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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】三次元造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/14 20210101AFI20221201BHJP
   B22F 10/37 20210101ALI20221201BHJP
   B22F 12/13 20210101ALI20221201BHJP
   B22F 12/55 20210101ALI20221201BHJP
   B22F 12/63 20210101ALI20221201BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20221201BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20221201BHJP
【FI】
B22F10/14
B22F10/37
B22F12/13
B22F12/55
B22F12/63
B28B1/30
B33Y10/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019028638
(22)【出願日】2019-02-20
(65)【公開番号】P2020132954
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】▲角▼谷 彰彦
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-204105(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0014910(US,A1)
【文献】特開2015-205485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/00 - 10/85
B22F 12/00 - 12/90
B28B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
層を積層して三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法であって、
第1平均粒子径の第1金属粉末を造形テーブルに供給する第1金属粉末供給工程と、
前記造形テーブルに供給された前記第1金属粉末を圧縮して前記層を形成する層形成工程と、
前記第1平均粒子径に対する平均粒子径が1/10以上1/2以下である第2平均粒子径の第2金属粉末と、バインダーと、を含む第1液体を、前記層における前記三次元造形物の構成領域の一部に供給する第1液体供給工程と、
前記第1液体よりも低い濃度で前記第2金属粉末を含むか、前記第2平均粒子径よりも大きい平均粒子径の第3金属粉末を含むか、の少なくともいずれかのバインダーを含む第2液体を、前記構成領域における表層領域の少なくとも一部に供給する第2液体供給工程と、
前記層の積層体を加熱して前記構成領域における金属を焼結する焼結工程と、
を有し、
前記構成領域における前記表層領域以外の内部領域に、前記第1液体と前記第2液体とを供給することを特徴とする三次元造形物の製造方法。
【請求項2】
請求項に記載された三次元造形物の製造方法において、
前記内部領域に、前記第1液体と前記第2液体とを前記層毎に交互に供給することを特徴とする三次元造形物の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載された三次元造形物の製造方法において、
前記構成領域における前記表層領域以外の内部領域に、前記第2液体を供給せずに前記第1液体を供給することを特徴とする三次元造形物の製造方法。
【請求項4】
層を積層して三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法であって、
第1平均粒子径の第1金属粉末を造形テーブルに供給する第1金属粉末供給工程と、
前記造形テーブルに供給された前記第1金属粉末を圧縮して前記層を形成する層形成工程と、
前記第1平均粒子径に対する平均粒子径が1/10以上1/2以下である第2平均粒子径の第2金属粉末と、バインダーと、を含む第1液体を、前記層における前記三次元造形物の構成領域の一部に供給する第1液体供給工程と、
前記第1液体よりも低い濃度で前記第2金属粉末を含むか、前記第2平均粒子径よりも大きい平均粒子径の第3金属粉末を含むか、の少なくともいずれかのバインダーを含む第2液体を、前記構成領域における表層領域の少なくとも一部に供給する第2液体供給工程と、
前記層の積層体を加熱して前記構成領域における金属を焼結する焼結工程と、
を有し、
前記構成領域における前記表層領域以外の内部領域に、前記第2液体を供給せずに前記第1液体を供給することを特徴とする三次元造形物の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載された三次元造形物の製造方法において、
前記第2液体供給工程は、前記第2液体を前記表層領域の全体に供給することを特徴とする三次元造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、三次元造形物の製造方法には様々な種類がある。このうち、層を積層して三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法がある。例えば、特許文献1には、大粒子の金属粉末で層を形成することと、小粒子の金属粉末を散布することと、三次元造形物の構成領域にバインダーを含む液体を供給することと、を繰り返して三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-192468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大粒子の金属粉末のみを用いて三次元造形物を製造すると、金属粉末の粒子間の隙間が大きくなることで低密度となり剛性などが低下する場合がある。一方、小粒子の金属粉末のみを含む金属粉末、又は、大粒子の金属粉末と小粒子の金属粉末とを共に含む金属粉末を用いて、層形成することは、金属粉末の塊である凝集を起こしてしまう可能性があり、逆に粉末の充填密度は小さくなり、薄く均一に敷けなくなってしまう。そこで、高密度の三次元造形物を製造するために、特許文献1の三次元造形物の製造方法のように、大粒子の金属粉末を用いて層形成し、小粒子の金属粉末を散布することが考えられる。しかしながら、特許文献1の三次元造形物の製造方法においては、小粒子の金属粉末を散布しても大粒子の金属粉末の粒子間の隙間に該小粒子の金属粉末が効果的に入らず、高密度の三次元造形物を製造できない場合がある。
さらに、高密度な金属製の三次元造形物を製造する場合、積層物の焼結の際において高密度な三次元造形物の表層から気化したバインダーなどが抜けられないことで、大型の三次元造形物を製造するのが困難となっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の三次元造形物の製造方法は、層を積層して三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法であって、第1平均粒子径の第1金属粉末を造形テーブルに供給する第1金属粉末供給工程と、前記造形テーブルに供給された前記第1金属粉末を圧縮して前記層を形成する層形成工程と、前記第1平均粒子径に対する平均粒子径が1/10以上1/2以下である第2平均粒子径の第2金属粉末と、バインダーと、を含む第1液体を、前記層における前記三次元造形物の構成領域の一部に供給する第1液体供給工程と、前記第1液体よりも低い濃度で前記第2金属粉末を含むか、前記第2平均粒子径よりも大きい平均粒子径の第3金属粉末を含むか、の少なくともいずれかのバインダーを含む第2液体を、前記構成領域における表層領域の少なくとも一部に供給する第2液体供給工程と、前記層の積層体を加熱して前記構成領域における金属を焼結する焼結工程と、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の三次元造形物の製造方法を実行可能な一実施形態に係る三次元造形物の製造装置の構成を表す概略構成図。
図2】本発明の一実施例に係る三次元造形物の製造方法のフローチャート。
図3】本発明の一実施例に係る三次元造形物の製造方法により形成した三次元造形物の一例の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
最初に、本発明について概略的に説明する。
上記課題を解決するための本発明の第1の態様の三次元造形物の製造方法は、層を積層して三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法であって、第1平均粒子径の第1金属粉末を造形テーブルに供給する第1金属粉末供給工程と、前記造形テーブルに供給された前記第1金属粉末を圧縮して前記層を形成する層形成工程と、前記第1平均粒子径に対する平均粒子径が1/10以上1/2以下である第2平均粒子径の第2金属粉末と、バインダーと、を含む第1液体を、前記層における前記三次元造形物の構成領域の一部に供給する第1液体供給工程と、前記第1液体よりも低い濃度で前記第2金属粉末を含むか、前記第2平均粒子径よりも大きい平均粒子径の第3金属粉末を含むか、の少なくともいずれかとバインダーを含む第2液体を、前記構成領域における表層領域の少なくとも一部に供給する第2液体供給工程と、前記層の積層体を加熱して前記構成領域における金属を焼結する焼結工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、第1平均粒子径よりも小さい第2平均粒子径の第2金属粉末と、バインダーと、を含む第1液体を供給する。すなわち、粒子の隙間に進入しやすい液体である第1液体により、大粒子である第1金属粉末の隙間に小粒子である第2金属粉末を効果的に配置させることができる。このため、三次元造形物を高密度にすることができる。また、表層領域の少なくとも一部に第1液体よりも低い濃度で第2金属粉末を含むか、第2平均粒子径よりも大きい平均粒子径の第3金属粉末を含むか、の少なくともいずれかの第2液体を配置することで、金属を焼結する焼結工程において、表層領域の少なくとも一部にバインダーなどが抜ける隙間を形成でき、表層領域からバインダーなどを効果的に除去(脱脂)できる。したがって、大型で高密度の金属製の三次元造形物を製造することができる。
【0009】
本発明の第2の態様の三次元造形物の製造方法は、前記第1の態様において、前記第2液体供給工程は、前記第2液体を前記表層領域の全体に供給することを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、第2液体を表層領域の全体に供給するので、三次元造形物を高密度としつつ、三次元造形物の表層全体からバインダーなどが抜ける隙間を形成でき、表層領域からバインダーなどを効果的に除去(脱脂)できる。
【0011】
本発明の第3の態様の三次元造形物の製造方法は、前記第1または第2の態様において、前記構成領域における前記表層領域以外の内部領域に、前記第1液体と前記第2液体とを供給することを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、内部領域に第1液体と第2液体とを供給するので、内部領域から表層領域までバインダーなどを効果的に除去(脱脂)できる。したがって、大型で高密度の金属製の三次元造形物を好適に製造することができる。
【0013】
本発明の第4の態様の三次元造形物の製造方法は、前記第3の態様において、前記内部領域に、前記第1液体と前記第2液体とを前記層毎に交互に供給することを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、内部領域に第1液体と第2液体とを層毎に交互に供給するので、内部領域から表層領域までバインダーなどを効果的に除去(脱脂)できる。したがって、特に大型で高密度の金属製の三次元造形物を好適に製造することができる。
【0015】
本発明の第5の態様の三次元造形物の製造方法は、前記第1または第2の態様において、前記構成領域における前記表層領域以外の内部領域に、前記第2液体を供給せずに前記第1液体を供給することを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、内部領域に第2液体を供給せずに第1液体を供給するので、内部領域を特に高密度に構成できる。したがって、大型で特に高密度の金属製の三次元造形物を製造することができる。
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。
最初に、本発明の三次元造形物の製造方法を実行可能な三次元造形物の製造装置1の概要について図1を参照して説明する。
ここで、図中のX方向は水平方向であり、Y方向は水平方向であるとともにX方向と直交する方向である。また、Z方向は鉛直方向であり層Lの積層方向に対応する。
【0018】
本実施形態の三次元造形物の製造装置1は、層Lを積層することにより三次元造形物を製造する三次元造形物の製造装置である。そして、図1で表されるように、本実施形態の三次元造形物の製造装置1は、造形テーブル9を有するテーブルユニット10と、三次元造形物の構成材料を造形テーブル9に供給する供給ユニット8と、テーブルユニット10及び供給ユニット8の動作を制御する制御部12と、を備えている。なお、三次元造形物の製造装置1は、PCなどの外部装置20と電気的に接続されており、外部装置20を介してユーザーからの指示を受け付け可能な構成となっている。
【0019】
造形テーブル9は、制御部12の制御によりZ方向に移動可能な構成となっている。造形テーブル9の造形面9aをテーブルユニット10の上面部10aに対してZ方向において所定の距離だけ低い位置に配置し、造形面9aに供給ユニット8から三次元造形物の構成材料を供給して1層分の層Lを形成する。そして、造形テーブル9の所定の距離分の下方への移動と、供給ユニット8からの三次元造形物の構成材料の供給と、を繰り返すことで積層する。図1は、層L1、層L2、層L3及び層L4の4層分の層形成を繰り返して、造形面9a上に2つの三次元造形物の積層体Sを形成した様子を表している。
【0020】
供給ユニット8は、ガイドバー11に沿って、X方向に移動可能な構成となっている。また、供給ユニット8は、三次元造形物の構成材料としての第1平均粒子径の第1金属粉末を造形テーブル9に供給する第1金属粉末供給部2を備えている。本実施形態においては、第1金属粉末供給部2として、第1金属粉末供給部2aと、第1金属粉末供給部2bと、をX方向における供給ユニット8の端部に配置している。なお、「平均粒子径」としては、例えば、メディアン径であるd50を採用できる。
【0021】
また、供給ユニット8は、造形テーブル9に供給された第1金属粉末を圧縮して均すことが可能な圧縮ローラー6を備えている。本実施形態においては、圧縮ローラー6として、第1金属粉末供給部2aの近傍に設けられた圧縮ローラー6aと、第1金属粉末供給部2bの近傍に設けられた圧縮ローラー6bと、を有している。
【0022】
また、供給ユニット8は、第2平均粒子径の第2金属粉末とバインダーとを含む第1液体I1を層Lにおける三次元造形物の構成領域Rの少なくとも一部に供給する第1液体供給部3を備えている。ここで、第2平均粒子径における第1平均粒子径に対する平均粒子径は、1/10以上1/2以下となっている。
【0023】
また、供給ユニット8は、第1液体I1よりも低い濃度で第2金属粉末を含むか、第2平均粒子径よりも大きい平均粒子径の第3金属粉末を含むか、の少なくともいずれかとバインダーを含む第2液体I2を、構成領域Rにおける表層領域Reの少なくとも一部に供給する第2液体供給部4を備えている。第2液体供給部4の構成は、第1液体供給部3と同じであってもよいし、異なっていてもよい。第1液体I1を構成領域Rに付与した場合も第2液体I2を構成領域Rに付与した場合も何れも構成領域Rを高密度化できる。しかしながら、第1液体I1のみを構成領域Rに付与した場合よりも、第2液体I2のみ又は第1液体I1と第2液体I2とを構成領域Rに付与した場合の方が、例えば気化したバインダーなどの気体を通過させることが可能な空隙は多く或いは大きくなる。ただし、第1液体I1のみを構成領域Rに付与した場合の方が、第2液体I2のみ又は第1液体I1と第2液体I2とを構成領域Rに付与した場合よりも、構成領域Rをより高密度化できる。
【0024】
また、供給ユニット8は、第1金属粉末、第2金属粉末及び第3金属粉末のいずれの融点よりも高い融点のセラミックス粉末を含む第3液体I3を供給する第3液体供給部5を備えている。第3液体I3を供給した領域Cは、焼結工程で金属粉末の焼結を阻害し、焼結後に容易に分離することができる。例えば、図1で表されるように第3液体I3を領域Cに供給し、第1金属粉末及び第2金属粉末の焼結温度以上かつセラミックス粉末の焼結温度未満で積層体Sを焼結させた場合、構成領域Rの一部である領域Cに囲まれた部分Scに穴を形成することができる。
【0025】
また、供給ユニット8は、第1液体I1、第2液体I2及び第3液体I3の溶媒などを乾燥させるヒーター7を備えている。ヒーター7としては、例えば赤外線ヒーターなどを使用できるが、特に限定はない。
【0026】
なお、第1金属粉末供給部2における第1金属粉末の排出口、圧縮ローラー6、第1液体供給部3における液体の射出口、第2液体供給部4における液体の射出口、第3液体供給部5における液体の射出口、ヒーター7、の何れも、Y方向に延設されている。また、第1液体供給部3、第2液体供給部4及び第3液体供給部5、並びに、ヒーター7は、個別に相対的な位置を変更可能な構成となっている。例えば、Z方向における位置を変えることで、造形テーブル9の造形面9aに対する距離を変更可能である。
【0027】
本実施形態の供給ユニット8は、図1で表されるように、Y方向から見て、第1金属粉末供給部2、第1液体供給部3、第2液体供給部4、第3液体供給部5、圧縮ローラー6、ヒーター7の配置がX方向に対称にはなっていない。ただし、これらの配置がX方向に対称になっていることが好ましい。これらの配置をX方向に対称にすることで、X方向におけるX1方向に移動する際とX方向におけるX2方向に移動する際との両方で、同様の条件で層Lの形成ができるようになるためである。
【0028】
次に、本実施形態の三次元造形物の製造装置1で使用可能な構成材料について詳細に説明する。
第1金属粉末、第2金属粉末及び第3金属粉末としては、例えばマグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単体粉末、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金(マルエージング鋼、ステンレス(SUS)、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金)などの混合粉末を、用いることが可能である。
【0029】
セラミックス粉末としては、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどを好ましく使用可能である。
【0030】
バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオキシメチレン、ポリメチルメタクリレート、パラフィンワックスなどを好ましく使用可能である。さらには、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂或いはその他の合成樹脂又はPLA(ポリ乳酸)、PA(ポリアミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)或いはその他の熱可塑性樹脂などを単独で或いは組み合わせて用いることができる。
【0031】
また、第1液体I1、第2液体I2及び第3液体I3には溶剤をさらに含んでいてもよく、好ましい溶剤としては、例えば、水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラアルキルアンモニウムアセテート類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、γ-ピコリン、2,6-ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等)等のイオン液体等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
次に、上記三次元造形物の製造装置1を用いて行う三次元造形物の製造方法の一実施例について、図2のフローチャートを用いて説明する。
【0033】
本実施例の三次元造形物の製造方法においては、最初に、図2のフローチャートで表されるように、ステップS110の造形データ入力工程で、製造する三次元造形物の造形データを入力する。三次元造形物の造形データの入力元に特に限定はないが、外部装置20としてのPCなどを用いて造形データを三次元造形物の製造装置1に入力できる。
【0034】
次に、ステップS120の第1金属粉末供給工程で、図1で表される第1金属粉末供給部2から第1金属粉末を造形テーブル9の造形面9aに供給する。
【0035】
次に、ステップS130の層形成工程で、造形テーブル9に供給された第1金属粉末を圧縮ローラー6で圧縮して層Lを形成する。
【0036】
次に、ステップS140の第1液体供給工程で、第1液体供給部3から、第1平均粒子径に対する平均粒子径が1/10以上1/2以下である第2平均粒子径の第2金属粉末と、バインダーと、を含む第1液体I1を、層Lにおける三次元造形物の構成領域Rの一部に供給する。詳細には、三次元造形物の構成領域Rのうちの内部領域Riの全部または該内部領域Riの一部、さらには、場合により構成領域Rのうちの表層領域Reの一部に、第1液体I1を供給する。
【0037】
次に、ステップS150の第2液体供給工程で、第2液体供給部4から、第1液体I1よりも低い濃度で第2金属粉末を含むか、第2平均粒子径よりも大きい平均粒子径の第3金属粉末を含むか、の少なくともいずれかのバインダーを含む第2液体I2を、構成領域Rにおける表層領域Reの少なくとも一部に供給する。
【0038】
ここで、図3は、内部領域Riの全部に第1液体I1が供給され、表層領域Reの全部に第2液体I2が供給された積層体Sの一例を表す概略図である。
最初に、第2液体供給部4から、第1液体I1よりも低い濃度で第2金属粉末を含む第2液体I2を表層領域Reに供給する場合の具体的な一例について説明する。第1液体I1及び第2液体I2のバインダーを共にポリビニルアルコールとし、第1液体I1は平均粒子径が5μmの第2金属粉末を5vol%含み、第2液体I2は平均粒子径が5μmの第2金属粉末を2.5vol%含むものとする。このような場合、例えば、内部領域Riにおける第1金属粉末に対する第2金属粉末の質量比が8:1になるようにし、表層領域Reにおける第1金属粉末に対する第2金属粉末の質量比が8:3になるようにする。このようにすることで、表層領域Reの金属密度を高めて表層領域Reを高い剛性とすることができるとともに、内部領域Riにおけるバインダー量を減らすことで焼結に伴い気化したバインダーの量が多すぎて内部領域Riからバインダーが抜けきらないということを抑制できる。
【0039】
次に、第2液体供給部4から、第2平均粒子径よりも大きい平均粒子径の第3金属粉末を含む第2液体I2を表層領域Reに供給する場合の具体的な一例について説明する。第1液体I1及び第2液体I2のバインダーを共にポリビニルアルコールとし、第1液体I1は平均粒子径が5μmの第2金属粉末を5vol%含み、第2液体I2は平均粒子径が15μmの第3金属粉末を5vol%含むものとする。このような場合、例えば、内部領域Riにおける第1金属粉末に対する第2金属粉末の質量比が8:1になるようにし、表層領域Reにおける第1金属粉末に対する第3金属粉末の質量比が8:3になるようにする。このようにすることで、表層領域Reの金属密度を高めて表層領域Reを高い剛性とすることができるとともに、表層領域Reにおける空隙の数を減らしつつも空隙が小さくなりすぎないようにすることでバインダーを抜け易くして焼結に伴いバインダーが内部領域Riに残るということを抑制できる。
【0040】
次に、ステップS160の第3液体供給工程で、第3液体供給部5から、第1金属粉末、第2金属粉末及び第3金属粉末のいずれの融点よりも高い融点のセラミックス粉末を含む第3液体I3を領域Cに供給する。なお、本ステップS160を実行して領域Cにセラミックス粉末を配置させることで、上記のとおり、構成領域Rの一部である領域Cに囲まれた部分Scに穴を形成することができる。ただし、製造する三次元造形物の形状などによっては、本ステップを省略することができる。
【0041】
次に、ステップS170の乾燥工程で、ヒーター7を用いて、第1液体I1、第2液体I2及び第3液体I3を乾燥させる。ただし、製造する三次元造形物の形状や使用する第1液体I1、第2液体I2及び第3液体I3の組成などによっては、本ステップを省略することができる。
【0042】
次に、ステップS180の層圧縮工程で、圧縮ローラー6で層Lを圧縮する。図1で表されるように、本実施形態の三次元造形物の製造装置1は、圧縮ローラー6として、第1金属粉末供給部2aの近傍に設けられた圧縮ローラー6aと、第1金属粉末供給部2bの近傍に設けられた圧縮ローラー6bと、を有している。すなわち、例えば、ステップS120においてX1方向に移動しながら第1金属粉末供給部2aから第1金属粉末を造形テーブル9の造形面9aに供給する場合、圧縮ローラー6aによる層Lの圧縮がステップS130の層形成工程に対応し、圧縮ローラー6bによる層Lの圧縮が本ステップS180の層形成工程に対応する。このように、例えば1回の供給ユニット8のX1方向への移動で、ステップS120の第1金属粉末供給工程、ステップS130の層形成工程、ステップS140の第1液体供給工程、ステップS150の第2液体供給工程、ステップS160の第3液体供給工程、ステップS170の乾燥工程及びステップS180の層圧縮工程が実行される。
【0043】
そして、ステップS190の判断工程で、制御部12においてステップS110で入力した造形データに基づく層形成が全て終了したかどうかを判断する。層形成が全て終了していないと判断した場合、ステップS120に戻り、次の層Lを形成する。一方、層形成が全て終了したと判断した場合、ステップS200に進む。
【0044】
ステップS200の焼結工程では、ステップS120からステップS190を繰り返すことで製造された層Lの積層体Sを加熱して構成領域Rにおける金属を焼結する。本ステップS200の焼結工程は、三次元造形物の製造装置1で行ってもよいし、三次元造形物の製造装置1とは別の装置を用いて行ってもよい。そして、本ステップS200の終了に伴い、本実施例の三次元造形物の製造方法を終了する。
【0045】
ここで、一旦まとめると、上記のように、本実施例の三次元造形物の製造方法は、層Lを積層して三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法である。そして、ステップS120に対応し、第1平均粒子径の第1金属粉末を造形テーブル9に供給する第1金属粉末供給工程を有する。また、ステップS130に対応し、造形テーブル9に供給された第1金属粉末を圧縮して層Lを形成する層形成工程を有する。また、ステップS140に対応し、第1平均粒子径に対する平均粒子径が1/10以上1/2以下である第2平均粒子径の第2金属粉末と、バインダーと、を含む第1液体I1を、層Lにおける三次元造形物の構成領域Rの一部に供給する第1液体供給工程を有する。また、ステップS150に対応し、第1液体I1よりも低い濃度で第2金属粉末を含むか、第2平均粒子径よりも大きい平均粒子径の第3金属粉末を含むか、の少なくともいずれかとバインダーを含む第2液体I2を、構成領域Rにおける表層領域Reの少なくとも一部に供給する第2液体供給工程を有する。また、ステップS200に対応し、層Lの積層体Sを加熱して構成領域Rにおける金属を焼結する焼結工程を有する。
【0046】
上記のように、本実施例の三次元造形物の製造方法は、第1平均粒子径よりも小さい第2平均粒子径の第2金属粉末と、バインダーと、を含む第1液体I1を供給する。すなわち、粒子の隙間に進入しやすい液体である第1液体I1により、大粒子である第1金属粉末の隙間に小粒子である第2金属粉末を効果的に配置させることができる。このため、三次元造形物を高密度にすることができる。また、本実施例の三次元造形物の製造方法は、表層領域Reの少なくとも一部に第1液体I1よりも低い濃度で第2金属粉末を含むか、第2平均粒子径よりも大きい平均粒子径の第3金属粉末を含むか、の少なくともいずれかの第2液体I2を配置することで、表層領域Reの少なくとも一部にバインダーなどが抜ける隙間を形成でき、表層領域Reからバインダーなどを効果的に除去(脱脂)できる。したがって、本実施例の三次元造形物の製造方法は、大型で高密度の金属製の三次元造形物を製造することができる。
【0047】
ここで、本実施例の三次元造形物の製造方法においては、ステップS150の第2液体供給工程において、第2液体I2を表層領域Reの全体に供給することができる。第2液体I2を表層領域Reの全体に供給することで、三次元造形物を高密度としつつ、三次元造形物の表層全体からバインダーなどが抜けることが可能な隙間を形成でき、表層領域Reからバインダーなどを効果的に除去(脱脂)できる。
【0048】
また、本実施例の三次元造形物の製造方法においては、ステップS140の第1液体供給工程において第1液体I1を内部領域Riに供給するとともに、ステップS150の第2液体供給工程において第2液体I2を内部領域Riに供給することで、内部領域Riに第1液体I1と第2液体I2とを供給することができる。内部領域Riに第1液体I1と第2液体I2とを供給することで、例えば大型の三次元造形物を製造する場合など、内部領域Riに第1液体I1のみを供給した場合には表層領域Reまでバインダーなどが抜けられない虞があっても、内部領域Riにおいて表層領域Reまでバインダーなどを効果的に除去(脱脂)できる。したがって、大型で高密度の金属製の三次元造形物を好適に製造することができる。
【0049】
また、本実施例の三次元造形物の製造方法においては、内部領域Riに、第1液体I1と第2液体I2とを積層される層L毎に交互に供給することが可能である。具体的には、ステップS120からステップS190までを繰り返す際、例えば奇数回目においては内部領域Riに第1液体I1を供給し偶数回目においては内部領域Riに第2液体I2を供給するよう制御することができる。このように、内部領域Riに第1液体I1と第2液体I2とを層L毎に交互に供給することで、内部領域Riにおいて表層領域Reまでバインダーなどを効果的に除去(脱脂)できる。したがって、特に大型で高密度の金属製の三次元造形物を好適に製造することができる。
【0050】
また、本実施例の三次元造形物の製造方法においては、内部領域Riに、第2液体I2を供給せずに第1液体I1を供給することも可能である。内部領域Riに第2液体I2を供給せずに第1液体I1のみを供給することで、内部領域Riを特に高密度に構成できる。したがって、大型で特に高密度の金属製の三次元造形物を製造することができる。
【0051】
本発明は、上述の実施例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1…三次元造形物の製造装置、2…第1金属粉末供給部、2a…第1金属粉末供給部、
2b…第1金属粉末供給部、3…第1液体供給部、4…第2液体供給部、
5…第3液体供給部、6…圧縮ローラー、6a…圧縮ローラー、6b…圧縮ローラー、
7…ヒーター、8…供給ユニット、9…造形テーブル、9a…造形面、
10…テーブルユニット、10a…上面部、11…ガイドバー、12…制御部、
20…外部装置、C…領域、I1…第1液体、I2…第2液体、I3…第3液体、
L…層、L1…層、L2…層、L3…層、L4…層、R…構成領域、Re…表層領域、
Ri…内部領域、S…積層体、Sc…領域Cに囲まれた部分
図1
図2
図3