合物の質量電荷比が積層順に検出される。換言すると、得られる質量電荷比の順番を分析することで、EL層100の積層構造を分析することができる。そのためGCIB-TOF-SIMS分析を行うことで、EL層100の積層構造や各層に含まれる有機化合物及び有機化合物の混合状態を分析することができる。
【0066】
なお、発光層130のように一つの層に複数の有機化合物が混在する場合、何種類の有機化合物が混在しているかを、第1の質量分析から分析することができる。すなわち、各層の混合状態に関する情報が得られる。また、質量分析では、測定対象となった有機化合物のm/zに加えて同位体ピークも同時に観測されるため、各層に含まれる有機化合物が、イリジウム(Ir)、塩素(Cl)や臭素(Br)等、特徴的な同位体ピークが検出される元素を含んでいる場合、該有機化合物に含まれる元素の情報を得ることができる。
【0067】
なお、GCIB-TOF-SIMS分析は少量で測定でき、スパッタイオンが照射された部分以外は非破壊で測定することができる。また、斜め切削後のTOF-SIMS分析及びMALDI-TOF-MS分析も同様に少量で測定でき、走査した部分以外は非破壊で測定することができる。そのため、図3中破線で示すように、第1の質量分析を行ったサンプルを図3(S4)で示す工程に用いることができる。このような手順で測定を行うと、サンプル量が少量の場合でも、EL層100に含まれる有機化合物を効率良く分析できるため好ましい。
【0068】
発光素子の基板210を剥離した(図3(S1)の工程を終えた)サンプルを用い、EL層100を所望の溶剤に溶解した溶液を作製する(図3(S4)参照)。このとき、続く液体クロマトグラフィーにより該溶液から有機化合物のみを分離する(図3(S5)参照)ため、発光素子150に用いられている電極等、EL層以外の物質が混合溶液に混在していても良い。すなわち、発光素子に含まれるEL層100のみを溶解させる必要が無い。図3(S5)の工程を行うため、該溶液の作製(図3(S4))を容易に行うことができる。また、上述の通り、図3(S3)の工程に使用したサンプルも図3(S4)の工程に用いることができる。
【0069】
また、該溶液の作製(図3(S4))に用いる溶剤は有機溶媒であると好ましく、アセトン、トルエン、酢酸エチル、アセトニトリル、エタノール、メタノール、ジメチルスルホキシド(略称:DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(略称:DMF)、N-メチル-2-ピロリジノン(略称:NMP)等を用いることができる。また、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等、含塩素有機溶媒であるとさらに好ましい。含塩素有機溶媒は有機化合物を良く溶解させるため、少量の溶媒で多くのEL層100を溶解できるため好ましい。なお、使用できる溶媒は上記に限定されない。
【0070】
また、CDClやCDCl等の難燃性重水素溶媒を用いることで、該溶液の作製(図3(S4))後に後述するNMR測定を行うことができるため好ましい。NMR測定を行うことで続く図3(S5)の工程で有機化合物を分離するための情報を得ることができる。また、NMR測定を行うことで、後述する複数の有機化合物が混在する層において、その有機化合物の混合比(モル比)を分析することができる。
【0071】
次に、図3(S4)の工程で調整した溶液中に含まれる有機化合物を液体クロマトグラフィーにより分離する(図3(S5)参照)。EL層100に複数の有機化合物が含まれている場合、本工程で各有機化合物をそれぞれ単離する。一度の液体クロマトグラフィーにより単離できない場合、本工程を複数回行っても構わない。
【0072】
液体クロマトグラフィーにはHPLC(High Performance liquid chromatography)装置を使用すると好ましい。HPLC装置を用いることでサンプル量が少量の場合でも、簡便に分離を行うことができる。また、HPLC装置と続くMS装置及び分取を行う装置を接続することができるため、図3(S5)と図3(S6)の工程及び図3(S5)と図3(S7)の工程を連続で行うことができる。上記構成にすることで、有機化合物の分離及び精製を効率良く行うことができるため好ましい。また、HPLC装置とMS装置を接続する構成とすることで、HPLCから得られるクロトマトグラムとMS測定から得られる質量電荷比を分析することにより、どの質量電荷比を有する有機化合物がクロマトグラム中のどのピークに帰属されるかを把握することができるため、精密な分離を行うことができる。
【0073】
次に、第2の質量分析、すなわち単離した有機化合物の質量分析を行う(図3(S6)参照)。図3(S6)の工程を行うことで、単離した各有機化合物それぞれに由来する質量電荷比(図3(D2)参照)を得ることができる。この工程(図3(S6))で質量電荷比を小数第4位以下まで取得することにより、単離した有機化合物の組成式を分析することができる。なお、小数第4位以下まで検出した質量電荷比の値は精密質量と呼ぶ場合がある。
【0074】
第2の質量分析には、LC-MS分析を行うことが好ましい。LC-MS分析は上述の通り、図3(S5)と図3(S6)の工程を連続で行うことができるため、効率良く分離と精製を行うことができる。また、LC-MS装置には分離した有機化合物を分取する装置も接続できるため好ましい。
【0075】
また、図3(S6)の工程で、MS/MS測定を行うと好ましい。MS/MS測定を行うことで有機化合物のフラグメント由来する質量電荷比を得ることができるため、EL層に含まれる有機化合物の構造や、有する置換基、組成式を推定することができる。
【0076】
図3(S5)で単離した有機化合物を分取する(図3(S7)参照)。本工程により、単離した有機化合物(図3(M1)参照)を溶液の状態で得ることができるため、NMR測定、発光特性や吸収特性、発光寿命特性等の光学測定、三重項励起(T1)準位の測定、熱物性測定等、様々な物性測定を行うことができる。
【0077】
上述の工程により、EL層各層に含まれる有機化合物それぞれを単離し分取することができるため、第1の質量分析で得られた質量電荷比及び層構造のデータ(図3(D1)参照)と第2の質量測定から得られた、単離した有機化合物の質量電荷比(図3(D2)参照)を対比することで、単離した有機化合物(M1)がEL層100中、どの層に含まれるかを分析することができる(図3(S8)参照)。
【0078】
上述のように、同一の層から複数の有機化合物が検出された場合、該有機化合物の混合比が重要である場合がある。例えば、発光層にはホスト材料とゲスト材料が含まれ、ホスト材料とゲスト材料の混合比が発光特性には重要である。ここで、上述の工程により分取した同一の層に含まれる各有機化合物のH-NMR測定を行い、単離前に取得したNMRスペクトルと、単離後の有機化合物のH-NMRスペクトルを対比させることで、同一の層に含まれる複数の有機化合物のモル比を算出することができる。
【0079】
また、単離した有機化合物(M1)を詳細に分析することで、該有機化合物の構造や物性、各層が有する機能等を分析することができる。例えば、正孔輸送層に含まれる有機化合物を分析することで、成膜前後の物質の状態を知ることができる。そのため、分解物や不純物の有無を分析することが可能であり、発光素子の特性について分析することができる。また、例えば、発光層に含まれる有機化合物の光学特性を分析することによって、発光機構を分析することができる。また、各層の混合状態を知ることにより、混合状態の物性測定が可能になる。例えば、上述のように混合層の材料のモル比が明らかになれば、同混合比における混合膜の物性値を正確に知ることが出来る。作製後の素子を分析することで初めて明らかになる情報も存在するため、本発明の一態様によって、素子の設計図からは読み取れない新たな情報を得ることが可能になる。
【0080】
上記発光素子の分析は素子構造が既知の発光素子についての分析例を示したが、本発明の一態様に係る分析方法はこれに限られない。すなわち、構造が未知な有機半導体素子、発光素子、にも適用することができ、該素子が有する層構造や有機化合物を分析することができる。
【0081】
また、本発明の一態様に係る分析方法は、有機太陽電池や有機フォトダイオード等、有機光電変換素子にも好適に用いることができる。
【0082】
また、上記分析例では発光素子150に複数の有機化合物が使用されている場合について説明したが、本発明の一態様に係る分析方法はこれに限られない。すなわち。本発明の一態様に係る分析方法は、単一の有機化合物からなる有機半導体素子にも適用することができる。
【0083】
なお、図3中、工程(S1)乃至(S8)はこの順に行う必要はなく、適宜順番を入れ替えて構わない。
【0084】
<有機半導体素子の分析例2>
本分析例では、図3(M1)に示す、EL層に含まれる有機化合物(有機化合物A)の分子構造の分析方法について以下説明する。図4は本発明の一態様である有機化合物の分析方法のフローチャートである。
【0085】
まず、図3(M1)で単離した有機化合物AのNMR測定を行い(図4(S9)参照)、有機化合物AのNMRスペクトル(図4(D3)参照)を取得する。このNMR測定は少なくともHについて測定を行うことが好ましい。さらに、13Cや二次元NMR測定を行うとより詳細に分子構造分析を行うことができるため好ましい。また、図4(S9)の工程で融点や旋光度測定を行うことで、より詳細に分子構造分析を行うことができる。
【0086】
次に上記測定した有機化合物AのNMRデータと図4(D3)と図3(S6)の工程で取得した、有機化合物Aの質量電荷比及び精密質量のデータ(D2)を分析することで、有機化合物Aの分子構造を推定する(図4(S10)参照)。このとき、前述の第2の質量分析(図3(S6))において、精密質量を測定することによって、有機化合物Aが有する組成式を決定することができるため好ましい。また、図3(S6)工程においてにMS/MS測定を行い、有機化合物Aから得られるフラグメントイオンを分析すると、より詳細な分子構造を推定できるため好ましい。該組成式に基づき(D3)のデータから分析構造を推定する。このとき、分析の補助として種々の公表されている文献やデーターベースを参考にしても構わない。
【0087】
次に推定した分子構造を有する有機化合物Bを実際に合成する(図4(S11)参照)。合成法、合成経路に特に限定はなく、鈴木・宮浦カップリング反応、ブッフバルト・ハートウィッグ反応やウルマン反応等、種々の合成法を用いることができる。
【0088】
なお、(S11)の工程では、有機化合物Bを入手する工程であるため、有機化合物Bが市販されている場合は(S11)の工程に代えて市販品を購入しても良く、有機化合物Bが発光素子150の作製時に使用した有機化合物であり、分子構造の知見がある場合は、発光素子150の作製時に使用した有機化合物を以下説明する(S12)の工程に用いても良い。
【0089】
次に、合成した有機化合物BのNMRを測定し(図4(S12)参照)、有機化合物BのNMRスペクトル(図4(D4)参照)を取得する。このNMR測定は少なくともHについて測定を行うことが好ましい。さらに、13Cや二次元NMR測定を行うとより詳細に分子構造分析を行うことができるため好ましい。また、図4(S9)の工程で旋光度測定やMS測定を行うことで、より詳細な分子構造分析を行うことができる。
【0090】
なお、文献やデーターベースから有機化合物BのNMRスペクトルが得られる場合、(D4)として文献やデーターベースから得られるスペクトルを用いても構わない。
【0091】
次にD3とD4を対比することで、有機化合物Aの分子構造を同定する。D3とD4の各ピークの強度比及びピーク位置が一致すれば、有機化合物Aの分子構造は推定した有機化合物Bと同一の構造を有すると言える。このとき、NMR以外のデータも同時に分析することで分析の精度を向上させることができる。
【0092】
ここで、D3とD4の各ピークの強度比及びピーク位置が一致しない場合、再度図4(S10)乃至図4(S12)に示す工程を繰り返し行うこと(図4破線)で、有機化合物Aの分子構造を同定することができる。
【0093】
さらに、同定した有機化合物Aの分子構造を発光素子150作製時に用いた有機化合物の構造と比較することで、目的の物質が目的の層に成膜できているかを確認することができる。また、発光素子150作製時に用いた有機化合物と異なる構造の物質がEL層から検出された場合、その分子構造を特定することによって、発光素子の特性を詳細に分析することができる。
【0094】
なお、上記分析方法を未知の発光素子に同様に行うことで、未知の発光素子に含まれる有機化合物の構造を同定することができる。
【0095】
<有機半導体素子の分析例3>
次に、図4に示す分析例と異なる分析例について、図5を用いて、以下説明を行う。
【0096】
複数の有機化合物の混合膜や、隣接する有機化合物膜の界面には、有機化合物間で相互作用を生じる場合がある。該相互作用を利用し発光素子を作製する場合がある一方で、該相互作用が素子特性に悪影響を与えている場合もある。そのため、該相互作用の分析は重要である。本分析例では、発光素子中の有機化合物間でどのような相互作用が生じているかを分析する例を以下説明する。図5は本発明の一態様である発光素子に用いている有機化合物間で励起錯体(Exciplex、エキサイプレックスともいう)が生じているかを分析する分析方法のフローチャートである。
【0097】
まず、本分析では図3(S7)の工程を行うことで相互作用をしていると推定される有機化合物C及び有機化合物Dが含まれている層を特定する。同一の層から2種以上の有機化合物が含まれている場合、該層に含まれる有機化合物C及び有機化合物Dは何らかの相互作用を起こしていると推定できる。
【0098】
次に、単離した有機化合物C及び有機化合物Dに関して詳細に分析する。まず、有機化合物C及び有機化合物Dにそれぞれの発光スペクトルを測定する(図5(S13)、(S14)参照)ことで、図5(D5)、(D6)に示す各発光スペクトルデータを取得する。上記発光スペクトルは各有機化合物が溶液状態及び薄膜状態のどちらの状態で測定しても構わないが、各有機化合物は同一の状態で測定することが好ましい。
【0099】
次に、有機化合物C及び有機化合物Dの混合物を作製する(図5(S15)参照)。該混合物の状態は溶液状態であっても、薄膜状態であっても構わないが、上記各有機化合物の発光スペクトルを測定した状態と同一の状態の混合膜を作製することが好ましい。薄膜の作製方法は真空蒸着やウェットプロセス(スピンコート法、キャスト法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、インクジェット法、印刷法、スプレーコート法、カーテンコート法、ラングミュア・ブロジェット法など)を用いることができる。
【0100】
次に、各有機化合物を測定と同様に、作製した混合物の発光スペクトルを測定する(図5(S16)参照)ことで、図5(D7)に示す混合物の発光スペクトルデータを取得する。
【0101】
次に、測定した図5(D5)乃至(D7)を比較することで、有機化合物Cと有機化合物Dの間に励起錯体が生じているかを分析する。(D5)に示す発光スペクトルが有するピーク及び(D6)に示す発光スペクトルが有するピークよりも(D7)に示す発光スペクトルが有するピークが長波長側に観測される場合、後述するように、有機化合物Cと有機化合物Dは励起錯体を形成していると言える。一方、(D7)に示す発光スペクトルが(D5)に示す発光スペクトル及び(D6)に示す発光スペクトルの重ね合わせである場合、有機化合物Cと有機化合物Dは励起錯体を形成していないと言える。
【0102】
本分析例では、有機化合物間で励起錯体が生じるかの分析例を示したが、種々の分析を行うことで異なる相互作用も分析することができる。また、本分析は素子構造が未知の発光素子にも適用することができる。なお、図5中、工程(S13)乃至(S16)はこの順に行う必要はなく、適宜順番を入れ替えて構わない。
【0103】
<有機半導体素子の分析例4>
次に、図5に示す分析例と異なる分析例について、図6を用いて、以下説明を行う。
【0104】
発光素子において、発光層は通常複数の有機化合物から作製され、発光層に含まれる有機化合物間でエネルギーや電子及び正孔を交換し、発光に至る。本分析例では、発光素子中の発光層の発光機構を解析する例を以下説明する。図6は本発明の一態様である、発光素子の発光機構に関する分析方法のフローチャートである。なお、第1の質量分析(図3(S3))において、同一の層から複数種の有機化合物の質量電荷比が得られた場合、該層を発光層と推定する場合がある。
【0105】
本分析では図3(S7)の工程を行うことで、発光層に含まれていると推定される、有機化合物E及び有機化合物Fに関して詳細に分析する。なお、本分析例では、有機化合物Eを発光層におけるゲスト材料、有機化合物Fをホスト材料として説明する。発光素子作製時にIr等の重原子を有する有機化合物を発光層に用いている場合または、TOF-SIMS分析において重原子の同位体ピークを分析することにより、ゲスト材料を特定することができる。また、未知の発光素子の発光層を分析する場合、TOF-SIMS分析(図3(S3))において検出されたイオン強度の相対強度が低い有機化合物をゲスト材料、他方をホスト材料と推定しても良い。
【0106】
有機化合物Eの吸収スペクトルを測定(図6(S17)参照)することで図6(D8)に示す、有機化合物Eの吸収スペクトルデータを得る。
【0107】
また、有機化合物Eの発光寿命を測定(図6(S18)参照)し、図6(D9)に示す有機化合物Eの発光寿命データを解析することで、有機化合物Eが示す発光特性を分析することができる。基本的には、発光寿命がナノ秒スケールの場合は蛍光発光、マイクロ秒スケールかつ減衰曲線が1次式で表せる場合は燐光発光と解釈することができる。また、発光寿命の減衰曲線が2次以上の関係式で表せる場合、遅延発光成分(代表的には熱活性化遅延蛍光成分)を有していると分析できる。
【0108】
また、図5(S13)、(S14)と同様に有機化合物Fの発光スペクトルを測定する(図6(S19)参照)ことで、図6(D10)に示す各発光スペクトルデータを取得する。
【0109】
次に、(D8)乃至(D10)のデータを合わせて分析することで、発光素子中の発光機構を分析することができる。上述の通り、(D9)から有機化合物Eが有する発光特性を解析することができる。また(D8)と(D10)の重なりを解析することで、ホスト材料である有機化合物Fからゲスト材料である有機化合物Eへのエネルギー移動に関する知見を得ることができる。
【0110】
本分析例では、本分析は素子構造が未知の発光素子にも適用することができる。
【0111】
<有機半導体素子の分析例5>
次に、図6に示す発光機構の分析例と異なる分析例について、図7を用いて、以下説明を行う。
【0112】
以下では、同一の層から3種以上の有機化合物が検出され場合における、発光層の発光機構を分析する例を以下説明する。図7は本発明の一態様である、発光素子の発光機構に関する分析方法のフローチャートである。なお、以下では有機化合物G及び有機化合物Hがホスト材料、有機化合物Iがゲスト材料として説明する。なお、未知の発光素子の発光層を分析する場合、第1の質量分析(図3(S3))において検出されたイオン強度の相対強度が最も低い有機化合物をゲスト材料、その他をホスト材料と推定しても良い。
【0113】
図7中(S20)乃至(S23)の工程は上述の図5中(S13)乃至(S16)の工程と同一である。図7中(D11)乃至(D13)のデータを分析することで図5中(D5)乃至(D7)のデータ分析と同様に、発光層中で有機化合物G及び有機化合物Hが励起錯体を形成するかを分析することができる。
【0114】
図7中(S24)、(S25)の工程は上述の図6中(S17)、(S18)の工程と同一である。図7中(D15)のデータを解析することで、有機化合物Iの発光特性を分析することができる。
【0115】
図7中(D11)乃至(D15)のデータを分析することで、発光素子の発光機構を分析することができる。例えば、上記分析より有機化合物G及び有機化合物Hが励起錯体を形成し、有機化合物Iが燐光を発する場合、(D14)に示す吸収スペクトル及び(D12)に示す発光スペクトルの重なりを分析することで、発光層中で後述するExTET(Exciplex Triplet Energy Transfer)が生じているかを分析することができる。(D12)に示す発光スペクトルが(D14)に示す吸収スペクトルの最も長波長側の吸収と重なりを持つ場合、発光層中でExTETが生じていると言える。
【0116】
<材料>
次に、発光素子の構成要素の詳細について、以下説明を行う。
【0117】
≪発光層≫
発光層130中では、有機化合物132が重量比で最も多く存在し、発光性材料131は、有機化合物132中に分散される。発光性材料131が蛍光性化合物の場合、発光層130の有機化合物132のS1準位は、発光層130の発光性材料(発光性材料131)のS1準位よりも高いことが好ましい。また、発光性材料131が燐光性化合物の場合、発光層130の有機化合物132のT1準位は、発光層130の発光性材料(発光性材料131)のT1準位よりも高いことが好ましい。
【0118】
有機化合物132としては、含窒素六員複素芳香族骨格を有する化合物であると好ましい。具体的には、ピリジン骨格、ジアジン骨格(ピラジン骨格、ピリミジン骨格、及びピリダジン骨格)、及びトリアジン骨格を有する化合物が挙げられる。これらの塩基性を有する含窒素複素芳香族骨格を有する化合物としては、例えば、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、プリン誘導体などの化合物が挙げられる。また、有機化合物132としては、正孔よりも電子の輸送性の高い材料(電子輸送性材料)を用いることができ、1×10-6cm/Vs以上の電子移動度を有する材料であることが好ましい。
【0119】
具体的には、例えば、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)などのピリジン骨格を有する複素環化合物や、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq-II)、2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II)、2-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、2-[4-(3,6-ジフェニル-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2CzPDBq-III)、7-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:7mDBTPDBq-II)、及び、6-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:6mDBTPDBq-II)、(2-[3-(3,9’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン)(略称:2mCzCzPDBq)、4,6-ビス[3-(フェナントレン-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、4,6-ビス[3-(4-ジベンゾチエニル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mDBTP2Pm-II)、4,6-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mCzP2Pm)などのジアジン骨格を有する複素環化合物や、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PCCzPTzn)などのトリアジン骨格を有する複素環化合物や、3,5-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)、1,3,5-トリ[3-(3-ピリジル)フェニル]ベンゼン(略称:TmPyPB)などのピリジン骨格を有する複素環化合物も用いることができる。上述した複素環化合物の中でも、トリアジン骨格、ジアジン(ピリミジン、ピラジン、ピリダジン)骨格、またはピリジン骨格を有する複素環化合物は、安定で信頼性が良好であり好ましい。また、当該骨格を有する複素環化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。また、ポリ(2,5-ピリジンジイル)(略称:PPy)、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(ピリジン-3,5-ジイル)](略称:PF-Py)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(2,2’-ビピリジン-6,6’-ジイル)](略称:PF-BPy)のような高分子化合物を用いることもできる。ここに述べた物質は、主に1×10-6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を用いても構わない。
【0120】
また、有機化合物132としては、含窒素五員複素環骨格または3級アミン骨格を有する化合物も好適に用いることができる。具体的には、ピロール骨格または芳香族アミン骨格が挙げられる。例えば、インドール誘導体、カルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体などが挙げられる。また、含窒素五員複素環骨格としては、イミダゾール骨格、トリアゾール骨格、及びテトラゾール骨格が挙げられる。また、有機化合物132としては、電子よりも正孔の輸送性の高い材料(正孔輸送性材料)を用いることができ、1×10 cm/Vs以上の正孔移動度を有する材料であることが好ましい。また、該正孔輸送性材料は高分子化合物であっても良い。
【0121】
これら正孔輸送性の高い材料として、具体的には、芳香族アミン化合物としては、N,N’-ジ(p-トリル)-N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’-ビス{4-[ビス(3-メチルフェニル)アミノ]フェニル}-N,N’-ジフェニル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン(略称:DNTPD)、1,3,5-トリス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等を挙げることができる。
【0122】
また、カルバゾール誘導体としては、具体的には、3-[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA1)、3,6-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA2)、3,6-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-(1-ナフチル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzTPN2)、3-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6-ビス[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3-[N-(1-ナフチル)-N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等を挙げることができる。
【0123】
また、カルバゾール誘導体としては、他に、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5-トリス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)、1,4-ビス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]-2,3,5,6-テトラフェニルベンゼン等を用いることができる。
【0124】
また、N,N-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:CzA1PA)、4-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:DPhPA)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、N,9-ジフェニル-N-{4-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]フェニル}-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPBA)、N,9-ジフェニル-N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPA)、9-フェニル-3-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:PCzPA)、3,6-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:DPCzPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン(略称:DBC1)等を用いることができる。
【0125】
また、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4-ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N-(4-{N’-[4-(4-ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル-N’-フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly-TPD)等の高分子化合物を用いることもできる。
【0126】
さらに、正孔輸送性の高い材料としては、例えば、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα-NPD)やN,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’-トリス(カルバゾール-9-イル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)、4,4’,4’’-トリス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:1’-TNATA)、4,4’,4’’-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’-トリス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-イル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-N-{9,9-ジメチル-2-[N’-フェニル-N’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミノ]-9H-フルオレン-7-イル}フェニルアミン(略称:DFLADFL)、N-(9,9-ジメチル-2-ジフェニルアミノ-9H-フルオレン-7-イル)ジフェニルアミン(略称:DPNF)、2-[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:DPASF)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、4-フェニルジフェニル-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)アミン(略称:PCA1BP)、N,N’-ビス(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N,N’-ジフェニルベンゼン-1,3-ジアミン(略称:PCA2B)、N,N’,N’’-トリフェニル-N,N’,N’’-トリス(9-フェニルカルバゾール-3-イル)ベンゼン-1,3,5-トリアミン(略称:PCA3B)、N-(4-ビフェニル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9-フェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCBiF)、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)、9,9-ジメチル-N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フルオレン-2-アミン(略称:PCBAF)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-アミン(略称:PCBASF)、2-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:PCASF)、2,7-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:DPA2SF)、N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N-(4-フェニル)フェニルアニリン(略称:YGA1BP)、N,N’-ビス[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニル-9,9-ジメチルフルオレン-2,7-ジアミン(略称:YGA2F)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。また、3-[4-(1-ナフチル)-フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCPN)、3-[4-(9-フェナントリル)-フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCPPn)、3,3’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール)(略称:PCCP)、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、3,6-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PhCzGI)、2,8-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)-ジベンゾチオフェン(略称:Cz2DBT)等のアミン化合物、カルバゾール化合物等を用いることができる。上述した化合物の中でも、ピロール骨格、芳香族アミン骨格を有する化合物は、安定で信頼性が良好であり好ましい。また、当該骨格を有する化合物は、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。
【0127】
また、有機化合物132としては、イミダゾール骨格、トリアゾール骨格、及びテトラゾール骨格等の含窒素五員複素環骨格を有する化合物を用いることができる。具体的には、例えば、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、9-[4-(4,5-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzTAZ1)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm-II)等を用いることができる。
【0128】
また、発光層130において、発光性材料131としては、特に限定はないが、蛍光性化合物としては、アントラセン誘導体、テトラセン誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、スチルベン誘導体、アクリドン誘導体、クマリン誘導体、フェノキサジン誘導体、フェノチアジン誘導体などが好ましく、例えば以下の物質を用いることができる。
【0129】
具体的には、5,6-ビス[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAP2BPy)、5,6-ビス[4’-(10-フェニル-9-アントリル)ビフェニル-4-イル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAPP2BPy)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)、N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-N,N’-ビス(4-tert-ブチルフェニル)-ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6tBu-FLPAPrn)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-3,8-ジシクロヘキシルピレン-1,6-ジアミン(略称:ch-1,6FLPAPrn)、N,N’-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニルスチルベン-4,4’-ジアミン(略称:YGA2S)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11-テトラ(tert-ブチル)ペリレン(略称:TBP)、4-(10-フェニル-9-アントリル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’’-(2-tert-ブチルアントラセン-9,10-ジイルジ-4,1-フェニレン)ビス[N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン](略称:DPABPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPPA)、N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPA)、N-[9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCABPhA)、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N-[9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N-フェニルアントラセン-2-アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9-トリフェニルアントラセン-9-アミン(略称:DPhAPhA)、クマリン6、クマリン545T、N,N’-ジフェニルキナクリドン(略称:DPQd)、ルブレン、2,8-ジ-tert-ブチル-5,11-ビス(4-tert-ブチルフェニル)-6,12-ジフェニルテトラセン(略称:TBRb)、ナイルレッド、5,12-ビス(1,1’-ビフェニル-4-イル)-6,11-ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、2-(2-{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-6-メチル-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2-{2-メチル-6-[2-(2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)テトラセン-5,11-ジアミン(略称:p-mPhTD)、7,14-ジフェニル-N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)アセナフト[1,2-a]フルオランテン-3,10-ジアミン(略称:p-mPhAFD)、2-{2-イソプロピル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)、2-{2-tert-ブチル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、2-(2,6-ビス{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、2-{2,6-ビス[2-(8-メトキシ-1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)、5,10,15,20-テトラフェニルビスベンゾ[5,6]インデノ[1,2,3-cd:1’,2’,3’-lm]ペリレン、などが挙げられる。
【0130】
発光性材料131(燐光性化合物)としては、イリジウム、ロジウム、または白金系の有機金属錯体、あるいは金属錯体が挙げられ、中でも有機イリジウム錯体、例えばイリジウム系オルトメタル錯体が好ましい。オルトメタル化する配位子としては4H-トリアゾール配位子、1H-トリアゾール配位子、イミダゾール配位子、ピリジン配位子、ピリミジン配位子、ピラジン配位子、あるいはイソキノリン配位子などが挙げられる。金属錯体としては、ポルフィリン配位子を有する白金錯体などが挙げられる。
【0131】
青色または緑色の波長領域に発光ピークを有する物質としては、例えば、トリス{2-[5-(2-メチルフェニル)-4-(2,6-ジメチルフェニル)-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル-κN]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:Ir(mpptz-dmp))、トリス(5-メチル-3,4-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:Ir(Mptz))、トリス[4-(3-ビフェニル)-5-イソプロピル-3-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:Ir(iPrptz-3b))、トリス[3-(5-ビフェニル)-5-イソプロピル-4-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:Ir(iPr5btz))、のような4H-トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス[3-メチル-1-(2-メチルフェニル)-5-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:Ir(Mptz1-mp))、トリス(1-メチル-5-フェニル-3-プロピル-1H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:Ir(Prptz1-Me))のような1H-トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、fac-トリス[1-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-フェニル-1H-イミダゾール]イリジウム(III)(略称:Ir(iPrpmi))、トリス[3-(2,6-ジメチルフェニル)-7-メチルイミダゾ[1,2-f]フェナントリジナト]イリジウム(III)(略称:Ir(dmpimpt-Me))のようなイミダゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C’]イリジウム(III)テトラキス(1-ピラゾリル)ボラート(略称:FIr)、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス{2-[3’,5’-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト-N,C’}イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CFppy)(pic))、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIr(acac))のような電子吸引基を有するフェニルピリジン誘導体を配位子とする有機金属イリジウム錯体が挙げられる。上述した中でも、4H-トリアゾール骨格、1H-トリアゾール骨格およびイミダゾール骨格のような含窒素五員複素環骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、高い三重項励起エネルギーを有し、信頼性や発光効率にも優れるため、特に好ましい。
【0132】
また、緑色または黄色の波長領域に発光ピークを有する物質としては、例えば、トリス(4-メチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppm))、トリス(4-t-ブチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tBuppm))、(アセチルアセトナト)ビス(6-メチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppm)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(6-tert-ブチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tBuppm)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[4-(2-ノルボルニル)-6-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:Ir(nbppm)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[5-メチル-6-(2-メチルフェニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:Ir(mpmppm)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス{4,6-ジメチル-2-[6-(2,6-ジメチルフェニル)-4-ピリミジニル-κN3]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:Ir(dmppm-dmp)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(4,6-ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(dppm)(acac))のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、(アセチルアセトナト)ビス(3,5-ジメチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr-Me)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(5-イソプロピル-3-メチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr-iPr)(acac))のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス(2-フェニルピリジナト-N,C’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy) (acac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)(acac))、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:Ir(bzq))、トリス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(pq))、ビス(2-フェニルキノリナト-N,C’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pq) (acac))のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、ビス(2,4-ジフェニル-1,3-オキサゾラト-N,C’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)2(acac))、ビス{2-[4’-(パーフルオロフェニル)フェニル]ピリジナト-N,C’}イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p-PF-ph)(acac))、ビス(2-フェニルベンゾチアゾラト-N,C’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)(acac))など有機金属イリジウム錯体の他、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)(Phen))のような希土類金属錯体が挙げられる。上述した中でも、ピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、信頼性や発光効率にも際だって優れるため、特に好ましい。
【0133】
また、黄色または赤色の波長領域に発光ピークを有する物質としては、例えば、(ジイソブチリルメタナト)ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト]イリジウム(III)(略称:Ir(5mdppm)(dibm))、ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:Ir(5mdppm)(dpm))、ビス[4,6-ジ(ナフタレン-1-イル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:Ir(d1npm)(dpm))のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)(acac))、ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)(dpm))、ビス{4,6-ジメチル-2-[3-(3,5-ジメチルフェニル)-5-フェニル-2-ピラジニル-κN]フェニル-κC}(2,6-ジメチル-3,5-ヘプタンジオナト-κO,O’)イリジウム(III)(略称:[Ir(dmdppr-P)(dibm)])、ビス{4,6-ジメチル-2-[5-(4-シアノ-2,6-ジメチルフェニル)-3-(3,5-ジメチルフェニル)-2-ピラジニル-κN]フェニル-κC}(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト-κO,O’)イリジウム(III)(略称:[Ir(dmdppr-dmCP)(dpm)])、(アセチルアセトナト)ビス[2,3-ビス(4-フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)(acac))のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス(1-フェニルイソキノリナト-N,C’)イリジウム(III)(略称:Ir(piq))、ビス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)(acac))のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)のような白金錯体や、トリス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM) (Phen))、トリス[1-(2-テノイル)-3,3,3-トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)(Phen))のような希土類金属錯体が挙げられる。上述した中でも、ピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、信頼性や発光効率にも際だって優れるため、特に好ましい。また、ピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、色度の良い赤色発光が得られるため、本発明の一態様に係る発光素子に好適に用いることができる。
【0134】
発光層130に含まれる発光材料としては、三重項励起エネルギーを発光に変換できる材料であれば好ましい。該三重項励起エネルギーを発光に変換できる材料としては、燐光性化合物の他に、熱活性化遅延蛍光(Thermally activated delayed fluorescence:TADF)材料が挙げられる。したがって、燐光性化合物と記載した部分に関しては、熱活性化遅延蛍光材料と読み替えても構わない。なお、熱活性化遅延蛍光材料とは、三重項励起エネルギー準位と一重項励起エネルギー準位との差が小さく、逆項間交差によって三重項励起状態から一重項励起状態へエネルギーを変換する機能を有する材料である。そのため、三重項励起状態をわずかな熱エネルギーによって一重項励起状態にアップコンバート(逆項間交差)が可能で、一重項励起状態からの発光(蛍光)を効率よく呈することができる。また、熱活性化遅延蛍光が効率良く得られる条件としては、三重項励起エネルギー準位と一重項励起エネルギー準位のエネルギー差が好ましくは0eVより大きく0.2eV以下、さらに好ましくは0eVより大きく0.1eV以下であることが挙げられる。なお、TADF材料は発光材料としてだけではなく、発光層のホスト材料としても用いることができる。
【0135】
熱活性化遅延蛍光材料が、一種類の材料から構成される場合、例えば以下の材料を用いることができる。
【0136】
まず、フラーレンやその誘導体、プロフラビン等のアクリジン誘導体、エオシン等が挙げられる。また、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、白金(Pt)、インジウム(In)、もしくはパラジウム(Pd)等を含む金属含有ポルフィリンが挙げられる。該金属含有ポルフィリンとしては、例えば、プロトポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(Proto IX))、メソポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(Meso IX))、ヘマトポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF (Hemato IX))、コプロポルフィリンテトラメチルエステル-フッ化スズ錯体(SnF(Copro III-4Me))、オクタエチルポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(OEP))、エチオポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(Etio I))、オクタエチルポルフィリン-塩化白金錯体(PtClOEP)等が挙げられる。
【0137】
また、一種の材料から構成される熱活性化遅延蛍光材料としては、π電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有する複素環化合物も用いることができる。具体的には、2-(ビフェニル-4-イル)-4,6-ビス(12-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール-11-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:PIC-TRZ)、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PCCzPTzn)、2-[4-(10H-フェノキサジン-10-イル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PXZ-TRZ)、3-[4-(5-フェニル-5,10-ジヒドロフェナジン-10-イル)フェニル]-4,5-ジフェニル-1,2,4-トリアゾール(略称:PPZ-3TPT)、3-(9,9-ジメチル-9H-アクリジン-10-イル)-9H-キサンテン-9-オン(略称:ACRXTN)、ビス[4-(9,9-ジメチル-9,10-ジヒドロアクリジン)フェニル]スルホン(略称:DMAC-DPS)、10-フェニル-10H,10’H-スピロ[アクリジン-9,9’-アントラセン]-10’-オン(略称:ACRSA)等が挙げられる。該複素環化合物は、π電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有するため、電子輸送性及び正孔輸送性が高く、好ましい。中でも、π電子不足型複素芳香環を有する骨格のうち、ジアジン骨格(ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格)、またはトリアジン骨格は、安定で信頼性が良好なため、好ましい。また、π電子過剰型複素芳香環を有する骨格の中でも、アクリジン骨格、フェノキサジン骨格、チオフェン骨格、フラン骨格、及びピロール骨格は、安定で信頼性が良好なため、当該骨格の中から選ばれるいずれか一つまたは複数を有することが、好ましい。なお、ピロール骨格としては、インドール骨格、カルバゾール骨格、及び3-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール骨格、が特に好ましい。なお、π電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環とが直接結合した物質は、π電子過剰型複素芳香環のドナー性とπ電子不足型複素芳香環のアクセプター性が共に強く、一重項励起状態のエネルギー準位と三重項励起状態のエネルギー準位との差が小さくなるため、特に好ましい。
【0138】
また、発光層130において、有機化合物132および発光性材料131以外の材料を有していても良い。
【0139】
発光層130に用いることが可能な材料としては、特に限定はないが、例えば、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、ジベンゾ[g,p]クリセン誘導体等の縮合多環芳香族化合物が挙げられ、具体的には、9,10-ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、6,12-ジメトキシ-5,11-ジフェニルクリセン、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、9,9’-ビアントリル(略称:BANT)、9,9’-(スチルベン-3,3’-ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS)、9,9’-(スチルベン-4,4’-ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS2)、1,3,5-トリ(1-ピレニル)ベンゼン(略称:TPB3)などを挙げることができる。また、これら及び公知の物質の中から、上記発光性材料131の励起エネルギー準位より高い一重項励起エネルギー準位または三重項励起エネルギー準位を有する物質を、一種もしくは複数種選択して用いればよい。
【0140】
また、例えば、オキサジアゾール誘導体等の複素芳香族骨格を有する化合物を発光層130に用いることができる。具体的には、例えば、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)、4,4’-ビス(5-メチルベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン(略称:BzOs)などの複素環化合物が挙げられる。
【0141】
また、複素環を有する金属錯体(例えば亜鉛及びアルミニウム系金属錯体)などを発光層130に用いることができる。例えば、キノリン配位子、ベンゾキノリン配位子、オキサゾール配位子、あるいはチアゾール配位子を有する金属錯体が挙げられる。具体的には、例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq3)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq2)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等が挙げられる。また、この他ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などのオキサゾール系、またはチアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。
【0142】
なお、発光層130は2層以上の複数層でもって構成することもできる。例えば、第1の発光層と第2の発光層を正孔輸送層側から順に積層して発光層130とする場合、第1の発光層のホスト材料として正孔輸送性を有する物質を用い、第2の発光層のホスト材料として電子輸送性を有する物質を用いる構成などがある。また、第1の発光層と第2の発光層とが有する発光材料は、同じ材料であっても異なる材料であってもよく、同じ色の発光を呈する機能を有する材料であっても、異なる色の発光を呈する機能を有する材料であってもよい。2層の発光層に、互いに異なる色の発光を呈する機能を有する発光材料をそれぞれ用いることで、複数の発光を同時に得ることができる。特に、2層の発光層が呈する発光により、白色になるよう、各発光層に用いる発光材料を選択すると好ましい。
【0143】
なお、発光層130は、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法、グラビア印刷等の方法で形成することができる。また、上述した材料の他、量子ドットなどの無機化合物または高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を有してもよい。
【0144】
≪正孔注入層≫
正孔注入層111は、正孔注入層111と一対の電極の一方(電極101または電極102)の界面におけるホール注入障壁を低減することでホール注入を促進する機能を有し、例えば遷移金属酸化物、フタロシアニン誘導体、あるいは芳香族アミンなどによって形成される。遷移金属酸化物としては、モリブデン酸化物やバナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物などが挙げられる。フタロシアニン誘導体としては、フタロシアニンや金属フタロシアニンなどが挙げられる。芳香族アミンとしてはベンジジン誘導体やフェニレンジアミン誘導体などが挙げられる。ポリチオフェンやポリアニリンなどの高分子化合物を用いることもでき、例えば自己ドープされたポリチオフェンであるポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)などがその代表例である。
【0145】
正孔注入層111として、正孔輸送性材料と、これに対して電子受容性を示す材料の複合材料を有する層を用いることもできる。あるいは、電子受容性を示す材料を含む層と正孔輸送性材料を含む層の積層を用いても良い。これらの材料間では定常状態、あるいは電界存在下において電荷の授受が可能である。電子受容性を示す材料としては、キノジメタン誘導体やクロラニル誘導体、ヘキサアザトリフェニレン誘導体などの有機アクセプターを挙げることができる。具体的には、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロキノジメタン(略称:F4-TCNQ)、クロラニル、2,3,6,7,10,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT-CN)等の電子吸引基(ハロゲン基やシアノ基)を有する化合物である。また、遷移金属酸化物、例えば第4族から第8族金属の酸化物を用いることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムなどである。中でも酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0146】
正孔輸送性材料としては、電子よりも正孔の輸送性の高い材料を用いることができ、1×10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有する材料であることが好ましい。具体的には、発光層130に用いることができる正孔輸送性材料として挙げた芳香族アミン、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、スチルベン誘導体などを用いることができる。また、該正孔輸送性材料は高分子化合物であっても良い。
【0147】
また、正孔輸送性材料として他には芳香族炭化水素が挙げられ、例えば、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、2-tert-ブチル-9,10-ジ(1-ナフチル)アントラセン、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2-tert-ブチル-9,10-ビス(4-フェニルフェニル)アントラセン(略称:t-BuDBA)、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10-ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2-tert-ブチルアントラセン(略称:t-BuAnth)、9,10-ビス(4-メチル-1-ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、2-tert-ブチル-9,10-ビス[2-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン、9,10-ビス[2-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7-テトラメチル-9,10-ジ(1-ナフチル)アントラセン、2,3,6,7-テトラメチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン、9,9’-ビアントリル、10,10’-ジフェニル-9,9’-ビアントリル、10,10’-ビス(2-フェニルフェニル)-9,9’-ビアントリル、10,10’-ビス[(2,3,4,5,6-ペンタフェニル)フェニル]-9,9’-ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11-テトラ(tert-ブチル)ペリレン等が挙げられる。また、この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。このように、1×10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有し、炭素数14乃至炭素数42である芳香族炭化水素を用いることがより好ましい。
【0148】
なお、芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有していてもよい。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’-ビス(2,2-ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
【0149】
また、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-II)、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P-II)、1,3,5-トリ(ジベンゾチオフェン-4-イル)ベンゼン(略称:DBT3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-III)、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-IV)、4-[3-(トリフェニレン-2-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:mDBTPTp-II)等のチオフェン化合物、フラン化合物、フルオレン化合物、トリフェニレン化合物、フェナントレン化合物等を用いることができる。上述した化合物の中でも、ピロール骨格、フラン骨格、チオフェン骨格、芳香族アミン骨格を有する化合物は、安定で信頼性が良好であり好ましい。また、当該骨格を有する化合物は、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。
【0150】
≪正孔輸送層≫
正孔輸送層112は正孔輸送性材料を含む層であり、正孔注入層111の材料として例示した正孔輸送性材料を使用することができる。正孔輸送層112は正孔注入層111に注入された正孔を発光層130へ輸送する機能を有するため、正孔注入層111のHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital、最高被占軌道ともいう)準位と同じ、あるいは近いHOMO準位を有することが好ましい。
【0151】
また、1×10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外の物質を用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層だけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層してもよい。
【0152】
≪電子輸送層≫
電子輸送層118は、電子注入層119を経て一対の電極の他方(電極101または電極102)から注入された電子を発光層130へ輸送する機能を有する。電子輸送性材料としては、正孔よりも電子の輸送性の高い材料を用いることができ、1×10-6cm/Vs以上の電子移動度を有する材料であることが好ましい。電子を受け取りやすい化合物(電子輸送性を有する材料)としては、含窒素複素芳香族化合物のようなπ電子不足型複素芳香族や金属錯体などを用いることができる。具体的には、発光層130に用いることができる電子輸送性材料として挙げたピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体などが挙げられる。また、1×10-6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質であることが好ましい。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層として用いても構わない。また、電子輸送層118は、単層だけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層してもよい。
【0153】
また、複素環を有する金属錯体が挙げられ、例えば、キノリン配位子、ベンゾキノリン配位子、オキサゾール配位子、あるいはチアゾール配位子を有する金属錯体が挙げられる。具体的には、例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq3)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq2)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等が挙げられる。また、この他ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などのオキサゾール系、またはチアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。
【0154】
また、電子輸送層118と発光層130との間に電子キャリアの移動を制御する層を設けても良い。これは上述したような電子輸送性の高い材料に、電子トラップ性の高い物質を少量添加した層であって、電子キャリアの移動を抑制することによって、キャリアバランスを調節することが可能となる。このような構成は、電子輸送性材料の電子輸送性が正孔輸送性材料の正孔輸送性と比べて著しく高い場合に発生する問題(例えば素子寿命の低下)の抑制に大きな効果を発揮する。
【0155】
≪電子注入層≫
電子注入層119は、電子注入層119と電極102の界面における電子注入障壁を低減することで電子注入を促進する機能を有し、例えば第1族金属、第2族金属、あるいはこれらの酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩などを用いることができる。また、先に示す電子輸送性材料と、これに対して電子供与性を示す材料の複合材料を用いることもできる。電子供与性を示す材料としては、第1族金属、第2族金属、あるいはこれらの酸化物などを挙げることができる。具体的には、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)、リチウム酸化物(LiOx)等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウム(ErF3)のような希土類金属化合物を用いることができる。また、電子注入層119にエレクトライドを用いてもよい。該エレクトライドとしては、例えば、カルシウムとアルミニウムの混合酸化物に電子を高濃度添加した物質等が挙げられる。また、電子注入層119に、電子輸送層118で用いることが出来る物質を用いても良い。
【0156】
また、電子注入層119に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発生するため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子輸送層118を構成する物質(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的には、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、ナトリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。
【0157】
なお、上述した、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、及び電子注入層は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法、グラビア印刷等の方法で形成することができる。また、上述した、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、及び電子注入層には、上述した材料の他、量子ドットなどの無機化合物や、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いてもよい。
【0158】
≪量子ドット≫
量子ドットは、数nmから数十nmサイズの半導体ナノ結晶であり、1×10個から1×10個程度の原子から構成されている。量子ドットはサイズに依存してエネルギーシフトするため、同じ物質から構成される量子ドットであっても、サイズによって発光波長が異なる。そのため、用いる量子ドットのサイズを変更することによって、容易に発光波長を変更することができる。
【0159】
また、量子ドットは、発光スペクトルのピーク幅が狭いため、色純度のよい発光を得ることができる。さらに、量子ドットの理論的な内部量子効率はほぼ100%であると言われており、蛍光発光を呈する有機化合物の25%を大きく上回り、燐光発光を呈する有機化合物と同等となっている。このことから、量子ドットを発光材料として用いることによって発光効率の高い発光素子を得ることができる。その上、無機材料である量子ドットは、その本質的な安定性にも優れているため、寿命の観点からも好ましい発光素子を得ることができる。
【0160】
量子ドットを構成する材料としては、第14族元素、第15族元素、第16族元素、複数の第14族元素からなる化合物、第4族から第14族に属する元素と第16族元素との化合物、第2族元素と第16族元素との化合物、第13族元素と第15族元素との化合物、第13族元素と第17族元素との化合物、第14族元素と第15族元素との化合物、第11族元素と第17族元素との化合物、酸化鉄類、酸化チタン類、カルコゲナイドスピネル類、各種半導体クラスターなどを挙げることができる。
【0161】
具体的には、セレン化カドミウム、硫化カドミウム、テルル化カドミウム、セレン化亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛、テルル化亜鉛、硫化水銀、セレン化水銀、テルル化水銀、砒化インジウム、リン化インジウム、砒化ガリウム、リン化ガリウム、窒化インジウム、窒化ガリウム、アンチモン化インジウム、アンチモン化ガリウム、リン化アルミニウム、砒化アルミニウム、アンチモン化アルミニウム、セレン化鉛、テルル化鉛、硫化鉛、セレン化インジウム、テルル化インジウム、硫化インジウム、セレン化ガリウム、硫化砒素、セレン化砒素、テルル化砒素、硫化アンチモン、セレン化アンチモン、テルル化アンチモン、硫化ビスマス、セレン化ビスマス、テルル化ビスマス、ケイ素、炭化ケイ素、ゲルマニウム、錫、セレン、テルル、ホウ素、炭素、リン、窒化ホウ素、リン化ホウ素、砒化ホウ素、窒化アルミニウム、硫化アルミニウム、硫化バリウム、セレン化バリウム、テルル化バリウム、硫化カルシウム、セレン化カルシウム、テルル化カルシウム、硫化ベリリウム、セレン化ベリリウム、テルル化ベリリウム、硫化マグネシウム、セレン化マグネシウム、硫化ゲルマニウム、セレン化ゲルマニウム、テルル化ゲルマニウム、硫化錫、セレン化錫、テルル化錫、酸化鉛、フッ化銅、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、酸化銅、セレン化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト、硫化コバルト、酸化鉄、硫化鉄、酸化マンガン、硫化モリブデン、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化タンタル、酸化チタン、酸化ジルコニウム、窒化ケイ素、窒化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、セレンと亜鉛とカドミウムの化合物、インジウムと砒素とリンの化合物、カドミウムとセレンと硫黄の化合物、カドミウムとセレンとテルルの化合物、インジウムとガリウムと砒素の化合物、インジウムとガリウムとセレンの化合物、インジウムとセレンと硫黄の化合物、銅とインジウムと硫黄の化合物、およびこれらの組合せなどを挙げることができるが、これらに限定されない。また、組成が任意の比率で表される、いわゆる合金型量子ドットを用いても良い。例えば、カドミウムとセレンと硫黄の合金型量子ドットは、元素の含有比率を変化させることで発光波長を変えることができるため、青色発光を得るには有効な手段の一つである。
【0162】
量子ドットの構造としては、コア型、コア-シェル型、コア-マルチシェル型などがあり、そのいずれを用いても良いが、コアを覆ってより広いバンドギャップを持つ別の無機材料でシェルを形成することによって、ナノ結晶表面に存在する欠陥やダングリングボンドの影響を低減することができる。これにより、発光の量子効率が大きく改善するためコア-シェル型やコア-マルチシェル型の量子ドットを用いることが好ましい。シェルの材料の例としては、硫化亜鉛や酸化亜鉛が挙げられる。
【0163】
また、量子ドットは、表面原子の割合が高いことから、反応性が高く、凝集が起こりやすい。そのため、量子ドットの表面には保護剤が付着している又は保護基が設けられていることが好ましい。当該保護剤が付着している又は保護基が設けられていることによって、凝集を防ぎ、溶媒への溶解性を高めることができる。また、反応性を低減させ、電気的安定性を向上させることも可能である。保護剤(又は保護基)としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類、ポリオキシエチレンn-オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn-ノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、トリ(n-ヘキシル)アミン、トリ(n-オクチル)アミン、トリ(n-デシル)アミン等の第3級アミン類、トリプロピルホスフィンオキシド、トリブチルホスフィンオキシド、トリヘキシルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド、トリデシルホスフィンオキシド等の有機リン化合物、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジエステル類、また、ピリジン、ルチジン、コリジン、キノリン類等の含窒素芳香族化合物等の有機窒素化合物、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン等のアミノアルカン類、ジブチルスルフィド等のジアルキルスルフィド類、ジメチルスルホキシドやジブチルスルホキシド等のジアルキルスルホキシド類、チオフェン等の含硫黄芳香族化合物等の有機硫黄化合物、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸、アルコール類、ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリエステル類、3級アミン変性ポリウレタン類、ポリエチレンイミン類等が挙げられる。
【0164】
量子ドットは、サイズが小さくなるに従いバンドギャップが大きくなるため、所望の波長の光が得られるように、そのサイズを適宜調整する。結晶のサイズが小さくなるにつれて、量子ドットの発光は青色側へ、つまり、高エネルギー側へシフトするため、量子ドットのサイズを変更させることにより、紫外領域、可視領域、赤外領域のスペクトルの波長領域にわたって、その発光波長を調整することができる。量子ドットのサイズ(直径)は、0.5nm乃至20nm、好ましくは1nm乃至10nmの範囲のものが通常良く用いられる。なお、量子ドットはそのサイズ分布が狭いほど、より発光スペクトルが狭線化し、色純度の良好な発光を得ることができる。また、量子ドットの形状は特に限定されず、球状、棒状、円盤状、その他の形状であってもよい。なお、棒状の量子ドットである量子ロッドは、指向性を有する光を呈する機能を有するため、量子ロッドを発光材料として用いることにより、より外部量子効率が良好な発光素子を得ることができる。
【0165】
ところで、有機EL素子では多くの場合、発光材料をホスト材料に分散し、発光材料の濃度消光を抑制することによって発光効率を高めている。ホスト材料は発光材料以上の一重項励起エネルギー準位または三重項励起エネルギー準位を有する材料であることが必要である。特に、青色燐光材料を発光材料に用いる場合、それ以上の三重項励起エネルギー準位を有し、且つ、寿命の観点で優れたホスト材料が必要であり、その開発は困難を極めている。ここで、量子ドットは、ホスト材料を用いずに量子ドットのみで発光層を構成しても発光効率を保つことができるため、この点でも寿命という観点から好ましい発光素子を得ることができる。量子ドットのみで発光層を形成する場合には、量子ドットはコア-シェル構造(コア-マルチシェル構造を含む)であることが好ましい。
【0166】
発光層の発光材料に量子ドットを用いる場合、当該発光層の膜厚は3nm乃至100nm、好ましくは10nm乃至100nmとし、発光層中の量子ドットの含有率は1乃至100体積%とする。ただし、量子ドットのみで発光層を形成することが好ましい。なお、当該量子ドットを発光材料としてホストに分散した発光層を形成する場合は、ホスト材料に量子ドットを分散させる、またはホスト材料と量子ドットとを適当な液媒体に溶解または分散させてウェットプロセス(スピンコート法、キャスト法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、インクジェット法、印刷法、スプレーコート法、カーテンコート法、ラングミュア・ブロジェット法など)により形成すればよい。燐光性の発光材料を用いた発光層については、上記ウェットプロセスの他、真空蒸着法も好適に利用することができる。
【0167】
ウェットプロセスに用いる液媒体としては、たとえば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の有機溶媒を用いることができる。
【0168】
≪一対の電極≫
電極101及び電極102は、発光素子の陽極または陰極としての機能を有する。電極101及び電極102は、金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物や積層体などを用いて形成することができる。
【0169】
電極101または電極102の一方は、光を反射する機能を有する導電性材料により形成されると好ましい。該導電性材料としては、アルミニウム(Al)またはAlを含む合金等が挙げられる。Alを含む合金としては、AlとL(Lは、チタン(Ti)、ネオジム(Nd)、ニッケル(Ni)、及びランタン(La)の一つまたは複数を表す)とを含む合金等が挙げられ、例えばAlとTi、またはAlとNiとLaを含む合金等である。アルミニウムは、抵抗値が低く、光の反射率が高い。また、アルミニウムは、地殻における存在量が多く、安価であるため、アルミニウムを用いることによる発光素子の作製コストを低減することができる。また、銀(Ag)、またはAgとN(Nは、イットリウム(Y)、Nd、マグネシウム(Mg)、イッテルビウム(Yb)、Al、Ti、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、スズ(Sn)、鉄(Fe)、Ni、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、または金(Au)の一つまたは複数を表す)とを含む合金等を用いても良い。銀を含む合金としては、例えば、銀とパラジウムと銅を含む合金、銀と銅を含む合金、銀とマグネシウムを含む合金、銀とニッケルを含む合金、銀と金を含む合金、銀とイッテルビウムを含む合金等が挙げられる。その他、タングステン、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、銅、チタンなどの遷移金属を用いることができる。
【0170】
また、発光層から得られる発光は、電極101及び電極102の一方または双方を通して取り出される。したがって、電極101または電極102の少なくとも一方は、光を透過する機能を有する導電性材料により形成されると好ましい。該導電性材料としては、可視光の透過率が40%以上100%以下、好ましくは60%以上100%以下であり、かつその抵抗率が1×10-2Ω・cm以下の導電性材料が挙げられる。
【0171】
また、電極101及び電極102は、光を透過する機能と、光を反射する機能と、を有する導電性材料により形成されても良い。該導電性材料としては、可視光の反射率が20%以上80%以下、好ましくは40%以上70%以下であり、かつその抵抗率が1×10 Ω・cm以下の導電性材料が挙げられる。例えば、導電性を有する金属、合金、導電性化合物などを1種又は複数種用いて形成することができる。具体的には、例えば、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide、以下ITO)、珪素または酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(略称:ITSO)、酸化インジウム-酸化亜鉛(Indium Zinc Oxide)、チタンを含有した酸化インジウム-錫酸化物、インジウム-チタン酸化物、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウムなどの金属酸化物を用いることができる。また、光を透過する程度(好ましくは、1nm以上30nm以下の厚さ)の金属薄膜を用いることができる。金属としては、例えば、Ag、またはAgとAl、AgとMg、AgとAu、AgとYbなどの合金等を用いることができる。
【0172】
なお、本明細書等において、光を透過する機能を有する材料は、可視光を透過する機能を有し、且つ導電性を有する材料であればよく、例えば上記のようなITOに代表される酸化物導電体に加えて、酸化物半導体、または有機物を含む有機導電体を含む。有機物を含む有機導電体としては、例えば、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料、有機化合物と電子受容体(アクセプター)とを混合してなる複合材料等が挙げられる。また、グラフェンなどの無機炭素系材料を用いても良い。また、当該材料の抵抗率としては、好ましくは1×10Ω・cm以下、さらに好ましくは1×10Ω・cm以下である。
【0173】
また、上記の材料の複数を積層することによって電極101及び電極102の一方または双方を形成してもよい。
【0174】
また、光取り出し効率を向上させるため、光を透過する機能を有する電極と接して、該電極より屈折率の高い材料を形成してもよい。このような材料としては、可視光を透過する機能を有する材料であればよく、導電性を有する材料であっても有さない材料であってもよい。例えば、上記のような酸化物導電体に加えて、酸化物半導体、有機物が挙げられる。有機物としては、例えば、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、または電子注入層に例示した材料が挙げられる。また、無機炭素系材料や光が透過する程度の金属薄膜も用いることができ、数nm乃至数十nmの層を複数積層させてもよい。
【0175】
電極101または電極102が陰極としての機能を有する場合には、仕事関数が小さい(3.8eV以下)材料を有することが好ましい。例えば、元素周期表の第1族又は第2族に属する元素(リチウム、ナトリウム、セシウム等のアルカリ金属、カルシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属、マグネシウム等)、これら元素を含む合金(例えば、AgとMg、AlとLi)、ユーロピウム(Eu)、Yb等の希土類金属、これら希土類金属を含む合金、アルミニウム、銀を含む合金等を用いることができる。
【0176】
また、電極101または電極102を陽極として用いる場合、仕事関数の大きい(4.0eV以上)材料を用いることが好ましい。
【0177】
また、電極101及び電極102は、光を反射する機能を有する導電性材料と、光を透過する機能を有する導電性材料との積層としてもよい。その場合、電極101及び電極102は、各発光層からの所望の波長の光を共振させ、所望の波長の光を強めることができるように、光学距離を調整する機能を有することができるため好ましい。
【0178】
電極101及び電極102の成膜方法は、スパッタリング法、蒸着法、印刷法、塗布法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、CVD法、パルスレーザー堆積法、ALD(Atomic Layer Deposition)法等を適宜用いることができる。
【0179】
≪基板≫
また、発光素子150、ガラス、プラスチックなどからなる基板上に作製すればよい。基板上に作製する順番としては、電極101側から順に積層しても、電極102側から順に積層しても良い。
【0180】
なお、基板200及び基板210としては、例えばガラス、石英、又はプラスチックなどを用いることができる。また可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板とは、曲げることができる(フレキシブル)基板のことであり、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、からなるプラスチック基板等が挙げられる。また、フィルム、無機蒸着フィルムなどを用いることもできる。なお、発光素子、及び光学素子の作製工程において支持体として機能するものであれば、これら以外のものでもよい。あるいは、発光素子、及び光学素子を保護する機能を有するものであればよい。
【0181】
例えば、発光素子150としては様々な基板を用いて発光素子を形成することが出来る。基板の種類は、特に限定されない。その基板の一例としては、半導体基板(例えば単結晶基板又はシリコン基板)、SOI基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、金属基板、ステンレス・スチル基板、ステンレス・スチル・ホイルを有する基板、タングステン基板、タングステン・ホイルを有する基板、可撓性基板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含む紙、又は基材フィルムなどがある。ガラス基板の一例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、又はソーダライムガラスなどがある。可撓性基板、貼り合わせフィルム、基材フィルムなどの一例としては、以下が挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に代表されるプラスチックがある。または、一例としては、アクリル等の樹脂などがある。または、一例としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、又はポリ塩化ビニルなどがある。または、一例としては、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、エポキシ、無機蒸着フィルム、又は紙類などがある。
【0182】
また、基板として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、発光素子を形成してもよい。または、基板と発光素子との間に剥離層を設けてもよい。剥離層は、その上に発光素子を一部あるいは全部完成させた後、基板より分離し、他の基板に転載するために用いることができる。その際、耐熱性の劣る基板や可撓性の基板にも発光素子を転載できる。なお、上述の剥離層には、例えば、タングステン膜と酸化シリコン膜との無機膜の積層構造の構成や、基板上にポリイミド等の樹脂膜が形成された構成等を用いることができる。
【0183】
つまり、ある基板を用いて発光素子を形成し、その後、別の基板に発光素子を転置し、別の基板上に発光素子を配置してもよい。発光素子が転置される基板の一例としては、上述した基板に加え、セロファン基板、石材基板、木材基板、布基板(天然繊維(絹、綿、麻)、合成繊維(ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル)若しくは再生繊維(アセテート、キュプラ、レーヨン、再生ポリエステル)などを含む)、皮革基板、又はゴム基板などがある。これらの基板を用いることにより、壊れにくい発光素子、耐熱性の高い発光素子、軽量化された発光素子、または薄型化された発光素子とすることができる。
【0184】
また、上述した基板上に、例えば電界効果トランジスタ(FET)を形成し、FETと電気的に接続された電極上に発光素子150を作製してもよい。これにより、FETによって発光素子150の駆動を制御するアクティブマトリクス型の発光装置を作製できる。
【0185】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、本発明の一態様の分析方法を適用することができる、実施の形態1に示す発光素子の構成と異なる構成の発光素子、及び当該発光素子の発光機構について、図8(A)乃至図8(C)を用いて、以下説明を行う。なお、図8(A)、図2(B)において、図2(A)乃至図2(C)に示す符号と同様の機能を有する箇所には、同様のハッチパターンとし、符号を省略する場合がある。また、同様の機能を有する箇所には、同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する場合がある。
【0186】
<発光素子の構成例1>
図8(A)は、発光素子250の断面模式図である。
【0187】
図8(A)に示す発光素子250は、一対の電極(電極101及び電極102)の間に、複数の発光ユニット(発光ユニット106及び発光ユニット110)を有する。複数の発光ユニットのうちいずれか一つの発光ユニットは、図2(A)に示した、EL層100と同様な構成を有すると好ましい。つまり、図2(A)で示した発光素子150は、1つの発光ユニットを有し、図8(A)で示した発光素子250は、複数の発光ユニットを有すると好ましい。なお、発光素子250において、電極101が陽極として機能し、電極102が陰極として機能するとして、以下説明するが、発光素子250の構成としては、逆であっても構わない。
【0188】
また、図8(A)に示す発光素子250において、発光ユニット106と発光ユニット110とが積層されており、発光ユニット106と発光ユニット110との間には電荷発生層115が設けられる。なお、発光ユニット106と発光ユニット110は、同じ構成でも異なる構成でもよい。例えば、発光ユニット110に、EL層100と同様な構成を用いると好ましい。
【0189】
また、発光素子250は、発光層120と、発光層170と、を有する。また、発光ユニット106は、発光層170の他に、正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送層113、及び電子注入層114を有する。また、発光ユニット110は、発光層120の他に、正孔注入層116、正孔輸送層117、電子輸送層118、及び電子注入層119を有する。
【0190】
電荷発生層115は、正孔輸送性材料に電子受容体であるアクセプター性物質が添加された構成であっても、電子輸送性材料に電子供与体であるドナー性物質が添加された構成であってもよい。また、これらの両方の構成が積層されていても良い。
【0191】
電荷発生層115に、有機化合物とアクセプター性物質の複合材料が含まれる場合、該複合材料には実施の形態1に示す正孔注入層111に用いることができる複合材料を用いればよい。有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール化合物、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、有機化合物としては、正孔移動度が1×10-6cm/Vs以上であるものを適用することが好ましい。ただし、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。有機化合物とアクセプター性物質の複合材料は、キャリア注入性、キャリア輸送性に優れているため、低電圧駆動、低電流駆動を実現することができる。なお、発光ユニットの陽極側の面が電荷発生層115に接している場合は、電荷発生層115が該発光ユニットの正孔注入層または正孔輸送層の役割も担うことができるため、該発光ユニットには正孔注入層または正孔輸送層を設けない構成であっても良い。あるいは、発光ユニットの陰極側の面が電荷発生層115に接している場合は、電荷発生層115が該発光ユニットの電子注入層または電子輸送層の役割も担うことができるため、該発光ユニットには電子注入層または電子輸送層を設けない構成であっても良い。
【0192】
なお、電荷発生層115は、有機化合物とアクセプター性物質の複合材料を含む層と他の材料により構成される層を組み合わせた積層構造として形成してもよい。例えば、有機化合物とアクセプター性物質の複合材料を含む層と、電子供与性物質の中から選ばれた一の化合物と電子輸送性の高い化合物とを含む層とを組み合わせて形成してもよい。また、有機化合物とアクセプター性物質の複合材料を含む層と、透明導電膜を含む層とを組み合わせて形成してもよい。
【0193】
なお、発光ユニット106と発光ユニット110とに挟まれる電荷発生層115は、電極101と電極102とに電圧を印加したときに、一方の発光ユニットに電子を注入し、他方の発光ユニットに正孔を注入するものであれば良い。例えば、図8(A)において、電極101の電位の方が電極102の電位よりも高くなるように電圧を印加した場合、電荷発生層115は、発光ユニット106に電子を注入し、発光ユニット110に正孔を注入する。
【0194】
なお、電荷発生層115は、光取出し効率の点から、可視光に対して透光性(具体的には、電荷発生層115に対する可視光の透過率が40%以上)を有することが好ましい。また、電荷発生層115は、一対の電極(電極101及び電極102)よりも低い導電率であっても機能する。
【0195】
上述した材料を用いて電荷発生層115を形成することにより、発光層が積層された場合における駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0196】
また、図8(A)においては、2つの発光ユニットを有する発光素子について説明したが、3つ以上の発光ユニットを積層した発光素子についても、同様に適用することが可能である。発光素子250に示すように、一対の電極間に複数の発光ユニットを電荷発生層で仕切って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度発光を可能とし、さらに長寿命な発光素子を実現できる。また、消費電力が低い発光素子を実現することができる。
【0197】
また、発光ユニット110の発光層が燐光性化合物を有すると好適である。なお、複数のユニットのうち、少なくとも一つのユニットに、実施の形態1で示した構成を適用することによって、色純度が高く、発光効率の高い発光素子および駆動後も色変化が少ない発光素子を提供することができる。
【0198】
本発明に係る分析方法は上述のような複数の発光ユニットを有する発光素子も高精度に分析することができる。
【0199】
発光ユニット110が有する発光層120は、図8(B)で示すように、ホスト材料121と、発光性材料122とを有する。また、ホスト材料121は、有機化合物121_1と、有機化合物121_2と、を有する。なお、発光層120が有する発光性材料122が燐光性化合物として、以下説明する。
【0200】
≪発光層120の発光機構≫
次に、発光層120の発光機構及び材料構成について、以下説明を行う。
【0201】
発光層120が有する、有機化合物121_1と、有機化合物121_2とは励起錯体を形成すると好ましい。
【0202】
有機化合物121_1と有機化合物121_2との組み合わせは、互いに励起錯体を形成することが可能な組み合わせであればよいが、一方が正孔輸送性を有する化合物であり、他方が電子輸送性を有する化合物であることが、より好ましい。
【0203】
発光層120における有機化合物121_1と、有機化合物121_2と、発光性材料122とのエネルギー準位の相関を図8(C)に示す。なお、図8(C)における表記及び符号は、以下の通りである。
・Host(121_1):有機化合物121_1(ホスト材料)
・Host(121_2):有機化合物121_2(ホスト材料)
・Guest(122):発光性材料122(燐光性化合物)
・SPH1:有機化合物121_1(ホスト材料)のS1準位
・TPH1:有機化合物121_1(ホスト材料)のT1準位
・SPH2:有機化合物121_2(ホスト材料)のS1準位
・TPH2:有機化合物121_2(ホスト材料)のT1準位
・TPG:発光性材料122(燐光性化合物)のT1準位
・SPE:励起錯体のS1準位
・TPE:励起錯体のT1準位
【0204】
有機化合物121_1及び有機化合物121_2は、一方がホールを、他方が電子を受け取ることで速やかに励起錯体を形成する(図8(C) ルートE参照)。あるいは、一方が励起状態となると、速やかに他方と相互作用することで励起錯体を形成する。励起錯体の励起エネルギー準位(SPEまたはTPE)は、励起錯体を形成するホスト材料(有機化合物121_1及び有機化合物121_2)のS1準位(SPH1及びSPH2)より低くなるため、より低い励起エネルギーでホスト材料121の励起状態を形成することが可能となる。これによって、発光素子の駆動電圧を下げることができる。
【0205】
ここで、有機化合物121_1及び有機化合物121_2及び励起錯体が有するS1準位に着目すると、図8に示すように、励起錯体のS1準位(SPE)は有機化合物121_1及び有機化合物121_2が有するS1準位(SPH1及びSPH2)よりも低い準位となる。よって、有機化合物121_1、有機化合物121_2及び励起錯体の発光スペクトルを測定した場合、励起錯体の発光スペクトルは有機化合物121_1及び有機化合物121_2から観測される発光スペクトルよりも長波長側に観測される。換言すると、有機化合物121_1及び有機化合物121_2の混合膜から有機化合物121_1及び有機化合物121_2から観測される発光スペクトルよりも長波長側に発光スペクトルが得られた場合、有機化合物121_1及び有機化合物121_2の混合膜が励起錯体を形成していると言える。
【0206】
そして、励起錯体の(SPE)と(TPE)の双方のエネルギーを、発光性材料122(燐光性化合物)のT1準位へ移動させて発光が得られる(図8(C) ルートE、E参照)。
【0207】
なお、励起錯体のT1準位(TPE)は、発光性材料122のT1準位(TPG)より大きいこと及び、励起錯体を形成する各有機化合物(有機化合物121_1および有機化合物121_2)のT1準位(TPH1およびTPH2)と同等か、より小さいことが好ましい。そうすることで、生成した励起錯体の一重項励起エネルギーおよび三重項励起エネルギーを、励起錯体のS1準位(SPE)およびT1準位(TPE)から発光性材料122のT1準位(TPG)へ効率良くエネルギー移動することができる。
【0208】
また、有機化合物121_1と有機化合物121_2とが、効率よく励起錯体を形成するためには、有機化合物121_1および有機化合物121_2の一方のHOMO準位が他方のHOMO準位より高く、一方のLUMO準位が他方のLUMO準位より高いことが好ましい。
【0209】
また、有機化合物121_1と有機化合物121_2との組み合わせが、正孔輸送性を有する化合物と電子輸送性を有する化合物との組み合わせである場合、その混合比によってキャリアバランスを容易に制御することが可能となる。具体的には、正孔輸送性を有する化合物:電子輸送性を有する化合物=1:9から9:1(重量比)の範囲が好ましい。また、該構成を有することで、容易にキャリアバランスを制御することができることから、キャリア再結合領域の制御も簡便に行うことができる。
【0210】
なお、上記に示すルートE乃至Eの過程を、本明細書等においてExTET(Exciplex-Triplet Energy Transfer)と呼称する場合がある。別言すると、発光層120は、励起錯体から発光性材料122への励起エネルギーの供与がある。なお、この場合は必ずしもTPEからSPEへの逆項間交差効率が高い必要はなく、SPEからの発光量子収率が高い必要もないため、材料を幅広く選択することが可能となる。
【0211】
ExTETを利用することで、発光効率が高く信頼性の良い発光素子を得ることができる。
【0212】
なお、本実施の形態では、説明のため発光層120が1層の場合について例示したが、複数の発光層の積層構造であっても良い。この場合、全ての燐光発光層にExTETを適用することが好ましい。そうすることで、発光効率が高く、信頼性の良い発光素子を得ることができる。
【0213】
<エネルギー移動機構>
次に、ホスト材料121と、発光性材料122との分子間のエネルギー移動過程の支配因子について説明する。分子間のエネルギー移動の機構としては、フェルスター機構(双極子-双極子相互作用)と、デクスター機構(電子交換相互作用)の2つの機構が提唱されている。ここでは、ホスト材料121と発光性材料122との分子間のエネルギー移動過程について説明するが、ホスト材料121が励起錯体の場合も同様である。
【0214】
≪フェルスター機構≫
フェルスター機構では、エネルギー移動に、分子間の直接的接触を必要とせず、ホスト材料121及び発光性材料122間の双極子振動の共鳴現象を通じてエネルギー移動が起こる。双極子振動の共鳴現象によってホスト材料121が発光性材料122にエネルギーを受け渡し、励起状態のホスト材料121が基底状態になり、基底状態の発光性材料122が励起状態になる。なお、フェルスター機構の速度定数kh*→gを数式(1)に示す。
【0215】
【数1】
【0216】
数式(1)において、νは、振動数を表し、f’(ν)は、ホスト材料121の規格化された発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペクトル)を表し、ε (ν)は、発光性材料122のモル吸光係数を表し、Nは、アボガドロ数を表し、nは、媒体の屈折率を表し、Rは、ホスト材料121と発光性材料122の分子間距離を表し、τは、実測される励起状態の寿命(蛍光寿命や燐光寿命)を表し、cは、光速を表し、φは、発光量子収率(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光量子収率、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光量子収率)を表し、Kは、ホスト材料121と発光性材料122の遷移双極子モーメントの配向を表す係数(0から4)である。なお、ランダム配向の場合はK=2/3である。
【0217】
≪デクスター機構≫
デクスター機構では、ホスト材料121と発光性材料122が軌道の重なりを生じる接触有効距離に近づき、励起状態のホスト材料121の電子と、基底状態の発光性材料122との電子の交換を通じてエネルギー移動が起こる。なお、デクスター機構の速度定数k *→gを数式(2)に示す。
【0218】
【数2】
【0219】
数式(2)において、hは、プランク定数であり、Kは、エネルギーの次元を持つ定数であり、νは、振動数を表し、f’(ν)は、ホスト材料121の規格化された発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペクトル)を表し、ε’(ν)は、発光性材料122の規格化された吸収スペクトルを表し、Lは、実効分子半径を表し、Rは、ホスト材料121と発光性材料122の分子間距離を表す。
【0220】
ここで、ホスト材料121から発光性材料122へのエネルギー移動効率φETは、数式(3)で表される。kは、ホスト材料121の発光過程(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光)の速度定数を表し、kは、ホスト材料121の非発光過程(熱失活や項間交差)の速度定数を表し、τは、実測されるホスト材料121の励起状態の寿命を表す。
【0221】
【数3】
【0222】
数式(3)より、エネルギー移動効率φETを高くするためには、エネルギー移動の速度定数kh*→gを大きくし、他の競合する速度定数k+k(=1/τ)が相対的に小さくなれば良いことがわかる。
【0223】
≪エネルギー移動を高めるための概念≫
フェルスター機構によるエネルギー移動においては、エネルギー移動効率φETは、量子収率φ(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じている場合は蛍光量子収率、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光量子収率)が高い方が良い。また、ホスト材料121の発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル)と発光性材料122の吸収スペクトル(一重項基底状態から三重項励起状態への遷移に相当する吸収)との重なりが大きいことが好ましい。さらに、発光性材料122のモル吸光係数も高い方が好ましい。このことは、ホスト材料121の発光スペクトルと、発光性材料122の最も長波長側に現れる吸収帯とが重なることを意味する。
【0224】
また、デクスター機構によるエネルギー移動において、速度定数kh*→gを大きくするにはホスト材料121の発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペクトル)と発光性材料122の吸収スペクトル(一重項基底状態から三重項励起状態への遷移に相当する吸収)との重なりが大きい方が良い。したがって、エネルギー移動効率の最適化は、ホスト材料121の発光スペクトルと、発光性材料122の最も長波長側に現れる吸収帯とが重なることによって実現される。
【0225】
なお、ホスト材料121から発光性材料122へのエネルギー移動と同様に、励起錯体から発光性材料122へのエネルギー移動過程についても、フェルスター機構、及びデクスター機構の双方の機構によるエネルギー移動が生じる。
【0226】
上述の通り、ホスト材料121の発光スペクトルと、発光性材料122の最も長波長側に現れる吸収帯とが重なりが、ホスト材料121から発光性材料122へのエネルギー移動には重要である。
【0227】
ここで、上述の通りExTETは励起錯体から発光性材料122への励起エネルギーの移動がある。すなわち、ExTETが生じるには、励起錯体の発光スペクトルと発光性材料122の最も長波長側に現れる吸収帯(発光性材料122が燐光性材料の場合、三重項MLCT(Metal to Ligand Charge Transfer)遷移の吸収帯)が重なる必要がある。別言すると、発光層において、励起錯体の発光スペクトルと発光性材料122の最も長波長側に現れる吸収帯が重なるとExTETが生じると言える。つまり、励起錯体の発光スペクトルと発光性材料122の吸収スペクトルを分析することによって、ExTETが生じているかを分析することができる。
【0228】
以上、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0229】
<有機半導体素子の分析例6>
次に、実施の形態1に示した分析例と異なる分析例について、図35及び図36を用いて、以下説明を行う。本分析例では、図35に示す、キャップ膜420を有する発光素子の分析方法について以下説明する。図36は本発明の一態様である有機化合物の分析方法のフローチャートである。
【0230】
なお、図35において、図2(A)または図8(A)に示す符号と同様の機能を有する箇所には、同様のハッチパターンとし、符号を省略する場合がある。また、同様の機能を有する箇所には、同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する場合がある。
【0231】
<発光素子の構成例2>
図35に示す発光素子252は、一対の基板(基板400及び基板410)の間に一対の電極(電極101及び電極102)を有し、該一対の電極の間に、複数の発光ユニット(発光ユニット106及び発光ユニット110)を有する。なお、発光素子252において、電極101が陽極として機能し、電極102が陰極として機能するとして、以下説明するが、発光素子252の構成としては、逆であっても構わない。
【0232】
また、図35に示す発光素子252において、発光ユニット106と発光ユニット110とが積層されており、発光ユニット106と発光ユニット110との間には電荷発生層115が設けられる。なお、発光ユニット106と発光ユニット110は、同じ構成でも異なる構成でもよい。例えば、発光ユニット110に、EL層100と同様な構成を用いると好ましい。また、発光素子252は電極102と基板410の間にキャップ膜420を有する。
【0233】
キャップ膜420は電極102から光が取り出される際の屈折率差を低減する機能を有するため、発光素子252の光取出し効率を向上させることができる。
【0234】
また、発光素子252は、発光層120と、発光層170と、を有する。また、発光ユニット106は、発光層170の他に、正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送層113、及び電子注入層114を有する。また、発光ユニット110は、発光層120の他に、正孔注入層116、正孔輸送層117、電子輸送層118、及び電子注入層119を有する。
【0235】
本分析例ではまず、上述の通り、図3及び図36に示すS1の工程を行うことによって、分析対象である発光素子252の基板410を剥離する。
【0236】
続いて、図36(S26)の工程を行うことで、電極102と基板410との間に設けられたキャップ膜420に含まれる有機化合物について分析することができる。なお、電極102上にキャップ膜420以外の膜が成膜されている場合、該膜の情報も得ることができる。すなわち、図36(S26)の工程を行うことで、電極102上に成膜された層に含まれる有機化合物を分析することができる。
【0237】
図36(S26)の工程を行うことで、電極102上に成膜された層に含まれる有機化合物の質量電荷比のデータ(図36(D16))を得ることができる。図36中、D1、D2及びD16のデータを解析することで、発光素子252の各層に含まれる有機化合物を分析することができる。なお、図3及び図36に示すS4に用いるサンプルは、電極102すなわち、S1の工程によって露出した電極を剥離する必要が無い。該電極を剥離せずにS4以降の工程を進めることで、工程数の削減を行うことができる。また、該電極を剥離せずにS4における混合溶液を作製することによって、該電極と基板の間に成膜された層がある場合(例えばキャップ膜420)、該膜の分析も同時に行うことができる。該混溶液は有機溶媒を用いるため、電極のような金属や金属酸化物からなる材料は溶解しないが、ろ過やデカンテーションによって、該混合溶液から取り除くことが可能である。なお、S4に用いるサンプルは該電極を剥離したサンプルも用いることができる。
【0238】
なお、図36中、S1乃至S8、D1、D2及びM1は図3に示した各工程及びデータ等と同様である。すなわち、S2の工程を行う前にS26の工程を行うことで、さらに電極102上に成膜された層に含まれる有機化合物の分析を行うことができる。なお、図36に図示していないが、図3と同様に、S3に用いたサンプルをS4のサンプルとして用いることもできる。
【0239】
また、S1の工程において、基板410と電極102とが、強く接着されている場合、基板410及び電極102が同時に剥離されてしまう場合がある。この場合、さらに基板410から電極102を剥離することで、電極102上に成膜された層に含まれる有機化合の分析を行うことができる。
【0240】
以上、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0241】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の分析方法を用いることができる発光素子の例について、図9及び図10を用いて以下に説明する。
【0242】
<発光装置の構成例1>
図9(A)(B)は、本発明の一態様の分析方法を用いることができる発光素子の断面図である。なお、図9(A)(B)において、図2(A)に示す符号と同様の機能を有する箇所には、同様のハッチパターンとし、符号を省略する場合がある。また、同様の機能を有する箇所には、同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する場合がある。
【0243】
図9(A)(B)に示す発光素子260a及び発光素子260bは、基板200側に光を取り出す下面射出(ボトムエミッション)型の発光素子であってもよく、基板200と反対方向に光を取り出す上面射出(トップエミッション)型の発光素子であってもよい。なお、本発明の一態様はこれに限定されず、発光素子が呈する光を基板200の上方および下方の双方に取り出す両面射出(デュアルエミッション)型の発光素子であっても良い。
【0244】
発光素子260a及び発光素子260bが、ボトムエミッション型である場合、電極101は、光を透過する機能を有することが好ましい。また、電極102は、光を反射する機能を有することが好ましい。あるいは、発光素子260a及び発光素子260bが、トップエミッション型である場合、電極101は、光を反射する機能を有することが好ましい。また、電極102は、光を透過する機能を有することが好ましい。
【0245】
発光素子260a及び発光素子260bは、基板200上に電極101と、電極102とを有する。また、電極101と電極102との間に、発光層123Bと、発光層123Gと、発光層123Rと、を有する。また、正孔注入層111と、正孔輸送層112と、電子輸送層113と、電子注入層114と、を有する。
【0246】
また、発光素子260bは、電極101の構成の一部として、導電層101aと、導電層101a上の導電層101bと、導電層101a下の導電層101cとを有する。すなわち、発光素子260bは、導電層101aが、導電層101bと、導電層101cとで挟持された電極101の構成を有する。
【0247】
発光素子260bにおいて、導電層101bと、導電層101cとは、異なる材料で形成されてもよく、同じ材料で形成されても良い。導電層101bと、導電層101cが、同じ導電性材料で形成される場合、電極101の形成過程におけるエッチング工程によるパターン形成が容易になるため好ましい。
【0248】
なお、発光素子260bにおいて、導電層101bまたは導電層101cにおいて、いずれか一方のみを有する構成としてもよい。
【0249】
なお、電極101が有する導電層101a、101b、及び101cは、それぞれ実施の形態1で示した電極101または電極102と同様の構成および材料を用いることができる。
【0250】
図9(A)(B)においては、電極101と電極102とで挟持された領域221B、領域221G、及び領域221R、の間に隔壁145を有する。隔壁145は、絶縁性を有する。隔壁145は、電極101の端部を覆い、該電極と重なる開口部を有する。隔壁145を設けることによって、各領域の基板200上の電極101を、それぞれ島状に分離することが可能となる。
【0251】
なお、発光層123Bと、発光層123Gとは、隔壁145と重なる領域において、互いに重なる領域を有していてもよい。また、発光層123Gと、発光層123Rとは、隔壁145と重なる領域において、互いに重なる領域を有していてもよい。また、発光層123Rと、発光層123Bとは、隔壁145と重なる領域において、互いに重なる領域を有していてもよい。
【0252】
隔壁145としては、絶縁性であればよく、無機材料または有機材料を用いて形成される。該無機材料としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等が挙げられる。該有機材料としては、例えば、アクリル樹脂、またはポリイミド樹脂等の感光性の樹脂材料が挙げられる。
【0253】
なお、酸化窒化シリコン膜とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多い膜を指し、好ましくは酸素が55原子%以上65原子%以下、窒素が1原子%以上20原子%以下、シリコンが25原子%以上35原子%以下、水素が0.1原子%以上10原子%以下の範囲で含まれる膜をいう。窒化酸化シリコン膜とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い膜を指し、好ましくは窒素が55原子%以上65原子%以下、酸素が1原子%以上20原子%以下、シリコンが25原子%以上35原子%以下、水素が0.1原子%以上10原子%以下の濃度範囲で含まれる膜をいう。
【0254】
また、発光層123R、発光層123G、発光層123Bは、それぞれ異なる色を呈する機能を有する発光材料を有していても良い。例えば、発光層123Rが赤色を呈する機能を有する発光材料を有することで、領域221Rは赤色の発光を呈し、発光層123Gが緑色を呈する機能を有する発光材料を有することで、領域221Gは緑色の発光を呈し、発光層123Bが青色を呈する機能を有する発光材料を有することで、領域221Bは青色の発光を呈する。このような構成を有する発光素子260aまたは発光素子260bを、発光装置の画素に用いることで、フルカラー表示が可能な発光装置を作製することができる。また、それぞれの発光層の膜厚は、同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0255】
なお、発光層123B、発光層123G、発光層123R、のいずれか一つまたは複数の発光層は、2層以上が積層された構成としても良い。
【0256】
なお、光を取り出す電極と重なる領域に、光学素子(例えば、カラーフィルタ、偏光板、反射防止膜等)を設けることで、発光素子260a及び発光素子260bの色純度を向上させることができる。そのため、発光素子260aまたは発光素子260bを有する発光装置の色純度を高めることができる。あるいは、発光素子260a及び発光素子260bの外光反射を低減することができる。そのため、発光素子260aまたは発光素子260bを有する発光装置のコントラスト比を高めることができる。
【0257】
特に光を取り出す方向にカラーフィルタを設けても良い。本発明の一態様に係る発光素子は上述のように高い色純度の光を効率良く取り出すことができるため、光を取り出す方向にカラーフィルタを設けることで、より色純度の高い光を取り出すことができる。具体的には、赤と緑のカラーフィルタをそれぞれ用いることにより、BT.2020規格の超高色域に対応するような、赤色の発光が、CIE1931色度座標における色度xが0.680より大きく0.720以下、色度yが0.260以上0.320以下、緑色の発光が、CIE1931色度座標における色度Xが0.130以上0.250以下、色度yが0.710より大きく0.810以下の領域の非常に色純度の高い光も効率良く取り出すことができる。
【0258】
本発明の一態様の分析方法は極めて微小領域においても発光素子が有する素子構造を分析することができる。本実施の形態で示した、領域221B、領域221G、及び領域221Rごとに、それぞれ用いられている層構造及び有機化合物を分析することができる。
【0259】
<発光装置の構成例2>
次に、図10(A)(B)に示す発光装置と異なる構成例について、図10(A)(B)を用いて、以下説明を行う。
【0260】
図10(A)(B)は、本発明の一態様の発光装置を示す断面図である。なお、図10(A)(B)において、図9(A)(B)に示す符号と同様の機能を有する箇所には、同様のハッチパターンとし、符号を省略する場合がある。また、同様の機能を有する箇所には、同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する場合がある。
【0261】
図10(A)(B)は、一対の電極間に、発光層を有する発光素子の構成例である。図10(A)に示す発光素子262aは、基板200と反対の方向に光を取り出す上面射出(トップエミッション)型の発光素子、図10(B)に示す発光素子262bは、基板200側に光を取り出す下面射出(ボトムエミッション)型の発光素子である。ただし、本発明の一態様はこれに限定されず、発光素子が呈する光を発光素子が形成される基板200の上方および下方の双方に取り出す両面射出(デュアルエミッション)型であっても良い。
【0262】
発光素子262a及び発光素子262bは、基板200上に電極101と、電極102と、電極103と、電極104とを有する。また、電極101と電極102との間、及び電極102と電極103との間、及び電極102と電極104との間に、少なくとも発光層170と、発光層190と、電荷発生層115とを有する。また、正孔注入層111と、正孔輸送層112と、電子輸送層113と、電子注入層114と、正孔注入層116と、正孔輸送層117と、電子輸送層118と、電子注入層119と、を有する。
【0263】
また、電極101は、導電層101aと、導電層101a上に接する導電層101bと、を有する。また、電極103は、導電層103aと、導電層103a上に接する導電層103bと、を有する。電極104は、導電層104aと、導電層104a上に接する導電層104bと、を有する。
【0264】
図10(A)に示す発光素子262a、及び図10(B)に示す発光素子262bは、電極101と電極102とで挟持された領域222B、電極102と電極103とで挟持された領域222G、及び電極102と電極104とで挟持された領域222R、の間に、隔壁145を有する。隔壁145は、絶縁性を有する。隔壁145は、電極101、電極103、及び電極104の端部を覆い、該電極と重なる開口部を有する。隔壁145を設けることによって、各領域の基板200上の該電極を、それぞれ島状に分離することが可能となる。
【0265】
また、電荷発生層115としては、正孔輸送性材料に電子受容体(アクセプター)が添加された材料、または電子輸送性材料に電子供与体(ドナー)が添加された材料により、形成することができる。なお、電荷発生層115の導電率が一対の電極と同程度に高い場合、電荷発生層115によって発生したキャリアが、隣接する画素に流れて、隣接する画素が発光してしまう場合がある。したがって、隣接する画素が不正に発光することを抑制するためには、電荷発生層115は、一対の電極よりも導電率が低い材料で形成されると好ましい。
【0266】
また、発光素子262a及び発光素子262bは、領域222B、領域222G、及び領域222Rから呈される光が取り出される方向に、それぞれ光学素子224B、光学素子224G、及び光学素子224Rを有する基板220を有する。各領域から呈される光は、各光学素子を介して発光素子外部に射出される。すなわち、領域222Bから呈される光は、光学素子224Bを介して射出され、領域222Gから呈される光は、光学素子224Gを介して射出され、領域222Rから呈される光は、光学素子224Rを介して射出される。
【0267】
また、光学素子224B、光学素子224G、及び光学素子224Rは、入射される光から特定の色を呈する光を選択的に透過する機能を有する。例えば、光学素子224Bを介して射出される領域222Bから呈される光は、青色を呈する光となり、光学素子224Gを介して射出される領域222Gから呈される光は、緑色を呈する光となり、光学素子224Rを介して射出される領域222Rから呈される光は、赤色を呈する光となる。
【0268】
光学素子224R、光学素子224G、及び光学素子224Bには、例えば、着色層(カラーフィルタともいう)、バンドパスフィルタ、多層膜フィルタなどを適用できる。また、光学素子に色変換素子を適用することができる。色変換素子は、入射される光を、当該光の波長より長い波長の光に変換する光学素子である。色変換素子として、量子ドットを用いる素子であると好適である。量子ドットを用いることにより、発光装置の色再現性を高めることができる。
【0269】
なお、光学素子224R、光学素子224G、及び光学素子224B上に他の光学素子を一または複数、重ねて設けてもよい。他の光学素子としては、例えば円偏光板や反射防止膜などを設けることができる。円偏光板を、発光装置の発光素子が発する光が取り出される側に設けると、発光装置の外部から入射した光が、発光装置の内部で反射されて、外部に射出される現象を防ぐことができる。また、反射防止膜を設けると、発光装置の表面で反射される外光を弱めることができる。これにより、発光装置が発する発光を、鮮明に観察できる。
【0270】
なお、図10(A)(B)において、各光学素子を介して各領域から射出される光を、青色(B)を呈する光、緑色(G)を呈する光、赤色(R)を呈する光、として、それぞれ破線の矢印で模式的に図示している。
【0271】
また、各光学素子の間には、遮光層223を有する。遮光層223は、隣接する領域から発せられる光を遮光する機能を有する。なお、遮光層223を設けない構成としても良い。
【0272】
遮光層223としては、外光の反射を抑制する機能を有する。または、遮光層223としては、隣接する発光素子から発せられる光の混色を防ぐ機能を有する。遮光層223としては、金属、黒色顔料を含んだ樹脂、カーボンブラック、金属酸化物、複数の金属酸化物の固溶体を含む複合酸化物等を用いることができる。
【0273】
なお、光学素子224Bと、光学素子224Gとは、遮光層223と重なる領域において、互いに重なる領域を有していても良い。あるいは、光学素子224Gと、光学素子224Rとは、遮光層223と重なる領域において、互いに重なる領域を有していても良い。あるいは、光学素子224Rと、光学素子224Bとは、遮光層223と重なる領域において、互いに重なる領域を有していても良い。
【0274】
また、基板200、及び光学素子を有する基板220の構成としては、実施の形態1を参酌すればよい。
【0275】
さらに、発光素子262a及び発光素子262bは、マイクロキャビティ構造を有する。
【0276】
マイクロキャビティ構造を設け、各領域の一対の電極間の光学距離を調整することで、各電極近傍における光の散乱および光の吸収を抑制し、高い光取り出し効率を実現することができる。
【0277】
なお、図10(A)に示す発光素子262a、上面射出型の発光素子であるため、導電層101a、導電層103a、及び導電層104aは、光を反射する機能を有することが好ましい。また、電極102は、光を透過する機能と、光を反射する機能とを有することが好ましい。
【0278】
また、図10(B)に示す発光素子262bは、下面射出型の発光素子であるため、導電層101a、導電層103a、導電層104aは、光を透過する機能と、光を反射する機能と、を有することが好ましい。また、電極102は、光を反射する機能を有することが好ましい。
【0279】
また、発光素子262a及び発光素子262bにおける発光層170または発光層190の少なくとも一方には、実施の形態1で示した発光素子の構成を有することが好ましい。そうすることで、色純度が高く、発光効率が良好であり、装置駆動後も色変化の少ない発光装置を作製することができる。
【0280】
また、発光層170と、発光層190と、が呈する発光により、白色となるよう、各発光層に用いる発光材料を選択すると好ましい。
【0281】
また、発光層170または発光層190は、一方または双方で3層以上が積層された構成としても良く、発光材料を有さない層が含まれていても良い。
【0282】
なお、発光素子262a及び発光素子262bにおける他の構成については、発光素子260aまたは発光素子260b、あるいは実施の形態1で示した発光素子の構成を参酌すればよい。
【0283】
本発明の一態様の分析方法は極めて微小領域においても発光素子が有する素子構造を分析することができる。本実施の形態で示した、領域222B、領域222G、及び領域222Rごとに、それぞれ用いられている層構造及び有機化合物を分析することができる。
【0284】
以上、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0285】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の分析方法を用いることができる発光素子の例について、図11乃至図13を用いて以下に説明する。
【0286】
図11(A)は、発光装置を示す上面図、図11(B)は図11(A)をA-BおよびC-Dで切断した断面図である。この発光装置は、発光素子の発光を制御するものとして、点線で示された駆動回路部(ソース側駆動回路)601、画素部602、駆動回路部(ゲート側駆動回路)603を含んでいる。また、604は封止基板、625は乾燥材、605はシール材であり、シール材605で囲まれた内側は、空間607になっている。
【0287】
なお、引き回し配線608はソース側駆動回路601及びゲート側駆動回路603に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB:Printed Wirting Board)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態を含むものとする。
【0288】
次に、上記発光装置の断面構造について図11(B)を用いて説明する。素子基板610上に駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路601と画素部602中の一つの画素が示されている。
【0289】
なお、ソース側駆動回路601はnチャネル型TFT623とpチャネル型TFT624とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路は種々のCMOS回路、PMOS回路、NMOS回路で形成しても良い。また本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバー一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく、外部に形成することもできる。
【0290】
また、画素部602はスイッチング用TFT611と電流制御用TFT612とそのドレインに電気的に接続された第1の電極613とを含む画素により形成される。なお、第1の電極613の端部を覆うように絶縁物614が形成されている。絶縁物614は、ポジ型の感光性樹脂膜を用いることにより形成することができる。
【0291】
また、絶縁物614上に形成される膜の被覆性を良好なものとするため、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有する面が形成されるようにする。例えば、絶縁物614の材料として感光性アクリルを用いた場合、絶縁物614の上端部のみに曲面をもたせることが好ましい。該曲面の曲率半径は0.2μm以上0.3μm以下が好ましい。また、絶縁物614として、ネガ型、ポジ型、いずれの感光材料も使用することができる。
【0292】
第1の電極613上には、EL層616、および第2の電極617がそれぞれ形成されている。ここで、陽極として機能する第1の電極613に用いる材料としては、仕事関数の大きい材料を用いることが望ましい。例えば、ITO膜、またはケイ素を含有したインジウム錫酸化物膜、2wt%以上20wt%以下の酸化亜鉛を含む酸化インジウム膜、窒化チタン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層膜の他、窒化チタンとアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との3層構造等を用いることができる。なお、積層構造とすると、配線としての抵抗も低く、良好なオーミックコンタクトがとれ、さらに陽極として機能させることができる。
【0293】
また、EL層616は、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法、スピンコート法等の種々の方法によって形成される。EL層616を構成する材料としては、低分子化合物、または高分子化合物(オリゴマー、デンドリマーを含む)であっても良い。
【0294】
さらに、EL層616上に形成され、陰極として機能する第2の電極617に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料(Al、Mg、Li、Ca、またはこれらの合金や化合物、MgAg、MgIn、AlLi等)を用いることが好ましい。なお、EL層616で生じた光が第2の電極617を透過させる場合には、第2の電極617として、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜(ITO、2wt%以上20wt%以下の酸化亜鉛を含む酸化インジウム、ケイ素を含有したインジウム錫酸化物、酸化亜鉛(ZnO)等)との積層を用いるのが良い。
【0295】
さらにシール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に発光素子618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、樹脂若しくは乾燥材又はその両方で充填される場合もある。
【0296】
なお、シール材605にはエポキシ系樹脂やガラスフリットを用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板604に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiber Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0297】
本発明の一態様に係る分析方法を、図11に示す発光装置に適用すると、該発光装置に含まれるEL層616の分析行うことができる。
【0298】
<発光装置の構成例3>
図12には発光装置の一例として、白色発光を呈する発光素子を形成し、着色層(カラーフィルタ)を形成した発光装置の例を示す。
【0299】
図12(A)には基板1001、下地絶縁膜1002、ゲート絶縁膜1003、ゲート電極1006、1007、1008、第1の層間絶縁膜1020、第2の層間絶縁膜1021、周辺部1042、画素部1040、駆動回路部1041、発光素子の第1の電極1024W、1024R、1024G、1024B、隔壁1026、EL層1028、発光素子の第2の電極1029、封止基板1031、シール材1032などが図示されている。
【0300】
また、図12(A)、図12(B)には着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)を透明な基材1033に設けている。また、黒色層(ブラックマトリックス)1035をさらに設けても良い。着色層及び黒色層が設けられた透明な基材1033は、位置合わせし、基板1001に固定する。なお、着色層、及び黒色層は、オーバーコート層1036で覆われている。また、図12(A)においては、光が着色層を透過せずに外部へと出る発光層と、各色の着色層を透過して外部に光が出る発光層とがあり、着色層を透過しない光は白、着色層を透過する光は赤、青、緑となることから、4色の画素で映像を表現することができる。
【0301】
図12(B)では赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034Bをゲート絶縁膜1003と第1の層間絶縁膜1020との間に形成する例を示した。図12(B)に示すように着色層は基板1001と封止基板1031の間に設けられても良い。
【0302】
また、以上に説明した発光装置では、TFTが形成されている基板1001側に光を取り出す構造(ボトムエミッション型)の発光装置としたが、封止基板1031側に発光を取り出す構造(トップエミッション型)の発光装置としても良い。
【0303】
<発光装置の構成例4>
トップエミッション型の発光装置の断面図を図13に示す。この場合、基板1001は光を通さない基板を用いることができる。TFTと発光素子の陽極とを接続する接続電極を作製するまでは、ボトムエミッション型の発光装置と同様に形成する。その後、第3の層間絶縁膜1037を電極1022を覆って形成する。この絶縁膜は平坦化の役割を担っていても良い。第3の層間絶縁膜1037は第2の層間絶縁膜1021と同様の材料の他、他の様々な材料を用いて形成することができる。
【0304】
発光素子の下部電極1025W、1025R、1025G、1025Bはここでは陽極とするが、陰極であっても構わない。また、図13のようなトップエミッション型の発光装置である場合、下部電極1025W、1025R、1025G、1025Bは反射電極とすることが好ましい。なお、第2の電極1029は光を反射する機能と、光を透過する機能を有すると好ましい。また、第2の電極1029と下部電極1025W、1025R、1025G、1025Bとの間でマイクロキャビティ構造を適用し特定波長の光を増幅する機能を有すると好ましい。EL層1028の構成は、実施の形態2で説明したような構成とし、白色の発光が得られるような素子構造とする。
【0305】
図12(A)、図12(B)、図13において、白色の発光が得られるEL層の構成としては、発光層を複数層用いること、複数の発光ユニットを用いることなどにより実現すればよい。なお、白色発光を得る構成はこれらに限られない。
【0306】
図13のようなトップエミッション構造では着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)を設けた封止基板1031で封止を行うことができる。封止基板1031には画素と画素との間に位置するように黒色層(ブラックマトリックス)1035を設けても良い。着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)や黒色層(ブラックマトリックス)はオーバーコート層によって覆われていても良い。なお封止基板1031は透光性を有する基板を用いる。
【0307】
また、ここでは赤、緑、青、白の4色でフルカラー表示を行う例を示したが特に限定されず、赤、緑、青の3色でフルカラー表示を行ってもよい。また、赤、緑、青、黄の4色でフルカラー表示を行ってもよい。
【0308】
本発明の一態様に係る分析方法を、図12及び図13に示す発光装置に適用すると、該発光装置に含まれるEL層1028の分析行うことができる
【0309】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0310】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様の分析方法を用いることができる電子機器について説明する。該電子機器は有機半導体素子が含まれていると好ましい。
【0311】
本発明の一態様の分析方法を用いることができる電子機器としては、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
【0312】
図14(A)、(B)に示す携帯情報端末900は、筐体901、筐体902、表示部903、及びヒンジ部905等を有する。
【0313】
筐体901と筐体902は、ヒンジ部905で連結されている。携帯情報端末900は、折り畳んだ状態(図14(A))から、図14(B)に示すように展開させることができる。これにより、持ち運ぶ際には可搬性に優れ、使用するときには大きな表示領域により、視認性に優れる。
【0314】
携帯情報端末900には、ヒンジ部905により連結された筐体901と筐体902に亘って、フレキシブルな表示部903が設けられている。
【0315】
表示部903は、文書情報、静止画像、及び動画像等のうち少なくとも一つを表示することができる。表示部に文書情報を表示させる場合、携帯情報端末900を電子書籍端末として用いることができる。
【0316】
携帯情報端末900を展開すると、表示部903が大きく湾曲した形態で保持される。例えば、曲率半径1mm以上50mm以下、好ましくは5mm以上30mm以下に湾曲した部分を含んで、表示部903が保持される。表示部903の一部は、筐体901から筐体902にかけて、連続的に画素が配置され、曲面状の表示を行うことができる。
【0317】
表示部903は、タッチパネルとして機能し、指やスタイラスなどにより操作することができる。
【0318】
表示部903は、一つのフレキシブルディスプレイで構成されていることが好ましい。これにより、筐体901と筐体902の間で途切れることのない連続した表示を行うことができる。なお、筐体901と筐体902のそれぞれに、ディスプレイが設けられる構成としてもよい。
【0319】
ヒンジ部905は、携帯情報端末900を展開したときに、筐体901と筐体902との角度が所定の角度よりも大きい角度にならないように、ロック機構を有することが好ましい。例えば、ロックがかかる(それ以上に開かない)角度は、90度以上180度未満であることが好ましく、代表的には、90度、120度、135度、150度、または175度などとすることができる。これにより、携帯情報端末900の利便性、安全性、及び信頼性を高めることができる。
【0320】
ヒンジ部905がロック機構を有すると、表示部903に無理な力がかかることなく、表示部903が破損することを防ぐことができる。そのため、信頼性の高い携帯情報端末を実現できる。
【0321】
筐体901及び筐体902は、電源ボタン、操作ボタン、外部接続ポート、スピーカ、マイク等を有していてもよい。
【0322】
筐体901または筐体902のいずれか一方には、無線通信モジュールが設けられ、インターネットやLAN(Local Area Network)、Wi-Fi(登録商標)などのコンピュータネットワークを介して、データを送受信することが可能である。
【0323】
図14(C)に示す携帯情報端末910は、筐体911、表示部912、操作ボタン913、外部接続ポート914、スピーカ915、マイク916、カメラ917等を有する。
【0324】
携帯情報端末910は、表示部912にタッチセンサを備える。電話を掛ける、或いは文字を入力するなどのあらゆる操作は、指やスタイラスなどで表示部912に触れることで行うことができる。
【0325】
また、操作ボタン913の操作により、電源のON、OFF動作や、表示部912に表示される画像の種類の切り替えを行うことができる。例えば、メール作成画面から、メインメニュー画面に切り替えることができる。
【0326】
また、携帯情報端末910の内部に、ジャイロセンサまたは加速度センサ等の検出装置を設けることで、携帯情報端末910の向き(縦か横か)を判断して、表示部912の画面表示の向きを自動的に切り替えることができる。また、画面表示の向きの切り替えは、表示部912に触れること、操作ボタン913の操作、またはマイク916を用いた音声入力等により行うこともできる。
【0327】
携帯情報端末910は、例えば、電話機、手帳または情報閲覧装置等から選ばれた一つまたは複数の機能を有する。具体的には、スマートフォンとして用いることができる。携帯情報端末910は、例えば、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、動画再生、インターネット通信、ゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
【0328】
図14(D)に示すカメラ920は、筐体921、表示部922、操作ボタン923、シャッターボタン924等を有する。またカメラ920には、着脱可能なレンズ926が取り付けられている。
【0329】
ここではカメラ920を、レンズ926を筐体921から取り外して交換することが可能な構成としたが、レンズ926と筐体921とが一体となっていてもよい。
【0330】
カメラ920は、シャッターボタン924を押すことにより、静止画または動画を撮像することができる。また、表示部922はタッチパネルとしての機能を有し、表示部922をタッチすることにより撮像することも可能である。
【0331】
なお、カメラ920は、ストロボ装置や、ビューファインダーなどを別途装着することができる。または、これらが筐体921に組み込まれていてもよい。
【0332】
図15(A)乃至(E)は、電子機器を示す図である。これらの電子機器は、筐体9000、表示部9001、スピーカ9003、操作キー9005(電源スイッチまたは操作スイッチを含む)、接続端子9006、センサ9007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン9008等を有する。
【0333】
本発明の一態様を用いて作製された発光装置を、表示部9001に好適に用いることができる。これにより、高い歩留まりで電子機器を作製することができる。
【0334】
図15(A)乃至(E)に示す電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々なコンピュータネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信または受信を行う機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出して表示部に表示する機能、等を有することができる。なお、図15(A)乃至(E)に示す電子機器が有する機能はこれらに限定されず、その他の機能を有していてもよい。
【0335】
図15(A)は腕時計型の携帯情報端末9200を、図15(B)は腕時計型の携帯情報端末9201を、それぞれ示す斜視図である。
【0336】
図15(A)に示す携帯情報端末9200は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。また、表示部9001はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、携帯情報端末9200は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。また、携帯情報端末9200は、接続端子9006を有し、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また接続端子9006を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は接続端子9006を介さずに無線給電により行ってもよい。
【0337】
図15(B)に示す携帯情報端末9201は、図15(A)に示す携帯情報端末と異なり、表示部9001の表示面が湾曲していない。また、携帯情報端末9201の表示部の外形が非矩形状(図15(B)においては円形状)である。
【0338】
図15(C)乃至(E)は、折り畳み可能な携帯情報端末9202を示す斜視図である。なお、図15(C)が携帯情報端末9202を展開した状態の斜視図であり、図15(D)が携帯情報端末9202を展開した状態または折り畳んだ状態の一方から他方に変化する途中の状態の斜視図であり、図15(E)が携帯情報端末9202を折り畳んだ状態の斜視図である。
【0339】
携帯情報端末9202は、折り畳んだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では、継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。携帯情報端末9202が有する表示部9001は、ヒンジ9055によって連結された3つの筐体9000に支持されている。ヒンジ9055を介して2つの筐体9000間を屈曲させることにより、携帯情報端末9202を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させることができる。例えば、携帯情報端末9202は、曲率半径1mm以上150mm以下で曲げることができる。
【0340】
本発明の一態様に係る分析方法を、図14及び図15に示す発光装置に適用すると、該発光装置に含まれる有機半導体層の分析行うことができる。
【0341】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0342】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様の分析方法を用いることができる照明装置の一例について図16及び図17を用いて説明する。該照明装置は有機半導体素子が含まれていると好ましい。
【0343】
本発明の一態様の発光素子を、可撓性を有する基板上に作製することで、曲面を有する発光領域を有する電子機器、照明装置を実現することができる。
【0344】
また、本発明の一態様の発光素子を適用した発光装置は、自動車の照明にも適用することができ、例えば、フロントガラス、天井等に照明を設置することもできる。
【0345】
図16(A)は、多機能端末3500の一方の面の斜視図を示し、図16(B)は、多機能端末3500の他方の面の斜視図を示している。多機能端末3500は、筐体3502に表示部3504、カメラ3506、照明3508等が組み込まれている。本発明の一態様の発光装置を照明3508に用いることができる。
【0346】
照明3508は、本発明の一態様の発光装置を用いることで、面光源として機能する。したがって、LEDに代表される点光源と異なり、指向性が少ない発光が得られる。例えば、照明3508とカメラ3506とを組み合わせて用いる場合、照明3508を点灯または点滅させて、カメラ3506により撮像することができる。照明3508としては、面光源としての機能を有するため、自然光の下で撮影したような写真を撮影することができる。
【0347】
なお、図16(A)、(B)に示す多機能端末3500は、図14(A)乃至図14(C)に示す電子機器と同様に、様々な機能を有することができる。
【0348】
また、筐体3502の内部に、スピーカ、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン等を有することができる。また、多機能端末3500の内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、多機能端末3500の向き(縦か横か)を判断して、表示部3504の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0349】
表示部3504は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部3504に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部3504に近赤外光を発光するバックライト又は近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。なお、表示部3054に本発明の一態様の発光装置を適用してもよい。
【0350】
図16(C)は、防犯用のライト3600の斜視図を示している。ライト3600は、筐体3602の外側に照明3608を有し、筐体3602には、スピーカ3610等が組み込まれている。本発明の一態様の発光素子を照明3608に用いることができる。
【0351】
ライト3600としては、例えば、照明3608を握持する、掴持する、または保持することで発光することができる。また、筐体3602の内部には、ライト3600からの発光方法を制御できる電子回路を備えていてもよい。該電子回路としては、例えば、1回または間欠的に複数回、発光が可能なような回路としてもよいし、発光の電流値を制御することで発光の光量が調整可能なような回路としてもよい。また、照明3608の発光と同時に、スピーカ3610から大音量の警報音が出力されるような回路を組み込んでもよい。
【0352】
ライト3600としては、あらゆる方向に発光することが可能なため、例えば、暴漢等に向けて光、または光と音で威嚇することができる。また、ライト3600にデジタルスチルカメラ等のカメラ、撮影機能を有する機能を備えてもよい。
【0353】
図17は、発光素子を室内の照明装置8501として用いた例である。なお、発光素子は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置を形成することもできる。その他、曲面を有する筐体を用いることで、発光領域が曲面を有する照明装置8502を形成することもできる。本実施の形態で示す発光素子は薄膜状であり、筐体のデザインの自由度が高い。したがって、様々な意匠を凝らした照明装置を形成することができる。さらに、室内の壁面に大型の照明装置8503を備えても良い。また、照明装置8501、8502、8503に、タッチセンサを設けて、電源のオンまたはオフを行ってもよい。
【0354】
また、発光素子をテーブルの表面側に用いることによりテーブルとしての機能を備えた照明装置8504とすることができる。なお、その他の家具の一部に発光素子を用いることにより、家具としての機能を備えた照明装置とすることができる。
【0355】
本発明の一態様に係る分析方法は、上述の照明装置に適用することができる。なお、本発明の一態様ができようできる照明装置や電子機器は、本実施の形態に示したものに限らず、あらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
【0356】
また、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例1】
【0357】
本実施例では、本発明の一態様に係る分析方法の分析例について説明する。本実施例では、下記に示す発光素子1の作製前後における、有機化合物の状態変化を分析した。発光素子1の素子構造を図18に示す。また、以下に用いた有機化合物の構造とその素子構造の詳細を示す。
【0358】
【表1】
【0359】
【化1】
【0360】
【化2】
【0361】
<発光素子の作製>
基板800上に電極810として、ITSO膜を厚さが110nmになるように形成した。なお、電極810の電極面積は、81cm(9cm×9cm)とした。
【0362】
次に、電極810上に正孔注入層831として、BPAFLPと、酸化モリブデン(MoO)と、を重量比(BPAFLP:MoO)が1:0.5になるように、且つ、厚さが12.7nmになるように共蒸着した。
【0363】
次に、正孔注入層831上に正孔輸送層832として、PCBA1BPを厚さが10nmになるように蒸着した。
【0364】
次に、正孔輸送層832上に、発光層850として、2mDBTPDBq-IIと、PCBA1BPと、Ir(tppr)(dpm)を重量比(2mDBTPDBq-II:PCBA1BP:Ir(tppr)(dpm))が0.8:0.2:0.06になるように、且つ、厚さが22.6nmになるように共蒸着した。ここで、Ir(tppr)(dpm)がゲスト材料であり、赤色の発光を示す。
【0365】
次に、発光層850上に、電子輸送層833として、2mDBTPDBq-IIとBPhenとを、厚さがそれぞれ15nmとになるように順次蒸着した。
【0366】
次に、電子輸送層833上に、電子注入層834として、フッ化リチウム(略称:LiF)と、銅フタロシアニン(略称:CuPc)とを、厚さがそれぞれ1nmと2nmとになるように順次蒸着した。
【0367】
次に、正孔注入層を兼ねる電荷発生層835として、PCzPAと、酸化モリブデン(MoO)と、を重量比(PCzPA:MoO)が1:0.5になるように、且つ、厚さが4.5nmになるように共蒸着した。
【0368】
次に、電荷発生層835上に正孔輸送層837として、PCzPAを厚さが10nmになるように蒸着した。
【0369】
次に、正孔輸送層837上に、発光層851として、CzPAと1,6mMemFLPAPrnとを重量比(CzPA:1,6mMemFLPAPrn)が1:0.03となるように、且つ、厚さが28.5nmとなるように蒸着した。ここで、1,6mMemFLPAPrnがゲスト材料であり、青色の発光を示す。
【0370】
次に、発光層851上に、電子輸送層838として、CzPAとBPhenとを、厚さがそれぞれ5nm、10nmとになるように順次蒸着した。
【0371】
次に、電子輸送層838上に、電子注入層839として、フッ化リチウム(略称:LiF)と、銅フタロシアニン(略称:CuPc)とを、厚さがそれぞれ1nmと2nmとになるように順次蒸着した。
【0372】
次に、正孔注入層を兼ねる電荷発生層840として、BPAFLPと、酸化モリブデン(MoO)と、を重量比(BPAFLP:MoO)が1:0.5になるように、且つ、厚さが54.5nmになるように共蒸着した。
【0373】
次に、電荷発生層840上に正孔輸送層842として、BPAFLPを厚さが20nmになるように蒸着した。
【0374】
次に、正孔輸送層842上に、発光層852として、2mDBTPDBq-IIと、PCBA1BPと、Ir(tBuppm)(acac)を重量比(2mDBTPDBq-II:PCBA1BP:Ir(tBuppm)(acac))が0.8:0.2:0.06になるように、且つ、厚さが15.1nmになるように共蒸着した。続いて、2mDBTPDBq-IIと、PCBA1BPと、Ir(dppm)(acac)を重量比(2mDBTPDBq-II:PCBA1BP:Ir(dppm)(acac))が0.8:0.2:0.06になるように、且つ、厚さが15.1nmになるように共蒸着した。ここで、Ir(tBuppm)(acac)及びIr(dppm)(acac))がゲスト材料であり、緑色、橙色の発光をそれぞれ示す。
【0375】
次に、発光層852上に、電子輸送層843として、2mDBTPDBq-IIとBPhenとを、厚さがそれぞれ15nmとになるように順次蒸着した。
【0376】
次に、電子輸送層843上に、電子注入層844として、フッ化リチウム(略称:LiF)を、厚さが1nmとになるように蒸着した。
【0377】
次に、電子注入層844上に、電極812として、銀(Ag)とマグネシウム(Mg)と、を重量比(Ag:Mg)が1:0.1となるように、且つ厚さが1nmとなるように共蒸着した。続いて、Agを厚さが120nmとなるように蒸着した。
【0378】
次に、窒素雰囲気のグローブボックス内において、有機EL用シール材を用いて封止するための基板802を、有機材料を形成した基板800に固定することで、発光素子1を封止した。具体的には、基板800に形成した有機材料の周囲にシール材を塗布し、該基板800と基板802とを貼り合わせ、波長が365nmの紫外光をシール材に6J/cm 照射し、80℃にて1時間熱処理した。以上の工程により発光素子1を得た。
【0379】
<発光素子の分析>
次に、上記作製した発光素子1中の有機化合物の状態を分析するために、以下の工程(図3(S1)、(S4)、(S5)及び(S7)参照)により、発光素子1に含まれる有機化合物を単離、分取した。
【0380】
まず、発光素子1の素子作製がなされていない対向基板にカッターで切っ掛けを入れ、一方の基板を剥離した(図3(S1))。
【0381】
次に、EL層をクロロホルムを用いて溶かし出し、不要物をろ過することにより除去後、不要な溶媒を濃縮することで混合溶液を作製した(図3(S4))。
【0382】
次に、混合溶液を液体クロマトグラフィーにより分離した(図3(S5))。分離はHPLCにより行った。装置は日本分析工業(株)社製リサイクル分取HPLC(LC-9130NEXT)を用いた。HPLC分析により得られたUV検出器(観測波長:254nm)のクロマトグラムを図19に示す。
【0383】
図19に示すa乃至eの領域をそれぞれ異なる容器に分取した(図3(S7))。
【0384】
続いて、図19において、最も大きなピークを有する領域cに含まれる有機化合物を詳細に分析するため、H-NMR測定を行った。その結果を図20(a)に示す。また、発光素子1の作製に用いた、蒸着前の2mDBTPDBq-IIのH-NMRスペクトルを図20(b)に合わせて示す。
【0385】
図20(a)と図20(b)を比較すると、概ね同一のスペクトルを有していることが分かる。すなわち、図19中、領域cに含まれる有機化合物は2mDBTPDBq-IIであると同定される。また、図20(a)は蒸着後、図20(b)は蒸着前の2mDBTPDBq-IIの状態をそれぞれ表している。図20(a)と図20(b)にほとんど変化がないことから、2mDBTPDBq-IIは蒸着時の加熱や真空下において、分解や劣化を起こさない、耐圧性、耐熱性に優れた真空蒸着に好適に用いることができる有機化合物であることが分かった。
【0386】
以上より、本発明の一態様に係る分析方法によって、発光素子に含まれる有機化合物を分析することができる。また、有機化合物の耐熱性や耐圧性を評価することができる。
【実施例2】
【0387】
本実施例では、本発明の一態様に係る分析方法の分析例について説明する。本実施例では、OLED素子が適用された、OLED素子構造が未知であり、画面面積が5.5インチであるA社製スマートフォンに使用されている発光素子の分析例について以下説明する。以下、A社製スマートフォンに使用されている発光素子を発光素子2と記載する。
【0388】
<発光素子のGCIB-TOF-SIMS分析>
他の分析により、発光素子2は赤色(R)画素、緑色(G)画素、青色(B)画素を有することが分かった。そこで、各画素について、それぞれGCIB-TOF-SIMS分析を行った(図3(S1)乃至(S3))。
【0389】
まず、実施例1と同様に、発光素子2が形成されていない基板を剥離した(図3(S1))。
【0390】
次に、粘着性のテープを用いて露出している電極を剥離した(図3(S2))。
【0391】
次に、R、G、B各画素について、それぞれAr-GCIBを用いてGCIB-TOF-SIMS分析を行った(S2)。その結果を表2乃至表4に示す。表2はR画素、表3はG画素、表4はB画素の分析結果をそれぞれ示す。表2乃至表4から発光素子2はR、B各画素は有機化合物を含む層が5層積層された構造を有し、G画素は6層積層されていることが分かった。表2乃至表4では質量電荷比が検出された順番に便宜上A層、B層乃至E層またはF層と記載している。
【0392】
【表2】
【0393】
【表3】
【0394】
【表4】
【0395】
また、剥離した電極の有機層側の剥離表面についてGCIB-TOF-SIMS分析を行ったところ、有機化合物はほとんど検出されなかった。よって、S2の工程において電極のみが剥離され、有機化合物からなる層は基板側に残存していることが分かった。また、電極のToF-SIMS分析からはLi、Mg、Ag、Ybが検出された。
【0396】
また、剥離していない電極にはITOが使用されていることが分かった。
【0397】
また表2乃至表4から、R画素及びB画素のD層とE画素のF層には同一の有機化合物が、R画素及びB画素のD層とG画素のE層には同一の有機化合物が、R、G、B画素それぞれのA層に同一の有機化合物が用いられていることが推定できる。
【0398】
また、R画素のB層において、m/z=769付近に検出されるスペクトルの同位体ピークを分析したところ、m/z=769付近が検出される有機化合物はIrを有することが分かった。R画素は赤色に発光する機能があるため、該有機化合物が赤色燐光材料であると推定される。よって、R画素においてB層が発光層であると予想される。同じくB層から検出されるm/z=613付近が検出される有機化合物はホスト材料であることが予想される。
【0399】
R画素と同様に、G画素のB層において、m/z=782付近に検出されるスペクトルの同位体ピークを分析したところ、m/z=782付近が検出される有機化合物はIrを有することが分かった。G画素は緑色に発光する機能があるため、該有機化合物が緑色燐光材料であると推定される。よって、G画素においてB層が発光層であると予想される。同じくB層から検出されるm/z=612付近及びm/z=636付近が検出される有機化合物はホスト材料であることが予想される。
【0400】
同一の層から複数の有機化合物が検出された場合、該層は発光層の可能性がある。発光素子2において各画素のA層は2種類の有機化合物のm/zが検出されている。しかし、上述の通り、R及びG画素においてB層が発光層であると予想される。また、A層は電極に接している層である。電極に発光層を隣接させると、消光やプラズモン吸収等発光素子特性に悪影響を及ぼすことが知られている。そのため、各層のA層は発光層ではないと予想される。そのため、B画素においても、2種類の有機化合物のm/zが検出されているB層が発光層であると予想される。
【0401】
上述のように、各層に含まれる有機化合物の種類数や有する元素、各層の位置関係をGCIB-TOF-SIMS分析から得ることができる。
【0402】
<発光素子に用いられている有機化合物の単離>
続いて、発光素子2に用いられている有機化合物を単離した(図3(S4)乃至(S7))。
【0403】
TOF-SIMS測定を行ったサンプルのEL層をクロロホルムを用いて溶かし出した。不要物をろ過することにより除去し、混合溶液を作製した(図3(S4))。本工程では、前述のGCIB-TOF-SIMS測定を行うことで、各有機化合物が含まれる層が特定されるので画素ごとではなく、R、G、B画素すべての画素に含まれる有機化合物を同時に溶かし出しても構わない。すなわちGCIB-TOF-SIMS測定を行うことで、本工程を容易に行うことができる。
【0404】
調整した混合溶液をLC-MS装置に注入し、LC部にて混合溶液中の有機化合物の分離を行った。LC-MS装置のLC部サーモフィッシャーサイエンティフィック社製Ultimate3000を、MS部にはサーモフィッシャーサイエンティフィック社製Q Exactiveを用いた。LC分析により得られたUV検出器(観測波長:254nm)のクロマトグラムを図21に示す。図21(b)は図21(a)の拡大図である。図21より15種類のピークが観測された。
【0405】
<m/z=613が検出される有機化合物の同定>
以下、表2に示すR画素B層から検出される、m/z=613付近が検出される有機化合物の構造を同定する方法について説明する。以下、該有機化合物を有機化合物613と記載する。
【0406】
LC-MS分析(図3中(S6))の結果から図21に示す、ピーク4からm/z=613.2380が検出された。そこで、ピーク4に関して、HPLCにて荒分けを行い、LC-MSのフラクションコレクターを用いて分取(S7)し、有機化合物613を得た。図22に有機化合物613を分取後のm/z=613付近が含まれる溶液に関して測定したUV検出器(観測波長:254nm)のクロマトグラムを示す。図22より有機化合物613が純度良く単離できていることが分かる。
【0407】
次に、有機化合物613の構造を分析するために、H-NMR測定を行った。その結果を図23(a)乃至図25(a)に示す。図24(a)は図23(a)の7ppm乃至9ppmを拡大した図であり、図25(a)は図23(a)の1ppm乃至3ppmを拡大した図である
【0408】
上述のLC-MS測定から得られたm/z=613.2380より組成式を求め、該組成式と図23(a)乃至図25(a)から有機化合物613の分子構造を推定した。CAS推定した有機化合物の構造を以下に示す。推定した有機化合物は以下に示す、9-フェニル-9’-(4-フェニル-2-キナゾリニル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:PCCzQz)である。
【0409】
【化3】
【0410】
次に、PCCzQzを合成した(図4(S11))。合成経路及び合成方法は特許文献2を参照した。
【0411】
合成したPCCzQzのH-NMRスペクトルを測定した。その結果を図23(b)乃至図25(b)に示す。図24(b)は図23(b)の7ppm乃至9ppmを拡大した図であり、図25(b)は図23(b)の1ppm乃至3ppmを拡大した図である。
【0412】
図23乃至図25より、有機化合物613のH-NMRスペクトルとPCCzQzのH-NMRスペクトルは概ね一致した。よって、有機化合物613はPCCzQzであると同定された。すなわち、発光素子2のR画素にはPCCzQzが含まれていることが分かった。
【0413】
<R画素の発光機構の分析1>
以下、表2に示すR画素B層の発光機構の分析方法について説明する。上述の通り、R画素B層は発光層と推定でき、該層に含まれる有機化合物613がホスト材料、m/z=769付近が検出される有機化合物はIrを有する有機化合物であるため、ゲスト材料であると推定される。以下、m/z=769付近が検出される有機化合物を有機化合物769と記載する。
【0414】
有機化合物613を分取した際と同様に、LC-MS分析(図3中(S6))の結果から図21に示す、ピーク15からm/z=769.31が検出された。そこで、ピーク15の部分の分離条件を再検討することで分離した。分離後、UV検出器(観測波長:254nm)のクロマトグラム中、有機化合物769が含まれるリテンションタイムにおける吸収スペクトルを、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製Ultimate3000により測定した(図3中(S6))。測定した吸収スペクトルはアセトニトリル:水=95:5の混合溶液中における吸収スペクトルである。その結果を図26に示す。
【0415】
次に、有機化合物613の発光スペクトル測定を行った。固体薄膜は石英基板上に真空蒸着法にて成膜することで作製した。発光スペクトルの測定には蛍光光度計((株)浜松ホトニクス製 FS920)を用いた。その結果を図27に示す。
【0416】
図28図26に示す吸収スペクトルと図27に示す発光スペクトルを重ね合わせたグラフを示す。図28より、ゲスト材料であると予想される有機化合物769の最も長波長側の吸収帯(MLCT吸収と予想される)と有機化合物613の発光スペクトルが重なっていることが分かる。よって、発光素子2のR画素中では、有機化合物613が有するエネルギーが有機化合物769にエネルギー移動することで、有機化合物769が発光を呈することが示唆された。
【0417】
<R画素の発光機構の分析2>
【0418】
以下に、上述とは異なる、表2に示すR画素の有機化合物の分析について説明する。上述の通り、R画素において発光層と推定されるB層と、隣接するC層の関係に関して分析を行った。
【0419】
まず、表2に示すR画素C層から検出される、m/z=638付近が検出される有機化合物を単離、分取した。以下、m/z=638付近が検出される有機化合物を有機化合物638と記載する。
【0420】
有機化合物613を分取した際と同様に、LC-MS分析(図3中(S6))の結果から図21に示す、ピーク7からm/z=638付近にピークが検出されたため、ピーク7の部分を分取することにより、有機化合物638を得た。
【0421】
次に、有機化合物638の薄膜における発光スペクトル測定を行った。固体薄膜は石英基板上に真空蒸着法にて成膜することで作製した。薄膜の吸収スペクトルの測定には、分光光度計((株)日立ハイテクノロジーズ製 分光光度計U4100)を用いた。
【0422】
図29に、測定した有機化合物638の吸収スペクトルと図27に示す有機化合物613の発光スペクトルを重ね合わせたグラフを示す。図29より有機化合物638の吸収スペクトルと有機化合物613の発光スペクトルは重なりを有さないことが分かる。すなわち、有機化合物613のエネルギーが有機化合物638へはエネルギー移動しにくいことが分かる。これにより、C層は発光層と推定されるB層の励起子ブロック層としての機能を有していることが示唆される。
【0423】
<有機化合物613の発光寿命測定>
R画素B層から検出された有機化合物613の発光寿命測定を行った。測定にはピコ秒蛍光寿命測定システム(浜松ホトニクス社製)を用いた。測定には有機化合物613の薄膜を用い、石英基板上に真空蒸着により厚さ30nmとなるように成膜し作製した。なお、薄膜の作製には発光素子2から分取した有機化合物613を用いた。本測定では、薄膜が呈する蛍光発光の寿命を測定するため、薄膜にパルスレーザーを照射し、レーザー照射後から減衰していく発光をストリークカメラにより時間分解測定した。パルスレーザーには波長が337nmの窒素ガスレーザを用い、500psのパルスレーザーを10Hzの周期で薄膜に照射し、繰り返し測定したデータを積算することにより、S/N比の高いデータを得た。また、測定は室温(23℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0424】
上記測定結果を図30に示す。図30に示すように、発光素子2から分取した有機化合物を用いて、ノイズが少ない発光寿命特性を測定できたことが分かる。
【0425】
<有機化合物613の三重項励起(T1)準位の測定>
R画素B層から検出された有機化合物613の燐光スペクトルを測定し、T1準位を求めた。測定には、上述の発光寿命測定に用いた薄膜を用い、顕微PL装置 LabRAM HR-PL ((株)堀場製作所)を用い、測定温度は10K、励起光としてHe-Cdレーザー(325nm)を用い、検出器にはCCD検出器を用いた。
【0426】
上記測定結果を図31に示す。図31に示すように、発光素子2から分取した有機化合物を用いて、ノイズが少ない燐光スペクトルを測定できたことが分かる。また、図31より、この燐光の短波長側の第一ピークは536nmであり、これより有機化合物613のT1準位は2.31eVであると算出された。
【0427】
<G画素の発光機構の分析>
以下、表3に示すG画素B層の発光機構の分析方法について説明する。上述の通り、G画素B層に含まれるm/z=782が検出される有機化合物はIrを有する有機化合物であり、ゲスト材料であると推定され、m/z=612、636が検出される有機化合物はホスト材料であると推定される。以下、m/z=782、612、636が検出される有機化合物をそれぞれ有機化合物782、有機化合物612、有機化合物636と記載する。
【0428】
図21に示す、ピーク1からm/z=783.30が、ピーク6からm/z=612.24が、ピーク8からm/z=636.25がそれぞれ検出された。そこで、有機化合物613単離時と同様に、各ピーク付近に関してHPLCで荒分けを行い、LC-MSのフラクションコレクターにて分取(S7)し、有機化合物782、有機化合物612、有機化合物636を得た。なお、有機化合物782に対応する質量電荷比はm/z=783.30とTOF-SIMS測定時の値より1大きい値となるが、これはLC-MS測定時のプロトンが付加することでイオン化したと考えられるため、表3中m/z=782として検出された有機化合物とLC-MS測定時にm/z=783.30として検出されたイオンに由来する有機化合物は同一である。
【0429】
単離した有機化合物782のトルエン溶液による吸収スペクトルを測定した。その結果を図32に示す。トルエン溶液の吸収スペクトルの測定には、紫外可視分光光度計((株)日本分光製 V550型)を用い、トルエンのみを石英セルに入れて測定したスペクトルを差し引いた。
【0430】
次に、有機化合物612及び有機化合物636の薄膜の発光スペクトルを測定した。薄膜は有機化合物のトルエン溶液を基板に滴下し、溶媒を蒸発させることで作製した。発光スペクトルの測定には上述の蛍光光度計を用いた。その結果を図33に示す。
【0431】
また、有機化合物612と有機化合物636の混合膜を作製し、発光スペクトルを測定した。該混合膜は有機化合物612のトルエン溶液と有機化合物636のトルエン溶液を混合し、同一基板に滴下し、溶媒を蒸発させることで作製した。発光スペクトルの測定には上述の蛍光光度計を用いた。その結果を図33に合わせて示す。
【0432】
ここで、図33から有機化合物612と有機化合物636の混合膜の発光スペクトルは、個々の有機化合物の発光スペクトルよりも長波長側にピークを有することが分かる。すなわち、有機化合物612と有機化合物636の混合膜はエキサイプレックスを形成していることが分かる。
【0433】
次に、有機化合物782のトルエン溶液における吸収スペクトルと有機化合物612及び有機化合物636の混合膜の発光スペクトルの重なりを分析した。その結果を図34に示す。図34より有機化合物612と有機化合物636の混合膜の発光、すなわち、有機化合物612及び有機化合物636からなる励起錯体の発光は、ゲスト材料であると予想される有機化合物782の最も長波長側の吸収帯(MLCT吸収と予想される)と重なっていることが分かる。よって、発光素子2のG画素中では、有機化合物612及び有機化合物636からなる励起錯体が有するエネルギーが有機化合物782にエネルギー移動することで、有機化合物782が発光を呈することが示唆された。換言すると、発光素子2のG画素中では、ExTETが生じていることが示唆された。
【0434】
上述の通り、本発明の分析方法を用いることで、発光素子中の有機化合物を分析することができる。また、発光素子中の有機化合物を用いて、該有機化合物の分子構造や様々な物性が測定できることが分かった。
【実施例3】
【0435】
本実施例では、本発明の一態様に係る分析方法の分析例について説明する。本実施例では、OLED素子が適用された、OLED素子構造が未知であり、A社製スマートフォンに使用されている発光素子の分析例について以下説明する。以下、本実施例で使用した発光素子を発光素子3と記載する。
【0436】
まず、実施例1及び実施例2と同様に、発光素子3が形成されていない基板を剥離した(図3(S1))。この時、剥離した基板とともに一方の電極も剥離された。すなわち、剥離した基板に一方の電極が付着していた。
【0437】
次に、粘着性のテープを用いて上記基板に付着した電極を剥離し、電極の基板側を露出させた。
【0438】
<発光素子のTOF-SIMS分析>
次に、電極の基板側に関して、TOF-SIMS分析を行った(図36(S26))。その結果、m/z=483、661、803及び818にピークが観測された。
【0439】
<電極の基板側の有機層に用いられている有機化合物の単離>
続いて、発光素子2に用いられている有機化合物を単離した(図36(S4)乃至(S7))。
【0440】
剥離した電極のサンプルを重クロロホルムを用いて溶かし出した。その後、不要物をろ過することにより除去し、混合溶液を作製した(図36(S4))。
【0441】
調整した混合溶液をLC-MS装置に注入し、LC部にて混合溶液中の有機化合物の分離を行った。LC分析により得られたUV検出器(観測波長:254nm)のクロマトグラムを図37に示す。
【0442】
<m/z=818が検出される有機化合物の同定>
m/z=818付近が検出される有機化合物の構造を同定する方法について説明する。以下、該有機化合物を有機化合物818と記載する。
【0443】
図37にピークIからm/z=819.34が検出された。そこで、ピークIに関して、LC-MSのフラクションコレクターを用いて分取(図36(S7))し、有機化合物818を得た。
【0444】
次に、有機化合物818の構造を分析するために、H-NMR測定を行った。その結果を図38(a)及び図39(a)に示す。図39(a)は図38(a)の6.5ppm乃至9。0ppmを拡大した図である。
【0445】
上述のLC-MS測定から得られたm/z=819.34及び図38(a)及び39(a)から有機化合物818の分子構造を推定した。推定した有機化合物は以下に示す、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(9-フェニル-9-H-カルバゾール-3-イル)-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン(略称:BPPCA)である。
【0446】
【化4】
【0447】
次に、実際にBPPCAを合成した(図4(S11))。
【0448】
合成したBPPCAのH-NMRスペクトルを測定した。その結果を図38(b)乃及び図39(b)に示す。図39(b)は図38(b)の6.5ppm乃至9。0ppmを拡大した図である。
【0449】
図39乃至図39より、有機化合物818のH-NMRスペクトルとBPPCAのH-NMRスペクトルは概ね一致した。よって有機化合物818はBPPCAであると同定された。すなわち、発光素子3の電極の基板側にはBPPCAが含まれていることが分かった。
【符号の説明】
【0450】
20 有機半導体層、50 有機半導体素子、100 EL層、101 電極、101a
導電層、101b 導電層、101c 導電層、102 電極、103 電極、103a 導電層、103b 導電層、104 電極、104a 導電層、104b 導電層、106 発光ユニット、110 発光ユニット、111 正孔注入層、112 正孔輸送層、113 電子輸送層、114 電子注入層、115 電荷発生層、116 正孔注入層、117 正孔輸送層、118 電子輸送層、119 電子注入層、120 発光層、121 ホスト材料、121_1 有機化合物、121_2 有機化合物、122 発光性材料、123B 発光層、123G 発光層、123R 発光層、130 発光層、131 発光性材料、132 有機化合物、145 隔壁、150 発光素子、170 発光層、190 発光層、200 基板、210 基板、220 基板、221B 領域、221G 領域、221R 領域、222B 領域、222G 領域、222R 領域、223 遮光層、224B 光学素子、224G 光学素子、224R 光学素子、250 発光素子、252 発光素子、260a 発光素子、260b 発光素子、262a
発光素子、262b 発光素子、400 基板、410 基板、420 キャップ膜、601 ソース側駆動回路、602 画素部、603 ゲート側駆動回路、604 封止基板、605 シール材、607 空間、608 配線、610 素子基板、611 スイッチング用TFT、612 電流制御用TFT、613 電極、614 絶縁物、616 EL層、617 電極、618 発光素子、623 nチャネル型TFT、624 pチャネル型TFT、800 基板、802 基板、810 電極、812 電極、831 正孔注入層、832 正孔輸送層、833 電子輸送層、834 電子注入層、835 電荷発生層、837 正孔輸送層、838 電子輸送層、839 電子注入層、840 電荷発生層、842 正孔輸送層、843 電子輸送層、844 電子注入層、850 発光層、851 発光層、852 発光層、900 携帯情報端末、901 筐体、902 筐体、903 表示部、905 ヒンジ部、910 携帯情報端末、911 筐体、912 表示部、913 操作ボタン、914 外部接続ポート、915 スピーカ、916 マイク、917 カメラ、920 カメラ、921 筐体、922 表示部、923 操作ボタン、924 シャッターボタン、926 レンズ、1001 基板、1002 下地絶縁膜、1003 ゲート絶縁膜、1006 ゲート電極、1007 ゲート電極、1008 ゲート電極、1020 層間絶縁膜、1021 層間絶縁膜、1022 電極、1024B 電極、1024G 電極、1024R 電極、1024W 電極、1025B 下部電極、1025G 下部電極、1025R 下部電極、1025W
下部電極、1026 隔壁、1028 EL層、1029 電極、1031 封止基板、1032 シール材、1033 基材、1034B 着色層、1034G 着色層、1034R 着色層、1036 オーバーコート層、1037 層間絶縁膜、1040 画素部、1041 駆動回路部、1042 周辺部、3054 表示部、3500 多機能端末、3502 筐体、3504 表示部、3506 カメラ、3508 照明、3600 ライト、3602 筐体、3608 照明、3610 スピーカ、8501 照明装置、8502 照明装置、8503 照明装置、8504 照明装置、9000 筐体、9001 表示部、9003 スピーカ、9005 操作キー、9006 接続端子、9007 センサ、9008 マイクロフォン、9055 ヒンジ、9200 携帯情報端末、9201 携帯情報端末、9202 携帯情報端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
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図39