(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20221130BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20221130BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
H01L21/78 Y
H01L21/78 M
H01L21/78 P
H01L21/78 W
H01L21/68 N
H01L23/12 501P
(21)【出願番号】P 2019554182
(86)(22)【出願日】2018-11-07
(86)【国際出願番号】 JP2018041297
(87)【国際公開番号】W WO2019098102
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2017220811
(32)【優先日】2017-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 直也
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 高志
(72)【発明者】
【氏名】山田 忠知
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-127115(JP,A)
【文献】特開2006-160935(JP,A)
【文献】特開2017-076748(JP,A)
【文献】特開2001-226650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/683
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(Y1)及び粘着剤層(X1)を有
する、膨張性の粘着シート(A)を用いる半導体装置の製造方法であって、
基材(Y1)が、膨張性粒子を含む膨張性基材(Y1-1)であり、
基材(Y1)の23℃における貯蔵弾性率E’(23)が、1.0×10
6
~5.0×10
12
Paであり、
下記工程(1)~(3)をこの順で有する、半導体装置の製造方法。
工程(1):粘着シート(A)の粘着剤層(X1)に被加工物を貼付した後、該被加工物をダイシングし、粘着剤層(X1)の上に個片化した複数のチップを得る工程。
工程(2):基材(Y2)及び粘着剤層(X2)を有する粘着シート(B)を用いて、前記複数のチップの粘着剤層(X1)と接する面とは反対側の面に、粘着シート(B)の粘着剤層(X2)を貼付する工程。
工程(3):前記膨張性粒子を膨張させて、粘着シート(B)に貼付した前記複数のチップと粘着シート(A)とを分離する工程。
【請求項2】
粘着シート(B)がエキスパンド用の粘着シートであって、工程(3)の後に、さらに、下記工程(4A)を有する、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
工程(4A):粘着シート(B)に貼付された前記複数のチップ同士の間隔を、粘着シート(B)を引き伸ばして広げる工程。
【請求項3】
基材(Y3)及び粘着剤層(X3)を有するエキスパンド用の粘着シート(C)を用いて、さらに、下記工程(4B-1)~(4B-3)を行う、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
工程(4B-1):粘着シート(B)上の複数のチップの粘着剤層(X2)と接する面とは反対側の面に、粘着シート(C)の粘着剤層(X3)を貼付する工程。
工程(4B-2):粘着シート(C)に貼付された複数のチップから粘着シート(B)を分離する工程。
工程(4B-3):粘着シート(C)に貼付された前記複数のチップ同士の間隔を、粘着シート(C)を引き伸ばして広げる工程。
【請求項4】
前記エキスパンド用の粘着シートが、23℃におけるMD方向及びCD方向に測定される破断伸度が100%以上である、請求項2又は3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記膨張性粒子が、膨張開始温度(t)が60~270℃の熱膨張性粒子であり、前記工程(3)が、前記粘着シート(A)を加熱することにより、粘着シート(B)に貼付した前記複数のチップと、粘着シート(A)とを分離する工程である、請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
工程(1)が、前記被加工物をダイシングした後、粘着シート(A)を引き伸ばす処理を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記膨張性粒子が膨張する前の23℃における、粘着シート(A)の粘着剤層(X1)の粘着力が、0.1~10.0N/25mmである、請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
粘着シート(A)が有する基材(Y1)の表面におけるプローブタック値が、50mN/5mmφ未満である、請求項1~7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
基材(Y1)の23℃における貯蔵弾性率E’(23)が、5.0×10
6
~5.0×10
12
Paである、請求項1~8のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記被加工物が、半導体ウエハである、請求項1~9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
ファンアウト型の半導体装置の製造方法である、請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、軽量化及び高機能化が進んでおり、これに伴って、電子機器に搭載される半導体装置にも、小型化、薄型化及び高密度化が求められている。
半導体チップは、そのサイズに近いパッケージに実装されることがある。このようなパッケージは、CSP(Chip Scale Package)と称されることもある。CSPとしては、ウエハサイズでパッケージ最終工程まで処理して完成させるWLP(Wafer Level Package)、ウエハサイズよりも大きいパネルサイズでパッケージ最終工程まで処理して完成させるPLP(Panel Level Package)等が挙げられる。
【0003】
WLP及びPLPは、ファンイン(Fan-In)型とファンアウト(Fan-Out)型に分類される。ファンアウト型のWLP(以下、「FOWLP」ともいう)及びPLP(以下、「FOPLP」ともいう)においては、半導体チップを、チップサイズよりも大きな領域となるように封止材で覆って半導体チップの封止体を形成し、再配線層及び外部電極を、半導体チップの回路面だけでなく封止材の表面領域においても形成する。
例えば、特許文献1には、半導体ウエハから個片化された複数の半導体チップを、その回路形成面を残し、モールド部材を用いて周りを囲んで拡張ウエハを形成し、半導体チップ外の領域に再配線パターンを延在させて形成する半導体パッケージの製造方法が記載されている。特許文献1に記載の製造方法において、半導体ウエハはダイシング用のウエハマウントテープ(以下、「ダイシングテープ」ともいう)に貼着された状態で個片化されるダイシング工程を施される。該ダイシング工程で得られた複数の半導体チップはエキスパンド用のウエハマウントテープ(以下、「エキスパンドテープ」ともいう)に転写され、該エキスパンドテープを展延して複数の半導体チップ同士の距離を拡大させるエキスパンド工程を施される。
【0004】
ダイシングテープは、半導体装置の製造工程において、半導体ウエハに代表される被加工物を個片化する際に用いられ、ダイシング中には被加工物の剥離、位置ズレ等を抑制するために一定の粘着力が求められる一方で、ダイシング後には、個片化したチップを容易に分離できる分離性が求められる。
ダイシング後における分離性を高めたダイシングテープとして、特許文献2には、基材と粘着層とを有し、粘着層の材料として、紫外線照射により硬化して粘着力が低下する材料を用いたダイシングテープが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2010/058646号
【文献】特開2016-167510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載のダイシングテープは、紫外線照射後においてもチップと粘着層とが接着面全体で接着しているため、ある程度の接着力が残存する。そのため、ダイシングして得たチップを次工程に供する際には、チップを1個ずつピックアップする等、工程が煩雑となる場合がある。
【0007】
また、ファンアウト型パッケージの製造工程においては、特許文献1に記載の製造方法のように、ダイシングして得た半導体チップを、エキスパンドテープ上に移動させることがある。
前記移動は、半導体チップをダイシングテープからエキスパンドテープに直接転写する方法と、半導体チップをダイシングテープから他の粘着シートに転写し、該他の粘着シートからエキスパンドテープに転写する方法が想定されるが、いずれの場合も、生産性の観点から、複数の半導体チップを一括で転写することが望ましい。
しかしながら、特許文献2に記載のダイシングテープのように、紫外線照射後もある程度の接着力が残存していると、ダイシングテープと半導体チップとを分離する際に、一定の外力が必要となるため、分離をするための複雑な装置が必要となる。
また、分離する際に半導体チップに負荷が生ずるため、半導体チップに位置ズレ、チップ欠けが発生し易いという問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、被加工物をダイシングして得られた複数のチップを別の粘着シートに容易に転写することができ、かつ、前記転写をする際のチップ欠けの発生を効果的に抑制することができる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、基材及び粘着剤層を有し、いずれかの層に膨張性粒子を含む、膨張性の粘着シートを用いる半導体装置の製造方法であって、特定の工程(1)~(3)を有する製造方法によって、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、下記[1]~[11]に関する。
[1]基材(Y1)及び粘着剤層(X1)を有し、いずれかの層に膨張性粒子を含む、膨張性の粘着シート(A)を用いる半導体装置の製造方法であって、
下記工程(1)~(3)をこの順で有する、半導体装置の製造方法。
工程(1):粘着シート(A)の粘着剤層(X1)に被加工物を貼付した後、該被加工物をダイシングし、粘着剤層(X1)の上に個片化した複数のチップを得る工程。
工程(2):基材(Y2)及び粘着剤層(X2)を有する粘着シート(B)を用いて、前記複数のチップの粘着剤層(X1)と接する面とは反対側の面に、粘着シート(B)の粘着剤層(X2)を貼付する工程。
工程(3):前記膨張性粒子を膨張させて、粘着シート(B)に貼付した前記複数のチップと粘着シート(A)とを分離する工程。
[2]粘着シート(B)がエキスパンド用の粘着シートであって、工程(3)の後に、さらに、下記工程(4A)を有する、上記[1]に記載の半導体装置の製造方法。
工程(4A):粘着シート(B)に貼付された前記複数のチップ同士の間隔を、粘着シート(B)を引き伸ばして広げる工程。
[3]基材(Y3)及び粘着剤層(X3)を有するエキスパンド用の粘着シート(C)を用いて、さらに、下記工程(4B-1)~(4B-3)を行う、上記[1]に記載の半導体装置の製造方法。
工程(4B-1):粘着シート(B)上の複数のチップの粘着剤層(X2)と接する面とは反対側の面に、粘着シート(C)の粘着剤層(X3)を貼付する工程。
工程(4B-2):粘着シート(C)に貼付された複数のチップから粘着シート(B)を分離する工程。
工程(4B-3):粘着シート(C)に貼付された前記複数のチップ同士の間隔を、粘着シート(C)を引き伸ばして広げる工程。
[4]前記エキスパンド用の粘着シートが、23℃におけるMD方向及びCD方向に測定される破断伸度が100%以上である、上記[2]又は[3]に記載の半導体装置の製造方法。
[5]前記膨張性粒子が、膨張開始温度(t)が60~270℃の熱膨張性粒子であり、前記工程(3)が、前記粘着シート(A)を加熱することにより、粘着シート(B)に貼付した前記複数のチップと、粘着シート(A)とを分離する工程である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
[6]工程(1)が、前記被加工物をダイシングした後、粘着シート(A)を引き伸ばす処理を含む、上記[1]~[5]のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
[7]前記膨張性粒子が膨張する前の23℃における、粘着シート(A)の粘着剤層(X1)の粘着力が、0.1~10.0N/25mmである、上記[1]~[6]のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
[8]粘着シート(A)が有する基材(Y1)の表面におけるプローブタック値が、50mN/5mmφ未満である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
[9]粘着シート(A)が有する基材(Y1)が、前記膨張性粒子を含む膨張性基材(Y1-1)である、上記[1]~[8]のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
[10]前記被加工物が、半導体ウエハである、上記[1]~[9]のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
[11]ファンアウト型の半導体装置の製造方法である、上記[10]に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、被加工物をダイシングして得られた複数のチップを別の粘着シートに容易に転写することができ、かつ、転写の際のチップ欠けの発生を効果的に抑制することができる半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る製造方法で用いる粘着シート(A)の構成の一例を示す、(a)粘着シートa1、(b)粘着シートb1の断面図である。
【
図2】本実施形態に係る製造方法の一例を説明する、断面図である。
【
図3】
図2に続いて本実施形態に係る製造方法の一例を説明する、断面図である。
【
図4】
図3に続いて本実施形態に係る製造方法の一例を説明する、断面図である。
【
図5】
図4に続いて本実施形態に係る製造方法の一例を説明する、断面図である。
【
図6】
図5に続いて本実施形態に係る製造方法の一例を説明する、断面図である。
【
図7】
図6に続いて本実施形態に係る製造方法の一例を説明する、断面図である。
【
図8】
図7に続いて本実施形態に係る製造方法の一例を説明する、断面図である。
【
図9】
図8に続いて本実施形態に係る製造方法の一例を説明する、断面図である。
【
図10】
図9に続いて本実施形態に係る製造方法の一例を説明する、断面図である。
【
図11】実施例で使用した2軸延伸エキスパンド装置を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、「有効成分」とは、対象となる組成物に含まれる成分のうち、希釈溶媒を除いた成分を指す。
また、質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法に基づいて測定した値である。
【0013】
本明細書において、例えば、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」と「メタクリル酸」の双方を示し、他の類似用語も同様である。
また、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることもできる。
【0014】
本明細書において、「チップの転写」とは、一方の粘着シート上に貼付されているチップの表出している面を、他方の粘着シートに貼付した後、前記一方の粘着シートをチップから分離して、チップを一方の粘着シートから他方の粘着シートに移動させる操作をいう。
【0015】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、基材(Y1)及び粘着剤層(X1)を有し、いずれかの層に膨張性粒子を含む、膨張性の粘着シート(A)を用いる半導体装置の製造方法であって、下記工程(1)~(3)をこの順で有するものである。
工程(1):粘着シート(A)の粘着剤層(X1)に被加工物を貼付した後、該被加工物をダイシングし、粘着剤層(X1)の上に個片化した複数のチップを得る工程。
工程(2):基材(Y2)及び粘着剤層(X2)を有する粘着シート(B)を用いて、前記複数のチップの粘着剤層(X1)と接する面とは反対側の面に、粘着シート(B)の粘着剤層(X2)を貼付する工程。
工程(3):前記膨張性粒子を膨張させて、粘着シート(B)に貼付した前記複数のチップと粘着シート(A)とを分離する工程。
本実施形態に用いられる被加工物としては、例えば、半導体ウエハ、LED(Light Emitting Diode)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、セラミックデバイス、半導体パッケージ、複数のデバイスを有する半導体装置等、の製造工程においてダイシング加工されるものが挙げられる。
また、本明細書中、「チップ」とは前記被加工物を個片化したものを意味する。
以下、初めに本実施形態の製造方法に用いられる粘着シート(A)について説明し、その後、工程(1)~(3)を含む各製造工程について説明する。
【0016】
[粘着シート(A)]
粘着シート(A)は、基材(Y1)及び粘着剤層(X1)を有し、いずれかの層に膨張性粒子を含む膨張性の粘着シートである。
粘着シート(A)は、膨張性粒子を膨張させる前においては、粘着剤層(X1)の粘着表面によって被加工物を強固に固定することができるため、被加工物のダイシング工程においては、被加工物の位置ズレを抑制して作業性良くダイシングを実施することができる。
一方、粘着シート(A)と被加工物をダイシングして得られたチップとを分離する際は、膨張性粒子を膨張させることにより粘着剤層(X1)の粘着表面に凹凸を形成させ、これにより粘着剤層(X1)の粘着表面とチップとの接触面積を減少させ、従来の紫外線硬化型のダイシングテープよりも接着力を小さくすることができる。その結果、ダイシングして得た複数のチップは、複雑な製造装置を必要とせずとも、容易に一括で別の粘着シートに転写することができ、かつその際のチップの位置ズレ及びチップ欠けの発生も抑制することができる。
また、粘着シート(A)とチップとを分離する際、粘着シート(A)を部分的に加熱することによって、必ずしもダイシングして得られた全てのチップではなく、得られたチップのうち、一部のチップを選択的に分離することも可能である。具体的には、ダイシングして得られた複数のチップを、複数個単位に分割し、その単位ごとに別の粘着シートに転写する態様が挙げられる。
【0017】
図1(a)及び(b)は、粘着シート(A)の一態様である粘着シート1a、粘着シート1bの断面模式図である。
本発明の一態様において、粘着シート1a、1bのように、基材(Y1)が、膨張性粒子を含む膨張性基材(Y1-1)であることが好ましい。
【0018】
図1(a)に示す粘着シート1aは、基材(Y1-1)の一方の面に粘着剤層(X1)を有する。粘着シート1aは、粘着剤層(X1)上に被加工物を貼付し、該被加工物をダイシングして複数のチップを得た後、分離されるものである。粘着シート1aとチップとを分離する際には、基材(Y1-1)中の膨張性粒子を膨張させることにより、粘着剤層(X1)のチップと接する表面に凹凸を発生させ、粘着剤層(X1)とチップとの界面における分離を容易にすることができる。
【0019】
図1(b)に示す粘着シート1bは、基材(Y1-1)の一方の面に粘着剤層(X1)を有し、他方の面に非膨張性基材(Y1’)を有する。粘着シート1bは、粘着シート1aと同様に使用されるものであるが、基材(Y1-1)中の膨張性粒子を膨張させた場合に、非膨張性基材(Y1’)が存在することで、基材(Y1-1)の非膨張性基材(Y1’)側の表面における凹凸の発生を抑制することができ、これによって粘着剤層(X1)側の表面における凹凸をより効率的に形成することができる。
【0020】
粘着シート(A)の構成は、
図1(a)及び(b)に示した構成に限られるものではなく、例えば、基材(Y1)(
図1中の(Y1-1))と粘着剤層(X1)との間に、他の層を有する構成であってもよい。ただし、わずかな力で分離可能な粘着シートとする観点から、基材(Y1)と粘着剤層(X1)とが直接積層した構成を有することが好ましい。また、基材(Y1)の粘着剤層(X1)とは反対側の面に他の粘着剤層を有する構成であってもよい。
粘着シート(A)は、粘着剤層(X1)上に剥離材を有していてもよい。剥離材は、粘着シート(A)を本実施形態に係る製造方法に用いる際に適宜剥離除去される。
粘着シート(A)の形状は、シート状、テープ状、ラベル状等、あらゆる形状を取り得る。
【0021】
(膨張性粒子)
粘着シート(A)は、基材(Y1)及び粘着剤層(X1)のいずれかの層に膨張性粒子を含むものである。
膨張性粒子は、外部刺激によって、それ自体が膨張することで粘着剤層(X1)の粘着表面に凹凸を形成し、被着体との接着力を低下させることができるものであれば特に限定されない。
膨張性粒子としては、例えば、加熱によって膨張する熱膨張性粒子、エネルギー線の照射によって膨張するエネルギー線膨張性粒子等が挙げられるが、汎用性及び取り扱い性の観点から、熱膨張性粒子であることが好ましい。
【0022】
熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)は、好ましくは60~270℃、より好ましくは70~260℃、さらに好ましくは80~250℃である。
なお、本明細書において、熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)は、以下の方法に基づき測定された値を意味する。
[熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)の測定法]
直径6.0mm(内径5.65mm)、深さ4.8mmのアルミカップに、測定対象となる熱膨張性粒子0.5mgを加え、その上からアルミ蓋(直径5.6mm、厚さ0.1mm)をのせた試料を作製する。
動的粘弾性測定装置を用いて、その試料にアルミ蓋上部から、加圧子により0.01Nの力を加えた状態で、試料の高さを測定する。そして。加圧子により0.01Nの力を加えた状態で、20℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱し、加圧子の垂直方向における変位量を測定し、正方向への変位開始温度を膨張開始温度(t)とする。
【0023】
熱膨張性粒子としては、熱可塑性樹脂から構成された外殻と、該外殻に内包され、且つ所定の温度まで加熱されると気化する内包成分とから構成される、マイクロカプセル化発泡剤であることが好ましい。
マイクロカプセル化発泡剤の外殻を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホン等が挙げられる。
【0024】
外殻に内包された内包成分としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、イソブタン、イソペンタン、イソヘキサン、イソヘプタン、イソオクタン、イソノナン、イソデカン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ネオペンタン、ドデカン、イソドデカン、シクロトリデカン、ヘキシルシクロヘキサン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ナノデカン、イソトリデカン、4-メチルドデカン、イソテトラデカン、イソペンタデカン、イソヘキサデカン、2,2,4,4,6,8,8-ヘプタメチルノナン、イソヘプタデカン、イソオクタデカン、イソナノデカン、2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン、シクロトリデカン、ヘプチルシクロヘキサン、n-オクチルシクロヘキサン、シクロペンタデカン、ノニルシクロヘキサン、デシルシクロヘキサン、ペンタデシルシクロヘキサン、ヘキサデシルシクロヘキサン、ヘプタデシルシクロヘキサン、オクタデシルシクロヘキサン等が挙げられる。これらの内包成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)は、内包成分の種類を適宜選択することで調整可能である。
【0025】
熱膨張性粒子の熱膨張開始温度(t)以上の温度まで加熱した際の体積最大膨張率は、好ましくは1.5~100倍、より好ましくは2~80倍、更に好ましくは2.5~60倍、より更に好ましくは3~40倍である。
【0026】
膨張前の23℃における膨張性粒子の平均粒子径は、好ましくは3~100μm、より好ましくは4~70μm、更に好ましくは6~60μm、より更に好ましくは10~50μmである。
なお、膨張性粒子の膨張前の平均粒子径とは、体積中位粒子径(D50)であり、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、Malvern社製、製品名「マスターサイザー3000」)を用いて測定した、膨張前の膨張性粒子の粒子分布において、膨張前の膨張性粒子の粒子径の小さい方から計算した累積体積頻度が50%に相当する粒子径を意味する。
【0027】
膨張前の23℃における膨張性粒子の90%粒子径(D90)としては、好ましくは10~150μm、より好ましくは20~100μm、更に好ましくは25~90μm、より更に好ましくは30~80μmである。
なお、膨張前の膨張性粒子の90%粒子径(D90)とは、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、Malvern社製、製品名「マスターサイザー3000」)を用いて測定した、膨張前の膨張性粒子の粒子分布において、膨張前の膨張性粒子の粒子径の粒径の小さい方から計算した累積体積頻度が90%に相当する粒径を意味する。
【0028】
膨張性粒子の含有量は、膨張性粒子を含有する層の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは1~40質量%、より好ましくは5~35質量%、更に好ましくは10~30質量%、より更に好ましくは15~25質量%である。
【0029】
(基材(Y1))
粘着シート(A)が有する基材(Y1)は、非粘着性の基材である。
本発明において、非粘着性の基材か否かの判断は、対象となる基材の表面に対して、JIS Z0237:1991に準拠して測定したプローブタック値が50mN/5mmφ未満であれば、該基材を「非粘着性の基材」と判断する。
ここで、本実施形態で用いる基材(Y1)の表面におけるプローブタック値は、通常は50mN/5mmφ未満であるが、好ましくは30mN/5mmφ未満、より好ましくは10mN/5mmφ未満、更に好ましくは5mN/5mmφ未満である。
なお、本明細書において、基材(Y1)の表面におけるプローブタック値の具体的な測定方法は、実施例に記載の方法による。
【0030】
基材(Y1)の厚さは、好ましくは10~1000μm、より好ましくは20~500μm、更に好ましくは25~400μm、より更に好ましくは30~300μmである。
なお、本明細書において、基材の厚さは、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0031】
基材(Y1)は、樹脂組成物(y1)から形成することができる。以下、基材(Y1)の形成材料である樹脂組成物(y1)に含まれる各成分について説明する。
【0032】
〔樹脂〕
樹脂組成物(y1)に含まれる樹脂としては、基材(Y1)が非粘着性となる樹脂であれば特に限定されず、非粘着性樹脂であってもよく、粘着性樹脂であってもよい。つまり、樹脂組成物(y1)に含まれる樹脂が粘着性樹脂であっても、樹脂組成物(y1)から基材(Y1)を形成する過程において、該粘着性樹脂が重合性化合物と重合反応し、得られる樹脂が非粘着性樹脂となり、該樹脂を含む基材(Y1)が非粘着性となればよい。
【0033】
樹脂組成物(y1)に含まれる前記樹脂の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~100万、より好ましくは1,000~70万、更に好ましくは1,000~50万である。
該樹脂が2種以上の構成単位を有する共重合体である場合、該共重合体の形態は、特に限定されず、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0034】
前記樹脂の含有量は、樹脂組成物(y1)の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは50~99質量%、より好ましくは60~95質量%、更に好ましくは65~90質量%、より更に好ましくは70~85質量%である。
【0035】
樹脂組成物(y1)に含まれる前記樹脂は、アクリルウレタン系樹脂及びオレフィン系樹脂から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。アクリルウレタン系樹脂としては、ウレタンプレポリマー(UP)と、(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル化合物とを重合してなるアクリルウレタン系樹脂(U1)が好ましい。なお、これらの樹脂は、特に樹脂組成物(y1)が膨張性粒子を含有する場合において、その膨張性の観点から好適である。
【0036】
〔アクリルウレタン系樹脂(U1)〕
アクリルウレタン系樹脂(U1)の主鎖となるウレタンプレポリマー(UP)としては、ポリオールと多価イソシアネートとの反応物が挙げられる。
なお、ウレタンプレポリマー(UP)は、更に鎖延長剤を用いた鎖延長反応を施して得られたものであることが好ましい。
【0037】
ウレタンプレポリマー(UP)の原料となるポリオールとしては、例えば、アルキレン型ポリオール、エーテル型ポリオール、エステル型ポリオール、エステルアミド型ポリオール、エステル・エーテル型ポリオール、カーボネート型ポリオール等が挙げられる。
これらのポリオールは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態で用いるポリオールとしては、ジオールが好ましく、エステル型ジオール、アルキレン型ジオール及びカーボネート型ジオールがより好ましく、エステル型ジオール、カーボネート型ジオールが更に好ましい。
【0038】
エステル型ジオールとしては、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール等のアルカンジオール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレングリコール;等のジオール類から選択される1種又は2種以上と、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン-4,4’-ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘット酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸及びこれらの無水物から選択される1種又は2種以上と、の縮重合体が挙げられる。
具体的には、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンイソフタレートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレンプロピレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリブチレンヘキサメチレンアジペートジオール、ポリジエチレンアジペートジオール、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペートジオール、ポリ(3-メチルペンチレンアジペート)ジオール、ポリエチレンアゼレートジオール、ポリエチレンセバケートジオール、ポリブチレンアゼレートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリネオペンチルテレフタレートジオール等が挙げられる。
【0039】
アルキレン型ジオールとしては、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール等のアルカンジオール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレングリコール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリアルキレングリコール;ポリテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;等が挙げられる。
【0040】
カーボネート型ジオールとしては、例えば、1,4-テトラメチレンカーボネートジオール、1,5-ペンタメチレンカーボネートジオール、1,6-ヘキサメチレンカーボネートジオール、1,2-プロピレンカーボネートジオール、1,3-プロピレンカーボネートジオール、2,2-ジメチルプロピレンカーボネートジオール、1,7-ヘプタメチレンカーボネートジオール、1,8-オクタメチレンカーボネートジオール、1,4-シクロヘキサンカーボネートジオール等が挙げられる。
【0041】
ウレタンプレポリマー(UP)の原料となる多価イソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等が挙げられる。
これらの多価イソシアネートは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、これらの多価イソシアネートは、トリメチロールプロパンアダクト型変性体、水と反応させたビュウレット型変性体、イソシアヌレート環を含有させたイソシアヌレート型変性体であってもよい。
これらの中でも、本実施形態で用いる多価イソシアネートとしては、ジイソシアネートが好ましく、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、及び脂環式ジイソシアネートから選ばれる1種以上がより好ましい。
【0042】
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられるが、イソホロンジイソシアネート(IPDI)が好ましい。
【0043】
本実施形態において、アクリルウレタン系樹脂(U1)の主鎖となるウレタンプレポリマー(UP)としては、ジオールとジイソシアネートとの反応物であり、両末端にエチレン性不飽和基を有する直鎖ウレタンプレポリマーが好ましい。
該直鎖ウレタンプレポリマーの両末端にエチレン性不飽和基を導入する方法としては、ジオールとジイソシアネート化合物とを反応してなる直鎖ウレタンプレポリマーの末端のNCO基と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを反応させる方法が挙げられる。
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0044】
アクリルウレタン系樹脂(U1)の側鎖となる、ビニル化合物としては、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルを含む。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、アルキル(メタ)アクリレート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上が好ましく、アルキル(メタ)アクリレート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを併用することがより好ましい。
アルキル(メタ)アクリレート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを併用する場合、アルキル(メタ)アクリレート100質量部に対する、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの配合割合としては、好ましくは0.1~100質量部、より好ましくは0.5~30質量部、更に好ましくは1.0~20質量部、より更に好ましくは1.5~10質量部である。
【0045】
アルキル(メタ)アクリレートが有するアルキル基の炭素数としては、好ましくは1~24、より好ましくは1~12、更に好ましくは1~8、より更に好ましくは1~3である。
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、上述の直鎖ウレタンプレポリマーの両末端にエチレン性不飽和基を導入するために用いられるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと同じものが挙げられる。
【0046】
(メタ)アクリル酸エステル以外のビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族炭化水素系ビニル化合物;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、N-ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メタ(アクリルアミド)等の極性基含有モノマー;等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
ビニル化合物中の(メタ)アクリル酸エステルの含有量としては、該ビニル化合物の全量(100質量%)に対して、好ましくは40~100質量%、より好ましくは65~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%である。
ビニル化合物中のアルキル(メタ)アクリレート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの合計含有量としては、該ビニル化合物の全量(100質量%)に対して、好ましくは40~100質量%、より好ましくは65~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%である。
【0048】
本実施形態で用いるアクリルウレタン系樹脂(U1)は、ウレタンプレポリマー(UP)と、(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル化合物とを混合し、両者を重合することで得られる。
当該重合においては、さらにラジカル開始剤を加えて行うことが好ましい。
【0049】
本実施形態で用いるアクリルウレタン系樹脂(U1)において、ウレタンプレポリマー(UP)に由来の構成単位(u11)と、ビニル化合物に由来する構成単位(u12)との含有量比〔(u11)/(u12)〕としては、質量比で、好ましくは10/90~80/20、より好ましくは20/80~70/30、更に好ましくは30/70~60/40、より更に好ましくは35/65~55/45である。
【0050】
〔オレフィン系樹脂〕
樹脂組成物(y1)に含まれる樹脂として好適な、オレフィン系樹脂としては、オレフィンモノマーに由来の構成単位を少なくとも有する重合体である。
上記オレフィンモノマーとしては、炭素数2~8のα-オレフィンが好ましく、具体的には、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、1-ヘキセン等が挙げられる。
これらの中でも、エチレン及びプロピレンが好ましい。
【0051】
具体的なオレフィン系樹脂としては、例えば、超低密度ポリエチレン(VLDPE、密度:880kg/m3以上910kg/m3未満)、低密度ポリエチレン(LDPE、密度:910kg/m3以上915kg/m3未満)、中密度ポリエチレン(MDPE、密度:915kg/m3以上942kg/m3未満)、高密度ポリエチレン(HDPE、密度:942kg/m3以上)、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン樹脂;ポリプロピレン樹脂(PP);ポリブテン樹脂(PB);エチレン-プロピレン共重合体;オレフィン系エラストマー(TPO);ポリ(4-メチル-1-ペンテン)(PMP);エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA);エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH);エチレン-プロピレン-(5-エチリデン-2-ノルボルネン)等のオレフィン系三元共重合体;等が挙げられる。
【0052】
本実施形態において、オレフィン系樹脂は、さらに酸変性、水酸基変性、及びアクリル変性から選ばれる1種以上の変性を施した変性オレフィン系樹脂であってもよい。
【0053】
例えば、オレフィン系樹脂に対して酸変性を施してなる酸変性オレフィン系樹脂としては、上述の無変性のオレフィン系樹脂に、不飽和カルボン酸又はその無水物を、グラフト重合させてなる変性重合体が挙げられる。
上記の不飽和カルボン酸又はその無水物としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、テトラヒドロフタル酸、アコニット酸、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸、ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物等が挙げられる。
なお、不飽和カルボン酸又はその無水物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
オレフィン系樹脂に対してアクリル変性を施してなるアクリル変性オレフィン系樹脂としては、主鎖である上述の無変性のオレフィン系樹脂に、側鎖として、アルキル(メタ)アクリレートをグラフト重合させてなる変性重合体が挙げられる。
上記のアルキル(メタ)アクリレートが有するアルキル基の炭素数としては、好ましくは1~20、より好ましくは1~16、更に好ましくは1~12である。
上記のアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、後述のモノマー(a1’)として選択可能な化合物と同じものが挙げられる。
【0055】
オレフィン系樹脂に対して水酸基変性を施してなる水酸基変性オレフィン系樹脂としては、主鎖である上述の無変性のオレフィン系樹脂に、水酸基含有化合物をグラフト重合させてなる変性重合体が挙げられる。
上記の水酸基含有化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ビニルアルコール、アリルアルコール等の不飽和アルコール類等が挙げられる。
【0056】
〔アクリルウレタン系樹脂及びオレフィン系樹脂以外の樹脂〕
本実施形態において、樹脂組成物(y1)には、本発明の効果を損なわない範囲で、アクリルウレタン系樹脂及びオレフィン系樹脂以外の樹脂を含有してもよい。
そのような樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール等のビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体;三酢酸セルロース;ポリカーボネート;アクリルウレタン系樹脂には該当しないポリウレタン;ポリスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルイミド、ポリイミド等のポリイミド系樹脂;ポリアミド系樹脂;アクリル樹脂;フッ素系樹脂等が挙げられる。
アクリルウレタン系樹脂及びオレフィン系樹脂以外の樹脂の含有割合としては、樹脂組成物(y1)中に含まれる樹脂の全量100質量部に対して、好ましくは30質量部未満、より好ましくは20質量部未満、より好ましくは10質量部未満、更に好ましくは5質量部未満、より更に好ましくは1質量部未満である。
【0057】
樹脂組成物(y1)は、膨張性粒子を含むことが好ましい。
粘着シート(A)は、膨張性粒子を、粘着剤層ではなく、弾性率が高い基材(Y1)に含むことにより、半導体ウエハに代表される被加工物を載置する粘着剤層(X1)の厚さの調整、粘着力、粘弾性率等の制御等、設計の自由度が向上する。これによって得られたチップの位置ズレ及びチップ欠けの発生を抑制できる。さらに、粘着シート(A)を用いる場合、チップは、粘着剤層(X1)の粘着表面に載置されるため、膨張性粒子を含む基材(Y1)とチップとが直に接することがない。これによって、膨張性粒子に由来する残渣及び大きく変形した粘着剤層の一部がチップに付着したり、粘着剤層に形成された凹凸形状がチップに転写されることが抑制され清浄性を保ったまま、チップを次工程に供することができる。
膨張性粒子の好適な含有量は上記の通りである。
【0058】
樹脂組成物(y1)は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、基材用添加剤を含有してもよい。
基材用添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、着色剤等が挙げられる。これらの基材用添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの基材用添加剤を含有する場合、それぞれの基材用添加剤の含有量は、樹脂組成物(y1)中の前記樹脂100質量部に対して、好ましくは0.0001~20質量部、より好ましくは0.001~10質量部である。
【0059】
〔無溶剤型樹脂組成物(y1’)〕
本実施形態で用いる樹脂組成物(y1)の一態様として、質量平均分子量(Mw)が50000以下のエチレン性不飽和基を有するオリゴマーと、エネルギー線重合性モノマーと、上述の膨張性粒子を配合してなり、溶剤を配合しない、無溶剤型樹脂組成物(y1’)が挙げられる。
無溶剤型樹脂組成物(y1’)では、溶剤を配合しないが、エネルギー線重合性モノマーが、前記オリゴマーの可塑性の向上に寄与するものである。
無溶剤型樹脂組成物(y1’)から形成した塗膜に対して、エネルギー線を照射することで、基材(Y1)を得ることができる。
無溶剤型樹脂組成物(y1’)に配合される膨張性粒子の種類、形状、配合量(含有量)については、上述のとおりである。
【0060】
無溶剤型樹脂組成物(y1’)に含まれる前記オリゴマーの質量平均分子量(Mw)は、50000以下であるが、好ましくは1000~50000、より好ましくは2000~40000、更に好ましくは3000~35000、より更に好ましくは4000~30000である。
【0061】
前記オリゴマーとしては、上述の樹脂組成物(y1)に含まれる樹脂のうち、質量平均分子量(Mw)が50000以下のエチレン性不飽和基を有するものであればよいが、上述のウレタンプレポリマー(UP)が好ましい。
なお、該オリゴマーとしては、エチレン性不飽和基を有する変性オレフィン系樹脂等も使用し得る。
【0062】
無溶剤型樹脂組成物(y1’)中における、前記オリゴマー及びエネルギー線重合性モノマーの合計含有量は、無溶剤型樹脂組成物(y1’)の全量(100質量%)に対して、好ましくは50~99質量%、より好ましくは60~95質量%、更に好ましくは65~90質量%、より更に好ましくは70~85質量%である。
【0063】
エネルギー線重合性モノマーとしては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アダマンタン(メタ)アクリレート、トリシクロデカンアクリレート等の脂環式重合性化合物;フェニルヒドロキシプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノールエチレンオキシド変性アクリレート等の芳香族重合性化合物;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルホリンアクリレート、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等の複素環式重合性化合物等が挙げられる。
これらのエネルギー線重合性モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
無溶剤型樹脂組成物(y1’)中における、前記オリゴマーと前記エネルギー線重合性モノマーとの含有量比(前記オリゴマー/エネルギー線重合性モノマー)は、質量比で、好ましくは20/80~90/10、より好ましくは30/70~85/15、更に好ましくは35/65~80/20である。
【0065】
本実施形態において、無溶剤型樹脂組成物(y1’)は、さらに光重合開始剤を配合してなることが好ましい。
光重合開始剤を含有することで、比較的低エネルギーのエネルギー線の照射によっても、十分に硬化反応を進行させることができる。
【0066】
光重合開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシ-シクロへキシル-フェニル-ケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンジルフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロルニトリル、ジベンジル、ジアセチル、8-クロールアンスラキノン等が挙げられる。
これらの光重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
光重合開始剤の配合量は、前記オリゴマー及びエネルギー線重合性モノマーの全量(100質量部)に対して、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.01~4質量部、更に好ましくは0.02~3質量部である。
【0068】
基材(Y1)と積層する他の層との層間密着性を向上させる観点から、基材(Y1)の表面に対して、酸化法、凹凸化法等による表面処理、プライマー処理、易接着処理を施してもよい。酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸処理(湿式)、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理等が挙げられ、凹凸化法としては、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。
【0069】
〔基材(Y1)の貯蔵弾性率〕
基材(Y1)の23℃における貯蔵弾性率E’(23)は、好ましくは1.0×106Pa以上、より好ましくは5.0×106~5.0×1012Pa、更に好ましくは1.0×107~1.0×1012Pa、より更に好ましくは5.0×107~1.0×1011Pa、更になお好ましくは1.0×108~1.0×1010Paである。基材(Y1)の貯蔵弾性率E’(23)が上記範囲内であると、ダイシング中における被加工物の位置ズレ及びチップを転写する際の位置ズレの発生を抑制することができる。
なお、本明細書において、所定の温度における基材(Y1)の貯蔵弾性率E’は、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0070】
基材(Y1)が膨張性基材(Y1-1)であって、膨張性粒子として熱膨張性粒子を含む場合、前記熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)における、膨張性基材(Y1-1)の貯蔵弾性率E’(t)が、1.0×107Pa以下であることが好ましい。これにより熱膨張性粒子を膨張させる温度において、膨張性基材(Y1-1)が熱膨張性粒子の体積膨張に追随して変形し易くなり、粘着剤層(X1)の粘着表面に凹凸を形成し易くなる。これによって、小さい外力によってチップから分離することができる。
上記観点から、膨張性基材(Y1-1)の貯蔵弾性率E’(t)は、より好ましくは9.0×106Pa以下、更に好ましくは8.0×106Pa以下、より更に好ましくは6.0×106Pa以下、更になお好ましくは4.0×106Pa以下である。また、膨張した熱膨張性粒子の流動を抑制し、粘着剤層(X1)の粘着表面に形成される凹凸の形状維持性を向上させ、分離性をより向上させる観点から、膨張性基材(Y1-1)の貯蔵弾性率E’(t)は、好ましくは1.0×103Pa以上、より好ましくは1.0×104Pa以上、更に好ましくは1.0×105Pa以上である。
【0071】
(非膨張性基材(Y1’))
粘着シート(A)は、膨張性基材(Y1-1)の一方の面に粘着剤層(X1)を有し、他方の面に非膨張性基材(Y1’)を有していてもよい。
本明細書における「非膨張性基材」とは、粘着シート(A)に含まれる膨張性粒子が膨張する条件で処理した際、下記式から算出される体積変化率が5体積%未満であるものと定義する。
体積変化率(%)=(処理後の前記層の体積-処理前の前記層の体積)/処理前の前記層の体積×100
上記式から算出される非膨張性基材(Y1’)の体積変化率(%)は、好ましくは2体積%未満、より好ましくは1体積%未満、更に好ましくは0.1体積%未満、より更に好ましくは0.01体積%未満である。
膨張性粒子が膨張する条件は、膨張性粒子が熱膨張性粒子である場合は、膨張開始温度(t)で3分間の加熱処理を施す条件である。
非膨張性基材(Y1’)は、膨張性粒子を含有してもよいが、その含有量は少ないほど好ましく、非熱膨張性基材(Y1’)の全質量(100質量%)に対して、通常、3質量%未満、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満、更に好ましくは0.01質量%未満、より更に好ましくは0.001質量%未満であり、膨張性粒子を含有しないことが最も好ましい。
【0072】
非膨張性基材(Y1’)の形成材料としては、例えば、紙材、樹脂、金属等が挙げられる。
紙材としては、例えば、薄葉紙、中質紙、上質紙、含浸紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙等が挙げられる。
樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体;三酢酸セルロース;ポリカーボネート;ポリウレタン、アクリル変性ポリウレタン等のウレタン樹脂;ポリメチルペンテン;ポリスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルイミド、ポリイミド等のポリイミド系樹脂;ポリアミド系樹脂;アクリル樹脂;フッ素系樹脂等が挙げられる。
金属としては、例えば、アルミニウム、スズ、クロム、チタン等が挙げられる。
これらの形成材料は、1種から構成されていてもよく、2種以上を併用してもよい。
2種以上の形成材料を併用した非膨張性基材(Y1’)としては、紙材をポリエチレン等の熱可塑性樹脂でラミネートしたもの、樹脂を含む樹脂フィルム又はシートの表面に金属膜を形成したもの等が挙げられる。
なお、金属層の形成方法としては、例えば、上記金属を真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等のPVD法により蒸着する方法、又は、上記金属からなる金属箔を一般的な粘着剤を用いて貼付する方法等が挙げられる。
【0073】
粘着シート(A)が、非膨張性基材(Y1’)を有する場合、膨張性粒子を膨張させる前における、膨張性基材(Y1-1)と非膨張性基材(Y1’)との厚さ比〔(Y1-1)/(Y1’)〕は、好ましくは0.02~200、より好ましくは0.03~150、更に好ましくは0.05~100である。
【0074】
非膨張性基材(Y1’)と積層する他の層との層間密着性を向上させる観点から、非膨張性基材(Y1’)が樹脂を含む場合、非膨張性基材(Y1’)の表面に対しても、上述の基材(Y1)と同様に、酸化法、凹凸化法等による表面処理、プライマー処理、易接着処理を施してもよい。
非膨張性基材(Y1’)が樹脂を含む場合、該樹脂と共に、樹脂組成物(y1)にも含有し得る、上述の基材用添加剤を含有してもよい。
【0075】
(粘着剤層(X1))
粘着剤層(X1)は、粘着性を有する層である。粘着剤層(X1)は、粘着性樹脂を含有し、必要に応じて、架橋剤、粘着付与剤、重合性化合物、重合開始剤等の粘着剤用添加剤を含有してもよい。
【0076】
粘着剤層(X1)の粘着表面の粘着力は、膨張性粒子が膨張する前の23℃において、好ましくは0.1~10.0N/25mm、より好ましくは0.2~8.0N/25mm、更に好ましくは0.4~6.0N/25mm、より更に好ましくは0.5~4.0N/25mmである。前記粘着力が0.1N/25mm以上であると、被加工物を十分に固定することができ、ダイシング中における被加工物の位置ズレの発生を抑制することができる。一方、該粘着力が10.0N/25mm以下であると、チップと分離する際に、わずかな力で容易に分離することができる。
なお、上記の粘着力は、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0077】
粘着剤層(X1)の貯蔵せん断弾性率G’(23)は、23℃において、好ましくは1.0×104~1.0×108Pa、より好ましくは5.0×104~5.0×107Pa、更に好ましくは1.0×105~1.0×107Paである。粘着剤層(X1)の貯蔵せん断弾性率G’(23)が1.0×104Pa以上であると、チップと分離する際にチップの位置ズレを防止することができる。一方、粘着剤層(X1)の貯蔵せん断弾性率G’(23)が1.0×108Pa以下であると、膨張した膨張性粒子による凹凸が粘着表面に形成され易く、わずかな力で容易に分離することができる。
粘着シート(A)が複数の粘着剤層を有する粘着シートである場合、チップが貼付される粘着剤層の貯蔵せん断弾性率G’(23)が上記範囲内であることが好ましく、基材(Y1)よりもチップが貼付される側の総ての粘着剤層の貯蔵せん断弾性率G’(23)が上記範囲内であることが好ましい。
なお、本明細書において、粘着剤層(X1)の貯蔵せん断弾性率G’(23)は、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0078】
粘着剤層(X1)の厚さは、優れた粘着力を発現させる観点、及び、加熱処理による膨張性基材中の膨張性粒子の膨張により、形成される粘着剤層の表面に凹凸を形成し易くする観点から、好ましくは1~60μm、より好ましくは2~50μm、更に好ましくは3~40μm、より更に好ましくは5~30μmである。
【0079】
粘着剤層(X1)の厚さに対する基材(Y1)の厚さの比(基材(Y1)/粘着剤層(X1))は、チップの位置ズレを防止する観点から、23℃において、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは1.0以上、より更に好ましくは5.0以上であり、また、分離する際に、わずかな力で容易に分離し得る粘着シートとする観点から、好ましくは1000以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは60以下、より更に好ましくは30以下である。
粘着剤層(X1)の厚さは、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0080】
粘着剤層(X1)は、粘着性樹脂を含む粘着剤組成物(x1)から形成することができる。以下、粘着剤組成物(x1)に含まれ得る各成分について説明する。
【0081】
〔粘着性樹脂〕
粘着剤層(X1)の形成材料である粘着性樹脂は、該樹脂単独で粘着性を有し、質量平均分子量(Mw)が1万以上の重合体であることが好ましい。粘着性樹脂の質量平均分子量(Mw)は、粘着力の向上の観点から、より好ましくは1万~200万、更に好ましくは2万~150万、より更に好ましくは3万~100万である。
【0082】
粘着性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリイソブチレン系樹脂等のゴム系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等が挙げられる。
これらの粘着性樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、これらの粘着性樹脂が、2種以上の構成単位を有する共重合体である場合、該共重合体の形態は、特に限定されず、ブロック共重合体、ランダム共重合体、及びグラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0083】
粘着性樹脂は、上記の粘着性樹脂の側鎖に重合性官能基を導入した、エネルギー線硬化型の粘着性樹脂であってもよい。
前記重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
また、エネルギー線としては、紫外線、電子線等が挙げられるが、紫外線が好ましい。
【0084】
粘着性樹脂の含有量は、粘着剤組成物(x1)の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは30~99.99質量%、より好ましくは40~99.95質量%、更に好ましくは50~99.90質量%、より更に好ましくは55~99.80質量%、更になお好ましくは60~99.50質量%である。
なお、本明細書の以下の記載において、「粘着剤組成物の有効成分の全量に対する各成分の含有量」は、「該粘着剤組成物から形成される粘着剤層中の各成分の含有量」と同義である。
【0085】
粘着性樹脂は、優れた粘着力を発現させると共に、分離する際には粘着表面に膨張性粒子の膨張による凹凸を形成し易くして分離性を向上させた粘着シートとする観点から、アクリル系樹脂を含むことが好ましい。
粘着性樹脂中のアクリル系樹脂の含有割合としては、粘着剤組成物(x1)に含まれる粘着性樹脂の全量(100質量%)に対して、好ましくは30~100質量%、より好ましくは50~100質量%、更に好ましくは70~100質量%、より更に好ましくは85~100質量%である。
【0086】
〔アクリル系樹脂〕
粘着性樹脂として使用し得る、アクリル系樹脂としては、例えば、直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む重合体、環状構造を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む重合体等が挙げられ、アルキル(メタ)アクリレート(a1’)(以下、「モノマー(a1’)」ともいう)に由来する構成単位(a1)及び官能基含有モノマー(a2’)(以下、「モノマー(a2’)」ともいう)に由来する構成単位(a2)を有するアクリル系共重合体(A1)がより好ましい。
【0087】
モノマー(a1’)が有するアルキル基の炭素数としては、粘着特性の向上の観点から、好ましくは1~24、より好ましくは1~12、更に好ましくは2~10、より更に好ましくは4~8である。
なお、モノマー(a1’)が有するアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
モノマー(a1’)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのモノマー(a1’)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
モノマー(a1’)としては、ブチル(メタ)アクリレート及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
構成単位(a1)の含有量は、アクリル系共重合体(A1)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは50~99.9質量%、より好ましくは60~99.0質量%、更に好ましくは70~97.0質量%、より更に好ましくは80~95.0質量%である。
【0088】
モノマー(a2’)が有する官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。
つまり、モノマー(a2’)としては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
これらのモノマー(a2’)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、モノマー(a2’)としては、水酸基含有モノマー及びカルボキシ基含有モノマーが好ましい。
水酸基含有モノマーとしては、例えば、上述の水酸基含有化合物と同じものが挙げられる。
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸及びその無水物、2-(アクリロイルオキシ)エチルサクシネート、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
構成単位(a2)の含有量は、アクリル系共重合体(A1)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは0.1~40質量%、より好ましくは0.5~35質量%、更に好ましくは1.0~30質量%、より更に好ましくは3.0~25質量%である。
【0089】
アクリル系共重合体(A1)は、さらにモノマー(a1’)及び(a2’)以外の他のモノマー(a3’)に由来の構成単位(a3)を有していてもよい。
なお、アクリル系共重合体(A1)において、構成単位(a1)及び(a2)の含有量は、アクリル系共重合体(A1)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは70~100質量%、より好ましくは80~100質量%、更に好ましくは90~100質量%、より更に好ましくは95~100質量%である。
【0090】
モノマー(a3’)としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類;塩化ビニル、ビニリデンクロリド等のハロゲン化オレフィン類;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート等の環状構造を有する(メタ)アクリレート;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0091】
アクリル系共重合体(A1)は、側鎖に重合性官能基を導入した、エネルギー線硬化型のアクリル系共重合体としてもよい。該重合性官能基及び該エネルギー線としては、上述のとおりである。なお、重合性官能基は、上述の構成単位(a1)及び(a2)を有するアクリル系共重合体と、該アクリル系共重合体の構成単位(a2)が有する官能基と結合可能な置換基と重合性官能基とを有する化合物とを反応させることで導入することができる。
前記化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0092】
アクリル系樹脂の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは10万~150万、より好ましくは20万~130万、更に好ましくは35万~120万、より更に好ましくは50万~110万である。
【0093】
〔架橋剤〕
粘着剤組成物(x1)は、上述のアクリル系共重合体(A1)のような官能基を含有する粘着性樹脂を含有する場合、さらに架橋剤を含有することが好ましい。
該架橋剤は、官能基を有する粘着性樹脂と反応して、該官能基を架橋起点として、粘着性樹脂同士を架橋するものである。
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。
これらの架橋剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの架橋剤の中でも、凝集力を高めて粘着力を向上させる観点、及び入手し易さ等の観点から、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
架橋剤の含有量は、粘着性樹脂が有する官能基の数により適宜調整されるものであるが、官能基を有する粘着性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.03~7質量部、更に好ましくは0.05~5質量部である。
【0094】
〔粘着付与剤〕
粘着剤組成物(x1)は、粘着力をより向上させる観点から、さらに粘着付与剤を含有してもよい。
本明細書において、「粘着付与剤」とは、上述の粘着性樹脂の粘着力を補助的に向上させる成分であって、質量平均分子量(Mw)が1万未満のオリゴマーを指し、上述の粘着性樹脂とは区別されるものである。
粘着付与剤の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは400~10000、より好ましくは500~8000、更に好ましくは800~5000である。
【0095】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂、石油ナフサの熱分解で生成するペンテン、イソプレン、ピペリン、1,3-ペンタジエン等のC5留分を共重合して得られるC5系石油樹脂、石油ナフサの熱分解で生成するインデン、ビニルトルエン等のC9留分を共重合して得られるC9系石油樹脂、及びこれらを水素化した水素化樹脂等が挙げられる。
【0096】
粘着付与剤の軟化点は、好ましくは60~170℃、より好ましくは65~160℃、更に好ましくは70~150℃である。
なお、本明細書において、粘着付与剤の「軟化点」は、JIS K 2531に準拠して測定した値を意味する。
粘着付与剤は、単独で用いてもよく、軟化点、構造等が異なる2種以上を併用してもよい。2種以上の複数の粘着付与剤を用いる場合、それら複数の粘着付与剤の軟化点の加重平均が、上記範囲に属することが好ましい。
【0097】
粘着付与剤の含有量は、粘着剤組成物(x1)の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは0.01~65質量%、より好ましくは0.05~55質量%、更に好ましくは0.1~50質量%、より更に好ましくは0.5~45質量%、更になお好ましくは1.0~40質量%である。
【0098】
〔光重合開始剤〕
本実施形態において、粘着剤組成物(x1)が、粘着性樹脂として、エネルギー線硬化型の粘着性樹脂を含む場合、さらに光重合開始剤を含有することが好ましい。
エネルギー線硬化型の粘着性樹脂及び光重合開始剤を含有する粘着剤組成物とすることで、比較的低エネルギーのエネルギー線の照射によっても、十分に硬化反応を進行させ、粘着力を所望の範囲に調整することが可能となる。
なお、光重合開始剤としては、上述の無溶剤型樹脂組成物(y1)に配合されるものと同じものが挙げられる。
光重合開始剤の含有量は、エネルギー線硬化型の粘着性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.03~5質量部、更に好ましくは0.05~2質量部である。
【0099】
〔粘着剤用添加剤〕
本実施形態において、粘着剤層(X1)の形成材料である粘着剤組成物(x1)は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の添加剤以外にも、一般的な粘着剤に使用される粘着剤用添加剤を含有していてもよい。
このような粘着剤用添加剤としては、例えば、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、防錆剤、顔料、染料、遅延剤、反応促進剤(触媒)、紫外線吸収剤等が挙げられる。
なお、これらの粘着剤用添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの粘着剤用添加剤を含有する場合、それぞれの粘着剤用添加剤の含有量は、粘着性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.0001~20質量部、より好ましくは0.001~10質量部である。
粘着剤層(X1)は、膨張性粒子を含有していてもよい。その含有量は、粘着性樹脂100質量部に対して、好ましくは5質量部以下が好ましく、2質量部以下がより好ましく、含有しないことが最も好ましい。
【0100】
(剥離材)
任意で用いられる剥離材としては、両面剥離処理をされた剥離シート、片面剥離処理された剥離シート等が用いられ、剥離材用の基材上に剥離剤を塗布したもの等が挙げられる。
剥離材用の基材としては、例えば、上質紙、グラシン紙、クラフト紙等の紙類;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルム;等が挙げられる。
剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
剥離材の厚さは、特に制限はないが、好ましくは10~200μm、より好ましくは25~170μm、更に好ましくは35~80μmである。
【0101】
<粘着シート(A)の製造方法>
粘着シート(A)の製造方法としては、特に制限はなく、例えば、下記工程(Ia)及び(Ib)を有する製造方法(I)が挙げられる。
工程(Ia):剥離材の剥離処理面上に、基材(Y1)の形成材料である樹脂組成物(y1)を塗布して塗膜を形成し、該塗膜を乾燥又はUV硬化し、基材(Y1)を形成する工程。
工程(Ib):形成した基材(Y1)の表面上に、粘着剤層(X1)の形成材料である粘着剤組成物(x1)を塗布して塗膜を形成し、該塗膜を乾燥し、粘着剤層(X1)を形成する工程。
【0102】
粘着シート(A)の別の製造方法としては、例えば、下記工程(IIa)~(IIc)を有する製造方法(II)が挙げられる。
工程(IIa):剥離材の剥離処理面上に、基材(Y1)の形成材料である樹脂組成物(y1)を塗布して塗膜を形成し、該塗膜を乾燥又はUV硬化し、基材(Y1)を形成する工程。
工程(IIb):剥離材の剥離処理面上に、粘着剤層(X1)の形成材料である粘着剤組成物(x1)を塗布して塗膜を形成し、該塗膜を乾燥し、粘着剤層を形成する工程。
工程(IIc):工程(IIa)で形成した基材(Y1)の表面と、工程(IIb)で形成した粘着剤層(X1)の表面とを貼り合せる工程。
【0103】
上記製造方法(I)及び(II)において、樹脂組成物(y1)及び粘着剤組成物(x1)は、希釈溶媒を配合し、溶液の形態としてもよい。
塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
【0104】
なお、製造方法(I)及び製造方法(II)における乾燥又はUV照射は、膨張性粒子が膨張しない条件を適宜選択して実施することが好ましい。例えば、熱膨張性粒子を含有する樹脂組成物(y1)を乾燥して基材(Y1)を形成する場合は、乾燥温度は熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)未満で行うことが好ましい。
また、粘着シート(A)が、膨張性基材(Y1-1)と非膨張性基材(Y1’)とを有する場合は、前記工程(Ia)及び(IIa)において、樹脂組成物(y1)は、予め形成した非膨張性基材(Y1’)の上に塗布すればよい。非膨張性基材(Y’)は、例えば、非膨張性基材(Y’)の形成材料である樹脂組成物を用いて、前記工程(Ia)及び(IIa)と同様の操作で形成することができる。
【0105】
[本実施形態に係る半導体装置の製造方法]
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程について説明する。
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、下記工程(1)~(3)をこの順で有する。
工程(1):粘着シート(A)の粘着剤層(X1)に被加工物を貼付した後、該被加工物をダイシングし、粘着剤層(X1)の上に個片化した複数のチップを得る工程。
工程(2):基材(Y2)及び粘着剤層(X2)を有する粘着シート(B)を用いて、前記複数のチップの粘着剤層(X1)と接する面とは反対側の面に、粘着シート(B)の粘着剤層(X2)を貼付する工程。
工程(3):前記膨張性粒子を膨張させて、粘着シート(B)に貼付した前記複数のチップと粘着シート(A)とを分離する工程。
以下、被加工物として半導体ウエハを使用する例について、図面を参照しながら説明する。
【0106】
<工程(1)>
図2(a)及び(b)には、粘着シート(A)の粘着剤層(X1)に半導体ウエハWを貼付した後、半導体ウエハWをダイシングし、粘着剤層(X1)の上に個片化した複数の半導体チップCPを得る工程(1)を説明する断面図が示されている。
【0107】
半導体ウエハWは、例えば、シリコンウエハであってもよいし、ガリウム、砒素等の化合物半導体ウエハであってもよい。
半導体ウエハWは、その回路面W1に回路W2を有する。回路W2を形成する方法としては、例えば、エッチング法、リフトオフ法等が挙げられる。なお、本明細書中、回路面W1と反対側の面を「チップ裏面」と称することがある。
半導体ウエハWは、予め所定の厚さに研削して、チップ裏面を露出させて粘着シート(A)に貼付されている。半導体ウエハWを研削する方法としては、例えば、グラインダー等を用いる公知の方法が挙げられる。
粘着シート(A)には、半導体ウエハWを保持する目的でリングフレームを貼付してもよい。この場合、粘着シート(A)の粘着剤層(X1)の上に、リングフレーム及び半導体ウエハWを載置し、これらを軽く押圧し、固定する。
次いで、粘着シート(A)に保持された半導体ウエハWは、ダイシングにより個片化され、複数の半導体チップCPが形成される。ダイシングには、例えば、ダイシングソー、レーザー、プラズマダイシング、ステルスダイシング等の切断手段が用いられる。ダイシングの際の切断深さは、半導体ウエハの厚さを考慮して適宜設定すればよいが、例えば、粘着剤層(X1)の上面から2μm以内の深さとすることができる。
なお、本工程を後述する別のダイシング工程と区別するため「第一のダイシング工程」と称する場合がある。
工程(1)は、半導体ウエハWをダイシングした後、得られた複数の半導体チップCP同士の間隔を広げるために、粘着シート(A)を引き伸ばす処理を含んでいてもよい。
【0108】
<工程(2)>
図3には、基材(Y2)及び粘着剤層(X2)を有する粘着シート(B)を用いて、複数の半導体チップCPの粘着剤層(X1)と接する面とは反対側の面に、粘着シート(B)の粘着剤層(X2)を貼付する工程(2)を説明する断面図が示されている。
【0109】
粘着シート(B)の態様は、その後の工程に応じて適宜決定すればよい。例えば、第一のダイシング工程の次工程として、複数の半導体チップCPの間隔を広げるエキスパンド工程を実施する場合、粘着シート(B)としてエキスパンド用の粘着シート(以下、「エキスパンドテープ」ともいう)を使用すればよい。一方、後の工程の作業性等を考慮して、第一のダイシング工程とエキスパンド工程との間に、複数の半導体チップCPの表裏(すなわち、回路面W1とチップ裏面)を反転させる反転工程を実施する場合は、反転用の粘着シート(以下、「反転用粘着シート」ともいう)を使用すればよい。
図3には、粘着シート(B)として、反転用粘着シートを使用する例が示されている。
次に、反転用粘着シート及びエキスパンドテープとして好適な粘着シート(B)の態様について説明する。
【0110】
(反転用粘着シート)
反転用粘着シートは、基材(Y2)及び粘着剤層(X2)を有し、粘着シート(A)から複数の半導体チップCPを転写された後、該複数の半導体チップCPを、さらに別の粘着シートに転写することで、半導体チップCPの粘着剤層と接する面を反転させるために用いられる。
反転用粘着シートは、上記目的を達成できるものであれば特に制限はないが、半導体チップと貼付及び分離可能であることが必要であるため、粘着シート(A)等の膨張性粒子を含む粘着シート、後述するエキスパンドテープのように、再剥離性を有する非エネルギー線硬化性粘着剤から構成される粘着剤層を有する粘着シート、エネルギー線硬化性粘着剤から構成される粘着剤層を有する粘着シート等が好適である。
反転用粘着シートの基材(Y2)は、粘着シート(A)の基材(Y1)の形成材料として挙げられるものを使用して形成することができる。また、反転用粘着シートの粘着剤層(X2)としては、粘着剤層(X1)又は後述するエキスパンドテープの粘着剤層(X2)の形成材料として挙げられるものを使用して形成することができる。
粘着シート(B)として粘着シート(A)を使用する場合、工程(1)で使用する粘着シート(A)の態様と、本工程で使用する粘着シート(A)の態様とは、同一であっても異なっていてもよい。
【0111】
反転用粘着シートの基材(Y2)の厚さは、好ましくは10~1000μm、より好ましくは20~500μm、更に好ましくは25~400μm、より更に好ましくは30~300μmである。
反転用粘着シートの粘着剤層(X2)の厚さは、好ましくは1~60μmであり、より好ましくは2~50μm、更に好ましくは3~40μm、より更に好ましくは5~30μmである。
【0112】
(エキスパンドテープ)
次に、エキスパンドテープとして好適な粘着シート(B)について説明する。
エキスパンドテープは、基材(Y2)及び粘着剤層(X2)を有し、粘着シート(A)から粘着剤層(X2)の上に複数の半導体チップCPを転写された後、該複数の半導体チップCP同士の間隔を、粘着シート(B)を引き伸ばして広げるために用いられる。
【0113】
エキスパンドテープの基材(Y2)の材質としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート等)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、およびポリスチレン樹脂等が挙げられる。
エキスパンドテープの基材(Y2)は熱可塑性エラストマー、ゴム系材料等を含有することが好ましく、熱可塑性エラストマーを含有することがより好ましい。
熱可塑性エラストマーとしては、ウレタン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、アミド系エラストマー等が挙げられる。
【0114】
エキスパンドテープの基材(Y2)は、上記材料からなるフィルムが複数層積層されたものであってもよく、上記材料からなるフィルムと、その他のフィルムとが積層されたものであってもよい。
エキスパンドテープの基材(Y2)は、上記の樹脂系材料を主材料とするフィルム内に、顔料、染料、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー等の各種添加剤が含まれていてもよい。
【0115】
エキスパンドテープの粘着剤層(X2)は、非エネルギー線硬化性粘着剤から構成されてもよいし、エネルギー線硬化性粘着剤から構成されてもよい。
非エネルギー線硬化性粘着剤としては、所望の粘着力及び再剥離性を有するものが好ましく、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、粘着シート(B)を延伸した際に半導体チップ等の脱落を効果的に抑制する観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0116】
エネルギー線硬化性粘着剤は、エネルギー線照射により硬化して粘着力が低下するため、半導体チップと粘着シート(B)とを分離させる際、エネルギー線照射することにより、容易に分離させることができる。
エキスパンドテープの粘着剤層(X2)を構成するエネルギー線硬化性粘着剤としては、例えば、(a)エネルギー線硬化性を有するポリマー、並びに(b)少なくとも1つ以上のエネルギー線硬化性基を有するモノマー及び/又はオリゴマーから選ばれる1種以上を含有するものが挙げられる。
(a)エネルギー線硬化性を有するポリマーとしては、側鎖に不飽和基等のエネルギー線硬化性を有する官能基(エネルギー線硬化性基)が導入された(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体が好ましい。該アクリル酸エステル(共)重合体としては、例えば、アルキル基の炭素数が1~18であるアルキル(メタ)アクリレートと、重合性の二重結合と、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基とを分子内に有するモノマーとを共重合させた後、さらに、該官能基に結合する官能基を有する不飽和基含有化合物を反応させて得られるものが挙げられる。
(b)少なくとも1つ以上のエネルギー線硬化性基を有するモノマー及び/又はオリゴマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルが挙げられ、具体的には、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の単官能性アクリル酸エステル類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等の多官能性アクリル酸エステル類、ポリエステルオリゴ(メタ)アクリレート、ポリウレタンオリゴ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エネルギー線硬化性粘着剤においては、上記成分以外にも、光重合開始剤、架橋剤等を適宜配合してもよい。
【0117】
エキスパンドテープの基材(Y2)の厚さは、特に限定されないが、好ましくは20~250μm、より好ましくは40~200μmである。
エキスパンドテープの粘着剤層(X2)の厚さは、特に限定されないが、好ましくは3~50μm、より好ましくは5~40μmである。
【0118】
23℃においてMD方向及びCD方向に測定されるエキスパンドテープの破断伸度は、それぞれ100%以上であることが好ましい。破断伸度が上記範囲であることで、大きく延伸することが可能となる。そのため、ファンアウト型パッケージの製造といった、半導体チップ同士を十分に離間させる必要がある用途に好適に使用することができる。
【0119】
なお、粘着シート(B)の粘着剤層(X2)が、エネルギー線硬化性粘着剤から構成されている場合は、粘着シート(A)が含有する膨張性粒子は、熱膨張性粒子であることが好ましい。
【0120】
<工程(3)>
図4には、前記膨張性粒子を膨張させて、複数の半導体チップCPと粘着シート(A)とを分離する工程(3)を説明する断面図が示されている。
本工程では、膨張性粒子を、その種類に応じて、熱、エネルギー線等によって膨張させることにより、粘着剤層(X1)の粘着表面(X1a)に凹凸を形成し、これにより、粘着表面(X1a)と複数の半導体チップCPとの粘着力を低下させ、粘着シート(A)と複数の半導体チップCPとを分離させる。
【0121】
膨張性粒子を膨張させる方法は、膨張性粒子の種類に応じて適宜選択すればよく、膨張性粒子が熱膨張性粒子である場合は、膨張開始温度(t)以上の温度に加熱すればよい。ここで、「膨張開始温度(t)以上の温度」としては、「膨張開始温度(t)+10℃」以上「膨張開始温度(t)+60℃」以下であることが好ましく、「膨張開始温度(t)+15℃」以上「膨張開始温度(t)+40℃」以下であることがより好ましい。具体的には、その熱膨張性粒子の種類に応じて、例えば、70~330℃の範囲に加熱して膨張させればよい。
【0122】
膨張性粒子の膨張は、基材(Y1)の粘着剤層(X1)とは反対側の面(Y1a)を固定した状態で実施することが好ましい。面(Y1a)が固定されていることによって、面(Y1a)に側における凹凸の発生が物理的に抑制され、粘着剤層(X1)の粘着表面(X1a)側に効率的に凹凸を形成することができる。前記固定は任意の方法を採用することができ、例えば、上記した非膨張性基材(Y1’)を基材(Y1)の面(Y1a)側に設ける方法、固定治具として複数の吸引孔を有する吸引テーブルを用いて、基材(Y1)の面(Y1a)を固定する方法、任意の粘着剤層、両面粘着シート等を介して基材(Y1)の面(Y1a)に硬質支持体を貼付する方法等が挙げられる。
前記吸引テーブルは、真空ポンプ等の減圧機構を有し、該減圧機構によって複数の吸引孔から対象物を吸引することによって、対象物を吸引面に固定するものである。
前記硬質支持体の材質は、機械的強度、耐熱性等を考慮して適宜決定すればよく、例えば、SUS等の金属材料;ガラス、シリコンウエハ等の非金属無機材料;エポキシ、ABS、アクリル、エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチック、ポリイミド、ポリアミドイミド等の樹脂材料;ガラスエポキシ樹脂等の複合材料等が挙げられ、これらの中でも、SUS、ガラス、及びシリコンウエハ等が好ましい。エンジニアリングプラスチックとしては、ナイロン、ポリカーボネート(PC)、及びポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。スーパーエンジニアリングプラスチックとしては、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルサルフォン(PES)、及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。
【0123】
<エキスパンド工程>
次に、上記で得られた複数の半導体チップCP同士の間隔を広げるエキスパンド工程を実施する。
エキスパンド工程は、粘着シート(B)の態様に応じて、工程(3)の後に、下記工程(4A)又は工程(4B-1)~(4B-3)(以下、「工程(4B)」ともいう)を実施して行うことができる。
【0124】
工程(4A):粘着シート(B)がエキスパンド用の粘着シートであって、粘着シート(B)に貼付された前記複数の半導体チップ同士の間隔を、前記エキスパンド用粘着シートを引き伸ばして広げる工程。
【0125】
工程(4B-1):粘着シート(B)上の複数の半導体チップの粘着剤層(X2)と接する面とは反対側の面に、エキスパンドテープである粘着シート(C)の粘着剤層(X3)を貼付する工程。
工程(4B-2):粘着シート(C)に貼付された複数の半導体チップCPから粘着シート(B)を分離する工程。
工程(4B-3):粘着シート(C)に貼付された前記複数の半導体チップ同士の間隔を、前記エキスパンド用粘着シートを引き伸ばして広げる工程。
【0126】
工程(4A)は、工程(2)で使用した粘着シート(B)がエキスパンドテープである場合であり、この場合は、粘着シート(B)を引き伸ばして複数の半導体チップCP同士の間隔を広げればよい。
【0127】
工程(4B)は、粘着シート(B)が反転用粘着シートである場合であり、反転用粘着シートである粘着シート(B)から、エキスパンド用の粘着シートである粘着シート(C)に複数の半導体チップCPを転写した後、エキスパンドする工程である。
本実施形態では、工程(4B)について説明する。
【0128】
図5(a)及び(b)には、反転用粘着シートである粘着シート(B)上の複数の半導体チップCPの粘着剤層(X2)と接する面とは反対側の面に、エキスパンドテープである粘着シート(C)の粘着剤層(X3)を貼付する工程(4B-1)、その後、複数の半導体チップCPから粘着シート(B)を分離する工程(4B-2)を示す断面図が示されている。
粘着シート(B)を複数の半導体チップCPから分離する方法は、粘着シート(B)の種類の応じて適宜選択すればよく、粘着シート(B)の粘着剤層(X2)が、非エネルギー線硬化性粘着剤から構成されている場合は、所定の条件で再剥離すればよく、粘着剤層(X2)が、エネルギー線硬化性粘着剤から構成されている場合は、エネルギー線照射により硬化して粘着力を低下させてから分離すればよい。
エキスパンドテープの好ましい態様は前記の通りである。
【0129】
図6(a)及び(b)には、エキスパンド用粘着シート(C)に貼付された複数の半導体チップ同士CPの間隔を、粘着シート(C)を引き伸ばして広げる工程(4B-3)を説明する断面図が示されている。
上記の工程を経て、
図6(a)に示すように、複数の半導体チップCPは、粘着シート(C)の粘着剤層(X3)上に載置される。
次いで、
図6(b)に示すように、粘着シート(C)を引き伸ばして、複数の半導体チップCP同士の間隔を、距離Dまで広げる。
粘着シート(C)を引き延ばす方法としては、環状又は円状のエキスパンダを押し当てて粘着シート(C)を引き延ばす方法、把持部材等を用いて粘着シート(C)の外周部を掴んで引き延ばす方法等が挙げられる。
エキスパンド後の複数の半導体チップCP間の距離Dは、所望する半導体装置の形態に応じて適宜決定すればよいが、好ましくは50~6000μmである。
【0130】
<工程(5)~(8)>
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、基材(Y4)及び粘着剤層(X4)を有する粘着シート(D)を使用して、さらに、下記工程(5)~(8)を実施してもよい。
工程(5):エキスパンド工程で間隔を広げた複数の半導体チップCPを、粘着シート(D)の粘着剤層(X4)に転写する工程。
工程(6):前記複数の半導体チップCPと、粘着剤層(X4)の粘着表面のうち前記複数の半導体チップCPの周辺部と、を封止材で被覆し、該封止材を硬化させて、前記半導体チップが硬化封止材に封止されてなる硬化封止体を得る工程。
工程(7):粘着シート(D)を前記硬化封止体から分離する工程。
工程(8):粘着シート(D)を分離した硬化封止体に、再配線層を形成する工程。
ただし、粘着シート(D)として、エキスパンドテープである粘着シート(C)を使用してもよく、その場合、工程(5)を実施する必要はない。この場合、以下で説明される粘着シート(D)は、粘着シート(C)を意味するものとする。
以下、工程(5)~(8)について、順に説明する。
【0131】
〔工程(5)〕
工程(5)は、エキスパンド工程で間隔を広げられた複数の半導体チップCPを、粘着シート(D)の粘着剤層(X4)に転写する工程である。
図7(a)及び(b)には、エキスパンド用粘着シート(C)上の複数の半導体チップCPの粘着剤層(X3)と接する面とは反対側の面に、粘着シート(D)の粘着剤層(X4)を貼付した後、複数の半導体チップCPから粘着シート(C)を分離する工程を示す断面図が示されている。
ここで、粘着シート(D)は、その粘着表面(X4a)上で複数の半導体チップCPの封止を行って硬化封止体を得た後に、該硬化封止体から分離されるものである。したがって、粘着シート(D)には、封止材による封止の間には、半導体チップの位置ズレが発生せず、かつ半導体チップと仮固定用シートとの接着界面に封止材が進入しない程度の接着性が求められ、封止後には容易に除去し得る分離性が求められる。
粘着シート(D)は、上記目的を達成できるものであれば特に制限はないが、半導体チップとの貼付及び分離可能であることが必要であるため、粘着シート(A)等の膨張性粒子を含む粘着シート、再剥離性を有する非エネルギー線硬化性粘着剤から構成される粘着剤層を有する粘着シート、エネルギー線硬化性粘着剤から構成される粘着剤層を有する粘着シート等が好適である。これらの中でも、特に優れた接着性と分離性とを両立する観点から、粘着シート(A)を使用することが好ましい。
粘着シート(D)として粘着シート(A)を使用する場合、工程(1)で使用する粘着シート(A)の態様と、本工程で使用する粘着シート(A)の態様とは、同一であっても異なっていてもよい。
【0132】
本工程において、粘着シート(C)と複数の半導体チップCPとを分離する方法は、粘着シート(B)の場合と同じように、粘着シート(C)の態様に応じて決定すればよい。
【0133】
〔工程(6)〕
図8(a)~(c)には、複数の半導体チップCPと、粘着剤層(X4)の粘着表面(X4a)のうち複数の半導体チップCPの周辺部45と、を封止材40で被覆し(以下、該工程を「被覆工程」ともいう)、該封止材40を硬化させて(以下、該工程を「硬化工程」ともいう)、複数の半導体チップCPが硬化封止材41に封止されてなる硬化封止体50を得る工程(6)を説明する断面図が示されている。
【0134】
封止材40は、複数の半導体チップCP及びそれに付随する要素を外部環境から保護する機能を有するものである。封止材40としては特に制限はなく、従来、半導体封止材料として使用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。
封止材40は、機械的強度、耐熱性、絶縁性等の観点から、硬化性を有するものであり、例えば、熱硬化性樹脂組成物、エネルギー線硬化性樹脂組成物等が挙げられる。
封止材40である熱硬化性樹脂組成物が含有する熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂等が挙げられるが、機械的強度、耐熱性、絶縁性、成形性等の観点から、エポキシ樹脂が好ましい。
前記熱硬化性樹脂組成物は、前記熱硬化性樹脂の他にも、必要に応じて、フェノール樹脂系硬化剤、アミン系硬化剤等の硬化剤、硬化促進剤、シリカ等の無機充填材、エラストマー等の添加剤を含有していてもよい。
封止材40は、室温で固形であっても、液状であってもよい。また、室温で固形である封止材40の形態は、特に限定されず、例えば、顆粒状、シート状等であってもよい。
本実施形態においては、シート状の封止材(以下、「シート状封止材」ともいう)を用いて被覆工程及び硬化工程を実施することが好ましい。シート状封止材を用いる方法では、シート状封止材を複数の半導体チップCP及びその周辺部45を覆うように載置することで、複数の半導体チップCP及びその周辺部45を封止材40によって被覆する。その際、複数の半導体チップCP同士の間隙に、封止材40が充填されない部分が生じないように、真空ラミネート法等によって、適宜減圧しながら、加熱及び圧着させることが好ましい。
【0135】
封止材40により、複数の半導体チップCP及びその周辺部45を被覆する方法としては、従来、半導体封止工程に適用されている方法の中から、任意の方法を適宜選択して適用することができ、例えば、ロールラミネート法、真空プレス法、真空ラミネート法、スピンコート法、ダイコート法、トランスファーモールディング法、圧縮成形モールド法等を適用することができる。
これらの方法においては、通常、封止材40の充填性を高めるために、被覆時に封止材40を加熱して流動性を付与する。
前記被覆工程において熱硬化性樹脂組成物を加熱する温度は、封止材40の種類、粘着シート(D)の種類等によっても異なるが、例えば、30~180℃であり、50~170℃が好ましく、70~150℃がより好ましい。また、加熱時間は、例えば、5秒~60分間であり、10秒~45分間が好ましく、15秒~30分間がより好ましい。
【0136】
図8(b)に示すように、封止材40は、複数の半導体チップCPの表出している面全体を覆いつつ、複数の半導体チップCP同士の間隙にも充填されている。
【0137】
次に、
図8(c)に示すように、被覆工程を行った後、封止材40を硬化させて、複数の半導体チップCPが硬化封止材41に封止されてなる硬化封止体50を得る。
前記硬化工程において、封止材40を硬化させる温度は、封止材40の種類、粘着シート(D)の種類等によっても異なるが、例えば、80~240℃であり、90~200℃が好ましく、100~170℃がより好ましい。また、加熱時間は、例えば、10~180分間であり、20~150分間が好ましく、30~120分間がより好ましい。
工程(6)により、所定距離ずつ離間した複数の半導体チップCPが硬化封止材41に埋め込まれた硬化封止体50が得られる。
【0138】
〔工程(7)〕
次に、
図8(d)に示すように、粘着シート(D)を硬化封止体50から分離する。
粘着シート(D)を分離する方法は、粘着シート(D)の種類に応じて適宜選択すればよい。粘着シート(D)として粘着シート(A)を使用する場合は、粘着シート(A)に含まれる膨張性粒子を膨張させることにより、硬化封止体50と分離することができる。膨張性粒子を膨張させる条件は、粘着シート(A)で説明した通りである。
【0139】
なお、本実施形態では、複数の半導体チップCPの回路面W1が、粘着シート(D)の粘着剤層(X4)と接する状態で封止工程を実施する例を説明したが、回路面W1が表出した状態(すなわち、チップ裏面が粘着剤層(X4)と接する状態)で、封止工程を実施してもよい。この場合、複数の半導体チップCPの回路面W1は、封止樹脂に覆われることになるが、封止樹脂を硬化させた後、適宜、グラインダー等を使用して硬化封止材を削り、再度回路面W1を表出させればよい。
【0140】
〔工程(8)〕
図9(a)~(c)には、粘着シート(D)を分離した硬化封止体50に、再配線層を形成する工程(8)を説明する断面図が示されている。
図9(b)には、半導体チップCPの回路面W1及び硬化封止体50の面50aに第1絶縁層61を形成する工程を説明する断面図が示されている。
絶縁性樹脂を含む第1絶縁層61を、回路面W1及び面50aの上に、半導体チップCPの回路W2又は回路W2の内部端子電極W3を露出させるように形成する。絶縁性樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。内部端子電極W3の材質は、導電性材料であれば限定されず、金、銀、銅、アルミニウム等の金属、これらの金属を含む合金等が挙げられる。
【0141】
図9(c)には、硬化封止体50に封止された半導体チップCPと電気的に接続する再配線70を形成する工程を説明する断面図が示されている。
本実施形態では、第1絶縁層61の形成に続いて再配線70を形成する。再配線70の材質は、導電性材料であれば限定されず、金、銀、銅、アルミニウム等の金属、これらの金属を含む合金等が挙げられる。再配線70は、サブトラクティブ法、セミアディティブ法等の公知の方法により形成できる。
【0142】
図10(a)には、再配線70を覆う第2絶縁層62を形成する工程を説明する断面図が示されている。
再配線70は、外部端子電極用の外部電極パッド70Aを有する。第2絶縁層62には開口等を設けて、外部端子電極用の外部電極パッド70Aを露出させる。本実施形態では、外部電極パッド70Aは、硬化封止体50の半導体チップCPの領域(回路面W1に対応する領域)内及び領域外(硬化封止体50上の面50aに対応する領域)に露出させている。また、再配線70は、外部電極パッド70Aがアレイ状に配置されるように、硬化封止体50の面50aに形成されている。本実施形態では、硬化封止体50の半導体チップCPの領域外に外部電極パッド70Aを露出させる構造を有するので、FOWLP又はFOPLPを得ることができる。
【0143】
(外部端子電極との接続工程)
次に、必要に応じて、外部電極パッド70Aに外部端子電極80を接続させてもよい。
図10(b)には、外部電極パッド70Aに外部端子電極80を接続させる工程を説明する断面図が示されている。
第2絶縁層62から露出する外部電極パッド70Aに、はんだボール等の外部端子電極80を載置し、はんだ接合等により、外部端子電極80と外部電極パッド70Aとを電気的に接続させる。はんだボールの材質は、特に限定されず、含鉛はんだ、無鉛はんだ等が挙げられる。
【0144】
(第二のダイシング工程)
図10(c)は、外部端子電極80が接続された硬化封止体50を個片化させる第二のダイシング工程を説明する断面図が示されている。
本工程では、硬化封止体50を半導体チップCP単位で個片化する。硬化封止体50を個片化させる方法は、特に限定されず、ダイシングソー等の切断手段等によって実施することができる。
硬化封止体50を個片化することで、半導体チップCP単位の半導体装置100が製造される。上述のように半導体チップCPの領域外にファンアウトさせた外部電極パッド70Aに外部端子電極80を接続させた半導体装置100は、FOWLP、FOPLP等として製造される。
【0145】
(実装工程)
本実施形態では、個片化された半導体装置100を、プリント配線基板等に実装する工程を含むことも好ましい。
【実施例】
【0146】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の製造例及び実施例における物性値は、以下の方法により測定した値である。
【0147】
<質量平均分子量(Mw)>
ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー株式会社製、製品名「HLC-8020」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
・カラム:「TSK guard column HXL-L」「TSK gel G2500HXL」「TSK gel G2000HXL」「TSK gel G1000HXL」(いずれも東ソー株式会社製)を順次連結したもの
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
【0148】
<各層の厚さの測定>
株式会社テクロック製の定圧厚さ測定器(型番:「PG-02J」、標準規格:JIS K6783、Z1702、Z1709に準拠)を用いて測定した。
【0149】
<熱膨張性粒子の平均粒子径(D50)、90%粒子径(D90)>
レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、Malvern社製、製品名「マスターサイザー3000」)を用いて、23℃における膨張前の熱膨張性粒子の粒子分布を測定した。
そして、粒子分布の粒子径の小さい方から計算した累積体積頻度が50%及び90%に相当する粒子径を、それぞれ「熱膨張性粒子の平均粒子径(D50)」及び「熱膨張性粒子の90%粒子径(D90)とした。
【0150】
<膨張性基材の貯蔵弾性率E’>
測定対象が非粘着性の膨張性基材である場合、当該膨張性基材を縦5mm×横30mm×厚さ200μmの大きさとし、剥離材を除去したものを試験サンプルとした。
動的粘弾性測定装置(TAインスツルメント社製、製品名「DMAQ800」)を用いて、試験開始温度0℃、試験終了温度300℃、昇温速度3℃/分、振動数1Hz、振幅20μmの条件で、所定の温度における、当該試験サンプルの貯蔵弾性率E’を測定した。
【0151】
<粘着剤層の貯蔵せん断弾性率G’>
測定対象が粘着性を有する粘着剤層である場合、当該粘着剤層を直径8mm×厚さ3mmとし、剥離材を除去したものを試験サンプルとした。
粘弾性測定装置(Anton Paar社製、装置名「MCR300」)を用いて、試験開始温度0℃、試験終了温度300℃、昇温速度3℃/分、振動数1Hzの条件で、ねじりせん断法によって、所定の温度における、試験サンプルの貯蔵せん断弾性率G’を測定した。そして、貯蔵弾性率E’の値は、測定した貯蔵せん断弾性率G’の値を基に、近似式「E’=3G’」から算出した。
【0152】
<プローブタック値>
測定対象となる膨張性基材又は粘着剤層を一辺10mmの正方形に切断した後、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で24時間静置し、軽剥離フィルムを除去したものを試験サンプルとした。
前記試験サンプルを、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、タッキング試験機(日本特殊測器株式会社製、製品名「NTS-4800」)を用いて、軽剥離フィルムを除去して表出した、前記試験サンプルの表面におけるプローブタック値を、JIS Z0237:1991に準拠して測定した。
具体的には、直径5mmのステンレス鋼製のプローブを、1秒間、接触荷重0.98N/cm2で試験サンプルの表面に接触させた後、当該プローブを10mm/秒の速度で、試験サンプルの表面から離すのに必要な力を測定した。そして、その測定した値を、その試験サンプルのプローブタック値とした。
【0153】
以下の製造例での各層の形成で使用した粘着性樹脂、添加剤、熱膨張性粒子、及び剥離材の詳細は以下のとおりである。
<粘着性樹脂>
・アクリル系共重合体(i):2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)/2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)=80.0/20.0(質量比)からなる原料モノマーに由来の構成単位を有する、Mw60万のアクリル系共重合体を含む溶液。希釈溶媒:酢酸エチル、固形分濃度:40質量%。
<添加剤>
・イソシアネート架橋剤(i):東ソー株式会社製、製品名「コロネートL」、固形分濃度:75質量%。
・光重合開始剤(i):BASF社製、製品名「イルガキュア184」、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン。
<熱膨張性粒子>
・熱膨張性粒子(i):株式会社クレハ製、製品名「S2640」、膨張開始温度(t)=208℃、平均粒子径(D50)=24μm、90%粒子径(D90)=49μm。
<剥離材>
・重剥離フィルム:リンテック株式会社製、製品名「SP-PET382150」、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に、シリコーン系剥離剤から形成した剥離剤層を設けたもの、厚さ:38μm。
・軽剥離フィルム:リンテック株式会社製、製品名「SP-PET381031」、PETフィルムの片面に、シリコーン系剥離剤から形成した剥離剤層を設けたもの、厚さ:38μm。
【0154】
製造例1
(粘着剤層(X1)の形成)
粘着性樹脂である、上記アクリル系共重合体(i)の溶液の固形分100質量部に、上記イソシアネート系架橋剤(i)5.0質量部(固形分比)を配合し、トルエンで希釈し、均一に撹拌して、固形分濃度(有効成分濃度)25質量%の粘着剤組成物(x1)を調製した。
そして、上記重剥離フィルムの剥離剤層の表面上に、調製した粘着剤組成物(x1)を塗布して塗膜を形成し、該塗膜を100℃で60秒間乾燥して、厚さ10μmの粘着剤層(X1)を形成した。なお、23℃における、粘着剤層(X1)の貯蔵せん断弾性率G’(23)は、2.5×105Paであった。
【0155】
製造例2
(膨張性基材(Y1-1)の形成)
エステル型ジオールと、イソホロンジイソシアネート(IPDI)を反応させて得られた末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、2-ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて、質量平均分子量(Mw)5000の2官能のアクリルウレタン系オリゴマーを得た。
そして、上記で合成したアクリルウレタン系オリゴマー40質量%(固形分比)に、エネルギー線重合性モノマーとして、イソボルニルアクリレート(IBXA)40質量%(固形分比)、及びフェニルヒドロキシプロピルアクリレート(HPPA)20質量%(固形分比)を配合し、アクリルウレタン系オリゴマー及びエネルギー線重合性モノマーの全量100質量部に対して、さらに光重合開始剤(i)2.0質量部(固形分比)、及び、添加剤として、フタロシアニン系顔料0.2質量部(固形分比)を配合し、エネルギー線硬化性組成物を調製した。該エネルギー線硬化性組成物に、上記熱膨張性粒子(i)を配合し、溶媒を含有しない、無溶剤型の樹脂組成物(y1)を調製した。なお、樹脂組成物(y1)の全量(100質量%)に対する、熱膨張性粒子(i)の含有量は20質量%であった。
次いで、上記軽剥離フィルムの剥離剤層の表面上に、調製した樹脂組成物(y1)を塗布して塗膜を形成した。そして、紫外線照射装置(アイグラフィクス社製、製品名「ECS-401GX」)及び高圧水銀ランプ(アイグラフィクス社製、製品名「H04-L41」)を用いて、照度160mW/cm2、光量500mJ/cm2の条件で紫外線を照射し、当該塗膜を硬化させ、厚さ50μmの膨張性基材(Y1-1)を形成した。なお、紫外線照射時の上記の照度及び光量は、照度・光量計(EIT社製、製品名「UV Power Puck II」)を用いて測定した値である。
なお、上記で得られた膨張性基材(Y1-1)の23℃における貯蔵弾性率E’は、5.0×108Pa、100℃における貯蔵弾性率E’は、4.0×106Pa、208℃における貯蔵弾性率E’は、4.0×106Paであった。また、膨張性基材(Y1-1)のプローブタック値は、2mN/5mmφであった。
【0156】
製造例3
(粘着シート(A)の作製)
製造例1で形成した粘着剤層(X1)と、製造例2で形成した膨張性基材(Y1-1)との表面同士を貼り合わせた。これにより、軽剥離フィルム/膨張性基材(Y1-1)/粘着剤層(X1)/重剥離フィルムをこの順で積層した粘着シート(A)を作製した。
【0157】
製造例4
(粘着シート(B)(エキスパンドテープ)の作製)
ブチルアクリレート/2-ヒドロキシエチルアクリレート=85/15(質量比)を反応させて得られたアクリル系共重合体と、その2-ヒドロキシエチルアクリレートに対して80モル%のメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)とを反応させて、エネルギー線硬化型重合体を得た。このエネルギー線硬化型重合体の質量平均分子量(Mw)は、60万であった。得られたエネルギー線硬化型重合体100質量部と、光重合開始剤としての1-ヒドロキシシクロフェニルケトン(BASF社製、製品名「イルガキュア184」)3質量部と、架橋剤としてのトリレンジイソシアネート系架橋剤(東ソー社製、製品名「コロネートL」)0.45質量部とを溶媒中で混合し、粘着性組成物を得た。
次に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる剥離フィルム(リンテック株式会社製、製品名「SP-PET3811」)の剥離剤層の表面に対して、上記粘着性組成物を塗布し、加熱により乾燥させることで、剥離フィルム上に、厚さ10μmの粘着剤層(X2)を形成した。その後、この粘着剤層の露出面に、基材(Y2)として、ポリエステル系ポリウレタンエラストマーシート(シーダム社製、製品名「ハイグレスDUS202」、厚さ50μm)の片面を貼り合わせることで、粘着剤層に剥離フィルムが貼付された状態で粘着シート(B)(エキスパンドテープ)を得た。
【0158】
[半導体装置の製造]
実施例1
上記で得られた粘着シート(A)及び粘着シート(B)を使用して、以下の方法により、半導体装置を製造した。
<工程(1)>
製造例3で得られた粘着シート(A)を230mm×230mmの大きさに裁断した。
裁断後の粘着シート(A)から重剥離フィルムと軽剥離フィルムを剥離して、表出した粘着剤層(X1)の表面にリングフレーム及び半導体ウエハ(直径:150mm、厚さ:350μm)を貼付した。次に、該半導体ウエハをダイサー(ディスコ社製、製品名「DFD-651」)を使用して、以下の条件にて、半導体ウエハをフルカットでダイシングした。これにより、粘着シート(A)の粘着剤層(X1)上に、個片化された複数の半導体チップ(1800個)を得た。
・ダイシングブレード:ディスコ社製、製品名「NBC-ZH2050 27HECC」
・回転数:30,000rpm
・ハイト:0.06mm
・60mm/sec
・チップサイズ:3mm×3mm
<工程(2)>
次に、製造例4で得られた粘着シート(B)を210mm×210mmの大きさに裁断した。このとき、裁断後のシートの各辺が、粘着シート(B)の基材(Y2)のMD方向と平行又は垂直となるように裁断した。次に、粘着シート(B)から剥離シートを剥離し、前記複数の半導体チップの粘着剤層(X1)と接する面とは反対側の面に、粘着シート(B)の粘着剤層(X2)を貼付した。このとき、半導体チップの一群が、粘着シート(B)の中央部に位置するように転写した。また、半導体ウエハを個片化したときのダイシングラインが、粘着シート(B)の各辺と平行又は垂直となるように転写した。
<工程(3)>
次に、粘着シート(A)が備える膨張性基材(Y1-1)の粘着剤層(X)とは反対側の面にホットプレートを押し当てた状態とし、粘着シート(A)を熱膨張性粒子の膨張開始温度(208℃)以上となる240℃で3分間加熱し、熱膨張性粒子を膨張させて、粘着シート(B)に貼付した前記複数の半導体チップと粘着シート(A)とを分離した。なお、粘着シート(A)を分離する際には、粘着シート(A)を屈曲させることなく平面状に保ったまま、一括して同時に複数の半導体チップから分離した。
<エキスパンド工程>
続いて、複数の半導体チップが貼付されている粘着シート(B)を、2軸延伸可能なエキスパンド装置に設置した。エキスパンド装置は、
図11に示すように、互いに直交するX軸方向(正の方向を+X軸方向、負の方向を-X軸方向とする。)とY軸方向(正の方向を+Y軸方向、負の方向を-Y軸方向とする。)を有し、各方向(すなわち、+X軸方向、-X軸方向、+Y軸方向、-Y軸方向)に延伸するための保持手段を有する。粘着シート(B)のMD方向を、X軸又はY軸方向と合わせて、エキスパンド装置に設置し、前記保持手段によって、粘着シート(B)の各辺を把持させてから、下記の条件にて、粘着シート(B)を引き伸ばし、粘着シート(B)の粘着剤層(X2)上に貼付されている複数の半導体チップ同士の間隔を広げた。
・保持手段の個数:一辺辺り、5個
・延伸速度:5mm/sec
・延伸距離:各辺を60mmずつ延伸した。
【0159】
比較例1
<工程(1)>
基材及び粘着剤層を有するダイシングテープ(リンテック株式会社製、商品名「D-820」)(以下、「比較用ダイシングテープ」ともいう)の粘着剤層の表面に、リングフレーム及び半導体ウエハ(直径:150mm、厚さ:350μm)を貼付した。その後は、実施例1の工程(1)と同様にして、個片化された複数の半導体チップを得た。
<工程(2)>
実施例1と同様にして行った。
<工程(3)>
比較用ダイシングテープの基材側の面から、紫外線を照度230mW/cm2、光量190mJ/cm2照射し、粘着剤層を硬化させて、粘着シート(B)に貼付した前記複数の半導体チップと比較用ダイシングテープとを分離した。なお、比較用ダイシングテープを分離する際には、比較用ダイシングテープを屈曲させることなく平面状に保ったまま、一括して同時に複数の半導体チップから分離した。
<エキスパンド工程>
実施例1と同様にして行った。
【0160】
[チップ欠けの有無評価]
上記で得られたエキスパンド後の複数の半導体チップの外観を顕微鏡にて観察し、半導体チップのチップ欠けの有無を確認し、以下の基準で評価した。
・A:チップ欠けしたものがあった。
・F:チップ欠けしたものはなかった。
【0161】
[粘着シートの粘着力の測定]
(粘着シート(A)の加熱前後の粘着力測定)
作製した粘着シート(A)の軽剥離フィルムを除去した。次に、粘着シート(A)の重剥離フィルムも除去し、表出した粘着剤層(X1)の粘着表面を、被着体であるステンレス鋼板(SUS304 360番研磨)に貼付し、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、24時間静置したものを試験サンプルとした。
上記の試験サンプルを用いて、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、JIS Z0237:2000に基づき、180°引き剥がし法により、引っ張り速度300mm/分にて、23℃における粘着力を測定した。
また、上記の試験サンプルを、ホットプレート上にて、熱膨張性粒子の膨張開始温度(208℃)以上となる240℃で3分間加熱し、標準環境(23℃、50%RH(相対湿度))にて60分間静置した後、上記と同じ条件で、膨張開始温度以上での加熱後の粘着力も測定した。
【0162】
(比較用ダイシングテープの紫外線照射前後の粘着力測定)
比較用ダイシングテープ(リンテック株式会社製、商品名「D-820」)の粘着表面を、被着体であるステンレス鋼板(SUS304 360番研磨)に貼付し、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、24時間静置したものを試験サンプルとし、粘着シート(A)と同様の条件で、紫外線照射前の23℃における粘着力を測定した。
次に、比較用ダイシングテープの基材側から、紫外線を照度230mW/cm2、光量190mJ/cm2照射した後、上記と同じ条件で、紫外線照射後の23℃における粘着力を測定した。
【0163】
【0164】
表1の結果から、本実施形態の製造方法に用いる粘着シート(A)は、膨張後の粘着力が、従来の紫外線照射型の粘着シートよりも小さく、これにより半導体ウエハをダイシングして得られた複数のチップを別の粘着シートに容易に転写することができ、かつ、転写の際のチップ欠けの発生を効果的に抑制できることが分かる。
【符号の説明】
【0165】
1a 粘着シート(a)
1b 粘着シート(a)
40 封止材
41 硬化封止材
45 半導体チップCPの周辺部
50 硬化封止体
50a 面
61 第1絶縁層
62 第2絶縁層
70 再配線
70A 外部電極パッド
80 外部端子電極
100 半導体装置
200 エキスパンド装置
210 保持手段
CP 半導体チップ
W1 回路面
W2 回路
W3 内部端子電極