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特許7185643静電容量式表面センサ上で時間依存信号を生成する方法、及びカード状物体を識別する方法、並びにカード状物体及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】静電容量式表面センサ上で時間依存信号を生成する方法、及びカード状物体を識別する方法、並びにカード状物体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/06 20060101AFI20221130BHJP
   G06F 3/03 20060101ALI20221130BHJP
   G06K 7/08 20060101ALI20221130BHJP
   G06K 19/067 20060101ALI20221130BHJP
   B42D 25/373 20140101ALI20221130BHJP
【FI】
G06K7/06 050
G06F3/03 400Z
G06K7/08 010
G06K19/067
B42D25/373
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019562463
(86)(22)【出願日】2018-01-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 EP2018000044
(87)【国際公開番号】W WO2018141478
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2021-01-25
(31)【優先権主張番号】17000167.1
(32)【優先日】2017-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17001423.7
(32)【優先日】2017-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519275364
【氏名又は名称】プリスマーデ ラボ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベイゲルト、カリン
(72)【発明者】
【氏名】シール、ヤン
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-015129(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0198062(US,A1)
【文献】特開2015-015030(JP,A)
【文献】特開2015-075796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/00-7/14
G06F 3/09-3/12
G06K 19/00-19/18
B42D 25/373
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量式表面センサ(22)上に時間依存信号(16)を生成する方法であって、
前記静電容量式表面センサ(22)上にユーザによってかれるカード状物体(10)が、前記カード状物体(10)上に配置された複数の個々の要素(14)を具備する導電性構造体(12)を備え、前記静電容量式表面センサ(22)によって検出された前記時間依存信号(16)が、前記カード状物体(10)上の前記個々の要素(14)の前記配置によって確立され、入力手段(18)と前記カード状物体(10)との間の相対的な動き(20)によって生成され、
前記方法が、第1の接点(24)及び第2の接点(26)を提供するステップを含み、前記第1の接点(24)が、前記カード状物体(10)と前記静電容量式表面センサ(22)との間に存在し、前記第2の接点(26)が、前記カード状物体(10)と前記入力手段(18)との間に存在し、少なくとも前記第2の接点(26)が、前記カード状物体(10)が前記入力手段(18)と前記静電容量式表面センサ(22)との間で前記静電容量式表面センサ(22)上に位置決めされながら、前記入力手段(18)と前記カード状物体(10)との間の前記相対的な動きが生じるように動的に形成されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
カード状物体(10)を識別する方法であって、
a.複数の個々の要素(14)を具備する導電性構造体(12)を備える前記カード状物体(10)を提供するステップと、
b.静電容量式表面センサ(22)上に前記カード状物体(10)を置くステップであって、それによって第1の接点(24)が形成されるステップと、
c.入力手段(18)と前記カード状物体(10)との間の相対的な動き(20)を、前記カード状物体(10)が、前記入力手段(18)と前記静電容量式表面センサ(22)との間で位置決めされながら、ユーザによって実行するステップであって、それによって動的な第2の接点(26)を形成するステップと、
d.前記相対的な動き(20)の関数として、前記静電容量式表面センサ(22)上に時間依存信号(16)を生成するステップと、
e.前記カード状物体(10)を識別するために、前記静電容量式表面センサ(22)を備えるデバイスによって、前記時間依存信号(16)を評価するステップと
を含み、
前記静電容量式表面センサ(22)上で生成される前記時間依存信号(16)は、前記カード状物体(10)上の前記個々の要素(14)の配置によって確立される、方法。
【請求項3】
前記静電容量式表面センサ(22)上で結果として得られる前記時間依存信号(16)が、タッチ入力の量を含み、前記タッチ入力の位置、速度、方向、及び/若しくは形状、並びに/又は信号の中断、周波数、及び/若しくは信号強度に関して、結果として得られる前記時間依存信号(16)が、前記静電容量式表面センサ(22)と前記入力手段(18)との間で前記カード状物体(10)を位置決めすることなく前記入力手段(18)を用いた基準入力によって確立される基準信号に対して少なくとも部分的に変化することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
カード状物体(10)が、前記カード状物体(10)上に配置される複数の個々の要素(14)を具備する導電性構造体(12)を備え、
前記導電性構造体(12)の前記個々の要素(14)が、入力手段(18)と前記カード状物体(10)との間の相対的な動き(20)から結果として得られる、静電容量式表面センサ(22)上の時間依存信号(16)が、前記入力手段(18)と前記静電容量式表面センサ(22)との間で前記カード状物体(10)を位置決めすることなく前記入力手段(18)を用いて作られた基準入力に対して変化するような、サイズ、間隔、及び形状に対して形成されることを特徴とする、カード状物体(10)。
【請求項5】
前記導電性構造体(12)が、少なくとも2つの電気的に分離された個々の要素(14)を備え、前記個々の要素(14)は平面に配置されることを特徴とする、請求項に記載のカード状物体(10)。
【請求項6】
前記導電性構造体(12)の前記個々の要素(14)が、互いに本質的に平行に配置される長方形によって本質的に形成されることを特徴とする、請求項又はに記載のカード状物体(10)。
【請求項7】
前記導電性構造体(12)の前記個々の要素(14)が、0.1mmから20mmの幅を持ち、且つ/又は0.1mmから30mmの間隔を持つことを特徴とする、請求項からまでのいずれか一項に記載のカード状物体(10)。
【請求項8】
前記導電性構造体(12)の前記個々の要素(14)が、0.1mmから6mmの幅を持つことを特徴とする、請求項からまでのいずれか一項に記載のカード状物体(10)。
【請求項9】
請求項4から8までのいずれか一項に記載のカード状物体(10)を生産するための方法であって、
前記導電性構造体(12)が、
a)箔転写法又は導電性塗料を用いて、導電性基本構造体(28)を基板に塗布するステップと、
b)レーザを用いて前記導電性基本構造体(28)の一部を選択的に取り除くステップであって、それによって空間的に分離された領域を具備する個々の要素(14)を備えた導電性構造体(12)が得られるステップ、又は
c)導電性塗料を前記カード状物体(10)に塗布するのに用いられるインクジェット印刷によって、導電性ブリッジ及び/又は追加の導電性要素を選択的に塗布するステップであって、それによって個々の要素(14)を備える導電性構造体(12)が得られる、ステップ
を含む、多段階のプロセスで生産されることを特徴とする、方法
【請求項10】
記静電容量式表面センサ(22)上で前記時間依存信号(16)を生成することは、第1の接点(24)及び第2の接点(26)を提供することを含み、前記第1の接点(24)は、前記カード状物体(10)と前記静電容量式表面センサ(22)との間に存在し、前記第2の接点(26)は、前記カード状物体(10)と前記入力手段(18)との間に存在し、前記第1の接点(24)及び前記第2の接点(26)は同時に存在することを特徴とする、請求項4から8までのいずれか一項に記載のカード状物体(10)
【請求項11】
前記入力手段(18)が、前記静電容量式表面センサ(22)に対する固定位置を維持し、且つ/又は前記入力手段(18)は、前記静電容量式表面センサ(22)の一部であることを特徴とする、請求項4から8までのいずれか一項又は請求項10に記載のカード状物体(10)
【請求項12】
請求項4から8までのいずれか一項、請求項10、又は請求項11に記載のカード状物体(10)と、静電容量式表面センサ(22)とを備えるシステムであって、
前記カード状物体(10)が、前記静電容量式表面センサ(22)上に置かれることができ、前記カード状物体(10)が、入力手段(18)と前記静電容量式表面センサ(22)との間で前記静電容量式表面センサ(22)上に位置決めされながら、前記カード状物体(10)が、前記入力手段(18)と前記カード状物体(10)との間の相対的な動き(20)によって時間依存信号(18)を生成するように適合され、前記時間依存信号(18)が、前記カード状物体(10)上の前記個々の要素(14)の配置によって確立されることができることを特徴とする、システム。
【請求項13】
前記導電性構造体(12)の前記個々の要素(14)が、前記入力手段(18)と前記カード状物体(10)との間の相対的な動き(20)から得られる、静電容量式表面センサ(22)上の時間依存信号(16)が、前記カード状物体(10)を使用することなく前記入力手段(18)を用いた基準入力によって確立された基準信号に対して変化するような、サイズ、間隔、及び形状に対して、形成されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量式表面センサ上で時間依存信号を生成する方法、及びカード状物体を識別する方法、並びにカード状物体及びその使用に関する。
【0002】
本発明は、自動識別技術の技術分野の一部である。
【背景技術】
【0003】
物体をデバイスベースで自動識別する既知の技術には、たとえば、光学コード又はRFID(無線周波数識別:radio frequency identification)タグがある。光学コードでは、伝統的なバーコードの形態(バーコード)又は2Dバーコードが知られている。光学コードの欠点は、まず第1にコピーのしやすさであり、従って対応するマークづけされた物体は、偽造の試みに対して最適には保護されない。
【0004】
RFIDタグは、電波を使用して読み取られる電子回路である。このタグは、光学コードに比べてはるかに偽造防止性に優れる。ただし、多くの大規模な適用例では、特に大量の使用が必要となることが多いため、RFIDタグは高価すぎる。別の代替自動識別技術として、低コストと改良された偽造保護との利点を組み合わせた、静電容量式データ・キャリアが近年開発されてきた。様々な形態の静電容量式データ・キャリアばかりでなく、その生産方法、並びにデータ・キャリアを識別する方法及びシステムが、先行技術から知られている。
【0005】
特許文献1は、情報を取り込むための静電容量式情報キャリアを備えたシステムを開示している。本発明は、非導電性の基板上に導電層が配置された静電容量式情報キャリアと、表面センサとを備えるシステムを説明し、ここで情報キャリアは、表面センサと接触状態で存在する。導電層は、タッチ・ポイント、結合表面、及び伝導経路を具備する、タッチ構造体を備える。かかる構造体は、表面センサに接続され、ソフトウェアで処理されるデータ処理システムを使って評価することができる。結果として得られる表面センサ上のタッチ入力を、データ処理システムで評価することができる、複数のタッチ・ポイントの静止画像を生成する。
【0006】
特許文献2は、平坦で携帯型データ・キャリアと端末との相互作用を開示している。たとえば、価値ある文書であり得る携帯型データ・キャリアは、たとえば、少なくとも1つの表面上及び/又はデータ・キャリアの内部に設けられた導電性構造体を備え、導電性構造体の個々の領域は、導電的に、又は静電容量的に相互接続されている。端末は、タッチ感応型で静電容量式の表面、具体的には静電容量式ディスプレイを備える。
【0007】
特許文献3は、互いに電気的に(galvanically)分離された情報領域及び背景領域を具備する、キャリア及びその上に配置された導電層を備える多層体を説明している。導電性材料を備えた第1のゾーンが、各情報領域内に設けられ、その導電性材料は、前記ゾーン全体にわたって接続されている。各背景領域には、導電性材料の第2のゾーンの大部分が設けられ、互いに電気的に分離されている。この多層体は、静電容量検知式入力デバイスによって読み取られ得る。
【0008】
これら2つの適用例は、情報領域を表す導電性構造体が、導電的に接続されていることを特徴とする。静電容量式端子上に導電性構造体を生成する静止画像は、それぞれの場合において評価される。
【0009】
特許文献4は、物体の形状又はパターンによるタッチ・スクリーン上のタッチ信号の生成、並びにソフトウェアによる物体の識別及び関連する作用のトリガを説明する、方法を説明している。この場合、物体全体の支持面が、タッチ・スクリーン上で入力信号を生成する。
【0010】
言及された先行技術の物体又はデバイスは、全体的又は部分的に導電性材料で作られ、静電容量式タッチ・スクリーン上に特定の入力パターンを生じさせる物体又はデバイスである。この入力パターン、すなわちいわゆる「フットプリント」は、接触面の相対位置に対して評価され、データ記録又は作用に関連づけられる。所与の時間に存在する静的な入力パターンが、常に評価される。上記のシステム内では常に静的な入力パターンが評価されるので、これもまた模倣することができる。従って、先行技術から知られるシステムでは、安全関連の用途のための偽造に対する排除能力はない。
【0011】
先行技術のデバイスの欠点は、データ密度が制限されること、つまり、領域ごとの相異なる識別子(ID:identifier)の数が、通常幾何学的コーディングであるコーディングの種類によって制限されることである。相異なるIDの数が多いほど、必要な領域が大きくなるという結果をもたらし、多くの適用例において相異なるIDの数を保証することができない。さらに、ユーザはデータ・キャリアのどの部分を、タッチ・スクリーン上に置かなければならない、また置いてよい、そしてどの部分が置いてはいけないかを知る必要があるので、いくつかの先行システムについては、最適な使いやすさではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開第2011/154524号
【文献】独国特許出願公開第102012023082号明細書
【文献】独国特許出願公開第102013101881号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0045627号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、静電容量式表面センサ上で時間依存信号を生成する方法、及びカード状物体を識別する方法、並びに先行技術の欠点及び欠陥がなく、加えて特に偽造防止でき、小さなスペース内に大量のデータを保存することができ、特にユーザ・フレンドリであるよう設計されたカード状物体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、前記目的を達成するために、静電容量式表面センサ上に時間依存信号を生成する方法が提供され、ここで静電容量式表面センサ上に置くことができるカード状物体は、カード状物体上に配置された複数の個々の要素を具備する導電性構造体を備え、時間依存信号は、カード状物体上の個々の要素の配置によって確立され、入力手段とカード状物体との間の相対的な動きによって生成される。
【0015】
本発明では、カード状物体は、本発明の特に好ましい実施例では、カード、たとえばクレジット・カードの形態を持つ3次元の製品であることが好ましい。当業者は、カードが好ましくは平坦であるように構成されること、すなわち、好ましい物体の長さ又は幅よりも大幅に低い高さを持つことを理解されよう。具体的には、カード状物体は、平面状に形づくることができ、すなわち、低い高さに対して大きなベース領域を備えることができ、ここで本発明によれば、ベース領域を備えるカード状物体が表面センサ上に置かれる場合、それにより物体と表面センサとの相互作用のための大きな有効表面を有利に作成することは、特に好ましい。さらなる実施例において、カード形状の物体は、物体の幅よりも大幅に長い、長さを持つことが好ましい。たとえば、典型的なクレジット・カードでは、長さは86mm、幅は54mmであり、これは約1.6の比率に一致する。本発明では、従来のクレジット・カードは、長さが物体の幅よりも大幅に長いカード形状の物体の一実例である。たとえば、カード形状の物体が、長さと幅との比率が1.5より大きい物体を意味する場合がある。しかし本発明では、カード形状の物体が、好ましくは物体の長さと幅との間の比率が1であることを特徴とする、正方形のベース領域を備えることもまた好ましい場合がある。ある実施例では、カード形状の物体は、たとえばロール上に設けることができる織物形状の材料であることが好ましい。カード状物体は、表面センサを損傷又は破壊することなく、表面センサ上に置くことができるよう構成されることが特に好ましい。カード状物体は、たとえば、紙、厚紙、プラスチック、織物を含むがそれに限定されるものではない群から選択することができる材料を含むことが好ましい。
【0016】
本発明では、時間依存信号は、好ましくは時間で変化する信号、すなわち単独で、又は外部の影響によって時間の経過と共に変化する信号を表すことが好ましい。本発明に関しては、時間依存信号は、カード状物体上の個々の要素の配置によって確立され、入力手段とカード状物体との間の相対的な動きによって生成される。本発明では、導電性構造体は、少なくとも2つの個々の要素を備えることが好ましい。しかし、本発明のある適用例では、本発明のために、導電性構造体が、より多数の個々の要素を備えることが好ましい場合がある。本発明では、様々な用途のために、カード状物体が複数の導電性構造体を備えることもまた好ましい場合がある。こうした構造体は、たとえば、物体上に互いに平行に配置することができ、又は互いに対してある角度をなすように回転して配置することができ、それによって、個々の導電性構造体間に複雑な相互作用の可能性が生じ得る。
【0017】
本発明では、導電性構造体を形成する個々の要素は、互いに類似している、すなわち、たとえば、異なる長さ及び/又は幅を持つストリップからなり、それらは横並びに配置され得る、そしてたとえばストリップ間で同じ間隔又は異なる間隔を持つことができることが、好ましい場合がある。かかる個々の要素は、好ましくは、その長さが異なる場合があっても、すべての個々の要素が線状であるという点で、互いに類似している。しかし、導電性構造体の個々の要素が互いに類似していないこと、すなわち、相異なる形状を持っていることが好ましい場合もある。
【0018】
本発明のさらに好ましい構成では、導電性構造体の個々の要素は、互いに電気的に分離されている。導電性構造体の個々の要素の、互いからの好ましい空間的及び/又は電気的分離は、たとえば、それぞれの場合、2つの個々の要素が互いから間隔を空けて配置されることで実現させることができ、ここで導電性構造体内の個々の要素間の前記間隔は、同じであっても相異なっていてもよい。本発明では、導電性構造体は、互いに電気的に分離された少なくとも2つの個々の要素を備え、ここで個々の要素は、1つの平面内に配置されることが特に好ましい。本発明では、「1つの平面内」という用語は、好ましくは、導電性構造体が、たとえば、好ましくは平面状に形づくられるカード状物体の表及び/又は裏に配置されることを意味する。
【0019】
本発明では、「静電容量式表面センサ」という用語は、好ましくは、外部の衝撃又は影響、たとえばタッチ・スクリーン領域の接触を感知し、それを関連する論理回路を用いて評価することができるタッチ・スクリーンを備える、かかるデバイスを表す。かかる表面センサは、たとえば、機械をより簡単に操作するために使用される。好ましくはタッチ・スクリーン又は表面センサとも呼ばれる静電容量式スクリーンへの入力を行うために、指に加えて、特別なスタイラス又は同様のデバイスを使用することができる。本発明では、指及び特別なスタイラスは、好ましくは入力手段と呼ばれる。これらの入力手段は、好ましくは、表面センサ内の行電極と列電極との間の静電容量結合を変化させることができる。本発明では、好ましくは入力手段とカード状物体との間の相対的な動きによって時間依存信号を生成するよう適合される、かかる入力手段は、先行技術では説明されていない。静電容量式の、好ましくは、タッチ感応型のスクリーンは、入力手段の位置を検出するよう適合されることが好ましい。
【0020】
表面センサは、典型例では、スマートフォン、携帯電話、ディスプレイ、タブレットPC、タブレット・ノートブック、タッチパッド・デバイス、グラフィック・タブレット、テレビ、PDA、MP3プレーヤ、トラックパッド、及び/又は静電容量式入力デバイスであり得るがそれに限定されるものではない、電気式デバイス内に備えられる。タッチ・スクリーンは、好ましくは、タッチ感応型スクリーン、表面センサ、又はセンサ・スクリーンとも呼ばれる。表面センサは、必ずしもディスプレイ又はタッチ・スクリーンと組み合わせて使用する必要はない。本発明では、表面センサは、デバイス、物体、及び/又は装置内に見えるように、又は見えないように一体化されることが好ましい場合もある。
【0021】
本発明では、たとえば、マルチタッチ対応の表面センサを使用することが好ましい場合がある。かかる表面センサは、好ましくは、複数のタッチを同時に識別するよう適合され、たとえば、タッチ・スクリーン上に表示される要素を回転又は拡大縮小できるようにする。
【0022】
本発明では、たとえば、マルチタッチ対応ではない表面センサを使用することが好ましい場合もある。特にたとえばスマートフォンなどの、より旧型のデバイスでは、一度に1つのタッチしか識別することができない。表面センサ上の複数のタッチ・ポイントの静止画像を生成する情報キャリアは、先行技術で知られる。かかる情報キャリアは、その表面センサがマルチタッチ対応ではない、より旧型のデバイスとは互換性がない。カード状物体を用いて静電容量式表面センサ上で時間依存信号を生成する、本発明による方法が、こうしたいわゆるシングルタッチ対応の表面センサと互換性があることは、まったく驚くべきことであった。提案される方法がこうしたシングルタッチ対応の表面センサと互換性があるという表現は、好ましくは本発明では、かかる表面センサがこの方法を実行するために、又は提案された方法をこうしたデバイス上で「実行」するように、使用され得ることを意味する。
【0023】
具体的には、表面センサは、電極の構造体に接続することができる、好ましくはタッチ・コントローラと呼ばれる、少なくとも1つの能動回路を備える。表面センサは、先行技術において知られており、その電極は、たとえば、機能が互いに相異なる電極群を含む。たとえば、こうした電極は、送信電極及び受信電極であってもよく、特に好ましい配置では、列及び行の形態で配置され得る、すなわち、具体的には、少なくとも1つの送信電極及び1つの受信電極が互いに交差する、又は重なるノード・ポイントを形成し得る。好ましくは、ノードの領域における交差する送信及び受信電極は、本質的に90°の角度をなすように、互いに整列される。本発明では、表面センサの送信電極と受信電極との間に静電場が形成されることが特に好ましく、静電場は、たとえば、表面センサの表面を導電性デバイスと接触させることによる、又は表面センサの表面の接地、すなわち電荷の放電による、変化の影響を受けやすい。
【0024】
本発明では、タッチ・コントローラは、好ましくは、それぞれの場合において、1つ又は複数の送信電極と1つ又は複数の受信電極との間で信号が送信されるように、電極を制御することが好ましく、この信号は、好ましくは電気信号、たとえば、電圧、電流、又は電位(差)であり得る。静電容量式表面センサ内のこうした電気信号は、好ましくは、タッチ・コントローラによって評価され、デバイスのオペレーティング・システム向けに処理される。タッチ・コントローラによってオペレーティング・システムに送信される情報は、いわゆる個々の「タッチ」を表し、それぞれ単一の識別されたタッチと考えられ得る。こうしたタッチは、好ましくは、パラメータであるタッチのx座標、タッチのy座標、タッチのタイム・スタンプ、及びタッチの種類によって特徴づけられる。パラメータであるx座標及びy座標は、タッチ・スクリーン上の入力の位置を表す。各座標ペアは、好ましくは、対応する場所で入力がいつ行われたかを表すタイム・スタンプに関連づけられる。当業者は、以下の種類のタッチ信号が存在することを知っている。タッチ開始、タッチ移動、タッチ終了、及びタッチ取消。「タッチ開始」という用語は、好ましくは、ユーザによるタッチ入力の開始を表す。「タッチ開始」は、たとえばユーザのタッチによって行われ得る。「タッチ移動」という用語は、好ましくは、たとえばタッチ・スクリーンから指を上げることのない、タッチ・スクリーン上の入力の動きを表す。「タッチ終了」という用語は、好ましくは、タッチ入力の終了を表し、これは、たとえば、ユーザがタッチ・スクリーンから指を上げることによって行われ得る。「タッチ取消」という用語は、好ましくは、タッチ・コントローラによってタッチ入力が中止される状態を表す。「タッチ取消」は、たとえば、同時に多すぎるタッチ入力が検出された場合に必要であり得る。本発明では、時間依存信号は、好ましくは、かかるタッチ又はタッチ入力の量を含む。言い換えれば本発明では、好ましくは、時間依存信号は、タッチ及び/又はタッチ入力の量によって形成される。本発明に関しては、時間依存信号である表面センサ内のこうした信号は、カード状物体上の個々の要素の配置によって確立することができる。
【0025】
本発明では、入力手段とカード状物体との間の相対的な動きによって表面センサ上に生成される時間依存信号は、カード状物体上の個々の要素の配置によって変わり、具体的には、直接的である、すなわち、好ましくはカード状物体を使用しない表面センサ上の入力手段の入力と異なることが好ましい。具体的には、2つの状況が区別される。一方は、入力手段を備えた表面センサ上の直接の動的な入力であり、他方は、入力手段と表面センサとの間にカード状物体が介在する動的な入力である。本発明では、表面センサ上に入力手段を備えた直接入力を、基準入力として指定することが好ましい。本発明では、カード状物体上の個々の要素の配置が、直接の動的な入力に変化を引き起こし、その結果、時間依存信号が表面センサ上に生成されることが好ましい。本発明の好ましい実施例では、静電容量式表面センサ上の相対的な動きから得られる時間依存信号が、好ましくはカード状物体を使用することなしに生じる入力手段を用いた基準入力に対して変化するような、サイズ、間隔、及び形状に対する導電性構造体の個々の要素を形成することを提供する。本発明では、この変換プロセスは、好ましくは、変調、確立、変更、歪み、又はシフトと呼ばれる。
【0026】
本発明の好ましい構成では、静電容量式表面センサ上に結果として得られる時間依存信号は、位置、速度、方向、形状、信号の中断、周波数、及び/又は信号強度に関して、カード状物体を使用することなく行われる入力手段を用いた基準入力によって確立される基準信号に対して少なくとも部分的に変化する。本発明では、それは好ましくは、提案された方法によって生成され得る、結果として得られる時間依存信号であることが好ましい。導電性構造体の個々の要素上の直線的な線状の動きの形での例示的な入力から始まり、これは、本発明では好ましくは、生成された時間依存信号が、カード状物体、又はその導電性構造体による変調のために、入力手段の直線的な線状の入力に対して異なる位置、方向、形状、及び/又は信号強度を持ち得ること、すなわちたとえば、空間的にずれ、歪み、且つ/又はシフトされ、直線的な線状の動きとは異なる形状を持ち、異なる方向を指し示し、又は予期しない信号強度を持つ時間依存信号が、表面センサによって識別されることを意味する。
【0027】
たとえば、本発明のための入力手段の適用される実例として、ユーザが指で静電容量式表面センサ上を掃引する場合、表面センサは、実際に指、すなわち入力手段によってタッチされた表面センサのスクリーン上の位置で、この動きを本質的に検出する。指の直線的な線状の動きは、好ましくは、本質的に直線的な線状の動きとして、表面センサによって検出される。カード状物体が存在しない、かかる入力は、好ましくは、本発明では基準入力と呼ばれる。
【0028】
本発明に関しては、好ましくは、カード状物体が入力手段と表面センサとの間に配置され、具体的には、カード状物体が表面センサ上に置かれ得ることが提供される。カード状物体は、好ましくは導電性の個々の要素を具備する導電性構造体を備える。本発明の可能な適用される実例では、カード状物体又は表面センサのユーザが、カード状物体上、特に導電性構造体上で指を動かすことが提供される。これによってカード状物体は、好ましくは、表面センサ上に載っており、その結果ユーザがタッチする導電性構造体の個々の要素は、ユーザの指の動きによって起動されることにより、表面センサに「見える」ようになる。本発明者らは、導電性構造体を備えるカード状物体を使用することにより、表面センサ上の入力を基準入力と比較して変更できることを認識した。この変更は、本発明では、好ましくは、変調と呼ばれる。好ましくは、導電性構造体の個々の要素が、入力手段との接触によって起動し、それによって表面センサが接触を検出でき、その結果得られる時間依存信号は、カード状物体上の個々の要素の配置によって、たとえば基準入力と比較して空間的に歪められることが生じる。たとえば、導電性構造体を持たないカード状物体上で仮想直線に沿って入力手段が実行される場合、表面センサは、入力手段の直線的な動きを基準入力として検出するであろう。しかし、カード状物体が入力手段と表面センサとの間に配置され、その上に導電性構造体の個々の要素が、たとえばカード状物体の左側に配置される場合、表面センサは、入力手段がカード状物体上を移動するとき、左にシフトした、すなわち基準入力と比較して歪んだ、結果として生じる信号を検出するであろう。本発明に関して、生成された時間依存信号は、好ましくは、入力手段とカード状物体との間の相対的な動きの、導電性構造体による偏向、歪み、及び/又はシフト後の検出に一致する。相対的な動きは動きs(t)があるので時間に依存し、従って検出された信号もまた、好ましくは時間の関数を表すので、時間に依存する。本発明では、これは、好ましくは、時間依存信号がカード状物体上の入力手段の時間シーケンスに対応することを意味し、ここで特にタッチのx座標及びy座標によって特徴づけられる、結果として得られた時間依存信号の検出された位置は、カード状物体なしで生成された基準信号と比較して、導電性構造体によって偏向され、歪み、且つ/又はシフトされ得る。本発明では、この歪み、偏向、及び/又はシフトは、好ましくは、時間依存信号の位置の変化と呼ばれる。
【0029】
本発明では、速度に差が生じること、すなわち、たとえば、入力手段の急速な動きが遅い時間依存信号に変調されることが好ましい場合もある。時間依存信号が、特定の速度プロファイルを持っていることが好ましい場合もある。たとえば、導電性構造体を備えないカード状物体上で仮想直線に沿って入力手段が実行される場合、表面センサは、直線を表し、ほぼ一定の速度を持つ時間依存信号を、基準入力として検出するであろう。しかし、カード状物体が入力手段と表面センサとの間に配置され、その上に導電性構造体の個々の要素が、たとえばカード状物体上に特定の間隔で配置された場合、表面センサは、入力手段がカード状物体上を移動するとき、基準入力に対して特定の速度プロファイルを持つ、結果として生じる信号を検出するであろう。この場合、入力手段がカード状物体を横切って移動するとき、入力手段は徐々に、カード状物体上の導電性要素と動作可能に接触するようになる。すなわち、入力手段は、徐々に導電性要素をカバーする。入力手段が導電性の個々の要素に到達すると、結果として生じる信号の位置は、好ましくは、この時点で個々の要素の方向にシフトされる。
【0030】
具体的な実例では、入力手段は、カード状物体上で、仮想直線に沿ってy方向に一定の速度で移動する。入力手段が導電性要素と接触しない限り、結果として得られた時間依存信号は、本質的にタイム・スタンプ及びそれぞれのy座標が異なるタッチによって本質的に特徴づけられ、動きの速度は本質的に一定である。入力手段が導電性の個々の要素に到達すると、この時点で、好ましくは、結果として得られる信号の位置が個々の要素の方向にシフトされる。すなわち、単一のタッチは、前のタッチと比較して、y座標に関してはるかに大きくシフトされる。結果として得られた時間依存信号の個々のタッチのパラメータを使用して、速度プロファイルを計算することができる。本発明では、特に入力手段が導電性の個々の要素と接触したときに、速度プロファイルの変動を識別することができることが好ましい。
【0031】
本発明では、たとえば、カード状物体の導電性構造体上で連続的な動きが起こる場合、信号が中断されることが好ましい場合もある。この場合導電性構造体は、好ましくは、意図的に間隙を持ち、その結果表面センサで検出される時間依存信号は、中断及び/又は一時停止する。すなわち、たとえば、それはもはや連続ではなく、且つ/又は、たとえば「ジャンプ」している。さらに、生成された時間依存信号は、カード状物体上の導電性構造体の構成により、中断があることが好ましい場合がある。定期的に繰り返される信号部分のシーケンスが生成され、これらが一体になって、周波数に関連づけることが可能な時間依存信号を形成することが好ましい場合もある。
【0032】
本発明では、カード状物体上の入力は、入力手段を用いて行われることが好ましい。カード状物体上の入力手段の動きは、たとえば、線の形の直線的な動きであり得る。かかる線状の動きは、タッチ感応型ディスプレイ上で直接実行される場合、表面センサによって線状の入力として識別される。しかし、導電性構造体を備える本発明によるカード状物体上で線状の動きが実行される場合、表面センサは、カード状物体の導電性構造体の空間的構成によって変わるスナップショットを「見る」。すなわち、偶然にも導電性構造体のすべての要素が、もっぱら対称的に及び/又は互いに正確に合致して配置されていない限り、スナップショットは通常、もはや線状ではないであろう。従って、物体上の入力手段の実際の動きと、この動きの静電容量式表面センサの認識は異なり、導電性構造体の構成要素及び/又は要素の空間的配置によってもたらされているカード状物体のこの変換は、本発明では好ましくは、変調、確立、変化、歪み、又はシフトと呼ばれる。本発明では、カード状物体上の入力手段の動きは、入力と呼ばれ、表面センサの認識、すなわち、表面センサが物体によって変調された入力から識別するものは、時間依存信号と呼ばれることが好ましい。
【0033】
静電容量式表面センサ上での時間依存信号の生成は、好ましくは、カード状物体によって入力を時間依存信号に変換することにより実行され、時間依存信号は、好ましくは、静電容量式表面センサ内で生成される。本発明では、この表現は、好ましくは、時間依存信号が入力手段とカード状物体との間の相対的な動きによって生成されることを意味し、時間で変化する信号は、好ましくは、表面センサによって検出される。本発明では、入力は、カード状物体上で行われ、識別は、表面センサ上で行われるので、これは好ましくは、信号の送信と呼ばれる。
【0034】
導電性構造体は、非常に柔軟に構成することができ、さらに、入力手段の様々な動きは、カード状物体上の動きの様々な可能性を列挙することによって考えられるので、カード状物体を用いて、非常に高いデータ密度を取得可能な方法を提供することができる。本発明による導電性構造体を備えるデバイスが、たとえば、好ましくは少なくとも12ビット、特に好ましくは少なくとも16ビットのデータ容量を持つことができることは、まったく驚くべきことであった。このデータ容量が、好ましくは小さな表面上で実現でき、従って高いデータ密度をもたらすことは、まったく驚くべきことであった。さらに、この方法は、使用されるとき、カード状物体が表面センサ上に簡単に置かれるので、特にユーザ・フレンドリである。従来のデータ・キャリア並びに表面センサとデータ・キャリアとの間の信号伝送方法の場合のように、カード状物体の特定の領域が、表面センサの特定の領域上に載るか載らないかを確認する必要はもはやない。
【0035】
カード形状の物体上の入力手段の動きの様々な可能性を列挙することにより、ユーザと静電容量式データ・キャリアとのまったく新しい相互作用の可能性が開かれる。本発明の好ましい実施例では、複数の独立した導電性構造体が、カード状物体上に配置される。1つの例示的な実施例では、2つの導電性構造体が配置され、それぞれが導電性構造体自体の動作トラックを備え、この実施例では、垂直に1回及び水平に1回実行する。これは、上から下、下から上、左から右、及び右から左の合計4方向の相互作用という結果をもたらす。各導電性構造体は、相対的な動きの方向の関数として、静電容量式表面センサを含むデバイス上での、様々な作用をトリガすることができる。同じカード形状の物体を使って、複数の様々な作用をトリガできることは、まったく驚くべきことであった。これは、先行技術に対する重要な利点を示している。先行技術から知られているバーコード、2Dバーコード、無線タグ、並びに静電容量式データ・キャリアの両方において、その適用例は、本質的に物体の識別に限定されている。驚くべきことに、本発明により、相互作用のさらなる機会が開かれる。
【0036】
本発明に関しては、時間依存信号の生成は、入力手段とカード状物体との間の相対的な動きによって行われる。本発明では、これは、好ましくは、入力手段がカード状物体に対して移動する、若しくはカード状物体が入力手段に対して移動すること、又は入力手段と物体との両方が移動することを意味し、両方の移動は、本発明ではまさに相対的な動きではなく、平行の動きをもたらすことになるため、同じ方向及び同じ速度ではないことが好ましい。本発明では、相対的な動きの位置、方向及び/又は速度が、時間依存信号の生成に影響し、特にどのように時間依存信号を空間的に形成するかを決定することが、特に好ましい。この決定は、特に、相対的な動きで生じる入力が、時間依存信号に変換され、及び/又は変調されることを用いて、導電性構造体の幾何形状と協働して行われる。
【0037】
本発明では、入力手段とカード状物体との間の相対的な動きは、好ましくは、第2の接点と呼ばれ、本発明に関しては、常に動的に構成されることが好ましい。
【0038】
第2の態様では、本発明は、以下のステップを含む、カード状物体を識別する方法に関する。
a.複数の個々の要素を具備する導電性構造体を備える、カード状物体を提供するステップ。
b.静電容量式表面センサ上にカード状物体を置くステップであって、それによって第1の接点が形成されるステップ。
c.入力手段とカード状物体との間の相対的な動きを実行するステップであって、それによって第2の接点を形成するステップ。
d.相対的な動きの関数としての、時間依存信号を生成するステップ。
e.カード状物体を識別するために、表面センサを備えるデバイスによって、静電容量式表面センサ上の時間依存信号を評価するステップ。
ここで、静電容量式表面センサ上で生成される時間依存信号は、カード状物体上の個々の要素(14)の配置によって確立される。
【0039】
時間依存信号を生成する方法の上記の利点及び驚くべき技術的効果は、識別方法にも適用される。同様に、識別方法の利点と驚くべき技術的効果は、時間依存信号を生成する方法にも適用される。識別方法もまた使用して、時間依存信号を生成することができること、且つ/又は時間依存信号を生成する方法もまた使用して、カード状物体を識別できることが、特に好ましい。
【0040】
本発明では、好ましくは、「識別」という用語は、カード状物体が表面センサによって識別され、たとえば、表面センサを備える電気式デバイスに格納されたデータ記録に関連づけられ得ることを意味する。この場合たとえば、データ記録は、電気式デバイス内に直接保存されない場合があり、むしろ、たとえばサーバ上、インターネット上、及び/又はクラウドで取得可能であることにより、前記デバイスがデータ記録にアクセスすることができる。表面センサによるカード状物体の識別は、具体的には、カード状物体上に配置された導電性構造体の識別によって行われる。この導電性構造体は、具体的には、好ましくは、その全体が導電性構造体を形成する個々の要素によって決定される。識別方法は、本発明の別の態様を構成するカード状物体を用いて実行されることが好ましく、詳細を後述することにする。しかし、カード状物体が個々の要素を具備した導電性構造体を備える限り、別の物体を用いてこの方法を実行することが好ましい場合もある。
【0041】
カード状物体は表面センサ上に置かれ、それによって第1の接点が形成される。本発明では、表面センサとカード状物体との間に、第1の接点が形成されることが特に好ましい。時間依存信号の生成方法、並びに識別方法の両方に関する本発明のさらなる構成では、本発明は、好ましくはカード状物体と入力手段との間に形成される第2の接点を備える。本発明では、こうした接点は、能動的接点とも呼ばれることが好ましい。従って本発明では、この方法は、第1の接点及び第2の接点を提供することを含み、ここで第1の接点はカード状物体と静電容量式表面センサとの間に存在し、第2の接点はカード状物体と入力手段との間に形成され、ここで少なくとも第2の接点は動的に形成されることが好ましい。
【0042】
本発明では、カード状物体が表面センサ上に置かれ、ここでカード状物体は入力手段によってタッチされ、それによって本発明では好ましくは、第2の接点が生成されることが特に好ましい。好ましくは、入力手段と表面センサとは互いに接触しない。すなわち、好ましくは、入力手段と表面センサとの間に、直接の物理的接触がない。しかし、好ましくは、入力手段と表面センサとの間の相対的な動きを検出できるかどうかという点で、入力手段と表面センサとの間に空間的関係がある。本発明では、第1の接点と第2の接点との両方が同時に存在することが特に好ましい。
【0043】
以下において、本発明の2つの特に好ましい構成を、1)カード状物体、2)表面センサ、及び3)入力手段の3つの要素間の接点及び空間的関係に関して説明することにする。本発明の第1の好ましい実施例では、好ましくはカード状物体と表面センサとの間に存在する第1の接点は、静的であるように形成され、好ましくは入力手段とカード状物体との間に存在する第2の接点は、動的に形成され、入力手段と表面センサとの間の空間的関係は動的である。この場合、カード状物体は、たとえば、入力手段がカード状物体上で動いている間に物体が動くことなく表面センサ上に配置され、且つ/又は置かれ得る。結果として、入力手段もまた本来、動かない表面センサに対して移動し、従って、本発明のこの好ましい実施例に関しては、表面センサと入力手段との間の空間的関係は、好ましくは動的として説明される。
【0044】
本発明の第2の好ましい実施例では、好ましくはカード状物体と表面センサとの間に存在する第1の接点は、動的に形成され、好ましくは入力手段とカード状物体との間に存在する第2の接点もまた動的であり、入力手段と表面センサとの間の空間的関係は静的であるように形成される。本発明のこの好ましい実施例では、カード状物体は、たとえば表面センサ上に配置され、且つ/又は置かれ得る。さらに、この好ましい実施例では、入力手段は、カード状物体上に置かれ、物体は、入力手段の下で「引き抜かれる」。その結果、入力手段は表面センサに対して移動せず、すなわち、入力手段と表面センサとの間に相対的な動きはなく、入力手段及び表面センサは、互いに対して空間的に静的に配置される。一方、入力手段及びカード状物体、並びにカード状物体及び表面センサは、互いに対して移動し、これはカード状物体の引き離し又は引き抜きの動きによって有利に実施される。
【0045】
好ましくは、両方の実施例は、カード状物体と入力手段との間の第2の接点が常に動的に形成されるという共通点を持つ。
【0046】
本発明では、第2の接点と呼ばれるカード状物体と入力手段との間の接点が動的に形成される場合、入力手段の動きは、たとえば、滑らせる、拭く、こする、引く、又は押す動作であり得るが、それに限定されるものではない。本発明では、カード状物体上の少なくとも1つの領域が光学的にマークづけされるか又は触覚的に強調され、入力手段によるタッチ及び/又は接触向けに適合されることが好ましい場合もある。触覚的な強調は、たとえば、好ましくは導電性構造体、特に入力領域の適所に使用され、動的入力を生成するため入力手段にタッチされるべき導電性構造体の場所にマークをつける、ラッカを塗布することにより実施され得る。テストでは、導電性構造体の入力領域上にマークづけするラッカを使って、入力手段として使用される指が、導電性構造体のラッカ塗装された領域上の初期領域に置かれ、次いで、ラッカ塗装された領域をたどることにより、特にうまく誘導され得ることを示した。この場合、ラッカ塗装された領域が線状に形成され、人間の指の大きさ程度の好ましい幅を持つ場合、特に有利であることが証明された。加えて、触覚的な強調を、たとえば、溝つけ(groove)、エンボス加工、及び/又は折畳みなどの印刷処理方法によっても実施することができ、それにより、好ましくは、入力領域をユーザに示す3次元の誘導線が生成される。
【0047】
カード状物体が入力手段に対して移動する場合、その動きは、たとえば、入力手段としての指が、表面センサ上に配置される物体上にゆるく置かれ、物体が、たとえば、入力手段と表面センサとの間で引き離される、且つ/又はぐいと取り外される、たとえば引き離し又は引き抜きの動きであり得る。
【0048】
本発明では、時間依存信号は、入力手段とカード状物体との間の相対的な動きによって生成されることが好ましい。具体的には、入力手段とカード状物体とが互いに対して移動すると、入力手段とカード状物体上の導電性構造体との間で相対的な動きがもたらされ、その結果好ましくは、導電性構造体の少なくとも1つの個々の要素が入力手段と接触し、それにより「起動される」、すなわち表面センサから「見える」ようになるので有利である。
【0049】
この見えるようになることは、たとえば、入力手段で構造体又は構造体の要素にタッチすることによって、たとえば導電性構造体の接地が生じるときの、静電容量式表面センサと導電性構造体との間の結合に基づく。入力手段が導電性構造体の個々の要素にタッチする場合、入力手段と構造体との間で電荷キャリアの交換があり得る。本発明では、電荷キャリアの交換は、好ましくは、表面センサ内の電極間の静電場の変化及び/又は静電容量の測定可能な変化をもたらす。静電場の変化を、たとえば、表面センサをカード状物体と接触させることにより生み出すことができ、従って本発明では第1の接点が形成され、ここでカード状物体は同時に入力手段と接触し、従って本発明では第2の接点が形成される。従って本発明では、第1の接点及び第2の接点が同時に存在し、カード状物体が表面センサと入力手段との間に配置されることが好ましい。本発明では、少なくとも第2の接点が動的に形成されることが特に好ましい。本発明に関しては、カード状物体と入力手段との間の第2の接点の動的な形成により、表面センサ内の電極間の信号が変化する。概して、入力手段が送信電極から信号の一部を受信し、それによってより低い信号が受信電極に到達するため、信号は低減される。本発明では、静電容量式表面センサ上の相対的な動きから得られる時間依存信号が、カード状物体を使用することなしに生じる入力手段を用いた基準入力に対して変化し得るような、サイズ、間隔、及び形状に対する導電性構造体の個々の要素が形成されることは、特に好ましい。
【0050】
たとえば、入力手段がカード状物体の導電性構造体上を移動し、それによって本発明では好ましくは、動的な第2の接点を生成する場合、導電性構造体を一緒に形成し、好ましくは個々の要素と呼ばれる、個々の要素が次々に開始される、すなわちたとえば、次々に起動される。たとえば、少なくとも1つ又は複数の個々の要素が、入力手段によって一緒に、及び/又は同時にタッチされ、それにより、時間で変化する信号が表面センサ上に生成され、この信号は、カード状物体上の「タッチされた」個々の要素の空間的配置を反映することが好ましい場合がある。
【0051】
この場合、表面センサによって検出される時間依存信号は、カード状物体に対する入力手段の動きだけでなく、特にカード状物体上の導電性構造体の個々の要素の配置によっても形成される。本発明では、カード状物体と入力手段との相対的な動きが、導電性構造体の空間的構成により、表面センサで検出される、導電性構造体の外形によって歪んでいる信号によって、別の異なる形の、実行する時間で変化する信号に変換されることが特に好ましい。
【0052】
好ましい実施例では、導電性構造体が同じ長さの同一のストリップで構成され、入力手段が、好ましくは、互いに隣接して同じ高さで配置されるこれらのストリップの中心の上を、直線的な線状の動きでスライドする場合、表面センサは、本質的に前記直線的な線状の動きに対応し、それを反映する信号を検出することになる。このように特徴づけられた線状の個々の要素の中央の配置は、本発明ではゼロ位置と呼ばれることが好ましい。このようにして得られた信号を、たとえば表面センサのディスプレイ上に表示することができる。得られた信号は、それを使って時間の関数としての動きの空間的進路を表すことができる、物理学における経路時間図に対応することが好ましいので、時間依存信号と呼ばれることが好ましい。本発明では、たとえば、導電性構造体のすべての線状の個々の要素が、ゼロ位置に存在するとき、本質的に信号の好ましい空間的歪みがないことが好ましい。本発明の好ましい実施例では、好ましくは個々の要素の中心を通って走り、導電性構造体内の電荷キャリア分布の重心線の中心に本質的に対応する事実上の中心線を構築することは、理論的に可能である。
【0053】
本発明の好ましい構成では、導電性構造体の個々の要素は、本質的に互いに平行に配置された長方形に本質的に形成される。導電性構造体が平行に配置されたストリップによって形成される場合、本発明では、仮想中心線が、導電性構造体の外側ストリップの外縁に本質的に垂直であることが好ましい。
【0054】
ただし、ストリップの一部又はすべてが、ゼロ位置に対してシフトされている、すなわちもはや中央に、仮想中心線の周りに配置されていない場合、好ましくは、表面センサで検出される時間依存信号の空間的な歪みがあり得る。たとえば、線状の個々の要素の大部分が、ゼロ位置に対応する導電性構造体の仮想中心線のA側に配置されている場合、時間依存信号は、前記Aの方向にシフトされ、これはたとえば、本発明では、変調、歪み、又は変化と呼ばれる。本発明では、歪みの程度は、個々の要素がゼロ位置に対してどれだけ大きくシフトされているかに依存することが好ましい。ゼロ位置から大きく外れる個々の要素は、好ましくは、時間依存信号の大きい歪みをもたらし、一方ゼロ位置からの小さいずれは、好ましくは小さい歪みをもたらす。
【0055】
入力手段が導電性構造体の複数の個々の要素と同時に接触している場合、個々の要素の歪みの影響は、時間依存信号の生成において有利に重なり、その結果生成された時間依存信号は、カード状物体と入力手段との相対的な動きによって表面センサで検出され得る、導電性構造体の空間的形状を反映する。相対的な動きの、表面センサ上の時間依存信号への変換及び/又は変調は、好ましくは、表面センサを備えるデバイスによって信号を評価する前に行われ、それによりカード状物体の識別を実施できるので有利である。この目的のために、たとえば、検出された時間依存信号又はその空間的進路を、表面センサを備える電子デバイスに保存されているか、又は別のやり方でそれにアクセス可能なデータベースからの、データ(の組)と比較することができる。
【0056】
さらに好ましい実施例では、導電性構造体が、長さは等しいが幅が異なる線状要素からなり、これらの線状要素が、カード状物体上のその長さに対して中央に配置され、互いから可変距離で配置されて、且つ直線的な線状の動きがカード状物体の中央で発生する場合、その結果得られる静電容量式表面センサ上の時間依存信号は、次のように説明することができる。信号の空間的進路は、本質的に、ほぼ一定のx座標、及び本質的に相対的な動きに対応するy座標の時間に依存する変化によって特徴づけられる。従って、信号の空間的歪みは、本質的にないか、又はほんのわずかである。ただし、その結果得られる時間依存信号は、基準入力に対して、特定の速度プロファイルを持つことが好ましいであろう。入力手段は、カード状物体を横切って移動するとき、カード状物体上の導電性要素と徐々に動作可能に接触するようになる。すなわち、入力手段は、徐々に導電性要素をカバーする。入力手段が導電性の個々の要素に到達すると、結果として生じる信号の位置は、この時点で突然、個々の要素の方向にシフトされる。
【0057】
具体的な実例では、入力手段は、カード状物体上で、仮想直線に沿ってy方向に均一の速度で移動する。入力手段が導電性要素と接触しない限り、結果として得られた時間依存信号は、本質的にタイム・スタンプ及びそれぞれのy座標が異なるタッチによって好ましくは本質的に特徴づけられ、タッチの速度は本質的に一定である。入力手段が導電性の個々の要素に到達すると、その時点で、結果として得られる信号の位置が突然個々の要素の方向にシフトされる。すなわち、単一のタッチは、前のタッチと比較して、y座標に関してはるかに大きくシフトされる。結果として得られた時間依存信号の個々のタッチのパラメータを使用して、速度プロファイルを計算することができる。本発明では、入力手段が導電性の個々の要素と接触したときに、速度プロファイルの変動を、好ましくは識別することができることが好ましい。
【0058】
「本質的に」という用語は、当業者には不明確ではない。というのは、当業者は、「本質的に長方形によって」形成される導電性構造体は、主に長方形に設計された個々の要素からなり、構造体は、長方形に設計されていないいくつかの個々の要素もまた含むことができることを知っているからである。こうした長方形でない個々の要素は、考えられる任意の形状、たとえば三角形、楕円形、卵形、円形、花形、星形、菱形、又は自由形状を持つことができる。「本質的に平行な」という用語は、導電性構造体の個々の要素が、適用する精度の範囲内で平行に使用されることを意味すると当業者に理解される。たとえば、個々の要素が印刷される場合、個々の要素は印刷精度の範囲内で印刷され、印刷精度がたとえば、平行度が0から2°の程度の大きさからはずれるという結果になる可能性がある。
【0059】
本発明の好ましい実施例では、入力手段と静電容量式表面センサ上のカード状物体との間の相対的な動きから得られる時間依存信号が、カード状物体を使用することなしに生じる入力手段を用いた基準入力によって確立される基準信号に対して変化するような、サイズ、間隔、及び形状に対する導電性構造体の個々の要素を形成することを提供する。
【0060】
別の態様において、本発明は、カード状物体に関し、カード状物体は、カード状物体上に配置された複数の個々の要素を具備する導電性構造体を備える。本発明では、カード状物体は、上記の方法を実行するように、又はカード状物体を用いて上述の方法を実行するように適合されることが特に好ましい。本発明の好ましい構成では、導電性構造体の個々の要素は、0.1mmから20mmの幅及び0.1mmから30mmの間隔を持つ。本発明では、6mm以下の幅を持つ導電性構造体、すなわち、たとえば、0.1から6mmの好ましい幅を持つ、導電性構造体を使用することが最も好ましく、本発明では0.1mmから6mmの間のすべての値が好ましい。この寸法の程度は、好ましくは、表面センサが独立した導電性構造体を別の導電性構造体から区別できるように、下げられてはならない(must not be undercut)導電性構造体の限度を表す。従って、本発明の特定の利点は、それを使って導電性構造体が表面センサ上に信号を誘導できる方法及びシステムを提供することであるが、しかし構造体の個々の要素がデータ・キャリア上に単独で配置された場合に、個別に分離された要素が、表面センサで分析及び/又は検出するには小さすぎたため、表面センサで識別することができなかった。結果として、本発明は、先行技術で説明される導電性構造体とは大幅に異なり、表面センサによって確実に識別されるために、構造体の構成要素は通常、たとえば8mmよりも意図的に大きい。表面センサでさえもその構成要素を個別に識別できる導電性構造体の設計は、先行技術ではしばしば「指先の模倣」と呼ばれ、本発明では意図していない。
【0061】
個々の要素のこの意図的に選択された寸法の結果として、導電性構造体は、入力手段とカード状物体との間の相対的な動きによって生成される入力が、時間依存信号に変換され得るように、すなわち、伝導性構造体の個々の要素によって有利にもたらされる歪みに意図的に信号をさらすことにより時間依存信号に変調され得るように、適合されることが、有利にも実現される。導電性構造体の個々の要素は、具体的には、入力手段と動作可能に接触していない単一の個々の要素が、表面センサによって検出及び/又は識別され得ないように構成される。
【0062】
導電性構造体の個々の構成要素、すなわち入力手段との動作可能な接触がない個々の要素が、静電容量式表面センサ上に信号を生成しない、導電性構造体を提供することができることは、まったく驚くべきことであり、ここで導電性構造体としての要素全体は、驚くべきことに、たとえば、表面センサ上の信号の偏向をもたらすように適合される。カード状物体がない入力手段の基準入力に対して変化することができる時間依存信号の生成は、有利には、その全体でカード状物体の導電性構造体を構成する個々の要素の、相乗的な相互作用によってもたらされる。その個々の要素は表面センサで検出できないか、又は部分的にしか検出できない、表面センサで識別するための導電性構造体を提供することは、先行技術からの新しい発展を示す。これまで、当業者は、表面センサによって読み取られるか又は検出されるべき導電性構造体が、指先の特性をシミュレーションし、個別に分離されて表面センサでやはり検出され得る要素で構成されなければならないと思い込んできた。
【0063】
この点に関して、さらなる態様では、本発明は、入力手段とカード状物体との間の相対的な動きによって、静電容量式表面センサ上に時間依存信号を生成する、カード状物体の使用に関する。上記の時間依存信号を生成する方法及び識別方法の上記の利点と驚くべき技術的効果はまた、カード状物体及びその使用にも適用される。同様に、カード状物体及びその使用の利点と驚くべき技術的効果はまた、識別方法及び信号生成方法にも適用される。これは具体的には、本発明の好ましい実施例に適用され、本発明によれば、静電容量式表面センサ上での時間依存信号の生成は、第1の接点及び第2の接点を提供することを含み、ここでカード状物体と静電容量式表面センサとの間に第1の接点があり、またカード状物体と入力手段との間に第2の接点があり、ここで第1の接点及び第2の接点は同時に存在し、少なくとも第2の接点は動的に形成される。
【0064】
この点に関して、好ましくは本発明に関して、時間依存信号が、カード状物体に対する入力手段の動きによって生成され、ここで時間依存信号は、表面センサによって検出され評価され得るという点で、本発明は、情報を個々の要素から抽出することができる従来のデータ・キャリアとは異なる。比較すると、システムは、データ・キャリアと読取デバイスとの間に動きがある先行技術に説明されている。
【0065】
本発明では、入力手段と静電容量式表面センサ上のカード状物体との間の相対的な動きから得られる時間依存信号が、カード状物体を使用することなしに生じる入力手段を用いた基準入力に対して変化するような、サイズ、間隔、及び形状に対するカード状物体の導電性構造体の個々の要素が形成されることが特に好ましい。
【0066】
本発明では、少なくとも2つの個々の要素が、相対的な動きがある任意の時点で、少なくとも部分的に入力手段と動作可能に接触するような、サイズ、間隔及び形状に対する導電性構造体の個々の要素が寸法決めされることが特に好ましい。入力手段は、たとえば、指又は伝導性物体であり得る。この場合、少なくとも2つの個々の要素を、導電性構造体の仮想中心線に対して同一又は異なる方向に向けることができ、ここで個々の要素の相異なる方向は、好ましくは、時間依存信号に相異なる歪み効果をもたらし、一方、同一の方向は、好ましくは、本質的に等しい歪み効果をもたらす。相異なる歪み効果の場合、こうした効果が重なり合う可能性があり、その結果生成される信号は、好ましくは、導電性構造体の空間構造、具体的には平面状のカード状物体上の個々の要素の配置を反映する。
【0067】
本発明のさらなる好ましい構成では、サイズ、間隔、及び形状に対する導電性構造体の個々の要素は、相対的な動きがある任意の時点で、多くとも1つの個々の要素が、指又は伝導性物体と動作可能に接触するように寸法決めされる。個々の要素間の間隔が増加するために、生成された時間依存信号は、好ましくは、ゼロ位置に戻される。信号の評価については、この種の配置により、入力手段による相対的な動きの特に単純で明確な識別が、従って好ましくは、信号パターンのより正確な判断が可能になる。この実施例の別の利点は、複数の個々の要素による歪み効果の重なり合い、及び表面センサを備える電子デバイス内の信号の評価における、結果として生じる曖昧さを回避することである。
【0068】
入力は、たとえば1本又は複数の指又は導電性物体などの入力手段を用いて行われ、好ましくはカード状物体に対して動くが、カード状物体は静電容量式表面センサに対して動かないことが、さらに好ましい。他の用途では、入力は、入力手段、たとえば1本又は複数の指又は導電性物体を用いて行われ、カード状物体に対して動くが、一方指は、静電容量式表面センサに対して動かず、またカード状物体は、入力手段と静電容量式表面センサとの間を動くことが好ましい場合がある。
【0069】
時間依存信号は、好ましくは、タイム・スタンプ情報ばかりでなく、x座標及びy座標を使って表すことができる。時間依存信号の空間的進路は、たとえば、波状、連続的、線に沿った、及び/又は上下であり得るが、それに限定されるものではない。この場合、空間的進路は、本質的に個々の要素の構造及び/又は配置に従うことが好ましい。導電性構造体が、たとえば横断歩道のように本質的に隣同士平行に配置された長方形の線状の個々の要素からなる場合、ストリップの短い方の辺は、ストリップ間の間隙によって分断される導電性構造体の外側の線を形成する。導電性構造体の外側の線は、すべての個々の要素が同じ開始位置及び/又は終了位置を持っている場合、横断歩道のように直線になり得る。個々の要素もすべて同じ長さである場合、結果的に、好ましくは、本質的に平行な外側の線を持つ長方形の導電性構造体となる。
【0070】
個々の要素を形成する長方形のストリップが同じ開始位置及び終了位置を持たず、且つ/又は異なる長さを持つ場合、外側の線を、たとえば波状に構成することができる。本発明では、生成される時間依存信号は、特にこうした外側の線又はその重なり合いの進路を反映することが好ましく、ここで時間依存信号の空間的進路を、たとえば、表面センサのディスプレイ上で見えるようにすることができる。本発明のある適用例では、時間依存信号の進路が区分ごとに偏向されず、カード状物体上の入力手段の動きに従うことが好ましい場合がある。かかる用途は、たとえば、導電性構造体の複数の領域を備えるカード状物体である。たとえば、各領域は、電子デバイス上の異なる作用に関連づけられる。個々の領域間の、個々の領域の識別が曖昧な場合の時間依存信号は、区分ごとに偏向されないことが好ましい。切れ目のないかかる区分を用いて、カード状物体上の各区分の絶対位置もまた判断できることは有利である。
【0071】
本発明では、入力手段とカード状物体との間、並びにカード状物体と表面センサとの間の、同時に形成される動作可能な接触は、静電容量式であることが特に好ましい。入力手段とカード状物体との間の動作可能な接触が、電気的な接続を構成することが好ましい場合もある。静電容量式動作接点には、入力手段と導電性構造体との間に電気的接続が存在する必要がないという利点がある。すなわち、導電性構造体を、たとえば、ラッカ、色層、印刷されたグラフィック、ラベル若しくはステッカ、及び/又は別の層でカバーすることができる。これにより、導電層を光学的にカバーし、カード状物体の表面を伝導性構造体とは独立して魅力的にすることが可能になる。加えて、導電層を機械的摩耗から有利に保護することができ、長期間の使用中に、より信頼性の高い機能を保証することができる。これは、導電性構造体を、それぞれのカード形状の物体の識別機能として、好ましくは完全に光学的及び触覚的に隠すことができるので、先行技術に対する明確な利点を示す。先行技術では、たとえば、カメラ又は光センサを用いて光学的に読み取られるバーコードが知られており、従って、バーコードは本質的に可視であり、製品の外観に影響を与える可能性がある。さらに、RFIDタグが先行技術で知られており、それは本質的にアンテナ及び使用されるチップからなる。こうしたタグは、より薄い、且つ/又は柔軟な材料内に一体化することもできるが、チップは所定の最小の厚みを持っているので、目立つことが多い。
【0072】
さらに、導電性構造体は、箔転写法、たとえば、こうした適用方法に限定されるものではないが、冷箔転写、ホット・スタンプ、及び/又は熱転写を用いて、好ましくはカード状物体の可撓性の基板材料に適用することができる。具体的には、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、及び/又はスクリーン印刷、並びに/或いは、たとえば金属粒子、ナノ粒子、炭素、グラフェン及び/又は導電性ポリマーをベースとする導電性インクを使用するインクジェット法などの印刷方法を、カード状物体の生産に使用することができるが、こうした印刷方法及び/又は材料に限定されるものではない。本発明では、導電性構造体を少なくとも1つのさらなる層を使ってカバーすることも好ましい場合があり、この層は、紙ベース又は箔ベースのラミネート材料又は少なくともラッカ/インク層であり得る。この層は、光学的に透明でも不透明でもよい。
【0073】
本質的に類似した個々の要素の、その好ましい構造体であるため、導電性構造体が特に容易に個別化できることは、まったく驚くべきことであった。
【0074】
伝統的な従来の印刷方法の特徴は、印刷されるべきモチーフが、グラビア・シリンダ又はオフセット印刷版などの印刷フォームに適用され、複数回高速で複製されるという点で、モチーフの単純で迅速な複製である。従来の印刷方法は、個別化されるコンテンツの生産には適さない。というのは、印刷フォームの作成が、総生産コストのかなりの割合を占めるからである。従って、経済的に生産できるのは、より大量の印刷製品だけである。グラフィック印刷では、個々のコンテンツを経済的に印刷可能な、個別化される製品だけでなく、少量生産向けのデジタル印刷方法が存在する。こうした印刷方法は、たとえば、電子写真、レーザ印刷、又はインクジェット印刷を含む。現在、かかるデジタル印刷方法を使用して経済的に導電性要素を生産することは不可能である。しかし、従来の印刷方法及びそれに加える又は減ずる方法の、方法の組合せにより、個別化された導電性構造体を生産することが可能である。以下では、2つの可能な生産プロセスの概要を説明する。
【0075】
レーザ切除
第1のステップでは、導電性塗料又は箔転写法によって、導電性基本構造体が、たとえば可撓性基板に塗布される。基本構造体は、たとえば均一な等距離の個々の要素、たとえば長方形で構成される。第2のプロセスのステップでは、導電性の個々の要素は、レーザ切除によって所定の場所で互いから電気的に分離される。すなわち、こうした場所で、導電性材料が選択的に取り除かれる。これにより、固有の、すなわち個別化された構造体を、効率的に生産することができる。この生産方法の驚くべき利点は、導電性構造体の優れた光学的隠蔽性である。ラミネート又はラベルを用いて導電性構造体を重ね刷り又はカバーした後でさえも、導電性構造体が、場合によっては、バックライト条件下で人間の目に見える場合がある。構造体が表面全体に分布し、薄いレーザ切断によって所定の場所だけで分離されている場合、この構造体を肉眼で識別するのは、はるかに困難である。
【0076】
従って、さらに好ましい構成では、本発明は、カード状物体に関し、ここで導電性構造体は、以下のステップを含む多段階のプロセスで生産される。
a)箔転写法又は導電性塗料を用いて、導電性基本構造体を基板に塗布するステップ。
b)レーザを用いて導電性基本構造体の一部を選択的に取り除くステップであって、それによって空間的に分離された領域を具備する個々の要素を備えた導電性構造体が得られるステップ。
【0077】
さらに好ましい実施例では、本発明は、カード状物体に関し、ここで導電性構造体は、多段階のプロセスで生産することができ、ここで多段階のプロセスは、好ましくは以下のステップを含む。
a)導電性基板材料、たとえば金属箔若しくは金属板、金属化された紙、及び/又はアルミニウム被覆箔を供給するステップ。
b)レーザを用いて導電性コーティングの一部を選択的に取り除くステップであって、それによって空間的に分離された領域を具備する個々の要素を備えた導電性構造体が得られるステップ。
【0078】
本発明では、「レーザを用いて」という用語は、好ましくは、レーザ放射が、以前に適用されていた導電性基本構造体の選択された場所で、導電性材料を切除するために使用されることを意味する。その結果、基本構造体の、以前は連続した導電性の個々の要素に切れ目が形成され、切れ目が個々の要素の2つの部分領域間の電気的接続を有利に分断し、それにより、たとえば個々の要素の長さを調整することができる。その結果、個々の要素を備えた導電性構造体を生産することができ、ここで導電性構造体の個々の要素は、空間的に分離された領域を具備する。有利には、個々の要素の面積もまた設定することができ、入力手段とカード状物体との間に相対的な動きがある場合、表面センサによって検出することができる。本発明では、基板は、可撓であるよう設計されることが好ましい。たとえば、基板は、非常に薄い設計のプラスチック、厚紙、及び/又は紙カードであり得るので、可撓性であり、特に印刷機内で処理するのが特に容易で、すなわち印刷することができる。かかるカードは、名刺又はデビット・カードの好ましいサイズの範囲にあることが特に好ましい。
【0079】
インクジェット印刷
導電性構造体の遡及的な個別化の別の可能性は、導電性ブリッジの遡及的適用である。第1のステップでは、導電性塗料又は箔転写法によって、導電性基本構造体が、たとえば可撓性基板に塗布される。基本構造体は、好ましくは、等距離の個々の要素、たとえば、所定の場所に切れ目がある長方形からなる。第2のプロセスのステップでは、こうした切れ目が導電性塗料を用いて選択的に印刷され、それによって相互接続される。また、このプロセスでは、固有の、すなわち個別化された導電性構造体を効率的に生産することができる。
【0080】
従って、さらに好ましい構成では、本発明は、カード状物体に関し、導電性構造体は、以下のステップを含む多段階のプロセスで生産される。
a)箔転写法又は導電性塗料を用いて、導電性基本構造体を基板に塗布するステップ。
b)導電性塗料をカード状物体に塗布するのに用いられるインクジェット印刷によって、導電性ブリッジ及び/又は追加の導電性要素を選択的に塗布するステップであって、それによって個々の要素を備える導電性構造体が得られるステップ。
【0081】
本発明のこの好ましい実施例では、「基板」という用語は、好ましくは、本発明の上記構成のものと理解される。本発明の本実施例では、導電性基本構造体が、切れ目を持つ個々の要素を備えることが特に好ましい。本発明では、こうした切れ目は、好ましくは個々の要素内の間隙であり、ここでそれぞれの個々の要素は、好ましくは1つ又は複数の切れ目を持つ。こうした切れ目が、それぞれの個々の要素内の電気的接続を分断することが特に好ましい。本発明では、導電性ブリッジは、好ましくは、以前に切れ目で分離された個々の要素の領域間に電気接続を確立するという意味で、切れ目に打ち勝つ導電性物体である。かかる導電性ブリッジは、インクジェット印刷を用いてカード状物体に導電性塗料を塗布することによって生成され、それによって、有利なことに個々の要素を備える導電性構造体が得られ、その中で以前に適用された基本構造体の切れ目にブリッジが打ち勝ち、個々の要素の2つの部分領域間に、以前は存在しなかった接続を生成することができる。新しく作成された接続は、電気的だけでなく、静電容量的でもあり得る。本発明では、導電性ブリッジ及び/又は追加の導電性要素が、他の塗布器を使用してカード状物体に塗布されることが好ましい場合もある。
【0082】
さらなる実施例では、導電性基本構造体は、個々の要素を備える。こうした個々の要素を、インクジェット印刷を使って、それぞれの個々の要素に隣接して少なくとも0.2mmだけ重なり合う追加の導電性材料を印刷することにより、一方向又は両方向に延ばすことが好ましい。かかる追加の導電性要素を塗布することにより、導電性基本構造体を、特に簡単なやり方で変更することができる。
【0083】
本発明では、最初に生成された導電性基本構造体の遡及的加工を「個別化する」と呼ぶことが好ましい。これは、好ましくは、それぞれが異なる導電性構造体を備えるカード状物体を生成することができることを意味し、この差を、好ましくは、表面センサが識別することができ、その結果たとえば、相異なるデータ(の組)及び/又は相異なる作用を、表面センサを備える電子デバイス内の相異なるカード状物体に割り当てることができる。こうした後加工プロセスにより、以前は経済的な方法で行うことが不可能であった、特に高速で費用対効果の高い簡単なやり方で、カード状物体を個別化することが可能になったことはまったく驚くべきことであった。
【0084】
さらなる態様では、本発明は、カード状物体及び静電容量式表面センサを備えるシステムに関し、ここでカード状物体は静電容量式表面センサ上に置くことができ、カード状物体は、入力手段とカード状物体との間の相対的な動きによって時間依存信号を生成するように適合され、ここで時間依存信号は、カード状物体上の個々の要素の配置によって確立することができる。この方法及びカード状物体に関して説明される定義、技術的効果、及び利点は、システムにも同様に適用され、逆も同様である。本発明のこの実施例では、入力デバイスと静電容量式表面センサ上のカード状物体との間の相対的な動きから得られる時間依存信号が、カード状物体を使用することなしに生じる入力手段を用いた基準入力に対して変化するような、サイズ、間隔、及び形状に対する導電性構造体の個々の要素が形成されることが特に好ましい。
【0085】
本発明では、このシステムは、第1の接点及び第2の接点によって特徴づけられ、第1の接点はカード状物体と静電容量式表面センサとの間に存在し、第2の接点はカード状物体と入力手段との間に存在し、ここで少なくとも第2の接点は動的に形成されることが特に好ましい。本発明では、第2の接点の動的な形成は、入力手段とカード状物体との間の相対的な動きに対応することが好ましい。
【0086】
打抜きなど、外形を変更することによって個々の要素を構造化する
個々の要素の柔軟な配置により、驚くべきことに、個々の要素のそれぞれに必要なサイズ、間隔、及び形状を、印刷プロセスの代替として、又は印刷プロセスに加えて、既存の生産方法で特に経済的に生産することができる、本発明のさらなる実施例という結果がもたらされる。従って、既存の導電性構造体又は表面を、個々の要素が本発明に従って時間依存信号を生成できるように、たとえば所定のミシン目線に沿って、打抜き、切断、レーザ切断、及び/又は引裂きによって生産することが考えられる。従って、とりわけ金属化された箔又はホログラムなどの既存の導電性材料を、遡及的に、且つ高い費用対効果で構造化し、本発明の個々の要素を形成することも可能である。本発明の対応する実施例を、図19に示す。
【0087】
光学設計としての、又はたとえば機能の組合せによる、他の機能を使用可能にするための、個々の要素の配置及び構成
本発明の著しい利点は、驚くべきことに、個々の要素の非常に柔軟なサイズ、間隔及び形状から生じる。従って、こうした導電性の個々の要素をまた、ユーザに見えるようにして、たとえば、所定の記号、標識、又はデザインの形で配置することもできる。1つのあり得る用途は、たとえば、マーケティング資料上の導電性の個々の要素からなる会社のロゴ、及び/又は本発明による紙幣上の、個々の要素からなるホログラムなどの安全機能であり得る。特に安全関連の用途では、たとえば箔転写法において導電性アルミニウムを使って適用されるホログラムに利用可能な材料を使って、本発明による個々の要素を生産することができる。ここでの大きな利点は、結果として生じる信号が静電容量的に検出され、直接の電気的接触が不要なことである。驚くべきことに、たとえばホログラムの場合、機械的摩耗から保護するために、箔又はラッカを用いてカバーされる材料を使用することもまた可能である。さらに、個々の要素を、他の電子的な機能に従って配置し、従って、たとえば、アンテナ又は導電性トラックとして形成することもできる。
【0088】
本発明では、本発明に従って時間依存信号を生成する個々の要素が、他の機能を同時に満たすことができることにより、生産において多くの効率の向上及びコスト節約が可能であることは、まったく驚くべきことであった。逆に、本発明では、既存のホログラム又は他の安全要素を個別に、又は追加で適用される導電性構造体と組み合わせて静電容量的に評価するか、或いはたとえばレーザ又はインクジェットを用いて、導電性構造体を遡及的に修正し、表面センサ上で結果として得られ評価され得る特定の信号を生成することが好ましい場合もある。先行技術では、導電性構造体による別個の機能のみがこれまでに知られてきたが、ここにあるような好都合の特性のかかる組合せは知られていない。ある得る用途の1つは、たとえば、RFID又はNFCタグとプラスチック・カード内のこのデバイスとの組合せであり、RFID/NFCタグは、好ましくは、識別のために使用され、デバイスは、好ましくは、たとえばタブレットなどの静電容量式表面センサ上での相互作用のさらなる識別を可能にする。本発明の対応する実施例を、図20に示す。
【0089】
相異なる電気的特性を持つ材料の組合せ
本発明の別の驚くべき利点は、異なる導電性の材料の組合せから生じる。カード状物体の1つ又は複数の個々の伝導性要素を、相異なる電気的特性を持つ材料から完全に、部分的に、及び/又は混ぜて生成することは、すべて同じ導電性材料で生産された、かかる伝導性の個々の要素と比較して、時間依存信号の異なる変調という結果をもたらす。これは、目に見える導電性構造体からの時間依存信号の変調を推定することはもはや不可能なので、具体的には、紙幣、身分証明書、支払機能、及び/又は識別機能などの安全関連の適用例にとって、大きな利点である。図21は、2つの光学的に同一の伝導性構造体及びその信号の進路を比較して示しており、ここで一方の構造体内において、いくつかの個々の要素が、相異なる電気的特性を持つ材料から全体的又は部分的に生産された。
【0090】
非機能的な混同(confusion)パターンとしての導電性構造体
図22は、導電性構造体を備えるカード状物体を示し、さらに、第1の構造体から電気的に分離された別の伝導性構造体が、光学的混同パターンとして使用される。本発明によれば、導電性の個々の要素ばかりでなく光学的混同構造体が、機能性に影響を与えることなく同じ材料で構成できることは、驚くべき利点であることを証明している。従って、本発明の実際の構造体は光学的に識別するのがより難しいので、あり得る用途は、たとえば、紙幣又は身分証明書又はコピー防止、或いはその組合せの分野であり得る。
【0091】
同じ導電性構造体で異なる信号を生成する個々の移動経路
図23は、その上に導電性構造体が配置されたカード状物体を示し、この物体には、可能な動作経路にマークがついている。入力は、好ましくは、複数のこうしたマーク間の入力手段の相対的な動きによって行われる。ユーザが選択した動作経路に応じて、異なる時間依存信号が生成される。1つのあり得る適用例は、たとえば、個別に選択されたジェスチャに基づいて、IDカード及び/又は支払カードなどのキャリア媒体を介してパスワードを入力することであり得る。本発明では、たとえば、スマートフォンのロック解除について知られているようなかかるジェスチャが、たとえば、2因子認証の意味で実現が容易なカード形状の物体と組み合わせて、さらなる個別キーとして機能することができることは、特に驚くべきことであった。
【0092】
物体の周りに個々の要素を配置すること
図24は、少なくとも部分的に別の物体に巻きつけられた導電性構造体を備える、カード状物体を示す。この場合、導電性構造体は、第1の能動的接点及び第2の能動的接点がそれぞれ、巻きつけられた物体の2つの相異なる側部又は平面上に生じるよう構成された。あり得る用途は、たとえば、遡及的に貼りつけられた識別ラベルを用いた身分証明書、又は特に厚い基板、又はパッケージ、或いはその組合せの識別であってもよい。
【0093】
導電性塗料を使うペンを用いた導電性構造体の生成
好適な材料は、たとえば、カーボン、グラファイト、CNT、導電性ポリマー、金属粒子、又は導電性フィルムの貼付に適した他の材料をベースとする導電性インクであり、ペンを用いて塗布される。
【0094】
信号経路のより簡単な判断
本発明のさらに好ましい構成では、相対的な動きの開始時及び終了時の導電性構造体の個々の要素は、サイズ、間隔、及び形状に対して特に構成される。特別な構成は、信号経路の開始時及び終了時に定義された信号をもたらし、それによって信号を評価する際の信号経路の判断がより簡単になるという結果になる。同様に、こうした個々の要素を特別に構成することを定期的に繰り返し、このようにして、クロック信号を取得し、次に信号の評価を簡素化する。可能な例示的実施例は、導電性構造体の開始点及び/又は終了点に、より広い個々の要素を備える。本発明では、これは、好ましくは、導電性構造体の開始点及び/又は終了点での個々の要素が、導電性構造体の個々の要素よりも広く構成され、導電性構造体の中心に配置されることを意味する。
【0095】
個々の要素の柔軟な配置
図25は、導電性構造体がカード内に配置されているプラスチック・カードの形態の多層カード構造体を示す。個々の要素の配置の柔軟性により、個々の要素がどんな邪魔な影響も及ぼすことができないように、他の電子部品又は導電性部品の周りに個々の要素を配置することが、特に驚くべきことに可能である。これは、たとえば、クレジット・カード、又は小切手番号、又は身分証明書用の補助パスワード、或いはその組合せのコーディングにおける用途があり得るという結果をもたらす。図25は、チップと、たとえばクレジット・カードのホログラムとの間に、個々の要素が配置されているクレジット・カードを示す。
【0096】
表面センサの一部としての入力手段
さらなる態様では、本発明は、カード状物体と静電容量式表面センサとの間の相対的な動きによって静電容量式表面センサ上で時間依存信号を生成するカード状物体の使用に関し、ここで入力手段は、静電容量式表面センサに対する固定位置を維持するか、且つ/又は入力手段は、表面センサの一部である。
【0097】
特に薄い基板の使用
特に薄い基板を備える本発明の実施例では、1)カード状物体、2)表面センサ、及び3)入力手段の3つの要素の接触により、やはり薄い基板もカード状物体用に使用できることは、特に驚くべきことであった。こうした基板は、好ましくは、特別な低レベルの坪量を持っていてもよく、特に薄くてもよい。
【0098】
先行技術では、特定の時間にフットプリントを生成する静的な入力パターンのみが知られている。従って、先行技術のデバイス及びシステムでは、静的な入力パターンが、常に表面センサと完全に接触していることが不可欠である。本発明による入力手段の相対的な動きにより、導電性構造体が常に表面センサと接触した状態に保たれるので、先行技術におけるこの明確な制限は解決され、厚さ、曲げ、よじれ、及び/又はしわに関係なく、あらゆる種類の基板を使用することができる。10~90g/mの範囲内の特に薄い基板のあり得る用途は、たとえば、紙幣、文書、ラベル、雑誌、本、瓶ラベル、薄い箔、及び/又は剥離可能なラベルであり得る。当業者は、かかる製品の厚さを知っている。
【0099】
以下の図面を参照して、本発明をより詳細に説明することにする。
【図面の簡単な説明】
【0100】
図1】導電性構造体の好ましい実施例に関する好ましい設計の変形例を示す図である。
図2】導電性構造体の好ましい実施例に関する好ましい設計の変形例を示す図である。
図3】導電性構造体の好ましい実施例に関する好ましい設計の変形例を示す図である。
図4】本発明の好ましい実施例の可能な使用を示す図である。
図5】本発明の好ましい実施例の可能な使用を示す図である。
図6】本発明の好ましい実施例の可能な使用を示す図である。
図7】本発明の好ましい実施例の可能な使用を示す図である。
図8】本発明の好ましい実施例の可能な使用を示す図である。
図9】本発明の好ましい実施例の可能な使用を示す図である。
図10】本発明の好ましい実施例の可能な使用を示す図である。
図11】本発明の好ましい実施例の可能な使用を示す図である。
図12】本発明の好ましい実施例の可能な使用を示す図である。
図13】本発明の好ましい実施例の可能な使用を示す図である。
図14】本発明の好ましい実施例の可能な使用を示す図である。
図15】本発明の好ましい実施例の可能な使用を示す図である。
図16】導電性構造体の好ましい実施例を示す図である。
図17】カード状物体を個別化する例示的な方法の図である。
図18】カード状物体を個別化する例示的な方法の図である。
図19】本発明のさらに好ましい実施例である。
図20】本発明のさらに好ましい実施例である。
図21】本発明のさらに好ましい実施例である。
図22】本発明のさらに好ましい実施例である。
図23】本発明のさらに好ましい実施例である。
図24】本発明のさらに好ましい実施例である。
図25】本発明のさらに好ましい実施例である。
図26】本発明のさらに好ましい実施例である。
図27】本発明のさらに好ましい実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0101】
図1は、静電容量式表面センサ(22)上に載り、複数の個々の要素(14)を具備する、導電性構造体(12)を備えるカード状物体(10)を示す。カード状物体(10)上の入力手段(18)の相対的な動き(20、矢印で表される)により、時間依存信号(16)が静電容量式表面センサ(22)上で生成され、ここで時間依存信号(16)は、個々の要素(14)の配置によって確立される。
【0102】
図1から図3は、カード状物体(10)の好ましい実施例の導電性構造体(12)の様々な設計の変形例を示す。図1から図3に示す好ましい実施例は、それぞれ、互いに平行に配置されたストリップ形状の個々の要素(14)を備え、特に「動作トラック」の位置及び個々の要素(14)の長さの相違に関して異なる。本発明では、「動作トラック」という用語は、好ましくは、カード状物体(10)の動き、又は入力手段(18)の動きによって、入力手段(18)でタッチされるべき伝導性構造体(12)の経路形状の領域を指し、ここで好ましくは、両方の移動する行路が入力手段(18)の物体(10)に対する相対的な動き(20)をもたらす。図1から図3はそれぞれ、時間依存信号(16)の空間プロファイルの可能なグラフ表示を示す。
【0103】
図1は、同じ長さで、等距離の個々の要素(14)によって特徴づけられる導電性構造体(12)を備える、カード状物体(10)を示す。入力手段(18)とカード状物体(10)との間の相対的な動き(20)に対する意図された「動作トラック」は、導電性構造体(12)の中心に位置する。結果として生じる時間依存信号(16)は、本発明のこの好ましい構成では、好ましくは動作トラックの両側に生成される。
【0104】
導電性構造体(12)のこの好ましい実施例では、時間で変化する信号(16)のプロファイルは、動作トラックの右側と左側との両方に配置された個々の要素(14)の構成要素に戻る信号の重なり合いを表す。これは、好ましくは、ストリップ形状の個々の要素(4)が共通の開始位置及び終了位置を持たず、動作トラックに対して統計的に分布しているために生じる。本発明では、これは、好ましくは、いくつかの個々の要素(14)のより大きな割合が動作トラックの右側に存在し、他の個々の要素(14)のより多くの割合が動作トラックの左側に存在することを意味する。時間依存信号(16)は、好ましくは、すべての個々の要素(14)の合計信号で構成され、それぞれの場合、動作トラックに対する個々の要素全体の場所及び位置が、時間依存信号(16)を生成する際に又はカード状物体(10)を識別するために、この信号(16)を評価する際に考慮される。
【0105】
図2でのこの進路は、導電性構造体(12)の外側の線、つまり、カード状物体(10)上の導電性構造体(12)の右側の波打つ外形の進路を反映していることが明確にわかる。図2に示す導電性構造体(12)の好ましい実施例では、個々の要素(14)の長さが信号経路に直接関係する、振幅変調の概念が有利に実施される。
【0106】
図2の場合における時間依存信号(16)の空間的進路は、特に、導電性構造体(12)の外側の線の進路に対応し、ストリップ形状の個々の要素(14)は、図の左側の均一な開始位置を占めるので、図2の導電性構造体(12)の左の外側の線は、直線的なストリップ形状の外側の線によって形成される。図中の矢印は、相対的な動き(20)の進路を示しており、相対的な動きは、好ましくは、導電性構造体(12)上で入力手段(18)を誘導する又は移動することにより実行される。好ましくは、円は、動きの開始点を示しており、矢頭は、可能性のある動きの終了、並びに入力手段(18)の動きが生じる方向を示すが、それに限定されるものではない。図2はまた、時間で変化する信号(16)の空間的進路が、導電性構造体(12)のそれぞれの個々の要素(14)が表面センサ上にもたらす個々の信号の、重なり合いを表すことも示す。この重なり合いの程度は、表面センサ(22)で検出された信号の評価の際に有利に設定することができ、従って可変である。具体的には、重なり合いの程度は、導電性構造体(12)の個々の要素(14)の間隔、並びに入力手段(18)のサイズにも依存する。
【0107】
図2は、具体的には、様々な長さの等距離に配置された個々の要素(14)によって特徴づけられる導電性構造体(12)を備える、カード状物体(10)を示す。入力手段(18)とカード状物体(10)との間の相対的な動き(20)に対する意図された「動作トラック」は、導電性構造体(12)の縁部で中心から外れて位置する。結果として生じる時間依存信号(16)は、本発明のこの好ましい構成では、好ましくは動作トラックに隣接して形成される。
【0108】
図3は、同じ間隔で配置されていない、等しい長さの個々の要素(14)によって特徴づけられる導電性構造体(12)を備える、カード状物体(10)を示す。入力手段(18)とカード状物体(10)との間の相対的な動き(20)に対して意図された「動作トラック」は、導電性構造体(12)の中心に位置する。結果として生じる時間依存信号(16)は、本発明のこの好ましい構成では、好ましくは動作トラックの両側に生成される。個々の要素(14)間の間隔が増加するために、時間依存信号(16)は、常にゼロ位置に戻される。個々の要素(14)のこの好ましい配置では、たとえば評価ソフトウェアによる動作トラックの特に簡単な識別を、特に可能にすることができる。本発明のこの好ましい実施例では、振幅変調及び周波数変調の概念が、好ましくは組み合わせられる。結果として生じる信号(16)の振幅は、好ましくは、個々の要素(14)の長さから生じる。信号(16)の周波数は、好ましくは、個々の要素(14)間の間隔から生じる。もちろん、図1から図3に示す導電性構造体(12)の好ましい実施例を組み合わせることもまた可能である。
【0109】
図4から図15は、本発明の様々な好ましい実施例の適用例を示す。図4は、2つの独立した導電性構造体(12)がその上に配置された、カード状物体(10)を示す。この2つの導電性構造体(12)のそれぞれが、導電性構造体自体の動作トラックを備え、この例示的な実施例では、垂直に1回及び水平に1回動く。これは、上から下、下から上、左から右、及び右から左の合計4方向の相互作用という結果をもたらす。相対的な動き(20)の方向に応じて、各導電性構造体(12)は、静電容量式表面センサ(20)を備えるデバイス上で、様々な作用をトリガすることができる。
【0110】
図5はまた、2つの独立した導電性構造体(12)がその上に配置された、カード状物体(10)を示す。この2つの導電性構造体(12)はそれぞれ、カード状物体(10)上の相異なる位置に配置された導電性構造体自体の動作トラックを備える。従って、選択された移動経路に応じて、カード状物体(10)は、静電容量式表面センサ(20)を備えるデバイス上で、様々な作用をトリガすることができる。
【0111】
図6は、一方はカード状物体(10)の表側(図の左側に示す)、他方はカード状物体(10)の裏(図の中央に示す)にある2つの導電性構造体(12)を示す。従って、たとえば、伝統的なカードゲームと同様に、全ゲームの同じ裏側を、相異なる表側と組み合わせることができる。両方の導電性構造体(12)により、カード状物体(10)上の移動経路に沿った入力手段(18)の相対的な動き(20)の間に、静電容量式表面センサ(22)上で複合信号(16)が生成される。
【0112】
図7は、図6に類似の手法を示す。ここで、2つの相異なる導電性構造体(12)は、2枚の相異なるカード(10)上に配置される。これらは、読み取りのために静電容量式表面センサ(22)上に重ねられ、入力手段(18)がカード(10)に対する移動経路に沿って、積み重ねたカード状物体(10)の上を移動すると、連続して動作可能に接触する。
【0113】
図8は、円筒上の導電性構造体(12)の配置を示し、ここで導電性構造体(12)を備えるカード状物体(10)は、たとえば円筒の外側に配置され得る。カード状物体(10)はまた、好ましくは3次元物体に取り付けることができるステッカ又はラベルの形態であり得る。本発明のこの好ましい実施例では、個々の要素(14)は、周囲の主ストランド(main strand)を介して相互接続される。ユーザは、主ストランドの領域で円筒にタッチし、円筒を静電容量式表面センサ(22)の上を転がすように動かす。個々の要素(14)の配置は、それぞれの時点で個々の要素が静電容量式表面センサ(22)と動作可能に接触し、好ましくは静電容量式表面センサ(22)上で信号(16)を生成する。
【0114】
図9は、動作トラックを備える導電性構造体(12)がその上に配置された、カード状物体(10)を示す。入力は、好ましくは、この動作トラックに沿った入力手段(18)の相対的な動き(20)によって行われる。具体的には、入力手段(18)の2つの相異なる構成を示す。入力デバイス(18)の構成に応じて、静電容量式表面センサ(22)上で相異なる信号(16)が生成される。図9では、角の丸い長方形は、それぞれの場合の入力手段(18)を表す。導電性領域を、黒で示す。上に表す好ましい入力手段は、表面全体にわたって導電的に形成されている。下に示す入力手段は、一実例として、左半分のみが導電的に形成されている。従って、各入力手段(18)は、静電容量式表面センサ(22)上の同じカード状物体(10)を介して相対的な動き(20)の間に異なる信号を生成し、したがって静電容量式表面センサ(22)を備えるデバイス上で相異なる作用をトリガすることができる。あり得る適用例は、様々な入力手段を提供することによる、ユーザ、プレーヤ、又はオペレータの区別である。
【0115】
図10は、2枚の相異なるカード状物体(10)を示す。具体的には、カード状物体は、その導電性構造体(12)の構成が異なる。ここで、2つの相異なる導電性構造体(12)は、2枚の相異なるカード(10)上に配置される。これらのカードは、読み取りのために静電容量式表面センサ(22)上に半分重なり合うように置かれ、従って、移動経路に沿った、積み重ねたカード状物体(10)の上での入力手段(18)の相対的な動き(20)によって、同時に動作可能に接触する。3つの導電性構造体(12) - 第1のカードの構造体、第2のカードの構造体、及び両方のカードを組み合わせた構造体 - のそれぞれは、静電容量式表面センサ(22)を備えるデバイス上で、相異なる作用をトリガすることができる。
【0116】
図11は、2枚の相異なるカード状物体(10)を示す。本発明のこの好ましい実施例では、2つの相異なる導電性構造体(12)は、2枚の相異なるカード(10)上に配置される。これらのカードは、読み取りのために静電容量式表面センサ(22)上に重ねて置かれ、従って、好ましくは、移動経路に沿った、積み重ねたカード状物体(10)上での入力手段(18)の相対的な動き(20)によって、同時に動作可能に接触する。2枚のカード(10)上の導電性構造体(12)は、互いにずらされており、カード(10)の一方が他方の上に置かれているときに、重ね合わされる。3つの導電性構造体(12) - 第1のカードの構造体、第2のカードの構造体、及び両方のカードを組み合わせた構造体 - のそれぞれは、静電容量式表面センサ(22)を備えるデバイス上で、相異なる作用をトリガすることができる。
【0117】
図12は、複数の導電性構造体(12)がその上に配置された、カード状物体(10)を示す。カード状物体(10)は、読み取りのために静電容量式表面センサ(22)上に置かれる。カード状物体(10)上の入力手段(18)の相対的な動き(20)における移動経路の選択された位置に応じて、静電容量式表面センサ(22)を備えるデバイス上で、相異なる作用をトリガすることができる。これにより、入力選択が可能になる。1つのあり得る適用例は、たとえば、ゲーム又はクイズでの回答及び/又は入力の選択であり得る。
【0118】
図13は、導電性構造体(12)を備えたカード状物体(10)を示し、カード状物体は、読み取りのために静電容量式表面センサ(22)の上で引っ張られ、その際に入力手段(18)、たとえば人間の指又は手の別の部分を用いてタッチされる。この実施例におけるカード状物体は、物体の幅よりもかなり長い、長さを持ち得る。実例として、たとえば、ローラ上に巻き取られて提供される織物状の物体が好ましい場合もある。本発明のこの好ましい実施例では、カード状物体(10)上の入力手段(18)の相対的な動き(20)は、カード状物体(10)の動きによって生じ、すなわちカード状物体(10)は、静電容量式表面センサ(22)と入力手段(18)との間を通って引っ張られる。この実例での時間依存信号(16)の空間的進路は、波打つ線を示していないが、入力手段(18)が表面センサ(22)に空間的に関連づけられた領域において上下移動に追従する。
【0119】
図14は、静電容量式表面センサ(22)上の、導電性構造体(12)を備える2枚のカード状物体(10)の同時使用を示す。
【0120】
図15a及び図15bは、導電性構造体(12)を備えたカード状物体(10)を示す。移動経路又は動作トラックの変形例を示す。移動経路は、任意の方向に動き、方向を変え、且つ/又は曲がることができる。図15の下部は、移動経路又は動作トラックのさらなる変形例を示し、それに沿って入力手段(図示せず)をカード状物体(10)上にルーティングすることができる。
【0121】
図16は、カード状物体(10)の導電性構造体(12)の設計とデータ容量との間の関係を示す。図16に示すカード状物体(10)の好ましい実施例では、本質的に均一な個々の要素(14)からなる導電性構造体(12)を備える。個々の要素(14)の形状は、たとえば、角が丸い長方形であり得る。設計は、以下の特性値によって特徴づけられ得る。
・個々の要素(14)の数N
・個々の要素(14)の幅W
・個々の要素(14)の長さL
・個々の要素(14)間の間隔D
・Xステップでの個々の要素(14)の配置
・ステップの距離V
導電性構造体(12)の全幅Wgesは、
ges=L+(X-1)×V
導電性構造体(12)の全長Lgesは、
ges=(N-1)×D+W
これは、以下の、導電性構造体(12)の面積要件Agesという結果をもたらす。
ges=Wges×Lges
理論的なデータ容量Cは、以下に従って計算される。
C=X
結果として得られるデータ密度C(面積あたりのデータ容量)は、
【0122】
【数1】

以下の表では、特定の例示的な実施例の概要を与える。これらの実例は、たとえば名刺、遊戯用カードなどのカード状物体(10)の外形に基づいており、他のどんな形にも適用可能である。
【0123】
【表1】

静電容量式表面センサ(22)上の信号(16)を確実に評価するために、たとえば、常に最初及び最後の個々の要素(14)をゼロ位置に配置することが有利であり得る。次いで、理論的なデータ容量Cは以下で計算される。
c=X(N-2)
実例3では、結果は以下の通りである。
【0124】
【表2】

これらの理論値は、大まかな値である。ユーザ・データは、チェックサム、冗長性、或いはエラー検出及び/又は修正アルゴリズムを実施することによって、より小さくなり得る。
【0125】
図17は、実例として、本発明では、どのように導電性構造体(12)をカード状物体(10)に適用することができるかを示す。この場合、第1のプロセスのステップ(左図)において、本発明では好ましくは基本構造体(28)と呼ばれる第1の導電性構造体が、基板、たとえばカード状物体(10)に塗布される。これは、たとえば、導電性塗料又は箔転写法を使用して行うことができる。基本構造体(28)は、たとえば、均一な等距離に配置された個々の要素、たとえば長方形で構成され得る。第2のプロセスのステップでは、導電性の個々の要素は、レーザ切除によって所定の場所で互いから電気的に分離される。すなわち、こうした場所で、導電性材料が選択的に切除される。これを、図17の中央の図に示す。これにより、固有の、すなわち個別化された構造体を、効率的に生産することができる。この生産方法の驚くべき利点は、導電性構造体(12)の優れた光学的隠蔽性である。ラミネート又はラベルを用いて導電性構造体(12)を重ね刷り又はカバーした後でさえも、導電性構造体(12)が、従来の生産方法及び/又は印刷方法では、場合によっては、バックライト条件下で人間の目に見えるままである場合があり得る。構造体(12)が表面全体に分布し、細いレーザでの切断によって所定の場所だけで分離されている場合、かかる構造体(12)を肉眼で識別するのは、相当に困難である。右側の図の矢印は、レーザ切除を用いてこのように生成されたカード状物体上の可能な動作トラックを示し、ここで動作トラックは、たとえば導電性構造体(12)の中央又は片側に配置することができる。好ましくは、計画された動作トラックの領域内で導電性材料は切除されず、その結果、入力手段(図示せず)を用いた入力を、導電性構造体(12)の個々の要素(14)内の電気的接続により、構造体(12)の動作可能な接触領域内で送信することができ、入力を表面センサ(図示せず)で検出することができる。本発明のこの好ましい実施例では、入力手段とカード状物体(10)との間の相対的な動き(20)は、導電性材料が切除されない領域内で行われることが好ましい。
【0126】
図18は、実例として、導電性構造体(12)をカード状物体(10)に適用する、さらなる方法を示す。具体的には、図17及び図18に例示された方法を用いて、カード状物体(10)上の導電性構造体(12)を遡及的に個別化すること、すなわち本発明では、好ましくは、相異なるカード状物体(10)の導電性構造体(12)が互いに異なり、この差を表面センサ(22)で検出できるように、当初適用された導電性基本構造体を加工することが可能である。本発明では、カード状物体(10)上に配置された複数の導電性構造体(12)を互いに区別可能にすることが好ましい場合もある。
【0127】
図18に示す方法では、導電性ブリッジを遡及的にカード状物体(10)に取り付ける。このために、第1のステップでは、導電性基本構造体が、カード状物体(10)である基板に塗布される。導電性基本構造体は、たとえば、導電性塗料の使用又は箔転写法により、カード状物体に塗布される。基本構造体は、好ましくは、たとえば長方形及び/又はストリップ形状に設計され得る、所定の場所に切れ目を持つ、等距離の個々の要素(14)を備える。かかる基本構造体の可能な好ましい実施例を、図18の左側の図に示す。第2のプロセスのステップでは、図18の中央の図に示すように、導電性塗料を用いて、切れ目を選択的に印刷することができ、それによって切れ目は有利にも、電気的又は静電容量的に相互接続される。本発明のこの好ましい実施例における可能な動作トラックは、好ましくは、導電性構造体(12)の個々の要素(14)のすべてに切れ目がない、導電性構造体(12)のかかる領域内に配置され得る。これを、図18の右側の図に示す。
【0128】
図19は、カード状物体(10)の好ましい実施例を示し、導電性構造体(12)又はその個々の要素(14)の最終形状は、打抜きによって生成される。打抜きの輪郭を、中央の図に破線で示す。具体的には、図19は、既存の導電性基本構造体(28、左)から打抜きプロセスによって、どのようにして新しい導電性構造体(12、右)が生成され得るかを示す。
【0129】
図20は、カード状物体(10)の好ましい実施例を示し、カード状物体(10)は、導電性構造体(12)と、導電性構造体(12)の個々の要素間に配置されるRFIDタグとを備える。
【0130】
図21は、導電性構造体(12)が全体的又は部分的に第2の材料で作られた個々の要素(14)を備え、第2の材料は、それから導電性構造体(12)の残りの個々の要素(14)が作られる第1の材料と相異なる電気的特性を持つ、カード状物体(10)の好ましい実施例を示す。第2の材料からなる個々の要素(14)の領域を、図の下側の部分に網掛けで示す。部分的に第2の材料からなる導電性構造体の幾何形状、すなわち外形は、上記の導電性構造体(12)と一致するが、結果として生じる時間依存信号(16)は、第2の材料のない導電性構造体から変化する。
【0131】
図22は、紙幣生産の分野、又は身分証明書、運転免許証、証明書などの安全関連文書の分野における、本発明のあり得る用途を示す。拡大された詳細(3倍拡大)は、導電性構造体(12)及び混同パターンの可能な構成の変形例を示す。導電性構造体(12)の個々の要素は、この実例では完全に埋められていないが、ハニカム構造体として実現されている。導電性構造体(12)内で、個々のハニカムは電気的に相互接続されるか、又は互いにタッチし、従って自律的な導電性要素を構成する。カード状物体(10)上に、導電性構造体(12)に加えて、光学的混同パターンが適用される。混同パターンもまた、ハニカム形状の要素で構成される。ただし、これらの要素は電気的に相互接続されておらず、従って、時間依存信号の偏向及び/又は変調に影響を与えない。
【0132】
図23は、物体(10)又はカード状物体(10)及び静電容量式表面センサ(図示せず)を備えるシステムのユーザに対して、可能な動作トラックを指定することができる物体を備えた、カード状物体(10)の可能な実施例を示す。どの動作トラックが選択されたかに応じて、導電性構造体(12)の相異なる個々の要素(14)が動作可能に接触するので、表面センサ(図示せず)上に別の時間依存信号が発生する。
【0133】
たとえば、図23に示す実例では、番号シーケンスをカード状物体(10)上で指定することができ、ユーザは、番号シーケンスに沿って相対的な動き(20)を実行し、表面センサ(図示せず)上に載っているカード状物体(10)をタッチ又は移動し、番号シーケンスは好ましくは、動作トラックをもたらす。たとえば、一連の番号は、表面センサを備えるデバイスによって各用途で再定義することができ、従って、TAN(取引番号:transaction number)によって、保護されるべき安全関連用途を可能にする。
【0134】
図24は、カード状物体が別の物体の周りに少なくとも部分的に巻きつけられた、導電性構造体(12)を備えるカード状物体(10)の好ましい実施例を示す。この実施例はたとえば、たとえば1mmより厚い場合がある、より厚い基板材料にとって興味深い。
【0135】
図25は、プラスチック・カードの形態の多層カード構造体がある、本発明の好ましい実施例を示す。このカード構造体は、図25に示す本発明の好ましい実施例におけるカード状物体(10)を形成する。この実施例では、伝導性構造体(12)は、カード状物体(10)内に配置され、導電性構造体(12)の個々の要素(14)は、好ましくは、カード状物体上の別の安全機能の周りに配置されることが好ましい。
【0136】
図26は、スマートフォンの一部としての表面センサ(22)を示す。図26aでは、時間依存信号(16)が、スマートフォンのディスプレイ上にグラフィカルに示される。個々のタッチの事象は、個々のポイントとして示される。図26bは、時間依存信号(16)の関連する速度プロファイル(30)を示す。速度は、座標及びタイム・スタンプを使用して、それぞれの個々のタッチの事象について、前のタッチの事象と比較して計算され、棒グラフの形で表示された。バーがより大きいほど、表面センサ(22)上の時間依存信号(16)の局所速度が速くなる。
【0137】
図27は、入力手段(18)が静電容量式表面センサ(22)の一部であるか、又は入力手段(18)が静電容量式表面センサ(22)に接続されている実施例を示す。上側の図は、表面センサ、入力デバイス、及びカード状物体を断面図で示す。下側の図は、上面図を示す。カード状物体(10)は、相対的な動き(20)により入力手段(18)に対して動かされる。この実施例では、カード状物体(10)を、物体の幅と比較してかなり長い長さによって特徴づけられる、ロール材料として提供することもできる。従って、導電性構造体の個々の要素(14)は、徐々に入力手段(18)と動作可能に接触するようになり、それによって静電容量式表面センサ(22)上で時間依存信号(図示せず)が有利に生成される。
【符号の説明】
【0138】
10 カード状物体
12 導電性構造体
14 個々の要素
16 時間依存信号
18 入力手段
20 相対的な動き
22 表面センサ
24 第1の能動的接点
26 第2の能動的接点
28 導電性基本構造体
30 速度プロファイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27