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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】モータの回転子構造及び永久磁石モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20221130BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K1/22 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021524457
(86)(22)【出願日】2019-09-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 CN2019103979
(87)【国際公開番号】W WO2020098339
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-06-16
(31)【優先権主張番号】201811351661.3
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512306405
【氏名又は名称】グリー エレクトリック アプライアンシーズ インク オブ ズーハイ
【氏名又は名称原語表記】GREE ELECTRIC APPLIANCES, INC. OF ZHUHAI
【住所又は居所原語表記】Qianshan Jinji West Road,Zhuhai, Guangdong, 519070, P.R. CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 敏
(72)【発明者】
【氏名】肖 勇
(72)【発明者】
【氏名】李 権鋒
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/169203(WO,A1)
【文献】特開2014-045609(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106208450(CN,A)
【文献】特表2002-540754(JP,A)
【文献】実開昭60-048371(JP,U)
【文献】国際公開第2013/114542(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/033863(WO,A1)
【文献】特開2010-094001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 21/00-21/48
H02K 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転子構造であって、
回転子鉄心(100)を含み、前記回転子鉄心(100)は、円周方向において複数の径方向スロット(110)が設けられ、隣接する2つの前記径方向スロット(110)の間に第1のフラックスバリアスロット(120)が設けられ、
各前記径方向スロット(110)に保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石が取り付けられ、前記保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石は前記回転子鉄心(100)の径方向に配置されており、前記保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石はともに前記回転子鉄心(100)の接線方向に沿って磁化され、前記保磁力の異なる2種類の永久磁石の間に第2のフラックスバリアスロット(130)が設けられ、
前記第2のフラックスバリアスロット(130)は、各前記径方向スロット(110)内の前記保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石を隔てることにより、前記保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石による磁場を隔て、
前記保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石のうち、少なくとも一方の永久磁石の磁化方向は可変である、ことを特徴とするモータの回転子構造。
【請求項2】
前記保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石は、それぞれ低保磁力の永久磁石(200)と、高保磁力の永久磁石(300)とであり、前記低保磁力の永久磁石(200)は前記径方向スロット(110)の、前記モータの回転子構造の外円に近い側に設けられ、前記高保磁力の永久磁石(300)は前記径方向スロット(110)の、前記モータの回転子構造の内円に近い側に設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載のモータの回転子構造。
【請求項3】
前記回転子鉄心(100)は、磁極が少ない状態にある場合、磁極数がnであり、磁極が多い状態にある場合、磁極数が2nである、ことを特徴とする請求項1に記載のモータの回転子構造。
【請求項4】
前記保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石は、それぞれ低保磁力の永久磁石(200)と、高保磁力の永久磁石(300)とであり、前記低保磁力の永久磁石(200)の保磁力がH1、厚さがd1であり、前記高保磁力の永久磁石(300)の保磁力がH2、厚さがd2であると、d2*H2/H1*0.9<d1<d2*H2/H1*1.1である、ことを特徴とする請求項1に記載のモータの回転子構造。
【請求項5】
前記保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石は、それぞれ低保磁力の永久磁石(200)と高保磁力の永久磁石(300)とであり、前記低保磁力の永久磁石(200)の残留磁気がBr1、前記回転子鉄心(100)の径方向に沿う幅がL1であり、前記高保磁力の永久磁石(300)の残留磁気がBr2、前記回転子鉄心(100)の径方向に沿う幅がL2であると、L2*Br2/Br1*0.9<L1<L2*Br2/Br1*1.1である、ことを特徴とする請求項1に記載のモータの回転子構造。
【請求項6】
前記回転子鉄心(100)の軸方向に直交する断面において、前記第2のフラックスバリアスロット(130)の両端はともに前記モータの回転子構造の外円に近い、ことを特徴とする請求項1に記載のモータの回転子構造。
【請求項7】
第3のフラックスバリアスロット(140)をさらに含み、
前記第3のフラックスバリアスロット(140)は、前記第2のフラックスバリアスロット(130)の回転子外円に近い2つの端部に設けられ、その幅方向が前記回転子鉄心(100)の、第3のフラックスバリアスロット(140)の位置に対応する接線方向に平行する、ことを特徴とする請求項6に記載のモータの回転子構造。
【請求項8】
前記第3のフラックスバリアスロット(140)の径方向における幅(d4)の範囲は2g~5g(gはモータエアギャップである)である、ことを特徴とする請求項7に記載のモータの回転子構造。
【請求項9】
前記径方向スロット(110)の回転子外円に近い側の周方向における幅がdであり、前記第3のフラックスバリアスロット(140)の周方向における幅がL3であると、0.8*d<L3<1.2*dである、ことを特徴とする請求項7に記載のモータの回転子構造。
【請求項10】
前記第2のフラックスバリアスロット(130)において、回転子中心に近い内側の壁と回転子中心から遠い外側の壁が形成する空隙の幅(d3)の範囲は2g~5g(gはモータエアギャップ)である、ことを特徴とする請求項1に記載のモータの回転子構造。
【請求項11】
前記第2のフラックスバリアスロット(130)の回転子外円に近い端部の中心と、前記径方向スロット(110)の回転子外円に近い端部の中心とがなす円心角がαであり、0.9*Π/n<α<1.1*π/n(nは磁極が少ない状態での前記回転子鉄心(100)の磁極数)である、ことを特徴とする請求項1に記載のモータの回転子構造。
【請求項12】
前記第1のフラックスバリアスロット(120)の前記回転子鉄心(100)の径方向における両端は、それぞれ回転子の内円及び回転子の外円に近く、且つ前記第1のフラックスバリアスロット(120)の回転子内円に近い一端の周方向における幅(d5)が、前記第1のフラックスバリアスロット(120)の回転子外円に近い他端の周方向における幅(d6)よりも大きい、ことを特徴とする請求項1に記載のモータの回転子構造。
【請求項13】
第4のフラックスバリアスロット(150)をさらに含み、
前記第4のフラックスバリアスロット(150)は、前記第1のフラックスバリアスロット(120)の回転子外円に近い端部に設けられ、その幅方向が前記回転子鉄心(100)の、第4のフラックスバリアスロット(150)の位置に対応する接線方向に平行する、ことを特徴とする請求項12に記載のモータの回転子構造。
【請求項14】
永久磁石モータであって、
固定子鉄心とモータの回転子構造とを含み、前記モータの回転子構造は請求項1~13のいずれか1項に記載のモータの回転子構造(10)である、ことを特徴とする永久磁石モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年11月14日に出願された、出願番号が2018113516613、名称が「モータの回転子構造及び永久磁石モータ」である中国特許出願の優先権を主張し、その全文を参照としてここに引用する。
【0002】
本出願は、モータの技術分野に関し、特にモータの回転子構造及び永久磁石モータに関する。
【背景技術】
【0003】
磁束調整可能な永久磁石同期モータは、モータの負荷状況に応じて、モータの内部磁場の強さを調整するものである。従来の永久磁石モータは、永久磁石により磁束を供給するが、永久磁石による磁場が一定のものであり、モータの内部磁場の調整が難しく、このため、永久磁石モータは高周波数及び低周波数での効率を両立させにくい。そして、給電電源の電圧が一定である場合、モータの最高動作周波数が制限される。現在、ほとんどの永久磁石モータは、磁束弱化制御によってしか動作範囲を広げることができないが、磁束弱化制御には、モータの銅損を増加させ、モータの効率を低下させ、速度調整範囲が限られるなどの問題が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上に鑑み、従来の永久磁石モータに対して、磁束弱化制御によって動作範囲を広げる場合に存在する、モータ銅損が増え、モータ効率が低下し、速度調整範囲が限られるなどの問題に対して、モータの回転子構造及び永久磁石モータを提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
モータの回転子構造であって、
回転子鉄心を含み、回転子鉄心は、円周方向において複数の径方向スロットが設けられ、隣接する2つの径方向スロットの間に第1のフラックスバリアスロットが設けられ、
各径方向スロットに保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石が取り付けられ、保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石は回転子鉄心の径方向に配置されており、保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石はすべて回転子鉄心の接線方向に沿って磁化され、保磁力の異なる2種類の永久磁石の間に第2のフラックスバリアスロットが設けられ、
保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石の磁化方向が逆である場合、回転子鉄心は磁極が多い状態にあり、保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石の磁化方向が同一である場合、回転子鉄心は磁極が少ない状態にある。
【0006】
一実施例では、保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石は、それぞれ低保磁力の永久磁石と、高保磁力の永久磁石とであり、低保磁力の永久磁石は径方向スロットの、モータの回転子構造の外円に近い側に設けられ、高保磁力の永久磁石は径方向スロットの、モータの回転子構造の内円に近い側に設けられる。
【0007】
一実施例では、回転子鉄心は、磁極が少ない状態にある場合、磁極数がnであり、磁極が多い状態にある場合、磁極数が2nである。
【0008】
一実施例では、保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石は、それぞれ低保磁力の永久磁石と、高保磁力の永久磁石とであり、低保磁力の永久磁石の保磁力がH1、厚さがd1であり、高保磁力の永久磁石の保磁力がH2、厚さがd2であると、d2*H2/H1*0.9<d1<d2*H2/H1*1.1である。
【0009】
一実施例では、保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石は、それぞれ低保磁力の永久磁石と高保磁力の永久磁石とであり、低保磁力の永久磁石の残留磁気がBr1、幅がL1であり、高保磁力の永久磁石の残留磁気がBr2、幅がL2であると、L2*Br2/Br1*0.9<L1<L2*Br2/Br1*1.1である。
【0010】
一実施例では、第2のフラックスバリアスロットの幅方向における両端はともにモータの回転子構造の外円に近い。
【0011】
一実施例では、モータの回転子構造は、第3のフラックスバリアスロットをさらに含み、第3のフラックスバリアスロットは、第2のフラックスバリアスロットの回転子外円に近い2つの端部に設けられ、その幅方向が回転子鉄心の、第3のフラックスバリアスロットの位置に対応する接線方向に平行する。
【0012】
一実施例では、第3のフラックスバリアスロットの厚さ範囲は2g~5g(gはモータエアギャップである)である。
【0013】
一実施例では、径方向スロットの回転子外円に近い側の厚さがdであり、第3のフラックスバリアスロットの幅がL3であると、0.8*d<L3<1.2*dである。
【0014】
一実施例では、第2のフラックスバリアスロットの厚さ範囲は2g~5g(gはモータエアギャップ)である。
【0015】
一実施例では、第2のフラックスバリアスロットの回転子外円に近い端部の中心と、径方向スロットの回転子外円に近い端部の中心とがなす円心角がαであり、0.9*Π/n<α<1.1*π/n(nは磁極が少ない状態での回転子鉄心の磁極数)である。
【0016】
一実施例では、第1のフラックスバリアスロットの回転子鉄心の径方向における両端は、それぞれ回転子の内円及び回転子の外円に近く、且つ第1のフラックスバリアスロットの回転子内円に近い一端の厚さが、第1のフラックスバリアスロットの回転子外円に近い他端の厚さよりも大きい。
【0017】
一実施例では、モータの回転子構造は、第4のフラックスバリアスロットをさらに含み、
第4のフラックスバリアスロットは、第1のフラックスバリアスロットの回転子外円に近い端部に設けられ、その幅方向が回転子鉄心の、第4のフラックスバリアスロットの位置に対応する接線方向に平行する。
【0018】
永久磁石モータであって、
固定子鉄心とモータの回転子構造とを含み、モータの回転子構造は上記のいずれかの態様に記載のモータの回転子構造である。
【発明の効果】
【0019】
本出願の有益な効果は以下を含む。
保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石を設け、また第2のフラックスバリアスロットによって2種類の保磁力の大きさの異なる永久磁石を隔てることにより、モータの回転子の内部磁場が必要に応じて調整できるようになる。モータは、低速度・大トルクの条件で動作する場合、アーマチュア電流によって回転子鉄心のうち低保磁力の永久磁石の磁化方向を変更して、回転子鉄心を磁極が多い状態とし、この場合、モータの磁極数が多く、大きなトルクが生じる。モータは、高速度・小トルクの条件で作動する場合、アーマチュア電流によって回転子鉄心のうち低保磁力の永久磁石の磁化方向を変更して、回転子鉄心を磁極が少ない状態に調整し、このようにして、モータの磁極数が減少し、生じるトルクが小さくなり、ただし、同じ電気周波数では回転数が増加する。それによって、該モータの回転子構造は、モータの動作条件に応じて内部磁場を調整し、回転子鉄心を磁極が多い状態と磁極が少ない状態に分けることができ、モータの高効率領域を増大し、モータの動作範囲を広げる。第2のフラックスバリアスロットにより、磁化時の保磁力の高い永久磁石の、保磁力の低い永久磁石への影響を低減、さらに解消し、アーマチュア巻線が低保磁力の永久磁石の磁化方向を変更するときの難度を低くし、磁化電流を小さくすることができる。
【0020】
本出願の実施例又は従来技術の技術案をより明確に説明するために、以下、実施例又は従来技術の描述に必要な図面を簡単に説明するが、明らかなように、以下の説明における図面は本出願の実施例に過ぎず、当業者であれば、創造的な努力を必要とせずに、開示された図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本出願の一実施例によるモータの回転子構造の構造模式図である。
図2図1に示す構造のA部の部分拡大図である。
図3】本出願の別の実施例によるモータの回転子構造の構造模式図である。
図4図3に示す構造のB部の部分拡大図である。
図5図1に示す構造の回転子鉄心が磁極が少ない状態にある場合の磁気回路図である。
図6図1に示す構造の回転子鉄心が磁極が多い状態にある場合の磁気回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本出願の実施例の図面を参照しながら、本出願の実施例の技術案を明瞭かつ完全に説明するが、明らかなように、説明する実施例は本出願の実施例の一部に過ぎず、すべての実施例ではない。当業者が本出願の実施例に基づいて創造的な努力を必要とせずに得る他の実施例は、すべて本出願の特許範囲に属する。
【0023】
なお、1つの構成要素が別の構成要素に「固定」される場合、別の構成要素に直接されてもよく、又は中間構成要素が存在してもよい。1つの構成要素が別の構成要素に「接続」されるとみなす場合、別の構成要素に直接接続されてもよく、又は中間構成要素が同時に存在してもよい。また、構成要素が「直接」別の構成要素「上」にあると記載される場合、中間構成要素が存在しない。本明細書で使用される用語「垂直」、「水平」、「左」、「右」及び類似の表現は説明の目的にのみ使用される。
【0024】
図1に示すように、本出願の一実施例によるモータの回転子構造10は、回転子鉄心100を含み、回転子鉄心100は、円周方向において複数の径方向スロット110が設けられ、隣接する2つの径方向スロット110の間に第1のフラックスバリアスロット120が設けられる。各径方向スロット110に保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石が取り付けられ、保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石は回転子鉄心100の径方向に配置されており、保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石はすべて回転子鉄心100の接線方向に沿って磁化され、保磁力の異なる2種類の永久磁石の間に第2のフラックスバリアスロット130が設けられる。保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石の磁化方向が逆である場合、回転子鉄心100は磁極が多い状態にあり、保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石の磁化方向が同一である場合、回転子鉄心100は磁極が少ない状態にある。
【0025】
なお、保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石のうち、一方は低保磁力の永久磁石(図1に示す低保磁力の永久磁石200)であり、他方は高保磁力の永久磁石(図1に示す高保磁力の永久磁石300)である。それによって、低保磁力の永久磁石の磁化方向が変わる場合、高保磁力の永久磁石は変化しない。それにより、モータの動作状態に対応できるように、回転子鉄心100の磁極数を変更することができ、それにより、モータ効率が高まる。一方、回転子鉄心100が磁極が多い状態にあるとは、回転子鉄心100の磁極数が磁極が少ない状態での回転子鉄心100の磁極数よりも多い状態を指す。回転子鉄心100の磁極が多い状態はモータの磁極数が多い状態に対応する。回転子鉄心100が磁極が少ない状態にあるとは、回転子鉄心100の磁極数が磁極が多い状態での回転子鉄心100の磁極数よりも少ない状態を指す。回転子鉄心100の磁極が少ない状態はモータの磁極数が少ない状態に対応する。第1のフラックスバリアスロット120は、隣接する2つの径方向スロット110内の永久磁石による磁場を遮断し、磁束漏れの現象の発生を回避するものである。第2のフラックスバリアスロット130は、各径方向スロット110内の保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石による磁場を隔てて、磁化時の高保磁力の永久磁石の、低保磁力の永久磁石への影響を低減、さらに解消し、アーマチュア巻線が低保磁力の永久磁石の磁化方向を変更するときの難度を低くし、磁化電流を小さくすることができる。
【0026】
保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石を設け、また第2のフラックスバリアスロット130によって保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石を隔てることにより、モータの回転子の内部磁場が必要に応じて調整できるようにする。モータは、低速度・大トルクの条件で作動する場合、アーマチュア電流によって回転子鉄心100のうち低保磁力の永久磁石の磁化方向を変更して、回転子鉄心100を磁極が多い状態とし、この場合、モータの磁極数が大きく、大きなトルクが生じる。モータは、高速度・小トルクの条件で動作する場合、アーマチュア電流によって回転子鉄心100のうち低保磁力の永久磁石の磁化方向を変更して、回転子鉄心100を磁極が少ない状態に調整し、このようにして、モータの磁極数が減少し、生じるトルクが小さくなり、ただし、同じ電気周波数では回転数が増加する。それによって、該モータの回転子構造10は、モータの動作条件に応じて内部磁場を調整し、回転子鉄心100を磁極が多い状態と磁極が少ない状態に分けることができ、モータの高効率領域を増大し、モータの動作範囲を広げる。
【0027】
図1に示すように、1つの可能な実施形態として、第2のフラックスバリアスロット130の幅方向における両端はともに回転子外円に近い。第2のフラックスバリアスロット130の両端が回転子外円側まで延在することによって、磁束漏れを効果的に低減できる。一実施例では、第2のフラックスバリアスロット130の厚さ範囲は2g~5g(gはモータエアギャップ)である。図2に示すように、第2のフラックスバリアスロット130の厚さがd3で示されると、2g<d3<5gである。第2のフラックスバリアスロット130の厚さを合理的に設計することによって、第2のフラックスバリアスロット130による有効なフラックスバリアが確保できる。
【0028】
図1及び図2に示すように、一実施例では、第2のフラックスバリアスロット130の回転子外円に近い端部の中心と径方向スロット110の回転子外円に近い端部の中心とがなす円心角がαであると、0.9*π/n<α<1.1*π/n(nは磁極が少ない状態での回転子鉄心100の磁極数)である。このように設計すると、磁極が少ない状態での回転子鉄心100の各極の極アーク係数が一致することを確保できる。
【0029】
図3に示すように、一実施例では、モータの回転子構造10は第3のフラックスバリアスロット140をさらに含み、前記第3のフラックスバリアスロット140は、第2のフラックスバリアスロット130の回転子外円に近い2つの端部に設けられる。第3のフラックスバリアスロット140の幅方向が回転子鉄心100の、第3のフラックスバリアスロット140の位置に対応する接線方向に平行する。第3のフラックスバリアスロット140を設けることにより、回転子鉄心100の各極の極アーク係数が一致することを確保できる。
【0030】
ここで、第3のフラックスバリアスロット140のサイズを制限することが可能である。なお、第3のフラックスバリアスロット140の長手方向は回転子鉄心100の軸方向に沿う方向である。第3のフラックスバリアスロット140の長さが回転子鉄心100の軸方向における長さに関連しており、一般には、第3のフラックスバリアスロット140の長さが回転子鉄心100の軸方向における長さに等しい。前述の第3のフラックスバリアスロット140のサイズに対する制限は主にその幅及び厚さに対するものである。図4に示すように、一実施例では、第3のフラックスバリアスロット140の厚さ範囲は2g~5g(gはモータエアギャップ)である。図4に示すように、第3のフラックスバリアスロット140の厚さがd4で示されると、2g<d4<5gである。第3のフラックスバリアスロット140の幅をL3、径方向スロット110の回転子外円に近い側の厚さをdとすると、0.8*d<L3<1.2*dである。第3のフラックスバリアスロット140のサイズを合理的に設計することによって、回転子鉄心100の構造が合理的であり、モータが安定的に動作することを確保できる。
【0031】
なお、径方向スロット110はこのスロット110に取り付けられる永久磁石に適合する。径方向スロット110の厚さは永久磁石の厚さで表わせる。図3に示すように、回転子外円に近い側の永久磁石は低保磁力の永久磁石200であり、低保磁力の永久磁石200の厚さが均一である場合、上記径方向スロット110の回転子外円に近い側での厚さdは該低保磁力の永久磁石200の厚さに等しい(図2においてd1で示されるサイズ)。なお、回転子外円に近い側の永久磁石が高保磁力の永久磁石300であるとすると、高保磁力の永久磁石300の厚さが均一である場合、前記径方向スロット110の回転子外円に近い側の厚さdは該高保磁力の永久磁石300の厚さに等しい(図2においてd2で示されるサイズ)。
【0032】
図1に示すように、1つの可能な実施形態として、第1のフラックスバリアスロット120の回転子鉄心100の径方向における両端は、それぞれ回転子の内円及び回転子の外円に近く、且つ第1のフラックスバリアスロット120の回転子内円に近い一端の厚さは、第1のフラックスバリアスロット120の回転子外円に近い他端の厚さよりも大きい。このように設計することによって、第1のフラックスバリアスロット120による有効なフラックスバリアが確保できる。
【0033】
図3に示すように、一実施例では、モータの回転子構造10は第4のフラックスバリアスロット150をさらに含む。第4のフラックスバリアスロット150は第1のフラックスバリアスロット120の回転子外円に近い端部に設けられ、第4のフラックスバリアスロット150の幅方向は回転子鉄心100の、第4のフラックスバリアスロット150の位置に対応する接線方向に平行する。第4のフラックスバリアスロット150を設けることによって、回転子鉄心100の各極の極アーク係数が一致することを確保できる。
【0034】
ここで、第4のフラックスバリアスロット150のサイズを制限することが可能である。前記第3のフラックスバリアスロット140のサイズについての説明を参照すると、第4のフラックスバリアスロット150の厚さ範囲は2g~5g(gはモータエアギャップ)である。第4のフラックスバリアスロット150の幅をL4、径方向スロット110の回転子外円に近い側の厚さをdとすると、0.8*d<L4<1.2*dである。第4のフラックスバリアスロット150サイズを合理的に設計することによって、回転子鉄心100の構造が合理的であり、モータが安定的に動作することを確保できる。
【0035】
径方向スロット110内の保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石の配置はさまざまな形態が可能である。図1に示すように、1つの実施可能な形態として、保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石は、それぞれ低保磁力の永久磁石200と高保磁力の永久磁石300とであり、低保磁力の永久磁石200は径方向スロット110の回転子外円に近い側に設けられ、高保磁力の永久磁石300は径方向スロット110の回転子内円に近い側に設けられる。本実施例では、同一の径方向スロット110内の低保磁力の永久磁石200と高保磁力の永久磁石300は、それぞれ1組しかない。この1組の低保磁力の永久磁石200は、1つの永久磁石であってもよく、複数の永久磁石が回転子鉄心100の軸方向に配置されてなるものであってもよい。この1組の高保磁力の永久磁石300も、1つの永久磁石であってもよく、複数の永久磁石が回転子鉄心100の軸方向に配置されてなるものであってもよい。この1組の低保磁力の永久磁石200は、径方向スロット110の回転子外円に近い側に設けられ、この1組の高保磁力の永久磁石300は、径方向スロット110の回転子内円に近い側に設けられる。低保磁力の永久磁石が回転子外円に近い側に設けられることにより、低保磁力の永久磁石に対する磁化の難度を効果的に下げ、回転子鉄心100の磁極数の変更を容易にする。
【0036】
他の実施例では、前記1組の低保磁力の永久磁石200は径方向スロット110の回転子内円に近い側に設けられ、前記1組の高保磁力の永久磁石300は径方向スロット110の回転子外円に近い側に設けられる。又は、低保磁力の永久磁石200の組数及び高保磁力の永久磁石300の組数は1組以上としてもよい。たとえば、同一の径方向スロット110内の低保磁力の永久磁石200は2組であり、高保磁力の永久磁石300は1組である。2組の低保磁力の永久磁石200と1組の高保磁力の永久磁石300は回転子鉄心100の径方向に沿って径方向スロット110内に交互に配置される。このようにして、2組の低保磁力の永久磁石200は2対の磁極を構成することができ、1組の高保磁力の永久磁石300は1対の磁極を形成することができる。前記同一径方向スロット110内の低保磁力の永久磁石200と高保磁力の永久磁石300は、それぞれ、1組の構造だけの磁極数が多く、回転子鉄心100において変化可能な磁極数が多い。
【0037】
図5及び図6に示すように、図5は、回転子鉄心100が磁極が少ない状態にある場合の磁気回路模式図を示しており、図5において、回転子外円の内側のN、Sは各永久磁石の磁極の分布図を示し、図5において、回転子外円の外側のN、Sは磁極が少ない状態での回転子鉄心100の磁極分布を示す。
【0038】
図6は、回転子鉄心100は磁極が多い状態にある磁気回路模式図を示す。図6において、回転子外円の内側のN、Sは各永久磁石の磁極分布図を示し、図6において、回転子外円の外側のN、Sは磁極が多い状態での回転子鉄心100の磁極分布を示す。
【0039】
図5及び図6に示すように、1つの可能な実施形態として、回転子鉄心100は磁極が少ない状態にある場合、回転子鉄心100の磁極数はnであり、回転子鉄心100は磁極が多い状態にある場合、回転子鉄心100の磁極数は2nである。回転子鉄心100には保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石を有し、保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石のそれぞれに形成される磁極数は等しい。言い換えれば、回転子鉄心100において、高保磁力の永久磁石300の組数と低保磁力の永久磁石200の組数は同じであり、すなわち、高保磁力の永久磁石300の磁極数と低保磁力の永久磁石200の磁極数は同一である。図5に示すように、保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石の磁化方向が同一である場合、回転子鉄心100は磁極が少ない状態にあり、回転子鉄心100の磁極数がnである。図6に示すように、保磁力の大きさの異なる2種類の永久磁石の磁化方向が逆である場合、回転子鉄心100は磁極が多い状態にあり、回転子鉄心100の磁極数が2nである。このように設計すると、回転子鉄心100の構造をより簡素化させ、永久磁石の配列を簡便にする。
【0040】
図2に示すように、1つの可能な実施形態として、保磁力の異なる2種類の永久磁石は、それぞれ低保磁力の永久磁石200と高保磁力の永久磁石300とであり、低保磁力の永久磁石200の保磁力がH1、厚さがd1、高保磁力の永久磁石300の保磁力がH2、厚さがd2であると、d2*H2/H1*0.9<d1<d2*H2/H1*1.1である。低保磁力の永久磁石200の厚さが小さすぎると、低保磁力の永久磁石200の抗消磁能力が不足になり、動作しているモータの消磁が制御できないという問題を引き起こす。一方、保磁力の永久磁石200の厚さが大きすぎると、磁場調整するときの磁化難度が高まり、磁化電流が増大し、モータの磁場調整が困難になる。このように低保磁力の永久磁石200の厚さのサイズを設計すると、保磁力の異なる2種類の永久磁石の抗消磁能力がほぼ同じであり、動作しているモータの消磁が制御できない、又はモータの磁場調整が困難であるという問題を回避することができる。
【0041】
図2に示すように、1つの可能な実施形態として、保磁力の異なる2種類の永久磁石は、それぞれ低保磁力の永久磁石200と高保磁力の永久磁石300とであり、低保磁力の永久磁石200の残留磁気がBr1、幅がL1、高保磁力の永久磁石300の残留磁気がBr2、幅がL2であると、L2*Br2/Br1*0.9<L1<L2*Br2/Br1*1.1である。このように設計すると、保磁力の異なる2種類の永久磁石の磁束量がほぼ同じであり、モータのトルク波動が過大ではないことを確保できる。
【0042】
本出願の一実施例は、固定子鉄心とモータの回転子構造とを含み、モータの回転子構造は前記いずれかの形態に記載のモータの回転子構造10である永久磁石モータをさらに提供する。モータの回転子構造10は前記有益な効果を有するため、永久磁石モータの動作状態が変化すると、アーマチュア電流を用いて回転子鉄心100の低保磁力の永久磁石の磁化方向を変更し、モータの回転子の磁極数を調整し、速度調整範囲を広げるという目的を達成することができる。
【0043】
以上の前記実施例の各技術的特徴は任意に組み合わせることができるが、説明を簡素化させるために、上記実施例の各技術的特徴のすべての可能な組み合わせを説明していないが、これらの技術的特徴の組み合わせは、矛盾しない限り、本明細書に記載の範囲とみなすべきである。
【0044】
以上の前記実施例は、本出願のいくつかの実施形態だけを示しており、それについての説明は詳細であるが、出願特許範囲に対する制限として理解されるべきではない。なお、当業者であれば、本出願の構想を逸脱することなく、いくつかの変形及び改良をすることができ、これらは本出願の特許範囲に属する。したがって、本出願特許の特許範囲は添付の特許請求の範囲に準じるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6