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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】過給油防止バルブ
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/035 20060101AFI20221130BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20221130BHJP
   F02M 25/08 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
B60K15/035 A
B60K15/035 C
F02M37/00 301H
F02M37/00 301E
F02M37/00 311A
F02M25/08 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021513613
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(86)【国際出願番号】 JP2020015296
(87)【国際公開番号】W WO2020209193
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2019075599
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 晋一
(72)【発明者】
【氏名】平田 信弘
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特許第5805750(JP,B2)
【文献】韓国登録特許第10-1076231(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/035
F02M 37/00
F02M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクへの給油時に燃料液面が所定高さに達したときに燃料蒸気の排出口を閉じる満タン規制バルブと、前記燃料タンクの内部と該燃料タンクの外部に配設されたキャニスタとを連通させるエバポラインとを備えた燃料タンク装置の、前記エバポラインに配置される過給油防止バルブであって、
前記燃料タンク側に連通する第1開口、前記キャニスタ側に連通する第2開口、前記第1開口に設けられた第1弁座を有するハウジングと、
前記ハウジング内にスライド可能に配置されて、前記第1弁座に接離可能とされ、それ自体内部空間を有していると共に、前記第1開口側に連通する一端開口と、前記第2開口側に連通する他端開口と、該他端開口の前記内部空間側に形成された第2弁座とが設けられた親バルブと、
前記親バルブを前記第1弁座に向けて付勢する第1付勢手段と、
前記親バルブの内部空間にスライド可能に配置されて、前記第2弁座に接離可能とされた子バルブと、
前記親バルブの内部空間に配置されて、前記子バルブを前記第2弁座から離反する方向に付勢する第2付勢手段とを備え、
前記燃料タンク内の圧力により前記第1付勢手段の付勢力に抗して、前記親バルブが前記第1弁座に対して離反した状態から、再度第1弁座に当接したときの再閉弁圧は、前記燃料タンク内の圧力により前記第2付勢手段の付勢力に抗して、前記子バルブが前記第2弁座に当接した状態から、再度第2弁座に対して離反するときの再開弁圧よりも高くなるように、前記第1付勢手段と前記第2付勢手段との付勢力が設定されており、
前記親バルブが前記第1弁座に対して離反した状態で、前記第1開口及び前記第2開口は、前記ハウジングの内周と前記親バルブの外周との間の外部空間を介して、互いに連通するように構成されていることを特徴とする過給油防止バルブ。
【請求項2】
前記子バルブは、その先端側が前記第2弁座に接離可能となっており、
前記親バルブの、前記一端開口側の内周には、前記子バルブの基端側が当接する複数の子バルブ当接リブが設けられており、各前記子バルブ当接リブの間に、前記一端開口に連通する通気路が形成されている請求項1記載の過給油防止バルブ。
【請求項3】
前記第2付勢手段はコイルバネとなっており、
前記子バルブの基端側には、バネ支持座が設けられており、
前記コイルバネは、その他端が、前記親バルブの前記他端開口側の内側端面に支持されると共に、前記子バルブの外側に外装されて、一端が前記バネ支持座に支持される請求項1又は2記載の過給油防止バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクへの給油時において、満タン規制バルブによる満タン規制後の、追加給油を抑制するための、過給油防止バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の燃料タンクへの給油時に、満タン規制バルブが用いられている。ただし、通常の満タン規制バルブでは、満タン規制後に追加給油が可能となっているため、何回も追加給油をすると、燃料タンクに配設されたカットバルブ等が燃料に液没して、その機能を果たせなくなることがあった。そのため、満タン規制後の追加給油を抑制するための、過給油防止バルブが用いられている。
【0003】
従来のこの種の過給油防止バルブとして、下記特許文献1には、ハウジングと、ハウジング内にスライド配置され、タンク側に連通する第1開口に設けた第1弁座、及び、キャニスタ側に連通する第2開口に設けた第2弁座に接離可能とされ、第1開口側に連通する基端開口と、第2開口側に連通する先端開口と、基端開口に設けた第3弁座とを有する親バルブと、親バルブを第1弁座に向けて付勢する第1スプリングと、親バルブの内部空間にスライド可能に配置されて、第3弁座に接離可能とされた子バルブと、親バルブ内に配置されて、子バルブを第3弁座に向けて付勢する第2スプリングとを備え、親バルブの第2弁座に対する再開弁圧よりも、子バルブの第3弁座に対する開弁圧の方が高くなるように、第1スプリングと第2スプリングとの付勢力が設定されたものが記載されている。
【0004】
上記過給油防止バルブでは、満タン規制バルブが閉じて、燃料タンク内の圧力が一気に上昇すると、親バルブが押圧されて、第1スプリングの付勢力に抗してスライドし、その先端が第2弁座に当接する。その後、直ちに子バルブも押圧されて、第2スプリングの付勢力に抗してスライドして第3弁座から離れるので、燃料タンク内の燃料蒸気や空気等の気体が、親バルブの、基端開口や、内部空間、先端開口等を通過して、キャニスタ側配管に流入して、燃料タンク内の圧力が急降下する。その後、燃料タンク内の圧力が低下すると、親バルブが第2弁座に当接した状態で、子バルブが第2スプリングの付勢力により第3弁座に当接して、エバポラインが閉じられた状態となる。この場合でも各バルブの対応する弁座との接触面で多少の気体の流通が可能なため、圧力は徐々に低下して、給油管を上った燃料液面の降下速度は低下する。ここで追加給油を行うと、給油管内を燃料が再び上昇するが、そのタイミングが早いと、親バルブが第2弁座に当接し、子バルブが第3弁座に当接した状態を維持しているため、燃料液面の降下速度の低下状態が維持される。その結果、給油者は、追加給油の限界に達したことを認識でき、追加給油を停止することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5805750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、上記過給油防止バルブでは、燃料タンク内の圧力が一気に上昇して、親バルブの先端が第2弁座に当接した後、子バルブが第3弁座から離れることで、気体が、親バルブの内部空間等を流通して、キャニスタ側配管に流入することで、タンク内圧を急降下させるようになっている。しかし、気体は、親バルブの内部空間等を流通するので、その流路面積を十分に確保しにくく、タンク内圧を早く低下させるという点については、改善の余地がある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、給油時において、満タン規制バルブによる満タン規制後に、タンク内圧を迅速に低減させることができる、過給油防止バルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、燃料タンクへの給油時に燃料液面が所定高さに達したときに燃料蒸気の排出口を閉じる満タン規制バルブと、前記燃料タンクの内部と該燃料タンクの外部に配設されたキャニスタとを連通させるエバポラインとを備えた燃料タンク装置の、前記エバポラインに配置される過給油防止バルブであって、前記燃料タンク側に連通する第1開口、前記キャニスタ側に連通する第2開口、前記第1開口に設けられた第1弁座を有するハウジングと、前記ハウジング内にスライド可能に配置されて、前記第1弁座に接離可能とされ、それ自体内部空間を有していると共に、前記第1開口側に連通する一端開口と、前記第2開口側に連通する他端開口と、該他端開口の前記内部空間側に形成された第2弁座とが設けられた親バルブと、前記親バルブを第1弁座に向けて付勢する第1付勢手段と、前記親バルブの内部空間にスライド可能に配置されて、前記第2弁座に接離可能とされた子バルブと、前記親バルブの内部空間に配置されて、前記子バルブを前記第2弁座から離反する方向に付勢する第2付勢手段とを備え、燃料タンク内の圧力により前記第1付勢手段の付勢力に抗して、前記親バルブが前記第1弁座に対して離反した状態から、再度第1弁座に当接したときの再閉弁圧は、燃料タンク内の圧力により前記第2付勢手段の付勢力に抗して、前記子バルブが前記第2弁座に当接した状態から、再度第2弁座に対して離反するときの再開弁圧よりも高くなるように、前記第1付勢手段と前記第2付勢手段との付勢力が設定されており、前記親バルブが前記第1弁座に対して離反した状態で、前記第1開口及び前記第2開口は、前記ハウジングの内周と前記親バルブの外周との間の外部空間を介して、互いに連通するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、親バルブの第1弁座に対する再閉弁圧は、子バルブの第2弁座に対する再開弁圧よりも高くなるように、第1付勢手段と第2付勢手段との付勢力が設定されており、また、親バルブが第1弁座から離反した状態で、第1開口及び第2開口は、外部空間を介して互いに連通する構成となっている。そのため、親バルブが第1弁座から離反した状態から閉じる状態へと、親バルブがスライドする際(親バルブの再閉弁時)に、子バルブが第2弁座に当接した状態を維持しつつ、親バルブがスライドするので、外部空間が、第1開口及び第2開口に連通する状態が保持される。また、従来の過給油防止バルブ(特許第5805750号)のように、第2開口側に第2弁座を設けた構成に対して、この過給油防止バルブにおける第2開口側には、親バルブが接離するような第2弁座が設けられていないため、第2開口側における流路面積を大きく確保することができる。したがって、満タン規制バルブが閉じて、燃料タンク内の圧力が一気に上昇し、給油が停止した状態から、親バルブが第1付勢手段の付勢力に抗して第1弁座から離反する際には、燃料蒸気が、外部空間を介して、第1開口から大きな第2開口を通るため、燃料をエバポラインにスムーズに流出させることができ、燃料タンク内の圧力を、従来の過給油防止バルブに比べて、より早く低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の過給油防止バルブの一実施形態を示す分解斜視図である。
図2】同過給油防止バルブの親バルブを構成するバルブボディを示しており、(A)はその断面斜視図、(B)は正面図である。
図3】同過給油防止バルブにおいて、親バルブが第1弁座に当接し、子バルブが第2弁座から離反した状態(通常状態)の断面図である。
図4】同過給油防止バルブにおいて、親バルブが第1弁座に当接し、子バルブが第2弁座に当接した状態(両バルブ閉弁状態)の断面図である。
図5】同過給油防止バルブにおいて、親バルブが第1弁座から離反し、子バルブが第2弁座に当接した状態(親バルブ開弁状態)の断面図である。
図6図3のA-A矢示線における断面図である。
図7】同過給油防止バルブが適用される燃料タンクの概略構成図である。
図8】本発明の過給油防止バルブを用いた燃料タンクに給油を行う際の燃料タンク内圧の変化を示す図表である。
図9】過給油防止バルブの試験例を示しており、圧力とエアー流量との関係を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の過給油防止バルブの一実施形態について説明する。
【0012】
この実施形態の過給油防止バルブ10は、図7に示すような燃料タンク装置1に配置されるものとなっている。燃料タンク装置1は、燃料タンク2と、この燃料タンク2の内部に配設されると共に、燃料タンク2への給油時に燃料液面が所定高さに達したときに、燃料蒸気の排出口を閉じる満タン規制バルブ3と、燃料タンク2の内部と燃料タンク2の外部に配設されたキャニスタ4とを連通させるエバポライン5と、車両が急カーブして燃料液面が揺動したり、車両が横転したりしたときに、燃料の外部漏出を防ぐための、複数のカットバルブ6とを備えている。なお、複数のカットバルブ6は、燃料タンク2の内部において、満タン規制バルブ3のフロートが上昇して通気口を閉じる燃料液面よりも上方に配設されている(図7参照)。
【0013】
前記エバポライン5は、一端が前記満タン規制バルブ3に連結され、他端が前記キャニスタ4に連結されたバルブ連結管5aと、一端がバルブ連結管5aの途中に連結され、他端が過給油防止バルブ10に連結されたキャニスタ側配管5bと、一端が過給油防止バルブ10に連結されると共に複数本に枝分かれし、これらの端部が複数のカットバルブ6に連結されたタンク側配管5cとから構成されている。なお、タンク側配管5cやキャニスタ側配管5bの内径は、バルブ連結管5aの内径よりも細くなっている。
【0014】
前記満タン規制バルブ3及び前記カットバルブ6の内部には、図示しないフロートがスライド可能に配置されており、これらのフロートは常時は自重で下降するようになっている。そのため、満タン規制バルブ3とキャニスタ4とが連通すると共に、複数のカットバルブ6とキャニスタ4とが連通して、燃料タンク2内の燃料蒸気や空気等の気体がエバポライン5を通して、燃料タンク外のキャニスタ4へ排出されるようになっている。
【0015】
一方、給油管7から燃料が給油されて、燃料タンク2の燃料液面が上昇すると、満タン規制バルブ3に内蔵されたフロートが上昇して排出口を閉じ、燃料タンク2内の気体の、燃料タンク2外への排出が停止される。また、満タン規制バルブ3よりも上方のカットバルブ6に内蔵されたフロートは、満タン規制バルブ3のフロートが上昇する程度の燃料液面高さでは上昇しないようになっており、満タン規制バルブ3の排出口が閉塞されても、タンク側配管5c、過給油防止バルブ10、キャニスタ側配管5bを通って、燃料タンク2内の気体がキャニスタ4へ排出されるようになっている。
【0016】
そして、図1図3に示すように、この実施形態における過給油防止バルブ10は、第1開口24、第2開口33、第1弁座27を有するハウジング11と、該ハウジング11内にスライド可能に配置され、第1弁座27に接離可能とされると共に、内部空間R1を有し、第2弁座64を設けた親バルブ40と、親バルブ40内にスライド可能に配置された子バルブ70と、ハウジング11内に配置されて、親バルブ40を第1弁座27に向けて付勢する第1バネS1と、親バルブ40の内部空間R1に配置されて、子バルブ70を第2弁座64から離反する方向に付勢する第2バネS2とを有している。また、ハウジング11の内周と、親バルブ40の外周との間には、外部空間R2が形成されている。
【0017】
なお、第1バネS1及び第2バネS2は、いわゆるコイルスプリングであり、前記第1バネS1が本発明における「第1付勢手段」をなし、前記第2バネS2が本発明における「第2付勢手段」をなしている。
【0018】
前記ハウジング11は、前記タンク側配管5cに連結される第1ハウジング20と、この第1ハウジング20に組み付けられると共に、前記キャニスタ側配管5bに連結される第2ハウジング30とからなる。
【0019】
前記第1ハウジング20は、外周が円形状をなした基部21と、この基部21の周縁から延設した略円筒状をなした筒部22とを有する、略有底筒状をなしている。また、筒部22の、基部21とは反対側には、段部23aを介して拡径した拡径部23が形成されており、この拡径部23の内周に、開口部23bが設けられている。更に、基部21の中央には、タンク側に連通する第1開口24が形成されており、この第1開口24の外側周縁からは、タンク側配管5cに接続されるタンク側接続管25が延設されている。
【0020】
また、基部21の内面側であって、前記第1開口24の周縁からは、前記開口部23bに向けて拡径する、傾斜角度の異なる複数のテーパ面21a,21b,21cが形成されている。そして、第1開口24寄りのテーパ面21bと、それに隣接した開口部23b寄りのテーパ面21cとの境界部に、第1弁座27が設けられている。図3図5に示すように、この第1弁座27に、親バルブ40の後述する弁頭53が接離するようになっており、それによって第1開口24を開閉する。なお、この実施形態では、図3に示すように、第1弁座27に、親バルブ40の弁頭53が線接触して第1開口24を閉塞するようになっている。
【0021】
一方、第2ハウジング30は、第1ハウジング20の開口部23bを閉塞する蓋部31を有しており、この蓋部31の内面側であって外周縁部よりも内側からは、第1ハウジング20の拡径部23の開口部23bの内周に嵌合する、嵌合筒部32が突設されている。なお、図3に示すように、嵌合筒部32が開口部23bに嵌入された状態では、同嵌合筒部32の先端部は、第1ハウジング20の段部23aに対向して配置されて、段部23aによってカバーされるため、親バルブ40とは接離しない構成となっている。すなわち、嵌合筒部32は、親バルブ40に接離して通気を阻止する弁座としては機能しない。
【0022】
また、蓋部31の中央には、第2開口33が形成されており、この第2開口33の外側周縁からは、キャニスタ側配管5bに接続されるキャニスタ側接続管34が延設されている。更に図1図3に示すように、蓋部31の内側であって、嵌合筒部32の内周側には、第2開口33に対して放射状をなすように、複数のバネ支持リブ35が周方向に均等な間隔をあけて突設しており、隣接するバネ支持リブ35,35の間には、通気路R3が形成されている。
【0023】
そして、これらの複数のバネ支持リブ35の内側に、第1バネS1の一端が挿入されて、第1バネS1の傾きが抑制されると共に、該第1バネS1の一端が蓋部31の内面に当接して支持されるようになっている(図3参照)。なお、仮に、親バルブ40が、第1弁座27から最大限離れて、複数のバネ支持リブ35に当接しても、バネ支持リブ35,35の間には通気路R3が形成されているため、この通気路R3を気体が流通可能となる。すなわち、これらのバネ支持リブ35も、親バルブ40に接離して通気を阻止する弁座としては機能しない。
【0024】
以上のように、この過給油防止バルブ10においては、ハウジング11の第2開口33側には、親バルブ40が接離して、通気を阻止するような弁座は設けられていない構成となっている。
【0025】
上記ハウジング11内にスライド可能に配置され、第1弁座27に接離する親バルブ40は、内部空間R1を有していると共に、第1開口24側に連通する一端開口54と、第2開口33側に連通する他端開口63と、この他端開口63の内部空間R1側に形成された第2弁座64とが設けられている。図1図3に示すように、この実施形態の親バルブ40は、バルブボディ50と、このバルブボディ50に組付けられるバルブキャップ60とを有している。
【0026】
図2に示すように、前記バルブボディ50は、外周が円形状をなした基部51と、この基部51の周縁から延設した略円筒状をなした外筒部52とを有する、略有底筒状をなしている。また、外筒部52の外径は、第1ハウジング20の筒部22の内径よりも小さく形成されている。これによって、ハウジング11の筒部22の内周と、親バルブ40の外筒部52の外周との間に、上述した外部空間R2が形成されるようになっている。
【0027】
また、外筒部52の、基部51とは反対側には、開口部52aが形成されている。更に、基部51の外側からは、曲面状をなすように膨出し、ハウジング11側の第1弁座27に接離する、弁頭53が突設されている。この弁頭53が、ハウジング11の第1弁座27に接離して、第1開口24を開閉するようになっている(図3及び図5参照)。また、弁頭53の先端中央には、親バルブ40の内部空間R1と親バルブ40の外部とを連通させる、一端開口54が形成されている。なお、この弁頭53は、第1弁座27に当接した状態でも、第1弁座27と弁頭53との間に微小な隙間が生じるように形成されており、この隙間を通じて、気体が流通可能となっている。
【0028】
また、バルブボディ50の、一端開口54側の内周には、子バルブ70の基端側が当接する、複数の子バルブ当接リブ55が設けられている。図2(A),(B)を併せて参照すると、この実施形態のバルブボディ50の、基部51及び弁頭53の内周には、一端開口54の内径よりも大きい一定内径で形成された、リブ支持部55aが肉盛りして設けられている。そして、図2(A)に示すように、このリブ支持部55aの、一端開口54とは反対側の内周縁部から、基部51を介して、外筒部52の内周面に至るように、子バルブ当接リブ55が延設されている。また、図2(B)に示すように、この子バルブ当接リブ55は、一端開口54に対して放射状をなすように周方向に均等な間隔をあけて複数設けられている。なお、隣接する子バルブ当接リブ55,55の間には、一端開口54に連通する、通気路R4が形成されている。
【0029】
一方、図1に示すように、バルブキャップ60は、前記バルブボディ50の開口部52aを閉塞する蓋部61を有しており、この蓋部61の内面側であって外周縁部よりも内側からは、バルブボディ50の外筒部52の内周に嵌合する、略円筒状をなした内筒部62が突設されている。また、蓋部61の中央には、親バルブ40の内部空間R1と親バルブ40の外部とを連通させる、他端開口63が形成されている(図3参照)。更に、他端開口63の、内部空間R1側の内周縁部には、内部空間R1に向けて次第に拡径するテーパ状をなした、第2弁座64が形成されている。
【0030】
上記構成をなした親バルブ40の内部空間R1にスライド可能に配置される、子バルブ70は、先端側が弁頭72によって閉塞され、基端側が開口した有底円筒状をなしている。具体的には、この子バルブ70は、円筒状をなした筒部71を有しており、その延出方向先端側に、曲面状をなした弁頭72が設けられている。この弁頭72が、上記第2弁座64に接離して、他端開口63を開閉するようになっている(図3及び図5参照)また、筒部71の延出方向基端側には、段状をなしたバネ支持座73を介して、筒部71よりも拡径した円筒状をなした拡径部74が連設されている。
【0031】
そして、ハウジング11内に配置される第1バネS1は、その一端(キャニスタ側配管5b側の端部)が、第2ハウジング30の複数のバネ支持リブ35の内側に挿入されて、蓋部31の内面に支持されると共に、他端(タンク側配管5c側の端部)が、バルブボディ50の基部51の外面側であって、他端開口63の周縁部に支持されて、ハウジング11と親バルブ40との間で圧縮状態で保持されている。また、図3には、燃料タンク2内の圧力が所定値よりも低く、満タン規制バルブ3やカットバルブ6が開いた、通常の状態が示されているが、この状態では、第1バネS1によって、親バルブ40の先端側(弁頭53側)が第1弁座27に向けて付勢され、弁頭53が第1弁座27に常時当接するようになっている。
【0032】
一方、親バルブ40の内部空間R1に配置される第2バネS2は、一端(キャニスタ側配管5b側の端部)が、バルブキャップ60の蓋部61の内面側であって、第2弁座64の外周縁部に当接して支持されると共に、子バルブ70の筒部71の外側に外装されて、他端(タンク側配管5c側の端部)が、バネ支持座73に当接して支持されて、親バルブ40の内部空間R1内において圧縮状態で保持されている。また、図3に示される状態では、第2バネS2によって、子バルブ70の先端側(弁頭72側)が第2弁座64から離反する方向に付勢されるので、子バルブ70の先端側が、第2弁座64に対して常時は離反して、親バルブ40の他端開口63が開く構成となっている。
【0033】
なお、以下の説明では、図3に示すような、親バルブ40が第1弁座27に当接して第1開口24を閉じると共に、子バルブ70が第2弁座64から離反して他端開口63を開いた状態を、単に「通常状態」として説明する。
【0034】
また、図3に示す通常状態では、燃料タンク2内の燃料蒸気や空気等の気体は、タンク側配管5c、第1開口24、一端開口54、親バルブ40の内部空間R1、複数の子バルブ当接リブ55間の通気路R4、親バルブ40内周と子バルブ70外周との空間、第2弁座64、他端開口63、複数のバネ支持リブ35間の通気路R3、第2開口33、キャニスタ側配管5bを、順次流通して、キャニスタ4へと排出される。一方、燃料タンク外の外部空気等の気体は、上記の気体排出経路とは反対方向の経路(キャニスタ側配管5b、第2開口33、通気路R3、・・・、第1開口24、タンク側配管5c)を順次流通して、燃料タンク2内に導入される。
【0035】
また、この実施形態においては、燃料タンク2内の圧力により第1バネS1の付勢力に抗して、親バルブ40が第1弁座27に対して離反したときの開弁圧は、燃料タンク2内の圧力により第2バネS2の付勢力に抗して、子バルブ70が第2弁座64に当接したときの閉弁圧よりも高くなるように、第1バネS1と第2バネS2との付勢力が設定されている。
【0036】
より具体的には、図3に示す通常状態から、燃料タンク2内の圧力が上昇すると、図5に示すように、第1バネS1の付勢力に抗して、親バルブ40がスライドして第1弁座27から離反して第1開口24を開く。この際の圧力(親バルブ40が第1弁座27から離れる際の圧力)を、親バルブ40の開弁圧とする。また、図3に示す通常状態から、燃料タンク2内の圧力が上昇した場合も、第2バネS2の付勢力に抗して、子バルブ70がスライドして第2弁座64に当接して他端開口63を閉じる。この際の圧力(子バルブ70が第2弁座64に当接する際の圧力)を、子バルブ70の閉弁圧とする。
【0037】
そして、上述したように、親バルブ40の開弁圧は、子バルブ70の閉弁圧よりも高くなるように、第1バネS1と第2バネS2との付勢力が設定されている。その結果、図3に示す通常状態から、燃料タンク2内の圧力が上昇すると、親バルブ40よりも先に、子バルブ70が、第2バネS2の付勢力に抗してスライドして、第2弁座64に当接し、その後、親バルブ40が、第1バネS1の付勢力に抗してスライドして、第1弁座27から離反するようになっている。すなわち、子バルブ70が第2弁座64に当接して他端開口63を閉じた状態を維持しつつ、親バルブ40がスライドして第1弁座27から離反する。なお、燃料タンク2内の圧力上昇が急激な場合には、子バルブ70及び親バルブ40は、ほぼタイムラグなく両者ともスライドすることとなる。
【0038】
そして、この過給油防止バルブ10においては、親バルブ40が第1弁座27に対して離反した状態で、第1開口24及び第2開口33は、ハウジング内周と親バルブ外周との間の外部空間R2を介して、互いに連通するように構成されている。
【0039】
この実施形態では、上述したように、図3に示すような通常状態から、燃料タンク2内の圧力が上昇すると、図5に示すように、親バルブ40が第1弁座27から離反して第1開口24を開き、子バルブ70が第2弁座64に当接して他端開口63を閉じた状態となり、親バルブ40の内部空間R1での気体流通が阻止されて、第1開口24及び第2開口33が、ハウジング内周と親バルブ外周との間の外部空間R2を介してのみ、互いに連通することとなる。
【0040】
なお、以下の説明では、図5に示すような、親バルブ40が第1弁座27から離反して第1開口24を開くと共に、子バルブ70が第2弁座64に当接して他端開口63を閉じてた状態を、「親バルブ開弁状態」として説明する。
【0041】
そして、この過給油防止バルブ10においては、燃料タンク2内の圧力により第1バネS1の付勢力に抗して、親バルブ40が第1弁座27に対して離反した状態から、再度第1弁座27に当接したときの再閉弁圧は、燃料タンク2内の圧力により第2バネS2の付勢力に抗して、子バルブ70が第2弁座64に当接した状態から、再度第2弁座64に対して離反したときの再開弁圧よりも高くなるように、第1バネS1と第2バネS2との付勢力が設定されている。
【0042】
より具体的には、図5に示す親バルブ開弁状態から、燃料タンク2内の圧力が下降すると、第1バネS1の付勢力により、親バルブ40がスライドして第1弁座27に当接して第1開口24を閉じる。この際の圧力(親バルブ40が第1弁座27に当接する際の圧力)を、親バルブ40の再閉弁圧とする。また、図5に示す親バルブ開弁状態から、燃料タンク2内の圧力が下降すると、第2バネS2の付勢力により、子バルブ70がスライドして第2弁座64から離反した他端開口63を開く。この際の圧力(子バルブ70が第2弁座64から離反する際の圧力)を、子バルブ70の再開弁圧とする。
【0043】
そして、上述したように、親バルブ40の再閉弁圧は、子バルブ70の再開弁圧よりも高くなるように、第1バネS1と第2バネS2との付勢力が設定されている。その結果、図5に示す親バルブ開弁状態で、燃料タンク2内の圧力が下降すると、子バルブ70が第2弁座64に当接して他端開口63を閉じた状態に維持しつつ、親バルブ40がスライドして、図4に示すように、第1弁座27に当接して第1開口24を閉じる。そのため、親バルブ40が閉弁しようとする際のスライド途中において、子バルブ70が第2弁座64から離反して、他端開口63が開くことを阻止される。それによって、気体が親バルブ40の内部空間R1内を流通することを阻害して、第1開口24及び第2開口33が、外部空間R2を介してのみ互いに連通する状態が維持される。
【0044】
なお、図4に示す状態で、再び燃料タンク2内の圧力が上昇すると、子バルブ70が第2弁座64を閉じた状態に維持したまま、図5に示すように、親バルブ40がスライドして第1弁座27から離反する。この状態でも、第1開口24及び第2開口33が外部空間R2を介してのみ連通する状態が維持される。
【0045】
なお、以下の説明では、図4に示すような、親バルブ40が第1弁座27に当接して第1開口24を閉じると共に、子バルブ70が第2弁座64に当接して他端開口63を閉じて、両バルブ40,70が閉じた状態を、「両バルブ閉弁状態」として説明する。
【0046】
また、図4に示す両バルブ閉弁状態から、更に燃料タンク2内の圧力が下降して、第2バネS2の付勢力が打ち勝つと、第2バネS2の付勢力により、子バルブ70が第2弁座64から再び離反して、図3に示すような通常状態に戻ることとなる。
【0047】
なお、以上説明した過給油防止バルブにおいて、ハウジングや、親バルブ、子バルブの形状や構造としては、上記態様に限定されるものではない。
【0048】
次に、上記構成からなる過給油防止バルブ10の作用効果について、図8に示す、給油時における燃料タンク2の内部の圧力と時間経過との関係を示す図表を併せて参照して説明する。なお、図8の横軸には、図3図4図5のいずれの状態になるかについて、併記している。
【0049】
この実施形態における過給油防止バルブ10は、第1ハウジング20のタンク側接続管25に、タンク側配管5cが接続され、第2ハウジング30のキャニスタ側接続管34に、キャニスタ側配管5bが接続されることで、図8に示すように、燃料タンク装置1のエバポライン5に配置されるようになっている。
【0050】
また、過給油防止バルブ10は、満タン規制バルブ3のフロートが上昇しておらず、通気口が閉塞されていない状態では、図3に示すように、親バルブ40が第1弁座27に当接して第1開口24を閉じると共に、子バルブ70が第2弁座64から離反して他端開口63を開いた状態となっている。
【0051】
そして、燃料タンク装置1の給油管7の給油口7aに図示しない給油ガンを差し込んで、給油管7を通して燃料タンク2内に燃料を給油すると、燃料タンク2内の燃料液面Fが徐々に上昇する。すると、燃料タンク2内の燃料蒸気や空気等の気体が、満タン規制バルブ3及びバルブ連結管5aを通り、キャニスタ4へと排出される。
【0052】
また、この状態では、カットバルブ6に内蔵されたフロートも下降しているので、燃料タンク2内の気体は、カットバルブ6、タンク側配管5cを通った後、図3の矢印で示すように、過給油防止バルブ10の第1開口24、一端開口54、複数の子バルブ当接リブ55間の通気路R4、親バルブ40の内部空間R1、親バルブ40内周と子バルブ70外周との隙間、第2弁座64、他端開口63、複数のバネ支持リブ35間の通気路R3、第2開口33をそれぞれ通過し、更にキャニスタ側配管5b、バルブ連結管5a通ってキャニスタ4へと排出される。
【0053】
その後、燃料液面Fが上昇して、満タン規制バルブ3のフロートが浸漬して、フロートが上昇して排出口が閉じられると、満タン規制バルブ3の排出口から気体を排出できなくなる(図8の符号A1参照)。この状態でも、燃料タンク2内の気体は、カットバルブ6から、タンク側配管5c、過給油防止バルブ10、キャニスタ側配管5b、バルブ連結管5aを通ってキャニスタ4へ排出されるが、タンク側配管5cやキャニスタ側配管5bの管の内径が細く、また、過給油防止バルブ10等を通る通気抵抗によって、その流量はそれほど大きくできない。このため、燃料タンク2内に勢いよく流れ込む燃料によって、燃料タンク2内の圧力が一気に高まる(図8の符号A2参照)。その結果、燃料が給油管7を逆流して給油口7a側へと昇っていき、給油ノズルのセンサが燃料を検知して、給油を停止し(オートストップ等という)満タン規制がなされる。
【0054】
そして、この過給油防止バルブ10では、上記の満タン規制バルブ3の動作に対応して、次のように作動して過給油防止がなされるようになっている。
【0055】
すなわち、上記のように、満タン規制バルブ3のフロートが上昇して通気口を閉じて、燃料タンク2内の圧力が一気に高まると、図3の通常状態から親バルブ40が押圧される。このとき、この実施形態では、親バルブ40の開弁圧は、子バルブ70の閉弁圧よりも高くなるように、第1バネS1と第2バネS2との付勢力が設定されているので、まず、子バルブ70が、第2バネS2の付勢力に抗してスライドして第2弁座64に当接した後、親バルブ40が、第1バネS1の付勢力に抗してスライドして、第1弁座27から離反するか、或いは、子バルブ70及び親バルブ40が、ほぼタイムラグなく両者ともスライドする。それによって、図5に示すように、子バルブ70が第2弁座64に当接して他端開口63を閉じた状態で、親バルブ40が第1弁座27から離反した、親バルブ開弁状態となる。
【0056】
その結果、図5の矢印で示すように、燃料タンク2内の気体は、過給油防止バルブ10の第1開口24、ハウジング11内周と親バルブ40外周との間の外部空間R2、他端開口63、複数のバネ支持リブ35間の通気路R3、第2開口33をそれぞれ通過し、更にキャニスタ側配管5b、バルブ連結管5a通ってキャニスタ4へと排出される。その結果、燃料タンク2内の圧力の更なる上昇を防いで、給油口7aから燃料が溢れ出てしまうのを防止することができる。このときの燃料タンク2内の圧力変動が、図8の符号A2~A3の線で示されており、燃料タンク2内の圧力が急降下するようになっている。また、燃料タンク2内の圧力が低下する結果、給油管7を上がった燃料液面が次第に降下するようになっている。
【0057】
そして、この過給油防止バルブ10においては、上述したように、親バルブ40の再閉弁圧は、子バルブ70の再開弁圧よりも高くなるように、第1バネS1と第2バネS2との付勢力が設定されている。そのため、図5に示す親バルブ開弁状態から、燃料タンク2内の圧力が下降して、第1バネS1の付勢力が打ち勝つと、子バルブ70が第2弁座64に当接して他端開口63を閉じた状態に維持しつつ、親バルブ40がスライドして、図4に示すように、第1弁座27に再度当接して第1開口24を閉じて、両バルブ閉弁状態となり、親バルブ40と子バルブ70とによってエバポライン5が閉じられる。
【0058】
この場合でも、上述したように、弁頭53と第1弁座27との間の微小隙間を通じて、図4の矢印で示すように、気体が外部空間R2を通って、キャニスタ側配管5bへと流れ、バルブ連結管5aを通過してキャニスタ4へと排出されるので、燃料タンク2内の圧力が徐々に低下する。このときの燃料タンク2内の圧力変動が、図8の符号A3~A4の線で示されており、燃料タンク2内の圧力が、A2~A3で示す傾斜した線よりも、緩やかに減少するようになっている。その結果、給油管7内の燃料液面の降下速度が、図5の親バルブ開弁状態における降下速度よりも、低下することとなる。
【0059】
上記状態で追加給油を行おうとすると、給油管7内を燃料が再び上昇し、燃料が給油口7aに近づくので、操作者は給油を停止することとなる。この際の、給油管7内の燃料液面の降下速度の確認は、給油口7aから給油管7内の燃料液面を目視することで行うことができる。
【0060】
その後、図4の両バルブ閉状態から、追加給油により燃料タンク2内の圧力が再び上昇すると、子バルブ70を閉じたままの状態で親バルブ40が開いて、図5の親バルブ開弁状態となって、燃料タンク2内の圧力が下降する。その後、更に燃料タンク2内の圧力が上昇すると、図4の両バルブ閉状態から図5の親バルブ開弁状態となって、燃料タンク2内の圧力が少し低下し、また、図4の両バルブ閉状態となり、このような、図4に示す両バルブ閉状態と、図5に示す親バルブ開弁状態とが、交互に繰り返してなされる(図8のA4~A5に示すジグザグ線参照)。この際の、両バルブ閉状態(図4参照)と親バルブ開弁状態(図5参照)とが繰り返してなされる間は、給油管7内の燃料液面がほとんど降下しなくなる。その結果、給油作業者は、燃料タンク2内に燃料がほぼ満タンに給油されて、追加給油の限界に達していることを認識することができるので、追加給油を停止することとなり、給油作業者による追加給油を防止することができる。
【0061】
したがって、燃料タンク2内に燃料が規制高さ以上に充填されてしまって、カットバルブ6のフロートが液没して、エバポライン5が閉じたままとなる等といった不都合が生じるのを、防止することができる。
【0062】
その後、図8のA5~A6で示す線に示すように、燃料タンク2内の圧力が更に減少すしていき(この状態は図4の両バルブ閉状態となっている)、燃料タンク2の圧力が所定値以下となると、燃料タンク2内の圧力に第2バネS2の付勢力が打ち勝って、子バルブ70が第2弁座64から離反して(子バルブ70の再開弁)、親バルブ40が第1弁座27に当接して、再び、図3の通常状態に戻る。この際の、子バルブ70が再び開くタイミングが、図8の符号A6の箇所に示されている。
【0063】
すると、燃料タンク2内の気体は、再び、図3の矢印で示すように、第1開口24、一端開口54、複数の子バルブ当接リブ55間の通気路R4、親バルブ40の内部空間R1等を通じて、キャニスタ4へと排出されるので、図4の両バルブ閉弁状態における、弁頭53と第1弁座27との間の微小隙間を通じた気体の流通に比べて、燃料タンク2内の圧力は急激に低下して、通常状態に戻ることとなる。このときの燃料タンク2内の圧力変動が、図8の符号A6~A7で示す部分となっている。
【0064】
このように、本発明の過給油防止バルブ10により、追加給油時の燃料液面の降下速度を低下させ、作業者に追加給油の必要がないことを認識させて、過剰給油による不都合を回避させることができる。
【0065】
そして、この過給油防止バルブ10においては、親バルブ40の第1弁座27に対する再閉弁圧は、子バルブ70の第2弁座64に対する再開弁圧よりも高くなるように、第1バネS1と第2バネS2との付勢力が設定されており、また、親バルブ40が第1弁座27から離反した状態で、第1開口24及び第2開口33は、外部空間R2を介して互いに連通する構成となっている。また、ハウジング11の第2開口33側には、親バルブ40が接離して、通気を阻止するような弁座は設けられておらず、更に図3に示される通常状態では、第2バネS2によって、子バルブ70の先端側(弁頭72側)が第2弁座64から離反する方向に付勢されて、子バルブ70の先端側が、第2弁座64に対して常時は離反して、親バルブ40の他端開口63が開く構成となっている。
【0066】
そのため、図5の親バルブ開弁状態から図4の両バルブ閉弁状態へと親バルブ40がスライドする際に(親バルブ40の再閉弁時)、子バルブ70が第2弁座64から離反せず、子バルブ70によって第2弁座64が閉じた状態を維持しつつ、親バルブ40がスライドするので、気体が親バルブ40の内部空間R1内を流通せず、ハウジング11内周と親バルブ40外周との間の外部空間R2が、第1開口24及び第2開口33に連通する状態に保持されて、気体が外部空間R2を流通する態様に維持される。また、従来の過給油防止バルブ(特許第5805750号)のように、第2開口側に第2弁座を設けた構成に対して、この過給油防止バルブ10における第2開口33側には、親バルブ40が接離するような第2弁座が設けられていないため、第2開口33側における流路面積を大きく確保することができる。
【0067】
そのため、満タン規制バルブ3が閉じて、燃料タンク2内の圧力が一気に上昇し、給油が停止した状態から、親バルブ40が第1バネS1の付勢力に抗して第1弁座27から離反する際には、図5の矢印で示すように、燃料蒸気等の気体が、外部空間R2を介して、第1開口24から大きな第2開口33を通るため、気体をエバポライン5にスムーズに流出させることができ、燃料タンク2内の圧力を、従来の過給油防止バルブに比べて、より早く低減させることができる。
【0068】
なお、図8の符号Bは、従来の過給油防止バルブの、燃料タンク内の圧力が一気に上昇して、給油が停止した状態における、タンク内圧力の下降速度を表す線が示されているが、この線よりも、本発明の過給油防止バルブ10における、図8の符号A2~A3で示す傾斜した線の方が鋭角となっており、タンク内圧力の下降速度を高めることができる。
【0069】
このように、本発明の過給油防止バルブ10においては、従来の過給油防止バルブよりも、タンク内圧力の下降速度を高めることができるので、給油管7の給油口7aから燃料が溢れる(燃料の逆流)等といった事態を防止することができる。
【0070】
また、この実施形態においては、親バルブ40の、一端開口54の内周側には、子バルブ70の基端側が当接する複数の子バルブ当接リブ55が設けられているので、第2バネS2で付勢された子バルブ70の基端側を、複数の子バルブ当接リブ55によって支持されることとなり、図3に示すように、子バルブ70の先端側を、親バルブ40の第2弁座64から離反した状態に、安定して保持することができる。更に、各子バルブ当接リブ55の間には、一端開口54に連通する通気路R3が形成されているので、子バルブ70の基端側が複数の子バルブ当接リブ55に当接して支持された状態での、通気性を確保することができる。
【0071】
また、この実施形態において、図3~5に示すように、第2バネS2は、その他端が、親バルブ40の他端開口63側の内側端面に支持されると共に、子バルブ70の外側に外装されて、一端がバネ支持座73に支持されるので、第2バネS2の傾きを抑制することができ、所望の付勢力に精度良く設定しやすくなる。
【0072】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【実施例
【0073】
実施例、及び、比較例1~3の各過給油防止バルブについて、圧力に対するエアー流量の関係を測定した。
【0074】
(比較例1)
特許第5805750号に記載の発明と同様の構造をなした、比較例1の過給油防止バルブを製造した。なお、弁頭部(特許第5805750号の明細書中の符号「62」で示す部品)の先端開口径は2.8mmである。
【0075】
(比較例2)
弁頭部の先端開口径を3.2mmとした以外は、比較例1と同様の構造をなした、比較例2の過給油防止バルブを製造した。
【0076】
(実施例)
図1~6に示す過給油防止バルブと同様の構造をなす、実施例の過給油防止バルブを製造した。なお、図6に示すように、過給油防止バルブの軸方向に直交する所定断面における、ハウジング内周と親バルブ外周との間(ここでは、第1ハウジング20の筒部22の内周と、親バルブ40のバルブボディ50の外筒部52の外周との間)に形成された、外部空間R2の開口面積は55.228mm2となっており、比較例1や比較例2におけるバルブの弁頭部の先端開口径の、8.38mmに相当するものとなっている。
【0077】
(試験方法)
実施例、及び、比較例1,2の各過給油防止バルブのそれぞれについて、所定の試験用タンクにセットし、圧力を上昇させつつ、エアーを、タンク側の第1開口からキャニスタ側の第2開口へと流通するように、バルブ内に流通させて、圧力とエアー流量との関係を測定した。その結果が図9に示されている。
【0078】
(試験結果)
図9に示すように、比較例2の過給油防止バルブのように、比較例1の過給油防止バルブよりも、第2弁座の内径を大きくしたものについては、エアー流量が増大することが分かる。そして、実施例の過給油防止バルブは、比較例2の過給油防止バルブよりも、更にエアー流量が増大しており、外部空間による気体流通量増大の効果を実証できた。
【符号の説明】
【0079】
1 燃料タンク装置
2 燃料タンク
3 満タン規制バルブ
4 キャニスタ
5 エバポライン
5b キャニスタ側配管
5c タンク側配管
6 カットバルブ
7 給油管
10 過給油防止バルブ
11 ハウジング
20 第1ハウジング
24 第1開口
25 タンク側接続管
27 第1弁座
30 第2ハウジング
33 第2開口
34 キャニスタ側接続管
35 バネ支持リブ
40 親バルブ
50 バルブボディ
54 一端開口
55 子バルブ当接リブ
60 バルブキャップ
63 他端開口
64 第2弁座
70 子バルブ
73 バネ支持座
R1 内部空間
R2 外部空間
R3,R4 通気路
S1 第1バネ(第1付勢手段)
S2 第2バネ(第2付勢手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9