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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】掘削装置
(51)【国際特許分類】
   E21B 7/00 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
E21B7/00 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018233209
(22)【出願日】2018-12-13
(65)【公開番号】P2020094417
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】508346480
【氏名又は名称】株式会社高山基礎工業
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】津川 澄夫
(72)【発明者】
【氏名】豊田 光一
(72)【発明者】
【氏名】松本 輔
(72)【発明者】
【氏名】我妻 隼
(72)【発明者】
【氏名】増村 清人
(72)【発明者】
【氏名】友定 健二
(72)【発明者】
【氏名】高山 公男
(72)【発明者】
【氏名】金野 雄策
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-132584(JP,A)
【文献】特開2011-256650(JP,A)
【文献】特開2014-118807(JP,A)
【文献】特開2002-285777(JP,A)
【文献】特開平07-062656(JP,A)
【文献】特開2005-097936(JP,A)
【文献】特開2000-154532(JP,A)
【文献】特開2018-188830(JP,A)
【文献】特開2010-019046(JP,A)
【文献】特開2010-185188(JP,A)
【文献】特開2009-155961(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0205161(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を掘削方向に沿って掘削することで掘削孔を形成するための掘削装置であって、
掘削装置本体と、
前記掘削装置本体における前記掘削方向側の端部に設けられた複数の爪部と、
前記掘削装置本体における前記掘削方向側の端部周縁又はその近傍に設けられたガイド手段であって、前記掘削方向をガイドするためのガイド手段と、
前記掘削装置本体における前記掘削方向側の端部の中央部分に設けられた芯出し部と、を備え、
前記ガイド手段は、前記複数の爪部のうち、前記掘削装置本体における前記掘削方向側の端部周縁に設けられた複数の第1爪部であり、
前記複数の爪部は、
前記複数の第1爪部と、
前記掘削装置本体における前記掘削方向側の端部のうち周縁よりも内側部分に設けられた複数の第2爪部であって、前記複数の第1爪部よりも前記掘削方向に向けて突出するように形成された複数の第2爪部と、を備え、
前記芯出し部を、前記複数の第1爪部よりも前記掘削方向に向けて突出し、且つ前記複数の第2爪部よりも前記掘削方向に向けて突出しないように形成する、
掘削装置。
【請求項2】
前記掘削装置本体の上下方向の長さを、前記掘削装置本体の直径よりも長くした、
請求項1に記載の掘削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤を鉛直方向に掘削することで掘削孔を形成するための技術の一つとして、鉛直方向に沿って設けられた掘削ロッドと、掘削ロッドの下端に設けられた掘削ビットであって、下端に向かうにつれて尖るペン先形状となる掘削ビットとを備えた掘削装置であり、掘削ロッドの回転に伴って掘削ビットによる地盤の回転掘削を行う掘削装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-204401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の掘削装置においては、上述したように、掘削ビットの形状がペン先形状であるので、例えば比較的硬い地盤を掘削する際には、掘削ビットが鉛直方向に対して傾斜することで掘削孔の孔曲がりが生じやすくなることから、掘削孔を正確に形成する観点からは改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、掘削孔を正確に形成することが可能となる、掘削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の掘削装置は、地盤を掘削方向に沿って掘削することで掘削孔を形成するための掘削装置であって、掘削装置本体と、前記掘削装置本体における前記掘削方向側の端部に設けられた複数の爪部と、前記掘削装置本体における前記掘削方向側の端部周縁又はその近傍に設けられたガイド手段であって、前記掘削方向をガイドするためのガイド手段と、前記掘削装置本体における前記掘削方向側の端部の中央部分に設けられた芯出し部と、を備え、前記ガイド手段は、前記複数の爪部のうち、前記掘削装置本体における前記掘削方向側の端部周縁に設けられた複数の第1爪部であり、前記複数の爪部は、前記複数の第1爪部と、前記掘削装置本体における前記掘削方向側の端部のうち周縁よりも内側部分に設けられた複数の第2爪部であって、前記複数の第1爪部よりも前記掘削方向に向けて突出するように形成された複数の第2爪部と、を備え、前記芯出し部を、前記複数の第1爪部よりも前記掘削方向に向けて突出し、且つ前記複数の第2爪部よりも前記掘削方向に向けて突出しないように形成する。
【0007】
請求項2に記載の掘削装置は、請求項1に記載の掘削装置において、前記掘削装置本体の上下方向の長さを、前記掘削装置本体の直径よりも長くした。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の掘削装置によれば、掘削装置本体における掘削方向側の端部に設けられた複数の爪部と、掘削装置本体における掘削方向側の端部周縁又はその近傍に設けられたガイド手段であって、掘削方向をガイドするためのガイド手段と、を備えたので、ガイド手段によって掘削装置の掘削方向をガイドできる。したがって、従来技術(ペン先形状の掘削ビットを用いて掘削孔を形成する技術)に比べて、掘削孔の孔曲がりの発生を抑制でき、掘削孔を正確に形成することが可能となる。
また、ガイド手段が、複数の爪部のうち、掘削装置本体における掘削方向側の端部周縁に設けられた複数の第1爪部であるので、掘削孔の孔曲がりを抑制するための大掛かりな器具等を用いることなく比較的簡易に構成でき、掘削装置の製造性を高めることができる。
また、複数の爪部が、複数の第1爪部と、掘削装置本体における掘削方向側の端部のうち周縁よりも内側部分に設けられた複数の第2爪部であって、複数の第1爪部よりも掘削方向に向けて突出するように形成された複数の第2爪部と、を備えたので、第2爪部を第1爪部と面一になるように形成する場合に比べて、地盤の掘削を効率的に行うことができ、掘削装置の掘削性能を高めやすくなる。
また、芯出し部を、複数の第1爪部よりも掘削方向に向けて突出し、且つ複数の第2爪部よりも掘削方向に向けて突出しないように形成するので、第1爪部及び第2爪部を機能させながら、掘削装置本体の芯出しを行うことができ、掘削孔を正確に形成することが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の掘削装置によれば、掘削装置本体の上下方向の長さを、掘削装置本体の直径よりも長くしたので、掘削装置本体の上下方向の長さを掘削装置本体の直径よりも短くした場合に比べて、掘削装置本体の外周面における掘削孔の側壁部分との接触可能な部分を増やすことができ、掘削孔の孔曲がりの発生を一層抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態1に係るアースドリル機の概略を示す側面図である。
図2図1の掘削装置の領域の拡大図である。
図3】掘削装置を示す図であり、(a)は側面図、(b)は底面図である。
図4】実施の形態2に係る掘削装置を示す図であって、図2に対応する領域を示す図である。
図5】ケーシング部を取り外した状態の掘削装置を示す図であり、(a)は側面図、(b)は底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る掘削装置の実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、地盤を掘削方向に沿って掘削することで掘削孔を形成するための掘削装置に関するものである。
【0021】
ここで、「地盤」の種類については、例えば、自然にある地盤や、人工的に形成された地盤(一例として盛土等)を含む概念である。また、「掘削装置」の種類については、例えば、杭埋設用掘削装置、地盤改良用掘削装置、トンネル用掘削装置等が該当する。また、掘削装置の「掘削方向」については、例えば鉛直方向、水平方向等が該当する。以下、実施の形態では、掘削装置が、地盤を下方に向けて掘削することで掘削孔を形成する杭埋設用掘削装置である場合について説明する。
【0022】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0023】
〔実施の形態1〕
まず、実施の形態1に係る掘削装置について説明する。この実施の形態1は、ガイド手段が、後述する複数の第1爪部である形態である。
【0024】
(構成)
最初に、実施の形態1に係る掘削装置が適用されるアースドリル機の構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係るアースドリル機の概略を示す側面図である。以下の説明では、図1のX方向をアースドリル機の左右方向(-X方向をアースドリル機の左方向、+X方向をアースドリル機の右方向)、後述する図3のY方向をアースドリル機の前後方向(+Y方向をアースドリル機の前方向、-Y方向をアースドリル機の後方向)、図1のZ方向をアースドリル機の上下方向(+Z方向をアースドリル機の上方向、-Z方向をアースドリル機の下方向)と称する。
【0025】
アースドリル機1は、掘削装置40を回転させることにより地盤Gに掘削孔DHを形成するためのものであり、図1に示すように、本体部10、回転駆動部20、接続部30、及び掘削装置40を備えている。
【0026】
(構成-本体部)
本体部10は、アースドリル機1を構成する基本構造体である。この本体部10は、例えば公知のアースドリル機用の本体部等を用いて構成されており、図1に示すように、地表面に載置され、走行部11、旋回部12、操縦部13、及びブーム部14を備えている。
【0027】
このうち、走行部11は、本体部10が地上を走行するためのものであり、例えば公知のアースドリル機用の走行部(一例として、クローラ式の走行部)等を用いて構成されている。また、旋回部12は、操縦部13及びブーム部14を旋回させるためのものであり、例えば公知のアースドリル機用の旋回部等を用いて構成され、図1に示すように、走行部11の上部に配置されており、走行部11に対して水平方向に旋回可能に接続されている。また、操縦部13は、アースドリル機1を操縦するためのものであり、例えば公知のアースドリル機用の操縦室等を用いて構成されており、図1に示すように、旋回部12に設置されている。また、ブーム部14は、接続部30及び掘削装置40を吊り下げるためのものであり、例えば公知のアースドリル機用のブーム(一例として、長手方向に伸縮可能なブーム)等を用いて構成されており、図1に示すように、旋回部12から上方に向けて張り出すように設置されている。
【0028】
(構成-回転駆動部)
回転駆動部20は、接続部30を上下方向に略沿った回転軸を中心に回転させるためのものである。この回転駆動部20は、例えば公知のアースドリル機用の回転駆動部等を用いて構成されており、図1に示すように、本体部10から上方に向けて張り出されたフレーム部15の先端に接続されていると共に、本体部10の操縦部13に設けられた図示しない制御装置と図示しない配線を介して電気的に接続されている(すなわち、制御装置からの制御信号に基づいて、回転駆動部20が駆動することになる)。
【0029】
(構成-接続部)
接続部30は、本体部10のブーム部14と掘削装置40とを接続するためのものである。この接続部30は、例えば公知のアースドリル機用の長尺なケリーバ等を用いて構成されており、図1に示すように、接続部30が回転駆動部20に形成された図示しない挿通孔に挿通された状態で、接続部30の長手方向が上下方向に沿うように配置されており、ワイヤ10aを介してブーム部14に吊り下げられている。
【0030】
(構成-掘削装置)
図2は、図1の掘削装置40の領域の拡大図である。また、図3は、掘削装置40を示す図であり、(a)は側面図、(b)は底面図である。掘削装置40は、地盤Gを掘削方向(具体的には、下方向)に沿って掘削することで地盤Gに掘削孔DHを形成するための装置である。図1図2に示すように接続部30の下端部に設けられており、図2図3に示すように掘削装置本体41、第1爪部42、第2爪部43、及び芯出し部44を備えている。
【0031】
(構成-掘削装置-掘削装置本体)
図2に戻り、掘削装置本体41は、掘削装置40の基本構造体である。この掘削装置本体41は、例えば鋼製の中空状体(一例として、中空の円柱状体)等にて形成されており、図2に示すように、接続部30の下方側において掘削装置本体41の軸方向が上下方向に沿うように配置されており、接続部30に対して固定具等によって接続されている。
【0032】
また、掘削装置本体41の具体的な大きさについては、所望の掘削孔DHを形成できる限り任意に設定できるが、実施の形態1では以下の通りに設定している。すなわち、図2に示すように、掘削装置本体41の直径については、掘削孔DHの直径と略同一(又は若干小さく)に設定している。また、掘削装置本体41の上下方向(軸方向)の長さについては、掘削孔DHの直径よりも短く設定している。
【0033】
(構成-掘削装置-第1爪部)
第1爪部42は、掘削方向をガイドするためのガイド手段である。この第1爪部42は、例えば先端部(図2図3では、下端部)が尖っている鋼製の板状体にて形成され、掘削装置本体41における掘削方向側の端部周縁(図2図3では、掘削装置本体41の下端部周縁)に複数設けられている(実施の形態では、2つ設けられている)。具体的には、図2図3に示すように、掘削装置本体41の下端部から掘削方向に向けて突出するようにそれぞれ配置され、掘削装置本体41に対してそれぞれ固定されている。
【0034】
(構成-掘削装置-第2爪部)
図2に戻り、第2爪部43は、地盤Gを掘削するためのものである。この第2爪部43は、例えば先端部(図2図3では、下端部)が尖っている鋼製の板状体にて形成され、掘削装置本体41における掘削方向側の端部のうち周縁よりも内側部分に複数設けられている。具体的には、図2図3に示すように、掘削装置本体41の下端部から下方に向けて突出するようにそれぞれ配置され、且つ一方向(図3(b)では、前後方向)に略沿って並設配置されており、掘削装置本体41に対してそれぞれ固定されている。
【0035】
また、第2爪部43の具体的な構成については任意であるが、実施の形態1では、複数の第2爪部43の各々は、複数の第1爪部42よりも掘削方向に向けて突出するようにそれぞれ形成されている。具体的には、図2図3に示すように、第2爪部43の上下方向の長さは、第1爪部42の上下方向の長さよりも長く設定されている。このような構成により、第2爪部43を第1爪部42と面一になるように形成する場合に比べて、地盤Gの掘削を効率的に行うことができ、掘削装置40の掘削性能を高めやすくなる。なお、上述した「第1爪部42」及び「第2爪部43」からなるものは、特許請求の範囲における「複数の爪部」に対応する。
【0036】
(構成-掘削装置-芯出し部)
芯出し部44は、地盤Gを掘削する際に掘削装置本体41の芯出しを行うための芯出し手段である。ここで、「芯出し」とは、掘削装置本体41の掘削方向側の端部の中心位置を掘削孔DHの中心位置に一致させることを意味する。この芯出し部44は、例えば先端部(図3では、下端部)が尖っている鋼製の板状体にて形成されており、掘削装置本体41における掘削方向側の端部の中央部分に設けられている。具体的には、掘削装置本体41の下端部から下方に向けて突出するように配置され、掘削装置本体41に対してそれぞれ固定されている。
【0037】
また、芯出し部44の具体的な構成については任意であるが、実施の形態1では、複数の第1爪部42よりも掘削方向に向けて突出し、且つ複数の第2爪部43よりも掘削方向に向けて突出しないように形成されている。具体的には、芯出し部44の上下方向の長さは、第1爪部42の上下方向の長さよりも長く、且つ第2爪部43の上下方向の長さよりも短く設定されている。このような構成により、第1爪部42及び第2爪部43を機能させながら、掘削装置本体41の芯出しを行うことができ、掘削孔DHを正確に形成することが可能となる。
【0038】
また、これら掘削装置40の形成方法については任意であるが、例えば、掘削装置本体41と、第1爪部42、第2爪部43、及び芯出し部44の各々とを別体に形成した後に、第1爪部42、第2爪部43、及び芯出し部44を掘削装置本体41に対して溶接等によって接続することにより、形成してもよい。あるいは、鋼材を折り曲げ成形することで、掘削装置本体41と、第1爪部42、第2爪部43、及び芯出し部44の各々とを一体形成することにより、形成してもよい
【0039】
以上のような掘削装置40により、第1爪部42によって掘削装置40の掘削方向をガイドできる。したがって、従来技術(ペン先形状の掘削ビットを用いて掘削孔を形成する技術)に比べて、掘削孔DHの孔曲がりの発生を抑制でき、掘削孔DHを正確に形成することが可能となる。特に、ガイド手段が第1爪部42であるので、掘削孔DHの孔曲がりを抑制するための大掛かりな器具等を用いることなく比較的簡易に構成でき、掘削装置40の製造性を高めることができる。
【0040】
(アースドリル機の作用)
続いて、このように構成されたアースドリル機1の作用について説明する。
【0041】
すなわち、例えば、回転駆動部20によって接続部30を介して掘削装置40の掘削装置本体41を回転させると、掘削装置40の複数の第2爪部43によって地盤Gが掘削方向(具体的には、下方)に沿って掘削される。また、第2爪部43による地盤Gの掘削が行われている際に芯出し部44が地盤Gの掘削面DSと接触すると、掘削装置本体41の芯出しが行われることから、掘削孔DHを正確に形成することが可能となる。また、第2爪部43による地盤Gの掘削が行われている際に掘削方向が上下方向に対して傾斜しようとすると、複数の第1爪部42の少なくとも一部が地盤Gの掘削面DSと接触することで、当該第1爪部42によって上記傾斜が抑制され、且つ掘削方向が上下方向に沿うように掘削方向のガイドが行われることから、掘削孔DHの孔曲がりの発生を抑制することが可能となる。
【0042】
(実施の形態の効果)
このように実施の形態1によれば、掘削装置本体41における掘削方向側の端部に設けられた複数の爪部と、掘削装置本体41における掘削方向側の端部周縁又はその近傍に設けられたガイド手段であって、掘削方向をガイドするためのガイド手段と、を備えたので、ガイド手段によって掘削装置40の掘削方向をガイドできる。したがって、従来技術(ペン先形状の掘削ビットを用いて掘削孔を形成する技術)に比べて、掘削孔DHの孔曲がりの発生を抑制でき、掘削孔DHを正確に形成することが可能となる。
【0043】
また、ガイド手段が、複数の爪部のうち、掘削装置本体41における掘削方向側の端部周縁に設けられた複数の第1爪部42であるので、掘削孔DHの孔曲がりを抑制するための大掛かりな器具等を用いることなく比較的簡易に構成でき、掘削装置40の製造性を高めることができる。
【0044】
また、複数の爪部が、複数の第1爪部42と、掘削装置本体41における掘削方向側の端部のうち周縁よりも内側部分に設けられた複数の第2爪部43であって、複数の第1爪部42よりも掘削方向に向けて突出するように形成された複数の第2爪部43と、を備えたので、第2爪部43を第1爪部42と面一になるように形成する場合に比べて、地盤Gの掘削を効率的に行うことができ、掘削装置40の掘削性能を高めやすくなる。
【0045】
また、芯出し部44を、複数の第1爪部42よりも掘削方向に向けて突出し、且つ複数の第2爪部43よりも掘削方向に向けて突出しないように形成するので、第1爪部42及び第2爪部43を機能させながら、掘削装置本体41の芯出しを行うことができ、掘削孔DHを正確に形成することが可能となる。
【0046】
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2に係る掘削装置について説明する。この実施の形態2は、ガイド手段が、後述するケーシング部である形態である。ただし、この実施の形態2の構成は、特記する場合を除いて、実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたものと同一の符号及び/又は名称を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0047】
(構成)
最初に、実施の形態2に係る掘削装置が適用されるアースドリル機の構成について説明する。実施の形態2に係るアースドリル機100は、実施の形態1に係るアースドリル機1とほぼ同様に構成されている。ただし、掘削装置110の構成の詳細については、下記に示す工夫が施されている。
【0048】
(構成-掘削装置の構成の詳細)
次に、掘削装置110の構成の詳細について説明する。図4は、本発明の実施の形態2に係る掘削装置110を示す図であって、図2に対応する領域を示す図である。図5は、後述するケーシング部113を取り外した状態の掘削装置110を示す図であり、(a)は側面図、(b)は底面図である。実施の形態2に係る掘削装置110の特徴については、図4図5に示すように、掘削装置110は、掘削装置本体111、爪部112、及びケーシング部113を備えている。
【0049】
(構成-掘削装置の構成の詳細-掘削装置本体)
掘削装置本体111は、例えば公知の掘削装置用バケット(一例として、スクリュー式のバケット)を用いて構成されており、図5に示すように、シャフト部111a、フィン部111b、及びヘッド部111cを備えている。
【0050】
このうち、シャフト部111aは、掘削装置本体111の基本構造体である。このシャフト部111aは、例えば長尺な鋼製の棒状体にて形成されており、図5(a)に示すように、ケーシング部113の上面に設けられた挿通孔(図示省略)に挿通されるように配置され、且つ接続部30の下方側においてシャフト部111aの軸方向が上下方向に沿うように配置されており、接続部30に対して固定具等によって接続されている。また、フィン部111bは、爪部112を支持しながら、爪部112によって掘削された土を攪拌するものである。このフィン部111bは、例えば鋼製の板状体にて形成されており、図5に示すように、シャフト部111aの外周面に対して螺旋状に巻きつくように設けられており、シャフト部111aに対して溶接等によって固定されている。なお、このフィン部111bの外径については任意であるが、例えば、シャフト部111aの上下方向の長さよりも長く設定してもよい(すなわち、掘削装置本体111の上下方向の長さを掘削装置本体111の直径よりも短く設定してもよい)。また、ヘッド部111cは、地面を掘削するためのものであり、例えば公知の掘削装置用にヘッド部(一例として、オーガヘッド)等を用いて構成されており、シャフト部111aの下端部に設けられており、シャフト部111aに対して着脱自在に固定されている。
【0051】
(構成-掘削装置の構成の詳細-爪部)
爪部112は、地盤Gを掘削するためのものである。この爪部112は、例えば公知の掘削装置用の爪部(一例として、鋼製の爪部)等を用いて構成されており、フィン部111bの側面のうち掘削方向側の側面に複数設けられている。具体的には、図5に示すように、フィン部111bにおける掘削方向側の側面の外縁部において下方に向けて突出するようにそれぞれ配置され、フィン部111bに対して着脱自在にそれぞれ固定されている。
【0052】
(構成-掘削装置の構成の詳細-ケーシング部)
図4に戻り、ケーシング部113は、掘削方向をガイドするためのガイド手段である。このケーシング部113は、例えば下面が開放された中空状体(一例として、長尺な中空の円柱体)にて形成されている。具体的には、図4に示すように、上面及び下面が開放された第1ケーシング部113aであって、掘削装置本体111の下側部分を覆う第1ケーシング部113aと、掘削装置本体111の上側部分を覆い、且つ下面が開放された第2ケーシング部113bであって、第2ケーシング部113bの下側部分が第1ケーシング部113aの上側の開放端を介して第1ケーシング部113aに挿入されている第2ケーシング部113bとを備えている。また、このケーシング部113は、掘削装置本体111における掘削方向側の端部周縁の近傍に設けられており、具体的には、図4に示すように、掘削装置本体111の上下方向全体にわたって配置され、且つ掘削装置本体111の周縁を囲繞するように配置されており、シャフト部111aに対して着脱自在に固定されている。
【0053】
以上のような掘削装置110により、ケーシング部113によって掘削装置110の掘削方向をガイドできる。したがって、従来技術(ペン先形状の掘削ビットを用いて掘削孔を形成する技術)に比べて、掘削孔DHの孔曲がりの発生を抑制でき、掘削孔DHを正確に形成することが可能となる。特に、ガイド手段がケーシング部113であるので、掘削装置本体111の構成に左右されずに掘削孔DHの孔曲がりを抑制でき、掘削装置本体111の設計の自由度を高めることができる。
【0054】
(アースドリル機の作用)
続いて、このように構成されたアースドリル機100の作用について説明する。
【0055】
すなわち、例えば、回転駆動部20によって接続部30を介して掘削装置110の掘削装置本体111を回転させると、掘削装置110の複数の爪部112及びヘッド部111cによって地盤Gが掘削方向(具体的には、下方)に沿って掘削される。また、爪部112による地盤Gの掘削が行われている際に掘削方向が上下方向に対して傾斜しようとすると、ケーシング部113が掘削孔DHの側壁面と接触することで、ケーシング部113によって掘削方向が上下方向に沿うように掘削方向のガイドが行われることから、掘削孔DHの孔曲がりの発生を抑制することが可能となる。
【0056】
(実施の形態の効果)
このように実施の形態2によれば、ガイド手段が、掘削装置本体111における掘削方向側の端部周縁の近傍に設けられたケーシング部113であって、掘削装置本体111の周縁を囲繞するように配置されたケーシング部113であるので、掘削装置本体111の構成に左右されずに掘削孔DHの孔曲がりを抑制でき、掘削装置本体111の設計の自由度を高めることができる。
【0057】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0058】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0059】
(形状、数値、構造、時系列について)
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
【0060】
(掘削装置の用途及び適用について)
上記実施の形態1、2では、掘削装置が、地盤Gに掘削孔DHを形成するために用いられると説明したが、これに限らない。例えば、従来の掘削装置(ペン先形状の掘削ビットを有する掘削装置)によって掘削された掘削孔DHに孔曲がりが生じた後に、当該掘削孔DHを掘削することにより孔曲がりを修正するために用いられてもよい。
【0061】
また、上記実施の形態1、2では、掘削装置が、アースドリル機を用いたアースドリル工法において掘削孔DHを形成する場合に適用されると説明したが、これに限らない。例えば、アースドリル工法以外の他の工法(一例としてリバース工法等)において掘削孔DHを形成する場合に適用されてもよい。
【0062】
(掘削装置本体について)
上記実施の形態1では、掘削装置本体41が、中空の円柱状体であると説明したが、これに限らず、例えば直方状体等の多角柱状体や楕円柱状体であってもよい。
【0063】
また、上記実施の形態1では、掘削装置本体41の上下方向の長さを、掘削装置本体41の直径よりも短く設定していると説明したが、これに限らず、例えば、掘削装置本体41の上下方向の長さを、掘削装置本体41の直径よりも長く設定してもよい。これにより、掘削装置本体41の上下方向の長さを掘削装置本体41の直径よりも短くした場合に比べて、掘削装置本体41の外周面における掘削孔DHの側壁部分との接触可能な部分を増やすことができ、掘削孔DHの孔曲がりの発生を一層抑制することができる。
【0064】
また、上記実施の形態2では、掘削装置本体111が、スクリュー式のバケットで構成されていると説明したが、これに限らず、例えば、従来技術のようなペン先形状のバケットを用いて構成されてもよい。この場合には、掘削装置本体111の下端部又はその近傍に爪部112が設けられる。
【0065】
(第1爪部について)
上記実施の形態1では、第1爪部42の設置数が2つであると説明したが、これに限らず、3つ以上であってもよい。
【0066】
(第2爪部について)
上記実施の形態1では、複数の第2爪部43が、掘削装置本体41の下端部において所定方向に略沿って並設配置されていると説明したが、これに限らず、例えば、掘削装置本体41の下端部においてランダムに配置されてもよい。
【0067】
(芯出し部について)
上記実施の形態1では、掘削装置40が、芯出し部44を備えていると説明したが、これに限らず、例えば、芯出し部44を省略してもよい。
【0068】
(ケーシング部について)
上記実施の形態2では、ケーシング部113は、下面が開放された中空の円柱状であると説明したが、これに限らず、例えば下面が開放された直方状体等の多角柱状体や下面が開放された楕円柱状体であってもよい。
【0069】
(付記)
付記1の掘削装置は、地盤を掘削方向に沿って掘削することで掘削孔を形成するための掘削装置であって、掘削装置本体と、前記掘削装置本体における前記掘削方向側の端部に設けられた複数の爪部と、前記掘削装置本体における前記掘削方向側の端部周縁又はその近傍に設けられたガイド手段であって、前記掘削方向をガイドするためのガイド手段と、を備えた。
【0070】
付記2の掘削装置は、付記1に記載の掘削装置において、前記ガイド手段は、前記掘削装置本体における前記掘削方向側の端部周縁の近傍に設けられたケーシング部であって、前記掘削装置本体の周縁を囲繞するように配置されたケーシング部である。
【0071】
付記3の掘削装置は、付記1に記載の掘削装置において、前記ガイド手段は、前記複数の爪部のうち、前記掘削装置本体における前記掘削方向側の端部周縁に設けられた複数の第1爪部である。
【0072】
付記4の掘削装置は、付記3に記載の掘削装置において、前記複数の爪部は、前記複数の第1爪部と、前記掘削装置本体における前記掘削方向側の端部のうち周縁よりも内側部分に設けられた複数の第2爪部であって、前記複数の第1爪部よりも前記掘削方向に向けて突出するように形成された複数の第2爪部と、を備えた。
【0073】
付記5の掘削装置は、付記3又は4に記載の掘削装置において、前記掘削装置本体における前記掘削方向側の端部の中央部分に設けられた芯出し部を備え、前記芯出し部を、前記複数の第1爪部よりも前記掘削方向に向けて突出し、且つ前記複数の第2爪部よりも前記掘削方向に向けて突出しないように形成する。
【0074】
付記6の掘削装置は、付記3から5のいずれか一項に記載の掘削装置において、前記掘削装置本体の上下方向の長さを、前記掘削装置本体の直径よりも長くした。
【0075】
(付記の効果)
付記1に記載の掘削装置によれば、掘削装置本体における掘削方向側の端部に設けられた複数の爪部と、掘削装置本体における掘削方向側の端部周縁又はその近傍に設けられたガイド手段であって、掘削方向をガイドするためのガイド手段と、を備えたので、ガイド手段によって掘削装置の掘削方向をガイドできる。したがって、従来技術(ペン先形状の掘削ビットを用いて掘削孔を形成する技術)に比べて、掘削孔の孔曲がりの発生を抑制でき、掘削孔を正確に形成することが可能となる。
【0076】
付記2に記載の掘削装置によれば、ガイド手段が、掘削装置本体における掘削方向側の端部周縁の近傍に設けられたケーシング部であって、掘削装置本体の周縁を囲繞するように配置されたケーシング部であるので、掘削装置本体の構成に左右されずに掘削孔の孔曲がりを抑制でき、掘削装置本体の設計の自由度を高めることができる。
【0077】
付記3に記載の掘削装置によれば、ガイド手段が、複数の爪部のうち、掘削装置本体における掘削方向側の端部周縁に設けられた複数の第1爪部であるので、掘削孔の孔曲がりを抑制するための大掛かりな器具等を用いることなく比較的簡易に構成でき、掘削装置の製造性を高めることができる。
【0078】
付記4に記載の掘削装置によれば、複数の爪部が、複数の第1爪部と、掘削装置本体における掘削方向側の端部のうち周縁よりも内側部分に設けられた複数の第2爪部であって、複数の第1爪部よりも掘削方向に向けて突出するように形成された複数の第2爪部と、を備えたので、第2爪部を第1爪部と面一になるように形成する場合に比べて、地盤の掘削を効率的に行うことができ、掘削装置の掘削性能を高めやすくなる。
【0079】
付記5に記載の掘削装置によれば、芯出し部を、複数の第1爪部よりも掘削方向に向けて突出し、且つ複数の第2爪部よりも掘削方向に向けて突出しないように形成するので、第1爪部及び第2爪部を機能させながら、掘削装置本体の芯出しを行うことができ、掘削孔を正確に形成することが可能となる。
【0080】
付記6に記載の掘削装置によれば、掘削装置本体の上下方向の長さを、掘削装置本体の直径よりも長くしたので、掘削装置本体の上下方向の長さを掘削装置本体の直径よりも短くした場合に比べて、掘削装置本体の外周面における掘削孔の側壁部分との接触可能な部分を増やすことができ、掘削孔の孔曲がりの発生を一層抑制することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 アースドリル機
10 本体部
10a ワイヤ
11 走行部
12 旋回部
13 操縦部
14 ブーム部
15 フレーム部
20 回転駆動部
30 接続部
40 掘削装置
41 掘削装置本体
42 第1爪部
43 第2爪部
44 芯出し部
100 アースドリル機
110 掘削装置
111 掘削装置本体
111a シャフト部
111b フィン部
111c ヘッド部
112 爪部
113 ケーシング部
113a 第1ケーシング部
113b 第2ケーシング部
DH 掘削孔
DS 掘削面
G 地盤
図1
図2
図3
図4
図5