(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】成膜装置、調整方法及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/04 20060101AFI20221130BHJP
C23C 14/24 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
C23C14/04 A
C23C14/24 G
(21)【出願番号】P 2020166058
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100188868
【氏名又は名称】小川 智丈
(74)【代理人】
【識別番号】100221327
【氏名又は名称】大川 亮
(72)【発明者】
【氏名】石井 博
【審査官】篠原 法子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-019370(JP,A)
【文献】特開2004-095419(JP,A)
【文献】特開2020-141121(JP,A)
【文献】国際公開第2019/129364(WO,A1)
【文献】特開2008-103648(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146025(WO,A1)
【文献】特開昭53-144262(JP,A)
【文献】特開2001-230307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
H01L 51/50-51/56
H01L 27/32
H05B 33/00-33/28
H01L 21/67-21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を真空に保持するチャンバと、
前記チャンバの内部に設けられ、基板の周縁部を支持する基板支持手段と、
前記チャンバの内部に設けられ、マスクを支持するマスク支持手段と、
前記基板と前記マスクとのアライメントを行うアライメント手段と、
を備える成膜装置であって、
前記チャンバの内部が真空に保持されている状態で、
かつ、前記基板支持手段が前記基板を支持しておらず、前記マスク支持手段にマスクが支持されていない状態において、前記基板支持手段と前記マスク支持手段との相対的な傾きを調整する調整動作を行う調整手段を備える、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
請求項1に記載の成膜装置であって、
前記調整手段は、前記基板支持手段を動かすことにより、前記調整動作を行う、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の成膜装置であって、
前記基板支持手段を支持する複数の支持軸を備え、
前記調整手段は、前記複数の支持軸のうちの少なくとも一部の支持軸の軸方向の位置を調整する、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項4】
請求項3に記載の成膜装置であって、
前記支持軸に対する前記基板支持手段の角度を可変とするように前記支持軸及び前記基板支持手段を接続する屈曲部を備える、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項5】
請求項3に記載の成膜装置であって、
前記支持軸及び前記基板支持手段の間に設けられる球面軸受を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項6】
請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載の成膜装置であって、
前記複数の支持軸を支持する昇降部材を備え、
前記調整手段は、前記昇降部材に対する前記複数の支持軸のそれぞれの軸方向の位置を調整する、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項7】
請求項3乃至請求項6のいずれか1項に記載の成膜装置であって、
前記調整手段は、前記支持軸に形成されたネジと螺合する調整ナットを含む、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の成膜装置であって、
前記基板支持手段と前記マスク支持手段との相対的な傾きを検出する検出手段を備える、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の成膜装置であって、
前記基板支持手段の側に設けられ、前記マスク支持手段との接触を検出する複数のタッチセンサを備える、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の成膜装置であって、
前記基板支持手段と前記マスク支持手段との間の距離を検出する複数の測距センサを備える、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項
10のいずれか1項に記載の成膜装置であって、
前記アライメント手段は、
前記基板支持手段及び前記マスク支持手段の少なくとも一方を重力方向に移動させ、前記基板支持手段によって支持された前記基板及び前記マスク支持手段によって支持された前記マスクを重力方向に接近及び離隔させる接離手段と、
前記接離手段によって前記基板と前記マスクとを部分的に接触させた状態で、前記基板と前記マスクとの位置ずれ量を計測する計測動作を行う計測手段と、
前記接離手段によって前記基板と前記マスクとを離隔させた状態で、前記計測動作によって計測された前記位置ずれ量に基づいて、前記基板と前記マスクとの相対位置を変更する変位動作を行う変位手段と、
前記位置ずれ量が許容範囲内になるまで前記計測動作と前記変位動作とを繰り返し実行する制御手段と、を有する、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項
11のいずれか1項に記載の成膜装置であって、
前記調整手段は、前記チャンバの外部に設けられた操作部を有する、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項13】
請求項1乃至請求項
12のいずれか一項に記載の成膜装置であって、
前記マスクを介して前記基板上に成膜する成膜手段を備える、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項14】
内部を真空に保持するチャンバと、
前記チャンバの内部に設けられ、基板の周縁部を支持する基板支持手段と、
前記チャンバの内部に設けられ、マスクを支持するマスク支持手段と、
前記基板と前記マスクとのアライメントを行うアライメント手段と、
を備える成膜装置の調整方法であって、
前記チャンバの内部を真空にする工程と、
前記チャンバの内部が真空に保持されている状態で、前記基板支持手段と前記マスク支持手段との相対的な傾きを調整する調整工程と、を備
え、
前記調整工程では、前記基板支持手段が前記基板を支持しておらず、かつ、前記マスク支持手段が前記マスクを支持していない状態において、前記相対的な傾きが調整される、
ことを特徴とする調整方法。
【請求項15】
請求項
14に記載の調整方法によって、前記基板支持手段と前記マスク支持手段との相対的な傾きを調整する工程と、
前記マスクを介して前記基板上に成膜する成膜工程と、を有する、
ことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置の調整技術に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイ等の製造においては、チャンバ内でマスクを用いて基板上に蒸着物質が成膜される。成膜の前処理としてマスクと基板とのアライメントが行われ、両者が重ね合わされる。基板はその周縁部が支持された状態でアライメントが行われる(例えば特許文献1)。アライメントの際、チャンバの内部は真空状態である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/2220009号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チャンバの内部を真空状態にすると、チャンバの外部の圧力(大気圧)とチャンバの内部の圧力の差によりチャンバに歪が生じる場合がある。この結果、大気圧下では平行度が保たれていた、基板支持部材とマスク支持部材との間に意図しない傾きが生じる場合がある。この相対的な傾きは、基板とマスクのアライメントの誤差要因となる。同様に、基板を冷却する冷却プレートとマスク支持部材との間に意図しない傾きが生じる場合があり、これは基板の冷却の均一性を低下させる場合がある。
【0005】
本発明は、チャンバの内外気圧差による歪がもたらす影響を低減する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、例えば、
内部を真空に保持するチャンバと、
前記チャンバの内部に設けられ、基板の周縁部を支持する基板支持手段と、
前記チャンバの内部に設けられ、マスクを支持するマスク支持手段と、
前記基板と前記マスクとのアライメントを行うアライメント手段と、
を備える成膜装置であって、
前記チャンバの内部が真空に保持されている状態で、かつ、前記基板支持手段が前記基板を支持しておらず、前記マスク支持手段にマスクが支持されていない状態において、前記基板支持手段と前記マスク支持手段との相対的な傾きを調整する調整動作を行う調整手段を備える、
ことを特徴とする成膜装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、チャンバの内外気圧差による歪がもたらす影響を低減する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本発明の一実施形態に係る成膜装置の概略図。
【
図9】(A)及び(B)は平行度調整時の成膜装置の動作説明図。
【
図11】(A)及び(B)は平行度調整時の成膜装置の動作説明図。
【
図14】(A)~(C)はアライメント装置の動作説明図。
【
図15】(A)~(C)はアライメント装置の動作説明図。
【
図16】(A)~(C)はアライメント装置の動作説明図。
【
図17】(A)~(C)はアライメント装置の動作説明図。
【
図18】(A)及び(B)はアライメント装置の動作説明図。
【
図19】マスク台に平行度調整ユニットを設けた例を示す成膜装置の概略図。
【
図21】(A)は有機EL表示装置の全体図、(B)は1画素の断面構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<第一実施形態>
<電子デバイスの製造ライン>
図1は、本発明の成膜装置が適用可能な電子デバイスの製造ラインの構成の一部を示す模式図である。
図1の製造ラインは、例えば、スマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネルの製造に用いられるもので、基板100が成膜ブロック301に順次搬送され、基板100に有機ELの成膜が行われる。
【0011】
成膜ブロック301には、平面視で八角形の形状を有する搬送室302の周囲に、基板100に対する成膜処理が行われる複数の成膜室303a~303dと、使用前後のマスクが収納されるマスク格納室305とが配置されている。搬送室302には、基板100を搬送する搬送ロボット(搬送手段)302aが配置されている。搬送ロボット302aは、基板100を保持するハンドと、ハンドを水平方向に移動する多関節アームとを含む。換言すれば、成膜ブロック301は、搬送ロボット302aの周囲を取り囲むように複数の成膜室303a~303dが配置されたクラスタ型の成膜ユニットである。なお、成膜室303a~303dを総称する場合、或いは、区別しない場合は成膜室303と表記する。
【0012】
基板100の搬送方向(矢印方向)で、成膜ブロック301の上流側、下流側には、それぞれ、バッファ室306、旋回室307、受渡室308が配置されている。製造過程において、各室は真空状態に維持される。なお、
図1においては成膜ブロック301を1つしか図示していないが、本実施形態に係る製造ラインは複数の成膜ブロック301を有しており、複数の成膜ブロック301が、バッファ室306、旋回室307、受渡室308で構成される連結装置で連結された構成を有する。なお、連結装置の構成はこれに限定はされず、例えばバッファ室306又は受渡室308のみで構成されていてもよい。
【0013】
搬送ロボット302aは、上流側の受渡室308から搬送室302への基板100の搬入、成膜室303間での基板100の搬送、マスク格納室305と成膜室303との間でのマスクの搬送、及び、搬送室302から下流側のバッファ室306への基板100の搬出、を行う。
【0014】
バッファ室306は、製造ラインの稼働状況に応じて基板100を一時的に格納するための室である。バッファ室306には、カセットとも呼ばれる基板収納棚と、昇降機構とが設けられる。基板収納棚は、複数枚の基板100を基板100の被処理面(被成膜面)が重力方向下方を向く水平状態を保ったまま収納可能な多段構造を有する。昇降機構は、基板100を搬入又は搬出する段を搬送位置に合わせるために基板収納棚を昇降させる。これにより、バッファ室306には複数の基板100を一時的に収容し、滞留させることができる。
【0015】
旋回室307は基板100の向きを変更する装置を備えている。本実施形態では、旋回室307は、旋回室307に設けられた搬送ロボットによって基板100の向きを180度回転させる。旋回室307に設けられた搬送ロボットが、バッファ室306で受け取った基板100を支持した状態で180度旋回し受渡室308に引き渡すことで、バッファ室306内と受渡室308とで基板の前端と後端が入れ替わる。これにより、成膜室303に基板100を搬入する際の向きが、各成膜ブロック301で同じ向きになるため、基板Sに対する成膜のスキャン方向やマスクの向きを各成膜ブロック301において一致させることができる。このような構成とすることで、各成膜ブロック301においてマスク格納室305にマスクを設置する向きを揃えることができ、マスクの管理が簡易化されユーザビリティを高めることができる。
【0016】
製造ラインの制御系は、ホストコンピュータとしてライン全体を制御する上位装置300と、各構成を制御する制御装置14a~14d、309、310とを含み、これらは有線又は無線の通信回線300aを介して通信可能である。制御装置14a~14dは、成膜室303a~303dに対応して設けられ、後述する成膜装置1を制御する。なお、制御装置14a~14dを総称する場合、或いは、区別しない場合は制御装置14と表記する。
【0017】
制御装置309は搬送ロボット302aを制御する。制御装置310は旋回室307の装置を制御する。上位装置300は、基板100に関する情報や搬送タイミング等の指示を各制御装置14、309、310に送信し、各制御装置14、309、310は受信した指示に基づき各構成を制御する。
【0018】
<成膜装置の概要>
図2は本発明の一実施形態に係る成膜装置1の概略図である。成膜装置1は、基板100に蒸着物質を成膜する装置であり、マスク101を用いて所定のパターンの蒸着物質の薄膜を形成する。成膜装置1で成膜が行われる基板100の材質は、ガラス、樹脂、金属等の材料を適宜選択可能であり、ガラス上にポリイミド等の樹脂層が形成されたものが好適に用いられる。蒸着物質としては、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物など)などの物質である。成膜装置1は、例えば表示装置(フラットパネルディスプレイなど)や薄膜太陽電池、有機光電変換素子(有機薄膜撮像素子)等の電子デバイスや、光学部材等を製造する製造装置に適用可能であり、特に、有機ELパネルを製造する製造装置に適用可能である。以下の説明においては成膜装置1が真空蒸着によって基板100に成膜を行う例について説明するが、本発明はこれに限定はされず、スパッタやCVD等の各種成膜方法を適用可能である。なお、各図において矢印Zは上下方向(重力方向)を示し、矢印X及び矢印Yは互いに直交する水平方向を示す。
【0019】
成膜装置1は、箱型の真空チャンバ3を有する。真空チャンバ3の内部空間3aは、真空雰囲気か、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持される。真空チャンバ3は、減圧ユニット3bに接続されている。減圧ユニット3bは、例えば、真空ポンプと、真空ポンプと内部空間3aとを断続する制御弁とを備え、内部空間3aを減圧して真空状態にするユニットである。なお、本明細書において「真空」とは、大気圧より低い圧力の気体で満たされた状態、換言すれば減圧状態をいう。
【0020】
真空チャンバ3の内部空間3aには、基板100を水平姿勢で支持する基板支持ユニット6(基板支持手段)、マスク101を支持するマスク台5(マスク支持手段)、成膜ユニット4、プレートユニット9が配置される。マスク101は、基板100上に形成する薄膜パターンに対応する開口パターンをもつメタルマスクであり、マスク台5の上に固定されている。マスク101としては、枠状のマスクフレームに数μm~数十μm程度の厚さのマスク箔が溶接固定された構造を有するマスクを用いることができる。マスク101の材質は特に限定はされないが、インバー材などの熱膨張係数の小さい金属を用いることが好ましい。成膜処理は、基板100がマスク101の上に載置され、基板100とマスク101とが互いに重ね合わされた状態で行われる。
【0021】
プレートユニット9は、冷却プレート10(冷却手段)と磁石プレート11とを備える。冷却プレート10は磁石プレート11の下に、磁石プレート11に対してZ方向に変位可能に吊り下げられている。具体的に述べると、磁石プレート11には複数の案内軸9bが上方に延設されており、枠体9aは案内軸9bが挿通されてそのX、Y方向の変位が規制されつつ、磁石プレート11上に支持されている。枠体9aには冷却プレート11が固定されている。冷却プレート11は枠体9aと共に磁石プレート11に対してZ方向には相対変位可能に構成されているが、X、Y方向には相対変位不能となっている。
【0022】
冷却プレート10は、成膜時に基板100の被成膜面の反対側の面(裏面)と接触し、マスク101との間に基板100を挟み込むためのプレートである。冷却プレート10は基板100の裏面と接触することにより、成膜時に基板100を冷却する機能を有する。なお、冷却プレート10は水冷機構等を備えて積極的に基板100を冷却するものに限定はされず、水冷機構等は設けられていないものの基板100と接触することによって基板100の熱を奪うような板状部材であってもよい。冷却プレート10は押さえ板と呼ぶこともできる。磁石プレート11は、磁力によってマスク101を引き寄せるプレートであり、基板100の上面に載置されて、成膜時に基板100とマスク101の密着性を向上する。
【0023】
成膜ユニット4は、ヒータ、シャッタ、蒸発源の駆動機構、蒸発レートモニタなどから構成され、蒸着物質を基板100に蒸着する蒸着源である。より具体的には、本実施形態では、成膜ユニット4は複数のノズル(不図示)がX方向に並んで配置され、それぞれのノズルから蒸着材料が放出されるリニア蒸発源である。蒸発源12は、蒸発源移動機構(不図示)によってY方向(装置の奥行き方向)に往復移動される。本実施形態では、成膜ユニット4が後述するアライメント装置2と同一の真空チャンバ3に設けられている。しかしながら、アライメントが行われる真空チャンバ3とは別のチャンバで成膜処理を行う実施形態では、成膜ユニット4は真空チャンバ3には配置されない。
【0024】
<アライメント装置>
成膜装置1は、基板100とマスク101とのアライメントを行うアライメント装置2を備える。アライメント装置2は、基板100の周縁部を支持する基板ホルダである基板支持ユニット6を備える。
図2に加えて
図3を参照して説明する。
図3は基板支持ユニット6の説明図であり、その斜視図である。基板支持ユニット6は、矩形の枠状のベース部60と、ベース部60から内側へ突出した複数の爪状の載置部61及び62を備える。なお、載置部61及び62は「受け爪」又は「フィンガ」とも呼ばれることがある。複数の載置部61はベース部60の長辺側に間隔を置いて配置され、複数の載置部62はベース部60の短辺側に間隔を置いて配置されている。各載置部61、62には基板100の周縁部が載置される。各載置部61、62の各載置面は同一水平面上に位置するように調整される。ベース部60は、支持部材65及び支持軸66を介して梁部材222に吊り下げられている。
【0025】
なお、
図3の例ではベース部60は矩形状の基板100の外周を取り囲むような切れ目のない矩形枠形としたが、これに限定はされず、部分的に切り欠きがある矩形枠形であってもよい。ベース部60に切り欠きを設けることで、搬送ロボット302aから基板支持ユニット6の載置部61へと基板100を受け渡す際に搬送ロボット302aを、ベース部60を避けて退避させることができるようになり、基板100の搬送及び受け渡しの効率を向上させることができる。
【0026】
基板支持ユニット6は、また、複数のクランプユニット63(挟持部)を備える。クランプユニット63は、クランプ部64を昇降する電動シリンダ等のアクチュエータを備える。各クランプ部64は各載置部61に対応して設けられており、クランプ部64と載置部61とで基板100の周縁部を挟んで保持することが可能である。基板100の支持態様としては、このようにクランプ部64と載置部61とで基板100の周縁部を挟んで保持する態様の他、クランプユニット63及びクランプ部64を設けずに載置部61及び62に基板100を載置するだけの態様も採用可能である。
【0027】
各クランプユニット63は支持部材65に支持されている。支持部材65はベース部60の長辺に沿って延設されており、本実施形態の場合、二つの支持部材65が設けられている。支持部材65は複数の支持軸66で吊り下げられている。本実施形態の場合、一つの支持部材65に二つの支持軸66が連結されており、支持軸66は合計で4つ設けられている。しかし、支持軸66の数は3以上であれば、基板支持ユニット6の水平方向の姿勢調整が可能である。
【0028】
支持軸66は、真空チャンバ3の上壁部30に形成された開口部を通過して上方に延設されており、その上端部において昇降プレート220に連結されている。各支持軸66が通過する上壁部30の開口部は、各支持軸66がX方向及びY方向に変位可能な大きさを有している。真空チャンバ3の気密性を維持するため、支持軸66の下端部と上壁部30との間には、いわゆるベローズなどの可撓性を有する袋蛇腹状のシール部材Jが備えられており、上壁部30の開口部を気密に閉鎖している。
【0029】
本実施形態では後述する構成により昇降プレート220が昇降され、これにより基板支持ユニット6が昇降される。昇降プレート220と支持軸66との間には平行度調整ユニット222(調整手段)が設けられている。
図4は支持軸66と、昇降プレート220及び支持部材65とを連結する構造を示す断面図である。
【0030】
本実施形態の平行度調整ユニット222は、昇降プレート220に対する各支持軸66のZ方向の取付位置を独立して調整する機構である。本実施形態の場合、基板支持ユニット6に対して四つの支持軸66が設けられているため、平行度調整ユニット222によって基板支持ユニット6の4点のZ方向の位置を調整することができる。これにより、平行度調整ユニット222は、基板支持ユニット6の、マスク台5に対する相対的な傾きを調整する調整動作を行うことができる。より具体的に述べると、各載置部61、62により規定される基板100の載置面と、マスク台5により規定されるマスク101の載置面との平行度を調整することができる。
【0031】
なお、本実施形態の平行度調整ユニット222は、全ての支持軸66に個別の機構を設けている。平行度調整ユニット222という名称は、個別の機構を指す意味の他、これらを総称する意味としても用いられる。別の実施形態として、一部の支持軸66には平行度調整ユニット222を設けなくてもよい。例えば、四つの支持軸66のうち、三つの支持軸66が平行度調整ユニット222により昇降プレート220に対する取付位置が調整され、残り一つの支持軸66は昇降プレート220に対して自在継手を介して連結されてもよい。あるいは、一つの支持軸66だけに平行度調整ユニット222が設けられ、残りの支持軸66は昇降プレート220に対して自在継手を介して連結されてもよい。このような形態においても、基板支持ユニット6とマスク台5との相対的な傾きを一定の範囲で調整することができる。
【0032】
本実施形態の平行度調整ユニット222は、作業者が手動で操作可能な調整機構であり、作業者により操作される操作部222aを備える。操作部222aは、支持軸66と同軸上で昇降プレート220に回転自在に、スライドブッシュ222bを介して支持された調整ナットである。支持軸66の上端部の周面にはネジ66aが形成されており、操作部222aはネジ66aと螺合する。操作部222aを作業者が回転させることにより、昇降プレート220に対する支持軸66のZ方向の位置が変化する。
【0033】
本実施形態の場合、平行度調整ユニット222は、真空チャンバ3の外部に配置されている。したがって、真空チャンバ3の内部が真空に保持された状態で、作業者が操作部222aを操作して基板支持ユニット6の、マスク台5に対する相対的な傾きを調整することができる。
【0034】
なお、本実施形態では、平行度調整ユニット222を作業者の手動により動作する機構としたが、アクチュエータにより動作する機構としてもよい。例えば、
図4に例示するように、モータ222cを駆動源とした機構により操作部222aを回転して昇降プレート220に対する支持軸66のZ方向の位置を変化させる機構であってもよい。このような自動機構の場合、真空チャンバ3内に昇降プレート220及び平行度調整ユニット222を配置する構成も採用可能であり、真空チャンバ3の内部が真空に保持された状態で、基板支持ユニット6の、マスク台5に対する相対的な傾きを調整することができる。
【0035】
支持軸66と支持部材65とは、接続部67を介して連結されている。接続部67は、本実施形態の場合、支持軸66側の球体67aと、球体67aと嵌合する支持部材65側の受け部67bとを備え、球体67aは受け部67bに転動自在に保持された球面軸受け(自在継手)である。接続部67は、支持軸66に対する基板支持ユニット6の角度を可変とするように、支持軸66と基板支持ユニット6とを接続する屈曲部を構成する。接続部67が屈曲部を構成することから、各支持軸66の昇降プレート220に対するZ方向の位置を調整することにより、支持軸66、接続部67或いは基板支持ユニット6に歪みが生じることを回避できる。
【0036】
なお、接続部67の構成としては、本実施形態のように自在継手の他、ゴム、バネ等の弾性部材であってもよく、弾性部材は支持軸66や支持部材65よりも可撓性が高い部材であればよい。
【0037】
載置部61はベース部60に対して、ボルト61aにより固定される。載置部61とベース部60との間には、位置調整用のシム61bを介在させることができる。シム61bの厚さ、枚数によって各載置部61の載置面を同一水平面に調整することができる。なお、ベース部60に対する載置部62の固定構造も載置部61と同様であり、載置部61及び62の各載置面を共通面上に位置させることができる。
【0038】
ベース部60の底面には凹部が形成されており、この凹部にセンサSR1が配置されている。センサSR1は基板支持ユニット6とマスク台5との相対的な傾きを検出するセンサである。本実施形態の場合、センサSR1は、マスク台5と接触することで先端の可動接触子がZ方向に変位することを検出する機械式のタッチセンサである。センサSR1は感圧式のタッチセンサであってもよい。センサSR1はベース部60に複数設けられている。
図5はその配置例を示すベース部60の底面図である。図示の例では、X方向に二列、Y方向に三つで、合計六つのセンサSR1がベース部60に配置されている。
【0039】
基板支持ユニット6をマスク台5に対して降下させていった場合、両者の平行度が高いと、各センサSR1が同時にONとなり、両者の平行度が低いと各センサSR1のONタイミングにずれが生じる。これによりマスク台5に対する基板支持ユニット6の相対的な傾きを検出することができる。本実施形態では、複数のセンサSR1が、それぞれの先端の可動接触子の基板支持ユニット6のベース部60の底面から突出する長さが互いに略等しくなるように、複数のセンサSR1がベース部60に取り付けられる。センサSR1がベース部60に取り付けられることで、大気圧によって真空チャンバ3が変形しても、センサSR1とベース部60との相対位置に生じる変化を小さくすることができる。すなわち、真空状態となっても、センサSR1の先端部の突出長さはほとんど変化せず、互いに略等しいままに維持される。したがって、マスク台5に対する基板支持ユニット6の平行度を検出することができる。なお、先端部の吸着面150から突出する長さを適当に変えることで、平行ではない所定の傾きを目標値として設定することもできる。
【0040】
次に、アライメント装置2は、基板支持ユニット6により周縁部が支持された基板100と、マスク101との相対位置を調整する位置調整ユニット20(変位手段)を備える。
図2に加えて
図6を参照して説明する。
図6は位置調整ユニット20の斜視図(一部透過図)である。位置調整ユニット20は、基板支持ユニット6をX-Y平面上で変位することにより、マスク101に対する基板100の相対位置を調整する。すなわち、位置調整ユニット20は、マスク101に対する基板100の相対位置を変更する変位動作を行う。換言すると、位置調整ユニット20は、マスク101と基板100の水平位置を調整するユニットであるとも言える。位置調整ユニット20は、基板支持ユニット6をX方向、Y方向及びZ方向の軸周りの回転方向に変位することができる。本実施形態では、マスク101の位置を固定し、基板100を変位してこれらの相対位置を調整するが、マスク101を変位させて調整してもよく、或いは、基板100とマスク101の双方を変位させてもよい。
【0041】
位置調整ユニット20は、固定プレート20aと、可動プレート20bと、これらのプレートの間に配置された複数のアクチュエータ201とを備える。固定プレート20aと、可動プレート20bは矩形の枠状のプレートであり、固定プレート20aは真空チャンバ3の上壁部30上に固定されている。アクチュエータ201は、本実施形態の場合、4つ設けられており、固定プレート20aの四隅に位置している。
【0042】
各アクチュエータ201は、駆動源であるモータ2011と、ガイド2012に沿って移動可能なスライダ2013と、スライダ2013に設けられたスライダ2014と、スライダ2014に設けられた回転体2015とを備える。モータ2011の駆動力は、ボールネジ機構等の伝達機構を介してスライダ2013に伝達され、スライダ2013を線状のガイド2012に沿って移動させる。回転体2015はスライダ2013と直交する方向に自由移動可能にスライダ2014に支持されている。回転体2015は、スライダ2014に固定された固定部と、固定部に対してZ方向の軸周りに自由回転自在な回転部とを有しており、回転部に可動プレート20bが支持されている。
【0043】
4つのアクチュエータ201のうち、固定プレート20aの対角上に位置する2つのアクチュエータ201のスライダ2013の移動方向はX方向であり、残り2つのアクチュエータ201のスライダ2013の移動方向はY方向である。4つのアクチュエータ201の各スライダ2013の移動量の組み合わせによって、固定プレート20aに対して可動プレート20bをX方向、Y方向及びZ方向の軸周りの回転方向に変位することができる。変位量は、例えば、各モータ2011の回転量を検出するロータリエンコーダ等のセンサの検出結果から制御することができる。
【0044】
可動プレート20b上には、フレーム状の架台21が搭載されており、架台21には距離調整手段としての距離調整ユニット22(昇降ユニット)及び昇降ユニット13が支持されている。可動プレート20bが変位すると、架台21、距離調整ユニット22及び昇降ユニット13が一体的に変位する。
【0045】
距離調整ユニット22は、基板支持ユニット6を昇降することで、基板支持ユニット6とマスク台5との距離を調整し、基板支持ユニット6によって周縁部が支持された基板100とマスク101とを基板100の厚み方向(Z方向)に接近及び離隔(離間)させる。換言すれば、距離調整ユニット22は、基板100とマスク101とを重ね合わせる方向に接近させたり、その逆方向に離隔させたりする接離手段である。なお、距離調整ユニット22によって調整する「距離」はいわゆる垂直距離(又は鉛直距離)であり、距離調整ユニットは、マスク101と基板100の垂直位置を調整するユニットであるとも言える。本実施形態では距離調整ユニット22は基板100を昇降させるユニットであるため、「基板昇降ユニット」とも呼ばれる。
【0046】
図2に示すように、距離調整ユニット22は板状の昇降部材である昇降プレート220を備える。架台21の外側部にはZ方向に延びるガイドレール21aが形成されており、昇降プレート220はガイドレール21aに沿ってZ方向に昇降自在である。昇降プレート220は、基板100を支持する基板支持ユニット6と一体に昇降するプレートであるため、「基板昇降プレート」とも呼ばれる。
【0047】
距離調整ユニット22は、また、架台21に支持され、昇降プレート220を昇降する駆動ユニット221を備えている。駆動ユニット221は、モータ221aを駆動源としてその駆動力を昇降プレート220に伝達する機構であり、伝達機構として本実施形態では、ボールネジ軸221bを有するボールネジ機構が採用されている。ボールネジ軸221bはZ方向に延設され、モータ221aの駆動力によりZ方向の軸周りに回転する。昇降プレート220にはボールネジ軸221bと噛み合うボールナットが固定されている。ボールネジ軸221bの回転とその回転方向の切り替えによって、昇降プレート220をZ方向に昇降することができる。昇降プレート220の昇降量は、例えば、各モータ221aの回転量を検出するロータリエンコーダ等のセンサの検出結果から制御することができる。これにより、基板100を支持している載置部61及び62のZ方向における位置を制御し、基板100とマスク101との接触、離隔を制御することができる。
【0048】
なお、本実施形態の距離調整ユニットは、マスク台5の位置を固定し、基板支持ユニット6を移動してこれらのZ方向の距離を調整するが、これに限定はされない。基板支持ユニット6の位置を固定し、マスク台5を移動させて調整してもよく、或いは、基板支持ユニット6とマスク台5の双方を移動させて両者の距離を調整してもよい。
【0049】
ここで、平行度調整ユニット222と距離調整ユニット22(昇降プレート220)との機能の相違について説明する。距離調整ユニット22の昇降プレート220が昇降する場合、昇降プレート220に支持されている複数の支持軸66が全て同じ量だけ昇降する。つまり、距離調整ユニット22は、複数の支持軸66を同期して昇降する。そのため、基板支持ユニット6のマスク台5に対する平行度ないしは相対的な傾きが保たれた状態で吸着板15が昇降する。一方、平行度調整ユニット222は、複数の支持軸66のいずれかを、他の支持軸66と独立に昇降プレート220に対して鉛直方向(軸方向)に移動させることができる。これにより、平行度調整ユニット222は複数の支持軸66によって支持される基板支持ユニット6の傾きを調整することができる。
【0050】
昇降ユニット13は、真空チャンバ3の外部に配置された、板状の昇降部材である昇降プレート12を昇降させることで、昇降プレート12に連結され、真空チャンバ3の内部に配置されたプレートユニット9を昇降する。プレートユニット9は複数の支持軸120を介して昇降プレート12と連結されている。
【0051】
支持軸120は、磁石プレート11から上方に延設されており、上壁部30の開口部、固定プレート20a及び可動プレート20bの各開口部、及び、昇降プレート220の開口部を通過して昇降プレート12に連結されている。昇降ユニット13は「冷却プレート昇降ユニット」又は「磁石プレート昇降ユニット」とも呼ばれ、昇降プレート12は「冷却プレート昇降プレート」又は「磁石プレート昇降プレート」とも呼ばれる。
【0052】
昇降プレート12は、架台21の内側部に形成され、Z方向に延びたガイドレール21bに沿ってZ方向に昇降自在である。昇降ユニット13は、架台21に支持され、昇降プレート12を昇降する駆動機構を備えている。昇降ユニット13の備える駆動機構は、モータ13aを駆動源としてその駆動力を昇降プレート12に伝達する機構であり、伝達機構として本実施形態では、ボールネジ軸13bを有するボールネジ機構が採用されている。ボールネジ軸13bはZ方向に延設され、モータ13aの駆動力によりZ方向の軸周りに回転する。
【0053】
昇降プレート12にはボールネジ軸13bと噛み合うボールナットが固定されている。ボールネジ軸13bの回転とその回転方向の切り替えによって、昇降プレート12をZ方向に昇降することができる。昇降プレート12の昇降量は、例えば、各モータ13aの回転量を検出するロータリエンコーダ等のセンサの検出結果から制御することができる。これにより、プレートユニット9のZ方向における位置を制御し、プレートユニット9と基板100との接触、離隔を制御することができる。
【0054】
各支持軸120が通過する上壁部30の開口部は、各支持軸120がX方向及びY方向に変位可能な大きさを有している。真空チャンバ3の気密性を維持するため、支持軸120の下端部と上壁部30との間には、可撓性を有する袋蛇腹状のシール部材Jが備えられており、上壁部30の開口部を気密に閉鎖している。
【0055】
昇降プレート12と支持軸120との間には平行度調整ユニット122(調整手段)が設けられている。平行度調整ユニット122は、昇降プレート12に対する支持軸120のZ方向の取付位置を独立して調整する機構である。本実施形態の場合、磁石プレート11に対して四つの支持軸120が設けられており、平行度調整ユニット122によって磁石プレート11の4点のZ方向の位置を調整することができる。各支持軸120と磁石プレート11とは接続部123を介して連結されている。
【0056】
上記のように冷却プレート10は磁石プレート11の下に、枠体9aを介して支持されており、平行度調整ユニット122によって磁石プレート11と共に冷却プレート10の、マスク台5に対する相対的な傾きを調整することができる。より具体的に述べると、磁石プレート11及び冷却プレート10の各下面と、マスク台5により規定されるマスク101の載置面との平行度を調整することができる。冷却プレート10の下面は基板100の冷却時に基板100に接触する面である。
【0057】
平行度調整ユニット122及び接続部123の構成は、平行度調整ユニット222及び接続部67と同じでよく、平行度調整ユニット222及び接続部67の構成及び変形例は平行度調整ユニット122及び接続部123に適用できる。
【0058】
冷却プレート10の底面には凹部が形成されており、この凹部にセンサSR2が配置されている。センサSR2は冷却プレート10とマスク台5との相対的な傾きを検出するセンサである。センサSR2は、センサSR1と同じでよく、センサSR1の配置、構成及び変形例はセンサSR2に適用できる。
【0059】
ここで、平行度調整ユニット122と昇降ユニット13(昇降プレート12)との機能の相違について説明する。昇降ユニット13の昇降プレート12が昇降する場合、昇降プレート12に支持されている複数の支持軸130が全て同じ量だけ昇降する。つまり、昇降ユニット13は、複数の支持軸130を同期して昇降する。そのため、冷却ユニット10のマスク台5に対する平行度ないしは相対的な傾きが保たれた状態で冷却プレート9が昇降する。一方、平行度調整ユニット122は、複数の支持軸130のいずれかを、他の支持軸130と独立に昇降プレート12に対して鉛直方向(軸方向)に移動させることができる。これにより、平行度調整ユニット122は複数の支持軸130によって支持される冷却ユニット10の傾きを調整することができる。
【0060】
アライメント装置2は、基板支持ユニット6により周縁部が支持された基板100とマスク101の位置ずれを計測する計測ユニット(計測ユニット7及び計測ユニット8(計測手段))を備える。
図2に加えて
図7を参照して説明する。
図7は計測ユニット7及び計測ユニット8の説明図であり、基板100とマスク101の位置ずれの計測態様を示している。本実施形態の計測ユニット7及び計測ユニット8はいずれも画像を撮像する撮像装置(カメラ)である。計測ユニット7及び計測ユニット8は、上壁部30の上方に配置され、上壁部30に形成された窓部(不図示)を介して真空チャンバ3内の画像を撮像可能である。
【0061】
基板100には基板ラフアライメントマーク100a及び基板ファインアライメントマーク100bが形成されており、マスク101にはマスクラフアライメントマーク101a及びマスクファインマーク101bが形成されている。以下、基板ラフアライメントマーク100aを基板ラフマーク100aと呼び、基板ファインアライメントマーク100bを基板ファインマーク100bと呼び、両者をまとめて基板マークと呼ぶことがある。また、マスクラフアライメントマーク101aをマスクラフマーク101aと呼び、マスクファインアライメントマーク101bをマスクファインマーク101bと呼び、両者をまとめてマスクマークと呼ぶことがある。
【0062】
基板ラフマーク100aは、基板100の短辺中央部に形成されている。基板ファインマーク100bは、基板100の四隅に形成されている。マスクラフマーク101aは、基板ラフマーク100aに対応してマスク101の短辺中央部に形成されている。また、マスクファインマーク101bは基板ファインマーク101bに対応してマスク101の四隅に形成されている。
【0063】
計測ユニット8は、対応する基板ファインマーク100bとマスクファインマーク101bの各組(本実施形態では4組)を撮像するように4つ設けられている。計測ユニット8は、相対的に視野が狭いが高い解像度(例えば数μmのオーダ)を有する高倍率CCDカメラ(ファインカメラ)であり、基板100とマスク101との位置ずれを高精度で計測する。計測ユニット7は、1つ設けられており、対応する基板ラフマーク100aとマスクラフマーク101aの各組(本実施形態では2組)を撮像する。
【0064】
計測ユニット7は、相対的に視野が広いが低い解像度を有する低倍率CCDカメラ(ラフカメラ)であり、基板100とマスク101との大まかな位置ずれを計測する。
図7の例では2組の基板ラフマーク100a及びマスクラフマーク101aの組を1つの計測ユニット7でまとめて撮像する構成を示したが、これに限定はされない。計測ユニット8と同様に、基板ラフマーク100a及びマスクラフマーク101aの各組をそれぞれ撮影するように、それぞれの組に対応する位置に計測ユニット7を2つ設けてもよい。
【0065】
本実施形態では、計測ユニット7の計測結果に基づいて基板100とマスク101との位置調整(ラフアライメント)を行った後、計測ユニット8の計測結果に基づいて基板100とマスク101との精密な位置調整(ファインアライメント)を行う。
【0066】
ここで、アライメントによる位置調整の精度を向上させるためには、計測ユニットによる各マークの検出精度を高めることが求められる。そのため、高い精度での位置調整が求められるファインアライメントにおいて用いられる計測ユニット8(ファインカメラ)としては、高い解像度で画像を取得可能なカメラを用いることが好ましい。しかしながら、カメラの解像度を高めると被写界深度が浅くなるため、撮影対象となる基板100に形成されているマークとマスク101に形成されているマークを同時に撮影するために両マークを計測ユニット8の光軸方向においてより一層接近させる必要がある。
【0067】
そこで本実施形態では、ファインアライメントにおいて基板ファインマーク100b及びマスクファインマーク101bを検出する際に、基板100が部分的にマスク101と接触する位置まで基板100をマスク101に接近させる。基板100は周縁部を支持されているために自重によって中央部が撓んだ状態となるため、典型的には、基板100の中央部が部分的にマスク101と接触した状態となる。
【0068】
なお、ラフアライメント(ラフアライメント)においては基板100とマスク101とが離隔した状態で、基板ラフマーク100a及びマスクラフマーク101aの検出と、基板100及びマスク101の位置の調整と、が行われる。ラフアライメントにおいては、比較的被写界深度の深い計測ユニット7(ラフカメラ)を用いることで、基板100とマスク101とが離隔したままアライメントを行うことができる。本実施形態ではこのように、ラフアライメントによって基板100とマスク101とを離隔させたまま大まかに位置の調整を行ってから、位置調整の精度がより高いファインアライメントを行うようにしている。
【0069】
これにより、ファインアライメントにおいてマークの検出のために基板100とマスク101を接近させて接触させた際には、基板100とマスク101はその相対位置が既にある程度調整されているため、基板100の上に形成されている膜のパターンとマスク101の開口パターンとがある程度整列した状態で接触するようになる。そのため、基板100とマスク101とが接触することによる基板100の上に形成されている膜へのダメージを低減することができる。
【0070】
すなわち、本実施形態のように基板100とマスク101を離隔させたまま大まかに位置調整を行うラフアライメントと、基板100とマスク101とを部分的に接触させる工程を含むファインアライメントと、を組み合わせて実行することにより、基板100の上に形成されている膜へのダメージを低減しつつ高精度の位置調整を実現することができる。ラフアライメント及びファインアライメントの詳細については後述する。
【0071】
制御装置14は、成膜装置1の全体を制御する。制御装置14は、処理部(制御手段)141、記憶部142、入出力インタフェース(I/O)143及び通信部144を備える。処理部141は、CPUに代表されるプロセッサであり、記憶部142に記憶されたプログラムを実行して成膜装置1を制御する。記憶部142は、ROM、RAM、HDD等の記憶デバイス(記憶手段)であり、処理部141が実行するプログラムの他、各種の制御情報を記憶する。I/O143は、処理部141と外部デバイスとの間の信号を送受信するインタフェースである。外部デバイスには表示部15が含まれる。表示部15はタッチパネルディスプレイ等の入力機能付き表示装置であり、作業者に対する情報の提示と、作業者からの指示の入力を受け付ける。
【0072】
通信部144は通信回線300aを介して上位装置300又は他の制御装置14、309、310等と通信を行う通信デバイスであり、処理部141は通信部144を介して上位装置300から情報を受信し、或いは、上位装置300へ情報を送信する。なお、制御装置14、309、310や上位装置300の全部又は一部がPLCやASIC、FPGAで構成されてもよい。
【0073】
<制御例>
制御ユニット14の処理部141が実行する成膜装置1の制御例について説明する。
図8は処理部141の処理例を示すフローチャートであり、特に平行度調整処理の例を示すフローチャートである。ここでは、真空チャンバ3内を成膜時と同様の真空度に保持されている状態で、基板支持ユニット6とマスク台5の平行度の調整及び冷却ユニット10とマスク台5の平行度の調整を行う。
【0074】
真空チャンバ3の内部空間3aを真空状態にすると、内外の差圧によってその壁部に歪みが生じる場合がある。基板100とマスク101のアライメントや冷却ユニット10による基板100の冷却は、成膜直前に成膜時と同様の真空環境下で行われる。大気圧下で基板支持ユニット6及び冷却ユニット10とマスク台5の平行度が許容範囲であったとしても、真空環境下では真空チャンバ3の歪みによって平行度が許容範囲外となる場合があり、アライメント精度の低下や、基板100の冷却の均一性の低下を招く要因となる。
【0075】
本実施形態では、真空チャンバ3内を成膜時と同様の真空度に保持されている状態で、事前に基板支持ユニット6とマスク台5の平行度の調整及び冷却ユニット10とマスク台5の平行度の調整を行うことで、真空チャンバ3の内外気圧差による歪が、基板100とマスク101のアライメントや、冷却ユニット10による冷却にもたらす影響を低減する。
【0076】
S1では減圧ユニット3bにより真空チャンバ3の内部空間3aを減圧し、成膜時と同様の真空度に維持する。
図9(A)はこのときの成膜装置1の動作説明図である。
図8の処理は、基板支持ユニット6、マスク台5にそれぞれ基板100及びマスク101が無い状態で実行される。
【0077】
S2では平行度検出処理1を実行する。ここでは基板支持ユニット6とマスク台5との平行度をセンサSR1によって検出する。平行度は、基板支持ユニット6とマスク台5との相対的な傾きの程度を示す度合いである。平行度検出処理1は、例えば、距離調整ユニット22により基板支持ユニット6を降下させ、複数のセンサSR1によるマスク台5の各検出タイミングのずれから平行度を特定する。
図9(B)はこのときの成膜装置1の動作説明図である。基板支持ユニット6は、各センサSR1がマスク台5に接触する予め定めた位置まで降下される。
【0078】
基板支持ユニット6とマスク台5とが平行、或いはこれらの傾きが比較的小さい場合、全てのセンサSR1はほぼ同時にマスク台5との接触を検出する。一方で、基板支持ユニット6とマスク台5との相対的な傾きが比較的大きい場合、いずれかのセンサSR1がマスク台5との接触を検出した時点でマスク台5との距離が比較的大きい別のセンサSR1が存在することになる。よって、各センサSR1の検出時の基板支持ユニット6の高さを比較・演算することで、マスク台5に対する基板支持ユニット6の傾きを検出することができる。また、最初のセンサSR1が接触を検出した時点から、全てのセンサSR1が接触を検出するまでの基板支持ユニット6の降下量が大きい場合、あるいは、最初のセンサSR1が接触を検出した時点から所定の量だけ基板支持ユニット6を降下させても接触を検出しないセンサSR1がある場合などに、マスク台5に対する基板支持ユニット6の傾きが単に許容範囲外であると判断してもよい。
【0079】
S3ではS2の処理で検出したマスク台5に対する基板支持ユニット6の傾きが予め定めた許容範囲内か否かを判定し、許容範囲内であればS5へ許容範囲外であればS4へ進む。S4では調整指示処理を実行する。ここでは表示部15に基板支持ユニット6の平行度の調整を作業者に指示する表示を行う。
図10はその表示例を示している。図示の例では、作業者に対して、各支持軸66のZ方向の位置調整指示が表示されており、四つの支持軸66のうち、一つ(B軸)を下げ、別の一つ(C軸)を上げることが支持されている。作業者は、
図11(A)に模式的に図示するように、対応する支持軸66の平行度調整ユニット222を操作して、昇降プレート220に対する支持軸66のZ方向の位置調整を行う。本実施形態の平行度調整ユニット222は、真空チャンバ3の外部に配置されているため、作業者は真空チャンバ3の真空状態を維持したまま、調整作業を行うことができる。
【0080】
表示部15に対して、作業者が調整終了の指示入力を行うと、距離調整ユニット22により基板支持ユニット6を上昇させた後、S2へ戻って同様の処理が繰り返される。これにより、基板支持ユニット6とマスク台5との平行度が、真空環境下で確保される。
【0081】
S5では平行度検出処理2を実行する。ここでは冷却プレート10とマスク台5との平行度をセンサSR2によって検出する。平行度検出処理2は、平行度検出処理1と同様の処理である。例えば、昇降ユニット13によりプレートユニット9を降下させ、複数のセンサSR2によるマスク台5の各検出タイミングのずれから平行度を特定する。
図11(B)はこのときの成膜装置1の動作説明図である。プレートユニット9は、各センサSR2がマスク台5に接触する予め定めた位置まで降下される。
【0082】
冷却プレート10とマスク台5とが平行、或いはこれらの傾きが比較的小さい場合、全てのセンサSR2はほぼ同時にマスク台5との接触を検出する。一方で、冷却プレート10とマスク台5との相対的な傾きが比較的大きい場合、いずれかのセンサSR2がマスク台5との接触を検出した時点でマスク台5との距離が比較的大きい別のセンサSR2が存在することになる。よって、各センサSR2の検出時の冷却プレート10の高さ(プレートユニット9の高さ)を比較・演算することで、マスク台5に対する冷却プレート10の傾きを検出することができる。また、傾きが単に許容範囲内か許容範囲外かを判断するだけでもよい。
【0083】
S6ではS5の処理で検出したマスク台5に対する冷却プレート10の傾きが予め定めた許容範囲内か否かを判定し、許容範囲内であれば処理を終了し、許容範囲外であればS7へ進む。S7では調整指示処理を実行する。ここでは表示部15に冷却プレート10の平行度の調整を作業者に指示する表示を行う。S4と同様の処理である。作業者は、表示部15の指示にしたがって、対応する支持軸120の平行度調整ユニット122を操作して、昇降プレート12に対する支持軸120のZ方向の位置調整を行う。本実施形態の平行度調整ユニット122は、真空チャンバ3の外部に配置されているため、作業者は真空チャンバ3の真空状態を維持したまま、調整作業を行うことができる。
【0084】
表示部15に対して、作業者が調整終了の指示入力を行うと、昇降ユニット13によりプレートユニット9を上昇させた後、S5へ戻って同様の処理が繰り返される。これにより、冷却プレート10とマスク台5との平行度が、真空環境下で確保される。
【0085】
次に、
図12及び
図13は処理部141の処理例を示すフローチャートであり、基板100とマスク101とのアライメントに関する処理例を示す。
図14~
図18はアライメント装置2の動作説明図である。
【0086】
S11で、処理部141は、これから処理する基板100の基板情報を取得する。基板情報は基板100の識別情報や仕様等に関する情報である。基板情報は上位装置300が管理する。
【0087】
S12で、真空チャンバ3内に搬送ロボット302aによって基板100が搬送され、基板支持ユニット6に基板100が支持される。基板100はマスク101の上方で基板支持ユニット6によって支持され、マスク101から離隔した状態に維持される。S13及びS14で基板100とマスク101とのアライメントが行われる。
【0088】
S13ではラフアライメントが行われる。ここでは、計測ユニット7の計測結果に基づいて、基板100とマスク101との大まかな位置調整を行う。
図14(A)~
図14(C)はS13のアライメント動作を模式的に示している。
図14(A)は計測ユニット7による基板ラフマーク100a及びマスクラフマーク101aの計測時の態様を示している。基板100はその周縁部が載置部61及び62に載置され、かつ、載置部61とクランプ部64との間に挟持されている。基板100は、その中央部が自重によって下向きに撓んでいる。プレートユニット9は基板100の上方に待機している。
【0089】
計測ユニット7により、基板ラフマーク100a及びマスクラフマーク101aの相対位置が計測される。計測結果(基板100とマスク101の位置ずれ量)が許容範囲内であればラフアライメントを終了する。計測結果が許容範囲外であれば、計測結果に基づいて位置ずれ量を許容範囲内に収めるための制御量(基板100の変位量)が設定される。なお、以下の説明において「位置ずれ量」とは、位置ずれの量そのものに加えて、位置ずれの方向を含むものとする。ここでいう位置ずれの量は、基板100およびマスク101を同一平面に対してZ方向に投影した投影図(垂直投影)における、基板100とマスク101との間の距離であり、いわゆる水平距離を指す。設定された制御量に基づいて、位置調整ユニット20が作動される。これにより、
図14(B)に示すように、基板支持ユニット6がX-Y平面上で変位され、マスク101に対する基板100の相対位置が調整される。
【0090】
計測結果が許容範囲内であるか否かの判定は、例えば、対応する基板ラフマーク100aとマスクラフマーク101aの間の距離をそれぞれ算出し、その距離の平均値や二乗和を、予め設定された閾値と比較することで行うことができる。あるいは、後述するファインアライメントの場合と同様に、基板100とマスク101とを位置合わせするためにそれぞれのマスクラフマーク101aが位置すべき理想的な位置(マスクラフマーク目標位置)を、それぞれのマスクラフマーク101aに対応する基板ラフマーク100aからそれぞれ算出してもよい。そして、対応するマスクラフマーク101aとマスクラフマーク目標位置との間の距離をそれぞれ算出し、その距離の平均値や二乗和を、予め設定された閾値と比較することで判定を行ってもよい。
【0091】
相対位置の調整後、
図14(C)に示すように、再度、計測ユニット7により、基板ラフマーク100a及びマスクラフマーク101aの相対位置が計測される。計測結果が許容範囲内であればラフアライメントを終了する。計測結果が許容範囲外であれば、マスク101に対する基板100の相対位置が再度調整される。以降、計測結果が許容範囲内となるまで、計測と相対位置調整が繰り返される。ラフアライメント中、基板100は終始マスク101から上方に離隔している。したがって、初回のファインアライメント(後述)が行われるまでは、基板100はマスク101から離隔した状態に維持されている。
【0092】
ラフアライメントを終了すると、
図12のS14でファインアライメントが行われる。ここでは計測ユニット8の計測結果に基づいて、基板100とマスク101との精密な位置調整を行う。詳細は後述する。
【0093】
ファインアライメントを終了すると、
図12のS15で基板100をマスク101に載置する処理が行われる。ここでは駆動ユニット221を駆動して基板支持ユニット6を降下させ、
図17(A)に示すように基板100とマスク101とを重ね合わせる制御を実行する。具体的には、基板支持ユニット6の載置部61及び62の上面(基板支持面)の高さがマスク101の上面の高さと一致するように、基板支持ユニット6を降下させる。これにより、基板100はマスク101上に載置され、基板支持ユニット6及びマスク101によって支持された状態となる。この状態において、基板100は基板100の被処理面の全体がマスク101と接触する。
【0094】
続いて昇降ユニット13を駆動してプレートユニット9を降下させ
図17(B)に示すように基板100に冷却プレート10を接触させる。その後、昇降ユニット13を駆動して、冷却プレート10の高さを維持したまま磁石プレート11を冷却プレート10に対して降下させ、10(C)に示すように磁石プレート11を基板100およびマスク101に接近させる。磁石プレート11をマスク101に接近させることで、磁石プレート11による磁力によりマスク101を引き寄せ、マスク101を基板100に密着させることができる。
【0095】
図12のS16では、基板100の周縁部のクランプを解除し、計測ユニット8による最終計測(「成膜前計測」とも呼ぶ)を行う。クランプの解除においてはクランプユニット63の駆動により、
図18(A)に示すように基板100の周縁部からクランプ部64を上昇させる。その後、基板支持ユニット6をさらに降下させて基板支持ユニット6を基板100から離隔させるようにしてもよい。これにより、基板100がマスク100と冷却プレート10の2つのみと接触した状態とすることができる。最終計測においては、計測ユニット8により、基板100とマスク101の位置ずれ量が計測される。
図18(B)は計測ユニット8による基板ファインマーク100b及びマスクファインマーク101bの計測時の態様を示している。4つの計測ユニット8により、4組のア基板ファインマーク100b及びマスクファインマーク101bの相対位置が計測される。
【0096】
S17で、S16での最終計測の計測結果(基板100とマスク101の位置ずれ量)が許容範囲内であるか否かが判定される。許容範囲内であればS18へ進み、許容範囲外であればS14へ戻ってファインアライメントをやり直す。S14へ戻る際には、基板100の周縁部を再度クランプし、プレートユニット9を上昇させて基板100から離隔させ、基板100を上昇させる動作が必要となる。なお、計測結果が許容範囲内であるか否かの判定は、S13やS14と同様に行うことができる。
【0097】
図12のS18では成膜処理が行われる。ここでは成膜ユニット4によりマスク101を介して基板100の下面に薄膜が形成される。成膜処理が終了するとS19で基板100を搬送ロボット302aにより真空チャンバ3から搬出する。以上により処理が終了する。
【0098】
<ファインアライメント>
S14のファインアライメントの処理について説明する。
図13はS14のファインアライメントの処理を示すフローチャートである。ファインアライメントは、計測動作(S21、S22)と、位置調整動作(変位動作。S24、S25)とを含む計測・位置調整動作を、計測動作における計測結果が許容範囲内になるまで繰り返す処理である。
【0099】
S21では基板100とマスク101とを基板100の厚み方向(Z方向)に接近させる接近動作が実行される。ここでは、駆動ユニット221を駆動して基板支持ユニット6を降下させ、基板100をマスク101に部分的に接触させる。
【0100】
図15(A)は接近動作の例を示している。基板100は、下方へ撓んだ中央部がマスク101に接触する高さまで降下されている。基板100は中央部以外の部分はマスク101から離隔している。基板100とマスク101とが部分的に接触するまで基板100とマスク101とを接近させることで、基板100に形成された基板ファインマーク100bとマスク101に形成されたマスクファインマーク101bとを、被写界深度の浅い計測ユニット8によって同時に撮影して位置ずれを計測することができる。
【0101】
なお、計測の際に基板100とマスク101とを全体的に接触させず、部分的に接触させることで、基板100に既に形成された薄膜がマスク101との接触によって損傷を受けることを可及的に抑制することができる。
【0102】
S22では、計測ユニット8により、部分的に接触した基板100とマスク101の位置ずれ量が計測される。
図15(B)は計測ユニット8による基板ファインマーク100b及びマスクファインマーク101bの計測時の態様を示している。4つの計測ユニット8により、4組の基板ファインマーク100b及びマスクファインマーク101bの相対位置が計測される。
【0103】
S22では、また、計測ユニット8による基板ファインマーク100bの計測の後に、計測結果に基づいて、4つの基板ファインマーク100bにそれぞれ対応する4つのマスクファインマーク101bの目標位置(マスクファインマーク目標位置)をそれぞれ算出する。ここで、マスクファインマーク目標位置は、基板100とマスク101とを位置合わせするためにそれぞれのマスクファインマーク101bが位置すべき理想的な位置とし、各マークの位置の設計寸法に基づいて算出する。
【0104】
S23では、S12の計測結果(基板100とマスク101の位置ずれ)が許容範囲内か否かが判定される。ここでは、例えば、4組の基板ファインマーク100b及びマスクファインマーク101bのそれぞれについて、S22で算出されたマスクファインマーク目標位置と、マスクファインマーク101bの位置との間の距離をそれぞれ算出する。そして、算出された距離の平均値や二乗和を、予め設定された閾値と比較して、距離が閾値以下であれば許容範囲内と判定され、距離が閾値を超えている場合は許容範囲外と判定される。S23の判定結果が許容範囲内であればファインアライメントを終了し、許容範囲外であればS24へ進む。
【0105】
S24では基板100とマスク101とを基板100の厚み方向(Z方向)に離隔させる離隔動作が実行される。ここでは、駆動ユニット221を駆動して基板支持ユニット6を上昇させ、基板100をマスク101から離隔させる。
図15(C)は離隔動作の例を示している。基板100は、下方へ撓んだ中央部がマスク101に接触しない高さまで上昇されている。基板100はマスク101から離隔しており、基板100はマスク101と接触していない。基板100とマスク101とを離隔することで、その後のS17の位置調整動作において、基板100の被成膜領域がマスク101と擦れて基板100に既に形成された薄膜が損傷を受けることを回避できる。
【0106】
S25では、S22の計測結果に基づいて基板100とマスク101の相対位置を変更する位置調整動作(変位動作)が実行される。ここでは、S22の計測結果に基づいて基板100の変位量が設定され、設定された変位量に基づいて、調整ユニット20が作動される。これにより、
図16(A)に示すように、基板支持ユニット6がX-Y平面上で変位され、マスク101に対する基板100の相対位置が調整される。
【0107】
S25の処理が終了すると、S21へ戻って同様の処理が繰り返される。すなわち、
図16(A)の位置調整動作の後、
図16(B)に示すように再び接近動作(S21)が実行され、基板100の中央部がマスク101に接触する高さまで基板100が降下される。続いて
図16(C)に示すように再び計測(S22)が実行され、部分的に接触した基板100とマスク101の位置ずれが計測される。
【0108】
<第二実施形態>
第一実施形態では、基板支持ユニット6及び冷却プレート10を動かすことにより、マスク台5に対するこれらの平行度を調整する構成としたが、マスク台5を動かしてもよい。
図19はその一例を示す成膜装置1の模式図である。
【0109】
マスク台5は、複数の支持軸50によって上壁部30から吊り下げられて支持されている。支持軸50の下端部は、接続部52を介してマスク台5に連結されている。支持軸50の上端部と上壁部30との間には平行度調整ユニット51(調整手段)が設けられている。
【0110】
平行度調整ユニット51は、上壁部30に対する支持軸50のZ方向の取付位置を独立して調整する機構である。本実施形態の場合、マスク台5に対して四つの支持軸50が設けられており、平行度調整ユニット51によってマスク台5の4点のZ方向の位置を調整することができる。平行度調整ユニット51及び接続部52の構成は、平行度調整ユニット222及び接続部67と同じでよく、平行度調整ユニット222及び接続部67の構成及び変形例は平行度調整ユニット51及び接続部52に適用できる。平行度調整ユニット51は真空チャンバ3の外部に設けられているため、真空チャンバ3の内部空間3aが真空状態を維持して、作業者が平行度調整ユニット51の調整作業を手動で行うことができる。また、平行度調整ユニット222について説明したことと同様に、平行度調整ユニット51を、モータ53を駆動源とした機構により自動化してもよい。
【0111】
平行度の検出においては、センサSR1又はセンサSR2を用いることができる。しかし、マスク台5にセンサSR1又はSR2に相当するセンサを設けてもよい。また、
図19の例では、平行度調整ユニット51と、平行度調整ユニット122及び222を併存した例を例示しているが、平行度調整ユニット51のみを設けた態様であってもよい。
【0112】
<第三実施形態>
第一実施形態では、センサSR1及びSR2としてタッチセンサを例示したが、測距センサであってもよい。
図20はその一例を示す。図示の例では、センサSR1に代えて、ベース部60に測距センサSR3が設けられている。測距センサSR3は例えばマスク台5にレーザ光を照射してその反射光を受光することで基板支持ユニット6とマスク台5とのZ方向の距離を測距する。測距センサSR3の配置は、
図5に例示したセンサSR1の配置と同様の配置が採用可能である。測距センサSR3を用いた構成においては、基板支持ユニット6とマスク台5とを離間した状態で、両者の平行度を検出することができる。センサSR2として測距センサを用いる場合も、同様である。
【0113】
<電子デバイスの製造方法>
次に、電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。この例の場合、
図1に例示した成膜ブロック301が、製造ライン上に、例えば、3か所、設けられる。
【0114】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。
図21(A)は有機EL表示装置50の全体図、
図21(B)は1画素の断面構造を示す図である。
【0115】
図21(A)に示すように、有機EL表示装置50の表示領域51には、発光素子を複数備える画素52がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。
【0116】
なお、ここでいう画素とは、表示領域51において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。カラー有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子52R、第2発光素子52G、第3発光素子52Bの複数の副画素の組み合わせにより画素52が構成されている。画素52は、赤色(R)発光素子と緑色(G)発光素子と青色(B)発光素子の3種類の副画素の組み合わせで構成されることが多いが、これに限定はされない。画素52は少なくとも1種類の副画素を含めばよく、2種類以上の副画素を含むことが好ましく、3種類以上の副画素を含むことがより好ましい。画素52を構成する副画素としては、例えば、赤色(R)発光素子と緑色(G)発光素子と青色(B)発光素子と黄色(Y)発光素子の4種類の副画素の組み合わせでもよい。
【0117】
図21(B)は、
図21(A)のA-B線における部分断面模式図である。画素52は、基板53上に、第1の電極(陽極)54と、正孔輸送層55と、赤色層56R・緑色層56G・青色層56Bのいずれかと、電子輸送層57と、第2の電極(陰極)58と、を備える有機EL素子で構成される複数の副画素を有している。これらのうち、正孔輸送層55、赤色層56R、緑色層56G、青色層56B、電子輸送層57が有機層に当たる。赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。
【0118】
また、第1の電極54は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層55と電子輸送層57と第2の電極58は、複数の発光素子52R、52G、52Bにわたって共通で形成されていてもよいし、発光素子ごとに形成されていてもよい。すなわち、
図21(B)に示すように正孔輸送層55が複数の副画素領域にわたって共通の層として形成された上に赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bが副画素領域ごとに分離して形成され、さらにその上に電子輸送層57と第2の電極58が複数の副画素領域にわたって共通の層として形成されていてもよい。
【0119】
なお、近接した第1の電極54の間でのショートを防ぐために、第1の電極54間に絶縁層59が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層60が設けられている。
【0120】
図21(B)では正孔輸送層55や電子輸送層57が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を有する複数の層で形成されてもよい。また、第1の電極54と正孔輸送層55との間には第1の電極54から正孔輸送層55への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成してもよい。同様に、第2の電極58と電子輸送層57の間にも電子注入層を形成してもよい。
【0121】
赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bのそれぞれは、単一の発光層で形成されていてもよいし、複数の層を積層することで形成されていてもよい。例えば、赤色層56Rを2層で構成し、上側の層を赤色の発光層で形成し、下側の層を正孔輸送層又は電子ブロック層で形成してもよい。あるいは、下側の層を赤色の発光層で形成し、上側の層を電子輸送層又は正孔ブロック層で形成してもよい。このように発光層の下側又は上側に層を設けることで、発光層における発光位置を調整し、光路長を調整することによって、発光素子の色純度を向上させる効果がある。
【0122】
なお、ここでは赤色層56Rの例を示したが、緑色層56Gや青色層56Bでも同様の構造を採用してもよい。また、積層数は2層以上としてもよい。さらに、発光層と電子ブロック層のように異なる材料の層が積層されてもよいし、例えば発光層を2層以上積層するなど、同じ材料の層が積層されてもよい。
【0123】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。ここでは、赤色層56Rが下側層56R1と上側層56R2の2層からなり、緑色層56Gと青色層56Bは単一の発光層からなる場合を想定する。
【0124】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)及び第1の電極54が形成された基板53を準備する。なお、基板53の材質は特に限定はされず、ガラス、プラスチック、金属などで構成することができる。本実施形態においては、基板53として、ガラス基板上にポリイミドのフィルムが積層された基板を用いる。
【0125】
第1の電極54が形成された基板53の上にアクリル又はポリイミド等の樹脂層をバーコートやスピンコートでコートし、樹脂層をリソグラフィ法により、第1の電極54が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層59を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。なお、本実施形態では、絶縁層59の形成までは大型基板に対して処理が行われ、絶縁層59の形成後に、基板53を分割する分割工程が実行される。
【0126】
絶縁層59がパターニングされた基板53を第1の成膜室303に搬入し、正孔輸送層55を、表示領域の第1電極54の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層55は、最終的に1つ1つの有機EL表示装置のパネル部分となる表示領域51ごとに開口が形成されたマスクを用いて成膜される。
【0127】
次に、正孔輸送層55までが形成された基板53を第2の成膜室303に搬入する。基板53とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、正孔輸送層55の上の、基板53の赤色を発する素子を配置する部分(赤色の副画素を形成する領域)に、赤色層56Rを成膜する。ここで、第2の成膜室で用いるマスクは、有機EL表示装置の副画素となる基板53上における複数の領域のうち、赤色の副画素となる複数の領域にのみ開口が形成された高精細マスクである。これにより、赤色発光層を含む赤色層56Rは、基板53上の複数の副画素となる領域のうちの赤色の副画素となる領域のみに成膜される。換言すれば、赤色層56Rは、基板53上の複数の副画素となる領域のうちの青色の副画素となる領域や緑色の副画素となる領域には成膜されずに、赤色の副画素となる領域に選択的に成膜される。
【0128】
赤色層56Rの成膜と同様に、第3の成膜室303において緑色層56Gを成膜し、さらに第4の成膜室303において青色層56Bを成膜する。赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bの成膜が完了した後、第5の成膜室303において表示領域51の全体に電子輸送層57を成膜する。電子輸送層57は、3色の層56R、56G、56Bに共通の層として形成される。
【0129】
電子輸送層57までが形成された基板を第6の成膜室303に移動し、第2電極58を成膜する。本実施形態では、第1の成膜室303~第6の成膜室303では真空蒸着によって各層の成膜を行う。しかし、本発明はこれに限定はされず、例えば第6の成膜室303における第2電極58の成膜はスパッタによって成膜するようにしてもよい。その後、第2電極68までが形成された基板を封止装置に移動してプラズマCVDによって保護層60を成膜して(封止工程)、有機EL表示装置50が完成する。なお、ここでは保護層60をCVD法によって形成するものとしたが、これに限定はされず、ALD法やインクジェット法によって形成してもよい。
【0130】
ここで、第1の成膜室303~第6の成膜室303での成膜は、形成されるそれぞれの層のパターンに対応した開口が形成されたマスクを用いて成膜される。成膜の際には、基板53とマスクとの相対的な位置調整(アライメント)を行った後に、マスクの上に基板53を載置して成膜が行われる。ここで、各成膜室において行われるアライメント工程は、上述のアライメント工程の通り行われる。
【0131】
<他の実施形態>
上記実施形態では、ファインアライメントにおいて、基板100とマスク101とを部分的に接触して位置ずれを計測したが、接触せずに両者を近接した状態で計測してもよい。
【0132】
上記実施形態では、マスク台5に対する基板支持ユニット6の相対的な傾き、および、マスク台5に対する冷却プレート10の相対的な傾きの両方を調整している。別の実施形態では、マスク台5に対する基板支持ユニット6の相対的な傾き、および、マスク台5に対する冷却プレート10の相対的な傾きのいずれか一方だけを調整する。基板支持ユニット6の傾きを調整しない場合には、調整ユニット222は設けられず、支持軸66が昇降プレート220に固定されてもよい。冷却プレート10の傾きを調整しない場合には、調整ユニット122は設けられず、支持軸130が昇降プレート12に固定されてもよい。
【0133】
さらに別の実施形態として、マスク台5に対する冷却プレート10の相対的な傾きを調整することに代えて、基板支持ユニット6に対する冷却プレート10の相対的な傾きを調整してもよい。この形態では、冷却プレート10に取り付けられたセンサSR1は、基板支持ユニット6との接触を検知する、あるいは、基板支持ユニット6までの距離を検知する。基板100とマスク101とのアライメントを行わずに成膜を行う場合には、基板100と冷却プレート10との平行度を高めることで、基板100を均一に冷却することができる。この場合、成膜装置はアライメント手段を有していなくてもよい。
【0134】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0135】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0136】
1 成膜装置、2 アライメント装置、5 マスク台(マスク支持手段)、6 基板支持ユニット(基板支持手段)、51 平行度調整ユニット(調整手段)、122 平行度調整ユニット(調整手段)、222 平行度調整ユニット(調整手段)