(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】ブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
B60T 8/17 20060101AFI20221201BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20221201BHJP
B62L 3/02 20060101ALI20221201BHJP
B60T 13/20 20060101ALI20221201BHJP
F16D 65/18 20060101ALI20221201BHJP
B62K 19/38 20060101ALI20221201BHJP
F16D 121/04 20120101ALN20221201BHJP
F16D 121/24 20120101ALN20221201BHJP
【FI】
B60T8/17 B
B60T13/74 E
B62L3/02 D
B60T13/20
F16D65/18
B62K19/38
F16D121:04
F16D121:24
(21)【出願番号】P 2018216880
(22)【出願日】2018-11-19
【審査請求日】2021-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 康博
(72)【発明者】
【氏名】高山 仁志
(72)【発明者】
【氏名】名合 大輔
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-308058(JP,A)
【文献】特表2006-513904(JP,A)
【文献】特開2010-228713(JP,A)
【文献】特開2015-101220(JP,A)
【文献】特開2011-259682(JP,A)
【文献】特開2011-255841(JP,A)
【文献】特開平11-070863(JP,A)
【文献】特開2016-203932(JP,A)
【文献】特開平05-060157(JP,A)
【文献】特表2017-516713(JP,A)
【文献】特開2016-210267(JP,A)
【文献】特開2014-046697(JP,A)
【文献】特開2006-306375(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10307339(DE,A1)
【文献】特許第4049464(JP,B2)
【文献】特開2014-198535(JP,A)
【文献】特開2016-097881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
B60T 8/32-8/96
B60T 13/00-13/74
B62K 13/00-19/48
B62L 1/00-5/20
F16D 49/00-71/04
F16D 121/04
F16D 121/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車のブレーキシステムであって、
第1操作装置と、
動力伝達媒体を介して前記第1操作装置から伝達される動力
のみによって駆動される第1制動装置と、
前記第1操作装置、前記動力伝達媒体、および第1制動装置の少なくともいずれかに関する情報を検出する第1検出装置と、
第2操作装置と、
第2制動装置と、
前記第1検出装置の検出結果に基づいて前記第2制動装置を制御するように構成されるコントローラと、を備え
、
前記コントローラは、
前記第2操作装置への入力に応じて前記第2制動装置を制御するように構成され、
前記第1操作装置および前記第2操作装置の両方が操作されれば、前記第1操作装置への操作を優先して前記第1検出装置の検出結果に基づいて前記第2制動装置を制御するように構成される、ブレーキシステム。
【請求項2】
前記第1検出装置は、前記第1操作装置への入力に関する情報を検出するように構成される、請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項3】
前記第1検出装置は、前記第1操作装置に設けられるセンサを含む、請求項2に記載のブレーキシステム。
【請求項4】
前記第2操作装置への入力に関する情報を検出する第2検出装置をさらに備え、
前記コントローラは、前記第2検出装置の検出結果に基づいて前記第2制動装置を制御するように構成される、請求項
1から3のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項5】
前記第2制動装置を駆動するアクチュエータをさらに備え、
前記コントローラは、前記アクチュエータを制御するように構成される、請求項1から
4のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項6】
前記アクチュエータは、前記第2制動装置に設けられる、請求項
5に記載のブレーキシステム。
【請求項7】
前記第2制動装置に供給するための電力を蓄えるバッテリをさらに備える、請求項1から
6のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記バッテリに設けられる、請求項
7に記載のブレーキシステム。
【請求項9】
前記バッテリに電力を供給する発電装置をさらに備える、請求項
7または
8に記載のブレーキシステム。
【請求項10】
前記第1制動装置は、前記人力駆動車のリアホイールに対応して設けられ、
前記第2制動装置は、前記人力駆動車のフロントホイールに対応して設けられる、請求項1から
9のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項11】
前記第1制動装置は、前記人力駆動車のフロントホイールに対応して設けられ、
前記第2制動装置は、前記人力駆動車のリアホイールに対応して設けられる、請求項1から
9のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項12】
前記フロントホイールおよび前記リアホイールの一方の回転に関する情報を検出する第1ホイールセンサを備える、請求項
10または
11に記載のブレーキシステム。
【請求項13】
前記フロントホイールおよび前記リアホイールの他方の回転に関する情報を検出する第2ホイールセンサを備える、請求項
12に記載のブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自転車を含む人力駆動車に、電動駆動機構を備えるブレーキシステムが設けられることがある。たとえば、特許文献1には電動駆動機構を備えるブレーキシステムの一例が記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2013/0180815号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動駆動機構を備えるブレーキシステムにおいて、状況に関わらず人力駆動車を好適に制動できることが望まれる。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、状況に関わらず人力駆動車を好適に制動できるブレーキシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第1側面に従うブレーキシステムは、人力駆動車のブレーキシステムであって、第1操作装置と、動力伝達媒体を介して前記第1操作装置から伝達される動力によって駆動される第1制動装置と、前記第1操作装置、前記動力伝達媒体、および第1制動装置の少なくともいずれかに関する情報を検出する第1検出装置と、第2制動装置と、前記第1検出装置の検出結果に基づいて前記第2制動装置を制御するように構成されるコントローラと、を備える。
【0007】
前記第1側面によれば、動力伝達媒体を介した動力によって第1制動装置を駆動し、第1検出装置の検出結果に基づいて第2制動装置を駆動することによって、状況に関わらず人力駆動車を好適に制動できる。
【0008】
前記第1側面に従う第2側面のブレーキシステムは、前記第1操作装置への入力に関する情報を検出するように構成される。
【0009】
前記第2側面によれば、第1操作装置への入力に関する情報を検出して第2制動装置を駆動することによって、第2制動装置を好適に制御できる。
【0010】
前記第2側面に従う第3側面のブレーキシステムにおいて、前記第1検出装置は、前記第1操作装置に設けられるセンサを含む。
【0011】
前記第3側面によれば、第1操作装置に設けられたセンサで第1操作装置への入力に関する情報を検出することによって、第1操作装置への入力に関する情報を好適に検出でき、第2制動装置を好適に制御できる。
【0012】
前記第1から第3側面のいずれか1つに従う第4側面のブレーキシステムは、第2操作装置をさらに備え、前記コントローラは、前記第2操作装置への入力に応じて前記第2制動装置を制御するように構成される。
【0013】
前記第4側面によれば、第2操作装置への入力と、第1検出装置の検出結果とに基づいて第2制動装置を制御することによって、第2制動装置を好適に制御できる。
【0014】
前記第4側面に従う第5側面のブレーキシステムは、前記第2操作装置への入力に関する情報を検出する第2検出装置をさらに備え、前記コントローラは、前記第2検出装置の検出結果に基づいて前記第2制動装置を制御するように構成される。
【0015】
前記第5側面によれば、第1検出装置の検出結果と第2検出装置の検出結果とに基づいて第2制動装置を制御することによって、第2制動装置を好適に制御できる。
【0016】
前記第4または第5側面に従う第6側面のブレーキシステムにおいて、前記コントローラは、前記第1操作装置および前記第2操作装置の両方が操作されれば、前記第1検出装置の検出結果に基づいて前記第2制動装置を制御するように構成される。
【0017】
前記第6側面によれば、第1検出装置の検出結果を優先して第2制動装置を制御することによって、運転者の操作に応じて、第2制動装置を好適に制御できる。
【0018】
前記第5側面に従う第7側面のブレーキシステムにおいて、前記コントローラは、前記第1操作装置および前記第2操作装置の両方が操作されれば、前記第1検出装置の検出結果および前記第2検出装置の検出結果の両方に基づいて第2制動装置を制御するように構成される。
【0019】
前記第7側面によれば、第1検出装置の検出結果および第2検出装置の検出結果の両方に基づいて第2制動装置を制御することによって、第2制動装置を好適に制御できる。
【0020】
前記第1から第7側面のいずれか1つに従う第8側面のブレーキシステムは、前記第2制動装置を駆動するアクチュエータをさらに備え、前記コントローラは、前記アクチュエータを制御するように構成される。
【0021】
前記第8側面によれば、アクチュエータによって第2制動装置を好適に駆動できる。
【0022】
前記第8側面に従う第9側面のブレーキシステムにおいて、前記アクチュエータは、前記第2制動装置に設けられる。
【0023】
前記第9側面によれば、第2制動装置に設けられるアクチュエータによって簡素な構成で第2制動装置を好適に駆動できる。
【0024】
前記第1から第9側面のいずれか1つに従う第10側面のブレーキシステムは、前記第2制動装置に供給するための電力を蓄えるバッテリをさらに備える。
【0025】
前記第10側面によれば、バッテリからの電力によって、第2制動装置を好適に駆動できる。
【0026】
前記第10側面に従う第11側面のブレーキシステムにおいて、コントローラは、前記バッテリに設けられる。
【0027】
前記第11側面によれば、バッテリから容易にコントローラに電力を供給でき、第2制動装置を好適に制御できる。
【0028】
前記第10または第11側面に従う第12側面のブレーキシステムは、前記バッテリに電力を供給する発電装置をさらに備える。
【0029】
前記第12側面によれば、外部電源に頼らずとも発電装置によってバッテリを充電できる。
【0030】
前記第1から第12側面のいずれか1つに従う第13側面のブレーキシステムにおいて、前記第1制動装置は、前記人力駆動車のリアホイールに対応して設けられ、前記第2制動装置は、前記人力駆動車のフロントホイールに対応して設けられる。
【0031】
前記第13側面によれば、第1制動装置でリアホイールを制動し、第2制動装置でフロントホイールを制動することによって、人力駆動車を好適に制動できる。
【0032】
前記第1から第12側面のいずれか1つに従う第14側面のブレーキシステムにおいて、前記第1制動装置は、前記人力駆動車のフロントホイールに対応して設けられ、前記第2制動装置は、前記人力駆動車のリアホイールに対応して設けられる。
【0033】
前記第14側面によれば、第1制動装置でフロントホイールを制動し、第2制動装置でリアホイールを制動することによって、人力駆動車を好適に制動できる。
【0034】
前記第13または第14側面に従う第15側面のブレーキシステムは、前記フロントホイールおよび前記リアホイールの一方の回転に関する情報を検出する第1ホイールセンサを備える。
【0035】
前記第15側面によれば、第1ホイールセンサでホイールの回転の情報を検出することによって、人力駆動車を好適に制動できる。
【0036】
前記第15側面に従う第16側面のブレーキシステムは、前記フロントホイールおよび前記リアホイールの他方の回転に関する情報を検出する第2ホイールセンサを備える。
【0037】
前記第16側面によれば、フロントホイールとリアホイールの両方の回転の情報を検出することによって、人力駆動車を好適に制動できる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、人力駆動車を好適に制動できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、本実施形態の人力駆動車の模式的な正面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の第1操作装置の模式図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の第1制動装置の模式図である。
【
図4】
図4は、本実施形態の第2操作装置の模式図である。
【
図5】
図5は、本実施形態の第2制動装置の模式図である。
【
図6】
図6は、本実施形態のブレーキシステムの模式的なブロック図である。
【
図7】
図7は、本実施形態の他の例のブレーキシステムの模式的なブロック図である。
【
図8】
図8は、本実施形態の他の例のブレーキシステムの模式的なブロック図である。
【
図9】
図9は、本実施形態の他の例の第2制動装置の模式図である。
【
図10】
図10は、本実施形態の他の例の第2制動装置の模式図である。
【
図11】
図11は、本実施形態の他の例のブレーキシステムの模式的なブロック図である。
【
図12】
図12は、本実施形態の他の例のブレーキシステムの模式的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。本発明は、この実施形態によって限定されない。また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせも本発明に含まれる。
【0041】
本実施形態に係る人力駆動車10は、搭乗者の人力によって走行する。本実施形態における人力駆動車10は、走行のための原動力に関して、少なくとも部分的に人力を用いる車両を意味し、電動によって人力を補助する車両を含む。人力以外の原動力のみを用いる車両は、人力駆動車には含まれない。特に、内燃機関のみを原動力に用いる車両は、人力駆動車には含まれない。通常、人力駆動車には、小型軽車両が想定され、公道においての運転に免許を要しない車両が想定される。人力駆動車10は、e-bikeと呼ばれる、補助的に電動によって駆動される自転車であってよい。
図1に示すように、人力駆動車10は、フレーム12と、ハンドルバー14と、サドル15と、フォーク16と、フロントホイール20と、リアホイール22と、バッテリ24と、ブレーキシステム30と、を備える。本実施形態において、“前”、“後”、“左”、“右”、“上”および“下”、ならびにこれらと同義の用語は、ユーザがハンドルバー14に向かってサドル15に座った状態からみた“前”、“後”、“左”、“右”、“上”および“下”を意味する。
【0042】
図1に示すように、フレーム12は、ヘッドチューブ12aと、トップチューブ12bと、ダウンチューブ12cと、シートチューブ12dと、一対のシートステー12eと、一対のチェーンステー12fと、を備える。ヘッドチューブ12aは、ハンドルバー14およびフォーク16を回転可能に支持する。トップチューブ12bは、一端がヘッドチューブ12aに接続され、他端がシートチューブ12dに接続される。ダウンチューブ12cは、一端がヘッドチューブ12aに接続され、他端がシートチューブ12dに接続される。一対のシートステー12eはそれぞれ、一端がシートチューブ12dに接続され、他端がチェーンステー12fに接続される。一対のチェーンステー12fはそれぞれ、一端がシートチューブ12dに接続され、他端がシートステー12eに接続される。
図1には右側のシートステー12eおよびチェーンステー12fが示される。
【0043】
ハンドルバー14は、人力駆動車10の搭乗者によって把持されるように構成される。ハンドルバー14は、ヘッドチューブ12aに対して回転可能である。ハンドルバー14が回転させられることによって、フォーク16が回転し、人力駆動車10の進行方向が変化する。
【0044】
図1に示すように、フロントホイール20は、フォーク16に回転可能に取り付けられる。フロントホイール20は、タイヤが取り付けられるリム20aと、複数のスポーク20cと、ディスクロータ20eと、を備える。リアホイール22は、シートステー12eとチェーンステー12fとの接続箇所であるリアエンドに取り付けられる。リアホイール22は、フレーム12に対して回転可能である。リアホイール22は、タイヤが取り付けられるリム22aと、複数のスポーク22cと、ディスクロータ22eと、を含む。
【0045】
バッテリ24は、充電可能な電池であり、二次電池である。
図1に示すように、バッテリ24は、たとえばダウンチューブ12cに取り付けられる。バッテリ24は、ブレーキシステム30を含む人力駆動車10のコンポーネントに接続され、これらに電力を供給する。すなわち、ブレーキシステム30はバッテリ24を備え、バッテリ24は、後述の第2制動装置70Bに供給するための電力を蓄える。
【0046】
ブレーキシステム30は、第1操作装置40Aと、第2操作装置40Bと、接続部材50と、第1検出装置60A(
図2参照)と、第2検出装置60B(
図4参照)と、第1制動装置70Aと、第2制動装置70Bと、駆動装置80(
図5参照)とを有する。第1操作装置40Aは、第1制動装置70Aに対応する。接続部材50は、第1操作装置40Aと第1制動装置70Aとを機械的に接続する。第2操作装置40Bは、第2制動装置70Bに対応する。第2操作装置40Bと第2制動装置70Bとは、電気ケーブルなどによって電気的に接続される。本実施形態において、第1制動装置70Aおよび第2制動装置70Bは、それぞれ、ディスクブレーキキャリパである。第1操作装置40Aおよび第2操作装置40Bは、それぞれ、変速装置など、第1制動装置70Aおよび第2制動装置70B以外の装置を操作可能に構成されてもよい。
【0047】
第1操作装置40Aおよび第2操作装置40Bは、ハンドルバー14に設けられる。第1操作装置40Aは、ハンドルバー14の一端に設けられ、第2操作装置40Bは、ハンドルバー14の他端に設けられる。本実施形態では、第1操作装置40Aがハンドルバー14の右側端部に設けられ、第2操作装置40Bが、ハンドルバー14の左側端部に設けられる。
【0048】
第1操作装置40Aは、油圧ブレーキの操作装置である。
図2に示すように、第1操作装置40Aは、支持体41と、操作部42と、回転軸44と、油圧ユニット46と、を含む。
【0049】
支持体41は、ハンドルバー14に設けられる。操作部42は、支持体41に設けられる。操作部42は、待機位置から操作位置に回転軸心A回りに揺動可能に設けられる。回転軸心Aは、回転軸44の中心を通る仮想的な直線である。操作部42は、ブレーキレバーである。
図2において待機位置にある操作部42が実線によって示される。
図2において操作位置にある操作部42が二点鎖線で示される。たとえば、操作部42は、弾性部材によって支持される。待機位置にある操作部42に力が加えられると、操作部42は、弾性部材の弾性力に抗しながら操作位置に移動する。操作部42が解放されると、操作部42は、弾性部材の弾性力によって待機位置に戻る。操作位置は、
図2に示す位置に限定されない。
図2に示す操作位置は、一例である。
【0050】
油圧ユニット46は、支持体41に設けられる。油圧ユニット46は、基部46aと、シリンダ孔46cと、ピストン46eと、リザーバ46gと、を備える。基部46aは、中空筒状の部材である。基部46aは、支持体41に設けられる。基部46aは、支持部42に対して一体的に設けられる。基部46aは、支持部41に対して別体に設けられてもよい。シリンダ孔46cは、基部46aに設けられる。ピストン46eは、シリンダ孔46cに移動可能に設けられる。シリンダ孔46cは、動力伝達媒体によって満たされる。本実施形態における動力伝達媒体は、油、すなわち作動油である。ピストン46eは、操作部42に接続される。ピストン46eは、操作部42と連動する。操作部42が揺動すると、ピストン46eがシリンダ孔46cの内部を移動する。これによって、シリンダ孔46cの作動油が被操作装置60に供給され、フロントホイール20が制動される。リザーバ46gは、シリンダ孔46cに流体的に連結される。すなわち、リザーバ46gおよびシリンダ孔46cは、流体である作動油が流通できるように連通する。リザーバ46gは、基部46aに設けられる。リザーバ46gは、作動油を貯留し、ピストン46eの位置に応じてシリンダ孔46cとリザーバ46gとの間において、作動油を流通させる。
【0051】
接続部材50は、第1操作装置40Aと第1制動装置70Aとを接続するように構成される。接続部材50は、ホースである。接続部材50は、一方の端部が油圧ユニット46に接続される。接続部材50の内部は動力伝達媒体である作動油によって満たされる。接続部材50は、油圧ユニット46において生じる作動油の圧力の変化を第1制動装置70Aに伝達する。
【0052】
図2に示すように、第1検出装置60Aは、第1操作装置40Aに設けられ、さらに詳しくは、支持体41に設けられる。第1検出装置60Aは、第1操作装置40Aへの入力に関する情報を検出するセンサである。従って、第1検出装置60Aは、第1操作装置40Aに設けられるセンサを含むといえる。本実施形態において、第1検出装置60Aは、シリンダ孔46cに接続されて、シリンダ孔46cの内部の作動油の圧力を検出する。シリンダ孔46cと接続部材50とは接続されるので、第1検出装置60Aは、接続部材50の内部の作動油の圧力を検出するといえるし、第1操作装置40Aから第1制動装置70Aに流れる作動油の圧力を検出するといえる。第1操作装置40Aから第1制動装置70Aに流れる作動油の圧力は、搭乗者による第1操作装置40Aの操作部42への操作量に応じて変化する。従って、第1検出装置60Aは、第1操作装置40Aへの入力に関する情報を検出するように構成されるといえる。第1検出装置60Aは、第1操作装置40Aに設けられてシリンダ孔46cに接続されることに限られず、接続部材50または第1制動装置70Aに設けられてもよい。この場合、第1検出装置60Aは、接続部材50または第1制動装置70Aの内部の作動油の圧力を検出することによって、第1操作装置40Aから第1制動装置70Aに流れる作動油の圧力を検出できる。
【0053】
第1検出装置60Aは、電気ケーブルなどによって、駆動装置80のコントローラ82(
図5参照)と電気的に接続される。第1検出装置60Aは、検出結果、ここでは第1操作装置40Aから第1制動装置70Aに流れる作動油の圧力の検出値を、電気信号としてコントローラ82に送信する。
【0054】
第1検出装置60Aは、第1操作装置40Aから第1制動装置70Aに流れる作動油の圧力を検出するよう構成されるが、第1操作装置40A、作動油、および第1制動装置70Aの少なくともいずれかに関する情報を検出するよう構成されていればよい。第1操作装置40Aに関する情報は、第1操作装置40Aから第1制動装置70Aに流れる作動油の圧力の値に替えてまたは加えて、たとえば、操作部42の移動量(回転角度)、操作部42の移動速度(回転速度)、操作部42の移動加速度(回転加速度)、および搭乗者が操作部42を押圧する圧力値の少なくとも1つを含んでいてもよい。作動油に関する情報は、第1操作装置40Aから第1制動装置70Aに流れる作動油の圧力の値である。第1制動装置70Aに関する情報は、第1操作装置40Aから第1制動装置70Aに流れる作動油の圧力の値に替えてまたは加えて、たとえば、後述の可動部材76の移動量、可動部材76の移動速度、可動部材76の移動加速度、および可動部材76がディスクロータ22eを押圧する圧力値の少なくとも1つを含んでいてもよい。本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、その選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、その選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【0055】
第1制動装置70Aは、作動油を介して第1操作装置40Aから伝達される動力によって駆動される。
図1に示すように、第1制動装置70Aは、人力駆動車10のリアホイール22を制動するようにリアホイール22に対応して設けられる。
図3に示すように、第1制動装置70Aは、基部72と、流路72aと、流路74と、可動部材76とを備える。基部72は、シートステー12eに設けられる。流路72aは、基部72に設けられる流路であり、開口部72a1において、基部72の表面に開口する。開口部72a1は、接続部材50の第1操作装置40Aに接続される端部とは反対側の端部に接続される。流路74は、流路72aに接続されるように基部72に設けられる。
【0056】
可動部材76は、ピストン76aおよび摩擦部材76bを含む。ピストン76aは、基部72に対して移動可能に流路74の内部に設けられる。摩擦部材76bは、ブレーキパッドである。摩擦部材76bは、ピストン76aの移動に伴って移動するようにパッドピンを介して基部72に移動可能に支持される。摩擦部材76bは、リアホイール22のディスクロータ22eに対向するように設けられる。本実施形態では、ピストン76aは、ディスクロータ22eを挟むように一対設けられる。本実施形態では、摩擦部材76bは、ディスクロータ22eを挟むように一対設けられる。摩擦部材76bは、ディスクロータ22eを押圧することによって、リアホイール22を制動する。
【0057】
ここで、第1操作装置40Aから第1制動装置70Aに流れる作動油の圧力は、搭乗者による操作部42への入力に応じて変化し、作動油の圧力の変化は、接続部材50を介して、流路72aおよび流路74に伝わる。ピストン76aは、流路74に伝わる作動油の圧力の変化を動力として、基部72に対して移動する。摩擦部材76bは、ピストン76aと一体となって移動することによって、ディスクロータ22eへの押圧力を変化させる。可動部材76は、摩擦部材76bのディスクロータ22eへの押圧力を変化させることによって、リアホイール22への制動力を変化させる。このように、第1制動装置70Aは、搭乗者が第1操作装置40Aを操作すれば、作動油を介して第1操作装置40Aから伝達される動力によって駆動され、リアホイール22を制動する。
【0058】
第2操作装置40Bは、電動ブレーキの操作装置である。
図4に示すように、第2操作装置40Bは、第1操作装置40Aと同様に、支持体41と、操作部42と、回転軸44と、油圧ユニット46と、を含む。本実施形態において、第2操作装置40Bは、接続部材50が接続されていない。従って、本実施形態において、第2操作装置40B内の作動油は、第2制動装置70Bまで流れない。
【0059】
第2検出装置60Bは、第2操作装置40Bに設けられ、さらに詳しくは、第2操作装置40Bの支持体41に設けられるセンサである。従って、第2検出装置60Bは、第2操作装置40Bに設けられるセンサを含むといえる。本実施形態において、第2検出装置60Bは、第2操作装置40Bのシリンダ孔46cに接続されて、シリンダ孔46cの内部の作動油の圧力を検出する。シリンダ孔46cの内部の作動油は、第2操作装置40Bの内部の作動油ともいえる。第2操作装置40Bの内部の作動油の圧力は、搭乗者による第2操作装置40Bの操作部42への操作量に応じて変化する。従って、第2検出装置60Bは、第2操作装置40Bへの入力に関する情報を検出するように構成されるといえる。第2検出装置60Bは、シリンダ孔46cに接続されるように第2操作装置40Bに設けられる構成に限られない。たとえば第2操作装置40Bが接続部材50を介して第2制動装置70Bに接続される場合、第2検出装置60Bは、接続部材50または第1制動装置70Aに接続されることによって、第2操作装置40Bから第2制動装置70Bに流れる作動油の圧力を検出するよう構成されてもよい。
【0060】
第2検出装置60Bは、電気ケーブルなどによって、駆動装置80のコントローラ82(
図5参照)と電気的に接続される。第2検出装置60Bは、検出結果、ここでは第2操作装置40Bの内部の作動油の圧力の検出値を、電気信号としてコントローラ82に送信する。
【0061】
第2検出装置60Bは、第2操作装置40Bの内部の作動油の圧力を検出するよう構成されるが、第2操作装置40Bへの入力に関する情報を検出するように構成されていればよい。第2操作装置40Bへの入力に関する情報は、第2操作装置40Bの内部の作動油の圧力の値に替えてまたは加えて、たとえば、操作部42の移動量(回転角度)、操作部42の移動速度(回転速度)、操作部42の移動加速度(回転加速度)、および搭乗者が操作部42を押圧する圧力値の少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0062】
図5に示すように、第2制動装置70Bは、駆動装置80によって、第1検出装置60Aの検出結果と、第2検出装置60Bの検出結果とに基づいて制御される。
図1に示すように、第2制動装置70Bは、人力駆動車10のフロントホイール20を制動するようにフロントホイール20に対応して設けられる。
図5に示すように、第2制動装置70Bは、基部72と、流路72aと、流路74と、可動部材76とを備える。基部72は、フォーク16に設けられる。流路72aは、基部72に設けられる流路である。流路74は、流路72aに接続されるように基部72に設けられる。
【0063】
可動部材76は、ピストン76aおよび摩擦部材76bを含む。ピストン76aは、基部72に対して移動可能に流路74の内部に設けられる。摩擦部材76bは、ブレーキパッドである。摩擦部材76bは、ピストン76aの移動に伴って移動するようにパッドピンを介して基部72に移動可能に支持される。摩擦部材76bは、フロントホイール20のディスクロータ20eに対向するように設けられる。本実施形態においては、ピストン76aは、ディスクロータ20eを挟むように一対設けられる。本実施形態においては、摩擦部材76bは、ディスクロータ20eを挟むように一対設けられる。摩擦部材76bは、ディスクロータ20eを押圧することで、フロントホイール20を制動する。
【0064】
このように、第2制動装置70Bは、電力を駆動源として回転体であるフロントホイール20を制動する装置であり、たとえば電動機を用いた回生発電装置などの回転体に非接触な制動装置は第2制動装置70Bには該当しない。
【0065】
駆動装置80は、人力駆動車10に用いられる。
図5に示すように、駆動装置80は、第2制動装置70Bに設けられる。駆動装置80は、アクチュエータ81と、コントローラ82と、ハウジング83とを備える。ハウジング83は、第2制動装置70Bの基部72と一体として構成される。アクチュエータ81は、電動機81aと、歯車81bと、歯車81cと、ボールねじ81dと、ピストン81eと、を備える。
【0066】
アクチュエータ81は、第2制動装置70Bに設けられる。アクチュエータ81は、第2制動装置70Bを駆動するように構成される。電動機81aは、第2制動装置70Bの可動部材76を基部72に対し移動するよう構成される。電動機81aは、たとえば、ハウジング83に設けられるケースと、ケースに設けられるステータと、ステータに対して回転するロータと、を備える。電動機81aは、コントローラ82からの電力によって駆動される。電動機81aを駆動するための電力は、バッテリ24からコントローラ82に供給される。バッテリ24は、外部電源からの電力によって充電される。歯車81bは、電動機81aのロータに接続される。歯車81cは、歯車81bと噛み合う。ボールねじ81dは、歯車81cと接続されるねじ軸と、ねじ軸と噛み合うナット、とを備える。ピストン81eは、ボールねじ81dのナットに接続される。電動機81aの動力は、歯車81bおよび歯車81cを介してボールねじ81dに伝達される。ねじ軸が回転すると、ナットおよびピストン81eが軸方向に移動する。ピストン81eの移動量は、電動機81aからの動力に応じて変化する。
【0067】
ピストン81eは、第2制動装置70Bの流路72aと連通するチャンバに設けられる。ピストン81eが軸方向に移動することによって、流路72a内の作動油の圧力が変化する。流路72a内の作動油の圧力は、ピストン81eの移動量に応じて変化する。従って、流路72a内の作動油の圧力の変化は、アクチュエータ81からの動力として、流路72aを介して可動部材76に伝達される。
【0068】
コントローラ82は、コンピュータであり、たとえばCPU(Central Processing Unit)、ECU(Electronic Control Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)、等を含む。コントローラ82の各機能は、これらに格納されるプログラム(ソフトウェア)の実行を含め、これらが連携することによって実現される。コントローラ82には、バッテリ24からの電力が供給される。
【0069】
コントローラ82は、駆動制御部82aを備える。駆動制御部82aは、たとえばコントローラ82が備えるCPUが記憶部からソフトウェアを読み出すことによって機能が実現されるが、コントローラ82に設けられる専用の回路でもよい。
【0070】
駆動制御部82aは、第1検出装置60Aの検出結果、ここでは第1操作装置40Aから第1制動装置70Aに流れる作動油の圧力の検出値を、取得する。また、駆動制御部82aは、第2検出装置60Bの検出結果、ここでは第2操作装置40Bの内部の作動油の圧力の検出値を、取得する。駆動制御部82aは、第1検出装置60Aの検出結果および第2検出装置60Bの検出結果に基づいて、アクチュエータ81を制御する。駆動制御部82aは、第1検出装置60Aの検出結果および第2検出装置60Bの検出結果に基づいて、アクチュエータ81に電動機制御信号を出力する。駆動制御部82aは、第1検出装置60Aの検出結果および第2検出装置60Bの検出結果に応じて電動機制御信号を変化させる。アクチュエータ81は、電動機制御信号に応じて動力を変化させる。従って、可動部材76の移動量は、電動機制御信号に応じて変化する。従って、駆動制御部82aは、第1検出装置60Aの検出結果および第2検出装置60Bの検出結果に基づいて、第2制動装置70Bを制御するように構成されるといえる。言い換えれば、駆動制御部82aは、第1操作装置40Aへの入力および第2操作装置40Bへの入力に応じて、第2制動装置70Bを制御するように構成されるといえる。ただし、駆動制御部82aは、第2検出装置60Bの検出結果によらず、第1検出装置60Aの検出結果に応じて第2制動装置70Bを制御するように構成されていてもよい。また、駆動制御部82aは、電動機制御信号を出力してアクチュエータ81を駆動させるが、電動機制御信号を出力しなくてもよい。この場合、たとえば、駆動制御部82aは、第1検出装置60Aの検出結果および第2検出装置60Bの検出結果に応じて、アクチュエータ81に供給する電力量を変化させて、アクチュエータ81が、供給される電力量に応じて、動力を変化させてもよい。
【0071】
具体的には、駆動制御部82aは、搭乗者によって第1操作装置40Aが操作されれば、すなわち第1検出装置60Aの検出結果が初期値(待機値)から変化すれば、第1検出装置60Aの検出結果に応じて第2制動装置70Bを制御する。たとえば、駆動制御部82aは、第1操作装置40Aから第1制動装置70Aに流れる作動油の圧力が大きいほど、アクチュエータ81の出力を大きくすることによって、第2制動装置70Bによるフロントホイール20の制動力を大きくする。またたとえば、駆動制御部82aは、第1操作装置40Aから第1制動装置70Aに流れる作動油の圧力に基づいて、第1制動装置70Aによるリアホイール22への制動力を算出し、リアホイール22への制動力に対し、フロントホイール20への制動力が所定の割合となるように、第2制動装置70Bを制御する。たとえば、駆動制御部82aは、リアホイール22への制動力がフロントホイール20への制動力と同じとなるよう、第2制動装置70Bを制御してよい。
【0072】
また、駆動制御部82aは、搭乗者によって第1操作装置40Aが操作されずに第2操作装置40Bが操作されれば、すなわち第2検出装置60Bの検出結果が初期値(待機値)から変化すれば、第2検出装置60Bの検出結果に応じて第2制動装置70Bを制御する。すなわち、駆動制御部82aは、搭乗者によって第1操作装置40Aが操作されずに第2操作装置40Bが操作されれば、第2操作装置40Bへの入力に応じて、第2制動装置70Bを制御する。たとえば、駆動制御部82aは、第2操作装置40Bの内部の作動油の圧力が大きいほど、アクチュエータ81の出力を大きくすることによって、第2制動装置70Bによるフロントホイール20の制動力を大きくする。
【0073】
また、駆動制御部82aは、搭乗者によって第1操作装置40Aおよび第2操作装置40Bの両方が操作されれば、すなわち第1検出装置60Aおよび第2検出装置60Bの検出結果が初期値(待機値)から変化すれば、上記と同様に、第1検出装置60Aの検出結果に応じて第2制動装置70Bを制御する。すなわち、この場合、駆動制御部82aは、電動駆動の第2操作装置40Bへの操作でなく、人力駆動の第1操作装置40Aへの操作を優先して、第1検出装置60Aの検出結果に応じて第2制動装置70Bを制御する。これによって、第2制動装置70Bを好適に制御できる。
【0074】
ただし、駆動制御部82aは、搭乗者によって第1操作装置40Aおよび第2操作装置40Bの両方が操作されれば、第1検出装置60Aの検出結果および第2検出装置60Bの検出結果に基づいて、第2制動装置70Bを制御してもよい。この場合、たとえば、駆動制御部82aは、第1操作装置40Aの作動油の圧力と第2操作装置40Bの作動用の圧力との平均値を算出し、圧力の平均値に対応する制動力を生じるように、第2制動装置70Bを制御してよい。駆動制御部82aは、このように第1操作装置40Aおよび第2操作装置40Bの両方の操作に応じて制御することで、第2制動装置70Bを好適に制御できる。
【0075】
以上のように構成されるブレーキシステム30の動作を、
図6のブロック図を用いて説明する。搭乗者によって第1操作装置40Aが操作されれば、
図6の矢印Mに示すように、第1操作装置40Aからの作動油の圧力変化が、動力として第1制動装置70Aに伝達される。これによって、第1制動装置70Aが駆動され、リアホイール22の制動力が変化する。すなわち、第1制動装置70Aは、電力によって駆動されるものではなく、第1操作装置40Aの操作による油圧変化を駆動源として駆動される。また、第1検出装置60Aは、第1操作装置40Aからの作動油の圧力を検出し、矢印Sに示すように、検出結果をコントローラ82に出力する。コントローラ82には、矢印Eに示すように、バッテリ24から電力が供給される。コントローラ82は、第1検出装置60Aの検出結果を取得する。コントローラ82は、バッテリ24からの電力をアクチュエータ81に供給しつつ、第1検出装置60Aの検出結果に基づいて電動機制御信号を生成して、アクチュエータ81に出力する。アクチュエータ81は、電動機制御信号に基づいて第2制動装置70Bを駆動することによって、フロントホイール20の制動力を変化させる。すなわち、第2制動装置70Bは、アクチュエータ81に供給される電力を駆動源として駆動される。
【0076】
また、搭乗者によって第2操作装置40Bが操作されれば、第2検出装置60Bは、第2操作装置40Bの作動油の圧力を検出し、検出結果をコントローラ82に出力する。コントローラ82は、第2検出装置60Bの検出結果を取得する。コントローラ82は、バッテリ24からの電力をアクチュエータ81に供給しつつ、第2検出装置60Bの検出結果に基づいて電動機制御信号を生成して、アクチュエータ81に出力する。アクチュエータ81は、電動機制御信号に基づいて第2制動装置70Bを駆動することによって、フロントホイール20の制動力を変化させる。
【0077】
また、搭乗者によって第1操作装置40Aおよび第2操作装置40Bの両方が操作されれば、第1操作装置40Aからの動力によって、第1制動装置70Aが駆動される。そして、第1検出装置60Aの検出結果、または、第1検出装置60Aおよび第2検出装置60Bの検出結果に基づく電動機制御信号に基づいて、第2制動装置70Bが駆動される。第2操作装置40Bが操作されて第1操作装置40Aが操作されなければ、第1制動装置70Aは駆動されず、第2検出装置60Bの検出結果に基づく電動機制御信号に基づいて、第2制動装置70Bが駆動される。
【0078】
本実施形態に係るブレーキシステム30は、第1制動装置70Aが、作動油を介して第1操作装置40Aから伝達される動力によって駆動される。そして、第2制動装置70Bが、コントローラ82によって、第1検出装置60Aの検出結果に基づいて制御される。そのため、ブレーキシステム30は、第2制動装置70Bへの電力供給に関わらず、第1制動装置70Aが作動油によって駆動されるため、人力駆動車10を好適に制動できる。さらに、ブレーキシステム30は、第1検出装置60Aの検出結果に基づいて、第2制動装置70Bを好適に制御できる。また、第2制動装置70Bは、第2検出装置60Bの検出結果にも基づいて制御されるため、第1操作装置40Aおよび第2操作装置40Bの両方の操作に応じて、柔軟に制御される。
【0079】
以下、本実施形態の他の例について説明する。本実施形態においては、コントローラ82が、第2制動装置70Bに設けられるが、コントローラ82が設けられる位置は、任意である。たとえば、コントローラ82は、バッテリ24に設けられてもよいし、第2操作装置40Bに設けられてもよい。
【0080】
また、本実施形態においては、第1制動装置70Aがリアホイール22に対応して設けられて、第2制動装置70Bがフロントホイール20に対応して設けられるが、第1制動装置70Aがフロントホイール20に対応して設けられて、第2制動装置70Bがリアホイール22に対応して設けられてもよい。
【0081】
また、人力駆動車10は、
図7に示すように、発電装置26を有してもよい。発電装置26は、人力駆動車10の動作によって発電するよう構成される。発電装置26は、たとえばフロントホイール20に設けられるが、リアホイール22に設けられてもよい。発電装置26は、フロントホイール20の回転に伴い発電するダイナモ、たとえばハブダイナモである。発電装置26は、発電した電力をバッテリ24に供給する。また、人力駆動車10は、
図8に示すように、バッテリ24とは異なるサブバッテリ28を更に有してもよい。サブバッテリ28は、発電装置26が発電した電力を蓄えるように発電装置26に設けられる。サブバッテリ28は、蓄えた電力を、コントローラ82に供給する。また、人力駆動車10は、バッテリ24を有さず発電装置26を有してもよい。この場合、発電装置26が発電した電力が、コントローラ82に直接供給される。
【0082】
また、本実施形態に係る第2制動装置70Bは、コントローラ82の制御によって、電力を駆動源として駆動されるが、
図9および
図10の第2制動装置170Bに示すように、電力を駆動源として駆動装置180に駆動される第1状態と、作動油を介する第2操作装置40Bから伝達される動力を駆動源として駆動される第2状態とを、切り替えるよう構成されてもよい。
【0083】
図9に示すように、第2制動装置170Bは、基部72と、流路72aと、流路74と、可動部材76と、を備える。また、駆動装置180は、アクチュエータ81と、コントローラ182と、ハウジング83と、切替機構84と、流路86とを有する。ハウジング83は、基部72と一体として構成されており、表面に流路72aの開口部72a1が開口する。本例においては、第2操作装置40Bは、接続部材50に接続されており、内部の作動油を接続部材50に流通させる。接続部材50の第2操作装置40Bと反対側の端部は、開口部72a1に接続される。
【0084】
切替機構84は、電力を駆動源とするアクチュエータ81の動力によって可動部材76が駆動される第1状態、および、第2操作装置40Bから伝達される動力によって可動部材76が駆動される第2状態の一方から他方に、駆動装置180の状態を切り替える。切替機構84は、第2操作装置40Bからの動力を、流路72aおよび流路86のいずれか1つに選択的に伝達するように構成される。切替機構84は、電動アクチュエータを構成する移動部材84aおよび駆動部84bと、付勢部材84cとを備える。流路86は、ハウジング83に設けられる流路である。また、本例においては、第2検出装置60Bが、流路86に設けられる。
【0085】
移動部材84aは、第1状態に対応する第1位置と、第2状態に対応する第2位置と、の間において移動する。移動部材84aは、ハウジング83に移動可能に設けられる。
図9において、移動部材84aは、第1位置にある。
図9に示すように、移動部材84aが第1位置にあれば、接続部材50と流路86とが連通し、第2操作装置40Bからの作動油が第2検出装置60Bに供給される。従って、第2検出装置60Bは、第1状態において、第2操作装置40Bからの作動油の圧力を検出する。
図10において、移動部材84aは、第2位置にある。
図10に示すように、移動部材84aが第2位置にあれば、接続部材50と流路72aとが連通し、第2操作装置40Bからの作動油が、流路74を介して可動部材76に供給される。電動アクチュエータは、コントローラ82からの電力供給に伴って、移動部材84aを第2位置から第1位置に移動させるように構成される。駆動部84bは、電力供給に伴って移動部材84aを第2位置から第1位置に移動させるように構成される。駆動部84bは、たとえばソレノイドである。付勢部材84cは、移動部材84aを第2位置に向けて付勢する。付勢部材84cは、たとえばコイルバネである。付勢部材84cの一端は、ハウジング83に支持される。付勢部材84cの他端は、移動部材84aに接する。
【0086】
コントローラ182は、駆動制御部82aと、切替制御部82bとを有する。切替制御部82bは、たとえばコントローラ82が備えるCPUが記憶部からソフトウェアを読み出すことによって機能が実現されるが、コントローラ82に設けられる専用の回路でもよい。
【0087】
切替制御部82bは、切替機構84を制御するように構成される。切替制御部82bは、閾値を記憶する。切替制御部82bは、バッテリ24からアクチュエータ81に供給できる電力を検出する。切替制御部82bは、アクチュエータ81への供給電力と閾値との比較結果に基づいて切替機構84を制御する。切替制御部82bは、供給電力が閾値以上であれば、第2操作装置40Bからの動力を流路86に伝達するように切替機構84を制御する。この制御に伴って切替機構84の移動部材84aは、第1位置に移動する。これに応じて、第2制動装置170Bは、アクチュエータ81の動力によって可動部材76を駆動する第1状態となる。
【0088】
切替制御部82bは、アクチュエータ81への供給電力が閾値未満であれば、第2操作装置40Bからの動力を流路72aに伝達するように切替機構84を制御する。この制御に伴って、切替機構84の移動部材84aは、第2位置に移動する。これに応じて、第2制動装置170Bは、第2操作装置40Bからの動力によって可動部材76を駆動する第2状態となる。
【0089】
すなわち、
図11に示すように、第2制動装置170Bは、アクチュエータ81による駆動と、第2操作装置40Bに油圧による駆動とを行うことができる。バッテリ24からコントローラ82を介してアクチュエータ81に電力が供給される状態においては、アクチュエータ81によって第2制動装置170Bが駆動される。バッテリ24からコントローラ82を介してアクチュエータ81に電力が供給されない状態においては、第2操作装置40Bからの油圧によって第2制動装置170Bが駆動される。このため、駆動装置180への電力供給状態に関わらず、フロントホイール20を制動できる。
【0090】
また、人力駆動車10は、
図12に示すように、第1ホイールセンサ90Aおよび第2ホイールセンサ90Bを備えてもよい。第1ホイールセンサ90Aは、フロントホイール20およびリアホイール22の一方の回転に関する情報を検出し、第2ホイールセンサ90Bは、フロントホイール20およびリアホイール22の一方の回転に関する情報を検出する。以下においては、第1ホイールセンサ90Aがフロントホイール20の回転に関する情報を検出し、第2ホイールセンサ90Bがリアホイール22の回転に関する情報を検出する例を、説明する。
【0091】
第1ホイールセンサ90Aは、フロントホイール20に設けられる磁石などの被検出部材と、フォーク16に設けられるセンサ本体とを含む。第1ホイールセンサ90Aは、フロントホイール20の回転に関する情報として、たとえば、フロントホイール20の回転速度(単位時間当たりの回転数)を検出する。第1ホイールセンサ90Aは、検出結果をコントローラ82に出力する。第2ホイールセンサ90Bは、リアホイール22に設けられる磁石などの被検出部材と、フレーム12に設けられるセンサ本体とを含む。第2ホイールセンサ90Bは、リアホイール22の回転に関する情報として、たとえば、リアホイール22の回転速度(単位時間当たりの回転数)を検出する。第2ホイールセンサ90Bは、検出結果をコントローラ82に出力する。
【0092】
コントローラ82の駆動制御部82aは、第1検出装置60Aおよび第2検出装置60Bの検出結果に加え、第1ホイールセンサ90Aおよび第2ホイールセンサ90Bの検出結果に基づいて、第2制動装置70Bを制御する。これによって、第2制動装置70Bをさらに好適に制御できる。たとえば、駆動制御部82aは、リアホイール22の回転速度とフロントホイール20の回転速度との差分に基づいて、第2制動装置70Bを制御してよい。たとえば、駆動制御部82aは、リアホイール22の回転速度がフロントホイール20の回転速度よりも大きく、かつリアホイール22の回転速度とフロントホイール20の回転速度との差分が所定の閾値以上であれば、フロントホイール20の制動力を小さくするよう第2制動装置70Bを制御する。また、駆動制御部82aは、リアホイール22の回転速度がフロントホイール20の回転速度よりも小さく、かつリアホイール22の回転速度とフロントホイール20の回転速度との差分が所定の閾値以上であれば、フロントホイール20の制動力を大きくするよう第2制動装置70Bを制御する。ただし、第1ホイールセンサ90Aおよび第2ホイールセンサ90Bの検出結果に基づく第2制動装置70Bの制御内容は、これに限られない。
【0093】
上記の例においては、第1ホイールセンサ90Aおよび第2ホイールセンサ90Bはそれぞれ、フロントホイール20およびリアホイール22の回転速度を検出するが、フロントホイール20およびリアホイール22の回転に関する情報を検出すればよい。回転速度以外の回転に関する情報としては、たとえば、フロントホイール20およびリアホイール22の回転の有無、フロントホイール20およびリアホイール22の回転加速度、フロントホイール20およびリアホイール22の回転方向などが挙げられる。駆動制御部82aは、これらの回転に関する情報に基づいて第2制動装置70Bを制御しても、第2制動装置70B好適に制御できる。たとえば、駆動制御部82aは、フロントホイール20の減速加速度が所定の閾値以上であれば、フロントホイール20の制動力が小さくなるように、第2制動装置70Bを制御できる。
【0094】
また、上記の例においては、第1ホイールセンサ90Aおよび第2ホイールセンサ90Bの両方が設けられるが、第1ホイールセンサ90Aおよび第2ホイールセンサ90Bの一方を省略してもよい。
【0095】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容によって実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲において構成要素の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0096】
10…人力駆動車、20…フロントホイール、22…リアホイール、24…バッテリ、30…ブレーキシステム、40A…第1操作装置、40B…第2操作装置、60A…第1検出装置、60B…第2検出装置、70A…第1制動装置、70B…第2制動装置、81…アクチュエータ、82…コントローラ