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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】風力発電機用ナセル
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/80 20160101AFI20221130BHJP
   F03D 80/70 20160101ALI20221130BHJP
【FI】
F03D80/80
F03D80/70
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021532438
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 AT2019060425
(87)【国際公開番号】W WO2020118333
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-06-08
(31)【優先権主張番号】A51113/2018
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】315015564
【氏名又は名称】ミバ・グライトラーガー・オーストリア・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス セバスティアン ヘルツル
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/173808(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/191163(WO,A1)
【文献】特開2010-101263(JP,A)
【文献】特開2015-001279(JP,A)
【文献】特開平04-203566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 80/80
F03D 80/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電機(1)用のナセル(2)であって、前記ナセル(2)は、
ナセルハウジング(4)と、
ローターハブ(6)と、
ローターハブ(6)をナセルハウジング(4)に支持するためのローター軸受(8)とを含み、前記ローター軸受(8)は少なくとも1つの内側リング部材(12)と少なくとも1つの外側リング部材(13)とを有しており、内側リング部材(12)と外側リング部材(13)との間に少なくとも1つの油潤滑される滑り軸受部材(14)が形成されている、ナセル(2)において、
前記ナセルハウジング(4)と前記ローターハブ(6)との間、及び/又は前記ナセルハウジング(4)とローターシャフト(15)との間にシール部材(24)が形成されており、
潤滑油(19)を収容する潤滑油サンプ(18)が前記ナセル(2)内に形成されており、
前記ナセル(2)の動作状態では、前記外側リング部材(13)と前記滑り軸受部材(14)との間の摺動面(17)は、少なくとも部分的に前記潤滑油サンプ(18)内の潤滑油レベル(20)より下方に位置することを特徴とする風力発電機(1)用のナセル(2)。
【請求項2】
前記シール部材(24)は、ナセルハウジング(4)の端面(25)とローターハブ(6)の端面(26)との間に配置された軸シールとして形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のナセル(2)。
【請求項3】
前記シール部材(24)は、ナセルハウジング(4)とローターハブ(6)との間、及び/又はナセルハウジング(4)とローターシャフト(15)との間に配置されたラジアルシールとして形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のナセル(2)。
【請求項4】
前記シール部材(24)は、メカニカルシールとして形成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のナセル(2)。
【請求項5】
前記ナセルハウジング(4)と前記ローターシャフト(15)との間にシール部材(24)が形成されており、
前記シール部材(24)は、前記ローターシャフト(15)上に半径方向に被せることができる、少なくとも2つのセグメントを含むようにすることができる、請求項1から4のいずれか一項に記載のナセル(2)。
【請求項6】
前記シール部材(24)は、ラビリンスシールとして形成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のナセル(2)。
【請求項7】
前記ラビリンスシールは、前記潤滑油サンプ(18)内に続く戻り部(40)を有することを特徴とする、請求項6に記載のナセル(2)。
【請求項8】
前記シール部材(24)は、ナセルハウジング(4)内に収容されており、ローターハブ(6)がシール部材に対して回動可能であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のナセル(2)。
【請求項9】
前記シール部材(24)は、該シール部材(24)に対して可動である密封面(34)と接触し、該密封面(34)が潤滑ワニス被覆を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のナセル(2)。
【請求項10】
ローターハブ(6)又はローターシャフト(15)に、シール部材と協働するスライドスリーブ(39)が配置されていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のナセル(2)。
【請求項11】
ローターシャフト(15)に油滴下部材(38)が切り込み溝又は隆起部の形で形成されていることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のナセル(2)。
【請求項12】
軸方向で互いに離間して2つのシール部材(24)が形成されている、請求項1から11のいずれか一項に記載のナセル(2)。
【請求項13】
ナセル(2)を備えた風力発電機(1)であって、前記ナセル(2)は、
ナセルハウジング(4)と、
ローターブレードを取り付けたローターハブ(6)と、
ローターハブ(6)をナセルハウジング(4)に支持するためのローター軸受(8)とを含み、前記ローター軸受(8)は少なくとも1つの内側リング部材(12)と少なくとも1つの外側リング部材(13)とを有しており、内側リング部材(12)と外側リング部材(13)との間に油潤滑される少なくとも1つの滑り軸受部材(14)が形成されているナセル(2)において、
前記ナセルハウジング(4)と前記ローターハブ(6)との間、及び/又は前記ナセルハウジング(4)とローターシャフト(15)との間にシール部材(24)が形成されており、
潤滑油(19)を収容する潤滑油サンプ(18)が前記ナセル(2)内に形成されており、
前記ナセル(2)の動作状態では、前記外側リング部材(13)と前記滑り軸受部材(14)との間の摺動面(17)は、少なくとも部分的に前記潤滑油サンプ(18)内の潤滑油レベル(20)より下方に位置することを特徴とする風力発電機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電機用のナセル、及びナセルを装備された風力発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1により風力発電機のナセル用のローター軸受が知られている。特許文献1により知られているローター軸受は、エネルギー効率が低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】欧州特許出願公開第EP2863076A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、先行技術の不利な点を克服し、エネルギー効率が改善された風力発電機用のナセルを提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、請求項に記載されたナセル及び風力発電機によって解決される。
【0006】
本発明により、風力発電機用のナセルが提供される。このナセルは、
ナセルハウジングと、
ローターハブと、
ローターハブをナセルハウジングに支持するためのローター軸受とを含み、ローター軸受は少なくとも1つの内側リング部材(inneres Ringelement)と少なくとも1つの外側リング部材(aeusseres Ringelement)とを有しており、内側リング部材と外側リング部材との間に少なくとも1つの油潤滑される滑り軸受部材が形成されている。ナセルハウジングとローターハブとの間、及び/又はナセルハウジングとローターシャフトとの間にシール部材が形成されている。シール部材は潤滑油サンプ(Schmieroelsumpf)を密封するために形成されており、潤滑油サンプは油潤滑される滑り軸受部材の潤滑に用いる潤滑油を収容する働きをする。
【0007】
本発明によるナセルは、シール部材によりナセルの改善された密封を達成できるという利点を有し、これは特に、流体力学的滑り軸受をローター軸受への適用に用いることを可能にする。
【0008】
さらに、シール部材が、ナセルハウジングの端面とローターハブの端面との間に配置された軸シールとして形成されていると、好都合であり得る。
【0009】
代替例において、シール部材が、ナセルハウジングとローターハブとの間、及び/又はナセルハウジングとローターシャフトとの間に配置されたラジアルシール(Radialdichtung)として形成されているようにしてもよい。
【0010】
さらに、シール部材が機械的な端面シール(Gleitringdichtung)として形成されているようにしてもよい。特に機械的な端面シールによってナセルを密封するための良好な密封作用を達成することができる。
【0011】
シール部材がローターシャフト上に半径方向に被せることができる、少なくとも2つのセグメントを含むようにできる特徴も有利である。このことは、ローターシャフトを取り外す必要なくシール部材を簡単に交換できるという利点を伴う。このローターシャフトの保守における容易化は、特にシール部材が完全に閉じられておらず、セグメント化された構造を有するので、それを開いてシャフトの上に半径方向に被せることができるように開くことができるという点で達成され得る。
【0012】
変形例によれば、シール部材がラビリンスシール(Labyrinth-Dichtung)として形成されることが可能である。特にラビリンスシールは本発明の使用例において長い寿命を持つことができ、これは特にシール部材が潤滑油サンプ中に浸漬されない場合において、十分な密封作用を有することができる。
【0013】
さらにラビリンスシールが潤滑油サンプ内に続く戻り部を有すると好都合であり得る。この方策により、ナセルからの望ましくない潤滑剤の漏出をほとんど回避することができる。戻り部は、例えばラビリンスシールのくぼみから潤滑油サンプの方向に延びる孔の形で実現できる。しかしながら戻り部は、潤滑油サンプに近い位置にあるラビリンスの内壁が、潤滑油サンプから遠い位置にあるラビリンスの外壁よりも低い構造によっても形成することができる。
【0014】
そのうえシール部材がナセルハウジング内に収容されており、ローターハブがシール部材に対して回動可能であるようにすることができる。特にこのように形成されたシール若しくはこのように形成されたシールの取り付け状況により、シール部材の摩耗を可能な限り小さくすることができる。これによりシール部材の長寿命性を高めることができる。
【0015】
さらにシール部材は、シール部材に対して可動である密封面と接触し、この密封面は潤滑ワニス被覆を有するようにしてもよい。特にこのようなシール部材の構造で、風力発電機の長寿命性を高めることができる。
【0016】
特別の特徴により、ローターハブ又はローターシャフトに、シール部材と協働するスライドスリーブが配置されていることが可能である。特にスライドスリーブを使用すると、シール部材の長寿命性を高めることができる。
【0017】
有利な変形例によれば、油滴下部材が切り込み溝又は隆起部の形でローターシャフトに形成されてもよい。この方策によりシール部材の密封作用を改善できることが達成され得る。
【0018】
特に、2つのシール部材が軸方向で互いに離間して形成されていると、有利であり得る。それにより回転軸線の軸方向で見て、潤滑油サンプは両方向で密封されて、一方の側では潤滑油がナセルから漏出するのを防ぎ、第2の側ではナセルハウジング内の潤滑油を潤滑油サンプの領域に留めることができる。
【0019】
さらに、ナセルハウジングとローターハブとの間、及び/又はナセルハウジングとローターシャフトとの間にシール部材が形成されているようにしてもよい。
【0020】
密封面は、好ましくはアルミニウム系合金、ビスマス系合金、銀系合金、潤滑ワニスからなる群から選択された材料を含む。特にこれらの耐摩耗性で摩擦学的に非常に効果的な材料は、高出力密度の風力発電機で特に有利であることが実証されている。驚くべきことに、特に潤滑ワニスは摺動層として良好に使用できる。但し、潤滑ワニスはビッカース硬さが約25HV(0.001)~60HV(0.001)で、上述した摺動層よりも著しく軟らかいが、ここでは相応の硬粒子を添加することにより硬度を増すことが可能である。
【0021】
さらに、密封面上にポリマーベースの慣らし動作層を配置して、シール部材の慣らし動作中にシール面がシール部材により良好に適応できるようにすることが可能である。
【0022】
潤滑ワニスとして、例えばポリテトラフルオロエチレン、例えばパーフルオロアルコキシ共重合体、ポリフルオロアルコキシポリテトラフルオロエチレン共重合体、エチレンテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン共重合体、ポリビニルフルオリド、ポリビニリデンフルオリド等のフッ素含有樹脂、パーフルオロエチレンプロピレン、ポリエステルイミド、ビスマレイミド等の交互共重合体、ランダム共重合体、カルボランイミド、芳香族ポリイミド樹脂、水素を含まないポリイミド樹脂、ポリトリアゾピロメリットイミド、ポリアミドイミド、特に芳香族、ポリアリルエーテルイミド等のポリイミド樹脂、任意選択でイソシアネートで修飾、ポリエーテルイミド、任意選択でイソシアネートで修飾、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂エステル、フェノール樹脂、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリオキシメチレン、シリコーン、ポリアリルエーテル、ポリアリルケトン、ポリアリルエーテルケトン、ポリアリルエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリフッ化ビニリデン、硫化ポリエチレン、硫化アリル、ポリトリアゾピロメリットイミド、ポリエステルイミド、硫化ポリアリル、硫化ポリビニル、硫化ポリフェニレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリルスルホン、酸化ポリアリル、硫化ポリアリル、及びこれらの共重合体を使用できる。
【0023】
この文書でいう増圧装置は、外部エネルギー供給によって潤滑油の圧力を増すように設計された装置である。そのような増圧装置は、例えば油圧ポンプである。
【0024】
この文書でいうナセルは、ナセルハウジングに加えてローターハブ及びローターハブを支持するためのローター軸受を含む。
【0025】
内側リング部材及び/又は外側リング部材は、それぞれローターハブ又はローターシャフト及び/又はナセルハウジングと連結できる独立の構成要素として形成することができる。代替的に、内側リング部材がローターハブ及び/又はローターシャフトの一体的な構成要素として形成されていることも考えられる。代替的に、外側リング部材がローターハブ及び/又はローターシャフトの一体的な構成要素として形成されていることも考えられる。代替的に、内側リング部材がナセルハウジングの一体的な構成要素として設計されていることも考えられる。
【0026】
本発明をより良く理解するために、以下の図を参照して詳細に説明する。
【0027】
図は、それぞれ著しく簡略された模式的表現で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、風力発電機の概略図を示す。
図2図2は、ナセルの非常に概略的な断面図を示す。
図3図3は、外側リング部材内に流路を有するナセルの断面図を示す。
図4図4は、流路を有する外側リング部材の断面図を示す。
図5図5は、分割されたナセルハウジングを有するナセルの非常に概略的な断面図を示す。
図6図6は、スリーブに摺動面が形成されたスリップリングシールの実施形態を示す。
図7図7は、オイルドレンを備えたラビリンスシールの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
最初に確認しておくと、記載された種々の実施形態において同じ部材には同じ参照符号若しくは同じ部材名称を付す。この場合、説明全体に含まれている開示内容は同じ参照符号若しくは同じ部材名称を有する同じ部材に準用され得る。説明において選択された位置を表す言葉、例えば上、下、横なども直接説明及び表示された図を基準としており、位置が変化した場合には新しい位置に準用されるものとする。
【0030】

図1は、風力エネルギーから電気エネルギーを生成するための風力発電機1の概略図を示す。風力発電機1は、塔体3に回転可能に受容されたナセル2を含んでいる。ナセル2は、ナセル2の主要構造をなすナセルハウジング4を含む。ナセル2のナセルハウジング4内には、風力発電機1の発電機などの電気技術部品が配置されている。
【0031】
さらに、ローターブレード7を取り付けたローターハブ6を有するローター5が形成されている。ローターハブ6はナセル2の一部として見られる。ローターハブ6は、ローター軸受8によってナセルハウジング4に回転可能に受容されている。
【0032】
ローターハブ6をナセル2のナセルハウジング4に支持する働きをするローター軸受8は、半径方向力9、軸方向力10、及び傾斜モーメント11を吸収するように設計されている。軸方向力10は、風の力によって生じる。半径方向力9は、ローター5の重力によって生じ、ローター5の重心に作用する。ローター5の重心はローター軸受8の外部にあるので、半径方向力9によってローター軸受8内に傾斜モーメント11が生じる。傾斜モーメント11は、ローターブレード7の不均一な負荷によっても引き起こされ得る。
【0033】
本発明によるローター軸受8の直径は、例えば0.5m~5mであり得る。もちろんローター軸受8がこれより小さいか、又はより大きいことも考えられる。
【0034】
図2には、ナセルハウジング4及びローターハブ6が概略的な断面図で示されており、構造は、特にその寸法に関して著しく図式化されている。図2から分かるように、ローター軸受8は、少なくとも1つの内側リング部材12と少なくとも1つの外側リング部材13を有するようにすることができる。内側リング部材12と外側リング部材13との間には、少なくとも1つの滑り軸受部材14が配置されている。
【0035】
図2から分かるように、内側リング部材12はローターハブ6と連結されてもよい。特にローターシャフト15を形成され、これにローターハブ6が配置されているようにすることができる。内側リング部材12は、ローターシャフト15に直接に受容されることができる。
【0036】
図示されていない別の実施形態では、もちろん内側リング部材12がローターハブ6に直接に受容されるようにしてもよい。
【0037】
やはり図示されていないさらに別の実施形態では、もちろん内側リング部材12がナセルハウジング4に固定され、ローターハブ6が外側リング部材13と連結されているようにしてもよい。
【0038】
図2から分かるように、内側リング部材12も外側リング部材13もV字形に形成されていて、それぞれ両リング材12、13の間のV字形側面に2つの滑り軸受部材14が軸方向で互いに離間して形成され、互いに対して所定の角度で配置されているようにすることができる。図2から分かるように、一実施形態では、滑り軸受部材14は固定手段16によって内側リング部材12に固定されているようにすることができる。このようにして滑り軸受部材14と外側リング部材13との間に摺動面17を形成することができる。図2に示されているように、滑り軸受部材14の配置構成において摺動面17もV字形に配置することができる。
【0039】
同様に図2から分かるように、ローター軸受8の組み立てを容易にするために、内側リング部材12はその軸方向延長で分割されて設計されているようにすることができる。
【0040】
図示されていない実施形態では、内側リング部材12は図2に示す実施形態のように溝を形成するのではなく、V字形配置が逆に形成されて、内側リング部材12にV字形突起が形成されていることも考えられる。この場合、組み立てを容易にするために、外側リング部材13がその軸方向延長で分割されて設計されているようにすることができる。
【0041】
軸方向延長で分割できる内側リング部材12を有する実施形態においても、軸方向延長で分割できる外側リング部材13を有する実施形態でも、例えば滑り軸受部材14の摩耗を補償できるようにするために、それぞれ分割可能に設計されたリング部材12、13の個々の部品が軸方向で互いに調整可能に形成されているようにすることができる。リング部材12、13の個々の部品が軸方向で互いに調整可能であることによって軸受隙間が調整できるようにすることができる。
【0042】
さらに図2から分かるように、潤滑油19を収容する働きをする潤滑油サンプ18が形成されている。潤滑油サンプ18は動作状態では潤滑油レベル20まで潤滑油19で満たされる。この場合、潤滑油レベル20は、摺動面17が少なくとも部分的に潤滑油レベル20より下方に位置し、したがって潤滑油サンプ18内にある潤滑油19中に浸漬されるように選択されている。
【0043】
滑り軸受部材14は流体力学的滑り軸受として形成されており、それによりローターハブ6がローター軸21を中心に回転すると、摺動面17に潤滑油膜が摺動面17上に形成され、これが滑り軸受部材14を流体力学的に支持する働きをする。
【0044】
摺動面17に潤滑油19を供給するために、内側リング部材12内若しくは外側リング部材13内に潤滑油孔22が形成されて、ローターハブ6の回転位置に応じて、第1の縦方向端部では潤滑油サンプ18内に開口し、第2の縦方向端部では内側リング部材12と外側リング部材13との間の空隙内に開口しているようにすることができる。この方策により滑り軸受部材14に潤滑油19が十分供給できることが達成され得る。
【0045】
さらに、直接摺動面17に開口している潤滑油孔23を設けることもできる。これらの潤滑油孔23によって、摺動面17は潤滑油サンプ18と直接的に流動接続することができ、その結果、摺動面17に十分な潤滑油19を供給することができる。特に、滑り軸受部材14が外側リング部材13に対して移動することにより、潤滑油19は潤滑油孔23若しくは潤滑油孔22を介して摺動面17に吸引され、そこで滑り軸受部材14を潤滑若しくは支持するための油膜が形成される。
【0046】
滑り軸受部材14の良好な潤滑作用を達成するために、図2に示されているように、摺動面17の少なくとも一部はその幅で見て全体が潤滑油レベル20の下方に位置している。
【0047】
さらに、ローターハブ6をナセルハウジング4に対して密封する働きをするシール部材24が形成されるようにしてもよい。図2から分かるように、シール部材24がナセルハウジング4の端面25とローターハブ6の端面26との間で作用するようにしてもよい。特に、潤滑油サンプ18は、ナセルハウジング4とローターハブ6の両方にわたって延び、したがってシール部材24が部分的に潤滑油レベル20の下方に位置するようにすることができる。
【0048】
さらに図2から分かるように、シール部材24がナセルハウジング4内に収容されていうるようにすることができる。
【0049】
図3には、ナセル2の別の、任意選択で独立の実施形態が示されており、ここでも同じ部材には前出の図1図2と同じ参照番号若しくは部材名称が使用される。不必要な繰り返しを避けるために、前出の図1図2の詳細な説明の参照を求め、若しくはこれを引き合いに出す。
【0050】
図3から分かるように、外側リング部材13内に流路27が形成されていて、潤滑油孔23と流動接続しており、潤滑油19が摺動面17により良好に分配されるように働く。
【0051】
図4は、図3の断面線IV-IVによる断面図を示している。図4から分かるように、流路27は流路角度28にわたって延びており、流路角度28は好ましくは流路27が完全に潤滑油レベル20より下方に配置されるように選択されている。特に、流路角度28は10°~160°、好ましくは45°~80°であるようにしてもよい。
【0052】
さらに、流路幅29は、滑り軸受部材14の幅30よりも小さくなるように選択されている。図4から分かるように、潤滑油孔23の幾つかは流路27内に開口しているようにすることができる。さらに流路27は楔状隙間(Keilspalte)31の形で先が細くなるようにしてもよい。この方策により潤滑膜を形成することができる。
【0053】
第1の実施形態では、流路27は円周方向両側に楔状隙間31の形で先が細くなるようにしてもよい。
【0054】
別の実施形態では、主回転方向32で見て、流路27の端部にのみ楔状隙間31が形成されているようにしてもよい。
【0055】
さらに図4から分かるように、滑り軸受部材14は、円周にわたって分布して内側リング部材12に配置された複数の滑り軸受パッドを有するようにしてもよい。滑り軸受パッド33は特に、流体軸受として機能できる連続した摺動面17が形成されるように、内側リング部材12上に配置することができる。特に、摺動面17は円錐台の形を有するようにしてもよい。
【0056】
図5には、ナセル2の別の、任意選択で独立の実施形態が示されており、ここでも同じ部材には前出の図1図4と同じ参照番号若しくは部材名称が使用される。不必要な繰り返しを避けるために、前出の図1図4の詳細な説明の参照を求め、若しくはこれを引き合いに出す。
【0057】
図5から分かるように、潤滑油サンプ18は、全体がナセルハウジング4内に形成されている。特にここでは、シール部材24、特にそれらの密封面34が完全に潤滑油レベル20より上方に位置するようにすることができる。このように構成されたナセルハウジング4又はローター軸受8の組み立て若しくは保守を可能にしたり容易にしたりするために、ナセルハウジング4がハウジング主要部35と潤滑油サンプカバー36を有するようにすることができる。特にハウジング主要部35と潤滑油サンプカバー36が潤滑油サンプ18の範囲を定めるようにしてもよい。ここで、潤滑油サンプカバー36は固定部材37によってハウジング主要部35に固定されているようにすることができる。
【0058】
図5から分かるように、ローター軸21の軸方向で見て、潤滑油サンプ18の両側にそれぞれ1つのシール部材24が配置されている。特に、シール部材24はラジアルシールとして形成されていてもよい。ここではシール部材24の一方はハウジング主要部35内に配置することができ、他方のシール部材24は潤滑油サンプカバー36内に配置することができる。
【0059】
さらに、シール部材24がローターシャフト15と協働するようにすることができる。特に、ここでは、摺動面17がローターシャフト15に形成されているようにしてもよい。特に、ローターシャフト15はこのために局所的に、例えば潤滑ワニス被覆によって形成される特別に設計された表面を有するようにしてもよい。このような潤滑ワニス被覆は、特にスリップリングシール(Schleifringdichtungen)を使用する場合に設けることができる。
【0060】
さらに、ローターシャフト15に、潤滑油19がローターシャフト15に沿って軸方向でシール部材24に到達するのを防ぐ働きをする油滴下部材38が形成されているようにすることができる。油滴下部材38は、例えば切り込み溝の形で形成することができる。代替実施形態では、油滴下部材38は、例えばローターシャフト15の全周に延びる隆起部の形で設計されているようにすることもできる。
【0061】
図6は、シール部材24の配置構成の別の実施形態の詳細図を示している。図6から分かるように、ローターシャフト15にスライドスリーブ39が配置され、そのスライドスリーブ39に密封面34が形成されているようにすることができる。このような配置構成は、特にスリップリングシールを使用する場合に有用であり得る。
【0062】
図示されていない別の実施形態では、スライドスリーブ39が直接ローターハブ6に直接受容され、したがってシール部材24がローターハブ6を密封する働きをするようにすることもできる。
【0063】
図7は、シール部材24の別の実施形態を示している。図7から分かるように、シール部材24は、例えば潤滑油サンプカバー36と協働するラビリンスシールの形で形成されているようにすることができる。特に、潤滑油19を潤滑油サンプ18に戻す働きをする戻り部40が形成されているようにすることができる。戻り部は、図7に見られるように、ラビリンスシールの最低点から出発して潤滑油サンプ18に続く孔の形で形成することができる。
【0064】
以上の実施形態は可能な変形例を示すものであり、この箇所で注記すると、本発明は特別に図示された本発明の実施態様に制限されておらず、個々の実施態様を互いに種々組み合わせることが可能であり、この変形可能性は本発明による技術的行為に関する教示に基づき当該技術分野に従事する当業者の能力の範囲内にある。
【0065】
保護の範囲は請求項によって規定されている。しかしながら請求項を解釈するために詳細な説明と図面が援用される。図示及び説明された種々の実施例に基づく個別特徴又は特徴の組合せは、それ自体で独自の発明による解決をなすことができる。独自の発明による解決の根底にある課題は、詳細な説明から読み取ることができる。
【0066】
本発明の説明において値の範囲に関するすべての指示は、当該範囲内のすべての任意の部分範囲を含むものと理解すべきである。例えば1~10という指示には、下限1を起点として上限10に至るまでのすべての部分範囲が含まれていると理解すべきである。即ち、すべての部分範囲は、例えば1~1.7又は3.2~8.1又は5.5~10のように、下限の1又はそれ以上から始まって上限の10又はそれ以下で終わる。
【0067】
最後に形式的に指摘しておくと、構造を理解しやすくするために、部材は一部縮尺通りではなく及び/又は拡大及び/又は縮小して表現された。
【符号の説明】
【0068】
1 風力発電機
2 ナセル
3 塔体
4 ナセルハウジング
5 ローター
6 ローターハブ
7 ローターブレード
8 ローター軸受
9 半径方向力
10 軸方向力
11 傾斜モーメント
12 内側リング部材
13 外側リング部材
14 滑り軸受部材
15 ローターシャフト
16 固定手段
17 摺動面
18 潤滑油サンプ
19 潤滑油
20 潤滑油レベル
21 ローター軸
22 リング部材の潤滑油孔
23 潤滑油孔
24 シール部材
25 ナセルハウジング端面
26 ローターハブ端面
27 流路
28 流路角度
29 流路幅
30 滑り軸受部材の幅
31 楔状隙間
32 主回転方向
33 滑り軸受パッド
34 密封面
35 ハウジング主要部
36 潤滑油サンプカバー
37 固定部材
38 油滴下部材
39 スライドスリーブ
40 戻り部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7