(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】移動体
(51)【国際特許分類】
B62K 5/007 20130101AFI20221201BHJP
A61G 5/08 20060101ALI20221201BHJP
A61G 5/10 20060101ALI20221201BHJP
B62J 1/12 20060101ALI20221201BHJP
B62J 1/28 20060101ALI20221201BHJP
B62B 3/00 20060101ALI20221201BHJP
B62B 3/02 20060101ALI20221201BHJP
B62B 5/00 20060101ALI20221201BHJP
B62K 13/00 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B62K5/007
A61G5/08 703
A61G5/10 703
B62J1/12 Z
B62J1/28 Z
B62B3/00 B
B62B3/02 G
B62B5/00 J
B62K13/00
(21)【出願番号】P 2019072870
(22)【出願日】2019-04-05
【審査請求日】2022-02-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 〔公開場所〕 老人ホーム「舘山寺の里」1階ホール 〔公開年月日〕 平成30年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ラージャー ゴピナート
(72)【発明者】
【氏名】和田 昌祥
(72)【発明者】
【氏名】松浦 漠
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 俊也
【審査官】塩澤 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-140205(JP,A)
【文献】登録実用新案第3135395(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0159346(US,A1)
【文献】特開2016-202483(JP,A)
【文献】特開平3-128762(JP,A)
【文献】特開2016-168153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 5/007
A61G 5/08
A61G 5/10
B62J 1/12
B62J 1/28
B62B 3/00
B62B 3/02
B62B 5/00
B62K 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪を有する前側ベース、及び該前側ベースに対して後方に配置され、かつ後輪を有する後側ベースを含む移動ベースと、
着座面を有する着座部、及び該着座部を支持する脚部を含み、かつ前記移動ベース上に配置されるシートと、
前記後側ベース上に配置されるフレームと
を備える移動体であって、
前記脚部が、前記着座部に取り付けられる着座取付区域と、前記脚部を前記前側ベースに対して旋回可能とするように前記前側ベースに取り付けられるベース取付区域と、前記脚部を前記フレームに対して旋回可能とするように前記フレームに取り付けられるフレーム取付区域とを有し、
前記移動ベースが前記前輪及び前記後輪間のホイールベースを拡大した拡大状態と、前記ホイールベースを前記拡大状態よりも縮小した縮小状態との間で変化可能となるように、前記前側及び後側ベースが互いに対して相対的に移動可能に構成され、
前記脚部の旋回が、前記前側及び後側ベースの相対的な移動と連動しており、
前記フレームが、前記移動ベースの拡大状態で前記脚部の着座取付区域及びフレーム取付区域を移動体の幅方向の外方から覆い、かつ前記移動ベースの縮小状態で前記脚部のベース取付区域及びフレーム取付区域を移動体の幅方向の外方から覆うように形成されている、移動体。
【請求項2】
前記脚部の着座取付区域は、前記着座部の後方区域に位置するように前記着座部に取り付けられ、
前記脚部のベース取付区域は、前記移動ベースの縮小状態で前記後側ベースの後端寄り、かつ前記後輪に対して前方に位置するように構成されている、請求項1に記載の移動体。
【請求項3】
前記フレームが、前記移動ベースの拡大状態で前記脚部の着座取付区域及びフレーム取付区域を移動体の幅方向の外方から覆い、かつ前記移動ベースの縮小状態で前記脚部のベース取付区域及びフレーム取付区域を移動体の幅方向の外方から覆うようにくの字形状に形成される部分を有する支柱を含んでいる、請求項1又は2に記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールベースを拡大及び縮小可能とするように構成される移動ベースと、この移動ベース上に配置されるシートとを有する移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車椅子、カート等の移動体は、高齢者、要介護者等のユーザの移動手段として用いられている。典型的に、移動体は、前輪及び後輪を有する移動ベースと、この移動ベース上に設置されるシートとを備えていて、ユーザは移動体のシートに着座した状態で移動することができる。そして、移動体については、モータ等の駆動手段によって自走可能な電動車椅子、電動カート等の電動車両が普及してきている。電動車両は、「シニアカー」と呼ばれることもある。
【0003】
このような移動体は折り畳み可能に構成されることがある。具体的には、移動体は、ユーザを乗せることを可能とすると共に走行時の安定性を得ることを可能とするように移動ベースを前後方向に拡大させた展開状態と、移動体の後方からの手押しによる移動に適するように移動ベースを前後方向に縮小させた折り畳み状態とに変化可能に構成されることがある。
【0004】
このような移動体の一例としては、前輪及び後輪を有し、かつホイールベースを伸縮可能とするように構成された車体と、着座部を有し、かつ車体上に配置されるシートと、このシートの後方に位置する背もたれと、荷物を収容可能とするバスケットと、移動体を操作するように構成され、かつ一定の位置に留まる1つのハンドルとを備え、展開状態では、着座部は、ユーザがシートの着座部に着座した状態で1つのハンドルを操作可能とするように配置され、背もたれが着座部の後方から起立するように配置され、かつバスケットが車体の下方寄りに配置され、さらに、折り畳み状態では、着座部及びバスケットが展開状態の位置に対して上方に配置され、かつ背もたれが着座部に向かって倒れるようになっている、移動体が挙げられる。かかる移動体においては、移動体の展開状態及び折り畳み状態のそれぞれで同じ1つのハンドルが操作されるようになっている。(例えば、特許文献1を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した移動体の一例においては、折り畳み状態のシートの着座部及びバスケットが、展開状態のシートの着座部及びバスケットに対して車両上方に配置される。しかしながら、着座部は、ユーザが安定的に着座できるように移動体内の広い範囲を占めるので、折り畳み状態の移動体を使用する場合、着座部が邪魔になることが多い。そのため、上記移動体は、折り畳み状態で効率的に使用できずに、移動体は利便性の低いものとなっている。また、上述した移動体の一例においては、展開状態及び折り畳み状態にて同じ1つのハンドルを操作するので、特に、折り畳み状態にて、移動体の操作がし難くなっている。そのため、移動体は利便性の低いものとなっている。
【0007】
上述した移動体の一例においては、移動体を展開及び折り畳み状態間で変化させるための変形機構が移動体の外部に露出する。このような変形機構は無機質であり、かつユーザに煩雑な印象を与える。そのため、このような移動体の外観は優れないものとなっている。
【0008】
よって、移動体においては、折り畳み状態にて効率的に使用可能とすることと、利便性を高めることと、外観を向上させることとが望まれる。ひいては、移動体においては、利便性を高めるべく操作性を高めることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述のような課題を解決するために、一態様に係る移動体は、前輪を有する前側ベース、及び該前側ベースに対して後方に配置され、かつ後輪を有する後側ベースを含む移動ベースと、着座面を有する着座部、及び該着座部を支持する脚部を含み、かつ前記移動ベース上に配置されるシートと、前記後側ベース上に配置されるフレームとを備える移動体であって、前記脚部が、前記着座部に取り付けられる着座取付区域と、前記脚部を前記前側ベースに対して旋回可能とするように前記前側ベースに取り付けられるベース取付区域と、前記脚部を前記フレームに対して旋回可能とするように前記フレームに取り付けられるフレーム取付区域とを有し、前記移動ベースが前記前輪及び前記後輪間のホイールベースを拡大した拡大状態と、前記ホイールベースを前記拡大状態よりも縮小した縮小状態との間で変化可能となるように、前記前側及び後側ベースが互いに対して相対的に移動可能に構成され、前記脚部の旋回が、前記前側及び後側ベースの相対的な移動と連動しており、前記フレームが、前記移動ベースの拡大状態で前記脚部の着座取付区域及びフレーム取付区域を移動体の幅方向の外方から覆い、かつ前記移動ベースの縮小状態で前記脚部のベース取付区域及びフレーム取付区域を移動体の幅方向の外方から覆うように形成されている。
【発明の効果】
【0010】
一態様に係る移動体においては、折り畳み状態にて効率的に使用することができ、利便性を高めることができ、外観を向上させることができる。ひいては、一態様に係る移動体においては、利便性を高めるべく操作性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電動車両を、移動ベースを拡大状態にし、シートを着座位置にし、アームレストを使用位置にし、かつ背板を起立位置にした状態で概略的に示す前方斜視図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る電動車両を、移動ベースを拡大状態にし、シートを着座位置にし、アームレストを使用位置にし、かつ背板を起立位置にした状態で概略的に示す正面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る電動車両を、移動ベースを拡大状態にし、シートを着座位置にし、アームレストを持ち上げ位置にし、かつ背板を起立位置にした状態で概略的に示す正面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る電動車両を、移動ベースを縮小状態にし、シートを退避位置にし、アームレストを使用位置にし、かつ背板を倒伏位置にした状態で概略的に示す前方斜視図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る電動車両を、移動ベースを縮小状態にし、シートを退避位置にし、アームレストを使用位置にし、背板を倒伏位置にし、かつ背板の荷台に荷物を載置した状態で概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一実施形態において、移動体として構成された電動車両について以下に説明する。ここで、移動体は1人乗りであるとよく、さらに、移動体は、それに設置されるシートを移動体の外部に開放するように構成されるとよい。例えば、移動体は、車椅子、カート等とすることができ、特に、移動体は、1人乗り車椅子、1人乗りカート等とすることができる。しかしながら、移動体は、これらの構成に限定されない。
【0013】
また、本実施形態に係る電動車両は、電動駆動により走行可能なものである。本実施形態において、電動車両は電動カート、特に、1人乗り電動カートとなっている。しかしながら、電動車両は、これに限定されず、電動カート以外であってもよい。例えば、電動車両は、電動車椅子、特に、1人乗り電動車椅子とすることもできる。以下においては、電動車両を必要に応じて単に「車両」と呼ぶ。
【0014】
なお、本実施形態の説明に用いられる図面について、
図1、
図4及び
図5においては、車両前方及び車両後方を、それぞれ矢印F及び矢印Rによって示す。すなわち、車両前後方向は、矢印F及び矢印Rによって示される。
図1~
図4においては、車両幅方向を矢印Wによって示す。
図1~
図5においては、車両上方及び車両下方を、それぞれ矢印U及び矢印Lによって示す。すなわち、車両上下方向は、矢印U及び矢印Lによって示される。
【0015】
「電動車両の概略について」
本実施形態に係る電動車両の概略について説明する。
図1~
図5に示すように、車両は、電動駆動により走行可能に構成される移動ベース1を有する。移動ベース1は、2つの前輪11と、これらの前輪11に対して車両後方に間隔を空けて位置する2つの後輪12とを有する。前輪11及び後輪12は車両の走行輪となっている。しかしながら、移動ベースは、人力により走行可能に構成されてもよい。また、移動ベースは、少なくとも1つの前輪と2つ以上の後輪とを有するか、又は2つ以上の前輪と少なくとも1つの後輪とを有していればよい。
【0016】
かかる移動ベース1は、前輪11を有する前側ベース13と、後輪12を有する後側ベース14とを含む。後側ベース14は、前側ベース13に対して車両後方に配置される。
【0017】
車両は、移動ベース1上に配置される1つのシート2を有する。シート2は、ユーザが着座可能であるように構成される着座面21を有する着座部22を含む。特に、かかるシート2は1人乗り用となっているとよい。しかしながら、車両のシートは、これに限定されない。
【0018】
シート2はまた、着座部22を支持することができる2つの脚部23をさらに含む。2つの脚部23は、互いにシート幅方向に間隔を空けるように配置される。なお、シート幅方向は車両幅方向と略一致する。しかしながら、シートは、少なくとも1つの脚部を有するように構成することができる。
【0019】
車両は、着座面21に対して車両の幅方向の外方寄りに位置するアームレスト3を有するとよい。特に、車両は、2つのアームレスト3を有するとよい。2つのアームレスト3は、着座面21に対して車両の幅方向の外方寄りにそれぞれ位置するとよい。しかしながら、車両は、少なくとも1つのアームレストを有するように構成することができる。
【0020】
車両は、シート2の着座面21に対応する背もたれとして用いることができるように構成される背板4を有するとよい。背板4もまた移動ベース1上に配置されるとよい。車両は、後側ベース14上に配置されるフレーム5を有する。
【0021】
シート2の脚部23は、着座部22に取り付けられる着座取付区域23aを有する。脚部23は、この脚部23を前側ベース13に対して旋回可能とするように前側ベース13に取り付けられるベース取付区域23bを有する。さらに、脚部23は、この脚部23をフレーム5に対して旋回可能とするようにフレーム5に取り付けられるフレーム取付区域23cとを有する。
【0022】
移動ベース1が、
図1~
図3に示すように、前輪11及び後輪12間のホイールベースHを拡大した拡大状態と、
図4及び
図5に示すように、ホイールベースHを拡大状態よりも縮小した縮小状態との間で変化可能となるように、前側及び後側ベース13,14が互いに対して相対的に移動可能に構成される。上記脚部23の旋回は、前側及び後側ベース13,14の相対的な移動と連動している。そして、フレーム5は、
図1~
図3に示すように、移動ベース1の拡大状態で脚部23の着座取付区域23a及びフレーム取付区域23cを車両幅方向の外方から覆い、かつ
図4及び
図5に示すように、移動ベース1の縮小状態で脚部23のベース取付区域23b及びフレーム取付区域23cを車両幅方向の外方から覆うように形成されている。
【0023】
さらに、かかる車両は次のように構成されるとよい。
図1~
図3に示すように、シート2の脚部23の着座取付区域23aは、移動ベース1の拡大状態で着座部22のシート前後方向の後方区域に位置するように着座部22に取り付けられる。
図4及び
図5に示すように、脚部23のベース取付区域23bは、移動ベース1の縮小状態で後側ベース14の車両前後方向の後端寄り、かつ後輪12に対して車両前方に位置するように構成されている。
【0024】
図1、
図4及び
図5を参照すると、フレーム5は、移動ベース1の拡大状態で脚部23の着座取付区域23a及びフレーム取付区域23cを車両幅方向の外方から覆い、かつ移動ベース1の縮小状態で脚部23のベース取付区域23b及びフレーム取付区域23cを車両幅方向の外方から覆うように略くの字形状に形成される部分(以下、必要に応じて「くの字部分」という)51aを有する支柱51を含んでいる。なお、略くの字形状は、車両前方に向かって突出するように曲がる形状であるとよい。
【0025】
「移動ベースの詳細」
移動ベース1は詳細には次のように構成されるとよい。
図1及び
図4を参照すると、移動ベース1は、前側及び後側ベース13,14が前輪11及び後輪12間のホイールベースHを拡大及び縮小可能とすべく互いに対して相対的に移動可能となるように構成されている。しかしながら、移動ベースは、ホイールベースを一定に保つように構成することもできる。言い換えれば、移動ベースは、ホイールベースを拡大及び縮小させないように構成することもできる。
【0026】
さらに、移動ベース1は、前側及び後側ベース13,14の相対的な移動によって、
図1に示すようにホイールベースHを拡大した拡大状態と、
図4に示すようにホイールベースHを拡大状態よりも短くするように縮小した縮小状態との間で変化できる。さらに、かかる移動ベース1においては、ホイールベースHを拡大及び縮小させるために、後輪12が駆動し、かつ前輪11が停止するように構成されている。すなわち、ホイールベースHを拡大するときには、後輪12が後側ベース14を車両後方に移動させるように回転駆動し、かつ前輪11が前側ベース13を一定の位置に留めるように停止する。また、ホイールベースHを縮小するときには、後輪12が後側ベース14を車両前方に移動させるように回転駆動し、かつ前輪11が前側ベース13を一定の位置に留めるように停止する。
【0027】
しかしながら、移動ベースは、ホイールベースを拡大及び縮小させるために、前輪が駆動し、かつ後輪が停止するように構成されてもよい。移動ベースは、ホイールベースを拡大及び縮小させるために、前輪及び後輪が互いに対して反転駆動可能に構成されてもよい。
【0028】
図1及び
図4を参照すると、移動ベース1の前側及び後側ベース13,14は、互いに対して相対的に車両前後方向にて略直線的にスライド可能になっている。特に、移動ベース1の拡大状態及び縮小状態間におけるホイールベースHの長さの差は、シート2のシート前後方向の最大長さに対して半分以上かつ同最大長さ以下であるとよい。なお、シート前後方向は、シート幅方向に略直交し、かつ着座部22の正面及び背面間で延びる方向とする。なお、シート幅方向は車両幅方向と略一致する。移動ベース1を拡大状態とした場合、車両は、搭乗するユーザを安定的に支えながら安定的に走行することができ、かつ移動ベース1を縮小状態とした場合、車両は、コンパクトになると共に小回りできるようになる。
【0029】
図1~
図5に示すように、移動ベース1の前側ベース13は、互いに車両幅方向に間隔を空けて配置される2つの前側サイドメンバ13aを有する。2つの前輪11は、それぞれ、車両幅方向に延びる回転軸線11aを中心に回転可能となるように2つの前側サイドメンバ13aの車両前後方向の前端部に取り付けられる。
【0030】
各前側サイドメンバ13aは、この前側サイドメンバ13aの車両前後方向の後端部から車両幅方向に突出するように形成される旋回シャフト15を有する。詳細は後述するが、かかる旋回シャフト15にはシート2の脚部23が取り付けられる。かかる旋回シャフト15は、前側及び後側ベース13,14が互いに対して相対的に移動するときに、後側ベース14との干渉を避けるように配置される。
【0031】
図1に示すように、旋回シャフト15は、移動ベース1の拡大状態で後側サイドメンバ14aの車両前後方向の前端部に位置するとよい。旋回シャフト15は、移動ベース1の縮小状態で後輪12の近傍に位置するとよい。
【0032】
さらに、移動ベース1の後側ベース14は、互いに車両幅方向に間隔を空けて配置される2つの後側サイドメンバ14aを有する。2つの後輪12は、それぞれ、車両幅方向に延びる回転軸線12aを中心に回転可能となるように2つの後側サイドメンバ14aの車両前後方向の後端部に取り付けられる。
【0033】
特に明確に図示はしないが、移動ベース1には、車両の電力供給源であるバッテリと、車両を電気的に制御するための制御装置とが搭載される。移動ベース1の前側ベース13には、2つの前輪11を制動可能とするように構成される制動装置が搭載される。また、移動ベース1の後側ベース14には、各後輪12を回転駆動するための駆動モータが搭載される。例えば、駆動モータは各後輪12と車両幅方向に隣接するように配置されるか、又は駆動モータは各後輪12に内蔵されるとよい。しかしながら、駆動モータは、これに限定されない。
【0034】
このような車両において、制動装置、制御装置及び駆動モータのそれぞれは、バッテリと電気的に接続されている。バッテリは、制動装置、制御装置及び駆動モータのそれぞれに電力を供給可能である。制御装置は、制動装置及び駆動モータのそれぞれに接続されている。制御装置は、制動装置、バッテリ及び駆動モータのそれぞれを制御可能である。
【0035】
「シートの詳細」
シート2は詳細には次のように構成されるとよい。シート2は、
図1~
図3に示すように、着座部22の着座面21を車両上方に向けるように配置された着座位置と、
図4及び
図5に示すように、着座部22の着座位置から車両前方に退避した退避位置との間で移動可能に構成されている。
【0036】
図1~
図5を参照すると、シート2の着座位置及び退避位置間の移動は、前側及び後側ベース13,14の相対的な移動と連動している。シート2においては、着座部22は、ホイールベースHを縮小するための前側及び後側ベース13,14の相対的な車両前後方向の移動に伴う脚部23の移動によって車両前方に移動するように構成されている。着座部22はまた、ホイールベースHを拡大するための前側及び後側ベース13,14の相対的な車両前後方向の移動に伴う脚部23の移動によって車両後方に移動するように構成されている。
【0037】
図1~
図3に示すように、着座部22は、移動ベース1の拡大状態にて着座位置に配置される。シート2は、着座位置にある状態で、着座部22の着座面21を実質的に車両水平方向に沿わせるように配置されるとよい。
【0038】
図4に示すように、シート2は、移動ベース1の縮小状態にて退避位置に配置される。シート2は、退避位置にある状態で、着座部22の着座面21を、車両上下方向及び車両幅方向に広がる平面に対して所定の角度に向けるように配置されるとよい。かかる角度は絶対値で約30°以下であるとよい。しかしながら、着座面の角度は、これに限定されない。
【0039】
図1~
図5に示すように、着座部22のシート前後方向の前端区域は自由端となっている。シート2が着座位置にある状態では、着座部22の前端区域は、着座部22のシート前後方向の後端区域に対して車両前方に位置し、かつ着座部22の後端区域は、車両前後方向にてフレーム5と略一致するように位置する。シート2が退避位置にある状態では、着座部22の後端区域は、着座部22の前端区域に対して車両上方に位置し、かつフレーム5に対して車両前方に間隔を空けて位置する。
【0040】
さらに、
図4及び
図5に示すように、シート2はまた、このシート2及び背板4がそれぞれ退避位置及び倒伏位置にある状態で背板4を支持するように構成される背板支持機構24を有する。かかる背板支持機構24は、着座部22のシート前後方向の後端区域となっている。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0041】
各脚部23は、シート上下方向の上方から下方に向かうに従ってシート前後方向の後方から前方に向かって傾斜するように延びている。なお、シート上下方向は、シート幅方向及びシート前後方向に略直交する方向とする。各脚部23はまた、この脚部23に対応する着座部22のシート幅方向の側端区域からシート上下方向の下方側に延びる。かかる脚部23の着座取付区域23aは、着座部22のシート幅方向の側端区域におけるシート前後方向の後端又は着座部22の後端区域におけるシート幅方向の側端に位置する。
【0042】
脚部23のベース取付区域23bは、前側サイドメンバ13aの旋回シャフト15に旋回可能に取り付けられる。より具体的には、ベース取付区域23bは、旋回シャフト15を挿入可能とするように車両幅方向に貫通する取付長孔23dを有する。取付長孔23dは、脚部23の長手方向に沿って延びる。前側ベース13が後側ベース14に対して車両前後方向に移動するときに、旋回シャフト15は取付長孔23d内で取付長孔23dの長手方向に沿って移動する。
【0043】
フレーム取付区域23cは、着座取付区域23aとベース取付区域23bとの間に位置する。また、各脚部23のベース取付区域23bは、その脚部23のシート上下方向の下端に位置するとよく、かつ各脚部23のフレーム取付区域23cは、その脚部23のシート上下方向の中間に位置するとよい。
【0044】
このようなシート2において、着座部22の車両前方側移動は、ホイールベースHを縮小するための前側及び後側ベース13,14の相対的な車両前後方向の移動に伴う脚部23のベース取付区域23bの車両後方側移動及び脚部23の車両前方側旋回によってもたらされる。着座部22は、その車両前方側移動によって、着座位置から退避位置に移動できる。
【0045】
そして、ホイールベースHを拡大するための前側及び後側ベース13,14の相対的な車両前後方向の移動によって、脚部23のベース取付区域23bの車両前方側移動及び脚部23の車両後方側旋回がもたらされ、これによって、着座部22の車両後方側移動がもたらされる。シート2は、その車両後方側移動によって退避位置から着座位置に移動できる。
【0046】
「アームレストの詳細」
アームレスト3は詳細には次のように構成されるとよい。
図1~
図5に示すように、アームレスト3は、倒伏位置にある場合の背板4に対して車両上方に配置される。アームレスト3は、移動ベース1上で支持される支持部31と、この支持部31によって支持される本体部32とを有する。本体部32もまた移動ベース1上で支持される。アームレスト3はまた、その本体部32から突出するグリップ33を有する。具体的には、
図1及び
図5に示すように、グリップ33は、シート2が着座位置にある場合にてこのシート2の着座面21に着座したユーザによって把持可能となるようにシート2側に向かって本体部32から突出し、かつ背板4が倒伏位置にある場合にてこの背板4の荷台41側に向かって本体部32から突出する。
【0047】
アームレスト3は着座部22に対して車両上方に位置する。2つのアームレスト3の支持部31は、2つのアームレスト3がそれぞれ旋回軸線3aを中心に旋回可能となるように、後述するフレーム5の2つの支柱51にそれぞれ取り付けられる。
【0048】
アームレスト3は、使用位置と持ち上げ位置との間で変化可能に構成されている。具体的には、
図1、
図2、
図4及び
図5に示すように、アームレスト3は、使用位置にて、着座面21に着座したユーザがその腕をアームレスト3に対して車両上方に位置させながらグリップ33を握ることができるように配置される。また、
図3に示すように、アームレスト3は、持ち上げ位置にて、グリップ33を使用位置よりも車両上方に持ち上げるように配置される。
図1~
図5を参照すると、持ち上げ位置にあるグリップ33は、使用位置にあるグリップ33よりも車両の幅方向の外方寄りに位置する。
【0049】
図1~
図5に示すように、アームレスト3の支持部31は、アームレスト3を使用位置及び持ち上げ位置間で旋回軸線3aを中心に旋回可能とするように支持されている。
図1及び
図4に示すように、旋回軸線3aは、車両の幅方向の中央から車両の幅方向の外方に向かうに従って車両後方から車両前方に向かって傾斜している。
図1~
図5に示すように、アームレスト3が使用位置にある状態で、グリップ33は、車両下方から車両上方に向かうに従って車両の幅方向の外方から車両の幅方向の中央に向かって傾斜するようにアームレスト3の本体部32から突出している。
【0050】
各アームレスト3の支持部31は、このアームレスト3に対応する支柱51に、上述のように旋回可能に取り付けられる支持区域31aを有するとよい。さらに、各アームレスト3においては、支持部31は、本体部32に連結される連結区域31bを有するとよい。支持部31の支持区域31a及び連結区域31bは互いに間隔を空けて位置する。支持区域31aは、連結区域31bに対して車両下方に配置される。アームレスト3の支持部31は背板4の基端部4aに対して車両上方に位置する。
【0051】
各アームレスト3の本体部32は、互いに対向する先端区域32a及び基端区域32bと、これら先端及び基端区域32a,32b間で延びる中間区域32cとを有する。グリップ33は、本体部32の先端区域32aから突出する。各アームレスト3が使用位置にある状態では、そのアームレスト3の本体部32の先端区域32aは、同基端区域32bに対して車両前方に位置する。
【0052】
各アームレスト3が持ち上げ位置にある状態では、そのアームレスト3の本体部32の先端区域32aは、同基端区域32bに対して車両上方に位置する。特に、各アームレスト3が持ち上げ位置にある状態では、そのアームレスト3の支持部31、本体部32又はグリップ33が、起立位置にある背板4と車両前後方向にて略一致するように位置するか、又は起立位置にある背板4に対して車両後方に位置するとよい。
【0053】
2つのアームレスト3の一方におけるグリップ33は、車両を操作可能に構成される操作部34を有する。特に、操作部34は、ユーザが片手により操作可能に構成されるとよい。かかる操作部34は、ジョイスティックとすることができる。しかしながら、2つのアームレストにおけるグリップのそれぞれが操作部を有してもよい。また、操作部は、これに限定されず、ボタン、タッチパネル、レバー、ダイヤル式のつまみ等とすることもできる。
【0054】
各アームレスト3の旋回軸線3aは、支持部31の支持区域31aを通過し、かつ車両幅方向に延びる幅方向軸線Xに対して車両前方に所定の傾斜角度θだけ傾斜しているとよい。2つのアームレスト3の傾斜角度θは同じであるとよい。傾斜角度θは、約5度~約15度であるとよい。一例として、傾斜角度θは約10度とすることができる。しかしながら、傾斜角度は、これに限定されず、2つのアームレストの傾斜角度が異なっていてもよい。また、傾斜角度は、ユーザがシートの着座面に着座した状態で、アームレストを使用位置及び持ち上げ位置間で旋回可能とするように設定することができる。
【0055】
さらに、旋回軸線3aは水平面に沿って位置するとよい。しかしながら、旋回軸線は、これに限定されず、旋回軸線は水平面に対して車両上方又は車両下方に向かって傾斜させることもできる。
【0056】
「背板の詳細」
背板4は詳細には次のように構成されるとよい。背板4は、
図1~
図3に示すように、着座位置にある場合のシート2の着座部22に対して車両後方かつ車両上方の起立位置と、
図4及び
図5に示すように、起立位置に対して車両前方の倒伏位置との間で移動可能に構成される。
図4及び
図5に示すように、背板4は、倒伏位置にある状態で車両上方を向く背面に、荷物B(
図5に示す)を載置可能とするように形成される荷台41を有している。
【0057】
さらに、かかる車両は次のように構成されるとよい。
図4に示すように、荷台41は、背板4が倒伏位置にある状態で荷物Bを載置可能とするように形成される載置面42と、この載置面42の外周縁部の少なくとも一部から突出する荷止43とを有している。さらに、背板4が倒伏位置にある状態で、載置面42は、車両前方から車両後方に向かうに従って低くなるように傾斜しており、かつ荷止43は、載置面42の車両前後方向の後縁部から突出する後方荷止部43aを有している。なお、詳細は後述するが、荷止は、後方荷止部の代わりに又は後方荷止部に加えて、別の荷止部を有することもできる。
【0058】
図1及び
図4を参照すると、背板4は、起立位置と倒伏位置との間で旋回可能となるようにフレーム5に取り付けられている。
図1に示すように、背板4は、起立位置にある状態で車両幅方向及び車両上下方向に広がる平面に沿って配置される。
図4及び
図5に示すように、背板4はまた、倒伏位置にある状態で、上述のごとく載置面42を車両前方から車両後方に向かうに従って低くなるように傾斜させるように配置される。倒伏位置にある背板4は、使用位置にあるアームレスト3に対して車両下方寄りかつ車両の幅方向の中央寄りに位置するようになっている。
【0059】
図1~
図5に示すように、背板4は略平板形状に形成される。背板4は、起立位置にある状態で、それぞれ車両上下方向の下端側及び上端側に位置する基端部4a及び先端部4bを有する。背板4の基端部4aは、背板4が車両幅方向に延びる旋回軸線4cを中心に旋回可能となるように、後述するフレーム5の2つの支柱51に取り付けられる。より具体的には、背板4の基端部4aは、2つの支柱51における車両上下方向の中間部に取り付けられる。
【0060】
背板4の先端部4bは自由端となっている。かかる背板4の先端部4bは、起立位置と倒伏位置との間で旋回軸線4cを中心に揺動可能である。さらに、
図4及び
図5に示すように、シート2が退避位置にあり、かつ背板4が倒伏位置にある状態で、背板4の先端部4bは、シート2の脚部23の背板支持機構24によって支持される。
【0061】
さらに
図4及び
図5を参照すると、背板4が倒伏位置にある状態では、背板4の荷台41の載置面42上には荷物Bを載置することができる。典型的に、載置面42上に載置される荷物Bは、買い物籠、かばん等であるとよい。さらに、かかる荷物Bは、スーパーマーケット、ショッピングセンター等に置かれる剛性の買い物籠であるとよい。しかしながら、載置面上に載置される荷物は、これに限定されない。かかる荷物は、載置面上に載置可能であればあらゆるものとすることができる。例えば、かかる荷物は、段ボール箱、ケース等とすることもできる。
【0062】
図4に示すように、上述のように荷止43は後方荷止部43aを有している。しかしながら、荷止は、載置面の外周縁部の一部又は全部から突出する荷止部を有することができる。荷止は、載置面の外周方向に互いに離れた複数の荷止部を有するか、又は載置面の外周方向に連続するように一体に形成されてもよい。例えば、荷止は、載置面の車両前後方向の前縁部から突出する前方荷止部を有することができる。荷止は、載置面の車両幅方向の両側縁部のうち少なくとも一方から突出する側方荷止部を有することができる。
【0063】
「フレームの詳細について」
フレーム5は詳細には次のように構成されるとよい。
図1~
図5に示すように、フレーム5は、着座位置にあるシート2の着座部22の後端区域と隣接するように配置される。フレーム5の2つの支柱51は、互いに車両幅方向に間隔を空けて配置される。2つの支柱51は、それぞれ、車両幅方向にて後側ベース14の2つの後側サイドメンバ14aに対応するように配置される。2つの支柱51はまた、それぞれ、車両幅方向にてシート2の2つの脚部23に対応するように配置される。
【0064】
各支柱51の車両上下方向の下端部は、この支柱51に対応する後側サイドメンバ14aの車両前後方向の後端部に取り付けられる。各支柱51は、この支柱51に対応するシート2の脚部23のフレーム取付区域23cを取付可能に構成されるシート旋回取付部51bを有する。かかるフレーム取付区域23cは、車両幅方向に延びる旋回軸線2aを中心に旋回可能にシート旋回取付部51bに取り付けられる。
【0065】
シート旋回取付部51bは、車両前後方向にて、後側ベース14の前端及び後端間に配置される。特に、
図1~
図3に示すように、シート旋回取付部51bは、着座位置にあるシート2の着座部22に対して車両下方に位置する各支柱51の車両上下方向の下方領域に配置されるとよい。支柱51の下方領域が、くの字部分51aを含むとよい。シート旋回取付部51bは、くの字部分51aの頂部に位置するとよい。
【0066】
さらには、支柱51の下方領域の全体を、くの字部分51aとすることができる。支柱51の全体を、くの字部分51aとすることもまたできる。しかしながら、本発明はこれに限定されず、例えば、支柱の下方領域の全体又は支柱の全体を、くの字部分を含むように略X字形状に形成することもできる。支柱の下方領域の全体又は支柱の全体を、くの字部分を含むように略X字形状に略λ形状に形成することもできる。
【0067】
「電動車両の展開状態及び折り畳み状態」
電動車両の展開状態及び縮小状態について説明する。
図1に示すように、車両は、移動ベース1が拡大状態にあり、かつシート2が着座位置にあるときに展開状態となる。車両は、展開状態では、ユーザが搭乗した状態で操作部34を操作することによって走行可能である。車両はまた、展開状態においては、ユーザ、補助者等が車両後方に位置する状態で車両を手押しすることによっても走行可能である。かかる車両は、展開状態では、車椅子、カート等として用いることができる。
【0068】
図4に示すように、車両は、上述のように移動ベース1が縮小状態にあり、かつシート2が退避位置にあるときに折り畳み状態となる。車両は、折り畳み状態において、ユーザが車両後方に位置した状態で車両を手押しすることによって走行可能である。かかる車両は、折り畳み状態では、歩行補助車、ショッピングカート、台車等として用いることができる。
【0069】
以上、本実施形態に係る電動車両は、前側ベース13及び後側ベース14を有する移動ベース1と、着座部22及び脚部23を有するシート2と、後側ベース14上に配置されるフレーム5とを含み、脚部23が、着座部22に取り付けられる着座取付区域23aと、脚部23を前側ベース13に対して旋回可能とするように前側ベース13に取り付けられるベース取付区域23bと、脚部23をフレーム5に対して旋回可能とするようにフレーム5に取り付けられるフレーム取付区域23cとを有し、移動ベース1が拡大状態と縮小状態との間で変化可能となるように、前側及び後側ベース13,14が互いに対して相対的に移動でき、脚部23の旋回が、前側及び後側ベース13,14の相対的な移動と連動しており、フレーム5が、移動ベース1の拡大状態で脚部23の着座取付区域23a及びフレーム取付区域23cを車両幅方向の外方から覆い、かつ移動ベース1の縮小状態で脚部23のベース取付区域23b及びフレーム取付区域23cを車両幅方向の外方から覆うように形成されている。
【0070】
そのため、移動ベース1が縮小状態から拡大状態に向かって変化するときに、前側ベース13の前方移動に伴うシート2の脚部23の移動によって、シート2の着座部22が、移動ベース1の縮小状態にて配置される退避位置から、移動ベース1の拡大状態にて配置される着座位置に向かって前方に移動することができる。移動ベース1の拡大状態では、着座部22が、車両内の空間(以下、「着座空間」という)を占有した状態で安定的に維持されるので、ユーザが安定的に着座部22に着座することができる。そのため、ユーザが安定的に着座できるようにシート2の着座部22が着座位置にあり、かつ車両が安定的に走行できるように移動ベース1が拡大状態にある電動車両の展開状態を容易にもたらすことができる。
【0071】
その一方で、移動ベース1が拡大状態から縮小状態に向かって変化するときに、前側ベース13の後方移動に伴うシート2の脚部23の移動によって、シート2の着座部22が、移動ベース1の拡大状態にて配置される着座位置から、移動ベース1の縮小状態にて配置される退避位置に向かって前方に移動することができる。かかる移動ベース1の縮小状態では、着座部22は、着座空間から退避するように前方に移動するので、縮小状態の移動ベース1上において、着座空間に買い物籠等の荷物Bを載置することができる。そのため、着座部22が荷物Bを載置可能なスペースが確保できるように退避位置にあり、かつ車両が小回りできるように移動ベース1が縮小状態にある移動体の折り畳み状態を容易にもたらすことができる。また、電動車両の展開状態と折り畳み状態とを容易に切り換えることができる。よって、電動車両を、折り畳み状態で、歩行補助車、ショッピングカート、台車等として効率的に使用することができる。
【0072】
また、シート2の着座位置及び退避位置間の変化と、移動ベース1の拡大状態及び縮小状態間の変化とを連動させるので、シート2を着座位置とすると共に移動ベース1を拡大状態とした移動体の展開状態と、シート2を退避位置とすると共に移動ベース1を縮小状態とした電動車両の折り畳み状態とを、例えば、シート2の手動操作によって容易に切り換えることができる。よって、移動体の利便性を高めることができる。さらに、車両を展開及び折り畳み状態に変化させるための機構を、フレーム5によって効率的に隠すことができる。よって、移動体の外観を向上させることができる。
【0073】
本実施形態に係る電動車両においては、脚部23の着座取付区域23aは、着座部22の後方区域に位置するように着座部22に取り付けられ、かつ脚部23のベース取付区域23bは、移動ベース1の縮小状態で後側ベース14の車両前後方向の後端寄り、かつ後輪12に対して車両前方に位置するように構成されている。そのため、移動ベース1が拡大状態及び縮小状態間で変化するときに、シート2の着座部22を安定的かつスムーズに前方及び後方移動させることができるので、電動車両を効率的に使用することができる。よって、電動車両の利便性を高めることができる。
【0074】
本実施形態に係る電動車両においては、フレーム5が、移動ベース1の拡大状態で脚部23の着座取付区域23a及びフレーム取付区域23cを車両幅方向の外方から覆い、かつ移動ベース1の縮小状態で脚部23のベース取付区域23b及びフレーム取付区域23cを車両幅方向の外方から覆うように略くの字形状に形成されるくの字部分51aを有する支柱51を含んでいる。そのため、車両を展開及び折り畳み状態に変化させるための機構を、支柱51のくの字部分51aによって効率的に隠すことができる。また、支柱51のくの字部分51aは優れた美感をもたらす。よって、電動車両の外観を向上させることができる。
【0075】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
【符号の説明】
【0076】
1…移動ベース、11…前輪、12…後輪、13…前側ベース、14…後側ベース
2…シート、21…着座面、22…着座部、23…脚部、23a…着座取付区域、23b…ベース取付区域、23c…フレーム取付区域
5…フレーム、51…支柱、51a…くの字部分
H…ホイールベース