IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フィン−セラミカ ファエンツァ エス.ピー.エー.の特許一覧

特許7185629軟骨および骨軟骨面に深さを制御して異なる直径の孔を形成するための装置およびキット
<>
  • 特許-軟骨および骨軟骨面に深さを制御して異なる直径の孔を形成するための装置およびキット 図1
  • 特許-軟骨および骨軟骨面に深さを制御して異なる直径の孔を形成するための装置およびキット 図2
  • 特許-軟骨および骨軟骨面に深さを制御して異なる直径の孔を形成するための装置およびキット 図2a
  • 特許-軟骨および骨軟骨面に深さを制御して異なる直径の孔を形成するための装置およびキット 図3
  • 特許-軟骨および骨軟骨面に深さを制御して異なる直径の孔を形成するための装置およびキット 図3a
  • 特許-軟骨および骨軟骨面に深さを制御して異なる直径の孔を形成するための装置およびキット 図4
  • 特許-軟骨および骨軟骨面に深さを制御して異なる直径の孔を形成するための装置およびキット 図4a
  • 特許-軟骨および骨軟骨面に深さを制御して異なる直径の孔を形成するための装置およびキット 図5
  • 特許-軟骨および骨軟骨面に深さを制御して異なる直径の孔を形成するための装置およびキット 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】軟骨および骨軟骨面に深さを制御して異なる直径の孔を形成するための装置およびキット
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/17 20060101AFI20221130BHJP
【FI】
A61B17/17
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019536350
(86)(22)【出願日】2017-09-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 IB2017055626
(87)【国際公開番号】W WO2018055501
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】102016000094601
(32)【優先日】2016-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】508019403
【氏名又は名称】フィン-セラミカ ファエンツァ エス.ピー.エー.
【氏名又は名称原語表記】FIN-CERAMICA FAENZA S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Via Granarolo,177/3,I-48018 Faenza,Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【弁理士】
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】フィガッロ,エリサ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブス,ジョーダン エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】デ ルカ,クラウディオ
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02564792(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0299371(US,A1)
【文献】国際公開第2013/179013(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0079903(US,A1)
【文献】特表2002-540882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/16 - 17/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟骨および骨軟骨面に制御された深さおよび直径の孔を形成するためのキットにおいて、
装置(1)を備え、前記装置(1)は、
前記軟骨および骨軟骨面(A)から組織を除去するための切断ヘッド(3)を有するリーマー部材(2)であって、前記部材(2)は前記切断ヘッド(3)を前記組織に配置するために前記軟骨および骨軟骨面(A)に接近するよう可動であるリーマー部材と、
前記軟骨または骨軟骨面(A)と連結可能である、前記リーマー部材(2)を案内するための案内手段(4)であって、当該案内手段(4)は、前記軟骨および骨軟骨面(A)に部分的に挿入可能なピン(6)を備えており、前記リーマー部材(2)は、軟骨または骨軟骨面(A)から前記組織を除去する間に前記ピン(6)自体の長手方向の延設部に沿って軸方向に摺動するよう、前記軟骨または骨軟骨面(A)から突出する前記ピン(6)の自由端(6b)を収容する孔(8)を有する管状要素(7)を備える、案内手段と、を備え、
前記管状要素(7)は、前記切断ヘッド(3)を構成するとともに前記孔(8)へのアクセス開口部を有する第一端部(7a)と、前記第一端部(7a)とは反対側にあるとともに軟骨および骨軟骨面(A)からの組織の除去を実行するよう手動または電動で前記管状要素(7)および前記切断ヘッド(3)を回転させるための把持部材(10)を有する第二端部(7b)と、を有し、
前記把持部材(10)は、ハンドルを形成する第一部分(11)と、前記第一部分(11)とは反対側にあるとともに前記管状要素(7)の前記第二端部(7b)と結合するための結合受け部(14)を内部に有するブッシング(13)を有する第二部分(12)と、を備え、
前記案内手段(4)は、管状構造を有するとともに軟骨または骨軟骨面(A)に装着可能な第一端縁部(19)を有する支持体(16)を備えており、
前記リーマー部材(2)は、前記軟骨または骨軟骨面(A)から組織を除去する間に前記支持体(16)内において軸方向に摺動可能であり、
前記管状要素(7)は、前記第一端部(7a)に近接するとともに前記支持体(16)に収容される第一部分(17)と、前記第二端部(7b)に近接するとともに前記支持体(16)の外部に突出する第二部分(18)と、を有し、前記装置(1)は、
前記軟骨および骨軟骨面(A)に向かう対応する移動の際に前記リーマー部材(2)の端部ストップを形成し且つ孔の深さを制御するための機械的手段(5)を備え、前記キットはさらに、
前記ピン(6)を挿入するための貫通空洞部(30)を有する本体(29)を有する、前記ピン(6)を取り付けるための取り付け要素(28)と、
前記切断ヘッド(3)を位置決めするために軟骨または骨軟骨基準面(A)への切開を行うための少なくとも一つの切断ツール(34)を有する切開部材(33)と、を備え、
前記孔の深さを制御するための前記機械的手段(5)は、異なる孔の深さに対応する異なる厚さ(S)の対応するそれぞれの中央壁(24)を有する複数の円筒状インサート(22)を備え
前記複数の円筒状インサート(22)の各々は、前記第一端縁部(19)とは反対側にある前記支持体(16)の第二端縁部(20)から前記把持部材(10)の前記ブッシング(13)を離間させるよう前記管状要素(7)の前記第二部分(18)に装着可能である、キット。
【請求項2】
請求項1に記載のキットにおいて、
前記ピン(6)を取り付けるための前記取り付け要素(28)は、前記ピン(6)の前記貫通空洞部(30)を有する平坦部(31)を備えており、
前記平坦部(31)は前記本体(29)の端部に配置されるキット。
【請求項3】
請求項2に記載のキットにおいて、
前記平坦部(31)は、前記軟骨または骨軟骨面(A)との接触面(32)を有しており、
前記本体(29)は、対応する長手方向軸が前記軟骨または骨軟骨面(A)が位置する平面に対して垂直となるよう、前記ピン(6)の配置のための前記接触面(32)の平面延設部に対して垂直に延設されるキット。
【請求項4】
請求項3に記載のキットにおいて、
前記切断ツール(34)は、円形形状を有する切開を形成するための円形状ブレード(35)を備えており、
前記切開部材(33)はさらに、前記ピン(6)の前記自由端(6b)を収容するとともに前記円形状ブレード(35)と連結される中空体(36)を備えるキット。
【請求項5】
請求項に記載のキットにおいて、
前記複数の円筒状インサート(22)の各々は、環状形状を有する側壁(23)を構成するカップ状構造と、円形形状を有するとともに前記管状要素(7)の前記第二部分(18)を収容するための貫通孔(25)を有する前記中央壁(24)と、を有しており、
前記中央壁(24)は、前記軟骨または骨軟骨面(A)に形成される前記孔の前記深さを規定する厚さ(S)を有しており、
前記中央壁(24)は、前記支持体(16)に面するとともに前記第二端縁部(20)に装着可能な内部面(24a)と、前記ブッシング(13)に面するとともに前記結合受け部(14)が形成される前記ブッシング(13)自体の平坦面(14a)に装着可能な外部面(24b)と、を有するキット。
【請求項6】
請求項に記載のキットにおいて、
前記側壁(23)は前記支持体(16)の前記第二端縁部(20)の周囲に延設されており、
前記側壁(23)の外部円筒面(23a)上には、孔の深さを表す英字および/または数字および/または英数字表示または他の記号が印し付けられているキット。
【請求項7】
請求項に記載のキットにおいて、前記複数の円筒状インサート(22)の各々は、前記中央壁(24)の厚さ(S)が異なるインサート(22)と取り替えられるよう、前記管状要素(7)の前記第二部分(18)に取り外し可能に連結されるキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深さを制御しながら異なる直径の孔を軟骨および骨軟骨面(chondral and osteochondral surfaces)に形成するための装置およびキットに関する。
【0002】
特に、本発明は、例えば本願出願人の国際特許出願公開第2006/092718号(WO2006092718)に記載されている軟骨様構造および骨軟骨代替物(cartilaginous and osteocartilaginous substitutes)のような、軟骨および骨軟骨組織(chondral and osteochondral tissues)の再生のための軟骨様構造および骨軟骨代替物のための孔を形成することができる装置に関する。
【0003】
本発明はさらに、上述の孔を形成するための損傷を受けている軟骨または骨軟骨領域(damaged chondral or osteochondral area)を準備するためのキットに関する。
【背景技術】
【0004】
知られているように、軟骨および骨軟骨組織の再生のための軟骨および骨軟骨代替物(chondral and osteochondral substitutes)は、軟骨様構造や骨軟骨組織(cartilaginous or osteocartilaginous tissue)を(完全にもしくは部分的に)欠いている領域が見られる障害の治療のために、または軟骨様構造組織(cartilaginous tissue)ならびに/もしくは軟骨下骨組織(sub-chondral bone tissue)の新形成(neo-formation)のために、適用される。
【0005】
損傷の病状または原因に応じて、そのような軟骨や骨軟骨障害の形状、大きさおよび深さは異なり、したがって、外科技術はこれらのパラメータおよび適用される代替物に応じて変化する。
【0006】
軟骨様構造および骨軟骨代替物の埋没を進める前に、損傷を受けている組織を除去するために、関節切開または小関節切開(arthrotomic or mini-arthrotomic incision)を通じて障害の領域を露出することが適切である。より良好な機械的安定度ならびに軟骨様構造もしくは骨軟骨代替物と周囲の組織とのより良好な一体化、および、したがって、より良好な外科的有効性を保証するために、軟骨様構造もしくは骨軟骨代替物の埋没のための適当なハウジングを準備することが適切である。ハウジングは、例えば、障害自体の底部に対して垂直である側壁と、平坦な底部と、を有する。
【0007】
軟骨または骨軟骨代替物の適用を進めるためには、したがって、適当なハウジング場所を形成するよう、障害は適切な形状に形成され、および準備されなければならない。
【0008】
この目的のために、障害の大きさに基づくとともに、埋没する軟骨または骨軟骨代替物の大きさに応じて、孔は、所定の形状、幅および深さを有し、障害と一致するよう準備される。
【0009】
孔を形成するために、通常、手動器具が、例えば決められた大きさに障害を拡大するのに適したリーマー部材が、用いられる。
【0010】
このような器具は、障害を囲む領域から軟骨または骨軟骨組織を除去して、これにより孔を形成するのに適した切断ヘッドを備える。特に、切断ヘッドは、面に沿って延びており、その面自体を削り取って面組織をその面から除去する刃先を有する。刃先の運動は、手術医によって手動で実行される。手術医は、軟骨または骨軟骨組織を除去するために、対応する把持部材を作動することによって、その面上にヘッドを押圧すると同時にヘッドを回転させる。
【0011】
一般に、穿孔すべき領域にヘッドを正しく位置決めするために、ヘッドは、押圧・回転作用の際に手で保持される筐体に支持される。
【0012】
したがって、孔の大きさは切断ヘッドおよび刃先の大きさによって決まる。したがって、所望の幅に応じて、適当な大きさのヘッドを有する装置が選択される。
【0013】
さらに、孔の深さは、面の平面延設部に対して垂直な方向にヘッドを押圧するユーザの押圧作用によって調整される。
【0014】
したがって、孔の深さの制御は、決められた深さに到達したときに削り取り作用を停止するよう見ている手術医によって手動で実行される。
【0015】
しかしながら、この制御は、手動押圧評価に関して手術医による誤差範囲が大きくなりやすい。こういう理由で、想定されている孔よりも著しく深いまたは浅い孔は、外科的処置を長くし、手術の臨床的結果に対して良くない効果をもたらす虞があることを記載しておく。
【0016】
そのため、深さを制御しやすくするために、組織除去作用の際に手術医が見ることができる数値的基準を有する視覚的測定システムを一般に筐体に配置することが考えられる。
【0017】
しかしながら、穿孔作用の際に数値的基準を表示することができないので、そのようなシステムは深さの精密な測定を保証できない。この状況では、手術医は、達した深さを上述の数値的基準を通じて確認するために、ヘッドの押圧と回転の作用を定期的に停止しなければならない。
【0018】
この欠点を克服するために、器具には、筐体に対して切断ヘッドの決まった軸方向摺動が設定される。この場合、ヘッドのストロークによって、材料除去手術において到達する深さが決まる。
【0019】
したがって、ヘッドが延びる最大限度に達するまで、こうして軟骨または骨軟骨組織除去作用を過剰に行う虞なく、粉砕作用が手術医によって続けられる。
【0020】
しかしながら、この解決法でさえ、所定の大きさの孔を形成するために用いられる装置の数を過剰なほどに提供する必要があるので、重大な欠点から解放されていない。
【0021】
このため、孔の形成には、それぞれの装置が対応する深さの孔を形成するよう構成される非常に多くの装置を有する必要性があるため、より費用がかかる。
【0022】
この欠点に加えて、切断ヘッドの正しい動作を常に保証するためには、装置の管理コストに大きく影響する定期保守作業を装置は受けることになり、定期保守作業を多くのツールに行う必要性も考慮することも考察しなければならない。
【0023】
上にまとめた既知の装置のさらなる重大な欠点は、除去すべき軟骨または骨軟骨面に対してヘッドを手術医が方向付けることの難しさに起因する。実際、上述の通り、軟骨および骨軟骨面に対する筐体を位置決めし保持する作用は手で行われることを記載しておく。このため、ヘッドの回転の際に、軟骨または骨軟骨面の平面延設部に対して垂直である対応する前進方向に刃先を維持するのは難しい。
【0024】
したがって、本発明の主な技術的な課題は、上述した欠点を克服することができる、軟骨および骨軟骨面に孔を形成するための装置およびキットを提供することにある。
【発明の概要】
【0025】
本発明にかかる装置およびキットは、中程度/小さい欠陥の治療のために小関節切開または関節切開を通じて軟骨様構造および骨軟骨代替物の埋没を行いやすくすることを目的とする。これにより、それほど侵襲性でなく、より速く、より線形的な外科的なアプローチが、誤差範囲を小さくしながらしかも外科手術においてより良好な再現性および精度で、保証される。また、これにより、より侵襲性の外科的なアプローチに従って生じうる不都合な事態の発生を最小限にすることができると考えられる。また、本発明にかかる器具によれば、軟骨および骨軟骨障害の治療のために深さを制御しながら異なる直径の孔を形成できる。
【0026】
好適には、装置は、軟骨様構造および骨軟骨代替物の、例えば本願出願人の国際特許出願公開第2006/092718号に記載されるとともに図示されている軟骨様構造および骨軟骨代替物のハウジングのための孔を形成することができる。
【0027】
前記技術的な課題の範囲内において、本発明の重要な目的は、任意の深さの孔を形成することができる単一の装置を提案することである。
【0028】
特に、本発明は、実際のユーザによって所定の深さで孔を形成するために、ユーザの押圧作用を制限することができる装置を提供することを目的とする。
【0029】
本発明のさらなる目的は、軟骨および骨軟骨面に孔を効果的に形成できると同時に構造的に単純で使うのが容易である装置を提供することにある。
【0030】
また、本発明のさらなる目的は、孔を正しく形成するために軟骨または骨軟骨面を準備することができるキットを提供することにある。
【0031】
所期の技術的な課題および特定の目標は、添付の特許請求の範囲の一以上の請求項にかかる、軟骨または骨軟骨面に孔を形成するための装置およびキットによって十分に達成される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明の、軟骨または骨軟骨面に孔を形成するための装置およびキットを、以下の図面を参照して、例示的であって限定するものではない例を用いて、以降に説明する。
図1】本発明にかかる、軟骨または骨軟骨面に孔を形成するためのキットの斜視図を示す。
図2】治療すべき軟骨または骨軟骨面を準備するためのキットの使用の対応する段階の斜視図を示す。
図2a】治療すべき軟骨または骨軟骨面を準備するためのキットの使用の対応する段階の斜視図を示す。
図3】治療すべき軟骨または骨軟骨面を準備するためのキットの使用の対応する段階の斜視図を示す。
図3a】治療すべき軟骨または骨軟骨面の準備工程の際の、図3のキットの一部の側部断面図を示す。
図4】軟骨または骨軟骨面に孔を形成するための上述したキットの一部である本発明にかかる装置の斜視分解組立図を示す。
図4a】対応する動作条件における図4の装置の直立している側面図を示す。
図5】治療すべき軟骨または骨軟骨面を準備するためのキットの使用の対応する段階の斜視図を示す。
図6】治療すべき軟骨または骨軟骨面を準備するためのキットの使用の対応する段階の斜視図を示す。
【0033】
添付の図面を参照して、本発明にかかる軟骨または骨軟骨面「A」に孔を形成するための装置全体を参照符号1で示す(図4および図4a)。面「A」に上述した孔を準備し形成するために提供される装置1は、図1に全体を示すキット100に備えられる。
【0034】
特に、図1図4および図4aを参照して、略楕円形状構造を有する中実体の態様で例示の目的でのみ概略的に示す軟骨または骨軟骨面「A」から組織を除去するための少なくとも一つの切断ヘッド3を有するリーマー部材2を、装置1は備える。
【0035】
リーマー部材2は、ヘッド3を上述の組織に配置するために長手方向延設部の軸「X」に沿って、軟骨または骨軟骨面に接近するよう可動である。
【0036】
装置1はさらに、軟骨または骨軟骨面Aと強固に連結可能である、リーマー部材2の案内手段4を備える。言い換えれば、使用の際に、案内手段4は、軟骨または骨軟骨組織の対応する除去手術の際にヘッド3に安定した基準を提供するために、面「A」に連結される。
【0037】
この状態では、リーマー部材2を、上述の案内手段4に沿ってかつ上述の長手方向軸「X」に沿って摺動可能とできる。
【0038】
装置1はさらに、リーマー部材2と案内手段4との間に配置される、孔の深さを制御するための機械的制御手段5を備える。機械的手段5は、軟骨または骨軟骨面「A」に向かう長手方向軸「X」に沿った対応する移動の際に、リーマー部材2の機械的端部ストップ(止め)を構成する。
【0039】
これにより、面「A」に向かう軸「X」に沿ったリーマー部材2の移動に応じた孔の深さは、以下でさらに詳細に説明する通り、軟骨または骨軟骨面「A」のヘッド3の深さ方向に過度に摺動してしまうのを防止する上述の手段5によって機械的に設定される。
【0040】
また特に、案内手段4は、ロッド状構造を有するとともに軟骨または骨軟骨面「A」内に部分的に挿入可能な少なくとも一つのピン6によって構成される。
【0041】
より具体的には、ピン6は、ピン6自体を骨にしっかり固定するよう、面「A」に貫入するよう構成される尖端6aを有する。この状態では、ピン6は、面「A」から突出する自由端6bを有する(図2a)。
【0042】
好ましくは、ピン6は、軟骨様構造または骨軟骨代替物の適用を通じて治療すべき障害がある面「A」の領域に挿入される。
【0043】
ピン6の自由端6bはリーマー部材2へと挿入され、これにより、上述の長手方向軸「X」に対応するピン6の延設に沿って部材2自体の摺動が可能となる。
【0044】
特に図1および図4を参照して、リーマー部材2は、ピン6の自由端6bを収容するための孔8を有する管状要素7を備えることを記載しておく。
【0045】
管状要素7は、円形状断面を有し、上述の切断ヘッド3が連結されるとともに孔8へのアクセス開口部を有する第一端部7aを有する(図1)。
【0046】
なお、この点に関して、切断ヘッド3は、障害のリーマー加工作用を行うよう、面組織を削り取るのに適した少なくとも二つの刃先9を備えることを記載しておく。
【0047】
好ましくは、添付の図面を参照して、切断ヘッド3は、「十字」構成の、つまり二つの直交し合う線上に配置される、四つの刃先9を有する。
【0048】
各刃先9は、形成すべき孔の幅に応じた適切な大きさの構成を有する。
【0049】
さらに、それぞれの刃先9は管状要素7の第一端部7aから突出するそれぞれの対応する部分9aに形成されることを記載しておく。それぞれの部分9aは、互いに近傍にあり、そして管状要素7の周辺の延設部に関してそれぞれの刃先9が互いから90°で配置されるよう等間隔で配置されている。
【0050】
このように、対応する長手方向軸「X」の回りに管状要素7が回転することによって、ヘッド3の回転が行われ、面「A」に形成すべき孔の円形面を定義する円周経路に沿って各刃先9が少しずつ移動する。
【0051】
さらに、各刃先9は、組織の削り取りおよび除去作用を促進するために関連する歯を有することができる。好ましくは、そのような歯は大きい切断ヘッド3に形成される。しかしながら、他の形状を、骨表面など任意のタイプの面に孔を形成するためのヘッド3を適切に準備するよう、提供することもできる。
【0052】
管状要素7はさらに、第一端部7aとは反対側にある第二端部7bを有する。第二端部7bには、手術医によって保持されるのに適した把持部材10が構成されている。把持部材10は、軸「X」回りの管状要素7の(したがって切断ヘッド3の)回転を伝達すると同時に面「A」に向かってヘッド3を押圧する。
【0053】
好ましくは、把持部材10は、リーマー加工作用の終了時に係合解除できるよう、管状要素7に取り外し可能に連結可能である。
【0054】
特に、把持部材10は、人間工学的構造のハンドルを有する第一部分11と、円筒状構造を有するブッシング13を有する第二部分12と、を有する。第二部分12は、第一部分11とは反対側にある。ブッシング13は内部に、管状要素7の第二端部7bとの結合のための受け部14を有する(図1)。
【0055】
より詳細には、ブッシングの受け部14は、受け部14に対応した形状に形成される要素7の第二端部7bの端部部分15を収容するための断面正方形構造を有する。実際、端部部分15は正方形状の断面を有することを記載しておく。
【0056】
この端部部分15は、受け部14へ挿入されると、把持部材10をリーマー部材2と連結させるために機械的な結合により係合する利点がある。
【0057】
装置1はさらに、リーマー部材2を収容するための円形状断面の管状構造を有する支持体16を備える。
【0058】
より詳細には、図4および図4aを参照して、管状要素7は、第一端部7aに近接する第一部分と、第二端部7bに近接する第二部分18と、を有する。第一部分は、本体16に収容される。第二部分は、支持体16から突出する。
【0059】
図1および図4aからよりよく分かる通り、本体16は、軟骨または骨軟骨面「A」に配置すべき第一円形状端縁部19を有する。あるいは、本体16は、互いから間隔を空けて配置されるとともに同じ円形状経路に沿って延設されるアーチ状の二つのセミパーツによって形成される縁部19を有することもできる。
【0060】
軟骨または骨軟骨組織の除去作用の際にヘッド3を視覚的に制御できるよう構成される貫通窓21がさらに、本体16上の縁部19に形成される。
【0061】
実際、リーマー加工動作の際には、縁部19は面「A」と当接すると同時に深さ方向に掘るためにヘッド3は縁部19から突出することを記載しておく。この場合、ヘッド3の正しい動作を確認するためには窓21を通じた、手術医による視覚的制御が必要となる。
【0062】
第一端縁部19とは反対側で、第二端縁部20は、要素7の第二部分18に延設される。
【0063】
好ましくは、本体16の内部空洞は、管状要素7の囲繞および摺動を可能にするような寸法の断面を有する。
【0064】
孔の深さを制御するための機械的手段5は、支持体16の第二端縁部20から把持部材10のブッシング13を離間させるよう管状要素7の第二部分18に装着可能な少なくとも一つの円筒状インサート22を備える。
【0065】
好適には、円筒状インサート22は、略環状形状を有する側壁23を構成するカップ状構造と、円形状構造を有する中央壁24と、を有する。
【0066】
中央壁24は、管状要素7の第二部分18を挿入するための貫通孔25を有する。また、中央壁24は、軟骨または骨軟骨面「A」に形成される孔の深さを規定する厚さ「S」(図4a)を有する。
【0067】
言い換えれば、中央壁24は、ブッシング13がリーマー加工作用の際に第二縁部20と接触するのを防止するよう、ブッシング13を本体16から間隔を空けて配置している。
【0068】
実際、中央壁24は、支持体16に面するとともに第二端縁部20に装着可能な内部面24aと、ブッシング13に面するとともに上述の結合受け部14が形成されるブッシング13自体の平坦面14aに装着可能な外部面24bと、を有することを記載しておく。
【0069】
こうして、中央壁24の厚さの値「S」(内部面24aと外部面24bとの間の距離)は、孔の深さに反比例する。
【0070】
再度、側壁23は支持体16の第二端縁部20の周囲に延設されている。
【0071】
側壁23にはさらに、軟骨または骨軟骨面「A」に形成する孔の深さ(したがって中央壁24の厚さの値「S」)を表す英字/数字/英数字表示または他の記号やアイコンが示されている外部面23aを有する。
【0072】
したがって、このような表示によって、孔を形成するために、表示度数を有する、最も適当な円筒状インサート22を手術医に提供する。
【0073】
この目的のために、円筒状インサート22は、厚さ「S」が異なる、したがって、孔の所定の深さに達するために適当な機械的端部ストロークを提供できるインサート22と取り替えられるよう、管状要素7の第二部分18に取り外し可能に連結される。
【0074】
図4に示す通り、内部面24aが第二端縁部20と当接状態となるまで、インサート22は管状要素7の第二部分18に装着される。次に、把持部材10は、受け部14への端部部分15の挿入を通じて、管状要素7に連結される。
【0075】
このように、ハンドル11を作動することによって、管状要素7が回転し、同時に、ブッシング13の平坦面14aが中央壁24の外部面24bと当接状態となるまで面「A」に向かって押圧される。
【0076】
あらゆる場合において、インサート22が備えられることによって、軟骨または骨軟骨組織を除去するための手術においてヘッド3が達しなければならない正しい深さが保証される。
【0077】
本発明はさらに、上述の装置1を備える、孔を形成するためのキット100に関する。
【0078】
特に、図1に示す通り、キット100は、ピン6を挿入するために貫通空洞部30を有する本体29を備える、ピン6を取り付けるための要素28を有する。
【0079】
ピン6を取り付けるための要素28は、貫通空洞部30へのアクセス孔を有する、本体29の平坦端部31を有する(図1)。
【0080】
より詳細には、平坦部31は、本体29の長手方向の延設軸に垂直である延設平面上にある軟骨および骨軟骨面「A」と接触するための接触面32を有する。
【0081】
好適には、図2aの断面図において示す通り、本体29とそして対応する貫通空洞部30に対する接触面32の方向によって、対応する長手方向軸が軟骨または骨軟骨面「A」がある平面に対して垂直となるよう、ピン6を配置することができる。
【0082】
図2および図2aに示す通り、ピン6を取り付けるための要素28は、対応する接触面32が治療すべき障害に(添付の図面には示していない)ぴったり合うよう、面「A」に載置される。
【0083】
接触面32が軟骨または骨軟骨面「A」に載置されると、端部6aが面「A」内に貫入するよう、ピン6が貫通空洞部30内へと挿入される(図2a)。なお、ピン6を取り付けるための要素28の本体29の長さは、軟骨または骨軟骨面「A」に挿入されるピン6の自由端6bの長さと同じであることを記載しておく。
【0084】
こうして、ピン6の挿入の最適な深さが、ピン6を、対応する自由端6bが空洞30内に完全に収容されるまで、面「A」内に挿入することにより、得られる。
【0085】
ピン6が挿入された後、穿孔のためにピン6が面「A」の領域から突出した状態のまま、本体29が抜き取られる。
【0086】
キット100はさらに、ヘッド3を位置決めするために軟骨または骨軟骨基準面「A」への切開を行うための少なくとも一つの切断ツール34を有する切開部材33を備える。
【0087】
特に、切断ツール34は、円形形状を有する切開を形成するための円形状ブレード35を備える。ツール34は、円形状断面を有する略管状構造を有する中空体36の端部に連結される。
【0088】
中空体36は、ブレード35の中心にアクセスできるとともにピン6の上述の自由端6bを収容するのに適した内孔37を有する。
【0089】
軟骨または骨軟骨面上でツール34を容易に回転させることができるよう、中空体2は、人間工学的ハンドルを有する把持部分38と係合する。ツール34へと反対側から延設される把持部分38は、好ましくは、手術医によって保持されるとともに容易に移動させるための略円筒状構造を有する。
【0090】
またこの場合、形成すべき孔に応じて対応する直径を有する切断ツール34を選択することができる。
【0091】
このように、ピン6を取り付けるための要素28が取り外されると、中空体36が、軟骨および骨軟骨面「A」へ挿入されたピン6の自由端6bに装着される。
【0092】
手動作用および/または場合によっては部分38に作用する適切な電動システムを用いることによる自動作用を通じて、したがって、手術医は、切開を容易にするよう円形状ブレード35を面「A」上に押圧すると同時にツール34を回転させながら面「A」を切開することができる(図3および図3a)。
【0093】
切開が行われると、部材33は、面「A」とまだ係合状態にあるピン6から抜き取られる。
【0094】
この時点で、把持部材10が管状要素7の端部部分15に連結される。
【0095】
なお、この状況で、キット100は、異なる厚さ「S」を有する、したがって異なる深さの孔を形成する複数の円筒状のインサート22を備えることを記載しておく。また、図1および図4からより明瞭に分かる通り、インサート22の中央壁24の厚さ「S」が大きくなるにしたがって(したがって孔の深さが小さくなるにしたがって)、側壁23の長手方向断面幅は小さくなることを記載しておく。
【0096】
例として、図1は、それぞれ孔の深さを2mmに、孔の深さを4mmに、そして6mmに規定する三つのインサート22を示す。6mmの孔を規定するインサートの側壁23は、4mmの孔を規定するインサートの側壁23より幅広である。4mmの孔を規定するインサートの側壁23は、2mmの深さを規定するインサートの側壁23より幅広である。
【0097】
好適には、手術医は、(例えば図1のように)側壁23に印し付けられた英字/数字/英数字表示または装飾的な表示を読み取ることによって、または埋没すべき軟骨または骨軟骨代替物の厚さと壁23の幅を比較することによって、形成すべき深さのための正しいインサート22を選択できる利点がある。
【0098】
したがって、インサート22の選択を、軟骨または骨軟骨代替物とインサート22の側壁23との直接比較によってでさえ、非常に簡単に即座に行える。
【0099】
形成すべき孔の深さに適しているインサート22を選択すると、それを要素7の第二部分18に装着し、第二部分18自体に、端部部分15への把持部材10の続く係合を通じて、係止する。
【0100】
この時点で、管状要素7は、自由端6bを孔8に挿入することにより、ピン6に装着され、これにより、第一端縁部19を切開部材33によって予め形成された円形状切開と一致させることができる。
【0101】
装置1が位置決めされると、ヘッド3を回転させるとともに面「A」へと押圧して、孔の最終設定に基づいて軟骨または骨軟骨材料を除去する。上述の通り、インサート22によって、孔の深さを規定する機械的端部ストップが決まる。したがって、ブッシング13がインサート22と接触すると、リーマー加工動作が停止され、そして、装置1はピン6から取り外される。
【0102】
孔Aへとピン6によって案内される要素28はさらに、孔の深さを測定するために用いられる。この目的のために、英字/数字/英数字インジケータまたは図的表現が、部分31の見える面に印し付けられる、好ましくは刻印される。
【0103】
このようなインジケータは、手術医が実際に素早く孔の深さを測定するのに役立つ。
【0104】
正しい孔の大きさを確認すると、要素28とピン6とを孔自体から手で引っ張って取り外す。
【0105】
本発明にはいくつかの利点があり、所期の目的を達成できる。
【0106】
とりわけ、装置1は、異なる大きさのインサート22によって設定される機械的制御を利用して、任意の深さの孔を形成することができる。
【0107】
孔を形成するための機械的な部材をすべて維持しながら、インサート22だけを、形成すべき孔の深さに適しているものに置き換えるので、装置1は非常にコスト効率が高いという利点がある。
【0108】
本発明のさらなる利点は、機械的制御と視覚的制御の両方の深さ制御システムを利用することにより、効果的に孔を形成することができる装置1の構造上かつ動作上の簡単化によって得られる。
【0109】
さらに、キット100は、面「A」を、孔を正しく形成するために準備できる。この利点は、ピン6と、面「A」に対するピン6の垂直度を保証する対応する挿入システムと、によって得られる。こうして、ピンによって、装置1の案内・位置決め部材をリーマー加工工程の際に切断ヘッド3の正しい方向に設定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0110】
【文献】国際特許出願公開第2006/092718号(WO2006092718)
図1
図2
図2a
図3
図3a
図4
図4a
図5
図6