(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】振れ補正機能付きユニット
(51)【国際特許分類】
G03B 5/00 20210101AFI20221201BHJP
【FI】
G03B5/00 J
(21)【出願番号】P 2018181675
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】南澤 伸司
(72)【発明者】
【氏名】須江 猛
【審査官】藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/061455(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0116514(US,A1)
【文献】特開2018-077391(JP,A)
【文献】国際公開第2019/058785(WO,A1)
【文献】特開2017-015772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00 - 5/08
G02B 7/04
G03B 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学モジュールの配置空間が設けられた可動体と、
固定体と、
前記固定体に対して前記可動体を前記光学モジュールの
光軸を中心とする光軸周りに回転可能に支持するローリング支持機構と、
前記可動体を前記光軸周りに回動させるローリング駆動機構と、を有し、
前記ローリング駆動機構は、前記可動体と前記固定体の一方に搭載される駆動用コイルと、他方に搭載される駆動用磁石と、を備え、
前記駆動用コイルと前記駆動用磁石は、
前記光軸に沿う光軸方向で対向し、且つ、前記配置空間に対して前記光軸を中心とする径方向の外側に配置され
、
前記ローリング駆動機構は、前記径方向から見て前記可動体と重なり、
前記光学モジュールは、磁石およびコイルを備え、
前記磁石の前記光軸方向の中心と前記駆動用磁石の前記光軸方向の中心とが前記径方向から見て重なることを特徴とする振れ補正機能付きユニット。
【請求項2】
前記ローリング支持機構は、前記径方向から見て前記ローリング駆動機構と重なることを特徴とする請求項
1に記載の振れ補正機能付きユニット。
【請求項3】
前記可動体は、前記駆動用磁石または前記駆動用コイルが配置されるローリング駆動機構固定部を備え、
前記ローリング駆動機構固定部は、前記固定体に設けられた固定体側ストッパ部と前記光軸周りの方向に当接する可動体側ストッパ部を備えることを特徴とする請求項1
または2に記載の振れ補正機能付きユニット。
【請求項4】
前記駆動用コイルは前記固定体に配置され、
前記駆動用磁石は前記可動体に配置されることを特徴とする請求項1から
3の何れか一項に記載の振れ補正機能付きユニット。
【請求項5】
光学モジュールの配置空間が設けられた可動体と、
固定体と、
前記固定体に対して前記可動体を前記光学モジュールの光軸を中心とする光軸周りに回
転可能に支持するローリング支持機構と、
前記可動体を前記光軸周りに回動させるローリング駆動機構と、を有し、
前記ローリング駆動機構は、前記可動体と前記固定体の一方に搭載される駆動用コイルと、他方に搭載される駆動用磁石と、を備え、
前記駆動用コイルと前記駆動用磁石は、前記光軸に沿う光軸方向で対向し、且つ、前記配置空間に対して前記光軸を中心とする径方向の外側に配置され、
前記ローリング駆動機構は、前記光軸を挟んで反対側の2箇所を含む複数位置に配置され、
前記ローリング支持機構は、前記光軸を中心とする周方向の複数位置に設けられ、
前記複数位置は、前記光軸方向と直交する第1方向で対向する位置、および前記光軸方向および前記第1方向と直交する第2方向で対向する位置を含み、
前記第1方向で対向する前記ローリング支持機構の間隔は、前記第2方向で対向する前記ローリング支持機構の間隔より小さく、
前記ローリング駆動機構は、前記光軸を挟んで前記第2方向で対向する位置に設けられることを特徴とする振れ補正機能付きユニット。
【請求項6】
光学モジュールの配置空間が設けられた可動体と、
固定体と、
前記固定体に対して前記可動体を前記光学モジュールの光軸を中心とする光軸周りに回転可能に支持するローリング支持機構と、
前記可動体を前記光軸周りに回動させるローリング駆動機構と、を有し、
前記ローリング駆動機構は、前記可動体と前記固定体の一方に搭載される駆動用コイルと、他方に搭載される駆動用磁石と、を備え、
前記駆動用コイルと前記駆動用磁石は、前記光軸に沿う光軸方向で対向し、且つ、前記配置空間に対して前記光軸を中心とする径方向の外側に配置され、
前記固定体は、
前記光軸方向に凹んだ配線用凹部が設けられた固定枠と、
前記駆動用コイルと接続されるフレキシブルプリント基板と、を備え、
前記配線用凹部は、前記配線用凹部に配置される前記フレキシブルプリント基板に搭載されるホール素子と前記駆動用磁石との距離が予め定めた距離となる形状であることを特徴とする振れ補正機能付きユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学モジュールが搭載される振れ補正機能付きユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末や車両、無人ヘリコプターなどの移動体に搭載される撮像装置は、撮像装置の振れによる撮影画像の乱れを抑制することが求められる。このため、振れ補正機能付きユニットに撮影用の光学モジュールを搭載することが提案されている。振れ補正機能付きユニットは、光学モジュールが搭載される可動体と、支持機構を介して可動体を変位可能に支持する固定体と、固定体に対する可動体の振れを補正する振れ補正用の駆動機構とを備えている。振れ補正用の駆動機構は、例えば、光学モジュールをピッチング(縦揺れ:チルティング)方向およびヨーイング(横揺れ:パンニング)方向に揺動させる揺動用駆動機構、および、光学モジュールを光軸周りに回転させるローリング駆動機構などが用いられる。
【0003】
特許文献1には、撮影用レンズを光軸方向に移動させる第1駆動機構と、撮影用レンズの振れを補正する第2駆動機構および第3駆動機構を備えたレンズ駆動装置が開示されている。特許文献1のレンズ駆動装置は、レンズホルダを保持する第1保持体と、板ばねを介して第1保持体を光軸方向に移動可能に支持する第2保持体と、ワイヤを介して第2保持体を光軸方向と略直交する方向へ移動可能に保持する固定体とを備える。第1駆動機構は、第1保持体と第2保持体の間に配置される磁石およびコイルによって構成される。また、振れ補正用の駆動機構である第2駆動機構および第3駆動機構は、第2保持体と固定体の間に配置される磁石およびコイルによって構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のレンズ駆動装置において、固定体は装置の外装ケースであり、第2保持体は外装ケースの内側に配置される内ケースであり、第2保持体の内側に第1駆動機構が配置される。第1駆動機構は、撮影用レンズと一体になって光軸方向に移動する第1保持体に保持されるコイルと、第2保持体に保持される磁石によって構成される。磁石を保持する第2保持体は、磁性材料によって形成され、磁石に対するヨークの機能を果たしている。
【0006】
特許文献1のように、可動体が磁気駆動機構(磁石とコイル)を内蔵し、可動体の外側にも磁気駆動機構(磁石とコイル)が配置される場合、可動体の内側の磁気駆動機構と、可動体の外側の磁気駆動機構との磁気干渉が問題となる。例えば、可動体の内側の磁気駆動機構が、特許文献1のようにコイルを可動部側(レンズホルダ側)に搭載する方式(ムービングコイル方式)ではなく、磁石を可動部側(レンズホルダ側)に搭載する方式(ムービングマグネット方式)である場合には、第2保持体に磁石でなくコイルが配置されるので、内ケースにヨークの機能を持たせる必要がなく、第2保持体として非磁性の部材が用いられる。従って、磁性材料製の内ケースによって外部の磁気駆動機構の磁界を遮蔽することができないので、可動体内部の磁石が外部の磁気駆動機構によって吸着されて動かなくなってしまう。
【0007】
また、可動体が磁気駆動機構を内蔵していない場合であっても、磁界の影響を受ける部品を内蔵している場合には、同様に、振れ補正用駆動機構による磁界が可動体に及ぼす影響が問題となる。
【0008】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、可動体と固定体との間に設けられた振れ補正用の磁気駆動機構と可動体との磁気干渉を抑制することが可能な振れ補正機能付きユニットを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、光学モジュールの配置空間が設けられた可動体と、固定体と、前記固定体に対して前記可動体を前記光学モジュールの光軸を中心とする光軸周りに回転可能に支持するローリング支持機構と、前記可動体を前記光軸周りに回動させるローリング駆動機構と、を有し、前記ローリング駆動機構は、前記可動体と前記固定体の一方に搭載される駆動用コイルと、他方に搭載される駆動用磁石と、を備え、前記駆動用コイルと前記駆動用磁石は、前記光軸に沿う光軸方向で対向し、且つ、前記配置空間に対して前記光軸を中心とする径方向の外側に配置され、前記ローリング駆動機構は、前記径方向から見て前記可動体と重なり、前記光学モジュールは、磁石およびコイルを備え、前記磁石の前記光軸方向の中心と前記駆動用磁石の前記光軸方向の中心とが前記径方向から見て重なることを特徴とする。
【0010】
本発明では、光学モジュールを保持可能な可動体を光軸回りに回転させることができる。従って、ローリング方向の振れ補正を行うことができるので、光学モジュールによる撮影画像の乱れを抑制できる。また、ローリング駆動機構は、光学モジュールの配置空間に対して径方向の外側に配置されるため、光学モジュールの配置空間とローリング駆動機構とを光軸方向にずらして配置する必要がない。従って、ローリング駆動機構を設けたことによる光軸方向のサイズの増大を抑制できる。よって、振れ補正機能付きユニットの光軸方向の薄型化を図ることができる。さらに、ローリング駆動機構は、駆動用磁石と駆動用コイルとが光軸方向で対向するため、ローリング駆動機構の磁界が光学モジュールの配置空間へ入りにくい。従って、可動体とローリング駆動機構との磁気干渉を抑制できる。
【0011】
本発明では、前記ローリング駆動機構は、前記径方向から見て前記可動体と重なる。また、前記ローリング支持機構は、前記径方向から見て前記可動体および前記ローリング駆動機構と重なることが好ましい。このようにすると、ローリング駆動機構を設けたことによる光軸方向のサイズの増大、および、ローリング支持機構を設けたことによる光軸方向のサイズの増大を抑制できる。従って、振れ補正機能付きユニットの光軸方向の薄型化を図ることができる。
【0012】
本発明では、前記光学モジュールは、磁石およびコイルを備え、前記磁石の前記光軸方向の中心と前記駆動用磁石の前記光軸方向の中心とが前記径方向から見て重なる。このようにすると、駆動用磁石から出る磁束の方向は駆動用磁石から光学モジュール内の磁石へ向かう方向と直交する方向となる。従って、駆動用磁石から出る磁束が光学モジュール内の磁石に届くおそれが少ないので、ローリング駆動機構と光学モジュールとの磁気干渉を抑制できる。
【0013】
本発明において、前記可動体は、前記駆動用磁石または前記駆動用コイルが配置されるローリング駆動機構固定部を備え、前記ローリング駆動機構固定部は、前記固定体に設けられた固定体側ストッパ部と前記光軸周りの方向に当接する可動体側ストッパ部を備えることが好ましい。このようにすると、ローリング駆動機構固定部とは別にストッパ部材を設けることによる部品点数の増大を抑制でき、可動体の構造を簡素化できる。
【0014】
本発明において、前記駆動用コイルは前記固定体に配置され、前記駆動用磁石は前記可動体に配置されることが好ましい。このようにすると、駆動用コイルに給電するための配線部材を可動体に設ける必要がない。従って、配線部材が動くスペースを確保する必要が
なく、配線が容易である。また、可動体の動作時に配線部材に応力がかからないので、応力による振れ補正の精度低下を防止でき、精度良くローリング補正を行うことができる。また、振れ補正の精度低下を防止するための制御や電力を必要としない。
【0015】
本発明は、光学モジュールの配置空間が設けられた可動体と、固定体と、前記固定体に対して前記可動体を前記光学モジュールの光軸を中心とする光軸周りに回転可能に支持するローリング支持機構と、前記可動体を前記光軸周りに回動させるローリング駆動機構と、を有し、前記ローリング駆動機構は、前記可動体と前記固定体の一方に搭載される駆動用コイルと、他方に搭載される駆動用磁石と、を備え、前記駆動用コイルと前記駆動用磁石は、前記光軸に沿う光軸方向で対向し、且つ、前記配置空間に対して前記光軸を中心とする径方向の外側に配置され、前記ローリング駆動機構は、前記光軸を挟んで反対側の2箇所を含む複数位置に配置され、前記ローリング支持機構は、前記光軸を中心とする周方向の複数位置に設けられ、前記複数位置は、前記光軸方向と直交する第1方向で対向する位置、および前記光軸方向および前記第1方向と直交する第2方向で対向する位置を含み、前記第1方向で対向する前記ローリング支持機構の間隔は、前記第2方向で対向する前記ローリング支持機構の間隔より小さく、前記ローリング駆動機構は、前記光軸を挟んで前記第2方向で対向する位置に設けられることを特徴とする。
【0016】
本発明では、ローリング駆動機構を1箇所のみに設ける場合と比較して、可動体の重心が偏ることを抑制できる。従って、重心の偏りに起因する振れ補正の精度低下を抑制でき、精度良くローリング補正を行うことができる。また、重心の偏りを抑制するためにカウンターウェイトを設ける必要がない。さらに、ローリング駆動機構を複数設けることによ
って、大きなトルクで振れ補正を行うことができる。また、ローリング駆動機構を設けたことによって第1方向のサイズを増大させることがないので、振れ補正機能付きユニットのサイズを、ローリング駆動機構が対向する方向と直交する第1方向で小さくすることができる。
【0017】
本発明は、光学モジュールの配置空間が設けられた可動体と、固定体と、前記固定体に対して前記可動体を前記光学モジュールの光軸を中心とする光軸周りに回転可能に支持するローリング支持機構と、前記可動体を前記光軸周りに回動させるローリング駆動機構と、を有し、前記ローリング駆動機構は、前記可動体と前記固定体の一方に搭載される駆動用コイルと、他方に搭載される駆動用磁石と、を備え、前記駆動用コイルと前記駆動用磁石は、前記光軸に沿う光軸方向で対向し、且つ、前記配置空間に対して前記光軸を中心とする径方向の外側に配置され、前記固定体は、前記光軸方向に凹んだ配線用凹部が設けられた固定枠と、前記駆動用コイルと接続されるフレキシブルプリント基板と、を備え、前記配線用凹部は、前記配線用凹部に配置される前記フレキシブルプリント基板に搭載されるホール素子と前記駆動用磁石との距離が予め定めた距離となる形状であることを特徴とする。このようにすると、フレキシブルプリント基板が固定枠から光軸方向に飛び出すことを抑制できる。従って、振れ補正機能付きユニットの光軸方向の薄型化を図ることができる。また、配線用凹部にフレキシブルプリント基板を配置することによってホール素子を位置決めできるため、ホール素子の位置決めが容易である。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、ローリング駆動機構は、光学モジュールの配置空間に対して径方向の外側に配置されるため、光学モジュールの配置空間とローリング駆動機構とを光軸方向にずらして配置する必要がない。従って、ローリング駆動機構を設けたことによる光軸方向のサイズの増大を抑制できる。よって、振れ補正機能付きユニットの光軸方向の薄型化を図ることができる。また、ローリング駆動機構は、磁石とコイルが光軸方向に対向するため、ローリング駆動機構の磁界が光学モジュールの配置空間へ入りにくい。従って、可動体とローリング駆動機構との磁気干渉を抑制できる。また、ローリング駆動機構を設けたことによる光軸方向のサイズの増大、および、ローリング支持機構を設けたことによる光軸方向のサイズの増大を抑制できる。従って、振れ補正機能付きユニットの光軸方向の薄型化を図ることができる。さらに、駆動用磁石から出る磁束の方向は駆動用磁石から光学モジュール内の磁石へ向かう方向と直交する方向となる。従って、駆動用磁石から出る磁束が光学モジュール内の磁石に届くおそれが少ないので、ローリング駆動機構と光学モジュールとの磁気干渉を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明を適用した振れ補正機能付きユニットの斜視図である。
【
図2】光学モジュールおよび振れ補正機能付きユニットの断面図(
図1のA-A断面図)である。
【
図3】
図1の振れ補正機能付きユニットを被写体側から見た分解斜視図である。
【
図4】
図1の振れ補正機能付きユニットを像側から見た分解斜視図である。
【
図5】前板を取り外した振れ補正機能付きユニットを被写体側から見た斜視図である。
【
図6】被写体側から見たローリング支持機構の部分拡大図(
図5の部分拡大図)である。
【
図7】前板を取り外した振れ補正機能付きユニットを像側から見た斜視図である。
【
図8】像側から見たローリング支持機構の部分拡大図(
図7の部分拡大図)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を適用した振れ補正機能付きユニットの実施形態について、図面を参照しながら説明する。本明細書において、互いに直交する3方向をそれぞれX軸方向、Y軸方向、Z軸方向とする。X軸方向は第1方向であり、X軸方向の一方側を+X方向、他方側を-X方向とする。また、Y軸方向は第2方向であり、Y軸方向の一方側を+Y方向、他方側を-Y方向とする。Z軸方向は光学モジュール1の光軸L(レンズ光軸)に沿う方向であり、Z軸方向の一方側を+Z方向、他方側を-Z方向とする。+Z方向は被写体側L1であり、-Z方向は像側L2である。
【0021】
(全体構成)
図1は、本発明を適用した振れ補正機能付きユニット100の斜視図である。
図2は、光学モジュール1および振れ補正機能付きユニット100の断面図(
図1のA-A断面図)である。振れ補正機能付きユニット100は、固定体20および可動体10を備える。可動体10は、光学モジュール1が配置される配置空間2を備える。
図1に示すように、振れ補正機能付きユニット100は直方体状である。配置空間2は、光軸L方向から見て矩形であり、振れ補正機能付きユニット100のX軸方向およびY軸方向の略中央をZ軸方向に貫通する貫通部である。なお、配置空間2の形状は矩形でなくとも良く、光学モジュール1の形状に合わせて適宜変更可能である。
【0022】
図2に示すように、光学モジュール1は、配置空間2に配置され、可動体10に保持される。可動体10は、後述するローリング支持機構30を介して固定体20と接続される。ローリング支持機構30は、可動体10を固定体20に対して光学モジュール1の光軸L周りに回転可能に支持する。また、振れ補正機能付きユニット100は、可動体10を光軸L回りに回転させるローリング駆動機構40を備える。
【0023】
光学モジュール1を保持した振れ補正機能付きユニット100は、携帯端末やドライブレコーダ、あるいは、無人ヘリコプターに搭載される撮像装置等の光学機器に搭載される。撮影時に光学機器に振れが発生した場合の光学モジュール1の振れのうち、X軸周りの回転はピッチング(縦揺れ)に相当し、Y軸周りの回転はヨーイング(横揺れ)に相当し、Z軸周りの回転はローリングに相当する。振れ補正機能付きユニット100は、ジャイロスコープによってZ軸周りの振れを検出すると、ローリング駆動機構40を駆動して振れ補正を行う。ローリング駆動機構を制御する制御部およびジャイロスコープは、光学機器本体に搭載されていてもよいし、光学モジュール1に搭載されていてもよい。
【0024】
図2に示すように、本形態では、光学モジュール1は、ピッチング方向およびヨーイング方向の振れ補正を行う振れ補正用駆動機構3を備える。光学モジュール1は、例えば、可動体10に固定される固定部と、レンズホルダを備えた可動部と、固定部に対して可動部をピッチング方向およびヨーイング方向に移動可能に支持する支持機構とを備える。振れ補正用駆動機構3は、例えば、磁石4およびコイル5によって構成される磁気駆動機構であり、固定部に対して可動部をX軸周りおよびY軸周りに回転させる。光学モジュール1は、ジャイロスコープ等によってX軸周りの振れおよびY軸周りの振れが検出されると、振れ補正用駆動機構3を駆動して振れ補正を行う。
【0025】
本実施形態において、光学モジュール1は、ピッチング方向およびヨーイング方向の振れ補正を行う振れ補正用駆動機構3を備えた構成としたが、光学モジュール1はこの構成に限定はされない。例えば、光学モジュール1は、ピッチング方向およびヨーイング方向
のいずれか一方のみの振れ補正が可能な構成でもよい。あるいは、光学モジュール1は、ピッチング方向およびヨーイング方向の補正を行わず、オートフォーカス機能を備える構成であってもよい。
【0026】
(可動体)
図3は、
図1の振れ補正機能付きユニット100を被写体側L1から見た分解斜視図である。また、
図4は、
図1の振れ補正機能付きユニット100を像側L2から見た分解斜視図である。可動体10は、可動枠11と、可動枠11に固定される駆動用磁石41を備える。可動枠11は、配置空間2を囲む枠状の部材である。可動枠11は、配置空間2の+X方向側を囲む第1枠部12と、配置空間2の-X方向側を囲む第2枠部13と、配置空間2の+Y方向側を囲む第3枠部14と、配置空間2の-Y方向側を囲む第4枠部15を備える。第3枠部14および第4枠部15は、駆動用磁石41が固定されるローリング駆動機構固定部16を備える。ローリング駆動機構固定部16は、光軸Lを挟んで対向する2箇所に設けられている。
【0027】
図4に示すように、ローリング駆動機構固定部16は、第3枠部14および第4枠部15のX方向の略中央から光軸Lとは反対側へ突出した突出部分である。突出部分の像側L2の面に駆動用磁石41を配置するための凹部が設けられ、凹部の底面が磁石固定面161になっている。また、後述するように、ローリング駆動機構固定部16には、固定体20に対する可動体10の回転を規制する可動体側ストッパ部(第2被規制部176)が設けられている。
【0028】
可動枠11の4隅には、ローリング支持機構固定部17が設けられている。ローリング支持機構固定部17には、後述するように、ローリング支持機構30を構成する弾性部材31が接続される。ローリング支持機構固定部17は、配置空間2の+Y方向側においてローリング駆動機構固定部16を挟んでX軸方向(第1方向)で対向する2箇所、および、配置空間2の-Y方向側においてローリング駆動機構固定部16を挟んでX軸方向(第1方向)で対向する2箇所に設けられている。
【0029】
可動枠11は、ローリング駆動機構固定部16が設けられた第3枠部14および第4枠部15のY方向の幅が第1枠部12および第2枠部13のX方向の幅よりも大きい。従って、可動枠11は、全体としてY方向の寸法がX方向の寸法よりも大きい横長の形状をしている。第2枠部13は直線状に延びているが、第1枠部12は、Y軸方向の両端を除く部分に+X方向に突出した矩形の突出部121が設けられている。突出部121の内周側には、配置空間2と連続した凹部122が設けられている。
【0030】
(固定体)
固定体20は、前板21および固定枠22と、固定枠22に固定される駆動用コイル42およびフレキシブルプリント基板50を備える。固定枠22は、可動枠11を囲む枠状の部材であり、光軸L方向から見たときの外形は、Y軸方向に長い長方形である。前板21は固定枠22よりも一回り小さい長方形であり、固定枠22の被写体側L1の端面にねじによって固定される。前板21には、光軸L方向から見て配置空間2と重なる矩形の開口部211が形成されている。後述するように、固定枠22の内側に可動枠11を配置した状態で、前板21は、可動枠11の光軸L方向の変位を規制する部材として機能する。
【0031】
図3、
図4に示すように、固定枠22は、可動枠11の+X方向側を囲む第1固定枠部23を備えており、第1固定枠部23のY方向の中央には、可動枠11の突出部121が配置される切り欠き231が設けられている。また、固定枠22は、可動枠11の-X方向側を囲む第2固定枠部24と、可動枠11の+Y方向側を囲む第3固定枠部25と、可動枠11の-Y方向側を囲む第4固定枠部26を備える。第3固定枠部25、第2固定枠
部24、および第4固定枠部26は、可動枠11の3面を囲んでいる。
【0032】
Y軸方向で対向する第3固定枠部25および第4固定枠部26は、駆動用コイル42が固定されるコイル固定部27を備える。コイル固定部27は、光軸Lを挟んで対向する2箇所に設けられている。コイル固定部27は、光軸L方向から見て可動枠11に設けられたローリング駆動機構固定部16と重なる位置に設けられている。コイル固定部27は、第3固定枠部25および第4固定枠部26のX軸方向の中央からそれぞれ光軸Lの側へ突出する矩形の突出部分である。突出部分の被写体側L1の面に駆動用コイル42を配置するための凹部が形成され、凹部の底面がコイル固定面271になっている。コイル固定部27の光軸L側の端面には、駆動用コイル42から引き出したコイル線を配置するための凹溝272が設けられている。また、後述するように、コイル固定部27には、固定体20に対する可動体10の回転を規制する固定体側ストッパ部(第2規制部286)が設けられている。
【0033】
固定枠22の4隅には、ローリング支持機構配置部28が設けられる。4箇所のローリング支持機構配置部28には、それぞれ、可動体10のローリング支持機構固定部17が配置される。ローリング支持機構配置部28には、後述するように、ローリング支持機構30を構成する弾性部材31が接続される。ローリング支持機構配置部28は、+Y方向側のコイル固定部27を挟んでX軸方向(第1方向)で対向する2箇所、および、-Y方向側のコイル固定部27を挟んでX軸方向(第1方向)で対向する2箇所に設けられている。
【0034】
図4に示すように、固定枠22の像側L2の面には、光軸L方向の被写体側L1に凹んだ配線用凹部29が形成されている。配線用凹部29は、フレキシブルプリント基板50を配置可能な形状に凹んでいる。
図3、
図4に示すように、フレキシブルプリント基板50は、駆動用コイル42のコイル線が接続されるランドが設けられた第1矩形部分51および第2矩形部分52と、第1矩形部分51と第2矩形部分52とを接続する接続部分53と、固定枠22から+Y方向へ引き出される引き出し部分54とを備える。フレキシブルプリント基板50は、可撓性基板に補強板を固定して構成されている。補強板は、引き出し部分54を除く部位に設けられ、引き出し部分54は可撓性基板のみとなっている。
【0035】
接続部分53は、第1矩形部分51から-X方向に延びて+Y方向へ屈曲し、Y軸方向に直線状に延びて+X方向へ屈曲し、第2矩形部分52と繋がっている。引き出し部分54は、第3固定枠部25の外周縁に形成された切り欠き251を通って+Y方向へ延びている。第1矩形部分51および第2矩形部分52のうち、引き出し部分54に近い側に位置する第2矩形部分52には、ホール素子60が搭載されている。
【0036】
配線用凹部29は、第1矩形部分51が配置される第1凹部291と、第2矩形部分52が配置される第2凹部292と、接続部分53が配置される第3凹部293を備える。第1矩形部分51は、第4固定枠部26に設けられたローリング駆動機構固定部16の像側L2の面に形成されている。また、第2矩形部分52は、第3固定枠部25に設けられたローリング駆動機構固定部16の像側L2の面に形成されている。第1矩形部分51および第2矩形部分52は凹溝272と繋がっており、凹溝272を経由してコイル固定部27からコイル線を引き回すことができる。
【0037】
配線用凹部29は、第2凹部292にフレキシブルプリント基板50の第2矩形部分52を配置することによって、第2矩形部分52に搭載されたホール素子60と、可動体10に搭載された駆動用磁石41との光軸L方向の距離が予め定めた距離となる形状に形成されている。また、配線用凹部29の光軸L方向の深さは、フレキシブルプリント基板50の第2矩形部分52およびホール素子60の光軸L方向の厚さの合計値より大きい。
【0038】
(ローリング駆動機構)
ローリング駆動機構40は、配置空間2の+Y方向側、および配置空間2の-Y方向側の2箇所に光軸Lを挟んで対向するように設けられ、光軸Lを中心とする周方向の複数位置に設けられている。各ローリング駆動機構40は、それぞれ、駆動用磁石41および駆動用コイル42を備える。本形態では、可動体10に駆動用磁石41が配置され、固定体20に駆動用コイル42が配置される。
図2に示すように、固定枠22の内側に可動枠11を配置すると、
可動枠11のローリング駆動機構固定部16に固定された駆動用磁石41と、
固定枠22のコイル固定部27に固定された駆動用コイル42とが光軸L方向に対向する。本形態では、2組のローリング駆動機構40は、いずれも、駆動用磁石41および駆動用コイル42が光軸L方向に対向し、且つ、配置空間2に対して光軸Lを中心とする径方向の外側に配置されている。
【0039】
本形態では、2組のローリング駆動機構40は、いずれも、径方向から見て可動体10と重なる。すなわち、駆動用磁石41は、径方向から見て可動枠11と重なる位置に保持される。また、固定体20に搭載された駆動用コイル42は、径方向から見て可動枠11と重なる位置に配置される。従って、ローリング駆動機構40は、可動枠11の光軸L方向の高さの範囲内に配置されている。また、2組のローリング駆動機構40は、いずれも、径方向から見てローリング支持機構30と重なる。ローリング支持機構30は、後述するように、可動枠11と固定枠22とを接続する弾性部材31を備えており、ローリング駆動機構40は、径方向から見て弾性部材31と重なる。
【0040】
図3、
図4に示すように、駆動用磁石41は、X軸方向に2分割されており、駆動用コイル42と対向する像側L2の磁極がY軸方向に延在する着磁分極線を境にして異なるように着磁されている。駆動用コイル42はY軸方向に長い長円形の空芯コイルであり、+X方向側および-X方向側の2本の長辺部分が有効辺として利用される。なお、駆動用コイル42として、空芯コイルではなく、コイルをパターンとして基板配線内に取り込んだパターン基板(コイル基板)を用いても良い。
【0041】
2組のローリング駆動機構40のいずれか一方の駆動用磁石41は、フレキシブルプリント基板50に搭載されたホール素子60と光軸L方向から見て重なる位置に配置される。本形態では、光軸Lに対して+Y方向側に配置される駆動用磁石41とホール素子60とが光軸L方向から見て重なっている。振れ補正機能付きユニット100を搭載した光学機器において光軸L周りの振れが発生すると、ホール素子60が駆動用磁石41による磁束密度の変化を検出し、ホール素子60の出力に基づいて光学モジュール1および可動体10の光軸L周りの振れが検出される。この振れの検出結果に基づいて、ローリング駆動機構40がその振れを補正するように駆動される。即ち、光学モジュール1および可動体10の振れを打ち消す方向に可動体10を動かすように2組のローリング駆動機構40の駆動用コイル42に電流が流され、光軸L周りの振れが補正される。
【0042】
図2に示すように、本形態では、光学モジュール1が磁石4およびコイル5によって構成される振れ補正用駆動機構3を内蔵しているが、駆動用磁石41の光軸L方向の中心G0と、光学モジュール1内の磁石4の光軸L方向の中心G1は、いずれも光軸L方向の位置がL0である。すなわち、駆動用磁石41と磁石4は、駆動用磁石41の光軸L方向の中心G0と磁石4の光軸L方向の中心G1とが径方向から見て重なるように配置されている。
【0043】
(ローリング支持機構)
図5は、前板21を取り外した振れ補正機能付きユニット100を被写体側L1から見た斜視図であり、
図6は被写体側L1から見たローリング支持機構30の部分拡大図(図
5の部分拡大図)である。また、
図7は、前板21を取り外した振れ補正機能付きユニット100を像側L2から見た斜視図であり、
図8は像側L2から見たローリング支持機構30の部分拡大図(
図7の部分拡大図)である。
図5、
図7に示すように、ローリング支持機構30は、光軸L周りの複数位置に設けられている。本形態では、ローリング支持機構30は、光軸Lと直交し且つX軸方向およびY軸方向に対して所定角度傾いた第1軸線R1上の2箇所、および、光軸Lと直交し且つ第1軸線R1と交差する第2軸線R2上の2箇所に設けられている。
【0044】
各ローリング支持機構30は、可動枠11に設けられたローリング支持機構固定部17と、固定枠22に設けられたローリング支持機構配置部28と、可動枠11と固定枠22とを接続する弾性部材31とを備える。ローリング支持機構固定部17は、可動枠11の4隅から突出する凸部であり、ローリング支持機構配置部28は、固定枠22の4隅に形成された凹部である。
【0045】
本形態では、ローリング駆動機構40を挟んでX軸方向(第1方向)で対向する2組のローリング支持機構30の間隔が、Y軸方向(第2方向)で対向する2組のローリング支持機構30の間隔より狭い。このように、ローリング支持機構30の間隔が狭い側(+Y方向および-Y方向)にローリング駆動機構40を配置することにより、振れ補正機能付きユニット100のX軸方向(第1方向)の寸法を小さくすることができ、X軸方向の薄型化を図ることができる。
【0046】
すなわち、可動枠11においては、光軸を中心とする周方向の複数位置に設けられたローリング支持機構固定部17のうち、X軸方向(第1方向)で対向する2箇所のローリング支持機構固定部17の間隔よりも、X軸方向と直交するY軸方向(第2方向)で対向する2箇所のローリング支持機構固定部17の間隔の方が大きくなるように、4箇所のローリング支持機構固定部17が配置される。そして、ローリング駆動機構固定部16は、光軸Lを挟んでY軸方向(第2方向)で対向する位置に設けられている。このように、ローリング支持機構固定部17の間隔が狭い側である+Y方向および-Y方向にローリング駆動機構固定部16を配置することによって、可動枠11のX軸方向(第1方向)のサイズを小さくすることができる。
【0047】
図9は弾性部材31の斜視図である。弾性部材31は、板材を折り曲げて板バネとして形成している。
図9に示すように、弾性部材31は光軸L方向に延びるU字形状の板バネの端部を光軸Lと直交する方向に折り曲げた形状であり、一端部32と、他端部33と、第1弾性部34と、第2弾性部35とを備えている。第1弾性部34は光軸L方向に延びており、第2弾性部35は光軸Lと直交する方向に延びている。
【0048】
第1弾性部34は、光軸L方向に沿って平行に延びる第1部分341および第2部分342と、第1部分341と第2部分342とを繋ぐ半円状の湾曲部343を備える。第1部分341、第2部分342、および湾曲部343は平板状であり、同一面上に位置する。第1部分341および第2部分342は、湾曲部343と繋がる側とは反対側の側が、それぞれ、光軸L方向と直交する方向に延びる第2弾性部35と繋がっている。第1部分341と接続された第2弾性部35は一端部32と繋がっており、第2部分342と接続された第2弾性部35は他端部33と繋がっている。一端部32および他端部33は第2弾性部35の幅方向に延びており、第2弾性部35の端部からそれぞれ反対方向へ向かって延びている。第2弾性部35は、一端部32および他端部33の側へ向かうに従って幅が拡がる形状であり、一端部32および他端部33との接続部分の強度を高めた形状である。
【0049】
弾性部材31は、湾曲部343が被写体側L1へ突出する姿勢で配置される。
図7、図
8に示すように、一端部32および他端部33の一方は可動枠11に固定され、他方が固定枠22に固定される。
図8、
図9に示すように、一端部32および他端部33は、それぞれ、第1弾性部34の板面方向に離間した2箇所(言い換えれば、第1弾性部34が弾性変形する方向と直交する方向に離間した2箇所)に穴が形成されている。一方の穴は円形の位置決め穴361であり、他方の穴は長穴371である。固定枠22および可動枠11には、それぞれ、位置決め部362と回転規制部372が形成されている。位置決め部362と回転規制部372はいずれも凸部である。
【0050】
固定枠22と可動枠11とを組み立てる際、まず、弾性部材31を可動枠11に固定し、しかる後に固定枠22に可動枠11を挿入して弾性部材31を固定枠に固定する。弾性部材31を可動枠11に固定する際、一端部32および他端部33のいずれかに設けられた位置決め穴361に可動枠11の位置決め部362を挿入して溶着させる。次いで、長穴371に可動枠11の回転規制部372を挿入して溶着させる。これにより、弾性部材31の可動枠11に対する固定作業が完了する。次いで、固定枠22に可動枠11を挿入し、弾性部材31の位置決め穴361に固定枠22の位置決め部362を挿入して溶着させ、長穴371に固定枠22の回転規制部372を挿入して溶着させる。これにより、弾性部材31の固定枠22に対する固定作業が完了し、弾性部材31を介して固定枠22に可動枠11が保持される。このような構造により、弾性部材31に負荷が生じていない状態で固定枠22、可動枠11および弾性部材31を組み立てることができる。従って、組み立て作業が容易であり、組立性が向上する。また、固定枠22に対する可動枠11の位置精度を高めることができる。
【0051】
図7、
図8に示すように、一端部32と他端部33は、固定枠22に設けられたローリング支持機構配置部28の内面と可動枠11に設けられたローリング支持機構固定部17の外面との隙間の両側に配置される。第2弾性部35は、一端部32と他端部33から径方向と交差する方向へ延びており、第2弾性部35の板厚方向は光軸L方向を向いている。一端部32と他端部33に接続される2本の第2弾性部35のうちの1本は、ローリング支持機構固定部17の外面に形成された溝部171と光軸L方向で重なる位置に延びており、光軸L方向の変位が規制されていない。従って、少なくとも溝部171と光軸L方向で重なる第2弾性部35は光軸L方向に弾性変形可能であり、光軸L方向に弾性力を生じさせることができる。
【0052】
第2弾性部35は、落下等によって固定枠22に対して可動枠11を光軸L方向に相対移動させるような衝撃が加わった際、光軸L方向に延びる第1弾性部34の座屈を抑制でき、第1弾性部34の意図しない塑性変形を抑制できる。また、固定枠22に対して可動枠11が光軸L方向に変位した際、第2弾性部35の弾性力によって可動枠11を元の位置へ復帰させることができる。
【0053】
第1弾性部34は、第1部分341と第2部分342のうちの一方がローリング支持機構配置部28の内面に形成された溝部281に配置され、他方がローリング支持機構固定部17の外面に形成された溝部171に配置される。第1弾性部34の板厚方向は、周方向を向いている。溝部281、171は、周方向に所定の幅を備えており、固定枠22に対して可動枠11が光軸L周りに回転した際、第1弾性部34の第1部分341と第2部分342が周方向において反対側へ弾性変形することが規制されていない。従って、第1弾性部34は光軸L周り方向に弾性力を生じさせることができる。
【0054】
弾性部材31は、慣性力や衝撃等によって固定枠22に対して可動枠11が光軸L周りに回転した際、第1弾性部34の弾性力によって可動枠11を元の位置へ復帰させることができる。また、第1弾性部34は、第1部分341と第2部分342を備えているため、第1部分341と第2部分342の変形量を固定枠22に対する可動枠11の回転量の
半分にすることができる。従って、第1弾性部34に掛かる負荷を小さくできるため、衝撃に対する耐久性を高めることができ、第1弾性部34の座屈を抑制できる。
【0055】
本形態では、上記のように、光軸Lを挟んで第1軸線R1方向で対向する2箇所、および、光軸Lを挟んで第2軸線R2方向で対向する2箇所の4箇所に弾性部材31が配置される。光軸Lを挟んで第1軸線R1方向で対向する2箇所の弾性部材31は、第1弾性部34が第2軸線R2方向に弾性力を生じさせる。一方、光軸Lを挟んで第2軸線R2方向で対向する2箇所の弾性部材31は、第1弾性部34が第1軸線R1方向に弾性力を生じさせる。従って、4箇所の弾性部材31は、全体として、光軸L周り方向の弾性力を発生させることができる。
【0056】
(ストッパ部)
図5、
図6に示すように、可動枠11に設けられたローリング支持機構固定部17は、溝部171の周方向の両側に形成された凸部172、173を備える。凸部172、173の径方向外側の側面は、溝部171によって周方向に分割された第1被規制部174(
図6参照)となっている。また、ローリング支持機構固定部17の周方向の両側の側面は、周方向で反対側を向く第2被規制部175、176となっている(
図4、
図6、
図8参照)。
図6に示すように、第2被規制部175は凸部172の側面である。一方、第2被規制部176は、ローリング駆動機構固定部16に設けられた可動体側ストッパ部である。
図4、
図7に示すように、第2被規制部176は、ローリング駆動機構固定部16の磁石固定面161の周方向の両側においてY軸方向に延びる側面である。
【0057】
固定枠22は、ローリング支持機構配置部28の内面に、第1被規制部174と径方向で対向する第1規制部284と、第2被規制部175、176と周方向で対向する第2規制部285、286が設けられている。第1被規制部174および第1規制部284は、光軸Lを中心とする円弧状の曲面であり、固定枠22に対する可動枠11の第1軸線R1方向および第2軸線R2方向の変位を規制する第1ストッパ部を構成する。また、第2被規制部175、176および第2規制部285、286は、固定枠22に対する可動枠11の光軸L周り方向の変位を規制する第2ストッパ部を構成する。第2規制部286は、コイル固定部27に設けられた固定体側ストッパ部である。
図7、
図8に示すように、第2規制部286は、コイル固定部27の周方向の両側においてY軸方向に延びる側面である。
【0058】
ローリング支持機構固定部17の凸部172は、光軸L方向の一方側(被写体側L1)を向く端面である第3被規制部177(
図3参照)と、光軸L方向の他方側(像側L2)を向く端面である第3被規制部178(
図4参照)を備える。
図3、
図4に示すように、固定枠22は、ローリング支持機構配置部28の内面の像側L2の端部から内周側へ突出する第3規制部287を備える。凸部172は、光軸L方向から見て前板21および第3規制部287と重なっており、第3被規制部177と前板21とが光軸L方向で対向し、第3被規制部178と第3規制部287とが光軸L方向で対向する。従って、前板21、第3規制部287、および第3被規制部177、178は、固定枠22に対する可動枠11の光軸L方向の変位を規制する第3ストッパ部を構成する。
【0059】
(本形態の主な効果)
以上のように、本形態の振れ補正機能付きユニット100は、ローリング駆動機構40およびローリング支持機構30を備えており、光学モジュール1を保持可能な可動体10を光軸L回りに回転させることができる。従って、ローリング方向の振れ補正を行うことができるので、光学モジュール1による撮影画像の乱れを抑制できる。また、ローリング駆動機構40を構成する駆動用磁石41および駆動用コイル42は、光学モジュール1の配置空間2に対して径方向の外側に配置されるため、光学モジュール1の配置空間2とロ
ーリング駆動機構40とを光軸L方向にずらして配置する必要がない。従って、ローリング駆動機構40を設けたことによる光軸L方向のサイズの増大を抑制できる。よって、振れ補正機能付きユニット100の光軸L方向の薄型化を図ることができる。さらに、ローリング駆動機構40は、駆動用磁石41と駆動用コイル42とが光軸L方向で対向するため、ローリング駆動機構40の磁界が光学モジュール1の配置空間へ入りにくい。従って、可動体10とローリング駆動機構40との磁気干渉を抑制できる。
【0060】
本形態では、ローリング駆動機構40は、径方向から見て可動体10と重なる。また、ローリング支持機構30は、径方向から見て可動体10およびローリング駆動機構40と重なる。このように構成すると、ローリング駆動機構40を設けたことによる光軸L方向のサイズの増大、および、ローリング支持機構30を設けたことによる光軸L方向のサイズの増大を抑制できる。従って、振れ補正機能付きユニット100の光軸L方向の薄型化を図ることができる。
【0061】
本形態では、光学モジュール1が磁石4およびコイル5からなる磁気駆動機構を備えているが、光学モジュール1内の磁石4の光軸L方向の中心G1と駆動用磁石41の光軸L方向の中心G0とが径方向から見て重なっている。このように、駆動用磁石41と光学モジュール1内の磁石4の光軸L方向の位置を同じにしておけば、駆動用磁石41から出る磁束の方向は駆動用磁石41から光学モジュール1内の磁石4へ向かう方向と直交する方向となる。従って、駆動用磁石41から出る磁束が光学モジュール1内の磁石4に届くおそれが少ないので、ローリング駆動機構40と光学モジュール1との磁気干渉を抑制できる。なお、光学モジュール1が磁石4を内蔵していない場合においても、光学モジュール1内に磁界の影響を受ける部品が配置されている場合には、当該部品に対する磁気干渉を抑制できる。
【0062】
本形態の可動体10は、駆動用磁石41が配置されるローリング駆動機構固定部16を備え、ローリング駆動機構固定部16は、可動体側ストッパ部である第2被規制部176を備える。また、固定体20は、駆動用コイル42が配置されるコイル固定部27を備え、コイル固定部27は、固定体側ストッパ部である第2規制部286を備える。このように、ローリング駆動機構40が固定される部位に、それぞれ、可動体側ストッパ部と固定体側ストッパ部とを設けて光軸L周りに当接するストッパ機構を構成することにより、別途ストッパ部材を設ける場合と比較して部品点数の増大を抑制できる。従って、可動体10および固定体20の構造を簡素化できる。
【0063】
本形態では、駆動用コイル42は固定体20に配置され、駆動用磁石41は可動体10に配置される。従って、駆動用コイル42に給電するための配線部材を可動体10に設ける必要がないので、配線部材が動くスペースを確保する必要がなく、配線が容易である。また、可動体10の動作時に配線部材に応力がかからないので、応力による振れ補正の精度低下を防止でき、精度良くローリング補正を行うことができる。また、振れ補正の精度低下を防止するための制御や電力を必要としない。
【0064】
なお、本発明は、駆動用コイル42を可動体10に配置し、駆動用磁石41を固定体20に配置した構成に適用することも可能である。
【0065】
本形態では、ローリング駆動機構40は、光軸Lを挟んで反対側の2箇所に配置されている。従って、ローリング駆動機構40を1箇所のみに設ける場合と比較して、可動体10の重心が偏ることを抑制できる。従って、重心の偏りに起因する振れ補正の精度低下を抑制でき、精度良くローリング補正を行うことができる。また、重心の偏りを抑制するためにカウンターウェイトを設ける必要がない。さらに、ローリング駆動機構40を複数設けることにより、大きなトルクで振れ補正を行うことができる。なお、ローリング駆動機
構40の数は2に限定されるものではなく、3以上であってもよい。例えば、等角度間隔の4箇所に設けてもよい。
【0066】
本形態では、ローリング支持機構30は、光軸Lを中心とする周方向の複数位置に設けられ、複数位置は、光軸L方向と直交するX軸方向(第1方向)で対向する位置、および光軸L方向およびX軸方向と直交するY軸方向(第2方向)で対向する位置を含む。そして、X軸方向(第1方向)で対向するローリング支持機構30の間隔は、Y軸方向(第2方向)で対向するローリング支持機構30の間隔より小さく、ローリング駆動機構40は、光軸Lを挟んでY軸方向(第2方向)で対向する位置に設けられている。このようにすると、ローリング駆動機構40を設けたことによってX軸方向(第1方向)のサイズを増大させることがないので、振れ補正機能付きユニット100のサイズを、ローリング駆動機構40が対向する方向と直交するX軸方向(第1方向)で小さくすることができる。従って、光軸L方向の薄型化に加えて、X軸方向の小型化を図ることができる。
【0067】
本形態では、固定体20は、光軸L方向に凹んだ配線用凹部29が設けられた固定枠22と、駆動用コイル42と接続されるフレキシブルプリント基板50と、を備え、配線用凹部29は、配線用凹部29に配置されるフレキシブルプリント基板50に搭載されるホール素子60と駆動用磁石41との距離が予め定めた距離となる形状であることが好ましい。このようにすると、フレキシブルプリント基板50が固定枠22から光軸L方向に飛び出すことを抑制できる。従って、振れ補正機能付きユニット100の光軸L方向の薄型化を図ることができる。また、配線用凹部29にフレキシブルプリント基板50を配置することによってホール素子60を位置決めできるため、ホール素子60の位置決めが容易である。
【符号の説明】
【0068】
1…光学モジュール、2…配置空間、3…振れ補正用駆動機構、4…磁石、5…コイル、10…可動体、11…可動枠、12…第1枠部、13…第2枠部、14…第3枠部、15…第4枠部、16…ローリング駆動機構固定部、17…ローリング支持機構固定部、20…固定体、21…前板、22…固定枠、23…第1固定枠部、24…第2固定枠部、25…第3固定枠部、26…第4固定枠部、27…コイル固定部、28…ローリング支持機構配置部、29…配線用凹部、30…ローリング支持機構、31…弾性部材、32…一端部、33…他端部、34…第1弾性部、35…第2弾性部、40…ローリング駆動機構、41…駆動用磁石、42…駆動用コイル、50…フレキシブルプリント基板、51…第1矩形部分、52…第2矩形部分、53…接続部分、54…引き出し部分、60…ホール素子、100…振れ補正機能付きユニット、121…突出部、122…凹部、161…磁石固定面、171…溝部、172、173…凸部、174…第1被規制部、175、176…第2被規制部、177、178…第3被規制部、211…開口部、231…切り欠き、251…切り欠き、271…コイル固定面、272…凹溝、281…溝部、284…第1規制部、285、286…第2規制部、287…第3規制部、291…第1凹部、292…第2凹部、293…第3凹部、341…第1部分、342…第2部分、343…湾曲部、361…位置決め穴、362…位置決め部、371…長穴、372…回転規制部、G0…駆動用磁石の光軸方向の中心、G1…光学モジュール内の磁石の光軸方向の中心、L…光軸、L1…被写体側、L2…像側、R1…第1軸線、R2…第2軸線