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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】皮膚疾患治療用機器
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/067 20060101AFI20221130BHJP
【FI】
A61N5/067
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021543600
(86)(22)【出願日】2019-10-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 IB2019058454
(87)【国際公開番号】W WO2020075025
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-08-17
(31)【優先権主張番号】102018000009253
(32)【優先日】2018-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】521152817
【氏名又は名称】クアンタ システム ソチエタ ペル アチオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【弁理士】
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【弁理士】
【氏名又は名称】比企野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100161997
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 大一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【弁理士】
【氏名又は名称】泉名 謙治
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスキナ チェザーレ プリニオ
(72)【発明者】
【氏名】タリアフェッリ マルコ
(72)【発明者】
【氏名】カンノーネ ファービオ
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0121631(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0140866(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/20 ― 18/28
A61N 5/067
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
者の前記皮膚の領域の方へ向けて第1の一連のレーザパルスを放出するレーザ機器であって、前記レーザパルスが到達する標的は前記皮膚の下側にある、レーザ機器と;
冷却流体による、前記皮膚の前記領域の冷却装置と;
前記皮膚の領域の第1の温度用の第1の測定センサーと;
前記冷却流体の温度用の第2の測定センサーと;
前記第1及び第2の温度測定センサーから信号を受信するコンピュータと
を含む患者の皮膚の下側にある標的を治療するためのシステムにおいて、
前記コンピュータは、予め決められたパワー、持続時間及び間隔を有する第1の一連のレーザパルスを放出する前記レーザ機器を制御し;
前記温度測定センサーは、前記第1の一連のレーザパルスの後に、前記皮膚の領域の前記温度を測定し;
前記コンピュータは、前記予め決められたパワー、持続時間及び間隔を有する第2の一連のパルスの放出後に、前記皮膚の領域で到達する予測温度を、前記第1の測定センサーによって測定された皮膚の領域の第1の温度及び前記第2の測定センサーによって測定された冷却流体の温度に基づいて計算する、システム。
【請求項2】
前記コンピュータは、第1の予め決められた温度に達するのに必要なパルス数を、前記第1の測定センサーによって測定された皮膚の領域の第1の温度及び前記第2の測定センサーによって測定された冷却流体の温度に基づいて計算することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1の予め決められた温度は、45~60℃であることを特徴とする、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記コンピュータは、前記皮膚の領域の前記第1の温度に関し、前記皮膚の領域から予め決められた深さに位置する標的の第2の温度を、前記第1の測定センサーによって測定された皮膚の領域の第1の温度及び前記第2の測定センサーによって測定された冷却流体の温度に基づいて計算することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記コンピュータは、前記予め決められたパワー、持続時間及び間隔を有する第2の一連のパルスの放出後に、前記標的で到達する前記予測温度を計算することを特徴とする、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記コンピュータは、前記皮膚の前記領域で到達する前記予測温度の値に基づいて、前記一連のパルスの前記予め決められたパワー、持続時間及び間隔、及び/又は前記冷却流体の温度を変化させることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記コンピュータは、前記標的で到達する前記予測温度の値に基づいて、前記一連のパルスの前記予め決められたパワー、持続時間及び間隔、及び/又は前記冷却流体の温度を変化させることを特徴とする、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記コンピュータは、前記第1の一連のレーザパルス後に、前記皮膚の領域での測定される温度の包絡線を、前記第1の測定センサーによって測定された皮膚の領域の第1の温度及び前記第2の測定センサーによって測定された冷却流体の温度に基づいて予測して、前記皮膚の前記領域で到達する前記予測温度を計算することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚疾患治療用システムに、特に、皮膚内にある標的の治療用システムに、さらには、特に、媒質に又はより一般的には多層構造に入り込んだ、特定の発色団を標的にする、光温熱治療(photo-induced heat treatment)のために正しい線量測定を決定するためのシステムに、及び、これに関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、脱毛、座瘡、血管破裂、不要な入れ墨、発色団、さらには、皮膚などに入り込んだ標的一般の治療を含む、皮膚疾患治療のために、電磁波照射を使用することは、現在普及している技術であるが、その使用を非常に重要なものにする多くの事項がある。これらの技術の核心は、「正しい」線量の電磁波照射を提供することにより、周囲組織及びその上側にある皮膚層を損傷し、こうした組織を永久的に損傷させて治療中及び治療後に患者に疼痛を生じせることなく、標的を損傷させるのに十分な熱エネルギーを送ることである。
【0003】
上述したものなどの種々のタイプの皮膚疾患治療では、使用者/皮膚科医は、皮膚の表面の下側に位置する標的の温度を知ることができるとともに、患者にとって安全で治療に有効な条件下で、標的を損傷させる正しい線量の電磁波照射を決定できるシステムを利用できないことが知られている。
【0004】
この手法に関連する非常に重要な事項は、標的を取り囲む生物組織のパラメータのばらつき、治療すべき標的の物理的パラメータのばらつき、及び患者の心身の状態の変動性に起因する。
【0005】
さらに、皮膚疾患治療に使用されたシステム内でのばらつきも考慮される必要がある。
【0006】
電磁波照射による皮膚疾患治療中のこれらのばらつきの全てを評価することは、極めて複雑であると思われ、現在は、使用者/皮膚科医の経験に委ねられている。
【0007】
上述の変数を、正しく、及び/又は完全に制御できれば、正しい解析が容易にでき、場合によっては所望の目標に達することなく生じる、皮膚の火傷、瘢痕、表面組織への損傷、皮膚への内部損傷などを含む患者に対する潜在的なリスクとともに、結果をより良好に予測できるようになることが、専門家には明らかである。
【0008】
当業者に公知のばらつき性の例は、人体の皮膚の部分が異なると熱応答が異なることである。人体の同じ領域でも、より熱い領域と他のより冷たい領域とがあり得、部分毎に皮膚の温度に著しい違いがあることがある。さらに、場合によっては、熱伝達速度は、他の場所よりも速いことがある。これは、骨組織が存在すること、又はより高い若しくはより低い血液環流速度、最終的には、患者の心理生理学的状態に起因し得る。これに、さらに、固有の際立った要素である、年齢、性別及び人種が加わる。
【0009】
所望の結果を得るために、使用者/皮膚科医は、自らの経験に頼って、皮膚の表面の熱応答を直接観察する。
【0010】
当業者にとって、皮膚疾患治療のパラメータの変数を制御できるようにするシステムが利用できることは、皮膚疾患分野において革新的で独創的な事項であることが明らかである。
【0011】
いくつかのシステムには、皮膚表面温度センサーが組み込まれており、皮下温度センサーが患者の皮膚に挿入され、又は、到達温度に応じて発光を変える分子色素が、注入される。第1の手法は、皮膚の表面温度を安全に表示するが、皮膚の表面の下側に位置する標的の温度の情報は全く得ることができない。残りの2つの手法は、明らかに患者にとってより侵襲性が高い。
【0012】
さらに、皮膚表面温度を測定するセンサーを用いることは、治療中の皮膚に対する表面損傷を防止するのに有用であるにすぎない。このシステムでは、空間での、すなわち、皮膚の様々な部分(標的であろうとなかろうと)における、及び時間、すなわち治療中の及び治療後における、温度勾配の進展、さらに重要なことには、標的を破壊する温度値を知り予測することは不可能である。
【0013】
成功(標的への熱損傷)の確率を上げ、周囲組織への損傷を回避するために、従来の方法及びシステムは、種々の治療ステップ、すなわち、事前冷却、照射の事前施術(すなわち、予熱)、及び照射熱(すなわち、治療)を基本としているが、様々な制限がある。
【0014】
例えば、真皮(下層にある皮膚)にある皮下標的領域へレーザ照射を行う唯一の非侵襲的な方法は、覆っている表皮の皮膚領域を通して、この領域へレーザ照射を伝達することであるため、入射レーザ照射の一部は、いずれにせよ、覆っている皮膚の領域によって吸収されるので、組織に不可逆的な損傷、例えば、瘢痕を生じることがあり、患者に疼痛を生じさせることがある。
【0015】
治療に使用されるべきであるエネルギー量は、標的の深さに応じて増加することも分かっている。これは、必然的に、より強力なレーザシステムの使用、及びより長い持続時間の照射ということになる。これは、覆っている皮膚及び非標的組織を損傷させる可能性をさらに高める。
【0016】
このため、上述の問題から非標的組織を保護するために、多くの処置を行って、表皮を効果的に冷却する(事前冷却)必要がある。
【0017】
その後、予熱ステップ、及び実際の治療ステップが、事前冷却ステップに続く。
【0018】
場合によっては、予熱プロトコル及び治療プロトコルは、同じレーザによって実施されるが、2つのプロトコルがあると、異なるレーザ設定及び適用パラメータを必要とするため、正しい治療線量測定の決定、及び治療装置の構造をさらに複雑にする。
【0019】
冷却プロセスは、芳しくない結果を生じ得る。どの程度の熱が、放出されるべきか、どの程度の冷却が必要であるか、さらに、接触面は、何度に維持されるべきかを理解した上で、冷却を適切に行うことが、副作用のない有効な治療のキーポイントである。(Willey et al.Complications of Laser Dermatologic Surgery,Lasers in Surgery and Medicine 38:1-15(2006))。
【0020】
皮脂腺の治療用のレーザシステムは、以前に、例えば、国際公開第2017077427号及び国際公開第2017109667号に、記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、もっぱら皮膚表面上の温度の読み取り値に基づいて、皮膚内にある生物学的標的の熱損傷温度に達することができ、周囲及び下層組織への損傷及び望ましくない影響を回避する方法及び/又はシステムの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明によれば、これらの目的、及びそのたの目的は、添付の請求の範囲で記載されているシステム及び方法によって達成される。
【0023】
本発明の特徴は、皮膚疾患治療中の皮膚の各部分(発色団、粒子、皮膚の層、皮膚表面、血管、皮脂腺、毛、色素斑)の温度値を提供することにある。このようにして、標的の損傷温度に達したかどうかを知ることが可能になる。
【0024】
本発明の、この他の特徴は、標的を確実に損傷でき、火傷などの生物学的損傷、又は皮膚の他の一時的な及び/又は永久的な損傷を回避して、患者のどんな疼痛も減少させる、正しい線量の電磁波照射を提供するために、リアルタイムの予測システムを提供することにある。
【0025】
本発明の、さらにこの他の特徴は、火傷などの生物学的損傷を防止するか、又は皮膚の他の一時的な及び/又は永久的な損傷を回避することにより、患者のどんな疼痛も減少させる、標的の損傷温度に到達するために、リアルタイムの予測システムを提供することにある。
【0026】
本発明のもう一つの特徴は、患者の皮膚が突然異常を示すような場合、又は患者が突然不快感を抱くような場合、治療を中断することにある。場合によっては、患者の不快感は、血圧上昇による皮膚の表面の温度の上昇により、明らかになる。本発明では、この温度上昇をリアルタイムで予測するため、極端な場合には、照射及び治療が、全般的に中断する。
【0027】
本発明のもう一つの特徴は、冷却プロセス(事前冷却、レーザ治療中の冷却、及び事後冷却)をリアルタイムで監視し、過度の冷たさ又は過度の熱による皮膚への内部又は外部損傷を回避することにある。実際、表面温度の一様性の度合い、及びレーザパルスの開始前の温度値は、リアルタイムで監視される。
【0028】
本発明のもう一つの特徴は、治療前セッションを実施し、そこで、治療すべき全領域内の皮膚の種々の領域について定めた治療パラメータに基づいて、施術者が、パーソナライズした治療プロトコルを決定することにある。
【0029】
本発明の特徴及び効果は、添付図面に記載した非限定的な例を用いて説明する、実際的な実施形態についての以下の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施形態の一つによる、光温熱治療システムの例のブロック図を示す。
図2】実施形態の一つによる、光温熱治療システムと一緒に使用するためのスキャナー配置構成の例のブロック図を示す。
図3】実施形態の一つによる治療マトリックス配置構成の例を示す。
図4】実施形態の一つによる、統合型治療プロトコルとして使用するのに好適な1組の光パルスの図の例を示す。
図5】実施形態の一つによる、治療パルスが照射されるときの、時間の関数として、皮膚の表面で測定された温度を示すグラフであって、左側のグラフは顔の皮膚の一部分、及び右側のグラフは首の皮膚の一部分である。
図6】実施形態の一つによる、治療パルスが照射されるときの、時間の関数として皮脂腺標的の推定温度を示す。
図7】後続パルスが照射されるときの皮膚の温度を予測し、それに従って治療プロトコルを修正する、測定される皮膚の表面温度の解析プロセスの例を示すフロー図を示す。
図8】温度の予測を実施することにより、適応技術を管理するための、測定された温度のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
添付図面を参照すると、図1は、皮膚などの媒質に入り込んだ特定の発色団を標的とし、周囲媒質を損傷せずに、標的を十分に高い温度へ加熱して標的を損傷させるための、標的を定めた光温熱治療システムの例を示している。この光温熱治療システムは、例えば、標的皮脂腺の周囲の表皮及び真皮を守りながら、標的を定めた光温熱による皮脂腺の除去を行うために使用され得る。
【0032】
同様に図1を参照して説明すると、光温熱治療システムは、冷却ユニット110及びレーザ治療ユニット120を備える。冷却ユニット110は、治療前(事前冷却)、治療中及び治療後(事後冷却)に冷却流体を利用してよい。冷却ユニット110は、例えば、治療領域、すなわち、標的を覆う皮膚の外層領域に、接触により、又は空気による直接的な冷却によって、冷却作用をもたらす。冷却ユニット110は、治療ユニット120内の制御器122と通信を行う。制御器122は、治療ユニット120内に備えられていること図示されているが、制御器122は、冷却ユニット110内に設けることもできることに留意すべきである。
【0033】
制御器122はまた、治療ユニット120内にある他の構成要素、例えばレーザ124、ディスプレイ126、皮膚温度センサー128、ペダルスイッチ130、及び緊急オン/オフスイッチ132を制御する。
【0034】
レーザ124は、治療プロトコル用のレーザエネルギーを供給し、制御器122は、レーザの具体的な設定、例えば、出力及びパルス時間を調整する。レーザ124は、単一のレーザ又は2種以上のレーザを組み合わせたものでよい。2種以上のレーザシステムが使用される場合、レーザ出力は光学的に結合されて、例えば、国際公開第2017109667号及び国際公開第2017077427号の公報に記載されているように、より強力な単一のレーザとして機能する。ディスプレイ126は、冷却ユニット110の動作条件、レーザ124の動作条件及びシステムの他のステータスの動作条件などの情報を示し得る。ディスプレイ126によって、レーザ装置124、冷却ユニット110及びスキャナー160を管理することが可能になる。皮膚温度センサー128は、治療領域における皮膚の表面の温度を監視するために使用され、この温度は、治療プロトコルを調整するために制御器122によって使用される。皮膚温度センサー128は、赤外線熱センサーである。制御器122はまた、ペダルスイッチ130とインターフェースで接続して、レーザ124及び/又は冷却ユニット110のスイッチを遠隔でオン又はオフする。さらに、光ダイオード125又は他のセンサーを追加して、レーザ124から放出されるエネルギーのエネルギーレベルを監視することも可能である。機械的又は電子的シャッター127が、搬送光ファイバー164の前に設けられて、必要な場合にはレーザ照射を遮断する。コンピュータ121が、制御器122に接続されて、皮膚温センサー128及び光ダイオード125からくる全て処理パラメータをリアルタイムで評価して、制御冷却ユニット111、レーザ124及びスキャナー160を作動させることができる。
【0035】
同様に図1を参照して説明すると、治療システムは、冷却ユニット110を備える。制御盤111によって、冷却ユニット110が治療システム120と通信できるようにする。さらに、冷却ユニット110は、冷却流体センサー112、例えば気温センサー、圧力センサー、例えば、熱線風速計を備え、皮膚の表面170を通じて皮膚171に入る空気の流れの全ての物理的パラメータを監視する。空気の流れとは異なる技術で皮膚の表面170の冷却が実施される場合には、全てのセンサーが、皮膚の表面の冷却に関わる物理量を測定するように動作される必要がある。
【0036】
図1に示す実施形態では、治療ユニット120は、治療領域の事前調整及び標的の治療の双方に使用される単一の設定でレーザエネルギーを供給する。すなわち、事前調整に最適にされたレーザエネルギーに続いて、治療に最適にされた異なるレーザエネルギーを連続的に供給するのではなく、治療ユニット120は、レーザエネルギー設定を修正することなく、単一の連続的な照射プロトコルで、事前調整及び治療の双方に使用されるレーザエネルギーを同じにして供給する。この統合型プロトコルは、時間を節約でき、且つ治療の適用を単純にする。
【0037】
図2を参照して説明すると、治療システム120は、さらに、使用者によって保持される機器の部分(ハンドピース)であるスキャナー160を備える。皮膚の表面170を介して皮膚171と接触しているスキャナー160は、例えば、銃と同様の形状で製造されて、使用者による操作を容易にし得る。スキャナー160は、チューブ162を通して冷却ユニット110と通信するため、冷却プロトコルは、スキャナー160を使用して適用され得る。スキャナー160は、接続部166を通して、皮膚温度センサー128に、さらに、冷却センサー112に接続されて、制御器122へデータを送信する。さらに、スキャナー160は、レーザ124のオン/オフを切り替えるためのオン/オフスイッチ210を備え、オプションとして、スキャナー160の動作ステータス、例えば、レーザが使用されているかどうかを示す、スキャナー160のモニター212を備える。制御盤205は、スキャナーユニット160が治療システム120と通信できるようにする。レーザ装置124からの出力部は、光ファイバー164によってスキャナー160に接続されるため、治療プロトコルは、スキャナー160を使用して適用され得る。光ファイバー164は、例えば、断面が正方形の、長さ3メートルのファイバーとし得る。
【0038】
冷却接続部162は、治療領域に冷却流体(例えば、冷気流)を搬送するように構成されている冷却搬送ユニット202に接続される。冷却搬送ユニット202は、皮膚の表面170と接触するチップ211に接続される。チップ211は、冷却中の皮膚の表面上で、一様な温度分布、又は、2点間のばらつきが大きくても±2℃を確保するように設計される。
【0039】
図3は、治療すべき発色団に渡る治療領域の例を示す。仮想グリッド形態が、治療領域に渡って重ね合わせられている。グリッド形態300の例では、2×2マトリックスに配置された4個のブロック303、304、305及び306を含む。他の多くのグリッド形態、例えば1×1、2×1、2×2、3×2、2×3、3×4、3×3などが可能である。レーザビームもまた、ブロック間では間を空けられ、又はブロック間で重ね合わせてよい。
【0040】
事前冷却プロトコルは、例えば、所定時間、例えば10秒間、治療領域に冷気流を当てることである。事前冷却後、冷却作用は続けたままで、治療プロトコルを開始してよい。実施形態の一つでは、断面が正方形のレーザビームは、スキャナー装置と組み合わされて、ブロック303、304、305及び306に対してレーザパルスを連続的に照射する。実施形態の一つによれば、事前調整/光治療プロトコルは、治療領域にある、連続的に治療すべきブロック毎に、予め決められた数の光パルスを照射する。別の実施形態では、各ブロックは、順不同に治療される。
【0041】
図4は、実施形態の一つによる事前調整/光治療プロトコルに好適な1組のパルスの例を示す。パルス列400は、治療領域内にあるブロック303~306のうちの1つに照射される光パルス401、402、403、404、405、406及び407を有する。実施形態の一つでは、7個全てのレーザパルスが、同じパワーであり、マトリックスパルス遅延と呼ぶ、均一なパルス間隔時間409によって分離されている。一例では、レーザパルス401の持続時間は150ミリ秒であり、複数のパルス群間の間隔は2秒である。一連のパルス間の、例えば、2秒の間隔の目的は、ブロック内の皮膚及び下層にある皮膚が冷えて、損傷を防ぐことができるようにするためである。パルスの間隔時間の間、レーザは、治療領域にある他のブロックに移動されて、レーザの使用効率を高め得る。
【0042】
図5は、実施形態の一つによる、図4に示すような事前調整/光治療プロトコルに好適な1組のパルスでの皮膚の表面温度の例を示す。シーケンス500又は510は、それぞれ光パルス401~407に起因する、皮膚のブロックのうちの1つ、例えば303において皮膚温度センサー128で記録されたピーク温度501、502、503、504、505、506、507を有する。
【0043】
図5は、事前調整/光治療プロトコルに則った事後冷却ステップ508を示す。このステップでは、冷却ユニット110は、皮膚の表面の温度を正常な生理的温度(例えば、37℃)へ戻す時間、機能し続ける。事後冷却時間は、皮膚温センサー128によって読み取られる温度値、及び冷却センサー112によって読み取られる冷却流体の物理的パラメータを解析するコンピュータ121によって、制御器122を用いて冷却ユニットの制御盤111の動作を制御することにより、調整及び制御される。
【0044】
図6は、図4に示すレーザパルスなどのようなレーザパルスを用いて、この例では皮膚の表面から800ミクロンの箇所にある標的発色団について計算された温度を示す。
【0045】
したがって、一連のレーザパルスのパルス列400は、皮膚の表面で一連のピーク温度500を引き起こし、それらが、7つのピーク温度601、602、603、604、605、606及び607で構成される皮膚内でのピーク温度値群600を引き起こす。光パルス401~407、皮膚の表面温度ピーク501~507及び標的の温度ピーク601~607との間には、明確な相関関係があることに気づき得る。図5に示す例では、治療領域は、10秒間の直接的な空冷によって事前冷却されており、その後、冷却がアクティブなまま、光パルスが、5.0mmのビームサイズ、正方形プロファイル、22ワット、1726nmの波長、及び2.1秒の間隔時間で、150ミリ秒の持続時間を有して、レーザ装置によって照射された。この例では、事前冷却に及び治療中に使用される直接的な空冷は、-22℃に冷却された高速の空気柱を、皮膚と空気との間の熱貫流係数を約<H=600W/mKに定めて、搬送する。
【0046】
レーザビームの正確なサイズは、例えば、コリメートレンズを使用して、治療領域のサイズ、レーザのパワープロファイル、体の治療領域の位置及び他の要因に応じて、調整され得る。
【0047】
次に、図4図5及び図6を参照して説明すると、光パルス401、402、403、404、405及び406は、皮膚の表面上の温度がピーク501での約20℃からピーク506での約44℃へ上昇し、対応して、発色団の温度がピーク601での約55℃からピーク606での約75℃へ上昇するため、事前調整効果を実質的に引き起こしている。このようにして、単に、同じ特徴を持つ光パルスを繰り返し照射することによって、事前調整プロトコル及び治療プロトコルは、効果的に統合されるため、本発明によるシステム及び光治療プロトコルとは異なる、別個の事前調整システム及びプロトコルの必要性が無くなる。
【0048】
事前調整のために照射される光パルスの数は、治療を実施する光パルスの数よりもわずかに多いことにも留意すべきである。この特徴は、事前冷却の効果と治療中の疼痛の管理のための事前調整の効果とを釣り合わせることが困難であることに起因して事前調整に用いられる時間を最小限まで短くしようとしていた既存の治療システムとは、逆である。本明細書で説明したシステム及び方法は、治療が、事前調整に使用されるものと同じパルス設定を使用するため、事前調整時間を最小限まで短くするという懸念を不要にする。
【0049】
患者の不快感をできるだけ少なくして、特定の発色団の標的を定めた光温熱治療に成功する必要条件は:
1) 表皮のピーク温度値が、約55℃未満であり、どんな場合も45~60℃となることを確保すること。
2) 治療パルスの平均パワーを冷却システムの熱除去と釣り合わせることによって、真皮の過熱を防止すること;及び
3) 皮脂腺の治療には、55℃を上回るピーク温度など、標的発色団を選択的に加熱すること
である。
【0050】
本明細書で説明する実施形態は、遥かに単純なシステム及びプロトコルを用いて、既存のシステムと同等の効果を達成する。
【0051】
治療プロトコル中に照射されるパルス数(N)は、冷却の有効性、レーザパワー、パルス振幅及びパルス周波数などの変数に応じて、2パルス~約100パルスの範囲に渡り得ることに留意すべきである。さらに、照射されるパルス数(N)は、患者の年齢、人種及び性別に依存する。
【0052】
特定のブロックに1個のレーザパルスを照射し、その後、別のブロックへレーザを動かして、別のレーザパルスを照射するのではなく、代わりに、ラスター走査プロセスを行って治療領域を通じて連続波レーザ走査してもよい。この場合、ラスター走査では、皮脂腺の温度上昇は、皮脂腺のサイズ及びビームの走査速度のたたみ込みとして、計算され得る。
【0053】
上述の治療プロトコルの利点は、パルス列の第1のパルスが、特定の治療シナリオに関する重要な情報を提供するための測定「プローブ」として機能し得ることである。
【0054】
文献から、組織のパラメータ、例えば、表皮及び真皮の厚さは、年齢、性別及び民族性などの要因に基づいて個人によって、並びに皮膚の異なる領域間で、異なることが分かっている。例えば、額の皮膚は、同じ人でも、背中の皮膚とは異なる特性を有し、それにより、異なる治療位置には異なる治療パラメータが必要になる。特定の治療プロトコルを決定する際に組織の特性の、これらのばらつきを考慮することは、レーザによる座瘡の治療では重要である。
【0055】
一例として、座瘡のレーザ治療において、熱的動作範囲は、表皮の上面に、約55℃の真皮の損傷閾値温度に、及び皮脂腺を約≧75℃である、その損傷閾値にするのに必要なより低い温度限界値に、通常、関連している。治療プロトコルによって標的に定められた皮脂腺の温度を直接測定する方法はないため、皮膚の表面温度が、皮脂腺、より一般的には標的の温度の表示としてよい。それゆえ、皮脂腺、より一般的には皮膚内の標的の温度と、皮膚の表面の温度との対応を提供する相関モデルを使用して治療プロトコルに適応させてよい。相関モデルは、例えば、特定の治療プロトコルの適用を前提として、皮膚の表面温度を、皮脂腺、より一般的には標的の損傷と相関する熱伝達解析モデルを使用して、作りだされ得る。本発明では、この相関モデルは、皮膚温度センサー128及び冷却センサー112からのデータをリアルタイムで解析するコンピュータ121によって、実行される。相関モデルは、有限要素法計算によって処理される。このモデルに含まれる物理定数(例えば、比熱、皮膚密度など)は、コンピュータ121のメモリのデータベースに入力される。治療の対象となり、使用者/皮膚科医によって選択される組織の部分に応じて、これらの定数は検索されて、相関モデルに適切に含まれる。
【0056】
特に、皮膚の特定点を考慮して、さらに、レーザシステム124が放出し、光ダイオード125によって測定される電磁波照射のパワーの値、冷却センサー112によって測定される冷却流体、例えば、空気の流れの温度、圧力及び速度、並びに皮膚温度センサー128によって測定される皮膚の表面温度に基づいて、標的の温度は、以下の式によって決定される。
【数1】
式中、
ρ、k、Cは、それぞれ:操作者/皮膚科医によって設定される、皮膚での治療の特定の箇所(額、背中、頬など)、患者の年齢、性別及び人種に関する、定圧での密度、熱伝導率及び熱容量であり;
Qは、光ダイオード125によって測定されるレーザ照射線のパワーから分かる、レーザ照射線の吸収の結果として発生される熱量であり、Qbioは、冷却施術及び加熱施術前の、皮膚温度センサー128によって測定される組織の代謝熱であり;
airは、冷却センサー112によって測定される冷却作用物質の温度であり、
Tは、皮膚温度センサー128によって測定される温度である。
【0057】
したがって、相関モデルは、皮膚温度センサー128によって実施される皮膚の表面170の温度測定から始めて、治療されるべき組織の部分の三次元プロファイルを処理し、その各点に初期温度値を割り当てる。その後、冷却センサー112によって測定される冷却流の温度、圧力及び速度の値、並びに皮膚温度センサー128によって測定される皮膚の表面温度値から始めて、表面に対する冷却流体の影響が評価される。
【0058】
相関モデルは、測定した値から始めて、さらに、レーザ照射線のパラメータを把握して、組織の全ての点における温度を提供できる。
【0059】
さらに、相関モデルは、ここでも上述の式に基づいて、吸収される熱の放散モードをほどなく予測できる。
【0060】
こうして、本発明では、使用者/皮膚科医は、皮膚温度センサー128及び冷却センサー112によってリアルタイムで提供されるデータを解析するコンピュータ121により実行される相関モデルを利用して、ディスプレイ126を通して、皮脂腺、より一般的には標的の温度を知ることができる。
【0061】
例えば、皮脂腺の損傷温度は、75℃超であることが知られている。ピーク505での40℃未満の皮膚の表面温度では、皮脂腺に対する損傷はないとされており、実際、ピーク605での皮膚の表面温度は75℃を下回る。ピーク506で、皮膚の表面の温度が40℃~55℃の間であると、皮脂腺に対する損傷の程度が、ピーク606及び607で、温度が75℃よりも高い場合の破壊的な損傷の程度とは、異なる。本発明による処置では、表皮組織及び真皮組織に対する熱損傷が確実に生じないようにすることができる。
【0062】
革新的な解析プロトコルを治療法に取り入れることにより、表皮の最終温度の測定値から、より低いレーザ出力での治療を推定して個々人に合わせた治療パラメータを直接決定して、表皮に対する損傷を回避するとともに、皮脂腺を効果的に損傷させることができる。このようにして、治療プロトコルは、個人の特定の治療領域に対して個々人に合わされ、特定の機械のレーザパワーのばらつきに起因し得る治療のばらつきと、周囲湿度、大気圧及び温度などの治療条件のばらつきとを抑制することができる。
【0063】
例えば、最初の4つのパルス401~404の最中に、皮膚の表面温度をピーク501~504で直接測定することによって、後続のパルス507を照射した後の皮膚の最高表面温度が、図5及び図6のピークの曲線を使用して高精度で予測され得る。それゆえ、コンピュータ121によって実行される相関法によって、皮脂腺、より一般的には標的の損傷温度に、いつ達するかを予測できる。この予測は、制御器122を通して、レーザ治療プロトコル128及び冷却プロトコル110の特定のパラメータを修正し、照射されるパルス数を減少させてパルスの持続時間を調整するか、又は後続のパルスのレーザのパワーを修正して、全ての皮膚条件(年齢、性別、位置、人種)の場合において、標的の損傷温度に達するように、利用できる。このパーソナライズしたプロセスは、治療中の患者の快適さ及び安全性を著しく向上させる。
【0064】
実施形態の一つでは、コンピュータ121によって実行される解析に従って、制御器122は、スキャナーを最も効果的な方法で、例えば、隣接する点間の熱の重なりを回避するように案内するために、スキャナーの制御器205にトリガーを送信し、ある範囲の値又はシーケンスモードを修正してもよい。ブロック303、304、305及び306は、ブロック304、305、303及び306などの順でもよい。
【0065】
図7は、実施形態の一つによる、コンピュータ121及び制御器122によって実行される解析プロトコルのプロセスの例を説明するフロー図を示す。解析プロトコルは、事前冷却ステップ(701、702及び703)中と、レーザ及び冷却ステップ(704、705、706、707、708及び709)中と、事後冷却ステップ(710)中とで、機能する。解析プロトコルは、事前冷却中の皮膚表面の温度の分布が、可能な限り一様である(例えば、±2℃)と仮定している。したがって、解析プロトコルは、皮膚の表面の最高温度及び標的(例えば皮脂腺)の損傷閾値の温度が知られていると仮定している。さらに、皮膚の表面温度と標的(例えば、皮脂腺)との間の相関モデルが、コンピュータ解析、例えば、熱伝達の有限要素モデリングを使用して確立されている。
【0066】
図7に示すように、解析プロトコル700が、ステップ701において、治療領域への事前冷却の施術を開始する。冷却流体の温度及び圧力は、冷却センサー112によって監視され、皮膚の温度は、皮膚温度センサー128によって監視される。その後、治療領域の皮膚の表面温度が、ステップ702において測定される。表面温度が、十分に一様である、できれば、±2℃である場合、解析プロトコルは、レーザを治療されるべき領域へ照射するステップ704へ進む。そうでない場合、コンピュータ121及び制御器122は、冷却ユニットの調整器111に作用して、所望の温度の分布の一様性を得るようにする。
【0067】
こうして、解析プロトコル700は、低出力レーザパルスの照射を開始する。光ダイオード125によって監視されるレーザのパワーは、皮膚の損傷閾値を下回る値に設定される必要がある。その後、ステップ705において、治療領域の皮膚の表面温度が測定される。温度は、例えば、赤外線カメラ等の装置を使用して測定され得る。その後、集められたデータを、コンピュータ121によって予め定められた相関モデルに適応するのに十分なデータが集まったか否かを、ステップ706で判断する。ステップ706の判断で、答えが否である場合、プロセスは、ステップ704へ戻り、その時点で、より低い異なるパワー設定のレーザパルスが、制御器122によって治療領域へ照射されて、照射されるレーザ出力と皮膚の温度との間のさらなる相関データを収集される。必要な場合には、制御器122は、調整器111の冷却ユニットによって冷却パラメータを変更してよい。
【0068】
ステップ706で、判断に対する答えが肯定である場合、解析プロトコル700は、ステップ707における、確立された相関モデルへの、測定された皮膚温度のデータの適応へ進む。それに続いて、個人の特定の治療領域のレーザ及び冷却システムのパラメータが、ステップ708においてコンピュータ121によって決定される。それらは、制御器122によってレーザ124及び冷却システム110へ送信される。最後に、ステップ709において、ステップ708で見出された適切なレーザ及び冷却パラメータに従って、個人の特定の治療領域に使用されるべき正確な治療プロトコルが、修正される。
【0069】
解析プロトコルは、実際の治療施術の前に、例えば、患者が予約の手続きをするときに、又は事前治療施術において、実行してもい。より低いパワーが使用されるため、解析プロトコルは、局部麻酔の必要なく、実行でき、解析ステップ中に、表皮又は真皮の損傷が発生しないことを保証する。例えば、治療の準備において、熟練した操作者が、様々な治療点の事前測定を迅速に実施し得、皮膚を走査することによって、パーソナライズされた治療プロトコルを構築できる。
【0070】
レーザパワーと、患者の皮膚の表面の温度、皮膚の位置、及び/又は機器との間の関係を確立すると、この関係は、施術中の治療を連続的に調整するために使用してよい。
【0071】
レーザシステムのパワーと皮膚の表面の温度との関係が線形であることを実証できる。傾斜度は、治療が実施されている領域のタイプに応じて変化する。したがって、ある患者のある皮膚の部分では、高出力値での線形推定を得るために、低出力値で一連の治療を実施することが可能である。低出力値とは、供給されるパワーは、患者にどんなタイプの損傷又は疼痛も引き起こさないレベルを意味する。当然ながら、本発明に係るフィードバックシステムは、レーザパワーが低いことも特徴とするが、上述した予測プロセスのお陰で、より高いパワーにおいても生物組織に損傷を引き起こさないことを保証する。以前の治療位置において達した皮膚の温度に基づいて、皮膚科医は、レーザのパワー及び冷却パラメータを調整するのに必要なアドバイスを受け取ることができ、又、機器は、次の治療位置に対して自動的に調整され得る。
【0072】
以上のように、説明した解析プロトコルにより、標的の治療及び治療システムの設定において、皮膚疾患治療に関するパラメータ、すなわち、生物組織(種々のタイプの皮膚、種々の皮膚の部分など)関するパラメータの全てのばらつきの管理を可能にすることが明らかである。
【0073】
本発明による予測法は、周囲温度値、平衡状態の皮膚の表面温度の値、外圧の影響による皮膚の生理的状態(例えば灌流速度又は血液温度)、及び、より一般的には、外部環境条件(例えば、風速)に関わらず、機能する。
【0074】
本発明によるシステムは、第1のレーザパルス、例えば、4つのパルス、によって生成された表面温度プロファイル801を取得した後、以下の式に従って、最高温度値802の予測、好ましくは最低値803の予測も行う:
【数2】
【0075】
これら2つの曲線は、ピーク温度802、803(それぞれT0max及びT0min)の予測線を表し、これらは、実施された測定の包絡線の延長に対応する。
【0076】
max及びTminは、測定された温度及び予測された温度の包絡線を表す曲線である。
【0077】
1max及びT1minは、皮膚の表面に対する第1のパルスの影響を表す温度値を表す。
【0078】
0max及びT0minは、レーザパルスの影響としての皮膚の表面での温度の上昇率を表す。
【0079】
このように、本発明によるシステムは、治療での後続のパルス、例えば、後続の4つのパルス804を予測できるため、周囲組織に対する損傷を回避して、標的への熱損傷の達成を可能にする最高表面温度805に達することができる。この予測プロトコルにおいて使用される各パラメータは、処理パラメータの関数である。それゆえ、後者を変更することによって、プロセスの変数の全てのばらつきを制御することが可能である。詳細には、レーザ源のパワーを変更することによって、温度勾配801は線形に変化する。上記で提供された複数の例は、座瘡の部分的な治療及び/又は根治のための皮脂腺の損傷に述べている。しかしながら、当業者には、本発明による装置及び方法は、皮膚科学の全分野、特に脱毛に適用可能であることが明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
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図8