(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】容器の検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/90 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
G01N21/90 A
(21)【出願番号】P 2018224569
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126398
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】山嵜 大輔
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-240469(JP,A)
【文献】特開2013-134163(JP,A)
【文献】国際公開第2012/042582(WO,A1)
【文献】特開平09-178448(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0172603(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103868934(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 11/00 - G01B 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断により口部が形成された容器の検査方法であって、
口部近傍を一方向から撮影した画像を用い、当該画像において、
撮影した画像から、口部の先端面がなす線を端部抽出線として抽出するとともに、容器の口部近傍に成形により形成された段差部がなす線を基準線として抽出し、これら基準線と端部抽出線との間隔により、高切りや深切りの有無を判定し、
前記端部抽出線の容器高さ方向における最高値と最低値の差、及び/または前記基準線に対する前記端部抽出線の角度差に基づいて容器の斜め切りを判定することを特徴とする容器の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断により口部が形成された容器の検査方法に関するものであり、特に、一方向から撮影した画像により精度良く良否を判定し得る容器の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製の容器は、例えばブロー成形により成形されるが、ブロー成形においては、パリソンを密閉した状態で内部にエアーを吹き込む必要があることから、口部を開口した状態で成形することができず、成形後に余分な部分を切断することで口部を形成している。
【0003】
この時、切断不良によりいわゆる高切り(所定の切断位置よりも高い位置での切断。これにより口部の高さが本来の高さよりも高くなる。)や深切り(逆に切り過ぎた状態)、斜め切り等の切断不良が発生することがある。これらの切断不良は、例えば容器内に内容物を充填した後、キャップを装着する際のキャッピング不具合やシール不具合等のトラブルの元となるため、容器生産工程での検査が欠かせない。
【0004】
容器の検査方法としては、例えば機械装置での検出方法がある。機械装置での検出方法は、容器をシリンダー等の駆動装置で押さえ、そのストロークで判定する方法である。しかしながら、機械的なストロークのみの判定では、例えば斜め切りを含むような深切り等を見逃すことがある。
【0005】
また、レーザー光等を利用したセンサーにて検知する方法もあるが、斜め切りの安定検知には口部円周の複数方向からの検査が必要となり、大掛かりな装置が必要となって設備投資が増大する他、見逃しの可能性も残る。
【0006】
このような状況から、画像による検査も検討されている(例えば、特許文献1等を参照)。特許文献1には、正常な容器の口部をその円周方向に順次角度を異ならせて得た複数の基準画像を記憶するとともに、口部を撮影して得た検査対象画像からねじの特定パターンを検出し、基準画像と検査対象画像とのそれぞれについて差分処理を行って容器の良否を判定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の検査方法は、ねじのパターンを検出するものであり、そのまま斜め切り等の検知に適用することはできない。また、特許文献1記載の検出装置では、画像の撮影のための複数のカメラが必要であり、容器の良否の判定も煩雑である。
【0009】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて案出されたものであり、装置構成を簡略化することができ、簡単な操作で精度良い検知が可能な容器の検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の目的を達成するために、本発明の容器の検査方法は、切断により口部が形成された容器の検査方法であって、口部近傍を一方向から撮影した画像を用い、当該画像において、撮影した画像から、口部の先端面がなす線を端部抽出線として抽出するとともに、容器の口部近傍に成形により形成された段差部がなす線を基準線として抽出し、これら基準線と端部抽出線との間隔により、高切りや深切りの有無を判定し、前記端部抽出線の容器高さ方向における最高値と最低値の差、及び/または前記基準線に対する前記端部抽出線の角度差に基づいて容器の斜め切りを判定することを特徴とする。
【0011】
本発明の検査方法では、一方向からの観察のみでよく、これにより高切り、深切り、斜め切り等の切断不良が精度良く検出される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡単な操作や装置構成で、高切り、深切り、斜め切り等の切断不良を精度良く検出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図4】口部の画像を模式的に示す図であり、(a)は高切り状態、(b)は左右方向の斜め切り状態、(c)は手前から奥への斜め切り状態をそれぞれ示す。
【
図5】端部抽出線における算出要素を示す図である。
【
図6】(a)は左右方向の斜め切り状態での算出要素を示す図であり、(b)は手前から奥への斜め切り状態での算出要素を示す図である。
【
図7】基準線に対する端部抽出線の角度差αを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した容器の検査方法について、図面を参照して説明する。
【0015】
先ず、本発明の検査方法において、検査対象となるのは、例えばブロー成形により成形されたブロー成形容器である。ブロー成形容器の成形に際しては、円筒状の溶融樹脂(パリソン)を金型で挟み込み、内部にエアーを吹き込むことで金型キャビティに密着させ、所定の容器形状に賦形する。
【0016】
ブロー成形においては、パリソン内にエアーを吹き込んで成形するため、口部を開口部として成形することができず、したがって、成形後に口部を塞いだ部分を切除することにより、口部を開口部として形成する。この切除の際に、本来切断すべき位置よりも高い位置で切断してしまい、容器の高さが基準値より高くなってしまう高切りや、逆に切り過ぎてしまい容器の高さが基準値より低くなる深切り、さらには斜めに切断してしまう斜め切り等の切断不良が発生することがある。これらの切断不良は、ユーザーラインにおいて、キャッピング不具合やシール不具合等のトラブルの原因となる。
【0017】
本実施形態の検査方法は、これら切断不良を精度良く検知して、キャッピング不具合やシール不具合等のトラブルを未然に防ぐものである。
【0018】
図1は、本実施形態の検査方法を実施するための検査システムの一例を示すものである。本実施形態の検査システムは、制御部であるプログラマブルロジックコントローラ(PLC)1を中心とするものであり、これを操作するためのタッチパネル2、PLC1に対して判定結果を出力する画像処理装置3を備える。
【0019】
画像処理装置3には、コントローラ4や撮像用のカメラ5が接続され、カメラ5で撮像された容器の口部の画像に基づいて、切断の良否が判定される。本実施形態においては、一方向から撮影した画像のみを用いて判定を行うため、設置するカメラ5は1台でよい。また、カメラ5の近傍には、照明装置6が設置されており、照明装置6には、これを操作するためのコントローラ7が接続されている。
【0020】
PLC1は、検査装置に搬送されてくる容器を第1の光電センサー8で検知することにより画像処理装置3に検査指示を行い、搬出される容器を第2の光電センサー9で検知して、画像処理装置3からの判定出力に基づいて排出用電磁弁10の動作指示を行う。具体的には、画像処理装置3から不良の判定が出力された場合、該当する容器を第2の光電センサー9で検知し、排出用電磁弁10を操作することにより搬出経路から排除する。
【0021】
次に、画像処理装置3における判定方法について説明する。
【0022】
図2は、容器11の口部12の近傍を拡大して示す図である。容器11の口部12には、複数の段差部(本例では、第1の段差部13、及び第2の段差部14)が設けられている。また、本例では、第1の段差部13と第2の段差部14の間の領域において、外周面にキャップのネジ部と螺合するネジ部15が設けられている。
【0023】
容器11は、例えばブロー成形により成形されるものであり、口部12の先端面16は、成形後、切断することにより形成される。この時、前述の通り、高切り、深切り、斜め切り等の不良が発生することがある。一方、前記第1の段差部13や第2の段差部14は、成形の際に金型のキャビティ形状に賦形されることにより形成されるものであり、変動する要素がないため製品毎に変動することはない。
【0024】
そこで、本実施形態においては、
図3に示すように、撮影した画像から、口部12の先端面16がなす線(端部抽出線T)と、第1の段差部13がなす線(基準線K)とをそれぞれ抽出し、これら基準線Kと端部抽出線Tとの間隔(距離)Dにより、高切りや深切りの有無を判定する。
【0025】
仮に口部12の先端面15を形成する際に高切りが生じた場合、先端面16の高さは本来の高さよりも高くなり、基準線Kと端部抽出線Tとの間隔(距離)Dは規定の値(基準値)よりも大きくなる。口部12の先端面16を形成する際に深切りが生じた場合、先端面16の高さは本来の高さよりも低くなり、基準線Kと端部抽出線Tとの間隔(距離)Dは規定の値(基準値)よりも小さくなる。
【0026】
したがって、基準線Kと端部抽出線Tとの間隔(距離)Dについて基準値を設定しておき、画像から計測される基準線Kと端部抽出線Tとの間隔(距離)Dが基準値±許容範囲を外れた場合に、不良と判定すればよい。
【0027】
なお、画像を撮像する際に、搬送路の構成等によっては容器11の位置が前後し、容器11とカメラ5の距離が変動することがある。容器11とカメラ5の距離が変わると、撮影した画像において、基準線Kと端部抽出線Tとの間隔(距離)も変わってしまう。このような場合には、例えば第1の段差部13の寸法(径)Rを計測しておき、当該寸法Rと前記基準線Kと端部抽出線Tとの間隔(距離)Dの比率(D/R)から良否を判断するようにしてもよい。容器11の位置が前後した場合にも、前記比率(D/R)は変わることはなく、当該比率についての基準値±許容範囲に基づいて高切りや深切りについての良否を判定すればよい。
【0028】
一方、斜め切りについては、前記基準線Kと端部抽出線Tとの間隔(距離)Dでは判定することができない。
図4は、撮影した口部の形状を模式的に示す図であり、高切りの場合、
図4(a)に示すように端部抽出線Tが高さの基準(本来の高さ)を越えることから前記基準線Kと端部抽出線Tとの間隔(距離)Dから判定可能であるが、斜め切りされた場合、撮影された画像において、左右方向の斜め切り状態、すなわち
図4(b)の状態であっても、手前から奥への斜め切り状態、すなわち
図4(c)の状態であっても、端部抽出線Tの高さを基準と比較することでは、正確には判定することができない。
【0029】
斜め切りについては、端部抽出線Tの容器高さ方向における最高値と最低値の差に基づいて、容器の良否を判定することとする。すなわち、
図5に示すように、端部抽出線Tに複数の抽出線算出要素(図中、丸印で示す点)を設定し、これら算出要素の高さをそれぞれ計測する。そのうち最も高い値と最も低い値の差を求め、基準値と比較して良否を判定する。
【0030】
正しく切断された場合(斜め切りが発生していない場合)、端部抽出線Tは水平となり、各算出要素の高さの差はゼロである。斜め切りが発生した場合、端部抽出線Tは、
図4(b)に示すように斜めに傾斜するか、
図4(b)に示すように円弧状になる。そのため、各算出要素の高さに差が生ずる。例えば端部抽出線Tが
図4(b)に示すような斜めの直線である場合、
図6(a)に示すように両端の算出要素a,b間の高さの差が最大となる。算出要素aが最高値、算出要素bが最低値である。端部抽出線Tが
図4(b)に示すような円弧である場合、
図6(b)に示すように頂点cが最高値、端部dが最低値であり、頂点cと端部d間の高さの差が最大となる。したがって、算出要素の最高値と最低値の高さの差を算出し、これが許容値以上であれば、不良(斜め切り)と判定することができる。
【0031】
なお、同じ斜め切り状態であっても、
図4(b)に示すように側方から撮影した場合と
図4(c)に示すように背面(正面)から撮影した場合とで、算出要素の最高値と最低値の高さの差が異なる。
図4(b)に示すように側方から撮影し端部抽出線Tが斜めの直線となった場合に算出要素の最高値と最低値の高さの差が最大となり、
図4(c)に示すように背面(正面)から撮影し端部抽出線Tが円弧となった場合に算出要素の最高値と最低値の高さの差が最小となる。したがって、後者(円弧となる場合)を考慮して算出要素の最高値と最低値の高さの差の許容値を決定する必要がある。
【0032】
また、
図4(b)に示すように端部抽出線Tが斜めに傾斜する傾斜線であった場合、
図7に示すように、基準線Kに対する端部抽出線Tの角度差αに基づいて容器の良否を判定することも可能である。前記算出要素の最高値と最低値の高さの差に加えて、前記基準線Kに対する端部抽出線Tの角度差αを算出することで、より正確に斜め切りを判定することが可能となる。
【0033】
以上が画像処理装置3における判定方法であるが、次に、本実施形態の検査方法における操作手順について説明する。
【0034】
図1に示す検査システムにより容器の検査を行う際には、先ず、タッチパネル2により設定画面に移行し、検査を行う容器の品種を選択する。容器は、その種類によって形状が異なり、先端面の高さや基準となる段差の位置も異なる。そのため、先ず、検査対象となる容器の種類を特定する必要がある。
【0035】
容器の品種を選択した後、カメラ5のX-Yステージの設定目盛りを確認し、前記選択した品種に合わせた位置に調整する。併せて照明6の位置、方向等も調整する。
【0036】
検査対象となる容器をコンベア等で搬送し、各容器を第1の光電センサ8で検知し、その口部をカメラ5で撮影する。撮影した画像は、画像処理部において前述の判定基準に従って判定し、判定結果をPLC1の出力する。NG判定があった場合、PLC1から判定出力に基づく動作指示が出され、対応する容器を第2の光電センサー9で検知し、排出用電磁弁10の操作により、搬送経路から排出する。
【0037】
検出範囲が適正でない場合には、容器の姿勢やカメラ位置等を確認する。また、良品が検査NGとなっている場合や、不良品が検査OKとなっている場合には、撮影画像をもとに各種数値演算の判定範囲を変更する。
【0038】
以上、本発明を適用した実施形態について説明してきたが、本発明がこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0039】
1 プログラマブルロジックコントローラ(PLC)
2 タッチパネル
3 画像処理装置
4 コントローラ
5 カメラ
6 照明
7 コントローラ
8 第1の光電センサ
9 第2の光電センサ
10 排出用電磁弁
11 容器
12 口部
13 第1の段差部
14 第2の段差部
15 ネジ部
16 先端面