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特許7185625重質芳香族化合物のBTXへの転化プロセス及び使用する触媒組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】重質芳香族化合物のBTXへの転化プロセス及び使用する触媒組成物
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/80 20060101AFI20221130BHJP
   B01J 37/20 20060101ALI20221130BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20221130BHJP
   B01J 29/78 20060101ALI20221130BHJP
   C01B 39/26 20060101ALI20221130BHJP
   C10G 11/05 20060101ALI20221130BHJP
   C07C 15/04 20060101ALI20221130BHJP
   C07C 15/06 20060101ALI20221130BHJP
   C07C 15/08 20060101ALI20221130BHJP
   C07C 4/18 20060101ALI20221130BHJP
   B01J 29/24 20060101ALI20221130BHJP
   B01J 29/76 20060101ALI20221130BHJP
   C01B 39/42 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
B01J29/80 M
B01J37/20
B01J37/10
B01J29/78 M
C01B39/26
C10G11/05
C07C15/04
C07C15/06
C07C15/08
C07C4/18
B01J29/24 M
B01J29/76 M
C01B39/42
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019519253
(86)(22)【出願日】2017-09-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 US2017053889
(87)【国際公開番号】W WO2018071184
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】62/406,155
(32)【優先日】2016-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16201374.2
(32)【優先日】2016-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509004675
【氏名又は名称】エクソンモービル ケミカル パテンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】エリア クリスティーン エヌ
(72)【発明者】
【氏名】ライ ウェンイー エフ
(72)【発明者】
【氏名】ナイール ハリ
(72)【発明者】
【氏名】カトラー ジョシュア アイ
(72)【発明者】
【氏名】バイ チュアンシェン
(72)【発明者】
【氏名】ロールマン ニコラス エス
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-525888(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0277512(US,A1)
【文献】特表2013-518715(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2016-0036136(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0353447(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C01B 39/26,39/42
C10G 1/00-99/00
C07C 1/00-409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
8+芳香族炭化水素を含む供給原料の、より軽質な芳香族生成物への転化プロセスであって、触媒組成物の存在下、前記C8+芳香族炭化水素を脱アルキル及びアルキル交換るのに有効な転化条件下で前記供給原料及び任意選択で水素を接触させて、ベンゼン、トルエン及びキシレンを含む前記より軽質な芳香族生成物を生成するステップを含み、
前記触媒組成物は、硫黄源及び/又は蒸気源で処理され、かつ下記:
(i)ZSM-12、及び、モルデナイトゼオライトであって、30m 2 /g超のメソ細孔表面積を有し、かつ、一次結晶子で構成された凝集体を含み、前記一次結晶子が、TEMにより測定して80nm未満の平均一次結晶サイズ及び2未満のアスペクト比を有する、前記モルデナイトゼオライトから成る群より選択される少なくとも1種のゼオライト、
(ii)前記触媒組成物の質量に基づいて、0.001質量%~20.0質量%の少なくとも1種の第1の金属であって、モリブデン、タングステン、又はこれらの混合物である前記第1の金属、及び
(iii)前記触媒組成物の質量に基づいて、0.001質量%~20.0質量%の少なくとも1種の第2の金属であって、コバルト、ニッケル、又はこれらの混合物である前記第2の金属
を含む、前記プロセス。
【請求項2】
前記触媒組成物が、1以上のステップで、204℃(400°F)から480℃(900°F)までの範囲の温度にて前記硫黄源で処理され、前記硫黄源が、硫化水素、二硫化炭素、並びにメチルスルフィド、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、ジエチルスルフィド及びジブチルスルフィド並びにこれらの2種以上の混合物から成る群より選択されるアルキルスルフィド、の1種以上である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記ゼオライト及び/又は前記触媒組成物が蒸気源で処理され、前記蒸気源が、260℃(500°F)~649℃(1200°F)の範囲の温度で100%までの蒸気を含み、前記処理が1以上の温度ステップを成している、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
8+芳香族炭化水素を含む供給原料の、より軽質な芳香族生成物への転化プロセスであって、処理済み触媒組成物を下記ステップ:
(a)ZSM-12、及び、モルデナイトゼオライトであって、30m 2 /g超のメソ細孔表面積を有し、かつ、一次結晶子で構成された凝集体を含み、前記一次結晶子が、TEMにより測定して80nm未満の平均一次結晶サイズ及び2未満のアスペクト比を有する、前記モルデナイトゼオライトから成る群より選択される少なくとも1種のゼオライトを含む触媒組成物を準備するステップ;
(b)前記触媒組成物を少なくとも1種の第1の金属源又はその化合物及び少なくとも1種の第2の金属源又はその化合物と接触させて金属含有触媒組成物を形成するステップ、
ここで、前記第1の金属は、モリブデン、タングステン、又はこれらの混合物であり、
前記第2の金属は、コバルト、ニッケル、又はこれらの混合物であり、
前記金属含有触媒組成物は、それぞれ該触媒組成物の質量に基づいて、0.001質量%~20.0質量%の前記第1の金属、及び0.001質量%~20.0質量%の前記第2の金属を含む;及び
(c)前記金属含有触媒組成物を硫黄源及び/又は蒸気源で処理して前記処理済み触媒組成物を形成するステップ、
を含む方法によって調製するステップ、
前記処理済み触媒組成物の存在下、前記C8+芳香族炭化水素を脱アルキル及びアルキル交換るのに有効な転化条件下で前記供給原料及び任意選択で水素を接触させて、ベンゼン、トルエン及びキシレンを含む前記より軽質な芳香族生成物を生成するステップ
を含む、前記プロセス。
【請求項5】
前記硫黄源が、硫化水素、二硫化炭素、並びにメチルスルフィド、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、ジエチルスルフィド及びジブチルスルフィド並びにこれらの2種以上の混合物から成る群より選択されるアルキルスルフィド、の1種以上である、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記ゼオライト及び/又は前記触媒組成物が蒸気源で処理され、前記ゼオライト及び/又は前記触媒組成物が、1以上のステップで、260℃(500°F)~649℃(1200°F)の範囲の温度で100%までの蒸気を含む前記蒸気源で処理される、請求項4又は請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記触媒組成物が、0.005質量%~15.0質量%の少なくとも1種のモリブデン又はタングステンである第1の金属、及び0.001質量%~15.0質量%の少なくとも1種のコバルト又はニッケルである第2の金属を含む、請求項1~のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
記モルデナイトゼオライトは、TEA又はMTEAから合成される、請求項1~のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記C8+芳香族炭化水素が、大気圧で135℃~230℃の範囲の沸点を有する芳香族化合物を含む、請求項1~のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記供給原料が、さらにベンゼン、トルエン又はその混合物を含む、請求項1~のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記供給原料が、9個以上の炭素原子を有するC9+芳香族炭化水素を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記脱アルキル及びアルキル交換するのに有効な転化条件が、少なくとも、340℃~515℃の温度、380kPa(55psia)~4240kPa(615psia)の圧力及び前記供給原料の質量に基づいて1~100時間-1の範囲の毎時質量空間速度(WHSV)を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
8+ 芳香族炭化水素を脱アルキル及びアルキル交換して、より軽質な芳香族生成物を生成する反応で使用するための触媒組成物の作製方法であって、前記触媒組成物は、(i)SM-12、及び、モルデナイトゼオライトであって、30m2/g超のメソ細孔表面積を有し、かつ一次結晶子で構成された凝集体を含み、前記一次結晶子は、TEMにより測定して80nm未満の平均一次結晶サイズ及び2未満のアスペクト比を有する、前記モルデナイトゼオライトから選択される1種以上のゼオライト、(ii)該触媒組成物の質量に基づいて、0.001質量%~20.0質量%の、モリブデン又はタングステンを含む少なくとも1種の第1の金属、及び(iii)該触媒組成物の質量に基づいて、0.001質量%~20.0質量%の、コバルト又はニッケルを含む少なくとも1種の第2の金属
を含み、
前記方法は、前記触媒組成物、1以上のステップで、204℃(400°F)から80℃(900°F)までの範囲の温度にて硫黄源で処理するか又は260℃(500°F)~649℃(1200°F)の範囲の温度で100%までの蒸気を含む蒸気源で処理す工程を含む、前記触媒組成物の作製方法
【請求項14】
前記触媒組成物が、アルミナ、シリカ、粘土、チタニア、ジルコニア及びこれらの2種以上の混合物から成る群より選択される少なくとも1種のバインダーをさらに含む、請求項13に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2016年10月10日に出願された米国仮出願第62/406,155号、及び2016年11月30日に出願された欧州出願第16201374.2号の利益並びにこれらの出願に対する優先権を主張する。これらの出願の開示内容は、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本発明は、重質芳香族化合物、特にC8+芳香族炭化水素の、より軽質な芳香族生成物、特にベンゼン、トルエン及びキシレン(以降BTXと総称する)への転化プロセス、並びに該プロセスで使用する触媒組成物に関する。より詳細には、本発明は、ゼオライト、第1の金属、及び任意選択で、第2の金属を含む触媒組成物の存在下でのキシレンの生成プロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
価値の低いC9+芳香族化合物をベンゼン又はトルエンとアルキル交換してキシレンを生成するプロセスはますます重要になっている。化学プラントは、理想的にはトルエン/ベンゼン同時供給を最小限にし、排除する可能性がありながら、できるだけ多くの重質C9+芳香族化合物を処理したいと考えている。成功する触媒系にとって、アルキル交換活性と脱アルキル活性は両方とも重要である。アルキル交換反応は、メチル基をアルキル交換してキシレンを形成する能力である。脱アルキル活性は、C9+芳香族化合物に存在するエチル及びプロピル基を脱アルキルして、より高いメチル/環種とのアルキル交換を受けてキシレンを形成し得る、より低いメチル/環種の形成を可能にする能力である。金属の機能は、脱アルキル反応中に生じたオレフィンを飽和させるために必要とされる。化学プラントが供給原料中のC9+量の増加に動くにつれて、許容できる活性及び触媒寿命が課題になってくる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
8+芳香族炭化水素を含む供給原料をキシレン等のより軽質な芳香族生成物に転化するための改善されたプロセスに対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
今や、本発明の触媒組成物は、前記触媒組成物を硫黄源及び/又は蒸気源で処理すると、重質芳香族化合物転化プロセスで生じたオレフィンを飽和させるのに有効でありながら、例えば、限定するものではないが、キシレン異性体を含めた所望のより軽質な芳香族生成物の飽和を最小限にすることが分かった。
第一態様では、本発明は、C8+芳香族炭化水素を含む供給原料の、より軽質な芳香族生成物への転化プロセスに関する。供給原料及び任意選択で水素を触媒組成物の存在下、前記C8+芳香族炭化水素を脱アルキル及びアルキル交換るのに有効な転化条件下で接触させて、ベンゼン、トルエン及びキシレンを含む前記より軽質な芳香族生成物を生成する。触媒組成物は、硫黄源及び/又は蒸気源で処理される。典型的に、供給原料中のC8+芳香族炭化水素は、大気圧で135℃~230℃の範囲の沸点を有する芳香族化合物を含む。典型的に、供給原料は、さらにベンゼン若しくはトルエン又はその混合物を含む。さらなる実施形態では、触媒組成物は、硫黄源及び任意選択で蒸気源で処理される。
【0006】
好ましくは、硫黄源による処理は、204℃(400°F)から約480℃(900°F)までの範囲の温度における1以上のステップを成している。
硫黄源は、硫化水素、二硫化炭素、並びにメチルスルフィド、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、ジエチルスルフィド及びジブチルスルフィド並びにこれらの2種以上の混合物から成る群より選択されるアルキルスルフィド、の1種以上である。
好ましくは、蒸気源による処理は、約260℃(500°F)~約649℃(1200°F)の範囲の温度で約100%までの蒸気であってよく、前記処理は1以上の温度ステップを成している。
1つ以上の実施形態において、ゼオライトは、12未満;又は3~12の範囲、若しくは5~9の範囲、若しくは0.6~3の範囲、若しくは0.3~0.6の範囲の拘束指数を有する。
1つ以上の実施形態において、触媒組成物は下記を含む:(i)少なくとも1種のゼオライト、(ii)前記触媒組成物の質量に基づいて、0.001質量%~20.0質量%の少なくとも1種の第1の金属(前記第1の金属は、周期表の第6族の金属である)、及び(iii)前記触媒組成物の質量に基づいて、0.001質量%~20.0質量%の少なくとも1種の第2の金属(前記第2の金属は、周期表の第9族又は第10族の金属である)。
好ましくは、第1の金属はモリブデン若しくはタングステン又はその混合物である。好ましくは、第2の金属はコバルト又はニッケルである。
【0007】
第二態様では、本発明は、C8+芳香族炭化水素を含む供給原料の転化プロセスであって、供給原料及び任意選択で水素を処理済み触媒組成物の存在下、前記C8+芳香族炭化水素を脱アルキル及びアルキル交換るのに有効な転化条件下で接触させて、ベンゼン、トルエン及びキシレンを含む、より軽質な芳香族生成物を生成するプロセスに関する。処理済み触媒組成物は、少なくとも1種のゼオライトを含む触媒組成物を準備するステップ、及び前記触媒組成物を第1の金属源又はその化合物及び異なる第2の金属源又はその化合物と接触させて金属含有触媒組成物を形成するステップを含む方法によって作られる。第1の金属及び第2の金属の独自性及び量は上記のとおりである。金属含有触媒組成物は、上述したように、硫黄源及び/又は蒸気源で処理されて処理済み触媒組成物を形成する。
【0008】
第三態様では、本発明は、(i)ゼオライト、(ii)触媒組成物の質量に基づいて0.001質量%~20.0質量%の少なくとも1種の第1の金属、及び(iii)触媒組成物の質量に基づいて0.001質量%~20.0質量%の少なくとも1種の第2の金属を含む触媒組成物であって、該触媒組成物は、好ましくは、1以上のステップで、204℃(400°F)~約480℃(900°F)までの範囲の温度にて硫黄源で処理されるか、又は好ましくは、約260℃(500°F)~約649℃(1200°F)の範囲の温度で約100%までの蒸気を含む蒸気源で処理される、触媒組成物に関する。
ゼオライトは、ゼオライトベータ、ZSM-4、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-12、ZSM-20、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-48、ZSM-50、ZSM-57、ZSM-58、MCM-68、フォージャサイトゼオライト、モルデナイトゼオライト、MCM-22ファミリー材料、又はその混合物から成る群より選択され得る。1つ以上の実施形態において、ゼオライトは、ゼオライトベータ、ZSM-5、ZSM-12、又は本明細書で定義されるTEA若しくはMTEAから合成されるモルデナイトゼオライトを含む。1つ以上の実施形態において、第1の金属はモリブデン若しくはタングステン、又はその混合物を含む。1つ以上の実施形態において、第2の金属は、コバルト若しくはニッケル、又はその混合物を含む。さらなる実施形態では、第1の金属がモリブデンであり、第2の金属がコバルトであるか又は第1の金属がタングステンであり、第2の金属がニッケルである。
【0009】
実施形態の詳細な説明
定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲のために、下記用語を定義する。
本明細書で使用する場合、用語「Cn芳香族炭化水素」は、1分子当たりn個の炭素原子を有する芳香族炭化水素を意味し、nは正の整数である。用語「Cn+芳香族炭化水素」は、1分子当たり少なくともn個の炭素原子を有する芳香族炭化水素を意味する。用語「Cn-芳香族炭化水素」は、1分子当たりn個以下の炭素原子を有する芳香族炭化水素を意味する。
本明細書で使用する場合、用語「芳香族」は、置換及び非置換単核及び多核環化合物を意味する。ベンゼン系列の化合物並びにヘテロ環式環であるか又はヘテロ環式環を含む芳香族性の化合物が芳香族化合物の例である。しかしながら、これらの置換芳香族化合物は、芳香核に付着した少なくとも1個の水素を含有しなければならない。芳香環は、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、ヒドロキシ基、アミン基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シクロアルキル基、ハライド基、及びこれらの基の混合物並びに所望反応を妨げない他の基で置換され得る。
【0010】
用語「炭化水素」は、炭素に結合した水素を含有する化合物の分類を意味し、(i)飽和炭化水素化合物、(ii)不飽和炭化水素化合物、及び(iii)炭化水素化合物(飽和及び/又は不飽和)の混合物(異なるn値を有する炭化水素化合物の混合物を含む)を包含する。
本明細書で使用する場合、用語「より軽質な芳香族生成物」は、生成物中の芳香族分子が供給原料中の芳香族分子の炭素原子より少ない炭素原子を有することを意味すると定義される。例えば、トルエン及び/又はベンゼンとのC9+アルキル交換反応の結果として生じる生成物の1つであるパラキシレンは、C9+芳香族分子中の9個以上の炭素原子より少ない8個の炭素原子を有する。
本明細書で使用する場合、用語「周期表」は、2013年5月1日付の国際純正・応用化学連合の元素周期表を意味し、これは、The Merck Index,Twelfth Edition,Merck&Co.,Inc.,1996の内表紙に記載のとおりである。
【0011】
本明細書で使用する場合、用語「メソモルデナイト」は、TEA又はMTEAから合成されたモルデナイトゼオライトを意味し、30m2/g超のメソ細孔表面積を有し、前記モルデナイトゼオライトは、一次結晶子で構成された凝集体(agglomerate)を含み、前記一次結晶子は、TEMにより測定して80nm未満の平均一次結晶サイズ及び2未満のアスペクト比を有し、これは参照することによりその内容全体を援用する米国出願公開第2016-0221832号に開示されているとおりである。
本明細書で使用する場合、用語「拘束指数」は、米国特許第3,972,832号及び第4,016,218号に定義されており、両特許の内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。「拘束指数」は、下記手順に従って大気圧で小サンプル、すなわち約1グラム以下の触媒の上を等質量のノルマルヘキサンと3-メチルペンタンの混合物を連続的に通すことによって決定し得る。ペレット又は押出物の形態の触媒サンプルを粗砂の粒径程度の粒径に粉砕し、ガラス管にマウントする。試験前に、触媒を538℃(1000°F)で少なくとも15分間空気流で処理する。次に触媒にヘリウムを流し、温度を288℃(550°F)~510℃(950°F)に調整して10%~60%の全転化率を与える。4:1のヘリウム対総炭化水素モル比を与えるようにヘリウムで希釈した触媒の上に炭化水素の混合物を1液時空間速度(liquid hourly spaced velocity)(すなわち、1時間毎の触媒1体積当たり1体積の液体炭化水素)で通す。操業20分後に、流出物サンプルを取り、最も便利にはガスクロマトグラフィーにより分析して、2種の各炭化水素について未変化のままである割合を決定する。「拘束指数」は、2種の炭化水素のクラッキング速度定数の比を近似し、以下のように計算される。
【0012】
【数1】
【0013】
本明細書で使用する場合、用語「TEA」はテトラエチルアンモニウムカチオンを意味する。
本明細書で使用する場合、用語「MTEA」はメチルトリエチルアンモニウムカチオンを意味する。
本明細書で使用する場合、用語「MCM-22ファミリーのモレキュラーシーブ」(又は「MCM-22ファミリーの材料」又は「MCM-22ファミリー材料」又は「MCM-22ファミリーゼオライト」は、下記の1つ以上を含む:
(i)一般的な第一級結晶構成ブロック単位格子から作られたモレキュラーシーブであって、単位格子がMWW骨格構造トポロジーを有するもの。(単位格子は原子の空間配置であり、3次元空間に敷き詰められると結晶構造を描写する。該結晶構造は、参照することにより内容全体を援用する「Atlas of Zeolite Framework Types」,Fifth edition,2001に論じられている;
(ii)一般的な第二級構成ブロックから作られたモレキュラーシーブであって、該MWW骨格構造トポロジー単位格子の2次元敷き詰めであり、1つの単位格子厚、好ましくは1つのc単位格子厚の単層を形成するもの;
(iii)一般的な第二級構成ブロックから作られたモレキュラーシーブであって、1つ又は複数の単位格子厚の層のものであり、複数の単位格子厚の層は、1単位格子厚の少なくとも2層を積み重ね、詰め、又は結合することから作られる。該第二級構成ブロックの積み重ねは、規則的様式、不規則様式、ランダム様式、又はその任意の組み合わせであり得る;及び
(iv)MWW骨格構造トポロジーを有する単位格子を有する単位格子の任意の規則的又はランダムな2次元又は3次元の組み合わせによって作られたモレキュラーシーブ。
【0014】
MCM-22ファミリーには、12.4±0.25、6.9±0.15、3.57±0.07及び3.42±0.07オングストロームに面間隔d(d-spacing)最大値を含むX線回折パターンを有する当該モレキュラーシーブが含まれる。材料の特徴づけに用いるX線回折データは、入射放射線として銅のK-α二重線を使用する標準技術並びにシンチレーションカウンターを備えた回折計及び収集システムとしての関連コンピューターによって得られる。
本明細書で使用する場合、用語「モレキュラーシーブ」は、用語「ゼオライト」と同義語として用いる。
一次結晶に関して使用するとき、用語「アスペクト比」は、結晶子の幅で除した結晶子の最長寸法と定義され、結晶子の幅は、TEMにより測定して、当該最長寸法に直交する方向の当該最長寸法の中点における結晶子の寸法と定義される。
本明細書で使用する場合、用語「一次結晶」は、凝集体とは対照的に単一の不可分結晶を表す。一次結晶は、典型的に弱い物理的相互作用(化学結合ではなく)を介して互いに付着して凝集体を形成する。本明細書では「結晶」及び「結晶子」を互換的に使用する。
【0015】
触媒組成物
本発明のプロセスに用いる触媒組成物は、(i)ゼオライト、(ii)触媒組成物の質量に基づいて0.001質量%~20.0質量%の少なくとも1種の第1の金属、及び(iii)触媒組成物の質量に基づいて0.001質量%~20.0質量%の少なくとも1種の第2の金属を含み、前記触媒組成物は、好ましくは、1以上のステップで、204℃(400°F)~約480℃C(900°F)までの範囲の温度にて硫黄源で処理され、又は好ましくは、約260℃(500°F)~約649℃(1200°F)の範囲の温度で約100%までの蒸気を含む蒸気で処理される。
触媒組成物のゼオライトは、12未満;又は10未満、若しくは8未満、若しくは6未満、若しくは4未満、若しくは2未満、若しくは1未満の拘束指数を有する。ゼオライトの拘束指数は、3~12の範囲内、又は5~9の範囲内、又は0.6~3の範囲内、又は0.3~0.6の範囲内であり得る。
【0016】
12未満の拘束指数を有するゼオライトとしては、ゼオライトベータ、ZSM-4、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-12、ZSM-20、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-48、ZSM-50、ZSM-57、ZSM-58、MCM-68、フォージャサイトゼオライト、モルデナイトゼオライト、MCM-22ファミリー材料、及びその混合物があり、これらの少なくとも1つから選択される。
3~12の拘束指数を有するゼオライトとしては、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-48、ZSM-57、ZSM-58、及びその混合物があり、これらから成る群より選択される。
5~9の範囲の拘束指数を有するゼオライトとしては、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-22、ZSM-23、及びその混合物があり、これらから成る群より選択される。
0.6~3の範囲の拘束指数を有するゼオライトとしては、ゼオライトベータ、ZSM-12、ZSM-50、MCM-22ファミリー材料、及びその混合物があり、これらから成る群より選択される。
3未満の拘束指数を有するゼオライトとしては、ゼオライトベータ、ZSM-4、ZSM-12、ZSM-20、ZSM-50、MCM-22ファミリー材料、MCM-68、モルデナイトゼオライト、例えばTEAモルデナイト、メソモルデナイト等、フォージャサイトゼオライト、例えばREY、Deal Y等があり、これらから成る群より選択される。3未満の拘束指数を有するこれらのゼオライトの混合物が企図される。
0.3~0.6の範囲の拘束指数を有するゼオライトとしては、ZSM-4、ZSM-20、モルデナイトゼオライト、例えばTEAモルデナイト、メソモルデナイト等、フォージャサイトゼオライト、例えばREY、Deal Y等がある。0.3~0.6の範囲の拘束指数を有するこれらのゼオライトの混合物が企図される。
【0017】
ZSM-4は米国特許第4,021,447号に記載されている。ZSM-5は米国特許第3,702,886号に記載されている。ZSM-11は米国特許第第3,709,979号に記載されている。ZSM-12は米国特許第3,832,449号に記載されている。ZSM-22は米国特許第5,336,478号に記載されている。ZSM-23は米国特許第4,076,842号に記載されている。ZSM-35は米国特許第4,016,245号に記載されている。ZSM-48は米国特許第4,375,573号に記載されている。ZSM-50は米国特許第4,640,829号に記載され、ZSM-57は米国特許第4,873,067号に記載されている。ZSM-58は米国特許第4,698,217号に記載されている。MCM-68は米国特許第6,049,018号に記載されている。
拘束指数及びその決定方法は、先述の米国特許第4,016,218号に記載されている。上記各特許は、参照することによりその内容全体が本明細書に組み込まれる。
【0018】
モルデナイトゼオライトは、30m2/g超のメソ細孔表面積を有し、一次結晶子で構成された凝集体を含み、前記一次結晶子は、TEMにより測定して80nm未満の一次結晶サイズ及び2未満のアスペクト比を有する。このモルデナイトゼオライトは、その高いメソ多孔性のため「メソモルデナイト」と呼ばれる。
MCM-22ファミリー材料としては、MCM-22、PSH-3、SSZ-25、MCM-36、MCM-49、MCM-56、ERB-1、EMM-10、EMM-10-P、EMM-12、EMM-13、UZM-8、UZM-8HS、ITQ-1、ITQ-2、ITQ-30及びこれらの2種以上の混合物があり、これらから成る群より選択される。
MCM-22ファミリーの材料としては、MCM-22(米国特許第4,954,325号に記載)、PSH-3(米国特許第4,439,409号に記載)、SSZ-25(米国特許第4,826,667号に記載)、ERB-1(欧州特許第0293032号に記載)、ITQ-1(米国特許第6,077,498号に記載)、ITQ-2(国際特許公開第WO97/17290号に記載)、ITQ-30(国際特許公開第2005/118476号に記載)、MCM-36(米国特許第5,250,277号に記載)、MCM-49(米国特許第5,236,575号に記載)、MCM-56(米国特許第5,362,697号に記載)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
MCM-22ファミリーに含めるべき関連ゼオライトは、UZM-8(米国特許第6,756,030号に記載)及びUZM-8HS(米国特許第7,713,513に記載)、UZM-37(米国特許第8,158,105号に記載)であり、これらは全てMCM-22ファミリーのモレキュラーシーブとしての使用にも適している。典型的に、MCM-22ファミリーのモレキュラーシーブは水素型であり、水素イオン、例えば酸性水素イオンを有する。上記各特許の全内容は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0019】
1つ以上の実施形態において、極小結晶サイズ及び高メソ細孔表面積を有するモルデナイトゼオライトは、本明細書で定義されるメソモルデナイトと呼ばれる。このメソモルデナイトゼオライトは、TEA又はMTEA構造指向剤から合成され、30m2/g超のメソ細孔表面積を有し、前記モルデナイトゼオライトは、一次結晶子で構成された凝集体を含み、前記一次結晶子は、TEMにより測定して80nm未満の平均一次結晶サイズ及び2未満のアスペクト比を有する。極小一次結晶サイズは、モルデナイトの細孔内の活性部位への反応体化合物の接近を促進し、それによって触媒効率を高める。
【0020】
メソモルデナイトゼオライトは凝集体、典型的に不規則の凝集体を含む。凝集体は、TEMにより測定して80nm未満、好ましくは70nm未満、さらに好ましくは60nm未満、例えば、50nm未満の平均一次結晶サイズを有する一次結晶子で構成される。一次結晶子は、TEMにより測定して、例えば、20nm超、任意選択で30nm超の平均一次結晶サイズを有してよい。
任意選択で、メソモルデナイトゼオライトの一次結晶は、X線回折により測定してa、b及びc結晶ベクトルのそれぞれにおいて、80nm未満、好ましくは70nm未満、場合によっては60nm未満の平均一次結晶サイズを有する。一次結晶子は任意選択で、X線回折により測定して、a、b及びc結晶ベクトルのそれぞれにおいて、20nm超、任意選択で30nm超の平均一次結晶サイズを有してよい。
メソモルデナイトゼオライトは、一般的に一次結晶の凝集体といくつかの非凝集一次結晶との混合物を含む。メソモルデナイトゼオライトの大半、例えば、80質量%超又は90質量%超は、一次結晶の凝集体として存在する。凝集体は典型的に不規則形態である。凝集体に関するさらなる情報については、Walter,D.(2013)Primary Particles-Agglomerates-Aggregates,in Nanomaterials(ed.Deutsche Forschungsgemeinschaft (DFG)),Wiley-VCH Verlag GmbH & Co.KGaA,Weinheim,Germany.doi:10.1002/9783527673919,pages 1-24を参照されたい。有用なことに、メソモルデナイトゼオライトは強凝集体(aggregate)でない。
【0021】
任意選択で、メソモルデナイトゼオライトは、80nm未満、好ましくは70nm未満、さらに好ましくは60nm未満、例えば、50nm未満の一次結晶サイズを有する一次結晶子で構成された前記不規則凝集体を、触媒組成物の質量に基づいて、少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも70質量%、有利には少なくとも80質量%、さらに好ましくは少なくとも90質量%含み、任意選択で実質的に該不規則凝集体から成る。好ましくは、本発明のメソモルデナイトゼオライトは、TEMにより評価して80nm超のサイズを有する一次結晶子を10質量%未満含む。好ましくは、本発明のメソモルデナイトゼオライトは、TEMにより測定して80nm未満の結晶サイズを有する結晶子で構成された前記不規則凝集体で構成されている。好ましくは、本発明のメソモルデナイトゼオライトは、針状又は血小板状結晶を実質的に含まず、例えば、TEMにより評価して数で10%未満含む。
好ましくは、本発明のメソモルデナイトゼオライトの前記一次結晶子は、3.0未満、さらに好ましくは2.0未満のアスペクト比を有し、アスペクト比は、結晶子の幅で除した結晶子の最長寸法と定義され、結晶子の幅は、TEMにより測定して、当該最長寸法に直交方向の当該最長寸法の中点における結晶子の寸法と定義される。
【0022】
前記一次結晶子の前記凝集体は、典型的に不規則形態であり、それらは、「一次」粒子である結晶子の凝集体で形成されるので、「二次」粒子であると称することができる。
一次結晶子は、数で少なくとも90%の一次結晶子が、TEMにより測定して20~80nmの範囲、好ましくは20~60nmの範囲の一次結晶サイズを有するような狭い粒径分布を有し得る。
メソモルデナイトゼオライトは、BETにより測定して30m2/g超、好ましくは40m2/g超、場合によっては45m2/g超のメソ細孔表面積を有する。
メソモルデナイトゼオライトは、好ましくは500m2/g超、さらに好ましくは550m2/g超、場合によっては600m2/g超の総表面積を有する。総表面積は、内部細孔の表面積(ゼオライト表面積)及び結晶外部の表面積(外部表面積)をも含む。総表面積は、BETにより測定される。
好ましくは、メソモルデナイトゼオライトのメソ細孔表面積対総表面積の比は0.05より大きい。
メソモルデナイトゼオライトは、好ましくは0.1ml/g超、さらに好ましくは0.12ml/g超、場合によっては0.15ml/g超のメソ細孔容積を有する。
本発明のメソモルデナイトゼオライトのモル比Si:Al2は、好ましくは10より大きく、例えば、10~60、好ましくは15~40の範囲内であり得る。処理後モルデナイトゼオライトのモル比Si:Al2は、好ましくは40~300、さらに好ましくは60~150の範囲内である。
メソモルデナイトの特徴づけ及びその製造方法は、参照することによりその内容全体を援用する米国特許出願公開第2016-0221832号にさらに記載されている。
【0023】
ゼオライトに加えて、触媒組成物は少なくとも1種の第1の金属、又はその化合物、及び異なる少なくとも1種の第2の金属、又はその化合物を含む。第1の金属は、周期表の第6族の中にある。第2の金属は、周期表の第9族又は第10族の中にある。第6族の第1の金属としては、限定するものではないが、モリブデン(Mo)又はタングステン(W)、及び中性金属若しくはそのイオンを含有する化合物の1種以上が挙げられる。第9族の第2の金属としては、限定するものではないが、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)及びイリジウム(Ir)、並びに中性金属若しくはそのイオンを含有する化合物の1種以上が挙げられ、好ましくはコバルトである。第10族の第2の金属としては、限定するものではないが、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)の1種以上が挙げられ、好ましくはニッケルである。
【0024】
本発明の1つ以上の実施形態では、触媒組成物の第6族の第1の金属は、触媒組成物の質量に基づいて、約0.001質量%~20質量%、又は0.005質量%以上から少なくとも15.0質量%まで、又は約0.10質量%から少なくとも10.0質量%までの範囲内であり得る。或いは、触媒組成物の第6族の第1の金属は、触媒組成物の質量に基づいて、少なくとも約0.001質量%、又は0.005質量%、又は0.01質量%、又は0.05質量%、又は0.10質量%から約1.0質量%、又は2.5質量%、5.0質量%、又は7.5質量%、又は10.0質量%、又は15.0質量%、又は20.0質量%までを構成する。
本発明の1つ以上の実施形態では、触媒組成物の第9族又は第10族の第2の金属は、触媒組成物の質量に基づいて、約0.001質量%~20質量%、又は0.001質量%以上から少なくとも15.0質量%まで、又は約0.005質量%から少なくとも10.0質量%までの範囲内であり得る。或いは、触媒組成物の第9族又は第10族の第2の金属は、触媒組成物の質量に基づいて、少なくとも約0.001質量%、又は0.005質量%、又は0.01質量%、又は0.05質量%、又は0.10質量%から約1.0質量%、2.5質量%、5.0質量%、又は7.5質量%、又は10.0質量%、又は15.0質量%、又は20.0質量%までを構成する。このパラグラフの上記百分率は、第9族金属のみ又は第10族金属のみ、又はその組み合わせについてである。
第1の金属及び/又は第2の金属は、触媒組成物にいずれの方法でも、例えば、触媒粒子の形成前又は後に関連金属の化合物の溶液によるゼオライト及び/又は第2のゼオライトの含浸又はイオン交換等の従来法によって与えることができる。
【0025】
好ましい実施形態では、本発明の触媒組成物は、(i)ゼオライトベータ、ZSM-5、ZSM-12又はTEA若しくはMTEAから合成されたモルデナイトゼオライトを含むゼオライト、(ii)触媒組成物の質量に基づいて、0.001質量%~20.0質量%の、モリブデン又はタングステンを含む少なくとも1種の第1の金属、及び(iii)触媒組成物の質量に基づいて、0.001質量%~20.0質量%の、コバルト又はニッケルを含む少なくとも1種の第2の金属を含み、前記モルデナイトゼオライトは、30m2/g超のメソ細孔表面積を有し、前記モルデナイトは、一次結晶子で構成された凝集体を含み、前記一次結晶子は、TEMにより測定して80nm未満の平均一次結晶サイズ及び2未満のアスペクト比を有し、前記触媒組成物は、1以上のステップで204℃(400°F)から約480℃(900°F)までの範囲の温度にて硫黄源で処理されるか又は約260℃(500°F)~約649℃(1200°F)の範囲の温度で約100%までの蒸気を含む蒸気源で処理される。
【0026】
触媒バインダー
触媒組成物中のゼオライトに、本発明のアルキル交換プロセスに用いる温度及び他の条件に対して抵抗性を示す別の材料を組み込むのが望ましいことがある。該材料としては、活性及び不活性材料、合成又は天然起源のゼオライト、並びに無機材料、例えば粘土、シリカ及び/又は金属酸化物、例えばアルミナ等がある。無機材料は、天然起源、又はシリカ及び金属酸化物の混合物を含むゼラチン質の沈殿物若しくはゲルの形態のどちらであってもよい。
本発明の触媒組成物は、アルミナ、シリカ、粘土、チタニア、ジルコニア及びこれらの2種以上の混合物から成る群より選択される少なくとも1種のバインダーをさらに含む。それ自体が触媒的に活性である材料をゼオライトと併せて使用すると、すなわちゼオライトと組み合わせて使用するか又はゼオライトの合成中に存在すると、触媒組成物の転化率及び/又は選択性を変えることがある。不活性材料は、希釈剤として適切に働いて転化量を制御し、その結果、反応速度を制御するための他の手段を利用せずに経済的及び規則正しい様式でアルキル交換生成物を得ることができる。これらの触媒的に活性又は不活性な材料を例えば、天然起源の粘土、例えばベントナイト又はカオリンに組み込んで、商業運転条件下での触媒組成物の破砕強度を改善することができる。商業用途では、触媒組成物が分解して粉状材料にならないようするのが望ましいので、良好な破砕強度を有する触媒組成物を提供することが望ましい。
【0027】
触媒組成物用バインダーとしてゼオライトと複合できる天然起源の粘土としては、モンモリロナイト及びカオリンファミリーがあり、これらのファミリーには、準ベントナイト、及び一般的にDixie、McNamee、Georgia及びFlorida粘土又は主鉱物成分がハロイサイト(halloysite)、カオリナイト、ジッカイト(dickite)、ナクライト(nacrite)又はアナウキサイト(anauxite)である他のものとして知られるカオリンが含まれる。該粘土は、当初採掘されたままの未加工状態で使用可能であり、或いは最初にか焼、酸処理又は化学修飾を受けることができる。
前述の材料に加えて、ゼオライトは、多孔性マトリックスバインダー材料、例えばシリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、トリア、ベリリア、マグネシア、及びその組み合わせ、例えばシリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、シリカ-ジルコニア、シリカ-トリア、シリカ-ベリリア、シリカ-チタニア、並びに三元組成物、例えばシリカ-アルミナ-トリア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-マグネシア及びシリカ-マグネシア-ジルコニア等から成る群より選択される無機酸化物と複合可能である。前述の多孔性マトリックスバインダー材料の少なくとも一部をコロイド形態で与えて触媒組成物の押出を促すのが有利なこともある。
各ゼオライトは、通常はバインダー又はマトリックス材料と混合可能であり、その結果最終触媒組成物は、触媒組成物の質量に基づいて、0~100質量%、例えば5質量%~90質量%、典型的に10質量%~60質量%等の量でバインダー又はマトリックス材料を含有する。
【0028】
硫化及び/又は蒸気による触媒組成物処理
触媒組成物を処理して、実質的にオレフィン飽和を抑制することなく、所望の軽質芳香族生成物の飽和を最小限にする。
所望の軽質芳香族生成物の飽和を最小限にする1つの方法は、触媒組成物を硫黄源、例えば、硫化水素H2S等で処理する硫化による。触媒組成物を1以上のステップで(段階的)約204℃から約480℃まで(約400°Fから約900°Fまで)の温度にて硫黄源と接触させることによって有効な処理が達成される。
一実施形態では、硫黄源を約50ppmwの硫黄~約10,000ppmwの硫黄の範囲の濃度で炭化水素供給原料に添加することによって硫黄源を触媒組成物と接触させる。
約480℃(900°F)以下で分解してH2S及び軽質炭化水素を形成することになるいずれの硫黄化合物も適切な硫黄源である。適切な硫黄源の例としては、二硫化炭素及びアルキルスルフィド、例えばメチルスルフィド、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、ジエチルスルフィド及びジブチル スルフィド等がある。硫黄のブレークスルーが起こると、すなわち硫黄が液体流出物に現れると、硫黄処理は十分であると考えることができる。
別の実施形態では、キャリアガス、典型的には水素又は窒素等の不活性ガスを介して硫黄源を触媒組成物と接触させ得る。
【0029】
さらに別の実施形態では、供給原料に硫黄源を組み込むことによって硫黄処理を開始し、数日間、典型的に、10日まで、さらに詳しくは、1~5日間硫黄処理を持続することができる。生成物オフガス中の硫黄濃度を測定することによって硫黄処理の進行をモニターすることができる。この処理中に、オフガス中の硫黄濃度は約20ppmw~約500ppmwの硫黄、好ましくは約30ppmw~250ppmwの範囲となるべきである。
連続的に硫黄源を同時供給すると、十分に最小限の芳香族水素化活性を維持することが分かった。反応器又は炭化水素供給原料に入る水素流によって各種量の硫黄を反応器に同時供給することによって、稼働中に触媒組成物を硫黄と接触させることができる。プロセスサイクルを通して硫黄を持続的に供給原料に添加することができ、或いは間欠的に持続して硫黄を添加することができ、この硫黄は一時期同時供給され、中断され、次に再び同時供給される。
所望の軽質芳香族生成物の飽和を最小限にする別の方法は、触媒組成物が蒸気源で処理される蒸気処理による、蒸気処理は、触媒組成物を少なくとも約260℃(500°F)から約649℃(1200°F)までの温度で、1以上の温度ステップで、少なくとも約1時間、詳しくは約1~約20時間、100kPa~2500kPaの圧力で、約100%までの蒸気、又は約5から100%までの蒸気と接触させることによって達成される。
これらの方法のいずれか1つ又は組み合わせをin-situ及び/又はex-situで実施することができる。
【0030】
触媒組成物の再生
触媒組成物を炭化水素供給原と接触させた後、触媒組成物はコーキング又は金属の凝集のため失活され得る。失活触媒組成物は、酸素又は酸素含有化合物、例えば、オゾン、オキソクロリン(oxochlorine)、二酸化炭素等を含む流れとのコークス焼成、酸化還元サイクルを用いる金属の再分散、オキソクロリド(oxochloride)処理等、液体炭化水素又は無機及び/若しくは有機化合物の水溶液、例えば、水、エタノール、アセトン等による洗浄、又は水素を含む流れによる若返り法によって都合よく再生可能である。周囲温度~約600℃の温度範囲、約100kPa-a~約5000kPa-aの圧力範囲、及び約0.2時間-1~約100時間-1のWHSVで再生又は若返り法を行うことができる。
【0031】
供給原料
本発明のプロセスに用いる供給原料は、少なくとも8個の炭素原子を含有する1種以上の芳香族化合物、例えば、C8+芳香族炭化水素を含む。具体的なC8+芳香族炭化水素としては、エチルベンゼン及びジメチルベンゼン異性体がある。典型的に、該C8+芳香族炭化水素は、大気圧で約135℃~約230℃の範囲の沸点を有する芳香族化合物を含む。
1つ以上の実施形態では、該供給原料は、9個以上の炭素原子を有する芳香族化合物、例えば、C9+芳香族炭化水素を含む。典型的な供給原料に見られる具体的なC9+芳香族化合物としては、メシチレン(1,3,5-トリメチルベンゼン)、ジュレン(1,2,4,5-テトラメチルベンゼン)、ヘミメリテン(1,2,4-トリメチルベンゼン)、プソイドクメン(1,2,4-トリメチルベンゼン)、エチルトルエン、エチルキシレン、1,2-メチルエチルベンゼン、1,3-メチルエチルベンゼン、1,4-メチルエチルベンゼン、プロピル置換ベンゼン、ブチル置換ベンゼン、ジメチルエチルベンゼン、メチルプロピルベンゼン、メチルブチルベンゼン、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0032】
適切なC9+芳香族源は、芳香族化合物に富むいずれの精製プロセスからのいずれのC9+留分であってもよい。この芳香族留分は、かなりの割合のC9+芳香族化合物、例えば、少なくとも80質量%のC9+芳香族化合物を含有し、好ましくは炭化水素の少なくとも80質量%、さらに好ましくは90質量%超がC9~C12の範囲である。役立ち得る典型的な精製留分としては、触媒リフォーメート(reformate)、流動接触分解(fluidized catalytic cracking)(FCC)ナフサ又は熱成形接触分解(thermoform catalytic cracking)(TCC)ナフサがある。
供給原料は、さらにベンゼン若しくはトルエン又はベンゼンとトルエンの混合物を含んでもよい。従って、1つの実用的な実施形態では、アルキル交換反応器への供給原料は、エチルベンゼン、C9+芳香族炭化水素及びトルエンを含む。供給原料は、再循環/未反応/生成ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、及び前記軽質芳香族生成物を含むプロセスの流出生成物の蒸留によって得られるC9+芳香族化合物を含んでもよい。典型的に、トルエンは供給原料の約5質量%~約90質量%を構成し、C9+は約10質量%~約95質量%を構成する。典型的な軽質供給原料では、トルエンは全供給原料の約40質量%~約90質量%、例えば50質量%~70質量%を構成し、一方C9+芳香族成分は、アルキル交換反応ゾーンへの全供給原料の10質量%~60質量%、例えば30質量%~50質量%を構成する。典型的な重質供給原料では、トルエンは全供給原料の約15質量%~約50質量%、例えば25質量%~40質量%を構成し、一方C9+芳香族成分は、アルキル交換反応ゾーンへの全供給原料の50質量%~85質量%、例えば60質量%~75質量%を構成する。
【0033】
炭化水素転化プロセス
8+芳香族炭化水素を含む供給原料の、より軽質な芳香族生成物への転化プロセスは、本発明の触媒組成物のいずれか1種の存在下、適切な転化条件下で、前記供給原料及び任意選択で水素を接触させて、ベンゼン、トルエン及びキシレンを含む前記より軽質な芳香族生成物を生成するステップを含む。適切な転化条件は、前記C8+芳香族炭化水素を脱アルキル及びアルキル交換するのに有効である。好ましくは、炭化水素転化は、水素の存在下、さらに好ましくは0.1~10、もっとさらに好ましくは0.5~5、例えば0.6~4の水素対炭化水素(H2/HC)のモル比で起こる。
好ましい実施形態では、触媒組成物は、硫黄源及び/又は蒸気源で処理され、かつ下記:(i)ゼオライトベータ、ZSM-4、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-12、ZSM-20、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-48、ZSM-50、ZSM-57、ZSM-58、MCM-68、フォージャサイトゼオライト、モルデナイトゼオライト、MCM-22ファミリー材料、又はその混合物から成る群より選択される少なくとも1種のゼオライト、(ii)前記触媒組成物の質量に基づいて0.001質量%~20.0質量%の少なくとも1種の第1の金属(前記第1の金属は、周期表の第6族の金属である)、及び(iii)前記触媒組成物の質量に基づいて0.001質量%~20.0質量%の少なくとも1種の第2の金属(前記第2の金属は周期表の第9族又は第10族の金属である)を含む。
【0034】
別の好ましい実施形態では、触媒組成物は処理済み触媒組成物であり、下記ステップ:(a)ゼオライトベータ、ZSM-4、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-12、ZSM-20、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-48、ZSM-50、ZSM-57、ZSM-58、MCM-68、フォージャサイトゼオライト、モルデナイトゼオライト、MCM-22ファミリー材料、又はその混合物から成る群より選択される少なくとも1種のゼオライトを含む触媒組成物を準備するステップ;(b)前記触媒組成物を第1の金属又はその化合物及び第2の金属又はその化合物と接触させて金属含有触媒組成物を形成するステップ、ここで、前記第1の金属は周期表の第6族の中にあり、前記第2の金属は周期表の第9族又は第10族の中にあり、前記金属含有触媒組成物は、触媒組成物の質量に基づいて、0.001質量%~20.0質量%の前記第1の金属、及び0.001質量%~20.0質量%の前記第2の金属を含む;及び(c)前記金属含有触媒組成物を硫黄源及び/又は蒸気源で処理して前記処理済み触媒組成物を形成するステップを含む方法によって作製される。
このプロセスで作製される、より軽質な芳香族生成物は、少なくともベンゼン、トルエン及びキシレンを含む。
【0035】
転化条件は、典型的に約340℃~約515℃、例えば約400℃~約454℃の範囲の温度;約380kPa-a~約4240kPa-a、例えば約1480kPa-a~約3550kPa-aの範囲の圧力;約1~約5、例えば約1~約3の水素対炭化水素モル比;及び約0.2時間-1~約100時間-1、例えば1時間-1~約100時間-1のWHSVを含む。アルキル交換反応条件は、重質芳香族供給原料を、相当量のC6-C8芳香族化合物、例えばベンゼン、トルエン及びキシレン、特にベンゼン及びキシレンを含有する生成物に転化させるのに十分である。アルキル交換反応条件は、供給原料中のエチルベンゼンをベンゼン及びエタンに転化させるのにも十分である。
このプロセスは、半径流、固定床、連続流又は流動床反応器を含め、いずれの適切な反応器でも実施可能である。1つの代替形態では、前記供給原料を前記適切な転化条件下で接触させるための反応器は、前記触媒組成物の少なくとも1つの単固定触媒床を含む。別の代替形態では、前記供給原料を前記適切な転化条件下で接触させるための反応器は、前記触媒組成物の少なくとも1つの移動触媒床を含む。
【実施例
【0036】

下記例は本発明を説明する。多数の変更形態及び変形形態が可能であり、添付の特許請求の範囲内で、本明細書に具体的に記載する以外に本発明を実施できるものと理解すべきである。
実験
平均一次粒径及び一次粒径分布の測定
平均一次粒径及び一次粒径分布の測定は以下のように行った。ゼオライトサンプルのいくつかのTEM写真を撮り;一次粒子を同定及び測定した。1より大きいアスペクト比を有する各一次粒子については、最も遠く離れた粒子端の2点間に線を引くことによって最長寸法を明らかにした。次に当該最長寸法に対して45°斜め方向に沿って、当該最長寸法の中点を通過する一次粒子の長さを粒径として測定した。サンプルに見られる粒径範囲を網羅する約10個の粒径範囲の1つに各測定値を割り当てることによってグループ化した。300超の一次粒子を測定してから各粒径範囲の粒子数をプロットして粒径分布を示した。y軸のパーセント(%)結晶値を以下のように計算した:各グループの粒子数/測定粒子の総数に100を掛けた。グループ化結果に基づく算術平均として平均粒径を計算した。
【0037】
BETによる総表面積及びメソ細孔表面積の測定
か焼ゼオライト粉末の350℃で4時間の脱気後にMicromeritics Tristar II 3020機器を用いた窒素吸着/脱着によって総BET及びtプロットミクロ孔表面積を測定した。メソ細孔表面積は、総BET表面積からtプロットミクロ孔表面積を減算することにより得た。同データセットからメソ細孔容積を導いた。この方法に関するさらなる情報は、例えば、“Characterization of Porous Solids and Powders: Surface Area,Pore Size and Density”,S.Lowell et al.,Springer,2004で見つけられる。
X線回折パターン
VANTEC多チャネル検出器を備えたBruker D4 Endeavor回折システムで銅Kα線を用いてX線回折データ(粉末XRD又はXRD)を収集した。0.018度2θの走査モードで回折データを記録した。θはブラッグ角であり、各ステップで約30秒の有効計数時間を用いた。
【0038】
a、b及びcベクトルの結晶サイズの測定
X線回折パターンの3つの(200)、(020)及び(002)ピークに基づいてシェラーの式を用いてa、b及びcベクトルの結晶サイズを計算した(P.Scherrer,N.G.W.Gottingen,Math-Pys.,2,p.96-100(1918))。この方法及びそのゼオライトへの適用は、A.W.Burton,K.Ong,T.Rea,I.Y.Chan,Microporous and Mesoporous Materials,117,p.75-90(2009)にも記載されている。ここに記載の測定のため、Materials Data,Inc.によるJadeバージョン9.5.1 X線回折分析ソフトウェアを用いて計算を行った。
α値
α値は、触媒組成物のクラッキング活性の尺度であり、それぞれ参照することによりここに援用する米国特許第3,354,078号並びにthe Journal of Catalysis,Vol.4,p.527(1965);Vol.6,p.278(1966)及びVol.61,p.395(1980)に記載されている。ここで用いた試験の実験条件には、the Journal of Catalysis,Vol.61,p.395(1980)に詳述されている538℃の一定温度及び可変流速を含めた。
硫化条件
15sccmの流速にて2%のH2Sで触媒を処理した。温度を2ステップで上昇させた。温度を1℃/分(60℃/時間)の増分で232℃(450°F)に上昇させ、その温度で16時間維持した。次に、1℃/分(60℃/時間)の増分で温度を343℃(650°F)に上昇させ、その温度で6時間維持した。
【0039】
例1-メソモルデナイト結晶
9,300gの水、804gのテトラエチルアンモニウムブロミド(TEABr)(50%溶液)、2,544gのUltrasil PM修飾シリカ、584gのアルミン酸ナトリウム溶液(45%)、及び612gの50%水酸化ナトリウム溶液から調製した混合物からメソモルデナイト結晶を合成した。次に、30gのモルデナイト種子を混合物に加えた。混合物は下記モル組成を有した。
【0040】
20リットル(5ガロン)のオートクレーブ内で250RPMにて撹拌しながら混合物を72時間143.3℃(290°F)で反応させた。生成物を濾過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、121℃(250°F)で乾燥させた。合成されたままの材料のXRDパターンは、モルデナイトの典型的な純粋相のトポロジーを示した。合成されたままの材料のSEMは、≦0.05μmの小さい結晶子で構成された不規則形状の凝集体の形態を示した。この改善された合成からは、従来技術のより低い多孔度のモルデナイト結晶に比べて、より小さく、より均一の結晶が生成された。結果の合成されたままのメソモルデナイト結晶は、約20.7のSiO2/Al23モル比を示した。
【0041】
合成されたままの結晶メソモルデナイトを室温で硝酸ナトリウム溶液を用いる3回のイオン交換によって水素型に転化させた後、121℃(250°F)で乾燥させ、538℃(1000°F)で6時間か焼した。結果として生じたH型メソモルデナイト結晶は、637/(580+56)m2/gの総表面積/(ミクロ+メソ)表面積及び0.43cc/gのメソ細孔容積を有した。ヘキサン吸着は53.3mg/gであり、α値は1,200だった。この例の結果に基づいて、より固形分の多い反応混合物及びより低い反応温度から、より高いメソ細孔容積及び表面積を有する小さくて均一のモルデナイト結晶を合成できると結論づけた。
【0042】
例2-メソモルデナイト/ZSM-5/アルミナ触媒(質量で65/15/20)
混和機(muller)内で例1からの65部(基礎:538℃でか焼)のメソモルデナイト結晶及び15部のZSM-5(米国特許第3,702,886に従って作製、基礎:538℃でか焼、約60/1モルのSi/Al2)及び20部のアルミナ(基礎:538℃でか焼)の混合物から触媒を作製した。十分な水を加えて押出機で押出可能ペーストを生成した。メソモルデナイト、ZSM-5、アルミナ、及び水の混合物を押し出して押出物を形成してから121℃で乾燥させた。乾燥押出物を窒素(N2)中538℃でか焼して分解し、有機テンプレートを除去した。N2か焼押出物を水で飽和した空気で加湿し、1Nの硝酸アンモニウムで交換させてナトリウムを除去した。硝酸アンモニウム交換後、押出物を脱イオン水で洗浄して残存硝酸イオンを除去した後に乾燥させた。アンモニウム交換押出物を121℃で乾燥させ、空気中538℃でか焼した。空気か焼後、結果として生じた触媒の特性は以下のとおりだった:α値=570;及びヘキサン吸着53.5mg/g。
【0043】
例3-メソモルデナイト/ZSM-5/アルミナ上の非硫化Co/Mo触媒
例2からの押出物(質量で65/15/20)に、溶液滴下含浸法(incipient wetness)によって酢酸コバルト(II)として1.8質量%のCo及びモリブデン酸アンモニウム四水和物として5質量%のモリブデンを含浸させた。触媒を空気中538℃で3時間か焼した。
例4-メソモルデナイト/ZSM-5/アルミナ上の硫化Co/Mo触媒
例3の触媒の一部を例4として性能試験前にH2Sで硫化させた。例3の触媒の残りの部分は非硫化のままだった。
例5-メソモルデナイト/ZSM-5/アルミナ上の硫化Mo触媒
例2の押出物(質量で65/15/20)に溶液滴下含浸法によってモリブデン酸アンモニウム四水和物として5質量%のモリブデンを含浸させた。触媒を空気中538℃で3時間か焼した。この例5の触媒を性能試験前にH2Sで硫化させた。
【0044】
例6-例3~5の性能評価
8+芳香族化合物、トルエン及びベンゼンの炭化水素転化反応において硫化金属の機能を評価した。非硫化コバルト-モリブデン(Co/Mo)系である例3を硫化Co/Mo系である例4、及び硫化Mo金属系である例5と比較した。下表に規定した供給ブレンドを用いた反応器内で評価を行った。
【0045】
表1-供給ブレンド
【表1-1】
【0046】
表1-供給ブレンド(続き)
【表1-2】
【0047】
3~4グラムの各触媒を反応器に充填した。上述したように例4及び5の触媒を2%のH2Sで硫化させた。その後、2%のH2Sを100%の水素としてから温度を430℃(806°F)に上昇させた。12時間の脱エッジング(de-edging)期に液体供給原料を導入した。脱エッジング及び温度走査の条件を以下に提供する。脱エッジング期後、条件を修正し、供給ブレンドについて温度走査を行った。硫化ステップなく、代わりに水素の存在下で加熱し、410℃(770°F)で活性化することによる還元ステップで、例3をも評価した。
脱エッジングの条件及びその後の反応条件は以下のとおりだった:脱エッジング条件:WHSV=3時間-1、H2/HC=1、温度=430℃(806°F)で12時間、及び圧力=2696kPa(391psig)。温度走査条件:WHSV=3時間-1、H2/HC=3、温度=355℃(671°F)で12時間、次に380℃(716°F)で12時間、次に405℃(761°F)で12時間、次に43℃(806°F)で12時間、及び圧力=2696kPa(391psig)。オンラインガスクロマトグラフィー(GC)によって生成物を分析した。例3~5の性能比較を下表2に示す。
【0048】
表2-硫化卑金属機能の性能
【表2】
* N/A=分析せず。
【0049】
表2に示すように、溶液滴下含浸法によってメソモルデナイト及びZSM-5の同時押出物に添加したモリブデン及びコバルト/モリブデンの組み合わせは、硫化したときに非常に良い性能をもたらした。硫化しないと、これらのタイプの金属は顕著な加水分解をし(芳香環からの炭素-炭素結合の金属切断)、結果として高メタン形成をもたらす。キシレン収率は高く、環損失は低かった。低い環損失は、金属機能が多数の芳香環の飽和を回避するには活性が低すぎることを意味する。エタン/エチレンモル比は非常に高い。エタン/エチレンモル比は、オレフィンを飽和する際の金属機能の有効性の指標である。以上のように、非硫化Co/Mo触媒は、顕著な加水分解活性(高いメタン収率)のみならず、硫化Co/Mo触媒に比べて低いアルキル交換活性及びキシレン収率を示す。
【0050】
例7-蒸気処理した65/35 質量/質量のZSM-12/アルミナ上のNi/W触媒
混和機内で65部(基礎:538℃でか焼)のZSM-12(基礎:538℃でか焼、約180/1モルのSi/Al2)及び35部のアルミナ(基礎:538℃でか焼)を混合することによって触媒を作製した。十分な水を加えて押出機で押出可能ペーストを生成した。ZSM-12、アルミナ、及び水の混合物を押し出して押出物を形成してから121℃で乾燥させた。乾燥押出物を窒素(N2)中538℃でか焼して有機テンプレートを分解及び除去した。N2か焼押出物を水で飽和した空気で加湿し、1Nの硝酸アンモニウムで交換させてナトリウムを除去した。硝酸アンモニウム交換後、押出物を脱イオン水で洗浄して残存硝酸イオンを除去した後に乾燥させた。アンモニウム交換押出物を121℃で乾燥させ、空気中538℃でか焼した。次に完全蒸気内で482℃にて押出物を5.25時間蒸気処理した。次いでこの蒸気処理した押出物に溶液滴下含浸法によって硝酸ニッケル六水和物及びメタタングステン酸アンモニウム水和物の二金属溶液を3質量%のNi及び15質量%のWという目標まで含浸させた。次に触媒を空気中482℃でか焼した。
【0051】
例8-蒸気処理した65/35 質量/質量のZSM-12/アルミナ上のFe触媒
混和機内で65部(基礎:538℃でか焼)のZSM-12(基礎:538℃でか焼、約180/1モルのSi/Al2)及び35部のアルミナ(基礎:538℃でか焼)を混合することによって触媒を作製した。十分な水を加えて押出機で押出可能ペーストを生成した。ZSM-12、アルミナ、及び水の混合物を押し出して押出物を形成してから121℃で乾燥させた。乾燥押出物を窒素(N2)中538℃でか焼して有機テンプレートを分解及び除去した。N2か焼押出物を飽和空気で加湿し、1Nの硝酸アンモニウムで交換させてナトリウムを除去した。硝酸アンモニウム交換後、押出物を脱イオン水で洗浄して残存硝酸イオンを除去した後に乾燥させた。アンモニウム交換押出物を121℃で乾燥させ、空気中538℃でか焼した。次に完全蒸気内で482℃にて押出物を5時間蒸気処理した。次いでこの蒸気処理した押出物に溶液滴下含浸法によって硝酸鉄九水和物の溶液を3質量%のFeという目標まで含浸させた。
【0052】
例9-蒸気処理した65/35 質量/質量のメソモルデナイト/アルミナ上のCo/Mo触媒
混和機内で例1からの65部(基礎:538℃でか焼)のメソモルデナイト結晶、35部のVersal 300擬ベーマイトアルミナ(基礎:538℃でか焼)、及び酢酸コバルト(II)四水和物及びヘプタモリブデン酸アンモニウムの二金属前駆体溶液を混合することによって触媒を作製した。十分な水を加えて押出機で押出可能ペーストを生成した。金属前駆体溶液をメソモルデナイト結晶(22.14kg/cmの破砕強度;124lbs/in)又はメソモルデナイト結晶とアルミナバインダーの混合物(26.43kg/cmの破砕強度;148lbs/in)に加えた。混合物を押し出して一晩121℃で乾燥させた。乾燥押出物を窒素(N2)中538℃でか焼して有機テンプレートを分解及び除去した。N2か焼押出物を飽和空気で加湿し、1Nの硝酸アンモニウム、又は酢酸アンモニウム、又は塩化アンモニウム、又は炭酸アンモニウム溶液で交換させてナトリウムを除去した。硝酸アンモニウム交換後、押出物を脱イオン水で洗浄して残存硝酸イオンを除去した後に乾燥させた。アンモニウム交換押出物を121℃で乾燥させ、空気中538℃でか焼した。空気か焼後、押出物を399℃(750°F)で2時間蒸気処理した。H型では、触媒は、4.2のα値、2.4のヘキサンクラッキング値、358(201+157)m2/gの表面積、及び2.08/12.7のCo/Mo 質量/質量を有した。
【0053】
例10-例7~9の性能評価
例7~9の触媒をC8+芳香族化合物及びトルエンの炭化水素転化反応で評価した。60質量%の下表に規定した重質芳香族化合物(HAR)、及び40質量%のトルエンで構成で構成された供給ブレンドを用いた反応器内でこれらの触媒を評価した。
【0054】
表3-重質芳香族化合物(HAR)組成
【表3】
【0055】
反応器に充填した2~5gの触媒上に供給原料を通した。触媒と接触させる前に供給原料と水素を予混合し、蒸発させる。反応器内にある熱電対を用いて温度を測定する。反応器を等温操作する。得られた生成混合物をG.C.を用いて分析する。ガスクロマトグラフィー分析データに基づいて、生成混合物の総質量に基づく質量百分率で生成混合物中の種々の成分の濃度を計算した。触媒の硫化は、連続的な同時供給により、それぞれ、Ni、Fe及びMoの量(モル)の3~4倍が触媒に沈着されるまで流速及び硫化時間を調整することによってH2中400ppmv(体積)のH2Sを用いて達成した。
例7~10の反応条件を下表4に示す。
性能結果を下表5A、5B及び5Cに示す。表に示すように、重要な知見は、硫化鉄は、転化を達成するためのより高い入口温度及び非常に低いエタン/エチレン比から明らかなように、これらは全く十分でない金属活性を示しており、他の卑金属の組み合わせより効果が低いことである。硫化Ni/Wは、重質芳香族化合物のアルキル交換に良い金属機能を有すると思われる。単床構成で試験すると、ZSM-12/アルミナ上のNi/W及びメソモルデナイト/アルミナ上のCo/Moは同様の活性を有するが、ZSM-12上のFeは同供給ブレンドでずっと低い活性を有する。しかしながら、ZSM-12/アルミナ上のNi/W及びZSM-12上のFeは、メソモルデナイト/アルミナ上のCo/Moに比べて低いエタン/エチレン比を有する。
【0056】
表4-反応条件
【表4】
【0057】
表5A-性能結果-触媒
【表5-1】
【0058】
表5B-性能結果-転化
【表5-2】
【0059】
表5C-性能結果-収率
【表5-3】
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕C 8+ 芳香族炭化水素を含む供給原料の、より軽質な芳香族生成物への転化プロセスであって、触媒組成物の存在下、前記C 8+ 芳香族炭化水素を脱アルキル及びアルキル交換して、ベンゼン、トルエン及びキシレンを含む前記より軽質な芳香族生成物を生成するのに有効な転化条件下で前記供給原料及び任意選択で水素を接触させるステップを含み、
前記触媒組成物は、硫黄源及び/又は蒸気源で処理され、かつ下記:
(i)ゼオライトベータ、ZSM-4、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-12、ZSM-20、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-48、ZSM-50、ZSM-57、ZSM-58、MCM-68、フォージャサイトゼオライト、モルデナイトゼオライト、MCM-22ファミリー材料、又はその混合物から成る群より選択される少なくとも1種のゼオライト、
(ii)前記触媒組成物の質量に基づいて、0.001質量%~20.0質量%の少なくとも1種の第1の金属(前記第1の金属は、周期表の第6族の金属である)、及び
(iii)前記触媒組成物の質量に基づいて、0.001質量%~20.0質量%の少なくとも1種の第2の金属(前記第2の金属は、周期表の第9族又は第10族の金属である)
を含む、前記プロセス。
〔2〕前記触媒組成物が、1以上のステップで、204℃(400°F)から約480℃(900°F)までの範囲の温度にて前記硫黄源で処理される、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔3〕前記硫黄源が、硫化水素、二硫化炭素、並びにメチルスルフィド、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、ジエチルスルフィド及びジブチルスルフィド並びにこれらの2種以上の混合物から成る群より選択されるアルキルスルフィド、の1種以上である、前記〔2〕に記載のプロセス。
〔4〕前記ゼオライト及び/又は前記触媒組成物が蒸気源で処理される、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔5〕前記蒸気源が、約260℃(500°F)~約649℃(1200°F)の範囲の温度で約100%までの蒸気を含み、前記処理が1以上の温度ステップを成している、前記〔4〕に記載のプロセス。
〔6〕C 8+ 芳香族炭化水素を含む供給原料の、より軽質な芳香族生成物への転化プロセスであって、処理済み触媒組成物を下記ステップ:
(a)ゼオライトベータ、ZSM-4、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-12、ZSM-20、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-48、ZSM-50、ZSM-57、ZSM-58、MCM-68、フォージャサイトゼオライト、モルデナイトゼオライト、MCM-22ファミリー材料、又はその混合物から成る群より選択される少なくとも1種のゼオライトを含む触媒組成物を準備するステップ;
(b)前記触媒組成物を第1の金属源又はその化合物及び第2の金属源又はその化合物と接触させて金属含有触媒組成物を形成するステップ、
ここで、前記第1の金属は、周期表の第6族の金属であり、
前記第2の金属は、周期表の第9族又は第10族の金属であり、
前記金属含有触媒組成物は、それぞれ該触媒組成物の質量に基づいて、0.001質量%~20.0質量%の前記第1の金属、及び0.001質量%~20.0質量%の前記第2の金属を含む;及び
(c)前記金属含有触媒組成物を硫黄源及び/又は蒸気源で処理して前記処理済み触媒組成物を形成するステップ、
を含む方法によって調製するステップ、
前記処理済み触媒組成物の存在下、前記C 8+ 芳香族炭化水素を脱アルキル及びアルキル交換して、ベンゼン、トルエン及びキシレンを含む前記より軽質な芳香族生成物を生成するのに有効な転化条件下で前記供給原料及び任意選択で水素を接触させるステップ
を含む、前記プロセス。
〔7〕前記硫黄源が、硫化水素、二硫化炭素、並びにメチルスルフィド、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、ジエチルスルフィド及びジブチルスルフィド並びにこれらの2種以上の混合物から成る群より選択されるアルキルスルフィド、の1種以上である、前記〔6〕に記載のプロセス。
〔8〕前記ゼオライト及び/又は前記触媒組成物が蒸気源で処理される、前記〔6〕又は前記〔7〕に記載のプロセス。
〔9〕前記ゼオライト及び/又は前記触媒組成物が、1以上のステップで、約260℃(500°F)~約649℃(1200°F)の範囲の温度で約100%までの蒸気を含む前記蒸気源で処理される、前記〔8〕に記載のプロセス。
〔10〕第6族の前記第1の金属が、モリブデン若しくはタングステン又はその混合物である、前記〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔11〕第9族の前記第2の金属がコバルトである、前記〔1〕~〔10〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔12〕第10族の前記第2の金属がニッケルである、前記〔1〕~〔11〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔13〕前記触媒組成物が、0.005質量%~15.0質量%の少なくとも1種の第6族の第1の金属(前記第1の金属はモリブデン又はタングステンである)、及び0.001質量%~15.0質量%の少なくとも1種の第9族又は第10族の第2の金属(前記第2の金属はコバルト又はニッケルである)を含む、前記〔1〕~〔12〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔14〕前記ゼオライトが、12未満の拘束指数を有する、前記〔1〕~〔13〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔15〕前記ゼオライトがモルデナイトゼオライトであり、前記モルデナイトゼオライトは、TEA又はMTEAから合成され、30m 2 /g超のメソ細孔表面積を有し、かつ前記モルデナイトゼオライトは、一次結晶子で構成された凝集体を含み、前記一次結晶子は、TEMにより測定して80nm未満の平均一次結晶サイズ及び2未満のアスペクト比を有する、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔16〕前記MCM-22ファミリー材料が、MCM-22、PSH-3、SSZ-25、MCM-36、MCM-49、MCM-56、ERB-1、EMM-10、EMM-10-P、EMM-12、EMM-13、UZM-8、UZM-8HS、UZM-37、ITQ-1、ITQ-2、ITQ-30及びこれらの2種以上の混合物から成る群より選択される、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔17〕前記C 8+ 芳香族炭化水素が、大気圧で135℃~230℃の範囲の沸点を有する芳香族化合物を含む、前記〔1〕~〔16〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔18〕前記供給原料が、さらにベンゼン、トルエン又はその混合物を含む、前記〔1〕~〔17〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔19〕前記供給原料が、9個以上の炭素原子を有するC 9+ 芳香族炭化水素を含む、前記〔1〕~〔18〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔20〕前記より軽質な芳香族生成物が、キシレン、ベンゼン、トルエン及びこれらの2種以上の混合物を含む、前記〔1〕~〔19〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔21〕前記適切な転化条件が、少なくとも、340℃~515℃の温度、380kPa(55psia)~4240kPa(615psia)の圧力及び前記供給原料の質量に基づいて1~100時間 -1 の範囲の毎時質量空間速度(WHSV)を含む、前記〔1〕~〔20〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔22〕前記供給原料を前記適切な転化条件下で接触させるための反応器をさらに含み、前記反応器は、前記触媒組成物の少なくとも1つの単固定触媒床を含むか又は前記反応器は、前記触媒組成物の少なくとも1つの流動床を含む、前記〔1〕~〔21〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔23〕触媒組成物であって、(i)ゼオライトベータ、ZSM-5、ZSM-12、及びTEA又はMTEAから合成されたモルデナイトゼオライトから選択される1種以上のゼオライト(前記モルデナイトゼオライトは、30m 2 /g超のメソ細孔表面積を有し、かつ前記モルデナイトゼオライトは、一次結晶子で構成された凝集体を含み、前記一次結晶子は、TEMにより測定して80nm未満の平均一次結晶サイズ及び2未満のアスペクト比を有する)、(ii)該触媒組成物の質量に基づいて、0.001質量%~20.0質量%の、モリブデン又はタングステンを含む少なくとも1種の第1の金属、及び(iii)該触媒組成物の質量に基づいて、0.001質量%~20.0質量%の、コバルト又はニッケルを含む少なくとも1種の第2の金属
を含み、
前記触媒組成物は、1以上のステップで、204℃(400°F)から約480℃(900°F)までの範囲の温度にて硫黄源で処理されるか又は約260℃(500°F)~約649℃(1200°F)の範囲の温度で約100%までの蒸気を含む蒸気源で処理される、前記触媒組成物。
〔24〕前記硫黄源が、硫化水素、二硫化炭素、並びにメチルスルフィド、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、ジエチルスルフィド及びジブチルスルフィド並びにこれらの2種以上の混合物から成る群より選択されるアルキルスルフィド、の1種以上である、前記〔23〕に記載の触媒組成物。
〔25〕アルミナ、シリカ、粘土、チタニア、ジルコニア及びこれらの2種以上の混合物から成る群より選択される少なくとも1種のバインダーをさらに含む、前記〔23〕又は前記〔24〕に記載の触媒組成物。