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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 19/14 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
F16L19/14
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019122823
(22)【出願日】2019-07-01
(65)【公開番号】P2021008916
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2020-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000221638
【氏名又は名称】東尾メック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】保田 秋生
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0001404(US,A1)
【文献】特開2009-287646(JP,A)
【文献】国際公開第2015/093066(WO,A1)
【文献】特開2015-007445(JP,A)
【文献】実開昭56-007178(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第106015778(CN,A)
【文献】国際公開第2018/011906(WO,A1)
【文献】特公昭60-027874(JP,B2)
【文献】実開昭64-055393(JP,U)
【文献】特表2003-529032(JP,A)
【文献】米国特許第05028078(US,A)
【文献】仏国特許出願公開第02395451(FR,A1)
【文献】特開2010-270846(JP,A)
【文献】特開2007-271024(JP,A)
【文献】特開2018-062945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
継手本体(1)への袋ナット(2)の螺進に伴って、被接続パイプ(P)の外周面(10A)に対し、強力圧接状態となって、パイプ引抜抵抗力(Z)を発生する引抜阻止用爪部(36)を、上記継手本体(1)自身が一体に有すると共に、
上記袋ナット(2)は、上記継手本体(1)の雄ネジ部(9)に螺着される雌ネジ部(12)を孔部(11)の基端に有し、かつ、該孔部(11)の中間には、段付部(15)と先端縮径テーパ部(17)とを、有し、
さらに、上記先端縮径テーパ部(17)が、基端側急勾配テーパ部(17A)と先端側緩勾配テーパ部(17B)をもって、構成され
上記引抜阻止用爪部(36)は、上記継手本体(1)の先端に突出状の薄肉略円筒部(35)の先端に形成され、
上記引抜阻止用爪部(36)は、微小間隔(W 36 )をもって配設された後爪(36B)と前爪(36F)にて構成され、上記後爪(36B)の断面形状は、直線状第1先端辺(41)を上辺として有する台形乃至略台形であり、上記前爪(36F)の断面形状は、直線状第2先端辺(42)を上辺として有する台形乃至略台形であり、被接続パイプ(P)の上記外周面(10A)に対し、上記継手本体(1)の上記後爪(36B)の第1先端辺(41)と、上記前爪(36F)の第2先端辺(42)が、上記袋ナット(2)の螺進に伴って、強力圧接状態となって、パイプ引抜抵抗力(Z)を発生するよう構成したことを特徴とする管継手。
【請求項2】
上記薄肉略円筒部(35)の自由状態において、上記後爪(36B)の上記第1先端辺(41)と、上記前爪(36F)の上記第2先端辺(42)を、相互に平行として、かつ、上記第1先端辺(41)を上記第2先端辺(42)よりもラジアル内方として、配設し、
さらに、上記強力圧接状態において、上記第2先端辺(42)が上記第1先端辺(41)よりもラジアル内方向に突出状、又は、上記第2先端辺(42)と上記第1先端辺(41)がラジアル方向同一位置となるように、
上記先端縮径テーパ部(17)の先端側の傾斜角度と、先端頭部(37)の形状と寸法を、設定した請求項1記載の管継手。
【請求項3】
上記後爪(36B)と上記前爪(36F)を先端に有する上記薄肉略円筒部(35)は、先端方向に拡径状の円錐筒型とした請求項1又は2記載の管継手。
【請求項4】
継手本体(1)への袋ナット(2)の螺進に伴って、被接続パイプ(P)の外周面(10A)に対し、強力圧接状態となって、パイプ引抜抵抗力(Z)を発生する引抜阻止用爪部(36)を、上記継手本体(1)自身が一体に有すると共に、
上記引抜阻止用爪部(36)は、上記継手本体(1)の先端に突出状の薄肉略円筒部(35)の先端に形成され、
上記引抜阻止用爪部(36)は、微小間隔(W 36 )をもって配設された後爪(36B)と前爪(36F)にて構成され、上記後爪(36B)の断面形状は、直線状第1先端辺(41)を上辺として有する台形乃至略台形であり、上記前爪(36F)の断面形状は、直線状第2先端辺(42)を上辺として有する台形乃至略台形であり、被接続パイプ(P)の上記外周面(10A)に対し、上記継手本体(1)の上記後爪(36B)の第1先端辺(41)と、上記前爪(36F)の第2先端辺(42)が、上記袋ナット(2)の螺進に伴って、強力圧接状態となって、パイプ引抜抵抗力(Z)を発生するよう構成し、
上記薄肉略円筒部(35)の自由状態において、上記後爪(36B)の上記第1先端辺(41)と、上記前爪(36F)の上記第2先端辺(42)を、相互に平行として、かつ、上記第1先端辺(41)を上記第2先端辺(42)よりもラジアル内方として、配設し、
さらに、上記強力圧接状態において、上記第2先端辺(42)が上記第1先端辺(41)よりもラジアル内方向に突出状、又は、上記第2先端辺(42)と上記第1先端辺(41)がラジアル方向同一位置となるように、
先端縮径テーパ部(17)の先端側の傾斜角度と、先端頭部(37)の形状と寸法を、設定したことを特徴とする管継手。
【請求項5】
継手本体(1)への袋ナット(2)の螺進に伴って、被接続パイプ(P)の外周面(10A)に対し、強力圧接状態となって、パイプ引抜抵抗力(Z)を発生する引抜阻止用爪部(36)を、上記継手本体(1)自身が一体に有すると共に、
上記引抜阻止用爪部(36)は、上記継手本体(1)の先端に突出状の薄肉略円筒部(35)の先端に形成され、
上記引抜阻止用爪部(36)は、微小間隔(W36)をもって配設された後爪(36B)と前爪(36F)にて構成され、上記後爪(36B)の断面形状は、直線状第1先端辺(41)を上辺として有する台形乃至略台形であり、上記前爪(36F)の断面形状は、直線状第2先端辺(42)を上辺として有する台形乃至略台形であり、被接続パイプ(P)の上記外周面(10A)に対し、上記継手本体(1)の上記後爪(36B)の第1先端辺(41)と、上記前爪(36F)の第2先端辺(42)が、上記袋ナット(2)の螺進に伴って、強力圧接状態となって、パイプ引抜抵抗力(Z)を発生するよう構成し、
上記後爪(36B)と上記前爪(36F)を先端に有する上記薄肉略円筒部(35)は、先端方向に拡径状の円錐筒型としたことを特徴とする管継手。
【請求項6】
継手本体(1)への袋ナット(2)の螺進に伴って、被接続パイプ(P)の外周面(10A)に対し、強力圧接状態となって、パイプ引抜抵抗力(Z)を発生する引抜阻止用爪部(36)を、上記継手本体(1)自身が一体に有すると共に、
上記引抜阻止用爪部(36)は、上記継手本体(1)の先端に突出状の薄肉略円筒部(35)の先端に形成され、
上記引抜阻止用爪部(36)は、微小間隔(W36)をもって配設された後爪(36B)と前爪(36F)にて構成され、上記後爪(36B)の断面形状は、直線状第1先端辺(41)を上辺として有する台形乃至略台形であり、上記前爪(36F)の断面形状は、直線状第2先端辺(42)を上辺として有する台形乃至略台形であり、被接続パイプ(P)の上記外周面(10A)に対し、上記継手本体(1)の上記後爪(36B)の第1先端辺(41)と、上記前爪(36F)の第2先端辺(42)が、上記袋ナット(2)の螺進に伴って、強力圧接状態となって、パイプ引抜抵抗力(Z)を発生するよう構成し、
受圧状態下で、上記薄肉略円筒部(35)が、過大拡径変形するのを阻止するための小突起(33)を、上記薄肉略円筒部(35)の外周面に付設して、上記小突起(33)を上記袋ナット(2)の孔部(11)の内面に当接するように構成したことを特徴とする管継手。
【請求項7】
上記パイプ(P)の外周面(10A)に対し、上記後爪(36B)及び前爪(36F)が、上記強力圧接状態において、パイプ引抜抵抗力(Z)を略相等しく分担するよう構成した請求項1,2,3,4,5又は6記載の管継手。
【請求項8】
受圧状態下で、上記薄肉略円筒部(35)が、過大拡径変形するのを阻止するための小突起(33)を、上記薄肉略円筒部(35)の外周面に付設して、上記小突起(33)を上記袋ナット(2)の上記孔部(11)の内面に当接するように構成した請求項1,2,3,4又は5記載の管継手。
【請求項9】
上記継手本体(1)のパイプ挿入孔部(28)の奥方部位(31)を、奥方縮径テーパ状に形成し、パイプ挿入完了状態でパイプ外周面(10A)が上記パイプ挿入孔部(28)の内周面(27)に圧接するよう構成した請求項1,2,3,4,5又は6記載の管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
管継手の一種として、フレア継手が広く知られている。一般に、このフレア継手は、図15に示すように、パイプpの端部にフレア加工部fを特別な治具にて塑性加工して形成し、このフレア加工部fを、フレア継手本体hのテーパ部aに当てて袋ナットnにて締付けて、袋ナットnのテーパ面tとフレア継手本体hのテーパ部aにて挟圧し、金属面の相互圧接にて密封性を確保する構成である(例えば特許文献1参照)。
しかしながら、図15に示した管継手は、作業現場にて、被接続パイプpの端部に、専用工具を使用して、フレア加工部fを形成する必要があり、作業能率が悪く、品質のバラツキも生じる。さらに、パイプpのフレア加工部fの小径端縁f1 に亀裂を生じ易い。また、袋ナットnを締付けた際にパイプpが減肉して、その結果、密封性の低下や袋ナットnに緩みを発生し易いという問題もあった。
そこで、本出願人等は、図15に示すフレア加工部fを全く省略したパイプpを、接続できる管継手を提案した。
【0003】
即ち、図16に示すような構造の管継手である(特許文献2参照)。この図16(特許文献2)に記載の管継手は、雄ネジ部52とテーパ部53を有するフレア継手本体51に対し、袋ナット54を螺着するが、内部の収納空間部55には、ストップリング56を内装保持する。
このストップリング56は、シール凹溝57を有し、Oリング58が内装され、挿入されるパイプPとの間の密封作用は、このOリング58によって行われる。特に、ストップリング56は、継手本体51のテーパ部53に圧接する圧接勾配面59を有する。また、先端側には薄肉円筒部60が同一径をもって延設され、この薄肉円筒部60の最先端には、断面三角形のパイプ外周面食い込み用爪部61が付設されている。
この爪部61は、袋ナット54の螺進に伴って、パイプPの外周面に食い込ませる構成である(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-42858号公報
【文献】特許第5091191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図16(特許文献2)に示した管継手を、冷媒配管用として現実に市場へ提供するうえで、次の3点が、未解決であり、又は、技術的に不十分であることが、判明してきた。
(i)袋ナット54を螺進してゆくとストップリング56が共廻りを生じ、テーパ部53と圧接勾配面59の間で相対的スリップを発生し、これによって、その金属圧接シールが破壊される。これを防ぐために、爪部61を、特別な治具を使用して、パイプPの外周面に、予め、食い込ませておく「予備加工」を必要とする点。
このような「予備加工」は配管接続現場での作業能率を著しく低下させる。
(ii)現実のパイプPは、その肉厚が、薄肉円筒部60の肉厚と同程度であり、図16に示した肉厚Tpの約1/3の場合もあり得る。従って、三角形断面の爪部61といえども、Cu製パイプPの表面に食い込まず、パイプPを局部的に内径方向に塑性変形させるのみで、パイプ耐引抜力が小さい点。
(iii) 上記(ii)に記述したように爪部61がパイプPに食い込まず、配管工事完了後、パイプPをその軸心廻りに回転させる外力が作用すると、簡単に回転を起こす。これに伴って、爪部61とパイプ外周面との間のメタルシール性が破壊される。従って、Oリング58を省略できない点。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は、継手本体への袋ナットの螺進に伴って、被接続パイプの外周面に対し、強力圧接状態となって、パイプ引抜抵抗力を発生する引抜阻止用爪部を、上記継手本体自身が一体に有すると共に、上記袋ナットは、上記継手本体の雄ネジ部に螺着される雌ネジ部を孔部の基端に有し、かつ、該孔部の中間には、段付部と先端縮径テーパ部とを、有し、さらに、上記先端縮径テーパ部が、基端側急勾配テーパ部と先端側緩勾配テーパ部をもって、構成され、上記引抜阻止用爪部は、上記継手本体の先端に突出状の薄肉略円筒部の先端に形成され、上記引抜阻止用爪部は、微小間隔をもって配設された後爪と前爪にて構成され、上記後爪の断面形状は、直線状第1先端辺を上辺として有する台形乃至略台形であり、上記前爪の断面形状は、直線状第2先端辺を上辺として有する台形乃至略台形であり、被接続パイプの上記外周面に対し、上記継手本体の上記後爪の第1先端辺と、上記前爪の第2先端辺が、上記袋ナットの螺進に伴って、強力圧接状態となって、パイプ引抜抵抗力を発生するよう構成した。
【0007】
また、上記薄肉略円筒部の自由状態において、上記後爪の上記第1先端辺と、上記前爪の上記第2先端辺を、相互に平行として、かつ、上記第1先端辺を上記第2先端辺よりもラジアル内方として、配設し、さらに、上記強力圧接状態において、上記第2先端辺が上記第1先端辺よりもラジアル内方向に突出状、又は、上記第2先端辺と上記第1先端辺がラジアル方向同一位置となるように、上記先端縮径テーパ部の先端側の傾斜角度と、先端頭部の形状と寸法を、設定した。
また、上記後爪と上記前爪を先端に有する上記薄肉略円筒部は、先端方向に拡径状の円錐筒型とした。
【0008】
また、継手本体への袋ナットの螺進に伴って、被接続パイプの外周面に対し、強力圧接状態となって、パイプ引抜抵抗力を発生する引抜阻止用爪部を、上記継手本体自身が一体に有すると共に、上記引抜阻止用爪部は、上記継手本体の先端に突出状の薄肉略円筒部の先端に形成され、上記引抜阻止用爪部は、微小間隔をもって配設された後爪と前爪にて構成され、上記後爪の断面形状は、直線状第1先端辺を上辺として有する台形乃至略台形であり、上記前爪の断面形状は、直線状第2先端辺を上辺として有する台形乃至略台形であり、被接続パイプの上記外周面に対し、上記継手本体の上記後爪の第1先端辺と、上記前爪の第2先端辺が、上記袋ナットの螺進に伴って、強力圧接状態となって、パイプ引抜抵抗力を発生するよう構成し、上記薄肉略円筒部の自由状態において、上記後爪の上記第1先端辺と、上記前爪の上記第2先端辺を、相互に平行として、かつ、上記第1先端辺を上記第2先端辺よりもラジアル内方として、配設し、さらに、上記強力圧接状態において、上記第2先端辺が上記第1先端辺よりもラジアル内方向に突出状、又は、上記第2先端辺と上記第1先端辺がラジアル方向同一位置となるように、先端縮径テーパ部の先端側の傾斜角度と、先端頭部の形状と寸法を、設定した。
【0009】
また、継手本体への袋ナットの螺進に伴って、被接続パイプの外周面に対し、強力圧接状態となって、パイプ引抜抵抗力を発生する引抜阻止用爪部を、上記継手本体自身が一体に有すると共に、上記引抜阻止用爪部は、上記継手本体の先端に突出状の薄肉略円筒部の先端に形成され、上記引抜阻止用爪部は、微小間隔をもって配設された後爪と前爪にて構成され、上記後爪の断面形状は、直線状第1先端辺を上辺として有する台形乃至略台形であり、上記前爪の断面形状は、直線状第2先端辺を上辺として有する台形乃至略台形であり、被接続パイプの上記外周面に対し、上記継手本体の上記後爪の第1先端辺と、上記前爪の第2先端辺が、上記袋ナットの螺進に伴って、強力圧接状態となって、パイプ引抜抵抗力を発生するよう構成し、上記後爪と上記前爪を先端に有する上記薄肉略円筒部は、先端方向に拡径状の円錐筒型とした。
【0010】
また、継手本体への袋ナットの螺進に伴って、被接続パイプの外周面に対し、強力圧接状態となって、パイプ引抜抵抗力を発生する引抜阻止用爪部を、上記継手本体自身が一体に有すると共に、上記引抜阻止用爪部は、上記継手本体の先端に突出状の薄肉略円筒部の先端に形成され、上記引抜阻止用爪部は、微小間隔をもって配設された後爪と前爪にて構成され、上記後爪の断面形状は、直線状第1先端辺を上辺として有する台形乃至略台形であり、上記前爪の断面形状は、直線状第2先端辺を上辺として有する台形乃至略台形であり、被接続パイプの上記外周面に対し、上記継手本体の上記後爪の第1先端辺と、上記前爪の第2先端辺が、上記袋ナットの螺進に伴って、強力圧接状態となって、パイプ引抜抵抗力を発生するよう構成し、受圧状態下で、上記薄肉略円筒部が、過大拡径変形するのを阻止するための小突起を、上記薄肉略円筒部の外周面に付設して、上記小突起を上記袋ナットの孔部の内面に当接するように構成した。
【0011】
また、上記パイプの外周面に対し、上記後爪及び前爪が、上記強力圧接状態において、パイプ引抜抵抗力を略相等しく分担するよう構成した。
また、受圧状態下で、上記薄肉略円筒部が、過大拡径変形するのを阻止するための小突起を、上記薄肉略円筒部の外周面に付設して、上記小突起を上記袋ナットの上記孔部の内面に当接するように構成した。
また、上記継手本体のパイプ挿入孔部の奥方部位を、奥方縮径テーパ状に形成し、パイプ挿入完了状態でパイプ外周面が上記パイプ挿入孔部の内周面に圧接するよう構成した。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来必要であった前記「予備加工」を全く省略できて、配管作業が著しく容易かつ迅速に行い得る。しかも、安定して冷媒等の洩れを確実に防止できる。
さらに、パイプの耐引抜力、及び、パイプ軸心廻りの耐回転トルクが、いずれも、大きい。特に、硬度が低く、縮径方向へ塑性変形し易い材質のパイプであっても、平面による強力圧接状態を保つ、2個の後爪・前爪によって、パイプ耐引抜力と耐回転トルクが安定して大きい。さらに、管継手全体が(アキシャル方向に)コンパクトとなる利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の一形態を示しパイプ接続中の状態を示した断面図である。
図2】パイプ接続完了状態を示す断面図である。
図3】袋ナットの一例を示す断面図であって、(A)は全体断面図、(B)は要部拡大断面図である。
図4】継手本体の要部拡大断面図である。
図5】継手本体の要部拡大断面図である。
図6】他の例を示した継手本体の要部拡大断面図である。
図7】後爪の断面形状を例示した説明図である。
図8】前爪の断面形状を例示した説明図である。
図9】袋ナットのストレート部及び急勾配テーパ部に薄肉略円筒部の先端頭部が対応している状態を示した要部拡大断面図である。
図10】袋ナットの急勾配テーパ部と緩勾配テーパ部の境目近傍に、薄肉略円筒部の先端頭部が対応している状態を示した要部拡大断面図である。
図11】袋ナットの緩勾配テーパ部にまで先端頭部が侵入した状態の要部拡大断面図である。
図12】さらに侵入した状態の要部拡大断面図である。
図13】先端頭部が最終侵入位置に到達した接続完了状態を示す要部拡大断面図である。
図14】作用説明のための、図13の要部拡大図である。
図15】従来例を示す断面図である。
図16】別の従来例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図1図5に示す実施の形態に於て、本発明に係る管継手Jは、継手本体1と袋ナット2を具備し、さらに、被接続用パイプPの先端には(従来のフレア加工を全く省略して)ストレート状先端部10を有している。
【0015】
この継手本体1は、全体形状がストレート状であって、軸心に沿って流路孔6が貫設され、軸心方向中央位置に、スパナ等の作業工具を掛けるための六角形等の掴持部1Aが設けられ、さらに、軸心左右方向に接続筒部7,7が連設されている。各接続筒部7の外周面に雄ネジ部9が形成される。そして、2個の袋ナット2,2が、左右の上記雄ネジ部9,9に螺着される構造である。
【0016】
図1図4に示すように、接続筒部7の先端面7Aから、薄肉略円筒部35が一体状に延設されている。言い換えれば、雄ネジ部9を外周面に有する接続筒部7と、(段付部としての先端面7Aを介して、)先端側へ連設された、小径かつ先端へ緩やかに拡径テーパ状の薄肉略円筒部35を、有する。従って、この薄肉略円筒部35は、先端方向へ拡径する円錐筒型である。
【0017】
また、流路孔(孔部)6は、段付部30を有し、中央基本径よりも、左右外方部位は大径として、この段付部30まで(又はその近傍まで)パイプPが挿入されている。このように、段付部30をもって形成された、(やや)大径のパイプ挿入孔部28につき、(先に説明すると、)奥方部位31を、奥方縮径テーパ状に形成して、パイプ挿入完了状態(図2参照)で、パイプ外周面10Aが孔部28の内周面27に圧接するように、形成する。
【0018】
そして、図4に示すように、薄肉略円筒部35の基端の内径寸法は、上記パイプ挿入孔部28の先端の内径寸法と、一致させ、しかも、薄肉略円筒部35の内周面形状は、先端方向へ緩やかに拡径するテーパ状である。
さらに、薄肉略円筒部35の先端頭部37の内周面には、引抜阻止用爪部36が設けられる。図5又は図6に、拡大断面をもって示したように、この爪部36は、微小間隔W36をもって配設された後爪36Bと前爪36Fにて、構成される。
このように、本発明に係る管継手では、パイプ引抜抵抗力を発揮する引抜阻止用爪部36───後爪36Bと前爪36F───を、継手本体1自身が、一体に有する。
【0019】
ところで、図1図2に於ては、全体形状が、ストレート状を図示したが、これを、T字型、Y字型、十字型やエルボ型等自由である。また、図1図2では、薄肉略円筒部35を接続用両端部に有する場合を図示したが、この独自の薄肉略円筒部35を一端のみに設け、他端は、テーパ雄ネジや平行雌ネジ、又は、溶接用筒部等を有する接続構造とするも、自由である。
【0020】
袋ナット2は、(図1図3に示すように、)軸心方向に孔部11が貫設され、この孔部11の基端には、上記雄ネジ部9が螺着される雌ネジ部12を有し、その雌ネジ部12から先端に向かって、順次、軸心方向に小さな幅寸法の逃げ溝13、段付部15、小幅寸法W16の短ストレート部16、先端縮径テーパ部17、及び、(被接続パイプPの外径よりも僅かに大きい内径寸法の)ストレート部18が、形成される。
【0021】
ストレート部18には、凹溝部19が形成され、Oリング等のシール48が装着される。なお、袋ナット2の基端部位と、継手本体1の掴持部1Aの先端面近傍とを、袋ナット2の螺着状態下でメタル相互の圧接によるメタルシールMs(図2参照)を形成して、シール材を省略している。この袋ナット2の材質は、黄銅(真鍮)、又は、アルミニウムとする。
【0022】
そして、図3(B)に示すように、袋ナット2の孔部11に於て、先端縮径テーパ部17が、基端側急勾配テーパ部17Aと先端側緩勾配テーパ部17B等をもって、構成されている。また、最奥当り勾配部17Cを付加するも好ましい。
なお、図3(B)に示したように、段付部15と短ストレート部16の角部を、アール状面取りrとする。
【0023】
次に、継手本体1の要部拡大を示した図4について、追加説明する。即ち、極めて小さな勾配角度θ───例えば、0.5°≦θ≦2°───をもって、奥方部位31をテーパ状に形成するのが良い。図2に示したパイプ挿入完了状態で、パイプPの先端部10が、パイプ挿入孔部28の内周面27の奥方部位31にて、圧接し、パイプ先端部10の軸心と、継手本体1の流路孔(孔部)6の軸心とが完全に一致して、振れずに強固に保持される。
【0024】
ところで、(既述したように、)継手本体1の薄肉略円筒部35は、その先端内周面に、後爪36Bと前爪36Fを微小間隔W36をもって、突出状に有するが、図1図2に於て、継手本体1の基端部(中央部)から見て、左右各先端方向を、「前方」と見ることによって、後爪36B・前爪36Fと、呼称する。
そして、図7図5に示すように、後爪36Bの断面形状は、直線状第1先端辺41を上辺として有する台形乃至略台形である。なお、図7は、図4のX部を拡大して示した拡大断面図であると、見ることができる。
【0025】
図7(a)は後爪36Bの断面形状が台形の場合を示し、図7(b)では左右斜辺が凹状弯曲状の略台形を示し、図7(c)では台形の左右斜辺の内の後方斜辺が急峻であり、前方斜辺は凹状弯曲状である場合を例示している。
【0026】
また、図8図5に示すように、前爪36Fの断面形状は、直線状第2先端辺42を上辺として有する台形乃至略台形である。なお、図8は、図4のX部を拡大して示した拡大断面図であると言える。
【0027】
図8(a)は前爪36Fの断面形状が台形の場合を示し、図8(b)では台形の内の前方斜辺が急峻な台形を示す。図8(c)では台形の左右斜辺の内の前方斜辺が急峻であり、後方斜辺は凹状弯曲状の場合を例示する。
いずれにせよ、後爪36Bと前爪36Fのいずれも、その断面形状は、上辺が直線状であり、いわば「テーブルマウンティン型」と呼ぶことも可能である。
【0028】
(既に述べたが)後爪36Bと前爪36Fを、先端に有する薄肉略円筒部35は、全体として、先端方向に拡径状の円錐筒型であるが、その円筒部35の先端に付設された、後爪36Bの第1先端辺41と、前爪36Fの第2先端辺42は、相互に平行に形成され、自由状態下で、図5のように、前爪36Fの第2先端辺42よりも後爪36Bの第1先端辺41を微小寸法ΔHだけ、ラジアル内方向となるように設定する。(いわば、平行段違いに配設している。)
【0029】
また、図6に示すように、前述の微小寸法ΔHを極微小乃至零とすることも、好ましい場合がある。
なお、図5の先端頭部37の最先端ラジアル外方部38は丸味のあるアール形状としている。また、図6の先端頭部37は、先端縮径状斜面部43を有する。
【0030】
図6に示した自由状態の薄肉略円筒部35は、袋ナット2の螺進に伴って、順次、図9図10図11図12及び図13図14のように、変形してゆく。
即ち、被接続パイプPのストレート状先端部10の外周面10Aに対し、継手本体1の後爪36Bの第1先端辺41と、前爪36Fの第2先端辺42が、縮径方向(ラジアル内方向)に、移動して、最終の接続完了状態では、図13図14に示す如く、矢印P41,P42をもって示した大きな圧接面圧力をもって、強力圧接状態となって、大きなパイプ引抜抵抗力Zを発生する。
【0031】
そして、後爪36B・前爪36Fがパイプ外周面10Aに対し強力圧接状態では、この後爪36B・前爪36Fから成る爪部36が、冷媒等の流体に対する密封機能を十分に発揮して、図2に示したように、継手本体1の内周面とパイプ外周面10Aとの間に、シール材が省略される。即ち、従来例を示した図16におけるOリング58が省略されている。
【0032】
ところで、(既に述べたように)袋ナット2の孔部11の先端縮径テーパ部17は、(短ストレート部16につづく)基端側急勾配テーパ部17Aと、先端側緩勾配テーパ部17Bをもって、構成されている。図6に示した自由状態の薄肉略円筒部35の先端頭部37の最外径部37Aは、短ストレート部16の内径寸法と同一径、乃至、僅かに小さく設定しておく。しかも、斜面部43が形成されているので、図9の状態まで容易に先端頭部37を侵入させることができる。つまり、先端頭部37の最先端アール部38Aが、(図9に示したように)急勾配テーパ部17Aに当る。
【0033】
引続き袋ナット2を螺進させれば、アール部38Aは、急勾配テーパ部17Aと緩勾配テーパ部17Bの境目に到達し(図10参照)、このとき、パイプPの外周面10Aに対して、後爪36Bの第1先端辺41と、前爪36Fの第2先端辺42が、接触を開始する。
引続き袋ナット2を螺進させてゆけば、図11及び図12に示すように、斜面部43が、緩勾配テーパ部17Bに摺接しつつ、かつ、同一勾配(傾斜角度)を保持しつつ、先端頭部37は、ラジアル内方向に動き、パイプPが局部的に縮径変形を起こす。さらに、袋ナット2を螺進させてゆけば、図13図14に示した最終締付状態となる。
【0034】
銅(Cu)等の比較的柔らかいパイプPは、局部的に縮径変形を起こして、(図11から)図12を経て図13図14のような形状となるが、第1先端辺41と第2先端辺42は相互に平行を保ちつつ(図6参照)、パイプPの外周面10Aに対して、強力圧接状態となって、大きなパイプ引抜抵抗力Zを発揮する。
図13図14に於て、破線Yは、パイプPの軸心と平行な基準線を示す。即ち、この基準線(破線)Yを基準として、パイプPの外周面10Aが如何に変形しているか、及び、後爪36Bと前爪36Fの傾斜姿勢と相対的位置関係を明らかに示すためのものである。
【0035】
図13図14に示した接続完了状態に於て、後爪36B及び前爪36Fは、略等しい圧接面圧力P41,P42をもってパイプ外周面10Aに対して強力圧接状態となり、(図14に示した)後爪36Bによる引抜抵抗力Z41と、前爪36Fによる引抜抵抗力Z42は、略相等しくなる。
即ち、図14に於て、次式が成立する。
Z=Z41+Z42
41≒Z42
さらに、言い換えれば、(図14に示すように、)全体パイプ引抜抵抗力を示すベクトルZに関して、後爪36Bと前爪36Fは、各々、ベクトルZ41とベクトルZ42をもって示すように、相等しく分担する。
【0036】
具体的に、後爪36Bの引抜抵抗力(ベクトル)Z41と、前爪36Fの引抜抵抗力(ベクトル)Z42を、略等しくするための構成を、以下、説明すると、自由状態では、図6に示したように、後爪36Bの第1先端辺41と、前爪36Fの第2先端辺42を、微小(段差)寸法ΔHをもって相互平行として、さらに、第1先端辺41を第2先端辺42よりもラジアル内方として、配設しておく。
そして、強力圧接状態(接続完了状態)においては、図13図14に示す如く、第2先端辺42が第1先端辺41よりもラジアル内方向に突出状とさせ、又は、両先端辺42,41をラジアル方向同一位置となるように、袋ナット2の先端縮径テーパ部17の先端側の傾斜角度───つまり、図9図14では、緩勾配テーパ部17Bの傾斜角度───と、先端頭部37の形状と寸法を、決定する。
【0037】
特に、先端頭部37の形状と寸法について、さらに具体的に説明すれば、先端頭部37の外周面(斜面部)43は、緩勾配テーパ部17Bに圧接して安定姿勢を維持するに十分なアキシャル方向寸法をもってストレート傾斜状に形成する。そして、後爪36Bと前爪36Fを結ぶ直線(図示省略)が、図14図13)に示した破線Yと平行状として、乃至、先端方向(前方)へゆくにしたがって、破線Yにしだいに接近するように、後爪36Bと前爪36Fのラジアル方向位置を、設定する。
なお、図5に示す形状の場合には、先端頭部37が、ラジアル内方へやや大き目に、首を振るように、先端縮径テーパ部17の緩勾配テーパ部17B、及び、最奥当り勾配部17Cの寸法と形状を設定する。
【0038】
そして、継手本体1自身の薄肉略円筒部35に於て、その外周面に小突起33が付設されている。図例では、小突起33は略台形状である。
この小突起33は、図12、及び、図13に示すように、袋ナット2の短ストレート部16に対応し、受圧状態下で、薄肉略円筒部35が過大に拡径変形しようとした際、小突起33が袋ナット2の孔部11の内面に当接して、それを阻止する。特に、小突起33は、孔部11の短ストレート部16に対応している(図13参照)。
【0039】
図9図10図11に示した挿入初期から中期までは、薄肉略円筒部35は、孔部11の内周面に対して先端頭部37のみが摺接するので、特に、袋ナット2を作業工具で回転させるときの回転トルクは小さく、軽快に作業できる利点がある。
そして、図12及び図13に示した最終近く、及び、最終締付状態下では、小突起33が短ストレート部16に当接して、薄肉略円筒部35のセンタリングを行うという利点もある。
【0040】
なお、図1図2に於て、Oリング等のシール48が設けられているが、冷媒等の流体の外部漏洩阻止のためではなく、本発明における圧接部位や塑性変形部位等の応力腐食を防止するためのものであり、耐酸素性ゴムが望ましい。また、本発明は、図示の実施の形態に限らず、設計変更自由であって、例えば、袋ナット2の短ストレート部16を省略し、あるいは、緩やかなテーパ状とするも、自由である。
【0041】
本発明は、以上詳述したように、継手本体1への袋ナット2の螺進に伴って、被接続パイプPの外周面10Aに対し、強力圧接状態となって、パイプ引抜抵抗力Zを発生する引抜阻止用爪部36を、上記継手本体1自身が一体に有する構成であるので、袋ナット2を螺進するだけで、被接続パイプPに大きな引抜抵抗力Zを発揮する。かつ、確実な密封性能を発揮する配管接続作業を、容易かつ迅速に行い得る。特に、部品点数が少なく、小部品紛失の虞れがなく、アキシャル方向の寸法が著しく減少できて、コンパクト化を図り得る。また、従来(図16参照)に比較すると、流体洩れを阻止すべき箇所が半減し、シール性能が安定して優れた管継手が得られる。
さらに、従来の図16に示した管継手におけるストップリング56が省略されるので、前述した未解決の課題(i)の特別な治具を使用した「予備加工」が全く省略できる。これに伴って、配管接続現場での作業能率が飛躍的に改善できる。
【0042】
また、本発明は、上記引抜阻止用爪部36は、上記継手本体1の先端に突出状の薄肉略円筒部35の先端に形成され、上記引抜阻止用爪部36は、微小間隔W36をもって配設された後爪36Bと前爪36Fにて構成され、上記後爪36Bの断面形状は、直線状第1先端辺41を上辺として有する台形乃至略台形であり、上記前爪36Fの断面形状は、直線状第2先端辺42を上辺として有する台形乃至略台形であり、被接続パイプPの上記外周面10Aに対し、上記継手本体1の上記後爪36Bの第1先端辺41と、上記前爪36Fの第2先端辺42が、上記袋ナット2の螺進に伴って、強力圧接状態となって、パイプ引抜抵抗力Zを発生するよう構成したので、パイプ耐引抜力は、台形乃至略台形の第1先端辺41と第2先端辺42による面的な強力圧接状態が得られ(図14参照)、十分に強力な耐引抜力を発揮できる。
配管工事完了後、パイプPをその軸心廻りに回転させる外力が作用した際、面的圧接力(図14に示す圧接面圧力P41,P42参照)が強大であるため、パイプPは回転せず、爪部36とパイプ外周面10Aとの間のメタルシール性(密封性)は確実に維持される。
【0043】
また、上記袋ナット2は、上記継手本体1の雄ネジ部9に螺着される雌ネジ部12を孔部11の基端に有し、かつ、該孔部11の中間には、段付部15と先端縮径テーパ部17とを、有し、さらに、上記先端縮径テーパ部17が、基端側急勾配テーパ部17Aと先端側緩勾配テーパ部17Bをもって、構成されているので、袋ナット2の螺進回数を減少して、配管接続作業の能率向上を図り得る。即ち、薄肉略円筒部35が小さい力で縮径できる袋ナット2の螺進初期(図9から図10までの状態参照)にあっては、僅かな袋ナット2の回転で縮径させて、袋ナット2の螺進全回数を減らすことが可能となる。
その後、後爪36Bと前爪36Fがパイプ外周面10Aに接触した後(図11図13参照)は、先端側緩勾配テーパ部17Bにてゆっくりと縮径させることができて、合理的に螺進作業を行い得る。
【0044】
また、上記パイプPの外周面10Aに対し、上記後爪36B及び前爪36Fが、上記強力圧接状態において、パイプ引抜抵抗力Zを略相等しく分担するよう構成したので、図14に示したように、パイプ引抜抵抗力Zは、(Z41+Z42)として十分大きな値となり、実用上、優れた耐引抜力を発揮する。特に、パイプPの材質が塑性変形し易い軟らかい場合には、爪部が突き挿さらず、図12から図13図14のように逃げてしまうが、このような悪条件下であっても、実用上、十分に大きい耐引抜力が得られる。
【0045】
また、上記薄肉略円筒部35の自由状態において、上記後爪36Bの上記第1先端辺41と、上記前爪36Fの上記第2先端辺42を、相互に平行として、かつ、上記第1先端辺41を上記第2先端辺42よりもラジアル内方として、配設し、さらに、上記強力圧接状態において、上記第2先端辺42が上記第1先端辺41よりもラジアル内方向に突出状、又は、上記第2先端辺42と上記第1先端辺41がラジアル方向同一位置となるように、上記先端縮径テーパ部17の先端側の傾斜角度と、上記先端頭部37の形状と寸法を、設定したので、後爪36Bと前爪36Fのいずれか一方が「遊ぶ」ことがなく、各々が略相等しい引抜抵抗力Z41,Z42を、発揮し、全体のパイプ引抜抵抗力Zは十分大となって、実用上、優秀な耐引抜力が得られる。特に、パイプPの材質が塑性変形し易い軟らかい場合には、爪部が突き挿さらず、塑性変形しつつパイプ外周面10Aが弯曲凹状に逃げてしまう(図12から図13図14参照)。このような悪条件下であっても、十分に大きい耐引抜力が得られる。
【0046】
また、上記後爪36Bと上記前爪36Fを先端に有する上記薄肉略円筒部35は、先端方向に拡径状の円錐筒型としたので、袋ナット2の先端縮径テーパ部17に対する、薄肉略円筒部35の外周面の接触面積が、(同一径の円筒型に比較して)少なく、袋ナット2の回転トルクも小さくて済むと共に、回転に要する仕事量(エネルギー)も少なく、袋ナット2の螺進作業性が優れる。
【0047】
また、受圧状態下で、上記薄肉略円筒部35が、過大拡径変形するのを阻止するための小突起33を、上記薄肉略円筒部35の外周面に付設して、上記小突起33を上記袋ナット2の上記孔部11の内面に当接するように構成したので、受圧状態下で薄肉略円筒部35が異常拡径変形させることなく、薄肉略円筒部35の肉厚を十分に薄くできる。この肉厚が十分に薄いことによって、袋ナット2の回転トルクも小さくて済み、回転に要する仕事量(エネルギー)も減少できて、袋ナット2の螺進作業性が向上する。
【0048】
また、上記継手本体1のパイプ挿入孔部28の奥方部位31を、奥方縮径テーパ状に形成し、パイプ挿入完了状態でパイプ外周面10Aが上記パイプ挿入孔部28の内周面27に圧接するよう構成したので、パイプPを振らせる方向の外力が作用したとしても、パイプPは孔部28に対して、両軸心相互を完全に一致するように維持される。従って、そのような外力がパイプPに作用した際に、パイプPを強力に保持している薄肉略円筒部35の先端頭部37を中心として、振動運動を起こし、後爪36Bと前爪36Fによる強力圧接状態(掴持状態)が、破壊されることを、防止できる。
【符号の説明】
【0049】
1 継手本体
2 袋ナット
9 雄ネジ部
10A 外周面
11 孔部
12 雌ネジ部
15 段付部
17 先端縮径テーパ部
17A 急勾配テーパ部
17B 緩勾配テーパ部
27 内周面
28 パイプ挿入孔部
31 奥方部位
33 小突起
35 薄肉略円筒部
36 爪部
36B 後爪
36F 前爪
37 先端頭部
41 第1先端辺
42 第2先端辺
P パイプ
36 微小間隔
Z パイプ引抜抵抗力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16