(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】通信装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 74/02 20090101AFI20221130BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20221130BHJP
H04W 52/02 20090101ALI20221130BHJP
【FI】
H04W74/02
H04W84/12
H04W52/02
(21)【出願番号】P 2021123562
(22)【出願日】2021-07-28
(62)【分割の表示】P 2017085613の分割
【原出願日】2017-04-24
【審査請求日】2021-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大内 雅智
【審査官】長谷川 未貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-093441(JP,A)
【文献】国際公開第2016/123395(WO,A1)
【文献】Hanseul Hong (Yonsei Univ.),MU-RTS/CTS for TWT Protection,IEEE 802.11-16/0353r2 ,IEEE,2016年03月16日,<URL:https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/16/11-16-0353-02-00ax-mu-rts-cts-for-twt-protection.pptx>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
DB名 3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセスポイントとして機能する通信装置であって、
他の通信装置を通信可能状態で動作させるためのスケジュールの情報であって、前記通信装置によって送信されるTWT IE(Target Wake Time Information Element)に含まれる前記スケジュールの前記情報に従って動作可能な第1の他の通信装置と通信し、前記スケジュールの前記情報に従って動作することができない第2の他の通信装置と通信
する通信手段と、
前記情報を含んだ前記TWT IEが送信された場合に、前記スケジュールに従って前記第1の他の通信装置を通信可能状態で動作させている期間の少なくとも一部において前記第2の他の通信装置による無線信号の送信を制限するためのCTS(Clear To Send) to selfフレームを
、前記第1の他の通信装置がDoze状態である期間内に送信するように
前記通信手段を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記通信装置は、IEEE802.11規格に準拠した通信を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記第2の他の通信装置による前記無線信号の前記送信は、NAV(Network Allocation Vector)を設定することにより制限される、
ことを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記NAVは、前記通信可能状態への遷移期間を少なくとも含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記スケジュールの前記情報は、前記通信可能状態へ遷移するタイミングの情報を含む、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記TWT IEはBeaconに含まれる、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記通信可能状態は、アクティブ状態である、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項8】
前記第1の他の通信装置は、IEEE802.11ax規格に準拠し、前記第2の他の通信装置は、IEEE802.11ax規格に準拠していない、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項9】
アクセスポイントとして機能する通信装置によって実行される制御方法であって、
他の通信装置を通信可能状態で動作させるためのスケジュールの情報であって、前記通信装置によって送信されるTWT IE(Target Wake Time Information Element)に含まれる前記スケジュールの前記情報に従って動作可能な第1の他の通信装置と通信
ように制御する第1の通信制御工程と、
前記スケジュールの前記情報に従って動作することができない第2の他の通信装置と通信する
ように制御する第2の通信制御工程と、
前記情報を含んだ前記TWT IEが送信された場合に、前記スケジュールに従って前記第1の他の通信装置を通信可能状態で動作させている期間の少なくとも一部において前記第2の他の通信装置による無線信号の送信を制限するためのCTS(Clear To Send) to selfフレームを
、前記第1の他の通信装置がDoze状態である期間内に送信する
ように制御する第3の通信制御工程と、
を
有することを特徴とする制御方法。
【請求項10】
コンピュータを請求項1から8のいずれか1項に記載の通信装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信の干渉抑制制御に関する。
【背景技術】
【0002】
無線LANにおける端末装置の省電力化のため、信号の送受信の必要がない端末装置をできるだけスリープ状態に保つ技術が検討されている。引用文献1には、アクセスポイントが、管理する無線チャネルのアイドルタイミングを検索しておき、端末装置との間で無線リンクを確立する際に、その無線端末にアイドルタイミングを通知する技術が記載されている。
【0003】
また、近年、無線媒体の有効利用を目指すIEEE802.11ax規格がドラフト規格として発行されており、本規格では、端末装置の省電力化のために、TWT(Target Wake Time)に基づく手順が提案されている。この手順は、端末装置が起動すべき時刻(TWT)をアクセスポイントが指定し、端末装置は、通知されたTWTに従って起動して、起動している間に信号の送受信を行う。これにより、端末装置は、TWTまでの期間においてスリープ状態(Doze状態)へと移行することができ、消費電力を低減することができる。なお、IEEE802.11ax規格では、アクセスポイントから複数の端末装置に対する個別のデータ信号の一斉送信、又は、複数の端末装置から1つのアクセスポイントへの信号の一斉送信、すなわちマルチユーザ通信を可能とすることが予定されている。このようなマルチユーザ通信は、例えば、周波数軸上での多重を行うOFDMAや、空間軸上での多重を行うMU-MIMOを用いて行われうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
IEEE802.11ax規格に対応する第1の種類の端末装置は、アクセスポイントから送信されたTWTを指定する信号を解釈し、その指定されたTWTに従って動作することができる。一方、IEEE802.11ax規格に対応していない第2の種類の端末装置は、アクセスポイントから送信されたTWTを指定する信号を解釈することができない。この結果、第2の種類の端末装置は、第1の種類の端末装置が起動するタイミングを認識することができず、送信した信号が、第1の種類の端末装置が通信を行う際の制御信号やデータ信号に対して干渉を及ぼしてしまいうる。このとき、例えば複数の第1の種類の端末装置に所定の信号を一斉送信させるためのトリガ信号に対して干渉が発生すると、その所定の信号の送信が行われなくなりうる。そして、この結果、例えばトリガ信号の再送が発生し、また、端末装置がスリープ状態へ移行できなくなったりしうる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、端末装置の特性に応じて適切な通信可能期間を設定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る通信装置は、アクセスポイントとして機能する通信装置であって、他の通信装置を通信可能状態で動作させるためのスケジュールの情報であって、前記通信装置によって送信されるTWT IE(Target Wake Time Information Element)に含まれる前記スケジュールの前記情報に従って動作可能な第1の他の通信装置と通信し、前記スケジュールの前記情報に従って動作することができない第2の他の通信装置と通信する通信手段と、前記情報を含んだ前記TWT IEが送信された場合に、前記スケジュールに従って前記第1の他の通信装置を通信可能状態で動作させている期間の少なくとも一部において前記第2の他の通信装置による無線信号の送信を制限するためのCTS(Clear To Send) to selfフレームを、前記第1の他の通信装置がDoze状態である期間内に送信するように前記通信手段を制御する制御手段と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、端末装置の特性に応じて適切な通信可能期間を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】アクセスポイントのハードウェア構成例を示す図である。
【
図3】アクセスポイントの機能構成例を示す図である。
【
図4】TWT(Target Wake Time)に基づく通信制御の手順を示す図である。
【
図5】処理例1に係るシステムの処理の流れの概要を示す図である。
【
図6】処理例1におけるアクセスポイントの処理の流れの例を示す図である。
【
図7】PSMP(Power Save Multi-Poll)に基づく通信制御の手順を示す図である。
【
図8】処理例2に係るシステムの処理の流れの概要を示す図である。
【
図9】処理例2におけるアクセスポイントの処理の流れの例を示す図である。
【
図10】処理例3に係るシステムの処理の流れの概要を示す図である。
【
図11】処理例3におけるアクセスポイントの処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
(システムの構成)
図1に、本実施形態に係る無線通信システムの例を示す。本無線通信システムは、アクセスポイント(AP)101、及び、無線端末102~104を含んで構成される。なお、AP101及び無線端末102~104は、IEEE802.11規格のいずれかに準拠する無線通信装置であるが、無線端末104はIEEE802.11ax規格に準拠しておらず、他の装置はIEEE802.11ax規格に準拠しているものとする。なお、AP101は、例えば、有線接続により、インターネット105等と接続されうる。
【0012】
本実施形態では、AP101は、IEEE802.11ax規格に従って動作可能な複数の無線端末102~103との間で、TWT(Target Wake Time)に基づく省電力処理を実行可能であるものとする。この処理については後述する。そして、AP101は、このTWTに基づく処理に係る通信に対して、IEEE802.11ax規格に準拠していない無線端末104が干渉することのないような処理を実行する。一例において、AP101は、無線端末102~103がスリープ(Doze)状態にある間に無線端末104の通信が行われるように、無線端末104の通信制御を行う。
【0013】
このために、AP101は、例えば、無線端末102~103との間の通信を行う期間において無線端末104が信号を送信しないように、CTS(Clear To Send)-to-selfフレームを送出する。なお、CTS-to-selfフレームで指定されるNAV(Network Allocation Vector)は、少なくとも無線端末102~103とAP101との間のマルチユーザ通信が行われる期間が完了するまでの期間となるように設定される。これによれば、無線端末104は、無線端末102~103とAP101との間のマルチユーザ通信が行われる期間においては信号を送信せず、無線端末102~103がDoze状態となってから信号を送信するようになる。このようにして、AP101は、IEEE802.11ax規格に対応していない無線端末からの信号が、IEEE802.11ax規格に係る信号に干渉する確率を低減させることができる。
【0014】
また、AP101は、PSMP(Power Save Multi Poll)の仕組みを用いて、無線端末104の通信を制御することもできる。AP101は、PSMPフレームにより、無線端末104との間で上りリンクと下りリンクとの通信が行われるべき期間を指定することができる。無線端末104は、PSMPフレームで指定された期間において通信を行い、それ以外の期間はDoze状態となりうる。AP101は、例えば、無線端末102~103との間でマルチユーザ通信を行う期間と異なる期間で通信を行うようにPSMPフレームを構成することで、無線端末104が送信した信号がマルチユーザ通信に干渉することを防ぐことができる。
【0015】
さらに、AP101は、各無線端末の媒体へのアクセス権を制御するためにCFP(Contention Free Period)を設定することができる。CFPは、AP101からのポーリングを受けた無線端末のみが媒体へのアクセス権を獲得する期間である。AP101は、これを用いて、無線端末102~103との間でマルチユーザ通信を行う期間と異なる期間をCFPとして設定し、無線端末104との通信を行う。これにより、AP101は、無線端末102~103がDoze状態にある間に無線端末104が通信を行うようにすることができ、無線端末104が送信した信号がマルチユーザ通信に干渉することを防ぐことができる。
【0016】
以下では、このような処理を実行するAP101の構成を説明した後に、以下の説明で用いられるTWTに基づく通信制御及びPSMPに基づく通信制御について簡単に説明し、その後にAP101が実行する処理の例について説明する。なお、無線端末102~103は、IEEE802.11ax規格に準拠した通信機能を有する一般的な無線LAN端末であるため、ここでは、その構成については詳細に説明しない。また、無線端末104も、例えばIEEE802.11axとは異なるIEEE802.11のいずれかの規格に準拠した通信機能を有する一般的な無線LAN端末であるため、ここでは、その構成については詳細に説明しない。ただし、無線端末104は、IEEE802.11ax規格に係るトリガ信号等の少なくとも一部の制御信号を解釈できないものとする。なお、以下では、無線LAN端末を「STA」と呼ぶ場合がある。また、以下では、IEEE802.11ax規格が用いられることを前提として説明するが、これに限られない。すなわち、所定の規格に準拠する第1の端末装置と、その所定の規格の後継規格に準拠する第2の端末装置とが混在し、後継規格に係る制御信号を第1の端末装置が解釈できない場合に、同様の処理が実行されうる。この場合、以下では所定の機能や信号を、IEEE802.11規格に関する専門用語を用いて説明するが、その用語と同様の意義を有する別の機能や信号と置き換えて、本実施形態に係る技術が理解されるべきである。
【0017】
(装置構成)
図2は、本実施形態に係るAP101のハードウェア構成例を示す図である。AP101は、そのハードウェア構成として、例えば、記憶部201、制御部202、機能部203、入力部204、出力部205、通信部206及びアンテナ207を含む。
【0018】
記憶部201は、ROM、RAMの両方、または、それらのいずれか一方により構成され、後述する各種動作を行うためのプログラムや、無線通信のための通信パラメータ等の各種情報を記憶する。ここで、ROMは、Read Only Memoryの頭字語であり、RAMは、Random Access Memoryの頭字語である。なお、記憶部201として、ROM、RAM等のメモリの他に、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、DVDなどの記憶媒体が用いられてもよい。また、記憶部201は、複数のメモリ等によって構成されてもよい。
【0019】
制御部202は、CPU、または、MPUにより構成され、記憶部201に記憶されたプログラムを実行することにより、AP101全体を制御する。ここで、CPUはCentral Processing Unitの頭字語であり、MPUはMicro Processing Unitの頭字語である。なお、制御部202は、記憶部201に記憶されたプログラムとOSとの協働によりAP101全体を制御するようにしてもよい。ここで、OSはOperating Systemの頭字語である。また、制御部202は、マルチコア等の複数のプロセッサによって構成されてもよい。また、制御部202として、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)、ASIC(特定用途向け集積回路)等が用いられてもよい。また、制御部202は、機能部203を制御して、アクセスポイント機能、撮像や印刷、投影等の所定の処理を実行する。
【0020】
機能部203は、AP101が所定の処理を実行するためのハードウェアである。例えば、AP101が、アクセスポイント機能を有するカメラである場合、機能部203は撮像部であり、撮像処理を行う。また、例えば、AP101が、アクセスポイント機能を有するプリンタである場合、機能部203は印刷部であり、印刷処理を行う。また、例えば、AP101が、アクセスポイント機能を有するプロジェクタである場合、機能部203は投影部であり、投影処理を行う。機能部203が処理するデータは、記憶部201に記憶されているデータであってもよいし、後述する通信部206を介して他の装置と通信したデータであってもよい。
【0021】
入力部204は、ユーザからの各種操作の受付を行う。出力部205は、ユーザに対して各種出力を行う。ここで、出力部205による出力とは、画面上への表示や、スピーカーによる音声出力、振動出力等の少なくとも1つを含む。なお、タッチパネルのように入力部204と出力部205の両方を1つのモジュールで実現するようにしてもよい。
【0022】
通信部206は、(Wi-Fi規格等の)IEEE802.11シリーズに準拠した無線通信の制御や、IP通信の制御を行う。IPはInternet Protocolの頭字語である。また、通信部206はアンテナ207を制御して、無線通信のための無線信号の送受信を行う。AP101は通信部206を介して、画像データや文書データ、映像データ等のコンテンツを無線端末との間で通信することができ、また、AP101に接続している無線端末間の通信を中継することができる。なお、通信部206は、例えば有線通信機能を有し、インターネット等のネットワークに接続することによって、無線端末とネットワークとの間の通信を中継することができる。
【0023】
図3は、AP101の機能構成例を示す図である。AP101は、その機能構成として、例えば、無線LAN制御部301、11ax通信制御部302、及び非11ax通信制御部303を有する。なお、
図3に示す各機能は、例えば
図2の制御部202が記憶部201に記憶されたプログラムを実行することによって実現されうるが、通信制御用のチップ等、専用のハードウェアによって実現されてもよい。
【0024】
無線LAN制御部301は、AP101が無線LAN端末との通信を行う際の通信処理全体を制御する。11ax通信制御部302は、無線LAN端末がIEEE802.11ax規格に準拠する場合に、無線LAN制御部301がIEEE802.11ax規格で規定された手続によって通信を行うように制御を行う。非11ax通信制御部303は、無線LAN端末がIEEE802.11ax規格に準拠していない場合の無線LAN制御部301による通信を制御する。例えば、非11ax通信制御部303は、11ax通信制御部302が制御する通信に対して、IEEE802.11axに非対応の無線LAN端末が干渉を及ぼさないように、通信制御を行う。以下で説明する各処理例は、例えば非11ax通信制御部303によって実行される。
【0025】
(TWTに基づく通信制御)
続いて、
図4を用いて、IEEE802.11ax規格での採用が予定されているTWTに基づく通信制御の流れの例について説明する。なお、TWTは、各無線端末に対して個別に設定されうるが、以下では、複数の無線端末に共通のTWTが設定される場合の例について説明する。
【0026】
まず、IEEE802.11ax規格に対応している無線端末(STA-A)が、APに対して省電力のスケジュールを要求するために、TWT要求401(TWT req.)を送信する。そして、APは、TWT要求401を受信すると、TWT応答402(TWT resp.)を送信する。なお、TWT要求401からTWT応答402までの期間403は、TBTT negotiationの区間であり、この区間においてFirst TBTTとListen Intervalとが決定される。なお、TBTTは、Target Beacon Transmission Timeの頭字語である。First TBTTは、TWT応答402からTWT IE(Information Element)を含むBeacon407(報知信号)の送信の準備が開始されるまでの間隔404を示す。また、Listen Intervalは、TWT IEを含んだBeaconの送信間隔417である。ここで、
図4においては、Beacon426はTWT IEを含まず、Beacon407の次に送信されるTWT IEを含んだBeaconは、Beacon427であるものとする。この場合、Listen Intervalには、Beacon407の送信後から、Beacon427の送信開始までの期間が設定され、Beacon426についてはListen Intervalの設定において無視される。無線端末は、First TBTTによって、例えばTWT応答を受信した後に最初に送信されるTWT IEを含んだBeaconのタイミングを特定する。そして、無線端末は、さらに、Listen Intervalに従って、その後に周期的に送信される、TWT IEを含んだBeaconの送信タイミングを特定することができる。
【0027】
なお、STA-Aは、TWT応答402を受信すると、First TBTTで指定される最初のTWT IEを含んだBeaconの送信準備タイミングまでの間、Doze状態405(Sleep状態又は省電力状態とも呼ばれうる)に移行する。なお、STA-Bは、例えば、
図4の処理が開始される前にTWT要求をAPに送信しており、Listen Intervalに基づいて特定される、次のTWT IEを含んだBeaconの送信タイミングまでDoze状態406に滞在しているものとする。
【0028】
STA-A及びSTA-Bは、TWT IEを含んだBeacon407の送信準備が行われるタイミングで、Doze状態から、通信を行うことができるアクティブ状態へと移行し、Beacon407を待ち受ける。ここで、Beacon407の送信が完了した時刻をt0とする。
【0029】
ここで、Beacon407におけるTWT IEでは、Beacon407の送信直後から、APがポーリングを受け付けるためのTriggerフレーム413の送信準備までの時間間隔であるTWT1 408が指定される。ここで、このTWT1 408の終了時刻をt1とする。STA-A及びSTA-Bは、Beacon407を受信すると、Doze状態411及び412へと移行し、TWT1 408が終了したことに応じてアクティブ状態へと戻る。そして、APは、TWT1 408の終了後に、STA-A及びSTA-Bにポーリングフレームを送信させるためのTriggerフレーム413を送信する。STA-A及びSTA-Bは、このTriggerフレーム413を受信すると、それぞれ、省電力状態でのポーリング信号であるPS-Pollフレーム414及び415を送信する。なお、PS-Poll414及び415は、Triggerフレーム413を契機として、STA-A及びSTA-Bから同時に送信される。なお、複数のSTAからの信号は、直交周波数分割多元接続(OFDMA)や、上りリンクマルチユーザMIMO(UL MU-MIMO)によって、周波数領域や空間領域において多重化されて送信されうる。APは、STA-A及びSTA-Bからのポーリング信号を受信すると、これらの信号に対して同時に肯定応答を返すために、マルチステーション-ブロックACK416(M-BA)を送信する。このM-BAの送信終了時刻をt2とする。なお、t0からt2までの期間410は、トリガに基づいて通信可能な期間(Trigger-enabled TWT SP(Service Period))である。Trigger-enabled TWT SPは、例えば、Beacon407のTWT IEによって指定され、STA-A及びSTA-Bは、TWT1の後、この期間の満了まではアクティブ状態を維持しうる。
【0030】
また、Beacon407におけるTWT IEでは、Beacon407の送信直後から、下りリンクのマルチユーザパケット(DL MU PPDU421)の送信準備が行われるまでの時間間隔であるTWT2 409も指定される。STA-A及びSTA-Bは、M-BA416の受信後、再度Doze状態418及び419へと移行し、TWT2 409の終了時刻t3において、アクティブ状態に戻る。APは、DL MU PPDU421の送信準備が完了すると、そのパケットをSTA-A及びSTA-Bに対して送信する。STA-A及びSTA-Bは、このDL MU PPDU421の受信に成功すると、ブロックACK(BA)をAPに対して送信する。ブロックACKについては、周波数領域又は空間領域で多重化されうるが、内容は従来の無線LANで用いられるブロックACKと同様であるため、説明を省略する。なお、このDL MU PPDU421が送信され、BA422及び423が送信される期間420は、Beacon407のTWT IEによっては報知されない期間であり、Unannounced TWT SPと呼ばれる。なお、期間420の終了時刻をt4とする。STA-A及びSTA-Bは、期間420の終了後、次のTWT IEを含んだBeacon427の送信タイミング(又はその送信の準備開始タイミング)まで、Doze状態424及び425に遷移する。
【0031】
このように、IEEE802.11axに対応した複数の無線端末は、APとのTWTに関するネゴシエーションを行うことによる省電力と、Triggerによる効率的な上り方向での同時の信号送信とを達成することができる。
【0032】
なお、IEEE802.11ax規格に対応していない端末は、これらのTriggerフレーム413や、PS-Poll414及び415、M-BA416の継続時間を、それらのフレームの情報要素から把握することができない。このため、このようなネットワークにIEEE802.11axに非対応のSTA-Cが加わって、Triggerフレームに干渉する信号を送信してしまう場合がありうる。
【0033】
APは、このような干渉の発生を防ぐために、IEEE802.11ax規格に従って動作する無線端末(STA-A及びSTA-B)がDoze状態である間に、IEEE802.11axに対応していない無線端末(STA-C)との間の通信を行う。このために、APは、IEEE802.11axに対応していない無線端末が、IEEE802.11ax規格に従って動作する無線端末がDoze状態ではない間に信号を送信しないように所定の信号を送信する。以下では、このような処理について、いくつかの例を用いて説明する。
【0034】
<処理例1>
本処理例では、APは、CTS-to-selfを用いて、IEEE802.11axに対応していない無線端末(STA-C)に送信禁止期間(NAV)を設定させ、IEEE802.11ax規格に従って動作する無線端末の通信への干渉が生じるのを防ぐ。この処理について、
図5を用いて説明する。なお、
図5では、参照番号が付された点以外は
図4と同様である。
【0035】
なお、APからSTA-Cへの通信については、APは、STA-A及びSTA-BがDoze状態にある期間を認識しているため、その期間において信号を送信することができる。なお、STA-Cは、APから無線信号を受信した場合、それに対する応答(ACK)を送信しうる。このため、APは、例えば、STA-A及びSTA-BがDoze状態にある時刻t0から時刻t1までの期間の長さが、下りリンクの信号の送信と応答の受信が行われるのに十分な長さである場合に、下りリンクの信号を送信するように判定しうる。なお、APは、例えばSTA-Cに対して送信すべきデータがバッファに蓄積されたことに応じて、上述の判定や下りリンク信号の送信を行ってもよい。なお、
図5では、STA-A及びSTA-BがDoze状態にある期間のうち時刻t4から時刻t5の期間において、APが下りリンク信号505をSTA-Cへと送信する例を示している。ここで、時刻t5は、次のTWT IEを含んだBeacon427の送信開始時刻である。
【0036】
APは、STA-A及びSTA-Bとの通信の間に、STA-Cに上りリンク信号を送信させないようにするために、CTS-to-self501を送信し、周囲に存在するTWTに基づいて動作しない無線端末による信号の送信を停止させる。なお、このCTS-to-self501の送信終了時刻をt6とする。このとき、APは、時刻t2においてSTA-A及びSTA-BがDoze状態に移行するため、時刻t2までの期間をNAV期間502aとさせるように、送信禁止区間の長さをt2-t6のように設定しうる。また、APは、時刻t4においてSTA-A及びSTA-BがDoze状態に移行するため、時刻t4までの期間をNAV期間502bとさせるように、送信禁止区間の長さをt4-t6のように設定しうる。なお、APは、TWT IEを含んだBeacon407を送信する際に時刻t1~t5を決定することができるため、送信禁止区間の長さであるt2-t6やt4-t6を適切に決定することができる。STA-Cは、NAV期間502aを設定した場合、STA-A及びSTA-BがDoze状態にある時刻t2から時刻t3の期間において、上りリンク信号503をAPへと送信する。一方、STA-Cは、NAV期間502bを設定した場合、STA-A及びSTA-BがDoze状態にある時刻t4から時刻t5の期間において、上りリンク信号504をAPへと送信する。なお、APは、これらの上りリンク信号を受信すると、応答信号(ACK)をSTA-Cへと送信する。
【0037】
なお、STA-A及びSTA-Bは、TWT1(時刻t0から時刻t1まで)の期間は、Doze状態に遷移しているため、CTS-to-selfによるNAVの更新を行わない。また、STA-A及びSTA-Bは、CTS-to-selfを受信したとしても、Triggerフレーム413を受信することによって、その後の上りリンク信号の送信動作を実行することができる。
【0038】
図6に、STA-Cの上りリンクでの通信に関してAPが実行する処理を示す。なお、
図6は、STA-A及びSTA-Bとの通信等、STA-Cの通信以外の事項については説明を簡単にするために省略している。また、APは、上述のように、下りリンク信号については、STA-A及びSTA-BがDoze状態である間に送信することが可能である。
【0039】
本処理では、APは、まず、TWT IEを含んだBeacon407を生成した際に決定した時刻t1~t5から、STA-A及びSTA-BがDoze状態に移行する時刻t2~時刻t3の期間の長さが、上りリンク通信を行うのに十分であるかを判定する。すなわち、APは、t3-t2が、上りリンク通信においてSTA-Cの1回の送信権時間(TXOP)とそれに対する応答信号(ACK)の送信に要する時間との和である所定値以上であるか否かを判定する(S601)。なお、この判定は、例えばBeacon407の生成時やBeacon407の送信後に行われうる。また、APは、例えば、まず、STA-Cに宛てて下りリンクで送信すべきデータが存在するかを判定し、そのようなデータが存在する場合にそのデータを送信してから、上述の判定を行ってもよい。また、APは、そのようなデータが存在する場合に、下りリンクデータの送信とその応答の受信、及び後述するCTS-to-selfの送信を、時刻t0から時刻t1の間に完了することができる場合に、そのデータを送信するようにしてもよい。
【0040】
APは、t3-t2が上述の所定値以上であると判定した場合(S601でYES)、時刻t2から時刻t3の期間が、STA-Cがデータを送信するのに十分であると判定し、STA-Cが時刻t2までの期間をNAV期間として設定することを決定する。この場合、APは、CTS-to-selfに含めるべきDurationを、CTS-to-selfの送信完了時刻であるt6を用いて、t2-t6に設定する(S602)。そして、APは、このDurationを指定したCTS-to-selfを送出する(S604)。STA-Cは、このCTS-to-selfを受信すると、t2-t6の長さのNAV期間を設定し、その期間が経過するまでは信号の送信を行わない。この結果、STA-Cは、NAV期間が満了する時刻t2の後に(S605でYES)、上りリンク信号を送信することとなる。APは、この上りリンク信号を受信すると(S606)、応答信号を送信し(S607)、処理を終了する。一方、APは、t3-t2が上述の所定値より小さいと判定した場合(S601でNO)、時刻t2から時刻t3の期間が、STA-Cがデータを送信するのに不十分であると判定し、STA-Cが時刻t4までの期間をNAV期間として設定することを決定する。すなわち、APは、DL MU PPDU421の送信の完了後の、相対的に長い期間を通信に確保することができる時刻t4から時刻t5の期間に、STA-Cにデータの送信権を与えることを決定する。この場合、APは、CTS-to-selfに含めるべきDurationを、t4-t6に設定する(S603)。その後の処理は、上述のS604~S607と同様である。これにより、STA-Cは、このCTS-to-selfを受信してt4-t6の長さのNAV期間を設定し、その期間が経過するまでは信号の送信を行わず、時刻t4の後に、上りリンク信号を送信することとなる。
【0041】
なお、APは、例えば時刻t4から時刻t5の期間において、STA-Cに対して送信すべき下りリンクデータが存在する場合、そのデータの送信とそれに対する応答の受信とを行うこともできる。APは、この下りリンクのデータの送信等を、例えば、STA-Cからの上りリンク信号の受信及びそれに対する応答の送信の後に実行しうる。
【0042】
このように本処理例では、IEEE802.11規格シリーズのいずれかに準拠している無線端末であれば解釈可能なCTS-to-selfを、通信制御に用いる。これにより、IEEE802.11ax等の新しい規格の信号を解釈できない無線端末が、その新しい規格における通信へ干渉することを防ぐことが可能となる。
【0043】
<処理例2>
本処理例では、APは、PSMP(Power Save Multi Poll)を用いて、IEEE802.11axに対応していない無線端末(STA-C)が通信を行うタイミングを制御する。
【0044】
まず、PSMPの手順について、
図7(A)及び
図7(B)を用いて説明する。PSMPでは、APは、上りリンク及び下りリンクの通信期間を規定するためのPSMPフレームを送信する。
図7(A)は、PSMPフレーム701の例を示している。
図7(B)は、PSMPフレームを用いた通信制御の流れの例を示している。
【0045】
PSMPフレーム701において、STA_INFO Type702は、このPSMPフレーム701の用途、すなわち、ブロードキャストやマルチキャストのためのものであるか、又は個別の無線端末に宛てられたものであるかを示すフィールドである。STA_INFO Type702には、例えば、ブロードキャストの場合に「0」、マルチキャストの場合に「1」、無線端末に個別に宛てられたものである場合には「2」が格納される。ここでは、PSMPフレーム701は、無線端末に個別に宛てられるものとし、このため、STA_INFO Type702には、値「2」が格納されるものとする。
【0046】
PSMP-DTT Start Offset703及びPSMP-DTT Duration704は、下りリンクの信号伝送のために設定された期間を示す情報である。PSMP-DTT Start Offset703には、PSMPフレーム701の送信が完了した時刻から、下りリンク伝送が開始される時刻までのオフセット値を示す値が格納される。すなわち、無線端末は、PSMPフレーム701の受信後、PSMP-DTT Start Offset703で示されるオフセット期間が経過した時点において下りリンク信号の受信が開始されると判定することができる。PSMP-DTT Duration704には、PSMP-DTT Start Offset703によって特定される時刻からの、下りリンクの通信が継続する期間の長さを示す値が格納される。ここで、
図7(B)のように、STA-D宛ての下りリンク伝送が、時刻t11から時刻t12の期間において行われる場合の例について説明する。なお、ここでのPDMPフレームの完了時刻はt10である。この場合、下りリンク伝送が開始されるまでの時間オフセットであるPSMP-DTT Start Offset703には、値「t11-t10」が格納される。一方、下りリンク伝送が開始されてから終了するまでの時間長であるPSMP-DTT Duration704には、値「t12-t11」が格納される。
【0047】
PSMP-UTT Start Offset706及びPSMP-UTT Duration707は、上りリンクの信号伝送のために設定された期間を示す情報である。これらの値は、PSMP-DTT Start Offset703及びPSMP-DTT Duration704と同様に設定される。すなわち、PSMP-UTT Start Offset706には、PSMPフレーム701の送信が完了した時刻から、上りリンク伝送が開始される時刻までのオフセット値を示す値が格納される。また、PSMP-UTT Duration707には、PSMP-UTT Start Offset706によって特定される時刻からの、上りリンクの通信が継続する期間の長さを示す値が格納される。したがって、
図7(B)のように、STA-Dからの上りリンク伝送が、時刻t13から時刻t14の期間において行われる場合、PSMP-UTT Start Offset706には、値「t13-t10」が格納される。また、PSMP-UTT Duration707には、値「t14-t13」が格納される。
【0048】
STA ID705は、このPSMPフレーム701の宛先の無線端末を識別するためのAID(Association Identifier)が格納される。Reserved708は、予約フィールドである。
【0049】
図7(B)において、まず、AP101は、上述のようにして各フィールドを定義したPSMPフレーム711を各STAに対して送信する。なお、ここでは、APは、STA-Dに対して、上述のように、時刻t11から時刻t12までの期間を下りリンク伝送に割り当て、時刻t13から時刻t14までの期間を上りリンク伝送に割り当てるものとする。また、APは、STA-Eに対して、これらの期間と重複しない期間を下りリンク伝送及び上りリンク伝送に割り当てるように、各フィールドの値を設定して、PSMPフレーム711を送信したものとする。
【0050】
APは、PSMPフレーム711で指定したSTA-D用の下りリンク期間(時刻t11から時刻t12)において、STA-Dに対する下りリンク信号712を送信する。このとき、STA-Eは、自身に割り当てられた通信期間ではないため、Doze状態713となる。その後、APは、PSMPフレーム711で指定したSTA-E用の下りリンク期間において、STA-Eに対する下りリンク信号714を送信する。この期間においては、STA-Dは、自身に割り当てられた通信期間ではないため、Doze状態715となる。
【0051】
その後、STA-Dは、PSMPフレーム711で指定されたSTA-D用の上りリンク期間(時刻t13から時刻t14)において、APに対する上りリンク信号716を送信する。なお、この期間においては、STA-Eは、自身に割り当てられた通信期間ではないため、Doze状態717となる。その後、STA-Eは、PSMPフレーム711で指定されたSTA-E用の上りリンク期間において、APに対する上りリンク信号718を送信する。なお、この期間においては、STA-Dは、自身に割り当てられた通信期間ではないため、Doze状態719となる。
【0052】
なお、STA-Dは、例えば、STA-Eに割り当てられた上りリンク伝送又は下りリンク伝送のための期間だけDoze状態となりうる。同様に、STA-Eは、STA-Dに割り当てられた上りリンク伝送又は下りリンク伝送のための期間だけDoze状態となりうる。
【0053】
続いて、本処理例に係る処理の流れについて
図8を用いて説明する。本処理例では、APは、PSMPフレームを用いて、STA-Cとの間の通信期間を特定する。なお、
図8では、参照番号が付された点以外は
図4と同様である。APは、STA-Cとの間での下りリンク及び上りリンクの通信を行う期間を決定し、その期間を指定するためのPSMPフレーム801を生成してSTA-Cへと送信する。なお、
図8においては、PSMPフレーム801が、TWT IEを含んだBeacon407の前に送信されているが、これに限定されない。ただし、APは、TWT IEによって指定される時刻t1~t5と、Beacon407の前にPSMPフレーム801を送信する場合にはBeacon407の送信が完了する時刻t0とを認識しているものとする。APは、例えば、STA-A及びSTA-BがDoze状態である、(a)時刻t0から時刻t1の期間、(b)時刻t2から時刻t3の期間、及び(c)時刻t4から時刻t5の期間のいずれかを、STA-Cとの間の通信のための期間として選択しうる。APは、例えば、上述の(a)~(c)の期間の中から、STA-Cへの下りリンク信号の送信と応答の受信、及び、STA-Cからの上りリンク信号の受信と応答の送信に要する時間長より長い期間を選択する。そして、APは、選択した期間に応じて、設定a~設定cのいずれかを設定して、PSMPフレーム801の各フィールドを設定する。
図8では、これらの期間(a)~(c)に対応する設定を設定a~cとして示している。STA-Cは、この設定に従って、下りリンク信号を受信してその応答を送信し、上りリンク信号を送信してその応答を受信する。例えば、STA-Cは、APから設定aを指定するPSMPフレーム801を受信した場合は、下りリンク信号802aをAPから受信し、上りリンク信号803aをAPへと送信する。同様に、STA-Cは、APから設定b(設定c)を指定するPSMPフレーム801を受信した場合は、下りリンク信号802b(信号802c)をAPから受信し、上りリンク信号803b(信号803c)をAPへと送信する。なお、APは、例えばSTA-A及びSTA-Bがマルチユーザ通信を行う期間を、STA-C以外の無線端末への通信に割り当てることを示すPSMPフレームを生成してSTA-Cへと送信するようにしてもよい。この場合、STA-Cは、STA-A及びSTA-Bが通信を行う期間が、自身に割り当てられた期間ではないと認識することができるため、Doze状態へと移行することができる。この結果、STA-Cは、STA-A及びSTA-Bが通信を行う期間において信号を送信することがなくなり、IEEE802.11axに関する信号に対する干渉を防ぐことができる。
【0054】
続いて、APが実行する処理について、
図9を用いて説明する。APは、まず、STA-A及びSTA-BがDoze状態に滞在する期間の長さと、STA-Cとの通信に要する期間の長さとに基づいて、STA-Cとの通信を行う期間を設定する(S901)。なお、ここでは、APは、例えば
図8の設定a~設定cの中から、適用すべき設定を選択して決定する。その後、APは、決定した設定と、PSMPフレームの送信終了タイミング(
図8における時刻t7)とに基づいて、PSMPフレーム内の各フィールドに値を格納して、STA-Cに対して送信する(S902)。APは、その後、設定した期間の開始時刻に達すると(S903)、設定した期間において、下りリンクでのデータ通信(S904及びS905)及び上りリンクでのデータ通信(S906及びS907)を実行する。
【0055】
本処理例では、PSMPを使用することによって、STA-Cから送信された信号が、APとSTA-A及びSTA-Bとの間の通信に関する信号(例えばTriggerフレーム413)に干渉することを防ぐことが可能となる。また、APは、PSMPフレームを用いることにより、例えばIEEE802.11ax規格に対応していない複数の無線端末と接続している場合に、これらの無線端末に対して下りリンクでの通信と上りリンクでの通信の期間をきめ細かく制御することができる。なお、APは、STA-CがPSMPに対応しているか否かを、STA-Cとの接続時の能力情報の交換によって確認することができる。このため、APは、STA-CがPSMPに対応している場合にのみ、本処理例の手法を用いるようにすることができる。なお、STA-CがPSMPに対応していない場合は、APは、例えば処理例1の方法や、後述の処理例3の方法を用いてSTA-Cとの通信を行うようにしうる。すなわち、APは、STA-Cの能力情報に応じて、STA-Cの通信可能な期間を適切に設定するために送信する信号の種類を変更することができる。
【0056】
<処理例3>
本処理例では、APは、CFP(Contention Free Period)を用いて、IEEE802.11axに非対応の無線端末(STA-C)からの信号が、IEEE802.11ax規格に従って動作する無線端末の通信へ干渉することを防ぐ。CFPは、制御局(この場合AP)が接続中の無線端末による媒体アクセスをコントロールする方式であり、APは、CFP中に無線媒体へのアクセス権を与える無線端末に対して、ポーリングフレーム(CF-Poll又はQoS CF-Poll)を送信する。無線端末は、CFP期間においては、ポーリングフレームを受信した場合にのみ、無線媒体へのアクセス権を獲得して、APへの信号伝送を行うことができる。CFPが用いられる場合、APは、例えばBeacon407や、各無線端末がAPを探索する際の探索要求信号に対する探索応答信号に、CFPを設定することを示す値や、CFPの継続時間を示す値を格納して送信することができる。なお、以下では、APは、Beacon407に、これらの情報を含めて送信するものとする。無線端末は、これらの信号を受信すると、信号内に格納されたCFPの継続時間を取得し、その期間をNAV期間として設定し、ポーリングフレームを監視することができる。この処理について、
図10を用いて説明する。なお、
図10では、参照番号が付された点以外は
図4と同様である。
【0057】
図10では、APは、例えば、Beacon407の送信前に、CFPの長さを決定する。例えば、APは、時刻t0から時刻t1までの期間に、又は時刻t2から時刻t3までの期間に、STA-Cの通信を完了することが可能であるか否かを判定する。そして、APは、例えば、時刻t0から時刻t1までの期間にSTA-Cの通信を完了することが可能であると判定した場合、STA-Cの通信を、その期間に実行することを決定する。同様に、APは、例えば、時刻t2から時刻t3までの期間にSTA-Cの通信を完了することが可能であると判定した場合、STA-Cの通信を、その期間に実行することを決定する。そして、APは、時刻t0から時刻t1までの期間にSTA-Cの通信を行うと決定した場合、例えば、CFPを時刻t0から時刻t2までの期間として定める。一方、APは、時刻t2から時刻t3までの期間にSTA-Cの通信を行うと決定した場合、例えば、CFPを時刻t0から時刻t4までの期間として定める。そして、APは、STA-Cとの通信を行うべき期間において、STA-Cに対してポーリングフレーム1002a又は1002bを送信し、STA-Cは、このポーリングフレームに応答して、上りリンク信号1003a又は1003bをAPへ送信する。なお、APは、時刻t0から時刻t1までの期間と時刻t2から時刻t3までの期間とのいずれにおいてSTA-Cの通信を行うかによらず、例えばCFPを時刻t0から時刻t4までの期間として定めてもよい。これによれば、例えば時刻t1から時刻t2までの期間又は時刻t3から時刻t4までの期間において、STA-Cが信号を送信しないようにすることができる。なお、
図10では、STA-Cが、CFPの間に上りリンク信号を送信する例を示しているが、この間にAPが下りリンク信号を送信してもよい。また、APは、下りリンクの信号を時刻t4から時刻t5までの期間において送信するようにしてもよい。
【0058】
続いて、
図11を用いて、本処理例におけるAPの処理の流れについて説明する。まず、APは、CFPを決定する(S1101)。APは、例えば時刻t0から時刻t1までの期間と時刻t2から時刻t3までの期間とのいずれにおいて、STA-Cに上りリンク信号を送信させるかに基づいて、時刻t2までの期間と時刻t4までの期間とのいずれかをCFPとして決定しうる。なお、APは、例えば、STA-Cが通信を行うべきタイミングによらず、時刻t4までの期間をCFPとして決定してもよい。この場合、APは、TWT IEの設定の際に時刻t4が決定されたことに応じて、CFPを決定することができる。その後、APは、例えばBeacon407によって、CFPをSTA-C(及び周囲の無線端末)に対して通知する(S1102)。その後、APは、STA-Cが通信すべき期間となったことに応じて(S1103でYES)、ポーリングフレームをSTA-Cへと送信し(S1104)、STA-Cから上りリンク信号を受信する(S1105)。そして、APは、その上りリンク信号に対して確認応答を送信し(S1106)、処理を終了する。
【0059】
このように、本処理例では、APは、ポーリングフレームを用いて、STA-Cの通信期間を制御することができる。これにより、STA-Cから送信された信号が、APとSTA-A及びSTA-Bとの間の通信に関する信号(例えばTriggerフレーム413)に干渉することを防ぐことが可能となる。なお、APは、STA-Cがポーリング(CF-PollまたはQoS CF-Poll)に対応しているか否かを、STA-Cとの接続時の能力情報の交換によって確認することができる。このため、APは、STA-Cがポーリングに対応している場合にのみ、本処理例の手法を用いるようにすることができる。なお、STA-Cがポーリングに対応していない場合は、APは、例えば処理例1の方法や処理例2の方法等を用いてSTA-Cとの通信を行うようにしうる。すなわち、APは、STA-Cの能力情報に応じて、STA-Cの通信可能な期間を適切に設定するために送信する信号の種類を変更することができる。
【0060】
以上のように、APは、IEEE802.11axのTWT等によってスケジュールに従ってスリープ状態に移行することが可能な第1の無線端末、及びそのスケジュールに従って動作することができない第2の無線端末と、通信期間を調整しながら通信する。APは、第1の無線端末がスリープ状態でない第1の期間において第2の無線端末が通信を行わせないための又は第1の無線端末がスリープ状態の第2の期間において第2の無線端末に通信を行わせるための所定の信号を第2の無線端末へ送信する。この所定の信号は、例えば、第1の期間をNAV期間に設定させるように構成されたCTS-to-selfフレーム、又は、第2の期間を通信期間として定めるPSMPフレームでありうる。また、所定の信号は、第1の期間を含む期間をCFPとすることを示すBeacon等の信号と、CFP中の第2の期間内において第2の無線端末へ送信されるポーリングフレームの組み合わせであってもよい。これにより、第2の無線端末が第1の期間において通信を行い、それにより第1の無線端末とAPとの通信に干渉することを防ぐことができる。なお、第1の無線端末は複数存在してもよく、第1の期間は(APからの制御信号の送信等を含む)上りリンクのマルチユーザ通信を行うための期間でありうる。この場合、上述の手法により、複数の無線端末に対して一斉に影響を及ぼしうる干渉が発生する確率を低減することが可能となる。
【0061】
<<その他の実施形態>>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0062】
301:無線LAN制御部、302:11ax通信制御部、303:非11ax通信制御部