IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京瓦斯株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-継電器システムおよび継電器 図1
  • 特許-継電器システムおよび継電器 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】継電器システムおよび継電器
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/16 20060101AFI20221201BHJP
   H02H 3/00 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
H02H3/16 B
H02H3/00 M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018013419
(22)【出願日】2018-01-30
(65)【公開番号】P2019134538
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-09-18
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 祐一
(72)【発明者】
【氏名】三宅 治良
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 崇之
(72)【発明者】
【氏名】山下 聡史
(72)【発明者】
【氏名】伴野 卓也
【合議体】
【審判長】角田 慎治
【審判官】赤穂 美香
【審判官】土居 仁士
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-320332(JP,A)
【文献】実開平2-75869(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H1/00-3/253
3/32-3/52
99/00
H02J3/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単相3線式の中性線の電流を検出する電流検出器と、
第1接点が前記単相3線式の第1電圧線および第2電圧線のいずれか一方の電圧線に接続され、第2接点が接地されたリレー部と、
前記電流検出器によって検出された前記中性線の電流が過電流である場合、前記リレー部の前記第1接点と前記第2接点とを接続させる演算回路と、
前記一方の電圧線から大地に流れる電流に基づいて、前記単相3線式の電力系統からの電力の供給を遮断する漏電ブレーカと、
を備える継電器システム。
【請求項2】
前記演算回路は、前記電流検出器によって検出された電流の電流値を所定の基準値と比較し、前記電流値が前記所定の基準値よりも大きい場合、前記リレー部に前記第1接点と前記第2接点とを接続させる信号を出力するコンパレータを有する請求項1に記載の継電器システム。
【請求項3】
前記演算回路は、前記所定の基準値を、契約アンペア数、主幹ブレーカの定格電流値、前記第1電圧線の許容電流値、前記第2電圧線の許容電流値および前記中性線の許容電流値のいずれかに従った値に設定する基準値設定部を有する請求項2に記載の継電器システム。
【請求項4】
前記第2接点と大地との間、または、前記一方の電圧線と前記第1接点との間の少なくともいずれかに直列に挿入される抵抗器を有する請求項1から3のいずれか1項に記載の継電器システム。
【請求項5】
第1接点が単相3線式の第1電圧線および第2電圧線のいずれか一方の電圧線に接続され、第2接点が接地されたリレー部と、
前記単相3線式の中性線の電流が過電流である場合、前記リレー部の前記第1接点と前記第2接点とを接続させる演算回路と、
を備える継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単相3線式の電力系統に設けられる漏電ブレーカを作動させる継電器システムおよび継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
単相3線式100V/200Vの配電方式では、中性線と第1電圧線との間および中性線と第2電圧線との間の電圧が100Vとなり、第1電圧線と第2電圧線との間の電圧が200Vとなる。以下、単相3線式100V/200Vを、単に、単相3線式という。単相3線式で電力が供給される需要家において、太陽光発電装置などの発電設備が設置されていない場合、その需要家の分電盤には、3P2E型と呼ばれる漏電ブレーカが設けられている。
【0003】
3P2E型の漏電ブレーカは、単相3線式の第1電圧線および第2電圧線のそれぞれに接続される電極には、過電流に反応して回路を遮断する素子が設けられているものの、中性線に接続される電極には、過電流に反応して回路を遮断する素子が設けられていない。3P2E型の漏電ブレーカがこのような構成となっている理由は、以下による。発電設備が設置されていない場合、中性線には、第1電圧線および第2電圧線の電流値を超える過電流が流れない。このため、過電流に反応して回路を遮断する素子が、中性線に接続される電極に設けられていなくても、漏電ブレーカによって、単相3線式の電力系統を保護することができる。
【0004】
なお、単相3線式の電力系統の保護に関する技術として、例えば、特許文献1に開示の技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-200943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
単相3線式で電力が供給される需要家において、発電設備が設置された場合、発電設備の発電状況や需要家における負荷状況や配電方式によっては、第1電圧線および第2電圧線の電流値を超える過電流が中性線に流れるおそれがある。例えば、200Vの電圧を出力する発電設備が第1電圧線および第2電圧線に接続された場合において、第1電圧線と中性線との間の負荷の消費電力と、第2電圧線と中性線との間の負荷の消費電力とに大きな偏りが生じることがある。負荷の消費電力が偏ることで、いずれか一方の負荷に、漏電ブレーカの定格電流値以上の電流が流れると、中性線に過電流が流れる。また、例えば、100Vの電圧を出力する発電設備が第1電圧線と中性線との間に接続された場合において、第1電圧線と中性線との間の負荷の消費電力に比べ、第2電圧線と中性線との間の負荷の消費電力が偏った大きな値になることがある。負荷の消費電力が偏ることで、発電設備が接続されていない第2電圧線と中性線との間の負荷に、漏電ブレーカの定格電流値以上の電流が流れると、中性線に過電流が流れる。
【0007】
そこで、発電設備が設置される需要家の分電盤には、3P3E型と呼ばれる漏電ブレーカが設けられる。3P3E型の漏電ブレーカは、第1電圧線および第2電圧線のそれぞれに接続される電極に加え、中性線に接続される電極にも、過電流に反応する素子が設けられている。中性線に過電流が流れた場合、3P3E型の漏電ブレーカが作動するため、発電設備が接続された単相3線式の電力系統が保護される。
【0008】
しかし、発電設備が設置されていない需要家において、新たに発電設備を設置する場合、単相3線式の電力系統を保護するために、漏電ブレーカを既存の3P2E型の漏電ブレーカから3P3E型の漏電ブレーカに取り換える必要がある。漏電ブレーカを取り換えるために3P3E型の漏電ブレーカを新たに購入する必要があり、漏電ブレーカのコストがかかる。また、漏電ブレーカの取り換え工事は、繁雑な作業を要する上に施工コストがかかる。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑み、単相3線式の電力系統を適切に保護することができる継電器システムおよび継電器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の継電器システムは、単相3線式の中性線の電流を検出する電流検出器と、第1接点が単相3線式の第1電圧線および第2電圧線のいずれか一方の電圧線に接続され、第2接点が接地されたリレー部と、電流検出器によって検出された中性線の電流が過電流である場合、リレー部の第1接点と第2接点とを接続させる演算回路と、一方の電圧線から大地に流れる電流に基づいて、単相3線式の電力系統からの電力の供給を遮断する漏電ブレーカと、を備える。
【0011】
演算回路は、電流検出器によって検出された電流の電流値を所定の基準値と比較し、電流値が所定の基準値よりも大きい場合、リレー部に第1接点と第2接点とを接続させる信号を出力するコンパレータを有してもよい。
【0012】
演算回路は、所定の基準値を、契約アンペア数、主幹ブレーカの定格電流値、第1電圧線の許容電流値、第2電圧線の許容電流値および中性線の許容電流値のいずれかに従った値に設定する基準値設定部を有してもよい。
【0013】
第2接点と大地との間、または、一方の電圧線と第1接点との間の少なくともいずれかに直列に挿入される抵抗器を有してもよい。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の継電器は、第1接点が単相3線式の第1電圧線および第2電圧線のいずれか一方の電圧線に接続され、第2接点が接地されたリレー部と、単相3線式の中性線の電流が過電流である場合、リレー部の第1接点と第2接点とを接続させる演算回路と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、単相3線式の電力系統を適切に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】継電器システムの構成を示す概略図である。
図2】演算回路の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
図1は、継電器システム1の構成を示す概略図である。継電器システム1は、単相3線式(単相3線式100V/200V)の電力系統に発電設備2が接続される状況において適用される。
【0019】
トランス10の1次巻き線11は、商用電源(図示略)に接続されている。トランス10の2次巻き線12の一端は、単相3線式の第1電圧線L1に接続されている。2次巻き線12の他端は、第2電圧線L2に接続されている。2次巻き線12の中間(中点タップ)は、接地された中性線N1に接続されている。
【0020】
第1電圧線L1には、R相の電流が流れる。第2電圧線L2には、T相の電流が流れる。中性線N1には、N相の電流が流れる。中性線N1と第1電圧線L1との間、および、中性線N1と第2電圧線L2との間の電圧は100Vとなる。第1電圧線L1と第2電圧線L2との間の電圧は200Vとなる。
【0021】
需要家の分電盤20は、サービスブレーカ21、漏電ブレーカ22、分岐ブレーカ23、継電器24、アース端子台25、電源回路26および電流検出器27を含んで構成される。図1の例では、分岐ブレーカ23として、分岐ブレーカ23a、23b、23cが設けられている。継電器24は、リレー部31、抵抗器32および演算回路33を含んで構成される。
【0022】
トランス10の2次側の第1電圧線L1、第2電圧線L2および中性線N1は、電力量計15を介して、分電盤20のサービスブレーカ21に接続される。サービスブレーカ21の2次側は、漏電ブレーカ22の1次側に接続される。サービスブレーカ21は、サービスブレーカ21の2次側への電力の供給および遮断を切り替える。サービスブレーカ21は、契約アンペア数を超過する電流が流れたときに遮断される。契約アンペア数は、電力供給者と需要家との間で予め契約された電流の上限値であり、第1電圧線L1および第2電圧線L2に流せる電流の上限値のことである。
【0023】
漏電ブレーカ22の2次側には、負荷40が接続される分岐ブレーカ23aおよび発電設備2が接続される。発電設備2は、例えば、太陽光発電装置やコージェネレーションシステムなどである。発電設備2は、200Vの電圧を出力するものであってもよいし、100Vの電圧を出力するものであってもよい。例えば、発電設備2が200V用である場合、発電設備2は、第1電圧線L1および第2電圧線L2に接続される。また、例えば、発電設備2が100V用である場合、発電設備2は、第1電圧線L1または第2電圧線L2のいずれかと、中性線N1とに接続される。継電器システム1は、発電設備2が200V用または100V用のいずれである場合にも適用可能である。
【0024】
分岐ブレーカ23aの1次側は、漏電ブレーカ22の2次側の第1電圧線L1(R相)と第2電圧線L2(T相)との間に接続される。負荷40は、例えば、分岐ブレーカ23aの2次側に接続される。分岐ブレーカ23aは、分岐ブレーカ23aの2次側への電力の供給および遮断を切り替える。
【0025】
負荷40は、例えば、200Vの電圧で動作するエアコンディショナなどである。負荷40は、商用電源から供給される電力および発電設備2から供給される電力によって動作する。なお、負荷40は、エアコンディショナに限らない。また、負荷40は、使用電圧が100Vの場合、第1電圧線L1と中性線N1との間に接続された分岐ブレーカ23bや、第2電圧線L2と中性線N1との間に接続された分岐ブレーカ23cに接続される。
【0026】
漏電ブレーカ22は、漏電ブレーカ22の2次側への電力の供給および遮断を切り替える。漏電ブレーカ22は、3P2E型のものである。3P2E型の漏電ブレーカ22は、第1電圧線L1に接続される電極、第2電圧線L2に接続される電極および中性線N1に接続される電極を含んで構成される。第1電圧線L1および第2電圧線L2に接続される電極には、過電流に反応して回路を遮断する素子が設けられている。一方、中性線N1に接続される電極には、過電流に反応して回路を遮断する素子が設けられていない。
【0027】
漏電ブレーカ22は、第1電圧線L1の電流値、第2電圧線L2の電流値および中性線N1の電流値の合計値が、所定の閾値よりも大きくなったとき、第1電圧線L1、第2電圧線L2および中性線N1のそれぞれの遮断を行う。所定の閾値は、例えば、約30mAである。
【0028】
ここで、単相3線式では、第1電圧線L1の電流の位相と第2電圧線L2の電流の位相とが反転している。第1電圧線L1の電流値、第2電圧線L2の電流値および中性線N1の電流値の合計値は、通常、ゼロもしくはゼロに近い値になっている。単相3線式の電力系統に漏電が発生すると、第1電圧線L1、第2電圧線L2および中性線N1の電流値の合計値が、所定の閾値よりも大きくなる。すなわち、漏電ブレーカ22は、漏電の発生に基づいて、第1電圧線L1、第2電圧線L2および中性線N1のそれぞれの遮断を行う。
【0029】
漏電ブレーカ22の2次側の第1電圧線L1(R相)と中性線N1(N相)には、分岐ブレーカ23bが接続されている。分岐ブレーカ23bの2次側のR相電極は、継電器24のリレー部31のメーク接点31a(第1接点)に接続されている。分岐ブレーカ23bは、分岐ブレーカ23bの2次側への電力の供給および遮断を切り替える。リレー部31のコモン接点31c(第2接点)は、抵抗器32を介してアース端子台25に接続されている。抵抗器32は、コモン接点31cとアース端子台25との間に直列に挿入されている。アース端子台25は、大地に接続されている。
【0030】
リレー部31は、演算回路33から入力される信号に応じて、メーク接点31aとコモン接点31cとの間の開閉を切り替える。リレー部31は、例えば、メーク接点31aとコモン接点31cとの間を開閉させるコイルを含んで構成される。リレー部31のコイルには、演算回路33から信号が与えられる。演算回路33からの信号に基づいてコイルに電流が流れると、メーク接点31aとコモン接点31cとが接続される。なお、リレー部31は、メーク接点31aとコモン接点31cとの間の開閉が可能であればよく、コイルを含む構成に限らない。
【0031】
漏電ブレーカ22の2次側の第2電圧線L2(T相)と中性線N1(N相)には、分岐ブレーカ23cが接続されている。分岐ブレーカ23cの2次側には、電源回路26が接続されている。分岐ブレーカ23cは、分岐ブレーカ23cの2次側への電力の供給および遮断を切り替える。電源回路26は、交流電力を直流電力に変換し、変換した直流電力を演算回路33に供給する。
【0032】
サービスブレーカ21と漏電ブレーカ22との間の中性線N1には、電流検出器27が設けられている。電流検出器27は、例えば、計器用変流器(CT)である。電流検出器27は、中性線N1の電流を検出し、検出した電流を演算回路33に出力する。
【0033】
演算回路33は、電源回路26から供給される直流電力によって動作する。演算回路33は、電流検出器27によって検出された電流の電流値に基づいて、リレー部31のメーク接点31aとコモン接点31cとの間の接続を切り替える。
【0034】
図2は、演算回路33の構成を示す概略図である。演算回路33は、整流回路51、平滑回路52、コンパレータ53および基準値設定部54を含んで構成される。
【0035】
整流回路51は、電流検出器27から与えられた電流を交流から直流に変換する。整流回路51は、例えば、ダイオードをブリッジ形に接続して為る全波整流回路である。平滑回路52は、例えば、キャパシタを含んで構成され、整流回路51の出力を平滑にする。
【0036】
コンパレータ53には、電流検出器27によって検出された電流の電流値が、整流回路51および平滑回路52を介して、比較対象の電流値として与えられる。コンパレータ53は、比較対象の電流値と、基準値設定部54において設定された基準値とを比較する。
【0037】
コンパレータ53における基準値は、基準値設定部54にて設定可能である。基準値は、例えば、契約アンペア数、主幹ブレーカ(例えば、漏電ブレーカ22)の定格電流値、第1電圧線L1の許容電流値、第2電圧線L2の許容電流値および中性線N1の許容電流値のいずれかに従った値に設定される。なお、基準値は、ここで例示した契約アンペア数、主幹ブレーカの定格電流値、第1電圧線L1の許容電流値、第2電圧線L2の許容電流値および中性線N1の許容電流値のいずれかに従った値に限らない。設定された基準値は、再設定が行われるまで維持される。すなわち、コンパレータ53では、設定された基準値を超える過電流が、比較対象である中性線N1に流れるか否かが判断されることとなる。
【0038】
より詳細には、基準値設定部54では、契約アンペア数などに応じた所定の基準値が設定される。例えば、基準値設定部54は、基準値を生成するための複数の抵抗器と、複数の抵抗器の組み合わせを決定する入力スイッチとを含んで構成される。複数の抵抗器は、例えば、各々が並列接続されている。作業者は、契約アンペア数などに対応する入力スイッチを操作する。基準値は、操作された入力スイッチに対応する抵抗器の合計の抵抗値に依存した値に決定される。基準値設定部54では、契約アンペア数などが大きくなるほど、基準値も大きく設定される。
【0039】
コンパレータ53は、比較対象の電流値が基準値以下の場合、中性線N1に過電流が流れていないことを示す信号を出力して、リレー部31にメーク接点31aの開状態を維持させる。例えば、コンパレータ53は、電圧がローレベルの信号をリレー部31のコイルに出力する。ローレベルの信号が入力されたコイルには、電流が流れないこととなる。コイルに電流が流れないため、メーク接点31aとコモン接点31cとの間が接続されず、メーク接点31aが開状態に維持されることとなる。メーク接点31aが開状態に維持されると、第1電圧線L1が接地されない状態に維持される。なお、コンパレータ53は、リレー部31に信号を出力しないことで、メーク接点31aの開状態を維持させるとしてもよい。
【0040】
一方、コンパレータ53は、比較対象の電流値が基準値よりも大きい場合、中性線N1に過電流が流れたことを示す信号を出力して、リレー部31のメーク接点31aとコモン接点31cとを接続させる。例えば、コンパレータ53は、電圧がハイレベルの信号をリレー部31のコイルに出力する。ハイレベルの信号が入力されたコイルには、電流が流れることとなる。コイルに電流が流れるため、メーク接点31aとコモン接点31cとの間が接続されることとなる。なお、コンパレータ53は、リレー部31に信号を出力することで、メーク接点31aとコモン接点31cとの間を接続させるとしてもよい。
【0041】
図1に戻って、リレー部31のメーク接点31aとコモン接点31cとが接続されると、漏電ブレーカ22の2次側の第1電圧線L1が、分岐ブレーカ23b、リレー部31、抵抗器32およびアース端子台25を介して大地に接続される。これにより、第1電圧線L1(R相)の電流が大地に流れる。
【0042】
抵抗器32は、第1電圧線L1から大地に流れる電流の電流値を抑制するために設けられる。具体的には、抵抗器32は、抵抗器32を介して大地に流れる電流の電流値が、漏電ブレーカ22が作動可能な電流値(例えば、約50mA~約100mA)になるような抵抗値に設定されている。また、リレー部31は、メーク接点31aおよびコモン接点31cの接点容量が、抵抗器32を介して大地に流れる電流の電流値よりも大きくなるように選定されている。
【0043】
第1電圧線L1(R相)の電流が大地に流れると、第1電圧線L1の電流値、第2電圧線L2の電流値および中性線N1の電流値の合計値が、漏電ブレーカ22の所定の閾値よりも大きくなる。その結果、漏電ブレーカ22は、第1電圧線L1、第2電圧線L2および中性線N1のそれぞれを遮断する。
【0044】
以上のように、本実施形態による継電器システム1では、中性線N1の電流が検出され、第1電圧線L1および第2電圧線L2の電流値を超える過電流が中性線N1に流れるか否かが判断される。そして、継電器システム1では、過電流が中性線N1に流れた場合、第1電圧線L1を大地に接続させて、意図的に漏電を発生させ、漏電ブレーカ22を作動させる。これにより、本実施形態による継電器システム1は、漏電ブレーカ22が3P2E型のものであったとしても、単相3線式の電力系統を保護することができる。
【0045】
また、本実施形態による継電器システム1では、単相3線式の電力系統に発電設備2を新たに接続する際、漏電ブレーカ22を既設の3P2E型のものから3P3E型のものに取り換える工事を行う必要がなく、電流検出器27および継電器24を新設すればよい。継電器システム1では、3P3E型の漏電ブレーカを新たに購入する必要がなく、漏電ブレーカに要するコストをカットすることができる。また、電流検出器27および継電器24の新設工事は、漏電ブレーカ22の取り換え工事に比べ、コストを抑えることができる。このため、本実施形態による継電器システム1は、コストを抑えつつ、単相3線式の電力系統に発電設備2を新たに接続することができる。
【0046】
また、継電器システム1では、第1電圧線L1が大地に接続される経路の途中に、抵抗器32が設けられている。これにより、第1電圧線L1から大地に流れる電流の電流値が、漏電ブレーカ22が作動可能な電流値に抑制される。このため、継電器システム1は、漏電ブレーカ22を確実に作動させることができる。また、抵抗器32の抵抗値を適切な値に設計することで、リレー部31を適切に選定することができる。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0048】
上記実施形態の継電器システム1では、中性線N1の過電流に従って第1電圧線L1を大地に接続させていた。しかし、継電器システム1は、中性線N1の過電流に基づいて第2電圧線L2を大地に接続させてもよい。第2電圧線L2の電流が大地に流れる場合も、第1電圧線L1の電流値、第2電圧線L2の電流値および中性線N1の電流値の合計値が所定の閾値よりも大きくなることで、漏電ブレーカ22が作動可能だからである。
【0049】
上記実施形態の継電器システム1の電流検出器27は、サービスブレーカ21と漏電ブレーカ22との間の中性線N1に設けられていた。しかし、電流検出器27は、漏電ブレーカ22と漏電ブレーカ22の2次側直後の分岐ブレーカ23cとの間の中性線N1に設けられてもよいし、電力量計15とサービスブレーカ21との間の中性線N1に設けられてもよい。
【0050】
上記実施形態の継電器システム1の電源回路26は、第2電圧線L2と中性線N1との間に設けられた分岐ブレーカ23cに接続されていた。しかし、電源回路26は、第1電圧線L1と中性線N1との間に設けられた分岐ブレーカ23bに接続されてもよい。また、電源回路26は、電池であってもよい。また、電源回路26は、計器用変流器に接続され、計器用変流器から供給される電力を直流電力に変換して演算回路33に出力してもよい。
【0051】
上記実施形態の継電器システム1では、抵抗器32がコモン接点31cとアース端子台25との間に直列に挿入されていた。しかし、抵抗器32は、第1電圧線L1に接続される分岐ブレーカ23bとメーク接点31aとの間に直列に挿入されてもよい。また、中性線N1の過電流に基づいて第2電圧線L2を大地に接続させる場合、抵抗器32は、第2電圧線L2に接続される分岐ブレーカ23cとメーク接点31aとの間に直列に挿入されてもよい。
【0052】
上記実施形態の継電器システム1は、単相3線式の電力系統に発電設備2が接続される状況において適用された。しかし、継電器システム1は、発電設備2が接続されていない単相3線式の電力系統に適用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、単相3線式の電力系統に設けられる漏電ブレーカを作動させる継電器システムおよび継電器に利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 継電器システム
22 漏電ブレーカ
27 電流検出器
31 リレー部
31a メーク接点(第1接点)
31c コモン接点(第2接点)
32 抵抗器
33 演算回路
53 コンパレータ
54 基準値設定部
L1 第1電圧線
L2 第2電圧線
N1 中性線
図1
図2