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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】遊技機
(51)【国際特許分類】
   A63F 7/02 20060101AFI20221130BHJP
【FI】
A63F7/02 308G
A63F7/02 326C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020123225
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022019409
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000154679
【氏名又は名称】株式会社平和
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八角 裕之
【審査官】武田 知晋
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-037334(JP,A)
【文献】特開2017-213083(JP,A)
【文献】特開2015-097624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技盤を保持する本体枠と、
前記本体枠に対して回転軸を中心として開閉可能に設けられる前扉と、
前記前扉の上部に着脱自在に取り付けられる上装飾部材と、を備え、
前記上装飾部材は、前記遊技盤に対応しているか否かの判断に用いられる識別情報を有しており、
前記識別情報についての前記判断を行う判断部を備え、
前記前扉には、遊技者が操作可能な操作ハンドルが初期位置から最大回転位置まで回転可能に設けられており、
前記操作ハンドルには、遊技者の指を掛ける指掛部が径方向に突出するように設けられている遊技機であって、
前記上装飾部材は、前記前扉の自由端側の方が前記前扉の前記回転軸側よりも前記遊技盤に対する前面側の突出量が大きくなるように構成されており、
前記操作ハンドルが前記初期位置にある場合および前記最大回転位置にある場合の双方において、前記指掛部は前記本体枠の下端縁または前記前扉の下端縁よりも下方に突出しておらず、
前記操作ハンドルの前面側の突出量は、前記上装飾部の前記自由端側の突出量よりも小さく、
前記操作ハンドルを前記初期位置から回転操作を開始させるために必要な回転トルクを第1回転トルクとし、
前記操作ハンドルを左打ち基準位置に回転操作させるために必要な回転トルクを第2回転トルクとし、
前記操作ハンドルを右打ち基準位置に回転操作させるために必要な回転トルクを第3回転トルクとすると、
前記操作ハンドルは、前記第3回転トルクと前記第2回転トルクとの差分が、前記第2回転トルクと前記第1回転トルクとの差分よりも大きくなるように構成されている、ことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記前扉の前記回転軸側に着脱自在に取り付けられる第1装飾部材と、
前記前扉の前記回転軸とは反対側に着脱自在に取り付けられる第2装飾部材と、をさらに備え、
前記第1装飾部材および前記第2装飾部材はそれぞれ、前記識別情報を有しており、
前記第2装飾部材は、前記第1装飾部材よりも前記突出量が大きくなっている、ことを特徴とする請求項1に記載の遊技機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遊技盤に遊技に関する演出を模した種々の装飾を配置し、この装飾に対応するよう形成された意匠部材を前扉に取り付けた遊技機が知られている。例えば特許文献1に記載の遊技機(パチンコ機)では、遊技盤の遊技領域に数字の「7」の一部が装飾として描画されており、前扉に取り付けられる意匠部材にこの数字の「7」の一部を除く他部が描画されている。そして、意匠部材が遊技盤に取り付けられると、数字の「7」の一部と他部とがつながって、数字の「7」全体が描画されたかのようになる。これにより、前扉にインパクトのある装飾を施すことにより、遊技中の演出効果を高めることができる。
【0003】
また、従来の一般的な遊技機(パチンコ機)は、遊技者が回転操作可能な操作ハンドルを有している。例えば特許文献2に記載の遊技機では、前枠の右下隅部において前面側に突出するように操作ハンドルが設けられており、操作ハンドルの外周部には、操作性を向上させるために外径方向に突出するように複数の指掛部が形成されている。遊技者がこれら指掛部に指を掛けた状態で操作ハンドルを回転操作すると、その際の回転操作量に応じた強度で、発射装置によって遊技球が発射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-346161号公報
【文献】特開2014-18335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年では、新たな趣向を凝らした遊技機が次々に登場しており、特許文献1に記載された従来の遊技機のように、単に、遊技盤の装飾に対応した意匠部材を前扉に取り付けるだけでは、演出効果を十分に発揮することができなくなってきている。そこで、演出効果を向上させることができる遊技機の登場が待ち望まれている。
【0006】
また、特許文献2に記載された従来の遊技機では、操作ハンドルの指掛部は外径方向に突出しているため、この指掛部と周囲の物とが接触することに起因して操作ハンドルが破損する虞があった。例えば前扉が本体枠から取り外されているときに、作業者が操作ハンドルを所定の回転操作量だけ回転操作した状態で前扉を床に置いてしまうと、指掛部が床と接触して強い衝撃を受けてしまい、操作ハンドルが破損する場合があった。
【0007】
本発明は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、演出効果を向上させることができる遊技機を提供することにある。また、操作ハンドルを破損し難くした遊技機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、遊技盤を保持する本体枠と、前記本体枠に対して回転軸を中心として開閉可能に設けられる前扉と、前記前扉の上部に着脱自在に取り付けられる上装飾部材と、を備え、前記上装飾部材は、前記遊技盤に対応しているか否かの判断に用いられる識別情報を有しており、前記識別情報についての前記判断を行う判断部を備え、前記前扉には、遊技者が操作可能な操作ハンドルが初期位置から最大回転位置まで回転可能に設けられており、前記操作ハンドルには、遊技者の指を掛ける指掛部が径方向に突出するように設けられている遊技機であって、前記上装飾部材は、前記前扉の自由端側の方が前記前扉の前記回転軸側よりも前記遊技盤に対する前面側の突出量が大きくなるように構成されており、前記操作ハンドルが前記初期位置にある場合および前記最大回転位置にある場合の双方において、前記指掛部は前記本体枠の下端縁または前記前扉の下端縁よりも下方に突出しておらず、前記操作ハンドルの前面側の突出量は、前記上装飾部の前記自由端側の突出量よりも小さく、前記操作ハンドルを前記初期位置から回転操作を開始させるために必要な回転トルクを第1回転トルクとし、前記操作ハンドルを左打ち基準位置に回転操作させるために必要な回転トルクを第2回転トルクとし、前記操作ハンドルを右打ち基準位置に回転操作させるために必要な回転トルクを第3回転トルクとすると、前記操作ハンドルは、前記第3回転トルクと前記第2回転トルクとの差分が、前記第2回転トルクと前記第1回転トルクとの差分よりも大きくなるように構成されている、ことを特徴とする。
【0009】
また、上記構成において、本発明は、前記前扉の前記回転軸側に着脱自在に取り付けられる第1装飾部材と、前記前扉の前記回転軸とは反対側に着脱自在に取り付けられる第2装飾部材と、をさらに備え、前記第1装飾部材および前記第2装飾部材はそれぞれ、前記識別情報を有しており、前記第2装飾部材は、前記第1装飾部材よりも前記突出量が大きくなっている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、演出効果を向上させることができる。操作ハンドルを破損し難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態例に係るパチンコ機の外観を示す正面図である。
図2図1に示すパチンコ機の外観を示す斜視図である。
図3図1に示すパチンコ機に取り付けられる意匠ユニットの分解斜視図である。
図4図1に示すパチンコ機に備えられる遊技盤の正面図である。
図5図1に示すパチンコ機の背面図である。
図6図1に示すパチンコ機の電気的構成を示すブロック図である。
図7図1に示すパチンコ機の副制御基板と意匠ユニットとの電気的な接続を示す図である。
図8図1に示すパチンコ機に記憶されている大当たり決定乱数判定テーブルを示す図である。
図9図1に示すパチンコ機に記憶されている小当たり用当たり図柄乱数判定テーブルを示す図である。
図10図1に示すパチンコ機に記憶されている当たり決定乱数判定テーブルを示す図である。
図11図1に示すパチンコ機に記憶されている普通図柄変動時間決定テーブルを示す図である。
図12図1に示すパチンコ機に記憶されている開閉制御パターンテーブルを示す図である。
図13図3に示す遊技盤の遊技領域における第2始動口周辺の構成の拡大図である。
図14図13に示すA-A線断面図である。
図15】第2実施形態例に係るパチンコ機の外観を示す斜視図である。
図16図15に示すパチンコ機の外観を示す斜視図である。
図17図15に示すパチンコ機の意匠部材を取り外した状態を示す斜視図である。
図18図15に示すパチンコ機の意匠部材を取り外した状態を示す正面図である。
図19図15に示す意匠ユニットの正面図である。
図20図15に示す意匠ユニットの斜視図である。
図21図15に示す意匠ユニットの上面図である。
図22】遊技場で前扉を開放したときの様子を示す上面図である。
図23図15に示すハンドルユニットを示す斜視図である。
図24図23の分解斜視図である。
図25】(a)は図23に示す操作ハンドルの前面側の斜視図であり、(b)は同操作ハンドルの背面側の斜視図である。
図26】(a)~(c)は操作ハンドルの回転操作位置と回転操作角度との関係を示す図である。
図27】(a)は操作ハンドルの指掛部と前扉の下端縁および右端縁との関係を示す図であり、(b)は操作ハンドルの指掛部と内枠の下端縁および右端縁との関係を示す図である。
図28】実施例と比較例1~3について、操作ハンドルの回転操作位置に対する回転トルクの大きさを示す図である。
図29図28の実測値をまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、第1実施形態例では、遊技盤の遊技領域に発射させ、遊技に使用された遊技球を再び遊技領域に発射可能に循環させる所謂管理遊技機を例として挙げて説明する。図1,2に示すように、第1実施形態例に係るパチンコ機(遊技機)Pは、遊技場の島設備に設置される縦長方形状の外枠1と、外枠1にヒンジ機構(回転軸)Hを介して扉状に開閉自在に取り付けられる内枠2と、内枠2にヒンジ機構(回転軸)を介して扉状に開閉自在に取り付けられる前扉3等を備えている。外枠1および内枠2によって本体枠4が構成されており、この本体枠4によって遊技盤(図4参照)が保持されている。前扉3には、ガラスやプラスチック等からなる透明板3a、および遊技球の発射操作を行うための操作ハンドル3b等が取り付けられている。内枠2および前扉3が外枠1に対して閉じられた状態になると、遊技盤の正面に前扉3の透明板3aが対向するように配置され、遊技者はこの透明板3aを介して遊技盤を視認可能になる。
【0013】
図3に示すように、前扉3は、ベース部材30と、このベース部材30に着脱自在に取り付けられる意匠ユニット35と、を有している。ベース部材30は、基台部30aと、この基台部30a上に設けられた縦長方形状の上枠部30bとによって構成されている。上枠部30bの四辺によって囲繞空間が形成されており、この囲繞空間に上記した透明板3a(図1,2参照)が取り付けられるとともに、この透明板3aの周りを囲むように上枠部30b上に意匠ユニット35が配設される。意匠ユニット35は、遊技に関する各種演出を実行する演出装置として機能する。
【0014】
本実施形態では、ホールにおいてパチンコ機Pの機種交換が行われる際に、遊技盤の交換と同時に、上述した意匠ユニット35も交換されるようになっている。具体的には、交換する機種のコンテンツに合わせたデザインが施された遊技盤と、この遊技盤のデザインに沿った別のデザインが施された意匠ユニット35と、が同時に交換されるようになっている。そして、後述するように、意匠ユニット35は交換される遊技盤に適切に対応しているか否かの識別情報を有しており、この識別情報に基づいて意匠ユニットの適否が判断されるようになっている。
【0015】
意匠ユニット35は、パチンコ機Pに正対する遊技者から見た場合、上枠部30bの上部(透明板3aの上方)に配設される上意匠部材31と、上枠部30bの下部(透明板3aの下方)に配設される下意匠部材32と、上枠部30bの左側部(透明板3aの左方)に配設される左意匠部材33と、上枠部30bの右側部(透明板3aの右方)に配設される右意匠部材34と、を有している。そして、これらの意匠部材31~34が組み合わされることにより、1つの意匠ユニット35が構成されるようになっている。なお、各意匠部材31~34の上枠部30bへの取り付けは、フック等の周知の取付手段によって簡単に行うことができるようになっている。
【0016】
上意匠部材31は左右方向に延びるように形成されており、上枠部30bに取り付けられた状態では、上意匠部材31の左端部は前扉3の回転軸側付近に位置し、上意匠部材31の右端部は前扉3の回転軸側とは反対側の自由端側付近に位置する。また、上意匠部材31は上枠部30bに対して前面側に突出するように構成されている。この場合、上意匠部材31の右端部の突出量と、上意匠部材31の左端部の突出量とを比較すると、上意匠部材31の右端部の突出量の方が、上意匠部材31の左端部の突出量よりも大きくなっている。これにより、上意匠部材31の右端部と遊技者との間の距離は、上意匠部材31の左端部と遊技者との間の距離よりも近くなっている。また、上意匠部材31の右端部の突出量A2は、後述する操作ハンドルの前面側の突出量A1よりも大きくなっている。ここで、上意匠部材31の右端部の突出量A2は、前後方向において本体枠4に保持された遊技盤から上意匠部材31の右端部の先端までの長さを示している。また、操作ハンドルの前面側の突出量A1は、前後方向において同遊技盤から操作ハンドルの先端までの長さを示している。
【0017】
上意匠部材31はその両端部に一対のスピーカ31aを有しており(図1参照)、遊技の進行に応じてスピーカ31aから様々な音が出力されるという演出が行われるようになっている。また、上意匠部材31は透明性のプラスチック等から構成されており、内部に複数のLED(図示せず)が設けられている。これらLEDが遊技の進行に伴って種々の色や発光パターンで発光するという演出も行われるようになっている。
【0018】
左意匠部材33および右意匠部材34はともに、上下方向に延びるように形成されており、上枠部30bに取り付けられた状態では、上枠部30bに対して前面側に突出するように構成されている。この場合、左意匠部材33の突出量と、右意匠部材34の突出量とを比較すると、右意匠部材(第2意匠部材)34の突出量の方が、左意匠部材(第1意匠部材)33の突出量よりも大きくなっている。ここで、右意匠部材34および左意匠部材33の前面は湾曲するように形成されているため、これら意匠部材33,34の上端から下端に亘る突出量は均一ではないが、右意匠部材34の最大突出量は左意匠部材33の最大突出量よりも大きくなっている。また、最大突出量という部分的な突出量に限られることなく、両意匠部材33,34の全体的な突出量を相対的に比較した場合でも、右意匠部材34の突出量は、左意匠部材33の突出量よりも大きくなっている。これにより、右意匠部材34と遊技者との間の距離は、左意匠部材33と遊技者との間の距離よりも近くなっている。
【0019】
左意匠部材33および右意匠部材34はともに、透明性のプラスチック等から構成されており、内部に複数のLED(図示せず)が設けられている。これらLEDが遊技の進行に伴って種々の色や発光パターンで発光するという演出が行われるようになっている。また、右意匠部材34は、内部にデザインシート(図示せず)が内装されており、内部のLEDが遊技の進行に伴って種々の色や発光パターンで発光することにより、デザインシートの視認性を変化させる演出も行われるようになっている。
【0020】
下意匠部材32は基台部30a上に載置されるように上枠部30bに取り付けられており、この状態において上枠部30bに対して前面側に突出するように構成されている。この場合、下意匠部材32の左端部の突出量は、左意匠部材33の下端部の突出量と略同一となっており、下意匠部材32の右端部の突出量は、右意匠部材34の下端部の突出量と略同一となっている。
【0021】
下意匠部材32は演出ボタン32aおよび選択ボタン32bを有しており、遊技者が、遊技の進行に応じて演出ボタン32aを押下したり、演出表示装置の光量やスピーカ31aの音量を調整するために選択ボタン32bを押下できるようになっている。
【0022】
これら意匠部材31~34が上枠部30bに取り付けられた状態では、上述したように意匠部材31~34は一体化した意匠ユニット35となる。このとき、上意匠部材31の左端部と左意匠部材33の上端部とが連結されており、上意匠部材31の右端部と右意匠部材34の上端部とが連結されている。また、下意匠部材32の左端部と左意匠部材33の下端部とが連結されており、下意匠部材32の右端部と右意匠部材34の下端部とが連結されている。このように、意匠部材31~34が連結されることにより、これら意匠部材31~34内に設けられた各種電気部品(例えば後述する中継基板等)も電気的に接続されるようになっている。
【0023】
基台部30aには、右下方に上記した操作ハンドル3bが取り付けられている。操作ハンドル3bは遊技者が所定方向へ向けて回転操作できるように形成されており、遊技者が操作ハンドル3bを回転操作すると、パチンコ機P内に収容されている遊技球が遊技盤の下方に配設された発射装置(図示せず)に送られる。そして、この発射装置により操作ハンドル3bの回転角度に応じた強度で遊技球が発射されるようになっている。
【0024】
また、基台部30aの背面側には、大当たり遊技等の実行に基づいて遊技者に付与された遊技球や、遊技領域に向けて発射される遊技球をパチンコ機P内で循環させる不図示の循環通路等が設けられている。このように、このパチンコ機Pにおいては、遊技球がパチンコ機P内に封入されており、遊技者は遊技球に直接触れることなく遊技を行うようになっている。
【0025】
次に、図4を参照して第1実施形態例の遊技盤14について説明する。上記したように、内枠2および前扉3が外枠1に対して閉じられた状態では、遊技盤14の正面に離隔して透明板3aが対向する。このとき、透明板3aと遊技盤14の正面との間に、遊技球が転動する遊技領域15が形成される。遊技領域15は、発射装置の発射強度に応じて遊技球の進入度合いを互いに異にする左打ち領域15aおよび右打ち領域15bを含む。左打ち領域15aは、パチンコ機Pに正対した遊技者から見て遊技盤14の左側に位置し、右打ち領域15bは、パチンコ機Pに正対した遊技者から見て遊技盤14の右側に位置している。
【0026】
遊技盤14には、レール16,17が固定されている。レール17は、遊技盤14の下端から左上方に向けて延在するとともに、遊技盤14の鉛直方向の略中央から右上方に向けて延在する。このレール17は、遊技盤14の下部から上部まで、図示のように湾曲して延在しており、遊技領域15を囲繞形成する。また、レール16は、遊技盤14の左側であって、レール17よりも遊技領域15の内側に設けられている。レール16,17が遊技領域15の左側にあることから、左打ち領域15aには、所定の発射強度未満で発射された遊技球が進入し、右打ち領域15bには、所定の発射強度以上で発射された遊技球が進入することとなる。
【0027】
また、遊技盤14には、厚み方向(パチンコ機Pの前後方向)に貫通する貫通孔14aが形成されている。遊技盤14の背面には、液晶表示装置からなる演出表示装置14bが設けられている。演出表示装置14bは、演出用の画像が表示される演出表示部140bを備えている。遊技者は、貫通孔14aを介して、演出表示部140bに表示される画像を視認可能となる。演出表示部140bには、不図示の複数の演出図柄が変動表示され、これら複数の演出図柄の停止表示態様によって大当たり抽選の結果が遊技者に報知される変動演出が実行されることとなる。なお、遊技盤14の正面には、遊技領域15を流下、転動する遊技球が貫通孔14aに脱落しないように、貫通孔14aの全周に亘って透明板3a側に起立する壁部が設けられている。
【0028】
また、遊技領域15には、左打ち領域15aと右打ち領域15bとを繋ぐ上部通路15cが含まれている。この上部通路15cは、貫通孔14aの上方に設けられている。
【0029】
また、遊技領域15には、遊技球が入球可能な一般入賞口20、第1始動口21が設けられており、これら一般入賞口20、第1始動口21に遊技球が入球すると、それぞれ所定個数の賞球が遊技者に付与される。なお、賞球数は1個以上であれば何個でもよく、また、一般入賞口20、第1始動口21のそれぞれで付与する賞球数を異ならせてもよいし、同じ賞球数に設定してもよい。
【0030】
また、第1始動口21内には第1始動領域が設けられている。この第1始動領域には、遊技球の通過を検出する第1始動口検出スイッチ(図6参照)が配設されている。そして、第1始動口21に遊技球が入球して第1始動領域に遊技球が進入すると、第1始動口検出スイッチから検出信号が出力されたことに基づいて、予め設けられた複数の特別図柄の中からいずれか1の特別図柄を決定するための抽選が行われる。各特別図柄には、遊技者にとって有利な大当たり遊技の実行可否や、以後の遊技状態をどのような遊技状態にするかった種々の遊技利益が対応付けられている。したがって、遊技者は、第1始動口21に遊技球が入球すると、所定の賞球を獲得するのと同時に、種々の遊技利益を受ける権利獲得の機会を獲得することとなる。
【0031】
また、遊技領域15の右打ち領域15bには、遊技球が入球可能な大入賞口22が設けられている。この大入賞口22には、開閉扉22aが開閉可能に設けられており、通常、開閉扉22aが大入賞口22を閉鎖して、大入賞口22への遊技球の入球が不可能となっている。これに対して、大当たり遊技が実行されると、開閉扉22aが開放されて、大入賞口22への遊技球の入球が可能となる。そして、大入賞口22に遊技球が入球すると、所定の賞球が遊技者に付与される。
【0032】
さらに、遊技領域15の右打ち領域15bには、遊技球が入球可能な第2始動口23、可動片24、ゲート25が設けられている。第2始動口23内には、第2始動領域が設けられている。この第2始動領域には、遊技球の通過を検出する第2始動口検出スイッチ(図6参照)が配設されている。そして、第2始動領域に遊技球が進入すると、第2始動口検出スイッチから検出信号が出力されたことに基づいて、予め設けられた複数の特別図柄の中からいずれか1の特別図柄を決定するための抽選が行われる。可動片24は第2始動口23の形状に合わせて板状に形成されており、可動片24の状態に応じて、第2始動口23を開閉可能に設けられている。具体的には、遊技盤14の後方にスライドして第2始動口23を所定期間だけ開放する開放位置、または所定期間が経過すると開放位置から遊技盤の14の前方にスライドして第2始動口23を閉鎖する閉鎖位置にスライド可能に構成されている。すなわち、可動片24が開放位置に変位している場合には、第2始動口23への遊技球の入球が可能となる一方、可動片24が閉鎖位置に変位している場合には、第2始動口23への遊技球の入球が不可能となる。なお、第2始動口23に1個の遊技球が入球した場合には、1個の賞球が付与されるようになっている。
【0033】
ゲート25内の進入領域を遊技球が通過すると、普通図柄の抽選が行われ、この抽選に当選すると、可動片24が所定の態様で上記した開放位置または閉鎖位置に変位するように制御される。第2始動口23および可動片24の周辺の構成については、詳細に後述する。
【0034】
なお、遊技領域15の最下部には、一般入賞口20、第1始動口21、大入賞口22、第2始動口23のいずれにも入球しなかった遊技球を、遊技領域15から遊技盤14の背面側に排出する排出口26が設けられている。
【0035】
また、遊技盤14の上部中央には、可動役物8cが設けられている。可動役物8cは、遊技の進行に応じて、上下方向に移動可能に構成されており、演出を盛り上げる役割を担っている。
【0036】
また、図示を省略するが、遊技盤14には、遊技領域15の外方であって、かつ、遊技者が視認可能な位置に、第1特別図柄表示器、第2特別図柄表示器、第1特別図柄保留表示器、第2特別図柄保留表示器、普通図柄表示器、普通図柄保留表示器、右打ち報知表示器、および左打ち報知表示器が設けられている。これら各表示器は、遊技に係る種々の状況を表示するための装置である。なお、このパチンコ機Pにおいては、後述する通常遊技状態(低確モード)において、遊技者が右打ち領域15bに遊技球を発射した場合に左打ち報知表示器が点灯し、演出表示装置14bにて例えば「左打ちに戻して下さい!」といったように遊技者に左打ちを促す演出が実行されるようになっている。
【0037】
図5に示すように、このパチンコ機Pの背面側には、遊技に関する主要な処理を行う主制御基板18と、主制御基板18からの指令を受けて演出表示装置14b、可動役物8cおよび意匠ユニット35を制御したり、意匠ユニット35を構成する各意匠部材31~34が遊技盤に対応しているか否かの判断を行う副制御基板19と、賞球を付与する賞球付与装置40と、主制御基板18からの指令を受けて賞球付与装置40を制御する付与制御基板50と、操作ハンドル3bの回転操作量に応じて発射装置の作動を制御する発射制御基板60と、大当たり回数等の各種情報を遊技場のホールコンピュータに出力する遊技情報出力端子板70等が設けられている。
【0038】
図6は、遊技の進行を制御する制御手段の内部構成を示すブロック図である。主制御基板18は遊技の基本動作を制御する。この主制御基板18は、メインCPU18a、メインROM18b、メインRAM18cを備えている。メインCPU18aは、各検出スイッチやタイマからの入力信号に基づいて、メインROM18bに格納されたプログラムを読み出して演算処理を行うとともに、各装置や表示器を直接制御したり、あるいは演算処理の結果に応じて他の基板にコマンドを送信したりする。メインRAM18cは、メインCPU18aの演算処理時におけるデータのワークエリアとして機能する。
【0039】
主制御基板18には、一般入賞口20に遊技球が入球したことを検出する一般入賞口検出スイッチ118s、第1始動口21に遊技球が入球したことを検出する第1始動口検出スイッチ120s、第2始動口23に遊技球が入球したことを検出する第2始動口検出スイッチ122s、ゲート25を遊技球が通過したことを検出するゲート検出スイッチ124s、大入賞口22に遊技球が入球したことを検出する大入賞口検出スイッチ126sが接続されており、これら各検出スイッチから主制御基板18に検出信号が入力されるようになっている。
【0040】
また、主制御基板18には、第2始動口23の可動片24を作動する普通電動役物ソレノイド122cと、大入賞口22の開閉扉22aを作動する大入賞口ソレノイド126cと、が接続されており、主制御基板18によって、第2始動口23および大入賞口22の開閉制御がなされるようになっている。
【0041】
さらに、主制御基板18には、第1特別図柄表示器160、第2特別図柄表示器162、第1特別図柄保留表示器164、第2特別図柄保留表示器166、普通図柄表示器168、普通図柄保留表示器170、右打ち報知表示器172、左打ち報知表示器174が接続されており、主制御基板18によって、これら各表示器の表示制御がなされるようになっている。
【0042】
また、主制御基板18には、付与制御基板50および副制御基板19が接続されている。付与制御基板50は、遊技球を発射させるための制御、および、賞球を付与すための制御を行う。この付与制御基板50も、CPU、ROM、RAMを備えており、主制御基板18に対して双方向に通信可能に接続されている。この付与制御基板50には遊技情報出力端子板70が接続されており、主制御基板18から出力される遊技進行上の種々の情報が、付与制御基板50および遊技情報出力端子板70を介して、遊技店のホールコンピュータ等に出力されることとなる。
【0043】
また、付与制御基板50には、遊技球の発射制御を行う発射制御回路50aが設けられている。付与制御基板50は、操作ハンドル3bに設けられ、当該操作ハンドル3bに遊技者が触れたことを検出するタッチセンサ112sと、操作ハンドル3bの操作角度を検出する操作ボリューム112aと、が接続されている。そして、タッチセンサ112sおよび操作ボリューム112aから信号が入力されると、発射制御回路21aにおいて、発射装置に設けられた発射用ソレノイド112cを通電して遊技球を発射させる制御がなされる。
【0044】
副制御基板19は、主に遊技中や待機中等の各演出を制御する。この副制御基板19は、サブCPU19a、サブROM19b、サブRAM19cを備えており、主制御基板18に対して、不正防止の観点により、当該主制御基板18から副制御基板19への一方向に通信可能に接続されている。サブCPU19aは、主制御基板18から送信されたコマンドやタイマからの入力信号等に基づいて、サブROM19bに格納されたプログラムを読み出して演算処理を行うとともに、演出を実行制御する。このとき、サブRAM19cは、サブCPU19aの演算処理時におけるデータのワークエリアとして機能する。
【0045】
具体的には、副制御基板19は、演出表示装置14bに画像を表示させる画像表示制御を行う。サブROM19bには、演出表示装置14bに表示される図柄や背景等の画像データが多数格納されており、サブCPU19aが、画像データをサブROM19bから不図示のVRAMに読み出して、演出表示装置14bにおける画像表示を制御する。また、副制御基板19は、演出ボタン32aまたは選択ボタン32bが押下されたことに基づいて行われる押下演出を制御したり、可動役物8cを駆動制御したり、意匠ユニット35を点灯制御したり、スピーカ31aから楽曲を出力させる楽曲出力制御を行う。なお、図示は省略しているが、副制御基板19と意匠ユニット35とは、前扉3および内枠2を介して接続されている。
【0046】
図7に示すように、副制御基板19は、各意匠部材31~34の識別情報を識別する識別実行手段19dを有している。この識別実行手段19dは、各意匠部材31~34に設けられた識別情報を各意匠部材31~34から取得し、取得した識別情報に基づいて、遊技盤14に適切に対応する各意匠部材31~34が接続されているか否かを判断する。なお、識別実行手段19dは、サブROM19bに格納されたプログラムおよびサブRAM19cと協働して識別処理を実行する。このサブROM19bには、各意匠部材31~34に設けられた識別情報に関する判断を行う際に用いられる識別テーブルが設けられており、この識別テーブルには、遊技盤14に対応する正規の識別情報が記憶されている。
【0047】
次に、意匠ユニット35と副制御基板19との電気的な接続について説明する。図7に示すように、意匠ユニット35は、前扉3に設けられた中継基板3Aおよび内枠2に設けられた中継基板2Aを経由して、副制御基板19の識別実行手段19dに電気的に接続されている。その際、意匠ユニット35と前扉3の中継基板3A、前扉3の中継基板3Aと内枠2の中継基板2A、および内枠2の中継基板2Aと副制御基板19はそれぞれ、ハーネス(電線の束)によって電気的に接続されている。
【0048】
意匠ユニット35を構成する各意匠部材31~34は、識別情報が設定された識別情報設定部31B~34Bと、中継基板31A~34Aと、を有している。識別情報は、パチンコ機Pの機種を示す情報であり、パチンコ機Pの機種毎に固有に割り当てられている。また、識別情報は、8ビットで構成されるので256通りの選択肢があり、この中から何れかの1つの値が予め決定されている。なお、識別情報は8ビットで構成されることに限られず、例えば4ビットで構成されてもよいし、16ビットで構成されてもよい。
【0049】
各意匠部材31~34内においては、識別情報設定部31B~34Bと対応する中継基板31A~34Aとが電気的に接続されている。例えば上意匠部材31内においては、識別情報設定部31Bと、中継基板31Aとが電気的に接続されている。他の意匠部材32~34内においても同様な電気的な接続が行われている。
【0050】
また、各意匠部材31~34は、下意匠部材32を経由して、前扉3の中継基板3Aに電気的に接続されている。具体的には、前扉3の中継基板3Aには、意匠ユニット35のうち下意匠部材32の中継基板32Aがハーネスを介して電気的に接続されている。そして、この下意匠部材32の中継基板32Aに左意匠部材33の中継基板33Aおよび右意匠部材34の中継基板34Aがそれぞれ電気的に接続されており、この右意匠部材34の中継基板34Aに上意匠部材31の中継基板31Aが電気的に接続されている。このようにして、各意匠部材31~34の識別情報設定部31B~34Bが副制御基板19の識別実行手段19dと電気的に接続されるようになっている。そして、各意匠部材31~34が前扉3に取り付けられたときに、各意匠部材31~34から識別情報が副制御基板19の識別実行手段19dに送信され、送信された識別情報に基づいて各意匠部材31~34が適切であるか否か判断されるようになっている。
【0051】
具体的には、識別実行手段19dは、サブROM19bから識別テーブルを読み出し、識別テーブルにおける正規の識別情報と、各意匠部材31~34から取得した識別情報(比較対象の識別情報)とを比較する。そして、比較対象の識別情報が正規の識別情報に一致していた場合には、識別実行手段19dは、接続されている各意匠部材31~34が遊技盤14に適切に対応するものであると判断する。一方、比較対象の識別情報が正規の識別情報に一致していなかった場合には、識別実行手段19dは、接続されている各意匠部材31~34が遊技盤14に適切に対応するものでないと判断する。このようにして、各意匠部材31~34の識別判断が実行されるようになっている。
【0052】
なお、前扉3に各意匠部材31~34が取り付けられた場合に、ホールの店員に識別情報の判断の結果を報知するようにしてもよい。例えば、接続されている各意匠部材31~34が遊技盤14に適切に対応するものであると判断した場合には、演出表示装置14b等で「正しい意匠部材が接続されています。」という表示を行い、接続されている各意匠部材31~34が遊技盤14に適切に対応するものでないと判断した場合には、演出表示装置14b等で「正しい意匠部材が接続されていません。」という表示を行うようにしてもよい。
【0053】
次に、第1実施形態例のパチンコ機Pの主制御基板18のメインROM18bに記憶されている遊技の進行に係る各種テーブルについて説明する。
【0054】
主制御基板18のメインROM18bには、特別図柄の停止結果を大当たりまたは小当たりとするか否かを判定する際に参照する大当たり決定乱数判定テーブルが記憶されている。この大当たり決定乱数判定テーブルは、図8に示すように、第1特図用であって低確率時において大当たり決定乱数を判定する低確率判定テーブル(図8(a)参照)と、特図2用であって低確率時において大当たり決定乱数を判定する低確率判定テーブル(図8(b)参照)と、第1特図用であって高確率時において大当たり決定乱数を判定する高確率判定テーブル(図8(c)参照)と、特図2用であって高確率時において大当たり決定乱数を判定する高確率判定テーブル(図8(d)参照)と、とから構成されている。
【0055】
大当たり決定乱数は、第1始動口21または第2始動口23に遊技球が入球したことを契機として(第1始動口検出スイッチ120sからの検出信号または第2始動口検出スイッチ122sからの検出信号が主制御基板18に入力されたタイミングで)取得される。なお、大当たり決定乱数は主制御基板18内に設けられた乱数発生器等(図示せず)にて生成されるハードウェア乱数であり、周期的に入力されるロック信号に基づいてカウンタの値を所定の範囲(例えば、0~65535までの範囲)で1ずつ更新させることにより生成される。
【0056】
ここで、図8(c),(d)に示す高確率判定テーブルは、図8(a),(b)に示す低確率判定テーブルと比べて大当たりの当選確率がほぼ同じになっており、具体的には、高確率判定テーブルでは、大当たりの当選確率はおよそ1/99.75に設定されており(図8(c),(d))、低確率判定テーブルでは、大当たりの当選確率はおよそ1/99.90(所謂、甘デジスペック)に設定されている(図8(a),(b)参照)。
【0057】
また、小当たりの当選確率は、図8(a),(b)に示すように、第1特図と第2特図とで異なっている。しかしながら、図8(a),(c)および図8(b),(d)に示すように、同一の特図では、低確率判定テーブルと高確率判定テーブルとにおいて、変わらないものとなっている。具体的には、第1特図では、低確率判定テーブルおよび高確率判定テーブル共に、小当たりの当選確率が1/65536に設定されており(図8(a),(c)参照)、第2特図では、低確率判定テーブルおよび高確率判定テーブル共に、小当たりの当選確率がおよそ1/15.50に設定されている(図8(b),(d))。このように、第1特図では低確率判定テーブルおよび高確率判定テーブルの何れにおいても小当たりの当選確率は極めて低くなるように設定されている。一方で、第2特図では低確率判定テーブルおよび高確率判定テーブルの何れであっても小当たりの当選確率は第1特図の場合に比べて極めて高くなるように設定されている。しかも、小当たりの当選確率がおよそ1/15.50に設定されているとともに、大当たりの当選確率が1/99.90に設定されていることを鑑みると、第2特図では大当りよりも小当たりの方に当選し易く、かつ小当たり自体にも比較的当選し易い構成となっている。なお、第1実施形態例において、小当たりは、大入賞口22の開閉扉22aが高速で開閉する当たりであるが、賞球が獲得可能な当たりとなっている。また、小当たりは、当該小当たりの当選前後において遊技状態が変化しない当たりでもある。
【0058】
なお、説明の便宜上、これ以降の説明において、低確率判定テーブルを参照して第1特図について大当たり(または小当たり)の当否に係る抽選が行われる遊技状態、または低確率判定テーブルを参照して第2特図について大当たり(または小当たり)の当否に係る抽選が行われる遊技状態のことを「低確率遊技状態」という。また、高確率判定テーブルを参照して第1特図について大当たり(または小当たり)の当否に係る抽選が行われる遊技状態、または高確率判定テーブルを参照して第2特図について大当たり(または小当たり)の当否に係る抽選が行われる遊技状態のことを「高確率遊技状態」という。また、後述する、非時短用判定テーブル(図10(a)参照)を参照して普通図柄に係る抽選が行われる遊技状態のことを「非時短遊技状態」といい、時短用判定テーブル(図10(b)参照)を参照して普通図柄に係る抽選が行われる遊技状態のことを「時短遊技状態」という。
【0059】
また、主制御基板18のメインROM18bには、特別図柄の種別を決定するための当たり図柄乱数判定テーブルが記憶されている。この当たり図柄乱数判定テーブルは、上述した図8(a)~(d)において大当たりとなる大当たり決定乱数を取得した場合に参照される大当たり用の当たり図柄乱数判定テーブルと、図8(a)~(d)において小当たりとなる大当たり決定乱数を取得した場合に参照される小当たり用の当たり図柄乱数判定テーブルと、から構成されている。なお、図8(a)~(d)においてハズレとなる大当たり決定乱数を取得した場合には、当たり図柄乱数判定テーブルによる判定は行われない。
【0060】
当たり図柄乱数は、上述した大当たり決定乱数と同様に、第1始動口21または第2始動口23に遊技球が入賞したことを契機として取得される。また、上述した大当たり決定乱数が大当たりまたは小当たりに当選しているか否か(特別図柄の当否)を決定するものであるのに対して、当たり図柄乱数は特別図柄の種別を決定するためのものである。なお、当たり図柄乱数は主制御基板18内にて生成されるソフトウェア乱数であり、周期的(例えば4ミリ秒毎)に入力される割り込み信号に基づいてループカウンタの値を所定の範囲(例えば、0~99までの範囲)で1ずつ更新させることにより生成される。
【0061】
大当たり用の当たり図柄乱数判定テーブルにおいては、特別図柄の種別として、複数種類の特別図柄が予め決められている。上述した図8(a)~(d)において、大当りとなる大当たり決定乱数を取得した場合には、このとき同時に取得された1つの当たり図柄乱数値により、複数種類の特別図柄のうちから何れか1つの特別図柄の種別が決定されることになる。
【0062】
第1特図および第2特図の場合の大当たり用の当たり図柄乱数判定テーブルにおいては、取得された当たり図柄乱数の値に応じて、複数種類の特別図柄の何れかが対応付けられている。そして、対応する特別図柄の種別によって、大当たりの種別、大当たり遊技のラウンド数、大当たり遊技終了後の電サポ回数、大当たり遊技における大入賞口22の開閉扉22aの開放パターンが決定されることになる。例えば大当たりの種別として、大当たり遊技終了後に遊技状態が高確率状態に設定される所謂確変当たり、および大当たり遊技終了後に遊技状態が低確率状態に設定される所謂通常当たりが設けられており、大当たり遊技のラウンド数として、例えば16R、4R、2R等が設けられている。また、大当たり遊技後の電サポ回数として、例えば0回、50回、100回、1000回等が設定可能になっており、開閉扉22aの開放パターンとして、開閉扉22aの開放回数、開放時間および閉鎖時間(インターバル時間)が設定可能になっている。なお、詳細な説明は省略するが、第1実施形態例では、第1特図および第2特図において、決定され得る特別図柄の種別が異なっており、大当たりのラウンド数が、第2特図の方が第1特図よりも有利になるように大当たり用当たり図柄乱数判定テーブルが設けられている。なお、上記したラウンド数、電サポ回数、開放パターンは、パチンコ機Pの遊技性に応じて適宜変更可能である。
【0063】
小当たり用の当たり図柄乱数判定テーブルにおいては、図9に示すように、特別図柄の種別として、特別図柄A(第1特別図柄表示装置に表示される特別図柄の組合せは、「小当たりA図柄」が対応付けられている。)と、特別図柄B(第2特別図柄表示装置に表示される特別図柄の組み合わせは、「小当たりB図柄」が対応付けられている。)と、の2種類の特別図柄が予め決められている。上述した図8(a)~(d)において、小当りとなる大当たり決定乱数を取得した場合には、このとき同時に取得された1つの当たり図柄乱数値により、特別図柄A(第1特図の場合)または特別図柄B(特図2の場合)の何れか1つの特別図柄の種別が決定される。
【0064】
特別図柄Aが決定された場合には、図9(a)に示すように、大入賞口22の開閉扉22aの開放態様がショート開放となる。このショート開放では、大入賞口22の開閉扉22aが、0.1秒間だけ開放した後に2.0秒間だけ閉鎖し、再び0.1秒間だけ開放してから閉鎖するように制御される。一方、特別図柄Bが決定された場合には、図9(b)に示すように、大入賞口22の開閉扉22aの開放態様がロング開放となる。このロング開放では、大入賞口22の開閉扉22aが1.7秒間だけ1回開放してから閉鎖するように制御される。つまり、第2特図において小当たりに当選した場合には、第1特図で小当たりに当選した場合に比べて、開閉扉22aが十分に長い時間開放されることになり、大入賞口22に遊技球を入球させて賞球を得ることが十分に可能になっている。さらに、上述したように、第2特図における小当たりの当選確率は1/15.50であるため、第2特図による小当たりに複数回当選することにより多くの賞球付与可能となっている。
【0065】
第1実施形態例に係るパチンコ機Pは、遊技状態として、「低確モード」、「時短モード」、「確変1モード」、「確変2モード」の4つの状態が予め用意されている。「低確モード」は、低確率遊技状態かつ非時短遊技状態(「低確・非時短」)から成り、「時短モード」は、低確率遊技状態かつ時短遊技状態(「低確・時短」)から成り、「確変1モード」は、高確率遊技状態かつ非時短遊技状態(「高確・非時短」)から成り、「確変2モード」は、高確率遊技状態かつ時短遊技状態(「高確・時短」)から成るものである。
【0066】
第1実施形態例では、大当たり遊技の終了後から、当該大当たり遊技が行われる契機となった特別図柄(第1特図または第2特図)の種別に応じて、高確/低確の何れか、時短/非時短の何れかが決まるものとなっている。さらに、高確の場合には高確率遊技状態が継続する回数(高確率遊技回数)が決まり、時短の場合には時短遊技状態が継続する回数(時短遊技回数)が決まるものとなっている。このとき決まった高確率遊技回数は、主制御基板18のメインRAM18cの高確率遊技回数記憶領域に記憶され、時短遊技回数は、同メインRAM18cの時短遊技回数記憶領域に記憶される。なお、このパチンコ機Pにおいては、大当たり遊技の終了後に設定される遊技状態が確変1モードとなることを目的として遊技者は遊技を進行させ、確変1モードになった場合には、大当たりに当選するまでの間、小当たりによって付与される遊技球を増加させる遊技を実行可能となっている。
【0067】
また、主制御基板18のメインROM18bには、特別図柄の変動パターンを決定するための各種判定テーブルが記憶されている。具体的には、各種判定テーブルとして、リーチグループ決定乱数判定テーブル、リーチモード決定乱数判定テーブル、変動パターン乱数判定テーブル、および変動時間決定テーブルが記憶されている。
【0068】
変動演出パターン(変動態様や変動時間)を決定するための各種乱数(リーチグループ決定乱数、リーチモード決定乱数、変動パターン乱数)が、上述した大当たり決定乱数、当たり図柄乱数と同様に、第1始動口21または第2始動口23に遊技球が入賞したことを契機として取得される。また、各始動口21,23に入賞した場合には、それぞれ1つのリーチグループ決定乱数、リーチモード決定乱数、変動パターン乱数が取得される。なお、これらの各種乱数(リーチグループ決定乱数、リーチモード決定乱数、変動パターン乱数)は主制御基板18内にて生成されるソフトウェア乱数である。リーチグループ決定乱数は、周期的(例えば4ミリ秒毎)に入力される割り込み信号に基づいてループカウンタの値を所定の範囲(例えば、0~10006までの範囲)で1ずつ更新させることにより生成される。また、リーチモード決定乱数は、周期的(例えば4ミリ秒毎)に入力される割り込み信号に基づいてループカウンタの値を所定の範囲(例えば、0~250までの範囲)で1ずつ更新させることにより生成される。また、変動パターン乱数は、周期的(例えば4ミリ秒毎)に入力される割り込み信号に基づいてループカウンタの値を所定の範囲(例えば、0~249までの範囲)で1ずつ更新させることにより生成される。
【0069】
リーチグループ決定乱数判定テーブルは、リーチグループ決定乱数を判定するためのテーブルであって、大当たりの抽選の結果がハズレであった場合に、当該結果を報知する変動演出パターン(変動態様や変動時間)を決定するにあたって参照されるテーブルである。リーチグループ決定乱数判定テーブルと、リーチグループ決定乱数とにより、変動演出パターンの決定に用いられるリーチモード決定乱数判定テーブルが属するグループの種別が決定される。なお、大当たりの抽選の結果が大当たりであった場合には、グループの種別を決定することなく、リーチモード決定乱数判定テーブルが決定されるようになっている。
【0070】
リーチグループ決定乱数判定テーブルは、遊技状態ごと、始動口の種別ごと、および、主制御基板18のメインRAM18cの保留数記憶領域(第1特別図柄保留数記憶領域、第2特別図柄保留数記憶領域)に記憶されている保留の個数(保留数)ごとに複数設けられている。
【0071】
第1始動口21または第2始動口23に遊技球が入賞すると、0~10006の数値範囲内で1個のリーチグループ決定乱数が取得される。そして、上述の大当たりの抽選によってハズレとなった場合に、当該大当たりの抽選を行う時点の遊技状態、始動口の種別、および、保留数に応じて、リーチグループ決定乱数判定テーブル(不図示)が選択され、取得されたリーチグループ決定乱数と選択されたリーチグループ決定乱数判定テーブルとに基づいて、グループの種別が決定される。
【0072】
リーチモード決定乱数判定テーブルは、変動演出パターン(変動態様や変動時間)の決定に用いられる変動モード番号を決定するとともに、後述する変動パターン番号の決定に用いられる変動パターン乱数判定テーブルを決定するにあたって参照されるテーブルである。リーチモード決定乱数判定テーブルは、大当たりの抽選の結果がハズレであった場合に参照されるハズレ用リーチモード決定乱数判定テーブルと、大当たりの抽選の結果が大当たりであった場合に参照される大当たり用リーチモード決定乱数判定テーブルと、大当たりの抽選の結果が小当たりであった場合に参照される小当たり用リーチモード決定乱数判定テーブルを備えている。ハズレ用リーチモード決定乱数判定テーブルは、上述のように決定されたグループの種別ごとに、複数設けられている。また、大当たり用リーチモード決定乱数判定テーブルは、大当たりの抽選時(すなわち、大当たりの当選時)の遊技状態ごと、および、大当たりとなった場合に決定された大当たり図柄の種別ごとに複数設けられている。また、小当たり用リーチモード決定乱数判定テーブルは、小当たりの当選時の遊技状態ごと、および、小当たりとなった場合に決定された小当たり図柄の種別ごとに複数設けられている。
【0073】
第1始動口21または第2始動口23へ遊技球が入賞すると、0~250の数値内で1個のリーチモード決定乱数が取得される。この場合、大当たりに当選しなかったとき、上述したグループの種別の抽選によりグループが決定された場合に、この決定されたグループの種別に対応するハズレ用リーチモード決定乱数判定テーブルが選択され、取得されたリーチモード決定乱数と選択されたハズレ用リーチモード決定乱数判定テーブルとに基づいて、変動モード番号、および、変動パターン乱数判定テーブルが決定される。一方、大当たりに当選したとき、取得されたリーチモード決定乱数と大当たり用リーチモード決定乱数判定テーブルとに基づいて、変動モード番号、および変動パターン乱数判定テーブルが選択される。また、同様に、小当たりに当選したとき、取得されたリーチモード決定乱数と小当たり用リーチモード決定乱数判定テーブルとに基づいて、変動モード番号、および変動パターン乱数判定テーブルが選択される。
【0074】
なお、ここで決定される変動モード番号には、上述した制御コマンドが副制御基板19に送信されたときに、演出表示装置14bにおける演出図柄の変動開始からリーチ成立/あるいはリーチ成立せずにハズレ停止するまでの変動態様が対応づけられており、この変動モード番号が決まると、演出表示装置14bにおいて演出図柄の変動が開始してからリーチが成立するまでの変動態様、あるいは演出図柄の変動が開始してからリーチが成立せずにハズレ図柄が停止するまでの変動態様が決まることになる。ここでいう、演出図柄の変動が開始してからの変動態様とは、例えば、演出図柄の変動の仕方だけでなく、ステップアップ演出や疑似連演出の実行の有無、背景変化等を含むものである。
【0075】
変動パターン決定乱数判定テーブルは、変動演出パターン(変動態様や変動時間)の決定に用いられる変動パターン番号を決定するために参照されるテーブルであり、多数設けられている。変動パターン乱数判定テーブルは、大当たりの抽選の結果がハズレであった場合に決定される変動テーブル、および大当たりの抽選の結果が大当たりまたは小当たりであった場合に決定される変動テーブルによって構成されている。
【0076】
第1始動口21または第2始動口23へ遊技球が入球すると、0~249の数値範囲内で1個の変動パターン乱数が取得される。この変動パターン乱数と、上述したようにリーチグループ決定乱数またはリーチモード決定乱数により決定された変動パターン乱数判定テーブルとに基づいて、変動パターン番号が決定される。
【0077】
なお、ここで決定される変動パターン番号には、上述した制御コマンドが副制御基板19に送信されたときに、演出表示装置14bにおける演出図柄のリーチ成立後からの変動態様が対応づけられており、この変動パターン番号が決まると、演出表示装置14bにおいて、リーチ成立以降の変動態様が決まることとなる。ここでいう、リーチ成立以降の変動態様とは、例えば、ノーマルリーチや、スーパーリーチに発展する、あるいはリーチが一旦ハズレでから再始動する逆転リーチ等を経由して大当たりとなる組み合わせまたはハズレとなる組み合わせにて演出図柄が停止するまでの変動態様のことをいう。
【0078】
以上のように、第1実施形態例に係るパチンコ機Pでは、変動開始時に、上述のような大当たりの抽選が行われるとともに、大当たりの抽選が行われると、大当たりの抽選の結果、大当たりの抽選時の遊技状態および保留数等に応じて、変動モード番号および変動パターン番号が決定される。
【0079】
そして、変動モード番号および変動パターン番号は、変動演出パターンを特定するためのものである。第1実施形態例では、変動モード番号および変動パターン番号により、変動演出パターンの態様が定められ、また、変動モード番号および変動パターン番号の組み合わせに対応して、所定の変動時間が定められるようになっている。
【0080】
変動時間決定テーブルは、特別図柄の変動時間を決定するにあたって参照されるテーブルである。上記のように、変動モード番号が決定されると、変動時間1決定テーブルにしたがって変動時間1が決定される。この変動時間1決定テーブルによれば、変動モード番号ごとに変動時間1が対応づけられており、決定された変動モード番号に応じて、対応する変動時間1が決定される。
【0081】
また、上記のように、変動パターン番号が決定されると、変動時間2決定テーブルにしたがって変動時間2が決定される。この変動時間2決定テーブルによれば、変動パターン番号ごとに変動時間2が対応づけられており、決定された変動時間1、変動時間2の合計時間が、大当たりの抽選の結果が報知されるまでの時間、すなわち、変動演出に要する時間(「変動時間」という)となる。
【0082】
第1実施形態例のパチンコ機Pにおいては、遊技状態が低確モード(低確率遊技状態かつ非時短遊技状態(通常遊技状態))の場合には、第2特図に係る変動時間が長くなるように設定されている。この場合、通常遊技状態における第2特図による大当たりの抽選に基づいて決定された変動モード番号に対応する時間、または変動パターン番号に対応する時間を長い時間に設定することにより、これらの合計である変動時間を長い時間となるようにしている。例えば、上記変動モード番号に対応する時間を5分に設定し、上記変動パターンに対応する時間も5分に設定することにより、通常遊技状態における第2特図に係る変動時間を10分に設定してもよい。これにより、通常遊技状態において、遊技者が右打ち領域15bに向かって遊技球を発射することを抑制している。また、時短遊技状態の場合には、詳細な説明は省略するが、大当たりの抽選の結果に関わらず、変動時間が0.5秒に設定されるようになっている。すなわち、0.5秒という高速で1回の変動表示が終了することとなるため、時短遊技状態では、非時短遊技状態に比べて、より多くの回数の遊技を行うことができる。
【0083】
以上のようにして、変動モード番号が決定されると、当該決定された変動モード番号に対応する変動モードコマンドが副制御基板19に送信され、変動パターン番号が決定されると、当該決定された変動パターン番号に対応する変動パターンコマンドが副制御基板19に送信される。副制御基板19においては、受信した変動モードコマンドに基づいて、主に変動演出の前半(リーチ成立前まで)の態様が決定され、受信した変動パターンコマンドに基づいて、主に変動演出の後半(リーチ成立後から演出図柄の変動停止まで)の態様が決定されることになる。
【0084】
また、主制御基板18のメインROM18bには、当たり決定乱数判定テーブル、普通図柄変動時間決定テーブル、および第2始動口23の可動片24の開閉制御パターンテーブルが記憶されている。
【0085】
遊技球がゲート25を通過すると、第2始動口23の可動片24を通電制御するか否かが対応づけられた普通図柄の判定処理(以下、「普図抽選」という)が行われる。具体的に、当たり決定乱数は、ゲート25に遊技球が通過したことを契機に(ゲート検出スイッチ124sからの検出信号が主制御基板18に入力されたタイミングで)、1つの当たり決定乱数が取得される。
【0086】
この当たり決定乱数は主制御基板18内に設けられた乱数発生器等(図示しない)にて生成されるハードウェア乱数である。このハードウェア乱数は、周期的に入力されるクロック信号に基づいてカウンタの値を所定の範囲(例えば、0~65535までの範囲)で1ずつ更新させることにより生成される。
【0087】
非時短遊技状態において普図抽選を開始する場合には、図10(a)に示す非時短用判定テーブルが参照される。この非時短用判定テーブルによれば、当たり決定乱数が0~10922であった場合に、普通図柄の種別として当たり図柄が決定され、それ以外の当たり決定乱数(10923~65535)であった場合に、普通図柄の種別としてハズレ図柄が決定される。したがって、非時短遊技状態において当たり図柄が決定される確率、すなわち、当選確率はおよそ1/6となる。この普図抽選において当たり0図柄が決定されると、第2始動口23の可動片24が開放位置に制御され、ハズレ図柄が決定された場合には、可動片24が閉鎖位置に維持される。
【0088】
また、時短遊技状態において普図抽選を開始する場合には、図10(b)に示す時短用判定テーブルが参照される。この時短用判定テーブルによれば、当たり決定乱数が0~21845であった場合に、普通図柄の種別として当たり1図柄が決定され、当たり決定乱数が21846~43691であった場合に、普通図柄の種別として当たり2図柄が決定され、当たり決定乱数が43692~65535であった場合に、普通図柄の種別として当たり3図柄が決定される。したがって、時短遊技状態において当たり図柄が決定される確率、すなわち、当選確率は1/1.0となる。このため、時短用判定テーブルを参照して抽選が行われると、いずれかの当たり図柄に当選することとなる。すなわち、時短遊技状態では、第2始動口23の可動片24が開放位置に制御される割合が、非時短遊技状態に比べて大幅に増加することとなる。
【0089】
上記のように普図抽選が行われると、普通図柄の変動時間が決定される。普通図柄変動時間決定テーブルは、普図抽選によって当たり図柄またはハズレ図柄が決定されたときに、当該普通図柄の変動時間を決定する際に参照されるものである。この普通図柄変動時間決定テーブルによれば、図11に示すように、遊技状態が非時短遊技状態に設定されている場合には、変動時間が1.0秒に決定され、遊技状態が時短遊技状態に設定されている場合には、変動時間が0.3秒に決定される。このようにして変動時間が決定されると、当該決定された時間にわたって普通図柄表示器168(図6参照)が変動表示(点滅表示)される。そして、当たり図柄が決定された場合には、普通図柄表示器168が点灯し、ハズレ図柄が決定された場合には、普通図柄表示器168が消灯する。なお、普通図柄表示器168の点灯態様は、普通図柄の種別が当たり0図柄の場合には、「青」に点灯し、普通図柄の種別が当たり1図柄の場合には、「黄」に点灯し、普通図柄の種別が当たり2図柄の場合には、「緑」に点灯し、普通図柄の種別が当たり1図柄の場合には、「赤」に点灯する。
【0090】
そして、普図抽選によって当たり図柄が決定されるとともに、普通図柄表示器168が点灯した場合には図12に示す開閉制御パターンテーブルを参照して、第2始動口23の可動片24が開閉制御される。この開閉制御パターンテーブルによれば、開放回数(可動片24が開放位置に制御される回数)、開放時間(普通電動役物ソレノイド122cの通電時間、すなわち、可動片24が開放位置に制御される時間)、閉鎖時間(普通電動役物ソレノイド122cが複数回通電制御される場合における、各開放間の通電休止時間)が、第2始動口23の制御データとして遊技状態ごとに予め決められている。
【0091】
具体的には、遊技状態が非時短遊技状態であれば、1回の普図当たりに対して、第2始動口23の可動片24が1回、0.8秒間だけ開放位置に変位した後に閉鎖位置に変位するように制御される。一方、遊技状態が時短遊技状態であれば、1回の普図当たりに対して、例えば、当たり1の場合には、第2始動口23の可動片24が1.2秒間だけ開放位置に制御された後、0.8秒間のインターバル(閉鎖時間)をおいてから、再度、第2始動口23の可動片24が1.5秒間だけ開放位置に制御された後、0.8秒間のインターバル(閉鎖時間)をおいてから、再度、第2始動口23の可動片24が1.8秒間だけ開放位置に変位した後に閉鎖位置に変位するように制御される。当たり2,3の場合も、上記と同様にして、第2始動口23の可動片24が開閉制御されるので、その説明は省略する。
【0092】
以上のことから、時短遊技状態では、上述したように、時短用判定テーブルを参照して抽選が行われるため、普図当たりに当選し、その当選により第2始動口23が3回開放位置に変位するとともに、このときの開放時間の合計が4.5秒間であるため、遊技者は、第2始動口23に遊技球を比較的容易に入賞させることができる。但し、第1実施形態例では、後述する第2始動口23の周辺の特徴的な構成によって、大当たり遊技終了後の確変モードにおいては、確変1モード(高確率遊技状態かつ非時短遊技状態)の方が確変2モード(高確率遊技状態かつ非時短遊技状態)よりも付与される遊技球を増加させることができるようになっている。
【0093】
次に、図3,13,14を参照して本実施形態例の遊技盤14における第2始動口23やゲート25等を含む主右領域150bの構成について説明する。図3に示すように、主右領域150bは、遊技盤14の右打ち領域15bの上方に発射された遊技球を受け入れる受入領域100と、受入領域100の下流側に連通するとともにゲート25が形成されているゲート形成領域200と、ゲート形成領域200の下流側に連通するとともに第2始動口23が形成されている第2始動口形成領域300と、から構成されている。
【0094】
受入領域100は、右打ち領域15bの上方に発射された遊技球を受け入れた後に、受け入れた遊技球を複数の釘に衝突させて不規則な方向に流下させながらゲート形成領域200に導くようになっている。
【0095】
ゲート形成領域200は、上流側にゲート25を有している。遊技球がゲート25を通過すると、第2始動口23を開閉制御する可動片24を開閉するか否かを決定する普通図柄抽選(普図抽選)が実行される。普図抽選に当選した場合には、図12に示す開閉制御テーブルにしたがって、可動片24が第2始動口23を開放するように制御され、普図抽選に当選しなかった場合には、同テーブルにしたがって、可動片24が第2始動口23を閉鎖するように制御される。このように、遊技球がゲート25を通過した際には、第2始動口23の可動片24が所定のパターンで開閉制御されるとともに、ゲート25を通過した遊技球は下方に流下して第2始動口形成領域に300に導かれるようになっている。
【0096】
図13に示すように、第2始動口形成領域300は、複数の釘が配設された釘配設領域301と、釘配設領域301と連通するとともに屈曲するように形成された屈曲領域302と、屈曲領域302の下方に形成された第2始動口23およびこの第2始動口23を開閉制御する可動片24と、屈曲領域302と連通するとともに上下方向に沿って直線状に設けられた直線領域303と、から構成されている。釘配設領域301は、その両側部に複数の釘301aを有しており、遊技球をこれらの釘に衝突させながら屈曲領域302に向かって流下させる。
【0097】
屈曲領域302は、釘配設領域301から落下してきた遊技球を受け入れる第1通路部302aと、第1通路部を通過した遊技球を第2始動口23に導く第2通路部302bと、第2通路部302bと直線領域303との間に形成されている第3通路部302cとを有している。
【0098】
第1通路部302aは、上流側から下流側に向かって直線状に下方傾斜する傾斜面302a1を有している。そのため、釘配設領域301から屈曲領域302に落下してきた遊技球は、先ずはじめに第1通路部302aに受け入れられ、その後、第1通路部302aの傾斜面302a1上を第2通路部302bに向かって加速しながら転動していくことになる。
【0099】
第2通路部302bは、第1通路部302aの傾斜面302a1の下流側の先端部が屈曲することにより形成された第1壁部302b1と、パチンコ機Pに正対する遊技者から見て第1壁部302b1から左方に所定間隔を存して形成された第2壁部302b2とによって挟まれた通路である。第1壁部302b1と第2壁部302b2とを結ぶ最短距離は、遊技球2個分の大きさ(11mm×2=22mm)よりも離れて形成されている。これにより、第2通路部302bにおいては、遊技球2個が同時に通過したとしても、これら遊技球が占有する空間以外にも所定の大きさの空間が確保されるようになっている。
【0100】
また、第2通路部302bは、上下方向に沿って所定の高さを有しており、下流側において第2始動口23と連通可能となっている。そのため、第2通路部302bは、第1通路部302aから加速してきた遊技球を減速させることなく、むしろ第2通路部302bで自由落下させることにより、さらに加速させるようになっている。そして、このように加速された遊技球を、可動片24が開放位置に変位している場合に第2始動口23に入球させるようになっている。
【0101】
第3通路部302cは、パチンコ機Pに正対する遊技者から見て第2通路部302bの下流側の右側方に設けられている。この第3通路部302cは、第2始動口23上に設けられており、可動片24が閉鎖位置に変位している場合には、当該可動片24上に沿って遊技球を通過させるようになっている。そして、この第3通路部302cには、閉鎖位置に変位している可動片24上を流下する遊技球を減速させる複数の突起部302c1が上流側から下流側に沿って形成されている。
【0102】
図14は、複数の突起部302c1の断面図(図13のA-A線断面図)を示す。この図に示すように、屈曲領域302には、前後方向に対向するように前面カバー302c2および背面ベース302c3が設けられており、複数の突起部302c1はこれら前面カバー302c2および背面ベース302c3にそれぞれ形成されている。具体的には、背面ベース302c3に所定間隔を存して3個の突起部302c1が形成されており、前面カバー302c2に所定間隔を存して2個の突起部302c1が形成されている。そして、背面ベース302c3の突起部302c1と前面カバー302c2の突起部302c1とが、前後方向において重ならないように互いに違いに配置されている。これにより、第3通路部302cにおいて閉鎖位置に変位している可動片24上の遊技球を突起部302c1と衝突させながら蛇行せるように流下させるようになっている。つまり、可動片24が閉鎖位置に変位している場合には、第3通路部302cにおける遊技球の滞留時間を増加させることにより、直線領域303に進入する時間を遅らせるようになっている。なお、複数の突起部302c1の数は、5個に限られず、可動片24の長さ等を考慮して適宜変更することができる。
【0103】
図13に戻り、第2始動口23は、入球した遊技球を受け入れ可能な受入空間230(上述した第2始動領域に相当)を有しており、この受入空間230の下流側には、第2始動口検出スイッチ122sが設けられている。受入空間230は、円弧状に湾曲した湾曲壁部230aと、湾曲壁部230aと繋がっている直線状の底面部230bとを有している。湾曲壁部230aは、第1通路部302aの傾斜面302a1の先端から第2通路部302bおよび開放された第2始動口23を通過した遊技球の軌道上に位置している。つまり、第1通路部302aから落下した遊技球は、可動片24が開放位置に変位して開放している第2始動口23を通過すると、受入空間230内において湾曲壁部230aと衝突するようになっている。そして、湾曲壁部230aは底面部230bと円滑に繋がっており、底面部230bは第2始動口検出スイッチ23sに向けて下方傾斜している。そのため、湾曲壁部230aに衝突した遊技球をスムーズに底面部230bに至らせるとともに、すみやかに第2始動口検出スイッチ122sに導くようになっている。
【0104】
また、受入空間230には、左右方向に延びるように形成される平行リブ230cが上下方向に2つ設けられている。具体的には、背面ベース302c3に1個の平行リブ230cが形成されており、前面カバー302c2に1個の平行リブ230cが形成されている。そして、背面ベース302c3の平行リブ230cの方が、前面カバー302c2の平行リブ230cよりも上方に形成されている。これら平行リブ230cは、受入空間230に勢いよく落下してきた遊技を減速させる機能を有している。例えば、第1通路部302aおよび第2通路部302bを通過した遊技球が勢いを持って第2始動口23を通過した後に、これら平行リブ230cと衝突することにより、当該遊技球が減速されることになる。これにより、受入空間230の湾曲壁部230aと遊技球とが反発してしまうことを防止することができるようになっている。また、同様に、第3通路部302cにおいて、可動片24が閉鎖位置に変位している場合、当該可動片24上に滞留していた遊技球が、可動片24が再度開放位置に変位することにより、受入空間230内に落下しても、これら平行リブ230cと衝突することにより、底面部230bと遊技球とが反発してしまうことを防止することができるようになっている。
【0105】
直線領域303は、上下方向に延びるように形成されており、屈曲領域302の第3通路部302cを通過した遊技球を受け入れた後に、大入賞口22に向かわせる。この直線領域303は、入り口側において屈曲領域302の第3通路部302cと連結しており、また、大入賞口22に至るまでに大入賞口22以外の領域に遊技球を誘導する通路を有していない。(図3参照)。そのため、大入賞口22に遊技球を到達させるためには、屈曲領域302を必ず経由させた後に直線領域303を通過しなければならない構成となっている。
【0106】
第1実施形態例では、第2始動口23の周辺が上記のように構成されていることから、大当たり遊技終了後に設定される確変モード(確変モード1(高確率遊技状態かつ非時短遊技状態)、確変モード2(高確率遊技状態かつ高時短遊技状態))においては、以下のようにして遊技が進行するようになっている。まず、大当たり遊技終了後に確変2モードが設定された場合、遊技球がゲート25を通過することにより、普図抽選に高確率で当選する。そうすると、第2始動口23の可動片24が図12に示す開閉制御テーブルに従って頻繁に開放位置に変位することになり、遊技球は第2始動口23に入球し易くなる。そして、第2特図では小当たりに当選し易くなっているので(図8(d)参照)、小当たりに当選したことに基づいて大入賞口22の開閉扉22aがロング開放することになる(図9(b)参照)。しかしながら、遊技球は、上記のように頻繁に開放している第2始動口23に入球してしまうことから、屈曲領域302を抜けて大入賞口22と連通する直線領域303に到達し難くなっている。さらに、第2始動口23の可動片24が閉鎖位置に変位している場合であっても、可動片24上を通過する遊技球は、第3通路部302cに形成された複数の突起部302c1に衝突することにより可動片24上に滞留し易くなっている。したがって、確変2モードにおいては、大当たりに当選するまでの間に小当たりに当選した場合であっても、遊技球が大入賞口22に到達し難くなっており、小当たりの当選に基づいて付与される遊技球を増加させることはできないようになっている。
【0107】
一方、大当たり遊技終了後に確変1モードが設定された場合、遊技球がゲート25を通過することにより、確変2モードよりも低い確率(1/6:図10(a)参照)で普図抽選に当選する。そうすると、第2始動口23の可動片24が図12に示す開閉制御テーブルに従って確変1モードよりは低い頻度で開放することになる。但し、このパチンコ機Pにおいては、1/6の確率で普図抽選に当選するので、ある程度の頻度で可動片24は開放位置に変位する。そのため、確変2モードよりも低い頻度ではあるが、第2始動口23に遊技球が入球可能になっている。そして、確変2モードと同様に、第2特図では小当たりに当選し易くなっているので(図8(d)参照)、小当たりに当選したことに基づいて大入賞口22の開閉扉22aがロング開放することになる(図9(b)参照)。この場合、遊技球は、第2始動口23の可動片24が確変2モードのときよりも低い頻度で開放位置に変位する(つまり、確変2モードのときよりも高い頻度で閉鎖位置に変位する)ので、第2始動口23に落下することなく、閉鎖位置に変位している可動片24上を通過し、その後、直線領域303を経由して大入賞口22に到達し易くなっている。これにより、確変1モードにおいては、大当たりに当選するまでの間に、小当たりの当選に基づいて遊技球を獲得可能になっている。したがって、遊技者は大当たり遊技終了後に確変1モードが設定されることを望みながら遊技を行い、確変1モードが設定された場合には大当たりに当選するまでの間に小当たりに多数回当選させることにより、小当たりの当選に基づいて付与される遊技球を増加せるように遊技を進行できるようになっている。
【0108】
なお、上記第1実施形態例では、管理遊技機を例として説明をしてきたが、これに限られることなく、前扉3に遊技球を貯留させる上皿が設けられており、この上皿から遊技球が発射装置に送られるとともに、遊技者が獲得した遊技球が上皿に払い出されるような周知の遊技機であっても本発明を適用することができる。
【0109】
以上、第1実施形態に係るパチンコ機Pによれば、前扉3の上部に着脱自在に取り付けられる上意匠部材(上装飾部材)31は、前扉3の自由端側の方が前扉3の回転軸側よりも遊技盤に対する前面側の突出量が大きくなるように構成されている。ここで、大当たり遊技や時短遊技等が開始された場合には、遊技者は右打ち領域15bに遊技球を発射させるため、最初に遊技者の視野には、右打ち領域15bの上方近くに配設された上意匠部材31の右端部が入り易くなっている。そうすると、大当たり遊技や時短遊技の開始時における遊技者の高揚した気持ちに合わせて、上意匠部材31の右端部から光や音を効果的に遊技者に伝達させて演出を盛り上げることができる。すなわち、パチンコ機Pにおける演出効果を向上させることができる。
【0110】
一方、遊技の開始時等に遊技者が大当たりの電子抽選に当選するまでの間は、左打ち領域15aに遊技球を発射させるため、最初に遊技者の視野には、左打ち領域15aの上方近くの上意匠部材31の左端部が入り易くなっている。ところが、通常、大当たりの電子抽選に当選したり、リーチに発展したりするまでは、遊技者の気持ちは高揚することなく、むしろ比較的落ち着いている。そうすると、このような通常の遊技における遊技者の気持ちに合わせて、上意匠部材31の左端部から光や音が過度に伝達され難くして、遊技者の気持ちに合わせた心地よい演出を行なうことができる。
【0111】
また、意匠ユニット35は、前扉3の左側部に着脱自在に取り付けられる左意匠部材(第1装飾部材)33と、前扉3の右側部に着脱自在に取り付けられる右意匠部材(第2装飾部材)34と、を有しており、右意匠部材34は、左意匠部材33よりも遊技盤14に対する前面側の突出量が大きくなっている。ここで、左意匠部材33と右意匠部材34は、パチンコ機Pに正対した遊技者の両サイドに位置する意匠部材であり、上意匠部材31よりも直接的に演出を伝達可能な部材である。そこで、上記のように上意匠部材31単体の突出量の調整だけでなく、左意匠部材33の突出量と右意匠部材34の突出量との関係についても調整し、右意匠部材34の突出量を左意匠部材33の突出量に比べて相対的に大きくしている。そのため、右打ち領域15bに遊技球を発射したときと、左打ち領域15aに遊技球を発射したときとで、遊技者の気持ちに合わせた演出をさらに適切に行うことができる。
【0112】
また、上意匠部材31の左端部は上意匠部材31の右端部よりも遊技盤14の前面側に突出しておらず、また、左意匠部材33は右意匠部材34よりも遊技盤14の前面側に突出していない。そのため、前扉3を本体枠4に対して開放した際には、上意匠部材31の左端部と左意匠部材33が、パチンコ機Pの左側に設置された他のパチンコ機や、この他のパチンコ機との間に設置される現金受付機等と干渉しないようになっている。これにより、前扉3の開放できる範囲を広げ、前扉3の開閉を適切に行うことができる。
【0113】
なお、上記第1実施形態例では、上意匠部材31単体における遊技盤14の前面側に対する突出量、および左意匠部材33と右意匠部材34との関係における遊技盤14の前面側に対する突出量を調整していたが、下意匠部材32単体における遊技盤14の前面側に対する突出量も調整してもよい。この場合、下意匠部材32について前扉3の自由端側の方が前扉3の回転軸側よりも遊技盤14に対する前面側の突出量が大きくなるように構成すればよい。
【0114】
また、上記第1実施形態例では、副制御基板19が各意匠部材31~34の識別情報を識別する識別実行手段19dを有した構成であったが、この構成に限られず、主制御基板18が識別実行手段を有する構成であってもよい。
【0115】
また、上記第1実施形態例では、右意匠部材34と上意匠部材31とが電気的に接続される一方、左意匠部材33と上意匠部材31とは電気的に接続されない構成となっていたが、この構成に限られず、左意匠部材33と上意匠部材31とが電気的に接続される一方、右意匠部材34と上意匠部材31とが電気的に接続されないようにしてもよい。
【0116】
また、上記第1実施形態例では、各意匠部材31~34は、下意匠部材32を経由して、前扉3の中継基板3Aに電気的に接続されるように構成されていたが、この構成に限られない。各意匠部材31~34は、上意匠部材31、左意匠部材33および右意匠部材34の何れかの意匠部材を経由して、前扉3の中継基板3Aに電気的に接続されてもよい。
【0117】
また、上記第1実施形態例では、左意匠部材33は、前扉3の透明板3aの左方に配設されて固定されている構成であったが、この構成に限られない。例えば、左意匠部材33は固定されることなく、手動または電動により遊技盤14に対する前面側の突出量を調整可能な可動型となるように構成されてもよい。そして、このような可動型の左意匠部材33の構成として、例えば、左意匠部材33を折りたためるような構成や、左意匠部材33を前扉3の背面側に引っ込めて収納可能とするような構成を採用することができる。このような構成によれば、ホールの環境によっては、パチンコ機Pが設置された周辺の遊技機やその他の部材(遊技者同士の間を仕切る仕切り板)との距離がかなり近い状況であっても、設置状況に応じて左意匠部材33の前面側の突出量を調整することにより、周辺の遊技機やその他の部材との干渉を避けることができる。
【0118】
また、上記第1実施形態例では、右意匠部材34は前扉3の透明板3aの右方に配設されて固定されている構成であったが、この構成に限られない。例えば、右意匠部材34は、上記左意匠部材33と同様に、固定されることなく、可動型となるように構成されてもよい。この場合、左意匠部材33よりも遊技盤14に対する前面側の突出量、つまり可動域が大きくなるように調整可能に構成してもよい。なお、右意匠部材34は、左意匠部材33よりもヒンジ機構(回転軸)Hから離れた位置にあり、前扉3を開いた際に、右意匠部材34がある程度前面側に突出した状態で静止しても、周辺の遊技機等と干渉するといった影響が出難い。
【0119】
また、上記第1実施形態例では、図7に示すように、上意匠部材31、下意匠部材32、左意匠部材33、および右意匠部材34の何れもが識別情報を有するように構成したが、この構成に限られることなく、これら意匠部材31~34のうち何れか1つ、2つまたは3つが識別情報を有するように構成してもよい。例えば、下意匠部材32→左意匠部材33→右意匠部材34→上意匠部材31の順番で各意匠部材31~34を連結させながらベース部材30に取り付け可能に構成した場合、最後に取り付けられる上意匠部材31のみが識別情報を有するように構成してもよい。各意匠部材31~34を連結している時点で、4つの意匠部材31~34は対応関係にある部材(つまり、連結された4つの意匠部材31~34で1セットである構成)だとわかるので、何れか1つの意匠部材31~34が識別情報を有するように構成すればよい。
【0120】
また、上記第1実施形態例では、各意匠部材31~34を組み合わせて連結する順番については特に言及しなかったが、どの意匠部材31~34から組み合わせても連結できる構成であったり、所定の順序でしか連結することができない構成を採用してもよい。どの意匠部材31~34から組み合わせても連結できる構成であれば、各意匠部材31~34を連結する手間を容易とすることができる。また、所定の順序でしか連結することができない構成であれば、知識のない人間によって意匠ユニット35が簡単に分解され難くすることができる。
【0121】
また、上記第1実施形態例のように、各意匠部材31~34が識別情報を有する場合において、各意匠部材31~34に対して識別情報を判定した結果、パチンコ機Pに対応していない意匠部材が何れであるのかについてエラー報知を行うように構成してもよい。また、その際に、どの意匠部材がパチンコ機Pに対応していないかによって、エラー報知の態様を異なるようにしてもよい。例えば、各意匠部材31~34のうち上意匠部材31だけがパチンコ機Pに対応していない場合(以下、「識別状態が一致しない場合」という)、「上意匠部材が一致していません。」とのエラー表示を演出表示装置14bの液晶表示画面上に表示させるとともに、エラー対応のランプ発光を行うように構成してもよい。また、下意匠部材32だけが識別状態が一致しない場合、「下意匠部材が一致していません。」とのエラー表示を液晶表示画面上に表示させるとともに、エラー対応のランプ発光を行い、かつ、「下意匠部材を確認してください。」との音を30秒間出力するようにしてもよい。さらに、左意匠部材33だけが識別状態が一致しない場合、「左意匠部材が一致していません。」とのエラー表示を液晶表示画面上に表示させるとともに、エラー対応のランプ発光を行い、かつ、「左意匠部材を確認してください。」との音を20秒間出力するようにしてもよい。また、右意匠部材34だけが識別状態が一致しない場合、「右意匠部材が一致していません。」とのエラー表示を液晶表示画面上に表示させるとともに、エラー対応のランプ発光を行い、かつ、「右意匠部材を確認してください。」との音を10秒間出力するようにしてもよい。このように、各意匠部材31~34の重要度に応じて、識別状態が一致しない場合におけるエラー報知の態様を異なるようにしてもよい。
【0122】
また、上意匠部材31が可動するように構成されているときには、上意匠部材31だけが識別状態が一致しない場合、上意匠部材31ではランプ発光や可動などの演出動作が実行されないようにする一方、その他の意匠部材32~34は識別情報が一致していれば、通常通りに動作させるようにしてもよい。
【0123】
副制御基板19は、複数種類の意匠ユニットに対して種類に応じた演出データを記憶すするように構成してもよい。具体的には、副制御基板19は、意匠ユニットA,B,Cに対応可能に構成されており、意匠ユニット35Aに対応可能なA用演出データ、意匠ユニット35Bに対応可能なB用演出データおよび意匠ユニット35Cに対応可能なC用演出データを記憶している。そして、副制御基板19は、電源立ち上げ時の所定処理において、取り付けられた意匠ユニットが自機に対応する意匠ユニットであるか否か、および取り付けられた意匠ユニットが自機に対応する意匠ユニットである場合にどのタイプの意匠ユニットであるかを判別する判別手段を有している。
【0124】
上記のような意匠ユニットが取り付けられた際に、副制御基板19の判別手段が、当該意匠ユニットが自機に対応する意匠ユニットであると判別し、かつ当該意匠ユニットが意匠ユニットAであると判別した場合には、A用演出データに基づいて演出を実行する。この場合、意匠ユニットA用としての、発光演出、盤面ランプ発光演出、演出音の出力、および液晶表示画面での背景表示等を実行する。また、上記と同様にして、意匠ユニットが取り付けられた際に、判別手段が、当該意匠ユニットが自機に対応する意匠ユニットであると判別し、かつ当該意匠ユニットが意匠ユニットBであると判別した場合には、B用演出データに基づいて演出を実行する。さらに、意匠ユニットが取り付けられた際に、判別手段が、当該意匠ユニットが自機に対応する意匠ユニットであると判別し、かつ当該意匠ユニットが意匠ユニットCであると判別した場合には、C用演出データに基づいて演出を実行する。このような構成によれば、意匠ユニットを交換するだけで、見た目上および演出上のバリエーションを増やして興趣に富んだ遊技を実行可能となる。
【0125】
また、A用演出データに基づいて実行される演出データ、B用演出データに基づいて実行されるB用演出データ、およびC用演出データに基づいて実行されるC用演出データは、互いに完全に異なる演出ではなく、共通部分と、異なる部分と、を含むように構成されてもよい。例えば、意匠ユニットA,B,Cの何れかによって、客待ち中(遊技が進行していない状態)、変動中、および大当たり中のランプ発光、液晶画面で表示される画像、ムービー、出力音が異なるようにし、その他の演出は共通とするようにしてもよい。
【0126】
次に、図15図29を参照して、第2実施形態のパチンコ機について説明する。第2実施形態例のパチンコ機P´は、主として、既に前扉3に複数種類の前面意匠部材が取り付けられており、この前面意匠部材に対してさらに意匠部材35が着脱自在に取り付けられる点において、第1実施形態例と異なっている。なお、第2実施形態例では、前扉3に遊技球を貯留させる上皿が設けられており、この上皿から遊技球が発射装置に送られるとともに、遊技者が獲得した遊技球が上皿に払い出されるような周知の遊技機を例に挙げて説明する。
【0127】
図15図18に示すように、第2実施形態例に係るパチンコ機(遊技機)P´は、遊技場の島設備に設置される縦長方形状の外枠101と、外枠101に扉状に開閉自在に取り付けられた内枠102と、内枠102の前面に扉状に開閉自在に取り付けられた前扉103等を備えている。外枠101および内枠102によって本体枠104が構成されており、この本体枠104は遊技盤を保持している。また、前扉103には、ガラスやプラスチック等からなる透明板105が取り付けられている。
【0128】
前扉103は、ベース部材(図3参照)と、ベース部材の前面側に配置される複数種類の前面意匠部材80~87と、で構成されている。複数種類の前面意匠部材80~87は、透明板3aの上方から左側方にかかる部位を囲むように設けられた装飾レンズユニット80と、透明板3aの右上方に設けられた回転灯ユニット81と、回転灯ユニット81の真下であって透明板3aの右側方に設けられたサイドパネルユニット82と、透明板3aの下方に位置して遊技球を収容可能な上皿83および下皿84と、下皿84の右側方に取り付けられて遊技球の発射操作を行うための操作ハンドル86と、上皿83の前面中央に設けられた演出操作ユニット85と、透明板3aの左右下方と上方に設けられたスピーカ87と、を有している。これら前面意匠部材80~87は、前扉103に取り付けられて固定されている。
【0129】
装飾レンズユニット80の内部には複数のLED(図示せず)が設けられており、これらLEDが遊技の進行に伴って種々の色や発光パターンで発光するという演出が行われるようになっている。回転灯ユニット81には環状に配置した複数のLED(図示せず)が設けられており、各LEDが配置順に点灯と消灯を繰り返すことにより、恰も回転灯が発光しているような演出を実行できるようになっている。サイドパネルユニット82は前方に向けて突出するように形成された略長方形薄板状の装飾用装置であって、この装置に内装されたデザインシート(図示せず)の視認性を高めるためのものである。
【0130】
上皿83には、図示せぬ遊技球貸出装置により貸し出される遊技球や、パチンコ機P´の賞球払出装置から払い出される賞球が導かれるようになっており、この上皿83が遊技球で一杯になると、その後に貸し出されたり払い出されたりする遊技球は下皿84に導かれるようになっている。操作ハンドル86は遊技者が所定方向へ向けて回転操作できるように形成されており、遊技者が操作ハンドル86を回転操作すると、上皿83に受容されている遊技球が発射装置に送られ、この発射装置により操作ハンドル86の回転角度に応じた強度で遊技球が発射されるようになっている。演出操作ユニット85は、遊技の進行に伴って実行される演出の切り替え等を行えるようになっている。スピーカ87は、遊技の進行に応じて、遊技に関する様々な音を出力できるようになっている。
【0131】
意匠部材35は、前扉103の上部に位置する装飾レンズユニット80の部分に重畳して着脱自在に取り付けられるようになっている。すなわち、意匠部材35は、前扉103のベース部材に直接取り付けられるのではなく、ベース部材に取り付けられた装飾レンズユニット80を介して前扉103に取り付けられるようになっている。この意匠部材35が取り外された状態であっても、パチンコ機P´の前扉103は、前面意匠部材80~87によって1つの意匠として完成された状態となっている。具体的には、第2実施形態例では、意匠部材35は装飾レンズユニット80のみに取り付けられるが、装飾レンズユニット80における意匠部材35と重畳する部分80a(図18参照)と、装飾レンズユニット80における意匠部材35と重畳しない部分80b(同図参照)とで、途切れなく一連の意匠が形成されている。また、意匠部材35が取り外された状態において、意匠部材35と重畳する部分80aは、所定のランプ発光演出を実行可能になっている。
【0132】
なお、意匠部材35は、第1実施形態例の意匠ユニット35とは異なり、中継基板等の電気部品を内部に有していない。そのため、意匠部材35が装飾レンズユニット80に取り付けられた状態では、意匠部材35と装飾レンズユニット80とは、電気的に接続されることはない。但し、意匠部材35は背面側から装飾レンズユニット80が発する光を照射されて、点灯と消灯を繰り返す等の演出を実行可能になっている。
【0133】
図19図22に示すように、意匠部材35は、略箱形状の箱体35aと、この箱体35aの下方に位置する略半円柱形状の台座部35bと、この台座部35bの下方に位置する略半円球状の球状部35cと、を有している。箱体35aは、本体部350aと、本体部350aの前面および側面に形成される装飾効果を有する飾り部350bと、飾り部350bの前面に形成され、パチンコ機P´の機種名等の情報が掲示される掲示部350cとによって構成されている。意匠部材35が装飾レンズユニット80に取り付けられた状態では、本体部350aは前扉103の前面側に突出している。具体的には、本体部350aは前扉103の回転軸側から前扉103の自由端側に向かって突出しており、この本体部350aの突出した形状に合わせて飾り部350bも、前扉103の回転軸側から前扉103の自由端側に向かって突出している。さらに、この飾り部350bの突出した形状に合わせて掲示部350cも、前扉103の回転軸側から前扉103の自由端側に向かって突出している。このように、箱体35aは全体として、前扉103の回転軸側から前扉103の自由端側に向かって突出するように構成されている。
【0134】
なお、掲示部350cは、パチンコ機P´に正対する遊技者から見て右端部から左端部に向かって15度背面側に傾くように設計されている。また、掲示部350cは、パチンコ機P´に正対する遊技者の目線を考慮して正面方向から下方に5度傾くようにも設計されている。但し、これらの傾斜角度は適宜変更可能である。
【0135】
台座部35bは、無色透明のプラスチック等で構成されている。意匠部材35が装飾レンズユニット80に取り付けられた状態では、台座部35bは、透明板3aの前面側に突出するとともに、透明板3aと対向している。
【0136】
球状部35cは、有色(例えば赤色)透明のプラスチック等で構成されている。意匠部材35が装飾レンズユニット80に取り付けられた状態では、球状部35cは、透明板3aの前面側に突出するとともに、透明板3aと対向している。なお、台座部35bおよび球状部35cは、前扉103が本体枠4に対して閉じられた状態では、遊技盤に形成された所定の演出装置(不図示)と組み合わされてパトランプ等の回転灯を構成するようになっている。
【0137】
図22に示すように、第2実施形態例のパチンコ機P´においては、上述したように、意匠部材35の箱体35aが、前扉103の回転軸側の突出量よりも前扉103の自由端側の突出量の方を大きくしている。換言すれば、箱体35aは、前扉103の自由短側の突出量よりも前扉103の回転軸側の突出量の方が小さくなっている。ここで、箱体35aの前扉103の回転軸側の突出量を、箱体35aの前扉103の自由端側の突出量と同じに設計していた場合には、前扉103を開放したとき、箱体35aの前扉103の回転軸側の部分が、左隣に設置された遊技機P´の前扉103(サイドパネルユニット82)と干渉する虞がある。しかしながら、第2実施形態例では、箱体35aの前扉103の回転軸側の突出量を前扉103の自由短側の突出量に比べて抑えているので、前扉103を開放したときに、箱体35aの前扉103の回転軸側の部分Kが、左隣に設置された遊技機P´´の前扉103(サイドパネルユニット82)と干渉し難くなっており、それにより、前扉103の開放範囲を広くすることができるようになっている。
【0138】
以上、第2実施形態に係るパチンコ機P´によれば、意匠部材35の箱体35aは、前扉103の自由端側の突出量よりも前扉103の回転軸側の突出量の方が小さくなっている。そのため、前扉103を開放したときに、左隣に設置された遊技機や、左隣に設置された遊技機との間に設置される現金受付機等に干渉し難くなっている。したがって、前扉103を開放できる範囲を広くすることができ、適切な前扉103の開閉を実現することができる。
【0139】
また、意匠部材35の箱体35aは、前扉103の回転軸側の突出量よりも前扉103の自由端側の突出量の方を大きくしている。したがって、上記第1実施形態例と同様に、演出効果を向上させることができる。
【0140】
なお、第2実施形態例では、意匠部材35は中継基板等の電気部品を内部に有していない構成としたが、この構成に限られない。例えば、第1実施形態例と同様に、意匠部材35は内部に中継基板と識別情報設定部を有し、設定された識別情報に基づいて装飾レンズユニット80に取り付けられた意匠部材35が遊技盤に対応しているか否かの判断が行われるような構成としてもよい。
【0141】
また、第2実施形態例では、意匠部材35の箱体35aは、前扉103の回転軸側から自由端側に向かって突出量が大きくなるように構成されていたが、この構成に限られない。例えば、箱体35aの前面の回転軸側から所定範囲に亘る一部分だけを切り欠くことにより遊技盤の前面側の突出量を小さくし、箱体35aの前面の他部分は前面側に均一な突出量とするようにしてもよい。このような構成であっても、前扉103を開放したときに、箱体35aの切り欠き部分によって、左隣に設置された遊技機等との干渉を抑制することができる。
【0142】
また、上記第1実施形態例および第2実施形態例では、ヒンジ機構(回転軸)Hがパチンコ機P´における左側に設けられた構成を挙げて説明をしたが、この構成に限られることなく、ヒンジ機構Hがパチンコ機P´の右側に設けられた構成であってもよい。
【0143】
次に、図23図29を参照して、上記した第2実施形態例に係るパチンコ機P´における操作ハンドル86の詳細にについて説明する。
【0144】
図23および図24に示すように、操作ハンドル86は、取付部材88および意匠ケース89と一体化された操作ハンドルユニット860として、前扉103の右下隅部に取り付けられている(図15図18も参照)。操作ハンドルユニット860が前扉103に取り付けられた状態では、操作ハンドル86は前面側に斜めに突出している。操作ハンドル86の前面側の突出量B1は、前述した意匠部材35の自由端側の突出量よりも小さくなっている(図16参照)。このように構成することにより、前扉103を内枠102に対して開放した場合、遊技場において左隣に設置された遊技機P´´(図22参照)と、操作ハンドル86とが干渉することを防止することができ、操作ハンドル86を適切に保護することができる。
【0145】
取付部材88は、略矩形状部材であり、複数の孔部88aを有している。これら孔部88aは、前扉103の右下隅部に対する取付部材88の取り付け、およびこの取付部材88に対する操作ハンドル86および意匠ケース89の取り付けのために形成されている。
【0146】
意匠ケース89は、樹脂製の箱状部材であり、その中央部に開口89Aを有している。開口89Aには、操作ハンドル86の後述するベース体が挿通される。
【0147】
図23図25に示すように、操作ハンドル86は、取付部材88に固定されるベース体86aと、ベース体86aに回転操作可能に支持される操作リング86bと、操作ハンドル86の前面を覆うフェイスカバー86cと、を有している。
【0148】
ベース体86aは、略円筒状の基体部86a1と、基体部86a1よりも大径の大径部86a2と、を有しており、これら基体部86a1と大径部86a2とが段差部86a3を介して接続されている。段差部86a3および大径部86a2で囲まれた空間内に、第1ガイド軸86a4、第2ガイド軸86a5、および第3ガイド軸86a6が、操作リング86bの回転軸方向に沿って前方に突出するように設けられている。第1ガイド軸86a4および第2ガイド軸86a5は、その空間内における右上領域に設けられており、第1ガイド軸86a4の方が第2ガイド軸86a5よりも操作リング86bの周方向に沿って反時計回り寄りに配置されている。第3ガイド軸86a6は、その空間内における左下領域であって、操作リング86bの回転軸Xに関して第1ガイド軸86a4と対称となる位置に設けられている。なお、詳細な説明は省略するが、上記した大径部86a2における前端部の左側には、発射装置による遊技球の発射を停止させる停止ボタン86a7が設けられている(図25(b)参照)。
【0149】
操作リング86bは、ベース体86aに相対回転可能に支持されている。この操作リング86bは、ベース体86aの大径部86a2と対向するリング状のリング部86b1と、リング部86b1の内側に設けられた平面部86b2と、を有している。リング部86b1の外周面には、操作リング86bの外径方向に突出する複数(例えば3個)の第1指掛部86b3、第2指掛部86b4、および第3指掛部86b5が形成されている。具体的には、これら第1~第3指掛部86b3~86b5は、リング部86b1の上側の外周面において、第1指掛部86b3、第2指掛部86b4、および第3指掛部86b5の順で時計回りとなるように配置されている。遊技者がこれら第1~第3指掛部86b3~86b5に指を掛けることにより、操作リング86bを容易に回転操することができる。なお、第1~第3指掛部86b3~86b5の寸法の詳細については後述する。
【0150】
平面部86b2には、操作リング86bの回転軸方向に沿って貫通するとともに、操作リング86bの周方向に沿って湾曲する長孔状の上ガイド孔86b20、および下ガイド孔86b21が設けられている。上ガイド孔86b20および下ガイド孔86b21は、操作リング86bの回転軸X回りに180度位相をずらして配置されている。そして、上ガイド孔86b20を上記した第1ガイド軸86a4および第2ガイド軸86a5が貫通しており、下ガイド孔86b21を上記した第3ガイド軸86a6が貫通している。
【0151】
また、平面部86b2には、その中心位置において操作リング86bの回転軸方向に沿って前方に突出する中心突起86b30が設けられている。そして、この中心突起86b30の外周には、コイルバネ86b40が巻き付けられている。中心突起86b30の近傍には係止部86b31が設けられており、このコイルバネ86b40の一端部が係止部86b31によって係止されている。一方、このコイルバネ86b40の他端部は、上記した下ガイド孔86b21を貫通している第3ガイド軸86a6に巻き付けられて係止されている。
【0152】
フェイスカバー86cは、操作ハンドル86の最も正面側に配置されており、略半球状に形成されている。フェイスカバー86cの背面側には、上記した第3ガイド軸86a6の先端に対面するネジ穴(図示せず)と、上記した中心突起86b30の先端部が相対回転可能に挿入される中心穴(図示せず)と、が設けられている。第3ガイド軸86a6、ならびに第3ガイド軸86a6の後端部と連続するベース体86a(大径部86a2および段差部86a3)は後方からネジを挿入可能に構成されている。フェイスカバー86cの中心穴に中心突起86b30の先端部が挿入された状態で、フェイスカバー86cのネジ穴にネジを螺号することにより、フェイスカバー86cがベース体86aに固定されている。これにより、操作リング86bは、フェイスカバー86cとベース体86aとの間に、回転自在に挟持される。
【0153】
このように構成された操作ハンドル86において、操作リング86bの上記した第1ガイド軸86a4または第2ガイド軸86a5が、上ガイド孔86b20の周方向端部に接触したとき、および上記した第3ガイド軸86a6が、下ガイド孔86b21の周方向端部に接触したときに、操作リング86bはそれ以上回転することを規制される。つまり、第1~第3ガイド軸86a4,86a5,86a6、上ガイド孔86b20、および下ガイド孔86b21は、操作リング86bの回転をガイドする機能と、その回転角度を一定範囲内に規制するストッパーとしての機能と、の双方を有している。
【0154】
操作リング86bの中心突起86b30に巻き付けられたコイルバネ86b40は、反時計回りの反発力(弾性力)を発揮できる状態で組み込まれている。そのため、操作リング86bは、遊技者が回転操作していないときは、コイルバネ86b40の反発力を受けて、第2ガイド軸86a5が上ガイド孔86b20における時計回り方向の端部に接触し、かつ、第3ガイド軸86a6が下ガイド孔86b21における時計回り方向の端部に接触した図25(a)に示す初期位置で静止している。なお、フェイスカバー86cの中心部Оから第1指掛部86b3の最外径部86b3´へと向かう矢印が水平方向となす角度を回転操作角度とすると、このときの回転操作角度はφ0度となっている。
【0155】
図26(a)に示すように、操作リング86bが初期位置にあるときに、遊技者が時計回り方向に所定の大きさの力を操作リング86bに作用させると、当該操作リング86bは、コイルバネ86b40の弾性力に抗して図中時計回り方向に回転し始め、発射装置による遊技球の発射が開始する。
【0156】
図26(b)に示すように、操作ハンドル86の回転操作角度がφ1度になるまで、遊技者が操作リング86bに作用させる力を徐々に強めていくと、第1ガイド軸86a4は上ガイド孔86b20の中央よりもやや反時計回り寄りの位置に相対的に変位し、第2ガイド軸86a5は上ガイド孔86b20の中央に相対的に変位し、第3ガイド軸86a6は下ガイド孔86b21の中央に相対的に変位する。このとき、発射装置によって発射された遊技球は、遊技盤14の遊技領域15における左打ち領域15aに向かって進行した後に、当該左打ち領域15aを流下する。以下においては、このときの操作リング86bの回転操作位置を「左打ち基準位置」という。なお、この左打ち基準位置は所謂ブッコミ狙いで遊技球を発射する際の回転操作位置である。
【0157】
図26(c)に示すように、操作ハンドル86の回転操作角度φ2度になるまで、遊技者が操作リング86bに作用させる力をさらに強めていくと、上記した第1ガイド軸86a4は上ガイド孔86b20における反時計回り方向の端部に接触し、第2ガイド軸86a5は上ガイド孔86b20の中央よりもやや反時計回り寄りの位置に相対的に変位し、第3ガイド軸86a6は下ガイド孔86b21における反時計回り方向の端部に接触する。このとき、発射装置によって発射された遊技球は、遊技盤14の遊技領域15における右打ち領域15bに向かって進行した後に、当該右打ち領域15bを流下する。以下においては、このときの操作リング86bの位置を「右打ち基準位置(最大回転位置)」という。
【0158】
遊技者が操作リング86bに対する時計回り方向の付勢を解除すると、操作リング86bはコイルバネ86b40の弾性力によって初期位置に復帰する。
【0159】
このように、遊技者が操作リング86bの時計回り方向における回転操作量を変化させ、当該操作リング86bの回転操作位置を調整することにより、遊技者は遊技盤14の遊技領域15における所望の領域に向けて遊技球を発射することができる。そして、このとき遊技者が操作リング86bを回転操作させる際に必要な力(以下「回転トルク」という。)Nの大きさは、操作リング86bの中心突起86b30に巻き付けられたコイルバネ86b40の性質(例えばバネ定数k[N/m])やコイルバネ86b40の一端部および他端部の係止態様等を含む種々の要素によって変動する。例えばバネ定数kの値が大きい程、また、コイルバネ86b40の一端部および他端部が周方向に巻回されている程、回転トルクNの大きさが増加することなる。このような回転トルクNの大きさを増加させる要素のことを「回転トルク増加要素」という。なお、回転トルクの大きさと、操作ハンドル86の回転操作位置との関係の詳細については後述する。
【0160】
次に、図27(a),(b)を参照して、操作ハンドル86のリング部86b1の外周面に形成された第1~第3指掛部86b3~86b5の寸法の詳細について説明する。
【0161】
前述したように、第1~第3指掛部86b3~86b5は、操作リング86bのリング部86b1の外周面から外径方向に突出するように形成されているが、正面視におけるこれら第1~第3指掛部86b3~86b5の最外径部86b3´~86b5´と、フェイスカバー86cの中心部Оと、の距離Dは、以下のように設定されている。具体的には、第1指掛部86b3の最外径部86b3´と中心部Оとの距離D1は、53.4[mm]に設定されている。また、第2指掛部86b4の最外径部86b4´と中心部Оとの距離D2は、45.6[mm]に設定されている。さらに、第3指掛部86b5の最外径部86b5´と中心部Оとの距離D3は、39.3[mm]に設定されている。また、正面視におけるフェイスカバー86cの最外径部と中心部0との距離Eは、34.6[mm]に設定されている。なお、フェイスカバー86cの中心部0からフェイスカバー86cの最外径部へと向かう矢印が斜めになっているのは、操作ハンドル86が前面側に斜めに突出しているためである。
【0162】
また、操作ハンドルユニット860が前扉103の右下隅部に取り付けられた状態では、前扉103の下端縁103aは、意匠ケース89の下端縁89aより若干下方に位置しており、前扉103の右端縁103bは、意匠ケース89の右側縁89bよりも若干右方に位置している(図27(a)参照)。この場合、前扉103の下端縁103aとフェイスカバー86cの中心部Оとの距離F1は、40.0[mm]に設定されており、前扉103の右端縁103bと中心部Оとの距離G1は、49.1[mm]に設定されている。
【0163】
さらに、前扉103が内枠102に対して閉じられた状態では、内枠102の下端縁102aは前扉103の下端縁103aよりも若干下方に位置しており、内枠102の右端縁102bは前扉103の右端縁103bよりも若干右方に位置している(図27(b)参照)。この場合、内枠102の下端縁102aとフェイスカバー86cの中心部Оとの距離F2は、45.0[mm]に設定されており、内枠102の右端縁102bと中心部Оとの距離G2は、51.1[mm]に設定されている。
【0164】
操作ハンドル86が初期位置(図26(a)参照)にある場合、第1指掛部86b3は略左方を向いており、第2指掛部86b4は略上方を向いており、第3指掛部86b5は右斜め上方を向いている。この場合、何れの指掛部86b3~86b5も前扉103の下端縁103aよりも下方に突出しておらず、また、前扉103の右端縁103bよりも右方に突出していない。さらに、何れの指掛部86b3~86b5も内枠102の下端縁102aよりも下方に突出しておらず、また、内枠102の右端縁102bよりも右方に突出していない。
【0165】
次に、操作ハンドル86が左打ち基準位置(図26(b)参照)にある場合、第1指掛部86b3は左斜め上方を向いており、第2指掛部86b4は右斜め上方を向いており、第3指掛部86b5は略右方を向いている。ここで、前扉103の右端縁103bと中心部Оとの距離G1(49.1[mm])および内枠102の右端縁102bと中心部Оとの距離G2(51.1[mm])は、第3指掛部86b5の最外径部86b5´と中心部Оとの距離D3(39.3[mm])よりも大きいため、第3指掛部86b5が前扉103の右端縁103bおよび内枠102の右端縁102bよりも右方に突出することはない。
【0166】
以上より、操作ハンドル86が左打ち基準位置(図26(b)参照)にある場合、何れの指掛部86b3~86b5も前扉103の下端縁103aよりも下方に突出しておらず、また、前扉103の右端縁103bよりも右方に突出していない。さらに、何れの指掛部86b3~86b5も内枠102の下端縁102aよりも下方に突出しておらず、また、内枠102の右端縁102bよりも右方に突出していない。
【0167】
次に、操作ハンドル86が右打ち基準位置(図26(c)参照)にある場合、第1指掛部86b3は略上方を向いており、第2指掛部86b4は右方を向いており、第3指掛部86b5は略下方を向いている。ここで、前扉103の右端縁103bと中心部Оとの距離G1(49.1[mm])および内枠102の右端縁102bと中心部Оとの距離G2(51.1[mm])は、第2指掛部86b4の最外径部86b4´と中心部Оとの距離D2(45.6[mm])よりも大きい。そのため、第2指掛部86b4が前扉103の右端縁103bおよび内枠102の右端縁102bよりも右方に突出することはない。また、前扉103の下端縁103aと中心部Оとの距離F1(40.0[mm])および内枠102の下端縁102aと中心部Оとの距離F2(45.0[mm])は、第3指掛部86b5の最外径部86b5´と中心部Оとの距離D3(39.3[mm])よりも大きい。そのため、第3指掛部86b5が前扉103の下端縁103aおよび内枠102の下端縁102aよりも下方に突出することはない。
【0168】
以上より、操作ハンドル86が右打ち基準位置(図26(c)参照)にある場合、何れの指掛部86b3~86b5も前扉103の下端縁103aよりも下方に突出しておらず、また、前扉103の右端縁103bよりも右方に突出していない。さらに、何れの指掛部86b3~86b5も内枠102の下端縁102aよりも下方に突出しておらず、また、内枠102の右端縁102bよりも右方に突出していない。
【0169】
このように、操作ハンドル86の第1~第3指掛部86b3~86b5は、操作ハンドル86が初期位置および右打ち基準位置にある場合、前扉103の下端縁103aおよび内枠102の下端縁102aから下方に突出していない。そのため、作業者が前扉103または前扉103が取り付けられた内枠102を床等に置いた場合でも、第1~第3指掛部86b3~86b5が床等と接触しない。したがって、床等との接触に起因して操作ハンドル86が破損するリスクを低減することができる。特に、昨今のパチンコ機の前扉には、演出効果の向上を目的として大型の意匠部材が設置されることが多く、このような意匠部材が設置された前扉は非常に重量が大きくなるため、作業者は前扉103を床等に置く機会が増えている。そこで、このようなパチンコ機において、この操作ハンドル86の第1~第3指掛部86b3~86b5の寸法を採用すれば、大型の意匠部材を前扉に設置しつつも、操作ハンドルの指掛部を適切に保護することができる。
【0170】
また、操作ハンドル86の第1~第3指掛部86b3~86b5は、操作ハンドル86が左打ち基準位置にある場合において、前扉103の下端縁103aおよび内枠102の下端縁102aから下方に突出していない。つまり、操作ハンドル86の第1~第3指掛部86b3~86b5は、操作ハンドル86が初期位置、右打ち基準位置、および左打ち基準位置の如何なる回転操作位置にある場合でも、前扉103の下端縁103aおよび内枠102の下端縁102aから下方に突出していない。そのため、作業者が前扉103または前扉103が取り付けられた内枠102を床等に置いた場合でも、第1~第3指掛部86b3~86b5と床等との接触を確実に防ぐことができるので、床等との接触に起因して操作ハンドル86が破損するリスクをさらに低減することができる。
【0171】
また、操作ハンドル86の第1~第3指掛部86b3~86b5は、操作ハンドル86が初期位置および右打ち基準位置にある場合、前扉103の右端縁103bおよび内枠102の右端縁102bから右方に突出していない。そのため、作業者が前扉103または前扉103が取り付けられた内枠102を床等に置いた場合でも、第1~第3指掛部86b3~86b5が周囲に配置されている物等と接触しない。したがって、そのような周囲の物等との接触に起因して操作ハンドル86が破損するリスクを低減することができる。
【0172】
また、操作ハンドル86の第1~第3指掛部86b3~86b5は、操作ハンドル86が左打ち基準位置にある場合、前扉103の右端縁103bおよび内枠102の右端縁102bから右方に突出していない。つまり、操作ハンドル86の第1~第3指掛部86b3~86b5は、操作ハンドル86が初期位置、右打ち基準位置、および左打ち基準位置の如何なる位置にある場合でも、前扉103の右端縁103bおよび内枠102の右端縁102bから右方に突出していない。そのため、作業者が前扉103または前扉103が取り付けられた内枠102を床等に置いた場合でも、第1~第3指掛部86b3~86b5と周囲に配置された物等との接触を確実に防ぐことができるので、そのような周囲の物等との接触に起因して操作ハンドル86が破損するリスクをさらに低減することができる。
【0173】
また、第1指掛部86b3は、第2指掛部86b4および第3指掛部86b5よりも突出量が大きいが、操作ハンドル86が右打ち基準位置にある場合、この第1指掛部86b3の最外径部86b3´が回転軌道の最下点に位置しない。このように設計しておけば、操作ハンドル86のフェイスカバー86cの下端部と、前扉103の下端縁103aまたは内枠102の下端縁102aとの距離(図27参照)は比較的小さいので、第1指掛部86b3の最外径部86b3´が前扉103の下端縁103aおよび内枠102の下端縁102aから下方に突出することをさらに確実に防止することができる。
【0174】
なお、上記実施形態では、操作ハンドル86の第1~第3指掛部86b3~86b5は、初期位置および最大回転位置において、前扉103の下端縁103aおよび右端縁103bと、内枠102の下端縁102aおよび右端縁102bと、の双方から突出しないように形成されていたが、この構成に限られない。指掛部86b3~86b5は、初期位置および最大回転位置において、前扉103の下端縁103aおよび右端縁103bと、内枠102の下端縁102aおよび右端縁102bと、の何れか一方から突出しないように形成されていてもよい。
【0175】
次に、図28および図29を参照して、操作ハンドル86の回転トルクNの大きさと、操作ハンドル86の回転操作位置との関係の詳細について説明する。
【0176】
図28は、本実施形態例の操作ハンドル86(実施例)と、実施例に対する比較例1~3についての回転操作位置に対する回転トルクNの大きさの実測値を示している。なお、実施例については実線で示し、比較例1~3については二点鎖線、点線、および一点鎖線で示している。
【0177】
図28に示すように、実施例(操作ハンドル86)では、初期位置から回転操作を開始させるために必要な回転トルク(以下、「第1回転トルク」という。)の大きさは、6.8[N・mm]となった。また、左打ち基準位置に回転操作させるために必要な回転トルク(以下、「第2回転トルク」という。)の大きさは、13.6[N・mm]となった。さらに、右打ち基準位置に回転操作させるために必要な回転トルク(以下、「第3回転トルク」という。)の大きさは、23.8[N・mm]となった。これにより、図29に示すように、第2回転トルクと第1回転トルクとの差分ΔAは6.8[N・mm]であり、第3回転トルクと第2回転トルクとの差分ΔBは10.2[N・mm]であることが導出される。
【0178】
また、図29に示すように、実施例では、左打ち基準位置までの回転操作角度φ1(以下、「第1回転操作角度」という。)は49.0度となり、右打ち基準位置までの回転操作角度(以下、「第2回転操作角度」という。)は100.0度となった。
【0179】
以上より、実施例では、第3回転トルクと第2回転トルクとの差分ΔB(10.2[N・mm])は、第2回転トルクと第1回転トルクとの差分ΔA(6.8[N・mm])よりも大きく、この差分ΔAの2倍(13.8[N・mm])よりも小さいことが分かる。つまり、実施例は、回転操作位置に対する回転トルクNの大きさが図28に示す値を取るように、操作リング86bの中心突起86b30にコイルバネ86b40を巻き付けて、このコイルバネ86b40の両端部を係止している(図25(a)参照)。そのため、第1回転トルクの大きさを小さくすることができ、しかも回転トルクNの変化量を抑えている(つまり、曲線の傾きを小さくしている。)。
【0180】
具体的には、差分ΔA(第2回転トルクと第1回転トルクとの差分)が小さくなっているので、初期位置から左打ち基準位置までの間に回転トルクが急激に増加せず、遊技者はスムーズに操作ハンドル86を回転操作することができる。また、差分ΔB(第3回転トルクと第2回転トルクとの差分)が小さくなっているので、左打ち基準位置から右打ち基準位置までの間に回転トルクが急激に増加せず、遊技者はスムーズに操作ハンドル86を操作することができる。このように、初期位置から左打ち基準位置を経由して右打ち基準位置に至るまで操作ハンドル86を楽に操作することができるため、長時間に亘る遊技でも遊技者を疲労し難くすることができる。
【0181】
また、実施例では、操作ハンドル86の左打ち基準位置に対応する第1回転操作角度(49度)は、右打ち基準位置に対応する第2回転操作角度(100度)の半分以下の値になっている。一般的には、遊技中においては右打ちよりも左打ちを行うことの方が多いため、操作ハンドル86を左打ち基準位置に瞬時に回転操作できるようにしており、遊技者の負担をさらに軽減できる。
【0182】
比較例1は、実施例に比べて前述した回転トルク増加要素が大きく影響している操作ハンドルである。この比較例1では、図28に示すように、第1回転トルクの大きさは59.4[N・mm]になっており、第2回転トルクの大きさは79.2[N・mm]になっており、第3回転トルクの大きさは143.6[N・mm]になっていた。これにより、図29に示すように、第2回転トルクと第1回転トルクの差分ΔAは19.8[N・mm]であり、第3回転トルクと第2回転トルクの差分ΔBは64.4[N・mm]であることが導出される。また、第1回転操作角度は60.0度になっており、第2回転操作角度は120.0度になっていた。
【0183】
以上より、比較例1では、第3回転トルクと第2回転トルクの差分ΔB(64.4[N・mm])は、第2回転トルクと第1回転トルクの差分ΔA(19.8)よりも大きく、この差分ΔAの2倍(39.6[N・mm])よりも大きいことが分かる。よって、第1回転トルクが大きく、また、操作ハンドルを回転操作せるにつれて回転トルクの変化量が大きくなるので(つまり、曲線の傾きが増加していくので)、長時間に亘る遊技で遊技者は非常に疲労する。
【0184】
比較例2は、比較例1よりも回転トルク増加要素は大きく影響していないが、実施例に比べて回転トルク増加要素が大きく影響している操作ハンドルである。この比較例2では、図28に示すように、第1回転トルクの大きさは57.6[N・mm]になっており、第2回転トルクの大きさは62.4[N・mm]になっており、第3回転トルクの大きさは91.2[N・mm]になっていた。これにより、第2回転トルクと第1回転トルクの差分ΔAは、4.8[N・mm]であり、第3回転トルクと第2回転トルクの差分ΔBは、28.8[N・mm]であることが導出される。また、第1回転操作角度は40.0度になっており、第2回転操作角度は120.0度になっていた。
【0185】
以上より、比較例2では、第3回転トルクと第2回転トルクの差分ΔB(28.8)は、第2回転トルクと第1回転トルクの差分ΔA(4.8)よりも大きく、この差分ΔAの2倍(9.6)よりも大きいことが分かる。よって、第1回転トルクが比較例1と同様に大きく、また、比較例1ほどではないものの、操作ハンドルを回転操作せるにつれて回転トルクの変化量が徐々に大きくなるので(つまり、曲線の傾きが緩やかに増加していくので)、長時間に亘る遊技で遊技者は疲労し易い。
【0186】
比較例3は、比較例2よりも回転トルク増加要素が大きく影響していないが、実施例に比べて回転トルク増加要素が大きく影響している操作ハンドルである。この比較例3では、図28に示すように、第1回転トルクの大きさは29.7[N・mm]になっており、第2回転トルクの大きさは54.5[N・mm]になっており、第3回転トルクの大きさは94.1[N・mm]になっていた。これにより、図29に示すように、第2回転トルクと第1回転トルクの差分ΔAは、24.8[N・mm]であり、第3回転トルクと第2回転トルクの差分ΔBは、39.6[N・mm]であることが導かれる。また、第1回転操作角度は45.0度になっており、第2回転操作角度は110.0度になっていた。
【0187】
以上より、比較例3について、第3回転トルクと第2回転トルクの差分ΔB(39.6[N・mm])は、第2回転トルクと第1回転トルクの差分ΔA(24.8)よりも大きく、この差分ΔAの2倍(49.6[N・mm])よりも小さいことが分かる。よって、比較例3は、第1回転トルクが比較例1.2よりは小さいが実施例よりは大きく、また、比較例2よりも操作ハンドルを回転操作せるにつれて回転トルクの変化量が大きくなるので(つまり、曲線の傾きが増加していくので)、遊技者は疲労し易い。
【0188】
このように、実施例と比較例1~3とを比べて明らかなように、実施例(操作ハンドル86)は長時間に亘る遊技でも遊技者が疲労し難い最適な操作ハンドルである。
【0189】
なお、上記第2実施形態例で説明した操作ハンドル86は、第1実施形態例の操作ハンドにも採用することができる。この場合においても、上記第2実施形態の操作ハンドル86と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0190】
P パチンコ機(遊技機)
H ヒンジ機構(回転軸)
3 前扉
103a (前扉の)下端縁
4 本体枠
104a (本体枠の)下端縁
19d 識別実行手段(判断部)
31 上意匠部材(上装飾部材)
86 操作ハンドル
86b3 第1指掛部(指掛部)
86b4 第2指掛部(指掛部)
86b5 第3指掛部(指掛部)
図1
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