(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】耐力壁パネル
(51)【国際特許分類】
E04B 2/56 20060101AFI20221201BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
E04B2/56 605E
E04B2/56 643A
E04H9/02 321B
(21)【出願番号】P 2018125130
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 力
(72)【発明者】
【氏名】曽田 五月也
(72)【発明者】
【氏名】脇田 健裕
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-257688(JP,A)
【文献】特開2013-087435(JP,A)
【文献】特開2015-215081(JP,A)
【文献】特開2007-255128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/56-2/70
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体として矩形となるように互いに連結された第1縦枠材、第2縦枠材、上枠材及び下枠材を含み、前記第1縦枠材、第2縦枠材、上枠材及び下枠材によって囲まれる開口部を有する枠体と、
前記第1及び第2縦枠材の延在方向に変位可能に前記第1及び第2縦枠材の少なくとも一方に締結された可変枠材と、
前記枠体の前記開口部を塞ぐように配置されるとともに、前記可変枠材を介して前記第1及び第2縦枠材の少なくとも一方に接続された面材と
を備え、
前記第1及び第2縦枠材と前記可変枠材との間の相対的な変位に伴う摩擦により、前記枠体に入力される水平力が減衰されるように構成されており、
前記可変枠材には、前記第1及び第2縦枠材の縦枠材内面と平行に延在された平板部が設けられており、
前記平板部には、前記縦枠材内面に対向する外面と、前記外面よりも前記縦枠材内面から離れて位置する内面とが設けられており、
前記可変枠材の前記内面と締結部材との間には、前記第1及び第2縦枠材の延在方向に互いに離間して配置された複数の締結部材にわたって延在される長さを有する内側介在板が挿入されている、
耐力壁パネル。
【請求項2】
前記可変枠材の前記内面及び前記内側介在板の表面の少なくとも一方には潤滑被膜が設けられている、
請求項
1に記載の耐力壁パネル。
【請求項3】
前記可変枠材には、前記第1及び第2縦枠材の縦枠材内面と平行に延在された平板部が設けられており、
前記平板部には、前記縦枠材内面に対向する外面と、前記外面よりも前記縦枠材内面から離れて位置する内面とが設けられており、
前記縦枠材内面と前記可変枠材の前記外面との間には、表面に潤滑被膜が設けられた外側介在板が挿入されている、
請求項1又は請求項2に記載の耐力壁パネル。
【請求項4】
全体として矩形となるように互いに連結された第1縦枠材、第2縦枠材、上枠材及び下枠材を含み、前記第1縦枠材、第2縦枠材、上枠材及び下枠材によって囲まれる開口部を有する枠体と、
前記第1及び第2縦枠材の延在方向に変位可能に前記第1及び第2縦枠材の少なくとも一方に締結された可変枠材と、
前記枠体の前記開口部を塞ぐように配置されるとともに、前記可変枠材を介して前記第1及び第2縦枠材の少なくとも一方に接続された面材と
を備え、
前記第1及び第2縦枠材と前記可変枠材との間の相対的な変位に伴う摩擦により、前記枠体に入力される水平力が減衰されるように構成されており、
前記可変枠材には、前記第1及び第2縦枠材の縦枠材内面と平行に延在された平板部が設けられており、
前記平板部には、前記縦枠材内面に対向する外面と、前記外面よりも前記縦枠材内面から離れて位置する内面とが設けられており、
前記縦枠材内面と前記可変枠材の前記外面との間には、表面に潤滑被膜が設けられた外側介在板が挿入されている、
耐力壁パネル。
【請求項5】
前記面材は、
前記枠体の外側から前記開口部を塞ぐように配置された面材本体と、
前記上枠材及び下枠材の少なくとも一方を前記面材本体との間に挟むように配置され、前記面材本体に締結された少なくとも1つの内挿面材をさらに備えている、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の耐力壁パネル。
【請求項6】
前記可変枠材は、前記第1縦枠材に締結されるとともに前記面材の第1側部に接続された第1可変枠材と、前記第2縦枠材に締結されるとともに前記面材の第2側部に接続された第2可変枠材とを含み、
前記第1及び第2可変枠材は、前記面材の幅方向に延在された連結板によって互いに連結されている、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の耐力壁パネル。
【請求項7】
前記内挿面材は前記連結板に重ねられるとともに前記連結板に連結されている、
請求項5を引用する請求項6に記載の耐力壁パネル。
【請求項8】
前記面材本体との間に前記内挿面材及び前記連結板を挟むように配置された板状部材をさらに備え、
前記内挿面材及び前記連結板は、前記板状部材を介して互いに連結されている、
請求項5を引用する請求項6に記載の耐力壁パネル。
【請求項9】
前記面材は無機質ボード又は不燃化粧板を含む、
請求項6から請求項8までのいずれか一項に記載の耐力壁パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば家屋又は集合住宅等の建物の耐力壁を構成する耐力壁パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来用いられていたこの種の耐力壁パネルとしては、例えば下記の特許文献1等に示されている構成を挙げることができる。すなわち、従来構成では、一対の縦枠、上枠材及び下枠材が矩形に連結されることで枠体が構成されている。枠体の開口部を塞ぐように面材が枠体に重ねられるとともに、枠体の全周にわたって面材及び枠体にドリルねじが打ち込まれることで面材が枠体に接合されている。ドリルねじによる接合部は耐力壁パネルのせん断性能を担保している。耐力壁パネルのせん断性能が高いほど、その耐力壁パネルを使用した建物の耐震性能が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の耐力壁パネルでは、枠体の全周にわたって面材及び枠体にドリルねじが打ち込まれることで面材が枠体に接合されているので、例えば地震又は強風等により耐力壁パネルに水平力が入力されたときに面材及び枠体が一体に変形しようとする。耐力壁パネルに入力される水平力が所定の大きさを超えた場合、例えばドリルねじが面材にめり込む等の破壊が生じ、耐力壁パネルの耐力が低下してしまう。
【0005】
一般的には、耐力壁パネルに破壊が生じにくくするために、建物に用いる耐力壁パネルの枚数を増やして、各耐力壁パネルに作用する水平力を分散させている。しかしながら、耐力壁パネルの数を増やすだけでは、建物に水平力が作用した際の建物の加速度応答が過大となり、耐力壁パネルを支持する部材及び耐力壁パネル自体に大きな負担が生じてしまう。このため、水平力の入力に対しては、建物の剛性強度を上げるよりも、水平力の減衰性能を上げることが優位であると考えられる。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、建物の水平力減衰性能を向上させることができる耐力壁パネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る耐力壁パネルは、全体として矩形となるように互いに連結された第1縦枠材、第2縦枠材、上枠材及び下枠材を含み、第1縦枠材、第2縦枠材、上枠材及び下枠材によって囲まれる開口部を有する枠体と、第1及び第2縦枠材の延在方向に変位可能に第1及び第2縦枠材の少なくとも一方に締結された可変枠材と、枠体の開口部を塞ぐように配置されるとともに、可変枠材を介して第1及び第2縦枠材の少なくとも一方に接続された面材とを備え、第1及び第2縦枠材と可変枠材との間の相対的な変位に伴う摩擦により、枠体に入力される水平力が減衰されるように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の耐力壁パネルによれば、第1及び第2縦枠材と可変枠材との間の相対的な変位に伴う摩擦により、枠体に入力される水平力が減衰されるように構成されているので、建物の水平力減衰性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態1による耐力壁パネルを示す斜視図である。
【
図2】
図1の耐力壁パネルを分解して示す分解斜視図である。
【
図3】
図1の面材構成とホールダウン金物を拡大して示す拡大正面図である。
【
図5】
図1の耐力壁パネルに水平力F
Hが入力された際の状態を示す説明図である。
【
図6】本発明の実施の形態2による耐力壁パネルを示す斜視図である。
【
図7】
図6の耐力壁パネルを示す分解斜視図である。
【
図8】本発明の実施の形態3による耐力壁パネルを示す斜視図である。
【
図9】
図8の耐力壁パネルを示す分解斜視図である。
【
図10】本発明の実施の形態4による耐力壁パネルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による耐力壁パネル1を示す斜視図であり、
図2は
図1の耐力壁パネル1を分解して示す分解斜視図である。また、
図3は
図1の面材構成とホールダウン金物26を拡大して示す拡大正面図であり、
図4は
図1の締結体4の周囲の断面図である。
【0011】
図1に示す耐力壁パネル1は、例えば家屋又は集合住宅等の建物の耐力壁を構成するためのパネル材である。本実施の形態の耐力壁パネル1は主に薄板軽量形鋼造の建物に使用されるように適合されているが、本発明の耐力壁パネルは他の建物に使用されてもよい。
【0012】
図1に示すように、耐力壁パネル1は、高さ方向1a及び幅方向1bを有する矩形とされている。耐力壁パネル1は、高さ方向1aが鉛直方向に延在され、幅方向1bが水平方向に延在されるように適合されている。耐力壁パネル1は、枠体2、可変枠材3、複数の締結体4及び面材5を有している。
【0013】
図1及び
図2に示すように、枠体2は、第1縦枠材21、第2縦枠材22、上枠材23、下枠材24、中間縦枠材25及び複数のホールダウン金物26を有している。
【0014】
第1及び第2縦枠材21,22は、耐力壁パネル1の高さ方向1aに延在された長手状部材であり、耐力壁パネル1の幅方向1bに互いに離間して配置されている。本実施の形態の第1及び第2縦枠材21,22は、リップ付溝形鋼によって構成されている。リップ付溝形鋼は、ウェブと、ウェブの両側から突出された一対のフランジと、フランジの先端から突出された一対のリップとを有する形鋼である。第1及び第2縦枠材21,22は、ウェブの裏面(フランジが突出されていない側の面)が互いに向かい合うように配設されている。ウェブの裏面は、第1及び第2縦枠材21,22の縦枠材内面21a,22aを構成する。
【0015】
上枠材23及び下枠材24は、耐力壁パネル1の幅方向1bに延在された長手状部材であり、耐力壁パネル1の高さ方向1aに互いに離間して配置されている。上枠材23及び下枠材24としては、第1及び第2縦枠材21,22よりも短い部材が使用されている。本実施の形態の上枠材23及び下枠材24は、溝形鋼によって構成されている。溝形鋼は、ウェブと、ウェブの両側から突出された一対のフランジとを有する形鋼である。上枠材23及び下枠材24は、互いのウェブの表面(フランジが突出されている側の面)が向かい合うように配設されている。
【0016】
図1に示すように、第1縦枠材21、第2縦枠材22、上枠材23及び下枠材24は、全体として矩形となるように互いに連結されている。枠体2の中央部には、これら第1縦枠材21、第2縦枠材22、上枠材23及び下枠材24によって囲まれた開口部2aが設けられている。
【0017】
第1縦枠材21、第2縦枠材22、上枠材23及び下枠材24の詳細な関係は以下の通りである。
すなわち、第1及び第2縦枠材21,22の上端部は、上枠材23のフランジ間に挿入されている。第1及び第2縦枠材21,22のフランジ及び上枠材23のフランジに連結部材6が取り付けられることで、第1及び第2縦枠材の上端部が上枠材23に連結されている。
同様に、第1及び第2縦枠材21,22の下端部は、下枠材24のフランジ間に挿入されている。第1及び第2縦枠材21,22のフランジ及び下枠材24のフランジに連結部材6が取り付けられることで、第1及び第2縦枠材21,22の下端部が下枠材24に連結されている。
連結部材6としては、下穴の穿設を省略できるとの観点からドリルねじを用いることが好ましいが、例えば通常のボルト及びナット又はリベット等の他の部材を用いてもよい。
【0018】
第1及び第2縦枠材21,22は、上枠材23及び下枠材24との連結箇所を中心に回動可能とされている。各連結箇所に用いる連結部材6の数を1つとすることで、より確実に第1及び第2縦枠材21,22を回動可能とすることができる。各連結箇所に用いる連結部材6の数が2以上であっても、それらの締結部材を狭い領域に配置することで、第1及び第2縦枠材21,22を回動可能とすることもできる。
【0019】
中間縦枠材25は、耐力壁パネル1の高さ方向1aに延在された長手状部材であり、耐力壁パネル1の幅方向1bに関する第1及び第2縦枠材21,22の中間位置に配置されている。本実施の形態の中間縦枠材25は、上述の第1及び第2縦枠材21,22と同様のリップ付溝形鋼によって構成されている。中間縦枠材25の上端部は、上枠材23のフランジ間に挿入されているとともに、連結部材6によって上枠材23に連結されている。同様に、中間縦枠材25の下端部は、下枠材24のフランジ間に挿入されているとともに、連結部材6によって下枠材24に連結されている。
【0020】
複数のホールダウン金物26は、第1及び第2縦枠材21,22の上部及び下部に固定された金物である。ホールダウン金物26並びに上枠材23及び下枠材24には、第1縦枠材21、第2縦枠材22、上枠材23及び下枠材24が矩形に連結されているときに互いに直線状に並ぶ挿通孔7aが設けられている。挿通孔7aには、
図3において二点鎖線で示すアンカーボルト7が通される。アンカーボルト7は、基礎、上層階の床パネル又は他の耐力壁パネル1に耐力壁パネル1を連結することができる。
【0021】
図3に特に表れているように、ホールダウン金物26は、上枠材23及び下枠材24のウェブとの間に所定幅の隙間26aを有するように配設されている。この隙間26aが狭いと、第1及び第2縦枠材21,22が回動された際にホールダウン金物26が上枠材23及び下枠材24と接触して第1及び第2縦枠材21,22の回動を規制してしまう。隙間26aは、想定される最大量の第1及び第2縦枠材21,22の回動を許容する幅とされている。隙間26aの幅は、想定される最大量だけ第1及び第2縦枠材21,22が回動された場合でもホールダウン金物26が上枠材23及び下枠材24と接触しない幅とすることができる。また、このような隙間26aが設けられていることで、基礎、上層階の床パネル又は他の耐力壁パネル1と耐力壁パネル1との位置ずれを直すことができる。
【0022】
可変枠材3は、第1及び第2縦枠材21,22の延在方向(すなわち耐力壁パネル1の高さ方向1a)に変位可能に複数の締結体4によって第1及び第2縦枠材21,22に締結された部材である。本実施の形態の可変枠材3は、第1縦枠材21に締結されるとともに面材5の第1側部5aに接続された第1可変枠材31と、第2縦枠材22に締結されるとともに面材5の第2側部5bに接続された第2可変枠材32とを含んでいる。面材5の第1及び第2側部5a,5bは、耐力壁パネル1の幅方向1bに互いに離間した側部である。
【0023】
ここで、
図2及び
図4を参照しながら、第1及び第2可変枠材31,32並びに締結体4について詳しく説明する。
図2に特に表れているように、本実施の形態の第1及び第2可変枠材31,32は溝形鋼によって構成されている。第1及び第2可変枠材31,32のウェブは、第1及び第2縦枠材21,22の縦枠材内面21a,22aと平行に延在された平板部31a,32aを構成している。
図4に特に示しているように、平板部31a,32aの裏面(フランジ31b,32bが突出されていない側の面)は、第1及び第2縦枠材21,22の縦枠材内面21a,22aと対向する外面31c,32cを構成している。平板部31a,32aの表面(フランジ31b,32bが突出されている側の面)は外面31c,32cよりも縦枠材内面21a,22aから離れて位置する内面31d,32dを構成している。
【0024】
各締結体4は、一対のボルト40、一対の外側座金41、一対の内側座金42、一対のナット43、外側介在板44及び内側介在板45を含んでいる。
【0025】
一対のボルト40、一対の外側座金41、一対の内側座金42及び一対のナット43は、第1及び第2縦枠材21,22のウェブ並びに第1及び第2可変枠材31,32の平板部31a,32aを狭持するものである。各ボルト40及び外側座金41は、第1及び第2縦枠材21,22の外側に配置されている。各内側座金42及びナット43は、第1及び第2可変枠材31,32の内側に配置されている。外側座金41、内側座金42並びに第1及び第2縦枠材21,22のウェブには、各締結体4のボルト40が挿通される挿通孔46が設けられている。挿通孔46の直径は一本のボルト40の軸部が挿通できる程度とされている。ボルト40は、外側座金41、第1及び第2縦枠材21,22のウェブ、内側座金42を貫いてナット43に螺合される。
【0026】
ボルト40、外側座金41、内側座金42及びナット43の各組は、第1及び第2縦枠材21,22の延在方向(すなわち耐力壁パネル1の高さ方向1a)に互いに離間して配置されている。
【0027】
第1及び第2可変枠材31,32の平板部31a,32aには、第1及び第2縦枠材21,22の延在方向(耐力壁パネル1の高さ方向1a)に延在された複数の長孔31e,32eが設けられている。各長孔31e,32eには、第1及び第2縦枠材21,22の延在方向に互いに離間して配置された複数のボルト40が挿通される。本実施の形態の長孔31e,32eの延在幅は2本のボルト40の離間距離よりも広くされており、この広くされている幅だけ第1及び第2可変枠材31,32が第1及び第2縦枠材21,22の延在方向に変位可能とされている。
【0028】
外側介在板44は、第1及び第2縦枠材21,22の縦枠材内面21a,22a(ウェブの裏面)と第1及び第2可変枠材31,32の外面31c,32c(ウェブの裏面)との間に挿入されている。内側介在板45は、第1及び第2可変枠材31,32の内面31d,32d(ウェブの表面)と内側座金42及びナット43(締結部材)との間に挿入されている。これら外側及び内側介在板44,45は、第1及び第2縦枠材21,22の延在方向に互いに離間して配置された複数のボルト40(締結部材)にわたって延在される長さを有している。本実施の形態の外側及び内側介在板44,45は、互いに離間して配置された2本のボルト40にわたって延在される長さを有している。
【0029】
外側及び内側介在板44,45の表面には、潤滑被膜が設けられている。これら外側及び内側介在板44,45と接する第1及び第2可変枠材31,32の外面31c,32c及び内面31d,32dにも、同様の潤滑被膜を設けられている。これらに潤滑被膜が設けられることで、第1及び第2可変枠材31,32と第1及び第2縦枠材21,22との間の相対的変位をより円滑に生じさせることができる。潤滑被膜とは、潤滑性を有する被膜であり、例えば有機樹脂被膜又は無機被膜等により構成することができる。有機樹脂被膜の例としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂及びポリエステル樹脂等が挙げられる。無機被膜の例としては、二硫化モリブデン及びタルク等が挙げられる。潤滑被膜は、被膜中または被膜表面にワックスを含むことができる。潤滑被膜は連続した被膜でもよいし、例えば島状等に分散した被膜であってもよい。被膜は、液体をロールコーター又はスプレーで塗布した後に乾燥させることで形成することができる。厚みは特に制限されないが10μm以下が好ましい。潤滑被膜は、工場等で第1及び第2可変枠材31,32並びに外側及び内側介在板44,45の表面に例えば塗布等の手段により設けられてもよいし、建築現場で第1及び第2可変枠材31,32並びに外側及び内側介在板44,45の表面に設けられてもよい。例えば建築現場等で設ける場合の例としてファインケミカルジャパン製のFC-110フッソ・ドライルブを挙げることができる。第1及び第2可変枠材31,32並びに外側及び内側介在板44,45の具体例としては、例えば有機系クロムフリー潤滑処理が施されたZn-Al-Mg系合金めっき鋼板等を挙げることができる。
【0030】
図1に戻り、面材5は、枠体2の開口部2aを塞ぐように配置された平板状部材である。本実施の形態の面材5は、面材本体51と、複数の内挿面材52とを有している。
【0031】
面材本体51は、開口部2aよりも広い面積を有する平板状部材であり、枠体2の外側から開口部2aを塞ぐように配置されている。面材本体51の外周部は、第1縦枠材21、第2縦枠材22、上枠材23及び下枠材24のウェブに重ねられている。
図1に特に表れているように、面材本体51は、複数の連結部材6により第1及び第2可変枠材31,32に連結されており、これら第1及び第2可変枠材31,32を介して第1及び第2縦枠材21,22に接続されている。
【0032】
内挿面材52は、面材本体51よりも小形の平板状部材であり、面材本体51の上部及び下部に配置されている。
図3に特に表れているように、内挿面材52は、上枠材23及び下枠材24のウェブ間に挿入されており、面材本体51との間に上枠材23及び下枠材24のウェブを挟んでいる。面材本体51及び内挿面材52は、複数の連結部材6により上枠材23及び下枠材24に連結されている。
【0033】
面材本体51及び内挿面材52としては、無機質ボード(硬質石膏ボード)、不燃化粧板又は構造用合板を使用することができる。耐力壁パネル1の耐火性能を向上させる必要がある場合、面材本体51及び内挿面材52として無機質ボード又は不燃化粧板が用いられる。
【0034】
次に、本実施の形態の耐力壁パネル1の動作及び作用について説明する。
図5は
図1の耐力壁パネル1に水平力F
Hが入力された際の状態を示す説明図である。例えば地震又は強風等の時には、枠体2に水平力F
Hが入力される。枠体2に水平力F
Hが入力されると、
図5に示すように上枠材23及び下枠材24との連結箇所を中心に第1及び第2縦枠材21,22が回動されて、枠体2が歪む。
【0035】
上述のように第1及び第2可変枠材31,32が第1及び第2縦枠材21,22の延在方向に変位可能とされているので、枠体2が歪んだ際に第1及び第2可変枠材31,32が第1及び第2縦枠材21,22に対して相対的に変位される。このとき、複数の締結体4により第1及び第2可変枠材31,32が第1及び第2縦枠材21,22に締結されているため、第1及び第2可変枠材31,32と第1及び第2縦枠材21,22との間の相対的変位に伴い摩擦が生じる。この摩擦により、枠体2に入力された水平力FHが減衰される。従って、本実施の形態の耐力壁パネル1を建物に用いることにより、その建物の水平力減衰性能を向上させることができる。なお、締結体4の締め付け力を調整することにより、第1及び第2可変枠材31,32と第1及び第2縦枠材21,22との間の相対的変位に伴う摩擦の大きさ、すなわち水平力減衰性能を調整することができる。
【0036】
また、第1及び第2縦枠材21,22の延在方向に互いに離間して配置された複数のボルト40にわたって延在される長さを有する内側介在板45が第1及び第2可変枠材31,32の内面31d,32dと内側座金42及びナット43(締結部材)との間に挿入されている。このため、内側介在板45が省略されている場合と比較して第1及び第2可変枠材31,32の内面31d,32dで生じる摩擦を大きくすることができ、建物の水平力減衰性能をより確実に向上させることができる。
【0037】
さらに、第1及び第2可変枠材31,32の内面31d,32d及び内側介在板45の表面に潤滑被膜が設けられているので、第1及び第2可変枠材31,32と第1及び第2縦枠材21,22との間の相対的変位をより円滑に生じさせることができる。これにより、過渡的に大きな摩擦が生じることを回避でき、より安定した水平力減衰性能を得ることができる。
【0038】
さらにまた、表面に潤滑被膜が設けられた外側介在板44が縦枠材内面21a,22aと第1及び第2可変枠材31,32の外面31c,32cとの間に設けられているので、第1及び第2可変枠材31,32と第1及び第2縦枠材21,22との間の相対的変位をより円滑に生じさせることができる。これにより、過渡的に大きな摩擦が生じることを回避でき、より安定した水平力減衰性能を得ることができる。また、外側介在板44を省略して縦枠材内面21a,22aの全体に潤滑被膜を設ける場合と比較して、材料コストを低減できる。
【0039】
また、上枠材23及び下枠材24を面材本体51との間に挟むように配置された複数の内挿面材52が面材本体51に締結されているので、面材本体51の上部及び下部の強度を向上できる。
【0040】
実施の形態2.
図6は本発明の実施の形態2による耐力壁パネル1を示す斜視図であり、
図7は
図6の耐力壁パネル1を示す分解斜視図である。本実施の形態2の耐力壁パネル1では、第1及び第2可変枠材31,32が連結板33によって互いに連結されている。連結板33は、第1及び第2可変枠材31,32と一体に形成された鋼板によって構成することができる。より具体的には、連結板33は、面材本体51に接する第1及び第2可変枠材31,32のフランジを延長した板部とすることができる。すなわち、連結板33は、面材本体51に重ねられている。連結板33は、複数の連結部材6によって面材本体51に連結されている。
【0041】
本実施の形態2の内挿面材52は、上枠材23及び下枠材24から連結板33の上縁及び下縁に突き当たる位置まで延在されている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0042】
このような耐力壁パネル1では、第1及び第2可変枠材31,32が連結板33によって互いに連結されているので、前述の
図5に示すように枠体2が歪んだ際に面材本体51に作用する応力を連結板33に分散させることができ、応力により面材本体51が破損する虞を低減できる。この構成は、構造用合板に比べて脆い無機質ボード又は不燃化粧板により面材本体51が構成されている場合に特に有用である。内挿面材52が上枠材23及び下枠材24から連結板33の上縁及び下縁まで延在されていることで、面材本体51の破損をより確実に回避することができる。
【0043】
実施の形態3.
図8は本発明の実施の形態3による耐力壁パネル1を示す斜視図であり、
図9は
図8の耐力壁パネル1を示す分解斜視図である。本実施の形態3の耐力壁パネル1では、内挿面材52が上枠材23及び下枠材24から連結板33の上部及び下部に重なる位置まで延在されている。また、内挿面材52は、複数の連結部材6によって連結板33の上部及び下部に連結されている。その他の構成は、実施の形態2と同様である。
【0044】
このような耐力壁パネル1では、内挿面材52が連結板33に重ねられるとともに連結板33に連結されているので、枠体2に水平力FHが入力された際に内挿面材52が連結板33と一体に動くことができる。このため、内挿面材52及び連結板33が個々に動く場合と比較して、面材本体51に加わる応力を少なくでき、面材本体51が破損する虞を低減できる。また、面材本体51に破損が生じた場合でも、内挿面材52及び連結板33により耐力を発揮でき、耐力壁パネル1の全体としての耐力をより確実に確保できる。
【0045】
実施の形態4.
図10は本発明の実施の形態4による耐力壁パネル1を示す斜視図であり、
図11は
図10の耐力壁パネル1を示す分解斜視図である。本実施の形態4の耐力壁パネル1は、実施の形態2の耐力壁パネル1に板状部材8が追加されたものである。板状部材8は、面材本体51との間に内挿面材52及び連結板33を挟むように配置された部材であり、連結部材6により内挿面材52及び連結板33に連結されている。すなわち、内挿面材52及び連結板33は、板状部材8を介して互いに連結されている。
【0046】
このような耐力壁パネル1では、内挿面材52及び連結板33が板状部材8を介して互いに連結されているので、実施の形態3の構成と同様に、枠体2に水平力FHが入力された際に内挿面材52が連結板33と一体に動くことができる。このため、内挿面材52及び連結板33が個々に動く場合と比較して、面材本体51に加わる応力を少なくでき、面材本体51が破損する虞を低減できる。また、面材本体51に破損が生じた場合でも、内挿面材52及び連結板33により耐力を発揮でき、耐力壁パネル1の全体としての耐力をより確実に確保できる。
【0047】
なお、本発明は各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0048】
例えば、実施の形態1~4では、可変枠材3が第1及び第2縦枠材21,22の両方に締結されているように説明しているが、可変枠材が第1及び第2縦枠材のいずれか一方のみと締結されているように構成することもできる。この場合、面材も可変枠材を介して第1及び第2縦枠材のいずれか一方のみと接続されているだけでもよい。
【0049】
また、実施の形態1~4では、第1及び第2可変枠材31,32の平板部31a,32aの内面31d,32d及び内側介在板45の表面の両方に潤滑被膜が設けられているように説明したが、それら第1及び第2可変枠材の内面及び内側介在板の表面の少なくとも一方に潤滑被膜が設けられていなくてもよい。
【0050】
さらに、外側介在板44、内側介在板45及び内挿面材52の少なくとも1つが省略されていてもよい。また、各部材の数が変更されていてもよい。
【0051】
さらにまた、面材本体51が第1及び第2縦枠材21,22の少なくとも一方と直接的に連結されていてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 耐力壁パネル
2 枠体
2a 開口部
21,22 第1及び第2縦枠材
21a,22a 縦枠材内面
23 上枠材
24 下枠材
3 可変枠材
31,32 第1及び第2可変枠材
31a,32a 平板部
33 連結板
4 締結体
44 外側介在板
45 内側介在板
5 面材
51 面材本体
52 内挿面材
6 連結部材
8 板状部材