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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】通信装置、及び通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04M 1/00 20060101AFI20221201BHJP
   E21F 17/18 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
H04M1/00 H
E21F17/18
H04M1/00 S
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018196357
(22)【出願日】2018-10-18
(65)【公開番号】P2020065186
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】宇野 昌利
(72)【発明者】
【氏名】宮瀬 文裕
(72)【発明者】
【氏名】谷川 将規
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕司
【審査官】松原 徳久
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-308818(JP,A)
【文献】特開2016-122980(JP,A)
【文献】特開2009-165193(JP,A)
【文献】特開2002-095035(JP,A)
【文献】特開2004-301875(JP,A)
【文献】特開2006-260269(JP,A)
【文献】特開2012-016040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M1/00
1/24-1/82
99/00
E21F1/00-17/18
G06F3/01
3/048-3/04895
G10L15/00-17/26
H04B7/24-7/26
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信を行う通信部と、
使用者の声を集音する音声入力部と、
前記音声入力部から集音された音声を判別する判別部と、
前記判別部が、工事現場における使用頻度の低い通信開始単語を判別したことを条件として、通信相手である他の通信装置との間で通信を開始する通信開始部と
を備え
前記工事現場における使用頻度の低い登録開始単語を判別した後に、音声によるグループ作成を行う通信装置。
【請求項2】
前記通信部は、前記通信開始単語に付加された名称に基づいて、通信を開始する他の通信部を特定する
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記判別部が、工事現場における使用頻度の低い通信終了単語を判別した際に、前記他の通信装置との間の通信を終了する
請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記グループ作成では、個人または既存のグループを任意に組み合わせる
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記グループ作成では、既存のグループを個人またはグループに分離する
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記グループ作成では、複数の既存のグループに共通する個人を前記既存のグループから離脱させる
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記グループ作成では、既存のグループに共通する個人を他のグループに参加させる
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項8】
請求項1から請求項のうちのいずれか1項に記載の通信装置を有する通信システムであり、
前記通信装置と他の通信装置との間の通信を中継する中継装置
を有する通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事等の土木工事において、作業員の現在地をリアルタイムで検知できるようにしたシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このシステムでは、例えば、作業員が携帯電話機(携帯端末)を携帯しており、携帯電話機を介して事務所や作業員同士で連絡を取り合うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-327062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、土木工事の現場では、掘削や重機による騒音が発生しており、携帯端末の音や話し声などが聞き取りにくく、その内容が伝わらないことがある。また、作業員は、手袋をして作業を行っており、携帯端末に出るときには、手袋を外すことが多い。さらに、作業員が携帯端末を利用して特定の相手に連絡を取ろうとする際にも、手袋を外して携帯端末を操作することが要求される。このため、電話に出る際に、作業員は、あわてて手袋を外し、携帯端末や手に持った重要書類などを落とすこともあり、さらには携帯端末を破損させることもあった。また、工事現場では、工事状況が日々変化し、作業員の入れ替わりも少なくない。例えば、同じ作業に携わる作業員同士では、共通の通話を行う必要が生じることが多いので、同じ作業に携わる作業員でグループを構成するが、作業員の入れ替わりにより、グループの再編成や新たなグループの作成が頻繁に行われる。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、作業員等が手袋を外すことなく、特定の相手に対して連絡を取ることができるとともに、グループの構成員の変更や新たなグループの作成を容易に行うことができる通信装置、及び通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る通信装置は、通信を行う通信部と、使用者の声を集音する音声入力部と、前記音声入力部から集音された音声を判別する判別部と、前記判別部が、工事現場における使用頻度の低い通信開始単語を判別した際に、通信相手である他の通信装置との間で通信を開始する通信開始部とを備え、前記工事現場における使用頻度の低い登録開始単語を判別した後に、音声によるグループ作成を行う
【0007】
本発明の一態様に係る通信システムは、前記通信装置と他の通信装置との間の通信を中継する中継装置を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業員等が手袋を外すことなく、特定の相手に対して連絡を取ることができるとともに、グループの構成員の変更や新たなグループの作成を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る通信システムの概要の説明図である。
図2】本発明の実施形態に係るハンディスピーカ及び通信装置の概要を示す機能ブロック図である。
図3】通信装置の動作を説明するフローチャートである。
図4】通信の相手先を説明するための図である。
図5】相手先と接続時の発生内容の関係を説明する図である。
図6】グルーピング時の認識音声と実行内容の関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る通信システム1の概要の説明図である。図1に示すように、土木工事現場であるトンネル10内では、複数の作業員20が作業を行っている。通信システム1は、複数のハンディスピーカ30と、複数の通信器40と、を備えている。複数の各作業員20は、ハンディスピーカ30及び通信器40をそれぞれ1台ずつ保持している。ハンディスピーカ30と通信器40とによって通信装置が構成される。
【0012】
また、トンネル10内には、各作業員の通信器40の通信を中継する中継装置として無線機器15が設置されている。無線機器15は、例えばWiFiと称されるIEEE802.11の無線LAN(Local Area Network)規格の通信機器であり、無線LANアンテナ11、無線LANルーター12等からなる。
【0013】
無線LANアンテナ11は、トンネル10内で、通信器40からの電波を送受信する。無線LANルーター12は、ネットワーク14への接続を行う。ネットワーク14はIP(Internet Protocol)ネットワークであり、外部のインターネットと接続されている。また、トンネル10の外には、作業の指示や管理を行う監督員21が待機している。監督員21も同様に、通信器40を保持している。監督員21は、例えば各工事現場に1人ずつ配置されている。このため、図示しない他の工事現場においても監督員21が配置されており、異なる場所で同時に工事が施工されているときには、複数の監督員21が同時に働いている。なお、ネットワーク14は、組織内だけで完結した所謂イントラネットの構成でもよい。
【0014】
このように、本実施形態では、トンネル10内の各作業員20やトンネル外の監督員21等の工事関係者は、ハンディスピーカ30及び通信器40を保持しており、このハンディスピーカ30及び通信器40により、トンネル10内の作業員20やトンネル外の監督員21は、無線機器15を中継装置として、相互に話し合うことができる。作業員20は、ハンディスピーカ30を自身の耳部に取り付けている。また、作業員20は、ストラップなどにより、自身の衣服に通信器40を取り付けている。このため、作業員20及び監督員21は、ハンディスピーカ30や通信器40を所持することなく通信装置による通信を行うことができる。
【0015】
また、複数の監督員21が同時に作業を行っているときには、複数の作業員20同士、あるいはトンネル10内の作業員20、さらには、他の工事現場で働く作業員の間でも相互に話し合うことができる。また、通信器40は、音声コマンドによる通話制御機能により、ハンズフリーで操作できる。
【0016】
通信器40は、スマートフォンのような汎用の携帯端末に、通話プログラムをインストールすることで実現できる。通話プログラムは、以下のような機能を有する。
【0017】
(1)IP電話機能:ローカルネットワーク内でグループ間通話および1対1通話の双方が行える。
(2)音声コマンドによる通話制御機能:音声認識技術を活用した音声コマンドによる操作により、ハンズフリーで、通話のオン/オフ、通話相手の呼び出しやその応答、音量調整等が行える。
【0018】
図2は、本発明の実施形態に係るハンディスピーカ及び通信装置の概要を示す機能ブロック図である。ハンディスピーカ30は、作業員20や監督員21の耳に取り付けて使用される。図2に示すように、ハンディスピーカ30は、例えば、スピーカ31と、マイクロホン(音声入力部)32と、近距離無線通信部33と、を備える。ハンディスピーカ30は、図示しない筐体及びフックを備えており、筐体の内部には、スピーカ31、マイクロホン32、及び近距離無線通信部33が内蔵されている。また、ハンディスピーカ30は、フックを作業員20の耳に引っ掛けることにより、作業員20または監督員21の耳に保持される。
【0019】
スピーカ31は、作業員20または監督員21の耳に対して音を出力する。マイクロホン32は、使用者となる作業員20または監督員21の口から発せられる声(使用者の声)を集音する。近距離無線通信部33は、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信により、スピーカ31及びマイクロホン32を通信器40にワイヤレスで接続する。
【0020】
通信器40は、例えば、信号制御部401と、近距離無線通信部402と、通信部403と、操作制御部404と、表示部405と、タッチパネル406と、データ記憶部407とを備える。
【0021】
信号制御部401は、音声信号制御部(判別部)410と、通信制御部(通信開始部)420と、を備える。音声信号制御部410は、IP電話機能により、通信相手である通信器40から送信させる音声信号をスピーカ31から出力させ、マイクロホン32から集音した音声信号を通信相手の通信器40に送信する制御を行う。また、通信制御部420は、音声信号制御部410によるマイクロホン32から集音された音声の判別結果に基づいて、通話開始から通話終了までの制御を行う。
【0022】
近距離無線通信部402は、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信により、スピーカ31やマイクロホン32を通信器40にワイヤレスで接続する。通信制御部420は、音声信号制御部410が接続開始呼称(通信開始単語)を判別したことを条件として、他の通信器40との通信を開始する。
【0023】
通信部403は、無線LANの送受信制御を行い、相手側の通信器40に音声信号の送信処理を行うとともに、相手側の通信器40から送られてきた音声信号の受信処理を行う。操作制御部404は、音声認識技術を活用した音声コマンドによる操作により、ハンズフリーで、通話のオン/オフ、通話相手の呼び出しやその応答、音量調整等を行う。表示部405は、有機EL(Electro Luminescence)やLCD(Liquid Crystal Display)等のうちいずれかの表示パネルからなり、各種情報を表示することが可能である。タッチパネル406は、表示部405上に積層配置されており、座標位置を入力したり、種々の操作を行ったりすることが可能である。
【0024】
データ記憶部407は、RAM(Random access memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等で構成され、各種のプログラムや各種のデータを記憶する。また、データ記憶部407は、発話内容と実行する対象のコマンドとを対応付けて予め記憶している。例えば、「もしもし」という接続開始呼称には発呼コマンドが対応付けられており、「ガチャン」という接続終了呼称(通信終了単語)には終了コマンドが対応付けられている。
【0025】
接続開始呼称及び接続終了呼称は、例えば、工事現場における使用頻度の低い用語(単語)であり、通常、工事現場で使用することない用語である。その一方で、工事現場で汎用される用語、例えば「きりは」「こうぐち」「トンネル」「くるま」「くずす」などの用語は用いないようにした方がよい。また、工事現場の属性によって、接続開始呼称及び接続終了呼称に用いない用語を決定してもよい。例えば、工事現場がトンネルである場合には上記の用語であり、工事現場が橋梁である場合には、「つなげる」「かける」「けた」などである。
【0026】
また、データ記憶部407は、作業員名、監督員名、グループ名等と他の通信器40及びその電話番号とを対応付けて登録して記憶している。データ記憶部407は、この対応付けにおいて、グループ名等の複数の対象者を含んでいる場合には、複数の通信器40及びその電話番号を対応付けて登録して記憶している。作業員名、監督員名、グループ名等と他の通信器40の電話番号との対応付けは、例えば、工事現場に作業員が集合する時間、あるいはその数分または数時間程度前に行う。なお、作業員名及び監督員名については、例えばその者の姓とする。
【0027】
工事現場では、例えば日替わりもしくは一定期間ごとに作業員や監督員が入れ替わることが多い。このため、例えば、毎日、あるいは作業員や監督員の入れ替わりがあるごとに作業員名、監督員名、グループ名等と他の通信器40とその電話番号との対応付けを行い、グループの構成員の変更や新たなグループの作成を行う。例えば、まず、個々の作業員20及び監督員21は、自己の名前と、自己が所持する通信器40の電話番号とついて対応付けを行う。続いて、工事現場ごとのグループ、工事現場における作業員のグループ、監督員のグループといったグループ分けを行い、グループ名を付す。そして、作業員20及び監督員21は、グループ名と各グループに属する工事関係者が所持する通信器40の電話番号との対応付けを行う。これらの対応付けも音声に基づいて行われる。
【0028】
したがって、1つのグループには、複数の通信器40およびその電話番号が対応付けられる。また、工事に参加する回数の多い作業員20及び監督員21や汎用されるグループについては、対応付けを行った情報を登録(記憶)しておき、登録(記憶)された情報の中から選択することで対応付けを行うようにしてもよい。
【0029】
次に、通信器40の動作について説明する。図3は、通信装置の動作を説明するフローチャートである。通信器40は、他の通信器40との通信が行われていないときに、下記の処理を行う。他の通信器40との通信が行われていないときに、他の通信装置から着信があった場合には、信号制御部401は、その着信をスピーカ31から出力する。
【0030】
図3に示すように、通信器40は、接続開始呼称の音声コマンドが入力されたか否かを判定する(ステップS1)。具体的に、通信器40は、作業員20または監督員21によって「もしもし」との発話がマイクロホン32を通じて音声信号制御部410に入力されたか否かを判定する。
【0031】
接続開始呼称の音声コマンドが入力されていないと判定した場合(ステップS1:NO)、通信器40は、接続開始呼称の音声コマンドが入力されるまでステップS1の処理を繰り返す。接続開始呼称が入力されたと判定した場合(ステップS1:YES)、通信器40は、音声信号制御部410において、音声コマンドを音声認識し、音声認識した結果において接続開始呼称を検出した場合に接続開始呼称が入力されたと判定する。
【0032】
通信器40は、発呼コマンドを実行すると、音声信号制御部410において、発話開始呼称に付加された名称を音声認識技術によって取得する。音声信号制御部410は、発話開始呼称に付加された名称を取得した後、取得した呼称が予め電話番号と対応付けした作業員名、監督員名、グループ名等であるかを特定し、特定した作業員名等の通話相手が所持する通信装置に発呼する(ステップS2)。
【0033】
例えば「もしもしBさん」との音声を認識した場合には、発話開始呼称に付加された通話相手として、作業員「B」を音声認識により判別する。続いて、通信制御部420は、通話の相手先として「B」を特定し、データ記憶部407から作業員Bの電話番号を読み出し、作業員Bの電話番号に対して呼び出し(発呼)を実行する。こうして、信号制御部401は、作業員Bが所持する通信器40に対する接続を開始する。
【0034】
音声信号制御部410は、「もしもしBさん」のうちの「もしもしB」の部分で作業員Bの電話番号の読み出しを開始する。このため、「もしもしB」のあとに「さん」などの敬称が付された場合でも、「B」の電話番号を呼び出すことができる。なお、敬称の部分についての認識は行わないので、「Bさん」の部分に代えて「B君」「Bちゃん」「B部長」などの敬称を付した場合でも、作業員「B」の電話番号を呼び出す。
【0035】
また、作業員20または監督員21が「もしもし作業員グループ」との音声を発して、音声信号制御部410が、接続開始呼称に付加された名称として「作業員グループ」との音声を認識した場合には、グループ名として「作業員グループ」を判別する。音声信号制御部410がグループ名として「作業員グループ」を音声認識により判別した、通信制御部420は、作業員グループに含まれる作業員全員の電話番号をデータ記憶部407から読み出し、作業員全員の電話番号に対して順次呼び出し(発呼)を実行する。
【0036】
発呼コマンドが実行されると、通信制御部420は、通話相手を特定して呼出を行った後、呼び出した通信装置に対する通話処理を行う。通信制御部420は、通話処理として、発呼コマンドに応じて相手側の通信器40が着信した後、相手側の通信器40が応答すると、通信器40同士での通話を可能とする。例えば、相手先が作業員Bである場合には、作業員Bが所持する通信器40が応答することにより、通信制御部420は、作業員Bの通信器40との間で通話を可能とする。また、相手先が作業員グループである場合には、作業員グループのうちの少なくとも一人が所持する通信器40が応答することにより、応答を行った通信器40を所持する作業員の通信器40との間で通話を可能とする。
【0037】
通話処理を行う間、通信器40は、信号制御部401の音声信号制御部410において、音声を音声認識する。音声信号制御部410は、音声認識の過程において、通話終了呼称が入力されたか否かを判定する(ステップS3)。通話終了呼称が入力されていないと判定した場合(ステップS3:NO)、信号制御部401は、通話処理を継続する。
【0038】
通話終了呼称が入力されたと音声信号制御部410が判定した場合(ステップS3:YES)、信号制御部401の通信制御部420は、通話終了処理を行う(ステップS4)。通話終了処理では、終了コマンドを実行し、現在通信を行っている他の通信器40との通信を終了する。また、通話終了処理では、通話終了信号を他の通信器40に送信する。他の通信器40から通話終了信号を受信したときにも、通信器40は、現在通信を行っている他の通信器40との通信を終了する。
【0039】
以上説明した通信システム1では、複数の通信器40によって複数の作業員20及び監督員21が通信可能となっている。また、「もしもし」といった発話開始呼称を作業員20または監督員が通信器40に向けて発音することにより、他の作業員20等が所持する通信器40との間で通話が可能となる。また、通信器40の接続先は、接続開始呼称に続いて発せられた音に基づいて定められる。具体的に、作業員20等が通信器40に対して、接続開始呼称につづいて「Bさん」の名前を付けて「もしもしBさん」と発することにより、作業員20等が所持する通信器40から作業員Bが所持する通信器40に接続が開始されて通話が可能となる。
【0040】
また、接続開始呼称に付加された相手先の名称に応じて、個人が所持する通信器40に向けて接続を開始させたり、所定のグループに含まれる全員の通信器40に向けて接続を開始させたりすることができる。図4は、通信の相手先を説明するための図である。例えば、図4(A)に示すように、工事現場で3人の作業員20A~作業員20Cが作業を行っており、3か所の工事現場のそれぞれの監督員として3人の監督員21D~21Fがいるとする。
【0041】
また、作業員20A~20C、監督員21D~21Fのそれぞれの名前が「A」「B」「C」「D」「E」「F」であり、各作業員20A~20C、監督員21D~21Fが所持する通信器40には、それぞれの名前が対応付けられている。また、作業員20A~20Cは「作業員グループ」に対応付けられており、監督員21D~21Fは、「監督員グループ」に対応付けられている。
【0042】
これらの対応付けが行われているとき、例えば、図4に示すように、監督員21Dが「もしもしAさん」と発声した場合、図5(A)に実線で示すように、作業員20Aが所有する通信器40に向けての接続が開始される。また、監督員21Dが「もしもし作業員」と発声した場合、図5(A)に実線及び破線で示すように、全ての作業員である作業員20A~作業員20Cが所持する通信器40に向けての接続が開始される。
【0043】
また、監督員21Dが「もしもし全員」と発声した場合、図5(A)に実線、破線、及び一点鎖線で示すように、全ての作業員20A~20C及びすべての他の監督員21E,21Fが所持する通信器40に向けての接続が開始される。このように、接続開始呼称のあとに、相手先の名称を発生することにより、それぞれの接続開始に向けた処理が行われる。
【0044】
また、監督員21Dが「もしもし監督グループ」と発声した場合、図5(B)に示すように、監督員グループの間でグループモードによる通話が可能となる。監督員グループの間でのグループモードによる通話では、監督員21D~監督員21Fのすべての監督員が、それぞれの通話を聴くことができる。例えば、監督員21Dと監督員21Eの会話を監督員21Fが聞くことができる。
【0045】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る通信システム1では、作業員20や監督員21が音声を発するだけで他の工事関係者と通信器40による通信を行うことができる。具体的には、スピーカ31に「もしもし〇〇」と話しかけるだけで「〇〇」が所持する他の通信器40との通信を開始することができる。さらに「ガチャン」と話すだけ通信を終了できる。したがって、作業員20等は、例えばハンディスピーカ30を耳部に取り付けて、通信器40を衣服に取り付けているので、通信器40やスピーカなどを所持することなく通信を行うことができる。また、「もしもし」に続いて、相手先の名前を発生するだけで相手先の相手の通信器40と通信が可能となる。したがって、作業員等が手袋を外すことなく、特定の相手に対して連絡を取ることができる。
【0046】
また、「もしもし」「ガチャン」などの接続開始呼称及び接続終了呼称は、いずれも工事現場では使用することが少ない単語である。このため、工事中に発せられる他の作業員の言葉等にとって、通信が不意に開始してしまったり終了してしまったりすることを抑制できる。また、音声に基づいてグループの構成員の変更や新たなグループの作成ができるので、グループの構成員の変更や新たなグループの作成を容易に行うことができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0048】
例えば、上記の例では、作業員20及び監督員21等の工事関係者が通信器40を所持するが工事関係者以外の職員が通信器40を所持するようにしてもよい。例えば、工事現場から離れた場所にいる事務作業員や営業担当者が通信器40を所持するようにしてもよい。また、工事現場から離れた研究所において、工事に関する研究を行う研究者等が通信器40を所持するようにしてもよい。また、工事関係者以外の職員が利用する通信器は、工事関係者が利用するように、身体に保持されるものでなくてもよいし、携帯端末以外の固定端末でもよい。
【0049】
また、上記の例では、無線機器15を介して各作業員の通信器40の通信を行うようにしているが、各作業員の通信器40同士が直接通信を行うようにしてもよい。この場合、例えば、P2P(ピアツーピア)通信やアドホック通信(アドホックモード)による通信を行うようにしてもよい。
【0050】
また、信号制御部401は、音声を利用したAIを活用する機能を有していてもよい。例えば、「Turn up the volume」など音声に音量増加コマンドを対応付けておき、信号制御部401が「Turn up the volume」の音声を認識したときにスピーカ31の出力音を大きくするようにしてもよい。この場合、「Turn up the volume」などの音声で通信装置に動作の指示をすることで、音声だけで、ボリュームをコントロールできる。また、スピーカ31の出力音の周波数レベルを修正し、500Hz以下の低音域や20000Hz以上の高音域をカットするようにしてもよい。これらの低音域及び高音域をカットすることにより、人間が聞き取りやすい音声を出力できる。
【0051】
また、グループ作成(以下「グルーピング」という)やグループ名等と通信器40及びその電話番号との対応付けを行う際に、信号制御部401における音声認識を活用するようにしてもよい。グルーピングに音声認識を活用する場合、通信器40は、例えば、グルーピングを行うメンテナンスモードと、通信器40を介したグループ間での会話を可能とする会話モードを備えていてもよい。
【0052】
図6は、グルーピング時の認識音声と実行内容の関係を説明する図である。例えば、グルーピングにあたり、通信器40は、「グルーピング開始」の音声に対応付け開始コマンドを対応付けておき、「グルーピング終了」の音声に対応付け終了コマンドを対応付けておく。対応付け開始コマンドには、登録開始単語が対応付けられ、対応付け終了コマンドには、登録終了単語が対応付けられている。登録開始単語及び登録終了単語は、通信開始用語同様、工事現場における使用頻度が低い語である。ここでの登録開始単語は「グルーピング開始」であり、登録終了単語は「グルーピング終了」である。登録開始単語や登録終了単語は、工事現場における使用頻度が低い語であれば、他の語であってもよい。また、登録開始単語や登録終了単語は、通信開始用語や通信終了単語等と異なるが、登録開始単語等と通信開始用語等が共通していてもよい。
【0053】
通信器40は、グルーピングを開始した後、グループ名及び構成員の名を示す音声を認識して、グルーピングを行い、グルーピングを終了する。グルーピングでは、グループ名及び構成員の登録を行う。例えば、図6に示すように、監督員21Dが登録者となったグルーピングを行う場合、監督員21Dが「グルーピング開始」と発言して通信器40がその音声を認識することにより、通信器40は、グルーピングを開始する。
【0054】
また、監督員21Dが「グループ名 Xチーム」と発言して通信器40がその音声を認識すると、通信器40は、グループ名として「Xチーム」をデータ記憶部407に登録して記憶する。また、監督員21Dが「グループ構成 Aさん、Bさん、Pチーム」と発言して通信器40がその音声を認識すると、通信器40は、グループ名として「Aさん」「Bさん」及び「Pチーム」の構成員(作業員20及び監督員21等)をXチームの構成員としてデータ記憶部407に登録して記憶する。Pチームは、予め通信器40のデータ記憶部407に記憶されたグループである。
【0055】
また、監督員21Dが「グルーピング終了」と発言して通信器40がその音声を認識することにより、通信器40は、グルーピングを終了する。なお、グループ名は、任意の名称でもよいし、監督員21の氏名を含む名称でもよいし、部署名などでもよい。このようにして、通信器40は、グルーピングを行うことができるようにしてもよい。
【0056】
グルーピングは、例えば、複数の作業員20や監督員21等の個人を組み合わせて行われるが、他の態様で行われてもよい。例えば、複数の個人と既存のグループを組み合わせてもよいし、複数の既存のグループを組み合わせてもよい。あるいは、既存のグループを複数の個人またはグループに分離して新たなグループとしてもよい。また、複数のグループに共通して含まれている個人やグループを離脱させ、または参加させて新たなグループとしてもよい。
【0057】
通信器40は、このようなグルーピングを行った後に、メンテナンスモードから会話モードに移行して、複数の通信器40の間等で通信を行うようにしてもよい。
【0058】
また、上記の例では、「もしもし」という接続開始呼称に付加された作業員名または監督員名は姓としているが、姓以外の呼称でもよく、例えば、姓名でもよいし名でもよい。また、ニックネームなどでもよい。また、特定の条件があるときに、姓名の特性を変えるようにしてもよい。例えば、作業員に佐藤が2名、山本が1名いる場合、佐藤の2名については作業員名を姓名とし、山本については作業員名を姓としてもよい。
【0059】
また、上記の例では、作業員20等の耳部に取り付けて使用するハンディスピーカ30を用いているが、他のスピーカ装置を用いてもよい。例えば、ヘルメットに装着されるスピーカ装置を用いてもよい。また、マイクロホン32は口から発せられる声を集音するだけでなく、骨伝導マイク等により頭部の振動を集音するようなものでもよい。
【0060】
なお、通信システム1の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0061】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【符号の説明】
【0062】
1…通信システム、10…トンネル、11…アンテナ、12…ルーター、14…ネットワーク、15…無線機器(中継装置)、20,20A~20C…作業員、21,21D~21F…監督員、30…ハンディスピーカ、31…スピーカ、32…マイクロホン(音声入力部)、33…近距離無線通信部、40…通信器、401…信号制御部、403…通信部、410…音声信号制御部(判別部)、420…通信制御部(通信開始部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6