IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニーの特許一覧

特許7186076グラフィックシート、グラフィックシートの製造方法及び建築構造物
<>
  • 特許-グラフィックシート、グラフィックシートの製造方法及び建築構造物 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】グラフィックシート、グラフィックシートの製造方法及び建築構造物
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/10 20060101AFI20221201BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20221201BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20221201BHJP
   G09F 3/04 20060101ALI20221201BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20221201BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20221201BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
G09F3/10 B
B32B5/18
B32B27/30 A
G09F3/04 Z
C09J7/38
C09J133/04
C09J11/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018224445
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2019101437
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】P 2017234332
(32)【優先日】2017-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(72)【発明者】
【氏名】三浦 真智美
(72)【発明者】
【氏名】荒木 好則
(72)【発明者】
【氏名】高松 頼信
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/147679(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/188120(WO,A1)
【文献】特開2012-017386(JP,A)
【文献】特開2014-180818(JP,A)
【文献】特開平04-239578(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02792706(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 3/10
B32B 5/18
B32B 27/30
G09F 3/04
C09J 7/38
C09J 133/04
C09J 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に対して貼り剥がしが可能なグラフィックシートであって、
第1面及び前記第1面とは反対側の第2面を有するベースフィルム層と、
前記ベースフィルム層の第2面の上又は上方に配置された粘着性を有するアクリルフォーム層と
を備え、
前記アクリルフォーム層、エチルアクリレートに由来する単位を20質量%以上有するアクリル系ポリマーを含み、
前記アクリルフォーム層は、複数の球状セルと、隣接し合う球状セル間の貫通孔とを有する連続気泡構造を有し、
前記アクリルフォーム層は、前記アクリル系ポリマーと架橋剤とを含むアクリルフォーム前駆体を用いて形成されたものであり、前記架橋剤は、イソシアネート化合物、メラミン化合物、ポリ(メタ)アクリレート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン基含有化合物、アミド化合物、ビスアミド化合物、及びそれらの組み合わせから選択される、グラフィックシート。
【請求項2】
前記アクリルフォーム層の初期接着力が20℃で0.5N/25mm以上であり、常態接着力が20℃で8N/25mm以下である、請求項1に記載のグラフィックシート。
【請求項3】
前記アクリルフォーム層の80℃における損失正接(tanδ)が、せん断モード、周波数1.0Hzの条件において、0.20以下である、請求項1又は2のいずれかに記載
のグラフィックシート。
【請求項4】
前記アクリルフォーム層が、200μm以下の厚みを有する、請求項1~のいずれか一項に記載のグラフィックシート。
【請求項5】
基材に対して貼り剥がしが可能なグラフィックシートの製造方法であって、
第1面及び前記第1面とは反対側の第2面を有するベースフィルム層を提供すること、
粘着性のアクリルフォーム層を形成すること、及び
前記ベースフィルム層の第2面の上又は上方に接合層を配置し、前記接合層の上に前記アクリルフォーム層を積層すること
を含み、
前記アクリルフォーム層は、複数の球状セルと、隣接し合う球状セル間の貫通孔とを有する連続気泡構造を有し、
前記アクリルフォーム層を形成することが、
エチルアクリレートに由来する単位を20質量%以上有するアクリル系ポリマーと架橋剤とを含むアクリルフォーム前駆体を発泡すること、
前記発泡したアクリルフォーム前駆体をシートに成形すること、及び
前記発泡したアクリルフォーム前駆体のシートを硬化すること
を含み、
前記架橋剤は、イソシアネート化合物、メラミン化合物、ポリ(メタ)アクリレート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン基含有化合物、アミド化合物、ビスアミド化合物、及びそれらの組み合わせから選択される、方法。
【請求項6】
前記アクリルフォーム層が難燃剤を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のグラフィックシート。
【請求項7】
前記難燃剤が、水酸化アルミニウムを含む、請求項に記載のグラフィックシート。
【請求項8】
前記アクリルフォーム前駆体が難燃剤を含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記難燃剤が、水酸化アルミニウムを含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
基材と、前記基材の表面に配置された請求項1~およびのいずれか一項に記載のグラフィックシートとを含む建築構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はグラフィックシート、グラフィックシートの製造方法及び建築構造物に関し、特に内装用途に適したグラフィックシート、グラフィックシートの製造方法及びグラフィックシートを含む建築構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
住居、店舗等の商用施設、又は市役所等の公共施設の内装用途に、印刷層を担持するフィルム基材と接着層とを備えたグラフィックシートが使用されている。一時的な装飾、広告などを目的として使用されるグラフィックシートは、所定の期間が経過した後に被着体から剥がされて、新しい又は別のグラフィックシートに貼り替えられる。
【0003】
特許文献1(特開2003-076308号公報)は、「窓の透明ガラス、車の透明窓ガラス、透明プラスティック板等の裏面に貼って、表側より印刷画像を見る、いわゆる裏貼り広告ポスターシート」として使用するミクロ吸盤シートを記載している。
【0004】
特許文献2(特開2013-114137号公報)は、「ガラスやプラスチックフィルムなどの透明な被着体への裏貼り広告ポスター、鉄道や車のガラス内側に貼ることが可能な広告ステッカー等に好適に適用される」印刷層付発泡体を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-076308号公報
【文献】特開2013-114137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、壁紙等の基材に貼りつけられるグラフィックシートとして、基材からの剥落を防止するため、基材に対して十分な接着力を有する粘着シートが用いられていた。しかし、基材の剥がれ又は破損が生じにくい窓ガラス、コンクリート等とは異なり、ポリ塩化ビニルシート等の壁紙の上に貼られた使用済みのグラフィックシートを貼り替える場合、貼り付けられたグラフィックシートを剥がす際に、基材である壁紙等も一緒に剥がれてしまう、あるいは破損してしまうことがあり、その場合壁紙等を取り除いて再度施工する手間が発生していた。一時的な装飾、広告などを目的として使用されるグラフィックシートは短期間の貼り替えが望まれており、高い頻度で貼り替えに伴う施工を行う必要があった。
【0007】
本開示は、壁紙、ポスター等の比較的強度の低い基材の上に十分な接着力で貼り付けることができ、下地である基材を傷めずに容易に貼り替えが可能なグラフィックシートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施態様によれば、基材に対して貼り剥がしが可能なグラフィックシートであって、第1面及び前記第1面とは反対側の第2面を有するベースフィルム層と、前記ベースフィルム層の第2面の上又は上方に配置された粘着性を有するアクリルフォーム層とを備え、前記アクリルフォーム層が、エチルアクリレートに由来する単位を20質量%以上有するアクリル系ポリマーを含む、グラフィックシートが提供される。
【0009】
本開示の別の実施態様によれば、基材に対して貼り剥がしが可能なグラフィックシートの製造方法であって、第1面及び前記第1面とは反対側の第2面を有するベースフィルム層を提供すること、粘着性のアクリルフォーム層を形成すること、及び前記ベースフィルム層の第2面の上又は上方に接合層を配置し、前記接合層の上に前記アクリルフォーム層を積層することを含み、前記アクリルフォーム層を形成することが、エチルアクリレートに由来する単位を20質量%以上有するアクリル系ポリマーを含むアクリルフォーム前駆体を発泡すること、前記発泡したアクリルフォーム前駆体をシートに成形すること、及び前記発泡したアクリルフォーム前駆体のシートを硬化することを含む、方法が提供される。
【0010】
本開示のさらに別の実施態様によれば、基材と、前記基材の表面に配置された上記グラフィックシートとを含む建築構造物が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本開示のグラフィックシートは、壁紙、ポスター等の比較的強度の低い基材の上に十分な接着力で貼り付けることができ、下地である基材を傷めずに容易に貼り替えが可能である。そのため、作業に熟練する者でなくても糊残り及び基材破壊を生じさせずにグラフィックシートの施工及び除去を行うことができる。本開示のグラフィックシートは、一時的な装飾又は広告用のグラフィックシートとして、住居、商用施設及び公共施設の内装用途に好適に使用することができる。
【0012】
なお、上述の記載は、本発明の全ての実施態様及び本発明に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の一実施態様のグラフィックシートの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的で、図面を参照しながらより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。
【0015】
本開示において「シート」には「フィルム」と呼ばれる物品も包含される。
【0016】
本開示において「(メタ)アクリル」とはアクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0017】
本開示において「粘着性(感圧接着性)」とは、使用温度範囲で、例えば0℃以上、50℃以下の範囲で僅かな圧力を加えることで様々な表面に接着し、相変化(例えば液体から固体へ)を呈さない材料又は組成物の特性を意味する。
【0018】
本開示において「透明」とは、可視光領域(400nm~700nm)において、グラフィックシート又はその構成要素が、全光線透過率が約60%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上である領域を有することを意味する。グラフィックシートの全体が透明であってもよく、一部又は複数の部分が透明であってもよい。全光線透過率はJIS K 7361-1:1997(ISO 13468-1:1996)に準拠して決定される。
【0019】
本開示の一実施態様のグラフィックシートは、基材に対して貼り剥がしが可能なグラフィックシートであって、第1面及び第1面とは反対側の第2面を有するベースフィルム層と、ベースフィルム層の第2面の上又は上方に配置された粘着性を有するアクリルフォーム層とを備える。「ベースフィルム層の第2面の上に配置された」とは、アクリルフォーム層がベースフィルム層の第2面に直接接触して配置されていることを意味し、「ベースフィルム層の第2面の上方に配置された」とは、アクリルフォーム層がベースフィルム層の第2面に直接接触せずに、例えば接合層などの他の層を介して配置されていることを意味する。他の層について言及される「上」及び「上方」の定義も同様である。
【0020】
図1に、本開示の一実施態様によるグラフィックシート10の模式的な断面図を示す。グラフィックシート10は、第1面(図1では上面)及び第1面とは反対側の第2面(図1では下面)を有するベースフィルム層12と、ベースフィルム層12の第2面の上に配置された粘着性を有するアクリルフォーム層14とを含む。図1に示すようにベースフィルム層12とアクリルフォーム層14とは直接接触していてもよく、接合層を介して接着されていてもよい。ベースフィルム層12は、アクリルフォーム層14又は他の層との接触面にプライマー処理、コロナ処理などの表面処理を有してもよい。図1では、任意の構成要素としてアクリルフォーム層14の上(図1では下面)にライナー16が配置されている。
【0021】
ベースフィルム層として、様々な樹脂、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)を含むアクリル樹脂、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、フッ素樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)などの共重合体又はこれらの混合物を含むフィルムが使用できる。
【0022】
強度、耐衝撃性などの観点から、ベースフィルム層としてポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体又はポリカーボネートを含むフィルムが有利に使用できる。ベースフィルム層は、印刷インクのレセプタ層として、及び/又は外部からの穿刺、衝撃などから基材表面を保護する保護層として機能することもできる。ベースフィルム層を印刷インクのレセプタ層として機能させる場合、ベースフィルム層がポリ塩化ビニル又はポリウレタンを含むフィルムであることが、印刷適性、耐溶剤性(例えば耐アルコール性)などの点で有利である。ポリ塩化ビニルを含むフィルム層はグラフィックシートを難燃性とする上でも有利である。
【0023】
ベースフィルム層の厚みは様々であってよいが、グラフィックシートの強度及び取扱い性の観点から、一般に約10μm以上、約20μm以上、又は約50μm以上、約500μm以下、約200μm以下、又は約100μm以下とすることができる。ベースフィルム層が平坦でない場合のベースフィルム層の厚みとは、ベースフィルム層のうち最も薄い部分の厚みを意味する。例えば、ベースフィルム層はエンボス加工されていてもよい。エンボス加工の深さは、一般にベースフィルム層の厚み未満の範囲で、約1μm以上、約2μm以上、又は約5μm以上、約50μm以下、約20μm以下、又は約10μm以下とすることができる。
【0024】
ベースフィルム層は透明であっても不透明であってもよく、着色されていてもよい。一実施態様ではベースフィルム層は白色に着色されている。この実施態様は、ベースフィルム層の上に直接又は間接的に配置される印刷層によって作られる画像の鮮明さ、発色などの点で有利である。
【0025】
一実施態様ではベースフィルム層は中実である。この実施態様は、ベースフィルム表面に気泡を外部に排除するための通気孔のようなベースフィルム材料の不連続部がないため、グラフィックシートの美観の点で有利である。
【0026】
アクリルフォーム層は粘着性を有しており、エチルアクリレートに由来する単位を約20質量%以上有するアクリル系ポリマーを含む。いくつかの実施態様では、アクリルフォーム層はエチルアクリレートに由来する単位を約22質量%以上、約24質量%以上、又は約26質量%以上、約55質量%以下、約50質量%以下、又は約48質量%以下有するアクリル系ポリマーを含む。一般的な粘着性アクリル系ポリマーと比較して、アクリルフォーム層に含まれるアクリル系ポリマーがエチルアクリレートに由来する単位を約20質量%以上と大量に有することで、ポリ塩化ビニルシートを含む壁紙などの基材にグラフィックシートを固定するのに十分な接着力と、糊残り及び基材破壊を生じさせずにグラフィックシートを基材から容易に除去するのに十分な凝集力とをアクリルフォーム層に付与することができる。
【0027】
エチルアクリレートに由来する単位を約20質量%以上有するアクリル系ポリマーは、例えば重合性成分100質量部を基準としてエチルアクリレートを約20質量部以上含む重合性組成物をラジカル重合することによって形成することができる。本開示における「重合性成分」とは、以下に説明するラジカル重合により重合可能な成分を意味する。「重合性成分」が質量部に関して用いられるときは、これらの成分の合計質量を意味する。重合性組成物のラジカル重合は、例えば溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合などにより行うことができる。
【0028】
一実施態様では、エチルアクリレートに由来する単位を約20質量%以上有するアクリル系ポリマーは乳化重合によって形成される。重合性組成物は一般に水中油滴(O/W型)のエマルション組成物である。エチルアクリレート以外の重合性モノマーとして、一般に炭素原子数が12以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2-メチルブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、又はこれらの2種以上の組み合わせを重合性エマルション組成物に含めることができる。
【0029】
いくつかの実施態様では、エチルアクリレートの配合量は、重合性エマルション組成物の重合性成分100質量部を基準として、合計で約20質量部以上、約22質量部以上、約24質量部以上、又は約26質量部以上、約55質量部以下、約50質量部以下、又は約48質量部以下であり、エチルアクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートの配合量は、重合性エマルション組成物の重合性成分100質量部を基準として、合計で約40質量部以上、約42質量部以上、又は約44質量部以上、約70質量部以下、約68質量部以下、又は約65質量部以下である。
【0030】
エチルアクリレート及び上記アルキル(メタ)アクリレートと重合可能な他のモノマーとして、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-メトキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有モノマー;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどの環状エーテル含有(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有モノマー;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、マレイン酸などのカルボキシル基含有モノマー及びそれらの酸無水物;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、又はこれらの2種以上の組み合わせを使用することができる。
【0031】
水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー及びそれらの酸無水物、(メタ)アクリロニトリル、並びに(メタ)アクリルアミドは、比較的高い極性を有する官能基を分子内に有する極性モノマーである。極性モノマーは、アクリル系ポリマーに高い凝集力を付与する、及び/又はアクリル系ポリマーと基材表面との相互作用を高めることができる。いくつかの実施態様では、極性モノマーの配合量は、重合性エマルション組成物の重合性成分100質量部を基準として、合計で約2質量部以上、約4質量部以上、又は約6質量部以上、約18質量部以下、約15質量部以下、又は約13質量部以下である。
【0032】
重合性エマルション組成物は、重合性モノマーとして多官能性モノマーを含んでもよい。多官能性モノマーは鎖長延長剤又は架橋剤として機能し、アクリルフォーム層の凝集力を高めて糊残りを低減することに寄与する。多官能性モノマーとして、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート、又はこれらの2種以上の組み合わせを使用することができる。いくつかの実施態様では、多官能性モノマーの配合量は、重合性エマルション組成物の重合性成分100質量部を基準として、約0.1質量部以上、約0.5質量部以上、又は約1質量部以上、約10質量部以下、約5質量部以下、又は約3質量部以下である。一実施態様では重合性エマルション組成物は多官能性モノマーを含まない。
【0033】
重合性エマルション組成物は、一般に乳化重合に使用可能な水溶性又は油溶性の重合開始剤を含む。水溶性重合開始剤として、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩、及びこれらの混合物;上記過硫酸塩と、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤との反応生成物を含むレドックス反応開始剤;4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)及びその可溶性塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩など)などを使用することができる。水溶性重合開始剤として、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩又はこれらの混合物を有利に使用することができる。油溶性重合開始剤として、過酸化ベンゾイル、ラウロイルペルオキシド、ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートなどの有機過酸化物;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジメチル-2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリアン酸)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(AVN)などのアゾ系重合開始剤などを使用することができる。重合開始剤が水溶性重合開始剤であることが有利である。いくつかの実施態様では、重合開始剤の配合量は、重合性エマルション組成物の重合性成分100質量部を基準として、一般に約0.01質量部以上、又は約0.05質量部以上、約5質量部以下、又は約3質量部以下である。
【0034】
重合性エマルション組成物は、乳化剤としてアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。非イオン性界面活性剤のHLB(親水性-親油性バランス)は、約7以上、又は約10以上、約19以下とすることができる。いくつかの実施態様では、乳化剤の配合量は、重合性エマルション組成物の重合性成分100質量部を基準として、合計で約0.3質量部以上、約0.5質量部以上、又は約0.8質量部以上、約3質量部以下、約2.5質量部以下、又は約2質量部以下である。
【0035】
一実施態様では、乳化剤はアニオン性界面活性剤である。アニオン性界面活性剤として、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸アンモニウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム石鹸、ひまし油カリウム石鹸、やし油カリウム石鹸、ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム、オレイルサルコシンナトリウム、ココイルサルコシンナトリウム、やし油アルコール硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0036】
重合性エマルション組成物は分散媒として水、例えばイオン交換水を含む。エマルション組成物がさらに水溶性溶媒を含んでもよい。水溶性溶媒として、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチルカルビトール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのアルコールなどが挙げられる。
【0037】
重合性エマルション組成物は任意成分として連鎖移動剤、pH調整剤、その他の添加剤を含んでもよい。
【0038】
重合性エマルション組成物中の重合性成分の含有量は、約10質量%以上、約20質量%以上、又は約30質量%以上、約90質量%以下、約80質量%以下、又は約75質量%以下とすることができる。
【0039】
重合性エマルション組成物の乳化重合は、組成物を撹拌しながら加熱することにより進行させることができる。乳化重合を窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが望ましい。乳化重合の温度は約50℃以上、約60℃以上、又は約70℃以上、約95℃以下、約90℃以下、又は約85℃以下とすることができる。乳化重合の反応時間は、約10分以上、約30分以上、又は約1時間以上、約15時間以下、約10時間以下、又は約8時間以下とすることができる。乳化重合中の重合性エマルション組成物のpHは約2以上、又は約3以上、約7以下、又は約6以下に維持することが望ましい。
【0040】
アクリルフォーム層は、乳化重合により得られたアクリル系ポリマーを含むアクリルフォーム前駆体を発泡し、発泡したアクリルフォーム前駆体をシートに成形し、発泡したアクリルフォーム前駆体のシートを硬化することによって形成することができる。一実施態様ではアクリルフォーム前駆体はエマルション組成物であり、乳化重合により生成したアクリル系ポリマーを含むエマルションをアクリルフォーム前駆体の調製に使用することができる。
【0041】
アクリルフォーム前駆体の発泡には、アクリルフォーム前駆体に発泡剤を添加して組成物中で発泡させる化学発泡法、又はアクリルフォーム前駆体に気泡形成用ガスを分散混入させる機械発泡法を使用することができる。アクリルフォーム前駆体中の成分の化学安定性の観点から機械発泡法を使用することが望ましい。
【0042】
機械発泡法における気泡形成用ガスとしてアクリルフォーム前駆体の成分に対して不活性な気体が使用される。気泡形成性ガスとして、アルゴン、窒素などの不活性ガスを用いることができ、安価であることから窒素ガスを用いることが有利である。気泡形成用ガスの使用量は、一般にアクリルフォーム前駆体の体積を基準として約5体積%以上、又は約10体積%以上、約30体積%以下、又は約20体積%以下とすることができる。
【0043】
アクリルフォーム前駆体は難燃剤を含んでもよい。難燃剤を使用することでアクリルフォーム前駆体を用いて作製するアクリルフォーム層およびグラフィクシートの難燃性を上げることができる。特に難燃性が要求される室内用途でグラフィクシートを使用する場合に有益である。難燃剤として、例えば、ハロゲン系難燃剤および非ハロゲン系難燃剤を使用することができる。ハロゲン系難燃剤は高い難燃性を付与することが可能であるが、ハロゲンガスの発生を避けるためには非ハロゲン系難燃剤を使用することが好ましい。非ハロゲン系難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム等の水和金属化合物を使用することができる。難燃剤として水酸化アルミニウムを使用する場合において、いくつかの実施態様では、水酸化アルミニウムの配合量は、アクリルフォーム前駆体100質量部を基準として、約3質量部以上、または約10質量部以上、または約15質量部以上である。この範囲の水酸化アルミニウムを加えることで実用的な不燃性を得ることができる。また、水酸化アルミニウムの配合量は、アクリルフォーム前駆体100質量部を基準として、約27質量部以下、約26質量部以下または、約25質量部以下である。水酸化アルミニウムの量をこの範囲に抑えることで、接着力の低下を抑え、実用的な接着力を維持することができる。
【0044】
アクリルフォーム前駆体は増粘剤を含んでもよい。増粘剤を使用することでアクリルフォーム前駆体をシートに成形したときにシートの形状保持性を高めることができる。増粘剤として、例えばアクリル樹脂エマルジョンを使用することができる。いくつかの実施態様では、増粘剤の配合量は、アクリルフォーム前駆体100質量部を基準として、合計で約1質量部以上、又は約3質量部以上、約15質量部以下、又は約10質量部以下である。
【0045】
アクリルフォーム前駆体は整泡剤を含んでもよい。整泡剤を使用することでアクリルフォーム層のシートへの成形及び硬化中に気泡を維持して、グラフィックシートと基材の界面における気泡の混入を抑制又は防止し、高い接着力を発揮することが可能な気泡構造を形成することができる。整泡剤として、例えば、アルキルベタイン両性化物・脂肪酸アルカノールアミド混合物、オレアミドMEAスルホコハク酸2Naなどのアニオン性界面活性剤、又はそれらの組み合わせを使用することができる。いくつかの実施態様では、整泡剤の配合量は、アクリルフォーム前駆体100質量部を基準として、合計で約1.0質量部以上、又は約3質量部以上、約15質量部以下、又は約10質量部以下である。
【0046】
アクリルフォーム前駆体は架橋剤を含んでもよい。架橋剤を用いてアクリル系ポリマーを架橋することにより、アクリルフォーム層の強度及び凝集力を高めて、糊残りを低減することができる。架橋剤として、イソシアネート化合物、メラミン化合物、ポリ(メタ)アクリレート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン基含有化合物、アミド化合物、ビスアミド化合物、例えば、1,1’-イソフタロイル-ビス(2-メチルアジリジン)などの二塩基酸のビスアジリジン誘導体、又はこれらの組み合わせを使用することができる。架橋剤として、エポキシ化合物又はイソシアネート化合物、特にエポキシ化合物を使用することが有利である。いくつかの実施態様では、架橋剤の配合量は、アクリル系ポリマー100質量部を基準として、一般に約0.1質量部以上、約0.5質量部以上、又は約1質量部以上、約30質量部以下、約20質量部以下、又は約15質量部以下である。
【0047】
アクリルフォーム前駆体は難燃剤を含んでもよい。アクリルフォーム層に難燃剤を含ませることで、例えばISO 5660-1による発熱性試験(コーンカロリメータ法)において不燃性を有するグラフィックシートを形成することができる。難燃剤として有機系難燃剤又は無機系難燃剤を使用することができる。有機系難燃剤として、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、塩素化パラフィンなどのハロゲン系難燃剤、ポリリン酸アンモニウム、トリクレジルホスフェートなどのリン系難燃剤などが挙げられる。無機系難燃剤として、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物、三酸化アンチモンなどのアンチモン系難燃剤などが挙げられる。難燃剤として水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物を用いることが、接着力の維持、安全性などの点で有利である。難燃剤の配合量は、アクリル系ポリマー100質量部を基準として、約5質量部以上、約10質量部以上、又は約12質量部以上、約35質量部以下、約30質量部以下、又は約28質量部以下とすることができる。
【0048】
いくつかの実施態様において、難燃剤として水酸化アルミニウムを用いた場合は、アクリル系ポリマー100質量部を基準として、水酸化アルミニウムを約10質量部以上、より好ましくは約12質量部以上とすることで、良好な難燃性を得ることができる。一方、アクリル系ポリマー100質量部を基準として、水酸化アルミニウムを約35質量部以下、より好ましくは30質量部以下とすることで、実用的な難燃性と接着力の双方を維持することができる。
【0049】
アクリルフォーム前駆体は充填材を含んでもよい。充填材を使用することで、硬化後のアクリルフォーム層の機械特性を高め、加工性を改善し、又は製品単価を下げることができる。充填材として、ガラスビーズ、ポリマー中空微小球、ポリマービーズ、弾性微小球、粘着性ポリマー微小球などが挙げられる。
【0050】
アクリルフォーム前駆体は、本発明の効果を損なわない限り、粘着付与剤、可塑剤、染料、顔料、結晶性ポリマー、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などのその他の添加剤を含んでもよい。
【0051】
機械発泡法などにより得られた、発泡したアクリルフォーム前駆体を、ベースフィルム層又はライナーの上に塗布してシートに成形することができる。一実施態様では、発泡したアクリルフォーム前駆体はライナー上でシートに成形される。ライナーとして、必要に応じて剥離処理を表面に有するポリマーフィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いることができる。
【0052】
シートに成形されたアクリルフォーム前駆体の硬化は、加熱、赤外線照射などによって行うことができる。硬化温度は約100℃以上、約120℃以上、又は約135℃以上、約200℃以下、約180℃以下、又は約150℃以下とすることができる。硬化時間は、約10秒以上、約30秒以上、又は約1分以上、約30分以下、約15分以下、又は約10分以下とすることができる。
【0053】
アクリルフォーム層に含まれるアクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、例えば、約-60℃以上、又は約-50℃以上、約25℃以下、約0℃以下、又は約-10℃以下とすることができる。アクリル系ポリマーのガラス転移温度を上記範囲とすることにより、アクリルフォーム層の接着力を調節してアクリルフォーム層に必要な接着力と易除去性の両方を付与することができる。アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、せん断モード、周波数1.0Hz、温度範囲-60℃~200℃、昇温速度5℃/分の条件で動的粘弾性測定を行い、損失正接(tanδ)の初期ピーク温度により決定することができる。アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)を、アクリル系ポリマーがn種類のモノマーから共重合されているとして、下記のFOXの式(Fox, T. G., Bull. Am. Phys. Soc., 1 (1956), p. 123)より求めることもできる。
【数1】
(Tg:成分1のホモポリマーのガラス転移温度
Tg:成分2のホモポリマーのガラス転移温度
・・・
Tg:成分nのホモポリマーのガラス転移温度
:重合の際に添加した成分1のモノマーの質量分率
:重合の際に添加した成分2のモノマーの質量分率
・・・
:重合の際に添加した成分nのモノマーの質量分率
+X+・・・+X=1)
【0054】
一実施態様ではアクリルフォーム層は凹凸を有する微細構造化表面を有する。グラフィックシートの基材への貼り付け時にアクリルフォーム層表面と基材表面に挟まれた空気は、微細構造化表面に形成された開口、又はアクリルフォーム層内部の通路を通じて外部に排出されるかアクリルフォーム層に吸収されて、グラフィックシートと基材の界面における観察可能な気泡の混入を抑制又は防止することができる。そのため、熟練者でなくても、気泡残りに起因する外観不良を発生させずに、グラフィックシートの施工を容易に行うことができる。
【0055】
一実施態様ではアクリルフォーム層は連続気泡フォームであり、連続気泡が微細構造化表面の開口又はアクリルフォーム層内部の空洞を構成する。例えば、図1に示す実施態様では、連続気泡フォームであるアクリルフォーム層14の微細構造化表面17は複数の開口18を有し、アクリルフォーム層14はその内部に開口18と連通した空洞19を含む。グラフィックシートの貼り付け時にアクリルフォーム層14と基材表面に挟まれた空気は、開口18を通って空洞19の内部に保持されるか、あるいは空洞19がアクリルフォーム層14の外縁まで連通している場合はそこから外部に排出される。このようにして、グラフィックシートと基材の界面に観察可能な気泡が混入することが抑制又は防止される。アクリルフォーム層として連続気泡フォームを使用する場合は、気泡の大きさ及び数密度、アクリルフォーム層の密度、厚み、樹脂組成、製造条件等を調整することで、粘着性を調整することができる。
【0056】
アクリルフォーム層の気泡の平均直径は、一般に約1μm以上、約5μm以上、又は約10μm以上、約300μm以下、約250μm以下、又は約200μm以下とすることができる。気泡の平均直径を上記範囲とすることにより、グラフィックシートの基材への貼り付け時にアクリルフォーム層表面と基材表面に挟まれた空気をこれらの気泡内に保持することができると共に、外部からの水などの侵入による接着力の低下を抑制することができる。気泡の平均直径を上記範囲とすることにより、ベースフィルム層を印刷インクのレセプタ層としてその上に溶剤インクを用いて印刷したときに、ベースフィルム層を透過した溶剤がアクリルフォーム層に侵入することによる接着力の低下を抑制することもできる。
【0057】
アクリルフォーム層の微細構造化表面の開口の平均直径は、一般に約1μm以上、約5μm以上、又は約10μm以上、約300μm以下、約250μm以下、又は約200μm以下とすることができる。開口の平均直径を上記範囲とすることにより、グラフィックシートの基材への貼り付け時にアクリルフォーム層表面と基材表面に挟まれた空気を速やかにアクリルフォーム層内部の空洞に移動させることができる。
【0058】
アクリルフォーム層の微細構造化表面における開口の面積は、アクリルフォーム層の面積を基準として、一般に約1%以上、約5%以上、又は約10%以上、約30%以下、約25%以下、又は約20%以下とすることができる。開口の面積を上記範囲とすることにより、グラフィックシートの基材への貼り付け時にアクリルフォーム層表面と基材表面に挟まれた空気を速やかにアクリルフォーム層内部の空洞に移動させつつ、十分な接着力でグラフィックシートを基材上に固定することができる。
【0059】
アクリルフォーム層が、複数の球状セルと、隣接し合う球状セル間の貫通孔とを有する連続気泡構造を有してもよい。球状セルの平均直径は約5μm以上、約300μm以下であってよく、貫通孔の平均直径が約0.1μm以上、約5μm未満であってよい。いくつかの実施態様では、球状セルの平均直径は、約8μm以上、又は約10μm以上、約100μm以下、又は約20μm以下である。いくつかの実施態様では、貫通孔の平均直径は、約0.5μm以上、又は約1μm以上、約4μm以下、又は約3μm以下である。
【0060】
アクリルフォーム層の気泡含有量は、アクリルフォーム層の体積を基準として、一般に約2体積%以上、約5体積%以上、又は約10体積%以上、約30体積%以下、約25体積%以下、又は約20体積%以下とすることができる。気泡含有量を上記範囲とすることにより、アクリルフォーム層に必要な接着力と強度を付与することができる。
【0061】
アクリルフォーム層の密度は、一般に約0.2g/cm以上、約0.3g/cm以上、又は約0.5g/cm以上、約1.5g/cm以下、約0.9g/cm以下、又は約0.7g/cm以下とすることができる。密度を上記範囲とすることにより、アクリルフォーム層に必要な接着力と強度を付与することができる。
【0062】
アクリルフォーム層の硬さは特に限定されないが、基材に対する貼り剥がしの際にグラフィックシートに生じる変形によりクラック等が生じない程度の柔軟性をアクリルフォーム層が有することが望ましい。
【0063】
いくつかの実施態様では、アクリルフォーム層の80℃における損失正接(tanδ)が、約0.20以下、約0.19以下、又は約0.18以下である。アクリル系ポリマーのtanδを上記範囲とすることにより、アクリルフォーム層の接着力を調節してアクリルフォーム層に必要な接着力と易除去性の両方を付与することができる。アクリル系ポリマーのtanδは、せん断モード、周波数1.0Hz、温度範囲-60℃~200℃、昇温速度5℃/分の条件で動的粘弾性測定を行うことで決定することができる。
【0064】
いくつかの実施態様では、アクリルフォーム層の基材に対する初期接着力が、20℃で約0.5N/25mm以上、約1N/25mm以上、又は約2N/25mm以上である。初期接着力が上記範囲であれば、貼り付け時において、グラフィックシートを基材に対して剥離させることなく十分な保持力で接着固定することができる。
【0065】
いくつかの実施態様では、アクリルフォーム層の基材に対する常態接着力が、20℃で約8N/25mm以下、約6N/25mm以下、又は約4N/25mm以下である。常態接着力が上記範囲であれば、例えば基材としてポリ塩化ビニルシートなどが貼られた壁に対しても、基材に傷をつけることなく、グラフィックシートのみを剥がすことができる。
【0066】
これらの接着力は、長さ150mm、幅25mmに切断されたグラフィックシートを目的の基材に20℃の環境下でJIS Z 0237に準拠して貼り付け、引張試験機を用いて温度20℃、速度300mm/分で180度剥離を行ったときの値であり、初期接着力は貼り付けてから20分後、常態接着力は貼り付けてから室温下で24時間経過後の接着力をいう。
【0067】
アクリルフォーム層の厚みは、一般に約10μm以上、約20μm以上、又は約30μm以上、約200μm以下、約180μm以下、又は約160μm以下とすることができる。アクリルフォーム層の厚みとは、アクリルフォーム層のうち最も薄い部分の厚みを意味する。アクリルフォーム層の厚みを上記範囲のように比較的薄いものとすることで、グラフィックシートのフレキシビリティを確保し、壁紙等の基材面への良好な追従性を確保することができる。
【0068】
アクリルフォーム層の接着面(アクリルフォーム層が基材と接触して接着に寄与する領域)の面積は、アクリルフォーム層の面積の約1%以上、約5%以上、又は約10%以上、100%未満、約99%以下、約95%以下、又は約90%以下とすることができる。
【0069】
一実施態様では、グラフィックシートの厚みに沿った方向から見たときに、アクリルフォーム層がベースフィルム層と実質的に同じ形状及び面積である、又は同じ形状及び面積である。すなわち、アクリルフォーム層がベースフィルム層の実質的に全面に延在する、又は全面に延在する。いくつかの実施態様では、アクリルフォーム層の面積は、ベースフィルム層の面積の約3%以上、約5%以上、又は約10%以上、100%以下、約95%以下、又は約90%以下である。
【0070】
アクリルフォーム層は着色されていてもよい。一実施態様ではアクリルフォーム層は白色に着色されている。この実施態様は、グラフィックシートに印刷層を設けたときに画像の鮮明さ、発色などの点で有利である。
【0071】
図1に示すように、グラフィックシート10は、ベースフィルム層12とは反対側のアクリルフォーム層14の表面にライナー16を有していてもよい。ライナーとして、例えば、クラフト紙などの紙;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、酢酸セルロースなどのポリマー;このようなポリマーで被覆された紙などを挙げることができる。これらのライナーは、シリコーン、フルオロカーボンなどにより剥離処理した表面を有してもよい。ライナーの厚みは、一般に約5μm以上、約15μm以上又は約25μm以上、約300μm以下、約200μm以下又は約150μm以下とすることができる。
【0072】
ベースフィルム層の上に他の層、例えば印刷層などの装飾層、表面保護層、クリア層、印刷インクのレセプタ層などが積層されていてもよい。これらの層が接合層によって接合されていてもよい。装飾層は、グラフィックシートの全面に対応するように配置されていてもよく、一部又は複数の部分に対応するように配置されていてもよい。
【0073】
印刷層は、グラフィックシートに絵柄、パターンなどによる装飾性又は意匠性を付与するために使用することができる。ベースフィルム層又はレセプタ層の上にトナー、インクなどの着色剤を用いて印刷することにより印刷層を形成することができる。印刷層上に表面保護層又はクリア層を形成してもよい。印刷層は、グラビア印刷、静電印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷などの印刷技術を用いることにより形成することができる。印刷インクとして、溶剤系インク、又はUV硬化型インクを用いることができる。印刷層の厚みは様々であってよく、一般に溶剤系インクを用いた場合は、約1μm以上、又は約2μm以上、約10μm以下、又は約5μm以下とすることができる。UV硬化型インクを用いた場合は、約1μm以上、又は約5μm以上、約50μm以下、又は約30μm以下とすることができる。
【0074】
表面保護層として様々な樹脂フィルムを使用することができる。表面保護層は可撓性及び/又は延伸性を有することが望ましい。表面保護層を構成する樹脂として、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、アクリル系樹脂、ポリオレフィンの少なくともいずれかを含む樹脂、又はそれらの組み合わせが挙げられる。表面保護層は少なくとも可視光に対して透明であることが好ましい。表面保護層の厚みは様々であってよく、一般に約40μm以上、約50μm以上、又は約60μm以上、約200μm以下、約150μm以下、又は約100μm以下とすることができる。
【0075】
クリア層は、ベースフィルム層、印刷層又は他の層の上にクリア層形成用組成物を塗布して形成することができる。クリア層形成用組成物として、イソシアネート反応性樹脂(例えば、ヒドロキシル基含有化合物)及びイソシアネート系架橋剤を含む組成物を使用することができる。イソシアネート反応性樹脂として、例えばヒドロキシル基などのイソシアネート反応性官能基を有する以下の樹脂:フッ素系樹脂、フタレート系ポリエステル(PET、PENなど)、アクリル樹脂、耐石油性樹脂など、及びそれらの組み合わせが使用できる。イソシアネート系架橋剤として、例えばイソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート、トリレンジイソシアネートの多量体、コロネートL、ポリメチレンポリイソシアネートなどのポリイソシアネートなど、及びそれらの組み合わせが挙げられる。イソシアネート系架橋剤のイソシアネート基とイソシアネート反応性樹脂のイソシアネート反応性官能基の比について、イソシアネート基/イソシアネート反応性官能基の値を、約0.3以上、約0.5以上、又は約0.7以上、約1.2以下、約1.1以下、又は約1.05以下とすることができる。クリア層の厚みは、約1μm以上、約2μm以上、又は約5μm以上、約50μm以下、約30μm以下、又は約20μm以下とすることができる。
【0076】
レセプタ層として様々な樹脂フィルムを使用することができる。レセプタ層を構成する樹脂として、特に限定されないが、アクリル系ポリマー、ポリオレフィン、ポリビニルアセタール、フェノキシ樹脂などが使用できる。レセプタ層を形成する樹脂のガラス転移温度は、一般に約0℃以上、約100℃以下とすることができる。ガラス転移温度を上記範囲とすることにより、グラフィックシート全体の柔軟性を損なわずに、トナーの転写又はインクの印刷により鮮明な画像を得ることができる。レセプタ層の厚みは、一般に約2μm以上、約5μm以上、又は約10μm以上、約50μm以下、約40μm以下、又は約30μm以下とすることができる。
【0077】
接合層は、一般にアクリル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ゴム系などの、溶剤型、エマルジョン型、感圧型、感熱型、熱硬化型又は紫外線硬化型の接着剤を含む。接合層の厚みは、一般に約1μm以上、約2μm以上、又は約5μm以上、約50μm以下、約40μm以下、又は約30μm以下とすることができる。
【0078】
一実施態様では、グラフィックシートは、ベースフィルム層の第2面の上又は上方に接合層を配置し、その接合層の上にアクリルフォーム層を積層することによって製造される。
【0079】
グラフィックシートの合計厚みは、一般に約50μm以上、約60μm以上、又は約80μm以上、約400μm以下、約350μm以下、又は約300μm以下とすることができる。グラフィックシートの合計厚みにはライナーの厚みは含まれない。グラフィックシートの合計厚みを上記範囲とし、比較的薄くすることで、グラフィックシートのフレキシビリティを確保し、壁紙等の基材面への良好な追従性を確保することができる。
【0080】
グラフィックシートの面積は、一般に約50cm以上、約77cm以上、又は約623cm以上、約300m以下、約200m以下、又は約100m以下とすることができる。
【0081】
グラフィックシートは、様々な基材の表面に接着することができる。例えば、グラフィックシートを表貼り用グラフィックシートとして、すなわち基材に接着したときにベースフィルム層の第1面側から見た観察者に画像などが視認されるグラフィックシートとして使用することができる。グラフィックシートは、ポリ塩化ビニルシート等の壁紙、又はポスターのように比較的強度の低い基材に対して好適に使用される。一実施態様では基材はポリ塩化ビニルシートである。グラフィックシートを石膏ボード、ガラス、塗装板、フローリング材などに適用することも可能である。基材が建築構造物の一部、例えば壁、窓、床、天井、柱などであってもよく、これらの基材と基材表面に配置されたグラフィックシートとで建築構造物を形成してもよい。
【実施例
【0082】
以下の実施例において、本開示の具体的な実施態様を例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。部及びパーセントは全て、特に明記しない限り質量による。
【0083】
<動的粘弾性測定(DMTA)>
アクリルフォーム層の貯蔵弾性率(G’)と損失正接(tanδ)を動的粘弾性測定装置ARES-G2(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、日本国東京都品川区)を用いて測定する。測定条件は、せん断モード、周波数1.0Hz、温度範囲-60℃~200℃、昇温速度5℃/分である。tanδの初期ピーク温度からガラス転移温度(Tg)を得る。動的粘弾性測定の結果として、Tg及び80℃におけるtanδを記録する。
【0084】
<再剥離性(糊残り率)>
試験片として長さ150mm、幅25mmに切断されたものを使用する。試験片を3M(登録商標)DI-NOC(登録商標)ME-1174(スリーエムジャパン株式会社、日本国東京都品川区)上に20℃の環境下で貼り付ける。貼り付け方法はJIS Z 0237に準拠する。基材に貼り付けた試験片を室温で24時間放置して養生する。養生後、引張試験機(テンシロン万能試験機、型番:RTC-1210A、株式会社エー・アンド・デイ、日本国東京都豊島区)を用いて、温度20℃、速度300mm/分で180度剥離を行い、再剥離性を剥離時の糊残りの割合で評価する。DI-NOC(登録商標)ME-1174の表面に糊残りがある場合、糊が残っている面積割合を百分率(%)で示し、糊残りが全く無い場合を0%とする。N=3で測定し、その平均を糊残り率とする。
【0085】
<常態接着力>
試験片として長さ150mm、幅25mmに切断されたものを使用する。試験片を3M(登録商標)DI-NOC(登録商標)ME-1174(スリーエムジャパン株式会社、日本国東京都品川区)上に20℃の環境下で貼り付ける。貼り付け方法はJIS Z 0237に準拠する。基材に貼り付けた試験片を室温で24時間放置して養生する。養生後、引張試験機(テンシロン万能試験機、型番:RTC-1210A、株式会社エー・アンド・デイ、日本国東京都豊島区)を用いて、温度20℃、速度300mm/分で180度剥離を行う。N=3で測定し、その平均を常態接着力とする。
【0086】
<寸法安定性>
試験片として長さ50mm、幅50mmに切断されたものを使用する。試験片を3M(登録商標)DI-NOC(登録商標)ME-1174(スリーエムジャパン株式会社、日本国東京都品川区)上に20℃の環境下で貼り付ける。基材に貼り付けた試験片を65℃のオーブン中で24時間養生する。養生後、外観を確認する。外観異常や浮き(特に端部からの捲れ)などが無い場合「良好」とし、外観異常や浮きが発生している場合「不良」とする。
【0087】
例5~7および比較例4と5については、以下の条件で、難燃性、常態接着力、再剥離性および寸法安定性の試験を行った。

<難燃性>
グラフィックシートサンプルをカットして100mm角のサンプルを準備し、ISO5660-1に準拠して、不燃材石膏ボード上に、3M(登録商標)水性プライマー WP-137M(スリーエムジャパン株式会社、日本国東京都品川区)を塗布し、鋼板と粘着剤層とが接するようにして貼り合わせて建築材料を得た。この建築材料に対し、建築基準法第2条第9号および建築基準法施行令第108条の2に基づく防耐火試験方法と性能評価規格に従うコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験を行なった。評価基準は以下の通りである。
(イ) 総発熱量
合格:8MJ/m2以下
不合格:8MJ/m2より大きい
200kW超過時間合格:10s未満
不合格:10s以上
【0088】
<常態接着力>
試験片として長さ150mm、幅25mmに切断されたものを使用する。不燃材石膏ボードの上に3M(登録商標)水性プライマー WP-137M(スリーエムジャパン株式会社、日本国東京都品川区)を塗布し、その上に試験片を20℃の環境下で貼り付ける。貼り付け方法、使用した引張試験機、および測定条件は例1と同じ条件を用いた。
【0089】
<再剥離性>
試験片として長さ150mm、幅25mmに切断されたものを使用する。不燃材石膏ボードの上に3M(登録商標)水性プライマー WP-137M(スリーエムジャパン株式会社、日本国東京都品川区)を塗布し、その上に試験片を20℃の環境下で貼り付ける。貼り付け方法、使用した引張試験機、および測定条件は例1と同じ条件を用いる。
【0090】
<寸法安定性>
試験片として長さ50mm、幅50mmに切断されたものを使用する。不燃材石膏ボードの上に3M(登録商標)水性プライマー WP-137M(スリーエムジャパン株式会社、日本国東京都品川区)を塗布し、その上に試験片を20℃の環境下で貼り付ける。養生の条件および外観検査の基準は例1と同じ条件を用いる。
【0091】
例1
アクリルフォーム層を形成するためのアクリルフォーム前駆体を、通常の乳化重合により調製した。温度計及びコンデンサーを備えた丸底フラスコに、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0質量部、イオン交換水100質量部を投入して混合し、エチルアクリレート44質量部、n-ブチルアクリレート46質量部、及びアクリロニトリル10質量部を添加した。開始剤として過硫酸アンモニウム0.2質量部を投入し、窒素雰囲気下、60℃で5時間乳化重合を行って、アクリル系ポリマーを含むエマルションを得た。得られたエマルション100質量部に対して、整泡剤としてオレアミドMEAスルホコハク酸2Naを1.0質量部、増粘剤としてプライマル(商標)TT-615(アクリル樹脂エマルジョン、ダウ・ケミカル日本株式会社、日本国東京都品川区)1.0質量部を添加し、泡立て機により混合し、ミクロに発泡したアクリルフォーム前駆体を得た。得られたアクリルフォーム前駆体を剥離処理されたポリエステルフィルムにシート状に塗布し、140℃で5分間乾燥して、厚み60μmのアクリルフォーム層を得た。
【0092】
感圧型アクリル粘着剤のSKダイン(登録商標)1310(綜研化学株式会社、日本国東京都豊島区)を剥離処理されたポリエステルフィルムに塗布し、90℃で5分間乾燥して、厚み8μmの感圧接着層を得た。
【0093】
感圧接着層を接合層として厚み90μmのエンボス加工されたポリ塩化ビニル(PVC)フィルムに積層し、その上にアクリルフォーム層を積層して、例1のグラフィックシートを得た。
【0094】
例2
例1と同様の手順で、エチルアクリレート26質量部、n-ブチルアクリレート61.5質量部、アクリル酸3.5質量部、アクリロニトリル7質量部、メチルメタクリレート2質量部を乳化重合してアクリル系ポリマーを含むエマルションを得た。得られたエマルション100質量部に対して、整泡剤としてオレアミドMEAスルホコハク酸2Naを1.0質量部、架橋剤としてデナコール(登録商標)EX850(エポキシ系架橋剤、ナガセケムテックス株式会社、日本国大阪府大阪市)6質量部、増粘剤としてプライマル(登録商標)TT-615(アクリル樹脂エマルジョン、ダウ・ケミカル日本株式会社、日本国東京都品川区)1.0質量部を添加し、泡立て機により混合し、ミクロに発泡したアクリルフォーム前駆体を得た。得られたアクリルフォーム前駆体を剥離処理されたポリエステルフィルムに塗布し、140℃で5分間乾燥して、厚み60μmのアクリルフォーム層を得た。その後、例1と同様の手順で例2のグラフィックシートを得た。
【0095】
例3
例2と同様の手順で、エチルアクリレート26質量部、n-ブチルアクリレート49質量部、2-エチルヘキシルアクリレート11質量部、アクリル酸3質量部、アクリロニトリル7質量部、メチルメタクリレート4質量部を乳化重合してアクリル系ポリマーを含むエマルションを得た。得られたエマルション100質量部に対して、整泡剤としてオレアミドMEAスルホコハク酸2Naを1.0質量部、架橋剤としてデナコール(登録商標)EX850(エポキシ系架橋剤、ナガセケムテックス株式会社、日本国大阪府大阪市)6質量部、増粘剤としてプライマル(登録商標)TT-615(アクリル樹脂エマルジョン、ダウ・ケミカル日本株式会社、日本国東京都品川区)1.0質量部を添加し、泡立て機により混合し、ミクロに発泡したアクリルフォーム前駆体を得た。得られたアクリルフォーム前駆体を剥離処理されたポリエステルフィルムに塗布し、140℃で5分間乾燥して、厚み60μmのアクリルフォーム層を得た。その後、例1と同様の手順で例3のグラフィックシートを得た。
【0096】
例4
例2と同様の手順で、エチルアクリレート45質量部、n-ブチルアクリレート46質量部、アクリル酸2質量部、アクリロニトリル7質量部を乳化重合してアクリル系ポリマーを含むエマルションを得た。得られたエマルション100質量部に対して、整泡剤としてオレアミドMEAスルホコハク酸2Naを1.0質量部、架橋剤としてDICNAL GX(メタクリル酸メチル・2-イソプロペニル-2-オキサゾリン共重合体、DIC株式会社、日本国東京都板橋区)4.5質量部、増粘剤としてプライマル(登録商標)TT-615(アクリル樹脂エマルジョン、ダウ・ケミカル日本株式会社、日本国東京都品川区)1.0質量部を添加し、泡立て機により混合し、ミクロに発泡したアクリルフォーム前駆体を得た。得られたアクリルフォーム前駆体を剥離処理されたポリエステルフィルムに塗布し、140℃で5分間乾燥して、厚み60μmのアクリルフォーム層を得た。その後、例1と同様の手順で例4のグラフィックシートを得た。
【0097】
比較例1
例2と同様の手順で、エチルアクリレート15質量部、n-ブチルアクリレート49質量部、2-エチルヘキシルアクリレート18質量部、アクリル酸5質量部、アクリロニトリル4質量部、メチルメタクリレート9質量部を乳化重合してアクリル系ポリマーを含むエマルションを得た。得られたエマルション100質量部に対して、整泡剤としてオレアミドMEAスルホコハク酸2Naを1.0質量部、架橋剤としてデナコール(登録商標)EX859(エポキシ系架橋剤、ナガセケムテックス株式会社、日本国大阪府大阪市)8質量部、増粘剤としてプライマル(登録商標)TT-615(アクリル樹脂エマルジョン、ダウ・ケミカル日本株式会社、日本国東京都品川区)1.0質量部を添加し、泡立て機により混合し、ミクロに発泡したアクリルフォーム前駆体を得た。得られたアクリルフォーム前駆体を剥離処理されたポリエステルフィルムに塗布し、140℃で5分間乾燥して、厚み60μmのアクリルフォーム層を得た。その後、例1と同様の手順で比較例1のグラフィックシートを得た。
【0098】
比較例2
例2と同様の手順で、エチルアクリレート13質量部、n-ブチルアクリレート50質量部、2-エチルヘキシルアクリレート22質量部、アクリル酸4質量部、アクリロニトリル3質量部、メチルメタクリレート8質量部を乳化重合してアクリル系ポリマーを含むエマルションを得た。得られたエマルション100質量部に対して、整泡剤としてオレアミドMEAスルホコハク酸2Naを1.0質量部、架橋剤としてデナコール(登録商標)EX859(エポキシ系架橋剤、ナガセケムテックス株式会社、日本国大阪府大阪市)7質量部、増粘剤としてプライマル(登録商標)TT-615(アクリル樹脂エマルジョン、ダウ・ケミカル日本株式会社、日本国東京都品川区)1.0質量部を添加し、泡立て機により混合し、ミクロに発泡したアクリルフォーム前駆体を得た。得られたアクリルフォーム前駆体を剥離処理されたポリエステルフィルムに塗布し、140℃で5分間乾燥して、厚み60μmのアクリルフォーム層を得た。その後、例1と同様の手順で比較例2のグラフィックシートを得た。
【0099】
例1~4並びに比較例1及び2のアクリルフォーム層に含まれるアクリル系ポリマーのモノマー組成を表1に、グラフィックシートの評価結果を表2にそれぞれ示す。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
例5
アクリルフォーム層を形成するためのアクリルフォーム前駆体を、通常の乳化重合により調製した。温度計及びコンデンサーを備えた丸底フラスコに、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0質量部、イオン交換水100質量部を投入して混合し、エチルアクリレート45質量部、n-ブチルアクリレート46質量部、アクリロニトリル7質量部、およびアクリル酸2質量部を添加した。こうして得られた100質量部のエマルション100質量部に対して、整泡剤としてオレアミドMEAスルホコハク酸2Naを2.5質量部、架橋剤としてオキサゾリン系架橋剤(DICNAL GXDIC株式会社 日本国東京都板橋区)を4.5質量部、増粘剤としてプライマル(商標)TT-615(アクリル樹脂エマルジョン、ダウ・ケミカル日本株式会社、日本国東京都品川区)1.0質量部、さらに難燃剤(水酸化アルミニウム)としてハイジライト((昭和電工株式会社、日本国東京都港区)12質量部を加え、泡立て機により混合し、ミクロに発泡したアクリルフォーム前駆体を得た。得られたアクリルフォーム前駆体を剥離処理されたポリエステルフィルムにシート状に塗布し、140℃で5分間乾燥して、厚み60μmのアクリルフォーム層を得た。例1と同様な手順で、例5のグラフィックシートを得た。
【0103】
例5と同様な条件で、水酸化アルミニウムの添加量のみを変更して、例6、例7、比較例3および4のグラフィックシートを作製した。各例の水酸化アルミニウムの添加量およびグラフィックシートの評価結果を表3に示す。
【表3】
【0104】
本発明の基本的な原理から逸脱することなく、上記の実施態様及び実施例が様々に変更可能であることは当業者に明らかである。また、本発明の様々な改良及び変更が本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに実施できることも当業者には明らかである。
【符号の説明】
【0105】
10 グラフィックシート
12 ベースフィルム層
14 アクリルフォーム層
16 ライナー
17 微細構造化表面
18 開口
19 空洞
図1