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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】三安定ストレージループ
(51)【国際特許分類】
   H03K 3/38 20060101AFI20221130BHJP
   H03K 3/038 20060101ALI20221130BHJP
   H03K 19/195 20060101ALI20221130BHJP
   H01L 39/22 20060101ALI20221130BHJP
   G11C 11/44 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
H03K3/38 C
H03K3/038
H03K19/195
H01L39/22 C
G11C11/44
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020561608
(86)(22)【出願日】2019-01-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 US2019015229
(87)【国際公開番号】W WO2019152281
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-07-22
(31)【優先権主張番号】15/886,652
(32)【優先日】2018-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン、アレクサンダー ルイス
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-5959(JP,A)
【文献】特開2002-374152(JP,A)
【文献】特開2001-60862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K3/038
H03K3/38
H03K19/195
H01L39/22
G11C11/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レシプロカル量子論理の三安定ストレージループ回路であって、
ストレージループの入力端子に制御入力を供給するように構成された制御入力線と、
前記ストレージループの出力端子に信号入力を供給するように構成された信号入力線と、
前記ストレージループの前記出力端子から出力単一磁束量子パルスを伝搬するように構成された出力線とを備え、
前記ストレージループは、
前記入力端子における制御ジョセフソン接合と
前記出力端子における論理ジョセフソン接合と、
前記入力端子を前記出力端子に接続するストレージインダクタと、を含み、
前記レシプロカル量子論理の三安定ストレージループ回路は、前記信号入力線上に入力がない場合、前記ストレージループは、電流が前記ストレージループに流れない第1の安定状態と、1つのΦ相当の電流が前記ストレージループ内に流れる第2の安定状態とを含む2つの安定状態を有するように構成され、さらに前記レシプロカル量子論理の三安定ストレージループ回路は、前記信号入力線に第1の極性単一磁束量子パルスが供給されると、前記ストレージループは、-Φ相当の電流が前記ストレージループ内に流れる第3の安定状態を獲得するように構成されている、レシプロカル量子論理の三安定ストレージループ回路。
【請求項2】
前記ストレージループは、第1の方向に流れる電流、前記第1の方向とは反対の方向に流れる電流、または無電流をそれぞれ格納する前記ストレージループに基づいて、第1の極性のバイアス、前記第1の極性とは反対の第2の極性のバイアス、または無バイアスのいずれかを前記論理ジョセフソン接合に選択的に印加するように構成される、請求項1に記載のレシプロカル量子論理の三安定ストレージループ回路。
【請求項3】
前記制御ジョセフソン接合、前記論理ジョセフソン接合および前記ストレージインダクタの個々の大きさは、前記制御入力線に供給される単一磁束量子パルス信号の前記入力端子から前記出力端子への一方向の信号フローが確保されるように選択されている、請求項1に記載のレシプロカル量子論理の三安定ストレージループ回路。
【請求項4】
前記制御ジョセフソン接合大きさは、
前記制御入力線に接続された駆動JTLが、前記制御ジョセフソン接合をトリガして、電流を前記ストレージループに流すことを可能にするように、かつ
前記電流が、前記制御ジョセフソン接合をトリガ解除して、単一磁束量子パルスが前記ストレージループから離れて前記制御入力線から流出するには不十分であるように選択されている、請求項3に記載のレシプロカル量子論理の三安定ストレージループ回路。
【請求項5】
前記ストレージループ内の電流がゼロであるときに、前記信号入力線を介した入力である単一磁束量子パルスは、前記論理ジョセフソン接合をトリガするのに不十分であるように構成される、請求項1に記載のレシプロカル量子論理の三安定ストレージループ回路。
【請求項6】
前記ストレージループ内に第1の方向に流れる電流があるときに、前記信号入力線を介して入力される第1の極性単一磁束量子パルスは、前記論理ジョセフソン接合前記第1の方向にトリガして、前記ストレージループ内の前記第1の方向に流れる電流を消滅させるように構成される、請求項5に記載のレシプロカル量子論理の三安定ストレージループ回路。
【請求項7】
前記ストレージループ内に前記第1の方向とは反対の第2の方向に流れる電流があるときに、前記信号入力線を介して入力される前記第1の極性とは反対の第2の極性単一磁束量子パルスは、前記論理ジョセフソン接合前記第2の方向にトリガして、前記ストレージループ内の前記第2の方向に流れる電流を消滅させるように構成される、請求項6に記載のレシプロカル量子論理の三安定ストレージループ回路。
【請求項8】
前記制御入力線に沿って供給されるAC電力を直接印加するように構成されたAC電源を備える、請求項1に記載のレシプロカル量子論理の三安定ストレージループ回路。
【請求項9】
1つのレシプロカルペアの単一磁束量子パルスをACクロックサイクル毎に供給するように構成された回路をさらに備える、請求項1に記載のレシプロカル量子論理の三安定ストレージループ回路。
【請求項10】
一連のパルスを、第1の電流状態とヌル電流状態との間で交互に繰り返すことから、第2の電流状態とヌル電流状態との間で交互に繰り返すことに変更する方法であって、
レシプロカル量子論理システム内のストレージループに第1の極性および前記第1の極性とは反対の第2の極性の制御入力を交互に供給して、前記ストレージループを電流が前記ストレージループ内を第1の方向に循環する第1の電流格納状態と、前記ストレージループ内で電流が循環しないヌル電流格納状態との間で交互に繰り返すようにするステップと、
前記第1の電流格納状態の間に前記第1の極性の単一磁束量子信号パルスを前記ストレージループに入力して、前記ストレージループを前記ヌル電流格納状態に戻し、次前記第2の極性の制御入力で、前記ストレージループを電流が前記ストレージループ内を第2の方向に循環する第2の電流格納状態に移行させるステップとを含み、前記制御入力により前記ストレージループが前記第2の電流格納状態と前記ヌル電流格納状態との間で交互に繰り返す、方法。
【請求項11】
前記第2の電流格納状態の間に前記第1の極性とは反対の前記第2の極性単一磁束量子信号パルスを前記ストレージループに入力して、
前記ストレージループを前記ヌル電流格納状態に戻し
次の前記第1の極性の制御入力で、前記ストレージループを前記第1の電流格納状態に移行させるステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記単一磁束量子信号パルスは、前記ストレージループの出力端子に入力され、前記出力端子は、前記制御入力が前記ストレージループに供給される入力端子とは反対側の前記ストレージループの端子である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ストレージループは、前記ストレージループ内のストレージインダクタの両端子に接続された制御ジョセフソン接合および論理ジョセフソン接合を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
入力された単一磁束量子信号パルスは、前記論理ジョセフソン接合をトリガさせて、それにより前記ストレージループからの出力パルスを伝搬させる、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、量子および古典的デジタル超伝導回路に関し、具体的には、RQL回路において使用するための三安定ストレージループ(tri-stable storage loops)、即ち、1つまたは複数の入力信号によって保持状態が肯定的に変更されるまで、正の状態、負の状態、およびゼロ状態を表す電流を安定して保持することができるループに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル論理回路の分野では、既知の高度に開発された相補型金属酸化膜半導体(CMOS:complimentary metal-oxide semiconductor)技術が広範囲に使用されている。CMOSは、技術として成熟に近づき始めているので、速度、消費電力計算密度、相互接続帯域幅などの点でより高性能化をもたらし得る代替技術が注目されている。CMOS技術に対する代替方法は、毎秒20ギガビット(Gb/s)以上の典型的なデータレート、および約4ケルビンの動作温度で、約4ナノワット(nW)の典型的な信号電力を有する、超伝導ジョセフソン接合(JJ)を利用する超伝導体ベースの単一磁束量子回路構成を含む。
【0003】
レシプロカル量子論理(RQL:reciprocal quantum logic)ファミリーにおけるシステムおよび回路の状況では、ストレージループは、状態を表す超伝導電流を、そのようなループ内の電流、従って、表される状態が、例えば、ストレージループが構成要素であり得るより大規模回路内に存在する周囲のAC条件によってではなく、入力信号によって肯定的に変化されるまで、安定して保持することができるループである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第6608518号明細書
【文献】米国特許第7227480号明細書
【文献】米国特許第7724020号明細書
【文献】米国特許第7977964号明細書
【文献】米国特許第8138784号明細書
【文献】米国特許第8611974号明細書
【発明の概要】
【0005】
一例は、レシプロカル量子論理(RQL)の三安定ストレージループ回路を含む。制御入力線は、回路内のストレージループの入力端子に制御入力を供給する。信号入力線は、ストレージループの出力端子に信号入力を供給する。出力線は、ストレージループの出力端子から出力単一磁束量子(SFQ)パルスを伝搬する。ストレージループは、入力端子における制御ジョセフソン接合(JJ)、出力端子における論理JJ、および入力端子を出力端子に接続するストレージインダクタで構成されている。
【0006】
別の例は、一連のパルスを、正電流状態とヌル電流状態との間で交互に繰り返すことから、負電流状態とヌル電流状態との間で交互に繰り返すことに変更する方法を含む。電流がループ内を正の方向に循環する正の電流格納状態と、電流がループ内を本質的に循環しないヌル電流格納状態との間でストレージループが交互に繰り返すように、正と負の交互の制御入力が、RQLシステム内のストレージループに供給される。正の状態の間に正のSFQ信号パルスがストレージループに入力されて、ストレージループをヌル状態に戻し、その後、次の負の制御入力で、ストレージループをループ内を負の方向に循環する負の電流格納状態に移行させる。その後、制御入力により、ストレージループが負の状態とヌル状態との間で交互に繰り返すようにする。
【0007】
さらに別の例は、入力ノードに接続された制御入力線と、回路接地と入力ノードとの間に接続された制御JJと、入力ノードと出力ノードとの間に接続されたストレージインダクタと、回路接地と出力ノードとの間に接続された論理JJと、出力ノードに接続された信号入力線と、出力ノードに接続された出力線とを備える回路を含む。制御JJ、ストレージインダクタ、および論理JJはストレージループを形成する。制御JJおよびストレージインダクタは、制御入力線を介して供給される制御入力の一方向のフローを供給するようにサイズが設定されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一例の三安定ループの回路図である。
図2】周期的制御入力があるが、信号入力がない場合の、時間に応じた三安定ループ内の電流のプロットを示す図である。
図3】周期的制御入力および信号入力を使用した、時間に応じた三安定ループ内の電流のプロットを示す図である。
図4】AおよびBは、一連のパルスを、正電流状態とヌル電流状態との間で交互に繰り返すことから負電流状態とヌル電流状態との間で交互に繰り返すことに変更する方法(図4A)、およびその逆に変更する方法(図4B)の例示的なフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、概して、レシプロカル量子論理(RQL)システムおよび関連する方法において使用するための論理回路に関する。本開示は、より具体的には、ループの両端にあるジョセフソン接合(JJ)における信号の相互作用を介して3つの安定状態のいずれかに駆動され得る誘導性ストレージループに関する。本明細書に記載の誘導性ストレージループは、単一磁束量子(SFQ)論理が、接合の1つにおいて正バイアス、負バイアス、または無バイアスを選択的に印加することを可能にする。
【0010】
図1は、例示的な三安定ループ100を示す。三安定ループ100は、制御JJ104をストレージインダクタ106に接続する入力ノードに設けられる制御入力線102を含む。ストレージインダクタ106の反対側の端子には、論理JJ108、信号入力線110、および出力線112が接続されている出力ノードが存在する。従って、ストレージループ100は、回路接地、制御JJ104、ストレージインダクタ106、論理JJ108、および回路接地の間に形成されている。入力線102、110および出力線112は、例えば、SFQパルスをストレージループ100内または外にそれぞれ伝搬するためにジョセフソン伝送線(JTL:Josephson transmission lines)(図示せず)に接続されている。
【0011】
ループ100は、追加のバイアスを論理JJ108に印加して、信号入力線110に沿って印加されたSFQ信号が、出力線112上に伝搬される出力を生成するようにする。これを達成するために、制御接合104が、電流のSFQをストレージループ100に入れるためにトリガされる。これは、制御入力線102に沿って供給されるRQLエンコードされたSFQパルス、または制御入力線102に沿って供給されるAC電力の直接印加を介して行うことができる。
【0012】
ストレージループ100における構成要素のサイズの選択は、一方向のデータフローを提供する。例えば、周囲のACバイアス条件に関係なくループ100を安定させるために、制御JJ104は、論理JJ108に比べて大きいサイズとすることができ、ストレージインダクタ106は、入力線JTL(図示せず)における伝搬経路インダクタンスに比べて大きいサイズとすることができる。これにより、回路100において信号方向が強制される。例として、制御入力線102上に供給されるSFQパルスは、1つのΦの電流をストレージループ100に入れることができる。そのようなストレージループを通過する電流の大きさは、ストレージループ100内のストレージインダクタ106のサイズによって決定される。従って、制御入力線102上の入力インダクタ(図示せず)のインダクタンス値は、ストレージインダクタ106のインダクタンス値と比較して小さくすることができる(例えば、約8pHと9pHとの間、例えば、8.5pH)。一方、制御入力線102上に供給される制御入力SFQパルスによって誘導される格納電流の大きさを低減するために、ストレージインダクタ106は、比較的大きいサイズとすることができる(例えば、約30pHと40pHとの間、例えば、35pH)(例えば、前述の入力インダクタよりも約4倍大きい)。いくつかの例では、制御入力線102に導入される電流の大きさは、ストレージループ100内に格納される電流よりも約4倍大きい。制御JJ104は、制御入力線102に接続された任意の駆動JTL(図示せず)が制御JJ104を反転させて電流をストレージループ100に入れることを可能にするが、ストレージループ100内の電流は、制御JJ104を反転解除して、格納されたパルスが制御入力線102に戻ることを可能にするのに十分ではないようにサイズが設定されている。
【0013】
RQL回路では、超伝導相が論理状態を表す任意のジョセフソン接合が、正、負、正、負などのように交互の形態でトリガされる。図2は、時間に応じて、制御接合104としてのストレージインダクタ106内の電流が、信号入力線110に沿って信号入力が印加されていない状態で、制御入力線102に沿って供給される電流によってこの交互の形態でトリガされることを示す。制御接合104の各正のトリガ202、206により、1つのΦ(約2.07mA-pH)相当の電流がストレージループ100に入り、論理接合108が正にバイアスされる。各負のトリガ204、208により、このバイアス電流が除去される(即ち、バイアス電流をゼロに戻す)。いくつかの例では、入力線102を制御する信号は、ACクロックサイクル毎に1つのトリガペア(例えば、202、204)を発生させるように構成することができる。他の例では、制御入力線102に供給される印加電流は、複数のACクロックサイクルに亘って存在することができる。
【0014】
図3は、図2のプロットと同様のプロットを示すが、信号入力線110に印加される信号入力の効果が追加されている。制御入力線102に沿って供給される制御信号の結果として、制御接合104は依然として正302、306、312、318および負304、310、314、320を交互にトリガする。ループ100内の電流がゼロである時間中に信号入力線110を介して回路100に入力されるSFQパルスは、それ自体で論理接合108をトリガするには不十分である。しかしながら、このようなSFQパルスは、ストレージインダクタ106内の電流によって供給される追加のバイアスによって論理接合108をトリガすることが可能である。
【0015】
最初、図2に示されるように、信号入力がない場合、ループ100内の電流は、0と1つのΦ相当の電流との間でのみ変化するため、制御接合104は、論理接合108に正のバイアスを印加するか、またはバイアスを印加しないことのみが可能である。しかしながら、点308に示されるように、論理接合108の正のトリガは、ストレージループ100内に格納された電流を消滅させ、この正のバイアスを取り除く。この時点308の後、制御接合104の次のトリガ310は負であり、制御接合104は、現時点で、負のバイアスを印加することのみが可能である。
【0016】
制御接合104の後続のトリガ310、312、314は、論理接合108が負にトリガ316されるまで、このバイアスと信号入力線110において印加された負のSFQパルスとの組み合わせによって、印加バイアスをゼロと-Φとの間で切り替える。これにより、ストレージループ100の電流が再び消滅し、これにより、次に、制御接合104が正のバイアスのみを印加するか、またはバイアスを印加しない元の状態に戻る。
【0017】
上記の説明に鑑みて、図1に示すタイプの三安定ストレージループは、1つのRQL信号から到来する交互の一連のパルスを遮断する機能を提供して、正電流状態と無電流状態との間のみならず、負電流状態にも到達して選択的に交互に繰り返すことができる。図2および図3の上記の例では、制御接合104の最初のトリガ(例えば、202または302)は正の方向であると想定されているが、回路100は、制御接合104の最初のトリガが負であり、記載された全ての電流の符号が反転されている場合に、同等に機能する。意思決定ジョセフソン接合に正電流、負電流、または無バイアス電流を印加するRQL信号の機能からいくつかの論理機能を提供するゲートの構築は、部品数、効率性などの点でメリットがある。従って、本明細書に記載されているタイプの三安定ループは、そのようなRQLゲートの構築において、従来の設計よりも利点を提供する。例として、ストレージループ100を使用して、特にRQLシステムと互換性のある、部品効率のよいDフリップフロップ、多数決ゲート、ANDゲート、ORゲート、AND-ORゲート、NANDゲート、およびNORゲートを作成することができる。いくつかの例では、複数のストレージループは、ストレージループが、ストレージループの複数、大多数、または特定のストレージループに格納された電流によって生成された適切なバイアスによってのみトリガされる共通の論理接合を共有するように組み合わせることができる。
【0018】
図4Aは、一連のパルスを、正電流状態とヌル電流状態との間で交互に繰り返すことから、負電流状態とヌル電流状態との間で交互に繰り返すことに変更する方法400を示す。電流がループ内を正の方向に循環する正の電流格納状態と本質的に電流がループ内を循環しないヌル電流格納状態との間でストレージループを交互に繰り返すために、交互の正および負の制御入力が、レシプロカル量子論理(RQL)システム内のストレージループに供給される(402)。正の状態の間に、正の単一磁束量子(SFQ)信号パルスがストレージループに入力される(404)。ストレージループ内の論理JJが正の方向にトリガし(406)、ストレージループ内の電流を消滅させ、ストレージループをヌル状態に戻す(408)。次の負の制御入力では、ストレージループが電流がループ内を負の方向に循環する負の電流格納状態に移行され(410)、その後、後続の制御入力により、ストレージループが負の状態とヌル状態との間で交互に繰り返す(412)。
【0019】
図4Bは、一連のパルスを、負電流状態とヌル電流状態との間で交互に繰り返すことから、正電流状態とヌル電流状態との間で交互に繰り返すことに変更する方法450を示し、図4Aに示される方法400から継続することができる。負の状態の間に、負のSFQ信号パルスがストレージループに入力される(414)。ストレージループ内の論理JJは、ストレージループ内の電流を消滅させるために負にトリガし(416)、それによって、ストレージループをヌル状態に戻す(418)。次の正の制御入力では、ストレージループが正の状態に移行され(420)、その後、後続の制御入力により、ストレージループがヌル状態と正の状態との間で交互に繰り返す(422)。
【0020】
上述した説明は、本発明の例である。当然ながら、本発明を説明する目的で考えられるすべての構成要素または方法の組み合わせを説明することは不可能であるが、当業者は、本発明の多くのさらなる組み合わせおよび置換が可能であることを認識するであろう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲を含む本出願の範囲内にあるすべてのそのような変更、修正、および変形を包含することを意図している。さらに、開示または請求項が「1つの」、「第1の」、または「別の」要素、またはそれらの同等物を記載する場合、1つまたは複数のそのような要素を含むと解釈されるべきであり、2つ以上のそのような要素の要求も除外もされない。本明細書で使用する場合、「含む」という用語は、含むがこれに限定されないことを意味し、「含んでいる」という用語は、含んでいるがこれに限定されないが含むことを意味する。「~に基づく」という用語は、少なくとも部分的に基づくことを意味する。
以下に、上記実施形態から把握できる技術思想を付記として記載する。
[付記1]
回路であって、
入力ノードに接続された制御入力線と、
回路接地と前記入力ノードとの間に接続された制御ジョセフソン接合(JJ)と、
前記入力ノードと出力ノードとの間に接続されたストレージインダクタと、
前記回路接地と前記出力ノードとの間に接続された論理JJと、前記制御JJ、前記ストレージインダクタ、および前記論理JJは、ストレージループを形成し、
前記出力ノードに接続された信号入力線と、
前記出力ノードに接続された出力線とを備え、
前記制御JJおよび前記ストレージインダクタは、前記制御入力線を介して供給される制御入力の一方向のフローを供給するようにサイズが設定されている、回路。
[付記2]
前記ストレージループは、正電流、負電流、または無電流をそれぞれ格納する前記ストレージループに基づいて、正バイアス、負バイアス、または無バイアスのいずれかを前記論理JJに選択的に印加するように構成される、付記1に記載の回路。
[付記3]
前記信号入力線上に入力がない場合、前記ストレージループは、電流が前記ストレージループに本質的に流れない第1の安定状態と、1つのΦ0相当の電流が前記ストレージループ内に流れる第2の安定状態とを含む2つの安定状態を有する、付記1に記載の回路。
[付記4]
前記信号入力線に正のSFQパルスが供給されると、前記ストレージループは、Φ0相当の電流が前記ストレージループ内に流れる第3の安定状態を獲得する、付記3に記載の回路。
[付記5]
前記制御入力線に供給される交互入力によって前記ストレージループ内に交互安定状態が誘導される場合、
前記ストレージループが正の電流を格納している間に前記信号入力線上に正のSFQパルスを供給することにより、前記ストレージループが正の電流状態とヌル電流状態との間で交互に繰り返すことから負の電流状態と前記ヌル電流状態との間で交互に繰り返すことに変更し、
前記ストレージループが負の電流を格納している間に前記信号入力線上に負のSFQパルスを供給することにより、前記ストレージループが前記負の電流状態と前記ヌル電流状態との間で交互に繰り返すことから前記正の電流状態と前記ヌル電流状態との間で交互に繰り返すことに変更するように構成されている、付記1に記載の回路。
図1
図2
図3
図4