(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】微粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 9/04 20060101AFI20221201BHJP
B01J 19/12 20060101ALI20221201BHJP
B22F 9/00 20060101ALI20221201BHJP
B22F 9/30 20060101ALI20221201BHJP
B22F 1/052 20220101ALI20221201BHJP
B01J 13/00 20060101ALI20221201BHJP
B22F 1/00 20220101ALN20221201BHJP
B22F 1/054 20220101ALN20221201BHJP
C22C 19/03 20060101ALN20221201BHJP
【FI】
B22F9/04 Z
B01J19/12 H
B22F9/00 B
B22F9/30 Z
B22F1/052
B01J13/00
B22F1/00 M
B22F1/054
C22C19/03 Z
(21)【出願番号】P 2022075928
(22)【出願日】2022-05-02
【審査請求日】2022-05-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516230102
【氏名又は名称】株式会社GCEインスティチュート
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】後藤 博史
(72)【発明者】
【氏名】中村 貴宏
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-006513(JP,A)
【文献】特開2012-046778(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0168669(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/00- 9/30
B22F 1/00- 1/18
B01J 19/12
B01J 13/00
C22C 19/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェムト秒パルスレーザーを用いて微粒子を生成する方法であって、
溶媒中の
懸濁された粉体材料に対してフェムト秒パルスレーザーを照射して、金属原子を含有する微粒子を生成する照射工程を備え、
前記粉体材料は、
第1金属原子を含有する第1粉体材料と、前記第1金属原子とは異なる第2金属原子を含有する第2粉体材料と、を含み、前記微粒子よりも大きい中央径を有し、
前記微粒子は、前記第1金属原子及び前記第2金属原子を含有する合金であること
を特徴とする微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記第2粉体材料の融点は、前記第1粉体材料の融点よりも高いこと
を特徴とする請求項
1記載の微粒子の製造方法。
【請求項3】
前記微粒子は、前記第1金属原子と、前記第2金属原子とを組み合わせた固溶体である
こと
を特徴とする請求項
1又は
2記載の微粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザーを用いて微粒子を生成する方法として、例えば特許文献1に開示されたような微粒子の製造方法が提案されている。
【0003】
特許文献1には、1種以上の金属イオンを溶解させた基本溶媒に、フェムト秒パルスレーザーを照射して金属ナノ粒子を生成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1では、金属イオンを溶解させた基本溶媒にフェムト秒パルスレーザーを照射して、基本溶媒中の水分子を分解して生成されるラジカル(例えば水素ラジカル)によって金属イオンを還元することにより、金属ナノ粒子を生成する方法が開示されている。この生成方法によれば、金属イオンの還元反応時に、目的物質である金属ナノ粒子とは別に、例えば金属イオンと結合していた塩化物イオンなどが酸化し、目的物質以外の不純物が生成される可能性がある。このため、生じた不純物が金属ナノ粒子に付着等の影響を及ぼす恐れがあり、金属ナノ粒子の品質を低下させる懸念が挙げられる。
【0006】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするとこ
ろは、微粒子の品質低下の抑制を図ることができる微粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明における微粒子の製造方法によれば、フェムト秒パルスレーザーを用いて微粒子を生成する方法であって、溶媒中の懸濁された粉体材料に対してフェムト秒パルスレーザーを照射して、金属原子を含有する微粒子を生成する照射工程を備え、前記粉体材料は、第1金属原子を含有する第1粉体材料と、前記第1金属原子とは異なる第2金属原子を含有する第2粉体材料と、を含み、前記微粒子よりも大きい中央径を有し、前記微粒子は、前記第1金属原子及び前記第2金属原子を含有する合金であることを特徴とする。
【0009】
第2発明における微粒子の製造方法によれば、第1発明において、前記第2粉体材料の
融点は、前記第1粉体材料の融点よりも高いことを特徴とする。
【0010】
第3発明における微粒子の製造方法によれば、第1発明又は第2発明において、前記微
粒子は、前記第1金属原子と、前記第2金属原子とを組み合わせた固溶体であることを特
徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1発明~第3発明によれば、溶媒中の粉体材料に対してフェムト秒パルスレーザーを
照射して、金属原子を含有する微粒子を生成する照射工程を備え、粉体材料は微粒子より
も大きい中央径を有する。このため、金属イオンの還元を利用した微粒子の製造方法と比
べて、微粒子に影響を及ぼす恐れのある不純物の発生を抑制できる。これにより、生成し
た微粒子の品質低下を抑制することが可能となる。
【0013】
また、第1発明~第3発明によれば、粉体材料は、第1金属原子を含有する第1粉体材料と、第1金属原子とは異なる第2金属原子を含有する第2粉体材料と、を含み、微粒子は第1金属原子及び第2金属原子を含有する合金である。このため、第1粉体材料と第2粉体材料との比率を調節することができ、微粒子に含有される各金属原子の組成比を制御しやすくなる。これにより、微粒子に含有される各金属原子における組成比のバラつきを抑制することが可能となる。
【0014】
特に、第2発明によれば、第2粉体材料の融点は、第1粉体材料の融点よりも高い。即
ち、第1粉体材料の特性と、第1粉体材料よりも高い融点と、を有する微粒子が生成され
る。このため、第2粉体材料を用いずに微粒子を製造した場合と比べて、微粒子として安
定する温度領域を拡大することができる。これにより、生成した微粒子の安定性向上を図
ることが可能となる。
【0015】
特に、第3発明によれば、微粒子は、第1金属原子と、第2金属原子とを組み合わせた
固溶体である。このため、固溶体でない微粒子と比べて、微粒子の部分的な状態変化や化
学変化が起きにくい。これにより、生成した微粒子のさらなる安定性向上を図ることが可
能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本実施形態における微粒子の製造方法に用いられる製造装置の一例を示す模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態としての微粒子の製造方法、微粒子及びコロイド溶液の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
(実施形態:微粒子、コロイド溶液)
本実施形態における微粒子は、発電素子等の電子デバイスに用いられるほか、例えば医療、食品等の分野に用いられる。微粒子は、金属微粒子を含むほか、金属原子と非金属原子とを含有する微粒子を含んでもよい。微粒子は、例えば発電素子等のエネルギー分野や、導電性部品等の電子デバイス分野で用いることができる。上記のほか、微粒子は、例えば医薬品あるいは化粧品としての医療分野、複合材料の一部としての素材分野、食品等の分野で用いることができる。特に、微粒子の表面に対し、任意の表面処理(例えば被膜の形成)を行うことで、付加機能を有する微粒子を生成でき、様々な用途への展開が期待される。
【0020】
微粒子は、例えば1nm以上100nm以下の粒子径を有する複数の粒子を含む。微粒子は、例えばメディアン径(中央径:D50)が1nm以上10nm以下の粒子径を有する粒子を含んでもよいほか、例えば平均粒径が1nm以上10nm以下の粒子径を有する粒子を含んでもよい。メディアン径又は平均粒径は、例えば粒度分布計測器を用いることで、測定することができる。粒度分布計測器としては、例えば、動的光散乱法を用いた粒度分布計測器(例えばMalvern Panalytical 製ゼータサイザーUltra等)を用いればよい。
【0021】
微粒子は、単一金属により生成された粒子群を示すほか、例えば複数種類の金属粒子により生成された粒子群を示す。微粒子は、例えば合金により生成された粒子群を示してもよい。
【0022】
本実施形態におけるコロイド溶液は、微粒子と同様の分野にて用いられる。コロイド溶液は、例えば微粒子を含む2種類以上の物質が混合する状態を示す。コロイド溶液は、例えば微粒子が分散された溶媒6を含む。
【0023】
コロイド溶液は、微粒子が分散された溶媒6を備える。この場合、溶媒6を用いずに微粒子を保管した場合と比べて、微粒子の凝集を抑制しやすい。これにより、品質の保たれた微粒子を提供することが可能となる。
【0024】
微粒子の例としては、例えばニッケル、白金、金、チタン等の公知の金属原子を含有する。微粒子は、金属原子を含有していれば、例えば純金属、非金属を含有しない合金、金属酸化物の何れかを含んでもよい。なお、純金属又は非金属を含有しない合金の微粒子を分散したコロイド溶液を製造する場合、溶媒6としてアルコールを用いることで、微粒子の酸化を促進させる要因を少なくすることができる。これにより、より品質の保たれた微粒子を提供することが可能となる。
【0025】
微粒子は、例えばペロブスカイト構造を示す。微粒子は、例えばチタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸錫(SnTiO3)、チタン酸カドミウム(CdTiO3)、及びジルコン酸ストロンチウム(SrZrO3)の少なくとも何れかを含んでもよい。
【0026】
微粒子は、例えば第1の粉体材料と、第2の粉体材料とを用いて生成される。第1の粉体材料は、第1の金属原子(第1金属原子)を含有し、第2の粉体材料は、第2の金属原子(第2金属原子)を含有する。微粒子は、例えば第1の金属原子及び第2の金属原子を含有する合金である。微粒子は、例えば第1の粉体材料(第1粉体材料)の融点よりも高い融点を有する、第2の粉体材料(第2粉体材料)を含有する。即ち、第1の粉体材料の特性を有し、第1の粉体材料よりも融点が高い微粒子が生成される。この場合、第2の粉体材料を用いずに微粒子を製造した場合と比べて、微粒子として安定する温度領域を拡大させることができる。これにより、微粒子の安定性向上を図ることが可能となる。微粒子は、異なる2種の金属原子を含有する合金でもよく、異なる3種以上の金属原子を含有する合金でもよい。
【0027】
微粒子は、例えば第1の金属原子と、第2の金属原子とを組み合わせた固溶体である。この場合、固溶体でない微粒子と比べて、微粒子の部分的な状態変化や化学変化が起きにくく、微粒子全体が安定して存在しやすい。これにより、生成した微粒子のさらなる安定性向上を図ることが可能となる。固溶体の微粒子に含有される金属原子の組み合わせの例としては、ニッケルと白金との組み合わせ、ニッケルとルテニウムとの組み合わせ、ニッケルとロジウムとの組み合わせ、ニッケルとパラジウムとの組み合わせ、ニッケルとイリジウムとの組み合わせ等が挙げられる。固溶体の微粒子は、3種以上の金属原子を含有してもよい。固溶体の微粒子に含有される金属原子の組み合わせの例として、例えば混合エンタルピーが0以下となる組み合わせの金属原子を選択してもよい。
【0028】
微粒子は、例えば第1の金属原子と、第2の金属原子とを組み合わせた共晶体である。この場合、共晶体でない微粒子と比べて、微粒子の安定性を向上させることができる。
【0029】
微粒子は、例えば同じ結晶構造を示す2種類以上の材料を含む。この場合、合金の微粒子全体で結晶構造が同じ傾向を示す。これにより、生成した微粒子の安定性向上を図ることが可能となる。
【0030】
(製造装置100)
次に、本実施形態における微粒子の製造方法に用いられる製造装置100の一例について説明する。
図1は、本実施形態における製造装置100の一例を示す模式斜視図である。
【0031】
製造装置100は、例えば
図1に示すように、レーザー装置1と、レンズ2と、容器3と、溶液4とを備える。製造装置100は、例えば1つのレーザー装置1に対し、複数の容器3及び溶液4を備えてもよい。
【0032】
<レーザー装置1>
レーザー装置1は、例えば10-15秒程度の時間幅を有するパルスレーザーを出射する。レーザー装置1として、例えば下記のような特性を示し、例えばCOHERENT社製のAstrella等のフェムト秒パルスレーザーを用いることができる。
発振波長:800nm±20nm
パルス幅:100fs
エネルギー:5-9mJ
繰り返し周波数:100Hz(出力0.5-0.9W)
【0033】
上記のほか、レーザー装置1として、例えばSpectra Physics社製のSpitfire Pro等が用いられ、用途に応じて任意に選択することができる。なお、レーザー装置1から出射されるレーザーは、数mJ程度のエネルギーであり、例えばレーザー加工等に用いられるような数μJ程度のエネルギーでは、微粒子の効率的な生成が難しい。
【0034】
<レンズ2>
レンズ2は、レーザー装置1から出射されたレーザーを集光する。レンズ2を用いることで、特定の領域に対して光強度を高めることができる。特に、レンズ2を用いることで、溶液4の界面よりも溶液4の内部にレーザーを集光することができる。レンズ2として、集光レンズ等の公知のレンズが用いられる。レンズ2を介して集光したレーザーを溶液4に照射することで、微粒子の生成効率を向上させることができる。
【0035】
レンズ2は、例えばレンズ2の形状や溶液4との距離等を調整することで、溶液4の内部にレーザーを集光する位置を調整してもよい。レンズ2は、例えば焦点可変レンズを用いて、レンズ2の位置を固定した状態で、溶液4の内部にレーザーを集光する位置を調整してもよい。
【0036】
<容器3>
容器3は、溶液4を収める。容器3として、透明な材料が用いられ、例えば石英キュベットが用いられる。容器3として、例えば400nm付近における波長の吸収率に比べて、800nm付近における波長の吸収率が低い材料が用いられる。この場合、容器3を介してレーザーを照射する際、微粒子の生成効率の低下を抑制することができる。
【0037】
<溶液4>
溶液4は、粉体材料5と、溶媒6と、を含む。溶媒6は、粉体材料5を懸濁する。本実施形態における微粒子は、レーザー装置1から出射されたレーザーが、溶媒6に懸濁された粉体材料5に対して照射されることで生成される。
【0038】
<粉体材料5>
粉体材料5は、例えば微粒子よりも大きい中央径を有する。粉体材料5は、例えば500μm以下の有限値の粒子径を有する複数の粒子を含む。粉体材料5は、例えば50nm以上100μm以下の中央径を有する粒子を含む。
【0039】
粉体材料5は、生成する微粒子の組成に直接反映されるため、生成する微粒子の種類に応じて、任意に設定することができる。例えは粉体材料5として金が用いられる場合、生成される微粒子は、金を含む。この場合、例えば塩化金(III)酸水和物を還元させる微粒子の製造方法と比べて、微粒子に付着する恐れのある不純物の発生を抑制できる。これにより、生成した微粒子の品質低下を抑制することが可能となる。
【0040】
粉体材料5は、例えば1種以上の材料を含む。例えば粉体材料5が2種以上の材料を含む場合、各材料を含んだ合金の微粒子を生成することができる。粉体材料5は、例えばニッケル、白金、金、チタン等の公知の金属原子を含有する。粉体材料5は、金属原子を含有していれば、例えば純金属、非金属を含有しない合金、金属酸化物の何れかを含んでもよい。
【0041】
粉体材料5は、例えば第1粉体材料と、第2粉体材料と、を含む。第1粉体材料は、第1金属原子を含有する。第2粉体材料は、第1金属原子とは異なる第2金属原子を含有する。第1粉体材料は、例えば第2粉体材料とは異なる組成を有する。この場合、第1粉体材料と第2粉体材料との比率を調節することができ、微粒子に含有される各金属原子の組成比を制御しやすくなる。これにより、微粒子に含有される各金属原子における組成比のバラつきを抑制することが可能となる。例えば、ニッケルと白金のモル比を8:2とした粉体材料5を用いる場合、組成がニッケル:白金=8:2に近い微粒子が生成されやすい。
【0042】
第2粉体材料は、例えば第1粉体材料の融点よりも高い融点を有する。即ち、第1粉体材料の特性と、第1粉体材料よりも高い融点と、を有する微粒子が生成される。この場合、第2粉体材料を用いずに微粒子を製造した場合と比べて、微粒子として安定する温度領域を拡大することができる。これにより、生成した微粒子の安定性向上を図ることが可能となる。
【0043】
粉体材料5は、例えば同じ結晶構造を示す2種類以上の材料を含んでもよい。この場合、生成された合金の微粒子全体で、結晶構造が同じ傾向を示す。これにより、微粒子の安定性向上を図ることが可能となる。
【0044】
例えば鉄、ナトリウム、及びカリウムの結晶構造は、体心立方格子を示す。このため、粉体材料5として、鉄、ナトリウム、及びカリウムの少なくとも2種以上を含む材料を含むことで、生成された合金の微粒子全体で、結晶構造が同じ傾向を示す。また、例えばニッケル、アルミニウム、及びカルシウムの結晶構造は、面心立方格子を示す。このため、粉体材料5として、ニッケル、アルミニウム、及びカルシウムの少なくとも2種類以上を含む材料を含むことで、生成された合金の微粒子全体で、結晶構造が同じ傾向を示す。
【0045】
(実施形態:微粒子の製造方法)
次に、本実施形態における微粒子の製造方法の一例について説明する。
【0046】
微粒子の製造方法は、例えば照射工程を備える。微粒子の製造方法は、調整工程又は攪拌工程の少なくとも何れかを備えてもよい。
【0047】
<照射工程>
照射工程は、フェムト秒パルスレーザーを集光し、溶媒6に懸濁された粉体材料5に対して照射する。照射工程は、例えばレーザー装置1からフェムト秒パルスレーザーを出射して溶媒6に懸濁された粉体材料5に照射する。このとき、フェムト秒パルスレーザーのパルス幅が、粉体材料5の内部にレーザーの熱が伝達する時間よりも短いため、照射対象以外に熱拡散しない。この場合、レーザーのエネルギーが微粒子の生成以外の反応に消費されにくい。これにより、微粒子の生成効率を向上することが可能となる。
【0048】
照射工程は、フェムト秒パルスレーザーを集光し、粉体材料5に対して照射する過程で、例えば溶媒6に対しても照射する場合がある。このとき、溶媒6中にラジカルが生成されるが、本実施形態における微粒子の製造方法は、ラジカルと粉体材料5とを化学反応させる過程を要しない。この場合、微粒子の生成量が、ラジカルと粉体材料5との反応速度やラジカルの生成量の影響を受けにくい。
【0049】
照射工程は、例えば微粒子よりも大きい中央径を有する粉体材料5に、フェムト秒パルスレーザーを照射する。このため、金属イオンの還元を利用した微粒子の製造方法と比べて、金属イオンの還元反応に起因して生成され、微粒子に影響を及ぼす恐れのある不純物の発生を抑制できる。これにより、品質が低下しにくい微粒子を生成することが可能となる。
【0050】
照射工程は、例えば第1金属原子を含有する第1粉体材料と、第1金属原子を含有する第2粉体材料と、を含む粉体材料5に、フェムト秒パルスレーザーを照射してもよい。このとき、第1金属原子及び第2金属原子を含有する合金の微粒子が生成される。この場合、第1粉体材料と第2粉体材料との比率を調節することができ、微粒子に含有される各金属原子の組成比を制御しやすくなる。これにより、含有される各金属原子における組成比のバラつきが抑制された微粒子を生成することが可能となる。
【0051】
照射工程は、例えば第1粉体材料と、第1粉体材料よりも融点が高い第2粉体材料と、を含む粉体材料5に、フェムト秒パルスレーザーを照射してもよい。即ち、第1粉体材料の特性と、第1粉体材料よりも高い融点と、を有する微粒子が生成される。この場合、第2粉体材料を用いずに微粒子を製造した場合と比べて、微粒子として安定する温度領域を拡大することができる。これにより、安定性の高い微粒子を製造することが可能となる。
【0052】
照射工程は、例えば第1金属原子及び第2金属原子を含有する粉体材料5にフェムト秒パルスレーザーを照射して、第1金属原子と、第2金属原子とを組み合わせた固溶体の微粒子を生成してもよい。この場合、固溶体でない微粒子と比べて、微粒子の部分的な状態変化や化学変化が起きにくい。これにより、安定性の高い微粒子を製造することが可能となる。
【0053】
照射工程は、例えば第1金属原子及び第2金属原子を含有する粉体材料5にフェムト秒パルスレーザーを照射して、第1金属原子と、第2金属原子とを組み合わせた共晶体の微粒子を生成してもよい。この場合、共晶体でない微粒子と比べて、安定性の高い微粒子を製造することが可能となる。
【0054】
<調整工程>
本実施形態において、粉体材料5は、金属原子を含有する。このとき、粉体材料5に照射されるレーザーの波長によっては、レーザーが焦点に届く前に粉体材料5に含まれる金属原子の表面で吸収され、粉体材料5に照射されたレーザーが微粒子の生成に効率よく消費されない場合が想定される。即ち、照射するレーザーの波長を調整することにより、微粒子の生成効率の向上を図ることができる。
【0055】
調整工程は、例えばレーザー装置1から出射するレーザーの発振波長を、粉体材料5に含有される金属原子が吸収する波長域を避ける波長に調整する。この場合、レーザーのエネルギーが粉体材料5に含まれる金属原子に吸収されにくくなり、微粒子の生成に効率よく消費されやすくなる。これにより、微粒子の生成効率を向上させることが可能となる。
【0056】
調整工程は、例えばレーザー装置1が有する波長変換機能を用いて、レーザー装置1から出射するレーザーの発振波長の調整をしてもよい。調整工程は、照射工程中に実施してもよく、照射工程の前後のうち少なくとも何れかで実施してもよく、複数回に分けて実施してもよい。
【0057】
<攪拌工程>
本実施形態において、粉体材料5は、レーザーが照射される。このとき、粉体材料5にレーザーの焦点を合わせる必要があるが、粉体材料5は経時に伴い溶媒6中に沈降し、レーザーが照射されにくくなる場合が想定される。即ち、粉体材料5がレーザーの焦点を通過するように溶媒6を攪拌することで、微粒子の生成効率の向上を図ることができる。
【0058】
攪拌工程は、粉体材料5が懸濁された溶媒6を攪拌する。攪拌工程は、照射工程を実施しながら溶媒6を攪拌してもよい。この場合、レーザーを粉体材料5に対して均一に照射しやすくなる。これにより、微粒子の生成効率を向上させることが可能となる。攪拌工程は、例えばスターラー等の公知の攪拌機を用いて溶媒6を攪拌してもよい。攪拌工程は、照射工程の前後のうち少なくとも何れかで実施してもよい。
【0059】
攪拌工程は、例えば溶媒6中の粉体材料5が分散された状態を保ちやすくする。即ち、経時に伴い溶媒6中の粉体材料5が沈降することを防ぐ。このため、レーザーが粉体材料5に照射されやすくすることができる。これにより、微粒子の生成効率の向上を図ることができる。
【0060】
攪拌工程は、例えば溶媒6中の第1金属原子を含有する第1粉体材料及び第2金属原子を含有する第2粉体材料が均一に分散された状態を保ちやすくする。このため、第1金属原子及び第2金属原子を含有する固溶体の微粒子について、微粒子に含有される各金属の組成比が均一になりやすい。これにより、より均一性の高い微粒子を製造することが可能となる。
【0061】
これにより、本実施形態における微粒子、及びコロイド溶液が生成される。
【0062】
本実施形態によれば、溶媒6中の粉体材料5に対してフェムト秒パルスレーザーを照射して、金属原子を含有する微粒子を生成する照射工程を備え、粉体材料5は微粒子よりも大きい中央径を有する。このため、金属イオンの還元を含む微粒子の製造方法と比べて、微粒子に影響を及ぼす恐れのある不純物の発生を抑制できる。これにより、生成した微粒子の品質低下を抑制することが可能となる。
【0063】
また、本実施形態によれば、粉体材料5は、例えば第1金属原子を含有する第1粉体材料と、第1金属原子とは異なる第2金属原子を含有する第2粉体材料と、を含み、微粒子は第1金属原子及び第2金属原子を含有する合金である。このため、第1粉体材料と第2粉体材料との比率を調節することができ、微粒子に含有される各金属原子における組成比を制御しやすくなる。これにより、微粒子に含有される各金属原子における組成比のバラつきを抑制することが可能となる。
【0064】
また、本実施形態によれば、第2粉体材料の融点は、第1粉体材料の融点よりも高い。即ち、第1粉体材料の特性と、第1粉体材料よりも高い融点と、を有する微粒子が生成される。このため、第2粉体材料を用いずに微粒子を製造した場合と比べて、微粒子として安定する温度領域を拡大することができる。これにより、生成した微粒子の安定性向上を図ることが可能となる。
【0065】
また、本実施形態によれば、微粒子は、第1金属原子と、第2金属原子とを組み合わせた固溶体である。このため、固溶体でない微粒子と比べて、微粒子の部分的な状態変化や化学変化が起きにくい。これにより、生成した微粒子のさらなる安定性向上を図ることが可能となる。
【0066】
また、本実施形態によれば、コロイド溶液は、微粒子が分散された溶媒6を備える。このため、溶媒6を用いずに微粒子を保管した場合と比べて、微粒子の凝集を抑制しやすい。これにより、品質の保たれた微粒子を提供することが可能となる。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1 :レーザー装置
2 :レンズ
3 :容器
3a :開口部
4 :溶液
5 :粉体材料
6 :溶媒
100 :製造装置
【要約】
【課題】微粒子の純度向上を図ることができる微粒子の製造方法、及びコロイド溶液を提供する。
【解決手段】フェムト秒パルスレーザーを用いて微粒子を生成する方法であって、溶媒6中の粉体材料5に対してフェムト秒パルスレーザーを照射して、金属原子を含有する微粒子を生成する照射工程を備え、粉体材料5は、微粒子よりも大きい中央径を有し、金属原子を含有することを特徴とする。例えば、粉体材料5は、第1金属原子を含有する第1粉体材料と、第1金属原子とは異なる第2金属原子を含有する第2粉体材料と、を含み、微粒子は、第1金属原子及び第2金属原子を含有する合金である。
【選択図】
図1