(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
F16L 21/04 20060101AFI20221201BHJP
F16L 21/02 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
F16L21/04
F16L21/02 D
(21)【出願番号】P 2018052569
(22)【出願日】2018-03-20
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【氏名又は名称】田川 孝由
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】森本 皓一
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 義徳
(72)【発明者】
【氏名】小仲 正純
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-094157(JP,A)
【文献】特開2016-180443(JP,A)
【文献】特開2002-071064(JP,A)
【文献】特開2000-320738(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0280497(US,A1)
【文献】特開2001-159489(JP,A)
【文献】特開2008-169868(JP,A)
【文献】特開2011-220474(JP,A)
【文献】実公昭58-042703(JP,Y2)
【文献】実開昭60-123486(JP,U)
【文献】特開2006-200608(JP,A)
【文献】米国特許第04097074(US,A)
【文献】特開平11-257559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 21/00-21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に止水用ゴム輪(3)を装填した一の管の受口(2)に、他の管の挿し口(1)を前記ゴム輪(3)を圧縮して挿し込んだプッシュオン方式管継手において、
上記ゴム輪(3)は、ヒール部(3a)とバルブ部(3b)とからなって、前記ヒール部(3a)を受口(2)内面の取り付け溝(11、21)に嵌めて取り付け、前記バルブ部(3b)はそのヒール部(3a)から挿し込み方向に向かって徐々に肉厚となって内側に突出した形状をしており、前記受口(2)内面に、挿し口(1)による上記ゴム輪(3)のその挿し込み方向の変形を阻止する壁(12、22)を設け、その壁(12、22)には、前記ゴム輪(3)のバルブ部(3b)の先端部が接して
いるとともにその接する部分の奥部には空隙が形成されており、挿し口(1)を受口(2)に挿入した際、前記壁(12、22)に挿し込み当初からゴム輪(3)が接してその挿し口(1)の挿し込みに伴いバルブ部(3b)を圧縮
してゴム輪(3)と挿し口(1)外面及び受口(2)内面との間に十分な面圧を得た管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、挿し口挿入力の低減及び継手接合作業の簡略化を図ったプッシュオン方式の管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ダクタイル鉄管を用いて水道管路を布設する場合、継手部に止水用ゴム輪を設置し、そのゴム輪を圧縮することで、継手部を止水して管路通水機能を維持する。その止水方式として、プッシュオン方式とメカニカル方式の2種類がある。このうち、プッシュオン方式は、一方の鉄管の挿し口を他方の鉄管の受口に挿入することで接合でき、受口に設置したゴム輪が変形・圧縮される構成であり、ゴム輪を圧縮する押輪等の付属品を削減できる利点がある。
【0003】
そのプッシュオン方式の管継手には、例えば、
図9~
図11に示すT形(Tyton(タイトン))、
図12、
図13に示すPN形がある。
そのT形管継手は、
図9~
図11に示すように、一の管の挿し口1を他の管の受口2に挿し込んで接続するものであり、その際、受口2内に止水用ゴム輪3を装填し、挿し口1の挿し込みに伴い、ゴム輪3を圧縮して止水する(特許文献1)。
このT形管継手には、
図9に示す、呼び径:75~250のもの、
図10に示す同300~600のもの、
図11に示す同700~2000のもの等がある。それらにおいて、ゴム輪3の装填前の自然状態の断面を各図の(b)に示し、ゴム輪3は、ヒール部3aとバルブ部3bとからなって、ヒール部3aで受口2内面に嵌め込んで装着され、バルブ部3bはそのヒール部3aから挿し込み方向に向かって
徐々に肉厚となって内側に突出した形状をしており、挿し口1の挿し込みに伴いバブル部3bが圧縮されて止水作用を担う。図中、4はモルタル、エポキシ樹脂等からなるライニング層である。
【0004】
PN形管継手は、
図12、
図13に示すように、同様に、一の管の挿し口1を他の管の受口2に挿し込んで接続するものであり、その際、受口2内に止水用ゴム輪3を装填し、挿し口1の挿し込みに伴い、ゴム輪3を圧縮して止水する。また、受口2内面全周のロックリング溝5aにはロックリング5が装填され、そのロックリング5が挿し口1外周面の挿し口溝6に嵌っていることにより、その挿し口溝6の長さ(同図において左右方向(軸方向))分、ロックリング5が動き得て、挿し口1の挿し込み・抜け出しを防止する伸縮・離脱防止機能を有する。このPN形管継手は、
図12に示す呼び径:300~600のもの、
図13に示す同700~1500のものがある。図中、7はロックリング5の抱き込み用スプリングであり、受口2の周囲等間隔(例えば、8等分位)に複数設けられる。なお、呼び径:700、同800ではスプリング7は不要である。
このPN形管継手は、T形管継手に比べて、ゴム輪3のボリューム(断面積)を小さくし得ることから、挿し口1の挿入時の抵抗力(以下、「挿し口挿入力」)が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のT形管継手は、ゴム輪3のボリュームが大きいため、大きな挿し口挿入力を必要とする。このため、さや管内などの狭小空間内で配管する場合、継手接合作業が煩わしく、さらに困難となる場合がある。
PN形管継手は、上記のように、ゴム輪3のボリュームを小さくし得ることから、挿し口挿入力は小さいが、挿し口1の挿入作業のみでは止水性を十分に確保することができない場合が多い。このため、
図13に示すように、プッシュオン方式ではあるが、押しボルト付の押輪8等の接合付属品をゴム輪3に宛がい、その接合付属品8によってゴム輪3を圧縮して止水性を担保している。この圧縮作業は、管路内で行うため、煩雑であり、継手接合作業に多くの時間を費やしている。
【0007】
この発明は、以上の実状の下、継手接合作業が容易で、かつ十分な止水性を担保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため、この発明は、挿し口による上記ゴム輪のその挿し込み方向の変形を阻止する壁を受口内面に設けることとしたのである。
このようにすれば、通常、挿し口の受口への挿入につれてゴム輪が挿し口と受口に挟まれ圧縮されるとともにゴム輪が受口奥側に(挿し込み方向(管軸方向)に)伸びようとするが、壁によってそのゴム輪の挿し込み方向の変形が阻止されるため、ゴム輪はその壁方向からも圧縮される。
このとき、ゴム輪は上記管軸方向の圧縮に伴って管径方向の面圧(圧縮力)も高まるため、従来と同様な管径方向の面圧をボリューム(断面積)の小さいゴム輪で得ることができる。このボリュームを小さくできることにより挿し口挿入力が減少し、挿し込み方向の変形が阻止されることによる挿し口挿入力の増加に比べて前記減少度合いが大きいため、結果として挿し口挿入力は減少する。
【0009】
具体的には、内周面に止水用ゴム輪を装填した一の管の受口に、他の管の挿し口を前記ゴム輪を圧縮して挿し込んだ管継手であって、前記受口内面に、挿し口による前記ゴム輪のその挿し込み方向の変形を阻止する壁を設けた構成を採用したのである。
この構成において、上記壁は、挿し口を受口に挿入した際、ゴム輪が接するようにすれば、挿し口の挿入当初からゴム輪に接したり、又は挿入当初はゴム輪に接していなくても挿し込みに伴ってゴム輪に接したりして、ゴム輪の挿し込み方向の変形が阻止され、その挿し込み方向(管軸方向)の面圧も得られるとともに、管径方向の圧縮力も増すため、ゴム輪の受口内面及び挿し口外面への面圧が効果的に高くなる。
また、上記挿し口による上記ゴム輪のその挿し込み方向で接する上記壁の当接面は上記受口の軸方向に対して直角(垂直)とすれば、ゴム輪の挿し込み方向の変形を有効に阻止できるため、挿し込み方向の面圧も有効に得られるとともにゴム輪の受口内面及び挿し口外面への面圧がより高くなり、ゴム輪のボリュームを小さくできて、挿し口挿入力も有効に減少させることができる。
管継手としては、上記T形としたり、PN形としたりと、プッシュオン方式の種々の管継手を採用することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明は、以上のように構成し、ゴム輪の挿し口挿し込み方向においても圧縮作用を受けてゴム輪の受口内面及び挿し口外面への面圧が高くなるようにしたので、ゴム輪のボリュームを小さくすることができる。このため、挿し口挿入後の十分な面圧を担保しつつ挿し口挿入力を大きく低減することができて、作業性が向上する。
また、PN形管継手は、ゴム輪と挿し口外周面及び受口内周面との十分な面圧が確保できるため、押輪8等の接合付属品が不要となり、コストダウンとともに、継手接合時間の短縮を図ることができる。
以上から、この発明に係る管継手は、さや管内などの狭小空間内で持込接合して配管する場合に有効なものと言える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明に係る管継手の一実施形態の要部断面図であり、(a)は接合前、(b)は接合後
【
図2】同他の実施形態の要部断面図であり、(a)は接合前、(b)は接合後
【
図3】同さらに他の実施形態の要部断面図であり、(a)は接合前、(b)は接合後
【
図4】同さらに他の実施形態の要部断面図であり、(a)は接合前、(b)は接合後
【
図5】ゴム輪の面圧作用図を示し、(a)はこの発明に係る管継手の実施形態、(b)は従来例
【
図6】この発明に係る管継手の一実施形態のゴム輪と従来のゴム輪の比較図
【
図8】(a)、(b)はこの発明に係る管継手のさらに他の各実施形態の要部断面図
【
図9】T形管継手の一例を示し、(a)は要部断面図、(b)はゴム輪の外形図
【
図10】T形管継手の他例を示し、(a)は要部断面図、(b)はゴム輪の外形図
【
図11】T形管継手のさらに他例を示し、(a)は要部断面図、(b)はゴム輪の外形図
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明に係るT形管継手の各実施形態を
図1、
図2に、同PN形管継手の各実施形態を
図3、
図4に示す。
【0013】
図1、
図2に示すT形管継手10は、従来と同様に、呼び径700以上の一のダクタイル鋳鉄管の挿し口1を同他のダクタイル鋳鉄管の受口2に挿し込んで接続するものであり、その際、受口2内に止水用ゴム輪3を装填し、挿し口1の挿し込みに伴い、ゴム輪3を圧縮して止水する。ゴム輪3は、受口2内面全周に位置する円環状のものであって、そのヒール部3aを受口2内面の取り付け溝(円周溝)11に嵌めることによって受口2の内面に設置される(設けられる)。以上の構成は従来と同様であり、上記と同一符号は同一物を示す。
【0014】
この実施形態の管継手10は、挿し口1によるゴム輪3のその挿し込み方向の変形を阻止する壁12を受口2内面に設けている点が特徴である。
また、壁12のゴム輪3との当接面12aは、受口2の軸方向に対して直角(径方向)であったり、適宜な傾斜角度をもっていたりしても良い。このとき、ゴム輪3を設置(セッティング)した際、図示のように、壁12の当接面12aとゴム輪3とは当接している(ゴム輪3のバルブ部3bの先端部が壁12に接している)とともにその接する部分の奥部には空隙が形成されている。
【0015】
これらの壁12の位置、当接面12aの傾き、突出長さ(径方向)等は、ゴム輪3の圧縮による受口2内面と挿し口1外面との間に所要の面圧が得られ、かつ挿し口挿入力が従来に比べて低減し得るように、実験などによって適宜に設定する。この実施形態においては、壁12のゴム輪3との当接面12aは、受口2の軸方向に対して直角(垂直、径方向)となって、ゴム輪3を受口2内に設置した際、その壁12の当接面12aとゴム輪3とは当接する。
【0016】
壁12の形成手段としては、
図1に示すように、その壁12に相当するリング状突条を受口2の鋳造時に一体に設けたり、そのリング状突条(
図1(a)の鎖線で区画された円環状部分参照)を溶接等によって受口2内面に固定したりすることができる。
また、
図2に示すように、従来の受口奥端2aから延びる内面をさらに延ばして壁12を受口鋳造時に一体に形成することもできる。このとき、同様に、その延ばした壁12の部分(
図2(a)の鎖線で区画された円環状部分参照)を溶接等によって受口2内面に固定したりすることができる。
何れにしても、各図(a)から同(b)に示すように、挿し口1を受口2に挿し込むと、それに伴ってゴム輪3が圧縮されて継手部が構成される。
このとき、壁12によって、ゴム輪3の挿し込み方向の変形が阻止されるため、ゴム輪3の受口2内面と挿し口1外面との間に面圧が得られるとともに、ゴム輪3と壁当接面12aとの当接によっても面圧が得られるため、十分な止水効果を得ることができる。
【0017】
図3、
図4に示すPN形管継手20は、従来と同様に、呼び径700以上の一のダクタイル鋳鉄管の挿し口1を他の同ダクタイル鋳鉄管の受口2に挿し込んで接続するものであり、その際、受口2内に止水用ゴム輪3を装填し、挿し口1の挿し込みに伴い、ゴム輪3を圧縮して止水する。ゴム輪3は、受口2内面全周に位置する円環状のものであって、そのヒール部3aを受口2内面の取り付け溝(円周溝)21に嵌めることによって受口2の内面に設置される(設けられる)。この構成は従来と同様であり、上記と同一符号は同一物を示す。
【0018】
この実施形態の管継手20においても、同様に、挿し口1によるゴム輪3のその挿し込み方向の変形を阻止する壁22を受口2内面に設けている。
また、壁22のゴム輪3との当接面22aは、受口2の軸方向に対して直角(垂直、径方向)であったり、適宜な傾斜角度をもっていたりしても良い。このとき、ゴム輪3を設置(セッティング)した際、図示のように、当接していたり、少しの隙間を有したりすることができる。
【0019】
これらの壁22の位置、当接面22aの傾き、突出長さ(径方向)等は、同様に、ゴム輪3の圧縮による受口2内面と挿し口1外面との間に所要の面圧が得られ、かつ挿し口挿入力が従来に比べて低減し得るように、実験などによって適宜に設定する。この実施形態においては、壁22のゴム輪3との当接面22aは、受口2の軸方向に対して直角となって、ゴム輪3を設置した際、その壁22の当接面22aとゴム輪3とは当接する。
【0020】
壁22の形成手段としては、
図3に示すように、同様に、その壁22に相当するリング状突条を受口2の鋳造時に一体に設けたり、そのリング状突条(
図3(a)の鎖線で区画された円環状部分参照)を溶接等によって受口2内面に固定したりすることができる。
また、
図4に示すように、従来の受口奥端2aから延びる内面をさらに延ばして壁22を受口鋳造時に形成することもできる。このとき、同様に、その延ばした壁22の部分(
図4(a)の鎖線で区画された円環状部分参照)を溶接等によって受口2内面に固定したりすることができる。
何れにしても、各図(a)から同(b)に示すように、挿し口1を受口2に挿し込むと、それに伴ってゴム輪3が圧縮されて継手部が構成される。
このとき、壁22によって、ゴム輪3の挿し込み方向の変形が阻止されるため、ゴム輪3の受口2内面と挿し口1外面との間に面圧が得られるとともに、ゴム輪3と壁当接面22aとの当接によっても面圧が得られるため、十分な止水効果を得ることができる。
【0021】
図5には、この発明に係る上記
図1に示す壁12を有する実施形態の場合(同図(a))と、壁を有しない従来の場合(同図(b))とにおける、壁12を設けた以外、挿し口1、受口2及びゴム輪3が同一構成の呼び径:2000のT形管継手の挿し口1の受口2への挿入時の面圧発生分布を示す。その負の値がゴム輪3の面圧(圧縮力)を示す。
この
図5(a)と同(b)の対比から、この実施形態においては、ゴム輪3による受口2内面及び挿し口1外面との止水部に加えて壁当接面12aとにおいても止水部が形成されており、従来と同様の止水効果を得ることができている。
よって、
図6に示すように、ゴム輪3は、点線の従来の大きさ(ボリューム)に対し、小さい実線の大きさとしても十分な面圧(止水効果)を得ることができることが理解できる。
一方、呼び径:2000のT形管継手において、
図1の管継手10に
図6の実線のゴム輪3を、
図9の管継手に
図6の点線のゴム輪3をセットした場合の挿し口挿入力の最大値を
図7に示す。これから、この発明の管継手10における挿し口挿入力が低減していることが理解できる。
【0022】
以上のように、ゴム輪3のボリュームを小さくできること等により挿し口挿入力が減少し、挿し込み方向の変形が阻止されることによる挿し口挿入力の増加に比べて前記減少度合いが大きいため、結果として挿し口挿入力は減少する。
因みに、同じ大きさのゴム輪3であれば、挿し口挿入力の大小を無視すれば、この実施形態における管継手は、
図11で示す従来の管継手に対し、壁12を有することによって壁当接面12aとの間にも止水部が形成されるため、後者に比べれば、止水効果は高いものとなる。
【0023】
図8には、他の実施形態を示し、(a)は、ゴム輪3のバルブ部3bの外周面全周に亘る断面三角状の切欠部31を形成したものであり、(b)はゴム輪3のバルブ部3bに面する壁12、22側に全周に亘る断面四角状空間32を形成したものである。
何れの実施形態も、受口2に挿し口1を挿し込むと、切欠部31、空間32の存在によって、ゴム輪3のバルブ部3bの径方向の圧縮が円滑となって、挿し口挿入力の低減を図ることができる。その切欠部31、空間32の形状、大きさ(断面積)は、断面三角状、四角状に限らず、受口2内周面及び挿し口1外周面とゴム輪3の面圧が所要の値となる範囲内において、挿し口挿入力の低減が図れるように、実験などによって適宜に設定する。
なお、図1~図4の実施形態も、前記ゴム輪3のバルブ部3bの先端部が壁12に接しているとともにその接する部分の奥部には空隙が形成されているため、図8の実施形態と同様に、受口2に挿し口1を挿し込むと、その空隙の存在によって、ゴム輪3のバルブ部3bの径方向の圧縮が円滑となって、挿し口挿入力の低減を少なからず図っている。
【0024】
この壁12、22を設けた管継手は、挿し口挿入力が大きい、特に、
図1(a)、
図2(a)、
図11(b)に示すゴム輪3を使用する、呼び径700~2000等の大口径の管継手に有効である。
ゴム輪3のバルブ部3bの先端部形状(
図11において右端側)は、上記各例のように「曲面状」としなくても、当接面12a、22aに沿う四角状等の他の種々の形状を採用することができる。また、受口2の内面も筒軸方向に直線状形状としたが、ゴム輪3の外面形状に対応して適切な面圧が得られるように適宜な形状に変更することもできる。
【0025】
この発明は、上記のT形管継手やPN形管継手に限らず、他のプッシュオン方式の種々の管継手、例えば、NS形、GX形等にも採用し得ることは勿論である。また、ダクタイル鋳鉄管に特定されず、他の鋳鉄管のみならず、樹脂製管継手においても、この発明を採用することができる。
このように、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0026】
1 挿し口
2 受口
3 ゴム輪
3a ゴム輪のヒール部
3b 同バルブ部
5 ロックリング
5a ロックリング溝
6 挿し口溝
7 スプリング
10 T形管継手
11 取り付け溝
12 壁
12a 壁の当接面
20 PN形管継手
21 取り付け溝
22 壁
22a 壁の当接面
31 切欠部
32 空間