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特許7185701試料中の分析物を検出するためのカメラを較正し使用するための方法およびシステム
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  • 特許-試料中の分析物を検出するためのカメラを較正し使用するための方法およびシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】試料中の分析物を検出するためのカメラを較正し使用するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20221130BHJP
   G01N 33/52 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
G01N21/27 A
G01N33/52 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020544639
(86)(22)【出願日】2019-02-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2019054583
(87)【国際公開番号】W WO2019162496
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-10-02
(31)【優先権主張番号】18158626.4
(32)【優先日】2018-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】マックス ベルク
(72)【発明者】
【氏名】フレドリック ハイラー
(72)【発明者】
【氏名】ベルント リムブルク
【審査官】古川 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-101482(JP,A)
【文献】特開2011-191081(JP,A)
【文献】特表2015-509582(JP,A)
【文献】特表2015-536465(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0241358(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0184506(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0074783(US,A1)
【文献】特表2017-535751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/00-G01N21/01
G01N21/17-G01N21/61
G01N21/75-G01N21/83
G01N31/00-G01N31/22
G01N33/48-G01N33/98
G01J3/46-G01N3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の分析物を検出するためのカメラを較正するための較正方法において:
a. 色座標系セットを提供するステップであって、前記色座標系セットが物体の色を描写するために構成された複数の異なる色座標系を含んでいるステップと;
b. 前記分析物の公知の濃度を有するテスト試料セットを提供するステップと;
c. テスト要素セットに対してテスト試料を適用するステップであって、各テスト要素が、前記分析物との光学的に検出可能な検出反応を行なうために構成された少なくとも1つのテスト化学薬品を含む少なくとも1つのテストフィールドを有し、これにより前記テスト試料の各々について少なくとも1つの有色テストフィールドが創出されるステップと;
d. 前記カメラを使用することによって前記有色テストフィールドの画像を取得するステップと;
e. 前記色座標系セットの前記色座標系を使用することによって、前記有色テストフィールドの前記画像について色座標を生成するステップであって、これにより前記テスト試料および前記色座標系についての色座標セットが創出されるステップと;
f. コーディング関数セットを提供するステップであって、前記コーディング関数セットが、テストフィールドの色座標を前記試料中の前記分析物の対応する濃度へと変換するための複数のコーディング関数を含んでいるステップと;
g. 前記コーディング関数セットを使用することによって、ステップe.で生成された前記色座標セットを測定濃度セットへと変換するステップと;
h. 前記テスト試料セットの前記テスト試料の前記公知の濃度と前記測定濃度セットとを比較し、前記測定濃度セットが前記公知の濃度と最適にマッチする前記色座標系セットのベストマッチ色座標系および前記コーディング関数セットのベストマッチコーディング関数を決定するステップと;
を含む較正方法。
【請求項2】
前記カメラがスマートホンカメラである、請求項1に記載の較正方法。
【請求項3】
前記色座標系セットが、色座標を変換するためのパラメータ化関数セットによって定義され、前記パラメータ化関数のパラメータセットが前記色座標系の各々を特徴付けする、請求項1又は2に記載の較正方法。
【請求項4】
ステップe.が:
e1. 前記有色テストフィールドの前記画像についてのカメラ依存型色座標を生成するステップと;
e2. 第1の変換アルゴリズムを使用することによって、前記カメラ依存型色座標をカメラ非依存型色座標へと変換するステップと;
e3. 第2の変換アルゴリズムを使用することによって、前記カメラ非依存型色座標を前記色座標系セットの前記色座標系について色座標へと変換し、これにより前記テスト試料および前記色座標系についての前記色座標セットが創出されるステップと;
を含む、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の較正方法。
【請求項5】
前記第2の変換アルゴリズムが、パラメータ化関数を使用することによって前記カメラ非依存型色座標を前記色座標セットの前記色座標へと変換するステップを含む、請求項4に記載の較正方法。
【請求項6】
前記第2の変換アルゴリズムは、
-P11がパラメータであるものとして、以下のパラメータ化関数:
【数1】
を使用することによって前記カメラ非依存型色座標(X,Y,Z)を前記色座標セット(F,m,b)へと変換するステップを含む、請求項5に記載の較正方法。
【請求項7】
前記カメラ非依存型色座標が、人間の眼の感度に基づく色座標であり、前記カメラ非依存型色座標が三刺激値であり、前記第2の変換アルゴリズムが前記テストフィールドの照明を考慮に入れ、照明依存型色座標(F,m,b)は、(F、m、b)が、照明基準フィールドの画像から導出された色座標であるものとして:
【数2】
のうちの1つ以上を使用することによって、相対的色座標(Frel,mrel,brel)へと変換される、
請求項4ないし6のいずれか1項に記載の較正方法。
【請求項8】
前記第1の変換アルゴリズムが、公知のカメラ非依存型色座標を有する少なくとも1つの基準色フィールドの少なくとも1つの画像を取得することによって、カメラ較正プロセスにおいて決定される、請求項4ないし7のいずれか1項に記載の較正方法。
【請求項9】
ステップh.は、既定の濃度測定範囲全体にわたり、等距離濃度の試料が、本質的に等距離の色差を有する前記ベストマッチ色座標系内の色座標を導く、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の較正方法。
【請求項10】
試料中の分析物を検出するための検出方法において:
A. カメラを提供するステップと;
B. 請求項1ないし9のいずれか1項に記載の前記較正方法を使用することによって、前記カメラを較正するステップと;
C. テスト要素に対して前記試料を適用するステップであって、前記テスト要素が前記分析物との光学的に検出可能な検出反応を行なうために構成された少なくとも1つのテスト化学薬品を含む少なくとも1つのテストフィールドを有し、これにより前記試料についての少なくとも1つの有色テストフィールドが創出されるステップと;
D. 前記少なくとも1つの有色テストフィールドの少なくとも1つの画像を取得するステップと;
E. 前記ベストマッチ色座標系を使用することによって、前記テストフィールドの色座標を生成するステップと;
F. 前記ベストマッチコーディング関数を使用することによって、前記色座標を、前記試料中の前記分析物の測定濃度へと変換するステップと;
を含む方法。
【請求項11】
ステップC.~F.が反復的に行なわれ、ステップBが、最初ステップC.~F.の複数の反復について一回だけかまたは毎回ステップC.~F.を行なう前に行なわれる、請求項10に記載の検出方法。
【請求項12】
カメラを使用することによって試料中の分析物を検出する目的で前記カメラを較正するための較正システムにおいて、少なくとも1つのコンピュータまたはコンピュータネットワーク、前記分析物の公知の濃度を有するテスト試料セット、およびテスト要素セットを含み、各テスト要素が少なくとも1つのテストフィールドを有する較正システムであって、較正方法に関する請求項1ないし9のいずれか1項に記載の前記較正方法を行なうために構成されている較正システム。
【請求項13】
前記分析物との光学的に検出可能な検出反応を行なうために構成された少なくとも1つのテスト化学薬品を含む少なくとも1つのテストフィールドを有する少なくとも1つのテスト要素を使用することによって試料中の分析物を検出するための検出システムにおいて、少なくとも1つのカメラを含み、さらに少なくとも1つのコンピュータまたはコンピュータネットワーク、少なくとも1つの試料および少なくとも1つのテスト要素を含み、前記テスト要素が少なくとも1つのテストフィールドを有する検出システムであって、求項10又は11に記載の検出方法を行なうために構成されている検出システム。
【請求項14】
求項12に記載の較正システム及び請求項13に記載の出システムを含む、試料中の分析物を検出するためのシステム。
【請求項15】
コンピュータプログラムが請求項12に記載の正システムよって実行された時点で、請求項12に記載の正システム求項1ないし9のいずれか1項に記載の前記較正方法のステップを実施させる命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項16】
コンピュータプログラムが請求項13に記載の検出システムによって実行された時点で、請求項13に記載の前記検出システムに、請求項10又は11に記載の検出方法のステップを実施させる命令を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、試料中の分析物を検出するためのカメラを較正するための較正方法に関する。本発明はさらに、試料中の分析物を検出するための検出方法、および較正方法または検出方法を実行するためのプログラム手段を伴うコンピュータプログラムに関する。さらに、本発明は、カメラを使用することによって試料中の分析物を検出する目的でカメラを較正するための較正システム、少なくとも1つのテスト要素を使用することによって試料中の分析物を検出するための検出システム、および試料中の分析物を検出するためのシステムに関する。本発明に係る方法、コンピュータプログラムおよびシステムは、1つ以上の体液中の1つ以上の分析物を定性的または定量的に検出するために、医療診断において使用することができる。本発明の他の応用分野も可能である。
【背景技術】
【0002】
多くの場合において、医療診断には、体液、例えば血液、間質液、尿、唾液または他のタイプの体液などの試料中において1つ以上の分析物を検出することが必要とされる。検出対象の分析物の例としては、グルコース、トリグリセリド、乳酸塩、コレステロールまたはこれらの体液中に典型的に存在する他のタイプの分析物がある。概して、分析物を検出するための当業者にとって公知のデバイスおよび方法は、検出すべき分析物の存在下で1つ以上の検出可能な検出反応、例えば光学的に検出可能な反応を行なうことのできる1つ以上のテスト化学物質を含むテスト要素を使用する。これらのテスト化学物質に関しては、例えばJ.Hoenes et al.:The Technology Behind Glucose Meters:Test Strips,Diabetes Technology & Therapeutics,Volume 10,Supplement 1,2008,S-10~S-26を参照されたい。分析物の濃度および/またはその有無に応じて、必要な場合には適切な治療が選択される。
【0003】
典型的には、テスト化学物質の1つ以上の光学的に検出可能な変化が監視され、こうしてこれらの変化から検出すべき少なくとも1つの分析物の濃度を導出する。テストフィールドの光学的特性の少なくとも1つの変化を検出するために、当該技術分野においてさまざまなタイプの検出器が知られている。こうして、テストフィールドを照明するためのさまざまなタイプの光源ならびにさまざまなタイプの検出器が知られている。対応するテスト要素が含むテスト化学物質の変化を光学的に検出する目的で特定的に開発されたカスタム検出器を使用することに加えて、近年の開発は、スマートホンなどの広く利用可能なデバイスを使用することを目指している。
【0004】
一例として、Li Shen et al.:「Point-of-care colorimetric detection with a smartphone」,Lab Chip,2012,12,4240~4243,「The Royal Society of Chemistry」および対応するElectronic Supplementary Material(ESI) for Lab on a Chip,「The Royal Society of Chemistry」は、スマートホンを用いて比色検出を行なうことを提案している。比色診断アッセイの色は、広範囲の周囲条件内での高精度測定を可能にするスマートホンを用いて定量化される。スマートホンにより撮影したカラー画像の赤色、緑色および青色(RGB)強度を直接使用する代りに、色度値を用いて、分析物濃度の較正曲線が構築される。さらに、このアプローチを異なるライティング条件下で採用できるものにするため、周囲光の可変性に起因する測定誤差を補償するための較正技術が開発された。
【0005】
概して、スマートホンまたはカメラを有する他の消費者用エレクトロニクス製品を分析測定値の評価を目的として使用する場合、カメラの個別の較正が必要である。こうして、Ali K.Yetisen et al.:「A smartphone algorithm with inter-phone repeatability for the analysis of colorimetric tests」,Sensors and Actuators B 196(2014)156~160は、ユーザがスマートホンに情報を入力しスマートホンのカメラを用いてさまざまな較正点の画像を捕捉することによって較正入力を行なうことを求める、比色テストの分析のためのインターホン再現性を伴うスマートホンアルゴリズムを提案している。較正は、予め定義された条件下で行なわれる必要がある。その後、較正を行なうときと全く同じ条件を用いて、比色測定を行なうことができる。アプリは、較正曲線に対して目標データ値を比較することにより最終測定値を計算する。これは、計算幾何学における最近傍問題に類似した補間アルゴリズムによって達成される。
【0006】
別の較正アプローチが、比色テストストリップの分析および疾病管理のためのシステムおよび方法を開示する国際公開第2014/037820A2号の中で提案されている。このシステムは、移動体デバイスに対して動作可能な形で結合された付属品を含むことができ、ここで移動体は、比色テストストリップの画像を取得および/または分析する。ライトボックス付属品は、移動体デバイスに対し取外し可能な形で取付けられるか、または移動体デバイスに取付けられた状態にとどまるようにされ得るが、その場合一般写真撮影を目的としてカメラの視野からライトボックス付属品を除去することが可能になっている。他の実施形態においては、周囲ライティング条件の変化をモデリングし色補正関数を決定する目的で先の較正画像と比較するために、公知の較正色および試薬エリアを含む画像が、ライトボックス無しで得られる。補正は、検出された試薬エリアの色と基準チャート上の基準色との間のマッチングのために、検出された試薬エリアの色に対して適用され得る。
【0007】
試料中の分析物を検出する目的で、例えば消費者用エレクトロニクス製品に含まれるカメラなどのカメラを較正し使用する上で関与する利点にも関わらず、いくつかの技術的課題が残されている。概して、カメラシステム内での色表現は、例えばカメラにより捕捉される生データの内部的後処理によって、人間の色知覚の観点から見て最適化された画像を提供するように適応されている。しかしながら、人間の色知覚に起因するこのような後処理は、試料中の分析物濃度を精確に決定することを目指す場合、理想的でない可能性がある。さらに、市販の莫大な数のカメラの個別の技術的および光学的特性または異なるライティング条件などの非線形因子が、分析物濃度の決定に影響を及ぼすかもしれず、したがって考慮に入れる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、試料中の分析物を検出するためのカメラを較正するため、例えば、移動体デバイス、例えば消費者用エレクトロニクス製品移動体デバイス、具体的には、スマートホンまたはタブレット型コンピュータなどの分析測定専用でない汎用移動体デバイスに含まれるカメラを較正するために、上述の技術的課題に対処する方法、コンピュータプログラムおよびシステムを提供することが望ましい。具体的には、利用可能なカメラに広く応用できかつ測定精度およびユーザにとっての利便性を増大させるのに好適である方法、コンピュータプログラムおよびシステムが提案されるものとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この問題は、独立クレームの特徴を伴う方法、コンピュータプログラムおよびシステムによって対処される。単独でまたは任意の組合せの形で実現され得る有利な実施形態が、従属クレーム中に列挙される。
【0010】
以下で使用する「有する(have)」、「含む(compriseまたはinclude)」またはそれらの任意の文法的変化形は、非排他的に使用される。したがって、これらの用語は、これらの用語によって導入される特徴以外には、この文脈中で説明されるエンティティ内にさらなる特徴が全く存在しない状況、および1つ以上のさらなる特徴が存在する状況の両方を意味し得る。一例として、「AがBを有する(A has B)」、「AがBを含む(A comprises BおよびA includes B」なる表現は、両方共、B以外にA内には他のいかなる要素も存在しない状況(すなわち、Aが排他的にBのみで構成されている状況)、およびBに加えて要素C、要素CおよびD、さらには別の要素などの1つ以上のさらなる要素がエンティティA内に存在している状況を意味することができる。
【0011】
さらに、「少なくとも1つ」、「1つ以上」または特徴または要素が1回または2回以上存在し得ることを示す類似の表現は、典型的には、それぞれの特徴または要素を導入するときに一回だけ使用される、ということが指摘されるものとする。以下では、大部分の場合において、それぞれの特徴または要素に言及するとき、「少なくとも1つ」または「1つ以上」なる表現は、それぞれの特徴または要素が1回または2回以上存在し得るという事実にも関わらず、反復されることはない。
【0012】
さらに、以下で使用される「好ましくは」、「より好ましくは」、「詳細には」、「より詳細には」、「具体的には」、「より具体的には」なる用語または類似の用語は、代替的な可能性を制限することなく、任意の特徴と併せて使用される。したがって、これらの用語によって導入される特徴は任意の特徴であり、クレームの範囲をいかなる形であれ限定するように意図されたものではない。本発明は、当業者であれば認識するように、代替的特徴を使用することによっても実施され得る。同様にして、「本発明の実施形態において」または類似の表現によって導入される特徴は、本発明の変形実施形態に関するいかなる限定も無く、本発明の範囲に関するいかなる限定も無く、かつ本発明の他の任意のまた非任意の特徴を伴う形で導入される特徴の組合せの可能性に関するいかなる限定も無く、任意の特徴であるように意図されている。
【0013】
本発明の第1の態様においては、試料中の分析物を検出する目的でカメラを較正するための較正方法が開示されている。該方法は、具体的には所与の順序で行なうことのできる以下のステップを含む。さらに、異なる順序も同様に可能である。さらに、2つ以上の方法ステップを完全にまたは部分的に同時に行なうことが可能である。さらに、1つ以上の方法ステップさらには全ての方法ステップを一回または反復的に行なうことも可能である。該方法は、本明細書中で列挙されていない追加の方法ステップを含むことができる。概して、較正方法は、以下のステップを含む:
a. 色座標系セットを提供するステップであって、色座標系セットが物体の色を描写するために構成された複数の異なる色座標系を含んでいるステップ;
b. 分析物の公知の濃度を有するテスト試料セットを提供するステップ;
c. テスト要素セットに対してテスト試料を適用するステップであって、各テスト要素が、分析物との光学的に検出可能な検出反応を行なうために構成された少なくとも1つのテスト化学薬品を含む少なくとも1つのテストフィールドを有し、これによりテスト試料の各々についての少なくとも1つの有色テストフィールドが創出されるステップ;
d. カメラを使用することによって有色テストフィールドの画像を取得するステップ;
e. 色座標系セットの色座標系を使用することによって、有色テストフィールドの画像についての色座標を生成するステップであって、これにより、テスト試料および色座標系
についての色座標セットが創出されるステップ;
f. コーディング関数セットを提供するステップであって、コーディング関数セットが、テストフィールドの色座標を試料中の分析物の対応する濃度へと変換するための複数のコーディング関数を含んでいるステップ;
g. コーディング関数セットを使用することによって、ステップe.で生成された色座標セットを測定濃度セットへと変換するステップ;
h. テスト試料セットのテスト試料の公知の濃度と測定濃度セットとを比較し、測定濃度セットが公知の濃度と最適にマッチする色座標系セットのベストマッチ色座標系およびコーディング関数セットのベストマッチコーディング関数を決定するステップ。
【0014】
本明細書中で使用される「試料中の分析物を検出するためのカメラを較正するための較正方法」なる用語は広義語であり、当業者にとって通常かつ習慣的なその意味が与えられるべきであり、特殊なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は具体的には、非限定的に、カメラにより提供される情報と試料中の1つ以上の特定の分析物の有無またはその濃度との間の関係を決定するプロセスを意味し得る。したがって、典型的には、カメラは、以下でさらに詳細に説明するように、情報、例えば電子情報、1つ以上の画像、例えば少なくとも1つのテストフィールドの1つ以上の画像を生成する。概して、例えばカメラが試料により湿らされたテストフィールドの1つ以上の画像を撮る場合などに、情報またはその一部と試料中の分析物の有無または濃度との間には或る関係が存在し得る。この関係を決定するプロセスを、較正方法と呼ぶことができる。較正方法の結果として、この関係は、例えば、関係を定義する少なくとも1つの等式、関係を定義するための少なくとも1つのルックアップテーブルなどの少なくとも1つのテーブル、または少なくとも1つの較正曲線などの少なくとも1つのグラフのうちの1つ以上を定義することによって定義され得る。
【0015】
本明細書中で使用される「カメラ」なる用語は広義語であり、当業者にとって通常かつ習慣的なその意味が与えられるべきであり、特殊なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は具体的には、非限定的に、1つ以上の画像などの空間分解された光学的データを記録するために構成されたデバイスを意味する。カメラは具体的には、1つ以上のCCDおよび/またはCMOSチップなどの撮像デバイスである1つ以上のカメラチップを含むことができる。カメラは概して、画素などの画像センサの1次元または2次元アレイを含むことができる。一例として、カメラは、少なくとも1つの次元内に少なくとも10個の画素、例えば各次元内に少なくとも10個の画素を含むことができる。しかしながら、他のカメラも同様に可能であるということを指摘しておくものとする。本発明は具体的には、ノート型パソコン、タブレットまたは具体的には携帯電話、例えばスマートホンなどの移動体の利用分野において通常使用されるようなカメラに応用可能であるものとする。したがって、具体的には、カメラは、少なくとも1つのカメラに加えて1つ以上のデータプロセッサなどの少なくとも1つのデータ処理デバイスを含む移動体デバイスの一部であり得る。しかしながら、他のカメラも可能である。カメラは、少なくとも1つのカメラチップまたは撮像チップに加えて、さらなる要素、例えば1つ以上の光学素子、例えば1つ以上のレンズを含み得る。一例として、カメラは、カメラとの関係において固定的に調整される少なくとも1つのレンズを有する固定焦点カメラであってよい。しかしながら代替的には、カメラは、自動的または手動的に調整され得る1つ以上の可変レンズを含むこともできる。
【0016】
本明細書中で使用される「分析的測定」としても言及されることの多い「試料中の分析物を検出する」なる用語は広義語であり、当業者にとって通常かつ習慣的なその意味が与えられるべきであり、特殊なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は具体的には、非限定的に、試料中の少なくとも1つの分析物の定性的および/または定量的決定を意味し得る。一例として、分析的測定の結果は、決定対象の分析物の濃度および/またはその有無であり得る。
【0017】
本明細書中で使用される「画像」なる用語は広義語であり、当業者にとって通常かつ習慣的なその意味が与えられるべきであり、特殊なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は具体的には、非限定的に、カメラを使用することによって記録されるデータまたは情報、例えばカメラチップの画素などからの複数の電子読取り値を意味し得る。したがって、一例として、画像は1次元または2次元アレイのデータを含むことができる。こうして、画像自体は画素、例えばカメラチップの画素と相関関係をもつ画像の画素を含むことができる。その結果として、「画素」に言及する場合、カメラチップの単一の画素によって生成される画像情報単位か、または直接的にカメラチップの単一の画素のいずれかを意味する。
【0018】
カメラは、具体的に、カラーカメラであり得る。したがって、例えば各画素について、R、G、Bの3色についての色値などの色情報が提供または生成され得る。各画素について4色といったより多くの数の色値も同様に可能である。カラーカメラは、概して、当業者にとって公知のものである。したがって一例としてカメラチップの各画素は3つ以上の異なる色センサ、例えば赤色についての1つの画素(R)、黄色についての1つの画素(G)および青色についての1つの画素(B)のような色記録画素などを有することができる。R、G、B用などの画素の各々について、それぞれの色の強度に応じて0~255の範囲内のデジタル値などの値が画素によって記録され得る。R、G、Bなどの3色組を使用する代りに、一例としてC、M、Y、Kなどの4色組を使用することもできる。画素の色感度は、色フィルタによってかまたはカメラ画素内で使用されるセンサ要素の適切な固有感度によって生成され得る。これらの技術は、概して当業者にとって公知である。
【0019】
本明細書中で使用される「分析物」なる用語は広義語であり、当業者にとって通常かつ習慣的なその意味が与えられるべきであり、特殊なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は具体的には、非限定的に、検出および/または測定の対象である1つ以上の具体的化合物および/または他のパラメータを意味し得る。一例として、少なくとも1つの分析物は、グルコース、コレステロールまたはトリグリセリドのうちの1つ以上など、代謝に参与する化合物であり得る。付加的にまたは代替的に、他のタイプの分析物またはパラメータ、例えばpH値なども決定され得る。
【0020】
本明細書中で使用される「試料」なる用語は広義語であり、当業者にとって通常かつ習慣的なその意味が与えられるべきであり、特殊なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は具体的には、非限定的に、液体、固体または気体材料のうちの1つ以上といった一定量の分析すべき任意の材料を意味し得る。より具体的には、この用語は、血液、間質液、尿、唾液などのうちの1つ以上といった一定量の体液を意味し得る。しかしながら付加的または代替的には、水などの他のタイプの試料も使用され得る。
【0021】
本明細書中で使用される「色座標系」なる用語は広義語であり、当業者にとって通常かつ習慣的なその意味が与えられるべきであり、特殊なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は具体的には、非限定的に、物体の色、テストフィールドの色またはカメラが記録した画像の色などを、例えば数学的または物理的に特徴付けすることのできる任意座標系を意味し得る。当業者には、CIEが定義した色座標系などのさまざまな色座標系が概して公知である。以下にさまざまな例が示される。色座標は全体として、例えば3つまたは4つの基底ベクトルを定義することによって、色空間を網羅するかまたは定義することができる。
【0022】
色座標系を提供するために、これらの色座標系を、例えばデータ記憶デバイスまたはデータベース内に記憶することができ、かつ/または1つ以上のパラメータを有する座標系についての一般的公式によってこれらの色座標系を定義することができる。色座標系は、自動的にまたは人間の行為により提供され得る。色座標系は、較正方法のユーザによって提供される較正方法についての入力であり得る。
【0023】
本明細書中で使用される「テスト試料」なる用語は広義語であり、当業者にとって通常かつ習慣的なその意味が与えられるべきであり、特殊なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は具体的には、非限定的に、内部の分析物の、決定されたまたは決定可能な数量または濃度を有する試料を意味し得る。
【0024】
さらに本明細書中で使用される「セット」なる用語は概して、公知のまたは決定可能な特性を各々の物体および要素が有している、定義された数量の同一のまたは類似の物体または要素を意味する。したがって、概して、各セットは2つ以上、より好ましくは3つ以上の物体または要素を含み得る。セットは、有限数の物体または要素または無限数の物体または要素を含み得る。
【0025】
したがって、一例として、テスト試料セットは概して、複数の少なくとも2つの定義済みのまたは決定可能な量の試料を含むことができる。一例として、テスト試料セットは、分析物の第1の公知のまたは決定可能な濃度を有する第1の数量のテスト試料、ならびに内部に分析物の第2の公知のまたは決定可能な濃度を有する少なくとも1つの第2の数量のテスト試料を含むことができ、ここで第2の濃度は第1の濃度と異なるものである。任意には、内部に含まれている分析物の第3、第4などの濃度を有する第3、第4などの数量のテスト試料が、テスト試料セット内に含まれていてもよい。したがって、一例として、テスト試料セットは、テスト試料中に3つ以上の異なる濃度の分析物を含んでいてよい。一例として、テスト試料セットは、バイアルまたは他の容器に入って提供され得る。濃度は、例えば認定されたまたは信頼できる実験室分析を用いてこれらの濃度を予め決定することによっておよび/または公知の量の構成成分を用いてテスト試料を調製することによって知ることができる。代替的には、例えば認定されたまたは信頼できる実験室分析方法を使用して後続する分析によりテスト試料を後処理することによって、時間的に後で濃度を知ることができる。
【0026】
テスト試料を提供するステップには、テスト試料の調製または、適切な供給業者からこれらのテスト試料を購入するなどのこれらのテスト試料の他の提供手段が含まれ得る。テスト試料を提供する他の手段も可能である。
【0027】
該方法はさらに、テスト要素を提供するステップを含んでいてよく、ここで各テスト要素は、分析物との光学的に検出可能な検出反応を行なうために構成された少なくとも1つのテスト化学薬品を含む少なくとも1つのテストフィールドを有している。
【0028】
本明細書中で使用される「テスト要素」なる用語は広義語であり、当業者にとって通常かつ習慣的なその意味が与えられるべきであり、特殊なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は具体的には、非限定的に、試料中の分析物を検出するために構成された任意の要素またはデバイスを、具体的には以上で示した定義の意味合いで意味し得る。一例として、テスト要素は、少なくとも1つのテストフィールドが適用されているかまたは組込まれている状態で、少なくとも1つの担体などの少なくとも1つの基体を含むことができる。一例として、少なくとも1つの担体はストリップ状であってよく、こうしてテスト要素はテストストリップとなる。これらのテストストリップは概して広く使用され入手可能である。1つのテストストリップは単一のテストフィールドあるいは内部に同一のまたは異なるテスト化学薬品を有する複数のテストフィールドを担持し得る。当該技術分野では、検出対象の少なくとも1つの分析物の存在下で着色反応を起こす試薬とも呼ばれる少なくとも1つのテスト化学薬品を含む複数のテスト要素が知られている。本発明の範囲内で同様に使用可能であるテスト要素および試薬についてのいくつかの基本的原則は、例えばJ.Hones et al.:Diabetes Technology and Therapeutics,Vol.10,Supplement 1,2008,pp.10~26中に記載されている。
【0029】
さらに本明細書中で使用される「テストフィールド」なる用語は広義語であり、当業者にとって通常かつ習慣的なその意味が与えられるべきであり、特殊なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は具体的には、非限定的に、一貫した量のテスト化学薬品、例えばフィールド、例えば1つ以上の材料層を有する丸形、多角形または矩形形状のフィールドを意味することができ、ここでテストフィールドの少なくとも1つの層は内部に含まれたテスト化学薬品を有している。反射特性などの具体的光学特性を提供するか、試料を展延させるための展延特性を提供するかまたは、例えば細胞成分などの試料の粒子成分を分離させるための分離特性を提供する他の層も存在していてよい。
【0030】
本明細書中で使用される「テスト化学薬品」なる用語は広義語であり、当業者にとって通常かつ習慣的なその意味が与えられるべきであり、特殊なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は具体的には、非限定的に、分析物の存在下で検出反応を行なうのに好適である化合物または複数の化合物、例えば化合物の混合物を意味することができ、ここで検出反応は特異的手段によって、例えば光学的に検出可能である。検出反応は具体的には分析物特異的であり得る。この場合、テスト化学薬品は具体的には光学的テスト化学薬品、例えば分析物の存在下で色変化する色変化テスト化学薬品であり得る。色変化は具体的には、試料中に存在する分析物の量に依存し得る。一例として、テスト化学薬品は、少なくとも1つの酵素、例えばグルコースオキシダーゼおよび/またはグルコースデヒドロゲナーゼを含むことができる。さらに、1つ以上の染料、媒介物質などの他の成分も存在し得る。テスト化学薬品は概して、当業者にとって公知であり、ここでもまた、J.Hones et al.:Diabetes Technology and Therapeutics,Vol.10,Supplement 1,2008,pp.10~26の参照が指示され得る。しかしながら、他のテスト化学薬品の同様に可能である。
【0031】
テスト要素セットは具体的に、複数の少なくとも3つのテスト要素、例えば同じセットアップの少なくとも3つのテスト要素を含み得る。ここで、テスト要素のセットアップは、定義済みの基体、定義済みの幾何形状、ならびに1つ以上の定義済みテスト化学薬品を含むテストフィールドの定義済みトップを含む特異的アーキテクチャによって定義され得る。具体的には、テスト要素セットのテスト要素は、同じ製造ロットから選択され得、こうしてテスト要素の可能なかぎり高い性質同一度が提供される。
【0032】
方法ステップcは、テスト要素セットに対してテスト試料を適用するステップを含む。したがって、一例として、テスト試料の液滴をテストフィールドに対し適用することができ、または例えばテスト試料中にテスト要素を浸漬させることでなどの他の手段によりテストフィールドをテスト試料で湿らせることができる。これにより、一例として、テストフィールドにテスト試料が適用された状態で湿らされたテスト要素セットが生成され、ここで一例として、それぞれのテストフィールドに異なるテスト試料が適用された少なくとも3つのテスト要素が存在する。一例として、第1のテスト試料が適用された第1のテスト要素または第1のテストフィールドが提供され得、第2のテスト試料が適用された第2のテスト要素または第2のテストフィールドが提供され得、第3のテスト試料が適用された第3のテスト要素または第3のテストフィールドが提供され得る。さらなるテスト要素またはテストフィールドに対しさらなるテスト試料を適用することができる。これにより、テスト要素セットは、テスト試料の適用後、同じタイプの複数のテストフィールドを含むことができ、ここで、異なるテスト試料が適用されしたがって検出反応が起こった後異なる色を有する少なくとも3つのテストフィールドが提供される。したがって、概して「有色テストフィールド」なる用語は、具体的に、試料またはテスト試料の適用後に検出反応が起こるテストフィールドを意味することができ、ここでテストフィールドの色は検出反応の結果によって決定される。
【0033】
さらに本明細書中で使用されるように、ステップdにおいて使用される「カメラを使用することによって有色テストフィールドの画像を取得するステップ」なる用語は、概して、カメラを使用することによって上述の定義に係る少なくとも1つの画像を記録するプロセスを意味する。ここでは、具体的には、ステップcで生成された有色テストフィールドの各々から少なくとも1つの画像を取得することができる。それでも、1つ以上のテストフィールドを除外することも可能である。概して、ステップd.においては、少なくとも1つの第1のテスト試料が適用された少なくとも1つの第1のテストフィールドの少なくとも1つの画像、少なくとも1つの第2のテスト試料が適用された少なくとも1つの第2のテストフィールドの少なくとも1つの画像、そして好ましくは少なくとも1つのさらなるテストフィールドの少なくとも1つのさらなる画像、例えば少なくとも1つの第3のテスト試料などの少なくとも1つのさらなるテスト試料が適用された少なくとも1つの第3のテストフィールドの少なくとも1つの画像を含む画像セットを創出することができる。
【0034】
ステップe.においては、色座標系セットの色座標系を使用することによって有色テストフィールドの画像についての色座標が生成され、これによりテスト試料および色座標系についての色座標セットが創出される。したがって、一例として、テスト試料で湿らされひいては有色テストフィールドへと形成された各々のテストフィールドについて、色座標系セットの色座標系にしたがった色座標が生成され得る。具体的には、有色テストフィールドの画像の各々について、または各々の有色テストフィールドの少なくとも1つの画像の各々について、それぞれの有色テストフィールドの着色を各々描写する色座標を生成することができる。一例として、色座標(Fi,j、mi,j、bi,j)、(Ai,j、Bi,j、Ci,j)または(Ai,j、Bi,j、Ci,j、Di,j)が生成され得、ここでiは色座標系セットの色座標系のアイデンティティを表わし、jは有色テストフィールドのアイデンティティおよび/またはテスト試料のアイデンティティを表わす。ここで、色座標系セットの色座標系の各々を使用することあるいは、色座標系セットのうちの選択された色座標系を含むサブセットを使用することができる。さらに、画像の各々または画像のサブセットを分析することができる。
【0035】
さらに、テスト試料についておよび色座標系についての色座標セットは、一例として、色座標系セットの各々の色座標系内の各々の有色テストフィールドまたはテスト試料についての色座標(F,m,b)を含むことができ、こうして、pを有色テストフィールドまたはテスト試料の数、qを色座標系セット内の色座標の数として少なくともp・q個の色座標が結果としてもたらされ、ここで、単一の有色テストフィールドの多数の画像を取り上げて、数pの増加を結果としてもたらすことも可能である。他の選択肢も同様に可能である。
【0036】
ステップf.においては、コーディング関数セットが提供され、このコーディング関数セットは、テストフィールドの色座標を試料中の分析物の対応する濃度へと変換するための複数のコーディング関数を含んでいる。
【0037】
本明細書中で使用される「コーディング関数」なる用語は広義語であり、当業者にとって通常かつ習慣的なその意味が与えられるべきであり、特殊なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は具体的には、非限定的に、テストフィールド、具体的には分析すべき試料で湿らされた有色テストフィールドの色座標を試料中の分析物の対応する濃度へと変換するための任意変換アルゴリズムを意味し得る。この目的で、コーディング関数は、一例として、1つ以上の解析関数、例えば、有色テストフィールドの画像を撮るカメラによって測定された色座標の1つ以上または全てを試料中の少なくとも1つの分析物の濃度へと変換する関数を含むことができる。付加的にまたは代替的に、コーディング関数は、色座標のベクトルを少なくとも1つの分析物の濃度へと変換するための1つ以上の行列アルゴリズムまたは演算を含み得る。ここでもまた、付加的にまたは代替的に、コーディング関数は同様に、1つ以上の曲線、例えば色座標を分析物の濃度へと変換するための1つ以上の1次元、2次元、3次元または4次元曲線などを含むことができる。さらに、付加的にまたは代替的に、コーディング関数は同様に、分析物の濃度を色座標のそれぞれの値または値範囲に割当てるための1つ以上のルックアップテーブルまたは他のテーブルを含むことができる。
【0038】
コーディング関数セットは、以下でさらに詳しく説明するように、具体的には、規定すべき1つ以上のパラメータを伴う類似の関数を提供することによって定義され得る。したがって、具体的に、コーディング関数セットは、コーディング関数セットのうちの特定のコーディング関数を規定するために決定され得る1つ以上のパラメータによって定義され得る。以下にその例を示す。
【0039】
ステップg.において、ステップe.で生成された色座標セットは、コーディング関数セットを使用することによって測定濃度セットへと変換される。本明細書中で使用される「測定濃度」なる用語は、概して、1つ以上の測定値、この場合は具体的に1つ以上の色座標、などの実験データの1つ以上の項目に基づいて、試料中の濃度を表わす実験結果を意味することができる。したがってステップg.において、ステップf.で提供されるコーディング関数セットのコーディング関数は、上述のステップe.で生成された色座標に対して適用される。ここでは、コーディング関数は、ステップe.で生成された色座標の全てに対し適用されてよく、或いはステップe.で生成されたこれらの色座標のサブセットだけに対して適用されてもよい。さらに、ステップf.で提供されたコーディング関数セットの全てのコーディング関数またはコーディング関数のサブセットのみを、色座標に対し適用することができる。したがって、一例として、コーディング関数が1つ以上のパラメータによって定義される場合には、例えばパラメータ範囲を離散的ステップに細分することなどによって、コーディング関数セットの可能なコーディング関数のサブセットのみ、例えばパラメータの1つ以上さらには全てについてのパラメータ範囲の1つ以上によっておよび/または少なくとも1つのパラメータについての有限数の値によって定義されるサブセットを適用することができる。概して、ステップg.においては、測定濃度セットが生成される。したがって、一例として、分析物の異なる濃度を有する複数のテスト試料について、例えばコーディング関数セットのコーディング関数の各々についてまたはコーディング関数サブセットのコーディング関数の各々についての、少なくとも1つの測定濃度を生成することができる。一例として、有色テストフィールドのn個の画像が評価される場合および/または対応するテストフィールドを湿らせその色座標を生成し、こうして結果としてn個の色座標またはn個の色座標ベクトルをもたらすことによって異なる濃度のn個のテスト試料が評価される場合、そして評価のために使用されるコーディング関数セットまたはコーディング関数サブセット内にm個のコーディング関数が含まれる場合、n・m個の測定濃度をステップg.で生成することができる。
【0040】
ステップh.において、測定濃度セットは、テスト試料セットのテスト試料の公知の濃度と比較される。本明細書中で使用される「比較する」なる用語は広義語であり、当業者にとって通常かつ習慣的なその意味が与えられるべきであり、特殊なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は具体的には、非限定的に、比較対象の少なくとも1つの第1の項目と比較対象の少なくとも1つの第2の項目との間の定性的または定量的関係または類似度のあらゆるタイプの決定を意味し得る。比較において、一例として、比較対象の少なくとも2つの項目の間の類似性または同一性の度合を表わす情報の少なくとも1つの項目が生成され得る。一例として、類似度または同一度を表わす情報の少なくとも1つの項目は、標準偏差などの統計情報の少なくとも1つの項目を含み得る。一例として、測定濃度セットと公知の濃度セットとの間の類似度または同一度を表わす統計情報項目は、以下のものを含むことができる:
【数1】
式中、△i,jは、コーディング関数iおよび色座標系jについての測定濃度c と対応する公知の濃度c との間の類似度についての尺度であり、ここでkはテスト試料セットの濃度を表わす数である。他のタイプの比較が概して可能であり、概して当業者には公知である。グラフ表示のためには、一例として、測定濃度をそれぞれのテスト試料中の分析物の濃度に対してプロットし、一例として、それぞれのテスト試料の各々の公知の濃度についての一群の測定濃度を結果として得ることができる。
【0041】
ステップh.はさらに、測定濃度セットが公知の濃度と最適にマッチする、色座標系セットのベストマッチ色座標系およびコーディング関数セットのベストマッチコーディング関数を決定するステップを含む。本明細書中で使用される「マッチ」なる用語は広義語であり、当業者にとって通常かつ習慣的なその意味が与えられるべきであり、特殊なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は具体的には、非限定的に、類似しているかまたは同一であるという2つの項目の質を意味し得る。その結果として、本明細書中で使用される「ベストマッチ」なる用語は広義語であり、当業者にとって通常かつ習慣的なその意味が与えられるべきであり、特殊なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は具体的には、非限定的に、既定の範囲内で項目がマッチするという選択肢を含め、以上で示された定義の意味合いにおける比較によって最高の類似度または同一度が示されている少なくとも2つの項目セットから選択された項目、を意味し得る。したがって、一例として、以上で示された公式によると、ベストマッチコーディング関数iおよびベストマッチ色座標系jは、上述の統計指標△i,jが最小化されている、コーディング関数セットのうちのコーディング関数および色座標セットのうちの色座標系であり得る。ベストマッチを決定する他の手段は、概して統計学の分野では公知であり、ステップh.においても適用可能である。
【0042】
したがって、較正方法の結果は、ベストマッチコーディング関数の標示およびベストマッチ色座標系の標示であり得る。この結果は具体的には、カメラ特異的であり得、かつ使用すべきテスト要素のタイプに特異的であり得る。その結果として、各カメラタイプについて、例えば特定のカメラを有する各々のポータブルデバイスまたはスマートホンについて較正方法を行うことが求められる可能性もあれば、各々のテスト要素タイプについて、例えばテスト要素の各製品ロットについてそれが求められる可能性もある。較正方法は、例えば使用すべきスマートホンの各々の公知のタイプについておよび使用すべきテスト要素の各タイプについて、予め行なうことができ、その結果として、較正方法の結果は対応するコンピュータプログラム内、例えば特定のスマートホン上で実行されるべき対応するアプリの中に、すでに予めプログラミングまたは提供され得る。アプリまたはコンピュータソフトウェアは同様に、それが実行されるスマートホンまたはポータブルデバイスのタイプを検出するために構成されていてよく、かつ使用すべきテスト要素およびカメラについてのベストマッチであることが知られている対応するコーディング関数および色座標系を選択することができる。
【0043】
以上で概要を説明した通り、カメラは具体的には、ポータブル電子デバイスのカメラ、例えばポータブルコンピュータのカメラ、例えばノート型パソコンまたはテンプレートコンピュータのカメラであり得る。しかしながら、具体的には、多くのユーザが一日中スマートホンを携行しており、したがってスマートホンは至る所に存在する測定デバイスであり、血糖などの分析物を決定するためのその使用が極めて有利であることから、カメラはスマートホンのカメラであり得る。
【0044】
以上で概要を説明した通り、本明細書中のさまざまな事例において使用されている「セット」なる用語は、概して有限数または無限数の要素を意味し得る。以上で概要を説明した通り、色座標系に関連して、色座標系セットは具体的には、色座標を変換するためのパラメータ化関数セットによって、すなわち具体的には1つ以上のパラメータを有する関数の1つ以上によって定義され得る。具体的には、カメラによって提供される色座標を変換済み色座標へと変換するために、1つ以上のパラメータ化関数を使用することができる。変換済み色座標は、具体的には、カメラ非依存型の変換済み色座標であり得る。概して、パラメータ化関数の1つ以上のパラメータのセットが、色座標系の各々を特徴付けすることができる。
【0045】
色座標系セットの色座標系を使用することによって有色テストフィールドの画像についての色座標を生成し、テスト試料および座標系についての色座標セットを創出するための方法ステップe.は、単一のステップであってもよいし、或いは多数のサブステップを含んでいてもよい。具体的には、このステップは、第1に、カメラにより提供され、典型的にはカメラ依存型である画像についての色座標を、非依存型色座標へと変換するステップを含み得る。したがって、一例として、カメラは、カメラチップを含んでいてよく、このカメラチップは、画像の評価がこのカメラチップで記録された後、概してカメラチップ、カメラの光学的セットアップまたは画像を記録するための電子部品の物理的特性に依存するものである色座標(R,G,B)または色座標の4色組を創出する。したがって、一例として、カメラチップの感度はスペクトル範囲に依存し得る。その結果として、該方法は、カメラにより提供される色座標を、カメラ非依存型色座標、例えばカメラのスペクトル感度を回避しかつ異なるカメラによって1つの同じ有色テストフィールドの画像が評価される場合に所与の許容誤差を伴って同一であるかまたは少なくとも匹敵するものであるという意味合いにおいて比較可能である色座標、へと変換する方法ステップを含み得る。その結果として、本明細書中で使用されるカメラ非依存型色座標とは、1つの同じ有色テストフィールドから異なるカメラを用いて撮られた異なる画像から得ることのできる色座標であり得る。そこでは、概して、CIE座標系などの標準化されたカメラ非依存型色座標系を使用することができる。しかしながら、概して、以上で概要を説明した通り、方法ステップe.は、以下のサブステップを含むことができる:
e1. 有色テストフィールドの画像についてのカメラ依存型色座標を生成するステップ;
e2. 第1の変換アルゴリズムを使用することによって、カメラ依存型色座標をカメラ非依存型色座標へと変換するステップ;
e3. 第2の変換アルゴリズムを使用することによって、カメラ非依存型色座標を色座標系セットの色座標系についての色座標へと変換し、これにより、テスト試料および色座標系についての色座標セットが創出されるステップ。
【0046】
本明細書中で使用される「カメラ依存型色座標」なる用語は概して、結果がカメラおよび/またはその中に含まれているカメラチップ、例えばCCDおよび/またはCMOSチップの特定の特性に依存している、有色物体を撮像するためのカメラを使用することによって生成される色座標を意味する。一例として、カメラチップは、値がカメラチップの感度に依存している、RGBのような3色組またはCMYKのような4色組などの、各色についての値を記録する色センサを含み得る。したがって、異なるカメラを使用することによって1つの同じ有色物体の画像を記録するとき、これらのカメラによって生成されるカメラ依存型色座標は異なるものであり得る。
【0047】
したがって、概して、ステップe1.は、有色テストフィールドすなわちテスト試料により湿らされテストフィールド内の後続する検出反応に起因して着色されたテストフィールドの画像を評価するステップを含む。一例として、各有色テストフィールドの各画像など、各々の有色テストフィールドの少なくとも1つの画像を、そのカメラ依存型色座標を導出する目的で評価することができる。これにより、一例として、iがlからpまでの整数であり、pが評価対象の有色テストフィールドまたはテスト試料の数であるものとして、複数のカメラ依存型色座標(R,G,B)を生成することができる。
【0048】
さらに、本明細書中で使用される「カメラ非依存型色座標」なる用語は広義語であり、当業者にとって通常かつ習慣的なその意味が与えられるべきであり、特殊なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は具体的には、非限定的に、少なくとも既定の許容誤差に至るまでは、カメラまたはカメラチップの感度に依存しない色座標を意味し得る。換言すると、許容可能な相違までは、1つの同じ物体のカメラ非依存型色座標は、使用中のカメラの感度に依存しない。
【0049】
ステップe2.を行なうためには、較正プロセスを使用してもよいし、または既定の較正関数を適用してもよい。一例として、第1の変換アルゴリズムは、行列Mを使用することによる行列演算、具体的には以下の変換:
【数2】
を使用することによってカメラ依存型色座標(R,G,B)をカメラ非依存型色座標(X,Y,Z)へと変換するための行列演算を含み得る。ここで、Mは、非依存型の較正プロセスによって生成され得る変換行列を表わし得る。一例として、カメラを較正するためおよび変換行列および/またはこの変換行列の係数を決定するために、基準色フィールドを使用することができる。一例として、カメラ依存型色座標X、Y、Zは、CIE色座標などの人間の眼の知覚に基づく座標であり得る。座標の4色組が使用される場合には、等式(1)の場合と類似の行列変換も使用することができる。色座標の行列変換は概して、例えばF.Konig:「Die Charakterisierung von Farbsensoren」,Dissertation,Logos Verlag,Berlin,2001,pp.48~49から公知である。
【0050】
ステップe2.において、i=l...pでありpが評価対象の有色テストフィールドまたはテスト試料の数であるものとして、カメラ依存型色座標セット(R,G,B)をカメラ非依存型色座標(X,Y,Z)へと変換することができる。同様にして、色座標の4色組についての変換も可能である。
【0051】
第2の変換アルゴリズムは、パラメータ化関数を使用することによって、座標X、Y、Zなどのカメラ非依存型色座標を色座標セットの色座標へと変換するステップを含むことができる。したがって、一例として、第2の変換アルゴリズムは、P~P11がパラメータ、具体的には実数および/または有理数であるものとして、以下のパラメータ化関数:
【数3】
を使用することによって、カメラ非依存型色座標(X,Y,Z)を色座標セット(F,m,b)へと変換するステップを含むことができる。
【0052】
ここで、ステップe2.において、i=l...pであり、pが評価対象の有色テストフィールドまたはテスト試料の数であるものとして、カメラ非依存型色座標セット(X,Y,Z)が生成された場合には、ステップe3.の結果はパラメータ化された色座標のセット(F,m,b)であり得る。
【0053】
カメラ非依存型色座標は、具体的には人間の眼の感度に基づく色座標、具体的には規格、より具体的にはCIE規格にしたがった色座標であり得る。具体的にはカメラ非依存型色座標は三刺激値であり得る。
【0054】
第2の変換アルゴリズムは同様に、テストフィールドの照明も考慮することができる。具体的には第2の変換アルゴリズムは、具体的には少なくとも1つの基準色、具体的には白色フィールドの基準色を検出することによって、テストフィールドの照明を考慮することができる。したがって、一例として、照明依存型色座標(F,m,b)は、(F,m,b)が照明基準フィールドの画像から導出された色座標であるものとして、以下の等式:
【数4】
のうちの1つ以上を使用することによって、相対的色座標(Frel,mrel,brel)へと変換され得る。
【0055】
これにより、i=l...pであり、pが評価対象の有色テストフィールドまたはテスト試料の数であるものとして、相対的色座標セット(Fi,rel,mi,rel,bi,rel)を生成することができる。
【0056】
第1の変換アルゴリズム、具体的には行列Mは、公知のカメラ非依存型色座標を有する少なくとも1つの基準色フィールドの少なくとも1つの画像を取得することによって、カメラ較正プロセスにおいて決定され得る。したがって、一例として、色スケールなどにしたがった色フィールドなど、公知のカメラ非依存型色座標を有する複数の基準色フィールドを提供することができる。これらの基準色フィールドの画像は、記録することができ、これにより、行列Mの係数を導出するためまたは他の任意の変換アルゴリズムのため等式系を生成することができる。具体的には、ここでもまた、基準色フィールドの公知の色座標は、公知のCIE座標および/または三刺激値であり得る。しかしながら、他の実施形態も可能である。
【0057】
以上で概略的に説明した通り、ステップh.において、測定濃度セットは、テスト試料セットのテスト試料の公知の濃度および色座標系セットのベストマッチ色座標系と比較され、測定濃度セットが公知の濃度と最適にマッチするコーディング関数セットのベストマッチコーディング関数が決定される。ここで、具体的には、ステップh.は既定の濃度測定範囲にわたり、等距離濃度の試料が本質的に等距離の色差を有するベストマッチ色座標系内の色座標を導くような形で行なわれ得る。したがって、CIE座標系などの測光座標系という考えの1つが、濃度測定に転用されてもよい。具体的には、既定の測定範囲にわたり、テストフィールドに適用される場合に、分析物の異なる濃度C、Cを有するテスト試料は、εを既定の範囲として、以下の色差:
【数5】
を伴う有色テストフィールドの色座標(F,m,b)、(F,m,b)を結果としてもたらす可能性がある。εの精確な値は、選択される色空間に依存する。一例として、絶対値100に正規化された色空間もあれば、1という絶対値に正規化された色空間もあり得る。座標F、mおよびbに同じ重みを与えるために、重み付け因子によって色座標を重み付けすることさえできる。概して、εは、constより著しく小さく、すなわちε<<const、例えばε<0.1・const、ε<0.01・const、ε<0.001・constなどとして選択され得る。εの精確な値は、概して、予め決定されており、該方法について求められてはいない。
【0058】
測定濃度セットが公知の濃度と最適にマッチする色座標系セットの色座標系およびコーディング関数セットのコーディング関数は、具体的にはベストマッチ色座標系およびベストマッチコーディング関数を含む対を形成し得る。この対は、具体的にはカメラ特異的であり得、例えばアプリまたは他のソフトウェアを介して、カメラを含む移動体デバイスに提供され得る。
【0059】
コーディング関数セットは、以上で概略的に説明した通り、具体的には色座標のパラメータ化多項式関数を含み得る。一例として、パラメータ化多項式関数は、c(F,m,b)を有色テストフィールドが色(F,m,b)を有する場合の分析物の測定濃度とし、Nを正の整数とし、ai,j,kを多項式関数のパラメータとして:
【数6】
からなる群から選択され得る。しかしながら、他のタイプのコーディング関数も使用可能であること、およびさらにコーディング関数セットが内部にパラメータを有する異なるタイプのコーディング関数の混合も含み得ること、が指摘されるものとする。しかしながら、以下でさらに詳述するように、多項式関数の使用により計算は簡素化され、分析物測定について優れた結果が得られる。
【0060】
さらに以上で概略的に説明した通り、具体的には、ステップc.において使用されるテスト要素セットのテスト要素は、具体的にはセットアップから全て同一であることなどにより、同じタイプのものであってよい。具体的には、これらのテスト要素は、同じ製造ロットのものであり得る。較正方法はさらに、少なくとも1つの標準テスト要素セットアップを定義するステップを含むことができ、この標準テスト要素セットアップは、分析物との光学的に検出可能な検出反応を行なうために構成された少なくとも1つのテスト化学薬品を含む少なくとも1つのテストフィールドについての少なくとも1つのテスト化学薬品タイプを定義する。標準テスト要素セットアップはさらに、テスト化学薬品が適用される定義済み基体を含み得る。
【0061】
以上で概略的に説明した通り、テスト試料セットは、分析物の少なくとも3つの異なる濃度を提供する少なくとも3つの異なるテスト試料を含み得る。具体的には、濃度は、測定範囲全体にわたり等距離で分布し得る。分析物は具体的にはグルコースであり得る。しかしながら、以上で概略的に説明した通り、他のタイプの分析物を検出することも同様に可能である。試料は具体的には、体液、例えば血液または間質液であり得る。しかしながら、他のタイプの試料も同様に可能であるということが指摘されるものとする。テスト試料セットは、0mg/dl~600mg/dlの既定の測定範囲全体にわたる異なる濃度のテスト試料を含み得る。したがって、一例として、グルコースを分析物とする血液または間質液の試料については、測定範囲は0mg/dl~600mg/dlであり得、テスト試料の濃度は、例えば等間隔で、測定範囲全体にわたり分布し得る。
【0062】
以下でさらに詳述されるように、較正方法は具体的にはコンピュータまたはコンピュータネットワークを使用することによって行なうことができる。したがって、具体的には、ステップa.、d.、e.、f.、g.、またはh.のうちの少なくとも1つは、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用することで行なわれてもよく、かつ/またはソフトウェア内にエンコードされてもよい。
【0063】
本発明のさらなる態様においては、試料中の分析物を検出するための検出方法が開示されている。以下でさらに詳述するように、該方法は、上述の較正方法を使用する。したがって、考えられる定義および実施形態については、以上で示したまたは以下でさらに詳述される開示を参照することができる。該方法は、具体的には所与の順序で行なうことのできる以下のステップを含む。さらに、異なる順序も同様に可能である。さらに、2つ以上の方法ステップを完全にまたは部分的に同時に行なうことが可能である。さらに、1つ以上の方法ステップさらには全ての方法ステップを一回または反復的に行なうことも可能である。該方法は、本明細書中で列挙されていない追加の方法ステップを含むことができる。概して、試料中の分析物を検出するための方法は、以下のステップを含む:
A. カメラを提供するステップ;
B. 較正方法を使用することによって、カメラを較正するステップ;
C. テスト要素に対して試料を適用するステップであって、テスト要素が分析物との光学的に検出可能な検出反応を行なうために構成された少なくとも1つのテスト化学薬品を含む少なくとも1つのテストフィールドを有し、これにより試料についての少なくとも1つの有色テストフィールドが創出されるステップと;
D. 少なくとも1つの有色テストフィールドの少なくとも1つの画像を取得するステップ;
E. ベストマッチ色座標系を使用することによって、テストフィールドの色座標を生成するステップと;
F. ベストマッチコーディング関数を使用することによって、色座標を、試料中の分析物の測定濃度へと変換するステップ。
【0064】
方法ステップA.およびB.については、以上で示された較正方法の説明を広く参照することができる。方法ステップC.については、概して試料およびその中の分析物の含有量が分かっていないという事実を除き、上述の方法ステップc.と非常に類似した形で、このステップを行なうことができる。方法ステップC.において使用されるテスト要素は、具体的には、上述の方法ステップc.で使用されたテスト要素と同一であるか、同じタイプのもの、好ましくは同じ製造ロットのものであり得る。検出すべき分析物の存在下での検出反応に起因して、テスト要素のテストフィールドは、一例として、試料中に分析物が全く存在しない可能性を含め、試料中の分析物の濃度に応じて有色テストフィールドへと変化する。概して、1つ以上のテストフィールドを少なくとも1つの試料によって湿らせることができる。
【0065】
方法ステップD.については、上述のステップd.の説明を参照することができる。方法ステップD.における画像の取得は、類似の形で行なわれ得る。
【0066】
方法ステップE.およびF.に関しては、上述のステップh.において決定されたベストマッチ色座標系およびベストマッチコーディング関数を使用する。ここでもまた、テストフィールドの色座標を生成するステップは、単一ステッププロセスであってよく、あるいは、多重ステッププロセスであってもよい。後者の場合、一例として、カメラは、最初に、上述のステップe1と類似の形で(R,G,B)などのテストフィールドについてのカメラ依存型色座標を生成することができる。これらのカメラ依存型色座標はその後、カメラ非依存型色座標へと変換され得、ここで上述のステップe2.の説明を参照することができる。したがって、例えば、カメラ非依存型色座標(X,Y,Z)を有色テストフィールドについて生成することができる。さらに、その後、ベストマッチパラメータセットPと共に、例えば上述の1つ以上の等式(2.1~2.3)または(3.1~3.6)を使用することによって、カメラ非依存型色座標をベストマッチ色座標系の色座標へと変換することができる。その後、ステップF.において、色座標は次に、ベストマッチパラメータと共に、例えば上述の等式(5)を使用することによって、色座標を分析物の測定濃度へと変換することができる。
【0067】
具体的には、ステップC.~F.を反復的に行なうことができる。ステップB.は、最初ステップC.~F.の複数の反復について一回だけかまたは毎回ステップC.~F.を行なう前に行なわれ得る。
【0068】
以上で概略的に説明した通り、ステップC.において使用されるテスト要素は、具体的には、較正方法のステップc.におけるテスト要素セットのテスト要素と同じタイプのものであってよい。したがって、テスト要素は、較正方法について使用されるものと同じセットアップを有していてよく、あるいは同じロットで製造されていてよい。
【0069】
ここでもまた、検出方法は、コンピュータまたはコンピュータネットワーク、例えばポータブルデバイス、例えばタブレット、ノート型パソコンまたはスマートホンなどの携帯電話のうちの1つ以上のもののコンピュータまたはコンピュータネットワークによってサポートされ得る。具体的には、コンピュータまたはコンピュータネットワークは、ステップB.、D.、E.、またはF.の1つ以上を行なうために使用されてよい。
【0070】
本明細書中でさらに開示され提案されているのは、コンピュータまたはコンピュータネットワーク上でプログラムが実行された時点で、本明細書中で開示されている実施形態の1つ以上の中で本発明に係る方法を行なうためのコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラムである。したがって、以上で概略的に説明した通り、コンピュータプログラムは具体的には、較正方法のステップの1つ以上さらにはその全てを行なうためのコンピュータ実行可能命令を含むことができる。具体的には、コンピュータプログラムは、較正方法のステップa.、d.、e.、f.、g.、またはh.の1つ以上さらにはその全てを行なうためのコンピュータ実行可能命令を含むことができる。付加的にまたは代替的に、検出方法のステップB.、D.、E.、またはF.の1つ以上さらにはその全てなどの、検出方法の方法ステップの少なくともいくつかさらにはその全てを行なうためのコンピュータ実行可能命令を伴うコンピュータプログラムが提案される。具体的には、コンピュータプログラムは、コンピュータ可読データ記憶媒体上に記憶され得る。
【0071】
本明細書中でさらに開示され提案されているのは、コンピュータまたはコンピュータネットワーク上でプログラムが実行された時点で、コンピュータプログラムに関連して以上で説明された方法ステップの1つ以上など、本明細書中で開示されている実施形態の1つ以上において本発明に係る方法を行なうことを目的とする、プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品である。具体的には、プログラムコード手段は、コンピュータ可読データ記憶媒体上に記憶され得る。
【0072】
本明細書中でさらに開示され提案されているのは、コンピュータまたはコンピュータネットワーク内、例えばコンピュータまたはコンピュータネットワークの作業メモリまたは主メモリ内へロードした後に、例えばコンピュータプログラムに関連して論述された上述のステップの1つ以上を実行することによって、本明細書中で開示されている実施形態の1つ以上に係る方法を実行することのできる、データ構造が上に記憶されたデータ記憶媒体である。
【0073】
本明細書中でさらに開示され提案されているのは、コンピュータプログラムに関連して論述された上述のステップの1つ以上など、コンピュータまたはコンピュータネットワーク上でプログラムが実行された時点で、本明細書中で開示されている実施形態の1つ以上に係る方法を行なうための、機械可読記憶媒体上に記憶されたプログラムコード手段を伴うコンピュータプログラム製品である。本明細書中で使用されるコンピュータプログラム製品とは、取引可能な製品としてのプログラムを意味する。この製品は概して、任意のフォーマットで、例えば紙フォーマットで、またはコンピュータ可読データ記憶媒体上で存在し得る。具体的には、コンピュータプログラム製品は、データネットワーク全体にわたり分布していてよい。
【0074】
最後に、本明細書中で開示され提案されているのは、コンピュータプログラムに関連して論述された上述のステップの1つ以上など、本明細書中で開示されている実施形態の1つ以上に係る方法を行なうための、コンピュータシステムまたはコンピュータネットワークにより読取り可能な命令を含む変調データ信号である。
【0075】
本発明のコンピュータ実装される態様に関しては、本明細書中で開示されている実施形態の1つ以上に係る方法の方法ステップの1つ以上さらにはその全てを、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用することによって行なうことができる。したがって、概して、データの提供および/または操作を含めた方法ステップのいずれでも、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用することによって行なうことができる。概して、これらの方法ステップには、典型的には手作業を必要とする方法ステップ、例えば試料を提供するステップおよび/または実際の測定を行なういくつかの局面を除いて、方法ステップのいずれでも含まれ得る。
【0076】
具体的には、本明細書中でさらに開示されているのは、以下のものである:
- プロセッサが、本明細書中に記載の実施形態の1つに係る方法の1つを完全にまたは部分的に行なうように適応されている、少なくとも1つのプロセッサを含むコンピュータまたはコンピュータネットワーク、
- データ構造がコンピュータ上で実行されている間に本明細書中に記載の実施形態の1つに係る方法の1つを完全にまたは部分的に行なうように適応されている、コンピュータロード可能なデータ構造、
- プログラムがコンピュータ上で実行されている間に本明細書中に記載の実施形態の1つに係る方法の1つを完全にまたは部分的に行なうように適応されている、コンピュータプログラム、
- コンピュータまたはコンピュータネットワーク上でコンピュータプログラムが実行されている間に、本明細書中に記載の実施形態の1つに係る方法の1つを完全にまたは部分的に行なうためのプログラム手段を含むコンピュータプログラム、
- プログラム手段がコンピュータにより可読なストレージ媒体上に記憶されている、先行する実施形態に係るプログラム手段を含むコンピュータプログラム、
- データ構造がストレージ媒体上に記憶されており、かつデータ構造がコンピュータまたはコンピュータネットワークの主および/または作業ストレージ内にロードされた後に本明細書中に記載の実施形態の1つに係る方法の1つを完全にまたは部分的に行なうように適応されている、ストレージ媒体、
- プログラムコード手段がコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行された場合に、本明細書中に記載の実施形態の1つに係る方法の1つを完全にまたは部分的に行なうために、プログラムコード手段がストレージ媒体上に記憶され得るかまたはこの上に記憶されている、プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品。
【0077】
本発明のさらなる態様においては、カメラを使用することによって試料中の分析物を検出する目的で、カメラを較正するための較正システムが開示されている。較正システムは、少なくとも1つのコンピュータまたはコンピュータネットワークを含む。較正システムは、例えばコンピュータまたはコンピュータネットワークの適切なソフトウェアプログラミングによって、本明細書中に記載の実施形態のいずれか1つの中の本発明に係る較正方法を行なうために構成されている。さらに較正システムは、分析物の公知の濃度を有するテスト試料セットおよびテスト要素セットを含むことができ、各々のテスト要素は少なくとも1つのテストフィールドを有する。さらに、較正システムはカメラを含むことができる。
【0078】
本発明のさらなる態様においては、分析物との光学的に検出可能な検出反応を行なうために構成された少なくとも1つのテスト化学薬品を含む少なくとも1つのテストフィールドを有する少なくとも1つのテスト要素を使用することによって、試料中の分析物を検出することを目的とする検出システムが開示されている。検出器システムは、少なくとも1つのカメラ、例えば移動体デバイス、例えばスマートホンのカメラを含む。検出器システムは、さらに少なくとも1つのコンピュータまたはコンピュータネットワーク、具体的には少なくとも1つのスマートホンを含む。検出システムは、本明細書中に記載の実施形態のいずれか1つに係る検出方法を行なうために構成されている。さらに、検出システムは、少なくとも1つの試料および少なくとも1つのテスト要素を含むことができ、テスト要素は少なくとも1つのテストフィールドを有する。さらに、検出システムは、分析物の公知の濃度を有するテスト試料セットおよびテスト要素セットを含み、各テスト要素は少なくとも1つのテストフィールドを有する。
【0079】
さらに、以上で説明されているかまたは以下でさらに詳細に説明される較正システムによってかまたは以上で説明されているかまたは以下でさらに詳細に説明される検出システムによってコンピュータプログラムが実行された時点で、以上で説明されているかまたは以下でさらに詳細に説明される較正システムまたは以上で説明されているかまたは以下でさらに詳細に説明される検出システムに、以上で説明されているかまたは以下でさらに詳細に説明される較正方法または以上で説明されているかまたは以下でさらに詳細に説明される検出方法の諸ステップをそれぞれ実施させる命令を含むコンピュータプログラムが開示されている。
【0080】
本発明のさらなる態様においては、コンピュータまたはコンピュータネットワークにより実行された時点で、コンピュータまたはコンピュータネットワークに、以上で説明されているかまたは以下でさらに詳細に説明される通りの較正方法のステップa.、d.、e.、f.、g.、またはh.のうちの少なくとも1つまたは検出方法のステップB.、D.、E.、またはF.の1つ以上を実施させる命令を含むコンピュータプログラムが開示されている。
【0081】
本発明のさらなる態様においては、試料中の分析物を検出するためのシステムが開示される。該システムは、本発明に係る較正システムおよび検出システムを含む。
【0082】
本出願に係る方法、コンピュータプログラムおよびシステムは、試料中の分析物を検出するためのカメラを較正および/または使用するための公知の出願に比べて、多数の利点を提供することができる。したがって、詳細には、本発明は、分析物濃度値の決定の精度を改善することができる。詳細には、本出願は、試料中の分析物の濃度を決定するため、例えば血糖濃度を決定するためのアルゴリズム内で使用される特定的に適応された色空間を提供することができる。具体的には、本出願は、テストストリップの色と分析物の濃度の間の線形関係、具体的にはテストストリップの色と結果としてのその数値表現との間の線形関係を創出する特定的に適応された色空間を提供することができる。適応された色空間の線形関係は、測定値の全範囲にわたり均一な精度を達成することができる。さらに、本出願は、代替的には、定義された測定値範囲内、詳細には予め定義された測定値範囲内での分析物の濃度決定の極めて高い精度を可能にすることができる。
【0083】
さらに、本出願は、分析物濃度値の光学的決定の妥当性を改善することができる。具体的には、当該技術分野から公知のアプリケーションに比べて、光学的測定の妥当性を改善することができる。詳細には、本出願において提供されている特定的に適応された色空間は、外部的に決定された分析物濃度に基づくものであり得る。より詳細には、該方法、コンピュータプログラムおよびシステムは、外部的に決定された分析物濃度、例えば実験室内で決定された分析物濃度に対し色空間を最適化し適応させ、具体的には、決定された分析物濃度の極めて高い妥当性を可能にし、こうして、適応された色空間を用いて光学的に決定された分析物濃度の妥当性を改善することによって、特定的に適応された色空間を提供することができる。これとは対照的に、先行技術は通常、人間の色知覚に基づく最適化を目指している。
【0084】
その上、先行技術により公知の他の方法とは異なり、本出願に係る方法、コンピュータプログラムおよびシステムでは、試料中の分析物の検出に対し影響を及ぼす非線形因子を考慮することができる。したがって、非線形因子による試料中の分析物の検出に対する影響は、本出願によって最小限に抑えられるか、さらには取り払われさえする。具体的には、本出願に係る方法、コンピュータプログラムおよびシステムにおいては、異なるまたは可変的なライティング条件または市販されている莫大な数のカメラの個別の技術的および光学的特性などの非線形因子を考慮することができる。
【0085】
さらに考えられる実施形態を排除することなく、要約すると、以下の実施形態を想定することができる:
実施形態1. 試料中の分析物を検出するためのカメラを較正するための較正方法において:
a. 色座標系セットを提供するステップであって、色座標系セットが物体の色を描写するために構成された複数の異なる色座標系を含んでいるステップと;
b. 分析物の公知の濃度を有するテスト試料セットを提供するステップと;
c. テスト要素セットに対してテスト試料を適用するステップであって、各テスト要素が、分析物との光学的に検出可能な検出反応を行なうために構成された少なくとも1つのテスト化学薬品を含む少なくとも1つのテストフィールドを有し、これによりテスト試料の各々についての少なくとも1つの有色テストフィールドが創出されるステップと;
d. カメラを使用することによって有色テストフィールドの画像を取得するステップと;
e. 色座標系セットの色座標系を使用することによって、有色テストフィールドの画像についての色座標を生成するステップであって、これによりテスト試料および色座標系についての色座標セットが創出されるステップと;
f. コーディング関数セットを提供するステップであって、コーディング関数セットが、テストフィールドの色座標を試料中の分析物の対応する濃度へと変換するための複数のコーディング関数を含んでいるステップと;
g. コーディング関数セットを使用することによって、ステップe.で生成された色座標セットを測定濃度セットへと変換するステップと;
h. テスト試料セットのテスト試料の公知の濃度と測定濃度セットとを比較し、測定濃度セットが公知の濃度と最適にマッチする色座標系セットのベストマッチ色座標系およびコーディング関数セットのベストマッチコーディング関数を決定するステップと;
を含む較正方法。
【0086】
実施形態2. カメラがスマートホンカメラである、実施形態1に記載の較正方法。
【0087】
実施形態3. 色座標系セットが、色座標を変換するため、具体的にはカメラにより提供された色座標を変換済み色座標へ、より具体的には変換済みカメラ非依存型色座標へと変換するためのパラメータ化関数セットによって定義され、パラメータ化関数のパラメータセットが色座標系の各々を特徴付けする、実施形態1ないし2のいずれか1つに記載の較正方法。
【0088】
実施形態4.ステップe.が:
e1. 有色テストフィールドの画像についてのカメラ依存型色座標を生成するステップと;
e2. 第1の変換アルゴリズムを使用することによって、カメラ依存型色座標をカメラ非依存型色座標へと変換するステップと;
e3. 第2の変換アルゴリズムを使用することによって、カメラ非依存型色座標を色座標系セットの色座標系についての色座標へと変換し、これによりテスト試料および色座標系についての色座標セットが創出されるステップと;
を含む、実施形態1ないし3のいずれか1つに記載の較正方法。
【0089】
実施形態5. 第1の変換アルゴリズムが、行列Mを使用することによる行列演算、具体的には以下の変換:
【数7】
を使用することによってカメラ依存型色座標(R,G,B)をカメラ非依存型色座標(X,Y,Z)へと変換するための行列演算を含む、実施形態4.に記載の較正方法。
【0090】
実施形態6. 第2の変換アルゴリズムが、パラメータ化関数を使用することによってカメラ非依存型色座標を色座標セットの色座標へと変換するステップを含む、実施形態4ないし5のいずれか1つに記載の較正方法。
【0091】
実施形態7. 第2の変換アルゴリズムは、
-P11がパラメータ、具体的には実数および/または有理数であるものとして、以下のパラメータ化関数:
【数8】
を使用することによってカメラ非依存型色座標(X,Y,Z)を前記色座標セット(F,m,b)へと変換するステップを含む、実施形態6に記載の較正方法。
【0092】
実施形態8. 第2の変換アルゴリズムが、テストフィールドの照明を考慮する実施形態4ないし7のいずれか1つに記載の較正方法。
【0093】
実施形態9. カメラ非依存型色座標が具体的には、人間の眼の感度に基づく色座標、具体的には規格、より具体的にはCIE規格にしたがった色座標である、実施形態4ないし8のいずれか1つに記載の較正方法。
【0094】
実施形態10. カメラ非依存型色座標が三刺激値である、実施形態9に記載の較正方法。
【0095】
実施形態11. 第2の変換アルゴリズムが、具体的には少なくとも1つの基準色、具体的には白色フィールドの基準色を検出することによって、テストフィールドの照明を考慮する、実施形態10に記載の較正方法。
【0096】
実施形態12. 照明依存型色座標(F,m,b)は、(F,m,b)が照明基準フィールドの画像から導出された色座標であるものとして、以下の等式:
【数9】
のうちの1つ以上を使用することによって、相対的色座標(Frel,mrel,brel)へと変換される、実施形態11に記載の較正方法。
【0097】
実施形態13. 第1の変換アルゴリズム、具体的には行列Mが、公知のカメラ非依存型色座標、具体的には公知のCIE座標および/または三刺激値を有する少なくとも1つの基準色フィールドの少なくとも1つの画像を取得することによって、カメラ較正プロセスにおいて決定される、実施形態4ないし12のいずれか1つに記載の較正方法。
【0098】
実施形態14. ステップh.は、既定の濃度測定範囲にわたり、等距離濃度の試料が、本質的に等距離の色差を有するベストマッチ色座標系内の色座標を導くような形で行なわれる、実施形態1ないし14のいずれか1つに記載の較正方法。
【0099】
実施形態15. 既定の測定範囲にわたり、テストフィールドに適用される場合に、分析物の異なる濃度C、Cを有するテスト試料が、εを既定の範囲として、以下の色差:
【数10】
を伴う有色テストフィールドの色座標(F,m,b)、(F,m,b)を結果としてもたらす、実施形態14に記載の較正方法。
【0100】
実施形態16. 測定濃度セットが公知の濃度と最適にマッチする色座標系セットの色座標系およびコーディング関数セットのコーディング関数が、具体的には、ベストマッチ色座標系およびベストマッチコーディング関数を含む対を形成する、実施形態1ないし15のいずれか1つに記載の較正方法。
【0101】
実施形態17. コーディング関数セットが色座標のパラメータ化多項式関数を含む、実施形態1ないし16のいずれか1つに記載の較正方法。
【0102】
実施形態18. パラメータ化多項式関数が、c(F,m,b)を、有色テストフィールドが色(F,m,b)を有する場合の分析物の測定濃度とし、Nを正の整数とし、αi,j,kを多項式関数のパラメータとして:
【数11】
からなる群から選択される、実施形態17に記載の較正方法。
【0103】
実施形態19. ステップc.において使用されるテスト要素セットのテスト要素がすべて同じタイプのもの、好ましくは全て同一である、実施形態1ないし18のいずれか1つに記載の較正方法。
【0104】
実施形態20. さらに、少なくとも1つの標準テスト要素セットアップを定義するステップを含み、この標準テスト要素セットアップが、分析物との光学的に検出可能な検出反応を行なうために構成された少なくとも1つのテスト化学薬品を含む少なくとも1つのテストフィールドについての少なくとも1つのテスト化学薬品タイプを定義する、実施形態1ないし19のいずれか1つに記載の較正方法。
【0105】
実施形態21. 標準テスト要素セットアップがさらに、テスト化学薬品が適用される定義済み基体を含む、実施形態20に記載の較正方法。
【0106】
実施形態22. テスト試料セットが、分析物の少なくとも3つの異なる濃度を提供する少なくとも3つの異なるテスト試料を含む、実施形態1ないし21のいずれか1つに記載の較正方法。
【0107】
実施形態23. 分析物がグルコースである、実施形態1ないし22のいずれか1つに記載の較正方法。
【0108】
実施形態24. 試料が体液である、実施形態23に記載の較正方法。
【0109】
実施形態25. テスト試料セットが、0mg/dl~600mg/dlの既定の測定範囲全体にわたる異なる濃度のテスト試料を含む、実施形態23ないし24のいずれか1つに記載の較正方法。
【0110】
実施形態26. 具体的には、ステップa.、d.、e.、f.、g.、またはhのうちの少なくとも1つを行うためにコンピュータまたはコンピュータネットワークを使用することによって行なわれる、実施形態1ないし25のいずれか1つに記載の較正方法。
【0111】
実施形態27. 試料中の分析物を検出するための検出方法において:
A. カメラを提供するステップと;
B. 実施形態1ないし26のいずれか1つに記載の較正方法を使用することによって、カメラを較正するステップと;
C. テスト要素に対して試料を適用するステップであって、テスト要素が分析物との光学的に検出可能な検出反応を行なうために構成された少なくとも1つのテスト化学薬品を含む少なくとも1つのテストフィールドを有し、これにより試料についての少なくとも1つの有色テストフィールドが創出されるステップと;
D. 少なくとも1つの有色テストフィールドの少なくとも1つの画像を取得するステップと;
E. ベストマッチ色座標系を使用することによって、テストフィールドの色座標を生成するステップと;
F. ベストマッチコーディング関数を使用することによって、色座標を、試料中の分析物の測定濃度へと変換するステップと;
を含む方法。
【0112】
実施形態28.ステップC.において使用されるテスト要素が較正方法のステップc.のテスト要素セットのテスト要素と同じタイプのものである、実施形態27に記載の検出方法。
【0113】
実施形態29. ステップC.~F.が反復的に行なわれ、ステップBが、最初ステップC.~F.の複数の反復について一回だけかまたは毎回ステップC.~F.を行なう前に行なわれる、検出方法に関する実施形態27ないし28のいずれか1つに記載の検出方法。
【0114】
実施形態30. 具体的にはステップB.、D.、E.、またはF.の1つ以上を行なうために、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用することによって行なわれる、検出方法に関する実施形態27ないし29のいずれか1つに記載の検出方法。
【0115】
実施形態31. コンピュータプログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワークによって実行された時点で、コンピュータまたはコンピュータネットワークに、較正方法に関する実施形態1ないし26のいずれか1つに記載の較正方法または検出方法に関する実施形態27ないし30のいずれか1つに記載の前記検出方法の諸ステップを実施させる命令を含む、コンピュータプログラム。
【0116】
実施形態32. カメラを使用することによって試料中の分析物を検出する目的でカメラを較正するための較正システムにおいて、少なくとも1つのコンピュータまたはコンピュータネットワークを含み、較正方法に関する実施形態1ないし26のいずれか1つに記載の較正方法を行なうために構成されている較正システム。
【0117】
実施形態33. さらに分析物の公知の濃度を有するテスト試料セット、およびテスト要素セットを含み、各テスト要素が少なくとも1つのテストフィールドを有する、実施形態32に記載の較正システム。
【0118】
実施形態34. さらにカメラを含む、実施形態32ないし33のいずれか1つに記載の較正システム。
【0119】
実施形態35. 分析物との光学的に検出可能な検出反応を行なうために構成された少なくとも1つのテスト化学薬品を含む少なくとも1つのテストフィールドを有する少なくとも1つのテスト要素を使用することによって試料中の分析物を検出するための検出システムにおいて、少なくとも1つのカメラ、具体的にはスマートホンのカメラを含み、さらに少なくとも1つのコンピュータまたはコンピュータネットワーク、具体的には少なくとも1つのスマートホンを含む検出方法に関する実施形態27ないし30のいずれか1つに記載の検出方法を行なうために構成されている検出システム。
【0120】
実施形態36. さらに少なくとも1つの試料および少なくとも1つのテスト要素を含み、テスト要素が少なくとも1つのテストフィールドを有する、実施形態35に記載の検出システム。
【0121】
実施形態37. さらに、分析物の公知の濃度を有するテスト試料セットおよびテスト要素セットを含み、各テスト要素が少なくとも1つのテストフィールドを有する、実施形態35ないし36のいずれか1つに記載の検出システム。
【0122】
実施形態38. 試料中の分析物を検出するためのシステムにおいて、実施形態36および37に記載の較正システムおよび検出システムを含むシステム。
【0123】
好ましくは従属クレームと併せて、実施形態の後続する説明において、さらなる任意の特徴および実施形態についてより詳細に説明する。ここで、それぞれの任意の特徴は、当業者であれば認識するように、単独でならびにいずれか任意の可能な組合せの形で実現され得る。本発明の範囲は、好ましい実施形態によって限定されない。実施形態は、図中で概略的に描かれている。ここで、これらの図中の同一の参照番号は、同一のまたは機能的に匹敵する要素を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0124】
図1】システムの実施形態、検出システムの実施形態および較正システムの実施形態を例示する。
図2】較正方法の流れ図の実施形態を例示する。
図3】較正方法の流れ図の実施形態を例示する。
図4】検出方法の流れ図の実施形態を例示する。
図5】較正方法の一実施形態の流れ図の一部を例示する。
図6】実際の血糖値とカメラ非依存型色座標Xとの間の関係を表わす図表を例示する。
図7A-E】実際の血糖値と選択されたCIE座標との間の関係を表わす図表の実施形態を例示する。
図8A-B】血糖値の決定のために一般的な方法およびシステムを用いた場合(図A)および血糖値の決定のために本出願に係る当該方法およびシステムを用いた場合(図B)の、実際の血糖値を決定された血糖値との間の関係を表わす図表の実施形態を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0125】
システム110の一実施形態が図1に例示されており、このシステム110は、較正システム112と検出システム114とを有する。図1に例示されている較正システム112は、カメラ116、例えばスマートホン118に含まれるカメラを較正するために構成されている。較正システム112は、少なくとも1つのコンピュータ119またはコンピュータネットワーク120を含む。較正システム112の例示された実施形態において、コンピュータ119は具体的には、据え置き型コンピュータまたはコンピュータネットワーク120であり得る。代替的には、コンピュータ119は例えば、移動体またはポータブルデバイス、例えばタブレット、ノート型パソコンまたは携帯電話、例えばスマートホン118のうちの1つ以上のもののコンピュータネットワークであり得る。較正システム112はさらに、較正方法、具体的には図2および3に例示された較正方法を行なうために構成されている。さらに、図1は、テスト試料122、具体的には2つ以上のテスト試料124を含むテスト試料セット122を例示する。テスト試料124は具体的には、体液、例えば血液または尿の試料であり得る。テスト試料セット122に含まれるテスト試料124は、具体的には分析物の異なる濃度を有し得る。詳細には、各テスト試料124は、具体的にはカメラ116を較正するときに分析物の公知の濃度を有し得る。さらに、図1は、テスト要素セット126を例示しており、各テスト要素128は、分析物との光学的に検出可能な検出反応を行なうために構成された少なくとも1つのテスト化学薬品を含む少なくとも1つのテストフィールド130を有し、これにより少なくとも1つの有色テストフィールド130が創出される。
【0126】
図1に例示されている検出システム114は、少なくとも1つのテストフィールド130を有する少なくとも1つのテスト要素128を使用することによって試料131中の分析物を検出するために構成されている。試料131は、例えば分析物濃度を検出することを目的とする単一の試料であり得、したがって、詳細には、試料131内部の分析物の濃度は未知であり得る。具体的には、検出システム114は、図1においてテスト試料セット122とは別個に例示されている試料131中の分析物を検出するために構成され得る。同様にして、テストフィールド130を有するテスト要素128は、図1においてテスト要素セット126とは別個に例示されているテスト要素128であり得る。テストフィールド130は、分析物との光学的に検出可能な検出反応を行なうために構成された少なくとも1つのテスト化学薬品を含む。検出システム114は、少なくとも1つのカメラ116、具体的にはスマートホン118のカメラ116を含む。さらに検出システム114は、少なくとも1つのコンピュータ119またはコンピュータネットワーク120を含む。検出システム114の例示された実施形態において、コンピュータ119は、具体的にはスマートホン118であり得る。検出システムはさらに、検出方法、具体的には図4で例示された検出方法を行なうために構成されている。
【0127】
概して、典型的な問題点は、光学的に検出可能な検出反応を検出するためのカメラを較正するときに発生し得る。一例として、カメラを較正するために使用される色差を測定するための測定単位を決定するためのアプローチには、以下の3つのステップが含まれ得る。
【0128】
第1のステップは、例えば、初期変換を行なうステップを含み得る。具体的には、第1のステップは、例えば(R,G,B)などのカメラ依存型色座標を、例えば(X,Y,Z)などのカメラ非依存型色座標に変換するステップを含み得る。代表的には、初期変換は、電磁スペクトルの物理的サイズと生理学的色覚とを結び付ける目的で役立つことができる。例えば、初期変換は、以上の説明の中で開示されている等式(1)を使用することができる。具体的には、標準アルゴリズム、例えば基準色の測定に基づく標準アルゴリズムを、等式(1)中で使用されている変換行列Mを決定するために使用することができる。ここでもまた、F.Konig:「Die Charakterisierung von Farbsensoren」,Dissertation,Logos Verlag,Berlin,2001,pp.48~49に対する参照が指示され得る。
【0129】
第2のステップは、さらなる変換を含み得る。具体的には、第2のステップは、カメラ非依存型色座標、例えば(X,Y,Z)を、選択された色空間、例えば人間の色知覚にしたがった色差などの色差を最適化するのに好適な色空間、例えばCIEにしたがった色空間へと変換するステップを含み得る。以下の等式は、カメラ非依存型色座標のCIE L*a*b色空間への変換の計算を、代表的に示している。
【0130】
【数12】
【0131】
第3のステップは、色同士の間の差異、例えば色差を測定するための測定単位を計算および/または定義するステップを含み得る。例えばL*a*b色空間に基づく2つの試料pおよびvの間の色差などの色差を、以下の等式を用いて決定することができる:
【数13】
【0132】
詳細には、測定単位を定義するための他の数式または等式、例えば非線形等式、例えば色差に対する考えられる非線形効果を考慮したより複雑な非線形等式を使用することができる。具体的には、色差を測定するための測定単位を決定するために、色差、例えば△E94および△E00に対する周囲輝度の考えられる効果を考慮に入れた非線形等式を使用することができる。
【0133】
上述の方法には典型的に、分析的測定に適用される場合にいくつかの課題が関与する。したがって、CIE勧告に基づいて測定単位を定義するための数式などの数式は、人間の色知覚と色刺激の物理的原因との間のつながりまたは関係を確立することを目指すものであり得、したがって、等距離データ、例えば等距離分析物濃度の不規則または非線形表現を導き得ると考えるべきである。詳細には、前記非線形表現は、例えば、分析物を検出するためのカメラ116を較正するために使用された場合、決定された分析物濃度の非線形または不規則精度を導き得る。したがって、本発明に係る試料131中の分析物を検出するためのカメラ116を較正するための較正方法は、詳細には、既定の濃度測定範囲にわたり、等距離濃度の試料が本質的に等距離の色差を有する色座標を導くような形で行なうことができる。試料131中の分析物を検出するためのカメラ116を較正するための較正方法の流れ図の一実施形態が図2で例示されている。
【0134】
図2には、本発明に係る較正方法が示されている。図2で例示された較正方法は、色座標系セットを提供するためのステップa.(方法ステップ132)を含み、これらの色座標系セットは、物体の色を描写するために構成された複数の異なる色座標系を含む。較正方法はさらに、分析物の公知の濃度を有するテスト試料セット122を提供するためのステップb.(方法ステップ134)を含む。具体的には、図1に例示されたテスト試料セット122を提供することができる。
【0135】
さらに、較正方法は、テスト要素セット126にテスト試料124を適用するためのステップc.(方法ステップ136)を含む。具体的には、図1に例示されたテスト要素セット126にテスト試料124を適用することができる。詳細には、テスト試料セット122からのテスト試料124の各々を、それぞれテスト要素セット126からのテスト要素128に対して適用することができる。各テスト要素128は、分析物との光学的に検出可能な検出反応を行なうために構成された少なくとも1つのテスト化学薬品を含む少なくとも1つのテストフィールド130を有し、これによりテスト試料124の各々についての少なくとも1つの有色テストフィールド130が創出される。
【0136】
較正方法はさらに、カメラ116を使用することにより有色テストフィールド130の画像を取得するためのステップd.(方法ステップ138)を含む。具体的には、図1に例示されているスマートホン118に含まれたカメラ116を用いて、有色テストフィールド130の画像を取得することができる。さらに、較正方法は、色座標系セットの色座標系を使用することによって、有色テストフィールド130の画像についての色座標を生成し、これにより、テスト試料および色座標系についての色座標セットを創出するためのステップe.(方法ステップ140)を含む。
【0137】
さらに、較正方法は、コーディング関数セットを提供するためのステップf.(方法ステップ142)を含む。コーディング関数セットは、テストフィールド130の色座標をテスト試料124中の分析物の対応する濃度へと変換するための複数のコーディング関数を含む。較正方法はさらに、コーディング関数セットを使用することによって、ステップe.で生成された色座標セットを測定濃度セットへと変換するためのステップg.(方法ステップ144)を含む。
【0138】
さらに、較正方法は、測定濃度セットをテスト試料124の公知の濃度と比較し、測定濃度セットが公知の濃度と最適にマッチするベストマッチ色座標系およびコーディング関数セットのベストマッチコーディング関数を決定するためのステップh.(方法ステップ146)を含む。具体的には、較正方法は詳細には、等距離濃度の試料124が、本質的に等距離の色差を有するベストマッチ色座標系内の色座標を導くような形で行なわれ得る。
【0139】
例えば、異なる色座標系から、具体的には色座標系セットからの異なる色座標系から、色座標の1つ、2つ以上または全てを取り上げることができ、これを使用してベストマッチ色座標系を網羅することができる。具体的には、ベストマッチ色座標系は、2つ以上、好ましくは3つ以上の色座標で構成されていてよい。具体的には、多数の色座標を、多次元パラメータと呼ぶことができる。代表的には、ベストマッチ色座標系を決定するために、具体的には測定濃度と公知の濃度の間、例えば測定結果と基準結果の間の相違、例えば誤差を最小化することができる。詳細には、誤差は例えば、色座標系の、例えば色空間のパラメータ、例えば係数の値を適応させることによって最小化され得る。さらに、コーディング関数セットは具体的には、詳細には多次元コード関数と呼ばれる2つ以上のコーディング関数を含むことができる。一例として、多次元コード関数を用いて、結果を計算する、例えば試料131の分析物濃度を決定することができる。
【0140】
図3では、ほとんどの部分において図2の方法に対応する、較正方法のさらなる実施形態が示されている。したがって、大部分のステップについて、以上の図2の説明を参照することができる。図3で例示されているように、較正方法のこの実施形態において、ステップe.(方法ステップ140)は、3つのサブステップを含むことができる。具体的には、有色テストフィールド130の画像についてのカメラ依存型色座標を生成するための第1のサブステップe1.(方法ステップ148)、第1の変換アルゴリズムを使用することによってカメラ依存型色座標をカメラ非依存型色座標へと変換するための第2のサブステップe2.(方法ステップ150)、および第2の変換アルゴリズムを使用することによってカメラ非依存型色座標を色座標系セットの色座標系についての色座標へと変換し、これによりテスト試料および色座標系についての色座標を創出するための第3のサブステップe3.(方法ステップ152)である。
【0141】
図4は、試料124中の分析物を検出するための検出方法の一実施形態の流れ図を例示する。検出方法は、カメラ116を提供するためのステップA.(方法ステップ154)を含む。具体的には、図1に例示されているようなカメラ116を提供することができる。さらに、検出方法は、較正方法を使用することによって、カメラ116を較正するためのステップB.(方法ステップ156)を含む。詳細には、カメラ116を較正するために、図2または3で例示されている較正方法を使用することができる。
【0142】
さらに、検出方法は、テスト要素128に試料を適用するためのステップC.(方法ステップ158)を含み、テスト要素128は、分析物との光学的に検出可能な検出反応を行なうために構成された少なくとも1つのテスト化学薬品を含む少なくとも1つのテストフィールド130を有し、これにより試料124についての少なくとも1つの有色テストフィールド130が創出される。具体的には、図1でテスト試料セット122と別個に例示されている試料124を、テスト要素128に対して、具体的には図1でテスト要素セット126とは別個に例示されているテスト要素128に対して適用することができる。
【0143】
さらに、検出方法は、少なくとも1つの有色テストフィールド130の少なくとも1つの画像を取得するためのステップD.(方法ステップ160)を含む。検出方法はさらに、ベストマッチ色座標系を使用することによってテストフィールド130の色座標を生成するためのステップE.(方法ステップ162)を含む。詳細には、ベストマッチ色座標系は、色座標系セットの異なる色座標系からの3つまたは4つの色座標で構成され得る。さらに、検出方法は、ベストマッチコーディング関数を使用することによって色座標を試料124中の分析物の測定濃度へと変換するためのステップF.(方法ステップ164)を含む。
【0144】
図5は、試料124中の分析物を検出するためのカメラ116を較正するための較正方法の一実施形態の流れ図の一部を例示している。この実施形態は、図2または図3中に示された方法の具体的実施形態の一部とみなすことができるものである。詳細には、サブステップe2.およびe3.(方法ステップ150および152)およびステップf.、g.、およびh(方法ステップ142、144および146)を含む較正方法の実施形態の流れ図の一部を、図5に例示することが可能である。
【0145】
ステップe2.(方法ステップ150)の第1の変換アルゴリズムは、例えば、行列演算を含むことができる。具体的には、第1の変換アルゴリズムは、行列Mを使用することによる行列演算、詳細には、カメラ依存型色座標(R,G,B)をカメラ非依存型色座標(X,Y,Z)へと変換するための行列演算を含むことができる。第1の変換は、具体的には、等式(1)に示された変換、詳細には図5の左側の最初の囲みの中に例示された変換を使用することができる。
【0146】
ステップe3.(方法ステップ152)の第2の変換アルゴリズムは、例えば、パラメータ化関数を使用することによってカメラ非依存型色座標を色座標セットの色座標へと変換するステップを含むことができる。詳細には、カメラ非依存型色座標(X,Y,Z)は、等式2.1、2.2および2.3に示された変換を使用することによって色座標セット(F,m,b)へと変換され得る。図5に例示されているように、カメラ非依存型色座標(X,Y,Z)を色座標セット(F,m,b)へと変換するステップは、第1の変換アルゴリズムを行なった後で行なうことができる。第2の変換アルゴリズムはさらに、具体的には、少なくとも1つの基準色、具体的には白色フィールドの基準色を検出することによって、テストフィールドの照明を考慮することができる。詳細には、図5中の左から3番目の囲みに例示されているような、等式3.1~3.6の1つ以上を使用することによって、照明依存型色座標(F,m,b)を相対的色座標(Frel,mrel,brel)へと変換することができる。
【0147】
その後に、ステップf.g.およびh.(方法ステップ142、144および146)を行なうことができる。具体的には、ステップh.(方法ステップ146)は、既定の濃度測定範囲にわたり、等距離濃度の試料124が、本質的に等距離の色差を有するベストマッチ色座標系内の色座標を導くような形で行なわれ得る。一例として、図5中に示された最も右側の囲みは、試料124の実際の分析物濃度(c)(x軸)と試料124の本質的に等距離の色差(△E)の間に線形関係が存在している理想的な例を示している。
【0148】
さらに、図6は、実際の血糖値(c)、例えばテスト試料124の予め定義された血糖値と、カメラ非依存型色座標(X,Y,Z)の比X/(X+Y)との間の関係を表わす図表を例示する。示された例において、色座標ZはZ=0に設定されている。具体的には、パラメータa、aおよびaが代表的にa=1、a=1およびa=1に設定されたカメラ非依存型色座標の比a・X/(a・X+a・Y)は、図6に例示された図表のy軸上にプロットされている。x軸上にプロットされているのは、試料124中の分析物の濃度、例えば、デシリットルあたりのミリグラム(mg/dl)の単位で示された実際の血糖値(c)などの、試料124中の分析物の濃度である。詳細には、この図表は、カメラ非依存型色座標の比と実際の血糖値の間の非線形依存性を示す。こうして、示された例において、等距離濃度の試料は、選択された色座標系(X,Y,Z)中の本質的に等距離の色差を導かない。したがって、選択された色座標系はベストマッチ色座標系でない可能性があり、例えば図2および3に例示されているように、較正方法をさらに行なうステップが必要であり得る。
【0149】
さらに、図7A~Eは、実際の血糖値(c)と選択されたCIE座標、例えば図7A中のL図7B中のa図7C中のb図7D中のu’および図7E中のv’との間の関係を表わす図表の実施形態を例示している。これらの図表は、全てのCIE座標について、実際の血糖値とCIE座標の間の異なる関係を表わす。具体的には、例示されている通り、異なる色座標は、実際の血糖濃度とのマッチングに対する異なる適合性を有する。詳細には、等距離濃度の例示された試料は、図7A~E全てについて同じであるが、全ての例示されたCIE座標について本質的に等距離の色差を導かない。例えば、図7D中に例示された図表は、色座標aに基づいて、図7Bに例示された図表に比べてより線形的な色座標u’と試料間の関係を表わしている。
【0150】
図8Aは、血糖値決定のために一般的な方法およびシステムを用いて、決定された血糖値と実際の血糖値との間の関係を表わす図表の一実施形態を例示している。詳細には、図8Aに例示された図表は、CIE色座標系Lを用いて、決定または測定された血糖値(mBG)と実際の血糖値(c)との間の関係を表わしている。
【0151】
これと対照的に、図8Bは、血糖値決定のために本出願に係る当該方法およびシステムを用いて、決定された血糖値と実際の血糖値との間の関係を表わす図表の一実施形態を例示する。具体的には、図8Bに例示された図表は、ベストマッチ色座標系およびベストマッチコーディング関数を用いて、決定され測定された血糖値(mBG)と実際の血糖値(c)との間の関係を表わしている。詳細には、図8Aと8Bを比較すると、血中濃度を決定する一般的アプローチを使用する場合に比べて、ベストマッチ色座標系およびベストマッチコーディング関数を使用した場合に精度が改善されることが分かる。具体的には、ベストマッチ色座標系およびベストマッチコーディング関数を使用した場合、決定された血糖値のより低い散乱度を達成することができる。さらに、図8Aおよび8Bは、実際の血糖濃度に比べた決定された血糖濃度の臨床的精度を定量化する、エラーグリッド解析の領域A~E、具体的にはパークスエラーグリッドの領域A~Eを示す。
【0152】
さらに、図8Aおよび8Bは、実際の血糖濃度に比べた決定された血糖濃度の臨床的精度を定量化する、エラーグリッド解析の領域A~E、具体的にはパークスエラーグリッドの領域A~Eを示す。例えば、以下の領域内の血糖値は以下の通りである:
- 領域A内の血糖値は、基準センサの20%の範囲内の値を含む;
- 領域B内の血糖値は、20%の外にあるものの不適切な治療を導くことがないと思われる値を含む;
- 領域C内の血糖値は、不要な治療を導く値を含む;
- 領域D内の血糖値は、潜在的に危険な低血糖症または高血糖症の検出不具合を表わす値を含む。
- 領域E内の血糖値は、低血糖症の治療を高血糖症と混同させるまたはその逆が考えられる値を含む。
【0153】
エラーグリッド解析についてのさらなる情報に関しては、Clarke WL,Cox D,Gonder-Frederick LA,Carter W,Pohl SL:Evaluating clinical accuracy of systems for self-monitoring of blood glucose.Diabetes Care 10:622~628,1987を参照することができる。
【0154】
図8Aおよび8Bは両方共、同じ試料に基づくものであり、詳細には、両方の図において血糖値を決定するために同じテスト試料セットが使用されている。表1は、それぞれの領域に応じて選別された図8Aおよび図8Bの両方についての決定された血糖値の数を標示している。
【0155】
【表1】
表1:それぞれの領域に応じて選別された、図8Aおよび図8Bの両方についての決定された血糖値の数
【0156】
具体的には、図8Aおよび8Bに例示されているように、かつ上の表中に記された決定された血糖値の定量化によって示されている通り、決定された血糖値の精度および正確さは、血糖濃度を決定する一般的なアプローチを用いた場合に比べて、ベストマッチ色座標系およびベストマッチコーディング関数を使用した場合に改善され得る。
【符号の説明】
【0157】
110 システム
112 較正システム
114 検出システム
116 カメラ
118 スマートホン
120 コンピュータネットワーク
122 テスト試料セット
124 テスト試料
126 テスト要素セット
128 テスト要素
130 テストフィールド
131 試料
132 ステップa. 色座標系セットを提供するステップ。
134 ステップb. 分析物の公知の濃度を有するテスト試料セットを提供するステップ。
136 ステップc. テスト要素セットに対してテスト試料を適用するステップであって、各テスト要素が、分析物との光学的に検出可能な検出反応を行なうために構成された少なくとも1つのテスト化学薬品を含む少なくとも1つのテストフィールドを有し、これによりテスト試料の各々についての少なくとも1つの有色テストフィールドが創出されるステップ。
138 ステップd. カメラを使用することによって有色テストフィールドの画像を取得するステップ。
140 ステップe. 色座標系セットの色座標系を使用することによって、有色テストフィールドの画像についての色座標を生成するステップであって、これによりテスト試料および色座標系についての色座標セットが創出されるステップ。
142 ステップf. コーディング関数セットを提供するステップであって、コーディング関数セットが、テストフィールドの色座標を試料中の分析物の対応する濃度へと変換するための複数のコーディング関数を含んでいるステップ。
144 ステップg. コーディング関数セットを使用することによって、ステップe.で生成された色座標セットを測定濃度セットへと変換するステップと。
146 ステップh. テスト試料の公知の濃度と測定濃度セットとを比較し、測定濃度セットが公知の濃度と最適にマッチする色座標系セットのベストマッチ色座標系およびコーディング関数セットのベストマッチコーディング関数を決定するステップ。
148 ステップe1. 有色テストフィールドの画像についてのカメラ依存型色座標を生成するステップ。
150 ステップe2. 第1の変換アルゴリズムを使用することによって、カメラ依存型色座標をカメラ非依存型色座標へと変換するステップ。
152 e3. 第2の変換アルゴリズムを使用することによって、カメラ非依存型色座標を色座標系セットの色座標系についての色座標へと変換し、これによりテスト試料および色座標系についての色座標セットが創出されるステップ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8A
図8B