(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】放射線源のターゲット、侵襲的電磁放射線を生成する放射線源、放射線源の使用、及び放射線源のターゲットの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01J 35/08 20060101AFI20221130BHJP
H01J 35/12 20060101ALI20221130BHJP
H01J 35/30 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
H01J35/08 C
H01J35/08 E
H01J35/12
H01J35/30
H01J35/08 Z
(21)【出願番号】P 2020535116
(86)(22)【出願日】2019-01-25
(86)【国際出願番号】 EP2019051884
(87)【国際公開番号】W WO2019145493
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】102018201245.8
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504267828
【氏名又は名称】カール・ツアイス・インダストリーエレ・メステクニク・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】エルラー,マルコ
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0351370(US,A1)
【文献】特開2009-212058(JP,A)
【文献】特開2002-313266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 35/00 - 35/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線放射の形態の侵襲的電子放射線の放射線源(1)のためのターゲット(10)であって、
少なくとも1つのターゲット要素(20)であって、粒子が照射されると前記侵襲的電磁放射線を生成するように構成され、前記ターゲット要素(20)からの熱を散逸させるための基板装置(28)に連結される材料からなるターゲット要素(20)を含み、
前記ターゲット要素(20)は、前記ターゲット要素(20)の外面の第一の部分を形成する周辺面を有し、前記ターゲット要素(20)の前記外面はさらに、前記ターゲット要素(20)の側面(38)によっても形成され、前記側面(38)の範囲は前記ターゲット要素(20)の厚さ(D;D1、D2、D3)を画定し、前記側面(38)の外周線は前記周辺面の限界線を形成し、
前記ターゲット(10)は端面(22)を有し、その一部として前記ターゲット要素(20)の前記側面(38)は前記粒子の照射のために露出して配置され、
前記基板装置(28)は前記周辺面と接触し、前記ターゲット要素(20)は層として具現化されるようなターゲット(10)において、
前記ターゲット要素(20)は、前記厚さ(D)と比較してより大きい幅(B)を有し、前記外周線の全長は前記厚さ(D)と前記幅(B)によって画定され、前記基板装置は、前記周辺面と前記厚さ(D)の方向に相互に反対のその辺において接触し、
前記層状のターゲット要素(20)の前記厚さ(D)は、前記側面(38)において、前記幅(B)の方向に進むにつれて増大することを特徴とするターゲット(10)。
【請求項2】
前記周辺面は前記側面(38)より大きい、請求項1に記載のターゲット(10)。
【請求項3】
前記ターゲット要素(20)は、異なる辺長を有する多角形の基本輪郭を有し、前記側面(38)は前記基本輪郭のうち、最大の辺長を持たない辺を画定する、請求項1又は2に記載のターゲット(10)。
【請求項4】
前記ターゲット(10)は、異なる厚さ(D1、D2、D3)を有する複数のターゲット要素(20)を含み、前記露出側面(38)は共通の線に沿って配置される、請求項1~3の何れか1項に記載のターゲット(10)。
【請求項5】
前記基板装置(28)は前記ターゲット要素(20)を少なくとも部分的に取り囲む、請求項1~4の何れか1項に記載のターゲット(10)。
【請求項6】
前記基板装置(28)は、それらの間に前記ターゲット要素(20)の少なくとも1部分を受ける第一の基板要素(30)と第二の基板要素(32)とを有する、請求項1~5の何れか1項に記載のターゲット(10)。
【請求項7】
前記基板装置(28)は、冷却装置に接続された、又は接続可能な放熱要素又は放熱装置(34)の中に受けられる、請求項1~6の何れか1項に記載のターゲット(10)。
【請求項8】
前記基板装置(28)はダイヤモンド又はダイヤモンド含有材料を含み、及び/又は前記ターゲット要素(20)はタングステンからなる、請求項1~7の何れか1項に記載のターゲット(10)。
【請求項9】
X線放射の形態の侵襲的電磁放射線を生成するための放射線源(1)において、
-請求項1~8の何れか1項に記載のターゲット(10)と、
-粒子ビームを前記ターゲット(10)に対して放射するように構成された粒子ビーム源(12)と、
-
前記粒子ビームが向けられる前記ターゲット(10)の表面領域が変動される程、前記ターゲット(10)と前記粒子ビームを相互に関して可変的な方法で向き付け
るように構成された位置決め装置(26)と、を含む放射線源(1)。
【請求項10】
放射線源(1)の使用であって、
前記放射線源(1)は、侵襲的電磁放射線を生成するための放射線源(1)であり、
-ターゲット(10)であって、少なくとも1つのターゲット要素(20)であって、粒子が照射されると侵襲的電磁放射線を生成するように構成され、前記ターゲット要素(20)からの
熱を散逸させるための基板装置(28)に連結されるターゲット要素(20)を含み、
前記ターゲット要素(20)は、前記ターゲット要素(20)の外面の第一の部分を形成する周辺面を有し、前記ターゲット要素(20)の前記外面はさらに、前記ターゲット要素(20)の側面(38)によっても形成され、前記側面(38)の範囲は前記ターゲット要素(20)の厚さ(D;D1、D2、D3)を画定し、前記側面(38)の外周線は前記周辺面の限界線を形成し、
前記ターゲット(10)は端面(22)を有し、その一部として前記ターゲット要素(20)の前記側面(38)は前記粒子の照射のために露出して配置され、
前記ターゲット要素(20)は、前記厚さ(D)と比較してより大きい幅(B)を有し、前記外周線の全長は前記厚さ(D)と前記幅(B)によって画定され、
前記ターゲット要素(20)の前記厚さ(D)は、前記側面(38)において、前記幅(B)の方向に進むにつれて増大し、
前記基板装置(28)は前記周辺面と
前記厚さ(D)の方向に相互に反対のその辺におい接触するターゲット(10)と、
-粒子ビームを前記ターゲット(10)に照射するように構成された粒子ビーム源(12)と、
-
前記粒子ビームが向けられる前記ターゲット(10)の表面領域が変動される程、前記ターゲット(10)と前記粒子ビームを相互に関して可変的に向き付け
るように構成された位置決め装置(26)と、
を含む使用において、以下の
-粒子ビームを前記ターゲット(10)の端面(22)の第一の表面領域に向けるステップと、
-前記ターゲット(10)と前記粒子ビームの相対的な向きを、前記粒子ビームが前記ターゲット(10)の前記端面(22)の第二の表面領域に向けられる方法で変化させるステップと、
を含み、
前記端面(22)の前記第一及び第二の表面領域は、前記ターゲット(10)の1つ又は複数のターゲット要素(22)の露出側面(38)の、異なる厚さを有する領域を有する使用。
【請求項11】
X線放射の形態の侵襲的電磁放射線の放射線源(1)のためのターゲット(10)の製造方法であって、
-粒子が照射されると侵襲的電子放射線を生成するように構成される少なくとも1つのターゲット要素(20)が提供され、
-前記ターゲット要素(20)は、前記ターゲット要素(20)の外面の第一の部分を形成する周辺面を有し、
-前記周辺面は、前記ターゲット要素(20)からの熱を散逸させるための基板装置(28)と接触させられ、
-前記ターゲット要素(20)の前記外面はさらに、前記ターゲット要素(20)の側面(38)によっても形成され、前記側面(38)の範囲は前記ターゲット要素(20)の厚さ(D)を画定し、前記側面(38)の外周線は前記周辺面の限界線(R)を形成し、
-前記ターゲット要素(20)の前記側面(38)は、前記粒子の照射のために露出して配置され、前記ターゲット(10)の前記端面(22)の一部を形成し、
前記ターゲット要素(20)は層状に具現化され、それは前記厚さ(D)と比較してより大きい幅(B)を有し、
外周線の全長は、前記厚さ(D)と前記幅(B)によって画定され、前記基板装置は、前記厚さ(D)の方向に相互に反対のその辺において前記周辺面と接触する方法において、
前記層状のターゲット要素(20)の前記厚さ(D)は、前記側面(38)において前記幅(B)の方向に進むにつれて増大することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲット、放射線源、放射線源の使用、及びターゲットの製造方法に関する。特に、本発明は、ターゲット要素の露出面を有するターゲットに関する。ターゲット要素と共に対応する放射線源を使用することにより、露出面に粒子、特に電子を照射して、侵襲的電磁放射線を生成することができる。
【背景技術】
【0002】
侵襲的放射線、特にX線放射は工業用コンピュータ断層撮影(CT:computed tomography)の用途に使用される。検査対象物について得られた放射線写真の画像品質は、とりわけ、侵襲的放射線を生成するために侵襲的放射線が発生する放射線源のいわゆるターゲットに照射される粒子ビームの(特に電子ビームの)パワー密度(放射束密度)に依存する。粒子はターゲット中で減速し、その結果、侵襲的電磁放射線がいわゆる制動放射として発生する。粒子がターゲットと空間的に相互作用する領域は焦点とも呼ばれる。粒子ビームのパワー密度は、多くの用途について、侵襲的放射線の高い放射パワー及びそれゆえ、高い画像品質を実現するために、できるだけ大きくすることが意図される。しかしながら、粒子ビームのパワー密度が過剰に高いと、ターゲットは焦点において蒸発し、それゆえ損傷を受ける可能性がある。
【0003】
このような損傷を回避する1つの可能性は、粒子ビームを拡張することにある。すると、ターゲット上のスポットサイズは大きくなり、放射束密度が減少する。しかしながら、ターゲット上でのこれによる焦点の拡大によって、線源から発出する電磁放射線の点放射線源に対応する度合いが低くなり、放射線写真の画像シャープネスが低下し、それゆえ実現可能な画像品質も低下する。
【0004】
侵襲的放射線のパワーを低くすれば、より小さいスポットサイズを使用できる。しかしながら、パワーが低いと、侵襲的放射線を検出して物体の放射線写真を生成する既知の検出器により生成される画像は、信号対ノイズ比が低くなる。
【0005】
国際出願第2017/204850 A1号は、相互に整列された複数の領域が電子ビームに暴露されるX線放射源を開示している。この目的のために、X線ターゲットが放射線生成材料の層から形成され、個々の層は各々、基板と熱伝導的に緊密に接触する。その結果、X線ターゲットから散逸させることのできる熱の量が増大し、これによって電子ビームのより強力な照射が可能となる。
【0006】
また別の技術的背景は、国際出願第2017/092834 A1号パンフレット、特開2002 313266号公報、及び米国特許第5 148 462 A号明細書において見られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それゆえ、小さいスポットサイズと共に高い放射パワーで電磁放射線を発生することを可能にする、侵襲的電磁放射線を生成するためのソリューションを提供する必要がある。
【0008】
本発明者は概して、粒子ビーム拡張の代替案が必要であると認識してきた。前記代替案は、特に粒子の減速中にターゲットから発生する熱の放熱の改善にあるかもしれない。ターゲットからの放熱の改善により、衝突する粒子放射のパワー密度をより高くしながら、ターゲットの損傷を生じさせないようにすることが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本発明は付属の独立特許請求項に記載されているターゲット、放射線源、及び方法を提案する。有利な発展型は従属クレームに明記されている。
【0010】
侵襲的電磁放射線の放射線源のためのターゲットは少なくとも1つのターゲット要素を含み、これは粒子が照射されると侵襲的電磁放射線を生成するように構成され、ターゲット要素から熱を散逸させるための基板装置に連結される。ターゲット要素はさらに、周辺面、それゆえ周辺に自己完結的に延びてターゲット要素の外面の第一の部分を形成する表面を有する。ターゲット要素の外面は、それに加えて、ターゲット要素の側面によっても形成され、側面の範囲はターゲット要素の厚さを画定し、側面の外周線、それゆえ周辺に自己完結的に延びる限界線は周辺面の限界線を形成する。ターゲットはさらに端面を有し、その一部としてターゲット要素の側面が粒子の照射のために露出して配置される。基板装置は周辺面と接触する。
【0011】
前述のように、侵襲的電磁放射線は特に、加工物の透照により放射線写真が作成される工業用CT応用のためのX線放射とすることができる。ターゲット要素は概して、粒子ビーム(例えば、電子ビーム又は光子ビームの形態)を照射すると異なる波長のX線放射又は侵襲的放射線の形態の制動放射を発するように構成できる。Wellenlange zu emittieren.この目的のために、ターゲット要素は適当な材料、例えばタングステン等の材料(下記参照)を含むことができる。
【0012】
ターゲットは特に、非透過性ターゲット、すなわち反射ターゲットとして具現化される。このようなターゲットはダイレクトエミッタとも呼ばれる。粒子ビーム(特に利用可能な電子ビーム)のパワーは、例えば500Wとすることができる。生成される電磁放射線、特に使用可能なX線放射の分解能は、1μm~5μmとすることができる。焦点サイズは10μm~200μm、及び例えば5μm~10μmとすることができる。
【0013】
基板装置は好ましくは、金属と比較して高い熱伝導率と、高い融点を有する材料を含む。追加的又は代替的に、材料は電気的絶縁性を有するものとすることができる。特に材料は、粒子ビームが材料に衝突したときに電磁放射線を発しない、及び基本的にX線放射を発しないように設計できる。ターゲット要素から基板装置の材料までの熱伝達は、基板材料がターゲット要素の周辺面と接触している、及び/又はそれに接続されていることにより確保される。例えば、ターゲット要素を基板装置、例えばはんだ層等に固定するために、ターゲット要素と基板装置との間の直接接触及び/又は中間材料を介した間接接触を提供することが可能である。基板装置は、好ましくは実質的にブロック形状であり、及び/又はターゲット要素に沿って(特に、その全長に沿って)延びる少なくとも1つの基板要素をさらに含むことができる。
【0014】
ターゲット要素の周辺面は(例えば、後で説明される円柱形及び/又はワイヤ形状の実施形態の場合)、少なくとも部分的に湾曲して延びる周辺外面とすることができる。層状に具現化され、後で説明されるターゲット要素の場合、周辺面はターゲット要素の上側と下側のそれぞれの表面と、またこれらの表面を接続する2つの横の面、すなわち側面も有することができる。換言すれば、この場合の周辺面は、実質的にプリズム型又は平行六面体のターゲット層の側面のうちの、ターゲット層の、対応する下及び/又は上面により接続される2つを有することができる。この場合、周辺面は、その一方が粒子の照射のために露出して配置されるターゲット層の前方及び後方側面を含まない。
【0015】
ターゲット要素の厚さは、この要素の層厚又は、ワイヤ形状の実施形態の場合は直径とすることができる。一般に、厚さは、衝突する粒子ビームに対して実質的に垂直に延びる方向に測定されることになる、ターゲット要素の寸法を指すことができる。厚さは、焦点の範囲を画定することができる。これは、粒子ビームが厚さ方向にターゲット要素より大きい寸法を有する場合に当てはまる。
【0016】
ターゲットの端面も同様に、衝突する粒子ビームに対して実質的に垂直に、或いはそれに関して斜めに延ばすことができる。さらに、端面は湾曲しているように、特に凸状に湾曲しているように具現化でき、湾曲は一般に、衝突する粒子ビームの方向に(すなわち、粒子ビームに向かって)延ばすことができる。ターゲット要素の露出側面はターゲットの端面の他の部分と整列させることができ、及び/又は端面全体は実質的に平坦とすることができる。露出側面とは、それが粒子の照射のために露出している、及び/又は他の材料や要素によって遮蔽されていないことを意味する。
【0017】
ターゲットの上述の構造により、好ましくは排他的に1つの側面への粒子の照射が可能となる。奥行方向のターゲット要素の長さ範囲により、及びターゲット要素の周辺面により、照射中に発生する熱を奥行方向に散逸させて、基板装置の中へと誘導することができる。好ましくは、周辺面の大部分、例えば90%超及び好ましくは95%超が基板装置の基板材料と接触する。好ましくは、周辺面が露出側面より大きい何れの場合も、露出側面によりもたらされるエネルギー入力は、比較的大きい接触面積によってターゲット要素から基板装置へと直接伝達でき、エネルギー入力によってターゲットに損傷が及ぶことがない。それゆえ、衝突する粒子ビームのパワー密度を増大させることができ、粒子ビームを拡張しなくてよい。さらに、本発明による構造により、ターゲット要素の露出側面の初期損耗の場合であっても(例えば、腐食の場合)、依然として、生成される電磁放射線の強度の変化を回避するために十分な材料を利用できる。任意の量の材料を奥行方向に、すなわち側面の表面に関して横切る方向に配置することができ、これはターゲット材料のキャリアとしての基板が奥行方向には不要となるからである。それゆえ、ターゲットの寿命と利用可能な動作期間を延長することができる。
【0018】
例えば、ワイヤ形状のターゲット要素の場合、ターゲット要素は、周辺面が露出側面より大きくなるような奥行き方向への長さを有する寸法とすることができる。これは、ワイヤ形状のターゲット要素の断面のような形状とすることができる。ターゲット要素が層状に具現化される場合も、露出側面は同様に断面のような形状とされるか、比較的狭く(厚さ方向)、長い(幅方向)範囲を有することができる。露出側面の幅と厚さの比が大きいことから、奥行き方向だけの寸法を小さくすればよく、それによってこのようなターゲット層の周辺面は露出側面より大きくなる。
【0019】
他の実施形態によれば、ターゲット要素は辺の長さが異なる多角形の基本輪郭を有する。この場合、側面は特に、前記基本輪郭の、最大の辺長さを持たない辺を画定する。それゆえ、基本領域は、特に奥行方向により長い長さを持つ辺を有する。特に、長方形の基本領域が関わることができる。
【0020】
1つの実施形態において、基本輪郭は長方形であり、2つの長辺と2つの短辺を有する。この場合、露出側面は好ましくは、短辺を形成するか、これを含む。
【0021】
前述のように、本発明によれば、ターゲット要素は層状に具現化される。この場合、ターゲット要素の露出側面は、厚さ及び、厚さと比較してターゲット要素のより大きい幅を画定し、すなわち、ターゲット要素は厚さと比較して幅がより大きく、外周線の全長は厚さと幅により画定される。長方形の側面の場合、外周線の全長は厚さの2倍と幅の2倍を足したものに等しい。しかしながら、層状のターゲット要素を用いた構成は、長方形の側面に限定されない。基板装置は周辺面と、厚さの方向に相互に対向するその辺において、好ましくは全面積にわたって接触する。したがって、ターゲット要素内で発生した熱は、それに対応する大きい全体的接触面積を介して基板装置へと急速に伝達される。しかしながら、例えば同じく後述するワイヤ形状等の他の形態のターゲット要素の場合もまた、基板装置は、特に奥行き方向へのターゲット要素の全長にわたり、相互に対向するその辺において、周辺面と接触することが好ましい。層状のターゲット要素の場合、基板装置は、特に好ましくは一部ははんだ材料によって間接的に、一部は圧迫接触により直接的に、全面積にわたり周辺面と接触することが好ましい。任意選択により、全面積の接触からは、周辺面の側面のみ、すなわち奥行方向及び厚さ方向へのターゲット要素の範囲を画定する側面のみが除外される。
【0022】
ターゲット要素の厚さと、特にその考え得る層厚は一般に、基板装置の厚さより小さくなるように選択でき、基板装置の厚さと層の厚さは相互に平行に測定されることになる。この場合、前述の厚さ寸法の何れも、ターゲットの端面に平行に、若しくは端面内に、及び/又は衝突する粒子ビームの経路方向若しくはビーム軸に実質的に垂直に延ばすことができる。
【0023】
層状のターゲット要素は、奥行方向に一定の層厚を有することができる。
【0024】
本発明によれば、露出側面において、層状ターゲット要素の厚さは幅方向に増大させる。特に、厚さは幅方向に連続的に、例えば線形に増大させることができ、それによって側面は台形に具現化される。より一般的には、露出側面において、層状ターゲット要素の厚さは、その幅に沿って見たときに変化させることができ、例えばその層厚は幅方向の全範囲にわたり、又はその一部において連続的に増加又は減少する。それゆえ、露出側面のうち衝突する粒子ビームがどの領域に向けられるかに応じて、粒子ビームの断面がターゲット端面のうち露出側面の縁部のある特定の領域に衝突すると、焦点サイズは変化し得る。ターゲット要素の縁部を越えるターゲットの材料は、侵襲的放射線の生成に寄与しない。
【0025】
特許請求項に記されていない別の実施形態によれば、ターゲット要素は円柱形に具現化され、側面は、ターゲット要素の、ターゲット要素の正面図において長円又は円形の端面を形成する。これに関して、ターゲット要素は例えば円形又は長円形の基本領域を有することができ、その材料の体積はターゲット要素の長さ軸に沿って延びる。これはすると、ターゲット要素の周辺面を画定することができる。1つの変形型において、ターゲット要素はワイヤ形状に具現化され、これは再び、一般には長い形状で、好ましくは円形の断面を有する。露出側面は、円柱形のターゲット要素の断面形状に倣って形成でき、及び/又は前記形状を画定することができる。1つの変形型において、露出側面は円形であり、ワイヤ形状のターゲット要素の直径、それゆえ太さ(厚さ)を画定する。直径の寸法は、例えば3μm~200μm、例えば最大10μm又は最大20μmとすることができる。
【0026】
ワイヤ形状のターゲット要素は、少なくとも部分的に基板装置の受容構造の中に受けられるようにすることができる。受容構造は、例えばV字形又は長方形の断面形状を有する溝を含むことができる。後で説明するような基板装置の多分割の実施形態の場合、対応する受容構造(例えば、溝)は第一の基板要素に提供でき、第二の基板要素は少なくとも部分的に溝を閉じる(例えば、少なくとも片側で開放する溝の断面の一部を閉じる)。代替的に、受容構造は穴を含むことができ、これは特に端面に関して実質的に横方向に延ばすことができ、及び/又はその中にターゲット要素が挿入される。
【0027】
1つの発展形では、ターゲットが異なる太さ(厚さ)を有する複数のターゲット要素を含むようにする。ターゲット要素は同じ材料から製作でき、及び/又は、例えばターゲットの端面に対して垂直に見たときに実質的に同じ長さを有することができる。ターゲット要素はすると、各々がターゲットの端面において露出側面を有し、各々が粒子の照射を受けると侵襲的電磁放射線を発するように構成でき、前記侵襲的電磁放射線は対象物の放射線写真を作成するために使用できる。焦点サイズを変化させるために、電子ビームはターゲット要素を行き来することができ、すなわち、換言すれば、異なる太さ(厚さ)のターゲット要素を照射することができる。露出側面は、共通の、好ましくは直線に沿って配置できる。これによって、電子ビームを異なるターゲット要素へと簡単な方法で、例えばターゲット及び電子ビームの線形相対移動又は、電子ビームがターゲット上で線形に移動される相対回転によって向けることが可能となる。
【0028】
これに関して、さらに、ターゲットが異なる太さ(厚さ)又は直径を有するワイヤ形状の複数のターゲット要素を有するようにすることができ、これは好ましくはターゲットの端面内の共通の行に配置され、露出する(しかし、これは特許請求項に記されていない)。焦点サイズはこの場合、粒子ビームの照射がワイヤ形状のターゲット要素を行き来する(すなわち、異なるターゲット要素を照射する)ことによって変化させることができる。
【0029】
1つの発展形は、基板装置が少なくとも部分的にターゲット要素を取り囲むようにする。これは、ワイヤ形状のターゲット要素が受容構造内(例えば、溝内)に前述のように受けられ、前記受容構造が基板装置の別の要素により覆われることによって実現できる。より一般的に言えば、ターゲット要素は基板装置の個々の基板要素間にサンドイッチ状に受けられるようにすることができる。
【0030】
1つの変形型において、基板装置は第一及び第二の基板要素を含み、これらの間にターゲット要素の少なくとも1部分が受けられる。この場合、基板要素は好ましくは、例えば機械的固定若しくはクランプ要素によって、又は以下で説明するような放熱要素若しくは放熱装置によって相互に圧迫されるようにすることができる。基板要素は各々、ブロック形状に具現化でき、及び/又は、ターゲット要素が全面積にわたってできるだけそれらに押し付けられるような方法で(例えば、少なくとも1つの実質的に完全な底面又は上面によってそれらに押し付けられる)具現化できる。1つの変形型において、基板要素はターゲット要素の全長に沿って奥行方向に延びる。
【0031】
1つの発展形は、基板装置が放熱要素中又は放熱装置中に受けられるようにし、これらは好ましくは冷却装置に接続されているか、接続可能である。冷却装置はターゲットに関して外部に提供でき、例えば後で説明する放射線源の一部とすることができる。放熱要素又は放熱装置は、ブロック形状若しくは管状に具現化でき、及び/又は基板装置のための受容部分を含むことができる。追加的又は代替的に、放熱要素又は放熱装置は空洞を画定でき、その中に基板装置が挿入され、及び/又は押し込まれる。複数の基板要素の場合、放熱要素又は放熱装置は、例えば押圧又は圧縮力を加えることによって、基板要素を一体に保持し、及び/又はこれらが相互に押し合うように構成できる。一般に、放熱要素(又は放熱装置)と基板装置との間が少なくとも部分的に押し付けられて、放熱要素又は放熱装置への良好な熱伝達が可能となるようにすることが可能である。冷却装置に接続するために、放熱要素又は放熱装置は適当な接続領域を含むことができる。追加的又は代替的に、放熱要素又は放熱装置は少なくとも1つの冷却ダクトを含むことができ、その中に冷媒を導入できる。
【0032】
基板装置もまた、冷却装置に接続でき、又は接続可能とすることができる。例えば、基板装置は同様に、冷却ダクト及び/又は、その中に冷却装置の冷却ラインを受けることのできる受容領域を含むことができる。1つの変形型では、冷却装置の冷媒は基板装置の少なくとも一部の周囲に流れ、及び/又はその周囲を通る。
【0033】
1つの実施形態によれば、ターゲットは、ダイヤモンド又はダイヤモンド含有材料を含む基板装置を有し、及び/又はターゲットはタングステンからなるターゲット要素を有し、及び/又は放熱要素若しくは放熱装置は銅を含む。
【0034】
端面の領域において、ターゲット要素のうち露出側面及び特に基板装置の側面から離れている領域は、ある材料層で覆うことができる。この層の材料は、基板装置内の電子の帯電が実質的抑制されるか、少なくとも限定されるように選択できる。その結果、電子ビームに関して反対の電界の生成を回避できる。特に、この層は金属材料、半導体材料、又は炭素からなるようにすることができる。
【0035】
ターゲット内の側面を照射する上述の方法の代替案として、タングステン粒子が軽金属マトリクス内に導入されるターゲットも開示されるが、特許請求はされていない。このような組成物の冷却に関して、タングステン粒子はターゲットの下側に堆積する可能性がある。粒子密度は、粒子が下側の面積の約10%の割合を占めるような方法で選択すべきである。すると、X線放射を生成するために前記下側に電子ビームを照射できる。しかしながら、軽金属マトリクスの融点により、この場合に使用可能な電子ビームのビームパワーが限定される可能性がある。
【0036】
本発明はさらに、侵襲的電磁放射線を生成するための放射線源に関し、これは、上述の態様の何れかにおいて特許請求されているターゲットと、粒子ビームをターゲットに向けるように構成された粒子ビーム源と、ターゲットと電子ビームを相互に関して可変的な方法で向き付けて、ターゲットのうち粒子ビームが向けられる表面領域が可変的となるように構成された位置決め装置と、を含む。粒子ビームはここでも、電子を含む。粒子ビーム源は、電子を発出するためのグローワイヤを含むことができる。位置決め装置により、粒子ビームとターゲットは、例えば相互に関して、例えば粒子ビームに対して垂直に延びる軸の周囲で回転させることができる。1つの変形型において、ターゲットは粒子ビームに関して回転可能であり、回転軸はここでも、粒子ビームに対して垂直に延ばすことができる。
【0037】
位置決め装置により、粒子ビームはターゲット要素の露出側面の異なる表面領域に向けることができる。ターゲット要素の厚さが一定である場合(特許請求項に記されていない)、これは局所的損耗を補償するために使用できる(すなわち、粒子ビームは、必要に応じて、損耗していない部分に向けることができる)。厚さが異なる場合(例えば、ターゲット要素の台形の側面の場合)、焦点サイズもまた位置決め装置によって変化させることができる。
【0038】
さらに、本発明は上述の種類の放射線源の使用に関し、これは、
-粒子ビームをターゲットの端面の第一の表面領域に向けるステップと、
-ターゲットと粒子ビームの相対的な向きを、粒子ビームがターゲットの端面の第二の表面領域に向けられるように変化させるステップと、
を含み、
端面の第一及び第二の表面領域は、1つ又は複数のターゲット要素の露出側面の領域を有し、これらは異なる厚さを有する。ステップのシーケンスはこの場合、時間の経過により変化させることができる。言うまでもなく、例えば、これら2つのステップは逆の順序で、及び/又は時間的に重複して実行することもできる。
【0039】
ターゲット要素が1つのみの場合、異なる厚さを有する領域は、ターゲット要素の露出側面の台形の形状により画定できる。ターゲット要素が複数の場合、これらは各々、相互に異なる厚さを有することができ、それゆえ、各々がそれ自体でターゲットの端面内で異なる厚さの領域の1つを画定する。これは例えば、ターゲットが相互に異なる直径を有する複数のワイヤ形状のターゲット要素を含むことによって実現できる。
【0040】
使用は一般に、上述及び後述の動作状態、効果、及び/又は相互作用のすべてを提供するために、何れのその他のステップ及び何れのその他の特徴も含むことができる。特に、方法は基板装置又は使用し得る放熱要素若しくは放熱装置を冷却するステップを含むことができる。
【0041】
それに加えて、本発明は、侵襲的電子放射線の放射線源のためのターゲット、特に本明細書中に記載の構成のうちの1つのターゲットの製造方法に関する。この方法によれば、
-粒子が照射されると侵襲的電磁放射線を生成するように構成された少なくとも1つのターゲット要素が提供され、
-ターゲット要素は、ターゲット要素の外面の第一の部分を形成する周辺面を有し、
-周辺面は、ターゲット要素から熱を散逸させるために基板装置と接触させられ、
-ターゲット要素の外面は追加的に、ターゲット要素の側面により形成され、側面の範囲はターゲット要素の厚さを画定し、側面の外周線は周辺面の限界線を形成し、
-ターゲット要素の側面は粒子の照射のために露出して配置され、ターゲットの端面の一部を形成する。
【0042】
方法の構成の特徴は、ターゲットの構成の説明から明らかとなる。
【0043】
本発明の実施形態を添付の略図に関して以下に説明する。この場合、
図3及び
図4bのターゲットは本発明によるターゲットであり、その他の図は理解を助ける役割を果たす。その性質と機能に関して対応する特徴にはこの場合、実施形態全体を通じて同じ参照符号が付与されているかもしれない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明によるターゲットを含む本発明による放射線源の平面図を概略的に示す。
【
図2】特に
図1の放射線源で使用するための、特許請求項に記されていない第一の実施形態によるターゲットの個別の斜視図を示す。
【
図2a】
図2に示される実施形態によるターゲット要素の概略斜視図を示す。
【
図3】特に
図1の放射線源で使用するための、本発明による実施形態である第二の実施形態によるターゲットの正面図を示す。
【
図4a-4b】先行技術によるターゲットの場合(
図4a)と本発明によるターゲットの場合(
図4b)の焦点の境界を明瞭にするための略図を示す。
【
図5】
図1の放射線源で使用するための、特許請求項に記されていない第三の実施形態によるターゲットの正面図を示す。
【
図6】本発明に従って
図1の放射線源で使用するための、特許請求項に記されていない第四の実施形態によるターゲットの正面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、本発明による放射線源1の平面図を示し、これは本発明によるターゲット10を含み、また、それを用いて本発明による方法を実行できる。
【0046】
放射線源1は、概略的に示されている電子ビーム源12を含む。電子ビーム源12は、電子を発出するための粒子ビーム源を形成する。電子ビーム源12は、粒子ビーム軸Aに沿って電子の形態の粒子を発出し、これらをターゲット10に向けるように構成される。電子ビームを向き付け、集束させるための各種のコイルが粒子ビーム軸Aに沿って位置付けられる。より正確に言えば、電子ビーム源12から始まってターゲット10の方向に見ると、まず第一及び第二のビーム偏向ユニット14、16が提供され、これによってビーム軸Aの向きは本来的に可変的となる。さらに、集束コイル18が提供され、これは開口20を含み、それによって電子ビームの焦点面を設定できる。既知の方法で、前記焦点面はターゲット10の領域内に、又はそのわずかに前若しくは後ろに位置付けることができる。さらに、図示されていないが、ビーム軸Aを取り囲む銅管を少なくともビーム偏向ユニット14、16、及び集束コイル18の領域内に提供できる。
【0047】
ターゲット10も同様に
図1の平面図に示されている。ターゲット要素が特に後述の実施形態の1つに従って配置される範囲の領域21は、破線で示されている。ターゲットの奥行Tの範囲も同様に表示されている。これは、以下で説明されるターゲット要素の長さ方向の範囲と概して一致している。
【0048】
ターゲット10は、電子ビームに面した、わずかに凸状に湾曲した端面22を有する。以下で説明するように、前記端面22はまた、電子ビームに関して、及び図の平面に関しても傾斜している。電子ビームは、端面22に衝突して、ターゲット10の材料中に浸透すると、減速し、そこでX線放射が発出される。コーンビームX線放射が軸SAに沿って絞り24から周辺へと発生し、物体を通じて放射した後、図示されていない検出装置に入射し、物体の放射線写真が生成される。
【0049】
ターゲット10はさらに、位置決め装置26(又は、調節機構)に連結される。位置決め装置26により、ターゲット10を図の平面に垂直な軸Vの周囲で回転させることができる。ターゲット10の端面22はそれゆえ、電子ビームに関しても回転さできる。
図1の図から推測できるように、例えば電子ビーム軸Aの向きが一定であるとすると、電子ビームはそれゆえ、ターゲット10の端面22の異なる領域に向けて、特に端面22に沿った線(例えば、
図1では左上から右下、又はその逆)に沿って移動させることができる。以下でずっと詳しく説明するように、位置決めのためのこのような可能性は、ターゲット10の局所的損耗(例えば、腐食)に対応するために好都合である。同様に、特定の実施形態において、これによって焦点サイズを変化させることが可能となる。しかしながら、追加的又は代替的に、本発明によれば、(例えば、いわゆるビームアラインメントに関して、対応するビーム偏向ユニット14、16によって、及び/又は集束コイル18によって)電子ビーム軸Aの向きを変えることにより、焦点の位置のわずかな変更を実現することも可能である。
【0050】
さらに
図1の例からわかるように、ターゲット10の湾曲した端面22により、軸Vの周囲の回転の場合でも、端面22と電子ビーム源12との間の距離が電子ビーム軸Aの方向に一定に保たれることが確実となる。その結果、電子ビームの焦点面に関する端面22の配置はそれほど変化せず、焦点サイズも実質的に一定のままである。
【0051】
図2は、特に
図1の放射線源1で使用するためのターゲット10の個別部分の概略斜視図を示す。この場合、ターゲット10は、特許請求項に記されていない第一の実施形態に従って具現化される。これは、層状のターゲット要素20を含み、これは電子ビームの場合のアノード要素であり、タングステンを含む。ターゲット要素20は電子が照射されるとX線放射の形態の制御放射を発出するように構成される。
【0052】
ターゲット要素20は、例えばCVD(気相化学成長法)により生成される、ダイヤモンドを含む基板装置28の中に受けられる。基板装置28は、第一の基板要素30と第二の基板要素32を含む。ターゲット要素20の、
図2の図中で上と下にある表面は各々、基板装置28と機械的に接触し、特に好ましくはそれぞれ全面積にわたって接触している。したがって、ターゲット要素20は2つの基板要素30、32間に配置される。1つの特定の構成では、ターゲット要素20は、第一の基板要素30へのその材料の堆積によって適用され、第二の基板要素32はターゲット要素20の、図中で上にある表面に押し付けられる。ターゲット要素20の材料の堆積には、その結果として、第一の基板要素30との高い熱伝導性を有する接続部を作ることができるという利点がある。それに加えて、材料の堆積は層状のターゲット要素の製造に好適である。材料の堆積後、堆積材料の形状を変化させて、例えば
図3に示されるターゲット要素を製造することもできる。
【0053】
基板装置28自体は、例えば銅で構成される放熱装置34内に受けられ、これ自体は2つの部分からなるように具現化される。より正確に言えば、放熱装置34は基板装置28を取り囲み、前記基板装置の最大外面において大きな面積にわたり基板装置28に押し付けられる。さらに、少なくとも1つの冷却ダクト36が放熱装置34内に提供され、熱を取り去る冷媒が前記少なくとも1つの冷却ダクトを通って流れる。冷却ダクト36は、放射線源1の冷却装置(図示せず)に接続される。
【0054】
図2及びその後の図では、より単純な図とするために、ターゲット10に湾曲した端面22は設けられず、その代わりに平坦な端面22が設けられている。これは同様にターゲット要素20及び基板装置28にも当てはまる。湾曲した端面22は前述の理由により有利であるが、本発明はそれに限定されず、したがって、端面22はまた、平坦にも具現化できる。
【0055】
ターゲット10の前述の基本的構成を以下により詳しく説明する。まず、
図2により、電子ビームに面する端面22において、基板装置28及び、ターゲット要素20もまたそれぞれ露出し、それゆえ被曝する。図には示されていないが、
図2に示される基板要素30、32の対応する前面もまた、それぞれ適当な材料層(例えば、炭素からなる)でシールドすることにより、電子ビームが照射されたときに反対の電界が発生するのを防止できる。
【0056】
ターゲット要素20は、層状に具現化されている。図の例示的実施形態において、この場合、層厚Dは一定である。さらに、層厚Dは比較的薄くなるように選択され、例えば少なくとも10μm、好ましくは少なくとも20μm、及び/又は例えば最大200μm、好ましくは最大100μmである。基板要素30、32のそれぞれの厚さCはターゲット要素20の層厚Dを倍数で、例えば少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍上回ることが明らかである。上述の厚さ寸法C、Dはすべて、こでは、ターゲット要素が奥行Tで延びる奥行方向に対して垂直に延びる。ターゲット10が
図1に示される配置の中で使用される場合、電子ビーム軸Aはターゲット要素20の露出端面に、奥行方向に関して傾斜して、又は角度を付けて衝突する。
【0057】
さらに、
図2は、破線により、ターゲット要素20が長さLでターゲット10の中へと延びることを示している。前記長さLはターゲット10の前述の奥行Tに対応する(
図1参照)。長さLは好ましくは少なくとも10μm、少なくとも20μm、又は少なくとも40μm、特に好ましくは少なくとも100μmである。実際に、長さは例えば200μmとすることができる。代替的又は追加的に、長さLは層厚Dより少なくとも3又は5倍、好ましくは少なくとも10倍大きくすることができる。
【0058】
幅Bは好ましくは少なくとも1mm又は少なくとも2mm、特に好ましくは少なくとも4mmであり、実際には例えば5mmとすることができる。したがって、幅Bは層厚Dより、特に少なくとも20、50、又は100倍大きくすることができる。その結果、層厚Dの方向への焦点の大きさを限定することができ、その一方で、幅Bの方向では焦点のために、すなわちX線放射を生成するために、大きい領域が使用可能となる。幅Bの方向への焦点のサイズは、いつでも、幅Bより実質的に小さくすることができる。例えば、幅Bの方向への焦点のサイズは、10μm又は20μmより大きく、及び/又は200μm又は100μm未満、例えば60μmとすることができる。幅Bは、幅Bの方向への焦点の大きさより、例えば少なくとも5、10、又は50倍大きくすることができる。
【0059】
ターゲット要素20はそれゆえ、基板装置28の中に、その全長Lに沿って受けられ、基板装置28も同様に、放熱装置34の中にその全長に沿って受けられる。「受けられる」とは、特に、ターゲット要素の、及び基板装置の相互に隣接する層の表面が全面積にわたって相互に接触することを意味する。その結果として得られる大きい面積の押し付け領域によって、これらの要素間の全体的な熱交換、及び特にターゲット要素20から基板装置28への、及びそこから放熱装置34への熱の散逸が可能となる。
【0060】
例示的な実施形態において、ターゲット要素20は、実質的に長方形の基本的輪郭、すなわち、換言すれば、実質的に長方形の基本領域をさらに有する。これは、それぞれ平行に延びる2つの短辺2と2つの長辺3を含み、これは
図2aのターゲット要素20のみの拡大図により示される。短辺2の一方、すなわち
図2内の前方及び
図2aの左前方の辺はここで、ターゲット10の端面22内に配置され、電子又はその他の粒子の照射のために露出した露出側面38を有する。側面38は、厚さDと層状ターゲット要素20のそれと比較し、より大きい幅Bを画定する。
【0061】
ターゲット要素20の層状構造により、これは平行六面体のように(
図2aに示される)又はプリズムのように具現化できる。露出側面38とその反対の別の側面38aもそれゆえ、この平行六面体又はプリズムの上面及び底面と解釈できる。これらの側面38、38aはターゲット要素20の外面39、39aに隣接し、これは
図2aの図中、ターゲット要素20の上側と下側にある(
図2aを参照)。側面37とその反対側の37aは外面39、39aに対して、及び露出側面38とその反対側の側面38aに対して垂直に延びる。側面37、37a、及び外面39、39aが共同で自己完結的に周辺に延び、長方形の断面を有する空洞のようにターゲット要素20の材料体積を取り囲む周辺面を形成する。周辺面の、側面で自己完結的に周辺方向に延びる周辺面の限界線Rは露出側面38の外周線を形成する。限界線Rと外周線はそれゆえ、同じである。ターゲット要素20が平行六面体として具現化される場合、上側の外面39と下側の外面39aはターゲット10の端面22に対して垂直に延びる。周辺面の表面積は好ましくは、露出側面38の表面積より少なくとも10倍、好ましくは50倍、又は特に好ましくは100倍大きい。
【0062】
その結果、ターゲット要素20の材料の比較的小さい部分が電子の放射に対して露出し、それに対して、材料の比較的大きい部分は基板装置28の基板材料と隣接して触れたままの状態となり、熱を直接基板装置28の中へ散逸させ、ターゲット要素20の起こり得る腐食を補償する。
【0063】
この関係はさらに、基板装置28をよく見ることで明らかとなる。前述のように、基板装置28の基板要素30、32は実質的にブロック形状のように具現化され、ターゲット要素20と比較してより大きい厚さCを有するように具現化される。
図2の中の第一の下側基板要素30はターゲット要素20の下側に押し付けられ、その一方で、第二の上側基板要素32はターゲット要素20の上側に押し付けられる。ここで、基板要素30、32はターゲット10の中に、それぞれターゲット要素20と同様の長さで延びる。その結果、ターゲット要素20の下側が基板要素30に全面積にわたって押し付けられ、ターゲット要素20の上側が基板要素32に全面積にわたって押し付けられる。それゆえ、側面38内の焦点位置と第一の基板要素30及び第二の基板要素32への熱の直接散逸が実現される。
【0064】
基板装置28をターゲット要素20に連結するために、ターゲット要素20は基板要素30、32の一方に、特に例えば銅、銀、金、又は錫とニッケルを含む既知のはんだ材料を使ってはんだ付けできる。その後、もう一方の基板要素30、32はターゲット要素20のそれぞれ残りの上側又は下側へと圧迫させることができる。対応する圧迫力は機械的固定又はクランプ手段(図示せず)によってもたらすことができる。これはまた、2つの部分からなる放熱装置34の2つの部分を相互にしっかりと締め付けるために提供でき、対応する圧迫力は放熱装置34から基板要素30、32にも伝わる。
【0065】
最後に、端面22において、放熱装置34の基板要素30、32の露出(又は任意選択によりコーティングされた)表面及びターゲット要素20の露出側面38は相互に整列させることができるが、これは絶対的に必要というわけではない。ターゲット10の端面22はそれゆえ、実質的に平滑な表面を有することができ、
図2においては別途図示されてはいないが、端面22全体又は
図1の平面図による側面38のみに湾曲をつけることも可能である。
【0066】
前述のように、ターゲット要素20は、
図2及び
図2aの例における側面38の高さに対応する一定の厚さDを有するように具現化される。特に、前記厚さDは側面38の幅B(
図2a参照)に沿って一定であり、前記幅Bはターゲット要素20の基本領域の長さLに関して横方向に延びる。そこから派生するターゲット10の第二の実施形態を、
図3に関して以下に説明する。この場合、前記ターゲット10の基本構造は
図2のそれに実質的に対応するが、派生型の例外を以下に説明する。
【0067】
図3は、第二の実施形態によるターゲット10の端面22の正面図を示す。この場合、
図1の平面図と同様に、端面22は、全体的に、又はターゲット要素の露出側面の領域のみにおいて凸状に湾曲しているように具現化できる。さらに、前記端面は平坦な表面を有するように具現化でき、これはここでも、順次の2つの部分からなる放熱装置34の、及びターゲット要素20をサンドイッチ状に受ける2つの基板要素30、32の、対応する端面と、また、ターゲット要素20の露出側面38を含む。ターゲット要素20はすると、層状に具現化され、平面図(
図1に対応)において長方形(
図3では認識不可)である。露出側面38はすると、この長方形の短辺を形成する。
【0068】
しかしながら、前述の実施形態とは対照的に、ターゲット要素20の層厚Dはターゲット要素20の幅Bに沿って一定ではない。その代わりにこれは変化し、その結果、ターゲット要素20の断面形状及びそれゆえ露出側面38の形状は、
図3において認識できるように台形となる。より正確に言えば、
図3において、層厚Dは左から右に、それゆえ露出側面38の幅Bに沿って増大し、図の実施形態においてはさらには連続的に、すなわち線形に増大する。露出側面38のうちどの部分に電子ビームが向けられるかに応じて、前記電子ビームはそれゆえ、ターゲット要素20の異なる厚さの領域に衝突する。ターゲット要素20上の電子ビームのこの相互作用領域又は衝突領域は、焦点とも呼ばれる。それゆえ電子ビームを露出側面38の異なる部分に向けることにより、焦点サイズを変化させることが可能であり、これについては後でさらに詳しく説明する。電子ビームをターゲット10に関する向きの変化は、再び、
図1の位置決め装置26によってもたらすことができる。
【0069】
X線放射の生成を、
図4a及び
図4bに関して以下により詳しく説明する。この場合、
図4a及び
図4bは同様の例を示しているが、先行技術によるターゲット10が
図4aで使用され、
図3の第二の実施形態による本発明によるターゲットが
図4bで使用されている。
【0070】
まず
図4aに関して、
図4aの左側部分はターゲット10の一部の平面図を示しており、その端面22に、例えば円形の断面を有する電子ビームEが衝突する。電子ビームEの断面及びその結果得られるX線ビーム(その発生についても説明する)の断面は、図の平面の中へと回転させるように示されている。
図4aの右側部分は、左側部分のA-Aに沿った側面図を示す。
【0071】
先行技術によるこの実施形態の場合、端面22は全面積にわたってアノード材料(すなわち、侵襲的放射線を生成するのに適したターゲット材料)により形成される。これは例えば、対応するターゲット要素20が層状に具現化されているが、この層は、その下にあるターゲット10の基板端面を完全に覆い、そこに面接合される。
【0072】
電子ビームEは傾斜した端面22に長円の衝突又は相互作用領域内で衝突し、それゆえ、
図4aの右側に示されている長円形の焦点40が得られる。アノード材料と電子ビームEの相互作用の結果として、全面積にわたって満たされる同様に長円の断面を有するX線ビームS1が発出される(
図4aの下側領域)。
【0073】
図4bの例は、その左側部分において、
図3による本発明によるターゲット10の平面図を示す。
図4bは、
図4aと同様に、ターゲット10の傾斜した端面22上への円形の断面を有する電子ビームEの衝突を示す。この場合も、ターゲット10上の電子ビームEの衝突領域は、端面22が傾斜しているため長円である。ターゲット要素の材料は衝突する電子エネルギーをX線放射に基板要素30、32より有意に高い効率で変換するため、X線放射はターゲット要素のゾーン内のみの焦点40の領域内で発出される。したがって、横方向の周辺領域は長円の焦点40から切り落とされ、その結果、台形の部分的領域のみがX線放射を生成するための焦点として残る。長円の衝突領域内の放射はそれゆえ、衝突領域の台形部分領域内においてのみX線放射を生成し、これは、ターゲット要素20の側面38が台形の部分的領域においてのみ露出しているからである。
図4bの右側部分は、
図4bの左側部分の矢印B-Bに沿ったターゲット10の正面図を示す。この図は、
図3による実施形態の正面図に対応する。層厚Dはこの実施形態では幅の範囲において一定ではないことから、焦点40はそれゆえ、1つの寸法において(すなわち、層厚Dの寸法において)限定される。これは、電子放射を、ターゲット要素20の露出側面38の異なる厚さを有する領域に向けることによって、結果として得られる焦点40の大きさを設定することが可能であるため、有利である。ターゲット要素20は、先行技術によるX線ビームS1の断面積(
図4a参照)より小さい断面積を有するX線ビームS2を発出する。これは、このようにしてより高い分解能が実現可能となるため、有利である(
図4bの左側部分参照)。
【0074】
要約すれば、
図4bから、発出されたX線放射S2の比較的小さい断面積は、本発明によるターゲットで実現可能であることが明らかとなる。これは、焦点40が照射の衝突領域において全く限定されない先行技術によるターゲット要素20の照射(
図4a参照)ではなく、
図4bの実施形態によるターゲット要素20の露出側面38の照射により達成される。しかしながら、ターゲット要素20がターゲット10へと前述のように層の形状で延びることによって比較的大きい材料体積を利用できるため、発生する熱をターゲット要素20から十分なパワーで放出することが可能となる。その結果、ターゲット要素20の損傷を回避するために電子ビームEを大きくする必要も、さらには部分的に絞る必要もない。したがって、その結果、発出されるX線放射の断面積を小さくしながら、他方で高いパワー密度を保持することができる。
【0075】
図5及び
図6は、本発明によるものではない、
図6の場合本発明に従って
図1の放射線源1で使用するためのターゲット10の別の実施形態を示す。これらの例は各々、ターゲット10の端面領域の正面図を示すが、外側放熱要素又は外側放熱装置34はそれぞれ図示されず、原理的に提供される。その代わりに、ブロック形状の2つの基板要素30、32を有する基板装置28が再び示されている。これらは各々の場合において、それらの間に少なくとも1つのターゲット要素20を受ける。
【0076】
ターゲット要素20は、ワイヤ形状として、円形の断面を有するように具現化され、
図2に示される実施形態による層状の構成と同様に、別途示されてはいないが、それぞれの長さ軸に沿ってターゲット10の中へと延びる。この手段により、損耗を補償し、焦点から基板要素30、32への高い放熱が確実に進むようにするために、十分な材料体積が再び提供される。
図5に示されるように、ターゲット要素20の露出側面38はそれゆえ、同様に円形に具現化される。ワイヤ形状のターゲット要素20の直径はそれゆえ、ターゲット要素20の、及び電子の照射のため利用可能な露出側面38の厚さも画定する。
【0077】
図5の変形型では、1つのみのターゲット要素20が提供されている。前記ターゲット要素は、1つの側で開放する長方形の断面を有する溝の形態の受容構造42の中に受けられる。しかしながら、他の受容構造42及び、特に断面形状もまた想定可能である。例えば、U字形又はV字形の溝も提供できる。溝は下側の第一の基板要素30の中に形成され、
図5に示される上側の第二の基板要素32は溝の開放側を閉じる。この目的のために、基板要素30、32は前述の実施形態と同様に、相互に押し付けられる。
【0078】
その結果、電子ビームが露出側面38に衝突すると、焦点サイズはワイヤ形状のターゲット要素20の太さ(厚さ)Dによって決定的に特定される。太さ(厚さ)Dはすると、発出されたX線放射S2の小さいスポットサイズ又は断面積が実現可能となるように選択できる。例えば、衝突する電子ビームEの直径が太さ(厚さ)Dを超える場合、太さ(厚さ)(すなわちワイヤ形状のターゲット要素20の直径)は、結果として得られる焦点40を相応に限定し、その結果、発出されたX線放射S2のスポットサイズもまた限定される(
図4b参照)。必要であれば、ターゲット材料は、図面の平面の中へと延びるワイヤ形状のターゲット要素20の追加の材料体積として供給できる。
【0079】
図5では1つのターゲット要素20のみが示されているが、複数のワイヤ形状のターゲット要素20もまた提供でき、これらは好ましくは、端面22内に共通の線に沿って、好ましくは相互に平行に配置される。この場合、ターゲット要素20は同じ太さ(厚さ)Dを有するように具現化でき、それによってターゲット要素20のうちの1つに損耗が生じた場合に、電子ビーム及びターゲット10を整列しなおすことによって、まだ損耗していない別のターゲット要素20に変更する(例えば、
図1の位置決め装置26による)ことが可能である。
【0080】
これに対して、
図6は、それらの側面38の異なる太さ(厚さ)D1、D2、及びD3を有する複数のワイヤ形状のターゲット要素20がターゲット10の端面22内で露出する実施形態を示す。どのターゲット要素20に電子ビームが向けられるかに応じて、異なる焦点サイズ及び、それゆえ生成されるX線ビームの異なるサイズの断面を設定することが可能である。露出側面38は相互に隣り合わせに配置され、それらの上側の外側縁点は
図6では水平に延びる線に沿って配置され、第二の基板要素32の下縁により画定される。受容構造の適当な寸法及び/又は形状によって代替的に実現できるのは、例えば円形の露出側面38のそれぞれの中心点が仮想直線(
図6では図示せず)の上にあるようにすることである。
【0081】
焦点サイズは図の例示的実施形態ではターゲット要素20の太さ(厚さ)により決定的に特定されるため、電子ビームの集束に関する要求を軽減させることもできる。例えば、それほど高い精度ではないかもしれない電子ビームの集束はむしろ、電子ビーム源12のパワーと得られるX線放射の比の点で放射線源1の効率に影響を与える可能性がある。それに対して、焦点サイズは、たとえ集束が不正確であっても比較的安定したままであり、それによって実質的に一定の分解能が実現可能である。これが実現可能なのは、ターゲット要素20への電子ビームEの衝突領域は、不正確な集束によって大きすぎる、又は小さすぎるかもしれないが、結果として得られる焦点40がターゲット要素20の太さ(厚さ)Dにより事前に設定され、何れかの方法で限定されるため、何の影響力も持たないことによる。