(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】造粒物
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20221201BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20221201BHJP
A23L 2/39 20060101ALI20221201BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20221201BHJP
A23L 7/10 20160101ALI20221201BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20221201BHJP
【FI】
A23L5/00 D
A23L2/00 F
A23L2/00 Q
A23L2/00 R
A23L2/38 C
A23L2/38 J
A23L7/10 H
A23L19/00 Z
(21)【出願番号】P 2022064382
(22)【出願日】2022-04-08
【審査請求日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】P 2021115226
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏哉
(72)【発明者】
【氏名】小関 善史
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特許第6727576(JP,B1)
【文献】特開2015-002715(JP,A)
【文献】特開2005-328843(JP,A)
【文献】特開2008-086311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23F
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉の
粉砕末を含有する造粒物であって、
比重が0.300g/cm3未満であることを特徴とする
飲食品用造粒物。
【請求項2】
緑葉が麦類の緑葉であることを特徴とする請求項1に記載の
飲食品用造粒物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉の乾燥粉末を含有する造粒物に関する。
【背景技術】
【0002】
麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサ(以下、これらの植物を「青汁素材」と略す)の緑葉は、ビタミン類やミネラル類、食物繊維などの栄養成分を豊富に含んでおり、いわゆる青汁の原料として用いられている。これらの緑葉には様々な生理活性があることが知られており、例えば、特許文献1には、ヨモギ抽出物が抗肥満作用を有することが記載されている。
【0003】
前記植物の緑葉は粉末や搾汁に加工されたものを青汁として使用されるのが一般的である。青汁の形態としては、水や湯、牛乳、豆乳などの液体に混ぜて飲用に供する加工食品(粉末飲料)がほとんどであり、粉末飲料として広く流通している。青汁が粉末飲料の形態である場合、粉末飲料を水などの液体に分散させる作業については消費者が摂取時に自分で行うことになる。消費者が摂取しやすいようにするため、分散性(液体中に容易に分散する等)が優れており、かつ、飲みやすい(イガイガ感が少ない)青汁の開発が求められてきた。しかしながら、これまで開発された青汁は、分散性や飲みやすさが必ずしも十分には優れていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉の乾燥粉末を含有し、かつ、分散性及び飲みやすさに優れた造粒物の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉の乾燥粉末を含有する経口組成物を開発する過程において、前記緑葉の乾燥粉末を用いて造粒物を製造し、かつ、造粒物の比重を一定の範囲に制御することにより、分散性及び飲みやすさに優れた造粒物を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
また、本発明者らは、前記造粒物の比重を一定の範囲に制御し、かつ、粒度分布を一定の範囲に制御することにより、分散性及び飲みやすさに優れた造粒物を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
[1]
麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉の乾燥粉末を含有する造粒物であって、比重が0.300g/cm3未満であることを特徴とする造粒物。
[2]
緑葉が麦類の緑葉であることを特徴とする[1]に記載の造粒物。
[3]
麦類が大麦であることを特徴とする[2]に記載の造粒物。
[4]
造粒物における前記緑葉の乾燥粉末の含有量が最も多いことを特徴とする[1]に記載の造粒物。
[5]
造粒物における前記緑葉の乾燥粉末の含有量が50重量%以上であることを特徴とする[1]に記載の造粒物。
[6]
造粒物における粒径500μm以上の粒度分布が10%以下であることを特徴とする[1]に記載の造粒物。
[7]
造粒物における粒径300μm以下の粒度分布が30%以上であることを特徴とする[1]に記載の造粒物。
[8]
経口組成物であることを特徴とする、[1]に記載の造粒物。
[9]
飲食品組成物であることを特徴とする、[1]に記載の造粒物。
[10]
麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉の乾燥粉末を含有する造粒物の製造方法であって、
前記緑葉の乾燥粉末を流動層造粒機に投入し、空気を供給することによって流動化させて水を噴霧した後、乾燥させて造粒物を得る工程を有し、
前記造粒物の比重が0.300g/cm3未満であることを特徴とする、造粒物の製造方法。
[11]
造粒物における粒径500μm以上の粒度分布が10%以下であることを特徴とする、[10]に記載の造粒物の製造方法
[12]
造粒物における粒径300μm以下の粒度分布が30%以上であることを特徴とする、[10]に記載の造粒物の製造方法。
[13]
噴霧する水の量が原料の合計重量に対して30重量%以上であることを特徴とする、[10]に記載の製造方法。
[14]
90℃以上の空気を供給することにより乾燥させることを特徴とする、[10]に記載の製造方法。
[15]
50-75℃の空気を供給することによって前記緑葉の乾燥粉末を流動させることを特徴とする、[10]に記載の製造方法。
[16]
水を間欠噴霧することを特徴とする、[10]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉の乾燥粉末を用いて造粒物を製造し、かつ、造粒物の比重を一定の範囲に制御することにより、分散性及び飲みやすさに優れた造粒物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
[1.青汁素材の緑葉]
本発明の青汁素材とは、麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の植物を意味する。1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0012】
本発明の青汁素材の緑葉とは、前記青汁素材の葉の部分を含む植物体を意味し、葉とともに茎やその他の部分を含んでもよい。収穫時に地上部から茎を除去して葉部分のみを選別するには労力がかかり、また、茎部分も不溶性食物繊維等の栄養成分を豊富に含んでいるため、製造コスト削減及び栄養性の観点から、葉とともに茎を含んでいることが好ましい。
【0013】
<麦類>
本発明の麦類とは、大麦、小麦、ライ麦、えん麦など、外見の類似したイネ科植物の総称を意味する。本発明の麦類としては大麦が特に好ましい。
【0014】
大麦(Hordeum vulgare L.)は中央アジア原産とされ、イネ科に属する一年生又は越年生草本である。本発明に用いる大麦について、品種は特に限定されない。いずれの品種の大麦であっても用いることができ、野生種や交雑種であっても用いることができる。例えば、二条大麦、六条大麦、裸大麦などが挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
麦類の緑葉としては、いずれの収穫時期に収穫されたものであってもよく、特に限定されないが、例えば、麦類が大麦である場合、成熟期前、すなわち、分けつ開始期から出穂開始前期に収穫されたもの(大麦若葉)を用いることが好ましい。具体的には、例えば、背丈が10cm以上、好ましくは10-90cm程度、特に好ましくは20-80cm程度、とりわけ30-70cm程度である大麦から収穫した大麦若葉を用いることが好ましい。
【0016】
<ケール>
本発明のケールとは、アブラナ科アブラナ属であり、学名がBrassica oleracea var. acephalaである植物を意味する。ケールの品種としては、特に制限されるものではなく、キッチンケール、ツリーケール、ブッシュケール、マローケール、コラード、緑葉カンラン等の様々な種類のケールを用いることができる。ケールの緑葉としては、いずれの収穫時期に収穫されたものであってもよく、特に限定されない。
【0017】
<甘藷>
本発明の甘藷とは、ヒルガオ科サツマイモ属であり、学名がIpomoea batatasである植物を意味する。甘藷は、一般にサツマイモと呼ばれるものであれば特に限定されない。甘藷の品種は、特に限定されず、例えば、すいおう、ジョイホワイト、コガネセンガン、シロユタカ、サツマスターチ、アヤムラサキなどの品種が挙げられる。なかでも、ポリフェノール含有量が高いすいおうが好ましい。甘藷の緑葉としては、いずれの収穫時期に収穫されたものであってもよく、特に限定されないが、茎葉の先端部分(若茎葉)が好ましく、黄味がかった緑色を保持している状態の若茎葉がさらに好ましい。
【0018】
<桑>
本発明の桑とは、クワ科クワ属(Morus属)の植物を意味する。桑の種としては、特に限定されるものではなく、マグワ、ヤマグワ、ログワ、ナガミグワ、ケグワ、オガサワラグワ、テンジクグワ等を用いることができる。桑の緑葉としては、いずれの収穫時期に収穫されたものであってもよく、特に限定されない。
【0019】
<明日葉>
本発明の明日葉とは、セリ科シシウド属であり、学名Angelica keiskeiである植物を意味する。明日葉の品種は、特に限定されず、適宜用いることができる。明日葉の緑葉としては、いずれの収穫時期に収穫されたものであってもよく、特に限定されない。
【0020】
<ヨモギ>
本発明のヨモギとは、キク科ヨモギ属(Artemisia属)の多年草を意味する。ヨモギの種としては、特に限定されるものではなく、ヨモギ、ニガヨモギ、タラゴン、ニトロフヨモギ、オニオトコヨモギ、カワラヨモギ、オトコヨモギ、ハマヨモギ、カワラニンジン、クソニンジン、イヌヨモギ、ミヤマオトコヨモギ、エゾハハコヨモギ、サマニヨモギ、タカネヨモギ、ハハコヨモギ、シコタンヨモギ、シロヨモギ、イワヨモギ、ヒメヨモギ、ワタヨモギ、ケショウヨモギ、ヒトツバヨモギ、チシマヨモギ、ヒロハウラジロヨモギ、ヒロハヤマヨモギ、ユキヨモギ、ヤブヨモギ、オオヨモギ、ニシヨモギ、アサギリソウ、キタダケヨモギ等を用いることができるが、中でもヨモギが特に好ましい。ヨモギの緑葉としては、いずれの収穫時期に収穫されたものであってもよく、特に限定されない。
【0021】
<長命草>
本発明の長命草とはセリ科カワラボウフウ属であり、学名がPeucedanum japonicumである植物を意味する。長命草は地方によってボタンボウフウ、チョーメイソウ、チョーメイグサ、チョミーフサ、ボーフー、サクナ、ウプバーサフナ、チョーミーグサ、牡丹防風などと呼ばれている。長命草の品種は、特に限定されず、適宜用いることができる。長命草の緑葉としては、いずれの収穫時期に収穫されたものであってもよく、特に限定されない。
【0022】
<クマザサ>
本発明のクマザサとは、イネ科ササ属(Sasa属)の植物を意味する。クマザサの種としては、特に限定されるものではなく、Sasa veitchii、Sasa kurilensis、Sasamorpha borealis、Sasa senanensis、Sasa palmata、Sasa niponica等を用いることができる。クマザサの緑葉としては、いずれの収穫時期に収穫されたものであってもよく、特に限定されない。
【0023】
[2.緑葉の乾燥粉末]
本発明の緑葉の乾燥粉末とは、麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉を加工して乾燥粉末化したものを意味する。緑葉の乾燥粉末としては、例えば、緑葉を粉砕して乾燥粉末化したもの(緑葉の粉砕末)や緑葉の搾汁を乾燥粉末化したもの(緑葉の搾汁末)、緑葉の抽出物を乾燥粉末化したもの(緑葉のエキス末)等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の緑葉の乾燥粉末としては、分散性及び飲みやすさに優れる観点、加工、貯蔵、運搬等の容易性の観点、食物繊維を豊富に含むという観点から、緑葉の粉砕末であることが好ましい。
【0024】
本発明の緑葉の粉砕末としては、例えば、乾燥処理及び粉砕処理を組み合わせることにより、得たものを用いることができる。乾燥処理及び粉砕処理は同時に行ってもよく、又はいずれを先に行ってもよいが、乾燥処理を先に行った後に粉砕処理を行うことが好ましい。必要に応じて、ブランチング処理、殺菌処理などの処理から選ばれる1種又は2種以上の処理を組み合わせて行ってもよい。また、粉砕処理を行う回数は特に限定されず、粗粉砕処理を行った後に、より細かく粉砕する微粉砕処理を行うなどのように、1回又は2回以上の処理として実施してもよい。
【0025】
ブランチング処理は前記青汁素材の緑葉の緑色を鮮やかに保つための処理であり、ブランチング処理の方法としては、熱水処理や蒸煮処理などが挙げられる。
【0026】
熱水処理としては、例えば、70-100℃、好ましくは80-100℃の熱水又は水蒸気中で、前記青汁素材の緑葉を60-240秒間、好ましくは90-180秒間処理する方法などが挙げられる。
【0027】
蒸煮処理としては、常圧又は加圧下において、前記青汁素材の緑葉を水蒸気により蒸煮する処理と冷却する処理とを繰り返す間歇的蒸煮処理が好ましい。間歇的蒸煮処理において、水蒸気により蒸煮する処理は、例えば、20-40秒間、好ましくは30秒間行われる。蒸煮処理後の冷却処理は、直ちに行われることが好ましく、その方法は特に限定されないが、冷水への浸漬、冷蔵、冷風による冷却、温風による気化冷却、温風と冷風とを組み合わせた気化冷却などが用いられる。このうち温風と冷風とを組み合わせた気化冷却が好ましい。このような冷却処理は、前記青汁素材の緑葉の品温が、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下となるように行われる。また、ビタミン、ミネラル、葉緑素などの栄養成分に富んだ前記青汁素材の緑葉の粉砕末を製造するためには、間歇的蒸煮処理を2-5回繰り返すことが好ましい。
【0028】
殺菌処理は当業者に通常知られている殺菌処理であれば特に限定されないが、例えば、温度、圧力、電磁波、薬剤などを用いて物理的又は化学的に微生物を殺滅させる処理であるということができる。
【0029】
乾燥処理及び粉砕処理に追加してブランチング処理を行う場合、ブランチング処理は乾燥処理の前に行われることが好ましい。また、乾燥処理及び粉砕処理に追加して殺菌処理を行う場合、殺菌処理は、乾燥処理の後か、粉砕処理の前又は後に行われることが好ましい。
【0030】
乾燥処理は特に限定されないが、例えば、前記青汁素材の緑葉の水分含量が10重量%以下、好ましくは5重量%以下となるように乾燥する処理が挙げられる。乾燥処理は、例えば、熱風乾燥、高圧蒸気乾燥、電磁波乾燥、凍結乾燥などの当業者に公知の任意の方法により行われ得る。加熱による乾燥は、例えば、40℃-140℃、好ましくは80-130℃にて加温により前記青汁素材の緑葉が変色しない温度及び時間で行われ得る。
【0031】
粉砕処理は特に限定されないが、例えば、当業者が通常使用する任意の方法により植物体を粉砕する処理が挙げられる。粉砕処理に際して、粒度の均一化、粉砕時間の短縮など、粉砕効率を上げる観点から、粗粉砕及び微粉砕を組み合わせて行うことが好ましい。
【0032】
粉砕処理において、粗粉砕工程では、緑葉をカッター、スライサー、ダイサーなどの当業者が通常用いる任意の粗粉砕用の機器又は器具を用いて、例えば、緑葉の長径が約20mm以下、好ましくは約0.1-10mmとなるように破砕する。微粉砕工程では、例えば、クラッシャー、ミル、ブレンダー、石臼などの当業者が通常用いる任意の微粉採用の機器や器具を用いて前記青汁素材の緑葉を微粉砕する。当業者が通常使用する方法に基づき粉砕処理の条件を適宜設定することにより、前記青汁素材の緑葉の比重、粒度分布などの物性を調製することができる。
【0033】
本発明の緑葉の搾汁末としては、例えば、緑葉の搾汁を低温濃縮して固形分を濃縮し、当該濃縮液を凍結乾燥又は噴霧乾燥することによって得たものを用いることができる。
【0034】
本発明において造粒物の原料として用いる緑葉の乾燥粉末の粒径は特に限定されず、造粒しやすい粒径の原料を適宜選択して用いればよい。緑葉の乾燥粉末の粒径としては、例えば、メディアン径60μm以下のものを用いてもよく、50μm以下のものを用いてもよく、40μm以下のものを用いてもよく、30μm以下のものを用いてもよく、25μm以下のものを用いてもよい。緑葉の乾燥粉末のメディアン径とはD50又はd50とも言われ、粉体を粒径から2つに分けたとき、大きい粒径と小さい粒径が等量となる径のことを言い、例えばレーザー回折・散乱法を用いて測定することができる。具体的には、例えば、レーザー回析散乱光式粒度分布測定装置であるセイシン企業社製のLMS-300又はLMS-350を用いて測定される粒度分布の累積50%(×50)の粒径である。
【0035】
[3.緑葉の乾燥粉末を含有する造粒物]
<造粒物>
造粒とは、複数の粒子を凝集させ、集合体を形成させる操作のことを意味する。前記集合体(造粒物)においては粒子が凝集する際に粒子間に空隙が形成されており、造粒物と造粒に用いる原料の粒子には構造的な違いがある。前記青汁素材の緑葉乾燥粉末を含有する造粒物とは、前記青汁素材の緑葉乾燥粉末を原料として造粒したものであり、比重が0.300g/cm3未満であることを特徴とする。造粒物は、賦形剤や甘味料など、青汁素材の緑葉乾燥粉末以外の原料をさらに配合してもよい。造粒物の比重が当該範囲となるように制御することにより、分散性や飲みやすさに優れた造粒物を得ることができる。なお、本発明の造粒物は何らかの方法によって複数の粒子が凝集した集合体であればよく、造粒物の大きさは特に限定されない。
【0036】
本発明の造粒方法としては、当業者が通常用いる造粒方法を適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、流動層造粒法、押出造粒法、転動造粒法、攪拌造粒法等が挙げられる。いずれの造粒方法であっても、市場で入手可能な任意の造粒装置を用い、乾燥温度等の各種製造条件を適宜設定することにより本発明にて規定する比重の条件を満たす造粒物を製造することができる。また、造粒工程を行った後に粉砕や分級を行い、造粒物の比重や粒度分布を調製してもよい。
【0037】
上記のとおり、いずれの造粒方法であっても本発明の造粒物を得ることはできるが、造粒しやすさの観点から流動層造粒が特に好ましい。流動層造粒とは、原料となる粉体粒子に風を当てて空気流により流動化させながら、水などの結合液を噴霧することにより、粉体粒子同士を結着させ、粉体粒子の凝集体である造粒物を形成させる方法である。
【0038】
流動層造粒の場合、原料となる青汁素材の緑葉の乾燥粉末を流動層造粒機に投入し、空気を供給することによって流動化させた原料に水を噴霧した後、乾燥させて造粒物を得る工程、を有する製造方法によって、本発明の造粒物を得ることができる。造粒に使用する流動層造粒機としては、市場で入手可能な任意の造粒装置を用いることができる。使用する原料の特性に応じて造粒装置の各種製造条件を適宜設定することにより、本発明の条件を満たす造粒物を製造することができる。また、必要に応じて得られた造粒物を分級や粉砕することにより造粒物の比重及び粒径を調製してもよい。
【0039】
原料を流動化させる際に供給する空気の温度としては特に制限はなく、使用する原料の特性に応じて適宜調整すればよい。流動層造粒においては、空気を供給することによって流動化した粉末粒子に対して水を噴霧し、粉末粒子が濡れることにより、粉末粒子同士が結着する。したがって、粉末粒子の濡れ方が造粒の度合いに影響するが、粉末粒子の濡れ方は使用する原料と供給する空気の温度によって異なるため、使用する原料の特性に応じて供給する空気の温度を適宜調整すればよい。供給する空気の温度が低い場合には蒸発する水が少なく粉末粒子は濡れやすいのに対して、供給する空気の温度が高い場合には蒸発する水が多く粉末粒子は濡れにくくなる。本発明の青汁素材の緑葉を造粒する場合に本発明の比重に合致し、分散性や飲みやすさに特に優れた造粒物を得やすいという観点から、50-75℃が好ましく、50-70℃がより好ましく、50-60℃が特に好ましい。なお、流動層造粒機では給気する空気の温度を設定できるので、例えば、50℃の空気を供給したい場合には、流動層造粒機の設定温度を50℃にすればよい。
【0040】
流動層造粒においては、水を噴霧する方法として、連続噴霧と間欠噴霧のいずれであってもよい。連続噴霧とは、水の噴霧を開始してから、全量の水を噴霧し終わるまで、水の噴霧を一度も停止することなく噴霧し続ける噴霧方法のことをいう。間欠噴霧とは、水の噴霧を開始してから、全量の水を噴霧し終わるまでの間に、少なくとも一度は水の噴霧を停止する時間を設ける噴霧方法のことをいう。分散性や飲みやすさに特に優れた造粒物を得られる観点から、間欠噴霧の手法を用いて、加水状態を調整しながら進行することが好ましい。なお、本発明において水を噴霧するとは、水のみを噴霧することに限られず、水に結合剤等を溶解させた水溶液を噴霧することも含む概念である。
【0041】
流動層造粒において、噴霧する水の量に特に制限はなく、使用する原料の特性に応じて適宜調整すればよいが、本発明の青汁素材の緑葉を造粒する場合に本発明の比重に合致し、分散性や飲みやすさに特に優れた造粒物を得やすいという観点から、噴霧する水の量の下限値としては、原料の合計重量に対して20重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましく、40重量%以上であることがさらに好ましく、45重量%以上であることが特に好ましく、50重量%以上であることが最も好ましい。また、噴霧する水の量の上限値としては、乾燥時間を短縮して生産性を向上させる観点から、原料の合計重量に対して300重量%以下であることが好ましく、250重量%以下であることがより好ましく、200重量%以下であることがさらに好ましく、150重量%以下であることが特に好ましく、100重量%以下であることが最も好ましい。なお、造粒物が青汁素材の緑葉の乾燥粉末以外の原料を含む場合、噴霧する水の量は青汁素材の緑葉の乾燥粉末以外の原料も含んだ合計重量に対する量である。
【0042】
流動層造粒においては、造粒工程を単回のみ行ってもよく、複数回行ってもよい。本発明の造粒物は、造粒工程が単回であっても複数回であっても分散性や飲みやすさに優れた造粒物を得ることができる。造粒工程は、生産性などの観点から単回行うことがより好ましい。
【0043】
流動層造粒においては、流動させた原料に対して水を噴霧する工程を行った後に、乾燥させて造粒物を得る工程(乾燥工程)を有する。乾燥時に供給する空気の温度としては特に制限はなく、使用する原料の特性に応じて適宜調整すればよいが、本発明の青汁素材の緑葉を造粒する場合に本発明の比重に合致する造粒物を得やすいという観点と乾燥時間を短縮する観点から、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、100℃以上がさらに好ましく、110℃以上が特に好ましい。流動層造粒機では給気する空気の温度を設定できるので、例えば、90℃の空気を供給したい場合には、流動層造粒機の設定温度を90℃にすればよい。また、得られる造粒物の水分量は特に限定されないが、10重量%以下が好ましく、8重量%以下がより好ましく、7重量%以下がさらに好ましく、6重量%以下が特に好ましく、5重量%以下が最も好ましい。
【0044】
本発明の造粒物は、前記青汁素材の緑葉の乾燥粉末の他に、必要に応じて、結合剤、賦形剤、増粘剤等の添加剤を適宜、添加してもよい。添加剤の種類としては特に限定されず、例えば、ブドウ糖、マルチトール、エリスリトール等の糖類や、グァーガムなどの増粘多糖類、コーンスターチ等のデンプン、デキストリンや難消化性デキストリン等のデンプン分解物等を挙げることができる。添加剤は1種のみを添加してもよく、2種以上を添加してもよい。
【0045】
本発明の造粒物は、青汁素材ではない植物の緑葉乾燥粉末を適宜、添加してもよい。青汁素材ではない植物の緑葉としては、例えば、緑茶、ホウレンソウの葉、カブの葉、コマツナの葉等が挙げられる。青汁素材ではない植物の緑葉乾燥粉末の含有量としては特に制限されるものではないが、分散性、飲みやすさ又は栄養補給の観点から、青汁素材ではない植物の緑葉乾燥粉末よりも青汁素材の緑葉乾燥粉末の含有量(合計重量)が多いことが好ましい。
【0046】
本発明の造粒物における青汁素材の緑葉の乾燥粉末の含有量としては特に制限されるものではない。従来、青汁素材の緑葉の乾燥粉末(特に緑葉の粉砕末)を高含有する粉末の場合には、造粒しても分散性が悪いため、造粒せずにそのまま充填して青汁として市販されることが一般的であったが、造粒物の比重を所定の範囲に制御することにより、青汁素材の緑葉乾燥粉末を高含有する場合であっても、分散性や飲みやすさに優れた造粒物が得られることを本発明者らは見出した。造粒物において青汁素材の含有量が多い場合には、含有量が少ない場合に比べて、経口摂取する造粒物の総量が同じであっても、青汁素材を多く摂取できるというメリットがある。そのため、栄養成分を効率よく摂取できる観点から、造粒物における青汁素材の緑葉乾燥粉末の含有量としては、50重量%以上が好ましく、60重量%以上がより好ましく、70重量%以上がさらに好ましく、80重量%以上がよりさらに好ましく、95重量%以上が特に好ましく、100重量%が最も好ましい。同様に、栄養成分を効率よく摂取できる観点から、造粒物に配合されている原料の中で、青汁素材の緑葉乾燥粉末の含有量が最も多いことが好ましい。
【0047】
青汁素材の緑葉乾燥粉末の中でも、麦類の緑葉乾燥粉末は風味や栄養性に特に優れているため、本発明の造粒物に配合されている原料の中で、麦類の緑葉乾燥粉末の含有量が最も多いことが好ましい。
【0048】
<造粒物の比重>
本発明における造粒物の比重とは、容器内へ造粒物を静かに充填した状態で計測した嵩密度(ゆるめ嵩密度)を意味し、例えば、粉体特性評価装置(パウダテスタ(R)PT-X;ホソカワミクロン株式会社)を用いて測定することができる。本発明の造粒物においては、比重を0.300g/cm3未満の範囲となるように制御することによって、分散性や飲みやすさに優れた造粒物を得ることができる。本発明の造粒物の比重としては0.300g/cm3未満の範囲であれば特に制限されないが、比重の上限としては、分散性をより向上させる観点から、0.295g/cm3以下が好ましく、0.290g/cm3以下がより好ましく、0.285g/cm3以下がさらに好ましく、0.280g/cm3以下がよりさらに好ましく、0.270g/cm3以下が特に好ましく、0.260g/cm3以下がより特に好ましく、0.250g/cm3以下が最も好ましい。本発明の造粒物の比重の下限値としては特に制限されないが、分散性をより向上させる観点から、0.100g/cm3以上が好ましく、0.130g/cm3以上がより好ましく、0.140g/cm3以上がさらに好ましく、0.150g/cm3以上が特に好ましく、0.160g/cm3以上が最も好ましい。
【0049】
<造粒物の粒度分布>
本発明における造粒物の粒度分布とは重量基準の粒度分布を意味し、例えば、電動篩振動機(MICRO VIBRO SIFTER M-2;筒井理化学器機株式会社 )を用いて測定することができる。本発明の造粒物の粒度分布は特に限定されないが、分散性、粉流れ、又は飲みやすさの観点から、粒径500μm以上の粒度分布が40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、25%以下であることがさらに好ましく、20%以下であることが特に好ましく、15%以下であることが最も好ましい。また、分散性、粉流れ、又は飲みやすさの観点から、粒径300μm以上の粒度分布が50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、35%以下であることがさらに好ましく、30%以下であることが特に好ましく、25%以下であることが最も好ましい。
【0050】
また、分散性、取扱いのしやすさ(粉流れ)、又は飲みやすさの観点から、粒径300μm以下の粒度分布が20%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、60%以上であることが特に好ましく、70%以上であることが最も好ましい。また、分散性、取扱いのしやすさ(粉流れ)、又は飲みやすさの観点から、粒径150μm以下の粒度分布が15%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましく、50%以上であることが特に好ましく、60%以上であることが最も好ましい。また、分散性、取扱いのしやすさ(粉流れ)、又は飲みやすさの観点から、粒径106μm以下の粒度分布が15%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましく、50%以上であることが特に好ましく、60%以上であることが最も好ましい。また、分散性、取扱いのしやすさ(粉流れ)、又は飲みやすさの観点から、粒径106μm以上の粒度分布が3%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、7%以上であることがさらに好ましく、10%以上であることが特に好ましく、15%以上であることが最も好ましい。
【0051】
<経口組成物>
本発明の造粒物は、経口組成物として用いることができる。経口組成物の形態としては、特に制限されるものではなく、例えば、飲食品、医薬部外品、医薬品等が挙げられるが、青汁素材の緑葉の乾燥粉末は青汁として摂取されることが多いことから、飲食品組成物として用いることが好ましい。飲食品組成物の形態としては、特に制限されるものではなく、例えば、機能性表示食品、特定保健用食品、健康食品等が挙げられる。
【0052】
本発明の造粒物は、水等の溶媒に分散しやすいという特徴を有することから、粉末飲料として用いることが好ましい。粉末飲料とは、水や湯、牛乳、豆乳などの液体に混ぜて飲用に供する加工食品のことを意味する。粉末飲料は、重量が軽く携行しやすいというメリットがある。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の形態をとることができる。
【0054】
-試験1-
[緑葉の乾燥粉末の製造]
原料として、背丈が約30cmで刈り取った大麦の地上部(葉及び茎)を用いた。これを水洗いし、付着した泥などを除去し、5-10cm程度の大きさに切断する前処理を行った。前処理した大麦若葉を、90-100℃の熱湯で90秒間-120秒間、1回のみブランチング処理し、その後、冷水で冷却した。続いて、得られた大麦若葉を、水分量が5重量%以下となるまで、乾燥機中で、20分間-180分間、80℃-130℃の温風にて乾燥させた。乾燥した大麦若葉を約1mmの大きさに粗粉砕処理した。得られた大麦若葉を微粉砕処理することにより、メディアン径20μmの大麦若葉末を製造した。
【0055】
[緑葉の乾燥粉末を含有する造粒物の製造]
緑葉の乾燥粉末として前記製造方法で製造した大麦若葉末を用いた。以下に記載する方法により、緑葉の乾燥粉末を含有する造粒物を製造した。
【0056】
<実施例1>
大麦若葉末を流動層造粒機に投入後、55℃の空気を供給することによって大麦若葉末を流動化させた状態で、大麦若葉末の重量に対して75重量%の水を間欠噴霧し、その後、120℃の空気を供給することにより乾燥させて実施例1の造粒物(水分量5重量%以下)を得た。
【0057】
<実施例2>
大麦若葉末を流動層造粒機に投入後、55℃の空気を供給することによって大麦若葉末を流動化させた状態で、大麦若葉末の重量に対して50重量%の水を間欠噴霧し、その後、120℃の空気を供給することにより乾燥させて実施例2の造粒物(水分量5重量%以下)を得た。
【0058】
<比較例1>
大麦若葉末を押出し造粒機に投入後、スクリーン(1mmスクリーンを使用)の目詰まりに注意しながら大麦若葉末の重量に対して10-30重量%の水を適宜加水して造粒し、棚式乾燥機にて乾燥温度を90℃にして乾燥させ、比較例1の造粒物(水分量5重量%以下)を得た。
【0059】
<比較例2>
造粒していない大麦若葉末を比較例2とした。
【0060】
[比重及び粒度分布の測定]
以下に記載する方法により、実施例及び比較例について比重及び粒度分布を測定した。
【0061】
<比重>
粉体特性評価装置(パウダテスタ(R)PT-X;ホソカワミクロン株式会社)を用いて、被験物質を所定の高さから落下させて100cm3のステンレス製容器に入れ、質量を測定することにより比重を測定した。測定結果を表1に示す。
【0062】
【0063】
<粒度分布>
電動篩振動機(MICRO VIBRO SIFTER M-2;筒井理化学器機株式会社)を用いて粒度分布を測定した。測定結果を表2に示す。
【0064】
【0065】
[分散性の評価]
以下に記載する(1)及び(2)の方法により、実施例及び比較例について分散性を評価した。
【0066】
(1)水なじみの評価
(1)-1.水にサンプルを投与した際における分散性
100mLの水を入れたコップ(高さ100mm、上部の直径75mm、底部の直径55mm)に各サンプル3gずつを静かに投入し、サンプルを投下してからサンプル全体が水に浸漬して水中に分散するまでの時間(液面に浮遊した状態から水中に沈むまでの時間)を分散時間として測定し、以下の基準にしたがって水なじみを評価した。結果を表3に示す。
<基準>
〇:分散時間が60秒未満
×:分散時間が60秒以上
【0067】
【0068】
表3から明らかなように、実施例1及び2の造粒物は、造粒していない大麦若葉末(比較例2)に比べて分散時間が短く、素早く水に分散することが明らかとなった。
【0069】
(1)-2.サンプルに水を投与した際における分散性
各サンプル3gずつを入れたコップ(高さ100mm、上部の直径75mm、底部の直径55mm)に、水100mLを静かに注ぎ込んだ。その後、水面を観察し、以下の基準にしたがって粉浮きの有無を評価した。結果を表4に示す。
<基準>
有:サンプルの少なくとも一部が水面に浮いている
無:サンプルが水面に浮いていない(水中に分散又は沈んでいる)
【0070】
【0071】
表4から明らかなように、造粒していない大麦若葉末(比較例2)は粉浮きが認められたのに対して、実施例の造粒物に粉浮きは認められなかった。
【0072】
(2)分散安定性の評価
100mLの水を入れた円柱状(直径75mm)の透明なコップに各サンプル3gをそれぞれ投入し、マドラーを用いて10回攪拌(攪拌速度は1~1.5回/秒)した。各サンプルは不溶性であるため、攪拌によって水中に一時的には分散するが、時間が経過すると徐々に沈降し、上の方に澄んだ部分(上澄み)ができる。攪拌を完了してから1分間静置した後、コップの中身を観察し、上澄みの高さ(分離距離)を測定し、以下の基準にしたがって分散安定性を評価した。分離距離が短いほど、サンプルが水に安定な状態で分散しており、分離しにくいことを意味する。測定結果を表5に示す。
<基準>
〇:分散距離が5mm未満
×:分散距離が5mm以上
【0073】
【0074】
表5から明らかなように、実施例1及び2の造粒物は分散安定性が良いに対して、比較例1の造粒物は分散安定性が悪いことが分かった。
【0075】
(1)及び(2)の試験より、造粒していない大麦若葉末(比較例2)は水なじみが悪いこと、比較例1の造粒物は分散安定性が悪いことが分かった。一方、実施例1及び2の造粒物は水なじみと分散安定性が共に良く、分散性に優れることが分かった。この結果を踏まえて以下の基準にしたがい、分散性を総合評価した(表6)。
<分散性の総合評価>
〇:水なじみ「〇」、かつ、粉浮きの有無「無」、かつ、分散安定性「〇」、である場合
×:上記以外の場合
【0076】
【0077】
[飲みやすさ(のど越し)の評価]
各サンプル3gを100mLの水を入れたコップに投入した。投入後、マドラーを用いて10回攪拌(攪拌速度は1~1.5回/秒)した。その後すぐに各飲料を摂取し、以下の基準にてのど越しを評価した。結果を表7に示す。
<基準>
〇:飲用時にのどにイガイガを全く感じない又はイガイガをほとんど感じない
×:飲用時にのどにイガイガを感じる
【0078】
【0079】
表7から明らかなように、実施例の造粒物は飲用時のイガイガ感がなく飲みやすいものであったのに対して、比較例1の造粒物は飲用時のイガイガ感があり飲みにくいものであった。
【0080】
[取扱性]
各サンプル3gをアルミニウムパウチの分包に充填した。得られたサンプル入り分包を用いて、分包開封時の粉舞い、コップへの投入時の粉流れ(取扱いのしやすさの指標)について基準にしたがって評価し、取扱性を確認した。結果を表8に示す。
<基準>
開封時の粉舞い
〇:分包の開封時に粉舞いが少ない
×:分包の開封時に粉舞いが多い
投入時の粉流れ
〇:コップに投入する際の粉流れがスムーズである
×:コップに投入する際の粉流れがスムーズでない
【0081】
【0082】
表8から明らかなように、実施例の造粒物は大麦若葉末に比べて取扱性に優れることが分かった。
【0083】
[結果の総括]
上述した試験により、大麦若葉末を含有し、比重が0.300g/cm3未満である造粒物(実施例1及び2)は、分散性、のど越し、取扱性がいずれも優れていた。一方、大麦若葉末を含有し、比重が0.300g/cm3を超える造粒物(比較例1)は、取扱性は優れているが、分散性及びのど越しは悪かった。また、造粒していない大麦若葉末(比較例2)は、のど越しは優れているが、分散性及び取扱性は悪かった。したがって、大麦若葉末を含有し、比重が0.300g/cm3未満の造粒物は、分散性、のど越し、取扱性に優れたものであることが明らかとなった。
【0084】
-試験2-
[緑葉の乾燥粉末を含有する造粒物の製造]
以下に記載する方法により、青汁素材の緑葉乾燥粉末を含有する造粒物を製造した。
【0085】
<実施例3>
試験1で製造した大麦若葉末80重量%、キシロオリゴ糖5重量%、乳糖15重量%となるように混合した原料を流動層造粒機に投入後、70℃の空気を供給することによって原料を流動化させた状態で、原料の合計重量に対して50重量%の水を間欠噴霧し、その後、100℃の空気を供給することにより乾燥させて実施例3の造粒物(水分量5重量%以下)を得た。
【0086】
<比較例3>
試験1で製造した大麦若葉末80重量%、キシロオリゴ糖5重量%、乳糖15重量%となるように混合した原料を流動層造粒機に投入後、80℃の空気を供給することによって原料を流動化させた状態で、原料の合計重量に対して10重量%の水を間欠噴霧し、その後、80℃の空気を供給することにより乾燥させて比較例3の造粒物(水分量5重量%以下)を得た。
【0087】
<実施例4>
ケール末(ケールを粉砕処理して粉末化したもの。メディアン径30μm)を流動層造粒機に投入後、65℃の空気を供給することによってケール末を流動化させた状態で、ケール末の重量に対して80重量%の水を間欠噴霧し、その後、80℃の空気を供給することにより乾燥させて実施例4の造粒物(水分量5重量%以下)を得た。
【0088】
<実施例5>
明日葉末(明日葉を粉砕処理して粉末化したもの。メディアン径30μm)を流動層造粒機に投入後、65℃の空気を供給することによって明日葉末を流動化させた状態で、明日葉末の重量に対して80重量%の水を間欠噴霧し、その後、80℃の空気を供給することにより乾燥させて実施例5の造粒物(水分量5重量%以下)を得た。
【0089】
<比較例4>
実施例5と同じ明日葉末を流動層造粒機に投入後、80℃の空気を供給することによって明日葉末を流動化させた状態で、明日葉末の重量に対して10重量%の水を間欠噴霧し、その後、80℃の空気を供給することにより乾燥させて比較例4の造粒物(水分量5重量%以下)を得た。
【0090】
<比較例5>
緑茶末(碾茶[蒸し製緑茶]を粉末化した抹茶末。メディアン径30μm)を流動層造粒機に投入後、75℃の空気を供給することによって緑茶末を流動化させた状態で、緑茶末の重量に対して30重量%の水を間欠噴霧し、その後、120℃の空気を供給することにより乾燥させて比較例5の造粒物(水分量5重量%以下)を得た。
【0091】
<実施例6>
甘藷若葉末(甘藷の葉を粉砕処理して粉末化したもの。メディアン径30μm)、比較例6に用いた緑茶末がそれぞれ50重量%となるように混合した原料を流動層造粒機に投入後、65℃の空気を供給することによって原料を流動化させた状態で、原料の合計重量に対して80重量%の水を間欠噴霧し、その後、120℃の空気を供給することにより乾燥させて実施例6の造粒物(水分量5重量%以下)を得た。
【0092】
<比較例6>
実施例6に用いた甘藷若葉末、比較例6に用いた緑茶末がそれぞれ50重量%となるようにとなるように混合した原料を流動層造粒機に投入後、80℃の空気を供給することによって原料を流動化させた状態で、原料の合計重量に対して20重量%の水を間欠噴霧し、その後、80℃の空気を供給することにより乾燥させて比較例6の造粒物(水分量5重量%以下)を得た。
【0093】
[比重及び粒度分布の測定]
試験1と同じ方法により、実施例及び比較例について比重及び粒度分布を測定した。結果を表9に示す。
【0094】
[分散性及び飲みやすさの評価]
試験1と同じ方法により分散性及び飲みやすさ(のど越し)を評価した。結果を表9に示す。
【0095】
【0096】
[結果の総括]
大麦若葉末、ケール末、明日葉末又は甘藷若葉末を含有し、比重が0.300g/cm3未満である造粒物(実施例3-6)は、分散性及びのど越しが優れていた。一方、大麦若葉末、明日葉末又は甘藷若葉末を含有していても、比重が0.300g/cm3以上の造粒物には、のど越しは優れるものの、分散性は悪かった(比較例3、4、6)。また、緑茶末からなる造粒物は、比重が0.300g/cm3未満であっても、分散性及びのど越しは悪かった(比較例5)。
【0097】
-試験3-
[緑葉の乾燥粉末を含有する造粒物の製造]
以下に記載する方法により、青汁素材の緑葉乾燥粉末を含有する造粒物を製造した。
【0098】
<実施例7>
桑葉搾汁末(桑葉の搾汁液にデキストリンを加えてスプレードライにより乾燥粉末化した搾汁末。桑葉搾汁液とデストリンの比率は1:1)60重量%、還元麦芽糖40重量%となるように混合した原料を流動層造粒機に投入後、70℃の空気を供給することによって原料を流動化させた状態で、原料の合計重量に対して20重量%の水を間欠噴霧し、その後、100℃の空気を供給することにより乾燥させて実施例7の造粒物(水分量5重量%以下)を得た。
【0099】
<比較例7>
実施例7で用いた桑葉搾汁末60重量%、還元麦芽糖40重量%となるように混合した原料を流動層造粒機に投入後、80℃の空気を供給することによって原料を流動化させた状態で、原料の合計重量に対して20重量%の水を間欠噴霧し、その後、80℃の空気を供給することにより乾燥させて比較例7の造粒物(水分量5重量%以下)を得た。
【0100】
<実施例8>
大麦若葉搾汁末(大麦若葉の搾汁液にデキストリンを加えてスプレードライにより乾燥粉末化したもの。大麦若葉搾汁液とデストリンの比率は1:1)60重量%、還元麦芽糖40重量%となるように混合した原料を流動層造粒機に投入後、70℃の空気を供給することによって原料を流動化させた状態で、原料の合計重量に対して20重量%の水を間欠噴霧し、その後、100℃の空気を供給することにより乾燥させて実施例8の造粒物(水分量5重量%以下)を得た。
【0101】
<実施例9>
明日葉搾汁末(明日葉の搾汁液にデキストリンを加えてスプレードライにより乾燥粉末化したもの。明日葉搾汁液とデストリンの比率は1:1)60重量%、還元麦芽糖40重量%となるように混合した原料を流動層造粒機に投入後、70℃の空気を供給することによって原料を流動化させた状態で、原料の合計重量に対して20重量%の水を間欠噴霧し、その後、100℃の空気を供給することにより乾燥させて実施例9の造粒物(水分量5重量%以下)を得た。
s
【0102】
[比重及び粒度分布の測定]
試験1と同じ方法により、実施例及び比較例について比重及び粒度分布を測定した。結果を表10に示す。
【0103】
[分散性及び飲みやすさの評価]
試験1と同じ方法により分散性及び飲みやすさ(のど越し)を評価した。結果を表10に示す。
【0104】
【0105】
[結果の総括]
桑葉搾汁末、大麦若葉搾汁末、又は明日葉搾汁末を含有し、比重が0.300g/cm3未満である造粒物(実施例7-9)は、分散性及びのど越しが優れていた。一方、桑葉搾汁末を含有し、比重が0.300g/cm3以上の造粒物は、のど越しは優れるものの、分散性は悪かった(比較例7)。
【0106】
-試験5-
[緑葉の乾燥粉末を含有する造粒物の製造]
以下に記載する方法により、青汁素材の緑葉乾燥粉末を含有する造粒物を製造した。
【0107】
<実施例10>
大麦若葉末(メディアン径18μm)を流動層造粒機に投入後、60℃の空気を供給することによって大麦若葉末を流動化させた状態で、大麦若葉末の重量に対して80重量%の水を間欠噴霧し、その後、100℃の空気を供給することにより乾燥させて実施例10の造粒物(水分量5重量%以下)を得た。実施例10の造粒物は比重0.160g/cm3であり、粒径150μm以下の粒度分布が60%以上であった。実施例10の造粒物は、分散性及びのど越しが優れていた。
【0108】
-試験6-
[緑葉の乾燥粉末を含有する造粒物の製造]
以下に記載する方法により、青汁素材の緑葉乾燥粉末を含有する造粒物を製造した。
【0109】
<実施例11>
桑葉末(桑葉を粉砕処理して粉末化したもの。メディアン径30μm)を流動層造粒機に投入後、55℃の空気を供給することに桑葉末を流動化させた状態で、桑葉末の重量に対して80重量%の水を間欠噴霧し、その後、120℃の空気を供給することにより乾燥させて実施例11の造粒物(水分量5重量%以下)を得た。
【0110】
<実施例12>
ヨモギ末(ヨモギを粉砕処理して粉末化したもの。メディアン径30μm)を流動層造粒機に投入後、55℃の空気を供給することにヨモギ末を流動化させた状態で、ヨモギ末の重量に対して80重量%の水を間欠噴霧し、その後、120℃の空気を供給することにより乾燥させて実施例12の造粒物(水分量5重量%以下)を得た。
【0111】
<実施例13>
長命草末(長命草を粉砕処理して粉末化したもの。メディアン径30μm)を流動層造粒機に投入後、55℃の空気を供給することに長命草末を流動化させた状態で、長命草末の重量に対して80重量%の水を間欠噴霧し、その後、120℃の空気を供給することにより乾燥させて実施例13の造粒物(水分量5重量%以下)を得た。
【0112】
<実施例14>
クマザサ末(クマザサを粉砕処理して粉末化したもの。メディアン径30μm)を流動層造粒機に投入後、55℃の空気を供給することにクマザサ末を流動化させた状態で、クマザサ末の重量に対して80重量%の水を間欠噴霧し、その後、120℃の空気を供給することにより乾燥させて実施例14の造粒物(水分量5重量%以下)を得た。
【0113】
実施例11~14の造粒物は、比重0.280g/cm3以下であり、粒径150μm以下の粒度分布が60%以上であった。これらの造粒物はいずれも分散性及びのど越しが優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の造粒物は、麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉の乾燥粉末を含有し、かつ、分散性及び飲みやすさに優れた造粒物であって、粉末飲料などの飲食品として用いることができるため、産業上の有用性は高い。
【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉の乾燥粉末を含有し、かつ、分散性及び飲みやすさに優れた造粒物の提供を目的とするものである。
【解決手段】本発明によれば、麦類、ケール、甘藷、桑、明日葉、ヨモギ、長命草及びクマザサから選ばれる少なくとも1種の緑葉の乾燥粉末を用いて造粒物を製造し、かつ、造粒物の比重を一定の範囲に制御することにより、分散性や飲みやすさに優れた造粒物を提供することができる。
【選択図】なし