(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】変位センサ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/244 20060101AFI20221201BHJP
G01D 5/20 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
G01D5/244 D
G01D5/20 K
(21)【出願番号】P 2018195353
(22)【出願日】2018-10-16
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598031224
【氏名又は名称】新光電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【氏名又は名称】川崎 康
(72)【発明者】
【氏名】久保山 豊
(72)【発明者】
【氏名】中野 泰志
(72)【発明者】
【氏名】井上 直也
(72)【発明者】
【氏名】川口 真史
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-271204(JP,A)
【文献】特開平5-280921(JP,A)
【文献】特表2007-525673(JP,A)
【文献】特開2010-101741(JP,A)
【文献】特開2001-183106(JP,A)
【文献】特開昭62-11113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/252
G01B 7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に渦電流を発生させるコイルに流れる電流を整流して出力端子から出力する整流器と、
前記整流器の出力に基づいて、被測定物の変位に換算した電圧または電流を出力端子から出力する信号変換器と、
前記整流器の出力端子から前記信号変換器の出力端子に至るまでの経路に配置され、前記コイル
の周辺の温度を取得して、この温度に基づいて、低温よりも高温のときに補正値を高くすることで前記信号変換器の出力の特性を改善する信号特性改善部と、
前記コイルの周辺の温度を計測する温度計測器と、を備え、
前記信号変換器は、リニアライザであり、
前記信号特性改善部は、前記温度計測器で計測された温度に応じて前記リニアライザの入出力特性の線形性が改善するように前記リニアライザの入出力特性を補正し、かつ、前記温度計測器で計測された温度ごとに異なる基準信号レベルにて入出力特性が変化する折れ線関数に基づいて、前記整流器の出力をレベル変換して出力する、変位センサ。
【請求項2】
前記信号特性改善部は、前記温度計測器で計測された温度が高いほど、前記折れ線関数の前記基準信号レベルを低くする、請求項
1に記載の変位センサ。
【請求項3】
被測定物に渦電流を発生させるコイルに流れる電流を整流して出力端子から出力する整流器と、
前記整流器の出力に基づいて、被測定物の変位に換算した電圧または電流を出力端子から出力する信号変換器と、
前記整流器の出力端子から前記信号変換器の出力端子に至るまでの経路に配置され、前記コイルの周辺の温度を取得して、この温度に基づいて、低温よりも高温のときに補正値を高くすることで前記信号変換器の出力の特性を改善する信号特性改善部と、
前記コイルの周辺の温度を計測する温度計測器と、を備え、
前記信号変換器は、リニアライザであり、
前記信号特性改善部は、前記温度計測器で計測された温度に応じて前記リニアライザの入出力特性の線形性が改善するように前記リニアライザの入出力特性を補正し、かつ、基準信号レベルにて前記温度計測器で計測された温度に応じて傾きが変化する折れ線関数に基づいて、前記整流器の出力をレベル変換して出力する、変位センサ。
【請求項4】
前記コイル、前記整流器および前記信号変換器が実装された基板と、
前記基板の温度を計測する基板温度計測器と、を備え、
前記信号特性改善部は、前記温度計測器で計測された前記コイルの温度と、前記基板温度計測器で計測された前記基板の温度とに基づいて、前記信号変換器の出力の特性を改善させる、請求項
1乃至
3のいずれか一項に記載の変位センサ。
【請求項5】
前記コイルのインピーダンスを利用して発振動作を行って発振信号を出力する自励式発振回路を有し、
前記自励式発振回路の発振レベルは、前記被測定物に発生した渦電流による前記コイルのインピーダンスの変化の影響を受けて変化する、請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の変位センサ。
【請求項6】
前記コイルは、コアレスのコイル又はコアを有するコイルである、請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の変位センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物との距離すなわちギャップを非接触で検出する変位センサに関する。
【背景技術】
【0002】
コイルを利用した変位センサは、コイルに交流電流を流す発振器とともに、コイルのインピーダンス変化による信号変化を検出する回路を備えている。発振器の発振信号は、整流器にて直流信号に変換された後、リニアライザによって、被測定物とのギャップに応じて線形的に変化する信号が生成される(特許文献1、2参照)。
【0003】
コイルは、温度によってインピーダンスが変化することが知られている。このため、特許文献1では、コイルを有する発振器から出力された発振信号の振幅レベルを温度により補正している。また、特許文献2では、リニアライザの出力を、温度に応じた補正値で補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-137888号公報
【文献】特開平8-271204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、整流器で整流する前の段階で温度補正を行っている。整流器の前段側は、信号周波数が高いため、浮遊容量の影響を受けやすく、整流器の前段側に温度補正回路を設けると、回路が大型化するため、浮遊容量が増大することによる影響を受け易くなり、プリント基板のパターン設計が難しくなる傾向があった。
【0006】
また、特許文献2は、R-V変換器の出力電圧をリニアライザの出力電圧に加算して補正処理を行っているが、単なる加算処理では、補正を行いたい特定の変位でしか補正処理が行えず、広範囲にわたる入出力特性を線形化させることはできない。
【0007】
さらに、特許文献2のように、リニアライザの出力に対して温度補正を行う場合、リニアライザには温度補正を行っていない信号が入力されることになる。特に高温域では、整流回路からの信号の減衰が大きくなるため、このような減衰信号が入力されたリニアライザの出力は線形性が崩れており、崩れた信号に対して補正値を加算しても、正しい温度補正が行えないおそれがある。
【0008】
本発明は、温度依存性をできるだけ少なくして、被測定物の変位に対する変位信号の線形性を向上させることが可能な変位センサを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様では、被測定物に渦電流を発生させるコイルに流れる電流を整流して出力端子から出力する整流器と、
前記整流器の出力に基づいて、被測定物の変位に換算した電圧または電流を出力端子から出力する信号変換器と、
前記整流器の出力端子から前記信号変換器の出力端子に至るまでの経路に配置され、前記コイル周辺の温度を取得して、この温度に基づいて、低温よりも高温のときに補正値を高くすることで前記信号変換器の出力信号の特性を改善する信号特性改善部と、を備える、変位センサが提供される。
【0010】
前記コイル周辺の温度を計測する温度計測器を備え、
前記信号変換器は、リニアライザであってもよく、
前記信号特性改善部は、
前記整流器の出力にゲインを乗じた信号を生成する可変ゲインアンプと、
前記変位に対する前記リニアライザの出力の線形性が改善されるように、前記温度計測器で計測された温度に基づいて前記ゲインを調整するゲイン調整部と、を有してもよい。
【0011】
前記可変ゲインアンプは、前記整流器の出力に前記ゲインを乗じた信号を生成するアナログ乗算器または乗算型D/Aコンバータを有し、
前記リニアライザには、前記アナログ乗算器または前記乗算型D/Aコンバータの出力が入力されてもよい。
【0012】
前記コイル周辺の温度と前記ゲイン調整部にて調整されたゲインとの相関関係を格納する相関関係格納部を備え、
前記ゲイン調整部は、前記温度計測器で計測された温度に対応する前記ゲインを、前記相関関係格納部から取得してもよい。
【0013】
前記コイル周辺の温度を計測する温度計測器を備え、
前記信号変換器は、リニアライザであり、
前記信号特性改善部は、前記温度計測器で計測された温度に応じて前記リニアライザの入出力特性を補正してもよい。
【0014】
前記信号特性改善部は、前記リニアライザの入出力特性の線形性が改善するように前記リニアライザの入出力特性を補正してもよい。
【0015】
前記信号特性改善部は、前記温度計測器で計測された温度ごとに異なる基準信号レベルにて入出力特性が変化する折れ線関数に基づいて、前記整流器の出力をレベル変換して出力してもよい。
【0016】
前記信号特性改善部は、前記温度計測器で計測された温度が高いほど、前記折れ線関数の前記基準信号レベルを低くしてもよい。
【0017】
前記信号特性改善部は、基準信号レベルにて前記温度計測器で計測された温度に応じて傾きが変化する折れ線関数に基づいて、前記整流器の出力をレベル変換して出力してもよい。
【0018】
前記コイル、前記整流器および前記信号変換器が実装された基板と、
前記基板の温度を計測する基板温度計測器と、を備え、
前記信号特性改善部は、前記温度計測器で計測された前記コイルの温度と、前記基板温度計測器で計測された前記基板の温度とに基づいて、前記信号変換器の出力の特性を改善させてもよい。
【0019】
前記コイルのインピーダンスを利用して発振動作を行って発振信号を出力する自励式発振回路を有し、
前記自励式発振回路の発振レベルは、前記被測定物に発生した渦電流による前記コイルのインピーダンスの変化の影響を受けて変化してもよい。
【0020】
前記コイルは、コアレスのコイル又はコアを有するコイルであってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、温度依存性をできるだけ少なくして、被測定物の変位に対する変位信号の線形性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1の実施形態による変位センサの概略構成を示すブロック図。
【
図2】
図1の線形性改善部をより具体化した第1具体例のブロック図。
【
図3】
図2をさらにより具体化した第2具体例のブロック図。
【
図5】
図1の信号特性改善部とリニアライザを備えていない変位センサの入出力特性を示す図。
【
図6】線形性改善部を備えた本実施形態による変位センサの特性を示す図。
【
図7】線形性改善部を備えた本実施形態による変位センサの特性を示す図。
【
図8】線形性改善部を備えていない一比較例による変位センサの特性を示す図。
【
図9】線形性改善部を備えていない一比較例による変位センサの特性を示す図。
【
図10】第2の実施形態による変位センサの概略構成を示すブロック図。
【
図11】入出力特性補正部が調整を行うリニアライザの入出力特性の一例を示すグラフ。
【
図12】感度変化がない場合のリニアライザの特性を示すグラフ。
【
図13】感度が10%低下した場合のリニアライザの特性を示すグラフ。
【
図14】感度が20%低下した場合のリニアライザの特性を示すグラフ。
【
図18】第3の実施形態による変位センサの概略構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態による変位センサ1の概略構成を示すブロック図である。
図1の変位センサ1は、コイル2と、発振器3と、整流器4と、リニアライザ5と、出力アンプ6と、温度計測器7と、信号特性改善部8とを備えている。
【0025】
発振器3は、例えば自励式の発振回路で構成されている。自励式の発振回路は、他励式に比べて回路構成を簡略化でき、実装面積および部品コストを削減できる。また、コイルの共振を利用するため、被測定物との距離の変化に伴う発振信号の電圧レベルの変化を大きくできるという利点もある。自励式の発振回路の具体的な回路構成は特に問わないが、例えば、コルピッツ発振回路を適用可能である。
【0026】
発振器3は、コイル2と不図示のコンデンサによる共振回路を内蔵している。コイル2には、共振周波数の交流電流が流れる。よって、コイル2からは交流電流に応じた磁束が発生し、この磁束によって、コイル2の近傍に配置された被測定物に渦電流が発生する。被測定物に渦電流が発生すると、その影響で、コイル2のインピーダンスが変化し、発振回路の発振信号の電圧レベルも変化する。このように、コイル2は、交流電流を供給することで交流磁場を発生させ、被測定物の位置の変位に応じて被測定物に誘導される渦電流に応じた出力を生成する。
【0027】
なお、被測定物が絶縁体の場合は、渦電流は発生しないため、
図1の変位センサ1で変位すなわちギャップを検出可能な被測定物は、導電体に限定される。なお、被測定物の内部が絶縁体であっても、表面が導電体であれば、渦電流が発生するため、
図1の変位センサ1で変位を検出可能である。被測定物は、導電体であればよく、非磁性体でも磁性体でもよい。
【0028】
整流器4は、被測定物に渦電流を発生させるコイル2に流れる電流を整流して出力端子から出力する。すなわち、整流器4は、発振器3の発振信号すなわちコイル2の出力を整流して、直流信号に変換する。リニアライザ5等の信号変換器は、整流器4の出力に基づいて、被測定物の変位に換算した電圧または電流を出力端子から出力する。信号変換器としてリニアライザ5を用いる場合、リニアライザ5は、整流器4の出力に基づいて、被測定物の変位に応じて信号レベルが線形に変化する変位信号を生成する。リニアライザ5は、理想的には、被測定物の変位に応じて線形に信号レベルが変化する変位信号を生成する。ただし、実際のリニアライザ5は、コイル2の温度変化によるインピーダンス変動により、整流器4の出力が変動するため、同一の温度環境下であっても、被測定物の変位に対する出力信号レベルが線形にはならない。そこで、本実施形態では、温度計測器7と信号特性改善部8を有する。
【0029】
なお、信号変換器は必ずしもリニアライザ5に限定されない。例えば、リニアライザ5の代わりに、入力信号に対して任意の信号変換処理を行って出力する信号変換器を設けてもよい。任意の信号変換処理とは、例えば、入力信号を正弦波信号に変換する処理などである。
【0030】
温度計測器7は、コイル2の周辺の温度を計測する。
図1の変位センサ1を、例えばエンジンのバルブの変位を計測するために用いる場合、コイル2の周辺の温度が100℃を超えるような高温になるおそれがある。上述したように、コイル2は、温度によって直流抵抗が変化し、変位センサ1の出力信号レベルも変化してしまう。よって、変位センサ1の使用環境下で、コイル2そのものを温度か、あるいはコイル2にできるだけ近い場所の温度を計測するのが望ましい。
【0031】
信号特性改善部8は、整流器4の出力端子から信号変換器の出力端子に至るまでの経路に配置され、コイル2周辺の温度を取得して、この温度に基づいて、低温よりも高温のときに補正値を高くすることで信号変換器の出力の特性を改善する。例えば、信号特性改善部8は、温度計測器7で計測された温度に基づいてリニアライザ5等の信号変換器の出力の特性を改善する。より具体的には、信号特性改善部8は、整流器4の出力ノードからリニアライザ5の出力ノードに至るまでの信号経路上に配置されており、温度計測器7で計測された温度に基づいて、被測定物の変位に対するリニアライザ5の出力の特性を改善させる。ここで、特性の改善とは、例えば被測定物の変位に対するリニアライザ5の出力の線形性をよくする、すなわち線形性を改善させることを指す。
図1では、信号特性改善部8が整流器4とリニアライザ5の間に配置されている例を示しているが、信号特性改善部8はリニアライザ5の内部に設けられていてもよい。信号特性改善部8がリニアライザ5の内部に設けられる例は後述する第2の実施形態で説明し、本実施形態では、信号特性改善部8が整流器4とリニアライザ5の間に配置されている例を説明する。
【0032】
本実施形態による信号特性改善部8は、被測定物の変位に対するリニアライザ5の出力の線形性を改善させる。理想的には、信号特性改善部8は、リニアライザ5が被測定物の変位に応じて線形に変化する信号を出力するように、所定の線形性改善処理を行う。
【0033】
図2は
図1の信号特性改善部8をより具体化した第1具体例のブロック図である。
図2の信号特性改善部8は、可変ゲインアンプ11とゲイン調整部12とを有する。この他、
図2の信号特性改善部8は、相関関係格納部13を備えていてもよい。
【0034】
可変ゲインアンプ11は、整流器4から出力された直流信号に、調整可能なゲインを乗じた信号を生成する。可変ゲインアンプ11は、例えばアナログ乗算器で構成可能である。
【0035】
ゲイン調整部12は、被測定物の変位に対するリニアライザ5の出力の線形性が改善されるように、温度計測器7で計測された温度に基づいてゲインを調整する。
【0036】
必須の構成要素ではないが、相関関係格納部13は、温度と、可変ゲインアンプ11のゲインとの相対関係を予め格納したものである。相関関係格納部13に格納されるデータの生成方法は、後に詳述するが、相関関係格納部13にコイル2の温度を与えることで、対応する可変ゲインアンプ11のゲインを抽出可能となる。このように、相関関係格納部13を予め設けておけば、ゲイン調整部12は、温度計測器7で計測された温度に対応するゲインを、相関関係格納部13から迅速に取得でき、可変ゲインアンプ11のゲイン調整を容易に行うことができる。
【0037】
図3は
図2をさらにより具体化した第2具体例のブロック図である。
図3の変位センサ1は、ゲイン調整部12として機能するMCU(Micro Control Unit)14を有する。MCU14は、ゲイン調整部12の処理動作をデジタル信号処理で行う。このため、
図3の変位センサ1は、温度計測器7の出力をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ15をMCU14の前段側に接続し、MCU14の出力信号をアナログ信号に変換するD/Aコンバータ16をMCU14の後段側に接続している。D/Aコンバータ16の出力信号にて可変ゲインアンプ11のゲインが調整されることになる。MCU14は、内蔵または外付けされた相関関係格納部13を参照して、コイル2の温度に応じたゲインを設定する。
【0038】
図4は
図3の一変形例のブロック図である。
図4の信号特性改善部8は、
図3の可変ゲインアンプ11とD/Aコンバータ16を乗算型D/Aコンバータ17に置換したものである。乗算型D/Aコンバータ17を用いることで、ブロック構成を
図3よりも簡易化することができる。なお、
図3と
図4の変位センサ1の基本的な動作原理は、
図1や
図2と同じである。
図3と
図4の一変形例として、整流器4の出力をA/Dコンバータでデジタル信号に変換してMCU14に入力し、MCU14にてデジタル的にゲイン調整を行い、ゲイン調整されたデジタル信号をD/Aコンバータでアナログ信号に変換してからリニアライザ5に入力してもよい。これにより、可変ゲインアンプ11を設ける必要がなくなる。
【0039】
図5は
図1の信号特性改善部8とリニアライザ5を備えていない変位センサの入出力特性を示す図である。
図5の横軸は被測定物とのギャップすなわち距離(mm)、縦軸は出力信号レベルである。
図5には、コイル2の温度が0℃、30℃、60℃、90℃、120℃の5つのグラフw1~w5が示されている。
図5の各グラフからわかるように、温度補正と線形化処理のいずれも行わない場合には、被測定物とのギャップの大小によって、出力信号レベルは非線形に変化し、しかも、変位センサの入出力特性は、コイル2の温度によって変化する。
【0040】
図6および
図7は信号特性改善部8を備えた本実施形態による変位センサ1の特性を示す図、
図8および
図9は信号特性改善部8を備えていない一比較例による変位センサ1の特性を示す図である。
図6と
図8は、変位センサ1の入出力特性を示しており、
図7と
図9は、温度と変位センサ1の出力信号レベルとの関係を示している。
図6と
図8の横軸は被測定物とのギャップ(mm)、縦軸は変位センサ1の出力信号レベルである。
図7と
図9の横軸はコイル2の温度(℃)、縦軸は変位センサ1の出力信号レベルである。
図6と
図8の横軸の右側ほどギャップが大きく、
図7と
図9の横軸の右側ほど温度が高く、
図6~
図9の縦軸の上側ほど出力信号レベルが大きいことを示している。
【0041】
図6と
図8には、0℃、40℃、80℃、120℃のグラフw6~w9が描かれている。信号特性改善部8を備えていない場合には、
図8に示すように、温度が高いほど線形性が悪くなり、しかも、ギャップが大きいほど出力信号レベルの低下が大きくなる。これに対して、信号特性改善部8を備えると、
図6に示すように、温度によらず、かつギャップに依存せず、良好な線形性を維持できる。すなわち、信号特性改善部8を備えることで、被測定物の変位すなわち被測定物とのギャップに対するリニアライザ5の出力は、温度によらず、ほぼ同じ直線になる。信号特性改善部8とリニアライザ5をともに備えていない場合には
図5に示すように、変位センサの入出力特性が温度ごとに相違し、かつ非線形な特性となったが、リニアライザ5を設けることで、
図6および
図8に示すように、入出力特性が線形化され、かつ信号特性改善部8を設けることで、
図6に示すように、変位センサの入出力特性が温度依存性を持たなくなる。
【0042】
また、
図7と
図9には、複数のギャップについての、コイル2の温度とリニアライザ5の出力レベルとの関係を示すグラフw10~w15が描かれている。グラフw10~w15は、ギャップの大きい順に並んでいる。信号特性改善部8を備えていない場合には、
図9に示すように、温度が高いほどリニアライザ5の出力レベルが低下する。これは、温度が高いほど、変位センサ1の感度が低下することを示している。また、
図9には示されていないが、温度が次第に低くなると、リニアライザ5の出力レベルはいったんピークに到達した後に低下する。よって、温度が下がりすぎても、変位センサ1の感度は低下する傾向がある。これに対して、信号特性改善部8を備えた場合には、
図7に示すように、温度を変化させても、リニアライザ5の出力レベルは略一定である。これは、温度によらず、かつギャップに依存せず、変位センサ1の感度が略一定になることを示している。
【0043】
本発明者は、事前に基準となる変位センサ1を用いて、コイル2の温度と被測定物とのギャップを変化させながら、
図8と
図9のグラフを作成した。その後、可変ゲインアンプ11のゲインを種々に変更して、
図6と
図7のようなグラフになるような最適なゲインを見つけた。そして、温度と、ゲインとの相対関係を相関関係格納部13に格納し、コイル2の温度を入力すると、その温度に対応する最適なゲインを簡易かつ迅速に検索できるようにした。
【0044】
このように、第1の実施形態では、整流器4とリニアライザ5との間の信号経路上に信号特性改善部8を設けるため、発振器3の内部信号や発振器3の出力信号に対して線形性改善処理を施すよりも、より線形性に優れて、かつ温度依存性のない信号を出力できる。
【0045】
より具体的には、整流器4で整流した後の直流信号に可変ゲインアンプ11でゲインを乗じる際に、コイル2の周辺の温度に応じてゲインを最適化するため、構成をそれほど複雑化せずに変位センサ1の線形性を改善できる。
【0046】
(第2の実施形態)
以下に説明する第2の実施形態は、リニアライザ5の内部で線形性改善処理を行うものである。
【0047】
図10は第2の実施形態による変位センサ1の概略構成を示すブロック図である。
図10の変位センサ1は、
図1と同様のコイル2、発振器3、整流器4、出力アンプ6および温度計測器7を備えているが、リニアライザ5の内部構成が
図1とは異なっている。また、
図10の変位センサ1では、可変ゲインアンプ11は必須の構成要素ではないため、
図10では省略している。なお、後述するように、
図10の変位センサ1に、可変ゲインアンプ11を設けてもよい。
【0048】
図10のリニアライザ5は、その内部に信号特性改善部8を有する。
図10の信号特性改善部8は、コイル2の周辺の温度に応じてリニアライザ5の入出力特性を補正する。すなわち、信号特性改善部8は、リニアライザ5の入出力特性の線形が改善するようにリニアライザ5の入出力特性を補正する。より具体的には、信号特性改善部8は、コイル2の周辺の温度ごとに異なる基準信号レベルにて入出力特性が変化する折れ線関数に基づいて、整流器4の出力をレベル変換して出力する。
【0049】
ここで、折れ線関数は、傾きの異なる複数の線分を繋いだ関数である。本明細書では、各線分の接続点を折れ線ポイントと呼ぶ。基準信号レベルとは、折れ線関数の各折れ線ポイントである。折れ線ポイントの位置は、コイル2の周辺の温度に応じて変化する。温度ごとに別個に折れ線関数が設けられており、各折れ線関数は、複数の折れ線ポイントを有し、隣接する2つの折れ線ポイント同士は、傾きの異なる線分で接続されている。
【0050】
図11はリニアライザ5内の信号特性改善部8が有する折れ線関数を示す図である。
図11の横軸はリニアライザ5の入力信号、縦軸は出力信号である。横軸の右側ほど入力信号レベルが大きいことを示し、縦軸の上側ほど出力信号レベルが大きいことを示している。
【0051】
図11には、3種類の折れ線関数w16~w18が図示されている。折れ線関数w16はコイル2の感度変化がない場合、折れ線関数w17は感度が10%低下した場合、折れ線関数w18は感度が20%低下した場合を示している。
図11の黒丸は、基準信号レベルすなわち折れ線ポイントである。各折れ線関数w16~w18は、折れ線ポイントを変更することによって全体の傾きが変化する。折れ線ポイントは、コイル2の感度すなわちコイル2の温度ごとに異なるため、リニアライザ5の入出力特性は温度ごとに異なったものになる。整流器4の出力がリニアライザ5に入力されると、この入力信号は、コイル2の温度に応じた折れ線関数にてレベル変換されて出力される。
図11には、温度すなわち感度が異なる3種類の折れ線関数が図示されているが、実際には、多数の温度に応じた多数の折れ線関数が存在している。
【0052】
図11の各折れ線関数上の各折れ線ポイントの位置からわかるように、温度が高くなって感度が低下すると、折れ線ポイントは左側にシフトしている。これは、感度が低くなるほど、より小さい入力信号レベルから線形性改善処理を行うことを示している。各折れ線ポイントにて、折れ線関数の傾きが変化する。また、隣接する2つの折れ線ポイント間を繋ぐ線分の傾きは、温度が変わっても同じに設定されている。例えば、折れ線ポイントp1と折れ線ポイントp4とを結ぶ線分と、折れ線ポイントp2と折れ線ポイントp5とを結ぶ線分と、折れ線ポイントp3と折れ線ポイントp6とを結ぶ線分とは、いずれも同じ傾きを有する。なお、これらの傾きをそれぞれ相違させてもよい。また、直線近似の代わりに、より線形性が改善するように、曲線近似を行ってもよい。
【0053】
図12~
図14はそれぞれ異なる感度でのリニアライザ5の特性を示すグラフである。
図12はコイル2の感度変化がない場合、
図13はコイル2の感度が10%低下した場合、
図14はコイル2の感度が20%低下した場合の特性を示している。
図12~
図14の横軸は被測定物とのギャップ(mm)、縦軸は電圧(V)または直線性(%)である。
【0054】
図12~
図14には、リニアライザ5の入力信号波形w19と、リニアライザ5の理想的な出力信号波形w20と、本実施形態によるリニアライザ5の出力信号波形w21と、各ギャップでの直線性を示す波形w22とが図示されている。すなわち、波形w22とは、理想的な出力信号波形w20とリニアライザ5によってリニアライズされた出力信号波形w21との差分を示しており、ギャップが全域にわたって、差分の変動が少ないほど、リニアライザ5によるリニアライズが良好に行われたことを示している。
【0055】
理想的な出力信号波形w20は、線形すなわち直線状の波形である。直線性を示す波形w22の谷の位置が折れ線ポイントである。波形w22と交差する水平方向に延びる基準線L1に対して上下に均等に波形w22が変化するのが理想的である。感度変化がない場合を示す
図12では、感度低下がある
図13や
図14と比べて、リニアライザ5の実際の出力信号波形w21は、理想的な出力信号波形w20に最も近い特性になる。
【0056】
感度が10%低下した場合は、感度変化がない場合よりも低い入力信号レベルに折れ線ポイントが移動する。また、感度が20%低下した場合は、感度が10%低下した場合よりもさらに低い入力信号レベルに折れ線ポイントが移動する。これにより、感度が低下した場合であっても、リニアライザ5の実際の出力信号波形w21を、理想的な出力信号波形w20に近づけることができる。
【0057】
図15は
図11~
図14の特性を有するリニアライザ5の一具体例の回路図である。
図15のリニアライザ5は、オペアンプOP1~OP6と、抵抗R1~R18と、ダイオードD1~D6とを有する。
【0058】
オペアンプOP1~OP6の非反転入力端子は接地されている。オペアンプOP1の反転入力端子には、抵抗R1を介して整流器4の出力が入力される。オペアンプOP1の出力端子と反転入力端子との間には抵抗R2が接続されている。オペアンプOP1は、整流器4の出力を反転出力する。
【0059】
オペアンプOP2~OP4の反転入力端子には、それぞれ抵抗R3~R5を介してオペアンプOP1の出力信号が入力される。オペアンプOP2~OP4の反転入力端子には、それぞれ抵抗R6~R8を介して基準信号V1~V3がそれぞれ入力される。基準信号V1~V3は、
図11の折れ線ポイントの信号である。例えば、波形w16上の折れ線ポイントp1,p4,p7の信号レベルが基準信号V1~V3に入力される。オペアンプOP2~OP4の反転入力端子にはダイオードD1~D3のアノードがそれぞれ接続され、オペアンプOP2~OP4の出力端子にはダイオードD1~D3のカソードがそれぞれ接続されている。ダイオードD1~D3のカソードおよびオペアンプOP2~OP4の出力端子には、ダイオードD4~D6のアノードがそれぞれ接続されている。ダイオードD4~D6のカソードとダイオードD1~D3のアノードとの間には、抵抗R9~R11がそれぞれ接続されている。ダイオードD4~D6のカソードは、それぞれ抵抗R12~R14を介してオペアンプOP5の反転入力端子に接続されている。オペアンプOP5の反転入力端子と出力端子との間には、抵抗R15が接続されている。オペアンプOP5の出力端子とオペアンプOP6の反転入力端子との間には抵抗R16が接続されている。オペアンプOP6の反転入力端子とオペアンプOP1の出力端子との間には抵抗R17が接続されている。オペアンプOP6の反転入力端子と出力端子OUTとの間には抵抗R18が接続されている。以下では、抵抗R12~R14の抵抗値をそれぞれr1,r2,r3とし、それ以外の抵抗R1~R11、R15~R18の抵抗値をRとする。
【0060】
図15のリニアライザ5に入力される入力信号をVinとすると、オペアンプOP1の出力電圧は-Vinになる。V3>V2>V1のとき、入力信号Vinが基準信号V1以下の場合には、ダイオードD4~D6のカソード電圧は全て0Vになるため、オペアンプOP5の出力も0Vとなり、オペアンプOP6の出力はオペアンプOP1の反転信号となる。すなわちVout=Vinになる。
【0061】
入力信号VinがV1<Vin≦V2の場合には、抵抗R18を流れる電流は、ダイオードD4のカソードのみ(Vin-V1)の電圧が現れるため、Vout=Vin+(Vin-V1)R/r1になる。
【0062】
入力信号VinがV2<Vin≦V3の場合には、ダイオードD4のカソードには(Vin-V1)の電圧が現れ、ダイオードD5のカソードには(Vin-V2)の電圧が現れるため、それらをr1,r2で加算することになり、Vout=Vin+(Vin-V1)R/r1+(Vin-V2)R/r2になる。
【0063】
入力信号VinがV3<Vinの場合には、ダイオードD4のカソードには(Vin-V1)の電圧が現れ、ダイオードD5のカソードには(Vin-V2)の電圧が現れ、ダイオードD6カソードには(Vin-V3)の電圧が現れるため、それらをr1,r2、r3で加算することになり、Vout=Vin+(Vin-V1)R/r1+(Vin-V2)R/r2+(Vin-V3)R/r3になる。
【0064】
なお、リニアライザ5の具体的な回路構成は、
図15に示したものに限定されない。例えば、
図16は一変形例によるリニアライザ5の回路図である。
図16のリニアライザ5は、オペアンプOP7~OP11と、抵抗R21~R27と、トランジスタQ1~Q3と、ダイオードD7~D9とを有する。
【0065】
オペアンプOP7とOP11の非反転入力端子は接地されている。オペアンプOP7の反転入力端子には、抵抗R21を介して整流器4の出力が入力される。オペアンプOP7の出力端子と反転入力端子との間には抵抗R22が接続されている。オペアンプOP7は、整流器4の出力を反転出力する。
【0066】
オペアンプOP8~OP10の非反転入力端子には、基準信号V1~V3がそれぞれ入力される。オペアンプOP8~OP10の反転入力端子には、抵抗R23~R25を介して整流器4の出力が入力される。オペアンプOP8~OP10の出力信号は、トランジスタQ1~Q3のベースとダイオードD7~D9のアノードにそれぞれ入力される。ダイオードD7~D9のカソードは、オペアンプOP8~OP10の反転入力端子とトランジスタQ1~Q3のエミッタにそれぞれ接続されている。トランジスタQ1~Q3のコレクタは、オペアンプOP7の反転入力端子に接続されている。オペアンプOP7の出力端子は、抵抗R26を介してオペアンプOP11の反転入力端子に接続されている。オペアンプOP11の出力端子と反転入力端子との間には抵抗R27が接続されている。
【0067】
図16のリニアライザ5も、
図15のリニアライザ5と同様に、入力信号Vinと基準信号V1~V3の大小関係によって、出力信号Voutの信号レベルが変化する。
【0068】
図11では、リニアライザ5の折れ線関数の折れ線ポイントの位置をコイル2の温度に応じて変化させる例を示したが、折れ線ポイントの位置は変えずに、折れ線ポイント間の線分の傾きをコイル2の温度ごとに変化させてもよい。
図17は一変形例による折れ線関数w23~w25を示す図である。
図17の折れ線関数w23~w25は、
図11と異なり、コイル2の温度が変化しても折れ線ポイントの位置は変化しないが、折れ線ポイント間の線分の傾きが温度によって変化している。リニアライザ5内の信号特性改善部8は、
図17のような折れ線関数に基づいて、整流器4の出力のレベル変換を行って出力してもよい。これにより、
図11の折れ線関数を用いた場合と同程度の線形性改善処理を行うことができる。
【0069】
このように、第2の実施形態では、リニアライザ5の内部に信号特性改善部8を設けて、コイル2の温度に応じた折れ線関数に基づいて、整流器4の出力をレベル変換した信号を出力する。このため、コイル2が高温下に置かれても、リニアライザ5の線形性を維持できる。
【0070】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、第1の実施形態と第2の実施形態を組み合わせたものである。
【0071】
図18は第3の実施形態による変位センサ1の概略構成を示すブロック図である。
図18の変位センサ1は、
図2と同様の可変ゲインアンプ11およびゲイン調整部12と、
図10と同様のリニアライザ5とを備えている。
【0072】
図18の変位センサ1では、ゲイン調整部12は、コイル2の温度に応じて可変ゲインアンプ11のゲインを調整する。可変ゲインアンプ11の出力が入力されるリニアライザ5は、コイル2の温度に応じてリニアライザ5の入出力特性を補正する信号特性改善部8を有し、信号特性改善部8は、リニアライザ5の入出力特性の線形性が改善するようにリニアライザ5の入出力特性を補正する。
【0073】
図18の変位センサ1では、ゲイン調整部12にて可変ゲインアンプ11のゲインを調整した上で、リニアライザ5にて入出力特性の線形性改善処理を行うため、リニアライザ5の線形性がより改善される。
【0074】
上述した第1~第3の実施形態では、コイル2の周辺の温度が変化しても、変位センサ1が適切に線形性改善処理を行えるようにしている。コイル2がコアを有する場合、コイル2の感度が向上するが、コアは磁性体であり、高温下では透磁率が低下して本来の機能を果たせなくなる。よって、高温下で変位センサ1を使用する場合、コアレスのコイル2を使用することが多い。第1~第3の実施形態による変位センサ1は、コアを有するコイル2でも、あるいはコアレスのコイル2でも適用可能であり、上述した手法により、変位に対する変位信号の線形性を改善できる。
【0075】
上述した第1~第3の実施形態では、温度計測器7にてコイル2の周辺の温度を計測して、計測された温度に基づいて、被測定物の変位に対する変位信号の線形化処理を行っている。第1~第3の実施形態による変位センサ1では、コイル2以外の構成部品は共通の基板上に実装され、コイル2だけがこの基板から離れた位置に配置されることが多い。この場合、コイル2の周辺の温度と基板の温度との温度差が大きくなる可能性がある。特に、エンジンのバルブの変位を検出する場合など、被測定物の温度が数百℃を超えるような高温になる場合は、コイル2の周辺の温度と基板の周辺の温度との温度差が大きくなりやすい。上述したように、コイル2の温度によってコイル2のインピーダンスは変化するが、基板の温度によっても基板内の各回路素子の電気的特性が変化し、変位信号の信号レベルに影響を与える。
【0076】
よって、コイル2の周辺の温度と基板の周辺の温度とが相違する可能性がある場合には、コイル2の周辺の温度を計測する温度計測器7とは別に、基板の周辺の温度を計測する基板温度計測器を設けてもよい。
【0077】
この場合、第1~第3の実施形態では、温度計測器7で計測されたコイル2の周辺の温度だけでなく、基板温度計測器で計測された基板の周辺の温度も考慮に入れて、線形性改善処理を行うことになる。これにより、コイル2の周辺の温度と基板の周辺の温度とに基づいて、被測定物の変位に対する変位信号を生成でき、コイル2や基板の温度が変化しても、また、被測定物の変位が変化しても、変位に対する変位信号の線形性をより改善させることができる。
【0078】
上述したゲイン調整部12およびリニアライザ5の処理の少なくとも一部は、ソフトウェアで実行してもよい。例えば、信号処理プロセッサなどを用いて、ゲイン調整部12やリニアライザ5の処理を実行するプログラムを実行してもよい。
【0079】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 変位センサ、2 コイル、3 発振器、4 整流器、5 リニアライザ、6 出力アンプ、7 温度計測器、8 信号特性改善部、11 可変ゲインアンプ、12 ゲイン調整部、13 相関関係格納部、14 MCU、15 A/Dコンバータ、16 D/Aコンバータ、17 乗算型D/Aコンバータ、18 入出力特性補正部