(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】レーザダイオード
(51)【国際特許分類】
H01S 5/10 20210101AFI20221201BHJP
H01S 5/323 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
H01S5/10
H01S5/323 610
(21)【出願番号】P 2018096555
(22)【出願日】2018-05-18
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】599002043
【氏名又は名称】学校法人 名城大学
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恒輔
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 素顕
(72)【発明者】
【氏名】岩山 章
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 雄太
(72)【発明者】
【氏名】池田 隼也
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-174229(JP,A)
【文献】特開2016-015418(JP,A)
【文献】特開昭58-030184(JP,A)
【文献】特開2002-335052(JP,A)
【文献】特開2007-149794(JP,A)
【文献】特開2010-016261(JP,A)
【文献】特開平10-012959(JP,A)
【文献】特開2006-066869(JP,A)
【文献】特開2009-158896(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0063643(US,A1)
【文献】米国特許第04821276(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
H01L 33/00 - 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上方に配置された発光層と、
前記発光層を挟んで前記基板の上方に配置されたガイド層と、
前記基板と前記ガイド層との間に形成された下部クラッド層と、
前記ガイド層の上に形成された上部クラッド層と
を備え、
前記基板は、前記下部クラッド層、前記ガイド層及び前記上部クラッド層が積層される積層面を有し、
前記ガイド層は、前記発光層で発光された光が出射される共振方向の軸と交差する端面である出射側端面を有し、
前記出射側端面と前記積層面との成す角度である第一角度は、0°より大きく90°より小さ
く、
前記上部クラッド層は、前記出射側端面の上方に配置されて前記積層面との成す角度である第二角度が前記第一角度よりも小さく形成された側端面を有する
レーザダイオード。
【請求項2】
基板と、
前記基板の上方に配置された発光層と、
前記発光層を挟んで前記基板の上方に配置されたガイド層と、
前記基板と前記ガイド層との間に形成された下部クラッド層と、
前記ガイド層の上に形成された上部クラッド層と
を備え、
前記基板は、前記下部クラッド層、前記ガイド層及び前記上部クラッド層が積層される積層面を有し、
前記ガイド層は、前記発光層で発光された光が出射される共振方向の軸と交差する端面である出射側端面を有し、
前記出射側端面と前記積層面との成す角度である第一角度は、0°より大きく90°より小さく、
前記下部クラッド層は、前記出射側端面の下方に配置されて前記積層面との成す角度である第三角度が前記第一角度よりも小さい側端面を有す
る
レーザダイオード。
【請求項3】
前記下部クラッド層は、前記出射側端面の下方に配置されて前記積層面との成す角度である第三角度が前記第一角度よりも小さい側端面を有する
請求項
1に記載のレーザダイオード。
【請求項4】
前記積層面は、前記発光層と接触する前記ガイド層の面よりも大きい面積を有する
請求項1から3までのいずれか一項に記載のレーザダイオード。
【請求項5】
前記下部クラッド層の側端面から基板の飛び出る長さは、5μmよりも長く1000μ
mよりも短い
請求項1から4までのいずれか一項に記載のレーザダイオード。
【請求項6】
前記基板の厚さは、50μmより長く10000μmよりも短い
請求項1から5までのいずれか一項に記載のレーザダイオード。
【請求項7】
前記基板は、窒化物半導体以外の材料を母材としている
請求項1から6までのいずれか一項に記載のレーザダイオード。
【請求項8】
基板と、
前記基板の上方に配置された発光層と、
前記発光層を挟んで前記基板の上方に配置されたガイド層と、
前記基板と前記ガイド層との間に形成された下部クラッド層と、
前記ガイド層の上に形成された上部クラッド層と
を備え、
前記基板は、前記下部クラッド層、前記ガイド層及び前記上部クラッド層が積層される積層面を有し、
前記ガイド層は、前記発光層で発光された光が出射される共振方向の軸と交差する端面である出射側端面を有し、
前記出射側端面と前記積層面との成す角度である第一角度は、0°より大きく90°より小さく、
前記基板は、窒化物半導体で形成されており、
前記基板の表面の一部又は全部には、厚さが0.5nm以上100nm以下の酸化物が形成されてい
る
レーザダイオード。
【請求項9】
前記基板は、窒化物半導体で形成されており、
前記基板の表面の一部又は全部には、厚さが0.5nm以上100nm以下の酸化物が形成されている
請求項1から6までのいずれか一項に記載のレーザダイオード。
【請求項10】
前記基板、前記下部クラッド層、前記発光層、前記ガイド層及び前記上部クラッド層を覆いガラスで形成されたパッケージを備え、
前記出射側端面と前記パッケージの内側面との成す角度である第四角度は、0°よりも大きく5°より小さい
請求項1から
9までのいずれか一項に記載のレーザダイオード。
【請求項11】
前記発光層から前記パッケージの前記内側面までの距離は、1mm以上10mm以下である
請求項
10に記載のレーザダイオード。
【請求項12】
基板と、
前記基板の上方に配置された発光層と、
前記発光層を挟んで前記基板の上方に配置されたガイド層と、
前記基板と前記ガイド層との間に形成された下部クラッド層と、
前記ガイド層の上に形成された上部クラッド層と
を備え、
前記基板は、前記下部クラッド層、前記ガイド層及び前記上部クラッド層が積層される積層面を有し、
前記ガイド層は、前記発光層で発光された光が出射される共振方向の軸と交差する端面である出射側端面を有し、
前記出射側端面と前記積層面との成す角度である第一角度は、0°より大きく90°より小さく、
前記下部クラッド層及び前記上部クラッド層は、AlGaNで形成さ
れ、側端面の一部又は全部に厚さが0.5nm以上100nm以下のAlGaNOを有す
る
レーザダイオード。
【請求項13】
前記下部クラッド層及び前記上部クラッド層は、AlGaNで形成さ
れ、側端面の一部又は全部に厚さが0.5nm以上100nm以下のAlGaNOを有する
請求項1から
11までのいずれか一項に記載のレーザダイオード。
【請求項14】
基板と、
前記基板の上方に配置された発光層と、
前記発光層を挟んで前記基板の上方に配置されたガイド層と、
前記基板と前記ガイド層との間に形成された下部クラッド層と、
前記ガイド層の上に形成された上部クラッド層と
を備え、
前記基板は、前記下部クラッド層、前記ガイド層及び前記上部クラッド層が積層される積層面を有し、
前記ガイド層は、前記発光層で発光された光が出射される共振方向の軸と交差する端面である出射側端面を有し、
前記出射側端面と前記積層面との成す角度である第一角度は、0°より大きく90°より小さく、
前記発光層は、Al
x1Ga
y1Nで形成されており、
前記上部クラッド層は、Al
x2Ga
y2N層と、前記Al
x2Ga
y2N層の上層に設けられたAl
x3Ga
y3N層とを含み、
前記発光層、前記Al
x2Ga
y2N層及び前記Al
x3Ga
y3N層の組成は、x1+y1=1,x2+y2=1,x3+y3=1,x2<x1及びx2<x3の関係を満た
す
レーザダイオード。
【請求項15】
前記発光層は、Al
x1Ga
y1Nで形成されており、
前記上部クラッド層は、Al
x2Ga
y2N層と、前記Al
x2Ga
y2N層の上層に設けられたAl
x3Ga
y3N層とを含み、
前記発光層、前記Al
x2Ga
y2N層及び前記Al
x3Ga
y3N層の組成は、x1+y1=1,x2+y2=1,x3+y3=1,x2<x1及びx2<x3の関係を満たす
請求項1から
13までのいずれか一項に記載のレーザダイオード。
【請求項16】
前記上部クラッド層の上方の一部又は全部に絶縁保護膜を備え、
前記絶縁保護膜の少なくとも一部は、前記上部クラッド層よりも前記基板の側端面側に飛び出ている
請求項1から
15までのいずれか一項に記載のレーザダイオード。
【請求項17】
基板と、
前記基板の上方に配置された発光層と、
前記発光層を挟んで前記基板の上方に配置されたガイド層と、
前記基板と前記ガイド層との間に形成された下部クラッド層と、
前記ガイド層の上に形成された上部クラッド層と
を備え、
前記基板は、前記下部クラッド層、前記ガイド層及び前記上部クラッド層が積層される積層面を有し、
前記ガイド層は、前記発光層で発光された光が出射される共振方向の軸と交差する端面である出射側端面を有し、
前記出射側端面と前記積層面との成す角度である第一角度は、0°より大きく90°より小さく、
前記発光層は、発光波長が360nm以下の光を発光す
る
レーザダイオード。
【請求項18】
前記発光層は、発光波長が360nm以下の光を発光する
請求項1から
16までのいずれか一項に記載のレーザダイオード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体のレーザダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、結晶面を利用した劈開方法を用いて基板から半導体層まで水平垂直に切断した構造のレーザダイオードが開示されている。また、特許文献2及び3には、ドライエッチングとウェットエッチングを組み合わせたエッチング方法により水平垂直な共振器面を有する構造のレーザダイオードが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭51-97390号公報
【文献】特開平10-41585号公報
【文献】特開2008-108844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1から3に開示されたレーザダイオードの構造では、パッケージ化した後にレーザダイオードの出力が瞬間的に高くなる光ノイズが発生する場合がある。
【0005】
本発明の目的は、光出力ノイズを低減させることができるレーザダイオードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によるレーザダイオードは、基板と、前記基板の上方に配置された発光層と、前記発光層を挟んで前記基板の上方に配置されたガイド層と、前記基板と前記ガイド層との間に形成された下部クラッド層と、前記ガイド層の上に形成された上部クラッド層とを備え、前記基板は、前記下部クラッド層、前記ガイド層及び前記上部クラッド層が積層される積層面を有し、前記ガイド層は、前記発光層で発光された光が出射される共振方向の軸と交差する端面である出射側端面を有し、前記出射側端面と前記積層面との成す角度である第一角度は、0°より大きく90°より小さく、前記上部クラッド層は、前記出射側端面の上方に配置されて前記積層面との成す角度である第二角度が前記第一角度よりも小さく形成された側端面を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、光出力ノイズを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態によるレーザダイオード1の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるレーザダイオード1の概略構成を示す要部側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるレーザダイオード1の効果を説明する図である。
【
図4】本発明の一実施形態の変形例によるレーザダイオード1の概略構成を示す要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態によるレーザダイオードについて
図1から
図4を用いて説明する。まず、本実施形態によるレーザダイオード1の概略構成について
図1を用いて説明する。
図1では、レーザダイオード1が模式的に図示されている。
【0010】
図1に示すように、レーザダイオード1は、基板11と、基板11の上方に配置された発光層12と、発光層12を挟んで基板11の上方に配置されたガイド層13と、基板11とガイド層13との間に形成された下部クラッド層14と、ガイド層13の上に形成された上部クラッド層15とを備えている。図示は省略するが、レーザダイオード1は、基板11、下部クラッド層14、発光層12、ガイド層13及び上部クラッド層15を覆いガラスで形成された窓を有するパッケージを備えている。
【0011】
下部クラッド層14、ガイド層13及び上部クラッド層15は、この順に基板11上に積層されている。ガイド層13は、上下方向から発光層12を挟んで配置されている。発光層12は、ガイド層13の層厚方向のほぼ中央に配置されている。なお、発光層12は、下部クラッド層14及び上部クラッド層15のいずれか一方の側に片寄って配置されていてもよい。下部クラッド層14、ガイド層13、発光層12及び上部クラッド層15によって積層体10が構成されている。積層体10は、基板11の周縁側から中央側に向かって傾斜するメサ形状を有している。
【0012】
基板11は、薄板の四角形状を有している。基板11は、下部クラッド層14、ガイド層13及び上部クラッド層15が積層される積層面11aを有している。
【0013】
下部クラッド層14は、n型半導体で形成され、基板11の積層面11a上に積層されている。下部クラッド層14は、基板11よりも一回り小さい大きさに形成されている。これにより、下部クラッド層14の周囲には、積層面11aが露出されている。下部クラッド層14は、ガイド層13が積層される第一領域141と、積層面11aからの高さが第一領域141よりも低い第二領域142とを有している。下部クラッド層14は、第一領域141及び第二領域142の境界に段差を有している。第二領域142上には、n型電極161が形成されている。n型電極161は、発光層12に注入される電流の負極側の電極となる。下部クラッド層14には、n型電極161を介して電子が供給される。
【0014】
ガイド層13は、下部クラッド層14の第一領域141上に積層されている。ガイド層13は、光の吸収を抑制するため、ドーパントを添加しないアンドープ層である。ガイド層13は、発光層12で発光された光が出射される側に出射側端面13aを有している。詳細は後述するが、出射側端面13aと積層面11aとの成す角度である第一角度は、0°より大きく90°より小さくなっている。ガイド層13の出射側端面13aはハーフミラーを構成し、出射側端面13aに対向するガイド層13の対向面はミラーを構成する。ガイド層13は、発光層12で発光した光を閉じ込めて光増幅する共振器としての機能を発揮する。
【0015】
上部クラッド層15は、p型半導体で形成され、ガイド層13上に積層されている。上部クラッド層15は、リッジ構造を有している。すなわち、上部クラッド層15は、ガイド層13に全体が接触する平板部151と、平板部151のほぼ中央で上方に突出して形成された土手状の突起部152とを有している。突起部152は、平板部151の中央ではなくn型電極161が配置されている側に片寄らせて設けられてもよい。突起部152がn型電極161に近付くことによって、積層体10中を流れる電流経路が短くなるので、積層体10中に形成される電流経路の抵抗値を下げることができる。突起部152上には、p型電極162が形成されている。p型電極162は、発光層12に注入される電流の正極側の電極となる。上部クラッド層15には、p型電極162を介して正孔が供給される。
【0016】
上部クラッド層15がリッジ構造を有すると、レーザ発振に必要な反転分布を形成するための閾値電流を下げることができる。レーザダイオード1におけるリッジ構造は、
図1に示すように上部クラッド層15の一部を突出させた突起部とこの突起部の上に配置された電極とで構成されてもよい。また、レーザダイオード1におけるリッジ構造は、発光層12の上層の領域のガイド層13上の一部に
図1に示す突起部152のような土手状の上部クラッド層と、この上部クラッド層の上に配置された電極とで構成されてもよい。レーザダイオード1は、このようなリッジ構造を有することにより、上部クラッド層15における電流の経路を電極直下の領域に制限できる。これにより、上部クラッド層15中での水平方向の電流拡散が抑制されるので、発光層12内に流れる電流を上部クラッド層15の突起部分(本実施形態では突起部152)直下に集中させることができる。その結果、この突起部分の領域において効率よく反転分布状態を形成することができ、レーザ発振の閾値を低く保つことが可能になる。
【0017】
発光層12に反転分布状態の領域が形成された後に、上部クラッド層15に注入されたホールと下部クラッド層14に注入された電子が発光層12で再結合することにより、発光層12で光が生じる。ガイド層13より上部クラッド層15及び下部クラッド層14の屈折率が大きい。このため、発光層12で発光した光は、ガイド層13と接する上部クラッド層15及び下部クラッド層14の表面で反射されるので、ガイド層13に閉じこめられる。ガイド層13の出射側端面13aと出射側端面13aに対向する側端面がミラー(反射鏡)としての機能を発揮するので、発光層12で発光した光は、ガイド層13内で増幅されながら往復して誘導放出を生じてレーザ発振が生じる。ガイド層13内で増幅された光がガイド層13内での内部ロスより大きくなると、外部に光が出射される。
【0018】
次に、レーザダイオード1の基板11と積層体10との相対関係やレーザダイオード1の効果について
図1を参照しつつ
図2及び
図3を用いて説明する。
【0019】
図2に示すように、ガイド層13の出射側端面13aと基板11の積層面11aとの成す角度である第一角度θ1は、0°より大きく90°より小さい。ここで、出射側端面13aとは、レーザダイオード1のレーザ出射面における共振器面のうち、ガイド層13の側面に相当する部分をいう。積層面11aとは、基板11がガイド層13などで構成される積層体10と接触する平面をいう。第一角度θ1は、出射側端面13aと積層面11aとが交わる際に成す角度である。第一角度θ1は、出射側端面13a及び積層面11aが直接接触していなくても出射側端面13aを積層面11aに延長させた仮想平面が積層面11aと交わる箇所で形成される角度も含む。
【0020】
基板11と垂直な面でレーザダイオード1を研磨及び集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)加工し、断面を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)観察あるいは透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)観察することによって第一角度θ1を確認することが可能である。高画質な画像を広範囲かつ簡易に得られるため,SEMを用いて観察する。第一角度θ1の値は、レーザダイオード1の出力を高く保つ目的から、70°より大きく90°より小さく(70°<θ1<90°)てもよい。また、第一角度θ1の値は、80°より大きく90°より大きくてもよい。
【0021】
ところで、一般的にレーザダイオードのチップは、パッケージするときにパッケージ土台に垂直に設置されるため、パッケージのガラス面とレーザダイオードの共振器面とが平行になる。レーザダイオードが出射する光は、指向性が高いため、パッケージのガラス面で一部が反射されてレーザダイオードの発光層に照射される場合がある。この場合、発光層で光励起された状態が引き起こされて光ノイズが生じる。レーザダイオードは、安定した出力が求められるため、通常は印加電流に対して既定の出力が放射されることが望ましいが、発光層が光励起された状態で電流を印加しても、想定以上の発光が得られてしまう。
【0022】
これに対し、第一角度θ1が0°より大きく90°より小さくなるように基板11の積層面11aに対してガイド層13の出射側端面13aが形成されていると、
図3に示すように、レーザダイオード1から出射される放射光Lが出射側端面13aに対面するパッケージ17の内側面17aに入射する入射角は、第一角度θ1とほぼ等しくなる。本実施形態では、内側面17aは、例えばパッケージ17に設けられた窓171の内表面である。パッケージ17は、金や鉛が母体となる支持体が主構造となり、出射側端面13aから出射される放射光Lが入射する領域にガラスで形成された窓171を有している。このため、レーザダイオード1から出射される放射光Lは、パッケージ17の内側面17a(すなわち窓171の内表面)に垂直に入射しなくなる。これにより、レーザダイオード1は、窓171に入射する放射光Lのうちのほとんどを透過光Tとして外部に出射するとともに、放射光Lのうちの一部がパッケージ17の内側面17aで反射されて戻り光Rとして発光層12に再入射することを抑制できる。これにより、レーザダイオード1は、活性層(発光層12)の光励起を抑制することができ、出力ノイズを低減することができる。
【0023】
図2に戻って、上部クラッド層15は、出射側端面13aの上方に配置されて積層面11aとの成す角度である第二角度θ2が第一角度θ1よりも小さく形成された側端面15aを有している。上部クラッド層15の側端面15aは、ガイド層13より上層の端面である。このように、本実施形態では、ガイド層13より上層の端面は、上部クラッド層15の側端面15aである。しかしながら、ガイド層13より上層の端面は、ガイド層13より上層に積層されている半導体層であれば制限されず、具体的には、上部クラッド層15の側端面15aの他に、例えばガイド層13の上層に電子ブロック層や複数のクラッド層を積層している場合には、このうちの任意の一層であってもよい。
【0024】
第二角度θ2は、ガイド層13より上層の端面(本実施形態では上部クラッド層15の側端面15a)と基板11の積層面11aとが交わる際に成す角度である。第二角度θ2は、ガイド層13より上層の端面が基板11の積層面11aに直接接触していなくても、ガイド層13より上層の端面を積層面11aに延長させた仮想面が積層面11aに交わる箇所で形成される角度も含む。第一角度θ1及び第二角度θ2は、共振器面の作りやすさから、第一角度θ1から第二角度θ2を減算した値が0°より大きく60°より小さい(0°<(θ1-θ2)<60°)という関係を有していてもよい。さらに、積層体10の端面上に誘電体多層膜や金属反射膜等の反射材を成膜しやすい観点から、第一角度θ1及び第二角度θ2は、第一角度θ1から第二角度θ2を減算した値が0°より大きく20°より小さい(0°<(θ1-θ2)<20°)、あるいは当該減算した値が0°より大きく10°より小さい(0°<(θ1-θ2)<10°)という関係を有していてもよい。
【0025】
第一角度θ1及び第二角度θ2が上述の関係を有するように上部クラッド層15の側端面15aが形成されることによって、戻り光R(
図3参照)が上部クラッド層15に照射されたとしても、レーザダイオード1は、戻り光Rを上部クラッド層15の内部へ再入射させずに側端面15aで反射する光量を増加させることができる。これにより、レーザダイオード1は、上部クラッド層15内部での光励起を抑制することができるため光出力ノイズを低減することができる。
【0026】
図2に示すように、下部クラッド層14は、出射側端面13aの下方に配置されて積層面11aとの成す角度である第三角度θ3が第一角度θ1よりも小さい側端面14aを有している。下部クラッド層14の側端面14aは、ガイド層13より下層の端面である。このように、本実施形態では、ガイド層13より下層の端面は、下部クラッド層14の側端面14aである。しかしながら、ガイド層13より下層の端面は、ガイド層13より下層に積層されている半導体層であれば制限されず、具体的には、下部クラッド層14の側端面14aの他に、例えばガイド層13の下層に複数のクラッド層を積層している場合には、この複数のクラッド層のうちの任意の一層であってもよい。
【0027】
第三角度θ3は、ガイド層13より下層の端面(本実施形態では下部クラッド層14の側端面14a)と基板11の積層面11aとが交わる際に成す角度である。第三角度θ3は、ガイド層13より下層の端面が基板11の積層面11aに直接接触していなくても、ガイド層13より下層の端面を積層面11aに延長させた仮想面が積層面11aに交わる箇所で形成される角度も含む。第一角度θ1及び第三角度θ3は、共振器面の作りやすさから、第一角度θ1から第三角度θ3を減算した値が0°より大きく60°より小さい(0°<(θ1-θ3)<60°)という関係を有していてもよい。さらに、積層体10の端面上に誘電体多層膜や金属反射膜等の反射材を成膜しやすい観点から、第一角度θ1及び第三角度θ3は、第一角度θ1から第三角度θ3を減算した値が0°より大きく20°より小さい(0°<(θ1-θ3)<20°)、あるいは当該減算した値が0より大きく10°より小さい(0<(θ1-θ3)<10°)という関係を有していてもよい。さらに、第三角度θ3は第二角度θ2よりも大きく(θ2<θ3)てもよい。
【0028】
図1に示すように、基板11の積層面11aは、発光層12と接触するガイド層13の接触面よりも大きい面積を有している。ここで、積層面11aの面積は、積層面11aの上層の半導体層(本実施形態では下部クラッド層14)が接触している接触面の面積と、当該接触面と同一面内で半導体層(本実施形態では下部クラッド層14)と接触せずに露出している露出面の面積とを合わせた面積である。積層面11a及びガイド層13の接触面の面積は、具体的には基板11の垂直方向からレーザダイオード1を観察した際に見える、基板11の面積と積層体10の面積とを比較することで確認可能である。実際には、積層体10の面積はガイド層13の接触面とは一致しないが、上記手法で観察される積層体10の面積はガイド層13の接触面の面積より必ず大きい。このため、上記手法で観察されて基板11の面積が積層体10の面積より大きい場合、基板11の積層面11aの面積がガイド層13の接触面の面積より必ず大きいと結論づけることが可能である。
【0029】
基板11の積層面11aが、発光層12と接触するガイド層13の接触面よりも大きい面積を有することにより、レーザダイオード1をウェハから分割時、あるいはその後の素子抽出時に本発明の効果を阻害するパーティクルがガイド層13の出射側端面13aである共振器端面に付着することを抑制することができる。当該共振器端面にパーティクルが付着することを抑制できるのは、ガイド層13の出射側端面13aより基板11が飛び出しているため、共振器端面が基板11の影になり、ガイド層13の出射側端面13aへのパーティクル付着が抑制されるからである。
【0030】
本実施形態における基板11は、基板単体の構造を有していてもよく、基板上に半導体が積層された積層構造を有していても良い。基板11における積層構造として例えば、サファイア基板上にAlN薄膜が積層された構造、サファイア基板上にAlN薄膜及びn型AlGaN薄膜が積層された構造などが挙げられる。
【0031】
図2に示すように、下部クラッド層14の側端面14aから基板11の飛び出る長さdは、5μmよりも長く1000μmよりも短く(5μm<d<1000μm)てもよい。基板11の飛び出る長さdは、基板11と下部クラッド層14とが接触する面(すなわち積層面11a)における、下部クラッド層14の側端面14aから基板11の側端面11bまでの距離である。基板11の飛び出る長さdは、基板11の面積とガイド層13の面積とを比較する手法と同様の手法で確認することが可能である。
【0032】
下部クラッド層14の側端面14aから基板11の飛び出る長さdが5μmよりも長く1000μmよりも短いという範囲を満たすことで、レーザダイオード1をウェハから分割時、あるいはその後の素子抽出時に本発明の効果を阻害するパーティクルがガイド層13の出射側端面13aである共振器端面に付着することを抑制することができる。当該共振器端面にパーティクルが付着することを抑制できるのは、下部クラッド層14の側端面14aから基板11が飛び出ているので共振器端面は、基板11の影になり、ガイド層13の出射側端面13aへのパーティクル付着が抑制されるからである。基板11の飛び出る長さdは、5μmより長く400μmよりも短く(5μm<d<400μm)てもよく、5μmより長く100μmよりも短く(5μm<d<100μm)てもよい。これにより、1つのウェハからの積層体10の取り数を増やすことができる。
【0033】
図2に示すように、基板11の厚さtは、50μmより長く10000μmよりも短く(50μm<t<10000μm)てもよい。基板11の厚さtは、基板11の飛び出る長さdと同様の手法で確認することが可能である。また、基板11の厚さtは、レーザダイオード1の側面から光学顕微鏡やSEM観察によって測長することもできる。なお、より正確な測長には、SEM観察が適しており,100μmを超えるような厚みを測定する場合には光学顕微鏡が適している。
【0034】
基板11の厚さtが上述の範囲を満たすことで、レーザダイオード1をウェハから挟み込んで抽出する時に素子の機械的強度を保ち、組み立て中にウェハが割れることを抑制することができる。基板11の厚さtは、50μmよりも長く500μmよりも短く(50μm<t<500μm)てもよく、50μmよりも長く200μmよりも短く(50μm<t<200μm)てもよい。また、基板11の厚さtに対する基板11の飛び出る長さdの比率が、0.01よりも大きく2よりも小さい(0.01<d/t<2)と、レーザダイオード1の機械的強度を保持しやすくなる。これにより、素子の強度を保持しながらレーザダイオード1の熱を効率良く基板11を介して外部のパッケージ17側へ逃がすことが可能となる。
【0035】
基板11は、窒化物半導体以外の材料を母材として用いることができる。基板11が窒化物半導体以外の材料を母体とすることで、積層体10を作るためにドライエッチングを用いる場合、半導体で形成される積層体10と基板11との材料差によって生まれるエッチングレート差を利用して、ドライエッチングを精度よく基板11の積層面11aで止めることができる。基板11の母材として、具体的には、サファイア、炭化ケイ素、ケイ素、酸化ガリウム及び酸化亜鉛などを用いることができる。これにより、積層体10の作製再現性が良くなる。基板11の形成材料は、エネルギー分散型X線分析 (Energy dispersive X-ray spectrometry:EDX)やオージェ電子分光法(Auger Electron Spectroscopy:AES)等の手法で材料分析が可能である。
【0036】
図2に示すように、ガイド層13の出射側端面13aとパッケージ17の内側面17aとの成す角度である第四角度θ4は、0°よりも大きく5°よりも小さく(0°<θ4<5°)てもよい。なお、
図2では、理解を容易にするため、出射側端面13aをパッケージ17の内側面17a側に平行移動させて第四角度θ4が図示されている。また、
図2では、基板11及び積層体10の全体を覆うパッケージ17の一部が図示されている。第四角度θ4は、積層体10とパッケージ17を両方樹脂封止して固定した状態でレーザダイオード1の断面SEM像を取り、出射側端面13aとパッケージ17の内側面17aを比較することで第四角度θ4を測定することができる。
【0037】
第四角度θ4が上述の範囲に入ることで、レーザダイオード1から出射された放射光Lがパッケージ17の内側面17aで再反射されることを抑制し、高出力のレーザダイオードパッケージ品を作製することが可能である。
【0038】
図2に示すように、発光層12からパッケージ17の内側面17aまでの距離Mは、1mm以上100mm以下であってもよく、好ましくは1mm以上10mm以下である。距離Mは、基板11の飛び出る長さdと同じ方法で測長可能である。
【0039】
発光層12からパッケージ17の内側面17aまでの距離Mが上述の範囲に含まれることで、パッケージ17の内側面17aからの戻り光Rがレーザダイオード1の活性層(発光層12)に再入射する確率をさらに下げることが可能である。
【0040】
次に、本実施形態の変形例によるレーザダイオード1について
図4を用いて説明する。
【0041】
基板11は、窒化物半導体で形成されていてもよい。この場合、基板11の表面(すなわち積層面11a)の一部又は全部に厚さが0.5nm以上100nm以下の酸化物111が形成されていてもよい。基板11が窒化物半導体のみで構成される場合は、積層体10を形成するためにドライエッチング後のウェットエッチング時に基板11の表面が追加エッチングされる可能性がある。そこで、ドライエッチング後の基板11の表面をO
2プラズマ処理、酸化剤入り薬液での処理、あるいは高温で熱処理することにより、
図4に示すように、当該表面に酸化物111を形成する。これにより、ウェットエッチング時に基板11が表面からエッチング除去されることを防ぐことができる。表面の酸化物111は、基板11の断面のTEM-EDX解析を行うことで測長、組成分析が可能である。基板11を形成するための窒化物半導体として、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化ホウ素及びこれらを2種以上含む混晶を挙げることができる。
【0042】
図4に示すように、下部クラッド層14及び上部クラッド層15は、AlGaNで形成されている場合には、一部又は全部に厚さが0.5nm以上100nm以下のAlGaNO膜143,153を有していてもよい。より具体的には、下部クラッド層14は、側端面14a上の一部又は全部にAlGaNO膜143を有していてもよい。また、上部クラッド層15は、側端面15a上の一部又は全部にAlGaNO膜153を有していてもよい。AlGaNO膜143,153は、積層体10の断面のTEMとEDXを取ることで測長及び材料分析が可能である。下部クラッド層14の側端面14aは、AlGaNO膜143が露出していてもよく、AlGaNO膜143上にさらに誘電体多層膜等の絶縁保護層が被覆されていても良い。同様に、上部クラッド層15の側端面15aは、AlGaNO膜153が露出していてもよく、AlGaNO膜153上にさらに誘電体多層膜等の絶縁保護層が被覆されていても良い。これにより、レーザダイオード1の使用中に下部クラッド層14の側端面14aや上部クラッド層15の側端面15aが腐食することが抑制され、側端面14aの第三角度θ3や側端面15aの第二角度θ2が変化することを抑制することが可能になる。なお、AlGaNO膜とは膜の主構成元素がAl、Ga、N、Oであることを示し、例えばAl
0.5Ga
0.7N
0.95O
0.05などを挙げることができる。AlGaNO膜中には微量不純物としてC、H、F、Cl、Br、Si,Mg等を含んでいてもよい。また、下部クラッド層14の端面、上部クラッド層15の端面、ガイド層13の端面の組成比が異なっていても良く、下部クラッド層14の端面、上部クラッド層15の端面、ガイド層13の端面におけるAlGaNOの組成比率が不均一であっても良い。
【0043】
図4に示すように、ガイド層13は、出射側端面13a上に形成された誘電体多層膜131を有していてもよい。誘電体多層膜131は、発光層12を含んで出射側端面13a上に形成されてハーフミラーとしての機能を発揮する。さらに、誘電体多層膜131は、絶縁保護層としての機能も発揮する。これにより、レーザダイオード1の使用中に出射側端面13aが腐食することが抑制され、出射側端面13aの第一角度θ1が変化することを抑制することが可能になる。
【0044】
図4に示すように、発光層12は、Al
x1Ga
y1Nで形成されており、上部クラッド層15は、Al
x2Ga
y2N層15bと、Al
x2Ga
y2N層15bの上層にAl
x3Ga
y3N層15cとを含んでいる。発光層12、Al
x2Ga
y2N層15b及びAl
x3Ga
y3N層15cの組成は、x1+y1=1、x2+y2=1、x3+y3=1、x2<x1及びx2<x3の関係を満たしていてもよい。これにより、Al
x2Ga
y2N層15bがストップ層となり、Al
x2Ga
y2N層15bより下部領域の上部クラッド層15以下の層が、積層体10の形成時のウェットエッチングにおいてサイドエッチングされることを抑制することが可能である。ウェットエッチングは、上部クラッド層15の側面からだけではなく、上部クラッド層15の上面からも進行するが、例えば、KOH水溶液などのアルカリ性の薬液でエッチングをする場合、Al
x3Ga
y3N層15cよりもエッチングレートの遅いAl
x2Ga
y2N層15bが上部クラッド層15の上面からのエッチングを抑制するためサイドエッチングが抑制される。上部クラッド層15の積層構造は、断面TEMとEDXを取ることで薄膜構造を特定可能である。Al
x2Ga
y2N層15bの厚さは、0nmより大きく200nmより小さくてもよい。
【0045】
図4に示すように、レーザダイオード1は、上部クラッド層15の上方の一部又は全部に絶縁保護膜18を備えていてもよい。絶縁保護膜18の少なくとも一部は、上部クラッド層15よりも基板11の側端面11b側に飛び出ている。レーザダイオード1が絶縁保護膜18を備える構造は、断面のSEMとEDXを行うことで特定が可能である。レーザダイオード1が絶縁保護膜18を備えることで、誘電体多層膜131やAlGaNO膜143,153を積層する際の「引っかかり」となる。つまり、絶縁保護膜18は、誘電体多層膜131やAlGaNO膜143,153を積層する際にアンカー効果を奏する。これにより、誘電体多層膜131とガイド層13の出射側端面13aとの密着性、AlGaNO膜143と下部クラッド層14の側端面14aとの密着性及びAlGaNO膜153と上部クラッド層15との側端面15aとの密着性をそれぞれ向上させることができる。絶縁保護膜18は、SiO
2で形成されていてよく、その他にAl
2O
3、SiN、SnO
2、ZrO、HfO
2等で形成されていてもよい。
【0046】
発光層12は、発光波長が360nm以下の光を発光するように形成されている。本実施形態によるレーザダイオード1は、特に屈折率が大きく、光が屈折しやすい波長360nm以下の紫外線発光素子に効果がある。
【0047】
(製法)
次に、本実施形態によるレーザダイオード1の製造方法について説明する。レーザダイオード1を形成するために、厚さが50μmより長く10000μmより短い範囲内の所定厚さのウェハを準備する。レーザダイオード1は、このウェハ上に、最終的に下部クラッド層14となる半導体層、最終的に発光層12よりも下方の領域のガイド層13となる半導体層、最終的に発光層12となる半導体層、最終的に発光層12よりも上方の領域のガイド層13となる半導体層、及び最終的に上部クラッド層15となる半導体層を積層した半導体積層物を形成する。その後、この半導体積層物の一部を所定形状にドライエッチング及びウェットエッチングすることにより、ウェハ上に複数の積層体10を形成する。詳細は後述するが、本実施形態では、積層体10、すなわちガイド層13、上部クラッド層15及び下部クラッド層14を形成する際にポジレジストが用いられる。その後、ウェハを所定位置で切断して積層体10を個片化し、基板11及び積層体10をパッケージで覆って固定することによりパッケージ化されたレーザダイオード1が完成する。
【0048】
ガイド層13の出射側端面13aの形成方法について説明する。
レジストをパターニングする際に、フォトマスクを用いてコンタクト露光時にレジストとフォトマスクの間に隙間(例えば3μm又は5μm)を設けて光を漏らす。これにより、レジストのパターン端面が傾斜されたレジストパターンマスクが形成される。端面が傾斜されたレジストパターンマスクをマスクとして用いて、半導体積層物の側部の一部をドライエッチングすることにより、共振器端面、すなわちガイド層13の出射側端面13aを0°より大きく90°より小さい第一角度θ1で傾斜させることができる。
【0049】
上部クラッド層15の側端面15aの形成方法について説明する。
レジストをパターニングする際に、フォトマスクを用いてコンタクト露光時にレジストとフォトマスクの間に隙間(例えば3μm又は5μm)を設けて光を漏らす。これにより、レジストのパターン端面が傾斜されたレジストパターンマスクが形成される。端面が傾斜されたレジストパターンマスクを形成した後に、ガイド層13を形成するためのレジストパターンマスクの開口上面よりもさらに広く開口したフォトマスクを用いて、このフォトマスクとレジストパターンマスクとの間に隙間を設けて露光・現像することで端面が二段階の傾斜を有するレジストパターンマスクが形成される。このレジストパターンマスクを用いてドライエッチングを行うことにより、第一角度θ1よりも小さい角度の第二角度θ2の側端面15aを有する上部クラッド層15が形成される。
【0050】
下部クラッド層14の側端面14aの形成方法について説明する。
上部クラッド層15を形成するためのレジストパターンマスクと同様の手法で二段傾斜のレジストパターンマスクを形成する。このレジストパターンマスクを用いて、エッチング時間を適切に設定することにより、第一角度θ1よりも小さい角度の第三角度θ3の側端面14aを有する下部クラッド層14が形成される。
【0051】
基板11の積層面11aの形成方法について説明する。
ガイド層13を形成する方法と同様の方法によって最終的に基板11となるウェハを残した状態でエッチングを停止することにより、発光層12と接触するガイド層13の面よりも大きい面積を有し最終的に積層面11aとなる領域が形成される。
【0052】
基板11の飛び出る長さdの形成方法について説明する。
基板11を分割する際に、下部クラッド層14の側端面14aから基板11の飛び出る長さが5μmよりも長く1000μmよりも短くなるようにウェハに分割線を入れ、当該分割線でウェハを分割することにより、下部クラッド層14の側端面14aから飛び出す長さが調整された基板11が形成される。
【0053】
酸化物111(
図4参照)の形成方法について説明する。
発光層12と接触するガイド層13の面よりも大きい面積を有し、最終的に積層面11aとなる領域を形成した後に、ウェハのこの領域をO
2プラズマ処理、酸化剤入り薬液での処理、あるいは高温で熱処理することにより酸化物111が形成される。
【0054】
ガイド層13との成す角度が第四角度θ4(
図2参照)となるようにパッケージ17を形成する方法について説明する。
積層体10を形成してウェハを個片化した後に、ガイド層13の出射側端面13aと内側面17aとの成す角度を第四角度θ4としてパッケージ17を傾斜させて窓171を取り付け、固定する。
【0055】
AlGaNO膜143,153(
図4参照)の形成方法について説明する。
発光層12と接触するガイド層13の面よりも大きい面積を有する積層面11aを形成した後に、下部クラッド層14の側端面14a及び上部クラッド層15の側端面15aを露出した状態で、O
2プラズマ処理、酸化剤入り薬液の処理、あるいは高温で熱処理することにより、下部クラッド層14の側端面14aにAlGaNO膜143が形成され、上部クラッド層15の側端面15aにAlGaNO膜153が形成される。
【0056】
絶縁保護膜18(
図4参照)の形成方法について説明する。
最終的に積層体10となる半導体積層物上に絶縁層を形成し、ガイド層13を形成する方法と同様の方法でドライエッチングした後に、アルカリ薬液(例えば、KOH水溶液やTMAH溶液)でウェットエッチングによって上部クラッド層15の一部をサイドエッチングすることにより、上部クラッド層15よりも基板11の側端面11b側に飛び出した絶縁保護膜18が形成される。なお、絶縁保護膜18は、p型電極162の少なくとも一部を露出するように形成される。
【0057】
以上説明したように、本実施形態によるレーザダイオード1は、基板11と、基板11の上方に配置された発光層12と、発光層12を挟んで基板11の上方に配置されたガイド層13と、基板11とガイド層13との間に形成された下部クラッド層14と、ガイド層13の上に形成された上部クラッド層15とを備えている。基板11は、下部クラッド層14、ガイド層13及び上部クラッド層15が積層される積層面11aを有し、ガイド層13は、発光層12で発光された光が出射される側に出射側端面13aを有し、出射側端面13aと積層面11aとの成す角度である第一角度θ1は、0°より大きく90°より小さくなっている。
【0058】
当該構成を備えたレーザダイオード1によれば、パッケージ17の内側面17aで反射された戻り光Rが発光層12に再入射することを抑制できる。これにより、レーザダイオード1は、発光層12の光励起を抑制することができ、出力ノイズを低減することができる。
【0059】
本発明は、上記実施形態に限られず、種々の変形が可能である。
上記実施形態では、ガイド層13は、アンドープ層であるが、本発明はこれに限られない。ガイド層13は、例えばドーパントが添加されて、発光層12よりも下層の領域がn型半導体で形成され、発光層12よりも上層の領域がp型半導体で形成されていてもよい。この場合、積層体10は、発光層12よりも上層がp型半導体で形成され、発光層12よりの下層がn型半導体で形成される。
【0060】
上記実施形態では、突起部152及びp型電極162の端面は、側端面15a及び側端面15aに対向する対向側端面と面一に形成されているが、本発明はこれに限られない。突起部152は、側端面15a及び対向側端面よりも内側(例えば5μmから10μm)の位置に両端面を有していてもよい。また、p型電極162は、突起部152の端面よりも内側(例えば2μmから10μm)の位置に端面を有していてもよい。
【0061】
上記実施形態では、基板11の積層面11aは、下部クラッド層14の周囲に露出しているが、本発明はこれに限られない。例えば、基板11の積層面11aは、下部クラッド層14の周囲に露出していなくてもよい。この場合、基板11の積層面11aと下部クラッド層14の下部表面(積層面11aと接触する面)とが同じ面積を有していてもよく、基板11の積層面11aと下部クラッド層14の下部表面とが同一形状を有していてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 レーザダイオード
10 積層体
11 基板
11a 積層面
11b 側端面
12 発光層
13 ガイド層
13a 出射側端面
14 下部クラッド層
14a 側端面
15 上部クラッド層
15a 側端面
15b Alx2Gay2N層
15c Alx3Gay3N層層
17 パッケージ
17a 内側面
18 絶縁保護膜
111 酸化物
131 誘電体多層膜
141 第一領域
142 第二領域
143,153 AlGaNO膜
151 平板部
152 突起部
161 n型電極
162 p型電極
171 窓
L 放射光
M 距離
R 戻り光
T 透過光
θ1 第一角度
θ2 第二角度
θ3 第三角度
θ4 第四角度