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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】アクチュエータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 33/16 20060101AFI20221201BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
H02K33/16 A
H02K15/02 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018078295
(22)【出願日】2018-04-16
(65)【公開番号】P2019187169
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 一彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 俊之
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/030265(WO,A1)
【文献】特開平04-235769(JP,A)
【文献】特開平04-069997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/16
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、前記支持体に対して移動可能な可動体と、前記支持体を構成する部材、および前記可動体を構成する部材のうちの一方側部材に第1接着剤層により接着された粘弾性部材と、前記可動体を前記支持体に対して相対移動させる磁気駆動回路と、を有するアクチュエータの製造方法において、
前記一方側部材に前記粘弾性部材を前記第1接着剤層によって接着する工程では、
第1冶具の一方面側に前記粘弾性部材を配置する第1工程と、
前記粘弾性部材と前記一方側部材とを接着剤を介して重ねる第2工程と、
前記接着剤を硬化させて前記一方側部材と前記粘弾性部材とを前記第1接着剤層により接着する第3工程と、
前記粘弾性部材から前記第1冶具を外す第4工程と、
を有し、
前記第1工程では、前記粘弾性部材を真空吸着する吸着部を備える搬送ヘッドが前記粘弾性部材を前記第1冶具の一方面に配置する際、側面同士が接するように配列された複数の前記粘弾性部材のうち、搬送しようとする前記粘弾性部材に隣り合う前記粘弾性部材には、前記搬送ヘッドの当接部を当接させ、しかる後に、前記搬送しようとする前記粘弾性部材を前記吸着部によって吸着することにより前記搬送ヘッドに保持することを特徴とするアクチュエータの製造方法。
【請求項2】
第2冶具の一方面に前記一方側部材を配置しておき、
前記第2工程では、前記粘弾性部材と前記一方側部材とが前記接着剤を介して重なるように前記第1冶具と前記第2冶具とを重ねることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項3】
前記第1冶具の一方面に複数の前記粘弾性部材を配置し、前記第2冶具の一方面に複数の前記一方側部材を配置しておき、
前記第2工程では、複数の前記粘弾性部材と複数の前記一方側部材とが各々、前記接着剤を介して重なるように前記第1冶具と前記第2冶具とを重ねることを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項4】
前記第2工程では、前記第2冶具の一方面を上向きにする一方、前記第1冶具の一方面
を下向きにして前記第1冶具と前記第2冶具とを重ねることを特徴とする請求項3に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項5】
前記当接部は、前記吸着部と重なる位置に設けられた開口部を囲んでおり、
前記開口部は、前記粘弾性部材1つ分の大きさであることを特徴とする請求項1から4までの何れか一項に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項6】
前記搬送ヘッドは、前記吸着部より上方に引っ込んだ上方位置と前記吸着部より下方に突出した下方位置との間で移動可能な棒状部材を有し、
前記第1工程では、前記搬送ヘッドが前記粘弾性部材を前記第1冶具の一方面に配置した後、前記第2工程の前に前記粘弾性部材から前記搬送ヘッドが離脱する際、前記棒状部材が前記吸着部から下方に突出することを特徴とする請求項5に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項7】
前記粘弾性部材はゲル状部材であることを特徴とする請求項1から6までの何れか一項に記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項8】
前記第4工程の後、前記支持体を構成する部材、および前記可動体を構成する部材のうちの他方側部材と前記弾性部材とを第2接着剤層により接着することを特徴とする請求項1から7までの何れか一項に記載のアクチュエータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動体を振動させるアクチュエータの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報を振動によって報知するデバイスとして、永久磁石を備えた可動体と、永久磁石と対向するコイルを有する支持体とを備えたアクチュエータが提案されている。かかるアクチュエータでは、支持体と可動体とが対向する部分にシリコーンゲル等の粘弾性部材が配置されており、支持体に対して可動体が変位する際の共振周波数を粘弾性部材によって制御することによって、可動体の共振を抑制する技術が提案されている(特許文献1参照)。また、特許文献1には、粘弾性部材を支持体および可動体に対して接着剤によって固定しておくことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-135948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1等に記載のアクチュエータのように、シリコーンゲル等の粘弾性部材を支持体および可動体に対して接着剤によって固定する場合、例えば、図11に示すように、搬送ヘッド1010xで搬送してきた粘弾性部材91xを、接着剤960xを介して可動体6xのヨーク81xに重ねた後、搬送ヘッド1010xを粘弾性部材91xから離脱させ、その後、接着剤960xを硬化させる。
【0005】
しかしながら、粘弾性部材91xは強い吸着力を有しているため、搬送ヘッド1010xと粘弾性部材91xとが吸着している。このため、接着剤960xを硬化させる前に搬送ヘッド1010xを粘弾性部材91xから離脱させようとしても、粘弾性部材91xが搬送ヘッド1010xに吸着したまま移動するという事態が発生することがあり、生産効率が低下する。かといって、接着剤960xを硬化させた後、搬送ヘッド1010xを粘弾性部材91xから離脱させる方法では生産性が極めて低下してしまう。かかる問題点は、搬送ヘッド1010xを利用した場合に限らず、他の方法で粘弾性部材91xを搬送した場合に同様に発生する。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、支持体および可動体の一方側部材に粘弾性部材を効率よく接着することのできるアクチュエータの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、支持体と、前記支持体に対して移動可能な可動体と、前記支持体を構成する部材、および前記可動体を構成する部材のうちの一方側部材に第1接着剤層により接着された粘弾性部材と、前記可動体を前記支持体に対して相対移動させる磁気駆動回路と、を有するアクチュエータの製造方法において、前記一方側部材に前記粘弾性部材を前記第1接着剤層によって接着する工程では、第1冶具の一方面側に前記粘弾性部材を配置する第1工程と、前記粘弾性部材と前記一方側部材とを接着剤を介して重ねる第2工程と、前記接着剤を硬化させて前記一方側部材と前記粘弾性部材とを前記第1接着剤層により接着する第3工程と、前記粘弾性部材から前記第1冶具を外す第4工程と、を有し、前記第1工程では、前記粘弾性部材を真空吸着する吸着部を備える搬送ヘッドが前記粘弾性部材を前記第1冶具の一方面に配置する際、側面同士が接するように配列された複数の前記粘弾性部材のうち、搬送しようとする前記粘弾性部材に隣り合う前記粘弾性部材には、前記搬送ヘッドの当接部を当接させ、しかる後に、前記搬送しようとする前記粘弾性部材を前記吸着部によって吸着することにより前記搬送ヘッドに保持することを特徴とする。
【0008】
本発明では、第1工程において第1冶具の一方面側に粘弾性部材を配置すると、粘弾性部材は、それ自身の吸着力によって第1冶具に吸着する。従って、粘弾性部材を搬送するのに用いた搬送ヘッドやピンセット等を粘弾性部材から容易に離脱させることができる。また、第2工程において粘弾性部材と一方側部材とを接着剤を介して重ねた後、第3工程において接着剤を硬化させて粘弾性部材を一方側部材に接着すると、第4工程において粘弾性部材から第1冶具を外す際、粘弾性部材が第1冶具に吸着したまま移動するという事態が発生しない。それ故、支持体および可動体の一方側部材に粘弾性部材を効率よく接着することができる。
【0009】
本発明において、第2冶具の一方面に前記一方側部材を配置しておき、前記第2工程では、前記粘弾性部材と前記一方側部材とが前記接着剤を介して重なるように前記第1冶具と前記第2冶具とを重ねる態様を採用することができる。
【0010】
この場合、前記第1冶具の一方面に複数の前記粘弾性部材を配置し、前記第2冶具の一方面に複数の前記一方側部材を配置しておき、前記第2工程では、複数の前記粘弾性部材と複数の前記一方側部材とが各々、前記接着剤を介して重なるように前記第1冶具と前記第2冶具とを重ねる態様を採用することができる。このような態様によれば、一方側部材に粘弾性部材を効率よく接着することができる。
【0011】
本発明において、前記第2工程では、前記第2冶具の一方面を上向きにする一方、前記第1冶具の一方面を下向きにして前記第1冶具と前記第2冶具とを重ねる態様を採用することができる。かかる態様によれば、第2冶具の一方面を上向きにするため、第2冶具が一方側部材を保持する構造とする必要がない。また、第1冶具では、粘弾性部材が、それ自身の吸着力によって第1冶具に吸着しているので、第1冶具の一方面を下向きにしても、粘弾性部材が第1冶具から落下しにくい。
【0012】
本発明において、前記当接部は、前記吸着部と重なる位置に設けられた開口部を囲んでおり、前記開口部は、前記粘弾性部材1つ分の大きさである態様を採用することができる。
【0013】
本発明において、前記搬送ヘッドは、前記吸着部より上方に引っ込んだ上方位置と前記吸着部より下方に突出した下方位置との間で移動可能な棒状部材を有し、前記第1工程では、前記搬送ヘッドが前記粘弾性部材を前記第1冶具の一方面に配置した後、前記第2工程の前に前記粘弾性部材から前記搬送ヘッドが離脱する際、前記棒状部材が前記吸着部から下方に突出する態様を採用することができる。かかる態様によれば、粘弾性部材が、それ自身の吸着力によって搬送ヘッドに吸着している場合でも、搬送ヘッドが粘弾性部材から離脱する際、棒状部材が粘弾性部材と接する状態となる。従って、搬送ヘッドと粘弾性部材との吸着力が低下しているので、搬送ヘッドは、粘弾性部材から容易に離脱することができる。
【0014】
本発明において、前記粘弾性部材はゲル状部材である態様を採用することができる。ゲル状部材の場合には特に、吸着力が強いが、その場合でも、一方側部材に粘弾性部材を効率よく接着することができる。
【0015】
本発明において、前記第4工程の後、前記支持体を構成する部材、および前記可動体を構成する部材のうちの他方側部材と前記弾性部材とを第2接着剤層により接着する態様を採用することができる。かかる態様によれば、粘弾性部材は、可動体の移動に確実に追従するので、可動体の共振を効果的に防止することができる。この場合でも、他方側部材と粘弾性部材とを第2接着剤により接着する際には、粘弾性部材に搬送ヘッド等が触れる必要がないので、他方側部材に粘弾性部材を効率よく接着することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、第1工程において第1冶具の一方面側に粘弾性部材を配置すると、粘弾性部材は、それ自身の吸着力によって第1冶具に吸着する。従って、粘弾性部材を搬送するのに用いた搬送ヘッドやピンセット等を粘弾性部材から離脱させることができる。また、第2工程において粘弾性部材と一方側部材とを接着剤を介して重ねた後、第3工程において接着剤を硬化させて粘弾性部材を一方側部材に接着すると、第4工程において粘弾性部材から第1冶具を外す際、粘弾性部材が第1冶具に吸着したまま移動するという事態が発生しない。それ故、支持体および可動体の一方側部材に粘弾性部材を効率よく接着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明が適用されるアクチュエータの一態様を示す斜視図である。
図2図1に示すアクチュエータのYZ断面図である。
図3図1に示すアクチュエータの分解斜視図である。
図4図1に示すアクチュエータを支持体と可動体とに分解した分解斜視図である。
図5図4に示す支持体を第1方向の他方側からみた分解斜視図である。
図6図2に示す粘弾性部材の固定構造を模式的に示す説明図である。
図7図1に示すアクチュエータの製造方法を示す工程断面図である。
図8図7に示す搬送ヘッドを備えた搬送装置の説明図である。
図9図8に示す搬送ヘッドの説明図である。
図10図8に示す搬送装置での粘弾性部材の搬送動作を示す説明図である。
図11】比較例に係るアクチュエータの製造方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の説明において、可動体6の直動方向(第2方向、振動方向)にXを付し、第2方向Xと交差する第1方向にZを付し、第1方向Zおよび第2方向Xに対して交差する第3方向にYを付して説明する。なお、第2方向Xの一方側にX1を付し、第2方向Xの他方側にX2を付し、第1方向Zの一方側にZ1を付し、第1方向Zの他方側にZ2を付し、第3方向Yの一方側にY1を付し、第3方向Yの他方側にY2を付して説明する。また、以下の説明では、コイルを保持する側が支持体2であって、永久磁石を保持する側が可動体6である場合を中心に説明する。
【0019】
(全体構成)
図1は、本発明が適用されるアクチュエータ1の一態様を示す斜視図である。図2は、図1に示すアクチュエータ1のYZ断面図である。図3は、図1に示すアクチュエータ1の分解斜視図である。図4は、図1に示すアクチュエータ1を支持体2と可動体6とに分解した分解斜視図である。図5は、図4に示す支持体2を第1方向Zの他方側Z2からみた分解斜視図である。
【0020】
図1に示すアクチュエータ1は、アクチュエータ1を手にした利用者に対して第2方向Xの振動によって情報を報知する。従って、アクチュエータ1は、ゲーム機の操作部材等として利用することができ、振動等によって新たな感覚を実感することができる。
【0021】
図2図3図4および図5に示すように、アクチュエータ1は、アクチュエータ1の外形を規定する角形のケース3等を含む支持体2と、ケース3の内部で支持体2に対して第2方向Xに移動可能に支持された可動体6とを有しており、可動体6が第2方向Xに振動することによって情報を出力する。
【0022】
支持体2は、ケース3、コイルホルダ4、コイル5、給電基板10を有しており、可動
体6は、永久磁石(第1永久磁石71および第2永久磁石72)、およびヨーク(第1ヨーク81および第2ヨーク82)を有している。コイル5および永久磁石(第1永久磁石71および第2永久磁石72)は、可動体6を支持体2に対して相対移動させる磁気駆動回路1aを構成している。可動体6は、可動体6と支持体2との間に設けられた粘弾性部材91、92を介して支持体2に支持されている。
【0023】
(可動体6の構成)
図2図3および図4に示すように、可動体6は、コイル5に対して第1方向Zの一方側Z1に配置された第1ヨーク81と、コイル5に第1方向Zの一方側Z1で対向するように第1ヨーク81の第1方向Zの他方側Z2の面に保持された平板状の第1永久磁石71とを有している。また、可動体6は、コイル5に対して第1方向Zの他方側Z2に配置された第2ヨーク82と、コイル5に第1方向Zの他方側Z2で対向するように第2ヨーク82の第1方向Zの一方側Z1の面に保持された平板状の第2永久磁石72とを有している。本形態において、可動体6は、第1ヨーク81、第1永久磁石71、第2ヨーク82、および第2永久磁石72によって構成されている。
【0024】
第1ヨーク81は、第1永久磁石71が固定された平板部811と、平板部811の第2方向Xの両側の端部から第1方向Zの他方側Z2に折れ曲がった一対の連結部812とを有している。第2ヨーク82は、第2永久磁石72が固定された平板部821を有しており、平板部821の第3方向Yの中間部分には、第2方向Xの一方側X1および他方側X2に張り出した一対の張り出し部822を有している。本形態において、一対の張り出し部822には、第1ヨーク81の一対の連結部812の先端部が溶接等の方法で連結されている。第1永久磁石71および第2永久磁石72は各々、第1方向Zの一方側Z1と第1方向Zの他方側Z2とが異なる極に着磁されている。
【0025】
(支持体2の構成)
図1および図2に示すように、支持体2において、ケース3は、第1方向Zの一方側Z1に位置する第1ケース部材31と、第1方向Zの他方側Z2で第1ケース部材31と重なる第2ケース部材32とを有しており、第1ケース部材31の第2方向Xの両側に設けられた一対の側板部311に、第2ケース部材32の第2方向Xの両側に設けられた一対の側板部321が各々、連結されてケース3を構成する。その際、第1ケース部材31と第2ケース部材32との間には、図2および図5に示すコイルホルダ4、コイル5および可動体6が収容される。
【0026】
図5に示すように、コイル5は、長円状に巻回された環状の平面形状を有する空芯コイルであり、コイルホルダ4に保持されている。コイル5は、第2方向Xで並列して第3方向Yに延在する2つの長辺部51と、2つの長辺部51の第3方向Yの両端を繋ぐ円弧状の2つの短辺部52とを備えている。このように構成したコイル5に対して、長辺部51には、第1方向Zの一方側Z1で第1永久磁石71が対向し、第1方向Zの他方側Z2で第2永久磁石72が対向している。コイルホルダ4は、コイル5が内側に配置される長円状の貫通穴からなるコイル配置穴410が第1方向Zで開口する板部41を有している。
【0027】
板部41の第3方向Yの一方側Y1の端部411において、第3方向Yの一方側Y1の縁からは、第1方向Zの一方側Z1に向けて側板部413が突出し、第2方向Xの一方側X1の縁、および第2方向Xの他方側X2の縁からは、第1方向Zの一方側Z1、および他方側Z2に向けて側板部414、415が突出している。側板部414、415の内面のうち、板部41に対して第1方向Zの他方側Z2には、第1方向Zに延在する溝状の凹部414b、415bが形成されている。また、側板部414、415の内面のうち、板部41に対して第1方向Zの一方側Z1にも同様な溝状の凹部(図示せず)が形成されている。
【0028】
板部41の第3方向Yの他方側Y2の端部412において、第3方向Yの他方側Y2の縁、第2方向Xの一方側X1の縁、および第2方向Xの他方側X2の縁からは、第1方向Zの一方側Z1、および他方側Z2に向けて側板部417、418、419が突出している。側板部418、419の内面のうち、板部41に対して第1方向Zの他方側Z2には、第1方向Zに延在する溝状の凹部418b、419bが形成されている。また、側板部418、419の内面のうち、板部41に対して第1方向Zの一方側Z1にも同様な溝状の凹部(図示せず)が形成されている。
【0029】
側板部414、415にはスリット414t、415tが形成されている。スリット414t、415tには、給電基板10の両側の端部10a、10bが保持されている。給電基板10には、コイル5を構成するコイル線の端部56、57がハンダ等により接続されている。
【0030】
(第1プレート47および第2プレート48の構成)
図2図4、および図5に示すように、支持体2は、コイル配置穴410および板部41に第1方向Zの一方側Z1から重なる第1プレート47を有しており、少なくともコイル5の空芯部50に充填された接着剤90からなる接着剤層9によって、コイル5は、第1プレート47および板部41に固定されている。従って、コイル5は、第1プレート47を介して第1永久磁石71と第1方向Zで対向している。また、接着剤層9によって、第1プレート47は板部41に固定されている。
【0031】
また、支持体2は、コイル配置穴410および板部41に第1方向Zの他方側Z2から重なる第2プレート48を有しており、少なくともコイル5の空芯部50に充填された接着剤90からなる接着剤層9によって、コイル5は、第2プレート48に固定されている。従って、コイル5は、第2プレート48を介して第2永久磁石72と第1方向Zで対向している。また、接着剤層9によって、第2プレート48は板部41に固定されている。
【0032】
第1プレート47および第2プレート48は、非磁性材料からなる。本形態において、第1プレート47および第2プレート48は、金属板からなる。より具体的には、第1プレート47および第2プレート48は、非磁性のステンレンス板からなる。
【0033】
第1プレート47は、第2方向Xの両側から第1方向Zの一方側Z1に斜めに突出した爪状の凸部472を有しており、凸部472は、側板部414、415、418、419に形成された溝状の凹部(図示せず)の内部に弾性をもって当接し、コイルホルダ4に保持されている。第2プレート48は、第2方向Xの両側から第1方向Zの他方側Z2に斜めに突出した爪状の凸部482を有しており、凸部482は、側板部414、415、418、419に形成された溝状の凹部414b、415b、418b、419bの内部に弾性をもって当接し、コイルホルダ4に保持されている。
【0034】
このように、本形態のアクチュエータ1は、コイルホルダ4の板部41を第1方向Zで貫通するコイル配置穴410の内側にコイル5が配置されているとともに、コイル配置穴410および板部41に第1方向Zの一方側Z1から重なるように第1プレート47が配置されている。このため、コイル5の空芯部50に接着剤90を充填すると、接着剤90は、コイル5とコイルホルダ4との間、コイル5と第1プレート47との間、および第1プレート47とコイルホルダ4との間に流れ込む。従って、接着剤90を硬化させると、コイル5、第1プレート47、およびコイルホルダ4が接着剤層9によって固定される。このため、コイル5の外周面とコイル配置穴410の内周面との隙間に接着剤を流し込む場合と違って、コイルホルダ4のコイル配置穴410に配置したコイル5をコイルホルダ4と適正に接着することができる。また、第1永久磁石71とコイル5との間には第1プ
レート47が介在する。このため、可動体6が第1方向Zの一方側Z1に移動した場合でも、第1永久磁石71とコイル5とが直接、接触することがないので、コイル5が損傷しにくい。また、第2永久磁石72とコイル5との間に第2プレート48が介在する。このため、可動体6が第1方向Zの他方側Z2に移動した場合でも、第2永久磁石72とコイル5とが直接、接触することがないので、コイル5が損傷しにくい。また、第1プレート47および第2プレート48は、金属板からなるため、コイル5で発生した熱を第1プレート47および第2プレート48を介して効率よく逃がすことができる。
【0035】
(粘弾性部材91、92の構成)
図2図3図4および図5に示すように、可動体6は、可動体6と支持体2との間に設けられた粘弾性部材91、92のみによって第2方向Xおよび第3方向Yに移動可能に支持されている。従って、本形態では、可動体6と支持体2との間は、可動体6を第2方向Xおよび第3方向Yに移動可能に支持する板バネ等が配置されていない。それ故、支持体2に対する可動体6の共振周波数は、粘弾性部材91、92によって制御されている。
【0036】
粘弾性部材91は、第1ヨーク81と第1プレート47とが第1方向Zで対向する部分に設けられている。粘弾性部材92は、第2ヨーク82と第2プレート48とが第1方向Zで対向する部分に設けられている。より具体的には、粘弾性部材91は、第3方向Yにおいて離間する2個所(コイル5の短辺部52側)の各々において第1ヨーク81と第1プレート47とが第1方向Zで対向する部分に設けられている。粘弾性部材92は、第3方向Yにおいて離間する2個所(コイル5の短辺部52側)の各々において第2ヨーク82と第2プレート48とが第1方向Zで対向する部分に設けられている。従って、板状バネ等を用いずに、可動体6を第2方向Xに移動可能に支持することができる。
【0037】
本形態において、粘弾性部材91、92は、シリコーンゲル等のゲル状部材からなる。本形態において、粘弾性部材91、92は、針入度が90度から110度のシリコーンゲルからなる。針入度とは、JIS-K-2207やJIS-K-2220で規定されているように、25℃で9.38gの総荷重をかけた1/4コーンの針が5秒間に入り込む深さを1/10mm単位で表わした値であり、この値が小さいほど硬いことを意味する。
【0038】
このように本形態のアクチュエータ1においては、可動体6と支持体2との間に粘弾性部材91、92が設けられているため、可動体6が共振することを抑制することができる。ここで、粘弾性部材91は、第1プレート47と第1ヨーク81との間に設けられており、粘弾性部材92は、第2プレート48と第2ヨーク82との間に設けられている。従って、粘弾性部材91、92を設けるのにケース3が用いられていない。このため、ケース3を用いなくても、支持体2と可動体6との間に粘弾性部材91、92を設けることができる。それ故、ケース3を設けていない組み立て途中の段階で粘弾性部材91、92を設けることができるので、製造途中にダンパ特性を含む振動特性を測定することができる。また、粘弾性部材91、92を設けるのにケース3が用いられていないので、ケース3を有しないアクチュエータに粘弾性部材91、92を設けることができる。
【0039】
また、粘弾性部材91、92は、支持体2と可動体6とにおいて第2方向X(振動方向)に対して交差する第1方向Zで対向する位置に設けられているため、可動体6が第2方向Xに振動した際、そのせん断方向に変形して共振を防止する。このため、可動体6が第2方向Xに振動しても、粘弾性部材91、92の弾性率の変化が小さいので、可動体6の共振を効果的に抑制することができる。すなわち、粘弾性部材91、92は、粘弾性部材であって、その伸縮方向によって、線形あるいは非線形の伸縮特性を備える。例えば、粘弾性部材91、92は、その厚さ方向(軸方向)に押圧されて圧縮変形する際は、線形の成分(バネ係数)よりも非線形の成分が大きい伸縮特性を備える一方、厚さ方向(軸方向)に引っ張られて伸びる場合は、非線形の成分(バネ係数)よりも線形の成分(バネ係数
)が大きい伸縮特性を備える。また、粘弾性部材91、92は、厚さ方向(軸方向)と交差する方向(せん断方向)に変形する場合、いずれの方向に動いても、引っ張られて伸びる方向の変形であるため、非線形の成分(バネ係数)よりも線形の成分(バネ係数)が大きい変形特性を持つ。本形態において、可動体6が第2方向Xに振動した際、粘弾性部材91、92は、せん断方向に変形するように構成されている。従って、粘弾性部材91、92では、可動体6が第2方向Xに振動した際、運動方向によるバネ力が一定となる。それ故、粘弾性部材91、92のせん断方向のバネ要素を用いることにより、入力信号に対する振動加速度の再現性を向上することができるので、微妙なニュアンスをもって振動を実現することができる。
【0040】
また、粘弾性部材91、92は、図6を参照して後述するように、第1方向Zの両面が各々、可動体6および支持体2に接着剤層によって固定されている。従って、粘弾性部材91、92は、可動体6の移動に確実に追従するので、可動体6の共振を効果的に防止することができる。
【0041】
また、粘弾性部材91、92は、支持体2と可動体6との間で第1方向Zに圧縮された状態にある。従って、粘弾性部材91、92は、可動体6の移動に確実に追従するので、可動体6の共振を効果的に防止することができる。
【0042】
(動作)
本形態のアクチュエータ1において、給電基板10を介して外部(上位の機器)からコイル5に給電すると、コイル5、第1永久磁石71および第2永久磁石72を備えた磁気駆動回路1aによって、可動体6が第2方向Xに往復移動する。従って、アクチュエータ1を手に持っていた利用者は、アクチュエータ1からの振動によって情報を得ることができる。その際、コイル5に印加される信号波形については、例えば、伝達すべき情報によって、周波数を変化させる。また、コイル5に印加される信号波形については極性を反転させるが、その際、駆動信号の極性が負の期間と正の期間とにおいて電圧の変化に対して緩急の差を設ける。その結果、可動体6が第2方向Xの一方側X1に移動する際の加速度と可動体6が第2方向Xの他方側X2に移動する際の加速度との間に差が発生する。従って、利用者に対して、アクチュエータ1が第2方向Xの一方側X1あるいは他方側X2に移動するような感覚を得ることができる。
【0043】
(粘弾性部材91、92の固定構造)
図6は、図2に示す粘弾性部材91、92の固定構造を模式的に示す説明図である。図6に示すように、本形態のアクチュエータ1において、粘弾性部材91は、支持体2を構成する部材、および可動体6を構成する部材のうちの一方側部材に第1接着剤層96により接着されている。また、粘弾性部材91は、支持体2を構成する部材、および可動体6を構成する部材のうちの他方側部材に第2接着剤層97により接着されている。
【0044】
本形態において、粘弾性部材91は、可動体6のうち、第1ヨーク81(一方側部材)に第1接着剤層96により接着され、支持体2のうち、第1プレート47(他方側部材)に第2接着剤層97により固定されている。なお、符号をかっこ内に示すように、粘弾性部材92は、可動体6のうち、第2ヨーク82に第1接着剤層96により接着され、支持体2のうち、第2プレート48に第2接着剤層97により固定されている。
【0045】
(アクチュエータ1の製造方法)
図7は、図1に示すアクチュエータ1の製造方法を示す工程断面図である。なお、図7では、各部材を認識しやすいように、各部材毎の縮尺を変えてある。本形態のアクチュエータ1の製造工程のうち、可動体6の第1ヨーク81(一方側部材)に粘弾性部材91を第1接着剤層96により接着する工程では、図7に示す工程を行う。
【0046】
まず、図7に示す工程ST1(第1工程)では、第1冶具200の一方面201側に粘弾性部材91を配置する。本形態では、第1冶具200の所定位置に複数の粘弾性部材91を配置する。本形態では、搬送ヘッド1010によって粘弾性部材91を第1冶具200の一方面201に配置した後、搬送ヘッド1010を粘弾性部材91から離脱させる。
【0047】
次に、工程ST2では、粘弾性部材91の第1冶具200とは反対側の面に接着剤960を塗布する。
【0048】
一方、工程ST3では、第2冶具300の一方面301に第1ヨーク81(一方側部材)を配置しておく。ここで、第2冶具300は、第1ヨーク81が載置される板部310と、板部310から突出して第1ヨーク81を位置決めする凸部320とを有している。本形態では、第2冶具300の所定位置に複数の第1ヨーク81を配置する。
【0049】
次に、工程ST4(第2工程)では、粘弾性部材91と第1ヨーク81とが接着剤960を介して重なるように第1冶具200と第2冶具300とを重ねる。本形態では、複数の粘弾性部材91と複数の第1ヨーク81とが各々、接着剤960を介して重なるように第1冶具200と第2冶具300とを重ねる。
【0050】
その際、第2冶具300の一方面301を上向きにする一方、第1冶具200の一方面201を下向きにして第1冶具200と第2冶具300とを重ねる。従って、第2冶具300では、第1ヨーク81を位置決めできれば、第1ヨーク81を保持する構造とする必要がない。また、第1冶具200では、粘弾性部材91が、それ自身の吸着力によって第1冶具200に吸着しているので、第1冶具200の一方面201を下向きにしても、粘弾性部材91が第1冶具200から落下しにくい。
【0051】
本形態では、第1冶具200と第2冶具300とを重ねる際、位置決め用の第3冶具400を用いる。第3冶具400は、第1冶具200を支持する板部450と、複数の位置決め用の凸部420とを有しており、凸部420は、第2冶具300の貫通穴350を貫通し、第1冶具200の位置決め穴250に嵌って、第1冶具200と第2冶具300とを位置決めする。
【0052】
次に、工程ST5(第3工程)では、接着剤960を硬化させて第1ヨーク81と粘弾性部材91とを第1接着剤層96により接着する。本形態において、接着剤960は常温硬化型であるが、接着剤960を加熱して硬化を促進させる。
【0053】
しかる後に、工程ST6(第4工程)では、粘弾性部材91から第1冶具200を外す。また、図示を省略するが、第2冶具300から、粘弾性部材91が接着された第1ヨーク81を回収する。
【0054】
なお、粘弾性部材92を第2ヨーク82に第1接着剤層96により接着する場合も、図7を参照して説明した工程を行う。
【0055】
(本形態の主な効果)
このように本形態の製造方法では、第1工程(工程ST1)において第1冶具200の一方面201に粘弾性部材91を配置すると、粘弾性部材91は、それ自身の吸着力によって第1冶具200に吸着する。従って、粘弾性部材91を搬送するのに用いた搬送ヘッド1010を粘弾性部材91から容易に離脱させることができる。
【0056】
また、第2工程(工程ST4)において粘弾性部材91と第1ヨーク81とを接着剤9
60を介して重ねた後、第3工程(工程ST5)において接着剤960を硬化させて粘弾性部材91を第1ヨーク81に接着すると、第4工程(工程ST6)において粘弾性部材91から第1冶具200を外す際、粘弾性部材91が第1冶具200に吸着したまま移動するという事態が発生しない。それ故、第1ヨーク81に粘弾性部材91を効率よく接着することができる。
【0057】
このようにして第1ヨーク81と粘弾性部材91とを第1接着剤層96により接着した後、図6に示すように、支持体2の第1プレート47(他方側部材)と粘弾性部材91とを第2接着剤層97により固定する。その際は、粘弾性部材91に搬送ヘッド等が触れる必要がないので、第1プレート47と粘弾性部材91とを効率よく接着することができる。
【0058】
なお、本形態では、接着剤960を粘弾性部材91に塗布したが、第1ヨーク81に接着剤960を塗布してもよい。
【0059】
(搬送ヘッド1010の構成例)
図8は、図7に示す搬送ヘッド1010を備えた搬送装置1000の説明図である。図9は、図8に示す搬送ヘッド1010の説明図である。図10は、図8に示す搬送装置1000での粘弾性部材の搬送動作を示す説明図である。なお、図8および図10では、図2等に示す粘弾性部材91、92を区別せず、粘弾性部材95として示してある。
【0060】
図8に示す搬送装置1000は、粘弾性部材95の搬送装置であり、複数の粘弾性部材95が載置される載置台1029と、載置台1029に対して上下方向に相対移動可能に構成された搬送ヘッド1010とを有している。複数の粘弾性部材95は、シート状の粘弾性部材を左右方向および前後方向に切断したものであり、左右方向および前後方向で側面95a同士が接するように載置台1029に配列されている。本形態において、載置台1029の上面には剥離紙1291が配置され、複数の粘弾性部材95は、剥離紙1291の上に配置されている。搬送ヘッド1010は、左右方向に移動可能であり、載置台1029はベース1028上で前後方向に移動可能である。従って、搬送ヘッド1010および載置台1029を移動させれば、複数の粘弾性部材95を順次、持ち上げ、第1冶具200まで搬送することができる。
【0061】
図9に示すように、搬送ヘッド1010は、概ね、支持プレート1025の下面に固定されたブロック1026と、ブロック1026の下面から突出するように設けられた吸着部1021と、ブロック1026に対して上下方向に移動可能に構成された当接部材1022とを有している。
【0062】
当接部材1022は、ブロック1026の下面に重なる底板部1225と、底板部1225からブロック1026の2つの側面1261の各々に沿うように上方に延在した側板部1227とを有しており、当接部材1022は、ブロック1026の側面1261にガイドされて上下方向に移動可能である。支持プレート1025の側方では、支持プレート1025に固定された受け板1027と、当接部材1022の側板部1229との間に2つのコイルバネからなる付勢部材1220が配置されており、付勢部材1220は、当接部材1022を下方に付勢している。ブロック1026の側面1261には板状のストッパ1265が固定されており、側板部1227の先端部1227aがストッパ1265に当接することによって、搬送ヘッド1010上における当接部材1022の下方への移動範囲が規定されている。
【0063】
当接部材1022の底板部1225の吸着部1021と重なる位置には開口部1226が形成されており、開口部1226の周りからは、枠状の当接部1221が下方に突出し
ている。従って、吸着部1021は開口部1226で下方に向けて開放状態にあり、吸着部1021の周りを囲むように当接部1221が形成されている。
【0064】
図10(a)に示すように、吸着部1021には、真空吸着を行うための複数の通気穴1210が形成されている。また、吸着部1021には、2つの穴1211が開口しており、2つ穴1211の各々の内側に棒状部材1023が上下方向に移動可能に配置されている。ここで、棒状部材1023は、図8に示すシャフト1277の下端部に形成されており、シャフト1277の上端側は、ボルト1273によって上方への移動が制限されたストッパ1274と連結されている。また、ストッパ1274と搬送ヘッド1010との間には、ストッパ1274から下方に延在するシャフト1276の周りにコイルバネ1275が配置されている。従って、棒状部材1023は、搬送ヘッド1010の上下方向の移動に伴って、当接部1221より上方に引っ込んだ上方位置と、当接部1221より下方に突出した下方位置との間で当接部1221に対して相対移動可能である。
【0065】
(搬送動作)
本形態では、搬送ヘッド1010によって、複数の粘弾性部材95を1つずつ搬送する。従って、図10(a)に示すように、当接部1221で囲まれた開口部1226は、粘弾性部材95の1つ分の大きさになっている。図10(a)に示す待機状態において、搬送ヘッド1010は、粘弾性部材95から上方で離間する待機位置にある。この状態で、開口部1226は、複数の粘弾性部材95のうち、これから搬送しようとする1つの粘弾性部材95の真上位置にある。また、吸着部1021では、通気穴1210から空気が吸引されている。
【0066】
この状態から、図8に示すレバー1024を時計周りCWの中立位置から、反時計周りCCWに回転させると、図10(b)に示すように、搬送ヘッド1010が下降し、まず、当接部材1022の当接部1221が、目的の1つの粘弾性部材95の周りに位置する隣りの粘弾性部材95に上方Z2から当接する。さらに、図8に示すレバー1024を反時計周りCCWに回転させると、搬送ヘッド1010がさらに下降し、目的の粘弾性部材95は、当接部1221の内側に嵌って、粘弾性部材95自身の吸着力によって当接部1221の内側に保持される。また、当接部1221の内側に嵌った粘弾性部材95は、吸着部1021によって真空吸着されて、搬送ヘッド1010に保持された状態となる。
【0067】
次に、図8に示すレバー1024を時計周りCWに回転させると、図10(c)に示すように、搬送ヘッド1010が上昇し、目的の粘弾性部材95は、搬送ヘッド1010に保持された状態で上昇する。これに対して、目的の粘弾性部材95の周りに位置する隣りの粘弾性部材95は、載置台1029に残った状態となる。
【0068】
この状態で、搬送ヘッド1010を、図8に示す第1治具200の真上位置まで移動させた後、図8に示すレバー1024をさらに時計周りCWに移動させると、支持プレート1025や当接部材1022が上昇する一方、棒状部材1023を備えたシャフト1277は、ボルト1273とストッパ1274との当接により、上昇が阻止される。その結果、図10(d)に示すように、棒状部材1023の下端部1230が当接部1221から下方に突出し、粘弾性部材95を第1治具200に押し付ける。しかる後に、図8に示すレバー1024を反時計周りCCWに回転させて、棒状部材1023を上昇させた後、上記の動作を繰り返せば、複数の粘弾性部材95を順次搬送することができる。
【0069】
このように構成した搬送装置1000では、搬送ヘッド1010が下降して粘弾性部材95を保持する際、当接部材1022の当接部1221が、複数の粘弾性部材95のうち、目的の粘弾性部材95の隣りの粘弾性部材95に上方から当接する。従って、当接部1221は、目的の粘弾性部材95と隣りの粘弾性部材95との吸着力に抗する力を発揮す
る。このため、搬送ヘッド1010が上昇して目的の粘弾性部材95を搬送する際、隣りの粘弾性部材95から容易に離れるので、粘弾性部材95の搬送が容易である。また、当接部1221が吸着部1021を囲むように設けられているため、搬送ヘッド1010は、吸着部1021による粘弾性部材95の真空吸着と、当接部1221の内側での粘弾性部材95の保持とによって粘弾性部材95を確実に保持することができる。
【0070】
この場合でも、搬送ヘッド1010から粘弾性部材95を離脱させる際、棒状部材1023が吸着部1021より下方に突出し、粘弾性部材95と搬送ヘッド1010との吸着力に抗する力を発揮する。このため、粘弾性部材95が搬送ヘッド1010から容易に離れるので、粘弾性部材95の取扱いが容易である。
【0071】
(別の実施形態)
上記実施形態では、粘弾性部材91を可動体6の第1ヨーク81と支持体2の第1プレート47とに接着し、粘弾性部材92を可動体6の第2ヨーク82と支持体2の第2プレート48とに接着する場合を例示したが、粘弾性部材を可動体6の他の部材と支持体2の他の部材に接着すう場合に本発明を適用してもよい。
【0072】
上記実施形態では、支持体2を構成する部材に粘弾性部材を接着する前に、可動体6を構成する部材に粘弾性部材を接着する際に図7を参照して説明した方法を例示したが、可動体6を構成する部材に粘弾性部材を接着する前に、可動体6を構成する部材に粘弾性部材を接着する際に図7を参照して説明した方法を適用してもよい。
【0073】
上記実施の形態では、粘弾性部材91、92を各々、支持体2および可動体6の双方に接着剤層により固定したが、支持体2および可動体6の一方のみに接着剤層(第1接着剤層)によって固定してもよい。
【0074】
上記実施の形態では、粘弾性部材91、92を各々、支持体2および可動体6に接着剤層により固定したが、粘弾性部材91、92の一方のみを支持体2および可動体6に接着剤層により固定した態様を採用してもよい。
【0075】
上記実施の形態では、粘弾性部材91、92にシリコーンゲル等からなるゲル状部材を用いたが、粘弾性とは、粘性と弾性の両方を合わせた性質のことであり、ゲル状部材、プラスチック、ゴム等の高分子物質に顕著に見られる性質である。したがって、粘弾性部材91、92として、天然ゴム、ジエン系ゴム(例えば、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム)、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム等)、非ジエン系ゴム(例えば、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)、熱可塑性エラストマー等の各種ゴム材料及びそれらの変性材料を用いた場合に本発明を適用してもよい。但し、ゲル状部材は、他の粘弾性部材より吸着力が大きいので、本発明を適用した効果が顕著である。
【0076】
上記実施の形態では、コイルを支持体2に設け、永久磁石を可動体6に設けたが、コイルを可動体6に設け、永久磁石を支持体に設けたアクチュエータに本発明を適用してもよい。上記実施の形態では、可動体6を第2方向Xに振動させるアクチュエータを例示したが、可動体6を第2方向Xおよび第3方向Yに振動させるアクチュエータに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…アクチュエータ、1a…磁気駆動回路、2…支持体、3…ケース、4…コイルホルダ、5…コイル、6…可動体、47…第1プレート、48…第2プレート、71…第1永久
磁石、72…第2永久磁石、81…第1ヨーク、82…第2ヨーク、91、92…粘弾性部材、96…第1接着剤層、97…第2接着剤層、200…第1冶具、300…第2冶具、960…第1接着剤、1010…搬送ヘッド、1021…吸着部、1023…棒状部材
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
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