(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】測位システム及び端末
(51)【国際特許分類】
G01C 21/30 20060101AFI20221130BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20221130BHJP
G08G 1/13 20060101ALI20221130BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
G01C21/30
G08G1/09 F
G08G1/13
G09B29/10 A
(21)【出願番号】P 2021552342
(86)(22)【出願日】2020-10-06
(86)【国際出願番号】 JP2020037877
(87)【国際公開番号】W WO2021075318
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2019191192
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121980
【氏名又は名称】沖山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100128107
【氏名又は名称】深石 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰士
(72)【発明者】
【氏名】林 宏樹
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-199572(JP,A)
【文献】特開2012-208525(JP,A)
【文献】特開2007-333385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/30
G08G 1/09
G08G 1/13
G09B 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末において撮像された画像データに基づき測位を行う測位システムであって、
予め取得された画像データに含まれる特徴点の特徴量と該特徴点に関連付けられた絶対的な位置情報であるグローバル位置情報とが対応付けられたマップデータを記憶する記憶部と、
前記端末において撮像された画像データと、前記記憶部に記憶されているマップデータとに基づいて、前記端末における撮像時の前記端末のグローバル位置情報を推定するグローバル位置推定部と、
ある地点を基準とした前記端末の相対的な位置情報であるローカル位置情報を継続的に取得し、前記グローバル位置情報及び前記ローカル位置情報に基づき前記端末の位置情報を導出する位置導出部と、
前記位置導出部によって取得される前記ローカル位置情報の信頼度が、所定の信頼度条件を満たしているか否かを判定する判定部と、を備え、
前記位置導出部は、前記端末において連続的に撮像される画像データ間で特徴点の位置を比較し、特徴点の変位に基づいて、前記ローカル位置情報を取得し、
前記判定部は、前記端末において連続的に撮像される画像データ間で、特徴点の位置、数、及び密度の少なくともいずれか一つの変化量が所定の閾値を上回る場合に、前記ローカル位置情報の信頼度が前記所定の信頼度条件を満たしていないと判定
し、前記ローカル位置情報の信頼度が前記所定の信頼度条件を満たしていない場合に、前記グローバル位置推定部に対して、前記グローバル位置情報の再推定指示を出力し、
前記グローバル位置推定部は、前記判定部から前記再推定指示を受けると、前記端末において新たに撮像された画像データと前記マップデータとに基づいて前記グローバル位置情報を再推定する、測位システム。
【請求項2】
端末において撮像された画像データに基づき測位を行う測位システムであって、
予め取得された画像データに含まれる特徴点の特徴量と該特徴点に関連付けられた絶対的な位置情報であるグローバル位置情報とが対応付けられたマップデータを記憶する記憶部と、
前記端末において撮像された画像データと、前記記憶部に記憶されているマップデータとに基づいて、前記端末における撮像時の前記端末のグローバル位置情報を推定するグローバル位置推定部と、
ある地点を基準とした前記端末の相対的な位置情報であるローカル位置情報を継続的に取得し、前記グローバル位置情報及び前記ローカル位置情報に基づき前記端末の位置情報を導出する位置導出部と、
前記位置導出部によって取得される前記ローカル位置情報の信頼度が、所定の信頼度条件を満たしているか否かを判定する判定部と、を備え、
前記判定部は、前記位置導出部において継続的に取得される前記ローカル位置情報の所定時間内における変化量が所定の閾値を上回る場合に、前記ローカル位置情報の信頼度が前記所定の信頼度条件を満たしていないと判定
し、前記ローカル位置情報の信頼度が前記所定の信頼度条件を満たしていない場合に、前記グローバル位置推定部に対して、前記グローバル位置情報の再推定指示を出力し、
前記グローバル位置推定部は、前記判定部から前記再推定指示を受けると、前記端末において新たに撮像された画像データと前記マップデータとに基づいて前記グローバル位置情報を再推定する、測位システム。
【請求項3】
端末において撮像された画像データに基づき測位を行う測位システムであって、
予め取得された画像データに含まれる特徴点の特徴量と該特徴点に関連付けられた絶対的な位置情報であるグローバル位置情報とが対応付けられたマップデータを記憶する記憶部と、
前記端末において撮像された画像データと、前記記憶部に記憶されているマップデータとに基づいて、前記端末における撮像時の前記端末のグローバル位置情報を推定するグローバル位置推定部と、
ある地点を基準とした前記端末の相対的な位置情報であるローカル位置情報を継続的に取得し、前記グローバル位置情報及び前記ローカル位置情報に基づき前記端末の位置情報を導出する位置導出部と、
前記位置導出部によって取得される前記ローカル位置情報の信頼度が、所定の信頼度条件を満たしているか否かを判定する判定部と、を備え、
前記判定部は、前記位置導出部における、同一の前記グローバル位置情報に基づく前記端末の位置情報の導出期間において前記ローカル位置情報の変化量が所定の閾値を上回る場合に、前記ローカル位置情報の信頼度が前記所定の信頼度条件を満たしていないと判定
し、前記ローカル位置情報の信頼度が前記所定の信頼度条件を満たしていない場合に、前記グローバル位置推定部に対して、前記グローバル位置情報の再推定指示を出力し、
前記グローバル位置推定部は、前記判定部から前記再推定指示を受けると、前記端末において新たに撮像された画像データと前記マップデータとに基づいて前記グローバル位置情報を再推定する、測位システム。
【請求項4】
端末において撮像された画像データに基づき測位を行う測位システムであって、
予め取得された画像データに含まれる特徴点の特徴量と該特徴点に関連付けられた絶対的な位置情報であるグローバル位置情報とが対応付けられたマップデータを記憶する記憶部と、
前記端末において撮像された画像データと、前記記憶部に記憶されているマップデータとに基づいて、前記端末における撮像時の前記端末のグローバル位置情報を推定するグローバル位置推定部と、
ある地点を基準とした前記端末の相対的な位置情報であるローカル位置情報を継続的に取得し、前記グローバル位置情報及び前記ローカル位置情報に基づき前記端末の位置情報を導出する位置導出部と、
前記位置導出部によって取得される前記ローカル位置情報の信頼度が、所定の信頼度条件を満たしているか否かを判定する判定部と、を備え、
前記判定部は、、前記位置導出部における、同一の前記グローバル位置情報に基づく前記端末の位置情報の導出期間が所定の閾値を上回る場合に、前記ローカル位置情報の信頼度が前記所定の信頼度条件を満たしていないと判定
し、前記ローカル位置情報の信頼度が前記所定の信頼度条件を満たしていない場合に、前記グローバル位置推定部に対して、前記グローバル位置情報の再推定指示を出力し、
前記グローバル位置推定部は、前記判定部から前記再推定指示を受けると、前記端末において新たに撮像された画像データと前記マップデータとに基づいて前記グローバル位置情報を再推定する、測位システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、測位システム及び端末に関する。
【背景技術】
【0002】
文献1には、予め撮影することによって得られた地物の画像を含む参照画像及び該参照画像の撮像位置情報が関連付けられたマップデータと、移動体(端末)のカメラによって撮像された現在画像とに基づき、端末の現在位置を推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような測位方法として、サーバ側で、移動体において撮像された画像とマップデータとから実世界座標の自己位置認識(グローバル測位)を行った後に、移動体側で、サーバにおけるグローバル測位の結果とローカルトラッキング結果とに基づき移動体の自己位置認識を行う方法が知られている。常にサーバ側でグローバル測位を行うことは、サーバ負荷の観点、リアルタイムな測位の観点から現実的ではないところ、一度サーバ側でグローバル測位の結果を得た後においては、該グローバル測位の結果を考慮して移動体側でローカルトラッキングを行うことにより、適切に自己位置認識を行うことができる。
【0005】
ここで、移動体における自己位置認識の結果は、あくまでも移動体におけるローカルトラッキングの結果であり、実世界座標に対する相対的な位置であるため、自己位置の認識精度が悪化することが考えられる。
【0006】
本発明の一態様は上記実情に鑑みてなされたものであり、測位精度の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る測位システムは、端末において撮像された画像データに基づき測位を行う測位システムであって、予め取得された画像データに含まれる特徴点の特徴量と該特徴点に関連付けられた絶対的な位置情報であるグローバル位置情報とが対応付けられたマップデータを記憶する記憶部と、端末において撮像された画像データと、記憶部に記憶されているマップデータとに基づいて、端末における撮像時の端末のグローバル位置情報を推定するグローバル位置推定部と、ある地点を基準とした端末の相対的な位置情報であるローカル位置情報を継続的に取得し、グローバル位置情報を及びローカル位置情報に基づき端末の位置情報を導出する位置導出部と、位置導出部によって取得されるローカル位置情報の信頼度が、所定の信頼度条件を満たしているか否かを判定する判定部と、を備え、判定部は、ローカル位置情報の信頼度が所定の信頼度条件を満たしていない場合に、グローバル位置推定部に対して、グローバル位置情報の再推定指示を出力し、グローバル位置推定部は、判定部から再推定指示を受けると、端末において新たに撮像された画像データとマップデータとに基づいてグローバル位置情報を再推定する。
【0008】
本発明の一態様に係る測位システムでは、グローバル位置情報及びローカル位置情報に基づき端末の位置情報を導出するに際して、ローカル位置情報の信頼度が所定の信頼度条件を満たしているか否かが判定され、満たしていない場合には、グローバル位置情報が再推定される。ローカル位置情報については実世界座標に対する相対的な位置であるため、ローカル位置情報を考慮して導出した端末の位置情報は、実際の端末の位置(実世界座標における位置)から乖離することが考えられる。この点、本発明の一態様に係る測位システムでは、ローカル位置情報の信頼度が条件を満たさない(信頼度が低下している)と判定される場合に、グローバル位置情報を再度推定することにより、位置情報を導出する際の起点をリセット(最新化)し、ローカル位置情報の信頼度が低下していない状態から再度端末の位置情報を導出することができる。このことで、端末において撮像された画像データに基づき測位を行う測位システムにおいて、測位精度を向上させることができる。
【0009】
位置導出部は、端末において連続的に撮像される画像データ間で特徴点の位置を比較し、特徴点の変位に基づいて、ローカル位置情報を取得してもよい。これにより、物理的なセンサを用いることなく、撮像した画像データを利用して、簡易且つ高精度にローカル位置情報を取得することができる。
【0010】
判定部は、端末において連続的に撮像される画像データ間で、特徴点の位置、数、及び密度の少なくともいずれか一つの変化量が所定の閾値を上回る場合に、ローカル位置情報の信頼度が所定の信頼度条件を満たしていないと判定してもよい。特徴点の位置、数、または密度が急激に変化した場合には、特徴点の変位に基づくローカル位置情報の取得精度が低下することが考えられる。このため、連続的に撮像される画像データ間で特徴点の位置、数、及び密度の少なくともいずれかの変化量が所定の閾値を上回る場合にローカル位置情報の信頼度が信頼度条件を満たしていないと判定することにより、ローカル位置情報の信頼度が低下している可能性が高いと思われる場合に適切にグローバル位置情報の再推定を行い、測位精度を向上させることができる。
【0011】
判定部は、位置導出部において継続的に取得されるローカル位置情報の所定時間内における変化量が所定の閾値を上回る場合に、ローカル位置情報の信頼度が所定の信頼度条件を満たしていないと判定してもよい。ローカル位置情報の所定時間内における変化量が過度に大きい場合(すなわち、急激な移動が検知された場合)には、何らかの理由によりローカル位置情報の取得精度が低下していると考えられる。このため、ローカル位置情報の所定時間内における変化量が所定の閾値を上回る場合にローカル位置情報の信頼度が信頼度条件を満たしていないと判定することにより、ローカル位置情報の信頼度が低下している可能性が高いと思われる場合に適切にグローバル位置情報の再推定を行い、測位精度を向上させることができる。
【0012】
判定部は、位置導出部における、同一のグローバル位置情報に基づく端末の位置情報の導出期間においてローカル位置情報の変化量が所定の閾値を上回る場合に、ローカル位置情報の信頼度が所定の信頼度条件を満たしていないと判定してもよい。同一のグローバル位置情報に基づいて端末の位置情報を導出している期間においてローカル位置情報の変化量が大きい場合(すなわち、グローバル位置情報の推定に成功してからの移動距離が長くなっている場合)には、長距離の移動によりローカル位置情報の累積誤差が蓄積してローカル位置情報の取得精度が低下していると考えられる。このため、同一のグローバル位置情報に基づく端末の位置情報の導出期間においてローカル位置情報の変化量が所定の閾値を上回る場合にローカル位置情報の信頼度が信頼度条件を満たしていないと判定することにより、ローカル位置情報の信頼度が低下している可能性が高いと思われる場合に適切にグローバル位置情報の再推定を行い、測位精度を向上させることができる。
【0013】
判定部は、位置導出部における、同一のグローバル位置情報に基づく端末の位置情報の導出期間が所定の閾値を上回る場合に、ローカル位置情報の信頼度が所定の信頼度条件を満たしていないと判定してもよい。同一のグローバル位置情報に基づき位置情報を導出する期間が長くなっている場合(すなわち、グローバル位置情報の推定に成功してからの経過時間が長くなっている場合)には、長時間の経過によりローカル位置情報の累積誤差が蓄積してローカル位置情報の取得精度が低下していると考えられる。このため、同一のグローバル位置情報を基づく端末の位置情報の導出期間が所定の閾値を上回る場合にローカル位置情報の信頼度が信頼度条件を満たしていないと判定することにより、ローカル位置情報の信頼度が低下している可能性が高いと思われる場合に適切にグローバル位置情報の再推定を行い、測位精度を向上させることができる。
【0014】
本発明の一態様に係る端末は、撮像した画像データをサーバに送信し、該サーバと連携して測位を行う端末であって、ある地点を基準とした端末の相対的な位置情報であるローカル位置情報を継続的に取得し、画像データに基づきサーバにおいて推定されたグローバル位置情報及びローカル位置情報に基づき端末の位置情報を導出する位置導出部と、位置導出部によって取得されるローカル位置情報の信頼度が、所定の信頼度条件を満たしているか否かを判定する判定部と、を備え、判定部は、ローカル位置情報の信頼度が所定の信頼度条件を満たしていない場合に、サーバに対して、新たに撮像した画像データに基づくグローバル位置情報の再推定指示を送信する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、測位精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る測位システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図2】ローカルトラッキングの累積誤差を説明する図である。
【
図3】ローカルトラッキングにおける異常な移動の検知について説明する図である。
【
図4】測位システムが行う処理を示すフローチャートである。
【
図5】ローカルトラッキングの信頼度判定処理を示すフローチャートである。
【
図6】測位システムに含まれる位置測位サーバ及び通信端末のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る測位システム1の機能構成を示すブロック図である。
図1に示す測位システム1は、通信端末50(端末)において撮像された画像データに基づき測位を行う測位システムである。測位システム1は、例えば、通信端末50の位置に応じてAR(Augmented Reality)コンテンツを提供するサービスにおいて、通信端末50の測位を行うシステムである。以下では、測位システム1がARコンテンツを提供するサービスに係るシステムであるとして説明するが、測位システム1は他の用途に係るシステムであってもよい。測位システム1は、位置測位サーバ10と、通信端末50とを備える。なお、
図1においては通信端末50が1台のみ示されているが、実際には通信端末50は複数台含まれていてもよい。
【0019】
位置測位サーバ10は、通信端末50において撮像された画像データに基づき、撮像時における通信端末50の絶対的な位置情報であるグローバル位置情報を推定する。位置測位サーバ10は、記憶部11と、測位部12(グローバル位置推定部)とを有する。
【0020】
記憶部11は、予め取得された画像データに含まれる特徴点の特徴量(例えば輝度方向ベクトル)と該特徴点に関連付けられた絶対的な位置情報であるグローバル位置情報とが対応付けられたマップデータ100を記憶する。このようなマップデータ100は、例えば、対象物を複数の異なる方向から同時に撮像可能なステレオカメラ(不図示)等によって予め撮像された大量の画像データに基づき生成されるものである。特徴点とは、画像中において際立って検出される点であり、例えば他の領域と比べて輝度(強度)が大きい(又は小さい)点である。特徴点のグローバル位置情報とは、特徴点に関連付けて設定されたグローバル位置情報であり、画像中の特徴点が示す領域についての現実世界におけるグローバル位置情報である。なお、各特徴点に対するグローバル位置情報の関連付けは、従来から周知の方法によって行うことができる。
【0021】
記憶部11は、マップデータ100の特徴点のグローバル位置情報として3次元の位置情報を記憶している。記憶部11は、特徴点の3次元のグローバル位置情報として、例えば、特徴点の緯度・経度・高さを記憶している。記憶部11は、マップデータ100についてグローバル位置情報に応じて一定の領域毎に分割した複数の分割マップデータを記憶していてもよい。
【0022】
測位部12は、通信端末50において撮像された画像データと、記憶部11に記憶されているマップデータ100とに基づいて、通信端末50における撮像時の通信端末50のグローバル位置情報(3次元の位置情報)を推定する。具体的には、測位部12は、マップデータ100の特徴点と、通信端末50において撮像された画像データの特徴点とのマッチングを行い、撮像された画像データに対応するマップデータ100の領域を特定する。そして、測位部12は、特定した領域に係るマップデータ100の特徴点に関連付けられたグローバル位置情報に基づいて、画像データの撮像位置(すなわち、撮像時における通信端末50のグローバル位置情報)を推定する。測位部12は、測位結果を通信端末50に送信する。なお、測位結果には、グローバル位置情報に加えて画像データから推定される方向(ロール、ピッチ、ヨーの3次元座標中の方向)に関する情報が含まれていてもよい。
【0023】
測位部12は、通信端末50から再推定指示を受けたことを契機として、該通信端末50において新たに撮像された画像データとマップデータ100とに基づいてグローバル位置情報を再推定し、測位結果を通信端末50に送信する。このように、測位部12は、ある通信端末50について最初にグローバル位置情報を推定した後は、通信端末50から再推定指示を受けた場合に限り、該通信端末50のグローバル位置情報の再推定を行ってもよい。
【0024】
通信端末50は、例えば無線通信が可能な端末であり、例えばスマートフォン、タブレット型端末、PC等である。通信端末50は、例えば実装されたアプリケーションをユーザが利用することによって、コンテンツサーバ(不図示)からARコンテンツの提供を受ける。通信端末50では、例えばアプリケーションが実行されると、実装されたカメラによる撮像(継続的な撮像)が開始される。そして、通信端末50は、撮像された画像データに応じて位置測位サーバ10によって推定される測位結果、撮像された画像データ、及び、通信端末50のカメラの情報(画角等)等に基づいて、コンテンツサーバ(不図示)からARコンテンツを含むコンテンツの提供を受ける。通信端末50は、撮像部51と、記憶部52と、判定部53と、位置導出部54と、を備える。
【0025】
撮像部51は、カメラによる画像データの撮像を制御する機能である。撮像部51は、例えば、ARコンテンツの提供を受けるアプリケーションの実行が開始されたタイミングで、カメラによる画像データの撮像を開始する。撮像部51は、撮像を開始すると、アプリケーションの実行が終了するまで、継続的にカメラによる撮像を行う。撮像された画像データは、記憶部52に格納され、位置測位サーバ10によるグローバル位置情報の推定、位置導出部54による通信端末50の位置情報の導出、及び判定部53による判定(詳細は後述)に用いられる。
【0026】
記憶部52は、撮像部51による撮像結果、位置測位サーバ10によるグローバル位置情報の推定結果、並びに、位置導出部54により取得されるローカル位置情報及び導出される通信端末の位置情報を記憶するデータベースである。
【0027】
位置導出部54は、ある地点を基準とした通信端末50の相対的な位置情報であるローカル位置情報を継続的に取得し、グローバル位置情報及びローカル位置情報に基づき通信端末50の位置情報を導出する。ある地点とは、例えば通信端末50においてアプリケーション(ARコンテンツの提供を受けるアプリケーション)の実行が開始された地点である。位置導出部54は、例えばアプリケーションの実行が開始された地点の3次元の緯度・経度・高さを基準(座標(x,y,z)が(0,0,0))とし、当該地点からの3次元の緯度・経度・高さの変化量を継続的に取得することにより、当該地点を基準とした通信端末50の相対的な位置情報であるローカル位置情報をトラッキングする(ローカルトラッキングする)。
【0028】
そして、位置導出部54は、グローバル位置情報と、ローカル位置情報とに基づき通信端末50の位置情報を導出する。位置導出部54は、グローバル位置情報を起点として、そこからの移動量(ローカル位置情報に示される移動量)を考慮して、通信端末50の位置情報を導出する。具体的には、位置導出部54は、グローバル位置情報と、該グローバル位置情報の導出に係る画像データが撮像された時点のローカル位置情報と、現在のローカル位置情報とから、グローバル位置情報を起点とした移動量を導出し、通信端末50の位置情報を導出する。
【0029】
位置導出部54は、例えば撮像部51によって連続的に撮像される画像データ間で画像データに含まれる特徴点の位置を比較し、特徴点の変位(画像データ間で同じ特徴点がどれだけ動いたかを示す情報)に基づいて、ローカル位置情報を取得してもよい。このようなローカルトラッキングは、例えば通信端末50のSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)エンジンにより行われる。すなわち、位置導出部54は、SLAMエンジンの機能により、ある時点において撮像された画像データの特徴点を1フレーム前の画像データの特徴点と比較し、特徴点の位置・数・密度の変化を計測することで、通信端末50の位置・角度の変化を計測している。SLAMエンジンでは、連続的に撮像される画像データに基づき、リアルタイムで、特徴点の特徴量(例えば輝度方向ベクトル)と該特徴点に関連付けられた位置情報とがマッピングされたマップデータが生成される。位置導出部54は、このようなマッピングとローカルトラッキングとを繰り返し実行する。
【0030】
なお、以下では位置導出部54が上述した画像データを用いたローカルトラッキングを行うとして説明するが、位置導出部54は通信端末50が実装するセンサから3次元のローカル位置情報を継続的に取得するものであってもよい。すなわち、位置導出部54は、デバイスに搭載されたセンサを利用した自律航法技術を利用してもよい。この場合、通信端末50が実装するセンサは限定されないが、例えば慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)を用いたVisual SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)や、カメラセンサ、デバイス(通信端末50)に搭載された一般的な加速度センサ又はジャイロセンサ等を用いることができる。
【0031】
判定部53は、位置導出部54によって取得されるローカル位置情報の信頼度が所定の信頼度条件を満たしているか否かを判定する。そして、判定部53は、ローカル位置情報の信頼度が所定の信頼度条件を満たしていない場合に、位置測位サーバ10の測位部12に対してグローバル位置情報の再推定指示を出力する。
【0032】
判定部53は、通信端末50において連続的に撮像される画像データ間で、特徴点の位置、数、及び密度の少なくともいずれか一つの変化量が所定の閾値を上回る場合に、ローカル位置情報の信頼度が信頼度条件を満たしていないと判定する。SLAMエンジンでは、通信端末50を急激に移動または回転させた場合に、連続的に撮像される画像データ間で、特徴点の位置、数、または密度が急激に変化する場合がある。このような急激な変化があった場合には、ローカルトラッキングが正確に行われない(ローカル位置情報の取得精度が低下する)ことが考えられる。例えば、通信端末50が横方向に急激に90度回転させられた場合にローカルトラッキングで検知した回転角度が60度になる、等の問題が発生し得る。そこで、判定部53は、通信端末50において連続的に撮像される画像データ間で、特徴点の位置、数、及び密度の少なくともいずれかの変化量が所定の閾値を上回る場合に、ローカル位置情報の信頼度が信頼度条件を満たしていないと判定し、位置測位サーバ10の測位部12に対してグローバル位置情報の再推定指示を出力する。なお、特徴点の位置の変化量の具体的な監視方法は、例えば以下のとおりである。ローカルトラッキング時、毎フレームごとに、各画像データのすべての特徴点までの距離(撮影したカメラからの距離)の合計を監視し、特徴点までの距離の合計が次のフレーム画像データで、1.5倍以上になった場合または1/2になった場合、ローカル位置情報の信頼度が信頼度条件を満たしていないと判定する。また、特徴点の数の変化量の具体的な監視方法は、例えば以下のとおりである。ローカルトラッキング時、毎フレームごとの画像データの特徴点数を監視し、次のフレームで特徴点数が1.5倍になった場合に、ローカル位置情報の信頼度が信頼度条件を満たしていないと判定する。例えば、現在のフレームでは、特徴点数が200だった場合、次のフレームでの特徴点数が300を超えた場合に、信頼度が満たされていないと判定する。特徴点までの距離の合計が次のフレーム画像データで1/2になった場合も上記と同様に考える。
【0033】
判定部53は、位置導出部54において継続的に取得されるローカル位置情報の所定時間内における変化量が所定の閾値を上回る場合に、ローカル位置情報の信頼度が所定の信頼度条件を満たしていないと判定する。SLAMエンジンではリアルタイムで特徴点がマッピングされるところ、例えばローカルトラッキングを実行している際に既存マップデータ中の特徴点群と似ている特徴点群があった場合(似た風景に遭遇した場合)には、誤って既存マップデータ中の似た風景の場所にリローカライゼーションし、ローカル位置情報が急激に変化することが考えられる。ローカルトラッキングが適切に行われている場合には、
図3(a)に示されるように、時間の経過と起点からの距離とが緩やかに変化するのに対して、上述したような誤ったリローカライゼーションが行われた場合には、
図3(b)に示されるように、あるタイミングにおいて、短い期間で起点からの距離が大きく変化する。そこで、判定部53は、ローカルトラッキングにおいて急激な位置の変化を検出した場合(ローカル位置情報の所定時間内における変化量が所定の閾値を上回る場合)に、ローカル位置情報の信頼度が信頼度条件を満たしていないと判定し、位置測位サーバ10の測位部12に対してグローバル位置情報の再推定指示を出力する。なお、所定時間は例えば画像撮影のフレーム間の時間(30フレームでの撮影ならば1/30秒)であり、変化量の所定の閾値は例えば10メートル程度である。
【0034】
判定部53は、位置導出部54における、同一のグローバル位置情報に基づく通信端末50の位置情報の導出期間においてローカル位置情報の変化量が所定の閾値を上回る場合に、ローカル位置情報の信頼度が所定の信頼度条件を満たしていないと判定する。ここでのローカル位置情報の変化量とは、グローバル位置情報を起点とした距離ではなく、グローバル位置情報を起点としたローカルトラッキングの軌跡の長さである。すなわち、例えばグローバル位置情報が示す地点から10メートル進んだ後にグローバル位置情報が示す地点に戻った場合には、ローカルトラッキングの軌跡の長さである10メートル+10メートル=20メートルがローカル位置情報の変化量である。ローカル位置情報の変化量が大きい場合、すなわちグローバル位置情報の推定に成功してからの移動距離が長くなっている場合には、長距離の移動によりローカル位置情報の累積誤差が蓄積してローカル位置情報の取得精度が低下していると考えられる。そこで、判定部53は、同一のグローバル位置情報に基づく通信端末50の位置情報の導出期間においてローカル位置情報の変化量が所定の閾値を上回る場合に、ローカル位置情報の信頼度が信頼度条件を満たしていないと判定し、位置測位サーバ10の測位部12に対してグローバル位置情報の再推定指示を出力する。なお、ローカル位置情報の変化量の所定の閾値は、ローカル位置情報の性能によりチューニングが必要であるが、例えば10メートルの移動を検出した場合にグローバル位置情報の再取得を行う程度が適切である。
【0035】
判定部53は、位置導出部54における、同一のグローバル位置情報に基づく通信端末50の位置情報の導出期間が所定の閾値を上回る場合に、ローカル位置情報の信頼度が所定の信頼度条件を満たしていないと判定する。同一のグローバル位置情報に基づき位置情報を導出する期間が長くなっている場合、すなわちグローバル位置情報の推定に成功してからの経過時間が長くなっている場合には、長時間の経過によりローカル位置情報の累積誤差が蓄積してローカル位置情報の取得精度が低下していると考えられる(
図2参照)。そこで、判定部53は、同一のグローバル位置情報に基づく通信端末50の位置情報の導出期間が所定の閾値を上回る場合に、ローカル位置情報の信頼度が所定の信頼度条件を満たしていないと判定し、位置測位サーバ10の測位部12に対してグローバル位置情報の再推定指示を出力する。なお、導出期間の所定の閾値は例えば5分程度である。
【0036】
なお、判定部53は、上述した信頼度条件の判定処理の前に、ローカルトラッキングの状態に応じた処理を行ってもよい。すなわち、判定部53は、信頼度条件の判定処理の前に、記憶部52を参照し、リアルタイムでローカルトラッキングが行われている状態か否か(ローカル位置情報が導出されているTracking状態か、或いは、ローカル位置情報が導出されていないLost状態か)を判定する。例えば、カメラが手などで遮られた状態や、カメラが真っ白な壁やガラス等の特徴点を抽出できないものを撮像した状態が長時間続くと、ローカルトラッキングに失敗してしまい上述したLost状態となる。Lost状態においては、ローカルトラッキングを行うことができないので、新たにグローバル位置情報を得ても位置情報の導出ができない。この場合には、判定部53は、位置測位サーバ10の測位部12に対してグローバル位置情報の再推定指示を出力しない。一方で、一度Lost状態となった後にTracking状態に復帰した場合には、判定部53は、位置測位サーバ10の測位部12に対してグローバル位置情報の再推定指示を出力し、位置情報の導出を再開する。
【0037】
次に、測位システム1が行う処理について
図4を参照して説明する。
図4は、測位システムが行う処理を示すフローチャートである。
【0038】
図4に示されるように、測位システム1では、アプリケーションの実行が開始されると、通信端末50において継続的にカメラによる撮像が行われて、撮像した画像データに基づき継続的にローカル位置情報が取得される(ステップS1)。また、通信端末50は撮像した画像データを位置測位サーバ10に送信する。
【0039】
そして、位置測位サーバ10においてグローバル位置情報の推定(サーバ測位)が実行される(ステップS2)。具体的には、位置測位サーバ10は、通信端末50において撮像された画像データと、記憶部11に記憶されているマップデータ100とに基づいて、通信端末50における撮像時の通信端末50のグローバル位置情報(3次元の位置情報)を推定する。このように、測位システム1では、アプリケーションの実行が開始されると、サーバ測位が実行される。アプリケーション(ARアプリケーション)を起動した直後は、一度もサーバ測位を行っていない状態であるため、実世界座標とローカルトラッキング座標との対応が取れていない状態である。この場合、実世界座標で構築されたARコンテンツを通信端末50(AR端末)に表示することができない。そのため、ARアプリケーションを起動した直後は可能な限り早くサーバ測位を行い、実世界座標とローカルトラッキング座標との対応をとる必要がある。
【0040】
つづいて、通信端末50において、取得されたローカル位置情報の信頼度が所定の信頼度条件を満たしているか(信頼度があるか)否かが判定される(ステップS3)。ステップS3の処理の詳細については後述する。
【0041】
ステップS3においてローカル位置情報の信頼度が信頼度条件を満たしていないと判定された場合には、通信端末50によって、位置測位サーバ10に対して、新たに撮像した画像データに基づくグローバル位置情報の再推定指示が送信される(ステップS4)。この場合、位置測位サーバ10において再度、グローバル位置情報の推定が実行される(ステップS2)。
【0042】
一方で、ステップS3においてローカル位置情報の信頼度が信頼度条件を満たしていると判定された場合には、通信端末50によって、グローバル位置情報及びローカル位置情報に基づき通信端末50の位置情報が導出される(ステップS5)。そして、通信端末50によって、例えばアプリケーションの実行の終了等により位置情報の導出を終了するタイミングか否かが判定され(ステップS6)、終了する場合には処理が終了し、終了しない場合には再度ステップS3の処理から実行される。
【0043】
次に、上述したステップS3の処理である信頼度条件の判定処理について、
図5を参照して説明する。
【0044】
図5に示されるように、最初に、通信端末50によって、ローカルトラッキングがTracking状態か(ローカル位置情報が導出できている状態か)否かが判定される(ステップS31)。ステップS31においてローカルトラッキングがTracking状態ではなくLost状態であると判定された場合には、例えば毎フレームローカルトラッキング状態をチェックし、Lost状態が継続しているか否かが判定される(ステップS32)。Lost状態が継続している場合には、所定の時間後に再度ステップS32の処理(判定)が実行される。一方で、Lost状態が継続しておらずTracking状態に復帰した場合には、ローカルトラッキングが可能になるが、Lost状態を経て復帰したローカルトラッキングに基づくローカル位置情報の信頼度は低い(実世界座標とローカルトラッキング座標との対応が取れてない状態に陥る可能性がある)ため、通信端末50によって、ローカル位置情報が信頼度なしと判定される(ステップS37)。
【0045】
ステップS31においてローカルトラッキングがTracking状態であると判定された場合には、通信端末50によって、ローカル位置情報の所定時間内における変化量が所定の閾値を上回っていないか(急激な移動を検知していなか)が判定される(ステップS33)。ステップS33において急激な移動を検知していると判定された場合には、ローカル位置情報が信頼度なしと判定される(ステップS37)。
【0046】
一方で、ステップS33において急激な移動を検知していないと判定された場合には、続いて、通信端末50によって、同一のグローバル位置情報に基づく通信端末50の位置情報の導出期間においてローカル位置情報の変化量が所定の閾値を上回っていないか(一定距離以上の移動を検知していないか)が判定される(ステップS34)。ステップS34において一定距離以上の移動を検知していると判定された場合には、ローカル位置情報が信頼度なしと判定される(ステップS37)。
【0047】
一方で、ステップS34において一定距離以上の移動を検知していないと判定された場合には、続いて、通信端末50によって、連続的に撮像される画像データ間で、特徴点の位置、数、及び密度の少なくともいずれか一つの変化量が所定の閾値を上回っていないか(特徴点の情報の急激な変化を検知していないか)が判定される(ステップS35)。ステップS35において特徴点の情報の急激な変化を検知していると判定された場合には、ローカル位置情報が信頼度なしと判定される(ステップS37)。
【0048】
一方で、ステップS35において特徴点の情報の急激な変化を検知していないと判定された場合には、続いて、通信端末50によって、同一のグローバル位置情報に基づく通信端末50の位置情報の導出期間が所定の閾値を上回っていないか(一定時間以上の経過を検知していないか)が判定される(ステップS36)。ステップS36において一定時間以上の経過を検知していると判定された場合には、ローカル位置情報が信頼度なしと判定される(ステップS37)。一方で、ステップS36において一定時間以上の経過を検知していないと判定された場合には、ローカル位置情報が信頼性ありと判定される(ステップS38)。
【0049】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0050】
従来、画像を用いた自己位置認識の手法として、端末に内蔵されたカメラで撮像された画像から抽出した特徴点とサーバに格納されている三次元特徴点群とを比較するサーバ測位手法と、端末に内蔵されているローカルSLAMを用いるローカルトラッキングとが知られている。サーバ測位を行うことによって、実世界座標の自己位置認識を行うことができる。しかし、サーバに接続する端末台数の増加や端末がサーバに接続する頻度によって端末からサーバに送信する画像枚数が多くなりサーバに負荷がかかるため、サーバでの処理が追い付かなくなる可能性がある。また、サーバ測位では、自己位置認識のたびに自己位置に数cmの誤差を含むため、サーバ測位を高頻度に行うと、例えば表示されているARコンテンツも数cm移動することになり、ユーザ体験に支障が出てしまう。一方で、ローカルトラッキングは、端末担体で自己位置認識を行うことができるが、実世界に対して相対的な位置しかわからない。また、長時間ローカルトラッキングを行うことによって累積誤差が蓄積し、自己位置の認識精度が悪くなるため、長時間・広範囲でローカルトラッキングのみから正確な自己位置認識を行うことは困難である。本実施形態に係る測位システム1は、このようなサーバ測位手法及びローカルトラッキングを適切に組み合わせて、測位精度の向上を図るものである。
【0051】
具体的には、本実施形態に係る測位システム1は、通信端末50において撮像された画像データに基づき測位を行う測位システムであって、予め取得された画像データに含まれる特徴点の特徴量と該特徴点に関連付けられた絶対的な位置情報であるグローバル位置情報とが対応付けられたマップデータ100を記憶する記憶部11と、通信端末50において撮像された画像データと、記憶部11に記憶されているマップデータ100とに基づいて、通信端末50における撮像時の通信端末50のグローバル位置情報を推定する測位部12と、ある地点を基準とした通信端末50の相対的な位置情報であるローカル位置情報を継続的に取得し、グローバル位置情報及びローカル位置情報に基づき通信端末50の位置情報を導出する位置導出部54と、位置導出部54によって取得されるローカル位置情報の信頼度が、所定の信頼度条件を満たしているか否かを判定する判定部53と、を備え、判定部53は、ローカル位置情報の信頼度が所定の信頼度条件を満たしていない場合に、測位部12に対して、グローバル位置情報の再推定指示を出力し、測位部12は、判定部53から再推定指示を受けると、通信端末50において新たに撮像された画像データとマップデータ100とに基づいてグローバル位置情報を再推定する。
【0052】
測位システム1では、グローバル位置情報及びローカル位置情報に基づき通信端末50の位置情報を導出するに際して、ローカル位置情報の信頼度が所定の信頼度条件を満たしているか否かが判定され、満たしていない場合には、グローバル位置情報が再推定される。ローカル位置情報については実世界座標に対する相対的な位置であるため、ローカル位置情報を考慮して導出した通信端末50の位置情報は、実際の通信端末50の位置(実世界座標における位置)から乖離することが考えられる。この点、測位システム1では、ローカル位置情報の信頼度が条件を満たさない(信頼度が低下している)と判定される場合に、グローバル位置情報を再度推定することにより、位置情報を導出する際の起点をリセット(最新化)し、ローカル位置情報の信頼度が低下していない状態から再度通信端末50の位置情報を導出することができる。このことで、通信端末50において撮像された画像データに基づき測位を行う測位システムにおいて、測位精度を向上させることができる。
【0053】
位置導出部54は、通信端末50において連続的に撮像される画像データ間で特徴点の位置を比較し、特徴点の変位に基づいて、ローカル位置情報を取得する。これにより、物理的なセンサを用いることなく、撮像した画像データを利用して、簡易且つ高精度にローカル位置情報を取得することができる。
【0054】
判定部53は、通信端末50において連続的に撮像される画像データ間で、特徴点の位置、数、及び密度の少なくともいずれか一つの変化量が所定の閾値を上回る場合に、ローカル位置情報の信頼度が所定の信頼度条件を満たしていないと判定する。特徴点の位置、数、または密度が急激に変化した場合には、特徴点の変位に基づくローカル位置情報の取得精度が低下することが考えられる。このため、連続的に撮像される画像データ間で特徴点の位置、数、及び密度の少なくともいずれかの変化量が所定の閾値を上回る場合にローカル位置情報の信頼度が信頼度条件を満たしていないと判定することにより、ローカル位置情報の信頼度が低下している可能性が高いと思われる場合に適切にグローバル位置情報の再推定を行い、測位精度を向上させることができる。
【0055】
判定部53は、位置導出部54において継続的に取得されるローカル位置情報の所定時間内における変化量が所定の閾値を上回る場合に、ローカル位置情報の信頼度が所定の信頼度条件を満たしていないと判定する。ローカル位置情報の所定時間内における変化量が過度に大きい場合(すなわち、急激な移動が検知された場合)には、何らかの理由によりローカル位置情報の取得精度が低下していると考えられる。このため、ローカル位置情報の所定時間内における変化量が所定の閾値を上回る場合にローカル位置情報の信頼度が信頼度条件を満たしていないと判定することにより、ローカル位置情報の信頼度が低下している可能性が高いと思われる場合に適切にグローバル位置情報の再推定を行い、測位精度を向上させることができる。
【0056】
判定部53は、位置導出部54における、同一のグローバル位置情報に基づく通信端末50の位置情報の導出期間においてローカル位置情報の変化量が所定の閾値を上回る場合に、ローカル位置情報の信頼度が所定の信頼度条件を満たしていないと判定する。同一のグローバル位置情報に基づいて通信端末50の位置情報を導出している期間においてローカル位置情報の変化量が大きい場合(すなわち、グローバル位置情報の推定に成功してからの移動距離が長くなっている場合)には、長距離の移動によりローカル位置情報の累積誤差が蓄積してローカル位置情報の取得精度が低下していると考えられる。このため、同一のグローバル位置情報に基づく通信端末50の位置情報の導出期間においてローカル位置情報の変化量が所定の閾値を上回る場合にローカル位置情報の信頼度が信頼度条件を満たしていないと判定することにより、ローカル位置情報の信頼度が低下している可能性が高いと思われる場合に適切にグローバル位置情報の再推定を行い、測位精度を向上させることができる。
【0057】
判定部53は、位置導出部54における、同一のグローバル位置情報に基づく端末の位置情報の導出期間が所定の閾値を上回る場合に、ローカル位置情報の信頼度が所定の信頼度条件を満たしていないと判定する。同一のグローバル位置情報に基づき位置情報を導出する期間が長くなっている場合(すなわち、グローバル位置情報の推定に成功してからの経過時間が長くなっている場合)には、長時間の経過によりローカル位置情報の累積誤差が蓄積してローカル位置情報の取得精度が低下していると考えられる。このため、同一のグローバル位置情報を基づく通信端末50の位置情報の導出期間が所定の閾値を上回る場合にローカル位置情報の信頼度が信頼度条件を満たしていないと判定することにより、ローカル位置情報の信頼度が低下している可能性が高いと思われる場合に適切にグローバル位置情報の再推定を行い、測位精度を向上させることができる。
【0058】
最後に、測位システム1に含まれた位置測位サーバ10,通信端末50のハードウェア構成について、
図6を参照して説明する。上述の位置測位サーバ10,通信端末50は、物理的には、プロセッサ1001、メモリ1002、ストレージ1003、通信装置1004、入力装置1005、出力装置1006、バス1007などを含むコンピュータ装置として構成されてもよい。
【0059】
なお、以下の説明では、「装置」という文言は、回路、デバイス、ユニットなどに読み替えることができる。位置測位サーバ10,通信端末50のハードウェア構成は、図に示した各装置を1つ又は複数含むように構成されてもよいし、一部の装置を含まずに構成されてもよい。
【0060】
位置測位サーバ10,通信端末50における各機能は、プロセッサ1001、メモリ1002などのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることで、プロセッサ1001が演算を行い、通信装置1004による通信や、メモリ1002及びストレージ1003におけるデータの読み出し及び/又は書き込みを制御することで実現される。
【0061】
プロセッサ1001は、例えば、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ1001は、周辺装置とのインターフェース、制御装置、演算装置、レジスタなどを含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)で構成されてもよい。例えば、位置測位サーバ10の測位部12等の制御機能はプロセッサ1001で実現されてもよい。
【0062】
また、プロセッサ1001は、プログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールやデータを、ストレージ1003及び/又は通信装置1004からメモリ1002に読み出し、これらに従って各種の処理を実行する。プログラムとしては、上述の実施の形態で説明した動作の少なくとも一部をコンピュータに実行させるプログラムが用いられる。例えば、位置測位サーバ10の測位部12等の制御機能は、メモリ1002に格納され、プロセッサ1001で動作する制御プログラムによって実現されてもよく、他の機能ブロックについても同様に実現されてもよい。上述の各種処理は、1つのプロセッサ1001で実行される旨を説明してきたが、2以上のプロセッサ1001により同時又は逐次に実行されてもよい。プロセッサ1001は、1以上のチップで実装されてもよい。なお、プログラムは、電気通信回線を介してネットワークから送信されても良い。
【0063】
メモリ1002は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、RAM(Random Access Memory)などの少なくとも1つで構成されてもよい。メモリ1002は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ(主記憶装置)などと呼ばれてもよい。メモリ1002は、本発明の一実施の形態に係る無線通信方法を実施するために実行可能なプログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールなどを保存することができる。
【0064】
ストレージ1003は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、CD-ROM(Compact Disc ROM)などの光ディスク、ハードディスクドライブ、フレキシブルディスク、光磁気ディスク(例えば、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、Blu-ray(登録商標)ディスク)、スマートカード、フラッシュメモリ(例えば、カード、スティック、キードライブ)、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ストリップなどの少なくとも1つで構成されてもよい。ストレージ1003は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。上述の記憶媒体は、例えば、メモリ1002及び/又はストレージ1003を含むデータベース、サーバその他の適切な媒体であってもよい。
【0065】
通信装置1004は、有線及び/又は無線ネットワークを介してコンピュータ間の通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)であり、例えばネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、通信モジュールなどともいう。
【0066】
入力装置1005は、外部からの入力を受け付ける入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、マイクロフォン、スイッチ、ボタン、センサなど)である。出力装置1006は、外部への出力を実施する出力デバイス(例えば、ディスプレイ、スピーカー、LEDランプなど)である。なお、入力装置1005及び出力装置1006は、一体となった構成(例えば、タッチパネル)であってもよい。
【0067】
また、プロセッサ1001やメモリ1002などの各装置は、情報を通信するためのバス1007で接続される。バス1007は、単一のバスで構成されてもよいし、装置間で異なるバスで構成されてもよい。
【0068】
また、位置測位サーバ10,通信端末50は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェアを含んで構成されてもよく、当該ハードウェアにより、各機能ブロックの一部又は全てが実現されてもよい。例えば、プロセッサ1001は、これらのハードウェアの少なくとも1つで実装されてもよい。
【0069】
以上、本実施形態について詳細に説明したが、当業者にとっては、本実施形態が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本実施形態は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本実施形態に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【0070】
例えば、測位システム1は通信端末50及び位置測位サーバ10を含んで構成されているとして説明したがこれに限定されず、測位システム1の各機能が、通信端末のみによって実現されてもよい。
【0071】
本明細書で説明した各態様/実施形態は、LTE(Long Term Evolution)、LTE-A(LTE-Advanced)、SUPER 3G、IMT-Advanced、4G、5G、FRA(Future Radio Access)、W-CDMA(登録商標)、GSM(登録商標)、CDMA2000、UMB(Ultra Mobile Broad-band)、IEEE 802.11(Wi-Fi)、IEEE 802.16(WiMAX)、IEEE 802.20、UWB(Ultra-Wide Band)、Bluetooth(登録商標)、その他の適切なシステムを利用するシステム及び/又はこれらに基づいて拡張された次世代システムに適用されてもよい。
【0072】
本明細書で説明した各態様/実施形態の処理手順、シーケンス、フローチャートなどは、矛盾の無い限り、順序を入れ替えてもよい。例えば、本明細書で説明した方法については、例示的な順序で様々なステップの要素を提示しており、提示した特定の順序に限定されない。
【0073】
入出力された情報等は特定の場所(例えば、メモリ)に保存されてもよいし、管理テーブルで管理してもよい。入出力される情報等は、上書き、更新、または追記され得る。出力された情報等は削除されてもよい。入力された情報等は他の装置へ送信されてもよい。
【0074】
判定は、1ビットで表される値(0か1か)によって行われてもよいし、真偽値(Boolean:trueまたはfalse)によって行われてもよいし、数値の比較(例えば、所定の値との比較)によって行われてもよい。
【0075】
本明細書で説明した各態様/実施形態は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよいし、実行に伴って切り替えて用いてもよい。また、所定の情報の通知(例えば、「Xであること」の通知)は、明示的に行うものに限られず、暗黙的(例えば、当該所定の情報の通知を行わない)ことによって行われてもよい。
【0076】
ソフトウェアは、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語と呼ばれるか、他の名称で呼ばれるかを問わず、命令、命令セット、コード、コードセグメント、プログラムコード、プログラム、サブプログラム、ソフトウェアモジュール、アプリケーション、ソフトウェアアプリケーション、ソフトウェアパッケージ、ルーチン、サブルーチン、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、手順、機能などを意味するよう広く解釈されるべきである。
【0077】
また、ソフトウェア、命令などは、伝送媒体を介して送受信されてもよい。例えば、ソフトウェアが、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア及びデジタル加入者回線(DSL)などの有線技術及び/又は赤外線、無線及びマイクロ波などの無線技術を使用してウェブサイト、サーバ、又は他のリモートソースから送信される場合、これらの有線技術及び/又は無線技術は、伝送媒体の定義内に含まれる。
【0078】
本明細書で説明した情報、信号などは、様々な異なる技術のいずれかを使用して表されてもよい。例えば、上記の説明全体に渡って言及され得るデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボル、チップなどは、電圧、電流、電磁波、磁界若しくは磁性粒子、光場若しくは光子、又はこれらの任意の組み合わせによって表されてもよい。
【0079】
なお、本明細書で説明した用語及び/又は本明細書の理解に必要な用語については、同一の又は類似する意味を有する用語と置き換えてもよい。
【0080】
また、本明細書で説明した情報、パラメータなどは、絶対値で表されてもよいし、所定の値からの相対値で表されてもよいし、対応する別の情報で表されてもよい。
【0081】
ユーザ端末は、当業者によって、移動通信端末、加入者局、モバイルユニット、加入者ユニット、ワイヤレスユニット、リモートユニット、モバイルデバイス、ワイヤレスデバイス、ワイヤレス通信デバイス、リモートデバイス、モバイル加入者局、アクセス端末、モバイル端末、ワイヤレス端末、リモート端末、ハンドセット、ユーザエージェント、モバイルクライアント、クライアント、またはいくつかの他の適切な用語で呼ばれる場合もある。
【0082】
本明細書で使用する「判断(determining)」、「決定(determining)」という用語は、多種多様な動作を包含する場合がある。「判断」、「決定」は、例えば、計算(calculating)、算出(computing)、処理(processing)、導出(deriving)、調査(investigating)、探索(looking up)(例えば、テーブル、データベースまたは別のデータ構造での探索)、確認(ascertaining)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判断」、「決定」は、受信(receiving)(例えば、情報を受信すること)、送信(transmitting)(例えば、情報を送信すること)、入力(input)、出力(output)、アクセス(accessing)(例えば、メモリ中のデータにアクセスすること)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判断」、「決定」は、解決(resolving)、選択(selecting)、選定(choosing)、確立(establishing)、比較(comparing)などした事を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。つまり、「判断」「決定」は、何らかの動作を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。
【0083】
本明細書で使用する「に基づいて」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」を意味しない。言い換えれば、「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」と「に少なくとも基づいて」の両方を意味する。
【0084】
本明細書で「第1の」、「第2の」などの呼称を使用した場合においては、その要素へのいかなる参照も、それらの要素の量または順序を全般的に限定するものではない。これらの呼称は、2つ以上の要素間を区別する便利な方法として本明細書で使用され得る。したがって、第1および第2の要素への参照は、2つの要素のみがそこで採用され得ること、または何らかの形で第1の要素が第2の要素に先行しなければならないことを意味しない。
【0085】
「含む(include)」、「含んでいる(including)」、およびそれらの変形が、本明細書あるいは特許請求の範囲で使用されている限り、これら用語は、用語「備える(comprising)」と同様に、包括的であることが意図される。さらに、本明細書あるいは特許請求の範囲において使用されている用語「または(or)」は、排他的論理和ではないことが意図される。
【0086】
本明細書において、文脈または技術的に明らかに1つのみしか存在しない装置である場合以外は、複数の装置をも含むものとする。
【0087】
本開示の全体において、文脈から明らかに単数を示したものではなければ、複数のものを含むものとする。
【符号の説明】
【0088】
10…位置測位サーバ(サーバ)、11…記憶部、12…測位部(グローバル位置推定部)、50…通信端末(端末)、53…判定部、54…位置導出部、100…マップデータ。