(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】腫瘍の遺伝的不均一性を評価することによって治療法に対する応答を予測する方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20221130BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20221130BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
G01N33/53 M
G01N33/574 Z
(21)【出願番号】P 2020542934
(86)(22)【出願日】2019-02-11
(86)【国際出願番号】 EP2019053250
(87)【国際公開番号】W WO2019158460
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-10-02
(32)【優先日】2018-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】マー,シヤオジュ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーンル,ビルギット
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ステファニー・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ムレイ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヘルト,フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】バラスブラマニアム,アーティ
(72)【発明者】
【氏名】シイ,リウ
(72)【発明者】
【氏名】ティクー,ナリン
(72)【発明者】
【氏名】ジュ,クリスティーン
【審査官】幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0087535(US,A1)
【文献】"Roche launches AVENIO ctDNA Analysis Kits for Oncology Research",2017年05月08日,URL:https://sequencing.roche.com/en-us/news-overview/2017/roche-launches-avenio-ctdna-analysis-kits-for-oncology-research.html,retrieved on 2021.10.19, retrieved from the Internet
【文献】Kikuya Kato et al.,Numerical indices based on circulating tumor DNA for the evaluation of therapeutic response and disease progression in lung cancer patients.,Sci. Rep.,2016年07月06日,6:29093,doi: 10.1038/srep29093
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68
C12N 15/00
G01N 33/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)処置レジメン中の第1の時点で回収された患者の血漿サンプルを用意するステップ、
(b)処置レジメン中の第2の時点で回収された患者の血漿サンプルを用意するステップ、
(c)前記サンプルにおいて、表1で列挙する全てのバイオマーカーまたは表2で列挙する全てのバイオマーカーの配列を決定するステップ、
【表1】
【表2-1】
【表2-2】
(d)前記サンプルにおいて、サンプルの容積に対する、バイオマーカーにおいて検出された突然変異の数の比率(MMPM)を決定するステップ、
(e)第2のサンプルにおけるMMPMが第1のサンプルにおけるMMPMよりも低ければ、患者は治療レジメンに対して応答したと判定するステップ、または
(f)第2のサンプルにおけるMMPMが第1のサンプルにおけるMMPMよりも低くなければ、患者は治療レジメンに対して応答しなかったと判定するステップ
を含む、がん患者が治療レジメンに対して正に応答したか否かを判定するための方法
であって、
前記がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん(SCLC)、および結腸直腸がん(CRC)の中から選択される、前記方法。
【請求項2】
治療法に対する患者の応答が、無増悪生存期間(PFS)の増大および全生存期間(OS)の増大から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
治療レジメンが、FOLFOXIRI-ベバシズマブでの処置、FOLFOX-ベバシズマブでの処置、カペシタビン(capercitabine)-ベバシズマブ、および化学放射線療法から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
処置レジメン中のさらなる時点で採取されるさらなる血漿を回収するステップ、および、その中のMMPMがそれより前の時点と比較して低下したか否か、またはその後の時点のMMPMよりも大きいか否かを判定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
(a)処置レジメン中の第1の時点で回収された患者の血漿サンプルを用意するステップ、
(b)処置レジメン中の第2の時点で回収された患者の血漿サンプルを用意するステップ、
(c)前記サンプルにおいて、表
3で列挙する全てのバイオマーカーまたは表
4で列挙する全てのバイオマーカーの配列を決定するステップ、
【表3】
【表4-1】
【表4-2】
(d)前記サンプルにおいて、サンプルの容積に対する、バイオマーカーにおいて検出された突然変異の数の比率(MMPM)を決定するステップ、
(e)第2のサンプルにおけるMMPMが第1のサンプルにおけるMMPMより低ければ、治療レジメンを継続する
という指標を提供するステップ、または
(f)第2のサンプルにおけるMMPMが第1のサンプルにおけるMMPMより低くなければ、治療レジメンを変更する
という指標を提供するステップ
を含む、非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん(SCLC)、および結腸直腸がん(CRC)
の処置のための指標を提供する方法。
【請求項6】
治療レジメンを変更するステップが、治療法の用量の増大、1つまたは複数の治療剤の追加、および変更されていない治療レジメンと比較した際の治療期間の延長の1つまたは複数を含む、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍学の分野に関する。さらに具体的には、本発明は、がん患者の核酸ベースの試験の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのタイプのがんにおいて化学放射線療法が常用されているが、多くの患者は、処置に対して応答が不良であるか、または不応である。現在の予後予測方法は、依然として、イメージングに限られている。CTスキャンが処置の数カ月後に典型的には行われるが、これは、暫定的な代替療法が有益であったと思われる患者における、疾患の進行を検出するには遅すぎるおそれがある。CTスキャンはまた、より小さな腫瘍を有する患者における疾病負荷を正確に評価するには解像度が十分ではない可能性がある。
【0003】
血漿中の血中循環腫瘍DNA(ctDNA)は、疾病負荷を迅速かつ正確に推定するための代替的な方法であり、腫瘍のクローン性の評価における生検部位のバイアスを克服し得る。ctDNAは、血流に流れ出る、断片化された腫瘍由来DNAを指す。これまでの分析は、血漿中のctDNAレベルが疾患のモニタリングのためのツールとして使用され得、処置応答を評価し得、また、残った疾患および再発性の疾患ならびに処置の失敗をCTスキャンよりも迅速かつ正確に検出し得ることを示している。Diehl Fら(2008)Circulating mutant DNA to assess tumor dynamics.Nat Med.Sep、14(9):985~90。ctDNAの予後予測上の価値は、いくつかのタイプのがんの研究において実証されている。Almodovar Kら(2018)Longitudinal cell-free DNA analysis in patients with small cell lung cancer reveals dynamic insights into treatment efficacy and disease relapse.J Thorac Oncol.Jan、13(1):112~123;Tie J.ら(2015)Circulating tumor DNA as an early marker of therapeutic response in patients with metastatic colorectal cancer.Ann Oncol.26:1715~1722。しかし、定性的評価から、患者のケアをリアルタイムで導き得る定量的測定への移行が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、非侵襲的な方法によって治療法に対する応答を評価することによる、がん患者の治療法を評価し、導く方法である。本方法は、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)としても知られている無細胞腫瘍DNAに関連する新規なパラメータにおける変化を測定することを含む。新規なパラメータは、回収された血漿の量当たりの、例えば、血漿の容積当たりの突然変異ctDNA分子の数である。
【0005】
一実施形態において、本発明は、処置レジメン中の第1の時点で回収された患者の血漿サンプルを用意するステップ、処置レジメン中の第2の時点で回収された患者の血漿サンプルを用意するステップ、前記サンプルにおいて、表1または表2で列挙するバイオマーカーのそれぞれの少なくとも一部分の配列を決定するステップ、前記サンプルにおいて、サンプルの容積に対する、バイオマーカーにおいて検出された突然変異の数の比率(MMPM)を決定するステップ、および、第2のサンプルにおけるMMPMが第1のサンプルにおけるよりも低ければ、患者は治療レジメンに対して応答したと判定するステップ、または第2のサンプルにおけるMMPMが第1のサンプルにおけるよりも低くなければ、患者は治療レジメンに対して応答しなかったと判定するステップを含む、がん患者が治療レジメンに対して正に応答したか否かを判定する方法である。がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん(SCLC)、および結腸直腸がん(CRC)の中から選択し得る。治療法に対する患者の応答は、無増悪生存期間(PFS)の増大および全生存期間(OS)の増大から選択し得る。治療レジメンは、FOLFOXIRI-ベバシズマブでの処置、FOLFOX-ベバシズマブでの処置、カペシタビン(capercitabine)-ベバシズマブ、および化学放射線療法から選択し得る。一部の実施形態において、本方法は、処置レジメン中のさらなる時点で採取されるさらなる血漿を回収すること、および、その中のMMPMがそれより前の時点と比較して低下しているか否か、またはその後の時点のMMPMよりも大きいか否かを判定することをさらに含む。
【0006】
一実施形態において、本発明は、処置レジメン中の第1の時点で回収された患者の血漿サンプルを用意するステップ、処置レジメン中の第2の時点で回収された患者の血漿サンプルを用意するステップ、前記サンプルにおいて、表1または表2で列挙するバイオマーカーのそれぞれの少なくとも一部分の配列を決定するステップ、前記サンプルにおいて、サンプルの容積に対する、バイオマーカーにおいて検出された突然変異の数の比率(MMPM)を決定するステップ、および、第2のサンプルにおけるMMPMが第1のサンプルにおけるより低ければ、治療レジメンを継続するステップ、または第2のサンプルにおけるMMPMが第1のサンプルにおけるより低くなければ、治療レジメンを変更するステップを含む、非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん(SCLC)、および結腸直腸がん(CRC)を処置する方法である。治療レジメンを変更するステップは、治療法の用量の増大、1つまたは複数の治療剤の追加、および変更されていない治療レジメンと比較した際の治療期間の延長の1つまたは複数を含み得る。
【0007】
一実施形態において、本発明は、がん患者が治療レジメンに対して正に応答したか否かについてのアルゴリズムを実装するように設計されたコンピュータシステムであって、アルゴリズムが、治療レジメン中の別々の時点で回収された少なくとも2人の患者の血液サンプルから得た1つまたは複数のバイオマーカーについてのシーケンシングデータを分析し、アルゴリズムが、突然変異検出のステップ、エラー訂正のステップ、サンプル当たりの突然変異の数を計数し、サンプル容積に対するサンプル中の突然変異の数の比率(MMPM)を決定するステップ、MMPMがその後の各時点で低下したか否かを判定するステップ、および、MMPMがその後の時点間で低下していれば、患者が治療法に対して応答したと報告し、MMPMがその後の時点間で低下していなければ、患者が治療法に対して応答しなかったと報告するステップ、から選択される1つまたは複数のステップを含む、コンピュータシステムである。
【0008】
一実施形態において、本発明は、がん患者に対する治療法を選択するためのアルゴリズムを実装するように設計されたコンピュータシステムであって、アルゴリズムが、治療レジメン中の別々の時点で回収された少なくとも2人の患者の血液サンプルから得た1つまたは複数のバイオマーカーについてのシーケンシングデータを分析し、アルゴリズムが、突然変異検出のステップ、エラー訂正のステップ、サンプル当たりの突然変異の数を計数し、サンプル容積に対するサンプル中の突然変異の数の比率(MMPM)を決定するステップ、MMPMがその後の各時点で低下したか否かを判定するステップ、および、MMPMがその後の時点間で低下していれば、同一の治療法の選択が提案されることを報告し、MMPMがその後の時点間で低下していなければ、代替療法の選択が提案されることを報告するステップ、から選択される1つまたは複数のステップを含む、コンピュータシステムである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】測定されたMMPMが中央値を下回るmCRC患者の無増悪生存期間(PFS)と、測定されたMMPMが中央値を上回るまたは中央値に等しいmCRC患者の無増悪生存期間(PFS)とを比較する、カプラン・マイヤーグラフである。
【
図2】MMPM<8のmCRC患者の無増悪生存期間(PFS)と≧8のmCRC患者の無増悪生存期間(PFS)とを比較する、カプラン・マイヤーグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
定義
以下の定義は限定的なものではなく、本開示の理解の助けとなるものにすぎない。
用語「PFS」は、患者の無増悪生存の期間を説明するために、本明細書において使用される。
【0011】
用語「OS」は、患者の全生存の期間を説明するために、本明細書において使用される。
用語「血中循環腫瘍DNA(ctDNA)」は、腫瘍に由来する、ヒトの血漿または血清で見られる無細胞DNA(cfDNA)の一部分を説明するために、本明細書において使用される。血中循環腫瘍DNAは、腫瘍の特徴である突然変異によって、非腫瘍DNAと区別される。
【0012】
用語「バイオマーカー」は、生物学的または臨床的現象に関連する情報を含むヌクレオチド配列を説明するために、本明細書において使用される。例えば、情報は、ヌクレオチド配列の突然変異の状態の場合もある。バイオマーカーは、遺伝子(コード配列、調節配列、イントロン、もしくはスプライス部位を含む)または遺伝子間領域とし得る。臨床的現象は、患者のサンプルにおける悪性細胞、例えば腫瘍細胞の存在とし得る。
【0013】
用語「WGSと表記される全ゲノムシーケンシング」は、細胞の、または1つもしくは複数の細胞が由来する元である生物の、ゲノム全体のシーケンシングを説明するために、本明細書において使用される。用語「WESと表記される全エキソームシーケンシング」は、ゲノムの全ての遺伝子に存在する全てのエキソンのシーケンシングを説明するために、本明細書において使用される。ヒトまたは他の高等脊椎動物のゲノムに対するWGSおよびWESの両方は、大量の配列情報を集め、保存することができる、大規模並列シーケンシング方法(次世代シーケンシング方法)を使用して行われる。
【0014】
本発明は、腫瘍患者を処置する方法、腫瘍患者の処置をモニタリングする方法、および腫瘍患者の処置レジメンを修正または変更する方法を記載する。一部の実施形態において、腫瘍は、非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん(SCLC)、および結腸直腸がん(CRC)から選択される。
【0015】
腫瘍細胞は、腫瘍の発生および進行の間に体細胞突然変異を蓄積させることが知られている。腫瘍突然変異を評価する様々な方法が、診断および治療法選択に使用されている。例えば、患者から得た腫瘍サンプルにおける突然変異の数として定義される腫瘍遺伝子変異量(TMB)は、固形転移性悪性腫瘍のアレイのための、化学療法およびがん免疫療法についての予測バイオマーカーである。TMBは、全エキソームシーケンシング(WES)によってまたはマルチメガベースパネルのシーケンシングによって測定されることが多い。最近の研究では、1.2メガベースのゲノムを含むパネルが突然変異について分析された。185、236、315、または405のがん関連遺伝子からのエキソン領域のハイブリダイゼーションキャプチャー、およびがんにおいて共通して再配列されている19、28、または31の遺伝子からのイントロンの選択が、ホルマリン固定されパラフィン包埋された臨床的がん標本から抽出された≧50ngのDNAに適用された。Chalmersら(2017)Analysis of 100,000 human cancer genomes reveals the landscape of tumor mutational burden,Genome Medicine(2017)9:34;Goodmanら(2017)Tumor Mutational Burden as an Independent Predictor of Response to Immunotherapy in Diverse Cancers,doi:10.1158/1535~7163.MCT-17-0386;Maia,M.C.ら(2018)Relationship of tumor mutational burden(TMB)to immunotherapy response in metastatic renal cell carcinoma(mRCC),Journal of Clinical Oncology 36、第6号_補遺(2018年2月20日)662~662。最近、腫瘍に特徴的な突然変異を評価する、新たな、さらに実用的な、非侵襲的な方法が開発されており、「Surrogate Marker and Method for Tumor Mutation Burden Measurement」という発明の名称の、2018年5月3日に出願された米国仮出願第62/666,329号において記載されている。WGSまたはWESなどの全ゲノム分析の代わりに、この新たな方法は、小さな標的シーケンシングパネルを利用して、がん患者の血中循環腫瘍DNA(ctDNA)において見られる突然変異を測定する。この方法は、例えば組織ベースのシーケンシングと比較してより大きなシーケンシング深度を採用し、そして、固形腫瘍において共通して突然変異している遺伝子を濃縮する、より小さな標的シーケンシングパネルを利用する。突然変異数は、わずか198キロベースの標的次世代シーケンシングパネルである、AVENIO ctDNA Surveillanceキット(Roche Sequencing Solutions,Inc.、Pleasanton、Cal.)を使用して評価される。このパネルは、ヒトゲノムのごく一部のみを調べることによって、肺がんおよび結腸直腸がんにおいて検出しようとしている関連する突然変異の数を最大にするように設計された。より小さなゲノム部分がシーケンシングされ、サンプルは無細胞DNAしか含まないが、この方法は、腫瘍DNA内に存在する突然変異を適切に評価することが示されている。
【0016】
本発明は、同一の限定的なゲノムパネルアプローチを利用する。本発明は、処置レジメンの有効性が、腫瘍突然変異の変化を検出することによってモニタリングされる、腫瘍を有する患者を評価し、処置する方法である。この新規な方法は、経済的かつ非侵襲性である。さらに具体的には、治療レジメンの有効性は、血漿1ミリリットル当たりの突然変異分子(MMPM)という新規なパラメータの変化を検出することによってモニタリングされる。MMPMは、検出された腫瘍突然変異の数を、試験対象の核酸が抽出された元である血漿の容積で割ったものである。当業者には、MMPMを決定するためにサンプルを数ミリリットル単位で測定する必要がないことが理解されよう。サンプル量のあらゆる他の測定、例えば任意の単位で決定される質量または容積も、MMPMの検出およびモニタリングに同様に適している。本発明はさらに、処置でのMMPMの変化の決定を含む。血液サンプルは、場合によって処置前の測定および1回または複数回のさらなる測定を含む、処置中の様々な時点で、患者から回収される。MMPM値は、異なる時点の間で比較される。本処置方法はさらに、MMPMの低減が時点間で観察されれば処置レジメンを継続することを含む。本処置方法は、あるいは、MMPMの低減が時点間で観察されなければ処置レジメンを変更するステップを含む。
【0017】
一部の実施形態において、本発明は、次世代シーケンシング(NGS)によって腫瘍特異的な体細胞突然変異を識別するためのバイオマーカーパネルを使用する。一部の実施形態において、本発明は、患者から得た血液サンプルまたは血液由来サンプルを利用する。サンプルは、血中循環腫瘍DNA(cfDNAまたはctDNA)を含む無細胞DNAを含有する、血液の任意の画分、例えば血清または血漿を含み得る。一部の実施形態において、サンプルは、処置中の様々な時点で、例えば、化学療法レジメンまたは化学放射線療法レジメンの前、最中、および後に、連続的に採取される。患者からの血液サンプルは、例えば、2010年1月19日に出願された米国特許出願第12/689,370号、Preservation of fetal nucleic acids in maternal plasmaにおいて記載されているような保存用媒質中への血液サンプルの回収を含む、無細胞DNAを保存する任意の適切な手段によって、回収され、保存される。
【0018】
一部の実施形態において、本発明は、遺伝子パネルまたは突然変異パネルまたは体細胞バリアントパネルを含む、バイオマーカーパネルを利用する。突然変異は、遺伝子のコード領域内で生じる場合、ナンセンス(on-sense)突然変異、ミスセンス突然変異、およびフレームシフト突然変異に対応する、単一ヌクレオチド変異(SNV)、欠失および挿入(インデル)を含み得る。他のタイプの突然変異としては、遺伝子の融合および転座が含まれる。このようなパネルの選択、サイズ、および内容は、例えば、「Identification and Use of Circulating Tumor Markers」という発明の名称の米国特許出願第14/209,807号、米国特許出願第14/774,518号、および国際出願第PCT/US2015/049838号において記載されている。一部の実施形態において、本発明は、パネル内のバイオマーカーの、例えば表1または表2で列挙する遺伝子の配列を決定することを含む。一部の実施形態において、遺伝子の配列全体が決定される。他の実施形態において、遺伝子のコード配列全体が決定される。他の実施形態において、がんにおいて突然変異生成されることが知られている遺伝子の一部分の配列のみが決定される。さらに他の実施形態において、バイオマーカーは、コード配列を伴わずに、調節配列、または機能未知であるが、ヒト腫瘍において一貫して突然変異することが知られている配列を伴っている。一部の実施形態において、遺伝子または他の配列の一部分は、それが同一のタイプの腫瘍または異なるタイプの腫瘍に罹患している複数の患者における突然変異の再発を特徴とするならば、パネルに含めるために選択される。パネルに含めるための他の基準は、上記の特許出願「Identification and Use of Circulating Tumor Markers」において開示されている。
【0019】
本発明の文脈において、バイオマーカーの配列は、当技術分野において知られているあらゆる適切な方法を介して決定し得る。適切な方法は、非突然変異配列と同時発生する希少な突然変異配列を検出するための十分な精度、例えば感度および特異性を有する。一部の実施形態において、シーケンシング方法は、分子バーコード、エラーステレオタイピング、および、例えば上記の特許出願「Identification and Use of Circulating Tumor Markers」において記載されている他の化学的または計算的なエラー抑制方法の使用などの、エラー訂正ステップを含む。シーケンシング方法としては、アレイベースのシーケンシング(Illumina、San Diego、Cal.)、エマルジョンベースのシーケンシング(ThermoFisher、Waltham、Mass.)、光学測定ベースのシーケンシング(Pacific BioSciences、Menlo Park、Cal.)、またはナノポアベースのシーケンシング(Oxford Naopore、Oxford、UK、またはRoche Sequencing Solutions、Santa Clara、Cal.)を含む、大規模並列シーケンシング方法を含み得る。
【0020】
配列データは、突然変異を決定するために参照ゲノム配列と比較される。一部の実施形態において、参照配列は、規準的なヒトゲノムアセンブリ、例えばHG38である。参照ゲノムと比較しての核酸配列の変化が識別され、突然変異としてスコア付けされる。一部の実施形態において、1つまたは複数のフィルターが、スコア付けされる突然変異を選択するために適用される。一部の実施形態において、コード領域内の突然変異のみがスコア付けされる。一部の実施形態において、コード領域内の非同義突然変異のみがスコア付けされる。他の実施形態において、コード領域内の非同義突然変異および同義突然変異の両方がスコア付けされる。さらに他の実施形態において、頻度がより低い突然変異事象の検出を可能にするために、がんドライバー遺伝子における突然変異が、スコア付けから除外される。
【0021】
一部の実施形態において、本発明は、無増悪生存期間(PFS)、無再発生存期間(RFS)、再発までの総時間(TTR)、および全生存期間(OS)のうちの1つまたは複数の期間を決定することによって、治療を受けている患者におけるがんの状態を評価するステップを含む。評価は、本明細書において記載されるように決定された、処置中のMMPMの変化に基づく。
【0022】
一部の実施形態において、本発明は、投与されている処置レジメンに対して良好に応答しているがん患者を識別するための方法を提供する。本発明はまた、投与されている処置レジメンに対して良好に応答していないがん患者を識別するための方法を提供する。具体的には、本発明は、処置中の2つ以上の時点で、患者から得た無細胞血液サンプルから核酸を単離するステップ、単離された核酸において、表1または表2に列挙するバイオマーカーのそれぞれの少なくとも一部分の配列を決定するステップ、配列を参照配列と比較し、突然変異を識別するステップ、識別された突然変異の数と回収された血液または血漿の量(例えば容積)との比率としてMMPMを決定するステップ、および時点間でのMMPMの変化を決定するステップを含む、がん患者を処置する方法である。本方法はさらに、MMPMがその後の時点間で低下していれば治療レジメンを継続し、MMPMがその後の時点間で低下していなければ治療レジメンを変更することを含む。一部の実施形態において、転移性結腸直腸がん(mCRC)を含む結腸直腸がん(CRC)のための治療レジメンは、同時に投与される(cFOLFOXIRI-BEV)ベバシズマブ(BEV)と5-フルオロウラシル/ロイコボリン/オキサリプラチン(FOLFOX)および5-フルオロウラシル/ロイコボリン/イリノテカン(FOLFIRI)、またはカペシタビンとベバシズマブから選択される。一部の実施形態において、mCRCのための進行療法は、選択されたベバシズマブおよびフルオロピリミジンベースの化学療法である。
【0023】
本発明の一態様は、患者においてMMPMを検出するためのシステムを含む。このシステムは、プロセッサ、およびプロセッサに繋がれた非一時的なコンピュータ可読媒体を含み、この媒体は、処置中の2つ以上の時点で回収されたサンプルから得られた表1または表2のバイオマーカーについてのシーケンシングデータを分析するステップ、配列の比較および突然変異の検出、エラーの訂正を行うステップ、識別された突然変異の数と血漿の量(例えば容積)との比率としてMMPMを決定するステップ、ならびにMMPMがその後の時点間で低下したか否かを判定するステップを含む方法を行うための、プロセッサによって実行できるコードを含む。
【0024】
一部の実施形態において、コンピュータ可読媒体は、1つまたは複数の記憶デバイスを含み得るが、患者におけるMMPM測定のダイナミクスに応じた利用可能な治療法のリストを含むデータベースを含む。コンピュータ可読媒体はさらに、適切な治療法を列挙する報告を生成するための指示を有するプログラムコードを含む。システムは、デジタルデータを処理するためのプロセッサ、デジタルデータを格納するための、プロセッサに繋がれたメモリ、デジタルデータをインプットするための、プロセッサに繋がれたインプットデジタイザ、メモリに格納され、プロセッサによってアクセス可能な、プログラムコード、プロセッサに繋がれたディスプレイデバイス、ならびに、デジタルデータ、データネットワーキング、および1つまたは複数の情報データベースに由来する情報をディスプレイするためのメモリを含む、サーバなどの、様々な機能面を含み得る。データベースは、患者のデータ、患者のサンプルのデータ、前処置のデータを含む臨床データ、治療法および治療剤のリスト、患者のトラッキングデータ、およびそれに類するものを含み得る。
【0025】
一部の実施形態において、本発明は、患者の組織および血液を分析してサンプルにおける腫瘍特異的な突然変異を識別および定量することができる、AVENIO(登録商標)ctDNA分析キット(Roche Sequencing Solutions,Inc.、Pleasanton、Cal.)などのバイオマーカーパネルを利用する。AVENIO(登録商標)ctDNA分析キット(expandedパネル)におけるバイオマーカーパネルの組成を表1に示す。AVENIO(登録商標)ctDNA分析キット(surveillanceパネル)におけるバイオマーカーパネルの組成を表2に示す。
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
一部の実施形態において、表1に列挙する77の遺伝子からなるパネルの一部のまたは全ての遺伝子が使用される。一部の実施形態において、表2に列挙する197の遺伝子からなるパネルの一部のまたは全ての遺伝子が使用される。突然変異(MMPM)の測定は、MMPMの変化を評価するために、処置レジメン中の1つまたは複数の時点で行われる。一部の実施形態において、最初の測定は、処置レジメンの開始前に行われる。一部の実施形態において、最後の測定は、処置レジメンの完了後に行われる。一部の実施形態において、処置前のMMPM測定は利用できず、MMPMの変化を評価するために、突然変異(MMPM)の測定が、処置中のみ、場合によって処置後に行われる。
【実施例】
【0030】
実施例1
MMPMを使用して、肺がん(NSCLC)患者が治療法に対して応答したか否かを判定する。
【0031】
血漿サンプルを、進行非小細胞肺がん(NSCLC)腺がん患者のコホートから回収した。AVENIO(登録商標)ctDNAキットのSurveillanceパネル(Roche Sequencing Solutions、Pleasanton、Cal.)を使用して、患者のサンプルにおける突然変異の数を評価した。患者の無細胞DNA(cfDNA)を、AVENIO(登録商標)ctDNAキットの製造者の指示に従って単離および分析した。処置後のMMPM値を、ベースラインおよび/またはそれ以前の処置時点でのMMPM値と比較した。ベースライン(b0)では、本発明者らは、ctDNAのモニタリングを可能にするために、全ての患者においてバリアントを識別した。本発明者らは、第1の処置サイクルおよび第2の処置サイクルの後に採取した血漿をそれぞれp1およびp2と定義する。
【0032】
p2での8を下回る平均MMPMまでの経時的な平均MMPMの低減によって表されるctDNAレベルの連続的な低下(p2<p1<b0)によって定義される、連続的レスポンダーアルゴリズムが適用された。その結果、13/43(30%)の連続的レスポンダーが、PFS(P=0.028 HR 0.45;95%CI 0.23~0.90)およびOS(P=0.0074 HR 0.3;95%CI 0.12~0.77)によって示される、より良好な治療応答を伴っていた。連続的レスポンダーは、不良なレスポンダーと比べて11.25カ月の全生存期間利点中央値を示した。結果は、NGSによって測定された処置直後のctDNAレベルが、進行肺腺がん集団における化学放射線療法への応答に関連していたことを示す。
【0033】
実施例2
MMPMを使用して、肺がん(SCLC)患者が治療法に対して応答したか否かを判定する。
【0034】
ドイツの肺がんマルチマーカーのプロスペクティブ観察研究から、本発明者らは、UICC-ステージIIIB/IVの、最初の72人の小細胞肺がん(SCLC)の治療継続患者を選択し、血漿サンプルは、治療法の開始前、および第2のサイクルの化学療法の前、および第3のサイクルの前に入手可能であった。本発明者らは、治療開始後のctDNAのレベルの評価が処置効果および予後に関連すると仮定した。本発明者らは、197の遺伝子のNGSアッセイである、AVENIO ctDNA Surveillanceキット(Roche Sequencing Solutions、Pleasanton、Cal.)を利用し、これによって、本発明者らは、縦断的ctDNA分析を行うこと、および、全てのシーケンシングされたゲノム領域の全バリアントにわたりctDNAを定量する、血漿1ミリリットル当たりの突然変異分子(MMPM)を測定することが可能となった。全ての抽出されたcfDNAサンプルを処理し、採血の日付順に並べた。ベースライン(b0)で、本発明者らは、全ての(72/72)対象においてバリアントを識別して、ctDNAのモニタリングを可能にした。各対象からの連続リキッドバイオプシーを使用して、第1の処置サイクル後(p1)の平均MMPMおよび第2の処置サイクル後(p2)の平均MMPMを分析した。本発明者らは、p2での18を下回る平均MMPMまでの経時的な平均MMPMの低減によって表されるctDNAレベルの連続的な低下(p2<p1<b0)によって定義される、連続的レスポンダーアルゴリズムを試験した。その結果、47/72の連続的レスポンダーが、より良好な治療応答、OS HR=2(P=0.0092%、CI 1.2~3.4)を伴っていた。連続的レスポンダーは、不良なレスポンダーと比べて4.6カ月の生存期間利点中央値を示した。性別も、年齢も、ECOGも、ステージも、モデルにおける応答の予測因子ではなかった。結果は、処置効果の早期の評価は、血漿中の突然変異分子数によって判定し得ることを示す。処置後のctDNAレベルの低下は、進行SCLCにおけるより良好な予後と関連していた。
【0035】
実施例3
MMPMを使用する、転移性結腸直腸がん(mCRC)患者における疾患のモニタリング
患者の選択および処置
研究のために選択された患者は、これまでにmCRCの処置を受けていない、第2フェーズ試験の患者であった。21日間のスクリーニング期間の後、患者を1:1:1で、cFOLFOXIRI-BEV、sFOLFOXIRI-BEV、またはFOLFOX-BEVを2週間サイクルで投与する、4カ月間の処置導入フェーズにランダム化した。導入は、処置する医師の裁量で、最大でさらに2カ月間延長し得る。導入療法の後に、2週間ごとの5-フルオロウラシル、ロイコボリン、およびベバシズマブで、または3週間ごとのカペシタビンとベバシズマブとで、維持した。疾患が進行した後、患者に研究者の選択でベバシズマブおよびフルオロピリミジンベースの第二選択化学療法薬を投与することになっていた。処置は、進行、死亡、同意の取り消し、または許容できない毒性が現れるまで継続した。処置の有効性は、ランダム化前のスクリーニング期間の間、およびその後8週間ごとに、固形腫瘍における応答評価基準(RECIST)v1.1ごとに、施設試験責任者(site investigators)によって評価された。PFSを、ランダム化から、最初の疾患進行または何らかの原因による死亡の、より早く生じた方までの時間として計算した。事象を有さない患者は、その最後の腫瘍評価の時点で除外した。
【0036】
バイオマーカー分析のための組織および血漿の回収
バイオマーカーについて評価可能な患者は、バイオマーカープログラムへの参加について任意選択の同意を与え、1つの組織サンプル、1つの導入前血漿サンプル、および1つの導入後血漿サンプルを有する患者と定義された。組織サンプルおよび導入前の血漿サンプルは分析可能でなければならず、また、互いに90日以内の間隔で回収されなければならなかった。さらに、導入後の血漿サンプルは、最後の薬剤導入日から60日以内に回収されなければならなかった。各患者についての保管されていたまたは新鮮なベースライン(サイクル1、1日目、処置前)腫瘍組織を回収した。バイオマーカー分析のための血漿は、ベースラインで、および導入フェーズの最後(サイクル8の最後、研究者の裁量によってサイクル12まで延長が可能)で回収した。
【0037】
腫瘍DNAおよび血漿ctDNAのバイオマーカーの評価
cfDNAを、cobas(登録商標)cfDNAサンプル調製キット(Roche Molecular Systems、Pleasanton、Cal.)を使用して4mLの血漿から抽出し、腫瘍DNAを、cobas(登録商標)DNAサンプル調製キット(Roche Molecular Systems、Pleasanton、Cal.)を使用してホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織切片から単離した。DNA収量を、Qubit HSアッセイ(ThermoFisher、Waltham、Mass)によって定量した。1から208ng(中央値50ng)のcfDNAを使用する、AVENIO ctDNA Expandedキット(研究使用のみ;Roche Sequencing Solutions、Pleasanton、Cal.)を使用してのシーケンシングのために、cfDNAサンプルを調製した。DNAのシーケンシングは、Illumina HiSeq 4000で行った。ctDNAのバリアントを、AVENIO ctDNA分析ソフトウェア(Roche Sequencing Solutions、Pleasanton、Cal.)を使用して識別した。
【0038】
ミリリットル当たりの突然変異分子(MMPM)の決定
所与の体細胞突然変異についての対立遺伝子頻度(AF)を、その突然変異を有する重複除去されたリードの数を、そのゲノム位置をカバーする重複除去されたリードの総数で割ったものとして計算した。所与の体細胞突然変異についてのMMPMを、そのバリアントのAFに、抽出された質量(ng)をかけ、血漿容積(mL)で割り、そして1ng当たり330の1倍体ヒトゲノム当量(hGE)の係数によって調整することによって計算した。各血漿サンプルについての平均AFまたは平均MMPMを、対応(matched)組織サンプルによって事前に定義された体細胞バリアント(単一ヌクレオチドバリアントおよびインデル)全体について計算した。分類指標についてのカットオフは、導入後の平均AF値および平均MMPM値の分布に基づいて決定した。複数のカットオフ値を試験した後、本発明者らは、8MM/mLの平均MMPM値が良好な分子レスポンダーと不良な分子レスポンダーとの臨床的に有意な分離を示すことを見出した。
【0039】
統計方法
カプラン・マイヤー方法およびログランク検定を使用して、中央値PFSおよびログランクp値を推定した。コックス比例ハザードモデルを使用して、ハザード比(HR)およびそれに伴う95%CIを推定した。
【0040】
結果
バイオマーカーを評価可能な集団における54人の患者のうち、6人の患者が、研究中に、根治目的の外科手術(すなわち、R0切除のアウトカムを伴う外科手術)を受けていた。中央値を追跡した期間は、バイオマーカーを評価可能な集団に含められた54人の患者において、19.3(範囲は6.7~28.0)カ月間であった。バイオマーカーを評価可能な集団(n=54)におけるファーストライン導入療法後の中央値PFSは、残りのSTEAM集団(n=226)で見られる中央値PFSに類似していた(それぞれ11.2カ月と10.9カ月;HR 1.09[95%CI 0.77~1.54]、ログランクP=0.6361)。
【0041】
導入後の平均MMPM(mMMPM)とPFSとの関連
血漿中のctDNAレベルを推定する代替的な方法として、本発明者らは、新規なパラメータ、すなわち、単位血漿当たりのバリアント分子(MMPM)の絶対数を評価した。本発明者らは、MMPMの変化とPFSとの関連を判定した。導入後の平均MMPM(mMMPM)レベルは、使用したカットオフにかかわらず(中央値、8MM/mL、または10MM/mL)、PFSと逆に関連しており、このことは、mMMPMレベルがさらに、臨床的アウトカムを予測することを示唆している。≦中央値mMMPMの患者と、>中央値mMMPMの患者とにおいて、中央値PFSはそれぞれ17.7カ月と8.1カ月とであり、HRは0.39(95%CI 0.20~0.75)(ログランクP=0.0034)であった(
図1)。<8MM/mLの患者と、≧8MM/mLの患者とにおいて、中央値PFSはそれぞれ16.9カ月と7.4カ月とであり、HRは0.29(95%CI 0.15~0.57、ログランクP=0.0001)であった(
図2)。
【0042】
mAFおよびmMMPMは全体として互いに相関していたが、非常に高い(>100ng/mL)血漿cfDNAレベルを有していたこの分析における3人の患者は、低い導入後mAFレベル(0.21%、0.36%、および0.03%)を有していたものの、中央値mMMPMよりも大きい値を有していた(それぞれ、211.62、793.43、10.93)。3人の患者のうち2人は、比較的短いPFS期間(6.7カ月間および7.5カ月間)を有していた。これらの外れ値のケースでは、mAFは疾病負荷が過小評価されている可能性があるため、mMMPMはmAFよりも良好な予後バイオマーカーであった。