(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】プロジェクション溶接装置
(51)【国際特許分類】
B23K 11/14 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
B23K11/14 310
(21)【出願番号】P 2017234686
(22)【出願日】2017-12-06
【審査請求日】2020-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】590000721
【氏名又は名称】株式会社キーレックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古田 猛志
(72)【発明者】
【氏名】宮本 芳昭
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-038132(JP,U)
【文献】特開2012-187629(JP,A)
【文献】実開昭60-034387(JP,U)
【文献】実開昭52-084517(JP,U)
【文献】特開2008-260058(JP,A)
【文献】特開2001-259856(JP,A)
【文献】特開平07-314152(JP,A)
【文献】特開平9-295162(JP,A)
【文献】特開平8-197263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接装置本体に設けられた上部電極と下部電極との間に、ワークとプロジェクションナットとを挟んだ状態で、通電によるプロジェクション溶接によって、上記ワークと上記プロジェクションナットとを接合するプロジェクション溶接装置であって、
上記下部電極を保持する、筒状をなす下部電極ホルダと、
上記下部電極ホルダの筒内に設けられ、上記ワークと上記プロジェクションナットとの位置決めをする昇降可能なガイドピンとを備え、
上記ガイドピンは、上記下部電極ホルダの筒軸方向に延びかつ該下部電極ホルダの筒内に配置されるロッド部と、該ロッド部における該ロッド部の軸方向の上側の端部に設けられかつ上記プロジェクションナットを受けるナット受け部とを有し、少なくとも上記ナット受け部が上記ワークに形成された孔部を貫通した状態で上記プロジェクションナットを受けるものであり、
上記ナット受け部は、内径の異なる複数種類のプロジェクションナットを受け取り可能なように、上記軸方向の上側から下側に向かって段形状をなしており
、
上記ロッド部の最大径は、上記下部電極ホルダの内径よりも小さく、
上記ロッド部は、該ロッド部の径方向内側に向かって窪んだ窪み部を有し、
上記ガイドピンは、上記下部電極ホルダの径方向に付勢されかつ上記下部電極ホルダの筒内に配置された爪部が上記窪み部と係合することで上記下部電極ホルダに保持されているとともに、上記下部電極ホルダに対して上側に引っ張られたときには、上記爪部と上記窪み部との係合が解除されて該下部電極ホルダから抜き出されることを特徴とするプロジェクション溶接装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクション溶接装置において、
上記ナット受け部は、上記ロッド部の最大径よりも径が小さくかつそれぞれ径の異なる複数の円柱体が、上記軸方向の上側ほど径の小さい円柱体が位置するように配設されており、各円柱体で、各円柱体の径に対応した内径の上記プロジェクションナットを受け取り可能に構成されていることを特徴とするプロジェクション溶接装置。
【請求項3】
請求項2に記載のプロジェクション溶接装置において、
上記ナット受け部を構成する上記各円柱体の上側の稜部は、アール形状に加工されていることを特徴とするプロジェクション溶接装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載のプロジェクション溶接装置において、
上記溶接装置は、上記ワークに対して、上記プロジェクションナットに加えてプロジェクションボルトを上記ワークに対して接合可能に構成されており、
上記ガイドピンは、上記ナット受け部に加えて、上記プロジェクションボルトを受けるボルト受け部を更に有し、上記ワークと上記プロジェクションボルトとを位置決め可能に構成されており、
上記ボルト受け部は、上記ナット受け部の最も上端部分から上記軸方向の上側に突出した突起により構成されていることを特徴とするプロジェクション溶接装置。
【請求項5】
請求項
4に記載のプロジェクション溶接装置において、
上記下部電極は、上記下部電極ホルダの上記筒軸方向における上側の端部に設けられかつプロジェクション溶接時に上記ワークと当接する電極チップを有し、
上記ガイドピンの上記ナット受け部及び上記ボルト受け部の全体は、該ガイドピンに下向きの力が加えられていない無負荷状態では、上記電極チップを貫通して、該電極チップよりも上側に位置しており、
上記ガイドピンの上記ロッド部の最大径よりも小さい
上記孔部を有する上記ワークに対して、当該孔部の周囲に上記プロジェクションナット又は上記プロジェクションボルトを接合させるときには、上記ワーク及び上記プロジェクションナット若しくは上記プロジェクションボルトごと、上記ガイドピンが上記筒軸方向の下側に押し下げられることで、上記電極チップと上記ワークとが当接することを特徴とするプロジェクション溶接装置。
【請求項6】
請求項
5に記載のプロジェクション溶接装置において、
上記溶接装置本体は、上記上部電極を昇降させる上部電極昇降手段をさらに備え、
上記上部電極昇降手段は、プロジェクション溶接時には、上記上部電極と上記プロジェクションナット又は上記プロジェクションボルトとを当接させた状態で、該プロジェクションナット又は該プロジェクションボルトを上記ワークに当接させるべく、上記上部電極を上記下部電極に向かって移動させるように構成されており、
上記ガイドピンの上記ロッド部の最大径よりも小さい
上記孔部を有する上記ワークに対して、当該孔部の周囲に上記プロジェクションナット又は上記プロジェクションボルトを接合させるときには、上記上部電極昇降手段によって上記上部電極が上記下部電極に向かって移動されることによって、上記ガイドピンが上記筒軸方向の下側に押し下げられて、上記電極チップと上記ワークとが当接することを特徴とするプロジェクション溶接装置。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1つに記載のプロジェクション溶接装置において、
上記溶接装置本体は、変位可能なアームを有するロボットの該アームに保持されていることを特徴とするプロジェクション溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクション溶接装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の車体構成部材にウェルドナットを設けるときには、プロジェクション接合によって、ワークとしての車体構成部材にプロジェクションナットを接合させることで、ウェルドナットを形成している。
【0003】
例えば、特許文献1には、上部電極と下部電極とを備え、この上下電極間で鋼板とプロジェクションナットを溶接する抵抗溶接機(プロジェクション溶接装置)であって、抵抗溶接機に固定配置される筒状の電極ホルダを有し、この電極ホルダには前記鋼板およびプロジェクションナットを位置決めする昇降自在なガイドピンと、このガイドピンにロッドを介して連結され、ガイドピンを常時上向きに付勢する押し上げ部材とが内蔵されている抵抗溶接機が開示されている。
【0004】
また、特許文献1に記載の抵抗溶接機は、ガイドピンは、ロッド部とプロジェクションナットを受けるナット受け部を有している。ナット受け部は、断面半楕円形の突起で構成されており、ガイドピンでプロジェクションナットを溶接位置に案内するときには、ガイドピンのロッド部までワークの孔部を貫通した状態で、ナット受け部がプロジェクションナットを受けるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、通常、ウェルドナットには、目的毎に内径の異なるプロジェクションナットが用いられる。このため、1つの車体構成部材に対して、内径がそれぞれ異なる複数種類のプロジェクションナットを接合しなければならないことがある。この場合、プロジェクションナットが接合されるワークの孔部の径も、プロジェクションナットの内径に対応して変更されている。
【0007】
特許文献1に記載のプロジェクション溶接装置では、ガイドピンでプロジェクションナットを溶接位置に案内するときには、ガイドピンのロッド部までワークの孔部を貫通した状態で、ナット受け部がプロジェクションナットを受けるようになっているため、ワークの孔部の径がガイドピンのロッド部の径よりも小さい場合には適用できない。つまり、1つのガイドピンでは、特定の内径のプロジェクションナットしか案内できないようになっている。このため、異なる内径のプロジェクションナットを接合させる際には、ガイドピンを交換するか、又はプロジェクションナットの内径毎に複数のプロジェクション溶接装置を用意する必要があり、生産性の悪化を招くおそれがある。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、種々の内径のプロジェクションナットを1台のプロジェクション溶接装置で接合可能にして、生産性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、第1の発明では、溶接装置本体に設けられた上部電極と下部電極との間に、ワークとプロジェクションナットとを挟んだ状態で、通電によるプロジェクション溶接によって、上記ワークと上記プロジェクションナットとを接合するプロジェクション溶接装置を対象として、上記下部電極に設けられ、筒状をなす電極ホルダと、上記下部電極ホルダの筒内に設けられ、上記ワークと上記プロジェクションナットとの位置決めをする昇降可能なガイドピンとを備え、上記ガイドピンは、上記下部電極ホルダの筒軸方向に延びかつ該下部電極ホルダの筒内に配置されるロッド部と、該ロッド部における該ロッド部の軸方向の上側の端部に設けられかつ上記プロジェクションナットを受けるナット受け部とを有し、少なくとも上記ナット受け部が上記ワークに形成された孔部を貫通した状態で上記プロジェクションナットを受けるものであり、上記ナット受け部は、内径の異なる複数種類のプロジェクションナットを受け取り可能なように、上記軸方向の上側から下側に向かって段形状をなしており、上記ロッド部の最大径は、上記下部電極ホルダの最大径よりも小さく、上記ロッド部は、該ロッド部の径方向内側に向かって窪んだ窪み部を有し、上記ガイドピンは、上記下部電極ホルダの径方向に付勢されかつ上記下部電極ホルダの筒内に配置された爪部が上記窪み部と係合することで上記下部電極ホルダに保持されているとともに、上記下部電極ホルダに対して上側に引っ張られたときには、上記爪部と上記窪み部との係合が解除されて該下部電極ホルダから抜き出されることを特徴とする。
【0010】
第2の発明では、上記ナット受け部は、上記ロッド部の最大径よりも径が小さくかつそれぞれ径の異なる複数の円柱体が、上記軸方向の上側ほど径の小さい円柱体が位置するように配設されており、各円柱体で、各円柱体の径に対応した内径の上記プロジェクションナットを受け取り可能に構成されていることを特徴とする。
【0011】
第3の発明では、第2の発明において、上記ナット受け部を構成する上記各円柱体の上側の稜部は、アール形状に加工されていることを特徴とする。
【0012】
第4の発明では、第1~第3の発明のいずれか1つに記載の発明において、上記溶接装置は、上記ワークに対して、上記プロジェクションナットに加えてプロジェクションボルトを上記ワークに対して接合可能に構成されており、上記ガイドピンは、上記ナット受け部に加えて、上記プロジェクションボルトを受けるボルト受け部を更に有し、上記ワークと上記プロジェクションボルトとを位置決め可能に構成されており、上記ボルト受け部は、上記ナット受け部の最も上端部分から上記軸方向の上側に突出した突起により構成されていることを特徴とする。
【0013】
第5の発明では、第4の発明において、上記下部電極は、上記下部電極ホルダの上記筒軸方向における上側の端部に設けられかつプロジェクション溶接時に上記ワークと当接する電極チップを有し、上記ガイドピンの上記ナット受け部及び上記ボルト受け部の全体は、該ガイドピンに下向きの力が加えられていない無負荷状態では、上記電極チップを貫通して、該電極チップよりも上側に位置しており、上記ガイドピンの上記ロッド部の最大径よりも小さい孔部を有する上記ワークに対して、当該孔部の周囲に上記プロジェクションナット又は上記プロジェクションボルトを接合させるときには、上記ワーク及び上記プロジェクションナット若しくは上記プロジェクションボルトごと、上記ガイドピンが上記筒軸方向の下側に押し下げられることで、上記電極チップと上記ワークとが当接することを特徴とする。
【0014】
第6の発明では、第5の発明において、上記溶接装置本体は、上記上部電極を昇降させる上部電極昇降手段をさらに備え、上記上部電極昇降手段は、プロジェクション溶接時には、上記上部電極と上記プロジェクションナット又は上記プロジェクションボルトとを当接させた状態で、該プロジェクションナット又は該プロジェクションボルトを上記ワークに当接させるべく、上記上部電極を上記下部電極に向かって移動させるように構成されており、上記ガイドピンの上記ロッド部の最大径よりも小さい孔部を有する上記ワークに対して、当該孔部の周囲に上記プロジェクションナット又は上記プロジェクションボルトを接合させるときには、上記上部電極昇降手段によって上記上部電極が上記下部電極に向かって移動されることによって、上記ガイドピンが上記筒軸方向の下側に押し下げられて、上記電極チップと上記ワークとが当接することを特徴とする。
【0015】
第7の発明では、第1~第6の発明のいずれか1つに記載の発明において、上記溶接装置本体は、変位可能なアームを有するロボットの該アームに保持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によると、ナット受け部が、内径の異なる複数種類のプロジェクションナットを受け取り可能なように、ロッド部の軸方向の上側から下側に向かって段形状をなしているため、該段形状の各段で内径が異なる各種プロジェクションナットをそれぞれ受け取ることができる。これにより、ガイドピンを交換することなく、内径が異なる各種プロジェクションナットを適切に案内することができる。したがって、種々の内径のプロジェクションナットを1台のプロジェクション溶接装置で接合可能にして、生産性を向上させることができる。
【0017】
また、ナット受け部が段形状になっていることにより、ナット受け部がプロジェクションナットを受けた際に、該プロジェクションナットが斜めになることを出来る限り抑制することができる。これにより、プロジェクションナットの軸心とワークの孔部の中心とがずれることを出来る限り抑制することもできる。
【0018】
第2の発明によると、ワークの孔部の径がロッド部の径よりも小さい場合には、ナット受け部のみがワークの上記孔部を貫通することになる。ナット受け部は円柱体によって構成されているため、ナット受け部のみがワークの上記孔部を貫通したとしても、ワークに対するナット受け部の突出量をある程度大きくすることができる。これにより、ワークの上記孔部の径がロッド部の最大径よりも小さい場合であっても、プロジェクションナットを適切に案内することができる。また、ナット受け部は、それぞれ径の異なる複数の円柱体が、上側ほど径の小さい円柱体が位置するように配設されおり、各円柱体で、各円柱体の径に対応した内径のプロジェクションナットを受け取り可能に構成されているため、ガイドピンを交換することなく、内径が異なる各種プロジェクションナットを適切に案内することができる。したがって、種々の内径のプロジェクションナットを1台のプロジェクション溶接装置で接合可能にして、生産性をより向上させることができる。
【0019】
第4の発明によると、1台のプロジェクション溶接装置で、プロジェクションナットに加えて、プロジェクションボルトもワークに接合させることができるため、生産性をより向上させることができる。
【0020】
第5の発明によると、ガイドピンのナット受け部及びボルト受け部の全体が、該ガイドピンに下向きの力が加えられていない無負荷状態において、電極チップを貫通して、該電極チップよりも上側に位置しているため、ワークの孔部にガイドピンを貫通させることが容易になり、ワークの位置合わせが簡単になる。
【0021】
一方で、ワークの孔部の径がガイドピンのロッド部の最大径よりも小さい場合には、ナット受け部を構成する複数の円柱体のうち相対的に上側に位置する円柱体のみが上記孔部を貫通する。このため、ガイドピンのナット受け部及びボルト受け部の全体が、電極チップを貫通して、該電極チップよりも上側に位置している場合には、ナット受け部又はボルト受け部がワークの上記孔部を貫通した段階では、電極チップとワークとの間に隙間が形成される。そこで、ワーク及びプロジェクションナット若しくはプロジェクションボルトごと、ガイドピンを上記筒軸方向の下側に押し下げることで、ワークと電極チップとを当接させることができる。ガイドピンのナット受け部及びボルト受け部の全体が、電極チップを貫通して、該電極チップよりも上側に位置していたとしても、プロジェクション溶接を適切に行うことができる。
【0022】
第6の発明によると、上部電極昇降手段による上部電極の下側への移動を利用して、ワーク及びプロジェクションナット若しくはプロジェクションボルトごと、ガイドピンを上記筒軸方向の下側に押し下げることができるため、ワーク等を押し下げる機構が別途必要なくなり、装置本体の構成を簡単にすることができる。また、下部電極の電極チップとワークとが当接したときには、上部電極、プロジェクションナット又はプロジェクションボルト、ワーク、及び下部電極に通電可能な状態となるため、溶接のサイクルタイムを短くすることができ、生産性を一層向上させることができる。
【0023】
第7の発明によると、装置本体を移動させて、ワークとプロジェクションナット、又はワークとプロジェクションボルトとの位置決めを行うことができるため、プロジェクションナット及びプロジェクションボルトの接合箇所が複数ある場合に、各接合箇所での上記位置決めが容易になる。これにより、生産性をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係るプロジェクション溶接装置の構成を示す斜視図である。
【
図2】プロジェクション溶接装置の上部電極及び下部電極の側面図である。
【
図3】
図2のIII-III線相当の断面図である。
【
図5】ボルト供給装置のチャックの構成を示す断面図である。
【
図6】プロジェクション溶接装置の制御系を示す概略図である。
【
図7】プロジェクションナットをワークに接合させる場合であって、ワークが搬送された状態を示す図である。
【
図8】
図7の状態から、ガイドピンがワークの孔部に挿通した状態を示す図である。
【
図9】
図8の状態から、プロジェクションナットが供給された状態を示す図である。
【
図10】
図9の状態から、上部電極及び下部電極で、プロジェクションナットとワークとを挟んで、通電を開始した状態を示す図である。
【
図11】別のプロジェクションナットをナット受け部で受けたときの
図8相当図である。
【
図12】プロジェクションボルトをワークに接合させる場合であって、ガイドピンがボルトを受けた状態を示す図である。
【
図13】
図12の状態から上部電極がプロジェクションボルトを下側に押し込む状態を示す図である。
【
図14】
図13の状態からプロジェクションボルトがワークに当接した状態を示す図である。
【
図15】
図14の状態からボルト配送装置が退避して、通電を開始した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0026】
〈全体構成〉
図1は、本発明の実施形態に係るプロジェクション溶接装置1を概略的に示す。このプロジェクション溶接装置1は、ワークW(
図7等参照)に対してプロジェクションナットN(
図7~
図11参照)及びプロジェクションボルトB(
図5及び
図12~
図15参照)を、プロジェクション溶接により接合するためのプロジェクション溶接装置である。
【0027】
図1に示すように、プロジェクション溶接装置1は、変位可能なアーム11を有するロボット10と、溶接装置本体20と、プロジェクションナットNを供給するためのナット供給装置30と、プロジェクションボルトBを供給するためのボルト供給装置40と、ロボット10、溶接装置本体20、ナット供給装置30、及びボルト供給装置40を作動制御する制御装置100(
図6参照)と、を有している。
【0028】
ロボット10は、互いに回動可能に連結された3つのアーム11と、基台12とを有する多関節の産業用ロボットである。3つのアーム11は、基端が基台12に接続された基台側アーム11aと、先端に溶接装置本体20が保持された本体側アーム11bと、基台側アーム11aの先端部と本体側アーム11bの基端側とを連結する中間アーム11cとで構成されている。基台12は、工場の床面等に設置されており、これによりプロジェクション溶接装置1が工場の床面等に対して固定される。
【0029】
基台側アーム11aは、鉛直方向に延びる軸周りに回動可能に上記基台12と接続されている。基台側アーム11aが上記軸周りに回動したときには、溶接装置本体20ごと各アーム11が水平方向に回動するようになっている。
【0030】
基台側アーム11aの先端部と中間アーム11cの長手方向の一端部、及び、本体側アーム11bの基端部と中間アーム11cの上記長手方向の他端部とは、水平方向に延びる軸13周りに回動可能にそれぞれ連結されている。溶接装置本体20は、本体側アーム11b及び中間アーム11cを上記軸13周りに回動させることにより、鉛直方向の軸及び軸13の両方に直交する方向に進退させることができる。
【0031】
尚、以下の説明では、軸13の延びる方向を左右方向、鉛直方向の軸及び軸13の両方に直交する方向を前後方向という。また、前後方向については、溶接装置本体20が基台12から離れる側を前側、溶接装置本体20が基台12に近づく側を後側という。
【0032】
溶接装置本体20は、上部電極50と、該上部電極50を昇降させる上側シリンダ51(上部電極昇降手段)と、下部電極60とを有している。
【0033】
〈上部電極〉
上部電極50は、
図1に示すように、上側シリンダ51ごと支持機構を介して、本体側アーム11bの先端に保持されている。上記支持機構は、上側シリンダ51を支持する上側支持部22と、該上側支持部22から下側に延びた後で前側に向かって延びる、側面視略L字状の下側支持部23とを有している。下側支持部23の先端部には、上記下部電極60(厳密には後述する下部電極ホルダ61)を挟持して保持する下側保持部23aが設けられている。
【0034】
上部電極50は、
図1及び
図2に示すように、上部電極ホルダ52の下側端部に保持されている。上部電極ホルダ52の上端側の部分は、上側シリンダ51内に臨んでいる。上部電極50は、この上部電極ホルダ52が上側シリンダ51によって昇降されることによって、昇降されるようになっている。
【0035】
上側シリンダ51は、流体圧シリンダであって、油圧や空気圧を利用して上部電極50を昇降させる。図示は省略するが、上側シリンダ51内には、上部電極50を上側に向かって付勢するための付勢部材が配設されている。上側シリンダ51内に流体が供給されていない状態では、上部電極50は上記付勢部材の付勢力により上側に向かって移動(つまり上昇)された状態となる一方、上側シリンダ51内に流体が供給されて、該流体による流体圧が上記付勢部材の付勢力に打ち勝つ力を発生させる流体圧になったときに、上部電極50が下側に向かって移動(つまり下降)されるようになっている。
【0036】
〈下部電極〉
下部電極60は、
図3に示すように、下部電極ホルダ61を有している。下部電極ホルダ61は円筒状をなしており、筒軸方向が上下方向になるように延びている。下部電極ホルダ61の筒内には後述するガイドピン80が昇降可能に挿通されている。
【0037】
下部電極60は、下部電極ホルダ61の上側端部に載置された電極ソケット62と、該電極ソケット62に上側から覆い被さるように嵌着された電極チップ63とを有している。電極ソケット62及び電極チップ63は共に、上記ガイドピン80が挿通される貫通孔を有している。該貫通孔の中心は下部電極ホルダ61の筒軸上に位置している。貫通孔の径は、下部電極ホルダ61の内径と同等の径に設定されている。
【0038】
下部電極ホルダ61は、
図3に示すように、その下側端部がホルダベース64に保持されている。このホルダベース64の下側の部分には、上記ガイドピン80を昇降させるための下側シリンダ65が設けられている。この下側シリンダ65はエアシリンダで構成されている。下側シリンダ65には、該下側シリンダ65内に空気を供給するためのエア供給通路65aが設けられている。
【0039】
また、
図2及び
図3に示すように、下部電極ホルダ61の下側寄りでかつホルダベース64よりも上側の部分には、プロジェクション溶接時に下部電極60を冷却する冷却水を供給するための冷却水供給部66と、下部電極60を冷却した後の冷却水を排出するための冷却水排出部67とが設けられている。冷却水供給部66及び排出部67は、ぞれぞれ、下部電極ホルダ61の径方向の外側に向かって真っ直ぐ延びた後、該径方向の外側に向かって下側に傾斜して延びている。図示は省略しているが、冷却水供給部66及び排出部67には、ウォータポンプ等で構成された冷却水供給装置と接続されるホースが接続される。該冷却水供給装置から冷却水供給部66を介して供給された冷却水は、下部電極ホルダ61内を流れて、プロジェクション溶接中の下部電極60を冷却した後、冷却水排出部67を通って冷却水供給装置に流入するようになっている。
【0040】
下部電極ホルダ61の筒内には、
図3に示すように、ワークWとプロジェクションナットN、及び、ワークWとプロジェクションボルトBとの位置決めをするための昇降可能なガイドピン80と、該ガイドピン80をつなぎネジ68を介して保持するための爪部材69と、上側端部につなぎネジ68が締結されかつ下側端部が下側シリンダ65のシリンダロッド65bと接続された樹脂ロッド70とが挿通されている。
【0041】
〈ガイドピン〉
ガイドピン80は、
図4に示すように、下部電極ホルダ61の筒軸方向に延びるロッド部81と、該ロッド部81における該ロッド部81の軸方向の上側の端部に設けられかつプロジェクションナットNを受けるナット受け部82と、該ナット受け部82の上側に設けられかつプロジェクションボルトBを受けるボルト受け部83とを有している。
【0042】
ガイドピン80のロッド部81は、
図3及び
図4に示すように、下部電極ホルダ61の内径よりも僅かに小さい径で上下に延びる大径部81aと、大径部81aから径方向の内側に窪んだ窪み部81b(特に
図4参照)が形成された中間部81cと、中間部81cにおける最小径よりも大径でかつ大径部81aよりも小径でかつ上下方向に延びる小径部81dと、小径部81dの下端から下側に向かって縮径するように延びた縮径部81eとを有している。
図3及び
図4に示すように、中間部81cは大径部81aの下側に形成され、小径部81dは中間部81cの下側に形成されている。縮径部81eの下端部は、つなぎネジ68に載置されている。ロッド部81の大径部81a、中間部81c、小径部81d、及び縮径部81eは同軸に形成されている。
【0043】
ガイドピン80のナット受け部82は、内径の異なる複数種類のプロジェクションナットNを受け取り可能なように、ロッド部81の軸方向の上側から下側に向かって段形状をなしている。具体的には、ナット受け部82は、
図3及び
図4に示すように、ロッド部81の最大径よりも径が小さくかつそれぞれ径の異なる複数の円柱体が、ロッド部81の軸方向の上側ほど径の小さい円柱体が位置するように配設されて構成されている。より具体的には、
図3及び
図4に示すように、ナット受け部82は、ロッド部81の大径部81aよりも径が小さい円柱体で構成された第1ナット受け部82aと、該第1ナット受け部82aよりも径が小さい円柱体で構成された第2ナット受け部82bとを有し、第2ナット受け部82bが第1ナット受け部82aの上側に位置するように配設されて構成されている。さらに詳しくは、ロッド部81の大径部81aの上端から、上記第1ナット受け部82aがロッド部81の軸方向の上側に向かって延びており、該第1ナット受け部82aの上端から、上記第2ナット受け部82bが上記軸方向の上側に向かって延びている。
【0044】
第1ナット受け部82a及び第2ナット受け部82bは、どちらもロッド部81と同軸に形成されている。つまり、ロッド部81、第1ナット受け部82a、及び第2ナット受け部82bは同軸になっている。
【0045】
第1ナット受け部82aの径及び第2ナット受け部82bの径は、ワークWに接合されるプロジェクションナットNの内径に応じて設定される。例えば、ワークWに接合させるプロジェクションナットNとして、内径が7mm程度のナットと5mm程度のナットとがある場合には、第1ナット受け部82aの径は7mmよりも小さい径(例えば6.8mm)に設定される一方、第2ナット受け部82bの径は5mmよりも小さい径(例えば4.8mm)に設定される。
【0046】
第1ナット受け部82aの高さ及び第2ナット受け部82bの高さは、ワークWに接合されるプロジェクションナットNの高さに応じて設定されている。
【0047】
上記ボルト受け部83は、
図3及び
図4に示すように、ナット受け部82を構成する複数の円柱体のうち最も上側に位置する円柱体から、ロッド部81の軸方向の上側に突出した突起により構成されている。より具体的には、ボルト受け部83は、第2ナット受け部82bの径方向の中心から上記軸方向の上側に向かって突出した円錐状又は円錐台状の突起で構成されている。
【0048】
ボルト受け部83を構成する円錐又は円錐台の最大径(第2ナット受け部82bとの結合部分の径)は、
図3及び
図4に示すように、第2ナット受け部82bの径よりも小さい。
【0049】
ボルト受け部83は、ナット受け部82と同軸に構成されている。このため、ロッド部81、ナット受け部82(第1ナット受け部82a及び第2ナット受け部82b)、及びボルト受け部83は同軸になっている。
【0050】
ガイドピン80は、
図3に示すように、爪部材69によって軸方向及び径方向に保持された状態で、つなぎネジ68の上に設置されている。爪部材69は、本実施形態では四つ爪で構成されている。爪部材69は、つなぎネジ68と係合したネジ側係合部69aと、ガイドピン80の窪み部81bとそれぞれ係合する4つの爪部69bと、ネジ側係合部69aと各爪部69bとを連結する連結部69cとを有している。ネジ側係合部69aは、つなぎネジ68の軸方向の一部を周方向に覆うような円筒状をなしている。4つの連結部69cは、ネジ側係合部69aの周方向に等間隔に並んでおり、これにより、4つの爪部69bも該周方向に等間隔に並んでいる。
【0051】
爪部材69の連結部69cはそれぞれ弾性部材によって構成されており、爪部69bがガイドピン80の窪み部81bと係合した状態では、各連結部69cは、その弾性力によって、各爪部69bをガイドピン80の径方向の内側に向かって、窪み部81bに押し付けるようになっている。これにより、ガイドピン80が軸方向及び径方向に保持される。つまり、ガイドピン80は、爪部材69の連結部69cの弾性力によって軸方向及び径方向に保持される。
【0052】
上述のように、各爪部69bをガイドピン80の径方向の内側に向かって、窪み部81bに押し付けることで、爪部材69がガイドピン80を保持するようになっているため、爪部材69のガイドピン80に対する保持力は、軸方向の保持力が径方向の保持力よりも弱くなる。このため、ガイドピン80を下部電極ホルダ61に対して上側に引っ張ったときには、ガイドピン80は下部電極ホルダ61から抜き出されるようになっている。これにより、ガイドピン80を交換する必要が生じた場合には、ガイドピン80を下部電極ホルダ61から取り外すことができる。また、ガイドピン80のロッド部81の下側端部には、縮径部81eが形成されているため、ガイドピン80を容易に下部電極ホルダ61に取り付けることもできる。よって、ガイドピン80の交換を容易に行うことができる。
【0053】
図3に示すように、爪部材69は、下部電極ホルダ61の径方向において、該下部電極ホルダ61の筒内に収まるようになっている。下側シリンダ65によってガイドピン80が昇降したときには、爪部材69も、下部電極ホルダ61の筒内や電極ソケット62の貫通孔を通って昇降する。
【0054】
上記樹脂ロッド70は、上述したように、上側端部につなぎネジ68が締結されている。これにより、樹脂ロッド70は、つなぎネジ68及び爪部材69を介して、ガイドピン80を保持した状態となっている。
【0055】
また、上述したように、樹脂ロッド70の下側端部はシリンダロッド65bと接続されている。下側シリンダ65に空気が供給されてシリンダロッド65bが上昇したときには、樹脂ロッド70も該シリンダロッド65bと共に上昇する。そして、樹脂ロッド70が上昇することで、樹脂ロッド70に保持されたガイドピン80が上昇する。一方で、下側シリンダ65から空気が排出されてシリンダロッド65bが下降したときには、樹脂ロッド70も下降して、樹脂ロッド70と共にガイドピン80が下降する。
【0056】
樹脂ロッド70の下側端は、
図3に示すように、ガイドピン80に下向きの力が加えられていない無負荷状態では、ホルダベース64の底部から浮いた状態になっている。詳しくは、本実施形態では、下側シリンダ65内には、常に一定量の空気が供給されるようになっており、この一定量の空気に基づく力によって、シリンダロッド65b及び樹脂ロッド70が上側に上昇して、該樹脂ロッド70がホルダベース64の底部から浮いた状態となる。これにより、ガイドピン80に下向きの力が加えられていない無負荷状態では、
図3に示すように、ガイドピン80のナット受け部82及びボルト受け部83の全体及びロッド部81の一部は、電極チップ63を貫通して、該電極チップ63よりも上側に位置した状態となる。
【0057】
下側シリンダ65には、樹脂ロッド70の位置を検出するための位置センサ101(
図6参照)が設けられている。
【0058】
〈ナット供給装置〉
ナット供給装置30は、
図1に示すように、ナットシューター31とナットガイド装置32とを備えている。ナットシューター31は、ナット供給部33とナット待機部34とを有している。ナット供給部33は、図示を省略するナット供給源とチューブなどの接続具によって接続されている。ナットガイド装置32は、ガイド筒35と、該ガイド筒35内に挿入されたナット供給ロッド(図示省略)と、該ナット供給ロッドを進退可能に駆動するエアシリンダ(図示省略)とを有している。
【0059】
上記ナット供給源からナット供給部33を介して送られたプロジェクションナットNは、ナット待機部34内で待機する。ナット待機部34内にプロジェクションナットNが待機した状態で、上記エアシリンダが駆動すると、上記ナット供給ロッドがナット待機部34内に待機しているプロジェクションナットNを保持して、上記ガイドピン80に向かって進んでいく。その後、上記プロジェクションナットNは、ガイドピン80のナット受け部82で受け止められる。このようにして、プロジェクションナットNがナット供給装置30からガイドピン80の位置に供給される。
【0060】
プロジェクションナットNには、
図9及び
図11に示すように、ワークWに対して溶接される溶接部N1が予め形成されており、プロジェクションナットNは、該溶接部N1がワークW側に位置するように、ガイドピン80の位置に供給される。
【0061】
本実施形態では、
図1に示すように、ナット供給装置30が2台設けられている。この2台のナット供給装置30は、それぞれ異なる内径のプロジェクションナットNを供給する。ナット供給装置30自体の構成は、2台とも同じ構成である。上記ナット供給源で、プロジェクションナットを選別して、内径の異なる複数のプロジェクションナットから所望の内径のプロジェクションナットを供給することができるようになっているのであれば、ナット供給装置30を1台にしてもよい。
【0062】
〈ボルト供給装置〉
ボルト供給装置40は、
図1に示すように、ボルトシューター41とボルトガイド装置42とを備えている。ボルトシューター41は、図示を省略するボルト供給源とチューブなどの接続具によって接続されている。ボルトガイド装置42は、プロジェクションボルトBを保持するためのチャック43と、チャック43をガイドピン80の位置まで案内するロッド44aが挿入されたガイド筒44と、該ロッド44aを進退可能に駆動するエアシリンダ(図示省略)とを有している。
【0063】
上記チャック43は、一対のチャックレバー43aが、それぞれ水平方向に接離可能に構成されている。詳細な図示は省略するが、各チャックレバー43aは、スプリングにより互いに近づく方向に付勢されており、各チャックレバー43aに負荷がかけられていない無負荷状態では、水平方向に当接した状態になっている。一方で、チャックレバー43aに、該チャックレバー43a同士が離れる方向に、上記スプリングの付勢力に打ち勝つような力が加えられたときには、チャックレバー43aは互いに離れる方向に移動する。
【0064】
上記チャック43の先端側(反ロッド44a側)の部分には、
図5に示すように、カップ状のボルト保持部45が形成されている。ボルト保持部45は、一対のチャックレバー43aが協働して構成されかつ上下方向に貫通する貫通孔46を有している。ボルト保持部45における貫通孔46を構成する部分は、
図5に示すように、下側に向かって縮径するように傾斜したテーパー部45aと、該テーパー部45aの下側端から上下方向に均一な径で延びるストレート部45bと、ストレート部45bの下端に設けられかつ該ストレート部45bから内側に突出した内側突出部45cとを有している。内側突出部45cの貫通孔46を形成する面は、下側に向かって傾斜したテーパー面46aになっている。
【0065】
本実施形態では、
図5に示すように、プロジェクションボルトBの先端部を内側突出部45cで受けるようにしているため、プロジェクションボルトBの軸長が異なる場合であっても、ボルト保持部45でプロジェクションボルトBを保持した状態では、該ボルト保持部45内において、該プロジェクションボルトBの先端部は、内側突出部45cの位置に位置するようになる。
【0066】
ボルト供給装置40では、ボルトシューター41から供給されたプロジェクションボルトBをチャック43のボルト保持部45で保持した後、上記エアシリンダが駆動されて、上記ロッドが上記ガイドピン80に向かって進んでいく。その後、上記プロジェクションボルトBは、チャック43に保持されたまま、ガイドピン80のボルト受け部83で受け止められる。上述したように、本実施形態では、プロジェクションボルトBの先端部は、内側突出部45cの高さ位置に位置するようになっているため、プロジェクションボルトBの軸長が異なる場合であっても、上記ロッドの進む角度等を変更させる必要がない。このため、プロジェクションボルトBをガイドピン80の位置に供給するための、ボルト供給装置40の構成や制御を簡単にすることができる。
【0067】
プロジェクションボルトBには、その先端部に頭部側に向かって凹んだ係合凹部B1が形成されており、
図12~
図15に示すように、ガイドピン80のボルト受け部83は、プロジェクションボルトBの係合凹部B1と係合することで、該プロジェクションボルトBを受け止める。また、プロジェクションボルトBには、
図12~
図15に示すように、ワークWに対して溶接される溶接部B2が予め形成されており、プロジェクションボルトBが、ボルト保持部45に保持された状態では、該溶接部B2がワークW側に位置するようになる。詳しくは後述するが、プロジェクションボルトBは、ボルト受け部83に受け止められた後、上部電極50によって下側に押圧されることで、下側に向かって移動されて、ワークWの孔部Hに挿通する。これにより、ワークWとプロジェクションボルトBの溶接部B2とが当接するようになっている。
【0068】
〈制御系〉
制御装置100は、
図6に示すように、ロボット10に作動信号を出力して、溶接装置本体20をワークWの溶接箇所に移動させる。
【0069】
制御装置100は、ナット供給装置30に作動信号を出力して、ナットガイド装置32のエアシリンダを駆動させて、プロジェクションナットNをガイドピン80の位置に供給する。
【0070】
制御装置100は、ボルト供給装置40に作動信号を出力して、上記ボルト供給源からプロジェクションボルトBをボルトシューター41に供給して、ボルトシューター41からチャック43のボルト保持部45にプロジェクションボルトBを供給する。制御装置100は、ボルト供給装置40に作動信号を出力して、ボルト保持部45にプロジェクションボルトBが保持された状態で、ボルトガイド装置42のエアシリンダを駆動させて、プロジェクションボルトBをガイドピン80の位置に供給する。
【0071】
制御装置100は、上側シリンダ51に作動信号を出力して、上部電極50を昇降させる。また、制御装置100は、上部電極50及び下部電極60に作動信号を出力して、上部電極50と下部電極60との間で通電させる。
【0072】
制御装置100は、位置センサ101の検出結果から樹脂ロッド70の昇降量を算出する。制御装置100は、位置センサ101から算出した樹脂ロッド70の昇降量に基づいて、現在供給されているプロジェクションナットN又はプロジェクションボルトBが、所望の規格のものであるか否かを判定する。
【0073】
〈プロジェクションナットの接合〉
次に、プロジェクション溶接装置1によって、ワークWにプロジェクションナットNを接合する際の動作について説明する。
【0074】
先ず、ワークWにプロジェクションナットNを接合する場合について説明する。以下の説明では、ワークWに形成されている孔部Hの径が、ガイドピン80のロッド部81の最大径(ロッド部81の大径部81aの径)よりも小さくかつ第1ナット受け部82aの径よりも大きく、プロジェクションナットNの内径が、第1ナット受け部82aの径よりも小さくかつ第2ナット受け部82bの径よりも大きい場合について説明する。ワークWは、例えば鋼板で構成されており、図示を省略するワーク搬送装置によって搬送される。
【0075】
先ず、ワークWが搬送されて、
図7に示すように、ワークWがガイドピン80の上側に配置される。このとき、ワークWの孔部Hとガイドピン80との大まかな位置合わせが行われる。この位置合わせは、ロボット10によって行うことができる。
【0076】
次に、ワークWを下部電極60に向かって移動させて、孔部Hにガイドピン80を挿通させる。このとき、ワークWに形成されている孔部Hの径が、ガイドピン80のロッド部81の最大径よりも小さくかつ第1ナット受け部82aの径よりも大きいため、
図8に示すように、ガイドピン80のロッド部81は、上記孔部Hを貫通せずに、ガイドピン80のナット受け部82(第1及び第2ナット受け部82a,82b)及びボルト受け部83のみが上記孔部Hを貫通した状態となる。ナット受け部82は、複数の円柱体によって構成されているため、ナット受け部82及びボルト受け部83のみが上記孔部Hを貫通した状態であっても、ワークWに対するナット受け部82の突出量をある程度大きくすることができる。このとき、ワークWにおける孔部Hの周囲の部分は、
図8に示すように、ロッド部81の上側端に載置する。ワークWにおける孔部Hの周囲の部分が、ロッド部81の上側端に載置した状態となるため、
図8に示すように、ガイドピン80のナット受け部82がワークWの孔部Hを貫通した段階では、下部電極60の電極チップ63とワークWの下側の面との間には隙間が形成される。
【0077】
次いで、ナット供給装置30が作動されて、ガイドピン80の位置にプロジェクションナットNが供給される。このとき、プロジェクションナットNは溶接部N1がワークW側を向くように供給される。この例では、
図9に示すように、供給されるプロジェクションナットNは、その内径が、第1ナット受け部82aの径よりも小さくかつ第2ナット受け部82bの径よりも大きいため、第2ナット受け部82bで受け止められる。このように、ガイドピン80は、少なくともナット受け部82がワークWに形成された孔部Hを貫通した状態でプロジェクションナットNを受けるようになっている。
【0078】
第1ナット受け部82aまでワークWの孔部Hを貫通した状態で、第2ナット受け部82bでプロジェクションナットNを受け止めているため、
図9に示すように、プロジェクションナットNが供給された段階では、ワークWの上側の面とプロジェクションナットN(特に、プロジェクションナットNの溶接部N1)との間には隙間が形成される。
【0079】
ガイドピン80の位置にプロジェクションナットNが供給された後、上側シリンダ51が駆動されて、上部電極50が下側に移動される(下降される)。上部電極50は、供給されたプロジェクションナットNの上面と当接した後も更に下側に移動される。これにより、ワークW及びプロジェクションナットNごと、ガイドピン80が下部電極ホルダ61の筒軸方向の下側に押し下げられる。
【0080】
上側シリンダ51により、上部電極50が下部電極60に向かって移動されて、ワークW及びプロジェクションナットNごと、ガイドピン80が下部電極ホルダ61の筒軸方向の下側に押し下げられることによって、
図10に示すように、下部電極60の電極チップ63とワークWの下側の面とが当接する。
【0081】
上側シリンダ51は、ワークWの下側の面が下部電極60の電極チップ63と当接した後も、上部電極50を下側に移動させる。下部電極60の電極チップ63は、下部電極ホルダ61上に載置され、該下部電極ホルダ61は、溶接装置本体20の支持部21に支持されているため、ワークWは、下側に移動しないように下部電極60により支持される。このため、ワークWの下側の面と下部電極60の電極チップ63とが当接した後には、上部電極50の下側への移動により、ガイドピン80とプロジェクションナットNとが下側に移動する。これにより、プロジェクションナットN(特に、プロジェクションナットNの溶接部N1)が、ワークWの上側の面と当接する。このことから、上側シリンダ51は、プロジェクション溶接時には、上部電極50とプロジェクションナットNとを当接させた状態で、該プロジェクションナットNをワークWに当接させるべく、上部電極50を下部電極60に向かって移動させるように構成されている。
【0082】
上側シリンダ51は、プロジェクションナットNが、ワークWの上側の面と当接した後も、更に上部電極50を下側に移動させようとする。この上部電極50の下側への進出動作により、プロジェクションナットNがワークW側に加圧される。下部電極60の電極チップ63は、下部電極ホルダ61上に載置され、該下部電極ホルダ61は、溶接装置本体20の支持部21に支持されているため、ワークWを下側に移動しないように支持して、上部電極50からの加圧力を受ける。下部電極60は、上部電極50からの加圧力に対する反力でもってワークWをプロジェクションナットN側に加圧する。これにより、ワークW及びプロジェクションナットNが、上部電極50と下部電極60との間に加圧挟持される。
【0083】
そして、上部電極50と下部電極60との間に、ワークWとプロジェクションナットNとを挟んだ状態(加圧挟持した状態)で、上部電極50と下部電極60との間で通電が実行されて、上部電極50と下部電極60との間に、プロジェクション溶接のための接合電流が流される。接合電流が流れている間も、上部電極50によるプロジェクションナットNの加圧は継続される。この接合電流及び上記加圧によって、ワークWの上側の面とプロジェクションナットNの溶接部N1との接触部分が軟化して、該溶接部N1が加圧方向(つまり、下側)に潰れていく。このとき、ワークWの上側の面とプロジェクションナットNの溶接部N1とに塑性流動が発生して、急速な拡散接合がなされる。これにより、プロジェクションナットNがワークWに接合される。
【0084】
以上のようにして、ワークWとプロジェクションナットNとがプロジェクション溶接によって接合される。
【0085】
図11には、上述したプロジェクションナットNとは、内径の異なるプロジェクションナットNをガイドピン80で受けた状態を示している。具体的には、ワークWに形成されている孔部Hの径が、ガイドピン80のロッド部81の最大径(ロッド部81の大径部81aの径)よりも大きく、プロジェクションナットNの内径が、ガイドピン80のロッド部81の最大径よりも小さくかつ第1ナット受け部82aの径よりも大きい場合について示している。
【0086】
図11に示すように、ワークWに形成されている孔部Hの径は、ガイドピン80のロッド部81の最大径よりも大きいため、ガイドピン80のロッド部81も、上記孔部Hを貫通した状態となる。これにより、ワークWは、ガイドピン80を下降させることなく下部電極60の電極チップ63と当接した状態となる。ここでは、プロジェクションナットNは、その内径が、ロッド部81の最大径よりも小さくかつ第1ナット受け部82aの径よりも大きいため、第1ナット受け部82aで受け止められる。このように、第1及び第2ナット受け部82a,82bは、それぞれを構成する各円柱体の径に対応した内径のプロジェクションナットNを受け取り可能に構成されている。尚、プロジェクションナットNの内径が、ガイドピン80のロッド部81の最大径より大きい場合には、ロッド部81におけるワークWの孔部Hから突出した部分(大径部81aの先端部分)で、該プロジェクションナットNを受けることになる。
【0087】
図11の状態から、プロジェクションナットNをワークWに溶接させる際の上部電極50及び下部電極60の動作は、ワークWが、ガイドピン80を下降させることなく下部電極60の電極チップ63と当接していること以外は、上述と同様であるため省略する。
【0088】
〈プロジェクションボルトの接合〉
次に、ワークWにプロジェクションボルトBを接合する場合について説明する。以下の説明では、プロジェクションボルトBの軸部の径が、ガイドピン80の第1ナット受け部82aよりも小さくかつ第2ナット受け部82bの径よりも大きい場合、つまり、ワークWの孔部Hの径が、ガイドピン80の第1ナット受け部82aよりも小さくかつ第2ナット受け部82bの径よりも大きい場合について説明する。ワークWは、例えば鋼板で構成されており、上記ワーク搬送装置によって搬送される。尚、ガイドピン80をワークWの孔部Hに挿通させる工程は、プロジェクションナットNをワークWに接合させるときと同様なので、詳細な説明を省略する。
【0089】
先ず、ワークWが搬送されて、ワークWをガイドピン80の上側に配置して、ワークWの孔部Hとガイドピン80との大まかな位置合わせを行う。次に、ワークWを下部電極60に向かって移動させて、孔部Hにガイドピン80を挿通させる。このとき、ワークWに形成されている孔部Hの径が、ガイドピン80の第1ナット受け部82aの径よりも小さくかつ第2ナット受け部82bの径よりも大きいため、
図12に示すように、ガイドピン80の第1ナット受け部82aは、上記孔部Hを貫通せずに、ガイドピン80の第2ナット受け部82b及びボルト受け部83のみが上記孔部Hを貫通した状態となる。ワークWにおける孔部Hの周囲の部分は、第1ナット受け部82aの上側端に載置する。ワークWにおける孔部Hの周囲の部分が、第1ナット受け部82aの上側端に載置した状態となるため、
図12に示すように、ガイドピン80のボルト受け部83がワークWの孔部Hを貫通した段階では、下部電極60の電極チップ63とワークWの下側の面との間には隙間が形成される。
【0090】
次いで、ボルト供給装置40が作動されて、ガイドピン80の位置にプロジェクションボルトBが供給される。プロジェクションボルトBは、
図12に示すように、チャック43のボルト保持部45に保持された状態で供給される。ガイドピン80のボルト受け部83は、プロジェクションボルトBの係合凹部と係合して、当該プロジェクションボルトBを受け止める。
【0091】
ガイドピン80の位置にプロジェクションボルトBが供給された後、上側シリンダ51が駆動されて、上部電極50が下側に移動される(下降される)。上部電極50は、
図13に示すように、供給されたプロジェクションボルトBの頭部と当接した後も更に下側に移動される。これにより、ワークW及びプロジェクションボルトBごと、ガイドピン80が下部電極ホルダ61の筒軸方向の下側に押し下げられる。
【0092】
詳しくは、上側シリンダ51により、上部電極50が下部電極60に向かって移動されると、プロジェクションボルトBの先端部が内側突出部45cのテーパー面46aを押圧する。テーパー面46aを押圧する押圧力は、該テーパー面46aによって水平方向の力に変換され、この変換された水平方向の力によって、チャック43の一対のチャックレバー43aが僅かに離れる。これにより、プロジェクションボルトBが、下側に向かって移動される。ワークWは、ガイドピン80が下部電極ホルダ61の筒軸方向の下側に押し下げられることによって、ガイドピン80と共に下側に移動する。
【0093】
その後、プロジェクションボルトBの頭部が、ボルト保持部45のテーパー部45aと当接すると、該頭部がテーパー部45aを押圧する。テーパー部45aを押圧する押圧力は、該テーパー部45aによって水平方向の力に変換され、この変換された水平方向の力によって、チャック43の一対のチャックレバー43aが互いに離れるように変位する。これにより、
図14に示すように、上部電極50が更に下側に移動できるようになる。そして、ワークWの孔部HにプロジェクションボルトBの軸部が挿通されて、プロジェクションボルトB(特に、プロジェクションボルトBの溶接部B2)が、ワークWの上側の面と当接する。これらのことから、上側シリンダ51は、プロジェクション溶接時には、上部電極50とプロジェクションボルトBとを当接させた状態で、該プロジェクションボルトBをワークWに当接させるべく、上部電極50を下部電極60に向かって移動させるように構成されている。
【0094】
プロジェクションボルトBとワークWの上側の面とが当接した後は、
図15に示すように、チャック43が退避する。
【0095】
上側シリンダ51は、プロジェクションボルトBが、ワークWの上側の面と当接して、チャック43が退避した後も、更に上部電極50を下側に移動させようとする。この上部電極50の下側への進出動作により、プロジェクションボルトBがワークW側に加圧される。下部電極60の電極チップ63は、下部電極ホルダ61上に載置され、該下部電極ホルダ61は、溶接装置本体20の支持部21に支持されているため、ワークWを下側に移動しないように支持して、上部電極50からの加圧力を受ける。下部電極60は、上部電極50からの加圧力に対する反力でもってワークWをプロジェクションボルトB側に加圧する。これにより、ワークW及びプロジェクションボルトBが、上部電極50と下部電極60との間に加圧挟持される。
【0096】
そして、上部電極50と下部電極60との間に、ワークWとプロジェクションボルトBとを挟んだ状態(加圧挟持した状態)で、上部電極50と下部電極60との間で通電が実行されて、上部電極50と下部電極60との間に、プロジェクション溶接のための接合電流が流される。接合電流が流れている間も、上部電極50によるプロジェクションボルトBの加圧は継続される。この接合電流及び上記加圧によって、ワークWの上側の面とプロジェクションボルトBの溶接部B2との接触部分が軟化して、該溶接部B2が加圧方向(つまり、下側)に潰れていく。このとき、ワークWの上側の面とプロジェクションボルトBの溶接部B2とに塑性流動が発生して、急速な拡散接合がなされる。これにより、プロジェクションボルトBがワークWに接合される。
【0097】
以上のようにして、ワークWとプロジェクションボルトBとがプロジェクション溶接によって接合される。
【0098】
以上のように、本実施形態によると、ガイドピン80のナット受け部82は、内径の異なる複数種類のプロジェクションナットNを受け取り可能なように、上記軸方向の上側から下側に向かって段形状をなしているため、該段形状の各段で内径が異なる各種プロジェクションナットをそれぞれ受け取ることができる。これにより、ガイドピン80を交換することなく、内径が異なるプロジェクションナットNを適切に案内することができる。したがって、種々の内径のプロジェクションナットNを1台のプロジェクション溶接装置1で接合可能にして、生産性を向上させることができる。
【0099】
特に、本実施形態では、ガイドピン80のナット受け部82は円柱体によって構成されているため、ナット受け部82のみがワークWの孔部Hを貫通したとしても、ワークWに対するナット受け部82の突出量をある程度大きくすることができる。これにより、ワークWの孔部Hの径がガイドピン80のロッド部81の径よりも小さい場合であっても、プロジェクションナットNを適切に案内することができる。また、ナット受け部82は、それぞれ径の異なる複数の円柱体が、上側ほど径の小さい円柱体が位置するように配設されており、各円柱体で、該各円柱体の径に対応した内径のプロジェクションナットNを受け取り可能に構成されているため、ガイドピン80を交換することなく、内径が異なるプロジェクションナットNを適切に案内することができる。したがって、種々の内径のプロジェクションナットNを1台のプロジェクション溶接装置1で接合可能にして、生産性をより向上させることができる。
【0100】
また、本実施形態のようなガイドピン80によれば、ナット受け部82でプロジェクションナットNを受けた際に、該プロジェクションナットNが斜めになることを出来る限り抑制することができる。これにより、プロジェクションナットNの軸心とワークWの孔部Hの中心とがずれることを出来る限り抑制することもできる。
【0101】
また、本実施形態によると、1台のプロジェクション溶接装置1で、プロジェクションナットNに加えて、プロジェクションボルトBもワークWに接合させることができるため、生産性をより向上させることができる。また、ガイドピン80のボルト受け部83は、ナット受け部82を構成する複数の円柱体のうち最も上側に位置する円柱体(本実施形態では、第2ナット受け部82b)から、ロッド部81の軸方向の上側に突出した突起により構成されているため、ワークWの孔部Hの径が、ナット受け部82の一部が貫通できる径であれば、ボルト受け部83は必ずワークWの孔部Hを貫通することになる。これにより、プロジェクションボルトBをボルト受け部83で適切に受けて、該プロジェクションボルトBを接合位置まで適切に案内することができる。
【0102】
さらに、本実施形態では、ガイドピン80のナット受け部82及びボルト受け部83の全体が、該ガイドピン80に下向きの力が加えられていない無負荷状態において、電極チップ63を貫通して、該電極チップ63よりも上側に位置しているため、ワークWの孔部Hにガイドピン80を貫通させることが容易になり、ワークWの位置合わせが簡単になる。
【0103】
ここで、ワークWの孔部Hの径がガイドピン80のロッド部81の径よりも小さい場合には、上述したように、ナット受け部82を構成する複数の円柱体のうち相対的に上側に位置する円柱体のみが上記孔部Hを貫通する。このため、ガイドピン80のナット受け部82及びボルト受け部83の全体が、下部電極60の電極チップ63を貫通して、該電極チップ63よりも上側に位置している場合には、ナット受け部82又はボルト受け部83がワークWの孔部Hを貫通した段階では、電極チップ63とワークWとの間に隙間が形成される。
【0104】
これに対して、本実施形態では、ガイドピン80のロッド部81の最大径よりも小さい孔部Hを有するワークWに対して、当該孔部Hの周囲にプロジェクションナットN又はプロジェクションボルトBを接合させるときには、ワークW及びプロジェクションナットN若しくはプロジェクションボルトBごと、ガイドピン80を下部電極ホルダ61の筒軸方向の下側に押し下げることで、ワークWと電極チップ63とを当接させる。これにより、ガイドピン80のナット受け部82及びボルト受け部83の全体が、電極チップ63を貫通して、該電極チップ63よりも上側に位置していたとしても、プロジェクション溶接を適切に行うことができる。
【0105】
特に、本実施形態では、上側シリンダ51による上部電極50の下側への移動を利用して、ワークW及びプロジェクションナットN若しくはプロジェクションボルトBごと、ガイドピン80を下部電極ホルダ61の筒軸方向の下側に押し下げるため、ワークW等を押し下げる機構が別途必要なくなり、溶接装置本体20の構成を簡単にすることができる。また、下部電極60の電極チップ63とワークWとが当接したときには、上部電極50、プロジェクションナットN又はプロジェクションボルトB、ワークW、及び下部電極60に通電可能な状態となるため、溶接のサイクルタイムを短くすることができ、生産性を一層向上させることができる。
【0106】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0107】
例えば、上述の実施形態では、上側シリンダ51が、上部電極50を昇降させる上部電極昇降手段を構成するとともに、上部電極50によってプロジェクションナットN及びボルトBをワークWに向かって加圧させる加圧手段を構成していたが、これに限らず、上部電極昇降手段と加圧手段とを別の構成にしてもよい。ただし、この場合であっても、上部電極昇降手段は、プロジェクション溶接時には、上部電極50とプロジェクションナットN又はプロジェクションボルトBとを当接させた状態で、該プロジェクションナットN又は該プロジェクションボルトBをワークWに当接させるべく、上部電極50を下部電極60に向かって移動させるように構成されている必要がある。
【0108】
さらに、上述の実施形態では、1台のプロジェクション溶接装置1で、ワークWに形成された孔部Hの1つに、プロジェクションナットN又はプロジェクションボルトBを接合していたが、プロジェクション溶接装置1は複数台あってもよい。このとき、ワークWに孔部Hが複数形成されている場合には、複数台のプロジェクション溶接装置1によって、複数荷所の孔部Hに同時にプロジェクション溶接を行うようにすることができる。
【0109】
また、上述の実施形態では、溶接装置本体20は、ロボット10に保持されていたが、ロボット10に保持されず、工場の床面等に固定されていてもよい。つまり、プロジェクション溶接装置1は定置型の溶接装置でもよい。
【0110】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、例えば、自動車製造ラインにおいて、自動車の車体構成部材にウェルドナットを設けるためのプロジェクション溶接装置に適している。
【符号の説明】
【0112】
1 プロジェクション溶接装置
10 ロボット
11 アーム
20 溶接装置本体
50 上部電極
51 上側シリンダ(上部電極昇降手段)
60 下部電極
61 下部電極ホルダ
63 電極チップ
80 ガイドピン
81 ロッド部
82 ナット受け部
82a 第1ナット受け部(ナット受け部を構成する円柱体)
82b 第2ナット受け部(ナット受け部を構成する複数の円柱体のうち最も上側に位置する円柱体)
83 ボルト受け部
B プロジェクションボルト
H 孔部(ワークの孔部)
N プロジェクションナット
W ワーク