(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】エレベータの点検補助装置
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20221201BHJP
B66B 11/02 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B66B5/00 D
B66B11/02 Z
(21)【出願番号】P 2021168785
(22)【出願日】2021-10-14
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】宮川 行宏
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0177123(US,A1)
【文献】中国実用新案第209143447(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2021/0284503(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03632831(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00 - 5/28
B66B 11/00 - 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱形のかごと、内部を該かごが移動する移動路と、を備えるエレベータの点検を補助するエレベータの点検補助装置であって、
前記かごの外面のうち、少なくとも一面に設けられる経路部と、
該経路部上を移動し、前記エレベータの点検補助をする装置本体と、を備え
、
前記エレベータは、前記移動路の延伸方向に離間して複数配置される乗場と、該乗場に配置される乗場ドアと、前記かごに配置されるかごドアと、を備え、
前記乗場ドア及び前記かごドアは、連動して前記乗場及び前記かごの間を開閉するよう構成され、
前記乗場ドアは、前記乗場及び前記かごの間を開閉する板状の乗場ドア本体を備え、
前記装置本体は、前記乗場ドアの開閉方向に移動可能であり、前記乗場ドアに係合して前記開閉方向に移動することで、前記乗場ドアを開閉方向に移動可能に構成され、
前記乗場ドアは、前記乗場ドア本体を閉じた状態でロックするロック機構を備え、
前記装置本体は、
前記ロック機構に係合して、前記ロック機構のロックを解除する点検係合部を備え、
該点検係合部が前記ロック機構のロックを解除しつつ、前記乗場ドア本体を開く方向に移動させることができるように構成されるエレベータの点検補助装置。
【請求項2】
箱形のかごと、内部を該かごが移動する移動路と、を備えるエレベータの点検を補助するエレベータの点検補助装置であって、
前記かごの外面のうち、少なくとも一面に設けられる経路部と、
該経路部上を移動し、前記エレベータの点検補助をする装置本体と、を備え、
前記エレベータは、前記移動路の延伸方向に離間して複数配置される乗場と、該乗場に配置される乗場ドアと、前記かごに配置されるかごドアと、を備え、
前記乗場ドア及び前記かごドアは、連動して前記乗場及び前記かごの間を開閉するよう構成され、
前記乗場ドアは、前記乗場及び前記かごの間を開閉する板状の乗場ドア本体を備え、
前記装置本体は、前記乗場ドアの開閉方向に移動可能であり、前記乗場ドアに係合して前記開閉方向に移動することで、前記乗場ドアを開閉方向に移動可能に構成され、
前記装置本体は、前記乗場ドア本体を開閉方向に移動させる際にかかる負荷を測定可能な負荷測定手段を備えるエレベータの点検補助装置。
【請求項3】
前記装置本体は、前記乗場ドア本体を開閉方向に移動させる際にかかる負荷を測定可能な負荷測定手段を備える請求項1に記載のエレベータの点検補助装置。
【請求項4】
前記移動路は、前記移動路の延伸方向に離間して配置される、前記かごの運行に関する入力を行う入力部を備え、
前記装置本体は、前記入力部に対して入力操作可能な操作手段を備える請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエレベータの点検補助装置。
【請求項5】
箱形のかごと、内部を該かごが移動する移動路と、を備えるエレベータの点検を補助するエレベータの点検補助装置であって、
前記かごの外面のうち、少なくとも一面に設けられる経路部と、
該経路部上を移動し、前記エレベータの点検補助をする装置本体と、を備え、
前記移動路は、前記移動路の延伸方向に離間して配置される、前記かごの運行に関する入力を行う入力部を備え、
前記装置本体は、前記入力部に対して入力操作可能な操作手段を備えるエレベータの点検補助装置。
【請求項6】
前記エレベータは、前記移動路の延伸方向に離間して複数配置される乗場と、該乗場に配置される乗場ドアと、前記かごに配置されるかごドアと、を備え、
前記乗場ドア及び前記かごドアは、連動して前記乗場及び前記かごの間を開閉するよう構成され、
前記乗場ドアは、前記乗場及び前記かごの間を開閉する板状の乗場ドア本体を備え、
前記装置本体は、前記乗場ドアの開閉方向に移動可能であり、前記乗場ドアに係合して前記開閉方向に移動することで、前記乗場ドアを開閉方向に移動可能に構成される請求項5に記載のエレベータの点検補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの点検を補助するためのエレベータの点検補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータとして、特許文献1に記載のようなエレベータが知られている。エレベータは、昇降路と、昇降路の内部を昇降するかごと、昇降路の延伸方向に離間して設けられる複数の乗場と、を備える。かごにはかごドアが設けられ、乗場には、昇降路と乗場との間を開閉する乗場ドアが設けられ、乗場ドアには、かごドアと係合するためのドア係合装置が昇降路側に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようなエレベータを点検する際には、例えば、ドア係合装置のような昇降路内に設けられる各種機器を、昇降路内に作業員が立ち入って昇降路内から目視したり、各種機器に触れたりして点検する必要がある。しかしながら、かごの移動路である昇降路内への立ち入りには危険が伴う。なお、前記危険は、かごが昇降する昇降路内に限らず、かごが上下方向及び水平方向に移動する移動路内であっても同様である。
【0005】
そこで、本発明は、エレベータの点検のために作業員がかごの移動路内に入る必要性を低減することができるエレベータの点検補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエレベータの点検補助装置は、箱形のかごと、内部を該かごが移動する移動路と、を備えるエレベータの点検を補助するエレベータの点検補助装置であって、前記かごの外面のうち、少なくとも一面に設けられる経路部と、該経路部上を移動し、前記エレベータの点検補助をする装置本体と、を備えるよう構成される。
【0007】
かかる構成によれば、かごに設けられる装置本体が経路部上を移動してエレベータの点検補助をすることができるので、作業員が点検のためにエレベータのかごの移動路内に入る必要性が低減される。
【0008】
また、前記エレベータは、前記移動路の延伸方向に離間して複数配置される乗場と、該乗場に配置される乗場ドアと、前記かごに配置されるかごドアと、を備え、前記乗場ドア及び前記かごドアは、連動して前記乗場及び前記かごの間を開閉するよう構成され、前記乗場ドアは、前記乗場及び前記かごの間を開閉する板状の乗場ドア本体を備え、前記装置本体は、前記乗場ドアの開閉方向に移動可能であり、前記乗場ドアに係合して前記開閉方向に移動することで、前記乗場ドアを開閉方向に移動可能に構成することもできる。
【0009】
かかる構成によれば、装置本体は乗場ドアを開閉方向に移動可能に構成されるので、乗場ドアを開閉できるか否かについて点検補助することができる。
【0010】
また、前記乗場ドアは、前記乗場ドア本体を閉じた状態でロックするロック機構を備え、前記装置本体は、前記ロック機構に係合して、前記ロック機構のロックを解除する点検係合部を備え、該点検係合部が前記ロック機構のロックを解除しつつ、前記乗場ドア本体を開く方向に移動させることができるように構成することもできる。
【0011】
かかる構成によれば、装置本体は、ロック機構のロックを解除して乗場ドア本体を開く方向に移動させることができるので、ロック機構を適切に解除できるか否かについての点検補助をすることができる。
【0012】
また、前記装置本体は、前記乗場ドア本体を開閉方向に移動させる際にかかる負荷を測定可能な負荷測定手段を備えるよう構成することもできる。
【0013】
かかる構成によれば、負荷測定手段によって、乗場ドア本体を開閉方向に移動させる際にかかる負荷を測定できるので、乗場ドア本体を適切に開閉できるか否かに関する点検補助をすることができる。
【0014】
前記移動路は、前記移動路の延伸方向に離間して配置される、前記かごの運行に関する入力を行う入力部を備え、前記装置本体は、前記入力部に対して入力操作可能な操作手段を備えるよう構成することもできる。
【0015】
かかる構成によれば、移動路内の入力部に対して入力操作可能な操作手段を備えるので、入力部に入力操作をする点検補助を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、エレベータの点検のために作業員がかごの移動路内に入る必要性を低減することができるエレベータの点検補助装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るエレベータの点検補助装置が設けられるエレベータの概略図である。
【
図2】同エレベータの点検補助装置を示す概略図である。
【
図3】同エレベータの点検補助装置の経路部を示す平面図である。
【
図4】同エレベータの点検補助装置の経路部を示す背面図である。
【
図5】同エレベータの点検補助装置の装置本体を示す側面図である。
【
図6】同エレベータの点検補助装置の装置本体を示す平面図である。
【
図8】同エレベータの点検補助装置が乗場ドアの点検補助をする直前の状態を示す図である。
【
図9】同エレベータの点検補助装置が
図8に示す状態から乗場ドアのロック機構のロックを解除した状態を示す図である。
【
図10】同エレベータの点検補助装置がかご位置検出スイッチの点検補助をする状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係るエレベータの点検補助装置1について
図1乃至
図10を参照して説明する。また、説明の便宜上、上下方向は、エレベータ2の昇降方向に沿う方向を指し、左右方向は、エレベータ2のドアの開閉方向に沿う方向を指し、前後方向は、エレベータ2のドアの厚み方向に沿う方向を指すものとして説明する。
【0019】
エレベータの点検補助装置1の説明に先立って、エレベータの点検補助装置1が設けられるエレベータ2について
図1及び
図2を参照して説明する。
【0020】
図1に示すように、エレベータ2は、筒状の移動路3の内部を人又は荷物を載せて移動する箱状のかご4と、移動路3の内外を連通し、かご4に荷物を出し入れ可能な複数の乗場5と、エレベータ2を制御する制御部と、を備える。具体的に、かご4は、人又は荷物を出し入れ可能な開口部を備え、乗場5では、開口部を介してかご4に人又は荷物を出し入れ可能である。また、乗場5には、乗場5と開口部の間を開閉する乗場ドア22が設けられ、かご4には、乗場5と開口部の間を開閉するかごドア7が設けられる。本実施形態で、移動路3は、上下方向及び上下方向に直交する水平方向(本実施形態では左右方向)に延びる。また、かご4は、移動路3に沿って、上下方向及び水平方向に移動可能に構成されている。さらに、移動路3内には、かご4の移動方向に延び、かご4を移動方向にガイドするガイドレール11(
図10参照)が設けられる。なお、移動路3は、上下方向及び水平方向に延びる場合に限らず、上下方向にのみ延びるように構成することもできる。
【0021】
移動路3内には、かご4の運行に関する入力を行う入力部12が複数配置される。入力部12は、例えば、かご4によって押下されることで、移動路3内におけるかご4の位置を把握するためのかご位置検出スイッチを含む(
図10参照)。本実施形態でかご位置検出スイッチは、移動路3の上端部に配置され、かご4により押下されることでかご4が移動路3の上端位置に位置していることを検出する上端位置検出スイッチと、移動路3の下端部に配置され、かご4によって押下されることでかご4が移動路3内の下端位置に位置していることを検出する下端位置検出スイッチと、上端位置検出スイッチと下端位置検出スイッチの間に複数配置される中間位置検出スイッチと、を含む。本実施形態でかご位置検出スイッチは、ガイドレール11に配置され、かご4はガイドレール11上を移動する際に、配置された各かご位置検出スイッチを押下しながら移動するように構成されている。制御部は、各かご位置検出スイッチが押下されると、押下された位置にかご4が位置していることを検出することができる。即ち、中間位置検出スイッチは、いわゆる強制減速スイッチであり、中間位置検出スイッチが押下された際に、かご4の速度が所定速度を超えている場合に、制御部がかご4を減速させるためのスイッチである。また、上端位置検出スイッチ及び下端位置検出スイッチは、いわゆるファイナルリミットスイッチであり、上端位置検出スイッチ及び下端位置検出スイッチが押下された際に、制御部はかご4が移動路3の上端及び下端のいずれかに異常接近していると判断し、かご4を緊急停止させるためのスイッチである。
【0022】
図2に示すように、かご4は、箱型で、前面に乗場5と連通する開口部が形成されたかご本体6と、開口部を開閉するかごドア7と、を備える。本実施形態で、かご本体6は、略直方体状である場合について説明するが、例えば、多角柱状や、円柱状として構成することもできる。
【0023】
かごドア7は、かご本体6の前面側に配置され、開口部を開閉する板状のかごドア本体13と、かごドア7を開閉方向に移動させる駆動装置14と、駆動装置14によって駆動し、かごドア7と連動して動くように構成されるロック解除部15と、を備える。本実施形態のかごドア7は、いわゆるサイドオープン方式のドアである。また、本実施形態で、かごドア7は、かごドア本体13を1枚備える。また、かごドア7は、前面が後述する乗場ドア本体23の裏面と対向するように設けられる。なお、かごドア7がサイドオープン方式として構成される場合に限らず、両開き方式として構成することもできる。
【0024】
駆動装置14は、かご本体6の上部に配置され、かごドア本体13を吊り下げて支持しつつ、開閉方向に移動させる。また、駆動装置14は、かごドア本体13の上部に連結される連結部16と、連結部16を開閉方向に移動させるための駆動本体部17と、連結部16を開閉方向に移動するようにガイドするハンガーレール18と、を備える。ハンガーレール18は、かご本体6の上部に固定された開閉方向に延びるレールであり、連結部16を介してかごドア本体13及びかごドア本体13に設けられたロック解除部15を支持可能である。
【0025】
連結部16は、かごドア本体13の上部に連結され、かごドア本体13と駆動本体部17とを連結する。また、連結部16は、駆動本体部17の駆動によって、かごドア本体13に連結された状態で左右方向に移動可能である。さらに、連結部16は、ハンガーレール18に沿って移動可能に構成されている。具体的に、連結部16は、ハンガーレール18に係合して、ハンガーレール18に沿って転動する転動部を備え、転動部とハンガーレール18との係合によって、連結部16はハンガーレール18の延伸方向(左右方向)に移動するようにガイドされる。
【0026】
駆動本体部17は、かごドア本体13を開閉方向に移動させることができる部位である。また、駆動本体部17は、連結部16をハンガーレール18に沿って開閉方向に移動させ、連結部16を介してかごドア本体13を開閉方向に移動させる。具体的に、駆動本体部17は、かごドア本体13が移動するための駆動力を供給する駆動部19と、駆動力を駆動部19から連結部16に伝達する駆動伝達部20と、を備える。本実施形態で、駆動部19は、後述する装置本体42が経路部41を移動する際に通る領域を避けて配置される。具体的に、駆動部19は、かご本体6の上面から上方に離間して配置され、かご本体6の上面と駆動部19の間を装置本体42が通ることができるように構成されている。
【0027】
ロック解除部15は、かごドア7の前面に設けられ、後述する乗場ドア22に設けられるロック機構24のロックを解除可能な部位である。また、ロック解除部15は、かご4が乗場5の位置に着床した状態で、ロック機構24に係合可能である。具体的に、ロック解除部15は、板状で、ロック機構24に係合可能な一対の係合板部21を備える。さらに、係合板部21は、かごドア本体13の開閉方向への移動に連動して、ロック機構24に対して係脱可能に構成されている。具体的に、ロック解除部15は、かご4が乗場5の位置に着床した状態でかごドア本体13が開く方向に移動するのに伴って、ロック機構24に係合してロック機構24のロックを解除し、かごドア本体13が閉じる際にロック機構24に対する係合が解除されるように構成される。本実施形態で、ロック解除部15は、一対の係合板部21がかごドア本体13の表面に対して寝た状態である非係合状態(
図1及び
図2に示す状態)と、一対の係合板部21がかごドア本体13に対して起き上がった状態である係合状態(図示しない)と、を切り替え可能に構成されている。具体的に、一対の係合板部21は、かごドア本体13が開く方向に移動するのに伴って起き上がり、非係合状態から係合状態に移り変わり、かごドア本体13が閉じる方向に移動するのに伴って倒伏し、係合状態から非係合状態に移り変わるように構成されている。ロック解除部15とロック機構24の係合については後述する。上述のようなロック解除部15は、移動路3が、上下方向及び上下方向に直交する水平方向(本実施形態では左右方向)に延び、かご4が、移動路3に沿って、上下方向及び水平方向に移動可能に構成されているエレベータ2において特に好適に使用されうる。なお、ロック解除部15は、このような構成に限らず、かごドア本体13の移動に伴ってロック機構24に係合した状態及び係合が解除された状態を切り替え可能な種々の構成を採用できる。例えば、かごドア本体13の表面に対して起き上がった状態で、開閉方向に離間して設けられる一対の係合板部21を備え、係合板部21は、かごドア本体13が開く方向に移動するのに伴って開閉方向の間隔が小さくなるように構成されるロック機構24を採用できる。
【0028】
乗場5には、乗場ドア22が配置される。
図1に示すように、乗場ドア22は、板状で、開閉方向に移動する乗場ドア本体23と、乗場ドア本体23を閉じた状態でロック可能なロック機構24と、を備える。また、乗場ドア22は、かごドア7を連動して、乗場5とかご4の間を開閉するように構成される。
【0029】
乗場ドア本体23は、乗場5に配置された板状の戸である。また、乗場ドア本体23は、かごドア7と連動して開閉方向に移動するように構成される。本実施形態の乗場ドア本体23は、かごドア7に係合して、かごドア7に従動して開閉方向に移動するように構成されている。さらに、乗場ドア本体23は、閉じる方向に付勢されている。そのため、乗場ドア22とかごドア7の係合が解除されたときに、付勢力によって乗場ドア本体23は閉じる方向に移動する。
【0030】
図1、
図8及び
図9に示すように、ロック機構24は、乗場ドア本体23を閉じた状態にロックする機構である。また、ロック機構24は、乗場ドア本体23が閉じた状態で、開く方向に移動することを規制する部位である。本実施形態のロック機構24は、乗場ドア22の上方に設けられるかぎ部25と、かぎ部25が嵌合可能な受け部26と、乗場ドア本体23に連結され、かぎ部25の受け部26に対する嵌合を解除するように操作可能なロックローラ部27と、ロックローラ部27及びかぎ部25を連結するロック棒部28と、を備える。本実施形態のかぎ部25は、先端部が受け部26に嵌合するように構成される。このようなロック機構24を備える乗場ドア22において、かぎ部25が受け部26に嵌合した状態で乗場ドア本体23を開く方向に移動させようとした際には、かぎ部25が受け部26に係止して、開く方向への移動が規制される。
【0031】
ロックローラ部27は、乗場ドア本体23の裏面に設けられた一対のローラを含む部位である。本実施形態のロックローラ部27は、乗場ドア本体23の裏面側に配置され、水平方向の所定範囲で移動可能な横移動ローラ29と、乗場ドア本体23の裏面側に配置され、上下方向の所定範囲で移動可能な縦移動ローラ30と、横移動ローラ29及び縦移動ローラ30を連結する連結棒部31と、を備える。このようなロックローラ部27は、横移動ローラ29の水平方向への移動に同期して、縦移動ローラ30が上下方向に移動するように構成されている。また、ロックローラ部27は、乗場ドア22が閉じている状態(かぎ部25が受け部26に係止している状態)のときに、縦移動ローラ30が上方に位置し、乗場ドア22が開く際(かぎ部25と受け部26の係合が解除されている状態)のときに、縦移動ローラ30が下方に位置するように構成される。本実施形態のロックローラ部27は、横移動ローラ29が乗場ドア22の開閉方向で開く方向に移動した際に、縦移動ローラ30が下方に移動するように構成される。
【0032】
ロック棒部28は、ロックローラ部27とかぎ部25を連結する棒状体である。本実施形態でロック棒部28は、縦移動ローラ30とかぎ部25の基端部を連結している。具体的に、ロック棒部28は、下端部が縦移動ローラ30に連結される下方棒部281と、上端部がかぎ部25の基端部に連結される上方棒部282と、を備え、下方棒部281の上端部及び上方棒部282の下端部が連結されている。
【0033】
かぎ部25は、基端部がロック棒部28に連結され、先端部が受け部26に嵌合可能なカギである。また、かぎ部25は、ロック棒部28の移動に連動して先端部が受け部26に対して移動可能に構成されたカギである。本実施形態のかぎ部25は、ロック棒部28が上方に位置している時に先端部と受け部26が嵌合する(
図8に示す状態)ように構成され、ロック棒部28が下方に移動した際に、先端部と受け部26の嵌合が解除される(
図9に示す状態)ように構成されている。
【0034】
ロック機構24のロックをロック解除部15が解除する場合の動作について説明する。まず、かご4が乗場5の位置に着床し、ロックローラ部27とロック解除部15が正対する。ロックローラ部27とロック解除部15が正対した状態で、かごドア本体13が開く方向に移動し、かごドア本体13の移動に連動して一対の係合板部21がかごドア本体13に対して起き上がる方向に移動する。一対の係合板部21は、横移動ローラ29及び縦移動ローラ30を挟みつつ起き上がり、起き上がり動作に伴って、横移動ローラ29を水平方向(乗場ドア本体23の開く方向)に移動させる。このように、係合板部21が横移動ローラ29を水平方向に移動させることで、横移動ローラ29の移動に連動して縦移動ローラ30が下方に移動し、縦移動ローラ30に連結されたロック棒部28が連動して下方に移動する。そして、ロック棒部28の移動に伴って、かぎ部25の先端部と受け部26の嵌合が解除され、ロックが解除される。また、係合板部21とロックローラ部27の係合が解除されたときには、横移動ローラ29が水平方向(本実施形態では乗場ドア22の閉じる方向)に移動してかぎ部25と受け部26が再度嵌合することで、再びロックがされる。
【0035】
次に、以上のようなエレベータ2に設けられるエレベータの点検補助装置1について説明する。
【0036】
図2に示すように、エレベータの点検補助装置1は、かご4の外面に設けられる経路部41と、経路部41上を移動可能な装置本体42と、エレベータの点検補助装置1を制御する制御部(図示しない)と、を備える。また、エレベータの点検補助装置1は、移動路3内のエレベータ2の設備について正常であるか否かを確認する点検作業の補助である点検補助を行う。また、本実施形態のエレベータの点検補助装置1の制御部は、エレベータ2の制御部と一体として構成されている。即ち、本実施形態のエレベータの点検補助装置1は、エレベータ2全体のシステムの一部として組み込まれる。なお、このような構成に限らず、エレベータ2とエレベータの点検補助装置1で別々に制御部を有するように構成することもできる。エレベータの点検補助装置1がエレベータ2の制御部とは別に制御部を備える場合に、制御部は、装置本体42に組み込まれるように構成することもできるし、移動路3外の点検作業員が持つコントローラ等、装置本体42の外部に制御部を有するように構成することもできる。
【0037】
図3及び
図4に示すように、経路部41は、かご4の外面の内、少なくとも一面に設けられている。具体的に、経路部41は、かご4の上面、かご4の側面、及び、かご4の下面に設けられている。本実施形態で、経路部41は、装置本体42が移動可能なレールである。また、経路部41は、上面から下面に亘って延びる一本のレールである。具体的に、経路部41は、装置本体42が移動する経路を画定するレール部43と、レール部43の両端部に配置され、装置本体42がレールの終端を超えて移動することを抑制する終端部44と、を備える。さらに、本実施形態のレール部43は、かご4の外面に沿って延びるように構成されている。なお、レール部43を環状に構成することもできる。レール部43を環状に構成する場合には、終端部44を備えないように構成することもできる。
【0038】
レール部43は、かご4の上面、かご4の側面、及び、かご4の下面に亘って延びる。また、レール部43は、かご4の側面のうち、かごドア本体13の可動域を除く範囲内でかご4の上面及びかご4の下面の間に亘って延びるように設けられる。さらに、レール部43は、かご4の上面において、かご4の上面の外縁に沿って延び、かご4の下面において、かご4の下面の外縁に沿って延びるように構成される。
【0039】
具体的に、レール部43は、かご4の上面及び下面の少なくとも一方で、かご4の上面及び下面の外縁のうち、乗場ドア22と対向する範囲に、乗場ドア22の開閉方向に沿って延びるように配置されるドア対向部45を有する。本実施形態で、ドア対向部45は、かご4の上面及び下面の前面側に左右方向に沿って延びるように構成されている。また、レール部43は、かご4の上面及び下面の少なくとも一方で、かご4の上面及び下面の外縁のうち、移動路3内においてガイドレール11と対向する範囲を含んで延びるように配置されるガイド対向部46を有する。本実施形態でガイド対向部46は、かご4の上面及び下面の左右両側面側に前後方向に沿って延びるように構成されている。さらに、レール部43は、かご4の側面において、上下方向に延び、レール部43のうち、かご4の上面に配置される部位と下面に配置される部位とを連結する。即ち、本実施形態で、かご4の側面に設けられるレール部43は、装置本体42が上面側から下面側に移動する際の連絡経路として構成される。
【0040】
図5に示すように、レール部43は、かご4に固定される台座部47と、台座部47からかご4の外方に向かってに延び、装置本体42に設けられる移動ローラ50と係合するレール本体部48と、を備える。レール本体部48は、上下方向の中途部分に凹部49を備え、凹部49を一対の移動ローラ50が挟み込むことで、移動ローラ50がレール本体部48に係合可能となるように構成されている。
【0041】
装置本体42は、レール部43に係合する複数の移動ローラ50と、複数の移動ローラ50が連結され、移動ローラ50によって、レール部43上を移動可能な装置基部51と、装置基部51に配置される点検補助手段52と、を備える。本実施形態の装置本体42は、点検補助手段52を複数備える。本実施形態の装置本体42は、かご4の外面に沿って移動して点検補助を行う。具体的に、本実施形態の装置本体42は、かご4の上面及び下面の一方からかご4の側面を通ってかご4の上面及び下面の他方に移動する。また、装置本体42は、かご4の上面に位置している時には、移動路3内でかご4の上方に位置する設備について点検補助を行い、かご4の下面に位置している時には、移動路3内でかご4の下方に位置する設備について点検補助を行う。即ち、装置本体42は、かご4の上方に位置する設備について点検補助を行う場合には、かご4の上面に移動し、かご4の下方に位置する設備について点検補助を行う場合にはかご4の下面に移動する。さらに、装置本体42は、点検補助手段52及び移動ローラ50の移動によって、乗場ドア本体23を開閉させたり、入力部12に対して入力操作をしたりすることができるように構成されている。
【0042】
移動ローラ50は、レール部43の凹部49に係合した状態で回動することで、レール部43上を走行可能となるように構成される。具体的に、各移動ローラ50は、レール部43に係合する円盤形状のローラ本体53と、ローラ本体53を回動可能な状態で装置基部51に連結する軸部54と、を備える。また、少なくとも1つの移動ローラ50は、ローラ本体53を回動させるための回動手段55を備える。本実施形態では、1つの移動ローラ50に回動手段55の動力源としてのモータ56が設けられる。即ち、本実施形態の移動ローラ50は、1つのローラ本体53が回動手段55によって回動することでレール上を移動可能となる。また、移動ローラ50は、レール部43に係合して、装置基部51をレール部43から上方に離間した状態で支持可能である。また、軸部54は、固定部57によって下方板部58に連結される。
【0043】
図5乃至
図7に示すように、装置基部51は、点検補助手段52が配置される枠体である。また、装置基部51は、複数の階層を有し、各階層に点検補助手段52を配置可能である。具体的に、装置基部51は、板状の下方板部58と、下方板部58からレール部43と反対側に離間して配置される板状の上方板部59と、を備える。上方板部59及び下方板部58にはそれぞれ点検補助手段52が配置される。また、本実施形態で、移動ローラ50は下方板部58に連結される。具体的に、下方板部58には、軸部54を下方板部58に固定するための固定部57と、モータ56を備える回動手段55と、が配置される。
【0044】
点検補助手段52は、移動路3内のエレベータ2の設備について正常であるか否かを確認する点検作業の補助をするための手段である。本実施形態の点検補助手段52は、移動路3内の設備に接して点検補助をする接触補助手段と、移動路3内の設備に接触せずに点検補助をする非接触補助手段と、点検補助によって得られた情報を外部に送信する送信手段60と、を含む。具体的に、点検補助手段52は、接触補助手段として、乗場ドア22の点検補助をする乗場ドア点検補助部61と、移動路3内に配置されるかご4の運行に関する入力を行う入力部12に対して入力操作可能な操作手段62と、を備え、非接触補助手段として、移動路3内を撮影可能な撮影部63と、移動路3内の音を集音可能な集音部64と、移動路3内の臭気を検知する臭気センサ65と、移動路3内の設備の温度を検知可能な温度センサ66と、を備える。
【0045】
乗場ドア点検補助部61は、乗場ドア22に接触して乗場ドア22の点検補助をする。また、乗場ドア点検補助部61は、乗場ドア22の開閉に関する点検補助をする。さらに、乗場ドア点検補助部61は、乗場ドア22のロック機構24の点検補助をする。具体的に、乗場ドア点検補助部61は、乗場ドア22に係合可能な棒状の点検係合部67を有するドア係合部68と、乗場ドア本体23を開閉方向に移動させる際にかかる負荷を測定可能な負荷測定手段69と、を備える。本実施形態で乗場ドア点検補助部61は、下方板部58に固定されている。
【0046】
ドア係合部68は、乗場ドア22に対して係合可能に構成される部位である。本実施形態でドア係合部68は、ロック機構24に係合可能に構成される。具体的に、本実施形態のドア係合部68は、横移動ローラ29に係合可能である。また、ドア係合部68は、乗場ドア22に係合した状態で、装置基部51がドアの開閉方向に移動することで、乗場ドア本体23を開閉方向に移動させることができるように構成されている。ドア係合部68は、装置基部51に固定される箱部70と、箱部70から出退可能な点検係合部67と、を備える。箱部70は、点検係合部67を内部に収容可能に構成され、かつ、点検係合部67を出退させるための出退手段(図示しない)を内部に備える。本実施形態の箱部70は、点検係合部67を収容した状態で、点検係合部67の先端が装置基部51(下方板部58)の外縁よりも内方に位置するように構成される。
【0047】
点検係合部67は、乗場ドア22に対して係合する部位である。また、点検係合部67は、装置本体42がドア対向部45上に位置している時に、乗場ドア22に接離する方向に移動可能に構成される。本実施形態の点検係合部67は、装置本体42がドア対向部45上に位置している時に前後方向に移動可能(出退可能)に構成されている。また、点検係合部67は、進出した状態に時に乗場ドア22に係合可能となり、後退した状態のときには乗場ドア22に対して係合不能となるように構成されている。また、点検係合部67は、点検係合部67及びロック解除部15のうち一方が乗場ドア22に対して係合した際に、他方が係合しない程度にロック解除部15と離間して配置される。
【0048】
負荷測定手段69は、乗場ドア本体23を開閉方向に移動させる際にかかる負荷を測定する。本実施形態の負荷測定手段69は、加速度センサとして構成され、乗場ドア本体23が開閉方向に移動する際の加速度を測定可能である。また、本実施形態では、装置本体42の移動にかかる加速度を測定することで、乗場ドア本体23が開閉方向に移動する際の加速度を測定可能である。
【0049】
操作手段62は、移動路3内に配置されたかご4の運行に関する入力を行う入力部12に対して入力操作可能をする部位である。本実施形態で操作手段62は、かご位置検出スイッチを押下可能に構成される。本実施形態の操作手段62は、いわゆるロボットアームである。また、操作手段62は、上方板部59に連結されている。具体的に、操作手段62は、基端部が装置基部51に連結される柱状の土台部71と、基端部が土台部71の先端部に連結される柱状の第一腕部72と、基端部が第一腕部72の先端に連結される柱状の第二腕部73と、を備える。また、土台部71は、装置基部51に対して土台部71の延伸方向を軸心に回動可能に連結され、第一腕部72は、土台部71に対して土台部71の延伸方向と交差する方向を軸心に回動可能に連結され、第二腕部73は、第一腕部72に対して第一腕部72の延伸方向と交差する方向を中心に回動可能に連結される。さらに、土台部71と装置基部51の連結部分、第一腕部72と土台部71の連結部分、及び、第二腕部73と第一腕部72の連結部分には、それぞれモータ56が設けられる。このような構成により、土台部71は、装置基部51に対して回動するように動作することができ、第一腕部72は、土台部71に対して回動するように動作することができ、第二腕部73は第一腕部72に対して回動するように動作することができる。
【0050】
撮影部63は、移動路3内を撮影可能に構成される。また、撮影部63は、上方板部59に固定される。具体的に、撮影部63は、移動路3内を撮影するカメラ74と、移動路3内に投光する投光部75と、を備える。本実施形態で、投光部75は、カメラ74の周囲に複数配置されている。さらに、本実施形態の撮影部63は、撮影した内容を記録可能に構成されている。なお、撮影部63の構成はこのような構成に限らない。例えば、撮影部63は、暗所を撮影可能な暗視カメラを備えるように構成することもできる。暗視カメラを備える構成を採用した場合には、投光部75を備えない構成とすることもできる。
【0051】
集音部64は、移動路3内の音を集音可能に構成される。具体的に、集音部64は、音波を電気信号に変換可能であるマイクロホンを備え、移動路3内の音を電気信号として集めることができる。また、本実施形態で、集音部64は水平方向に離間した少なくとも2か所に配置されている。さらに、集音部64は、移動路3内で発生する音を記録可能に構成されている。
【0052】
臭気センサ65は、移動路3内の臭気を検出するセンサである。また、臭気センサ65は、少なくとも移動路3内に設けられた設備が焼損する際に生じる臭いを検出可能に構成されている。さらに、臭気センサ65は、エレベータ2が正常に運行している際とは異なる臭いである異臭を検出することができるように構成されている。本実施形態の臭気センサ65は、電気設備が焼けることにより生じる化学物質を異臭として検出可能に構成されている。なお、臭気センサ65はこのような特定の化学物質を検出するような構成でなく、例えば臭気の強さを検知し、臭気が強まった場合に異臭があるとして検出するように構成することもできる。
【0053】
温度センサ66は、移動路3内の温度及び移動路3内に配置された設備の温度を測定可能なセンサである。本実施形態の温度センサ66はいわゆるサーマルカメラである。即ち、本実施形態の温度センサ66は、移動路3内の設備が発する熱(遠赤外線)を検知し、設備の温度を検出するセンサである。
【0054】
以上のようなエレベータの点検補助装置1でエレベータ2の点検補助をする方法について
図8乃至
図10を参照して説明する。まず、乗場ドア点検補助部61の乗場ドア22に対する点検補助について
図8及び
図9を参照して説明する。また、本実施形態で、エレベータの点検補助装置1がいずれかの点検補助を行っている間非接触補助手段は常に動作するように構成される。即ち、乗場ドア22の点検補助をする際や、入力部12に関する点検補助をする際には、各点検補助に対応した接触補助手段及びすべての非接触補助手段が動作する。
【0055】
まず、乗場ドア22の点検補助をする際には、準備段階として、制御部がかご4及び装置本体42を制御して、装置本体42と乗場ドア22が対向する位置にかご4を移動させつつ、装置本体42をドア対向部45に移動させる。本実施形態で制御部は、点検係合部67と横移動ローラ29が対向する位置にかご4を移動させる。点検係合部67と横移動ローラ29が対向した状態で、点検係合部67を進出させる。以上の工程で、乗場ドア22の点検補助の準備が完了し、
図8に示すように点検係合部67と横移動ローラ29が隣接するように配置された状態となる。
【0056】
乗場ドア22の点検補助は、ロック機構24に関する点検補助と、乗場ドア本体23に関する点検補助と、を含む。具体的に、乗場ドア22の点検補助では、ロック機構24のロックを解除してから乗場ドア22を開閉する。
【0057】
図8及び
図9に示すように、ロック機構24に関する点検補助では、点検係合部67が横移動ローラ29を水平方向に移動させ、適切にロックが解除されるか否かについて点検補助する。具体的に、ロック機構24に関する点検補助において、エレベータの点検補助装置1は、点検係合部67が横移動ローラ29に当接した状態で、装置本体42が乗場ドア22の開閉方向(左右方向)に移動して点検係合部67で横移動ローラ29を乗場ドア22の開閉方向(水平方向)に押圧する。本実施形態で点検係合部67は、ロック機構24に関する点検補助において、横移動ローラ29を乗場ドア22の開閉方向で開く方向に押圧する。横移動ローラ29は、点検係合部67の押圧によって、水平方向に移動し、横移動ローラ29の移動に伴って、縦移動ローラ30が下方に移動する。また、縦移動ローラ30の下方への移動に伴って、縦移動ローラ30に連結されたロック棒部28が連動して下方に移動する。そして、ロック棒部28の移動に伴って、かぎ部25の先端部と受け部26の嵌合が解除され、ロックが解除される。また、エレベータの点検補助装置1は、負荷測定手段69で、点検係合部67が横移動ローラ29を押圧するのにかかった負荷を計測する。本実施形態で、負荷測定手段69は、点検係合部67が横移動ローラ29に当接した状態から装置本体42が左右方向に移動する際の加速度を計測することで、点検係合部67が横移動ローラ29を押圧するのにかかった負荷を計測する。
【0058】
乗場ドア本体23に関する点検補助では、
図9に示すロック機構24のロックが解除された状態から点検係合部67で横移動ローラ29をさらに乗場ドア22の開閉方向で開く方向に押圧する。横移動ローラ29が水平方向で移動可能な範囲以上に点検係合部67が乗場ドア22の開閉方向で開く方向に押圧すると、横移動ローラ29に加えられた力が乗場ドア本体23に伝わり、乗場ドア本体23が開く方向に移動する。また、エレベータの点検補助装置1は、負荷測定手段69で、乗場ドア本体23を開くために点検係合部67が横移動ローラ29を押圧するのにかかった負荷を計測する。本実施形態で、負荷測定手段69は、点検係合部67が横移動ローラ29に当接した状態から装置本体42が左右方向に移動する際の加速度を計測することで、点検係合部67が横移動ローラ29を押圧するのにかかった負荷を計測する。
【0059】
乗場ドア22の点検補助において、点検補助に関するデータは送信手段60を介して外部に送信される。具体的に、送信手段60は、負荷測定手段69が計測した負荷、並びに、ロック機構24及び乗場ドア本体23の動作に関して、撮影部63が撮影した映像及び集音部64が集音した音を外部の点検作業者やエレベータ2の管理者等が有する端末に送信する。
【0060】
また、乗場ドア22の点検補助において、負荷測定手段69が計測した負荷は制御部に送信される。制御部は、制御部内に記憶された正常な負荷と負荷測定手段69が計測した負荷とを比較し、比較結果を外部に出力する。よって、制御部が比較結果を出力するので異常の有無を容易に判断できる。
【0061】
次に、
図10を参照して、入力部12に関する点検補助について説明する。入力部12に関する点検補助では、操作手段62で入力部12に対して入力操作をし、入力部12に適切に入力できるか否かについて点検補助をする。
【0062】
入力部12に関する点検補助をする際には、準備段階として、制御部がかご4及び装置本体42を制御して、点検補助対象の入力部12に対して操作手段62が入力操作可能な程度に点検補助対象の入力部12に近い位置にかご4を移動させつつ、装置本体42をガイド対向部46に移動させる。また、入力部12に関する点検補助で、かご4の上方に位置する入力部12の点検補助をする際には、装置本体42はかご4の上方に位置することができ、かご4の下方に位置する入力部12の点検補助をする際には、装置本体42はかご4の下方に位置することができる。装置本体42が点検補助対象の入力部12に対して操作手段62が入力操作可能な程度に点検補助対象の入力部12に近い位置に配置されると準備が完了する。準備完了後、操作手段62は、点検対象の入力部12に入力操作をする。本実施形態の入力部12は、押下可能なスイッチであるため、操作手段62は入力部12を押下する。
【0063】
本実施形態の入力部12に関する点検補助において、制御部は入力部12が適切に入力を受け付けているか否かを判定し、判定結果を点検作業者に報知する。具体的に、制御部は、操作手段62を制御し、操作手段62に入力部12に入力操作をさせる。また、制御部は、操作手段62が入力部12に入力操作をしたときに、入力部12に対して操作手段62が行った入力されているか否かを判定し、入力がされている場合には、入力部12が適切に入力を受け付けていると判定し、入力がされていない場合、又は、操作手段62が行った入力と異なる入力がされている場合には、入力部12が適切に入力を受け付けていないと判定する。また、制御部による判定結果は、送信手段60によって移動路3の外部の点検作業者やエレベータ2の管理者等が有する端末に送信される。
【0064】
また、入力部12に関する点検補助において、非接触補助手段によって得られる点検補助に関するデータは送信手段60を介して外部に送信される。具体的に、送信手段60は、入力部12の動作に関して、撮影部63が撮影した映像及び集音部64が集音した音を外部の点検作業者やエレベータ2の管理者等が有する端末に送信する。
【0065】
次に各非接触補助手段による点検補助について説明する。
【0066】
撮影部63は、投光部75が移動路3の内部に投光した状態で、カメラ74が移動路3の内部を撮影し、撮影した映像を外部に出力する。本実施形態で、撮影部63が撮影した映像は送信手段60を介して外部の点検作業者に対して送信される。よって、出力された映像を移動路3の外部で点検作業者等が確認することができるので、移動路3内部に変形や摩耗などの異常が生じているかどうかに関する点検補助を行うことができる。なお、撮影部63が撮影した映像が制御部に出力されるように構成することもできる。映像が制御部に出力される場合には、制御部が映像を処理して移動路3内部に変形や摩耗などの異常が生じているかどうかを判定する。また、制御部による判定結果は、送信手段60によって移動路3の外部の点検作業者やエレベータ2の管理者等が有する端末に送信される。
【0067】
集音部64は、移動路3内部の音を集音し、外部に集音した音に関する情報を出力する。本実施形態で、集音部64が集音した音に関する情報は外部の点検作業者に対して、点検作業者が集音された音を再生可能なように送信される。よって、出力された音を移動路3の外部で点検作業者などが確認することができるので、移動路3内部で設備が駆動する際に異音が生じているかどうかに関する点検補助を行うことができる。なお、集音部64が集音した音に関する情報が制御部に出力されるように構成することもできる。音に関する情報が制御部に出力される場合には、制御部が音を処理して、集音した音に異音が含まれているかどうかを判定する。また、制御部による判定結果は、送信手段60によって移動路3の外部の点検作業者やエレベータ2の管理者等が有する端末に送信される。
【0068】
臭気センサ65は、移動路3内の臭気を検出し、検出した臭気に関する情報を外部に出力する。本実施形態の臭気センサ65は、移動路3内に設けられた電気設備が焼けることにより生じる化学物質検出した際に、送信手段60を介して外部の点検作業者などに異臭を検知したことを報知する。具体的に臭気部が異臭を検知した場合には点検作業者やエレベータ2の管理者等が有する端末に送信手段60を介して臭気に関する情報を送信する。よって、臭気に関する情報を移動路3の外部で点検作業者などが確認することができるので、移動路3内部で異臭が発生しているかどうかに関する点検補助を行うことができる。なお、臭気センサ65が移動路3内の臭気の強さを検出するように構成されている場合には、検出した臭気の強さを外部に報知するように構成することもできるし、臭気の強さが所定の閾値を超えた場合に外部に異臭を検知したとして報知することもできる。
【0069】
温度センサ66は、移動路3内の温度及び移動路3内に配置された設備の温度を測定し、測定した温度に関する情報を外部に出力する。本実施形態の温度センサ66はサーマルカメラであるので、サーマルカメラが撮影した設備の温度に関する情報を含む画像を、送信手段60を介して外部の点検作業者やエレベータ2の管理者等が有する端末に送信する。よって、温度に関する情報を移動路3の外部で点検作業者などが確認することができるので、移動路3内部の設備が過熱しているどうかに関する点検補助を行うことができる。
【0070】
以上のような構成のエレベータの点検補助装置1によれば、かご4に設けられる装置本体42が経路部41上を移動してエレベータ2の点検補助をすることができるので、作業員が点検のためにエレベータ2のかご4の移動路3内に入る必要性が低減される。
【0071】
また、装置本体42は乗場ドア22を開閉方向に移動可能に構成されるので、乗場ドア22を開閉できるか否かについて点検補助することができる。
【0072】
さらに、装置本体42は、ロック機構24のロックを解除して乗場ドア本体23を開く方向に移動させることができるので、ロック機構24を適切に解除できるか否かについての点検補助をすることができる。
【0073】
また、負荷測定手段69によって、乗場ドア本体23を開閉方向に移動させる際にかかる負荷を測定できるので、乗場ドア本体23を適切に開閉できるか否かに関する点検補助をすることができる。具体的には、負荷の変化によって、乗場ドア本体23を開閉する際の引っ掛かりの有無などをについて点検補助することができる。
【0074】
さらに、移動路3内の入力部12に対して入力操作可能な操作手段62を備えるので、入力部12に入力操作する点検補助を行うことができる。
【0075】
また、乗場ドア本体23は、閉じる方向に付勢され、点検係合部67は乗場5側に向かって出退可能に構成され、点検係合部67は、ロック機構24に係合してロックを解除した状態で、乗場ドア22を開方向に移動させることができるよう構成されるので、点検補助後は点検係合部67を後退させることで付勢によって乗場ドア本体23が閉じるか否かについての点検補助をすることができる。
【0076】
さらに、制御部は、エレベータ2及びエレベータの点検補助装置1の両方を制御するので、点検補助に当たって必要なかご4とエレベータの点検補助装置1の動きにずれが生じづらいため、確実に点検補助をすることができる。
【0077】
また、経路部41は、乗場ドア22の開閉方向に沿って延びるドア対向部45を備えるので、装置本体42が乗場ドア本体23に係合して乗場ドア22の開閉方向に移動することで、乗場ドア本体23を開閉することができる。
【0078】
さらに、経路部41は、かご4の上面から下面に亘って延びるように設けられるので、装置本体42がかご4の上面から下面又は下面から上面に移動することができる。よって、移動路3内のかご4の上方に位置する設備(例えば上端位置検出スイッチ)及び下方の両方に位置する設備(下端位置検出スイッチ)について点検補助をすることができる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について一例を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0080】
例えば、ロック機構24の構成として、縦移動ローラ30及び横移動ローラ29が上下に並んでいる場合について説明したが、このような場合に限らず、例えば、ローラが水平方向に並んでいるように構成することもできるし、ローラに変えて、ロック及びロック解除の選択が可能なレバーとして構成することもできる。
【0081】
また、経路部41はかご4の上面から下面にわたって延びるように構成される場合について説明したが、このような場合に限らず、かご4の上面のみ、側面のみ、又は下面のみに設けられるように構成することもできる。
【0082】
さらに、エレベータの点検補助装置1とエレベータ2が同じ制御部によって制御される場合について説明したが、別々の制御手段によって制御されるように構成することもできる。
【0083】
また、点検係合部67は棒状体である場合について説明したが、このような場合に限らず、乗場ドア22を把持可能なアームとして構成することもできる。アームとして構成した場合には、乗場ドア本体23を揺らすような点検をすることができる。
【0084】
さらに、かご4の側面に延びる経路部41は連絡経路として構成される場合について説明したが、このような場合に限らず、かご4の側面の延びる経路部41上でも点検補助をするように構成することもできる。
【0085】
また、経路部41はかご4の外面に配置されるレールである場合について説明したが、このような場合に限らず、例えば、かご4の外面に形成された溝として構成することもできる。経路部41を溝として構成した場合には、装置本体42は、移動手段として、溝に嵌合して移動できる手段を採用できる。また、経路部41を溝として構成する場合には、例えば戸袋にも経路部41が延びるように構成することもできる。このように構成する場合には、ドアが開く際に装置本体42が戸袋内から退避するように構成すればよい。
【0086】
また、移動路3内に完全に人が立ち入らずに点検する場合について説明したが、移動路3内に人が立ち入って点検することもできる。このような場合であっても、一部の点検についてエレベータの点検補助装置1が補助するので、移動路3内に作業者が立ち入る必要性が低減する。
【0087】
また、負荷測定手段69は加速度センサとして構成される場合について説明したが、このような構成に限らず、乗場ドア22を押圧する際の圧力を測定する圧力センサや、乗場ドア22を押圧する際に点検係合部67に生じるひずみを検出可能なひずみゲージとして構成することもできる。
【符号の説明】
【0088】
1…エレベータの点検補助装置、2…エレベータ、3…移動路、4…かご、5…乗場、6…かご本体、7…かごドア、11…ガイドレール、12…入力部、13…かごドア本体、14…駆動装置、15…ロック解除部、16…連結部、17…駆動本体部、18…ハンガーレール、19…駆動部、20…駆動伝達部、21…係合板部、22…乗場ドア、23…乗場ドア本体、24…ロック機構、25…かぎ部、26…受け部、27…ロックローラ部、28…ロック棒部、29…横移動ローラ、30…縦移動ローラ、31…連結棒部、41…経路部、42…装置本体、43…レール部、44…終端部、45…ドア対向部、46…ガイド対向部、47…台座部、48…レール本体部、49…凹部、50…移動ローラ、51…装置基部、52…点検補助手段、53…ローラ本体、54…軸部、55…回動手段、56…モータ、57…固定部、58…下方板部、59…上方板部、60…送信手段、61…乗場ドア点検補助部、62…操作手段、63…撮影部、64…集音部、65…臭気センサ、66…温度センサ、67…点検係合部、68…ドア係合部、69…負荷測定手段、70…箱部、71…土台部、72…第一腕部、73…第二腕部、74…カメラ、75…投光部
【要約】
【課題】エレベータの点検のために作業員がかごの移動路内に入る必要性を低減することができるエレベータの点検補助装置を提供する。
【解決手段】本発明のエレベータの点検補助装置は、箱形のかごと、内部をかごが移動する移動路と、を備えるエレベータの点検を補助するエレベータの点検補助装置1であって、かごの外面のうち、少なくとも一面に設けられる経路部と、経路部上を移動し、エレベータの点検補助をする装置本体42と、を備える。
【選択図】
図5