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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】車両下部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
B62D25/20 F
B62D25/20 H
B62D25/20 G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019030812
(22)【出願日】2019-02-22
(65)【公開番号】P2020132051
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】河合 桂介
(72)【発明者】
【氏名】望月 晋栄
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-103598(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0001507(US,A1)
【文献】特開2016-107892(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014220972(DE,A1)
【文献】特開2013-103635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルの車両幅方向側部に設けられ、車両前後方向に延びる左右一対のサイドシルと、該サイドシルの車両内側に隣接して配置され、車両前後方向に延びる左右一対のサイドメンバと、前記フロアパネルの下方に設けられ、車両幅方向に延びる下側クロスメンバとを有し、
前記サイドメンバは、車両前後の位置に設けられるフロントサイドメンバ及びリヤサイドメンバを有し、前記下側クロスメンバは、前記左右一対のフロントサイドメンバに接合されている車両下部構造において、
前記下側クロスメンバには、該下側クロスメンバの車両幅方向外側の端部に接合される端部材が設けられ、該端部材は、前記サイドシル、前記フロントサイドメンバ及び前記リヤサイドメンバに接合され、前記フロントサイドメンバの後端部と前記リヤサイドメンバの前端部とは、車両前方視で重なり合うように配置されていることを特徴とする車両下部構造。
【請求項2】
前記端部材は、車両前方側が前記フロントサイドメンバに接合され、前記端部材の車両後方側には、前記サイドシルに接合される後壁を有し、前記端部材と前記リヤサイドメンバとは、前記後壁と前記リヤサイドメンバとが重なり合った状態で、接合されていることを特徴とする請求項1に記載の車両下部構造。
【請求項3】
前記後壁は、前記下側クロスメンバの車両後部側に位置する後側段差壁で接合される後側接合部を有しており、前記後側段差壁は、前記フロアパネルの車両幅方向内側に位置する平坦なフロア中央面部まで延びていることを特徴とする請求項2に記載の車両下部構造。
【請求項4】
前記下側クロスメンバは、前記フロントサイドメンバよりも車両上方に配置され、前記下側クロスメンバと前記フロントサイドメンバとが接合される前記フロアパネルの境界部分には、前記フロントサイドメンバから車両内側へ向かって上り傾斜するフロア傾斜面部が設けられ、
前記端部材は、前記下側クロスメンバに向かって延出する延出部を有し、該延出部は、前記フロア傾斜面部の位置で前記下側クロスメンバと接合していることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の車両下部構造。
【請求項5】
前記フロア傾斜面部に位置する前記延出部は、車両外側に向かうほど車両下側に勾配する勾配部分を有し、該勾配部分は、前記フロントサイドメンバまたは前記リヤサイドメンバまで連続して形成されていることを特徴とする請求項4に記載の車両下部構造。
【請求項6】
前記フロアパネルの下方には電源部材が設けられ、該電源部材は、車両側方視で前記サイドシルと重なり合うように配置されているとともに、車両幅方向に延びるクロスメンバによって支持され、
前記リヤサイドメンバには、前記クロスメンバを接合するクロスメンバ接合部が設けられ、該クロスメンバ接合部は、車両下方視で前記サイドシルの車両前後方向の範囲に配置されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の車両下部構造。
【請求項7】
前記リヤサイドメンバは、車両下方に位置する下面部と、車両幅方向に位置する側面部を有し、前記クロスメンバ接合部には、クロスメンバ接合部ブラケットが設けられ、該クロスメンバ接合部ブラケットは、前記リヤサイドメンバの下面部及び側面部に接合されていることを特徴とする請求項6に記載の車両下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両下部構造の中には、車両幅方向に延びるリヤシートクロスメンバと、車両前後方向に延び、車両幅方向にずれて位置するフロントフロアサイドメンバ及びリヤフロアサイドメンバを備えているものがある。そして、この車両下部構造においては、リヤシートクロスメンバがリヤフロアサイドメンバの前部とフロントフロアサイドメンバの後部とにそれぞれ接続されており、リヤフロアサイドメンバと接続されるリヤシートクロスメンバの車両幅方向外側の側部領域にビード部を設けることによって、車両側方からの衝撃荷重の入力に対して座屈変形を促すようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-107892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、上述した従来の車両下部構造では、座屈変形を促すビード部を有するリヤシートクロスメンバの車両幅方向外側の側部領域にリヤフロアサイドメンバが接続されているので、車体剛性が低下することとなり、車体へ衝撃荷重が入力された場合に、フロアサイドメンバなどの車体骨格部材への荷重の伝達が不十分になるという問題を有していた。
【0005】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、下側クロスメンバの車両幅方向外側の端部に接合される端部材をサイドシル、フロントサイドメンバ及びリヤサイドメンバに接合し、フロントサイドメンバの後端部とリヤサイドメンバの前端部とを車両前方視で重なり合うように配置することにより、入力された荷重の車両前後方向への伝達と荷重の分散を促進することが可能な車両下部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、フロアパネルの車両幅方向側部に設けられ、車両前後方向に延びる左右一対のサイドシルと、該サイドシルの車両内側に隣接して配置され、車両前後方向に延びる左右一対のサイドメンバと、前記フロアパネルの下方に設けられ、車両幅方向に延びる下側クロスメンバとを有し、前記サイドメンバは、車両前後の位置に設けられるフロントサイドメンバ及びリヤサイドメンバを有し、前記下側クロスメンバは、前記左右一対のフロントサイドメンバに接合されている車両下部構造において、前記下側クロスメンバには、該下側クロスメンバの車両幅方向外側の端部に接合される端部材が設けられ、該端部材は、前記サイドシル、前記フロントサイドメンバ及び前記リヤサイドメンバに接合され、前記フロントサイドメンバの後端部と前記リヤサイドメンバの前端部とは、車両前方視で重なり合うように配置されている。
【発明の効果】
【0007】
上述の如く、本発明に係る車両下部構造は、フロアパネルの車両幅方向側部に設けられ、車両前後方向に延びる左右一対のサイドシルと、該サイドシルの車両内側に隣接して配置され、車両前後方向に延びる左右一対のサイドメンバと、前記フロアパネルの下方に設けられ、車両幅方向に延びる下側クロスメンバとを有し、前記サイドメンバは、車両前後の位置に設けられるフロントサイドメンバ及びリヤサイドメンバを有し、前記下側クロスメンバは、前記左右一対のフロントサイドメンバに接合されており、前記下側クロスメンバには、該下側クロスメンバの車両幅方向外側の端部に接合される端部材が設けられ、該端部材は、前記サイドシル、前記フロントサイドメンバ及び前記リヤサイドメンバに接合され、前記フロントサイドメンバの後端部と前記リヤサイドメンバの前端部とは、車両前方視で重なり合うように配置されている。
すなわち、本発明の車両下部構造においては、下側クロスメンバに接合された端部材がサイドシル、フロントサイドメンバ及びリヤサイドメンバのそれぞれと接合され、フロントサイドメンバの後端部とリヤサイドメンバの前端部とが、車両前方視で重なり合っているので、外部から荷重がサイドシルなどに入力された場合に、当該入力荷重の車両前後方向への伝達を促進することができる。
しかも、本発明の車両下部構造では、下側クロスメンバに接合された端部材などによって車両幅方向及び車両前後方向に対する剛性が向上したリヤサイドメンバに外部からの荷重が入力されることになるので、荷重の分散を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る車両下部構造において、フロアパネル、サイドシル、サイドメンバ、電源部材及びクロスメンバを車両斜め下方から見た斜視図である。
図2図1におけるZ部を拡大したものであり、電源部材を取り除いた状態で示す斜視図である。
図3図1におけるフロアパネルの下方に設けられる下側クロスメンバの端部材及びその周辺部を、電源部材及びクロスメンバを取除いた状態で車両斜め下方から見た拡大斜視図である。
図4図3における下側クロスメンバの端部材及びその周辺部を示す平面図である。
図5図3における下側クロスメンバの端部材及びその周辺部をリヤサイドメンバを省略して車両後側斜め下方から見た斜視図である。
図6図3における下側クロスメンバの端部材及びその周辺部を車両前側斜め下方から見た斜視図である。
図7図3における下側クロスメンバの端部材及びその周辺部を車両側方の外側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
なお、図において、矢印Fr方向は車両前方を示し、矢印L方向は車両下方を示し、矢印I方向は車両幅方向内側を示している。また、矢印X方向は車両幅方向を示し、矢印Y方向は車両前後方向を示している。
【0010】
図1図7は本発明の実施形態に係る車両下部構造を示すものである。本実施形態の車両下部構造は、図1及び図2に示すように、車両幅方向及び車両前後方向に展開し、車両前後方向に沿って車両前後に配置され、フロアパネルを構成するフロントフロアパネル1及びリヤフロアパネル2と、これらフロントフロアパネル1及びリヤフロアパネル2の車両幅方向側部に設けられ、車両前後方向に延びる左右一対のサイドシル3と、該サイドシル3の車両内側に隣接して配置され、車両前後方向に延びる左右一対のサイドメンバ4と、フロントフロアパネル1及びリヤフロアパネル2の下方に設けられ、車両幅方向に延びる下側クロスメンバ5とを有しており、フロントフロアパネル1は、車両上下方向でリヤフロアパネル2よりも低い位置に設けられている。
【0011】
本実施形態のフロントフロアパネル1は、図6に示すように、車両幅方向外側に位置し、サイドシル3と接合するフロア側面部11と、該フロア側面部11より車両幅方向内側に位置し、車両内側へ向かって上り傾斜するフロア傾斜面部12と、該フロア傾斜面部12の車両幅方向内側に位置し、車両幅方向に平坦なフロア中央面部13とを有している。そのため、フロントフロアパネル1は、車両上方へ底上げされた構造となっており、フロア中央面部13は、フロア側面部11及びフロア傾斜面部12よりも高い位置に設けられている。
そして、本実施形態の車両下部構造において、サイドシル3は、図1図7に示すように、車両前後の位置に設けられ、端部が互いに接合されるフロントサイドシル31とリヤサイドシル32を有している。また、サイドメンバ4は、車両前後の位置に設けられるフロントサイドメンバ41及びリヤサイドメンバ42を有しており、下側クロスメンバ5は、左右一対のフロントサイドメンバ41に接合されている。しかも、リヤサイドメンバ42は、車両後方へ向かうほど車両内側に位置するように延びており、車両前後方向の中間部分に位置する後述の下面部42bには、サスペンションアーム取付部40が接合されて設けられており、該サスペンションアーム取付部40は、リヤサイドシル32の側面にも接合されている。
【0012】
また、本実施形態の下側クロスメンバ5には、図2図7に示すように、下側クロスメンバ5の車両幅方向外側に配置される端部材6が設けられており、該端部材6の内側端部は、下側クロスメンバ5の車両幅方向外側の端部に接合されている。そして、本実施形態の端部材6は、サイドシル3のフロントサイドシル31及びリヤサイドシル32と、サイドメンバ4のフロントサイドメンバ41及びリヤサイドメンバ42に接合されており、フロントサイドメンバ41の後端部41aとリヤサイドメンバ42の前端部42aとは、車両前方視で重なり合うように配置されている。すなわち、リヤサイドメンバ42は、車両幅方向及び車両前後方向に対する剛性が向上した構造に構成されている。しかも、端部材6は、サイドシル3及びサイドメンバ4の形状と対応した形状に屈曲形成されており、これによって、接合するサイドシル3及びサイドメンバ4に重ね合わせることが可能な構造となっている。
また、本実施形態の車両下部構造は、サイドシル3及びサイドメンバ4に加わった荷重が車両前後方向へ円滑に伝達され、かつ、車両幅方向及び車両前後方向に対する剛性が向上したリヤサイドメンバ42に荷重が入力されることになるため、荷重の分散が促進されるようになっている。さらに、リヤサイドメンバ42の剛性が向上することに伴って、サスペンションアーム取付部40からリヤサイドメンバ42に入力される振動が低減され、フロア振動及びロードノイズが改善されることになる。なお、端部材6が下側クロスメンバ5と別部材で形成されていると、板厚を変更することによりサイドシル3及びサイドメンバ4との接合部における剛性のコントロールが容易となる上、成形加工が簡単となる。
【0013】
本実施形態の端部材6は、図3図7に示すように、車両前方側がフロントサイドメンバ41に接合されており、端部材6の車両後方側には、サイドシル3のリヤサイドシル32に接合される後壁61を有している。そして、端部材6とリヤサイドメンバ42とは、後壁61とリヤサイドメンバ42とが重なり合った状態で、接合されている。この後壁61は、車両前後方向及び車両上下方向に延びており、端部材6の後壁61がリヤサイドシル32と接合されることによって、端部材6の車両幅方向及び車両上下方向に対する剛性が向上するように構成されている。また、高い剛性を有する端部材6がサイドシル3のフロントサイドシル31及びリヤサイドシル32に接合されることによって、より一層剛性が向上した構造が得られるようになっている。さらに、端部材6の後壁61が位置する箇所には、図7に示すように、車両内側及び車両外側に車両後方へ延びる側壁部7aを有するバルク部材7が車両上下方向に沿って配置されており、このバルク部材7の側壁部7aは、リヤサイドメンバ42に接合されているとともに、後壁61及びリヤサイドシル32に接合されている。これによって、端部材6の後壁61が位置する箇所は、更に剛性が高められた構造となっている。
なお、リヤサイドメンバ42は、フロントサイドメンバ41に比べて端部材6と接合される断面積が大きいが、後壁61を介してリヤサイドメンバ42に接合されているため、フロントサイドメンバ41との接合断面積に影響されない構造となっている。
【0014】
また、本実施形態の端部材6の後壁61は、図3及び図5に示すように、下側クロスメンバ5の車両後方側に位置する後側段差壁51で接合される後側接合部61a有しており、後壁61の下側角部には、後側稜線R1が車両幅方向に沿って滑らかに延びている。しかも、後側段差壁51は、フロントフロアパネル1の車両幅方向内側に位置する平坦なフロア中央面部13まで延びている。これにより、端部材6に入力される荷重は、下側クロスメンバ5の後側段差壁51に伝達されることになる。さらに、後壁61は、車両幅方向及び車両上下方向に対して高い剛性を有し、かつ後側段差壁51にも接合されるため、車両幅方向及び車両上下方向に対してより一層高い剛性を有することになる。そして、下側クロスメンバ5の剛性が向上することに伴って、リヤサイドメンバ42の剛性も向上することになる。
一方、端部材6の車両前方側には、図3図6に示すように、車両上下方向に延びる前壁62が形成されており、該前壁62は、下側クロスメンバ5の車両前方側に位置する前側段差壁52で接合される前側接合部62a有している。そして、前壁62の下側角部には、前側稜線R2が車両幅方向に沿って滑らかに延びているとともに、フロントサイドメンバ41に沿うように延びている。
【0015】
また、本実施形態の車両下部構造において、下側クロスメンバ5は、図3図6に示すように、フロントサイドメンバ41よりも車両上方に配置されており、下側クロスメンバとフロントサイドメンバ41とが接合されるフロントフロアパネル1の境界部分には、フロントサイドメンバ41から車両内側へ向かって上り傾斜するフロア傾斜面部12が設けられている。一方、端部材6は、下側クロスメンバ5に向かって延出する延出部63を有しており、該延出部63は、フロア傾斜面部12の位置で下側クロスメンバ5と接合している。すなわち、延出部63がフロア傾斜面部12の範囲内に位置するため、フロントサイドメンバ41が下側クロスメンバ5及び端部材6によって車両下方から支持されることになる。
【0016】
さらに、本実施形態の車両下部構造において、フロア傾斜面部12に位置する延出部63は、図3図6に示すように、車両外側に向かうほど車両下側に勾配する勾配部分63aを有しており、該勾配部分63aは、フロントサイドメンバ41(またはリヤサイドメンバ42)まで連続して形成されている。これにより、下側クロスメンバ5がフロントサイドメンバ41(またはリヤサイドメンバ42)を支持する剛性が車両幅方向だけでなく、車両上下方向に対しても高められるようになっている。
【0017】
本実施形態の車両下部構造において、フロントフロアパネル1及びリヤフロアパネル2の下方には、図1に示すように、電源部材(例えば、バッテリ等)10が設けられている。すなわち、フロントフロアパネル1は、フロア中央面部13の箇所が車両上方へ底上げされ、フロア中央面部13の高さ位置がフロア側面部11及びフロア傾斜面部12よりも車両上方に位置しており、電源部材10は、フロア中央面部13の下方に形成された空間内に収納されて搭載可能に構成されている。しかも、フロア中央面部13の下方の空間内に収納された状態の電源部材10は、車両側方視でサイドシル3のフロントサイドシル31及びリヤサイドシル32と重なり合うように配置されているとともに、車両幅方向に延びる複数本のクロスメンバ8によって支持されている。そのため、フロントフロアパネル1が底上げされた構造であっても、側突時の衝撃荷重から電源部材10を保護できる構造となっている。なお、クロスメンバ8は、電源部材10の車両幅方向の寸法よりも長く形成され、かつ、電源部材10の車両前後方向の長さに対応可能な本数が使用され、車両前後方向に所定の間隔を空けて配置されている。
一方、本実施形態のリヤサイドメンバ42には、クロスメンバ8の車両幅方向の端部8aを締結部材などで接合するクロスメンバ接合部42Aが設けられており、該クロスメンバ接合部42Aは、車両下方視でサイドシル3の車両前後方向の範囲に配置されている。すなわち、本実施形態の車両下部構造では、車両前方から車両後方へ向かって、端部材6、クロスメンバ接合部42A、サスペンションアーム取付部40の順に配置されていることになる。
これによって、クロスメンバ8の端部8aは、クロスメンバ接合部42Aを介してリヤサイドメンバ42に接合されるため、リヤサイドメンバ42の車両幅方向に対する剛性を向上させる構造が得られることになる。しかも、クロスメンバ接合部42Aは、サイドシル3の車両前後方向の範囲に配置されており、車両幅方向の両側から剛性部材をリヤサイドメンバ42に接合するような構造となっている。
【0018】
また、本実施形態の車両下部構造において、リヤサイドメンバ42は、図3及び図4に示すように、車両下方に位置する下面部42bと、車両幅方向に位置する側面部42cを有している。そして、クロスメンバ接合部42Aには、クロスメンバ接合部ブラケット43が設けられており、該クロスメンバ接合部ブラケット43は、リヤサイドメンバ42の下面部42b及び側面部42cに接合されている。そのため、クロスメンバ接合部ブラケット43は、クロスメンバ8の端部8aを接合する上面が四角形状を有し、かつ周囲の側壁が車両上下方向に延びており、車両内側の上部43aは、リヤサイドメンバ42の側面部42cまで延びて重ね合わされ、車両前後側の上部43b,43c及び車両外側の上部43dはリヤサイドメンバ42の下面部42bに沿って折り曲げられて重ね合されるように形成され、重ね合わせ部が接合されるように構成されている。
そのため、本実施形態の車両下部構造においては、クロスメンバ接合部ブラケット43がリヤサイドメンバ42の下面部42bに接合されることにより、車両幅方向及び車両前後方向に対する剛性が向上し、また、クロスメンバ接合部ブラケット43がリヤサイドメンバ42の側面部42cに接合されることにより、車両前後方向及び車両上下方向に対する剛性が向上することになり、リヤサイドメンバ42への荷重伝達が促進されるようになっている。
【0019】
さらに、本実施形態の車両下部構造において、クロスメンバ接合部42Aの車両幅方向外側には、図2図4に示すように、ジャッキアップブラケット9が設けられており、該ジャッキアップブラケット9は、リヤサイドシル32及びリヤサイドメンバ42に接合されている。これによって、各種部材の接合部がクロスメンバ接合部42Aの設置範囲に集中することになり、クロスメンバ接合部42Aの周辺部の車両幅方向に対する剛性が向上し、クロスメンバ接合部42Aの周辺部の荷重伝達が促進される構造が得られることになる。
【0020】
このように、本発明の実施形態に係る車両下部構造では、フロアパネル(フロントフロアパネル1及びリヤフロアパネル2)の車両幅方向側部に設けられ、車両前後方向に延びる左右一対のサイドシル3と、サイドシル3の車両内側に隣接して配置され、車両前後方向に延びる左右一対のサイドメンバ4と、フロアパネル1,2の下方に設けられ、車両幅方向に延びる下側クロスメンバ5とを有している。サイドメンバ4は、車両前後の位置に設けられるフロントサイドメンバ41及びリヤサイドメンバ42を有しており、下側クロスメンバ5は、左右一対のフロントサイドメンバ41に接合されている。また、下側クロスメンバ5には、下側クロスメンバ5の車両幅方向外側の端部に接合される端部材6が設けられており、端部材6は、サイドシル3、フロントサイドメンバ41及びリヤサイドメンバ42に接合されている。そして、フロントサイドメンバ41の後端部41aとリヤサイドメンバ42の前端部42aとは、車両前方視で重なり合うように配置されている。
したがって、本実施形態の車両下部構造においては、下側クロスメンバ5に接合された端部材6がサイドシル3、フロントサイドメンバ41及びリヤサイドメンバ42のそれぞれと接合され、フロントサイドメンバ41の後端部41aとリヤサイドメンバ42の前端部42aとが、車両前方視で重なり合っているので、車両側方などから荷重がサイドシル3等に入力された場合に、当該入力荷重を車両前後方向へ迅速かつ確実に伝達でき、車両前後方向の荷重伝達を促進することができる。
また、本実施形態の車両下部構造では、下側クロスメンバ5に接合された端部材6によってリヤサイドメンバ41の車両幅方向及び車両前後方向に対する剛性が向上しており、当該高剛性のリヤサイドメンバ41に外部からの荷重が入力されることになるので、荷重の分散効果を高めることができる。
【0021】
また、本実施形態の車両下部構造において、端部材6は、車両前方側がフロントサイドメンバ41に接合され、端部材6の車両後方側には、サイドシル3に接合される後壁61を有しており、端部材6とリヤサイドメンバ42とは、後壁61とリヤサイドメンバ42とが重なり合った状態で、接合されている。
したがって、本実施形態の車両下部構造では、端部材6の車両幅方向及び車両上下方向に対する剛性が向上することになるので、高剛性の端部材6をサイドシル3のフロントサイドシル31及びリヤサイドシル32に接合させることによって、より一層の剛性向上を図ることができ、入力荷重の周辺部品への伝達及び分散を効果的に行うことができる。
【0022】
そして、本実施形態の車両下部構造において、端部材6の後壁61は、下側クロスメンバ5の車両後部側に位置する後側段差壁51で接合される後側接合部61aを有しており、後側段差壁51は、フロアパネルであるフロントフロアパネル1の車両幅方向内側に位置する平坦なフロア中央面部13まで延びている。
したがって、本実施形態の車両下部構造によれば、端部材6に入力される荷重を下側クロスメンバ5の後側段差壁51に円滑に伝達させることができる。また、後壁61は、車両幅方向及び車両上下方向に対して高い剛性を有し、かつ後側段差壁51にも接合されるため、車両幅方向及び車両上下方向に対して更なる剛性向上を図ることができる。しかも、下側クロスメンバ5の剛性が向上することによって、リヤサイドメンバ42の剛性もより一層高めることができる。
【0023】
さらに、本実施形態の車両下部構造において、下側クロスメンバ5は、フロントサイドメンバ41よりも車両上方に配置されており、下側クロスメンバ5とフロントサイドメンバ41とが接合されるフロントフロアパネル1(フロアパネル)の境界部分には、フロントサイドメンバ41から車両内側へ向かって上り傾斜するフロア傾斜面部12が設けられている。端部材6は、下側クロスメンバ5に向かって延出する延出部63を有しており、延出部63は、フロア傾斜面部12の位置で下側クロスメンバ5と接合している。
したがって、本実施形態の車両下部構造では、延出部63がフロア傾斜面部12の範囲内に位置することになるので、下側クロスメンバ5及び端部材6によってフロントサイドメンバ41を車両下方から支持することが可能となり、フロントサイドメンバ41の剛性を向上させ、入力荷重の車両前後方向への伝達効果を高めることができる。
【0024】
そして、本実施形態の車両下部構造において、フロア傾斜面部12に位置する延出部63は、車両外側に向かうほど車両下側に勾配する勾配部分63aを有しており、勾配部分63aは、フロントサイドメンバ41(またはリヤサイドメンバ42)まで連続して形成されている。したがって、本実施形態の車両下部構造によれば、下側クロスメンバ5がフロントサイドメンバ41(またはリヤサイドメンバ42)を支持する剛性を車両幅方向のみならず、車両上下方向に対しても向上させることが可能となり、入力荷重の分散効果を更に高めることができる。
【0025】
また、本実施形態の車両下部構造において、フロントフロアパネル1及びリヤフロアパネル2(フロアパネル)の下方には電源部材10が設けられており、電源部材10は、車両側方視でサイドシル3と重なり合うように配置されているとともに、車両幅方向に延びるクロスメンバ8によって支持されている。そして、リヤサイドメンバ42には、クロスメンバ8を接合するクロスメンバ接合部42Aが設けられており、クロスメンバ接合部42Aは、車両下方視でサイドシル3の車両前後方向の範囲に配置されている。
したがって、本実施形態の車両下部構造によれば、クロスメンバ8の端部8aが、クロスメンバ接合部42Aを介してリヤサイドメンバ42に接合されることになるので、リヤサイドメンバ42の車両幅方向に対する剛性を向上させることができる。また、クロスメンバ接合部42Aは、サイドシル3の車両前後方向の範囲に配置され、車両幅方向の両側から剛性部材がリヤサイドメンバ42に接合されることになるので、リヤサイドメンバ42の車両前後方向に対する剛性も向上させることができ、リヤサイドメンバ42に入力された荷重を車両前後方向に効果的に伝達することができる。
【0026】
さらに、本実施形態の車両下部構造において、リヤサイドメンバ42は、車両下方に位置する下面部42bと、車両幅方向に位置する側面部42cを有している。そして、クロスメンバ接合部42Aには、クロスメンバ接合部ブラケット43が設けられており、クロスメンバ接合部ブラケット43は、リヤサイドメンバ42の下面部42b及び側面部42cに接合されている。
したがって、本実施形態の車両下部構造では、クロスメンバ接合部ブラケット43がリヤサイドメンバ42の下面部42bに接合されることにより、リヤサイドメンバ42の車両幅方向及び車両前後方向に対する剛性を向上させ、クロスメンバ接合部ブラケット43がリヤサイドメンバ42の側面部42cに接合されることにより、リヤサイドメンバ42の車両前後方向及び車両上下方向に対する剛性を向上させることが可能となるので、リヤサイドメンバ42への荷重伝達を促進することができる。
【0027】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
例えば、電源部材10の大きさ及び形状は、図1に示すものに限られず、クロスメンバ8によって支持することが可能であれば、適用車種などに応じて他の大きさ及び形状の電源部材を搭載することもできる。
【符号の説明】
【0028】
1 フロントフロアパネル
2 リヤフロアパネル
3 サイドシル
4 サイドメンバ
5 下側クロスメンバ
6 端部材
8 クロスメンバ
8a 車両幅方向の端部
10 電源部材
11 フロア側面部
12 フロア傾斜面部
13 フロア中央面部
31 フロントサイドシル
32 リヤサイドシル
41 フロントサイドメンバ
41a 後端部
42 リヤサイドメンバ
42A クロスメンバ接合部
42a 前端部
42b 下面部
42c 側面部
43 クロスメンバ接合部ブラケット
51 後側段差壁
61 端部材の後壁
61a 後側接合部
62 端部材の前壁
62a 前側接合部
63 延出部
63a 勾配部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7