(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】出力ノイズ低減装置
(51)【国際特許分類】
H03H 7/01 20060101AFI20221201BHJP
H02M 3/00 20060101ALI20221201BHJP
H01F 17/06 20060101ALI20221201BHJP
H01F 27/06 20060101ALI20221201BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20221201BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
H03H7/01 Z
H02M3/00 E
H01F17/06 Z
H01F27/06 103
H01F27/32 103
H01F27/29 Q
(21)【出願番号】P 2018120478
(22)【出願日】2018-06-26
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】矢田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】谷水 友和
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-311364(JP,A)
【文献】特開2009-059923(JP,A)
【文献】特開2015-057806(JP,A)
【文献】特開2016-072505(JP,A)
【文献】特開2017-041400(JP,A)
【文献】特開2018-019512(JP,A)
【文献】実開平01-086715(JP,U)
【文献】国際公開第2010/110007(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00
H01F 17/06
H01F 27/06
H01F 27/32
H01F 27/29
H03H1/00-H03H3/00
H03H5/00-H03H7/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装基板を接続して電子機器からの出力信号に混入するノイズを低減する出力ノイズ低減装置であって、
前記実装基板と、
導電性材料により形成され、一方の端部を前記電子機器に係る出力端に接続する接続端子とし、他方の端部を出力端子とする導電バーと、
磁性材料により形成され、前記導電バーが貫通する貫通孔を有する磁性体コアと、
前記実装基板を前記接続端子および前記出力端子に接続するための導電性部材により形成した第1のリード部材および第2のリード部材と、
樹脂材料により形成されたモールド
部材であって、前記導電バーの前記磁性体コアと前記接続端子との間に前記第1のリード部材を、前記導電バーの前記磁性体コアと前記出力端子との間に前記第2のリード部材を、それぞれ接続した状態で、前記接続端子および前記出力端子を除く導電バーと、前記実装基板に接続する端部を除く第1のリード部材および第2のリード部材と、前記磁性体コアとをモールドする
前記モールド部材と、
を備え、
前記第1のリード部材および前記第2のリード部材は、
前記実装基板に向かって前記導電バーに対して略垂直方向に伸長するとともに、前記導電バーに接続す
る一端部が略水平方向に屈曲して形成されており、前記第1のリード部材および前記第2のリード部材の前記屈曲し
た一端部が前記磁性体コアの前記貫通孔内に位置して前記導電バーに接続されており、前記第1のリード部材および前記第2のリード部材の前記屈曲した一端部とは反対側の他端部が前記モールド部材外まで伸長しており、
x軸方向を前記磁性体コアの貫通孔の軸方向、z軸方向を前記第1のリード部材および前記第2のリード部材の前記他端部の伸長方向、y軸方向を前記x軸
方向および前記z軸
方向のどちらにも垂直となる方向として、前記z軸方向から見た場合において、
前記貫通孔の内側に接続された前記第1のリード部材および前記第2のリード部材の前記y軸方向の寸法が前記貫通孔の内側にある前記導電バーの前記y軸方向の配置範囲に収まり、前記貫通孔の外側にある前記第1のリード部材および前記第2のリード部材の前記y軸方向の寸法が前記貫通孔の外側の前記導電バーの前記y軸方向の
寸法と等しい、ことを特徴とする出力ノイズ低減装置。
【請求項2】
前記z軸方向から見た場合において、前記貫通孔の外側にある前記導電バーの前記y軸方向の寸法が前記磁性体コアの前記y軸方向の配置範囲に収まることを特徴とする請求項1に記載の出力ノイズ低減装置。
【請求項3】
前記第1のリード部材および前記第2のリード部材の前記他端部は、前記モールド部材の表面に近接し且つ前記実装基板に接続可能となるように折り曲げられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の出力ノイズ低減装置。
【請求項4】
前記第1のリード部材および前記第2のリード部材の前記他端部には穴が設けられており、前記他端部が近接する前記モールド部材の表面における前記穴に対応する位置に凹部が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の出力ノイズ低減装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に開示の技術は、出力信号に混入するノイズを抑制する出力ノイズ低減装置に関し、特に、出力信号の信号経路に挿入されるインダクタンス素子を含むノイズ低減装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、導電バーが磁性体コアを貫通して構成されるチョークコイルと、コンデンサなどが実装される実装基板とで構成するノイズフィルタモジュールが、例えば、特許文献1などに開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されているノイズフィルタモジュールは、導電バーに磁性体コアが貫通されて配置し樹脂材料でモールドした汎用モジュールに、汎用モジュールの外装に沿って複数のリード部材が配置され、この複数のリード部材により、コンデンサなどが実装された実装基板が導電バーの両端部の入力端と出力端とに接続されるとともに、実装基板のGND面を接地電位GNDに接続するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたノイズフィルタモジュールでは、樹脂材料でモールドした汎用モジュールに、汎用モジュールの外装に沿って複数のリード部材が配置されているため、リード部材が大気に曝されて腐食されやすいという問題があった。また、汎用モジュールの外装に沿ってリード部材を配置するため、リード部材の形状が複雑になり、部品コストが高くなるとともにリード組付け工程が困難になるため製造コストも高くなってしまうという問題があった。また、振動や衝撃により、リード部材の接続部に接続不良が生じて、ノイズフィルタモジュールとしての信頼性も低下してしまう恐れがあった。
【0006】
本願に開示される技術は、上記の課題に鑑み提案されたものであって、リードの組付けを改善するとともに実装基板の占有面積を効率に利用することで、部品コストや製造コストを低減するとともに、顧客の幅広い要望に対応可能な出力ノイズ低減装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため請求項1に係る出力ノイズ低減装置は、実装基板を接続して電子機器からの出力信号に混入するノイズを低減する出力ノイズ低減装置であって、前記実装基板と、導電性材料により形成され、一方の端部を前記電子機器に係る出力端に接続する接続端子とし、他方の端部を出力端子とする導電バーと、磁性材料により形成され、前記導電バーが貫通する貫通孔を有する磁性体コアと、前記実装基板を前記接続端子および前記出力端子に接続するための導電性部材により形成した第1のリード部材および第2のリード部材と、樹脂材料により形成されたモールド部材であって、前記導電バーの前記磁性体コアと前記接続端子との間に前記第1のリード部材を、前記導電バーの前記磁性体コアと前記出力端子との間に前記第2のリード部材を、それぞれ接続した状態で、前記接続端子および前記出力端子を除く導電バーと、前記実装基板に接続する端部を除く第1のリード部材および第2のリード部材と、前記磁性体コアとをモールドする前記モールド部材と、を備え、前記第1のリード部材および前記第2のリード部材は、前記実装基板に向かって前記導電バーに対して略垂直方向に伸長するとともに、前記導電バーに接続する一端部が略水平方向に屈曲して形成されており、前記第1のリード部材および前記第2のリード部材の前記屈曲した一端部が前記磁性体コアの前記貫通孔内に位置して前記導電バーに接続されており、前記第1のリード部材および前記第2のリード部材の前記屈曲した一端部とは反対側の他端部が前記モールド部材外まで伸長しており、x軸方向を前記磁性体コアの貫通孔の軸方向、z軸方向を前記第1のリード部材および前記第2のリード部材の前記他端部の伸長方向、y軸方向を前記x軸方向および前記z軸方向のどちらにも垂直となる方向として、前記z軸方向から見た場合において、前記貫通孔の内側に接続された前記第1のリード部材および前記第2のリード部材の前記y軸方向の寸法が前記貫通孔の内側にある前記導電バーの前記y軸方向の配置範囲に収まり、前記貫通孔の外側にある前記第1のリード部材および前記第2のリード部材の前記y軸方向の寸法が前記貫通孔の外側の前記導電バーの前記y軸方向の寸法と等しい、ことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る出力ノイズ低減装置は、請求項1に記載の出力ノイズ低減装置において、第1のリード部材および第2のリード部材は、実装基板に向かって導電バーに対して略垂直方向に伸長するとともに、導電バーに接続する端部が略水平方向に屈曲して形成されており、第1のリード部材および第2のリード部材の屈曲した端部が磁性体コアの貫通孔内に位置して導電バーに接続されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る出力ノイズ低減装置は、請求項1または2に記載の出力ノイズ低減装置において、第1のリード部材および第2のリード部材は、実装基板に接続されるコネクタであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る出力ノイズ低減装置では、第1のリード部材および第2のリード部材を導電バーに接続した状態でモールド部材によりモールドするため、例えば、第1のリード部材および第2のリード部材の上端部を除く部分までモールドして第1のリード部材および第2のリード部材の大部分が樹脂で覆うことができる。これにより、第1のリード部材および第2のリード部材は、大気に触れることを防止して、腐食を抑止することができる。また、先に第1のリード部材および第2のリード部材を導電バーに接続することにより、リード組付け工程を容易化できることから、製造コストを低減することができる。また、第1のリード部材および第2のリード部材を含めて一体成形することができることから、導電バーと第1のリード部材および第2のリード部材との接続部において振動や衝撃に対する耐性も向上し、ノイズフィルタモジュールとしての信頼性も向上することができる。
【0011】
請求項2に係る出力ノイズ低減装置では、第1のリード部材および第2のリード部材は、導電バーに接続する端部が水平方向に屈曲しており、それぞれ、他方の端部が導電バーに対して略垂直方向に実装基板に接続することから、導電バーと実装基板とを接続する第1のリード部材と第2のリード部材を最短にすることができる。これにより、第1のリード部材および第2のリード部材の寄生容量や寄生インダクタンスを低く抑えることができ、ノイズフィルタモジュールとしての特性を向上させることができる。また、第1のリード部材および第2のリード部材が磁性体コア側に対向して導電バーに接続されることから、第1のリード部材および第2のリード部材に関係なく導電バーの接続端子や出力端子を設けることができる。
【0012】
請求項3に係る出力ノイズ低減装置では、導電バーと実装基板とがコネクタ接続することから、容易に、実装基板の取り付けや取り外しができる。また、コネクタ接続だけで実装基板が保持可能であれば、実装基板を取り付けるためのネジ留めなどが不要となり、部品数の低減や組み付け作業の削減が可能になり、結果、製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係るノイズフィルタを用いたノイズフィルタモジュールをスイッチング電源に接続した出力ノイズ低減装置の一例の回路図である。
【
図2】第1実施形態のノイズフィルタの分解斜視図である。
【
図3】第1実施形態のノイズフィルタの、(a)組み付け方法、(b)組み付けされた状態の斜視図である。
【
図4】第1実施形態のノイズフィルタをモールドされた状態の斜視図である。
【
図5】第1実施形態のノイズフィルタに実装基板を取り付ける手順の説明する斜視図(その1)である。
【
図6】第1実施形態のノイズフィルタに実装基板を取り付ける手順の説明する斜視図(その2)である。
【
図7】第2実施形態のノイズフィルタの分解斜視図である。
【
図8】第2実施形態のノイズフィルタの、(a)組み付け状態を示す斜視図、(b)モールドされた状態の斜視図である。
【
図9】他の実施形態のノイズフィルタの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本願に係る第1実施形態のノイズフィルタ1を用いた出力ノイズ低減装置の一例を示す回路図である。
図1に示すノイズフィルタモジュールは、コンデンサなどが実装された実装基板7とノイズフィルタ1とから構成され、スイッチング電源5の出力端子VXと出力端子VOとの間に接続される。スイッチング電源5、ノイズフィルタモジュールは、アルミダイカスト製などの金属筐体3に収納されている。
図1においては、ノイズフィルタモジュールに関する電気的な作用効果を説明する。
【0015】
スイッチング電源5は、例えば、車載用の電源である。ハイブリッド車あるいは電気自動車等における駆動系の電源電圧VINを供給するメインバッテリー(不図示)から電圧値を降圧して補機バッテリー(不図示)への電力供給を行う降圧型のスイッチング電源である。補機バッテリーは、オーディオ機器、エアコン機器、照明機器などの車内電装機器に電源電圧を供給する。
【0016】
スイッチング電源5は、パワートランジスタ(不図示)を所定スイッチング周波数fでオンオフ制御させることで所定電圧の出力を得る。スイッチング電源5では、このスイッチング動作に応じて、内部結線によってはスイッチング周波数fで高電圧と低電圧との間で交互に電圧変動が生ずる。また、負荷電流に応じた電流が電源電圧VINおよび接地電位GNDに交互に断続して流れ電流変動が生ずる。スイッチング動作による電圧変動と電流変動とがノイズ源となり出力端子へのノイズを招来する場合がある。
【0017】
こうしたノイズ源は、信号経路や接地配線を介して回り込む伝導ノイズとして出力端子に伝搬する他、容量結合や誘導結合などの電磁的結合により放射される放射ノイズとして出力端子に伝搬するおそれがある。ここで、放射ノイズとしては、例えば、内部結線の電圧変動に伴って生ずる場合がある。回路要素間や配線間等に介在する寄生の容量成分による容量結合に応じて結合先の回路要素に対して不測の電圧変動を招来する場合である。また、電源電圧VINや接地電位GNDの電流変動に伴って生ずる場合がある。配線される電源電圧VINや接地電位GNDの配線経路に介在する寄生の誘導成分による逆起電力に応じて電源電圧VINや接地電位GNDに不測の電圧変動を招来する場合である。
【0018】
スイッチング電源5の出力端子VXにはノイズフィルタモジュールが接続されている。ノイズフィルタモジュールは、スイッチング電源5の出力端子VXと出力端子VOとを結ぶ出力電圧経路にチョークコイルL1が設けられ、スイッチング電源5の出力端子VXと接地電位GNDとの間にコンデンサC1が、出力端子VOと接地電位GNDとの間にコンデンサC2が接続される構造を有している。いわゆるCLC型(π型)フィルタの構成である。コンデンサC1およびコンデンサC2は実装基板7の部品面に実装される。実装基板7の部品面の反対面は、例えば、グランド面となっており、接地電位GNDに接続されている。コンデンサC1およびコンデンサC2の各々の一端はグランド面に接続されて接地電位GNDに接続される。ノイズフィルタモジュールにより、伝導ノイズのうち信号経路を伝搬するスイッチング周波数fやその高調波周波数のノイズは抑制することができる。ここで、スイッチング電源5におけるスイッチング周波数fは、出力される電力定格や各構成素子の仕様や定格などに応じて定められる。例えば、車載用のスイッチング電源では数100kHzで動作することが考えられる。このため、スイッチング周波数fやその高調波周波数が、車載AMラジオの周波数帯域に重なる場合があり、ノイズフィルタモジュールを備えることにより、これらの帯域で信号経路を伝搬する伝導ノイズを抑制することができる。
【0019】
また、スイッチング電源5およびノイズフィルタモジュールは、アルミダイカスト製などの金属筐体3に収納されている。これにより、金属筐体3が電磁的なシールドの効果を奏するため、金属筐体3内でのスイッチング動作により発生する放射ノイズが出力端子VOに伝搬することが抑制される。
【0020】
さらに、実装基板7のグランド面が接地電位GNDに接続されていることから、グランド面が電磁的なシールドの効果を奏するため、金属筐体3内でのスイッチング動作により発生する放射ノイズが部品面に実装されたコンデンサC1およびコンデンサC2に伝搬することが抑制される。これにより、ノイズフィルタモジュールのフィルタとしての性能が十分発揮することができるのである。
【0021】
次に、本願に係る第1実施形態のノイズフィルタ1の形状・構造に関して説明する。
図2はノイズフィルタ1の分解斜視図である。
図3(a)はノイズフィルタ1の組み付け方法、
図3(b)はノイズフィルタ1の組み付けされた状態の斜視図である。そして、
図4はノイズフィルタ1がモールドされた状態の斜視図である。
【0022】
図2に示すように、ノイズフィルタ1は、導電バー12、磁性体コア上部10aと磁性体コア下部10bとからなる磁性体コア10、リード部材13およびリード部材14から構成されている。
【0023】
導電バー12は、
図1に示すスイッチング電源5の出力端子VXと出力端子VOとをつなぐ出力電圧経路として用いられる。導電バー12は、概ね平板状で、スイッチング電源5の出力端子VXと出力端子VOの方向に伸長する横長形状を有し、例えば銅や炭素鋼等の金属材料で形成されている。中央部12cを挟んで伸長方向の外側の両端部にボルト部12a、12bが形成されている。一方のボルト部12aには、スイッチング電源5の出力端子VXに接続するためのボルト穴12dが、他方のボルト部12bには、出力端子VOに接続するためのボルト穴12eが設けられている。すなわち、ボルト穴12dを用いてボルト部12aはスイッチング電源5の出力端子VXに接続される。また、ボルト部12bは出力端子VOであり、ボルト穴12eを用いて後段の電子機器等に接続される。ボルト部12a、12bおよび中央部12cは同一直線状に配置されており、導電バー12は単一の金属部材で形成されている。中央部12cはボルト部12a、12bより幅方向にやや狭くなっており、中央部12cの中心には磁性体コア上部10aと磁性体コア下部10bとから構成される磁性体コア10が導電バー12により貫通されて配置されている。
【0024】
磁性体コア10は、かまぼこ形状で下面中央部にコの字状溝10cを設けた磁性体コア上部10aと略長方体状の磁性体コア下部10bとから構成され、例えばフェライト等の磁性材料で形成されている。磁性体コア上部10aと磁性体コア下部10bとが
図3(b)に示すように合わせることにより、磁性体コア上部10aのコの字状溝10cが中空部を形成し、形成された中空部に導電バー12が貫通し、中空部の内側面と導電バー12の中央部12cとを対向させて配置することにより、チョークコイルL1が構成される。尚、磁性体コア上部10aと磁性体コア下部10bとが当接する導電バー12に対して左右の面の内、一方については当接せず隙間(スリットと言う)を設けてもよい。これにより、導電バー12の中央部12cに対して周方向に周回する経路の一部が不連続となる、いわゆるコアギャップを形成し、磁性体コア上部10aと磁性体コア下部10bとからなる磁性体コア10における磁気抵抗を調整して磁気飽和の発生を防止することができる。スリットの幅を調整することにより、磁気抵抗を調整して磁気飽和を抑制し、ノイズ成分の除去に必要なチョークコイルL1のインダクタンスを確保することができる。
【0025】
ここで、導電バー12の伸長方向は、磁性体コアを貫通する貫通方向に相当する。
【0026】
リード部材13および14は、
図1にした実装基板7を接続するためのものであり、例えば銅、ニッケル、あるいは鉄等の導電性の金属材料で形成されている。リード部材13および14は、
図2に示すように、板状であり、実装基板7に向かって導電バー12に対して略垂直方向に伸びる13bおよび14bと略水平方向に屈曲した13aおよび14aとから形成されている。そして、リード部材13および14の13aおよび14aは、導電バー12の中央部12cの幅と略同一かまたはやや狭い幅になっており、リード部材13および14が導電バー12に接続した状態で磁性体コア上部10aと磁性体コア下部10bとが合わさって形成される磁性体コア10の中空部(コの字状溝10c)を干渉することなく貫通させて組み付けることができる。また、リード部材13および14の13bおよび14bの上部には、後述する実装基板7を接続するためのボルト穴13cおよび14cが設けられている。
【0027】
第1実施形態のノイズフィルタ1では、最初に、
図2の矢印Aに示すように、リード部材13および14の13aおよび14aを導電バー12に接続する。接続方法としては、溶接して接続してもよいし、半田付けにて接続してもよい。また、図示しないネジを用いて接続してもよい。そして、
図3(a)の矢印Bに示すように、リード部材13および14を接続した導電バー12を磁性体コア上部10aと磁性体コア下部10bとで挟んで、
図3(b)に示すように、ノイズフィルタ1が組み付けられる。
【0028】
組み付けられたノイズフィルタ1は、
図4に示すように、樹脂材料により形成されるモールド20でモールドされる。
図4に示すように、モールド20により、リード部材13および14の上端部を除く部分までモールドすることにより、リード部材13および14の大部分が樹脂で覆われる。そのため、大気に触れることを防止して、リード部材13および14の腐食を抑止することができる。
【0029】
次に、モールドされたノイズフィルタ1に実装基板7を接続する方法を説明する。
図5および
図6は、ノイズフィルタ1に実装基板7を取り付ける手順の説明する斜視図である。
【0030】
図5(a)に示すように、モールド20の上面には凹部20aおよび20bが設けられている。凹部20aおよび20bは、その中にナットネジ21、21が収められて凹部20aおよび20b内でナットネジ21、21が移動不可の程度の幅および深さになっている。そして、
図5(a)の矢印C、Cに示すように、ナットネジ21、21がモールド20の凹部20aおよび20b内に挿入した後、リード部材13および14の上端部を矢印D、Dに示す方向に折り曲げる。この時、リード部材13および14のボルト穴13cおよび14cが、凹部20aおよび20bに挿入されたナットネジ21、21のネジ穴に一致するように、予め、凹部20aおよび20bの位置が設定されている。
図5(b)には、リード部材13および14の上端部が折り曲げられた状態を示す。
【0031】
図6(a)に示すように、実装基板7に設けられた2つの取り付け穴7a、7aに取り付けネジ22、22を挿入後、リード部材13および14のボルト穴13cおよび14cに挿入して、モールド20の凹部20aおよび20b内のナットネジ21、21と嵌合させて、
図6(b)に示すように、実装基板7をネジ22、22によりネジ留めしてノイズフィルタ1に取り付ける。尚、実装基板7を取り付けた際に、リード部材13および14に接する実装基板7の取り付け穴7a、7aの周囲は実装基板7に実装されるコンデンサなどを接続するパターンが形成されており、実装基板7をノイズフィルタ1に取り付けることにより、例えば、
図1に示すように、実装基板7に実装されたコンデンサC1やC2に接続され、上記のようなノイズフィルタモジュールとして機能する。
【0032】
上述のノイズフィルタ1によれば、導電バー12と実装基板7とを最短のリード部材13および14で接続することができるため、リード部材13および14の寄生容量や寄生インダクタンスを低く抑えることができる。これにより、ノイズフィルタモジュールとしての特性を向上させることができる。また、先にリード部材13および14を導電バー12に接続することにより、リード組付け工程を容易化することができる。そのため、部品コストや製造コストを低減することができる。また、モールド20を比較的単純な形状にすることができることから、実装基板7の大きさや形状が制約されにくくなり、顧客の要望に応じたコンデンサを実装することが可能になり、顧客の要望に対して柔軟に対応可能なノイズフィルタモジュールを提供することができる。また、リード部材13および14を含めて一体成形することができることから、導電バー12とリード部材13および14との接続部において振動や衝撃に対する耐性も向上し、ノイズフィルタモジュールとしての信頼性も向上することができる。
【0033】
次に、本願に係る第2実施形態のノイズフィルタ2について説明する。
図7は、第2実施形態のノイズフィルタ2の分解斜視図である。
図8(a)は、ノイズフィルタ2の組み付け状態を示す斜視図であり、
図8(b)は、ノイズフィルタ2をモールドした状態の斜視図である。
【0034】
ノイズフィルタ2では、上述のリード部材13および14の代わりにコネクタ30および31を採用する。
図7の矢印E、Eに示すように、コネクタ30およびコネクタ31の接続ピン30aおよび31aを導電バー12に半田付けなどにより接続した後、
図8(b)に示すように、樹脂材料により形成されるモールド40でモールドされる。モールド40の上面には、(図示しない)実装基板を取り付けるための円形の凹部40aが4箇所設けてある。本実施形態では、凹部40aは4箇所設けてあるが、2箇所以上であればよいのであって、その数は限定するものではない。そして、実装基板の下面側には、コネクタ30およびコネクタ31とは反対極のコネクタが実装されており、実装基板をコネクタ30およびコネクタ31とコネクタ接続してモールド40にネジ留めなどにより取り付ける。コネクタ接続だけで実装基板が保持可能であれば、ネジ留めなどは必要がない。この場合、実装基板の取り付けや取り外しが容易になり、組み付け作業が容易になる。
【0035】
ここで、スイッチング電源5は電子機器の一例であり、ノイズフィルタ1および2は出力ノイズ低減装置の一例であり、導電バー12は導電バーの一例であり、磁性体コア10は磁性体コアの一例であり、実装基板7は実装基板の一例であり、リード部材13、14およびコネクタ30、31はリード部材の一例であり、モールド20、40はモールド部材の一例である。
【0036】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることが、理解されるべきである。
【0037】
例えば、上記実施形態ではノイズフィルタモジュールはCLC型(π型)のノイズフィルタとしたが、信号経路を伝搬する伝導ノイズによっては、LC型(L型)のノイズフィルタを採用してもよい。
【0038】
上記第1実施形態では、ナットネジ21、21で実装基板7を取り付けたが、リード部材13および14のボルト穴13cおよび14cをネジ22の雄ネジに嵌合する雌ネジに加工することにより、ナットネジ21、21を不要にすることができる。
【0039】
また、リード部材は上記実施形態に限定されるものではなく、
図9に示すように、導電バー12に導電性材料で形成した棒状のリードピン50を採用してもよい。この場合、実装基板にリードピン50を貫通する穴を設け、直接半田付けなどで実装基板と導電バー12とを接続すれば、部品コストがさらに低減することができる。
【符号の説明】
【0040】
1、2・・ノイズフィルタ
3・・金属筐体
5・・スイッチング電源
7・・実装基板
10・・磁性体コア
12・・導電バー
13、14・・リード部材
20、40・・モールド
30、31・・コネクタ