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特許7185628分析物検出装置および分析物を検出する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】分析物検出装置および分析物を検出する方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/44 20060101AFI20221130BHJP
【FI】
G01J3/44
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019531235
(86)(22)【出願日】2017-10-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 EP2017077150
(87)【国際公開番号】W WO2018103943
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-10-16
(31)【優先権主張番号】1620708.6
(32)【優先日】2016-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519204571
【氏名又は名称】エァーエスペィ・システムス・アーエス
【氏名又は名称原語表記】RSP SYSTEMS A/S
【住所又は居所原語表記】Egelundsvej 18, 5260 Odense S, Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100195006
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勇蔵
(74)【代理人】
【識別番号】100212657
【弁理士】
【氏名又は名称】塚原 一久
(72)【発明者】
【氏名】バンケ、ステファン・オーベセン
【審査官】古川 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-517465(JP,A)
【文献】特開2002-098636(JP,A)
【文献】特表2007-509319(JP,A)
【文献】特開2002-085385(JP,A)
【文献】国際公開第2016/023578(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/026138(WO,A2)
【文献】特開平07-049309(JP,A)
【文献】特開平11-190695(JP,A)
【文献】特開2001-141563(JP,A)
【文献】特開平09-089775(JP,A)
【文献】特開2016-105079(JP,A)
【文献】特開2008-46132(JP,A)
【文献】WROBEL, M.S.,Non-invasive blood glucose monitoring with Raman spectroscopy: prospects for device miniaturization,IOP Conference Series: Materials Science and Engineering,2015年,Vol.104, No.012036,p.1-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J3/00-G01J4/04
G01J7/00-G01J9/04
G01N21/00-G01N21/01
G01N21/17-G01N21/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物検出装置であって、
試料を照射するための放射線源;
前記放射線源からの受信放射に応答して前記試料から返送される放射の光ラマンスペクトルを受信するための、受信機
を含み、
前記スペクトルは検出される分析物において重要なスペクトル部分及び検出される分析物において重要ではないスペクトル部分を含み、
前記受信機が前記試料から返送される受信ラマン光スペクトルの周波数に応じて選択された部分を受信するようにそれぞれ配置された複数の異なる性能を有する分析デバイスを含み、
前記複数の異なる性能を有する分析デバイスが、前記検出される分析物において重要なスペクトル部分を検出するための少なくとも1つのCCDベースの分光器と、前記検出される分析物において重要なスペクトル部分を検出するための少なくとも1つのCMOSベースの分光器と、前記検出される分析物において重要ではないスペクトル部分を検出するための少なくとも1つの光ダイオードとを含む、分析物検出装置。
【請求項2】
受信される光スペクトルを濾過しかつ指定された成分を複数の異なる性能を有する分析デバイスの特定のデバイスに方向づけるように配置された1つまたは複数の濾過デバイスを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記異なる性能を有する分析デバイスが異なるレベルの分解能を有する、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記異なる性能を有する分析デバイスが異なるレベルの信号対雑音比を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記濾過デバイスが少なくとも1つの同調可能な濾過デバイスを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
同調可能な濾過要素が1つまたは複数の機械的に同調される濾過デバイス、電気的に同調される濾過デバイスおよび音響光学的に同調される濾過デバイスを含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
1つまたは複数のフーリエ波分光法および定在波集積フーリエ変換分光分析が使用される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記受信ラマン光スペクトルの1つまたは複数の選択された部分が分散部材に連関される、請求項1~7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記装置が分析物の濃度を決定するように配置される、請求項1~8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記分析物がグルコース、乳酸塩、脂肪酸、尿素、カルバミド、コレステロール、アルコールおよびヘモグロビンを含む群から選択される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の装置を使用する、分析物を検出する方法であって、
光放射により試料を照射すること;
光源からの受信放射に応答して前記試料から返送される放射の光ラマンスペクトルを受信すること;
前記受信されたラマンスペクトルの周波数の異なる部分を異なる分析デバイスに選択的に連関させること、
前記受信されたスペクトルを2つ以上の成分に濾過することおよび第1の分析デバイスに第1の成分をおよび第2の分析デバイスに第2の成分を連関させること、
を含み、
前記第1の分析デバイスがCCDベースの分光器であり、
前記第2の分析デバイスがCMOSベースの分光器である、方法。
【請求項12】
異なるレベルの分解能で1つまたは複数の前記成分を検出することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
異なるレベルの信号対雑音比で1つまたは複数の前記成分を検出することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1つまたは複数のフーリエ波分光法および定在波集積フーリエ変換分光分析が使用される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記受信されたラマン光スペクトルの1つまたは複数の選択された部分が分散部材に連関される、請求項11~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
分析物の濃度を決定することを含む、請求項11~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記分析物がグルコース、乳酸塩、脂肪酸、尿素、カルバミド、コレステロール、アルコールおよびヘモグロビンを含む群から選択される、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析物検出装置および分析物を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚に存在するグルコースまたは他の分析物の経皮in vivo測定のためのラマン分光法の使用は公知である。本発明者らの同時継続中の国際出願WO-A-2016/034448号には、光放射を用いて使用者の皮膚を照射し、次いで試料由来のラマン散乱放射を検出および測定することによって間質液中のグルコース濃度を測定すると予想される少なくとも1つの成分を有する共焦点検出装置の使用を記載している。このデバイスは上手く機能し、使用者の間質液内の血中グルコースレベル(血中グルコースレベルと相関する)の非侵襲性の測定方法を提供する。
【0003】
分析物濃度を測定または決定するためにラマン分光法を用いる最も知られているシステムは、しばしば、嵩高く且つ据え置き型である。ラマン分光法を使用する血糖測定分野では、適切に小型化された形態で提供される場合、デバイスは1日に血糖値を何度も決定する(直接またはその他で)必要がしばしばある糖尿病患者が使用するのに簡便且つ容易になるので、小型化が望ましい。
【0004】
WO2012019102号は、携帯型ラマン診断システムを開示している。このシステムは、生体系内の分析物濃度を抽出するための多変量検量についての情報を提供できる特定のフィルタ組み合わせの選択に関する。WO2012019102号のシステムは、試験デバイスのサイズを最小にしようとするための波長間隔の選択方法を利用する。複数の波長選択方法、小型化された分光学的装置の設計、および一方のドメイン(波長選択)から他方のドメイン(設計パラメータ)へマッピングするのに必要なツールが開示される。
【0005】
第39回International Microelectronics and Packaging(IMAPS)Poland 2015会議の一部として公開されたM.S.Wrobelによる「ラマン分光法を用いた非侵襲的血中グルコースモニタリング:デバイス小型化の展望」と題された記事において、受信したラマンスペクトル内の特定の波長の光信号を検出するための複数の光検出器の使用が開示されている。
【0006】
米国特許第5701005号、米国特許第7511255号、米国特許第5424826号、米国特許出願公開第2006/0262303号、米国特許出願公開第2013/0289414号、および米国特許第4997281号は、分光器および/または光濾過デバイスを含む光学系を開示する。これらの多くは、ラマン分光法に依存して試料についての情報を決定するシステム内で使用される。
【0007】
濃度測定に小型化ラマンデバイスが有用であると考えられる他の分析物または代謝産物の例は、任意の1つ以上の乳酸塩、脂肪酸、尿素、カルバミド、コレステロール、またはヘモグロビンを含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、分析物検出装置であって、試料を照射するための放射線源;上記放射線源からの受信放射に応答して試料から返送される放射の光スペクトルを受信するための受信機、を含み、ここで受信機が、試料から返送される受信光スペクトルの選択された部分を受信するようにそれぞれ配置された複数の異なるタイプの分析デバイスを含む、分析物検出装置を提供する。試料から返送される放射の光スペクトルは典型的には、ラマンスペクトルであろう。
【0009】
1つを超えるタイプの分析デバイスを含む分析物検出装置を提供する。これは、受信スペクトルの異なる部分を、対応して異なるタイプの分析デバイスに、特に異なるレベルの分解能および/または信号対雑音比を有し得る分析デバイスに、供給するか連関させることができることを意味する。したがって、問題の分析物に重要と見なされる受信スペクトル部分を、高分解能および/または高信号対雑音比を有する第1のタイプの分析デバイスに連関させることができ、一方で詳細な情報をあまり必要としないスペクトル部分を、より低い分解能およびより低い信号対雑音比を提供する第2のタイプの分析デバイスに連関させることができる。
【0010】
これは、複数の高分解能分析デバイスを必要とすることなく分析物についての十分に詳細なデータおよび十分なレベルのデータを出力として与える装置全体を提供できることを意味する。これは、それが許容できないほど低い品質または分解能の出力データを提供するという結果をもたらすことなく装置全体をより小さくおよび/または安価にできることを意味する。換言すれば、重要とみなされるスペクトル部分について同レベルの高品質データを提供でき、一方でそれを提供するために使用される装置をより簡潔に、より低価格で作成でき、かつより小さな物理的なサイズにできる。
【0011】
換言すれば、本装置は、ラマン分光法ベースの血糖機器をさらに小型化できる可能性を有する。これは、血糖を測定することを望みかつ都合よく携帯できるデバイスからの恩恵を受けるであろう糖尿病患者または他の患者にとって有利である。
【0012】
1つの実施形態では、本装置は、受信光スペクトルを濾過しかつ、指定された成分を複数の異なるタイプの分析デバイスの特定のデバイスに方向づけるように配置された、1つまたは複数の濾過デバイスを含む。
【0013】
濾過デバイスの使用は、受信したスペクトルを所望の成分または波長領域に容易且つ効率的に分離することを可能にする。これは次いで、各スペクトルの小領域を妥当な指定分析デバイスに方向づけることを可能にする。したがって、受信したスペクトルを、濾過要素によって複数の領域にさらに分割し、次いで各細分領域を、特定の分析デバイスに送る。
【0014】
1つの実施形態では、濾過デバイスは、少なくとも1つの同調可能な濾過デバイスを含む。同調可能な濾過デバイスを提供することは、装置の選択的構成を可能にし、したがって、それを、所望の分析物を分析できるように同調できる。調査される各分析物はそれ自体のラマンスペクトルを有し、したがって全受信スペクトル内の目的の領域は異なり得る。
【0015】
1つの実施形態では、同調可能な濾過要素は、濾過デバイス上の入射角(AOI)の変化によって同調可能な濾過要素を含む。別の実施形態では、同調可能な濾過要素は、フィルタの置換によって同調される濾過要素(リニアバリアブルフィルタ)を含む。そのようなフィルタにおいて、伝送窓は、フィルタの側面に対してシフトする。別の実施形態では、音響光学的に(電気的に)同調可能なフィルタを使用する。いくつかの実施形態では、異なるタイプの濾過要素の任意の組み合わせを使用できる。
【0016】
さらなる例は、結晶の屈折率が圧電変換器によって生成される高周波音波によって周期的に変調される、濾過要素である。そのようなデバイスでは、電圧変換器によって生成された波の周波数が屈折率変調期間を決定し、それにより、回折光の波長を決定する。
【0017】
1つの実施形態では、異なる分析デバイスは、少なくとも1つのCCDベースの分光器を含む。
【0018】
1つの実施形態では、異なる分析デバイスは、少なくとも1つのCMOSベースの分光器を含む。
【0019】
本発明の第2の態様によれば、分析物を検出する方法であって、光放射を用いて試料を照射すること;光源からの受信放射に応答して試料から返送される放射の光スペクトルを受信すること;受信したスペクトルの異なる部分を異なる分析デバイスに選択的に連関させることを含む方法を提供する。試料から返送される放射の光スペクトルは典型的には、ラマンスペクトルであろう。
【0020】
1つの実施形態では、本方法は、受信スペクトルを2つ以上の成分に濾過することおよび、第1の分析デバイスに第1の成分をおよび第2の分析デバイスに第2の成分を連関させることを含む。
【0021】
1つの実施形態では、第1の分析デバイスは、CCDベースの分光器である。
【0022】
1つの実施形態では、第2の分析デバイスは、CMOSベースの分光器である。
【0023】
本発明の実施形態を、ここに、添付の図面を参照して詳述するであろう:
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】照射された皮膚試料のラマンシフトスペクトルの略図である。
図2】分析物検出用装置の略図である。
図3図2の装置で用いる濾過構造の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
知られているように、分光学的設定の根拠は、試料を照らすために使用されるレーザーなどの光源である。光源からの光は試料と相互作用し、かつしばしば、試料を透過する、試料によって照射される、試料によって反射される、および/または試料によって散乱される光の変化をもたらす。変化した光の回収およびそのスペクトル分布の分析により、入射光と試料の間の相互作用についての情報を入手できる。それ故、試料内の分子成分についての情報を入手できる。
【0026】
入射光と分子成分の間の相互作用の一様式は、分子と入射光の光子の間にエネルギー交換があるラマン散乱である。周波数(すなわちラマン散乱光のスペクトル分布)は入射光のスペクトル分布とは異なり、分子の特定の振動レベルを独自に反映する;それ故、このスペクトルはフィンガープリントスペクトルである。これを、探索される物質の分子組成および/または物質中の特定の分子の濃度の同定のために使用できる。
【0027】
試料から返送されたスペクトルを、それが受信機により受信されるので、受信光スペクトルと呼ぶことができ、次いで、このスペクトルを処理または分析して、試料についての情報を得ることができる。
【0028】
本発明者らの同時継続出願WO-A-2016/034448号には、要因のうち特に、そこから検出された放射が分析される、試料内の深さを特定することによって結果を得ることができる光学的な構成および配置が記載されている。実際に、説明されるように、WO-A-2016/034448号は、測定のために回収されるラマン散乱光が皮膚内の特定の深さまたはその深さ付近から生じることを確実にすることがいくつかの利点をもたらし得ることを教示する。
【0029】
WO-A-2016/034448号の内容全体(収集されたデータ由来の試料内の深さならびに試料とデバイスの間の界面またはレンズの光学的および物理的な構成に関する特定の態様を含むが、これに限定されない)が本明細書中で参考として援用される。
【0030】
受信光スペクトルのスペクトル分布を典型的には、分光光度計を使用して測定する。分光光度計は、光学装置に向かう光線を異なる周波数の成分に分離すること、およびその後に分析デバイス(CCD検出器またはCCDアレイなど)を使用してこれらの成分の強度を測定することによって作動する光学装置である。
【0031】
図1は、測定対象から得たラマンスペクトルを示す。データは、被験体の拇指球領域のラマン分光学的研究から得られる。被験体の拇指球領域に光を照射し、検出されたスペクトル1を図1に示す。図1はラマングルコーススペクトル2も含み、それにより、測定対象から得たラマンスペクトルを使用して、試験領域中のグルコース濃度を決定できる。拇指球ラマンスペクトルは試験領域に存在するどの分子からの寄与も含むので、実際のグルコース濃度をこれから決定する必要がある。
【0032】
グルコーススペクトルが、A~Dとラベルされボックス3~6で囲まれる4つの主な強度増強領域を含むことに留意されたい。したがって、拇指球スペクトル1中のこれらの領域は、スペクトル1の他の部分よりもサンプリングされた領域中のグルコース濃度に関して比較的高いレベルの情報を含むであろう。
【0033】
分光器からの出力が、例えば高感度/低ノイズが他よりも高いレベルまで必要とされるスペクトルの部分を分解するように配置される場合、高価なCCD検出器の必要な使用を最低限にしながら高品質のシグナルを得ることが可能であると認識されている。
【0034】
最も顕著な変化がグルコースの含有量に起因する、スペクトルパターンA~Dを同定する。スペクトル全体を次いで、細部を変更して分析し、特に、調査される分析物の内容物から最も顕著に寄与する領域のみを高レベルの詳細さで調査する。これは、他のスペクトル領域を、仮にあったとしても、より簡便且つ低コストの分析機序を使用して分析できることを意味する。
【0035】
分解能および感度が高い方法を、より高いレベルの情報を有するスペクトル部分に指定でき、分解能および感度がより低い方法を、より情報の少ないスペクトル部分に指定でき、したがって測定の設定の複雑を顕著に低下する。
【0036】
図2は、ラマン分光法を使用してグルコース濃度を皮下およびin vivoで測定するための装置の略図を示す。本明細書中にグルコースレベルの検出および測定に関して記載するが、この方法および装置を使用して、目的の他の分析物の濃度を測定できる。
【0037】
装置7は、光源8、プローブ9、および検出器10を含む。検出器10を、図3を参照してより詳細に以下に記載するであろう。
【0038】
被験体11を、プローブ9の端部の皮膚表面との係合によって試験できる。被験体の皮膚11への光源8由来の光の連関機構は、上で既に言及されたWO-A-2016/034448号に詳述の通りであり得る。実際に、in vivoで被験体からラマンスペクトルを得るための公知の機構は多数あり、当該分野で開示の適切な任意のシステムをこのために使用できる。
【0039】
図2は、どのようにして光源8からの光がプローブ9によって被験体11に連関され、次いで分析デバイス10への連通のためにプローブ9によって受信されるのかを模式的に示す。分析システム10は、以下に説明するように、可能な分散要素を備えた多数の光検出用デバイスを含む。各光検出デバイスは、所望のレベルの分解能および信号対雑音比で受信シグナルを検出できるように、多数の異なるタイプの光検出デバイスから選択される。システム10内に少なくとも2つの異なるタイプの光検出デバイスが存在し、それにより、対応する少なくとも2つの分解能および/または信号対雑音比での検出を提供する。
【0040】
例えば、図1の拇指球スペクトル1の領域A、B、C、Dでは、CCDベースの分光器を使用して高感度および低ノイズが必要とされるスペクトル部分を分解し、CMOSベースの分光器を使用して、高い分解能が依然として必要であるが、より低い信号対雑音比が許容され得るスペクトル部分を分解できる。
【0041】
830ナノメートルレーザーを励起光源として(すなわち、図2の光源8として)使用する場合、ラマンスペクトルは、850ナノメートル~985ナノメートルで、または283~1900cm-1で測定される。
【0042】
図3を参照して、分析システム10の略図が示される。
【0043】
光12は、分析システム10への入力として受信される。複数の濾過デバイス14~14を提供する。濾過要素14~14の各々を、光の一部を伝送し別の部分を反射するように配置する。したがって、要素14~14の各々が伝送する光の部分16~16は、その周波数に応じて選択されたスペクトル部分を示す。問題の濾過要素14~14由来の対応する伝送成分または反射成分を入力として受信するようにそれぞれ配置される多数の分析デバイス18~18を提供する。したがって、装置は、それが受信するように配置されるスペクトルの対応部分について所望のレベルの分解能および/または信号対雑音比をもたらすように個別の分析デバイスまたは検出ユニット18~18を選択できるので、固有の柔軟性を有する。
【0044】
一例を挙げれば、濾過要素14~14はそれぞれダイクロイックフィルタである。別の例では、これらの要素は、格子または実際には任意の他の波長依存性濾過デバイスであり得る。一例を挙げれば、少なくとも2つの異なるタイプの濾過デバイスを使用する(例えば、スペクトルの異なる部分の選択のためにダイクロイックミラーおよび格子の両方を使用する)。
【0045】
1つの好ましい実施形態では、1つまたは複数の分析デバイス18~18は、分散要素を含む。これは、スペクトルの受信部分を分散することがより詳細な分析を可能にするので、調査中の分析物に関するデータを含むと予想される領域に特に有用である。
【0046】
図1では、ボックス3~6は、高レベルのグルコース情報を有するスペクトル領域を示す。濾過要素14~14は、エネルギーを周波数または波長に応じて、種々の分解能およびノイズフロアを有する異なる検出器に分割する。例として、グルコースに関連する重要なラマン振動を含むボックスA~Dによって示されるスペクトル領域を、分解能9cm-1のCCDベースの分光器によって検出することが好ましい。
【0047】
ボックスA~Dによって示される領域の外側のスペクトル領域を、周波数間隔にわたるシグナル勾配を単に評価するのに十分な分解能(例えば、25cm-1)を有するCMOSベースの分光器により、あるいは、平均強度のみを評価する必要がある場合は簡潔に光ダイオードを使用して、検出できる。実際に、グルコースに関する情報がほとんどないボックス外の領域については、検出器を全く設けないことも可能である。
【0048】
したがって、重要度の低いスペクトル部分に同量の資源を非効率に捧げることなく問題の分析に最も重要なスペクトル部分についてより多くのデータを引き出すことを可能にする、スペクトルの異なる部分の選択的な分析を可能にするシステムを提供する。重要度の低い部分に時間、努力、資源、またはコストを浪費することなくスペクトルの重要な部分に対して必要な完全なレベルの分析および調査を完了できる。所与の例では、グルコーススペクトルを拇指球由来のスペクトルに重ね併せて示す。これは、拇指球スペクトルの目的の領域の同定を可能にする。別の代謝産物または分析物が調査される場合、目的の領域はおそらくスペクトル上の他の位置にあるであろう。
【0049】
一例では、分光器を少なくとも1つの検出デバイスとして使用する。例えば、限定されない実施形態では、波長目盛定在波集積フーリエ変換分光分析(SWIFTS)を使用する。このSWIFSテクノロジーは、2007年8月にNature Photonics、第1巻に発表されたLe Coarerらによる表題が「定在波集積フーリエ変換分光分析」の論文(その内容全体が本明細書中で参考として援用される)に詳述される。より一般的なフーリエ変換分光法も使用できる。
【0050】
濾過要素が選択的におよび再構成可能に同調できる場合、システムを、調査される代謝産物または分析物に応じてスペクトルの異なる部分に注目するように変化させることができる。したがって、製造の際に、システムが全体として特定の選択された分析物の分析のために構成されるように、濾過要素を所望の周波数に同調する。
【0051】
同調可能なフィルタまたは濾過デバイスは、いくつかの異なるタイプのいずれかであり得る。例は、濾過デバイスに対する入射角(AOI)の変化によって同調可能なフィルタを含む。そのようなフィルタにおいて、伝送窓が、フィルタの垂線に対しAOIと共にシフトする。例は、Semrock Inc(IDEX Health and Science,LLC.の一部)製で、例えば、https://www.semrock.com/versachrome-edge-tunable-filters.aspxで認められるものを含む。
【0052】
他の例は、フィルタの置換によって同調されるもの(リニアバリアブルフィルタ)を含む。そのようなフィルタにおいて、伝送窓は、フィルタの側面に対してシフトする。例は、Delta Optical Thin Film A/S製で、例えば、http://www.deltaopticalthinfilm .com/products/linear-variable-filters/で認められるものを含む。
【0053】
さらなる例は、結晶の屈折率が圧電変換器によって生成された高周波音波によって周期的に変調される、音響光学的に(電気的に)同調可能なフィルタであろう。そのようなデバイスでは、電圧変換器によって生成された波の周波数が屈折率変調期間を決定づけ、それにより回折光の波長を決定づける。例は、例えば、http://www.olympusmicro.com/primer/techniques/confocal/aotfintro.htmlで認められるものを含む。
【0054】
図1の例を再度参照して、ダイクロイックミラーを使用して0~280cm-1の光が濾波され、スペクトル範囲283cm-1~1900cm-1の光は通過する。次いで、この光は、スペクトル部分を適切な分光器および/または検出器に導く別のフィルタ/ダイクロイックミラー組に入射する。したがって、フィルタスタックを、異なる分析方法が異なる部分に適用できるように、光を明確に画定されたスペクトル部分に分離するように配置する。
【0055】
記載の例では、装置を、ラマン分光法を使用して試料中のグルコースレベルを決定するために配置する。既に述べたように、装置および方法を、測定される分析物と無関係に使用できる。他の例は、1つまたは複数の乳酸塩、脂肪酸、尿素、カルバミド、コレステロール、またはヘモグロビンを含む。ラマンスペクトルを示す図1は、一定の波長のラマンピークまたはシフトを有することが公知の、他の分子をその上に示した。したがって、これらのうちの他のスペクトルが主に分析される場合、スペクトルの重要な単数の部分または複数の部分を受信するように配置された分析デバイスが、高分解能および高SNRであるように選択されるであろう。
【0056】
本発明の実施形態を、例示した実施例を特に参照して説明した。しかし、本発明の範囲内で、記載した実施例を変形および修正できると認識されるであろう。
図1
図2
図3