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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】印刷装置 蛇行量検出方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/02 20060101AFI20221201BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20221201BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20221201BHJP
   B41J 11/02 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B65H7/02
G03G15/00 303
G03G15/01
B41J11/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019001625
(22)【出願日】2019-01-09
(65)【公開番号】P2020111406
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121599
【弁理士】
【氏名又は名称】長石 富夫
(72)【発明者】
【氏名】駒田 直也
【審査官】前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-114240(JP,A)
【文献】特開2012-133217(JP,A)
【文献】特開平9-330005(JP,A)
【文献】特開平10-139202(JP,A)
【文献】特開2010-210779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/00 - 11/70
B65H 5/02
5/06
5/22
29/12 - 29/24
29/32
B65H 7/00 - 7/20
43/00 - 43/08
G03G 13/34
15/00
15/36
21/00
21/02
21/14
21/20
G03G 13/01
15/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のローラに張架された無端の搬送ベルトを周回させて記録媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部が搬送する記録媒体に画像を形成する印字部と、
前記搬送ベルトの搬送方向の移動量を計測する移動量測定部と、
前記搬送ベルトの搬送方向に離れた複数の測定点に配置され、前記搬送ベルトの端部の前記搬送方向に直交するベルト幅方向の変位量を測定する複数の変位センサと、
前記移動量測定部が計測している移動量と前記測定点間の既知の距離とに基づいて、一の測定点の変位センサと他の測定点の変位センサとで前記搬送ベルトの同一箇所についての前記変位量を測定する変位量測定部と、
前記変位量測定部が前記一の測定点と前記他の測定点で測定した同一箇所の前記変位量の差分をとることで、前記一の測定点に対する前記他の測定点での前記搬送ベルトの蛇行量を求める蛇行量演算部と、
を有する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記移動量測定部は、前記ローラの軸に取り付けられたロータリーエンコーダの出力パルスに基づいて、前記移動量を測定する
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記搬送ベルトにその1周の中の原点位置を示すマークを付しておき、
前記マークを検出する原点検出部を備え、
前記変位量測定部は、前記マークを基準にして前記搬送ベルトの搬送方向の各位置における前記変位量を測定し、
前記蛇行量演算部は、前記マークを基準にして前記搬送ベルトの搬送方向の各位置における蛇行量を求める
ことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印字部は、前記搬送ベルトの搬送方向に離して配置された、異なる色で画像を印字する複数の印字ユニットを有し、
前記変位センサを、前記印字ユニットに対応させて配置した
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の印刷装置。
【請求項5】
前記印字部は、前記搬送ベルトの搬送方向に離して配置された、異なる色で画像を印字する複数の印字ユニットを有し、
前記蛇行量演算部が求めた蛇行量に基づいて、前記印字ユニットが印字する画像の前記搬送ベルトの幅方向の印字位置を、前記印字ユニットの位置における蛇行量が相殺されるように変更する印字制御部をさらに有する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の印刷装置。
【請求項6】
印字制御部は、一周前に測定された蛇行量に基づいて前記変更を行う
ことを特徴とする請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記蛇行量演算部は、前記測定点以外の位置における蛇行量を、複数の測定点における蛇行量に基づく補間処理によって推定する
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の印刷装置。
【請求項8】
前記搬送ベルトの幅方向の両端部に前記変位センサを設置した
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1つに記載の印刷装置。
【請求項9】
複数のローラに張架された無端の搬送ベルトの蛇行量を検出する蛇行量検出方法であって、
前記搬送ベルトの搬送方向の移動量を計測しながら、前記搬送ベルトの搬送方向に離れた複数の測定点に配置された変位センサで前記搬送ベルトの端部の前記搬送方向に直交するベルト幅方向の変位量を測定する測定ステップと、
前記測定ステップで測定した前記変位量に基づいて前記搬送ベルトの蛇行量を導出する蛇行量演算ステップと、
を有し、
前記測定ステップでは、計測している移動量と前記測定点間の既知の距離とに基づいて、一の測定点の変位センサと他の測定点の変位センサとで前記搬送ベルトの同一箇所についての前記変位量を測定し、
前記蛇行量演算ステップでは、前記一の測定点と前記他の測定点で測定した同一箇所の前記変位量の差分をとることで、前記一の測定点に対する前記他の測定点での前記搬送ベルトの蛇行量を求める
ことを特徴とするを蛇行量検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ベルトによって搬送される記録媒体上に画像を作成する印刷装置および蛇行量検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のローラに張架されて周回する無端の搬送ベルトによって記録媒体を搬送し、その搬送される記録媒体に画像を形成する印刷装置の一例としてカラーインクジェットプリンタがある。カラーインクジェットプリンタでは、搬送ベルトの搬送方向に所定間隔を空けて色の異なる複数のプリントヘッドユニットが配列されており、各プリントユニットから吐出される異なる色のインク液滴を、搬送ベルトによって搬送される記録媒体上で重ね合わせることでカラー画像が形成される。
【0003】
かかる印刷装置において、記録媒体を搬送する搬送ベルトが、該搬送ベルトの搬送方向に直交する方向(ベルト幅方向とする)に蛇行すると、記録媒体上での各色インク液滴の着弾位置が本来の位置からズレて、色ズレが発生してしまう。
【0004】
この問題を対応する方法として、搬送ベルトの幅方向の端部位置をセンサで測定し、測定値の変動を蛇行量と見て、該蛇行量が相殺されるように、画像の印字位置をシフトさせる制御が行われる。
【0005】
ところが、搬送ベルトの端部が凸凹に荒れていると、センサで測定した端部位置の変動量にベルト端部の荒れの影響が含まれてしまい、蛇行量を正しく測定して補正することができなくなる。
【0006】
たとえば、布を搬送するインクジェット捺染プリンタでは、搬送ベルトの周長が20数mにも及ぶ大型の搬送機が使用されるため、一般に、その搬送機の組み立ては設置現場で行われる。詳細には、設置現場で、搬送ローラに搬送ベルトをかけて長さ調整を行った上で、長手方向の端部同士を溶着して無端とし、その後、搬送ベルトの幅方向の両端部を搬送ローラのサイズに合わせてカットする、という作業が行われる。また、搬送ベルトが一定範囲を超えて蛇行して搬送ローラから逸脱しないように、搬送ベルトの幅方向の両サイドに金属板等のベルトガイドを当て付けることが行われる。
【0007】
上記した設置現場でのカットにより、搬送ベルトの端部は、滑らかではなく、"荒れ"てしまう。また、ベルトガイドの当て付けにより、搬送ベルトの端部の荒れや蛇行の状況が次第に変化するため、プロファイルでの対応も難しい。
【0008】
下記特許文献1には、このように端部の荒れた搬送ベルトの蛇行量を測定する画像形成装置が開示されている。この装置では、ベルト搬送方向の異なる複数位置に、ベルト端部のベルト搬送方向に直交する方向の位置を検出するベルト位置検出手段を設け、搬送方向に所定の間隔を空けてベルトに付したマークを基準にして、ベルトの同一箇所を複数のベルト位置検出手段で検出し、その検出値の差分を取ることで端部の凹凸の影響を相殺する。そして、その差分値を逐次加算することで、ベルト搬送方向に対して直交方向のベルト変動量を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2007-114240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示の装置では、マークを検知してから一定のサンプリング間隔でベルト端部の変位を測定する。そのため、ベルトの走行速度が大きく変化すると、複数配置したベルト位置検出手段で測定したデータ間の位相およびベルト位置に対する測定箇所がずれてしまい、差分をとってもベルト端部の凹凸の影響を正しく除去することはできない。
【0011】
たとえば、前述したインクジェット捺染プリンタでは、印刷結果や布の状態(撓んでいないかなど)を確認したり、巻き出し機、巻き取り機、乾燥機の状態を確認したりしながら、ユーザ操作により印刷中に搬送速度を大きく変更されることがある。そのため、一定のサンプリング間隔で検出する特許文献1の方法ではベルトの蛇行を正しく測定できない。
【0012】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、端部に凹凸のある搬送ベルトの蛇行量を搬送速度が変更されても正しく検出して対応することのできる印刷装置および蛇行量検出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0014】
[1]複数のローラに張架された無端の搬送ベルトを周回させて記録媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部が搬送する記録媒体に画像を形成する印字部と、
前記搬送ベルトの搬送方向の移動量を計測する移動量測定部と、
前記搬送ベルトの搬送方向に離れた複数の測定点に配置され、前記搬送ベルトの端部の前記搬送方向に直交するベルト幅方向の変位量を測定する複数の変位センサと、
前記移動量測定部が計測している移動量と前記測定点間の既知の距離とに基づいて、一の測定点の変位センサと他の測定点の変位センサとで前記搬送ベルトの同一箇所についての前記変位量を測定する変位量測定部と、
前記変位量測定部が前記一の測定点と前記他の測定点で測定した同一箇所の前記変位量の差分をとることで、前記一の測定点に対する前記他の測定点での前記搬送ベルトの蛇行量を求める蛇行量演算部と、
を有する
ことを特徴とする印刷装置。
【0015】
上記発明では、計測している移動量と測定点間の既知の距離とに基づいて、搬送ベルトの一の測定点の変位センサで搬送ベルトの端部位置の変位量を測定した箇所と同じ箇所の変位量を他の測定点の変位センサで測定し、一の測定点と他の測定点で測定した同一箇所の変位量の差分をとることで、一の測定点に対する他の測定点での搬送ベルトの蛇行量を求める。搬送ベルトの実際の移動量を基準に同一箇所であることを認識するので、搬送ベルトの搬送速度の変動の影響を受けることなく、同一箇所を測定して得た変位量の差分から蛇行量を求めることができる。
【0016】
[2]前記移動量測定部は、前記ローラの軸に取り付けられたロータリーエンコーダの出力パルスに基づいて、前記移動量を測定する
ことを特徴とする[1]に記載の印刷装置。
【0017】
上記発明では、搬送ベルトの移動量をリアルタイムかつ正確に求めることができる。
【0018】
[3]前記搬送ベルトにその1周の中の原点位置を示すマークを付しておき、
前記マークを検出する原点検出部を備え、
前記変位量測定部は、前記マークを基準にして前記搬送ベルトの搬送方向の各位置における前記変位量を測定し、
前記蛇行量演算部は、前記マークを基準にして前記搬送ベルトの搬送方向の各位置における蛇行量を求める
ことを特徴とする[1]または[2]に記載の印刷装置。
【0019】
上記発明では、原点位置のマークを検出することで、搬送ベルトの絶対位置を認識して変位量の測定や蛇行量の演算を行うことができる。原点位置を基準にすることで1周前のデータで蛇行量を補正することも可能になる。
【0020】
[4]前記印字部は、前記搬送ベルトの搬送方向に離して配置された、異なる色で画像を印字する複数の印字ユニットを有し、
前記変位センサを、前記印字ユニットに対応させて配置した
ことを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の印刷装置。
【0021】
上記発明では、印字ユニット毎にその印字ユニットに対応させて変位センサを配置する。各印字ユニットの位置における蛇行量を求めるのに好適である。
【0022】
[5]前記印字部は、前記搬送ベルトの搬送方向に離して配置された、異なる色で画像を印字する複数の印字ユニットを有し、
前記蛇行量演算部が求めた蛇行量に基づいて、前記印字ユニットが印字する画像の前記搬送ベルトの幅方向の印字位置を、前記印字ユニットの位置における蛇行量が相殺されるように変更する印字制御部をさらに有する
ことを特徴とする[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の印刷装置。
【0023】
上記発明では、蛇行量が相殺されるように画像の印字位置を調整する。
【0024】
[6]印字制御部は、一周前に測定された蛇行量に基づいて前記変更を行う
ことを特徴とする[5]に記載の印刷装置。
【0025】
[7]前記蛇行量演算部は、前記測定点以外の位置における蛇行量を、複数の測定点における蛇行量に基づく補間処理によって推定する
ことを特徴とする[1]乃至[6]のいずれか1つに記載の印刷装置。
【0026】
上記発明では、機械的な制約から変位センサを理想位置(たとえば、各印字ユニットの搬送方向の中央位置)に設置できない場合でも、理想位置における蛇行量を求めることができる。
【0027】
[8]前記搬送ベルトの幅方向の両端部に前記変位センサを設置した
ことを特徴とする[1]乃至[7]のいずれか1つに記載の印刷装置。
【0028】
上記発明では、搬送ベルトの幅方向の伸び縮みを考慮に入れて補正することが可能になる。
【0029】
[9]複数のローラに張架された無端の搬送ベルトの蛇行量を検出する蛇行量検出方法であって、
前記搬送ベルトの搬送方向の移動量を計測しながら、前記搬送ベルトの搬送方向に離れた複数の測定点に配置された変位センサで前記搬送ベルトの端部の前記搬送方向に直交するベルト幅方向の変位量を測定する測定ステップと、
前記測定ステップで測定した前記変位量に基づいて前記搬送ベルトの蛇行量を導出する蛇行量演算ステップと、
を有し、
前記測定ステップでは、計測している移動量と前記測定点間の既知の距離とに基づいて、一の測定点の変位センサと他の測定点の変位センサとで前記搬送ベルトの同一箇所についての前記変位量を測定し、
前記蛇行量演算ステップでは、前記一の測定点と前記他の測定点で測定した同一箇所の前記変位量の差分をとることで、前記一の測定点に対する前記他の測定点での前記搬送ベルトの蛇行量を求める
ことを特徴とするを蛇行量検出方法。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る印刷装置および蛇行量検出方法によれば、端部に凹凸のある搬送ベルトの蛇行量を搬送速度が変更されても正しく検出して対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施の形態に係る印刷装置の概略構成を示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係る印刷装置の平面図およびベルト部分の側面図である。
図3】変位センサおよびその取り付け状態を示す図である。
図4】プリントユニットPUのキャリッジのノズル面を示す図である。
図5】印刷装置の電気的構成を示すブロック図である。
図6】PU1s位置とPU4s位置で測定した変位量データの一例を示す図である。
図7】PU4s位置に対するPU1s位置でのベルト蛇行量の一例を示す図である。
図8】原点検知センサと変位センサPU1s、PU4sの位置関係および搬送ベルトの周長を分割した各区間に付与した番地を示す図である。
図9】蛇行量の測定過程を時系列に示す図である。
図10図9の続きを示す図である。
図11図10の続きを示す図である。
図12】印刷装置が、蛇行量を求めてこれを補正しながら印刷する処理を示す流れ図である。
図13】搬送ベルトの左右両端部に沿って変位センサを配置した印刷装置の搬送部を示す平面図である。
図14】搬送ベルトが幅方向に伸縮する様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0033】
図1は、本発明の実施の形態に係る印刷装置5の概略構成を示す図である。印刷装置5は、プリントユニット(印字ユニット)PUからインク液滴を吐出して、布などの記録媒体2に画像を記録する、インクジェットプリンタである。印刷装置5は、駆動ローラ11および従動ローラ12を取り囲むように架け渡された無端の搬送ベルト13を周回させて記録媒体2を搬送する搬送部と、搬送ベルト13によって搬送される記録媒体2に向けてインクを吐出して画像を印字する印字部としてのプリントユニットPUを備えており、搬送される記録媒体2に対して各プリントユニットPUからインクを吐出することで所望の画像を記録媒体2上に形成(印字)する。
【0034】
図1に示す印刷装置5では、搬送ベルト13が記録媒体2を搬送する搬送方向の上流側から下流側に向けて互いに異なる色の画像を印字する6つのプリントユニットPU1~PU6が搬送ベルト13に沿って配列されている。なお、図2に示すように、印刷装置5は最大で8個のプリントユニットPUを搭載することができるようになっている。なお、プリントユニットPUの数は任意でよく上記に限定されるものではない。
【0035】
記録媒体2は、ロール状または折り畳まれた状態であり、図示省略の巻き出し機から繰り出されて搬送ベルト13の上流端に供給される。搬送ベルト13の上流端および下流端にはそれぞれ記録媒体2を搬送ベルト13のベルト面に押し付ける押圧ローラ14が設けてある(図1参照)。記録媒体2は、これらの押圧ローラ14によって搬送ベルト13のベルト面に押し付けられて搬送ベルト13と共に移動し搬送される。記録媒体2は下流端側の押圧ローラ14を過ぎた所で搬送ベルト13から離脱し、図示省略の巻き取り機に巻き取られる。
【0036】
印刷装置5は、搬送ベルト13の周長が約28mに及ぶ大型の装置である。設置現場では、駆動ローラ11および従動ローラ12に搬送ベルト13をかけて長さ調整を行った上で、長手方向の端部同士を溶着して無端とし、その後、搬送ベルト13の幅方向の両端部を必要なサイズにカットする、という作業が行われる。このように現場でのカットが行われるため、搬送ベルト13のベルト幅方向の端部は、滑らかではなく、荒れた状態になっている。
【0037】
印刷装置5は、駆動ローラ11や従動ローラ12から搬送ベルト13が逸脱することを防止するために搬送ベルト13の左右両端に側方から当てつけられるベルトガイド15、16を搬送ベルト13の上流端近傍および下流端近傍に備えている。ベルトガイド15、16は金属板などで構成される。下流側ベルトガイド15は、駆動ローラ11のやや上流にあって、従動ローラ12から駆動ローラ11に向かう往路側で搬送ベルト13の両端に当接する。上流側ベルトガイド16は、従動ローラ12のやや下流側にあって、駆動ローラ11から従動ローラ12に向かう復路側で搬送ベルト13の両端に当接する。
【0038】
搬送ベルト13の端部の形状は、下流側ベルトガイド15や上流側ベルトガイド16の当て付けにより変化するが、上流側ベルトガイド16を過ぎてから下流側ベルトガイド15に至るまでの間で変形することはない。
【0039】
搬送ベルト13には、ベルト1周の原点を示す原点マークGが一方の端部寄りに設けてある。ここでは、原点マークGは搬送ベルト13に開設された小径の穴である。原点マークGは穴に限定されるものではない。最も下流のプリントユニットPUよりやや下流に、原点マークGを検出するための原点検知センサ21が設けてある。
【0040】
また、搬送ベルト13の搬送方向に離れた複数の測定点に、搬送ベルト13の端部の搬送方向に直交するベルト幅方向の変位量を測定する変位センサ23が設けてある。設置後、各測定点の位置や測定点間の距離を測って印刷装置5に入力することで印刷装置5においてそれらの位置や距離は既知となる。
【0041】
ここでは、変位センサ23は、各プリントユニットPU1~PU6に対応する箇所にそれぞれ配置されている。詳細には、変位センサ23は、搬送ベルト13の端部に沿いかつ対応するプリントユニットPUの搬送方向中央となる位置に設置されている。以後、プリントユニットPU1~6のそれぞれに対応する位置に配置された変位センサ23をプリントユニットの符号PUの末尾にsを付与して変位センサPU1s~PU6sとする。
【0042】
なお、プリントユニットPUは搬送方向に等間隔で配置してあり、これに応じて変位センサ23(PU1s~PU6s)も搬送方向に等間隔で配置されている。測定点のうち、プリントユニットPU1に対応する測定点を基準点と呼ぶものとする。
【0043】
駆動ローラ11は、伝達ベルト等を介してモータの回転が伝達されて回転する。駆動ローラ11の軸にはロータリーエンコーダ25が取り付けてある。
【0044】
ロータリーエンコーダ25は、外周部に多数のスリットが等角度間隔で形成される共に駆動ローラ11に同心に取り付けられた円板と、この円板の外周近傍に固定的に設置され、回転する該円板のスリットの通過を検出する検出部を備えている。検出部は、スリットの通過を検出する毎にパルス信号(A相信号およびB相信号)を出力する。ロータリーエンコーダ25は駆動ローラ11が1回転する間に、たとえば、A相のパルス信号を4096回出力する。このパルス信号を計数することで搬送ベルト13の移動量(搬送距離)を正確かつリアルタイムに認識することができる。なお、搬送ベルト13の移動量はロータリーエンコーダ25以外のもの、たとえば、レーザードップラー測定器など、で測定しても良い。
【0045】
図3は、変位センサ23の一例を示している。ここでは、変位センサ23として透過型レーザ変位センサを用いる。変位センサ23は、搬送ベルト13の端部に沿って延設された搬送機サイドフレーム27上に取り付けられる。
【0046】
透過型レーザ変位センサは、レンズで平行にした所定幅の帯状レーザ光を射出する投光部23aと、投光部23aが射出したレーザ光をラインCCDで受光する受光部23bを備えている。受光部23bは投光部23aから所定距離を開けて投光部23aに対向して配置される。各変位センサ(透過型レーザ変位センサ)23は、搬送ベルト13の端部に沿って該搬送ベルト13が投光部23aの射出する帯状のレーザ光の一部を投光部23aと受光部23bの間で遮るように設置される。変位センサ(透過型レーザ変位センサ)23は、搬送ベルト13がレーザ光を遮ることによって生じる影の位置を受光部23bで検出することで、搬送ベルト13の幅方向の端部の位置を検出する。
【0047】
図4は、プリントユニットPUのキャリッジ31の正面(ノズル面)を示す図である。キャリッジ31は、複数の記録ヘッド32を正しい位置関係で保持するためのフレーム部材であり、剛性の高い金属板等で構成される。キャリッジ31には、搬送ベルト13の幅方向(主走査方向)1ライン分の印字範囲を分担する複数の記録ヘッド32が、主走査方向に沿って千鳥に配列されている。各記録ヘッド32は、入力される駆動信号に応じてインク吐出口33からインク液滴を吐出する。なお、プリントユニットPUは、複数の記録ヘッド32が取り付けられたキャリッジ31や後述するヘッド駆動回路43を内蔵したユニットである。
【0048】
プリントユニットPUに対応して変位センサ23を配置する場合、プリントユニットPUの搬送方向の厚みの中に収まる範囲、好ましくは厚みの中央位置がよい。図4に示すように、1つのプリントユニットPUにノズル列が複数ある場合、複数のノズル列の中央位置とすることが望ましい。なお、後述する補間処理を行えば、理想の中央位置から外れた位置に配置しても、理想の中央位置における蛇行量を推定することができる。
【0049】
図5は、印刷装置5の電気的構成を示すブロック図である。印刷装置5は、搬送部による搬送を制御する搬送制御部41、印刷データ生成部42、プリントユニットPU内のヘッド駆動回路43、蛇行補正制御基板50等を備える。
【0050】
搬送制御部41は、駆動ローラ11を駆動するモータの駆動を制御して搬送ベルト13による搬送を制御する。印刷データ生成部42は、外部装置から受信した印刷ジョブに基づいてRIP処理等を行って印刷すべき画像に対応する印刷データを生成し、これをプリントユニットPU内のヘッド駆動回路43へ出力する。ヘッド駆動回路43は、印刷データ生成部42から入力された印刷データに従って駆動信号を生成し、対応する記録ヘッド32へ出力する。
【0051】
蛇行補正制御基板50は、搬送ベルト13の蛇行量を検出するための測定の制御および演算を実行する機能および検出した蛇行量を示す蛇行情報を各プリントユニットPUのヘッド駆動回路43へ出力する機能を果たす。
【0052】
蛇行補正制御基板50は、CPU(Central Processing Unit)51、ROM(Read Only Memory)52、RAM(Random Access Memory)53、蛇行情報出力部54、I/O入力部55、エンコーダ入力部56、ADC(Analog-to-digital converter)57等をバスに接続して有する。
【0053】
I/O入力部55には原点検知センサ21の検出信号が入力され、エンコーダ入力部56にはロータリーエンコーダ25の出力信号が入力される。各変位センサ23の出力はADC57に入力される。
【0054】
CPU51は、ROM52に格納されているプログラムを実行し、RAM53は、CPU51がプログラムを実行する際の各種データを一時記憶する。CPU51は、プログラムを実行することで、移動量測定部61、変位量測定部62、蛇行量演算部63の機能を果たす。
【0055】
移動量測定部61は、搬送ベルト13の搬送方向の移動量を連続して計測する。ここでは、原点検知センサ21が原点マークGを検出した時点を基準にロータリーエンコーダ25の出力するパルス信号をカウントすることで、原点マークGが原点検知センサ21に到達した時点からの搬送ベルト13の移動量(搬送距離)をリアルタイムに測定する。1パルス当たりの移動量は装置に固定の一定値であり既知であるから、ロータリーエンコーダ25の出力するパルス信号の計数値から移動量(搬送距離)を正確かつリアルタイムに求めることができる。
【0056】
変位量測定部62は、一の測定点の変位センサ23で、搬送ベルト13の端部の搬送方向に直交するベルト幅方向の変位量を測定すると共に、移動量測定部61が計測している移動量と測定点間の既知の距離とに基づいて、搬送ベルト13の一の測定点の変位センサ23で変位量を測定した箇所と同じ箇所の変位量を他の測定点の変位センサ23で測定し、その測定データを記録する機能を果たす。
【0057】
たとえば、変位量測定部62は、ロータリーエンコーダ25が出力するパルス信号毎に、そのパルス信号の出力時点における変位量を各変位センサ23で測定し、各変位センサ23が測定した変位量と移動量測定部61が計測しているそのときの搬送ベルトの移動量(搬送距離)とを対応付けてRAM53に記録する。
【0058】
なお、変位量の測定周期における搬送距離(この例では、ロータリーエンコーダ25の1パルス当たりの搬送距離)の整数倍が測定点間の距離になるように設定してある。これにより、搬送ベルト13の搬送方向の同一箇所を各測定点の変位センサ23で測定することになる。
【0059】
変位量の測定周期は、該測定周期における搬送距離の整数倍が測定点間の距離になれる値であれば任意でよい。たとえば、搬送方向における画素ピッチに対応する搬送距離を測定周期としてもよい。
【0060】
蛇行量演算部63は、変位量測定部62が一の測定点と他の測定点で測定して記録した同一箇所の変位量の差分をとることで、一の測定点に対する他の測定点での搬送ベルト13の蛇行量を求める演算を行う。
【0061】
図6は、変位量測定部62が記録した測定データの一例を示している。図の上側のグラフAはプリントユニットPU1に対応する位置に配置した変位センサ23(PU1s)で測定した変位量と原点検知センサ21が原点マークGを検出してからの搬送ベルト13の移動量(搬送距離)とを紐付けて記録した測定データをグラフ化したものである。縦軸は変位量、横軸は原点マークG検知後の移動量(搬送距離)である。図の下側のグラフBはプリントユニットPU4に対応する位置に配置した変位センサ23(PU4s)で測定した変位量と原点検知センサ21が原点マークGを検出してからの搬送ベルト13の移動量(搬送距離)とを紐付けて記録した測定データに対応するグラフである。
【0062】
たとえば、基準点をPU4sの位置とし、測定点を基準点より3.14m上流にあるPU1sの位置とすると、PU4sで測定した測定データを、3.14m分だけオフセット(グラフBを3.14m分だけ全体に左にオフセット)し、このオフセットしたPU4sの測定データから、PU1sの測定データを減算することで、PU4sの位置(プリントユニットPU4の位置)に対するPU1sの位置(プリントユニットPU1の位置)での搬送ベルト13の蛇行量が求まる。
【0063】
なお、変位センサ23の出力信号からDC成分を除去することで、変位センサ23の絶対位置に係らず、搬送ベルト13の端部の変位量成分を抽出することができる。したがって、複数の変位センサ23の相対的な取り付け位置を一直線上に正確に設置する必要はない。
【0064】
図7は、3.14mだけ左にオフセットしたグラフBとグラフAとの差分とったグラフCを示している。グラフCは原点マークGが原点検知センサ21によって検知された時点からの搬送ベルト13の移動量(搬送距離)と、変位センサPU4sの位置に対する変位センサPU1sの位置での搬送ベルト13の蛇行量との関係を示している。
【0065】
なお、蛇行補正制御基板50は、差分値のデータにローパスフィルタをかけてスパイク的なノイズ(搬送ベルト13の端部の毛羽、搬送ベルト13の上下の揺れ、振動などにより生じるノイズ)を除去したデータを蛇行情報として対応するプリントユニットPUのヘッド駆動回路43に出力する。ここでは、ローパスフィルタをかけることで、主走査方向の画素ピッチ程度に蛇行量を丸める。なお、画素ピッチ程度とするのは、後述する印字制御部43aによる印字位置の補正が主走査方向の画素ピッチより細かくできないことによる。
【0066】
各プリントユニットPUのヘッド駆動回路43の印字制御部43a(図5参照)は、蛇行補正制御基板45から入力された蛇行情報に基づいて、そのプリントユニットPUの位置での蛇行量(基準点に対する蛇行量)が相殺されるように搬送ベルト13の幅方向(主走査方向)における画像の印字位置を変更する。たとえば、基準点をプリントユニットPU4の位置として、搬送ベルトの所定箇所における基準点に対するプリントユニットPU1の位置での蛇行量が、搬送ベルト13の左端部側へ3画素分の距離であれば、搬送ベルトの所定箇所がプリントユニットPU1の位置に到来したときに印字するラインの画像を搬送ベルト13の左端部側に3画素分シフトさせて印字する。
【0067】
なお、搬送ベルト13の蛇行は、搬送ベルト13の1周を周期としてほぼ同様の変化が繰り返される。蛇行量は、気温の変動や、搬送ベルト13の端部が下流側ベルトガイド15や上流側ベルトガイド16が当て付けられることによって徐々に変化するが、その変化は緩やかに起こり、1周前とはほとんど変わらない。
【0068】
一方、搬送ベルト13の端部の変位量をプリントユニットPUの位置に設置した変位センサ23で測定し、蛇行量を演算し、これに基づいて印字位置をシフトさせる制御をリアルタイムに行うことは難しい。
【0069】
そこで、本実施の形態では、蛇行補正制御基板50は、1周前の測定で得た蛇行情報をヘッド駆動回路43の印字制御部43aへ出力し、印字制御部43aは、1周前の蛇行情報に基づいて印字位置の補正を行う。このように1周前の蛇行情報を用いることで、蛇行量の演算や印字位置をシフトさせる制御を、時間的余裕を持って行うことができる。
【0070】
また、1周前の蛇行情報を用いることで、基準点を、プリントユニットPU4に対応する位置のように、搬送方向の中心位置など任意の位置に設定することができる。たとえば、搬送ベルト13の蛇行が上流から下流まで単調に一方へ片寄るように生じている場合でも、プリントユニットPU4の位置のように搬送方向の中心位置を基準点にすることで、印字位置の補正を±両方向に振り分けることができるので、基準点を最上流や最下流のプリントユニットPUの位置に設定する場合に比べて、搬送ベルトがどちらの端部側に蛇行しても少ない補正量で蛇行量を相殺する補正を行うことができる。
【0071】
次に、蛇行量を算出する処理をより具体的に説明する。
【0072】
ここでは、変位センサPU4sの位置に対する変位センサPU1sの位置での搬送ベルト13の蛇行量を求める場合を例にする。変位センサPU1sはプリントユニットPU1の位置にあり、変位センサPU4sはプリントユニットPU4の位置にあるものとする。
【0073】
この例では、搬送ベルト13の周長を14の区間に分割し、図8に示す位置関係で変位センサ23(PU1s、PU4s)および原点検知センサ21が配置されているものとする。また図では、搬送ベルト13に、原点マークGの位置を起点として14分割した各区間の始点位置に0~13の番地を付してある。図9図11に測定の状況を時系列に示してある。
【0074】
まず、原点検知センサ21が原点マークGを検出したタイミングを各変位センサ23(PU1s、PU4s)による測定の開始基準時として測定を開始する(図9のQ1)。図9図11の各グラフは、変位センサ23(PU1s)が測定したベルト端部位置(変位量)、変位センサ23(PU4s)が測定したベルト端部位置(変位量)、PU4s位置に対するPU1s位置でのベルト蛇行量を示している。縦軸はベルト端部位置(変位量)もしくは蛇行量であり、横軸は原点マークGの位置を0とした搬送ベルト上の位置を示しており、横軸の数値は、周長を14分割した際に付した番地に対応している。
【0075】
原点検知センサ21や各変位センサ23(PU1s、PU4s)の位置関係は既知なので、原点検知センサ21が原点マークGを検知したタイミングで、PU1sやPU4sが搬送ベルト13上のどの位置を測定しているかを把握することができる。たとえば、測定開始時、PU1sは5番地の位置に、PU4sは3番地の位置にある。
【0076】
図9(Q2)は、測定開始から1区間搬送されたタイミングでの測定状況を示している。変位センサPU1sは、搬送ベルト13の5番地から6番地にかけてのベルト端部位置(変位量)を測定し、変位センサPU4sは3番地から4番地にかけてのベルト端部位置(変位量)を測定している。図9(Q3)は、測定開始から2区間搬送されたタイミングでの測定状況を示している。変位センサPU1sは、測定開始から5番地から7番地にかけてのベルト端部位置(変位量)を測定しており、変位センサPU4sは3番地から5番地にかけてのベルト端部位置(変位量)を測定している。
【0077】
この後は、ベルト上の同一箇所(5番地以後の部分)に対するPU1s、PU4sの測定データが揃うので、同一箇所の差分を取って蛇行量を求める演算を開始する。図10(Q4)は、測定開始から3区間搬送されたタイミングでの測定状況と演算結果の蛇行量を示している。5番地から6番地までの範囲について、同一箇所の測定データが揃うので、PU1sの測定データとPU4sの測定データの差分を取って蛇行量を演算する。
【0078】
図10(Q5)は、測定開始から13区間まで搬送されたタイミングでの測定状況と演算結果の蛇行量を示している。
【0079】
図10(Q6)は、測定開始から14区間搬送されたタイミングでの(1周したとき)の測定状況と演算結果の蛇行量を示している。蛇行補正制御基板50は、原点マークGが再び原点検知センサ21によって検出されて搬送ベルト13が一周したことを認識すると、ヘッド駆動回路43への蛇行情報のフィードバック(出力)を開始する。すなわち、PU4s位置に対するPU1s位置での蛇行量データは、5番地の位置から存在するので、5番地の位置がプリントユニットPU1の位置に到達するタイミングに合わせて(もしくはヘッド駆動回路43での処理時間を考量してその少し前から)プリントユニットPU1のヘッド駆動回路43への蛇行情報の出力を開始する。
【0080】
プリントユニットPU1のヘッド駆動回路43は、蛇行補正制御基板50から受け取った蛇行情報に基づいて、蛇行量が相殺されるように画像を主走査方向にシフトさせて印字を行う。
【0081】
その後は、図11(Q7)、(Q8)に示すように、最新のデータでベルト端部位置(変位量)および蛇行量を書き換えて更新しながら、この処理を繰り返す。
【0082】
なお、図11(Q7)では、3番地から5番地のベルト端部位置の差分を取って蛇行量を求める演算において、変位センサPU4sの測定データが2周目のデータであるのに対して、変位センサPU1sの測定データはその前の周のデータとなっている。上流側ベルトガイド16から下流側ベルトガイド15までの間はベルト端部がベルトガイド15、16に接触しないため、同じ周のデータであればベルト端部の形状は変化しないと考えられるが、周が異なると上流側ベルトガイド16等への接触によりベルト端部の形状が変化している可能性がある。そのため、差分を取る測定値は同じ周の測定値とすることが望ましい。
【0083】
そこで、たとえば、2周分のデータを保持するようにして最新のデータへの更新を順次行い、同じ周の測定データの差分を取って蛇行量を求めるようにすればよい。また、印刷前に搬送ベルト13を2周以上動かして、全てのベルト位置において同じ周の測定値で蛇行量を求められるようにしてから実際の印刷を開始するようにすればよい。
【0084】
図12は、印刷装置5が蛇行量を補正して印刷する処理を示す流れ図である。ここでは、説明を簡単にするため、図9図11と同様に、PU4sの位置に対するPU1sの位置での搬送ベルト13の蛇行量を求めて画像データを補正する場合を示す。変位センサPU1sはプリントユニットPU1の位置にあり、変位センサPU4sはプリントユニットPU4の位置にあるものとする。なお、実際には全てのプリントユニットPU1~PU6(PU4を基準点とする場合はPU4以外)について同様の処理を行う。
【0085】
原点検知回数を計数するカウンタは初期状態で0にリセットされているものとする。まず、搬送ベルト13を駆動して搬送を開始する(ステップS101)。搬送(印刷)終了でなければ(ステップS102;No)、原点検知センサ21が原点マークGを検出したか否かを調べる(ステップS103)。搬送(印刷)終了ならば(ステップS102;Yes)、本処理を終了する。
【0086】
原点マークGを検出した場合は(ステップS103;Yes)、変位センサPU1s、PU4sが測定するベルト上の位置(原点マークGに対する搬送方向の位置)を、原点検知センサ21および変位センサPU1s、PU4の既知の位置関係に基づいてリセットし(ステップS104)、原点検知回数を+1して(ステップS105)、ステップS107へ移行する。
【0087】
原点検知センサ21が原点マークGを検出しない場合は(ステップS103;No)、変死センサPU1s、PU4sが測定するベルト上の位置(原点マークGに対する搬送方向の位置)を、原点検知センサ21が原点マークGを検出してからの搬送距離(原点マークGを検出時からロータリーエンコーダ25の出力パルスを計数して求めた距離)だけ加算して更新し(ステップS106)、ステップS107へ移行する。
【0088】
ステップS107では、変位センサPU1sが検出したベルト端部位置(変位量)と変位センサPU1sのベル上の位置とを対応付けて保存し、変位センサPU4sが検出したベルト端部位置(変位量)と変位センサPU4sのベルト上の位置とを対応付けて保存する。
【0089】
次に、原点検知回数が所定値(たとえば、2または3)未満か否かを調べ、所定値未満ならば(ステップS108;No)、ステップS102に戻って処理を継続する。
【0090】
原点検知回数が所定値以上ならば(ステップS108;Yes)、変位センサPU1sのベルト現在位置に対応する、1周前のPU1s、PU4sの測定値(ベルト端部位置(変位量))の差分を取って、PU4s位置に対するPU1s位置でのベルト蛇行量を計算する(ステップS109)。さらにそのベルト蛇行量にローパスフィルタをかけて(ステップS110)得た蛇行量をプリントユニットPU1のヘッド駆動回路43へ出力してフィードバックする(ステップS111)。
【0091】
印刷の実行中ならば(ステップS112;Yes)、ヘッド駆動回路43は蛇行量が相殺されるように画像データを主走査方向(ベルト幅方向)にシフトさせ(ステップS113)、そのシフト後の画像データに従って各記録ヘッド32からインクを吐出させて画像を記録媒体2に印刷し(ステップS114)、ステップS102に戻って処理を継続する。
【0092】
印刷の実行中でなければ(ステップS112;No)、ステップS113、ステップS114を実行せずにステップS102に戻って処理を継続する。
【0093】
このように、ロータリーエンコーダ25の出力パルスに基づいて搬送ベルト13の移動量(搬送距離)をリアルタイムに実測することで、各測定点の変位センサ23が搬送ベルト13の搬送方向のどの位置のベルト端部位置(変位量)を測定しているかを認識できるので、搬送ベルト13の搬送速度が変動しても、その影響を受けることなく、各測定点で測定した搬送ベルト13上の同一箇所の測定値同士の差分を取ることができ、正しい蛇行量を求めてこれを相殺する補正を行うことができる。
【0094】
<補間処理>
変位センサ23を配置した測定点以外の位置における蛇行量を、複数の測定点における蛇行量に基づく補間処理によって推定する。たとえば、機械的な制約から変位センサ23を各プリントユニットPUの搬送方向中央位置(理想位置)に設置できない場合には、理想位置と異なる場所(可能な範囲で理想位置の近くが好ましい)に変位センサ23を設置し、複数の変位センサ23が測定した蛇行量に基づく補間処理により、理想位置における蛇行量を求める。なお、理想位置からずらして変位センサ23を配置する場合、各変位センサ23をそれぞれの理想位置からズレを同一にすることが望ましい。これにより、同じ補間処理を施すことができ全体として補間処理が容易になる。
【0095】
たとえば、基準点から第1測定点までの距離をL1、基準点から第2測定点までの距離をL2、基準点から所定のプリントユニットPU(理想位置)までの距離をL3(L1<L3<L2、とする)、搬送ベルト13の同一箇所に関する第1測定点での蛇行量をD1、第2測定点での蛇行量をD2とする。このとき、ベルト上のその箇所における、基準点に対する理想位置での蛇行量Dxは、
Dx=D1+(D2-D1)×(L3-L1)/(L2-L1)
といった演算で求めることができる。
【0096】
上記の演算は、内挿による補間であるが、外挿による補間を行えば測定点より下流の位置での蛇行量を推定することができるので、1周前の蛇行量を用いることなく、現在の周の推定した蛇行量に基づいて、印字位置の補正を行うようにしてもよい。たとえば、L1<L2<L3、の場合、
Dx=D2+(D2-D1)×(L3-L1)/(L2-L1)
として求めることができる。
【0097】
<左右両端部で変位量を測定>
これまでの説明では、搬送ベルト13の一方の端部の変位量を変位センサ23で測定して蛇行量を求める場合を示したが、図13に示すように、変位センサ23を、搬送ベルト13の両端部に沿って配置してもよい。
【0098】
搬送ベルト13の周長が長い場合には、蛇行だけでなく、図14に示すようにベルトが幅方向にも伸縮するため、ベルトの幅方向(主走査方向)のインク着弾位置が目標位置からズレる場合がある。搬送ベルト13の左右両端部に変位センサ23を配列すれば、搬送ベルト13の幅方向の伸び縮みの変化についても検出して補正することが可能になる。
【0099】
たとえば、PU4位置に対するPU1位置の蛇行量が右端部で+0.05mm、左端部で+0.03mmの場合、平均の+0.04を蛇行量と見て補正する。
【0100】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0101】
実施の形態では、印刷装置5としてインクジェットプリンタを例示したが、搬送ベルト13で記録媒体2を搬送するタイプであれば、LEDプリンタ等であってもよい。
【符号の説明】
【0102】
2…記録媒体
5…印刷装置
11…駆動ローラ
12…従動ローラ
13…搬送ベルト
14…押圧ローラ
15…下流側ベルトガイド
16…上流側ベルトガイド
21…原点検知センサ
23、PU1s~PU6s…変位センサ
23a…投光部
23b…受光部
25…ロータリーエンコーダ
27…搬送機サイドフレーム
31…キャリッジ
32…記録ヘッド
33…インク吐出口
41…搬送制御部
42…印刷データ生成部
43…ヘッド駆動回路
43a…印字制御部
50…蛇行補正制御基板
51…CPU
52…ROM
53…RAM
54…蛇行情報出力部
55…I/O入力部
56…エンコーダ入力部
57…ADC
61…移動量測定部
62…変位量測定部
63…蛇行量演算部
G…原点マーク
PU…プリントユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
図12
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図14