(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】パワーコンディショナ装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20221201BHJP
【FI】
H02M7/48 R
(21)【出願番号】P 2018217559
(22)【出願日】2018-11-20
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】山口 英正
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-182945(JP,A)
【文献】特開2002-369406(JP,A)
【文献】特開2011-250606(JP,A)
【文献】特開2001-008383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換装置を備え、分散型電源が前記電力変換装置の1次側、電力系統が前記電力変換装置の2次側に接続される状態と、前記分散型電源が前記電力変換装置の前記1次側、蓄電装置が前記電力変換装置の前記2次側に接続される状態と、前記蓄電装置が前記電力変換装置の前記1次側、前記電力系統が前記電力変換装置の前記2次側に接続される状態と、が切り替え可能であり、
前記分散型電源を、前記電力変換装置の前記1次側と接離するための第1スイッチと、
前記蓄電装置を、前記電力変換装置の前記1次側と接離するための第2スイッチと、
前記蓄電装置を、前記電力変換装置の前記2次側と接離するための第3スイッチと、
を備えることを特徴とす
るパワーコンディショナ装置。
【請求項2】
前記電力変換装置は、
三相インバータと、
前記三相インバータの出力と接続されるリアクトルと、
を含み、
前記蓄電装置は、前記リアクトルを挟んで前記三相インバータと反対側において切離されることを特徴とする請求項
1に記載のパワーコンディショナ装置。
【請求項3】
電力変換装置を備え、分散型電源が前記電力変換装置の1次側、電力系統が前記電力変換装置の2次側に接続される状態と、前記分散型電源が前記電力変換装置の前記1次側、蓄電装置が前記電力変換装置の前記2次側に接続される状態と、前記蓄電装置が前記電力変換装置の前記1次側、前記電力系統が前記電力変換装置の前記2次側に接続される状態と、が切り替え可能であり、
前記電力変換装置は、
三相インバータと、
前記三相インバータの出力と接続されるリアクトルと、
を含み、
前記蓄電装置は、前記リアクトルを挟んで前記三相インバータと反対側において切離されることを特徴とするパワーコンディショナ装置。
【請求項4】
前記電力変換装置はさらにトランスを含むことを特徴とする請求項
2または3に記載のパワーコンディショナ装置。
【請求項5】
前記トランスと前記リアクトルの間に設けられる第4スイッチをさらに備えることを特徴とする請求項
4に記載のパワーコンディショナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーコンディショナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電や風力発電などの分散型電源が普及し始めている。
図1は、分散型電源を備える電力システムのブロック図である。分散型電源10は、系統連系用のパワーコンディショナ装置20を介して電力系統30と接続されており、分散型電源10で発生した電力は、電力系統30を経由して電力会社に売電可能となっている。
【0003】
売電可能な電力量は、供給電力が需要電力を超えないように調整され、供給電力が需要電力を超過した場合には、分散型電源10の出力が制限され、売電が行えず、設備稼働率が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この問題を解決するために、本発明者は、分散型電源10と付随して、蓄電装置40を設けたシステムについて検討した。
図2は、分散型電源および蓄電装置を備える電力システムのブロック図である。
図2のシステムでは、分散型電源10の出力が制限される状況においても、分散型電源10を稼働させ、その出力電力を蓄電装置40に蓄電しておく。その後、需要電力が増大したときに、蓄電装置40に蓄えておいた電力を、電力系統30に売電することができるため、設備の稼働率の低下の問題を解決できる。
【0006】
ところが
図2のシステムでは、分散型電源10と電力系統30の間に、第1のパワーコンディショナ装置20が必要であり、蓄電装置40と電力系統30の間に、第2のパワーコンディショナ装置50が必要となり、コストが高くなると言う問題がある。
【0007】
本発明は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、低コストで設備の稼働率を高めることが可能なパワーコンディショナ装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様はパワーコンディショナ装置に関する。パワーコンディショナ装置は、分散型電源、蓄電装置、電力系統と接続され、分散型電源の出力電力を電力系統に出力する状態、分散型電源の出力電力を蓄電装置に供給する状態、蓄電装置の電力を電力系統に出力する状態が切り替え可能に構成される。
【0009】
本発明の別の態様もまた、パワーコンディショナ装置である。このパワーコンディショナ装置は、電力変換装置を備え、分散型電源が電力変換装置の1次側(直流側)、電力系統が電力変換装置の2次側(交流側)に接続される状態と、分散型電源が電力変換装置の1次側、蓄電装置が電力変換装置の2次側に接続される状態と、蓄電装置が電力変換装置の1次側、電力系統が電力変換装置の2次側に接続される状態と、が切り替え可能である。
【0010】
パワーコンディショナ装置は、分散型電源を、電力変換装置の1次側と接離するための第1スイッチと、蓄電装置を、電力変換装置の1次側と接離するための第2スイッチと、蓄電装置を、電力変換装置の2次側と接離するための第3スイッチと、を備えてもよい。
【0011】
電力変換装置は、三相インバータと、三相インバータの出力と接続されるリアクトルと、を含んでもよい。蓄電装置は、リアクトルを挟んで三相インバータと反対側において切離されてもよい。
【0012】
電力変換装置はさらにトランスを含んでもよい。パワーコンディショナ装置は、トランスとリアクトルの間に設けられる第4スイッチをさらに備えてもよい。
【0013】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のある態様によれば、低コストで設備の稼働率を高めることが可能なパワーコンディショナ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】分散型電源を備える電力システムのブロック図である。
【
図2】分散型電源および蓄電装置を備える電力システムのブロック図である。
【
図3】実施の形態に係るパワーコンディショナ装置のブロック図である。
【
図4】一実施例に係るパワーコンディショナ装置のブロック図である。
【
図5】パワーコンディショナ装置の第1状態を示す図である。
【
図6】パワーコンディショナ装置の第2状態を示す図である。
【
図7】パワーコンディショナ装置の第3状態を示す図である。
【
図8】変形例1に係るパワーコンディショナ装置の一部分を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0017】
図3は、実施の形態に係るパワーコンディショナ装置100のブロック図である。パワーコンディショナ装置100は、分散型電源10および蓄電装置40とともに利用される。分散型電源10は、太陽光発電パネルや風力発電装置などの環境発電装置であってもよいし、ガスタービンなどの発電装置であってもよい。蓄電装置40は、バッテリやキャパシタなどである。
【0018】
パワーコンディショナ装置100は、分散型電源10および蓄電装置40と、電力系統30との間に介在して、系統連系を行う。
【0019】
パワーコンディショナ装置100は、分散型電源10の出力電力を電力系統30に出力する第1状態φ1、分散型電源10の出力電力を蓄電装置40に供給する第2状態φ2、蓄電装置40の電力を電力系統30に出力する第3状態φ3が切り替え可能に構成される。
【0020】
パワーコンディショナ装置100は、電力変換装置110とパスコントローラ120を備える。電力変換装置110は、1次側(DC側)と2次側(AC側もしくはDC側)の間で、電力を変換する。
【0021】
分散型電源10、蓄電装置40および電力系統30は、パスコントローラ120を介して電力変換装置110と接続される。パスコントローラ120は、分散型電源10、電力系統30、蓄電装置40それぞれについて、電力変換装置110との接離および/または接続先のノードを制御し、第1状態φ1~第3状態φ3を切り替える。
【0022】
具体的には、第1状態φ1において、パスコントローラ120は、分散型電源10を電力変換装置110の1次側に、電力系統30を電力変換装置110の2次側に接続する。また第2状態φ2において、パスコントローラ120は、分散型電源10を電力変換装置110の1次側、蓄電装置40を電力変換装置110の2次側に接続する。また第3状態φ3において、パスコントローラ120は、蓄電装置40を電力変換装置110の1次側に、電力系統30を電力変換装置110の2次側に接続する。
【0023】
以上がパワーコンディショナ装置100の基本構成である。続いてその動作を説明する。
【0024】
パワーコンディショナ装置100は、分散型電源10が発電可能であり、電力系統30への売電が可能な状況では、第1状態φ1を選択する。これにより分散型電源10の電力を売電できる。
【0025】
また分散型電源10が発電可能であるが売電不能な状況では、第2状態φ2を選択することにより、分散型電源10を稼働させて、その出力電力を蓄電装置40に蓄えておくことができる。その後、売電可能な状況に戻ると、第3状態φ3を選択することで、蓄電装置40に蓄えた電力を電力系統30の送電し、売電することができる。
【0026】
以上がパワーコンディショナ装置100の動作である。
図2では、分散型電源10の稼働率を高めるために、2台のパワーコンディショナ装置が必要であった。これに対して本実施の形態によれば、1台のパワーコンディショナ装置に減らすことができるため、コストを大幅に削減できる。
【0027】
本発明は、
図3のブロック図や回路図として把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、方法に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な構成例や実施例を説明する。
【0028】
図4は、一実施例に係るパワーコンディショナ装置100のブロック図である。
パワーコンディショナ装置100は、電力変換装置110に加えて、第1スイッチSW1~第5スイッチSW5、コントローラ130を備える。第1スイッチSW1~第5スイッチSW5は、
図3におけるパスコントローラ120に相当する。
【0029】
第1スイッチSW1は、分散型電源10を、電力変換装置110の1次側と接離可能に配置される。具体的には、第1スイッチSW1は、電力変換装置110の1次側のDCリンク112と分散型電源10の間に設けられる。
図4では、DCリンク112のP極側とN極側の両方にスイッチが挿入されるが、一方のみとしてもよい。
【0030】
第2スイッチSW2は、蓄電装置40を、電力変換装置110の1次側と接離可能に配置される。具体的には第2スイッチSW2は、蓄電装置40の正極と、DCリンク112のP極側の間に設けられる。第2スイッチSW2は、蓄電装置40の負極とDCリンク112のN極側に設けてもよいし、P極側とN極側の両方に設けてもよい。
【0031】
第3スイッチSW3は、蓄電装置40を電力変換装置110の2次側(交流側)と接離可能に配置される。具体的には第3スイッチSW3は、蓄電装置40の正極と電力変換装置110の2次側の間に設けられる。
【0032】
電力変換装置110は、三相インバータ(スイッチング回路)114、三相リアクトル116、トランス118を含む。この構成において、蓄電装置40は、三相リアクトル116を挟んで三相インバータ114と反対側において切離される。この例では、蓄電装置40は、第3スイッチSW3を介して三相リアクトル116のW相と接続される。なお、第3スイッチSW3の接続先として、W相に代えて、U相あるいはV相を選択可能であることはいうまでない。
【0033】
第3状態φ3において、三相インバータ114のW相と、三相リアクトル116のW相は、DCリンク112の電圧(すなわち分散型電源10の出力)を昇降圧する昇降圧(Buck)コンバータとして機能する。
【0034】
コントローラ130は、パワーコンディショナ装置100を統括的に制御する。コントローラ130は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)と、ソフトウェアプログラムの組み合わせで実装することができる。あるいはコントローラ130は、FPGA(Field Programmable Gate Array)であってもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)であってもよい。
【0035】
コントローラ130は、電力系統30や分散型電源10の状況にもとづいて第1状態φ1~第3状態φ3を選択し、第1スイッチSW1~第5スイッチSW5および三相インバータ114を制御する。
【0036】
第4スイッチSW4Aは、三相リアクトル116とトランス118の間に設けられる。また第4スイッチSW4Bは、トランス118と電力系統30の間に設けられる。
【0037】
第4スイッチSW4Bと電力系統30の間に、さらに第5スイッチSW5を設けてもよい。第5スイッチSW5はブレーカであり、第4スイッチSW4Bは電磁接触器であってもよい。第4スイッチSW4Bは、自動運転における電子的な制御が可能である。用途によっては、第5スイッチSW5と第4スイッチSW4Bの一方を省略してもよい。
【0038】
図4に示すように、パワーコンディショナ装置100には、電力系統30に加えて、ひとつあるいは複数の負荷60が接続されうる。パワーコンディショナ装置100は、分散型電源10あるいは蓄電装置40の出力電力を、負荷60に供給してもよい。
【0039】
以上がパワーコンディショナ装置100の構成である。続いてその動作を説明する。
図5は、パワーコンディショナ装置100の第1状態φ1を示す図である。第1状態φ1では、第1スイッチSW1、第4スイッチSW4A,SW4Bおよび第5スイッチSW5がオンである。
図5~
図7において、破線の矢印は電力の流れを模試的に示す。
【0040】
図6は、パワーコンディショナ装置100の第2状態φ2を示す図である。第2状態φ2では、第1スイッチSW1および第3スイッチSW3がオンである。このとき三相インバータ114のW相と、三相リアクトル116のW相は、DCリンク112の電圧を降圧する降圧(Buck)コンバータとして動作する。
【0041】
図7は、パワーコンディショナ装置100の第3状態φ3を示す図である。第3状態φ3において第2スイッチSW2、第4スイッチSW4、第5スイッチSW5がオンであり、第1スイッチSW1、第3スイッチSW3がオフとされる。
【0042】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0043】
(変形例1)
図8は、変形例1に係るパワーコンディショナ装置100の一部分を示す回路図である。この変形例において、第3スイッチSW3は、三相リアクトル116のU相、V相、W相のすべての間に挿入される。第3状態φ3において第3スイッチSW3がオンすると、三相リアクトル116の三相の出力が共通にまとめて蓄電装置40と接続される。この場合、三相インバータ114および三相リアクトル116を、マルチフェーズのDC/DCコンバータとして動作させてもよい。
【0044】
(変形例2)
分散型電源10が発電不能な状況において、蓄電装置40の蓄電量が少ない場合には、第3状態φ3を選択して、電力系統30からの電力によって蓄電装置40を充電してもよい。この場合、電力の向きは
図7の反対となる。
【0045】
(変形例3)
図4に示したスイッチSW1~SW5の配置は例示に過ぎず、当業者によれば第1状態φ1~第3状態φ3を実現可能な配置の変形例が存在すること、こうした変形例が本発明の範囲に含まれることが理解される。
【0046】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0047】
100 パワーコンディショナ装置
110 電力変換装置
112 DCリンク
114 三相インバータ
116 三相リアクトル
118 トランス
120 パスコントローラ
130 コントローラ
10 分散型電源
30 電力系統
40 蓄電装置
60 負荷
SW1 第1スイッチ
SW2 第2スイッチ
SW3 第3スイッチ
SW4 第4スイッチ
SW5 第5スイッチ